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翔んで埼玉 ~ダサい・ダ埼玉・ネクラの語源とは!? 忌まわしき軽佻浮薄な80年代出自の北関東ディスりギャグを昇華!

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『翔んで埼玉』 ~ダサい・ダ埼玉・ネクラの語源とは!? 忌まわしき軽佻浮薄な80年代出自の北関東ディスりギャグを昇華!

(2019年2月22日(金)・封切)
(文・T.SATO)
(2019年6月7日脱稿)


 我々オッサン世代には、TVアニメ化(82年)もされたホモ・ギャグ漫画『パタリロ!』(78年)でも有名な魔夜峰央(まや・みねお)原作作品でもある、同名のマイナー漫画(82年)が実写映画化された。


 時は前世紀である20世紀。東京都は大いに栄えており、白亜の豪邸にゴシックな服装をした都民たちが裕福な生活をしている。
 しかし、荒川を挟んだ埼玉県では江戸時代か縄文時代の竪穴住居のような暮らし(!)をしており、埼玉県民が東京都に入るには「通行手形」(!)が必要であった(笑)――さらに、もっと田舎である群馬県に至っては恐竜も生き残っていた!?(汗)――。
 しかも、埼玉県民が変装して都心で遊んでいても、特殊センサーがその田舎クサさ(爆)を感知して警報が鳴って逮捕もされてしまうのだ!(笑)


 ドコから見ても完璧な身ごなしで東京都民にしか見えないGACKT(ガクト)が演じる男子高校生(笑)が、都心の白亜の大校舎の学園に転入してきた。しかし、彼の正体は「埼玉解放戦線」(!)のメンバーでもあったのだ!
 正体がバレてしまったことで始まる逃避行! そんな彼にホレてしまった東京至上主義者でもある生徒会長の美少年――実質的には見た目もメンタルも少女であり、新進若手女優の二階堂ふみちゃんが演じている(笑)――との道ならぬ恋&思想的な成長!
 東京vs埼玉の大合戦になるのかと思いきや、東京とツルんでしまったやはり縄文時代な千葉vs埼玉との大合戦ともなってしまう! しかして、最終的には千葉&埼玉連合軍が神奈川県とも通じている敵の巣窟でもある東京都庁(汗)へと殴り込むのであった! という物語であった。


 もちろん、設定からしてギャグであり、お芝居もオーバーアクションの学芸会のバカ映画でもある(イイ意味で!)。



 が、オッサンとしては、この原作マンガが発表された1982年末の時代背景との濃厚なつながりを想起せずにはいられない。


 オッサンの繰り言で恐縮だけれども、1982年よりも前の1970年代前半の若者文化とは、まだまだ日本が貧乏であり「四畳半フォークソング」が流行っていたような時代でもあった。70年代後半には少々音楽性(ポップス性)や優しいオシャレさを高めた当時は「ニューミュージック」と呼ばれた楽曲が流行しはじめるも、今でも延命している中島みゆきに象徴されるように、それは演歌のポップス版とでも呼ぶべきモノでもあった。
 そして、それらは消費文化の中でオシャレな自分に半ばは自己陶酔しながら、周囲に見せつけるために今で云う「リア充」(リアル・現実世界で充実)を装うといった体ではなく、ある種の「実存的なヤルせない情念」を歌い上げて、今で云う弱者やイケてない系にも手を差し伸べてくれるような包摂性があったのだ。


 しかし、70年代末期に突如として勃発したMANZAIブームで時代の空気――というのか若者文化――は急に軽佻浮薄へと変わってしまった。そこに1982年10月から平日正午の帯(おび)番組『笑っていいとも!』が放映を開始して、タレントのタモリが司会を務めた。そして、それまでのアングラ芸人臭を払拭して躁病的な芸風で番組を盛り上げて、「ネアカ」「ネクラ」や「ダ埼玉」「ダサい」といった言葉も流行らかす。
 これによって、「ネクラ」は当時の子供や若者たちにとっては、地味でもマジメでコツコツとした善良で誠実な人種なぞではなく、今で云うコミュ力や人間味もないツマラない人種であって公然とバカにしてもよい存在になってしまう(汗)。今で云う「陰キャ(ラ)」である性格類型の持ち主であった当時の子供や若者たちは、「ダメ人間意識」・「過剰な劣等感」まで持たされて、今日的な「スクールカースト」もこの時代に誕生するのであった……。


 そして、それらの派生形としてタモリは、「卓球はクラいスポーツ」、「埼玉や千葉(に名古屋)はダサい地域・田舎だ」とする芸も披露していくのだった……。


 個人的には実に不愉快な忌(いま)まわしき時代であった。しかし、「差別」が大スキな大多数の庶民・大衆・愚民の皆さまにとっては楽しくて楽しくて仕方がナイ、「黄金時代」だったのではないのかとも思うのだ(汗)――今では立憲民主党辻元清美(つじもと・きよみ)も、30年も前の80年代末期に中型船舶で東アジア各地をまわる「ピースボート」活動を記した自著『清美するで!! 新人類が船(ピースボート)を出す!』(第三書館・87年3月10日発行)の中で、「昔(70年代)はイイと思っていたけど、今では『神田川』などのフォークソングは貧乏クサくてイヤだ」などと語っていて、清貧よりも華美を採択してみせるような言説が個人的には実に不愉快だったものだ(爆)――。


 そして、89年(平成元年)夏に幼女連続殺人事件の犯人が懐かしのアニメ・特撮などが趣味である「おたく」(当時は「ひらがな」表記)であったことが判明し、この語句とそれの意味する人格類型・性格類型が一般大衆の間でも一世を風靡して、「ネクラ」な人種は今度は犯罪者予備軍として蔑視してもよい「おたく」扱いとされることで、一度はトドメを刺されてしまうのであった……(汗)。


 40年近くが経った今では、「オタク罵倒」の方はともかく、それらの「地方イジりギャグ」の方は干からびて、庶民・大衆の方こそがスレすぎて慣れてしまって、それらのイジりギャグを振り向けられても取り乱さずに乾いた半笑いでナチュラルに受け流すように立ち回ってみせるほどに成熟してしまっている。


 しかし、往時の「ネクラ人種」や「埼玉」や「千葉」などの「北関東」や「東北地方」の住民(の若者)は、TVのバラエティー番組や『笑っていいとも!』などに出演して出身地なぞを聞かれてしまうと、ホントウにガチで隠れキリシタンみたいな表情になっていたものだ(汗)。
 そして、その反対に70年代末期には、『ポパイ』などの若者雑誌でアメリカ西海岸がカッコいいものとして紹介されることで、享楽的で南国の楽園的なフンイキもある「沖縄」などは国内でも特にカッコいい別格エリアとして昇格されていった……というのが筆者の実感でもある。
 なので、今でも沖縄県民が本土に来ると差別されていると感じる……なぞとのたまう御仁もタマにはいるけれども、失礼ながらそれは被害妄想の類いであろう。ドー考えても若者文化の中では「沖縄」の方がオシャレで都道府県ブランドも高くて、その逆に80年代における「北関東」や「東北」は笑いのめしてもイイ、小さなイジメもOKな対象になっていたとも思うゾ(笑)。


 90年代後半以降のネット普及後の世界であれば、人数的にはホントは少数派であっても声はデカいので多数派(笑)に見えてしまう「ネット民」が噴き上がってくれることで、TV局なり往時のタモリ的な笑いなりヤンキーDQN(ドキュン)的な他人や弱者に対する共感性には乏しい不良視聴者どもをネット上では大いに叩きまくってくれることで、それらが大きな圧力となってTV局の製作者側でもそのテの蔑視ギャグは自粛してくれるようにもなっている。しかし、80年代とはホントウにヤリたい放題であって、当時の若手のお笑い芸人たちはスタジオの一般観客や街頭のシロウトを、ほとんどイジメのイジりたい放題にする……といった時代になっていたのだ(イヤ、ホントの話です・汗)。
――ここで云う、90年代後半以降の「ネット民」とは、「ネトウヨ」や「パヨク」も含む。「ネトウヨ」や「パヨク」連中には、まだ何らかの「社会正義」や「公共」なりについての関心なり意識がある。身の回りの半径数十メートル・地元の友人たちへのウケ狙い程度にしか関心がナイとおぼしき「私的快楽至上主義者」で、食材などを粗末に取り扱うバカッター民たちの方が筆者にとってははるかに呪わしい! ヒトが物理的・肉体的に傷つくワケでもないのにネットの炎上の方を批判して、バカッター民を保護すべき未熟な未成年のごとき弱者として擁護するリベラル連中は倒錯しているとさえ思うのだ(爆)――


 とはいえ、それからでも30年以上が過ぎると、90年代前半のバブル経済崩壊によって狂騒的な空気もとっくに消え去っており、TVに登場するお笑い芸人も元からクラスの中心にいた連中らではなくて、深夜バラエティー番組『アメトーーク』(03年~)の「中学ン時イケてない芸人トーク!」特集のように、コミュ力弱者がリハビリ(爆)のために芸人になったようなヤツらばかりが多数派(?)を占めるようにもなった昨今(笑)、江戸の仇を長崎で取ろうとする気力はまた筆者にはもうナイ。
 タモリもあそこでブーストをかけなければ80年代を生き残れずに、70年代末期のアングラ芸人として消え去っていたとも思うのだ。むろん、今がイイから過去もすべてを許すとかではなくって、その功罪両面は明らかにしたいけど、そこにルサンチマンを過剰に忍び込ませる気もまた毛頭ナイのだ。
 まぁ、それは筆者自身も加齢で枯れつつあるからかもしれない。埼玉ディスりのギャグ自体も陳腐化・形骸化・歌舞伎的様式美と化して、今となってはイジられても三枚目を演じて笑いで受け流すような関西人的なコミュニケーション流儀が日本人の間でも流通・普遍化するようにもなったからでもあるけれど。人々の何気ないコミュニケーションの仕方や細部にもここ数十年の間でもいろいろと変化があったということだ。そのへんはまた、別の作品評にカラめて今後とも「ついで」のオマケとして語っていく所存だ。



 ちなみに、「翔んで埼玉」の「翔んで」の方も、1976年に大ヒットした司馬遼太郎センセイが幕末維新の志士・西郷隆盛&その親友・大久保利通を描いた歴史小説翔ぶが如く』(薩摩隼人薩摩藩の武士らの機敏・剽悍な行動を指して名付けたタイトル)での意図的な漢字の誤用のタイトルに端を発している。同作のベストセラー化を受けて翌77年には「翔んでる女」が流行語となって、翌々年の78年の歌謡曲かもめが翔んだ日」&大人気ラブコメ漫画『翔んだカップル』でも一般化を果たして、筆者も子供心に実にカッコいい! と思った漢字語句でもあった。
 79年には我らが愛するジャンル作品でも『機動戦士ガンダム』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/19990801/p1)の主題歌「翔べ! ガンダム」や、TV時代劇「必殺」シリーズでも『翔べ! 必殺うらごろし』などのタイトルにも引用されたほどである。
 かつてほどではナイけれども、現在でも古びてはいないカッコいい漢字の誤用読みではあるので――もっとも、この漢字を一番好んでいるのはヤンキーDQN連中だとは思うけど(笑)――、「翔」に「飛ぶ」という「読み方」は本来はナイはずなのに――「飛ぶ」という「意味」自体は持ってはいるけど――、今ではすっかり日本語に定着した新造語句でもあった。本作のタイトルもそんな時代風潮を受けたモノでもあったのだ。


 以上、「歴史証言」的な豆知識!


(了)
(初出・オールジャンル同人誌『DEATH-VOLT』VOL.82(19年6月16日発行予定⇒8月1日発行))


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