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特捜戦隊デカレンジャー最終回 〜終了評


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特捜戦隊デカレンジャー 〜終了評・「○? ×? デカレンジャー

(文・内山和正)
 シリーズ最高作と呼ぶ人も多いほど若い特撮ファンの間で人気の盛り上がりを見せたらしい本作。


 その反面、あまり買えぬ人も多いようだ。
 個人的にはそれなりに楽しめたものの、平均的には一定以上の秀作ではなかったのではないかと判断している。



 警察という公的機関がその権力を盾に犯罪者たちを抹殺していくドラマであることに、筆者としては抵抗のあった本作。
 だが、途中からそのようなアレルギーがなくなっていったのは、徐々にキャラクターたちになじんでいったこともあるだろう。
 強大な犯罪者たちが登場して、デカレンジャーたちも強者ではなく必死に戦わねばいけない弱者の面を見せたエピソードを経(へ)たためでもあったろうと思う。


 なかでもEpisode.21「マッド・ブラザーズ」・22「フルスロットル・エリート」・23「ブレイブ・エモーション」のヘルズ三兄弟編は圧巻。
 残留思念を読み取れるエスパーであるデカイエロー=ジャスミンが三兄弟の末娘・サキュバスにふれたことで、彼女らにもてあそばれて滅ぼされてきた星々の人々の苦痛・惨状とヘルズ三兄弟の強さを体感してしまう。
 恐れ、仲間たちを救うためにサキュバスの求めにしたがって、彼女と現場へ同行すべきか悩む(サキュバスサキュバスジャスミンにひかれ自分たちの仲間になるように求める)あたりが、戦闘シーンだけでなく敵の凄味を増幅させている。


 また、犯罪者と姿を入れ替えられてしまったデカブルー=ホージーが真実を伝えようとしても伝わらぬもどかしさと犯罪者として処分されてしまいそうになる恐怖を描いたEpisode.19「フェイク・ブルー」も、ぎりぎりの状況まで彼を追いつめているのが迫真性を感じさせた(ラストは安易だが)。



 ヘルズ三兄弟を追って特別指定凶悪犯対策捜査官(通称トッキョウ)のデカブレイク=テツが登場。


 はじめはエリートとしてデカレンジャーを見下したような態度をとる。
 しかし、それは根っからのエリート根性ゆえではなく、純粋培養の無邪気さからのためだったとされる。


 ――のちには直接の上司が情より仕事の遂行を大切にする人物だったと設定され説明がなされたものの、初登場時のキャラクターから伺われた背景とは微妙にちがうようにも思える。設定としては問題ないのだろうが、脚本家がちがうための人物像の捉えかたの誤差か? それとも無用にギスギスした対立ドラマを回避するための設定の微改変だったのか?――


 しかし、デカレッド=バン(主人公)の


 「正義は絶対勝つ!」


 という何の根拠もない言葉が実証されてしまうと、スッカリ心酔してテツは後輩キャラになってしまうお手軽な展開・キャラクターが、お気楽な戦隊シリーズ、ひいては子供番組らしくて好ましい。


 レギュラーの変身ヒーローは6人目(ボスことドギー署長が変身するデカマスターも入れれば7人目)のこのデカブレイクで終わりだが、


・劇場版『特捜戦隊デカレンジャーTHE MOVIE フルブラスト・アクション』(2004・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20041106/p1)に、ゲストの新山千春が演じたマリーゴールドが一瞬変身したデカゴールド(デカイエロ−のスーツに光学合成を加えただけだが)、
・メカニック担当のレギュラー・白鳥スワンが例外的な状況で変身するデカスワン
・テツの女上司・リサ=ティーゲルが変身するデカブライト


 と10人もの変身ヒーローが登場した。


 本作の原点ともいえる『宇宙刑事シリーズ』(1982年から3年間)では製作費用の上限もあってか、レギュラー以外の宇宙刑事はゲスト出演しても変身はせずに設定をいかせず惜しまれたが、本作ではこの配慮により宇宙警察のスケールを感じさせてくれて嬉しかった。
 それだけに、Episode.47「ワイルドハート・クールブレイン」で、バンやウメコ(デカピンク)が赴任する前の地球署には、まだデカスーツがなかったとの設定には疑問を感じた。(そんなに以前のことではないのだろうから)



 ヘルズ三兄弟編あたりを境に、荒川稔久氏がメインライターとしての仕事をほとんどしなくなる。
 最終エピソード前後編やクリスマス商戦用の宇宙生物&隕石衝突危機エピソードEpisode.42「スカル・トーキング」・43「メテオ・カタストロフ」こそ担当したものの、新兵器登場編や重要なエピソードをほかのライターが担(にな)うことになった。執筆数も激減した。


 おそらく意図的な趣向なのだろうが、これではなんのためにメインライターがいるのかという気もする。
 同じ東映の塚田英明プロデューサーによる後番組『魔法戦隊マジレンジャー』(2005・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060313/p1)では、序盤を除いてはメインライターの前川淳氏がほとんど執筆ぜず、逆に荒川氏が中心となって執筆していたりもする。


 (編:みなさん売れっ子ライターなので、深夜アニメなど複数の作品を掛け持ちしているための処置と思われます。他の仕事だって色々な裏切れない義理人情の付き合いや、悪い意味ではなく長い眼で見て食べていくためのコネを増やしていく当然の計算もあるでしょうから・笑)



 作品の善し悪しとは別だが、武上純希氏の脚本担当回が増えてからの本作は、宇宙人同士間での犯罪事件が多く、地球が単なる宇宙人のための無法地帯と化している気がする。
 荒川氏がほとんどのエピソードを書いておられたころから、地球人のゲスト登場は多いとはいえなかったし、武上氏の作品にも被害にあう地球人は出てきもする(テツの子供時代に殺された両親などを除くとクローズアップされるわけではないが)。


 しかし武上氏が主流の時期には、宇宙人の犯罪にさらされる地球人とか、地球人が生活している星・街というイメージが薄いのだ。
 それだけに、ひさびさの荒川氏のメインエピソードで地球人であるホージーの妹が登場したときはホッとした。


 荒川氏の初期作品で宇宙人たちが地球人の姿で暮らしていることが多かったのは、地球人の主権があるはずの星で共存するためではなかったのか? 細かいマニア的な見方かもしれないが、そこに設定の微妙な不整合を感じてしまうのだ。


 地球人たちにも公けに認められたデカレンジャーなのだから、宇宙人の犯罪に地球人の犯罪者がからみ、地球の警察の刑事と宇宙警察のデカレンジャーが合同捜査するようなエピソードがあってもよかったのではないだろうか。



 また、まったくの新しいドラマ・作劇などはありえないとはわかってはいるが、走り続けなければ爆発する自転車とか、やむを得ない動機を持ち復讐殺人を犯してしまう刑事とか、大切な人の身内が犯罪者だったとかの刑事ものの定番ネタをそのままそれっぽくやってしまうのもいかがだろうか?


・ゲスト老刑事チョウ・サンは、君塚良一氏脚本のヒット作『踊る大捜査線』(1996)の和久や、『火曜サスペンス劇場』で放送された推理作家・笹沢左保氏原作の『取調室』シリーズ――原作者公認の主演キャストであったという――でのおとしの達人・水木正一郎警部補といった老刑事役が晩年の代表作となった、70年代にザ・ドリフターズで一世を風靡したコメディアン出身のいかりや長介氏(「長さん」の愛称で親しまれた)。
・犯罪者ジャン・ギャバは、『宇宙刑事ギャバン』の名前の由来になった俳優=ジャン・ギャバン氏。
・ボクデン星人は、戦国時代の剣客・塚原卜伝(つかはら・ぼくでん))。


 ……など、元ネタ探しのほうに興味が向かっているようにも見える。



 前作『爆竜戦隊アバレンジャー』(2003・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20031113/p1)から本シリーズでも定番化した変身ヒーローのパワーアップによる形態変化。
 本作ではスワットモードということで、防御にすぐれたプロテクターをつけ長い銃を構えたもので、警察ヒーローという設定にフィットしているのは見事である。


 前作では仲間のアバレブルーとアバレイエローのパワー(ダイノガッツ)をもらってアバレッドのみがアバレマックスに変化するイレギュラーなものだったので、実質的には本作が形態変化の第1弾であるともいえる。
 ――厳密には、『星獣戦隊ギンガマン』(98年)の獣装光ギンガマンや、『地球戦隊ファイブマン』(90年)のファイブテクターなどの前例もあるが(形態変化というよりも鎧の装着だったが)――


 形態変化が戦隊シリーズの決まり事として認知されて以降なら、多少は奇抜であってもかまわないだろうが、戦隊ヒーローが形態変化することに違和感を持つ人もあるだろうから、作品世界から浮かないものが求められたはず。
 その点で、成功している。それだけに反権力集団に対する鎮圧イメージも強く物騒ではあるのだが。



 従来のインサイドストーリーのようなものはないと度々スタッフの方はマニア誌などで口にされていたが、最終エピソードはやはり(その言葉に反して)、犯罪者支援ビジネスを行ない暗躍してきた武器商人・エージェント=アブレラとの決着という最終回らしいものとなった。


 デカレンジャーの出撃中にデカベース――宇宙警察地球署の建物。トレーラー形態や巨大ロボット形態に変形する――を占拠。
 さらには救援にかけつける宇宙警察主力部隊をも壊滅させようとするアブレラ


 現実の犯罪(?)では、戦力の差が圧倒的にちがうために、犯罪者グループや志ある(?)反政府グループが、警察や軍隊に一方的に鎮圧されてしまうので後味が悪いが、これほどの敵が相手なら戦うことに湿っぽさはない。
 ボスを失い(鎮圧後、生存していたことがわかる)、変身不可能な不利な状況のなかで必死の反撃に出るデカレンジャーたちを心置きなく応援することができる。


ジャスミン(イエロー)のエスパーとしての能力
ウメコ(ピンク)の入浴と早変わり
・ホージー(ブルー)の射撃
・セン(グリーン)の思考
・バン(レッド)の無鉄砲


 と各キャラの特技、劇場版で登場したヘリコプター(だと思う?)を発進させるためのリフトが活かされ、傑作とまではいえないとも個人的には思うが、気の利いた快作になっていた。


 番組は終わってもデカレンジャーたちの戦い・仕事はつづいていく……
 という最終回以降、部署移動したあとの彼らの姿をも描く幕切れは、制作者たちのもくろみが見事に成功し、格別思い入れの強くない筆者もキャラクターたちとの別れが淋しくなった。


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2006年号』(05年12月30日発行)『特捜戦隊デカレンジャー』合評1より抜粋)


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