『ウルトラマンメビウス』評 〜全記事見出し一覧
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感動! 興奮! 衝撃! 迫力! ウルトラマンメビウス ネクストストーリー 『ウルトラマン プレミアステージ』(2007/5/2〜5/6・中日劇場)リポート
(文・森川由浩)
多くのファンの声援を受け終了した特撮テレビ番組『ウルトラマンメビウス』(06〜07)。
TVシリーズの放映終了後も、雑誌「てれびくん」(小学館刊)で2007年6月号(ASIN:B000P46R0I)より開始された新連載漫画『ウルトラマンメビウス外伝 超銀河大戦 戦え!ウルトラ兄弟』(画・内山まもる・08年4月に書籍化・ISBN:4091051189)や、雑誌「EQ Extra GIALLO (イーキュー エクストラ ジャーロ) №27 2007 SPRING」(光文社刊・ASIN:B000NQDM6K)連載開始の小説『ウルトラマンメビウス アンデレスホリゾント』(作・朱川湊人)といったインサイドストーリーが展開、多くのファンの視線を集めている。
10年に渡る平成ウルトラシリーズ以後の展開を見ても、こうしたケースは無く、如何に『ウルトラマンメビウス』が多くのファンの視線を集めた作品であるかを立証しているように伺える。
確かに本作、テレビ番組のムーブメントを計る“ものさし”の最たる“視聴率”が低かったとはいえ、時代の変遷とともに“視聴率”という物の価値観、絶対性が下降してきた現在では、こうした視聴率以外での諸展開も作品の影響を考える上では無視できない。
だが漫画、小説とは違い、舞台劇と言うメディアでの『ウルトラマンメビウス』の続編が上演された。
それが今回扱う『ウルトラマン プレミアステージ』である。
早い話が、アトラクションショーから出発した着ぐるみのウルトラマンや怪獣のショーといえば、確かにそれまでかも知れないが、全員ではないとはいえ、ドラマの顔であるGUYS(ガイズ)クルーのオリジナルキャストの演技も交えての演劇であり、そこに加えて初代ウルトラマン・ハヤタ役の黒部進、ウルトラセブン・モロボシ ダン役の森次晃嗣による元祖ウルトラ二大ヒーローも目前で活躍する、正にブラウン管の前での興奮を目前で体感出来る夢のプログラムである。
この演出は本編の平成ウルトラシリーズで大活躍、最近では『シルバー假面』(06)、『怪奇大作戦・セカンドファイル』(07)でも活躍の北浦嗣巳である(舞台演出は98年の『ウルトラマン スーパーステージ』に続いて二度目?)。
会場は愛知県名古屋市の中日劇場。
会期は2007年5月2日(水)〜6日(日)。一日二回の全10公演。
第一部が「ウルトラマンマジカルコンサート」 。
こちらは音楽ユニット・TOY BOX(トイ ボックス)とウルトラ怪獣による歌やマジック、ダンスなどのショー。
第二部が本題である「オリジナルライブステージ 星空の涙」である。
以下物語の内容を記載する。
オリジナルライブステージ 星空の涙
(作・鳶賀鷹生 小林雄次 北浦嗣巳 演出・北浦嗣巳 舞台監督・北山剛 舞台監督補・丸山義治 殺陣・岡野弘之)
(物語)
ウルトラマンメビウスと地球人との絆の力により、暗黒宇宙大皇帝エンペラ星人は滅び去り、地球には再び平和な日々が訪れていた。
ファントン星人の息子・フォンタはGUYS JAPAN(ガイズジャパン)の託児所で暮らす宇宙人の子どもだ。
同じ託児所にいるヂヂとは、けんかばかりしているがその間には不思議な友情が芽生えようとしていた。
そのフォンタが謎の老人から貰った絵本『星空の涙』には、満天の星空の下で願いごとをすれば、願いが一つだけ叶うという秘密を持っているそうだ。
誰もがそんな束の間の平和な時を謳歌している中、地球に来訪したウルトラマンことハヤタと、ウルトラセブンことモロボシ・ダンは、暗黒エネルギーの急激な上昇を感知、次なる闘いの予感を感じ取っていた。
「これが我々にとって地球最後の闘いになるかも知れない」との覚悟を決めて……。
ミライが地球を去ってからGUYSの隊長になったリュウ、GUYSクルーとしての任務を続けるジョージ、GUYSの託児所で宇宙人の子どもたちの面倒をみながらも隊員としての活動も行うコノミ。かつての仲間・マリナとテッペイも、それぞれの世界で夢に向かって走り続けていることだろう。
暇をもて遊んでいるようにみえても、戦いの無い、平和な一時を謳歌していたGUYSクルーは、ふとかつての仲間ヒビノ・ミライことウルトラマンメビウスのことを思い出すのであった。
その時ファントン星人・フォンタの父は、ウルトラマンゼアス、ウルトラマンナイスとともに漫才トリオを結成、宇宙に笑いを振りまいて平和を呼び起こそうと頑張っていた。
そんなフォンタの父は息子が気がかりで、地球に向かおうとする。
その三人の前に、先の闘いで倒されたはずのエンペラ星人の配下・暗黒四天王のデスレム、グローザムが出現した。
窮地に陥る漫才トリオの前にウルトラマンメビウスが出現する。
苦戦するメビウスの前にゾフィー、新マン(ウルトラマンジャック・以後本文中では新マンと呼称)、ウルトラマンエース、ウルトラマンタロウのウルトラ兄弟四戦士が加勢する。
その中、更に敵が増えた。
メトロン星人、ペガッサ星人、ナックル星人、マグマ星人の凶悪宇宙人軍団たちだ。
だがメビウスはゾフィーの命を受け地球に向かい、四戦士は宇宙人軍団と戦う。
その最中漫才トリオは、デスレムに捕らえられてしまい、人質にされる。
方や地球でも暗黒エネルギーの高まりをキャッチし、捜査に乗り出すGUYSクルーたちの前にバルタン星人が現れ、分身の術で攻撃を仕掛ける。
そこにハヤタ・ダンが登場、ウルトラマンとウルトラセブンに変身、バルタン星人を撃退する。
二人は再会したリュウたちGUYSクルーに、地球に再び大いなる危機が迫っていることを告げる。
一方隊長はじめクルー不在のGUYS本部に入った通信。
フォンタとヂヂはその通信をキャッチするが、それはフォンタの父とゼアス、ナイスが捕らえられたというものであった。
コノミの「外に出てはいけない」といういいつけを破り、二人は絵本『星空の涙』を持って父親達を助けに行こうとする。
地球に向かうメビウスを、四天王の一人・グローザムが待ち構えていた。
前の闘いでエネルギーを消耗しているメビウスは苦戦する。
そこにウルトラマンレオ・アストラ兄弟、ウルトラマン80(エイティ)、ウルトラマンネオス、ウルトラセブン21(ツーワン)が助け立ちに現れる。
だがウルトラ戦士を迎え撃つザラブ星人、ゴドラ星人、ケットル星人、ザム星人の凶悪宇宙人軍団がそこに加勢する。
ウルトラ戦士たちが次々と倒される中、メビウスも捕らえられてしまった! 奴らはメビウスを生贄(いけにえ)に暗黒宇宙大皇帝エンペラ星人を復活させるつもりなのだ。
更に絵本の存在と秘密を知った四天王たちは、それさえも皇帝復活の道具に役立てようと、絵本を狙って宇宙人少年たちの前に立ちはだかる!
絵本で叶えられる願いはたった一つだけなので、どちらか一つの願いを諦めなければならない。
フォンタの願いは「父ちゃんを助けること」、
ヂヂの願いは「友達が欲しい」。
ヂヂは願いを諦めるが、代わりにフォンタがヂヂの友達になると約束をする。
二人でファントン星人達を助けに行こうとすると、
「美しい友情だねぇ」 とメフィラス星人が乱入、ヂヂを人質に絵本をよこせとフォンタに迫る。
フォンタは絵本を渡すふりをしてメフィラスを突き飛ばした。
そこにハヤタが登場する。
ハヤタ「子どもたちの心を見くびったようだな、メフィラス」
怒ったメフィラスは二人を別の場所へ飛ばしてしまう。
メフィラス「私の相手をしている暇があるのかな。侵略者たちは次々と地球へ押し寄せているぞ」
怪獣軍団に囲まれたハヤタは「私は子供たちを信じる」と叫び、ベータカプセルを取り出し、変身!
ウルトラマンが登場し、ザム星人の怪獣軍団と応戦する。
フォンタが辿り着いたところは四天王の一人・異次元人ヤプールの作り出した怨念の灼熱地獄空間だった。
そこで彼が見たのは、囚われのファントン星人とゼアス・ナイスの姿。
「絵本を渡したら助けてやる」と言われたが、実はそれは四天王の変装。
ヤプールはグビラ、レッドキング、ゴモラの怪獣を呼び出す。
苦しむ二人の前に「あきらめるな!」の声とともに、ウルトラマンヒカリが参上する。
絵本を奪い、皇帝復活のために去っていく四天王。
フォンタからメビウスが倒されたことを聞いたヒカリは胸に手を当てる。
メビウス「ヒカリ、僕は生きている……」
そして本を奪いエンペラ星人復活の企みがあることを知る 。
それを見て驚くフォンタにヒカリは、
「離れていても仲間を思う心が力になるんだ! さあ君も友達のことを思い出せ! そして願うんだ!」 と諭す。
フォンタ「ヂヂ! ヂヂ!」
ヂヂ「フォンタ〜!」
フォンタ「聞こえた、ヂヂの声だ! 僕はここだよー!」
二人は再会した。
そしてそこへGUYSクルー登場。父達がメフィラスに捕まったことを聞かされるフォンタ。
ヒカリ「それだけではない! エンペラ星人復活の時は近い」
リュウはヒカリに「セリザワ隊長!」と叫ぶ。
ヒカリは「再会を懐かしんでる暇はない。メビウスが……」と。
そこへヤプールが怪獣軍団とともにGUYSの面々に襲いかかろうとする……。
そこにダン登場。身を挺してGUYSの盾になる。
ダン「私はこの命にかえても地球を守る」と言いながらウルトラアイを取り出し、ウルトラセブンに変身。
セブンが登場し、四天王を退ける。
ジョージ「これからどうすりゃいいんだ。何か策はないのか、リュウ!」
リュウ「こんなときサコミズ隊長ならどうするんだ……」
セブン「まず仲間を信じるね。そしてどんなときも冷静を失わず、決して諦めない」
セブンの言葉を受けたGUYSの面々は決意も新たにメビウス救出に向かおうとするが、フォンタとヂヂも一緒に行きたいと言う。
最初は反対するリュウだが、子どもたちの熱意に押されて同行を許可する。
リュウ「GUYS、SALLY GO!」
一同「G.I.G!」
絵本を使って皇帝を復活させようとする四天王だが絵本の力は発動せず。
デスレムは怒って絵本をつき返す。
だが皇帝は四天王の祈りとともに暗黒エネルギーを使って復活。
その時「まだ終わりではない」の台詞とともにゾフィー、新マン、エース、タロウ、レオ、アストラ、ネオス、セブン21が登場。
皇帝と対峙するが皇帝の力の前に全員倒れてしまう。
フォンタ「もうだめだ……」
ファントン「フォンタ、しっかりするんだ。絵本を使って、メビウスさんを甦らせるんだ」
フォンタ「でもこれはただの絵本じゃ……」
ファントン「父ちゃんは嘘はいわねぇ。さあ、絵本に願いを」
そのときフォンタの心にウルトラの父&母の声が聞こえた。
父「少年よ、絶望が暗黒の力となるように希望も光の力となる」
母「さあ、願うのです」
フォンタ「父ちゃんごめん。僕は絵本の力をメビウスを甦らせるのに使うよ」
皇帝「はっはっは、無駄なことを」
すると星空から一つの流れ星がメビウスの元へ。
フォンタは絵本の力を使い、GUYSメンバーの願いと祈りでメビウスに力を与える。
メビウスが十字架から復活。メビウスは倒れてるウルトラ戦士たちにエネルギーを送ると彼らは復活、力を取り戻す。
全員で皇帝と対峙すると怪獣軍団が乱入。
ウルトラマン軍団とエンペラ怪獣軍団の大死闘が幕を開けた。
多くの怪獣や宇宙人の猛攻に苦戦するウルトラマンメビウスの前をよぎる影。
その影はウルトラマンネクサス、ウルトラマンマックス、ウルトラマンゼノンであった。
メビウス「あなた方は?」
ネクサス「われわれも君たちと同じウルトラマン。ともに戦おう!」
ネクサス、マックス、ゼノンがデスレムを倒す。
続いてレオ、アストラ、80、ユリアン、ネオス、セブン21と怪獣軍団の闘いだ。
そしてウルトラマンティガ、ウルトラマンダイナ、ウルトラマンガイア、ウルトラマンアグル、ウルトラマンコスモス、ウルトラマンジャスティスも加勢(ネクサスジュネッスブルーVSガルベロス、マックス&ゼノンVSラゴラスエヴォ、ガイア&アグルVS失念、ティガ&ダイナVSゴルザ、コスモス&ジャスティスVSカオスダークネス)、ナイス&ゼアスの“お笑いウルトラコンビ”もギャグとキックの応戦でグローザムを倒した。
一方GUYSクルーは異次元人ヤプールと戦う。
ヤプール「所詮人間である貴様らが我々ヤプールの敵では無い!」
ジョージ「そうは行くか! マリナとテッペイの分まで俺たちが頑張るんだ!」
しかしヤプールに蹴散らされ絶体絶命のピンチに。その時……。
ヒカリ「リュウ! 私と一つに」
リュウ隊長はウルトラマンヒカリの願いを受け、再び融合して戦うことに。
リュウ「待ってたぜ!」と右手に輝くナイトブレスで変身!
メビウスとヒカリ=ミライとリュウの友情タッグが復活した!
ヒカリ「ミライ!」
メビウス「リュウさん!」
ヒカリ「必ずまた会えるって信じてたぜ」
メビウス「僕もです! リュウさん達の声、ずっと聞こえていました!」
そしてヤプールを撃破!!
四天王も残るはメフィラス星人のみに。
ハヤタ「侵略者の手下とは堕ちたモノだなメフィラス!」
メフィラス「皇帝など私の駒にしか過ぎない」
その一言が皇帝の怒りを買い、メフィラス星人は抹殺される。
ゾフィー達ウルトラ兄弟がタロウにエネルギーを与える。
タロウは構えを取りコスモミラクル光線を発射。
宇宙恐竜ゼットンは消え去る。
怪獣・宇宙人軍団や四天王も倒し、残るはエンペラ星人ただ一人。
エンペラ星人は絵本の魔力を恐れ絵本ごとフォンタを抹殺しようとする。
そのとき光とともにローブ姿の謎の老人が登場。
老人「お前の負けだ、エンペラ星人」
ローブを取ると、そこにはウルトラマンキングの勇姿があった。
ヒカリ「ウルトラマンキング……」
キング「その絵本『星空の涙』は夢を信じる人々の心が結晶化したもの。邪悪な願いは叶えられないのだ。さあ、少年よ。今一度願うのだ!」
フォンタ「えっ? でも願いを叶えられるのは一度きりじゃ?」
キング「今度は君自身の胸に願うのだ。若き勇者メビウスに力をと」
メビウスが皇帝にメビュームシュートを放つ。
皇帝「ウォォォォ! 何だ、この力は!」
攻撃を受けひるんだ皇帝にさらにウルトラ兄弟が光線を発射。
ヒカリがナイトシュート、ゾフィーがM87光線、新マンがスペシウム光線、エースがメタリウム光線、タロウがストリウム光線とそれぞれの必殺攻撃を集中させる。
皇帝「これが希望の光、信じる心の強さか。グァァァァァ!」
遂にエンペラ星人を倒し、地球の危機はウルトラ戦士とGUYSクルー、そしてフォンタとヂヂの友情と勇気によって救われた。
戦い終わり、ハヤタとダンは語る。
ダン「ハヤタ、君は“これが最後の戦いだ”……。そう言ったね」
ハヤタ「戦いのためにこの星(地球)を訪れるのは、これを最後にしたい。ダン、君もそう思わないか」
ダン「あぁ……」
ここは星空の丘。夜空に輝く流れ星。
フォンタは迎えに来た父親と共に故郷に帰ってしまった。
残ったヂヂには地球での友達が出来たが、
「いつかフォンタに会えますように」と、
一番の親友のことを思い祈りを捧げるのだった。
ここ十五年ばかりの円谷プロ関連作品のアトラクション・着ぐるみショーは、単なる遊園地の見世物から始まったレベルを超え、「目で見る生の特撮」とも言うべき域にまで達した完成度を見せてくれる。
ヒーローのポーズやアクション、掛け声・必殺光線・バトル時の打撃や地響きの効果音、過去作品全般から流用されるBGM、怪獣の鳴き声はもちろん、特にショーに登場するキャラクター、ヒーローや怪獣の出来映えが、本放送当時の勇姿を再現しているのには驚かされる。
今の三十代〜四十代の人が昔見たウルトラマンショーのコスチュームの出来が、余りにも粗雑だった思い出が多い中、映像の世界そのままで、原寸大で暴れまわるのには感激・感動を禁じえないと思う。
例えアトラク用でも映像に準じた造形でオリジナルを再現することに重点を置いてきたここ十数年の円谷プロの姿勢には、大いに感心・そして敬意を表したい。
芸能界きってのウルトラマンマニア・京本政樹もその辺りのこだわりは強く、雑誌「B−CLUB」(バンダイ出版刊・85〜98年・現在休刊)での連載「京本政樹のHERO考証学」(90年前後の連載。92年に書籍化・asin:489189234X)でも、コスチュームやマスク、ヘルメットなどのプロップ類の再現には力を入れたが、その「本放送時の勇姿を再現する」姿勢は、この時期の円谷プロのアトラクション使用コスチュームにまで大きな影響を与え、まず一時期(1970年代後半〜1980年代前半)のウルトラマンのマスクの特徴で見られた“黄色い眼”を元の透明のクリヤーカラーに改めさせるようになり、怪獣も前述の時期のアトラク怪獣のように、ただ形だけまねた別物ではなく、形も色も映像に登場した当時の姿を再現するコンセプトが基本となった。
これは1990年代に入り、ガレージキットやバンダイのウルトラ怪獣ソフビ人形などに見られるリアル志向の造形物がファンの手元に出回るようになり、観客=ユーザーの目が超えてきたことも、アトラクションショーの脚本家や演出家、怪獣造形のスタッフに、世代人のマニア上がりが参画するようになったことも影響しているだろう。
やがてバルタン星人、レッドキングなどの代表的怪獣のみならず、多くのウルトラ怪獣がメジャーマイナー問わず、「ウルトラマンフェスティバル」はもちろん、各地での遊園地やアミューズメントパーク等のアトラクションショーでその勇姿を見せることとなった。
時にはクール星人、ビラ星人といった操演モンスターも舞台で活躍する様相を見せ、ファンを喜ばせるようになり、「子どもだましの余興」みたいな印象を免れなかったアトラクションショーのレベルを上げる一助となるのであった。
キャラクターのコスチュームのみならず、舞台効果も見物である。
例えばヒーローの変身シーン。
東映ヒーロー作品のショーで、素顔のヒーローを演じる主人公の変身を舞台で見せるとき、
主人公役の俳優に変身ポーズを取らせる
→ 主人公舞台の袖にはける
→ 変身した後のヒーロー登場
のパターンで大体表現するが、
今回は、
変身道具を出し、ポーズを決める主人公
→ 舞台照明が暗くなり、舞台後方に設置した大型スクリーンに本編より変身シーンの映像(ウルトラマンなら赤い光の中から飛び出すもの、ウルトラセブンは例の上から少しずつ変身していくセブンの勇姿)を投射する(その瞬間に舞台袖にはける主人公俳優)
→ 映像が終わると同時に、舞台上の照明が明るくなり、変身したウルトラヒーローの登場
といったプロセスで“ヒーローの変身”を表現し、目の前で変身するウルトラマン、ウルトラセブンというプログラムを当の本人に演じさせることができるようになった。
これは以前、アニメ『美少女戦士セーラームーン』(92)のミュージカル(93〜05)でも、変身シーンの瞬間をスクリーンに映し出す形で表現し、その瞬間に「衣装替え」を行い、変身した姿のセーラームーンを実際に舞台に登場させたケースがあったが、今回も正にその手法である。
このスクリーンに映像を映し出しての表現は、他にもフォンタの心にメッセージを伝えるウルトラの父・ウルトラの母や宇宙で戦うゾフィー(第42話の宇宙でのM87光線で円盤を破壊するシーン流用)等でも使用されている。こうした中日劇場のような大きな劇場施設で照明等のシステムが完備しているからこそ出来るシステムであり、野外の遊園地や公園などのショーでは実現不可能な方法である。
また、ウルトラマンの必殺技であるスペシュウム光線などの光線技も、ウルトラマンの手先から照明で光線が出ているような形で照射、「眼で見る光学合成」とでも云えば良い様な技法で再現、これには驚愕している大人も多かった。
本当に「ウルトラマンの手から光線が発射」されているのだから。
(編:この手法も、98年5月3日の東京・日本青年館 大ホールでの『ウルトラマン スーパーステージ』(脚本・清水信宜 北浦嗣巳 生方之虎 演出・北浦嗣巳 殺陣・二家本辰己)が初出)
必殺技といえば、ウルトラセブンのアイスラッガーについても言及するが、テレビ本編での殆んどに見られるブーメラン形式で投げ飛ばすものではなく、ナイフのように握り締めて敵を切る形式での戦法で表現した。
他には、ウルトラマンの特徴である胸のカラータイマーも、エネルギーが少なくなると舞台上でも青→赤に変わったり、瞳の照明を消したりしてエネルギー消耗を表現しているのには感心させられた。電飾効果の技術面での向上もあり、「生で見る特撮」、そう、特撮映画現場のノウハウが、こうした撮り直しのきかない舞台での表現方法に大いなる力を与えていることを痛感させられた。
今回の舞台では多数の怪獣・宇宙人軍団が登場したが、これはテレビでの「最終三部作」(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070505/p1)では見ることの出来なかったスケールの大きなキャラクター群雄割拠を見せ、自分的には嬉しかった。もちろんショーのセールスポイントの一つにテレビでは見られぬ夢の共演を描くものであるというコンセプトもあってだろう。これはスタッフの側での「テレビでは出来なかったこと」を描いているという意思表示にも見えた。
なお劇中での登場怪獣は、
暗黒宇宙大皇帝エンペラ星人、メフィラス星人、異次元人ヤプール、策謀宇宙人デスレム、冷凍星人グローザム、バルタン星人、ザラブ星人、ゴモラ、グビラ、レッドキング、ゼットン、ゴドラ星人、メトロン星人、ペガッサ星人、ベムスター、ナックル星人、バキシム、ケットル星人、マグマ星人、ザム星人、ゴルザ、カオスダークネス、ガルベロス、ラゴラスエヴォ、ファントン星人、ファントン星人の息子・フォンタ、ヂヂという大所帯である。なおナックル、ザラブは映画『メビウス』版ではなく、初回登場時のタイプである。(順不同)
また、本作の売りが何よりもオリジナルキャストの起用による上演であるのは前述のとおりだが、『ウルトラマンメビウス』の主人公であるヒビノ・ミライ役の五十嵐隼士(いがらし しゅんじ)も、メビウスの声を担当している。
なお実際舞台には人間体のヒビノ・ミライは出演せず、着ぐるみのメビウスに声を当てる形(事前録音)での出演ではあるが。
リュウが合体したウルトラマンヒカリとメビウスのタッグ戦は、最終回の興奮を再び、しかも生で甦らせてくれる嬉しいシーンとなった。
他にもエンペラ星人の声を内海賢治、メフィラス星人の声を加藤精三がテレビシリーズ同様に担当しているのも忘れてはならない。
他の四天王は生憎(あいにく)別キャストになってしまったが、それでもこのベテラン二氏の声が劇場に響き渡るのだから、満足度は高い。
なお公式ホムペには、五十嵐、黒部、北浦の三氏によるインタビュー画像や、エンペラ・メフィラスの二大宇宙人のメッセージ(これは声優本人のコメントではなく、ちゃんと役になりきって観客を脅かすような口調になっているのがポイント)もアップされ、ファンの期待をあおっているのが印象的であった。
そして何よりも元祖ウルトラヒーロー、ハヤタとモロボシ・ダンの実演は、映画『ウルトラマンメビウス&ウルトラ兄弟』(06・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070128/p1)はもちろん、テレビ本編の『メビウス』終盤での兄弟ゲスト編での活躍での好評があってだろうが、今なお続くウルトラシリーズの隆盛は、やはりなんと言っても第一期ウルトラの基盤があってのものであり、幅広い年齢層(上は40代以上)にアピールするには初マン&セブンをメインでフィーチャーするのがベターだと判断したのも推測されるが、今回の主催、企画制作に森次晃嗣の事務所・森次エンターテインメントが関与しているのもあるのだろう。そのため、ダンディー4(フォー)ならぬダンディー2(黒部&森次)になったのだと思われる。
なおハヤタは『メビウス』47話での薄いベージュのジャケット、ダンはブルージーンズに茶色の革ジャンパーにグリーンのスカーフという衣装で登場した。
ドラマのテーマが「友情」であるのは、この物語のもう一人の主役であるファントン星人・フォンタとヂヂの活躍を見れば理解できるが、ミライとGUYSの友情も永遠であるというポイントも忘れないで欲しい。
劇中でのGUYSクルーの台詞や、ウルトラマンヒカリと合体したリュウ隊長とミライ=メビウスの会話シーンには、往年の『キン肉マン』(79。83にTVアニメ化)ではないが、「友情パワー炸裂」というキャッチコピーが相応しいと言わんばかりの活躍ぶりを見せてくれる。
なお本公演に登場するキャラクター・ヂヂは、文章だけでは判らない方もいるかも知れないが、三面怪獣ダダの幼年体というべきスタイルを持つキャラクターであるが、本家ダダとの関連(親子や親類縁者といった境遇等)は劇中はもとより、当日観客に配布されたプログラム代わりのチラシにも記載されていなかった。
なおラストのカーテンコールのみ劇中に登場しなかったウルトラマンが登場、全員集合の壮大なパノラミックな勇姿を見せてくれる。
ウルトラマンジョーニアス(『ザ☆ウルトラマン』(79・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19971117/p1))、ウルトラマンスコット、ウルトラマンチャック、ウルトラウーマンベスの『ウルトラマンUSA』(87・日本公開89・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100821/p1)トリオや、ウルトラマングレート、ウルトラマンパワード、ウルトラマンレジェンドがそこでのみ姿を現した。
レジェンドについては、コスモスとジャスティスが合体変身して怪獣と戦うシーンを設けても良かった気もするが。
再度言及するがここ十数年のアトラクションショーのレベルアップは目覚しく、今回のプレミアステージのような“究極像”とでも云うべき完成体の域に達したものを鑑賞できる事は大変嬉しい。こうしたものから舞台演劇、ミュージカルへと視野が広がり、観劇の習慣や楽しさを知ってもらえれば年季の入ったアトラクファンとしても喜ばしい。
それが熱烈なファンの多い『ウルトラマンメビウス』であるのがポイントだろう。『ウルトラマンネクサス』(04)や、『ウルトラマンマックス』(05)ではなく。
なお、これは余談になるが、夏に東京・池袋サンシャインシティで開催予定の定例行事『ウルトラマンフェスティバル2007』では、下期(8/11〜8/31)のライブステージとして『ウルトラマンメビウス外伝 〜奇蹟の不死鳥(フェニックス)現る!〜』なる演目が予定されている。
オリジナルキャストの出演は流石(さすが)にないと思うが、タイトルがタイトルだけに気になる。
これから暫(しばら)く、ウルトラシリーズの新作が製作されない分、こうしたイベント展開で“現時点最新のウルトラマン・メビウス”をフィーチャーした展開が続くことと思われる。
しかしオリジナルキャストを交えての企画は、今回で一旦終了かも知れない。
だが森次晃嗣は、カーテンコールの時に「来年のGW(ゴールデンウィーク)も中日劇場で会いましょう!」と挨拶したくらいだから、今回の大成功により新展開があるかもと期待させられる。
こうした充実した演目の新展開に期待しよう。
*文中敬称略
『假面特攻隊2008年号』「ウルトラマンプレミアステージ」関係記事の縮小コピー収録一覧
・ウルトラマンプレミアステージ パンフレット表紙&裏表紙、キャスト頁