假面特攻隊の一寸先は闇!読みにくいブログ(笑)

★★★特撮・アニメ・時代劇・サブカル思想をフォロー!(予定・汗)★★★ ~身辺雑記・小ネタ・ニュース速報の類いはありません

Nippon2007(第65回世界&第46回日本SF大会)に見る外人オタらの同じ匂い

『昭和レトロ冬まつり』 ~月光仮面・黄金バット・帰マン・キカイダー・マッハバロン・バトルフランス・メタルダー・磁雷矢! 昭和特撮俳優座談会・撮影会 2019年師走!(5/6、UP予定)
『企画展 スーパー戦隊レジェンドヒストリー ~ゴレンジャーからリュウソウジャー、そして未来へ~』 ~神秘・恐怖から親近感・コミカルへ。日本特撮の画期にして文化・歴史となった「戦隊」!
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Nippon2007(第65回世界&第46回日本SF大会)』に見る外人オタらの同じ匂い

(07年8月30日(木)〜9月3日(月)開催)


(文・T.SATO)
(07年12月執筆)


 神奈川県民である筆者にとってはご近所でもある横浜(ドア・トゥ・ドアで1時間)での開催なので、真夏〜残暑の盛りに(当日は少し涼しくて助かった)、今回は特別例外イベントのために数万円(!)もするという高い参加費を払って、同人誌販売ブースに出店。
 ただし、勤め人だから全日参加ではなく、8月31日(金)〜9月2日(月)のみ。毎度SF大会では売れない売れない。古い作品を扱った同人誌しか(笑)。


 ……まあそんな私的なことはドーでもイイのだが、筆者のようなシニカルな人間にとっては、気になったことが一点。


 世界SF大会ということで外人のSFオタたちも多数来日。
 しかし、その外人たちには我々日本のオタたちと同じような匂いが……。


 もちろん物理的な匂いのことではない。見た目の風貌やそれから連想されるナイーブ(内気)そうな気質のことである。背スジ伸びてなくて輪郭亡羊、周囲の空気・空間もドヨ〜〜ンとゆがんでいるような(笑)。


 コレまた私事で恐縮だが、同じく別口で日本のSF大会に毎年参加していたという畏友に偶然遭遇。その彼ほか数名と参加期間中の毎晩餐の度に、彼も評していわく


 「明らかに六本木とかにいるスマートな外人たちとは人種が異なっている!」。


 もちろんコレは別に彼らをバカにしているワケではない。我々も同類ではあるのだし。……まあホメてもないかもしれないが(笑)。


 また、その彼の観察するところ、


 「白人ばかりで黒人がほとんどいない。いわんやヒスパニック系をや(大意)」。


 筆者個人はSF至上主義者ではない。
 しかしそのこととは別に、SFにおいて描かれたものが高みある普遍性に到達・抵触するものであったとしても、それを理解し享受する側である読者の側の問題。
 筆者はマルクス主義者ではないが、マルクスの云う下部構造(歴史・経済のこと)。


 別に金持ちブルジョワやインテリではなくともアッパーミドル(中流以上)で、上品ではなくとも最低限の安定した家族、経済的ひいては精神的な余裕がなければ、それにさらに加えてストリートには出掛けないインドアなイケてない系でなければ(笑)、SFファン(やサブカルチャーのジャンルファン)などという人種にはならないものなのかもしれない。


 もしもスラム街に生まれて、育ちの悪い同世代とのサバイブ・ポジショニングに明け暮れて、家の中でも両親がナベかま飛び交うようなケンカをくりひろげていたならば、心が安まらない状況に育つなら、SF小説などという一応の知的高等遊戯などに喜びを見出すこともなく、ヒマ人か軟弱性格タイプの余興にしか見えないことだろう。
 外人とはいってもほとんどアメリカ人だろうが、そんな貧富やら背景やら性格類型やらをも筆者らは垣間見た。
 しかも向こうでのジャンルの歴史も日本より長いし、長期の海外旅行もできるご身分だから、還暦前後の太めでメタボな高齢者が多い!(高度大衆消費社会下でのジャンクフードとジャンクカルチャーの関係なんてのもあったよね?・汗)


 とはいえ、海外(欧米)でもSF全般、特に中核たるSF小説の商業的苦戦、SFジャンルの拡散、ファンタジーなどの代替ジャンルの勃興による若年世代が減少・流入してこないことによるSFファンの高齢化などを危惧し、それに対処するため若年層・初心者をゲットするためのジュブナイルやマイルドな作品、隣接ジャンルの取り込みなどの改善案・代替案を模索する企画・トークが催されていたり(英語企画でバイリンガル企画ではなかったようだが)、ジャンルに対する問題意識を抱えている企画パネラーがいたことも、SF大会のカタログや後日の『SFマガジン』掲載のSF大会パネルレポートから確認できた……。


 かたや日本側の企画は、美少女アニメ涼宮ハルヒの憂鬱』(06年)のエンディング曲「ハレ晴レユカイ」(ASIN:B000EPFRDG)をみんなでおどろう! みたいな(笑〜もちろんネタとして極論化して云ってます)。


 欧米においても、「SF冬の時代」である日本におけるSF状況と、事態は本質的には変わらないようだ。
 そしてそれは、我ら(初出媒体:特撮同人誌)が棲まう「特撮」ジャンルの状況〜一般層や隣接層への拡散・流通というプラス事象と同時に、良くも悪くも中核を担うべきコアなマニアの若年層の数やジャンルマインドの減少というマイナス事象〜とも相似形であるともいえる。


 要はふだんから本誌の主要メンバー(全員ではない)が主張している、昨今の「特撮」ジャンル自体が抱える問題点に我田引水・牽強付会してみせているワケだが(笑)、したり顔でため息まじりに嘆いてみせて事足れり、で終わりではなく、この問題に対する代替案・善処策については、本誌の次号以降においても積極的に論考、扱っていくつもりだ。


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2008年号』(07年12月29日発行)『近作評EXTRA』より抜粋)


後日付記:


 コレらはなにもSF大会にかぎった話ではない。


 2006年3月中旬、東京都内、都の西方、中央線某駅徒歩10分の会場で開催された『美少女戦士セーラームーンオンリーイベント同人誌即売会)に、友人の同人屋の売り子手伝いのために出掛けたところ(そーいうオタ友だちがいて、しかも出掛ける筆者も筆者だけど・汗)、やはり92年のTV放映開始以来、15年近い歴史をほこる作品だけにファンの高齢化も著しく……。


 ではなく(笑)、やはり超絶人気をかつてほこったビッグネーム『セラムン』だけあってか、外国人の男女オタもチョビチョビ来場(在日米軍横田基地(横田飛行場)が比較的近いゆえであろうか?)。それはイイのだけれども……。
 過半が明らかに十代の外人男女オタ。しかも、いかにも教室のスミっこにいそうな、服装も顔つきもジミで控えめでアカぬけない、運動神経や体力はなさそうな、しかし繊細ナイーブ、心優しそうなコたちで……。ウ〜ム。


 もちろん筆者自身のことは棚にあげるけど(汗)、海の向こうでも、オタには一定の傾向があるな……と。日本のオタクに相当するナードやギークという名の人格類型の実物をそこでも見てしまいましたとサ……というお話でした。


来週日曜日付で、『SFマガジン』連載・宇野常寛ゼロ年代の想像力」 〜と、浅羽通明(あさば・みちあき)のミニコミ流行神(ハヤリガミ)』での同連載批判――&東浩紀(あずま・ひろき)『ゲーム的リアリズムの誕生』批判&大塚英志(おおつか・えいじ)批判――を勝手に紹介 〜をUP予定!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20080309/p1


[関連記事]

げんしけん」&「ヨイコノミライ」 〜2大ヌルオタサークル漫画を読む!・オタクの性格類型

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20071021/p1

特撮意見④ 特撮ジャンルの独自性・アイデンティティとは何か!? 〜SFや文学のサブジャンルではない特撮

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060409/p1

「特撮NT」06年11月号読者欄に骨ある意見を発見!

(文・T.SATO)
 06年10月1日の某同人誌即売会のブースにて、売り子手伝いの畏友の特オタ仲間から、雑誌「特撮ニュータイプ」最新号(06年11月号・asin:B000IJ6TX0。10月1日(9月30日?)発売)の投稿欄(P.92)に、今どき珍しい(笑)意見らしい意見が載ってるよ、との情報を聞く。
 イイ歳して(筆者と同い年だけど・笑)、よくそんなトコまでチェックしてるナと関心しつつ(アキレつつ・笑)、内容の概略を聞き、数日後に会社帰りに書店でチェック。


 なるほど、これは面白い。
 また内容とは別に、きょうびこのテの意見を掲載した、投稿欄担当者の裁量(気まぐれ?)にも驚く。このテの雑誌は、ボキャ貧(ボキャブラリー貧乏)の萌えキタ言語か小学生の感想文のような毒にも薬にもならないウスい投稿しか載せる気ナイんだろ、と思ってたものだから(笑)。綴(と)じ込み応募ハガキのウラの設問の狭い余白の、当該誌への感想・要望を転載してるだけじゃね? てゆー(失礼)。
 いやまぁ商業誌の限定されたスペースでの読者投稿の場合、濃くてクソまじめで長けりゃイイってなモンでも、ガチンコでやりあってりゃイイってなモンでもないけれど……。でもまあこのテの投稿も1回ぽっきりの掲載であろうネ。それとも、兄弟誌の特撮マンガ誌「特撮エース」休刊(asin:B000HT1XQE)についても、言及されてたから載せたとか(笑)。


 試しにネットで検索かけても、当該投稿はネタにもされてないようなので不憫(オレの検索の仕方がヘタなのか?)。こんな弊ブログを通りすがりでなく読んでるような奇人変人は、意見めいたものがスキな御仁も多いかと思うし(?)、ゆえに誰も言及しないならば及ばずながら筆者が紹介。ただ、書籍の流通の回転サイクルが速いこんにち、もう店頭に置いてある書店もマレかな? ヒモやビニールで立ち読みできない店も多そうだしナ。


 勝手にかいつまんで要約させてもらえば、「特撮」というジャンル自体のアイデンティティの問題だ。
 「ヒーローは世界が真に平和になったら存在理由を失うのでは?」という逆説にしてアポリア(難問)。
 これが特撮ジャンル(特撮雑誌)にも、そのまま相似形で当てはまるのでは? という設問である。
 すなわち、ジャンル自体がメジャーになって、メインストリームのマスコミでもジャンル情報が容易に入手できるようになった場合に、もしくはネットで同好の士の居場所が容易に確保できるようになった場合に、特撮雑誌の存在価値はあるのか? という動議。
 ただそのあと彼の論は、ジャンルやジャンル雑誌といったゲットー(居住区域)が消失したときこそ、「特撮」が一般に定着し、一般評価が問われるときである、というように論理が展開していく……。
 

 まぁ彼の意見はそれなりにリッパなものだし、一理も二理もあるので敬意も表するが、しかし問題もある。というか楽観的にすぎるとのツッコミも可能なのだ。
 なぜなら彼が例に出した「存在理由を失うのでは?」という難問は、ジャンル雑誌のみならず、ジャンルそれ自体にも当てはまることでもあるからだ。


 かぎりなく拡散して、隣接ジャンルとの境界を消失して一般化していくことは、一見フランクで公明正大なようでいて、「特撮」ジャンルという存在が「存在理由を失う」ことでもある。
 「特撮」というジャンルに相当する現行の作品群が、消滅してしまうというのではない。それは残る。しかし、その特質やアイデンティティ・輪郭は、受け手側の受容意識にしろ、作り手側の目的意識・方法意識にしろ、曖昧模糊・あやふやなものとなっていく。
 その存在は、よくて「SF映画」や「アクション映画」のサブジャンル・下位ジャンルとしてのみ許される。


 いや別に、彼ひとりの論が特別に不備があったというワケではない。手前ミソで恐縮だが、弊サークルにてここ数年、研究・発掘してきた通り(このへんの成果も後日、じょじょにネット上にUP予定)、このような論法のヒナ型は、実のところ第1世代特撮ライター(主に池田憲章中島紳介)によって、80年代前半から特撮雑誌で提唱されてきたことでもあるからだ。
 すなわち、怪獣プロレスに頼らない「特撮」。「特撮」それ自体を目的とはしない、「SF」なり「人間ドラマ」の手段としての「特撮」。


 一見もっともらしいのだが、はたしてこの考え方は正しいのや否や。
 いや間違っているとはいえないまでも、危うい点や「特撮」ジャンル自体をヤセ細らせていく毒素や危険性をハラんでいるかもしれない可能性に、思いを馳せて論理を展開してみるのも一興だ。


 今回の動議で前提とされていた、
・「特撮」(あるいは「オタク趣味」)
 と、
・「一般映画」(あるいは一般人の趣味)
 という二項対立の前提は、便宜的なモノサシとしてはあってもよいのだが、はたして普遍的で常に使えるモノサシであったのか?
 「一般映画」としてひとくくりにされるカテゴリーにも、実は「文芸映画」なり「SF映画」なり「推理映画」なり「コメディ映画」、「社会派映画」、「スリラー映画」に「パニック映画」、「西部劇」、「ヒーローもの」なりに細分化できて、しかもその中でのジャンルの特質に基づいた何らかの独自な作劇法なりお約束なり評価尺度があるのではなかろうかと……(はざまのジャンルや、既存のカテゴリーにくくれないジャンルも、逆説的に抽出された何らかの独自な作劇法なり評価尺度が滲み出てくるので本質的には相似形)。


 70年代後半〜80年代のような「『特撮冬の時代』はもう来ない」と、中島紳介は特撮雑誌『宇宙船YEAR BOOK 2006』(ISBN:4257130865)の2005年回顧で語る。
 この意見にも一理は認めるが、しかしザルっぽさ・取りこぼし感があるのも否めない。
 一方で新世紀に入ってからのミレニアム『ゴジラ』シリーズは観客動員の低下に悩み、シリーズは打ち切りの憂き目にあう。平成『ウルトラ』シリーズも、東映の平成『ライダー』『スーパー戦隊』に商業規模でも視聴率でも観客動員でも圧倒的な差を付けられているのが実際の現実でもあるからだ。
 「特撮」という大きなくくりではともかく、「怪獣」や「巨大変身ヒーロー」というジャンル内ジャンルの将来は楽観を許さない。消え去り絶滅するというのではないが、老兵は死なずただ消え去るのみ……ってそれじゃ絶滅と同じだナ?(笑) 今後も明確な将来ビジョンと周到な計算に基づいた意識的な改革なり商業的勝負がかけられないかぎり、便宜的にこの言葉を使うが大衆が観る「一般映画」の範疇でも、児童文化の範疇でも、ジリ貧が予想されて縮小再生産の途しか見えてこないのだ。
 

 で、そのへんの「特撮」というジャンル自体の将来への方策・処方箋の話題は次なるステップの問題でもあるので、また別の機会にまわすとして、まずはその前段階である「特撮」ジャンルそれ自体のアイデンティティ・特質について、個人的には明らかにしていきたいと考える。


 それは具体的には何であるのか? ……ということは、この誌面では手をヌイて書き下ろさずに、重ねて手前ミソにも、当該の問題について論じた過去記事へのリンクを最後にはることで、シメとさせていただきたい(笑)。


 でもこの件(くだん)の「特撮ニュータイプ」06年11月の読者欄投稿者の御仁は、個人的には興味深いなぁ。ペンネームだろうから(?)、ここに記述しても問題ナイと思うけど、栃木県の六道要さん、ウチのサークルの同人誌に何か書いてくれへんか?(オイ・汗)


特撮意見④特撮ジャンルの独自性〜アイデンティティとは何か!?
 http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060411/p1


(了)

特撮意見⑦ フジテレビ戦略に見るウルトラシリーズの可能性

[特撮意見] 〜全記事見出し一覧
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フジテレビ『電車男』戦略に見る『ウルトラ』シリーズの可能性


(文・小泉明彦)(05年7月執筆)
 昨年(04年)の『世界の中心で、愛を叫ぶ』(04年)に続いて、今年(05年)は「電車男」(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070617/p1)が恋愛資本主義((C)『電波男』(本田透三才ブックスISBN:4861990025))の新たなトレンド。
 韓流ブームの次は華流ブームを仕掛けようとする業界の動きといい、主婦やOL、女子中高生の乙女心を単なる「札束」としか見ていない、広告業界&テレビ会社の商魂逞しさには脱帽です(セカチューヨン様同様、来年の今頃にはすっかり忘れ去られている気が……)。


 04年度末にはネットのやりとりをまとめた(&都合の悪い箇所は素知らぬ顔で削除した)新書が刊行され、たちまちベストセラーのトップに躍り出る大ヒット(……もっとも、新聞や雑誌の書評はいずれも芳しいものではありませんでしたが……(笑))。
 年明けには劇場版の公開日が決められ、突貫工事で一気に制作。GW(ゴールデンウィーク)の劇場版公開に合わせた3社5誌による競作コミック化、そしてTVドラマの放映開始と、「鉄は熱いうちに打て」と言わんばかりのスピーディーな展開には広告業界が主導するメディア戦略ならではの「うさん臭さ」が感じられますが、こういった山師(やまし)的なフットワークの軽さこそ、本来のターゲットである子供たちを無視した『ウルトラマンネクサス』(04年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060308/p1)の不振で「原点回帰」せざるを得なかった円谷プロに見習ってほしい気がします。


 『ネクサス』は『新世紀エヴァンゲリオン』(95年)の碇シンジを彷彿とさせる主人公の設定が特撮ファンに物議をかもしましたが、『鉄甲機ミカヅキ』(00年)や『鉄人28号』(05年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060307/p1)の失敗からみてもわかる通り、どんなに表面だけ繕っても『エヴァ』の「パチモノ」である限り、あれだけの大ヒットを生み出すことは絶対に難しいと思います
 (『エヴァ』の影響が指摘されることの多い『踊る大捜査線』(96年)や『仮面ライダーアギト』(01年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20011108/p1)にしてみても、実際はあくまでディテールorパロディ面にとどまっており、基本コンセプトは全くの別物である前者や、実写版『エヴァ』を意識して新たなライダーワールドの地平を切り開こうとした意欲作である後者など、文芸陣&スタッフが考えに考え抜いて企画・制作したからこそ、あれだけ新鮮な驚きを多くの人々に与え、社会現象になるまでの大成功を収めたのではないでしょうか)。


 やはり、不特定多数の人々を引き付けるにはそれまでの作品にはない新鮮な「何か」が必要ですし、70年代のカンフー・マフィア・実録路線・オカルト・動物パニック・SF映画の大ブームにしてみても、亜流作品があれだけ大量に劇場公開されても結局生き残ったのはブルース・リー、『ゴッドファーザー』(72年)&『ゴッドファーザーPARTⅡ』(74年)、『仁義なき戦い』五部作(73〜74年)&『仁義の墓場』(75年)、『エクソシスト』(74年)、『ジョーズ』(75年)、『スター・ウォーズ』(77年・日本公開78年))の「本家」だけだったことから見ても、ヒット作にあやかろうとした露骨な便乗企画ではかえって客足を遠ざけることになりかねません。


 『ウルトラマンマックス』(05年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060311/p1)は久々のM78星雲出身のウルトラマンの登場、金子修介三池崇史実相寺昭雄庵野秀明各監督ら大物演出陣の起用、黒部進さん&桜井浩子さんの大物OBレギュラー出演、ネットによる人気怪獣対戦要望リクエスト、『仮面ライダースーパー1(ワン)』(80年)第45話「君の考えた最優秀怪人ショオカキング」を彷彿とさせる怪獣イラスト募集など、各世代のファンを様々な面から獲得し、取り込もうとする意欲的な制作体制&宣伝活動が行われていますが、ここからさらに一歩踏み込んで児童や小学生をターゲットに、第1〜4期(平成)ウルトラシリーズの作品世界を生かした宣伝展開を行えば、番組の話題性がさらに高まるのではないでしょうか。


 ドラマ版『電車男』(05年)放映時にはドラマ版の第1話で劇場版とドラマ版の主人公がさりげなく共演している上に、ドラマ版第1話の冒頭が劇場版のラストとリンクしていることがテレビ雑誌で明かされ、かなり話題となりましたが、この方式をかつてのウルトラ兄弟の大設定に応用すれば、円谷プロが生み出した40年に渡る「過去の遺産」をもっと生かせるように思えます。
 『踊る大捜査線』や『警部・古畑任三郎』(93〜03年)など、フジテレビの人気刑事ドラマ作品はTVシリーズ・TVスペシャル・劇場版のストーリーorキャラクターを巧みにリンクさせてファンの興味を持続させ、作品世界をつなげる裏設定や仕掛けを番組サイトやテレビ雑誌で明かすことによって、かつての『ツイン・ピークス』(90〜91年)や『X−ファイル』(93〜01年)をしのぐマニアックなファンを開拓することに成功。映像ソフトや関連書籍などのマーチャンダイジングはいずれも高い売上げを誇っています(『スウィング・ガールズ』(04年)DVDでも、本編では描かれなかった吹奏楽部員たちのお茶目なサイドストーリーが映像特典として収録されていたとか)。


 こういった戦略は『スター・ウォーズ』と『スタートレック』(TV版66年・映画版79年)の二大SF大作の大成功によってすでに海外でも行われており、長い歴史を誇るアメコミ業界でもDCコミックやマーベルコミックのキャラクターが作中世界を共有し、作品や出版社の垣根を越えて共闘するイベント要素の強い作品を発表することで世代間のブランクをとりはらい、劇場用映画やTVアニメとの相乗効果によって新たな世代のファン層を獲得することに成功していますし、40年の長きに渡って活躍してきたウルトラ戦士たちのキャラクターや設定を生かしたメディア戦略が展開されないのは、あまりにももったいない気がします。


 現在の児童誌は新作ウルトラの情報しか掲載されていないようですが、『マックス』は過去の人気怪獣たちの再登場を売りにしていますし、人気怪獣が再登場する『マックス』の世界観を生かして、雑誌に新旧怪獣のデータを比較掲載して、ウルトラ戦士たちが自分たちの過去の経験をもとにマックスにアドバイスするオリジナル記事を載せれば、子供たちはマックスを影から支える歴代ウルトラ戦士の頼もしさを再認識するのではないでしょうか。
 同様に、歴代ウルトラ戦士たちの怪獣たちとの名勝負を誌上再録したり、名作エピソードのダイジェストをコミカライズで発表すれば、過去のウルトラシリーズに興味を持った子供たちがレンタルショップで旧作に接することによって新たなブームが起こる可能性もあります。


 巷が第3次怪獣ブームに湧いていた70年代末期〜80年代前半。ビデオデッキはまだまだ庶民には高値の花でした。ビデオショップのレンタル料も1〜2千円台が当たり前の時代。小学生の自分たちは東宝特撮映画やウルトラシリーズのビデオをレンタルできるはずもなく、今はなきケイブンシャの『ウルトラマン大百科』(78年・ISBN:476691564X)『続・ウルトラマン大百科』(79年・ISBN:4766915658)『ウルトラ怪獣対決大百科』三部作や『怪獣もの知り大百科』を仲間たちとまわし読みしては、まだ見ぬ「幻の名作」へのイメージをふくらませ、学校の休み時間や昼休みには本に書かれていた「名勝負」を仲間内で再現(笑)していたものでした。


 第1〜3期ウルトラシリーズでは、歴代のウルトラ戦士たちが最強怪獣・宇宙人を相手に後の週刊少年ジャンプマンガを彷彿とさせる熱いバトルを展開していました。
 『ウルトラマン』(66年)のベムラーネロンガ・バルタン星人・レッドキングゴモラメフィラス星人ゼットン
 『ウルトラセブン』(67年)のエレキング・キングジョー・ガンダー・ギエロン星獣クレージーゴンガッツ星人パンドン
 『帰ってきたウルトラマン』(71年)のアーストロン・タッコングツインテールグドンベムスター・ムルチ・ナックル星人&ブラッキング
 『ウルトラマンA(エース)』(72年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070430/p1)のベロクロン・バキシム・ブロッケン・エースキラー&バラバ・ヒッポリト星人・ジャンボキング。
 『ウルトラマンタロウ』(73年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20071202/p1)のアストロモンス・コスモリキッド&ライブキング・キングトータス&クイントータス・バードン・ムルロア・テンペラー星人タイラント
 『ウルトラマンレオ』(74年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20090405/p1)のレッドギラス&ブラックギラス・ツルク星人・ガロン&リットル・プレッシャー星人・アクマニア星人・マグマ星人ババルウ星人・ブラックエンド。
 『ザ☆ウルトラマン』(79年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19971117/p1)のシーグラ・タフギラン&タフギラス・オプト・ゲラド・ジャニュールⅢ世・グモンス・ヘラ=ウマーヤ。
 『ウルトラマン80(エイティ)』(80年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19971121/p1)のクレッセント・メカギラス・サラマンドラ・ギマイラ&ダロン・ガモス・ゴモラⅡ・ザキラ・プラズマ&マイナズマ……
 (余談ながら、過去の怪獣たちを合成させたジャンボキングとタイラントのデザインは賛否了論ありまして、ジャンボキングはベロクロン・バキシム・ブロッケン・バラバ。タイラントゴモラゼットンエレキングギエロン星獣ベムスター・ブラックキング・ベロクロン・バラバを組み合わせてほしかったという意見が圧倒的多数でした(笑))。


 フジテレビは新作ドラマをオンエアする際には、必ず主演タレントをバラエティー番組に立て続けに出演させて番組をアピールするだけではなく、タレントの過去の主演ドラマを昼の時間帯に再放送することによって、出演者の認知度をお茶の間に浸透させる効果的な宣伝活動を行っていますが、この方式をウルトラワールドに生かさない手はありません。
 すでに『アギト』放映と連動させた『仮面ライダーSPIRITS』(ISBN:4063490548)連載&歴代ライダー紹介記事という成功例がありますし、DVDの売上げが落ちるために過去のウルトラシリーズの再放送ができないのであれば、児童誌やコミック誌の誌面を積極的に用いて児童や小中学生にウルトラワールドの魅力を伝えるべきではないでしょうか。


 現時点(05年)では封印されているウルトラ兄弟やウルトラの国の設定も、今の子供たちは『ハリー・ポッター』(01年)や『ロード・オブ・ザ・リング』(01年)の異世界ファンタジーに親しんでいる世代ですから、かえって新鮮味を感じるように思えます。
 タロウの愛犬ラビドッグも昨今の愛玩犬ブームを先取りした感がありますし、ソフト化の時代である昨今の風潮や、放映中止騒動で判明した女性視聴者の『ウルトラマンコスモス』(01年)の人気の高さから見ても、超獣と戦う一方で弱いものいじめをする子供たちを諭すエースや、おとなしい怪獣を生き返らせて宇宙に運ぶタロウ、学校の先生になって日常世界で子供たちを見守る80の優しさは、女児童にもかなり受け入れられると思うのですが……。


 また、今回のマックスのデザインは第1次ウルトラファンを取り込むためかセブンを彷彿させるデザインですが、それを逆手にとってセブンをマックスのM78星雲での修行時代の師匠という裏設定を作っても面白いのではないでしょうか。
 児童誌のコミカライズやオリジナル記事で、セブンが課す様々な試練をマックスがクリアしてウルトラ戦士の仲間入りを果たすまでを、兄弟子であるレオとの友情をまじえて描けば、第1〜2期ウルトラワールドとの作品世界のリンクも可能ですし、児童には事前に情報がインプットされているので、マックスのピンチにウルトラ兄弟が駆けつけるイベント編を放映しても全く違和感を感じない筈。
 それに今の子供たちは平成ライダーシリーズやジャンプマンガなどで複数のヒーローが共演する展開には慣れている反面、等身大ヒーロー作品しか知らない世代だけに、巨大ヒーローの代表である歴代ウルトラ戦士が一堂に会する姿はかなり新鮮に感じるのではないでしょうか?


 また、クラスメートのお兄さんから譲ってもらった『小学二年生』80年7月号付録『ウルトラマン80 ひみつじてん』の坂丘のぼる先生の名作『ウルトラマン80 サクシウム光線物語』では、宇宙警備隊養成センター時代の80の姿が描かれていますし、本作をはじめ、過去のウルトラ関連の記事やコミカライズを児童誌に再録すれば子供たちには歴代ウルトラ戦士たちのキャラクターがぐっと身近になるのでは。
 M78星雲のウルトラ戦士たちがジョーニアス・ティガ・ダイナ・ガイア・コスモス・ネクサスと協力して大活躍するコミカライズを発表すれば、現時点では「ミッシング・リンク」となっている第3・4期ウルトラワールドを、第1・2期ウルトラワールドや『マックス』の作品世界とつなげることも可能だと思います。


 当時の金型を修復・調整して、かつての怪獣ケシゴムを復刻するというのもアリでしょう。いつの時代も子供たちはキャラクター・グッズを集めるのが大好きです。
 ましてやウルトラシリーズはバリエーションに富んだ怪獣・宇宙人・ロボット・サイボーグ・妖怪・精霊・悪霊たちがひしめきあう怪獣無法地帯!! ソフト人形やアクション・フィギュアは高価すぎて手が出せない子供たちでも100円ぐらいなら余裕がありますし、100円硬貨を入れてレバーをひねるだけで怪獣ケシゴムが3〜4体入った透明カプセルを手に入れられる感激は何物にも替え難いのでは?
 これに折り込み両面カラーの怪獣ケシゴムカタログが封入されていたら、正に泥沼(笑)。全シリーズの完全ゲットを目指して、お小遣いをもらおうとお母さんのお手伝いを積極的に行う子供たちが全国に出没するのでは?


 ……いや、これは冗談ではなくて、いつの時代も子供たちは正義のヒーローが活躍する作品が大好きだと思いますし、ユニークな怪獣や怪人への興味もそんなに変わらないと思います。自分自身、かつてウルトラ怪獣や『キン肉マン』の超人ケシゴムを集めた世代ですし、現在の『ポケモン』『ムシキング』人気もこれらのバリエーションにすぎないと思うのですが、去るGWにいつの時代も変わらぬ子供たちの「クリーチャー好き」を再認識する出来事に遭遇しました。


 地元の映画館で公開された『香港国際警察 NEW POLICE STORY』(04年)を観に行ったときのこと。いつものように新作映画チラシコーナーをチェックしたところ、スタンドに立ててあるB5サイズのチラシは十分すぎるほど揃っていたものの、販促物コーナーには無料配布用の『妖怪大戦争』(05年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060312/p1)ミニブックが1冊しか置かれていなかったため、劇場の人に尋ねてみると、なんでも前日の日曜日に『名探偵コナン 水平線上の陰謀』(05年)や『ふたりはプリキュア Max Heartマックスハート)』(05年)を観に来た子供たちの行列ができて100冊近くあったミニブックはたちまちなくなってしまい、残ったのはこの1冊だけとのこと。


 昨年度に公開された、『ロード・オブ・ザ・リング 王の帰還』(03年)や『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』(04年)のミニブックは、満員の客席とは裏腹に劇場公開終了間際になってもあんなに残っていたのに、一体どうして……と思いかけたところでピンと来て、ミニブックをパラパラめくってみると、案の定、映画に登場する妖怪たちのカラー写真が解説つきでズラリ。
 ミニブックの裏面は『妖怪大戦争 妖怪大図鑑』となっており、映画館の人がこちらを上面にして置いていたために子供たちの興味をひいたものと思われますが、ミニブックを手に入れようと行列を作った子供たちの胸中を察すると微笑ましいものがありました。


 ここ数年は少子化による視聴率の減少が囁かれ、大人の視聴者をターゲットにしたドラマ性重視のマニアックな作風と、ファミリー・ピクチャーとしてのエンターテイメント性の両立を試行錯誤している昨今の特撮ヒーロー番組ですが、突破口はこの辺りにもあるような気がします。


 考えてみれば、自分が『(新)仮面ライダー』(79年)や『80』に夢中になったときも、『テレビマガジン』『テレビランド』『てれびくん』を教室にこっそり持ち込んだ友人たちと付録の怪獣ピンナップやミニブックを奪いあったものですし(笑)、確か『てれびくん』の付録だったと記憶している『ザ☆ウルトラマン』の登場怪獣たちを劇画タッチで表現した絵柄の特製下敷きを使っていた級友は、アイテムのレアさもあってクラスでかなり英雄視されていたように記憶しています。


 基本的に映像・コミック世代である戦後の子供たちの嗜好はかつての自分たちとそんなに変わっていないと思いますし、前述した怪獣ケシゴム作戦以外にも、児童誌の誌面やファンクラブを通じて、ウルトラ戦士や怪獣・宇宙人を主体にしたトレーディング・カードやピンバッジを安価で通信販売するキャンペーンを展開したら予想外の反応があるのではないでしょうか。


 現在の特撮シーンは、大人のユーザーを対象にした宣伝やマーチャンダイズは完成の域に達しています。25年前の「あの夏」とは対照的に「大人(マニア)だけのもの」になりつつある特撮シーンですが、今度はこれまでの経験をもとに「過去の遺産」を生かし、次世代の子供たちをターゲットにしたメディア展開を行えば、新たな可能性が開けてくるような気がします。


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2006年号』(05年12月30日発行)所収『ウルトラマンマックス』序盤特集・合評⑩より抜粋)



(編):今年の『ウルトラマンメビウス』(06年)でこそ、幼児&児童誌にて昭和ウルトラ怪獣再登場と連動した誌面構成を行ない、TVの30分間のみではなく、子供たちの新旧ウルトラへの興味をタテ方向にもヨコ方向にも拡げて、関心を長期にわたって持続させるようにしていってほしいものです。


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祝!真正M78星雲ウルトラ兄弟系『ウルトラマンメビウス』放映開始記念!

(文・T.SATO)
(初出・同人誌『仮面特攻隊2005年春号2刷』(05年4月24日発行)〜『仮面特攻隊2006年号』(05年12月30日発行)所収『ウルトラマンマックス』序盤特集・合評⑤より抜粋)
(05年4月23日執筆、5月初旬大幅加筆)


 「放映は異例の1年間」と新聞の試写室記事でも告知されたのに、『ウルトラマンネクサス』(04年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060308/p1)は3クールいっぱいで打切り。
 前番組の女児向け・実写版『美少女戦士セーラームーン』(03年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20041105/p1)の視聴率すら下回り、『ウルトラ』シリーズ初の不名誉な憂き目にあってしまった。


 またまた下世話で不確実な、業界スジから漏れ聞く内幕話で恐縮だが、それらを整理すると、『ネクサス』打切りが検討されたのは、昨04年中まだ1クール目の最中。
 年末の玩具商戦と12月下旬の祝日特番の視聴率で、継続か中断かを決定することになったとか。
 で、両者ともに悪かったそうで(汗)、年末の冬コミ時点では打切りが決定済。業界スジから各所の同人屋関係者にその旨が非公式に伝えられた次第。
 だけど、撮影自体は『ウルトラマンコスモス』(01年)同様、放映に半年弱先行していて、2クール打切りはなく、3クールまでは放映するとの由。


 ……という話を聞いたときには、スレ過ぎて1回転してしまって、『ネクサス』のアダルト・シリアス・ハード路線に必ずしも肯定的でなかった筆者でも、思わずショック! ウ〜ム、かわいそうに……と番組製作者・出演者が気の毒になったものだった。
 とはいえ芸術作品を作ってるワケでなし、公務員ならぬ民間のスポンサーだって、関連商品の売上で喰っていく以上は背に腹は変えられない。打切りもやむなしだろう。
 円谷プロとしても会社存続のため、常に版権収入を確保したく、『ネクサス』の後番も『ウルトラ』で確保すべく売込み。後番組『マックス』の企画書には、『ネクサス』の路線が全否定されていたとかいないとか。



 で、05年7月より放映が開始される『ウルトラマンマックス』!(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060311/p1
 既に本誌発行の数日前(後日付記:『05年春号』2刷は05年4月24日発行)にスポーツ新聞各紙で大々的に取り扱われたことから、読者諸賢の過半もネットで情報をゲットしていて、筆者などよりもよほど詳しかろう。
 またまた何度目かの原点回帰で(笑)、頭頂部のトサカが分離してブーメランになるウルトラセブンタイプの赤いヒーロー。
 ピーカン晴天なイメージの宣伝写真でお披露目済だがバルタン星人・レッドキングゼットンエレキングなどの往年の名怪獣がイレギュラー登場するらしく、番組やネットで対戦してほしい過去の『ウルトラ』シリーズの人気怪獣も募集するらしい。
 初代ウルトラマンことハヤタ隊員役の黒部進が防衛組織DASH(ダッシュ)の名前忘れた◎◎長官役で出演し、フジ隊員役の桜井浩子も同様で、平成『ガメラ』(95〜99年)の金子修介カントクや、近ごろだとジャンル関連では『着信アリ』(03年)『ゼブラーマン』(04年)を演出した三池崇史カントクも登板。不確実な情報だが『新世紀エヴァンゲリオン』(95年)の庵野秀明カントクや毎度おなじみ実相寺昭雄カントクも登板を打診されているそうな。


 あのウルトラNプロジェクトはいったいドコへ?(笑)
 アダルティな『ネクサス』から、なりふりかまわぬ初代『ウルトラマン』(66年)的な『マックス』への転身。それを見苦しいと思うヒトもいようが、商売的には正しいと思う。


 とはいえ気になる点が3点。1つはホントに初『マン』的になるのか? という点。
 2つめは初『マン』的になったとして、それはそれで今の子供たちのニーズに合致したものなのか?
 そして、初『マン』的なアッケラカンな子供向け陽気さか、アダルティか、の二者択一ではない第三の道こそが望ましいのではないのか? という疑問だ。


 1つめのホントに初『マン』的になるのか? という疑問だが、やはりメインスタッフは基本的に『ネクサス』のスタッフがスライドするのだろうから(?)、フタを開けたらけっこう辛気(しんき)クサかったりする懸念がある。
 初『マン』的になったとしても、60年代ならともかくあるいは再放送作品として観るならばともかく、90〜00年代の今日に、初代『マン』のあのままの作風がジャストフィットするとはチョット思えない。


 3点目に、仮に内容が子供向けとして成功していても、あの土曜早朝の時間帯に子供たちの視聴習慣が付くのかという心配。まぁ客商売は水モノゆえ、恣意的な要素にも左右されるので、子供間での人気の予想はムズカしい。
 とまれ、本誌『假面特攻隊』ライターや読者に多い(?)第2期『ウルトラ』支持者は、第2期以降の超獣ベロクロンやバキシムエースキラーやヒッポリト星人、マグマ星人や帝王ジュダ、エンペラ星人やジャッカル大魔王にウルトラキラーゴルゴをネットの対戦要望で投票しよう!(笑)



 ……いやまぁ冗談めかしたが、ホントウは何を云いたいのかは、下記に列挙していく。
 『ネクサス』の、意図的とはいえ没個性的な怪獣のウケなさのあとで、ビジュアルな特徴や色彩がハッキリしたロートル怪獣を再登場させること自体はイイと思う。


 ただ多分、『ウルトラマングレート』(90年)以降ずっとつづく、昭和『ウルトラ』シリーズと無縁な、怪獣やウルトラマンに人間がはじめて遭遇したファーストコンタクトものに本作もなってしまうことが容易に予想される。
 コレは70年代後半〜80年代前半に、初期東宝&円谷至上主義者が、怪獣の一回性の恐怖重視で作り上げた理論ゆえである。
 その理論の拡張・変格等々で、第1世代マニア間ではウルトラ兄弟共演も否定され、ゆえに早くも『ウルトラマン80(エイティ)』(80年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19971121/p1)ではウルトラ兄弟が客演しなかった。


 ただ筆者個人は世代的な私情ではなく(まぁそれも微量にはあるけど・笑)、80年代以降の児童向けヒット作『ビックリマン』(87年)や『ポケットモンスター』(97年)に『遊☆戯☆王』(98年)などのありようも見るにつけ、昭和『ウルトラ』世界の延長線上に、今後の新作『ウルトラ』世界もあった方がイイと思う。


 たとえばそれはこーいうことだ。怪獣レッドキングが再登場する。
 すると防衛隊の基地のモニターで往時のバンクフィルムが流され、ナレーションなり隊員の分析で、
 「過去にレッドキングは、初代ウルトラマンウルトラマンジョー、ウルトラマン80、ウルトラマンパワードと対戦しています。身長や体重や特徴はうんぬん……」
 といったシーンを入れるのだ。
 それを旧怪獣登場編で必ずやる。本編ドラマ部分をカットしても優先する。


 それはやはり幼児にはともかく、児童には一話完結の勧善懲悪だけでは興味を持続できないと考えるからだ。
 だからといって、社会派テーマや高度な人間ドラマ・SFドラマをやれというのでもない。


 子供もとい児童期は(特に男のコは)、ジャンクなモノ集めやその関連知識習得に狂奔するものだ。
 70年代後半であれば、王冠集めやガチャガチャの野球バッジ・スーパーカー消しゴム・怪獣消しゴム・駄菓子屋の怪獣カード。80年代前半であれば、キン肉マン消しゴムか?
 つまり関連商品やメディアミックスも準備して、レッドキングが先輩ウルトラマンたちと戦ったのなら、児童誌や幼児誌に文庫サイズ豆百科やレンタルビデオも見ることで、児童の関心をTVの30分だけで終わらせず、長期にわたって持続させるのだ。ヨコ方向にもタテ方向にも関心を拡げさせるのだ。


 そーいう児童レベルでの知的関心を惹起する要素が、90年代以降の児童向け大ヒット作には必ずあった。
 その伝で特撮マスコミ関係者も、オトナ向けマニアックな高価書籍ばかり作成せず、ケイブンシャ亡き今、次代のマニア育成のためにも安価な児童向けのジャンルやシリーズ総覧の豆百科の類も軽視せずに製作してほしい。
 有能な編集者の登場も切に望みたいし、円谷プロでもそーいう勉強会なりプロジェクトを組むべきだ。


 また今の時代、子供番組の再放送ワクがないのは致し方ないし、TVの本義はやはりドラマやバラエティよりも、報道であるべきだろうから、夕方ニュースのワクを子供番組に返せなどとチャイルディッシュなことを云う気はないが、それでも地上派放送による子供たちの共通同時体験のメリットは軽視できない。
 円谷プロバンダイが協力して、春・夏・冬休みだけ旧作『ウルトラ』再放送ワクをゲットするとか、それも90年代みたく初代『マン』再放送ばっかなり1作品の再放送ばっかでは、変化の早い時代にアキられてしまうので、週替わりなり日替わりで、旧作『ウルトラ』シリーズ各作品を順番に、#1や最終回に傑作選(アンチテーゼ編ではなくイベント編・笑)を放映してみることも提言しておきたい。
 地上波がダメならNHK・BS2だ。CSでは規模が小さすぎる。


 毎年恒例の劇場版『ウルトラマン』。その公開間近になると、前作劇場版がTV放映されるが、近年はいつも深夜だ。幼児が見るワケがない。
 ワクが先約済ならもっと早いウチにワクの確保はできぬのか? 近年の『ウルトラ』の商業的価値や視聴率を考えて仕方ないのなら、1時間ワクを2本取って、2分割して放映で、その年の最新劇場版の宣伝も2回やるとか、何かしらヌケ道はないものか?
 そーいうワクが取れぬなら(いや取れても)、TV本編の30分ワクをまるまる番外編の映画宣伝番組にしてもイイと思う。
 (失礼ながらの憶測だが、業績がイイとは思えない福岡三井のウルトラマンランドや、夏休みのウルトラマンフェスティバル、アトラクイベントのウルトラマンライブステージなど、予告編後半の情報コーナーで宣伝して、相乗効果で盛り上げていくべきなのでは? あんな小さな会社のクセに、タテ割りでヨコ方向のつながりがナイんすか?)



 TV本編への提言にもどるが、月に1回は怪獣が2体出てきて、先輩ウルトラマンも助っ人に来るとか、往年の東映作品よろしくクール(3カ月)のラストには再生怪獣軍団が登場する、というのはドーだろう?
 そーいえば、往年のエポック作『マジンガーZ』(72年)なども月に1回イベント編が必ず用意されていたものだ(新武器・新兵器登場や○○博士殉職とか)。


 再生怪獣は、怪獣墓場から復活するか、悪い宇宙人が墓場から強奪してくればイイだろう。あるいはその原理や根拠はよくわからないが、怪獣酋長ジェロニモンのような存在が神通力で怪獣を復活させればイイ。そーいうイイ意味でのおおらかなユルさ・寓話性も必要だ。
 怪獣を重視するなら、サブタイに怪獣名&怪獣の別名表示も必須だ(今時の子供向け作品のアタックポイント(攻撃力)ならぬ身長&体重も表記してもイイ)。
 第1期&第2期ウルトラでは怪獣登場時に、名前がビデオ合成でスーパーインポーズされたそうだが(生まれる前や識字できないころで筆者の記憶はないが。『ウルトラマンタロウレーザーディスク(90年)のライナーなどにも記述あり)、それもイイだろう。


 また、先輩ウルトラマンやその故郷・ウルトラの国にも、70年代の第2期・第3期『ウルトラ』シリーズの時代には、児童誌や豆百科で、ウルトラ一族の宇宙警備隊の下部組織として、宇宙保安庁やら勇士司令部に各ウルトラ兄弟のそれらの所属部署や、義兄弟であり真の父母の職業などのウラ設定が詳細に設定されていた。
 コレなど、ビックリマンシールやカードに記述されたウラ設定の知識の取得に邁進するガキどもの在り方の先駆けといってイイだろう。


 ウルトラ兄弟全員の身長&体重・飛行速度・年齢・足形・ウルトラサイン。筆者もそんなものを飽かず眺めて、暗記に夢中になったものだった。
 70年代末期の第3次『ウルトラ』ブーム時の早朝再放送で、ウルトラ兄弟客演編が放映されると、クラスはごっこ遊びで大騒ぎになり、黒板や砂場はうろおぼえなウルトラサインの落書きで埋まり……。
 平成『ウルトラ』に、そんな要素があっただろうか?


 (特撮ライターのヤマダ・マサミ先生は、第3次怪獣ブームこそが小規模で、90年代中盤の平成『ガメラ』や平成『ウルトラ』で、怪獣ブームは再来した旨を言明するが、それはかなりムリのある身ビイキにすぎるだろう。90年代中盤以降の子供文化の真実は、『ポケモン』『遊戯王』の時代である)。


 併映映画『新世紀ウルトラマン伝説』(02年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20021115/p1)も、映画パンフに、アリガチ第1期と平成ウルトラ重視ではなく、全ウルトラ戦士均等に、それら設定の一覧表でも掲載すれば、子供たちへの関心喚起としてパーペキだったのに。


 『ビックリマン』の天聖界と天魔界の数億年(?)にわたる抗争の神話的年代記な歴史年表に、かつて子供が夢中になっていたけど、ウルトラの国の歴史などもコレと似たようなものではなかったか?
 20何万年前にウルトラの星の太陽が爆発し、ウルトラ長老が人工太陽プラズマスパークを開発して危機を救い、人間体型からウルトラ人に進化して、数万年前にはエンペラ星人率いる怪獣軍団の侵略を撃退し、コレを機に宇宙警備隊を結成し、セブンの幼いころウルトラの父がウルトラキーで悪魔の星デモス1等星を破壊した……というような


 (この件は、大塚英志講談社現代新書『「おたく」の精神史 一九八〇年代論』(04年・ISBN:4061497030)において、ヤングアダルト&児童向け作品の架空世界&歴史の発達例の先進例としても言及されているくらいだ)。


 ――とはいえ、『ウルトラマンティガ』(96年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19961201/p1)〜『ウルトラマンダイナ』(97年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19971201/p1)間の防衛隊GUTS(ガッツ)史みたいな、本家・富野『ガンダム』シリーズの劇中巨大ロボ・モビルスーツ製造のアナハイム社がドーコーといったような、思春期以降の貧血症な設定マニア少年だけがよろこびそうなものではダメだ。アレらには、児童がワクワクするような神秘性やロマン性がないからネ――


 そーいうトリビアルなことを知ってるヤツが少しエラい子供社会の心理。00年代においては、そーいった児童の興味をひきそうな要素を、TV本編や関連書籍で積極的にメディア展開していくべきだ。
 ただ単に、初代『マン』的にやるなどという芸のナイことをやっていては、幼児にはともかく児童間で『ウルトラ』が、アニメや週刊少年ジャンプ漫画を超える人気を獲得することはついにナイであろう。


 戦争反対を世代体験の感情論のみに依拠して、戦争を知らない世代の台頭を嘆き(必然なのに!)、適度な理論化も怠って、世代交代の際に継承で失敗する反戦運動のような、ウルトラ兄弟復活を女々しく訴える連中の世代的感情論とは同一視されたくはない。
 が、それをクールにクレバーに普遍化して、異なる世代や嗜好の持ち主へ伝達し、感情論者も教育して前向きな理論派に改造し、コチラの陣営を増員していくことが、コレからは肝要だ(笑)。


 ともあれ、ウルトラ兄弟の設定を封印して悦に入っているようでは、オトナの商売人としてもバカである――兄弟の設定を使った95年版『ウルトラマンネオス』(流産TVシリーズ企画・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19971115/p1)の時点で、上記のような展開を大々的に行なえば、96年以降の『ポケモン』大ヒットの先手を少しでも制しえたかもしれないが――。



 ウルトラブレスレットなどの武器を使用するウルトラマンを弱く、神秘性がウスれると感じるというのも、後年の思春期以降に達したマニアの後知恵だ。
 子供は多彩な光学合成のワザを魅力的かつ神秘的(!)に感じるのみである。『ウルトラ』も、強大な敵登場などのイベントがあれば、武器を保持したり、鎧(よろい)を身に付ける玩具的な華があった方が、子供ウケ的にもイイ。


 とはいえ、ウルトラマンが30人を超過した現在、カテゴリー分けはあった方がイイだろう。
 ウルトラ兄弟と別働部隊の非・ウルトラ兄弟、その他の地球出身者など。
 ウルトラ兄弟もレオ兄弟を入れれば8人。当時の小学館の『小学三年生』のみで勝手に設定された(笑)エイティも功績次第でウルトラ兄弟入りするとの設定を考慮に入れれば9人。マックスも名誉の称号の10人目として認定されるかも……との設定でも設けて、子供の関心を惹起したらドーだろう?


 話題作りに、TV後半なり劇場版では、今現在でもルックス的に老いを見せない篠田三郎氏や長谷川初範氏、ケインコスギ氏にゲスト出演してもらって、先輩ウルトラマンに変身してほしい。
 声のみの出演者だが、京本政樹氏や近年『ゴジラ』映画にも出演する伊武雅刀氏にも、グレートやジョーニアスに変身して世間をビックリさせてほしいところだ。娯楽作品は、理屈よりもサプライズが重要。
 整合性はともかく、それはそれ、これはこれで、労をねぎらって、不遇なネクサスにも役者ともども助っ人参戦してほしいものだ。


 ウルトラの国の建物美術の、テーマパーク的魅力にも言及しておきたい(奇しくもコレらをデザインした第2期ウルトラの美術担当者・東宝の鈴木儀雄氏は、後年各地のテーマパークに関係している)。
 件の九州のウルトラマンランドも、コレを忠実に模す形で改造すべきだろう。このへんも、大塚英志の角川文庫『定本 物語消費論』(89年、01年に角川文庫・ISBN:4044191107)P.40などを参照して、テーマパーク経営の参考に資するべきだ。


 他にも、今のガキを魅惑するためのアイデアはまだまだある。下記につらつらと。


 テーマやドラマ至上主義的な文脈では、つい軽視されがちな要素。日常ならざる珍奇な映像によるひきつけだ。
 たとえば、都市風景はレトロフューチャーメトロポリスに透明チューブの中をエアカーや電車が行き交うビジュアルにするとか、衛星ならぬ各惑星軌道上にアートデッセイやスペースマミーやウルトリアなどの旧作『ウルトラ』の宇宙戦艦が多数配備されているビジュアルなどで、子供の眼を向かせ、ワクワク未来感を味わわせる、というアイデアも提言しておきたい
 ――今どき宇宙戦艦じゃなくて、『ウルトラセブン』(67年)的な宇宙ステーションだけじゃあダメでしょう――。


 東映ヒーローと比べて『ウルトラ』は、30分中のAパートでもヒーローにヘンシン、バトルしないことも、子供から見たら微妙に弱点、ツカミに欠けるのではないかと愚考する。
 『ネクサス』ではウルトラマンが50mサイズに加え10mサイズでも時折活躍するが、なぜか等身大サイズでは活躍しない(都心の夜の闇の中でなら、人知れず戦ってもよさそうなものだが)。
 『ウルトラ』もガキをタイクツさせないために、Aパートで等身大バトルを少しさせてもイイのでは?


 防衛隊も円谷プロの『ミラーマン』(71年)のSGMや『ジャンボーグA(エース)』(73年)のPAT(パット)みたく、あるいは円谷分派・日本現代企画の『スーパーロボット レッドバロン』(73年)のSSIのごとく、インベーダーやグロース星人に鉄面党の戦闘員と、未来的な銃撃戦ではなくなぜか格闘戦を行なって、展開をジメッとさせずカラッとサクサク行かせることも提言しておきたい。
 宇宙人や何かと格闘戦を行なうことは、SF的リアリズムで考えればオカシイことだが、それは半可通の意見。
 子供番組として、子供が見る番組として考えれば、銃や剣での一撃必殺よりかは、一進一退する一挙手一投足の突きや蹴りでの攻防、子供から見れば万能にも思える、身体を自由自在に動かし、気持ちもよさげで、状況もリードしていく万能感を味わわせる、つまり身体性の快楽・愉悦をこそが、子供のあこがれや関心をより喚起させるという一点において、正しいのだ! と理論武装をしておこう
 (その点では、ウルトラマンも空転したり、側転バク転をすべきだ。何でも初代マン的にすればイイものではない)。


 しておきたいのだが……。過半の送り手と特撮マニアの意識はいまだに、『ウルトラセブン』「盗まれたウルトラアイ」や「ノンマルトの使者」に『帰ってきたウルトラマン』(71年)11月の傑作群といった、70年代後半の特撮評論の時代にあるようで、陽暮れて道遠し。
 でもオレはまだアキラめないぞ。主張・啓蒙をしつづけてやる!(笑)


 原点回帰では原点を超えられない。初代『マン』らしさに過剰にこだわってアタマを固くせず、『マックス』の次回作でやろうなどとか怠惰に思わず、臨機応変、機を見て変に応ずで、子供が喜びそうな要素を貪欲に詰め込んでいくことを期待したい。
 そーいうイミでは、『マックス』の路線に双手をあげて賛同するワケでもないのだが……。まぁでもやはり腐れ『ウルトラ』オタクとして、応援はしていきたいと思う。



追伸:円谷プロ自身がウルトラ兄弟の設定を封印しようとしてるのだから、云っても詮ないって? それは植民地の範疇での陳水扁台湾総統のような優等生官僚的な発想。在野でなら何を云ってもイイでしょ。李登輝・前総統的なグランドセオリー独立志向を持ちなさい(笑)。
 円谷プロだって一枚岩じゃないんだし、かつて『宇宙船YEAR BOOK 2000』で、平成ウルトラ3部作の笈田雅人(おいだ・まさと)プロデューサーが、M78星雲ものと非・M78星雲ものを両方やればイイと語ってたんだから。

(了)



後日付記:『ウルトラマンメビウス』(06年)放映開始で、現実の方が先へ行ってしまいましたとサ(笑)。


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(文・T.SATO)
 『仮面ライダー響鬼(ヒビキ)』(05年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070106/p1)の“ディスクアニマル”を見て思った。


 打ち切りがウワサされる『ウルトラマンネクサス』(04年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060308/p1)も、悪のウルトラマン“ダークファウスト”や“ダークメフィスト”も、かわいいカプセル怪獣を複数頭保持していて、それがカードから召喚され(笑)、順列組み合わせマッチメイクする番組にでもしていれば、バトル色も強まり、子供たちの怪獣への愛着も深まってオモチャも売れただろうにと……。


 マニア受けや大人の鑑賞にも堪えうる(笑)とかではなく、現代の少年少女たちがスキそうな要素に、円谷プロの作り手たちは、マーケティング的にもっと敏感になってほしいものだ。


 背に腹は変えられない。戦闘機よりも玩具売上が確保できそうだから、いっそ防衛チームも合体ロボットを保持してもイイと思う。
 異空間での巨大戦ばかりでなく、ロケ(実景)での等身大戦、哄笑する大魔王、レトロフューチャー超高層ビル群に透明チューブのメトロポリス、各惑星軌道上に宇宙戦艦が多数配備とかの、映像まずありき。
 本格・リアル志向よりも、多彩でハデな映像の珍奇さや、未来的ビジョンにヒロイックな高揚感をあおる設定で、子供たちをワクワクさせ、関心を喚起してほしい。


 ジャンル作品は、しょせんは特撮やアクション映像を味わうためのものだ。ドラマやテーマはそのための言い訳にすぎない。
 コレを転倒して高尚ぶって、心(内面・人間ドラマ)や癒しに風刺(社会派テーマ)を過大視して、「週刊少年ジャンプ」的な宇宙大に拡大していく大スケール・大バトル・大団円を軽視したことに、マニアと幼児にはウケても、児童には訴求しない、ここ10年のジャンルの惨状の原因がある。


 作り手とマニア双方の意識改革・発想方法の転換を真剣に望みたい。


(了)
(初出・特撮雑誌『宇宙船』Vol.118・2005年5月号・読者投稿)


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