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獣拳戦隊ゲキレンジャー 〜前半評・再UP!

獣拳戦隊ゲキレンジャー最終回 〜後半・肯定評!
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 来週日曜4月3日の『海賊戦隊ゴーカイジャー』(11年)#7「ニキニキ! 拳法修行」に、『獣拳戦隊ゲキレンジャー』(07年)の(変身能力を失った)ゲキレッド・漢堂ジャン(かんどう・じゃん)ことナベプロD-BOYS鈴木裕樹(すずき・ひろき)、ニャンコ先生もといネコのお師匠さんのマスター・シャーフー(声・永井一郎)が出演記念!
 とカコつけて(汗)、『獣拳戦隊ゲキレンジャー』前半評を再UP!


獣拳戦隊ゲキレンジャー』 〜前半評

ダン、ダン、娯(たの)しくなる

(文・内山和正)
(07年6月執筆)


 猫系の動物をモチーフにした『スーパー戦隊シリーズ』の枠をひろげる斬新で挑戦的なヒーローデザイン、『超獣戦隊ライブマン』(1988・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20110919/p1)・『忍風(にんぷう)戦隊ハリケンジャー』(2002・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20021112/p1)・『爆竜戦隊アバレンジャー』(2003・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20031112/p1)を思わせる正規メンバー3人の戦隊チームとライバル的な悪の人間たちという構図、拳法もの。
 そして、1年ぶりにシリーズに帰ってきた塚田英明プロデューサーの『燃える路線にしたい』という言葉に先入観をもちすぎてしまったのかも知れないが、初めのころの本作はなにかノレなかった。



 激獣タイガー拳を学ぶことになる主人公のゲキレッド=漢堂ジャンは、ジャングルで虎に育てられた野性児という設定。
 いわば『ターザン』(原作は1912年。1918年にサイレント映画化され以後数十回も映画化されてきた古典)や『仮面ライダーアマゾン』(1974・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20001008/p2)のようなもの。
 それゆえ妙な言葉を使ったり社会の慣習がわからなかったりするのだが、日本語が充分にわかったり結構普通に生活できる。


 その辺は『お約束』とも言えるが既存の作品が不自然さは残しながらも設定をいかしていたのに較べ、こちらは開き直って都合の良さ・おバカさだけを利用している感じ。
 それは魅力でもあるのだが気になると反発も感じてしまう。ジャンがパンダたちとたわむれている初登場シーンからしておふざけが過ぎ、ノレるかどうか決めてしまうように思う。


 このような非常識キャラがいる場合、チームに包容力のある常識人がいてバランスをとるとか、まきこまれていく善人がいるという形が多いと思うのだが、本作の場合、激獣ジャガー拳の使い手・ゲキブルー=深見レツは技の美しさを大切にする(のちに芸術家と語られる)自信家で協調性はあまり高くない。激獣チーター拳の使い手・ゲキイエロー=宇崎ランは気まじめで根性一直線。2人ともまだ修業中でジャンをうけとめきれる余裕がない。
 この2人の性格設定はのちのちむしろ魅力となっていくのだが序盤においては熱さよりも冷めた感じをドラマにあたえてしまっていた。


 バトルにしても敵だから戦うという程度で、オープニングナレーションで『たたかう宿命の戦士たち』と言っているほどの対立関係は感じられないし、掃除の練習で特訓をおこない敵をうちやぶるなどカンフーものの定番的趣向であるにしても定番すぎて安っぽく、前作『轟轟戦隊ボウケンジャー』(2006・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070108/p1)が本編よりも主題歌のほうがワクワクしたように、本作も主題歌ほど燃えられなかった。
 これでは塚田プロデューサーの前2作『特捜戦隊デカレンジャー』(2004・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20041106/p1)・『魔法戦隊マジレンジャー』(2005・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060313/p1)のほうが余程燃える。


 とはいえ、『生活(暮らし)のなかに修行あり』と主張し掃除などで特訓することは幼年層にはわかりやすいだろうし、ジャンのキャラクターが個性的で活きていることは確かなのだから、自分が物足りなくても子供番組としては成功だろう。そう考えた。



 その気持ちが変わってきたのは第4話(作中表記では『修行その4』)「ゾワゾワ! 五毒拳」(脚本・横手美智子 監督・渡辺勝也)からだった。
 敵に五毒拳(ごどくけん)という強敵の5怪人集団が早くも登場。
 さらに敵集団『臨獣殿』の首領で主人公たち同様若き拳士である臨獣ライオン拳の使い手、黒獅子リオにも変身できる理央(りお)が主人公たちの前に姿をあらわす。
 ゲキレンジャーの師であるマスター・シャーフー(二足歩行する人型の猫の風貌を持つ)の弟子として激獣拳ビーストアーツを学んだが、相対する流派・臨獣拳アクガタに移った彼がシャーフーを抹殺しようとし、怒ったジャンは秘められた能力を発動して理央と真っ向勝負する。


 演じる2人が同じ演劇集団(大手芸能プロダクション・渡辺プロ傘下のワタナベエンターテインメント所属の若手男性俳優集団・D-BOYS(ディーボーイズ)*1)の友人同士とわかって見ると余計たのしめる戦いだ。


 物語はそれで終わらない。毒を注入されたジャンの命を賭け、ゲキレンジャーは短い時間内に解毒剤を五毒拳から奪い取る戦いをしなければならなくなる。
 燃えるドラマになってきたし、これからも燃えられそうな期待が持ててきた。


 次の回からは五毒拳は結局パターンどおりに、ひとりひとり(一部例外あり)でゲキレンジャーにいどんでくる。そうなると他の怪人たちと大差なく残念だが(集団でおそってくる彼らをなんとかしてひきはなしたりして一人一人減らしていくという展開を期待していたし、そうでなくとも彼らが一人ずつ襲ってくる理由をつくってほしかったが)、この五毒拳以後番組が動き出した。


 ゲキレンジャー側のドラマでは、ランの努力が実をむすぶ5話「ウジャウジャ! どーすりゃいいの?」(脚本・横手美智子 監督・竹本昇)、ランのきまじめによる固さという弱点を克服させようとする11話「ウキャウキャ! 獣拳武装」(脚本・横手美智子 監督・竹本昇)、ジャンの忍耐力のなさをおいしい料理ができるまで待たせることで身に付けさせる8話「コトコト…ひたすらコトコト」(脚本・荒川稔久 監督・中澤祥次郎)、……とキャラクターの性格と修業を結びつけていかしたドラマづくりがおこなわれるようになる。


 五毒拳がたおれたあとからはシャーフーとおなじく激獣拳の拳聖とよばれるあたらしいマスターたち(動物モチーフの着ぐるみキャラ)が数話に一人の割で登場、ゲキレンジャーたちにあたらしい技をおしえていく。
 着ぐるみキャラの増員は、『仮面ライダー電王』(2007・首都圏などでは同日直後に放送されている)の主人公にとり憑く怪人イマジンたちと似た趣向だが、それぞれ動物の顔とカンフー映画の人気俳優たちをもじった名前を持つキャラクターたちでそれぞれの性格のちがいもいきている。



 いっぽう、臨獣殿側にも動きがある。五毒拳のなかに理央がほしがっている真毒(まどく)を隠し持つものがおり、リオと彼を愛するラブ・ウォリアー臨獣カメレオン拳の女幹部メレにはそれを探す必要が生じる。
 本作の怪人『リンリンシー』は古代の道なかばで死亡した拳士が仮の命をあたえられて生き返ったもののため、理央の手下ではあってもすべてが理央に従順なわけではない。理央が真毒の所持者を狙うとともに、理央への謀反(むほん)をたくらむ者もいて……という展開となる。


 その謀反人が所持者でもあったという真相は単純な構図だが、自分がゲキレンジャーの攻撃をうけることで体をきたえ、理央の敵をたおす力を得ようとするメレの姿は圧巻で、この9話「ケナケナの女」(脚本・吉村元希 監督・諸田敏)は完全にゲキレンジャー側が脇役にまわっている。
 真毒とは死者に本物の命をあたえるもので、理央は三拳魔をよみがえらせて教えを乞おうとしていた。仮の命しか持たぬメレは本物の命とひきかえに理央をうらぎるようそそのかされるが、自分の復活を犠牲にしても理央の目的を果たさせようとする。その殉愛ぶりがこころにのこる。


 メレを演じる平田裕香(ひらた・ゆか)さんはベテラン女優。
 6〜7年前テレビでたびたびお見かけしていたころの不思議少女風味がイメージとしてのこっていたため、セクシー系悪役を演じている今回は随分印象がかわって違和感があったが(もっとも某知人によると前からセクシーな印象があったとのこと)、セクシー系女性幹部はあまり好きではない筆者にとってもこれくらい人物像を魅力的にえがいてもらえれば反対もできない。


 強くなることが望みの理央は空の拳魔・臨獣ホーク拳の使い手カタをよみがえらせるものの、カタのおしえる修業とは殺しあうこと、つまりはじめから弟子に師をたおす力がなければ殺されてしまう。
 理央とメレ対ゲキレンジャーの人間同士の戦いという形式をもちながらも、理央やメレにとって当面の敵はゲキレンジャーよりも謀反人や師という自陣営側の存在であるという構成。
 いわば、直接対決よりもゲキレンジャーが拳聖に、理央とメレが拳魔にきたえられていく拳士としての『成長』を競い合うコンセプト。これにより本作はこれまでの人VS人モノとはちがう独自の魅力をはなちだした。


 ゲキレンジャー中心回・臨獣殿中心回のほか、ゲキレンジャーに時間的比重がかかっている回でも、ややゆるめの内容のときに臨終殿側に重大な変化がもたらされていたりもして、いまやほぼ毎回がインサイドストーリーという目のはなせない作品となってきた。
 さらに、拳聖7人と拳魔3人はもともとは仲間であったのが判明し、『悪魔に魂を売った友』という戦隊と敵幹部が元同級生であった『超獣戦隊ライブマン』的な題材も内包。


 悪になった自分についてこなかった恋人シャーフーへの、海の拳魔・臨獣ジェリー拳の女幹部ラゲク(くらげモチーフ)の怒りにより、ドラマはまた新たな局面をむかえる。
 邪悪なラゲクはメレの理央への愛を利用し、自分のシャーフーへの復讐のための使い捨てにしようとする。能力をつかいすぎてメレが死ぬ間際なのを見た理央は強大な臨気を噴出してとらわれの身から脱出、メレを救出する。
 おそらく彼自身もハッキリとは認識していないメレへの愛ゆえだろうが、ラゲクはそれを『つよいメレへの嫉妬(メレが目的を達することへの)』だと誤認(?)させようとする。この事の真相。そしてこれからラゲクの介入で2人の関係がどうなっていくのか楽しみである。



 あと気になったことを少し。


(1)『デカレンジャー』の石野真子(いしの・まこ)などにつづいて、やると思った塚田プロデューサーのベテラン女優起用第3弾は伊藤かずえさんだった。
 また昼ドラの主演女優だ!!(十数年前の『アイとサムの街』(1989・角野栄子原作・1991年に昼ドラ「花王 愛の劇場」でTVドラマ化)では子役が主役のためおば役で連名で主演。翌92年の『私の生徒は12人』で単独主演。近年では2005年の『聞かせてよ愛の言葉を』で主演)
 子役時代、『仮面ライダーストロンガー』(1975)・『秘密戦隊ゴレンジャー』(1975)にエキストラ出演していたことは有名芸能人の過去を紹介する番組で紹介されて有名だが、実際にはたくさんのヒーローものにエキストラ出演されていたとのこと。
 青春時代に多数出演した80年代の『大映ドラマ』は、江連卓(えづれ・たかし)氏・大原清秀氏・佐伯俊道氏といったヒーローもののライターたちが執筆。つくづくヒーローものに縁の深い女優さんなのだ。
 伊藤さんの演じる激獣レオパルド拳・真咲美希(まさき・みき)はシャーフーの弟子であり、ゲキレンジャーがアスリートとして所属しているスポーツメーカー『スクラッチ』の重役。以前のドラマなら独身のキャリア・ウーマンという感じだっただろうが夫も子供もいるとの設定。


(2)その美希の娘・なつめは小学生。演じる桑江咲菜ちゃんはある本によると15歳とのこと。本当なのか? 子供としては大人っぽいが、15歳とするとやたら子供っぽい。
 それはともかく登場回数が少なすぎる。もっと出してほしい。


(3)拳聖のひとり、二足歩行する象・エロハンこと激獣エレファント拳のエレハン・キンポー。セクハラが問題となっている時期に子供番組の師たるものがこんなにスケベでいいのだろうか?


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2007年初夏号』(07年6月17日発行)〜『仮面特攻隊2008年号』(07年12月29日発行)所収『獣拳戦隊ゲキレンジャー』前半合評3より抜粋)


[関連記事]

電影版 獣拳戦隊ゲキレンジャー ネイネイ!ホウホウ!香港大決戦

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20080803/p1

*1:D-BOYSには、『ウルトラマンメビウス』(2006・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070506/p1)の主役ミライ隊員役の五十嵐隼士(いがらし・しゅんじ)、『仮面ライダー電王』(2007・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20080217/p1)の仮面ライダーゼロノス桜井侑斗(さくらい・ゆうと)役の中村優一、『仮面ライダーキバ』(2008・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20080225/p1)の主役・紅渡(くれない・わたる)役の瀬戸康史(せと・こうじ)なども所属。