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『劇場版 仮面ライダー剣 MISSING ACE』 〜賛否合評
『劇場版 仮面ライダー剣 MISSING ACE』 〜合評1
(文・T.SATO)
(2004年9月執筆)
「ウザいんだョ! 放っといてョ!!」
(↑:14歳の天音(あまね)ちゃんの声で・笑)
劇場版の平成『仮面ライダー』も早くも第4弾!
たかが同人誌とはいえ、何か意見表明をすることは、読者のみならず同業同人ライターからも、何がしか自分とは見解が異なる、との意見・感想が寄せられてくるもので。そのこと自体が面白かったり、スレ違いの原因になったりもするけども(笑)、特に本作なんかは、評者によって、ハッキリとその評価が大きく割れそうだ!?
で、ぶっちゃけアリエナイことを云わせてもらえば(笑)、意表外なことに、あるいは空腹にマズいものなし、TV版『仮面ライダー剣(ブレイド)』(04年)初期編(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20041101/p2)の悪印象との相対的評価も無意識にしてしまって、それが影響しているのか(?)、個人的には予想外に面白かった。
どのくらい面白かったか? ってーと、判断に悩むのだけれど……。『劇場版 仮面ライダー龍騎 EPISODE FINAL』(02年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20021104/p1)、『劇場版 仮面ライダー555(ファイズ) パラダイス・ロスト』(03年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20031104/p1)の方がはるかにインパクト、というかアクは強かった、とは思う。
しかし、ひょっとしてひょっとすると、個人的な感情の次元では、本作『劇場版 仮面ライダー剣』こそが僅差で、マイフェイバリット平成『ライダー』ムービーになったやもしれない……。てか、筆者はこの映画がスキだ!
映画は、深山幽谷(谷川連峰だっけ?)の洞窟内の紋章(タブレットって云うの?)で開幕。で、お次のシーンには、度肝を抜かれた。
深夜、降りしきる豪雨の中で対峙するふたり。我らが主人公=剣崎一真(けんざき・かずま)・仮面ライダーブレイド vs 仮面ライダーカリス・相川始(あいかわ・はじめ)こと正体はアンデッド怪人の一種である、尋常ならざる空気と表情ではじまる一騎討ち!
コレって、ひょっとしてひょっとしなくても、TV版『仮面ライダー剣』最終回のクライマックスシーン!?
……ツカミはオッケー!! まぁ実際には、前々作『龍騎』、前作『555』同様、TV版と劇場版はパラレルワールドになるとは思うけど(笑)。インパクトは大でしょう。
で、物語は一転、4年後へ……。
イイ意味でねらった演出としての、弛緩した空気。仮面ライダーとアンデッド怪人たちとの戦いは終わり、レギュラーたちの、らしいそのあとがつづられる。
清掃員になってゴミを清掃車に投げ込んでいる(笑)、我らが主人公・剣崎一真クン。
一見らしくない、作家先生として成功した、主人公サイドのサポーター虎太郎(こたろう)クンの大出世と成金姿。
弱気な高校生も、今では大学卒業間近で就職活動中の、4人目のライダー・仮面ライダーレンゲルこと上城睦月(かみじょう・むつき)クン。
一瞬、イヤなイヤなイヤな奴に変貌したかの虎太郎クン。
一方、過去のライダー時代をイヤがって旧知のコンタクトさえ過剰にメーワクがる睦月クン。
TVのように長丁場作品なら、この題材だけで数本もたせられそうだけど、約1時間半の映画の中途半端な描写では、イヤな感じとムダな感じしか漂わないのでは? と少し危惧。が、それも杞憂。10分も経たないうちに、虎太郎は元の本性を現わし、変わってしまった睦月を見て、自分を棚に上げ「アイツ、イヤな奴になったナ」とのたまい(笑)、何だかんだとウワサにされた睦月クンの方も、天音(あまね)ちゃんの14歳の誕生日パーティーが開かれる、いつもの喫茶店にこそこそと参上、先ほどの失礼の言い訳をしてしまう(笑)。
結局は、登場時のワンアクセント。プチサプライズに過ぎなかったワケで、ドラマのメインストリームに影響する描写ではなかったものの、それゆえ映画に無意味なプチストレスや淀みを発生させないので気持ちイイ。
今回、物語の序盤においては、復活したアンデッド怪人の猛攻に立ち向かうカッコいい新世代ライダー3人組を、変身ベルトを某機関に返却したとおぼしき変身できない旧世代ライダーたちが指をくわえて見守るのみの図なのだが、このへんもあまり引っ張らないで、サクサクいく。
仮面ライダーへと変身するのに必要な、変身ベルトに通すべき、怪人が封印されたカードが、何者かに強奪されて手許に存在しないため、旧世代の仮面ライダーブレイドと仮面ライダーレンゲルは変身できないことが明かされる。
しかし、物語はそんなに行かないウチに、4人目のクモの仮面ライダー・レンゲルの基となった、TV1クール終盤でもさんざんにおなじみ、復活したスパイダーアンデッド怪人を、今や新世代ライダーの長にして旧世代ライダー・橘朔也(たちばな・さくや)サンこと仮面ライダーギャレンが再度打倒。
怪人をカードに封印するや、そのカードを手渡されて変身可能になった睦月クンは、怪人軍団に急襲されている危急の事態ゆえにか、就職活動中の大事な身だという先ほどの葛藤もあまりなく(笑)、サッサと仮面ライダーレンゲルにヘンシン!
その次(?)の怪人バトルでも、映画版で初披露とおぼしき(?)、ヘラクレスカブトムシのアンデッドを誰かが倒すや(誰だったっけ?〜汗)、早くも剣崎も変身可能となり、我らが仮面ライダーブレイドへとヘンシン!
ただ、そのへんはアクションには流れても、特に大きな中盤の山場にはなっていない。本作に関しては、作風からも他に描くべき事象があることからも、この処置に個人的には大きな不満はないけれど。で、話はメインテーマや次なる話題へと遅滞なく進展していく……といった次第。
……つーか筆者は、これら一連の描写で、我らが仮面ライダーブレイドと仮面ライダーギャレンも、アンデッド側が作った仮面ライダーレンゲルと同様、封印された怪人のカードの力で変身可能になっていたことを、生まれてはじめて知ったとサ(笑)。武器とか身体能力とかをパワーアップさせるだけでなく、変身用のカードそれ自体が、既にして最初から怪人が封印されていた代物だったとは……。
ン〜、筆者はTV版を2〜3カ月遅れで視聴してるので、みなさまはすでにご承知なのかもしれないけれど(ホビー誌などでは発表されている?)。
あと、「カテゴリーエース」って、A級に強い怪人のイミだろうと思っていたのだが……(恥)。筆者には初耳の、映画中で登場する「カテゴリーキング」の集合名詞で、ようやっと認識。トランプカードのAやKに相当する怪人だったのか。
で、ライダーたちはみんなカテゴリーエースのカードで変身していたという。コレもはじめて知りました。TVでも#1から、もっとアップで、カードのマークと数字をハッキリゆっくり見せてくれたなら!
……でも、そーなると、カテゴリーエース怪人の邪悪な意志で、仮面ライダーレンゲル睦月クンが逆に操られてしまったというTV版での現象が、ブレイド&ギャレンにも過去に生じていなかったのか気になるなぁ――もちろんこのテの作品の常套だから、マジツッコミをする気はない。ウラ設定がないのなら、好意的な深読みでいくらでもコジツケよう(笑)。
新世代ライダーの3人。彼らは最終的には噛ませ役だったともいえる。
けれども、決して弱くはなく、むしろアンデッド怪人をドシドシ倒していて、強い! カテゴリーキングの上級怪人1体を、3人ならぬ単独で倒すまでの猛者(もさ)さえいる。作品のメインに関わる存在ではなかったとはいえ(?)、それなりに物語をかき乱し、振り子の振幅を拡げてみせ、ナマイキで自信満々な若者たちという性格付け以上に、そのメインとディテールの中間次元において相応の重要役割をリッパに果たしていたと思う。
作品外のことを云えば、『仮面ライダーアギト』(01年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20011108/p1)〜前作『仮面ライダー555』(03年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20031108/p1)の白倉伸一郎PD(プロデューサー)ゆずりといおうか、氏が開拓したラインを、日笠淳PDらも踏襲してみせた。何と云っても、まずは一般&マニア層双方にインパクトがほどほどにあるであろう、アルファベットの「A」を共通デザインモチーフとした新世代ライダーのキャスティングが予算相応にだろうが(笑)、それなりにスゴい!
仮面ライダーグレイブこと名子役あがりの黒田勇樹クン!(野村伸司脚本のTBS金曜ドラマ『人間・失格』(94年)からも早10年!)
仮面ライダーランスを演じるは、『ウルトラマンコスモス』(01年)主人公ムサシ隊員の杉浦太陽クンの、直系の弟君たる太雄(たかお)クン!
仮面ライダーラルクは、NHKテレビ小説『まんてん』(02年)の主役でブレイク前の宮地真緒(みやじ・まお)と一時はコンビで、よく青年マンガ誌表紙なども飾っていた、現役グラビアアイドル三津谷葉子(みつや・ようこ)ちゃん!
……杉浦太雄クンについては、一般層にはともかく、やっぱりマニア向けに、ダブル・トリプル・ミーニング的血統の連想でのコーフン・盛り上がりもねらったものだろう。そう、ウルトラマンアグルやウルトラマンネオスが平成仮面ライダーのひとりとして登場・変身し、サイバーコップやブルースワットにガイファードやらが『超星神(ちょうせいしん)グランセイザー』(03年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20041104/p1)の12戦士の一員として登場してみせて(もちろん別人役だが)、「オオッ!」という、我々マニア層や歳の差兄弟の子持ちママさん限定(笑)で、プチサプライズや意外な再会のよろこびを味わわせる、例の近年流行のパターンのそのバリエーションとしての登用だ。
三津谷葉子ちゃんについては、アイドルマニアにも少し触手を……といったところだろうか(〜癒し系のイメージとは、随分ちがう役どころだが……。後日付記:地に近い役柄かもしれない?)。
もちろんそれらは作品の本質的な要素ではないのは、筆者も百も承知だし、作り手だって承知だろう。が、それを判った上で、本質要素のみならず、周辺要素にも手を尽くせるだけ尽くして、パブリシティの機会を拡げてみせるのは、悪いイミではなくガメツい意味でもなく、オトナの常識的な商売人ならばやっておくべき当然のことだとも思う。
本来は子供向けが本道であり、そこは押さえておくべきだとはいえ(それは東映の底辺はともかく中核スタッフならば判っていることだろう)、そこを越境していくためには、俗耳に入りやすい「オトナの鑑賞にも堪えうる」との言説も逆利用して(笑)、仕事をしやすい環境も整えていくための「メジャー感」の醸成は許容されてしかるべきだろう。
ジャンル作品に前例を求めるなら、70年代前半の第2期『ウルトラ』シリーズにおいても、名古屋章や根上淳に瑳川哲郎やペギー葉山といった大御所が登場した。コレだって子供から見れば、権威主義的な有り難みは判らないからイミはないワケで、重しや現場の引き締めが目的なら、もっと中堅の役者でも代替可能だったやもしれないのに、それでも登用したのは、子供たちに向けて、というよりかは、製作当事者のステータス向上やパブリシティが目的で、ただのジャリ番とナメられるのは必然にしても、その度合いを減少させ、内外との折衝を少しでも有利に円滑に進めたいという効果もドコかで意識したからにちがいない。
そのへんで物事を、デジタルに白黒つけず、多角的に捉えて位置づけたい。つまり、子供向け・一般向け・大きなお友だち向け(笑)対策の併用を、それぞれの優先順位を決して倒錯してはイケナイが、肯定しておきたい。
その点で、ミレニアム『ゴジラ』シリーズや、平成『ウルトラ』シリーズはチョット……いやカナリ弱い。ジャニーズTOKIOの松岡昌宏や菊川怜、吹石一恵(ふきいし・かずえ)を出すこと自体はイイ。だがそれだけではまだ足りない。
僭越ながら筆者がプロデューサーならば、それに加えてイケメン好き主婦層&マニア層での話題作り・関心喚起もねらって、近作『ウルトラ』『ライダー』『戦隊』OBらを、複数もしくは大量に出演させるだろう(チョイ役でも・笑)。もちろん、さらに云うなら、たとえワンカットでも、彼らにカッコよくてオイシイ見せ場を、最低ひとつ以上は用意できるなら、それに越したことはない!
……以上、新世代ライダー3人のキャスティングを肯定せんがためだけに、つらつらと述べた。
で、締切(汗)が迫ってきたので、思いっ切りハショるけど、楽曲担当のライダーチップスがらみで元・たのきんトリオ(って歳若い読者が生まれる前の80年前後のジャニーズアイドルです〜汗)の生き残り・野村義男が、例のおなじみの喫茶店のお客さんとして登場し、ギターで奏でる本作のメイン楽曲がコレまた切なくて、心の琴線にふれて涙腺を刺激する感じで……。よろしゅうおわすなぁ。
14歳の天音ちゃんも顔がまるくて、10歳の天音ちゃんとの違和感が少ない。クソ生意気で乱れた日本語を使うも、見た目も荒んでてパツキン(金髪)だったりヤマンバだったりするワケではなく(汗)、かわいらしさも残っているワケだが、こーいうプチヒステリーなコは、かつて隆盛を極めた戦闘美少女さえ苦手らしい、妹萌えが大勢を占める近年の心やさしいオタクの男のコには不得手なタイプかな? 筆者個人は、自分より弱くて制御可能なコならば、そーいうコもかわいいナ、とも思うけど(笑)。
去年の井上脚本『劇場版 仮面ライダー555』でも、仮面舞踏会でヒロインと記憶喪失中の主人公を踊らせて、それを目撃したゲストヒロイン黒川芽以(くろかわ・めい)ちゃんが、隔意と嫉妬と静かな絶望から、せっかく編んだばかりのドレスを火にくべてしまう……というような、内向した激しさが描かれていたけれど。筆者はそーいうのスキだなぁ。てゆーか、可憐だけれども、そーいう激情パッションのプチ鬼子母神もやどしてる女性像を描かせたなら、やっぱ井上敏樹は天下一品、右に出る者はいない!
で、本作のヒロインに昇華した天音ちゃんも、その一類型として魅力的だった。彼女の演技は、あるイミ芝居クサかったかもしれないが、それがまたあの怪物・怪人が出現してしまう、非日常ワールドではちょうどイイ。
また、天音ちゃんのお母さんにして、虎太郎の「姉さん!」(笑)の栗原遙香(くりはら・はるか)さん。彼女もTV版同様、イイ存在感を醸してる。一見、薄幸そうな黒髪ショートカットの痩身ながらも、芯は強くて母でもある未亡人。筆者は彼女を見る度、往年の特撮巨大ロボヒーロー『ジャンボーグA(エース)』(73年・円谷プロ)のレギュラー・立花未亡人を想起してしまう――ルックスといいフンイキといい、クリソツに見えません?(汗)
天音ちゃんの素行不良に悩み、彼女を叱る母親役を見ていると、プチ実体験から来た演技にも思えたが……映画パンフの生年によれば、今年2004年でやっと30歳!? 筆者よりも歳下じゃん(爆)。てっきり同年代かと思ってた。ずいぶんとオトナびて、シットリしてますネ。
で、まだ映画が公開期間中の本誌発行(初出・04年10月コピー誌)なので、いくつかのネタばらしやオチには触れずに筆を置きますが……。
クライマックスの大バトル&事件解決のあとの後日談。物語は、実は本作の主人公が天音ちゃんでもあった……とも取れる、歓喜と喪失のアリガチ乙女チックなイメージ映像で、幕を閉じたのでありました……。
なにぶん筆者は涙腺がユルいので、マニア友だち連中は筆者といっしょにこのテの映画を観ることを……カンベンしてョみっともないョって感じかもしれませんが……。ま、筆者にとっては感動でも、あんなハズいもん見てられっか! ってなヒトも大勢いることでしょうョ(笑)。
追伸:演出技法も個人の好みの要素が大きいが、劇場映画初監督の石田秀範演出は――劇場版平成『ライダー』3作を担当した田崎竜太とはもちろんテイストが異なるも――、意外にも気張りがなく、肩の力が抜けていて、ソツなく演出した風情。マンガ・アニメ的な様式・明朗ギャグ演出も、井上敏樹のアニメ的ギャグ描写にマッチしているのでは?
追伸2:毎年恒例の平成『ライダー』前作出演者のカメオ出演。ドコに誰が出たのか変装(?)キツくて、筆者には判らず(映画のパンフで判った・笑)。『龍騎』みたく『アギト』の役者が往時のまんま、すぐ判るかたちで出して、笑いを取るのでイイんじゃないのかなぁ? あと同時上映の『戦隊』映画も毎年大量に戦隊OB出せばイイのにサ(笑)。
『劇場版 仮面ライダー剣 MISSING ACE』 〜合評2
(文・久保達也)
毎年思うのだが戦隊とライダーの上映の合間にたとえ5分でよいから休憩時間を設けることはできないものか? 今回も我慢できずに親に手を引かれてトイレに向かう子供が続出していたので。実はかく云う私も冒頭の仮面ライダーブレイドが始=仮面ライダーカリスを封印するバトルの直後、「今のうちに」とばかりにトイレに行ってしまった(爆)。どうせしばらくはあまり楽しくもない本編が続くんだから、などとタカをくくっていたもので(笑)。
だが全てのアンデッド怪人が封印されて4年後、サラリーマンや普通の嫁さんになることを目指したり、万引きに走ってみたりと各人がそれぞれの生活を送る中、不慮の事故によって大量のアンデッドが復活、橘が新たな3人のライダーを招集…… とドラマらしいドラマといえば舞台設定の説明のみにとどまり、あとはひたすらバトルに次ぐバトルの応酬! 極端な性格異常者の人物描写に走ることもなく、脚本が井上敏樹だとはとても思えなかった(笑)。
いやぁ今回は文句なしに面白かった! 『戦隊』の劇場版より『ライダー』の方が面白いと思えたのは実に今回が初めてだ(爆)。個人的にはこれまでの平成ライダー劇場版の中で最高傑作と思えるほど充実した出来映えであった。
一体何十体出てきたのかとてもではないが数えきれないほどの大量のアンデッド怪人が次々に襲いかかり、それを迎え撃つ合計7人(!)の仮面ライダー。
天音(あまね)の危機に颯爽と(唐突に・笑)復活するカリス。
最終決戦へとそれぞれのバイクで共に向かう4人のライダー。
待ちうけるは天空を自在に舞う巨大モンスター!
いやぁ、これはまさに『仮面ライダーストロンガー』(75年)第39話『さようなら! 栄光の七人ライダー!』のブローアップ版であり、これまでの平成ライダー劇場版に最も欠けていた大事な要素であった。テーマ・ドラマ云々よりも「お祭り」としてひたすら娯楽に徹した本作には最大の賛辞を送りたい。
自分を救うために犠牲になった始を想う天音(演じる石田未来(いしだ・みく)チャンはスゲエ美人。オジサンは中学生以上であればオッケーだぞ・笑)を描いたラストシーンも美しく、旧来の自己犠牲型ヒーローをこよなく愛する人々にとっても満足のいく作品ではなかったであろうか?
ただ昔からのライダーファンの中には今回登場する3人の新ライダーたちが先輩ライダーに敬意を払わず、「過去の人」として邪魔者扱いする態度を見て「歴代ライダーに対する冒涜だっ!」などと怒った人もいたんだろうか? まぁ新入社員が上司に対して平気でタメ口をきく御時世だから、これも世相の反映として受け止めればよい程度の性質のものであろうし、個人的にはこの国の階級的タテ社会に居心地の悪さを多々感じてきたもので、ヒーローバトルとは別にこちらの面でもスカッとさせてもらった次第である(笑)。実際、暴走族時代の先輩が転がりこんできたのが不満でしかたがなかったのに本人に直接云えず、その子供を虐待して死なせてしまった事件が現実に起きているくらいだから……
むしろ三津谷葉子目当てにNHK教育の03年度『ハングル語講座』を見ていた筆者(ハングル語をマスターする気はさらさらなかったが・笑)としては、変身シーンすらまともに描かれないくらいに彼女の出番が案外少なく、途中で殺されてしまったことが今回の唯一の不満点である。せっかくのゲストをぞんざいに扱うな!(同時上映『特捜戦隊デカレンジャー THE MOVIE』評(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20041106/p1)でのゲストヒロイン・新山千春(にいやま・ちはる)についての見解とは逆のことを書いてるが・笑)
なお「goo! 映画ランキング」なるサイトによれば、今回の戦隊&ライダーの二本立ては興行収入ランキングで第1週が第4位、第2週が第3位と2週目にランクが上がる快挙を成し遂げた。敬老の日を含む3連休にあたったこともあるだろうが、レジャーの多様化が進む現代においてはなかなか実現できないことであり、翌年への夢も膨らむというものだ。でも05年度はぜひ夏休みに興行して!
『劇場版 仮面ライダー剣 MISSING ACE』 〜合評3 井上&黒田ヒーローはとまどわせ
(文・内山和正)
(真相ネタバレあります)
結構良い評価をする人が多いらしいので、この評は嫌われるだろうなと思いつつも、他の方の意見を聞かない時点で鑑賞しての感想であるし、ごまかせないので自分の感じたことを書く。正直言って今年はひどい映画だなと思った。
井上氏が映画の脚本を担当されるであろうことは予想されていたが、ドラマの4年後という設定がいやだった。スタッフも大幅に変わっているので、これまでの映画のようにテレビとはパラレルな世界かどうかわからなかったのだ(映画を観たあとパンフレットを買って、テレビのその後ではないことが判明)。
テレビ版のメインライター・今井詔二(いまい・しょうじ)氏がおそらく希望をもたせた結末を用意するであろうから、そのあとを暗くされるのはかなわないという気持ちが強かった。井上氏なら後日談ではなく『仮面ライダー龍騎』(2002・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20021109/p1)におけるテレビスペシャル『仮面ライダー龍騎スペシャル』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20021105/p1)のようなパラレルな独立した世界観で、キャラクターの描きこみにとぼしい主人公・仮面ライダーブレイドこと剣崎一真(けんざき・かずま)のキャラクターづくりなど、自分ならこう書くという「もうひとつのブレイド」をやってほしかった。そのほうがテレビ版も映画もおたがい傷つかないであろうから。
でも、4年後が舞台の続編というのは企画自体としては面白いかもしれないと思った。「望まずに巻き込まれてしまった辛い状況でもがんばれば道は開ける」がテーマの本作なら、勝利をおさめたあとの彼らというドラマはつくり得るからだ。最終回までのキャラクターの命の保障がない近年のほかの平成ライダー作品では、放送後ならともかく放送中にはつくりにくいにくいだろう(昨年の『劇場版 仮面ライダー555(ファイズ)』(2003)のように、こうなっているかもしれない暗い状況下の未来は描けても)。
戦いを終えた剣崎が清掃員になっているとの設定はいかにも井上テイストで、「世界のすべてを変える」はずの男がこれでいいのかとは思うものの、剣崎らしくて笑えつつリアルでうなづける設定だなと思った。また、独立した世界観ゆえに次世代の後輩ライダーというものを出しえない近年の作品において(本作の仮面ライダーギャレン・橘朔也(たちばな・さくや)と仮面ライダーブレイド・剣崎一真という同世代の先輩・後輩はあるが)、ねじれた後輩というかたちではあるものの登場させてくれたこと自体はうれしかった。
けれど……
人気作家になって慢心しイヤな奴になった虎太郎(こたろう)や、結婚をひかえた栞(しおり)、過去をふりかえりたくない仮面ライダーレンゲルこと上城睦月(かみじょう・むつき)らが、どのように戦いに復帰するのか? 新世代のライダーたちはどのように剣崎らと関わり、どのような結末を迎えるのか? 和解するとしたらどのように? 14歳になったヒロイン天音(あまね)と、仮面ライダーカリスでありトランプカードのジョーカーことアンデッド怪人でもある相川始(あいかわ・はじめ)との結末は? 始に救いはないのか?
「これらこそが映画のみどころであるべきではないのか……」。
そのような思い込みがこの作品を楽しめなくした原因だったのかもしれない。
実際の映画は予想をうらぎった。虎太郎は大金を得て金をバラまく浮かれあがった男にはなっていたが本質はあまり変わっておらず、睦月もすぐにライダーに戻りたがる。実のところイヤな奴になった虎太郎なんて見たくないのだが、このような設定をつくった以上、彼らがやる気を取り戻すまでにはもう少し歯応えがあってもよいではないか。ドラマとしてあまりにもあっけなさすぎる。
新世代ライダーたちも旧世代ライダーとの確執などがドラマの要になるのかと思っていたら、3人中の2人があっけなく(かつ意外なことに、戦士としての戦死ではなく)殺されてしまう。
そして映画の本当の目的はここからだった。
たしかに、映画を観るまでの時点では新旧ライダーの確執を描いたあとに何をやりたいのか明確ではなかった。だから、このような展開もアリなのだが、客引きの3要素のうち2つが本題ではないのでは、なにか観に行った目的を裏切られたような気持ちになってしまう。
このあとドラマは当然、だれが犯人かということになるのだが、登場人物が少なすぎるので、ワケありそうな仮面ライダーギャレン=橘か、新世代ライダーのリーダーである仮面ライダーグレイブこと志村純一かの二者択一しかなく、天音がらみでサスペンスこそ楽しめるものの、ミステリーとしての興味は薄い(ミステリー中心のドラマで、どちらが犯人なのか何転もするものなら2人の容疑者でも充分なのだが)。
結局、志村が犯人で、正体は今回の悪の首謀者・もうひとりのジョーカーであるアルビノジョーカーだった。
そうなってみると、志村の詳細が語られていないことや、TV版28話〜第31話のラストに放映された、映画の前日談を描いたミニドラマ『NEW GENERATION』で志村が禍木慎(まがき・しん=仮面ライダーランス)と三輪夏美(みわ・なつみ=仮面ライダーラルク)をあっさりライダーに選んだワケも納得できる(単純で喧嘩っぱやく、腕っぷしがつよくてプライド・自尊心が高い。いいように使っていざとなったら殺すつもりでいたのだろう)。
マニア誌のインタビューで新世代ライダーの演者3人がやたらと仲の良さを口にしていたのもトリックの一部だったのだろう。そういう意味では評価もできるが、観客の見たいものを裏切って「驚き」を中心にすることがはたして正しいことなのか。
『仮面ライダーBLACK(ブラック)』(1987・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20001005/p2)以後の『仮面ライダー』ファンである黒田勇樹氏がライダーを演じられるよろこびを語っておられたが、正体を知ってみると僕的には彼が「ライダー」だという思い入れがうすれてしまった。小学生のころの女の子のような顔立ちで可愛くかつカッコイイ時代から氏を見ているだけに、氏が「ライダー」を演じることに思い入れすぎてしまったせいかもしれないのだが。
天音と始の愛も、凶暴化がさけられず剣崎に封印されてしまったはずの始が、カードから解き放たれた途端、天音をたすけるために必死に戦うあたりは感動的なのだが、全体的にはそれほどでもないような? 個人的にはハッピーエンドであってほしかった。
なぜ生け贄は天音でなければならなかったのか、ライダーシステムは4人以外のライダーをつくれないはずなのにどうして新世代のライダーはつくられえたのか…… など疑問は多いし、キャラクターの描きこみは一部をのぞきスカスカだし、物足りない仕上がりでガッカリ。
『假面特攻隊2005年号』「劇場版 仮面ライダー剣 MISSING ACE」関係記事の縮小コピー収録一覧
・劇場配布版〜「オロナミンC」チラシ・裏面はオロナミンミルク、オロナミンセーキ、オロナミンフロートの作り方!
★都心の劇場、少なくとも初日2日目には上映終了退場時に、仮面ライダーブレイドとの握手&炭酸栄養ドリンク・オロナミンC無料配布が行われた(その時間を要すためか予告編上映はカット)。TV版のスポンサーであるバイクのHONDA同様、少子化・人口減社会に備えた子供への刷り込み作戦か? 製作会社・広告代理店・TV局から見ても、玩具会社以外のスポンサー獲得の絶好の契機でもある。(T.SATO)
(後日付記:以後も都心では毎年、劇場版ライダー封切時には、オロナミンC無料配布を行っている模様)
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https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190804/p1
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