假面特攻隊の一寸先は闇!読みにくいブログ(笑)

★★★特撮・アニメ・時代劇・サブカル思想をフォロー!(予定・汗)★★★ ~身辺雑記・小ネタ・ニュース速報の類いはありません

レディ・プレイヤー1 〜ガンダムvsメカゴジラ! 仮想現実に逃避するオタの心理描写が秀逸(涙)

(2018年9月8日(土)UP)
『パシフィック・リム:アップライジング』 〜巨大ロボ×巨大怪獣×ロリチビ少女×中国大企業×東京&富士山!
『ヴァレリアン 千の惑星の救世主』 〜多民族が「共生」ではなく「棲み分け」(笑)する未来像!
拙ブログ・トップページ(最新10記事)
拙ブログ・全記事見出し一覧


[特撮洋画] 〜全記事見出し一覧


レディ・プレイヤー1

(18年4月20日(金)・日本封切)

ガンダムvsメカゴジラ! 仮想現実に逃避するオタの心理描写が秀逸(涙)

(文・T.SATO)
(18年6月16日脱稿)


 クライマックスのラストバトルでは「ゴジラ」のテーマ楽曲が流れる中、 RX−78こと最初の『機動戦士ガンダム』(79年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19990801/p1) vs 昭和と21世紀のハイブリッド版みたいな「メカゴジラ」 との激闘がカナリの長尺を使って描かれる! コレに洋モノの巨大ロボットアニメ映画『アイアン・ジャイアント』(99年・日本公開00年)も参戦して混戦状態に!
 い、いったい、我々はドコの国のナニの映画を観ているのであろうか!? コレはハリウッド映画であり、天下のスピルバーグ監督作品でもあるというのに!


 ググってみると、本作の原作小説(11年・日本刊行14年)では、我らがオッサン世代には懐かしい東映特撮版『スパイダーマン』(78年)の巨大ロボ・レオパルドンが主人公の乗機で(!)、『ウルトラマン』(66年)、日本のロボットアニメからは、『勇者ライディーン』(75年)・『百獣王ゴライオン』(81年)・『超時空要塞マクロス』(82年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19990901/p1)の主役可変ロボことバルキリー・『マジンガーZ』(72年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200119/p1)のゲスト敵ロボの女マジンガーことミネルバX(エックス)も参戦していたのだという……。この原作者、アタマがおかしい!?(笑)
 いやまぁこの情報過多の時代、海の向こうのオタ(の中の濃ゆい一部・笑)にもそーいうヤツらがいるってことですナ。もちろんそれが海の向こうのオタの平均値でみんながそーなのだとカン違いしちゃったらダメだけど。


 本映画中の仮想現実ゲーム世界には、『バットマン』(1939年)やその乗車・バットモービルやら、日本のアニメ映画『AKIRA』(88年)の金田バイクやら、『キングコング』(1933年)やら、『トランスフォーマー』(07年)やら、『マッドマックス』(79年)やら、『マッハGoGoGo』(67年)やら、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(85年)の乗用車型タイムマシンやら、『グレムリン』(84年)やら、『ミュータント・タートルズ』(84年)やら、『シャイニング』(80年)やら、格闘TVゲーム『ストリートファイター』(87年)の必殺ワザ・波動拳やら、我が日本の往年の映画スター・三船敏郎(みふね・としろう)などなどなどが登場! どれだけの金銭を版権支払に費やしているのやら。さすがスピルバーグ&ハリウッドの資本力!(イヤミ) もうムチャクチャなオタク的妄想力の「スーパーヒーロー大戦」にして「寛永御前試合」にして「東映黄金期オールスター時代劇」にして「ジャスティス・リーグ」(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20171125/p1)にして「アベンジャーズ」(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190617/p1)な徹底的物量投入作戦!


我々オタには夢の世界! そこに入り浸るオタの姿は実に含蓄に満ち(涙)


 とはいえ、見せ場重視の姿勢は文芸映画ならぬ娯楽活劇作品の作劇手法としては賛成だけど、そーいうオタクネタの羅列・列挙だけでも娯楽活劇作品としてのケッサクが即座にできるワケでもないだろう。
 最も必要なのは、主人公の戦う動機と、倒しても良心が痛まないような小憎らしい悪党をいかに構築するかである。


 本作における主人公の戦う動機。それは酷薄な3次元世界からの現実逃避である(爆)。その憂さを晴らすために、あるいは現実世界では運動オンチで非モテのキモオタでコミュニケーション弱者でもあるショボい自分でも、オタク系同人界では筆1本でエラそうにジャンル系作品を論評してみせて悦に入る……。
 ちがった(笑)。インターネットに接続した特殊ゴーグルを経由して世界中の人々とつながったリアルな仮想現実ゲーム世界で、人間や動物としての限界をはるかに超えた筋力や跳躍力でジャンプして宙でその身をヒネりつつ遠方に着地して、レーシングカーを華麗なドライビングテクニックであやつってスリ抜けて先頭走者に立つことで、身体を自由自在に動かす全能感・万能感・達成感を味わって、生の充実や横溢や高揚も感じとり、不全感や劣等感や3次元の人間たちの殺伐とした言動に苛まれて疲弊した精神のバランスもハコ庭の世界においてだけは回復することができる。
 そして、仮想世界内にあまたあるゲーム群で、高得点を競い合い上位ランクへと上昇することで、ちょっとした自尊心をも満たすことができる。


 ウ〜ム。こーやって引いて客観化して距離を置いて眺めてみると、ハコ庭の中での背比べ・優越感競争のさもしい行為だなぁ。我ながら耳がイタくて胸もイタくて身に覚えがアリすぎる(爆)。
 しかし、生まれつき性格・体力・ルックスにも恵まれて、現実世界では何もしなくても肯定されてきたリア充な人間たちには想像もつかないだろうけど、それらに恵まれずハブられて生きてきた大多数の人間や特に我々オタク人種たちにとっては、まさにこのVR・仮想現実ゲーム世界こそが「実存」を仮託するのに足る世界なのではあるまいか?(汗)
 だって、我々オタク人種が虚構のフィクション作品やゲームに耽溺したり、あるいはそれの派生として論評・コメントしたり、二次創作に励んだり、イラストを描いたり、マッド動画を作ったりするのも、究極的にはハコ庭の世界で盆栽を育ててそれをキレイに整えて完成させ、同好の士の耳目を少々集めることで、そーいう「実存」的な手応えや歯ごたえに充実感や達成感を、一時的にではあっても擬似的に体感するためではないのかとも考えると(涙)、我々オタのあり方のストレートな延長線上には本作『レディ・プレイヤー1(ワン)』(18年)におけるVR世界もあると捉えざるをえないのだ。


 そして、このVR世界には今は亡き創業者が秘かに隠していた3大アイテムがあるという。加えて、この3大アイテムを集めた者には創業者の莫大な遺産を授与するのだともいう……。
 アレ? 日本のラノベ原作の大人気深夜アニメで、その続編である劇場版映画(17年)が人気アニメ『ラブライブ!』(13年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20150615/p1)の続編劇場版(15年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20160709/p1)や『ガールズ&パンツァー』(12年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190622/p1)の続編劇場版(15年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190623/p1)の興行成績をたったの封切1ヶ月で上回った『ソードアート・オンライン』(02年・12年にTVアニメ化・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190928/p1)に、この設定は類似してはいまいか?(汗) あの作品の場合はまたまたブルース・リー主演のカンフー映画死亡遊戯』(78年)パターンで、VR世界の最上層にいるラスボスを倒すまでは3次元世界で昏睡状態にあるプレイヤーの意識がゲーム世界から脱出はできずに、場合によっては3次元でも死ぬというモノではあったけど。


 対するに、倒してもイイ憎々しげな悪党には、この「カネの成る木」でもあるVR世界を横取りしようとする大企業のキタナいオトナ(笑)を配置する。といっても、殺人・強盗もしそうな根っからの大悪人といった風情(ふぜい)ではナイ。フツーの娯楽活劇作品だと小悪党止まりのレベルといった、初老で痩身の頭髪がウスくなった神経質そうなハゲた白人オジサンにすぎないけれども。
 本作のように、世界全体の物理的な危機ではなく、あくまでもハコ庭のVR世界の危機を描くようなスケールの物語では、このくらいの塩梅のオジサンであるラスボスの方が、たしかにお似合いではあるのだろう。


 とはいえ、この映画で一番エラい! と筆者が個人的に思った試みは、VR世界に立体映像として出現して、いわゆる偽名・ペンネームを名乗るアバター(分身)キャラたちが、日本のアニメのキャラデザ的に少々誇張・デフォルメされたお目々パッチリの金髪イケメンキャラであることとの対比か、現実世界での当人たちについてはヘンに美化せず、我々キモオタの似姿でもある「腫れぼったい顔のブ男少年」や「顔面偏差値や体型には恵まれていない少女」であったり「いかにもな冴えないオッサン」として正しく描いていたことだ!(笑)
 VR世界の外の現実世界でもゲーム・プレイヤーである主人公少年少女が美男美女であった『ソードアート・オンライン』の原作者センセイは見習いなさい! ……エッ? そのへんのアンチテーゼを描いたのが、同じ原作者の手になるチビでデブでイジメられっコの少年が主人公であるAR(拡張現実)ネタの名作深夜アニメ『アクセル・ワールド』(09年・12年に深夜アニメ化)だって? そ、そーでしたネ。あの深夜アニメには筆者もTVに向かって土下座していました(平身低頭)。


「虚構」vs「現実」のテーマ的対比では際どいところもあるけれど(汗)


 加えて、安直な現実世界/仮想世界の二元論に陥って、20世紀末のTVアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』(95年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20110827/p1)の真の最終回を描いたアニメ映画『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを君に』(97年)ラストのように、


「『虚構』に耽溺するのではなく『現実』へ帰れ!」


なぞという一元的な結末に観客を導かなかったこともホメたたえておきたい……と云いたいところだけど、本作もまたその弊には少々ハマっていたところはやや惜しい(汗)。


 「現実に帰れ」という主張にももちろん理はある。しかし、それだけを過剰に云いつのると、結局は「仮想」「虚構」を全否定しているようにも見えてしまう。「仮想」「虚構」で救われたり、精神的な居場所を見つけたり、古くは文通やメル友とオンラインならぬオフ=3次元の世界でも逢ってみることで――いや、逢ってみなくても――、趣味も気も合う友人をゲットできたりもする「美点」をなかったことにするような取りこぼし感が大きくなって、的ハズれ・物足りなさで釈然としなくなってしまうのだ。
 私見では「虚構」と「現実」の対立案件――にかぎらないけど――の真実というモノは、二元論のうちのいずれか片方を採択するのではなく、四元論とでもいうべき、「現実」の良い面・悪い面、「仮想」「虚構」の良い面・悪い面、その4項のすべてをイーブンに把握することで、全的に包括的に物事の長短をカバーすることのように思われるのだ。


 何十年も付き合っているのに一度も顔を合わせて会ったことがない、TELでしゃべったこともなく、手紙やメールでしかやりとりしたことがないロートルな特撮評論同人屋たち……、もとい(笑)年齢も性別も異なる醜男醜女(ぶおとこ・しこめ)なゲームプレーヤーたちが、物語終盤では現実世界でも大集合!
 英知を尽くして3次元世界で身体を張って物理的・肉体的にも戦ってみせることになるストーリー展開は、VR世界での大活躍以上にある意味ではインチキなファンタジーである気もするけど、かくあってほしい・正義に勝ってほしい・道理や道義が通ってほしい・弱者もたまには勝ってほしい――現実は往々にしてそーではないのだから(笑)――という想いを見事に体現できており、勧善懲悪的な爽快感を得るのがフィクションの本義でもあるのだから、コレでイイのだと云うべきである!!


洋楽「JUMP」が意図的・無意図に体現していた「自由」の正体とは何ぞ!?


 本作もまた、今は昔の30年以上もむかしになってしまった新古典の80年代ジャンル作品のガジェット(小道具)もコレから大量に登場しますヨ〜というシンボリックな意味も込めてか、本誌読者の過半が生まれる前、往年の1984年の大ヒット曲、オッサン世代には懐かしい洋楽、80年代前半の開放感・自由感・高揚感・物質的豊かさの到来を予告するかのような、ヴァン・ヘイレンのアルバム『1984』に収録された世界的大ヒット曲「JUMP(ジャンプ)」で開幕する。
 全体主義的に国民を監視する管理社会な未来像を描いたディストピア小説『1984年』(1949年)とは真逆な、自由放任・規制緩和で消費享楽的な社会の到来を告げつつあった現実の1984年は、たしかに過渡期ゆえの錯覚か「自由と解放の明るい予感」に満ち満ちていたことを思い出す。戦後の重工業中心の高度経済成長と、70年代の石油ショック後の不景気を経て、再度訪れた豊かでオシャレなバブル経済への助走台に入ったあの時代。


 しかし、2〜3年して気付く。「自由」とは、狂騒・狂躁的なイッキ飲み強制ノリ笑いに通じる遊び人・ナンパ師的なコミュ力のある人間や、ルックスに恵まれた人間、虚栄心から髪型や服飾などにうつつを抜かす人間だけに果実を与えるのだと。そーいうモノが苦手であったり、そも関心がなかったり、飽食ではなく清貧や質素や、目立とう精神ではなく謙遜を旨とする人種たちは、ネクラやイケてない系として下方に押しやられてしまうのだと。
 控えめな人間に対する配慮やいたわりに欠けた躁的会話が若者間での標準となることで、ますます他人とのコミュニケーションにも乗り出せなくなり、適度な自信を持って成熟することが叶わなくなっていくことで、前代の年長世代には想像もできなかった過剰な劣等感やダメ意識までをも持たされる。そしてその原因を、若者間での新たなコミュニケーション作法を知らない浅薄な自称・識者が的ハズレにも、家族メンバーの減少・隣近所とのコミュニケーション不足・発達障害などのせいにしたりもする(笑)。


 「管理社会」も地獄だが、「自由」も別のイミでの地獄であったのだ。「自由」は必ず「放縦」に流れて「格差」「不平等」に行き着く。中高生の教室内での最低限の一体感もウスれて、イケてる系とイケてない系へと分化していき、今日的なスクールカーストの原初形態もこの時代に誕生する。
――ちなみに「平等」の方も必ず「画一」「抑圧」に流れて「不自由」に行き着くとも思う……。近代の2大理念である「自由」と「平等」は、実は相反する矛盾した概念であり両立はできないのだ!?(汗)――


 90年代以降、「J−POP」が若者文化間で隆盛して、それ以前の無用な「洋楽」コンプレックスも雲散霧消した。今では信じられないだろうが、かつては中高生以上の若者文化においては「洋楽」至上な音楽カーストがあって、植民地の民の奴隷根性(笑)が大いにまかりとおっていたのだ――往時はTVはともかくラジオや有線放送では洋楽がかかりまくっていたので、オタクな筆者でも「JUMP」は特に印象に残っている――。
 と同時に、「洋楽」ファンの中にも世代間闘争があって、荒々しいエレキギターよりもポップなシンセサイザーの音が目立つようになった「JUMP」に象徴される当時のロックを指して、


「近頃のロックは音がカルい! 堕落したのはシンセのせいだ! 抵抗ではなく大衆迎合になっている!」


なぞと、今は亡き、往時は発行部数が各誌ともに数十万部を誇っていたFMラジオ雑誌群での読者投稿欄にて問題提起があったことを懐かしくも思い出す――遠い目。まぁ筆者はロック至上主義者なんぞではナイので、イキがったりワルぶったりして周囲を威嚇・恫喝するなどの虚栄心が目的(?)のロックが堕落・変節しようが知ったこっちゃナイどころか、むしろカンゲイするけれど(笑)――(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190915/p1)。


 そんな「JUMP」が流れる中、主人公少年が住まう3次元のスラムな地域の住宅は、ゴミ捨て場のような土地に、側面の位置も統一せずに素人がプレハブ住宅を乱雑に高層に積み重ねたような一角にあって、かつてはアメリカ人が日本人の家屋を指してそう呼んだ「ウサギ小屋」のような狭い家屋であり、DV=ドメスティック・バイオレンス家庭内暴力)な貧困家庭でもある。
 楽曲の80年代的な開放感とは正反対に、その光景は貧乏かつ閉塞感にあふれるモノなのだが、それが生まれついての平常運転である主人公少年にとっては、家族との不仲はともかく、貧困それ自体については特に不満に思っていないようにも見えるあたりで、「JUMP」も時代的な記憶&文脈とは切り離された純粋音楽として彼には聞こえているのやもしれない――あるいは、落ちきるところまで落ちきると、第1次世界大戦&第2次世界大戦の終戦直後の世界各国の焼跡闇市のようなアプレゲール(戦後無頼派)・漫画『AKIRA』・坂口安吾の『堕落論』的な自由さ・逞しさが、近未来のこの世界にも沸きあがっていたのであろうか?(以上は心にもないウソです。とてもそのようには見えません・汗)――


 「自由」の理念を「経済学」の理論に積極的に援用した80年代以降の新自由主義経済の進展で経済格差が拡がった末に行き着いた、古典小説『1984年』的な管理社会的ディストピアとも、現実世界での「1984年」以降の自由放縦で経済的には豊かでもイケてる/イケてない系やモテ/非モテの若者間格差が拡大したディストピアとも異なる、国民を良くも悪くも管理や監視をする気はない「消えた年金問題」(笑)を惹起する「小さな政府」による庶民放置プレイかつ、世も末の貧富の格差だけが超拡大した第3のタイプの新自由主義ディストピア社会が本作では描かれた。しかし、本映画はココには批判の目は向けない――間接的には風刺しているのやもしれないけど、その風刺力は一部のスレた人間にしか届かないであろう実に弱々しいモノである――。
 本作の作品世界における諸悪の根源は、この映画が切り取ったハコ庭VR世界のカメラアングルの外の世界にいるとも思うけど、そのへんを糾弾する役回りは本作のようなフィクションではなく、また別のジャーナリズムや言論人・思想家などによるノン・フィクションの方にこそ期待をすべきであるのだろう。


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2018年初夏号』(18年6月17日発行)〜『仮面特攻隊2019年号』(18年12月29日発行)所収『レディ・プレイヤー1』合評2より抜粋)


[関連記事] 〜2018年上半期・特撮映画評

牙狼〈GARO〉 神ノ牙-KAMINOKIBA-』 〜小粒良品!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20180601/p1

ガーディアンズ』 〜酷評のロシアのスーパーヒーロー集合映画を擁護する!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20180604/p1

ブラックパンサー』 〜アメコミ黒人ヒーロー映画で傑作だが、新型のポリコレ・黒人搾取でもあるか!?

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20180607/p1

『ヴァレリアン 千の惑星の救世主』 〜多民族が「共生」ではなく「棲み分け」(笑)する未来像!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20180610/p1

パシフィック・リム:アップライジング』 〜巨大ロボ×巨大怪獣×ロリチビ少女×中国大企業×東京&富士山!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20180613/p1

『レディ・プレイヤー1』 〜ガンダムvsメカゴジラ! 仮想現実に逃避するオタの心理描写が秀逸(涙)

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20180616/p1(当該記事)

アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』賛否合評 〜もはやブランド・権威ゆえ、思考停止で高評価・深読みされてやしないか!?

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20180619/p1

GODZILLA 決戦機動増殖都市』 〜地球人・X星人・ブラックホール第3惑星人・インファント島民 ゴジラvsメカゴジラ!?

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20180622/p1

デッドプール2』 〜軟派C調破天荒ヒーロー改心!? デッドプールvsターミネーター(笑)

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20180625/p1


[関連記事] ~ヒーロー大集合作品評

アベンジャーズ/エンドゲーム』(19年) ~タイムパラドックス&分岐並行宇宙解析!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190617/p1

ジャスティス・リーグ』(17年) ~スーパーマンバットマンワンダーウーマン共演作は、ヒーロー大集合映画の教科書たりえたか!?

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20171125/p1

仮面ライダー平成ジェネレーションズFINAL ビルド&エグゼイドwithレジェンドライダー』(17年) ~ヒーロー大集合映画の教科書がついに降臨か!?

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20171229/p1

仮面ライダー平成ジェネレーションズFOREVER』(18年) ~並行世界・時間跳躍・現実と虚構を重ねるメタフィクション、全部乗せ!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190128/p1

ウルトラマンメビウスウルトラ兄弟2』 ~東光太郎! 幻の流産企画!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20130317/p1

パワーレンジャーFOREVER RED』(02年) ~歴代パワレンレッドが全員集合! 坂本浩一監督作品・戦隊を逆照射!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20080518/p1

百獣戦隊ガオレンジャーVSスーパー戦隊』(01年) ~赤星政尚・竹本昇、出世作! 「戦隊」批評の特殊性!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20011102/p1


[関連記事] ~3大メタ・ヒーロー作品! 国産ヒーローの歴史を深夜アニメが総括!

サムライフラメンコ』(13年) ~ご町内ヒーロー ⇒ 単身ヒーロー ⇒ 戦隊ヒーロー ⇒ 新旧ヒーロー大集合へとインフレ! ヒーロー&正義とは何か? を問うメタ・ヒーロー作品!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190301/p1

『コンクリート・レボルティオ~超人幻想~』(15年) ~往年の国産ヒーローのアレンジ存在たちが番組を越境して共闘するメタ・ヒーロー作品だけれども…

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190302/p1

ワンパンマン』(15年) ~ヒーロー大集合世界における最強ヒーローの倦怠・無欲・メタ正義・人格力!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190303/p1


[関連記事]

BanG Dream!バンドリ!)』 ~「こんなのロックじゃない!」から30数年。和製「可愛いロック」の勝利!(笑)

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190915/p1

『LOGAN/ローガン』 〜老X-MEN映画に、活劇の教科書を見る! 殺ってもイイ悪党の造形法(笑)

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20170519/p1



レディ・プレイヤー1 ブルーレイ&DVDセット (2枚組) [Blu-ray]

レディ・プレイヤー1 ブルーレイ&DVDセット (初回仕様/2枚組/ブックレット付) [Blu-ray]
【Amazon.co.jp限定】レディ・プレイヤー1 ブルーレイ&DVDセット(2枚組)(オリジナルピンバッジ5個セット) [Blu-ray]
【Amazon.co.jp限定】レディ・プレイヤー1 ブルーレイ&DVDセット(初回仕様/2枚組/ブックレット付)(オリジナルピンバッジ5個セット) [Blu-ray]


【ゲオ限定】『レディ・プレイヤー1』ブルーレイ スチールブック(R)仕様【2000セット限定】 [Blu-ray]
【店舗限定特典】 レディ・プレイヤー1 ブルーレイ&DVDセット (初回仕様/2枚組/ブックレット付) [Blu-ray](アクリルパネル(台座)+台紙2枚+コレクターズカード付き)


レディ・プレイヤー1 3D&2Dブルーレイセット (初回仕様/2枚組/ブックレット付) [Blu-ray]
【Amazon.co.jp限定】レディ・プレイヤー1 3D&2Dブルーレイセット(初回仕様/2枚組/ブックレット付)(オリジナルピンバッジ5個セット) [Blu-ray]


レディ・プレイヤー1 プレミアム・エディション (4K ULTRA HD&3D&2D&Blu-ray 4枚組セット/ 限定版)(特典: ブックレット付き)
【Amazon.co.jp限定】レディ・プレイヤー1 プレミアム・エディション(4K ULTRA HD&3D&2D&特典ブルーレイセット)(限定版/4枚組/ブックレット付)(オリジナルピンバッジ5個セット) [Blu-ray]
#レディ・プレイヤー1 #レディプレイヤー1 #レディプレ #ガンダム #メカゴジラ



[特撮洋画] 〜全記事見出し一覧
拙ブログ・トップページ(最新10記事)
拙ブログ・全記事見出し一覧

パシフィック・リム:アップライジング 〜巨大ロボ×巨大怪獣×ロリチビ少女×中国大企業×東京&富士山!

(2018年9月8日(土)UP)
『ヴァレリアン 千の惑星の救世主』 ~多民族が「共生」ではなく「棲み分け」(笑)する未来像!
『レディ・プレイヤー1』 ~ガンダムvsメカゴジラ! 仮想現実に逃避するオタの心理描写が秀逸(涙)
拙ブログ・トップページ(最新10記事)
拙ブログ・全記事見出し一覧


[特撮洋画] ~全記事見出し一覧


パシフィック・リム:アップライジング

(18年4月13日(金)・日本封切)

巨大ロボ×巨大怪獣×ロリチビ少女×中国大企業×東京&富士山!

(文・T.SATO)
(18年6月16日脱稿)


 巨大ロボット軍団vs巨大怪獣軍団の大抗争を描いた、環太平洋防衛軍こと『パシフィック・リム』(13年)の5年後の待望の続編で、前作の10年後の世界を描く。
 主人公はエピソード7こと『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』(15年)やエピソード8こと『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』(17年)でも副主人公として活躍した少々ガタイのイイ黒人青年クンが演じており、日本語吹替版ではイケメンボイス声優・中村悠一がアテている。


 しかし、副主人公でもあるヒロインは、小学校高学年みたいなメカフェチの白人ロリチビ少女であるあたり、なんだか本作も日本のいびつなオタ向けアニメみたいではある。日本語吹替版では、彼女を実力派人気声優・早見沙織がアテていた。
 先の傑作アメコミ洋画『ブラックパンサー』(18年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20180607/p1)でも、ブラックパンサーの妹嬢は各種のコンピューターを自在に操る天才ロリ少女であったけど、ナンなのダこの怪しい符合は!? 巨大ロボットや巨大怪獣のことでは我らがニッポンを見習ってくれてもイイけれど、オタク男子好みの理系女(リケジョ)なロリ美少女嗜好については、世界の労働者諸君は見習わない方がイイとも思うゾ(笑)。


 巨大ロボット軍団の操縦士メンバーには、本邦ニッポンからも、我らがジャンル作品の雄・千葉真一のご子息であられる新田真剣佑(あらた・まっけんゆう)も参戦!
 世界市場・中国市場も意識してか、勃興する中国の巨大IT重工業を登場させて、往年の名作ビデオアニメ『マクロスプラス』(94年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19990904/p1)みたく、有人戦闘機(巨大ロボ)と無人戦闘機(巨大ロボ)のコンペティション・営業合戦みたいな話ともなり、クールビューティーな黒スーツに身をつつんだ美人で痩身の女社長が率いる中国企業とドローン(無人巨大ロボ)が、巨大怪獣以上にワルものの役回りになるのかと思いきや……。それとは別にラスボスがいて、女社長も実はいいヒトで、環太平洋防衛軍に最後は協力を惜しまない、今では莫大な収益を上げる中国市場を意識した(笑)展開ともなっていく。


 世界を動かすハイテク大企業の役回りを我らがニッポンが務めなくなったことに、マンハッタンを買収しまくっていたバブル期のニッポンを知るオッサンとしては隔世の感もいだく。
 しかし、ラストバトルでは、前作でも舞台としなかった本家・元祖である我らがニッポンの大東京の大都心&冬山の富士山のピーカン晴天下で、黒人青年クンと白人ロリ少女が並んで操縦する最後の1体の巨大ロボットvs敵巨大怪獣とが組んずほぐれつ超高速でゴロゴロ転がり背負い投げしたり振り回されつつ、ロケット噴射で超高空に飛翔して富士山の斜面に落下し、裂けた装甲のスキ間から外を覗きながら操縦する、ニッポンのオールドオタにはドコか既視感もあふれる実に暑苦しい超絶バトルが繰り広げられる!――富士山が背景だなんて、ゴジラ映画『怪獣大戦争』(68年)や『マジンガーZ』(72年)に昭和のあまたの東映特撮のオープニング映像みたいでもある――
 ニッポン人としては、葛飾北斎富嶽百景じゃあるまいに富士山はあんなに急峻な円錐じゃないヨ! 東京の目と鼻の数キロ程度の先に富士山が迫って見えるのはドーよ!? あんなに激しくバトルしたら富士山が山体崩壊しちゃって自然破壊だヨ! とツッコミもしたくなる(笑)。
 もちろんリアルな東京&富士山ではなく、世界の人々の脳内での最大公約数としてのニッポン&富士山イメージのあくまで虚構世界内における誇張・単純化されたかたちでの再現なのだから、小者的にウッキームッキーと反発せずに、そこはオトナの余裕ある態度で泰然自若に構えて笑って流そう。


元祖の前作と比すると本作はやはりイマイチか? その原因とは!?


 しかし、ウ~ム。出来についてはイマイチかなぁ。前作と比すると悪いイミで少々人間ドラマ寄りかもしれん。それに世界規模での切迫した危機感があった前作と比べれば、あくまでも戦後の局地戦にすぎないスケールの事件ではあったし。
 ではドーすればよかったのか? 前作と同じような攻防劇・総力戦を描けばよかったのか? いや、前作を超えるのは困難だから、あの世界の戦後を別の角度・側面から切り取って新鮮な物語を作ってみせるべきであったのか?
 おそらく発想としては、後者であったのだろうと私見する。そして、コレが連続TVドラマ展開としての前作の続編であったなら、こーいう少々ミニマムな人間ドラマやSF設定を積み重ねていった果てに帰着するストーリーは、むしろ単発映画でのそれよりも、視聴者にさらなる感慨を催すようにも思うのだ。
 しかし、しょせんは2時間尺の戦闘シーン主体の映画では、綿密でていねいな人間描写の「積み重ね」による手法が適しているとは思われない。むしろ印象的な「点描」での人間描写の手法の方が適していると思われる。
 ……なぞと思ってしまうのも、あくまでも前作の神懸かったテンション・高揚と無意識に比較してしまうからであって、コレが独立したオリジナルの単独作品であった場合は、本作はフツーに楽しく観られた作品であった可能性も高い(笑)。げに作品評価とはムズカしい。


巨大ロボvs巨大怪獣を描く元祖『パシフィック・リム』の設定&作劇をふりかえる!


 元祖の前作『パシフィック・リム』の設定も整理してみよう。
 異次元に通じた太平洋の海溝の底から、ぞくぞくと出現するKAIJUこと巨大怪獣。
 太平洋沿岸部の各国の諸都市は巨大怪獣に蹂躙・破壊され、巨大怪獣の侵入を防ぐために、日本の漫画『進撃の巨人』ばりに万里の長城で都市を囲って生活している。広大な太平洋もまた、日本の近未来海洋戦記漫画『蒼き鋼のアルペジオ』(共に09年・共に13年に深夜アニメ化・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190922/p1)みたく、巨大怪獣の勢海圏となって通交も途絶えている。
 そんな危機に敢然と立ち向かうのは、往年の変身ブーム時代の円谷プロ製作の特撮巨大ロボット『ジャンボーグA(エース)』(73年)やロボットアニメ『闘将ダイモス』(78年)に『機動武闘伝Gガンダム』(94年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/19990804/p1)みたく、機械と人間を接合し、搭乗者の突きや蹴りなどの動きと連動したかたちで巨大ロボットの手足身体も操ることができる、世界各国な無骨な二足歩行の巨大ロボット軍団!
 日本の往年のジャンル作品群の記憶に満ち満ちた設定&映像を、それらに影響を受けた海外のオタクたちが最高級のCG特撮を用いてハリウッドで再現した作品であった。


 クサれオタの筆者としては、奇しくも巨大怪獣vs巨大ロボット軍団の戦いを描いて、巨大ロボも2人1組で操縦していた、本映画をさかのぼることちょうど10年前の深夜アニメ、渡辺宙明センセイが楽曲を手掛けて串田アキラが主題歌を歌うことで、絶滅寸前のオールドオタクをねらいまくっていた快作『神魂合体ゴーダンナー!!』(03年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20040405/p1)との膨大な類似なども想起したモノだ。
 しかし、「萌え」や「美少女」に急速に特化しつつあった当時の若いアニメマニマ間では空気と化したマイナー作品でもあった。残念ながら日本の後代の若いオタたちも、『ゴーダンナー』なぞ振り返らないし、ジャンルの歴史に残った作品ではないので(筆者個人の評価はまぁまぁ高いけど)、『ゴーダンナー』が『パシフィック・リム』のアイデア・ソースであった可能性は低そうだ(涙)。
 ギリシャ神話のオルフェウスと日本神話のイザナギは、共に冥界下りでカミさんを取り戻しに行くけど、日本と彼の地の間に類似した神話がナイ以上は、独自に成立したと推測されるように、神ならぬ身の人間の想像力なんてのも無限ではない以上は、パクらなくても互いに似通ったモノを創造してしまうことも往々にしてあるのだろう。エジプトと中米のピラミッドの類似もしかりだ(笑)。


 要は前作は、ロボ&怪獣がビル街・海浜・浅海・深海で戦っているだけの作品で、あるいはいかに怪獣を倒すかの作戦だけを描いた攻防劇であり、その過程でイイ意味で申し訳程度に登場人物たちの人間像を描くような作品にすぎなかったワケである。しかしそれゆえに、原初的・プリミティブな起承転結は満たしていて、観客にも敵の怪獣を倒してメデタシメデタシのカタルシスを味あわせてくれる作品にはなっており、斯界(しかい)の評価も実に高くて、筆者個人の私的評価も高かった。


元祖の勝因は怪獣の「超獣」化!? 怪獣から小難しいテーマや悲劇性を剥奪したこと!?


 もちろん感情的な好悪だけを云うのは、評論オタクに悖(もと)る行為なので、多少分析チックなことも云わせてもらおう。前作は「怪獣」がイイ意味での「超獣」化、生物兵器化していたことが、作劇の勝因であったと思うのだ。
 往時のオタク第1世代のマニアたちの活動によって、昭和ウルトラシリーズや昭和ゴジラシリーズの堕落の歴史・変遷の象徴のようにも云われて、あるいは1960年代の第1次怪獣ブームまでの作品群を神聖視して、上の世代に粗製濫造だと思わせた1970年代の変身ブームや合体ロボットアニメブームに登場した怪獣怪人・敵ロボットを揶揄するために構築された論法がある。
 60年代までの初期東宝特撮怪獣や初期ウルトラ怪獣たちは、「恐怖」や「核兵器の隠喩」や「大自然の象徴」に「大自然からの警鐘」などのテーマ性を持っていた。しかし、70年代に入るや、東宝怪獣やウルトラ怪獣はテーマや命題を抱えた「生物」としてではなく、ヒーローに問答無用で倒されてもイイように、その同情すべきかわいそうな属性は剥奪され、打倒されるだけの無個性で「武器」や「技能」などの戦闘能力に特化した存在に堕(だ)したからこそ、特撮ジャンルは70年代以降に「冬の時代」を迎えたのであるウンヌンカンヌン(大意)という論法である。
 コレはコレで一理はあったのかもしれない。しかし、今度はそれと引き替えに、マニア世代が作り手側にまわった90年代中盤以降、本邦ジャンル作品は「怪獣」を倒すことに躊躇や罪悪感を過剰にいだくようになってしまった。大怪獣ゴジラだって、水爆による被害者なのである……といったロジックによってである。
 これはこれで誠意ある態度でもあるのだが、このロジックを徹底していくと、悪人にも恋人や家族や子供がいたかもしれないと悩むことになり、怪獣モノにかぎらず勧善懲悪の娯楽活劇作品の存在自体を自己否定しなければならなくなる(爆)。ハリウッドでリメイクされた両『GODZILLAゴジラ)』映画(98年・14年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190531/p1)とて、この弊からは完全には逃れることができなかった。


 しかし、『パシフィック・リム』に登場するKAIJUたちは、『ウルトラマンエース』(72年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070430/p1)に登場した「超獣」たち同様、異次元空間から来襲する侵略的外来種なのだ。多分、我々人類は今のところはちっとも悪くない――今後の追加設定いかんでは知らないが(笑)――。
 生物・動物ではあろうけど、我々炭素系生物とは異なり、古典SFではおなじみ懐かしのガラス・珪素(ケイソ)系生物であるから、ますます遠縁・疎遠でもある。人類とも共生できそうな愛玩動物的な愛嬌もナイ――怪獣各個の形態や得意能力に特化したデザイン的なカッコよさはあれど――。
 よって、罪悪感・同情・憐憫の余地なく、安心して心おきなく戦って、『進撃の巨人』同様に「相手を駆逐」してやる(笑)こともできるのだ。どころか、KAIJUたちには、戦い合った果てにドチラかが死んでしまっても恨みっコなしの古(いにしえ)の武人たちのような潔(いさぎよ)さ・爽快感までもが漂う。ナンという再発見であり再発明(笑)。


 もちろん、このような「相手を駆逐」してもイイ設定&作劇が特撮ジャンルの最終的な到達点であり、「怪獣」の存在にもそれなりの理や情を与えて、同情の余地や人類側へも反省の余地を求めるような作劇がまったくのムダであり寄り道であったのだと云いたいのでもナイ。それはそれでジャンルに純粋娯楽活劇的にはやや遅滞・停滞をもたらしたかもしれないが、同時にドラマ&テーマ的にはたしかに豊穣をもたらしたとも思うのだ。
 しかし、コレで3度目あたりであろうか?(笑) またまた少々煮詰まってきた感もある本邦ニッポンのジャンル作品――煮詰まってきたというのは、あくまでもフワッとした筆者の私見です(汗)――。コレを賦活化(ふかつか)するためにも、改めてキン肉バカな作品である元祖『パシフィック・リム』の設定&作劇については、我々も学ぶべきことが多いのではなかろうか?


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2018年初夏号』(18年6月17日発行)~『仮面特攻隊2019年号』(18年12月29日発行)所収『パシフィック・リム:アップライジング』合評2より抜粋)


[関連記事] ~2018年上半期・特撮映画評

牙狼〈GARO〉 神ノ牙-KAMINOKIBA-』 ~小粒良品!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20180601/p1

ガーディアンズ』 ~酷評のロシアのスーパーヒーロー集合映画を擁護する!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20180604/p1

ブラックパンサー』 ~アメコミ黒人ヒーロー映画で傑作だが、新型のポリコレ・黒人搾取でもあるか!?

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20180607/p1

『ヴァレリアン 千の惑星の救世主』 ~多民族が「共生」ではなく「棲み分け」(笑)する未来像!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20180610/p1

パシフィック・リム:アップライジング』 ~巨大ロボ×巨大怪獣×ロリチビ少女×中国大企業×東京&富士山!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20180613/p1

『レディ・プレイヤー1』 ~ガンダムvsメカゴジラ! 仮想現実に逃避するオタの心理描写が秀逸(涙)

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20180616/p1

アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』賛否合評 ~もはやブランド・権威ゆえ、思考停止で高評価・深読みされてやしないか!?

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20180619/p1

GODZILLA 決戦機動増殖都市』 ~地球人・X星人・ブラックホール第3惑星人・インファント島民 ゴジラvsメカゴジラ!?

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20180622/p1

デッドプール2』 ~軟派C調破天荒ヒーロー改心!? デッドプールvsターミネーター(笑)

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20180625/p1



パシフィック・リム:アップライジング ブルーレイ+DVDセット [Blu-ray]

【Amazon.co.jp限定】パシフィック・リム:アップライジング ブルーレイ+DVDセット(特典映像ディスク付き) [Blu-ray]
パシフィック・リム:アップライジング スチール・ブック仕様 ブルーレイ+DVDセット [Blu-ray]
【Amazon.co.jp限定】パシフィック・リム:アップライジング スチール・ブック仕様 ブルーレイ+DVDセット(特典映像ディスク付き) [Blu-ray]
パシフィック・リム:アップライジング アルティメット・コレクターズ・エディション -シベリア対決セット- [Blu-ray]
【Amazon.co.jp限定】パシフィック・リム:アップライジング アルティメット・コレクターズ・エディション -シベリア対決セット-(特典映像ディスク付き) [Blu-ray]
パシフィック・リム:アップライジング (4K ULTRA HD + Blu-rayセット)[4K ULTRA HD + Blu-ray]
【Amazon.co.jp限定】パシフィック・リム:アップライジング [4K ULTRA HD + Blu-rayセット](特典映像ディスク付き)
パシフィック・リム:アップライジング 3Dブルーレイ+ブルーレイセット [Blu-ray]
【Amazon.co.jp限定】パシフィック・リム:アップライジング 3Dブルーレイ+ブルーレイセット(特典映像ディスク付き) [Blu-ray]



[特撮洋画] ~全記事見出し一覧
拙ブログ・トップページ(最新10記事)
拙ブログ・全記事見出し一覧

ヴァレリアン 千の惑星の救世主 〜多民族が「共生」ではなく「棲み分け」(笑)する未来像!

(2018年9月8日(土)UP)


『パシフィック・リム:アップライジング』 〜巨大ロボ×巨大怪獣×ロリチビ少女×中国大企業×東京&富士山!
『レディ・プレイヤー1』 〜ガンダムvsメカゴジラ! 仮想現実に逃避するオタの心理描写が秀逸(涙)
拙ブログ・トップページ(最新10記事)
拙ブログ・全記事見出し一覧


[特撮洋画] 〜全記事見出し一覧


ヴァレリアン 千の惑星の救世主

(18年3月30日(金)・日本封切)

極彩色の目くるめく映像! 多民族が「共生」ではなく「棲み分け」(笑)する未来像!

(文・T.SATO)
(18年6月16日脱稿)

米ソの有人衛星ドッキング〜宇宙ステーション建造〜常夏の南洋の惑星種族を描く導入部


 大繁栄を誇る星間文明の千の惑星を一挙に壊滅させるほどの大クライシスを、外患から救ってみせる超スケールのお話か……と思いきや。千の惑星の民が住まう多民族な超巨大宇宙ステーションに迫る小クライシスを、プロフェッショナルな特殊捜査官でもある少年少女コンビが内憂から救ってみせるというお話であった。


 本作の物語は1975年にはじまり、我々オッサン世代には懐かしい洋楽デビッド・ボウイの楽曲が流れる中、コレまた懐かしいアメリカのアポロ18号と旧ソ連ソユーズ19号の衛星軌道上でのドッキングと互いにハッチを開けて米ソの宇宙飛行士が笑顔で握手を交わす映像が描かれる。
 ここに80年代・90年代・21世紀を通じて、次々に世界各国の宇宙船がドッキングしていくことで仮想歴史と化して、東洋・中東・黒人などの人種・民族・文化の違いを超えた宇宙飛行士たちが次々と握手を交わしいき、ドッキングを重ねて人工衛星になった宇宙船群を中核に資材が運び込まれて、巨大な宇宙ステーションが建造されていくサマも描かれる。
 あまりにも巨大になった宇宙ステーションは自重による地球落下の危機を避けるためか、バーニアを噴かせて外宇宙へと大航海に乗り出す。その航海中にも次々と遭遇していく数十数百の宇宙人種族たち。彼らとも平和裡に後楽園ゆうえんちでボクと握手していく、これら一連の数分にわたる映像がすばらしい。
 もちろんコレは本作の主要舞台となる超巨大宇宙ステーションの成り立ちで、多民族が共生するエスニックな本作の世界観をも端的に映像で表現してみせる見事な導入部だ。


 凶暴・凶悪・侵略的な宇宙人はいなかったのかヨ!? 言語体系・メンタルからして意思疎通が困難な昨年の洋画『メッセージ』(16年・日本公開17年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20170516/p1)みたいな、初見では人類に吐き気さえ催させる巨大タコ型宇宙人もいなかったのかヨ!? 『新スター・トレック』(87年)の宿敵で、政治的な悪しき「全体主義」を象徴させていた集合生命の機械生命体・ボーグみたいな存在とも遭遇しなかったのかヨ!? 握手が友好を意味しない宇宙人はいなかったのかヨ!? というイジワルなツッコミを想起しないでもないけれど――手が粘液まみれの宇宙人はいたけど(笑)――。
 もちろんそのへんに脱線すると、本作はあまりに煩雑になるし、今までにも散々あったアリがちな侵略SFや異文化交流SFになってしまうので、しょせんはフィクションなのだから「この作品の世界観ではとりあえずはそーなっている」ということで割り切るのが粋(いき)というものだ。


 続けて、陽光まぶしく南洋の浜の真砂も美しい惑星に住まう、おそらく元はモーションキャプチャーであろうけど、人間のプロポーションよりも多頭身な3D−CGで描かれる牧歌的な宇宙人種族の老若男女たちが、簡素な竪穴住居に住まう平和で質素で高貴でもある日常と、その惑星のディズニーでピクサーで漫画チックなかわいらしい小生物に真珠(?)を食べさせると、その真珠が数十倍返しにもなって潮吹きされる、質量保存の法則に反した(笑)光景も描かれる。
 そこに近隣で勃発した宇宙戦争の余波により、撃沈された超巨大宇宙戦艦群がはるか超高空に小さくボンヤリ姿を現わし、破片もろとも幾艘もが爆煙の細い尾を引いて落下してきて、恐竜大絶滅的なカタストロフが訪れる。
 今落下してきたけど辛うじて無事であったモノか元からあったモノかは不明なれども宇宙戦艦の残骸に、辛うじて一部の住民は避難する。逃げ遅れた王女さま(?)はハッチの窓ガラス越しに人々と手と手を合わせるものの、そこにマッハの猛烈な爆風が押し寄せてきて……。
 という夢を見て、主人公少年がハッと目覚める(笑)。


 物語後半のキモとなっていく、小動物・亡国の民・王女さまの残留思念を伏線として披露する、第2の導入部もまた、別項でふれた同年早々のジャンル系邦画『牙狼〈GARO〉 神ノ牙―KAMINOKIBA―』(18年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20180601/p1)の世界観説明の第1の導入部と予知夢的な伏線の第2の導入部同様、作劇の基本に教科書的に忠実でもある――ベタともいう――。


 その後は展開が散漫だとの批判もあるようだ。エ〜、そうかなぁ。その後をストレートにヒネりなく描くと、この作品はエラく単調な作品になってしまうと思うけど。


極彩色の目くるめく映像! 多民族が「共生」ではなく「棲み分け」(笑)する未来像!


 前半の目玉は、違法取引されている危険な「エネルギー変換器」の奪取作戦中における超現実的な映像だ。主人公少年&少女は、さる惑星の地表にある巨大マーケットに赴く。一見すると砂漠に囲まれた閑散とした土地なのだが、特殊ゴーグルを付けるとVR(仮想現実)なのかAR(拡張現実)なのかもよく判らない、多分両者が入り交じった、膨大な宇宙人種族が行き交う猥雑な巨大バザールへと変わる。
 だけでなく、高層建築や地下階層にも潜入ができる。現実世界でのほぼ何もナイ広々とした平坦な土地や、売買や奪取した物品の現実化・物質化と、VR&ARとはツジツマが合っていないようにも思うので、電脳世界だけではなく、半ばは異次元、畳み込まれた拡張余剰空間を物理的にも往還しているようなデタラメさも少々感じるけれども……、今どきの作品だから、きっとSF考証のヒトがもっとらしく後付けしたウラ設定などもあるのだろう!?
 ここでゲットした「エネルギー変換器」というのが、小型犬やネコを入れるような堅牢なボックス檻であり、柵の中には先の亡国の「小動物」の最後の一匹がいた(笑)。


 後半の目玉は、「変換器」を届けた先の超巨大宇宙ステーション内での大騒動。宇宙ステーションの最古層に近い最深部で、実は原因不明の放射能汚染が発生しているという。そして、主人公少年&少女が護衛についた放射能問題専門の司令官がステーション内で拉致される! ナンとその不逞の犯人たちは先の「亡国の民」たちだ(汗)。
 ステーション内にはあまたあるらしい巨大空隙を縫って、高速戦闘機でチェイスするやら、その原理が筆者にはよくわからず元からダミーの壁だったのか超近代的な科学力ゆえなのか、途中から少女の遠隔アドバイスで主人公少年は徒手空拳でステーション内の隔壁を奥に上に下へと次々に自在にスリ抜けたり浮遊したり落下して、陰気な動力室やら、黄や青や緑などに彩られた極彩色のアミューズメント(?)空間やら、「多民族の共生」と云いつつもやっぱ「棲み分け」じゃんとシニカルな筆者なぞはツッコミもしたくなる(笑)多種多様な宇宙人種族ごとの居住ブロックやら、怪しいネオンに満ち満ちたオトナの歓楽街やらを横断したり縦断したりしていく、一連の超巨大宇宙ステーション内における東方見聞録的でエスニック・民族学的なCG特撮映像も実に見事だ。


 で、いろいろあって、追いついた少女と少年がついに辿り着いた先は、亡国の民が住まうステーション内の超巨大半円筒型の屋根に包まれた空洞空間。今回の一連の事象は主人公少年にやどっていた亡国の王女さまの残留思念の導きでもあったらしい!? そして、2時間ミステリドラマのラストのごとく、空洞空間に投影された立体映像で明かされた亡国の真相とは……。惑星近辺での使用を禁じられていた超兵器の使用を勝利に逸って起爆させた軍人司令が、先の司令官そのヒトであり、以後も司令官はその隠蔽に走っていた! といったところで、ナゾ解きドラマの方は終了。
 もちろん本作は推理ドラマでもないので、水戸黄門の葵の印籠にはヒレ伏す悪党も、暴れん坊将軍の葵の紋だと一瞬ヒレ伏しても逆切れして刃向かってくるパターンで(笑)、指令官は配下の多数の等身大ロボットともども、主人公男女と亡国の民の抹殺にかかってくる!
 しかして、組織の上層部は全員悪人だ! オトナはみんな汚い!(笑) みたいなマルクス主義的な安直な階級闘争図式はさすがに今の時代にアンフェアで単純にすぎると思ったか、組織全体が腐敗していて悪党であるということではなく、世界連邦の善なる特殊部隊もそこに突入してきて、悪の司令官相手にドンパチがはじまって、時限爆弾の解除も並行して描かれることで、クライマックスを作っていく……。


本作もそこまで酷評すべきではない水準作では!? 美男美女主人公の是非!?


 で、ググってみた。この作品もボロカスに酷評されているなぁ(汗)。キミたちは「スキとキライだけで、フツーがないの」か? 中間のなだらかな無限グラデーションのところを行きつ戻りつ是々非々で語るような技量はナイのかヨ(笑)。筆者も別に本作を大ケッサクだと強弁する気はないけれど、そこまで拙い底抜け凡作でもないでしょ。


 本作は線の細い繊細ナイーブさ&顔面にもあどけなさを残した白人美少年&白人美少女が主人公。白人美少年の方はマーベル社のアメコミ洋画『アメイジングスパイダーマン2』(14年)の親友にして敵にまわった怪人グリーンゴブリン、白人美少女の方もDC社のアメコミ悪党洋画『スーサイド・スクワッド』(16年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20160912/p1)のラスボスの魔女エンチャントレス役かつ魔女に憑依される女考古学者役で出演していて、ジャンル的にも縁がある御仁のキャスティングといったところか?


 加えて、この白人美少年の方は登場早々から一応は職務中にも関わらず、白人美少女に軽薄なトーク口説き落とそうとしつづける。日本で云うなら80年代以降的、異能のジャンル脚本家・井上敏樹的なキャラでもある(汗)。
 対する美少女キャラもいわゆるイイ女ではあるけれど、コレが腰軽オンナであったりウブであったりマンザラでもないと男に対してイロ眼を使ったりするようであれば、男に媚びを売るイヤ〜ンな感じが微量に漂ってくるかもしれない。
 しかし、彼のナンパに動じるでもなく徹底無視するでもなく、当意即妙に言葉を返し冗談であしらい続けるあたりのクールでサバけた感じも、このテの男女コンビのキャラシフトのアリがちなお約束かもしれないけど、幼い愛くるしさも残る見た目とは反するのでポイントは高い。日本語吹き替え担当は、またまた登板した少々姐御ハダな美人ボイスの沢城(さわしろ)みゆき嬢。


 主人公が10代後半(?)のようにも見える美少年&美少女というあたりで、筆者のようなオタは日本のアニメやラノベっぽさも想起する。こんな若造たちが歴戦錬磨の特殊捜査官!? アニメ作品ならば実写作品と比して、良くも悪くもリアリティの喫水線が下がるので、この作品ではそーいうことになっていると無意識に割り切ってしまえるのだが、実写だと少々引っかかってしまう。
 いやもちろんそー感じてしまうのは、筆者がオッサンの年齢に達したからでもあるだろう。ここで初老のブサイクなオジサン・オバサンを主人公に据えてしまったなら(笑)、P・C、ポリティカル・コレクトネスで、「(左翼)政治的には正しい」のかもしれないけど、映画としては少々華に欠けてしまう。地味なオジサン・オバサンばかりの宇宙船クルーが登場したSF洋画『エイリアン:コヴェナント』(17年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20171104/p1)という作品も昨年あって、筆者のような映画慣れしたオッサンはそれでも実は多分OKではある。
 しかし、自分が年少だったころも振り返って思うに、漫画・アニメ・劇画的にルックスや性格が適度に誇張・単純化されたキャラがいなかったり、劇中内での視点人物たりうる成長過程の少年少女がいない作品だと、子供や青少年の観客にとっては感情移入がしづらいようにも思うので、本作の若年男女コンビもあながち間違いではないのだろう。


 さらにググってみると、本作は1967年から50年以上(!)も連載がつづいているフランスの人気SF漫画が原作で、2007年には下請けを日本のアニメ製作会社にしてTVアニメ化もされているようだ。であれば、少年少女向けなキャラシフトや若造なルックスは、出自的にも生誕地・フランスにあっては必然であったかもしれない!?
 とはいえ、多民族が平和裡に共生する世界観の一見リベラルな本作でも、大衆向けの通俗娯楽作品である以上は、主人公/脇役というカースト制度や、社会的身分制度が撤廃されてもなお残るイケメン/ブサメン、モテ/非モテカースト制度までをも撤廃したような、ウルトラ絶対平等の超モダンな未来像の作品までは達成ができなかったようである……。
 もちろんコレは冗談で、「(画面から浮かび上がって見える)主人公/(画面に埋没ぎみな)脇役」などの区別・濃淡を付ける作劇的な「制度」それ自体を、物語作品一般の根底から否定し尽くすことができるなぞとは、筆者もまったく思ってはいない。むしろ、この「制度」自体が人間の主観に映じる光景や、周囲のあまたの事物との距離の方位・高低・遠近感などにも抜きがたく根差している以上は、排他的差別の域に達しないかぎり、許容されてしかるべき必然・必要悪であるとすら思っている(……ンなオオゲサな話か?・笑)。


ジャンル系映画としての訴求力不足は、敵も味方も「ただの人間」であったことか!?


 本作はジャン・レノ主演の殺し屋映画『レオン』(94年)やSF映画『フィフス・エレメント』(97年)などを手掛けたフランス人監督リュック・ベッソンによるフランスの大作SF映画でもある。
 ただし、クリスチャン作家・故遠藤周作原作の洋画『沈黙―サイレンス―』(16年・日本公開17年)で、ポルトガル人宣教師が英語をしゃべっていたのと同様(?)、世界市場でも売るためにか、本作でも登場人物はフランス語ではなく英語をしゃべっていた(笑)。
 日本の特撮マニア的には、昭和〜平成の「仮面ライダー」や「スーパー戦隊」を手掛けてきた映像派の鬼才・故長石多可男カントクも私淑したカントクさんの作品でもある。スキューバ・ダイビングを扱ったベッソン監督の映画『グラン・ブルー』(88年)の、水平線が横切る青暗い星空と海面に小さくダイバーとイルカが戯れている姿が描かれた宣伝ポスター。『超光戦士シャンゼリオン』(96年)の主人公の探偵事務所や、『電磁戦隊メガレンジャー』(97年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20111121/p1)の高校生戦隊が集うデジタル研究会の部室の壁に、それが貼られていたことを思い出すロートルオタクもいるであろう。


 夢幻感あふれるカラフルで多彩な映像は実に凝っていてすばらしい。ただしSF映画的なハデなメカ戦や、ヒーロー映画的な異能のキン肉バトルはない。
 敵さんも味方も「宇宙人」や「未来人」や「超能力者」などの外敵や異形の超越キャラではなく、「ただの人間」である(笑)。
 直接的な怒りをぶつけて戦いを挑むべき相手が敵キャラだったのではなく、間接的な遺恨の相手の正体が上層部の上官であったと特殊捜査の過程で判明するあたり、コレはコレで物語のバリエーションのひとつとして充分にアリだとは思う。平常心で鑑賞する連続TVドラマシリーズの積み重ねや伏線の果ての終盤にコレを配置したら、卑劣な悪党に対する懲罰のカタルシスがもっと出て効果的だったとも思う。
 しかし、もう少し直情的で非日常的な高揚を大勢が手っ取り早く味わいたいであろう「映画」という媒体では、正義と悪との間接的な関係性が少々物足りなかったのかもしれない。本作に不足を感じる御仁の根っコを勝手におもんばかると、そんな感慨が働いているのではなかろうか?


 その点ではイッキに目的地に辿り着かず、超近代的な宇宙ステーション内にも存在する歓楽街やら暗黒街へと寄り道するくだりは、連続TVシリーズや連載漫画の一編としてならまだしも、2時間で完結させる映画媒体ではオミットした方がよかったか、ラスボス司令官とも通じているなり反発しているなりの感情的な接点や因縁を、たとえご都合主義でも世間が狭くても歓楽街や暗黒街のキャラたちにも持たせた方がよかったのかもしれない。ただまぁそのへんは筆者も後知恵の見解であり、まぁまぁタイクツせずに鑑賞することができたのも筆者にとっての事実である。


 ……エッ、主人公の少年(?)の役者さんの実年齢って30歳を過ぎてたの!?(爆)


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2018年初夏号』(18年6月17日発行)〜『仮面特攻隊2019年号』(18年12月29日発行)所収『ヴァレリアン 千の惑星の救世主』合評2より抜粋)


[関連記事]

『メッセージ』 〜ヒトの精神が語彙・語順・文法に依拠するなら、異星人の超言語の取得で、世界認識も拡張するのか?

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20170516/p1

エイリアン:コヴェナント』 〜エイリアンの起源問題・人造人間の知性問題は枝葉! 肝はスリル&サスペンス!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20171104/p1

[関連記事] 〜2018年上半期・特撮映画評

牙狼〈GARO〉 神ノ牙―KAMINOKIBA―』 〜小粒良品!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20180601/p1

ガーディアンズ』 〜酷評のロシアのスーパーヒーロー集合映画を擁護する!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20180604/p1

ブラックパンサー』 〜アメコミ黒人ヒーロー映画で傑作だが、新型のポリコレ・黒人搾取でもあるか!?

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20180607/p1

『ヴァレリアン 千の惑星の救世主』 〜多民族が「共生」ではなく「棲み分け」(笑)する未来像!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20180610/p1

パシフィック・リム:アップライジング』 〜巨大ロボ×巨大怪獣×ロリチビ少女×中国大企業×東京&富士山!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20180613/p1

『レディ・プレイヤー1』 〜ガンダムvsメカゴジラ! 仮想現実に逃避するオタの心理描写が秀逸(涙)

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20180616/p1

アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』賛否合評 〜もはやブランド・権威ゆえ、思考停止で高評価・深読みされてやしないか!?

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20180619/p1

GODZILLA 決戦機動増殖都市』 〜地球人・X星人・ブラックホール第3惑星人・インファント島民 ゴジラvsメカゴジラ!?

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20180622/p1

ブラックパンサー 〜アメコミ黒人ヒーロー映画で傑作だが、新型のポリコレ・黒人搾取でもあるか!?

(2018年9月9日(日)UP)
『アベンジャーズ/エンドゲーム』 ~タイムパラドックス&分岐並行宇宙解析!
『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』賛否合評 〜ブラックパンサー参戦! もはやブランド・権威ゆえ、思考停止で高評価・深読みされてやしないか!?
『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』 〜ブラックパンサー初登場! ヒーロー内紛劇は成功したか!? 日本特撮が立ち遅れた原因は!? 世界観消費へ!
拙ブログ・トップページ(最新10記事)
拙ブログ・全記事見出し一覧


[アメコミ洋画] ~全記事見出し一覧
[特撮洋画] 〜全記事見出し一覧


ブラックパンサー

(2018年3月1日(木)・日本封切)

アメコミ黒人ヒーロー映画で傑作だが、新型のポリコレ・黒人搾取でもあるか!?

(文・くらげ)
(2018年3月31日脱稿。6月15日改訂)


 ヒーロー集団・アベンジャーズの一員でも地味な存在の『ブラックパンサー(2018)』が、アメリカで社会現象とも言える大ヒット。連日の興収トップでマーベル単体ヒーローで最大の成功作となりました。とはいえ日本人が観てそこまで面白いか? と言われると疑問が残ります。変身ヒーローなら何でもいいという我々のような人種はともかく(笑)、終映後の映画館にも「なんでそんなにヒットしたの?」的な空気が漂ってました。


 アメリカでの『ブラックパンサー』の大ヒットの理由は明白で「黒人のヒーロー」だからですね。黒人ならこれまでもアベンジャーズには、主役ではないけどアイアンマン2号のウォーマシンや、キャプテンアメリカの相棒ファルコンがいたわけですが、やっぱりああいうオモシロ黒人の扱いだとダメなんでしょう。1966年にデビューしたブラックパンサーはアメコミ史上初の黒人ヒーローで、西欧社会に溶け込まない架空のアフリカ国家“ワカンダ”の王ティ・チャラが変身する正統アフリカンヒーローです。あらゆるアメコミヒーローで一番金持ちなのはバットマンでもアイアンマンでもなくこのブラックパンサーですね。国王がそのままヒーローですからケタ違いです。アメコミは「金持ちしかヒーローになれない」傾向がますます強くなってます。


 監督はライアン・クーグラー。『ロッキー(1976)』シリーズの最終作『クリード チャンプを継ぐ男(2015)』の監督です。『クリード』で主演したマイケル・B・ジョーダンは本作でも敵役エリック・キルモンガーを演じます。この映画は主役から脇役までほとんどが黒人で、主要キャストに白人が2人しかいません。英語に加えコサ語やらイボ語が飛び交う本気のアフリカ向け映画です。『ブラックパンサー』が黒人監督・黒人キャストでも大ヒットが出せると証明した功績は大きいでしょう。今年2018年のアカデミー賞は女性と黒人が高らかに権利をうたい上げる「政治的に正しい」オスカーでしたが、そういう時流にもうまくハマったわけですね。このタイミングで黒人ヒーローを持ってきたマーベルとディズニーの作戦勝ちと言えます。とはいえ同じディズニー配給で女性と黒人を主役に据えた『スター・ウォーズ』がどんどん評判を落としてるわけで、政治的に正しきゃいいってもんでもないですが。


 かつてアメリカで『黒いジャガー(1971)』とか『コフィー(1973)』とかやたらクールな黒人が白人の支配層をブチのめす映画が流行りました。そのジャンルは皮肉交じりに「ブラックスプロイテーション(黒人搾取)」と呼ばれ、その利益が白人の懐に入るのがバカバカしくて廃れたわけですが、流行りのPC、「ポリティカル・コレクトネス(政治的に正しい)」も結局は形を変えた「ブラックスプロイテーション」じゃないかって気がします。黒人の支持を取り付けて白人が儲けるわけですね。今こそTVドラマ『ルーツ(1977)』をリメイクする時だ! と思ったら2016年にひっそりとやってました。クンタ・キンテ。まあアメリカの人種問題も白人対黒人で割り切れるほど単純じゃないだろうし、そっちはもっと意識の高い人たちに任せて(笑)、特撮ヒーロー同人誌『假面特攻隊』としてはブラックパンサーが如何にヒーローとしてカッコいいかだけ論じることにしましょう。


 ブラックパンサー=ティ・チャラを演じるチャドウィック・ボーズマンはウィル・スミスを思わせるハンサムですが、黒の全身タイツというのはヒーローとしてはいかにも地味です。マントや突起もないのでやられ役の戦闘員みたいに見えます。ただ黒人の体形美というか筋肉を強調したフォルムがカッコよくて、アメコミはやっぱり筋肉ですよ。
 やれアフリカのヒーローだから呪術で戦うんだろうとか、太鼓を叩いて踊るんだろうとか、漫画『ジャングル黒べえ(1973)』あたりをイメージすると裏切られます。ワカンダは現代社会の遥か上を行く超先端国家で、迷信や呪いの入り込む余地はありません。アフリカ文化が白人の搾取を受けず、欧米の影響を受けずに発展すればこうなるかもという未来社会のイメージで創られていて、ちょっと『スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス(1999)』の惑星ナブーっぽかったですね。ジェダイ評議会みたいな国会も出てくるし。


 アフリカの内陸国であるワカンダが何故そんなに発展したかというと、500年前に“ヴィブラニウム”という鉱石で出来た隕石がアフリカのど真ん中に落ちました。このヴィブラニウムは何でもありのチート物質で、有名どころではキャプテンアメリカの盾がヴィブラニウム製です。これを資源として活かすことでワカンダは超科学文明を築いた設定で、ブラックパンサーはヴィブラニウムの守護者として受け継がれたワカンダ国王の称号なんですね。ティ・チャラは『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ(2016)』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20160701/p1)の時に爆破テロで死んだ父ティ・チャカに替わってワカンダ国王の座を引き継ぐことになります。ワカンダはヴィブラニウムを白人の搾取から守るため、おもてむきは牧畜を主産業とした貧しい小国ということになっていて、地上はよくあるアフリカの風景ですがこれは世を忍ぶ仮の姿で、地下には広大な未来都市が広がっています。貧しい仮面の下は超大国。つまりワカンダは「国そのものが変身ヒーロー」という世にもめずらしい国家です。


 ブラックパンサーのスーツはヴィブラニウム文明の粋を集めたハイテクスーツで、これを開発したのが国王の16歳の妹、シュリちゃん(レティーシャ・ライト)です。いくら王族でも16歳でハイテクスーツの開発って日本のアニメ並みに嘘臭いです(笑)。ブラックパンサーのスーツには敵の攻撃のエネルギーを溜め込む機能があって、弾をはじくだけでなく銃弾のエネルギーを吸収し攻撃の力として使えるんですね。変身のプロセスも牙型のネックレスからモザイク状に全身を覆っていくスマートな物で、本当に16歳の少女が開発したの? 天才少女で売りたいだけでゴースト開発者がいるんでしょ? というくらい凄いスーツでした。


 ブラックパンサーは事件があるとUFOのような乗り物(ロイヤル・タロン・ファイター)に乗って世界を飛び回ります。タロン・ファイターのモチーフはアフリカの仮面だそうですが、デザインが飛行機じゃなくて宇宙船なんですよね。他にもトビウオみたいな戦闘機とか出てくるんですが、もう少し現実味というか「ちゃんと飛びそうな」デザインにして欲しかったです。全体にメカニックは好みじゃなかったですね。これもシュリちゃんが作ったのか?


 韓国で武器商人がヴィブラニウムの取引をすると聞いた国王は自らプサンの街に潜入します。黒人美女二人を連れて007みたいな白スーツを決めているのでえらい目立ちます。市場の中に秘密のカジノがあるという情報を掴み、魚屋のおかみに話をつけてカジノへ潜入します。このおかみさんが『ブレードランナー(1982)』で“強力わかもと”を口にしてたゲイシャさんらしいんですが、面影が残ってて嬉しくなりましたね。カジノでは武器商人が闇取引の真っ最中で、ここで登場するのが『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン(2015)』でウルトロンに左腕を吹っ飛ばされたユリシーズ・クロウ(アンディ・サーキス)です。吹っ飛ばされた左腕をアームキャノンに改造しての再登場ですが、アンディ・サーキス(『猿の惑星』新3部作(2011・2014・2017・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20171107/p1)主演や、『ロード・オブ・ザ・リング(2001)』シリーズの小人ゴラム!)の濃い演技もあって出色のキャラです。今作で死んでしまうんですが、今後のアベンジャーズでレギュラー化して欲しいくらいのいいキャラでした。


 逃走したクロウと取引相手を追ってプサンの街でカーチェイスが始まります。ここでも天才少女シュリちゃんが大活躍で、車を操る遠隔操縦シミュレーターでワカンダにいながらにして韓国でカーチェイスしてしまいます。未成年が運転していいのかという疑問は残りますが、遠隔操縦だからいいんでしょう。ブラックパンサーと共に大立ち回りを演じるのがティ・チャラ国王の幼馴染のナキア(ルピタ・ニョンゴ)と国王親衛隊“ドーラ・ミラージュ”のリーダー、女戦士オコエダナイ・グリラ)です。特にオコエさんがカッコよかったですね。ブラックパンサーとは対照的な鮮やかな深紅の出で立ちで、ヴィブラニウム製の槍を操って敵をバタバタとなぎ倒します。ドーラ・ミラージュのメンバーは女性ばかりでみんなスキンヘッドなんですが、アフリカ系の女性は頭の形が綺麗ですよね。


 武器商人クロウを殺しヴィブラニウムを手に入れたのが真の敵、エリック・キルモンガー(マイケル・B・ジョーダン)です。彼はワカンダ人にも関わらず、ある事情でアメリカにとり残され、戦場を渡り歩くうちに歪んだ人間です。お坊ちゃん育ちのティ・チャラもアメリカ社会で生きればこうなったかも知れないわけで、キルモンガーは単なる悪役としては描かれません。彼の目的はヴィブラニウムの力で軍事的に白人世界を支配することです。彼もまた王の血筋であることが中盤で明かされます。ワカンダの血族であるキルモンガーは王位継承を懸けてティ・チャラに挑戦し、掟によりティ・チャラはこの戦いを受けることになります。


 キルモンガーは一度はティ・チャラに勝利し王位とブラックパンサーの力を手にします。ティ・チャラはこの戦いで命を落としますが、ヴィブラニウムのパワーを秘めたハーブの力で蘇ります。クライマックスは王座を手に入れたキルモンガー軍と、蘇ったティ・チャラ軍の全面対決です。終盤ではキルモンガーもブラックパンサーと同じスーツを身に纏って戦いますが、ティ・チャラにとっては自己の分身との戦いでもあるわけですね。戦いの末ブラックパンサーはキルモンガーを破り、キルモンガーはティ・チャラの腕の中でワカンダの夕陽を浴びながら息絶えます。


 欧米世界がアフリカにしてきたことを考えれば「白人は皆殺し」というキルモンガーの主張にも分があると思うんですが、そのキルモンガーを倒して白人世界のヒーロー集団・アベンジャーズに参戦したブラックパンサーの行動にどう整合性を付けるかが今後の課題になるでしょう。物語のラストでティ・チャラ国王は、世界の表舞台から姿を隠してきたワカンダの秘密を世界に公開することを決意します。悪いこと言わないからそれだけはやめとけと思うんですが、国王の決意ならしょうがないですね。ティ・チャラ国王がアメリカ進出の拠点に選んだのがキルモンガーが子供時代を生きた場所(オークランド)というのがなかなか感動的でした。


 ブラックパンサーは翌月4月公開の『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20180619/p1)でも活躍するでしょうが、アベンジャーズでの出番が増えればワカンダよりもアメリカのために戦うことになるわけで、今後のブラックパンサーの身の振り方が気になるところです。これだけヒットすれば当然続編もあるでしょうしね。ラストでいつものようにオマケ映像がありますが、唐突にキャプテンアメリカの旧友ヒーロー・ウィンターソルジャーがワカンダの大地に現地の子供たちと出てくるよく分からないオマケでした。ネットではウィンターソルジャーがホワイトウルフ(ブラックパンサーの義兄弟キャラ)になるという噂がありますが、現時点では未確定です。考えてみると今回アベンジャーズの客演はこのラストだけでしたね。


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2018年春号』(18年4月1日発行)〜『仮面特攻隊2019年号』(18年12月29日発行)所収『ブラックパンサー』合評2より抜粋)


ブラックパンサーの故郷・ワカンダ国の開国に反対する(笑)

(文・T.SATO)
(2018年4月15日脱稿)


 アフリカの最貧国・ワカンダの正体は、ウルトラの星・U40(ユー・フォーティ)――実写の『ウルトラマン』シリーズとは別世界であるTVアニメ『ザ☆ウルトラマン』(79年)#20「これがウルトラの星だ!! 第2部」(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20090914/p1)におけるウルトラマンの故郷――が鎖国体制を敷いたような、緑豊かな大地の地底に超近代的な高層ビルが乱立する、アイアンマンの科学力もメじゃない、オーバーテクノロジーで未来都市な超先進国で、ワガンダ1国さえあればアベンジャーズも要らないんじゃネ? というほどでしたけど、当方も本作ラストにおける、ワカンダ国の開国には反対いたします(爆)。


 少なくとも、徐々に小出しにワカンダ国の真相を明かしていくのならばともかく、「ボクのことをすべて解ってほしい!」(笑)ばりの思春期の少年少女みたいな、すべてを一挙に明かすような振舞いは、リアルに考えたら百害あって一利ナシの、世界各国の軍事的パワーバランスを崩してしまうような行為だよなぁ。
 それに価値中立的な超金属・ヴィブラニウムだから、すべてをオープン・透明に披露する行為が絶対正義のようにも見えるけど、アレが放射性物質核兵器の元となるような危険な超物質であったなら、安直な情報開示は「悪」だろう(汗)。


 『動物戦隊ジュウオウジャー』(15年)最終回における人間世界と獣人世界が融合しちゃうラストなどもそうだけど、個人的には学校のクラスや職場での「みんな仲良し」というテーゼに息苦しさを感じてきた我々オタが、異文化コミュニケーションどころか同じ日本人でも性格類型の違いだけで、イケてる系やヤンキーDQNやファッション&スイーツな連中や一般ピープルどもと、コレでもか!? というほどに解り合えない、ということがすでに判明しているというのに(笑)、こんな歯の浮くようなキレイごとに、非コミュのオタどもが安易に同調・協賛しやがって! なぞと不満であったりもする……。


 とはいっても、解り合えない者同士が殲滅戦をやれ! と推奨しているのではなく、イジメっ子/イジメられっ子、肉食系/草食系、体育会系/文化系は、ムリにベタベタと生活圏をいっしょにせず、「棲み分け」的に少々の距離を置いた上で「共生」すればイイ、というのが当方の個人的な結論。
 移民などが増えて、自己主張が強い御仁の方が望ましいという「グローバル・スタンダード」(爆)がますます強まっていったら、良くも悪くも日本的ムラ世間な「いたわり」「察し」「思いやり」の手弱女(たおやめ)的な文化もますますウスれて、我々「性格弱者」が暮らしにくい世の中になり、コレに生きづらさを感じる連中の一部が、またまた秋葉原通り魔事件なぞを起こすと思うゾ(汗)。
――コレが個人単位ならぬ集団規模での反発になると、排他的ナショナリズムへと容易に転化していく――


 まぁ開国後のワガンダで、時代小説作家・山本周五郎の『人情裏長屋』(1948年)に出てくるような弱々しい江戸の庶民・難民ではなく、実は周辺諸国からワカンダへなだれこむ難民・貧民の方も、刹那的・享楽的・旅の恥はカキ捨ての犯罪者的ヤンキーもけっこういたり、ワカンダ国民に迷惑をかけるどころか悪事を働いたりして(汗)、それに対するワカンダ国民側の道義的反発心が、かえって排他的なワカンダ・ナショナリズムを勃興させる逆説・パラドックス・風刺劇を、その後の『アベンジャーズ』シリーズでも延々と描いていけば、実に現代的であり、個人的には大絶賛するけれど(笑)。


 どうしても「棲み分け」がムリで、「和合」するしかないのだとしても、人間は大文字の「人道」や「理想」や「理性」や「ロジック」のみにて生きるにあらず。「漸進主義」での少人数ずつでの徐々にでの移民流入で、お互いに慣らしながら和合していくべきだと考える。


(了)
(初出・拙ブログ当該記事)


[関連記事] 〜マーベル社アベンジャーズ・アメコミヒーロー洋画評

アベンジャーズ/エンドゲーム』 ~タイムパラドックス&分岐並行宇宙解析!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190617/p1

スパイダーマン:ホームカミング』 〜クイズ研究会(?)に所属する文化系スパイダーマンの弱者友人たち(汗)

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20170901/p1

マイティ・ソー バトルロイヤル』 〜新敵出現で宿敵の悪神が正義に協力!(笑) 欧米も実は神仏習合だ!?

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20171116/p1

ブラックパンサー』 〜アメコミ黒人ヒーロー映画で傑作だが、新型のポリコレ・黒人搾取でもあるか!?

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20180607/p1(当該記事)

ドクター・ストレンジ』 〜微妙な世評が多いが、かなり面白い!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20170504/p1

ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』 〜世界的に好評だが私的にはイマイチ。軽薄ヒーローもの全般にいえる作劇的弱点!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20170513/p1

アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』賛否合評 〜もはやブランド・権威ゆえ、思考停止で高評価・深読みされてやしないか!?

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20180619/p1

シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』 〜ヒーロー内紛劇は成功したか!? 日本特撮が立ち遅れた原因は!? 世界観消費へ!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20160701/p1


[関連記事] 〜2018年上半期・特撮映画評

牙狼〈GARO〉 神ノ牙-KAMINOKIBA-』 〜小粒良品!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20180601/p1

ガーディアンズ』 〜酷評のロシアのスーパーヒーロー集合映画を擁護する!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20180604/p1

ブラックパンサー』 〜アメコミ黒人ヒーロー映画で傑作だが、新型のポリコレ・黒人搾取でもあるか!?

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20180607/p1(当該記事)

『ヴァレリアン 千の惑星の救世主』 〜多民族が「共生」ではなく「棲み分け」(笑)する未来像!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20180610/p1

パシフィック・リム:アップライジング』 〜巨大ロボ×巨大怪獣×ロリチビ少女×中国大企業×東京&富士山!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20180613/p1

『レディ・プレイヤー1』 〜ガンダムvsメカゴジラ! 仮想現実に逃避するオタの心理描写が秀逸(涙)

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20180616/p1

アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』賛否合評 〜もはやブランド・権威ゆえ、思考停止で高評価・深読みされてやしないか!?

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20180619/p1

GODZILLA 決戦機動増殖都市』 〜地球人・X星人・ブラックホール第3惑星人・インファント島民 ゴジラvsメカゴジラ!?

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20180622/p1

デッドプール2』 〜軟派C調破天荒ヒーロー改心!? デッドプールvsターミネーター(笑)

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20180625/p1


[関連記事] 〜DC社アメコミヒーロー洋画評

ジャスティス・リーグ』 〜スーパーマンバットマンワンダーウーマン共演作は、ヒーロー大集合映画の教科書たりえたか!?

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20171125/p1

ワンダーウーマン』 〜フェミニズムの英雄か!? 単なるセックス・シンボルか!?

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20170911/p1

バットマンvsスーパーマン ジャスティスの誕生』 〜アメリカの「公」と「私」! 日本のヒーロー「VS」「大集合」映画とも比較!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20160911/p1

スーサイド・スクワッド』 〜アメコミ悪党大集合。世評は酷評だが佳作だと私見

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20160912/p1


[関連記事] 〜特撮洋画評

デッドプール』 〜X-MENも客演! 私的快楽優先のヒーローは、日本でも80年代以降は珍しからず!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20160705/p1

パワーレンジャー』 〜戦隊5人に「スクールカースト」を色濃く反映! 「自閉症スペクトラム」青年も戦隊メンバー!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20170715/p1

ガーディアンズ 〜酷評のロシアのスーパーヒーロー集合映画を擁護する!

(2018年9月8日(土)UP)
『ジャスティス・リーグ』 〜スーパーマン・バットマン・ワンダーウーマン共演作は、ヒーロー大集合映画の教科書たりえたか!?
『仮面ライダー平成ジェネレーションズFINAL ビルド&エグゼイドwithレジェンドライダー』 〜ヒーロー大集合映画の教科書がついに降臨か!?
『アベンジャーズ/エンドゲーム』 ~タイムパラドックス&分岐並行宇宙解析!
拙ブログ・トップページ(最新10記事)
拙ブログ・全記事見出し一覧


[特撮洋画] 〜全記事見出し一覧


ガーディアンズ

(18年1月20日(土)・日本封切)

酷評のロシアのスーパーヒーロー集合映画を擁護する!

(文・T.SATO)
(18年6月16日脱稿)


 アメコミ洋画『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』(14年)シリーズではない。なんとロシアのスーパーヒーローチーム集結映画である。キャッチコピーも、


 「日本よ、これが露(ロシア)映画だ。」(笑)。


 コレはもちろんマーベル社系アメコミヒーロー大集合映画『アベンジャーズ』(12年)のキャッチコピー、「日本よ、これが映画だ。」のパクリではある。
 なのだが、このコピー自体が我らが日本特撮の快作映画『オーズ・電王・オールライダー レッツゴー仮面ライダー』(11年)のキャッチコピー、「世界よ、これが日本のヒーローだ!!」の本歌取りであったことを、みんな忘れているゾ。てか、そもそも知られてない?(汗)


 ヒーローとしては4人所帯。


・手の甲からカギ爪を出すX−MENのマッチョなオジサンキャラを少々想起させるヒゲ面のムサい中年は、念動力(磁力?)で石材や鉱物を自在に宙へ浮かせて飛ばし、拳と腕には膨大な瓦礫をまとって、ウルトラ怪獣・EX(イーエックス)レッドキングのように極太長と化した巨腕と巨拳で敵を殴りつける!


超人ハルクを連想させる科学者の兄ちゃんは、ゾアントロピー(獣人化現象)を起こすと、上半身の服がハダけてムキムキマッチョに膨張した裸体をさらし、顔面から両肩が獣毛におおわれたムクつけきクマさんと化して大暴れ!


・DC社のアメコミヒーロー・フラッシュそのまんまな、眼にも止まらぬ超高速で俊敏に移動できる東洋人(だよネ?)の青年は、鎌のような半月刀を二刀流で用いてバッサバッサと敵を斬り裂いていく!


ファンタスティック・フォーの紅一点キャラみたいなクールビューティー・痩身長身の白人美女は、水中をスイスイ泳いで透明人間にもなり、高い身体能力&戦闘力も誇る!


 映像&アクション面では、冒頭に『攻殻機動隊』などでも見たことあるような重厚感・金属感・実在感あふれるCG表現のミリタリックな多脚型戦車が登場して、ジャンル作品のお約束で車輪は超小さいのにインチキにも超高速で走行する!(笑)
 ロシアの各地を舞台に、山間の斜面の森林、ピーカン晴天下の白く乾いてヒビ割れた超広大で平坦な湖底、さらには屋内や屋外で、アクロバティックな超人アクションを戦闘員や強化兵や特殊車両を相手にバッタバッタと大披露!
 あげく、ラストバトルの舞台は、白昼のガラス張りの近代的な超高層のっぽビルで、ついにはそれが横倒しで倒れていくリアルなCG特撮も見せてくれる!


 はてさて、こーいう本作みたいな「メジャー感」というオーラがない作品は、往々にして最初から先入観で下に見られて、マニア間ではボロクソに叩いてもイイ映画として扱われがちだ。ググってみると、やはり本作はボロカスにCG特撮やアクションや演出がチャチで、粗や矛盾や飛躍があると酷評されている。
 たしかに、ハリウッドの大作アメコミ洋画は、カネ&手間をかけたCG特撮&アクロバティックなアクションという側面ではチャチさはナイ。
 しかし、筆者に云わせれば、アメコミ洋画もDC社作品であろうがマーベル社作品であろうが、日本特撮に負けじ劣らじ(笑)、カナリ粗や矛盾や飛躍や作劇的な瑕疵(かし)があったり、バランスやまとまりの悪い作品もあって玉石混淆だとも思うゾ。続編や連続シリーズ作品に至っては、前作での予告と本編に矛盾が生じている作品すらある。


 すでに今となっては、(特にマーベル社の)アメコミ洋画自体がブランド・権威、悪い意味での保守本流ヒエラルキーと化していて、観客やマニアの方でも虚心坦懐ではなくバイアスのかかった見方や思考停止に陥っている面もあるようにも思う。本作よりも面白くないアメコミ洋画だって、けっこうあったと思うのだが(汗)。


本作はドラマ性がウスいのか!? 出自設定的にはむしろ濃ゆいのでは!?


 本作にはドラマ性がウスいという批判もある。筆者個人はドラマ至上主義者ではないので、このテの娯楽活劇作品に辛気クサいドラマが必須だとは思わないけど、いやいやいや、本作にもドラマ性は一応はあったでしょ(笑)。
 そもそも彼らは、今から50年も前、前世紀の東西冷戦時代の旧ソ連の特殊機関で非人道的な遺伝子操作で改造されて誕生した、我らが日本の歴史的名作漫画『サイボーグ009(ゼロゼロナイン)』(64年)のような出自なのだ。加えて、不老もしくは長命の肉体となってしまって、その異形なる正体を隠すために、それぞれが他人と極力交わらず孤独に人里離れた土地に隠れ住んでいたり、サーカスの団員などの定住せずに各地を移ろうのがデフォルトな虚業の職業に就くことで糊口をしのいでいたり……。


 人前にあえて出ることや戦いなどは望んでいなかった彼らだが、冷戦終結から30年後に、50年も前の旧ソ連の「負の遺産」がよみがえり、新生ロシアに危機をもたらさんとする!
 その「負の遺産」とは、4人の産みの親でもある狂気の天才科学者! 彼は自身の肉体をも改造して、電気を操りハッキング攻撃をも可能とする悪の強敵超人と化していたのだ。この国家的危機に際して、ロシアの諜報機関のクールビューティーな姐御上官は、悪の超人に対抗できる因縁の前世紀の4人の超人を探し出していく……「父殺し」の物語が今始まる……といった導入部は、充分にドラマチックではあるまいか!?


 いやまぁアメコミ洋画のように、友人がほしかったからとか、給料が良さそうだったからとか、憧れのヒーローチームだったから加入した、みたいな脱臼した展開も充分アリではあるけれど。
 しかし、それらはもうアメコミ誕生以来の80年をかけて、あらゆるパターンをすでにヤリ尽くしてしまったジャンルの爛熟の果ての代物なのである。
 云うなればそれらの展開は、経済的ピークは過ぎて没落していく予感はあるも、日本でいうなら1980年代以降的な、まだまだ飽食で平和で徒花で高度大衆消費社会な先進国の民のゼイタクな実存上の悩みであったり、ナンちゃって的なメタや反則や楽屋オチねらいの浮き足立った展開なのである。
 よって、こーいうリアルな戦災の傷跡や圧制下の国家の民や貧困・飢餓・不幸・不遇や傷心にヒリヒリと苛まれて、懊悩する陰影のヒダヒダがあるヒーローの出自の方こそが、物語としては本来は王道・古典・普遍であったとは思うゾ。


 とはいえ、そのへんを本作は過剰に重苦しく描いていたワケでもなく、そこはやはり最終的には善と悪の超人たちのド突き合いのカッコよさ・暴力衝動の擬似的発散・爽快感の方をこそ優先するおバカな娯楽活劇作品ではある。
 あくまでもドラマ性は点描に留めて、サクサクと集結劇を進めて、その後の展開もカッタるくなりそうになる寸前になるや、敵さんが現れて脳みそキン肉なアクションにシフトするあたりも悪くない。
 むしろ、集結場面や人間ドラマ部分で空回りしてモタついたり、ウダウダ愁嘆場と化してしまうアメコミ洋画もままあることを思えば、本作の方がその点では拙(つたな)さは少ないようにも私見する。


本作の弱点。ラストバトルの尺がイマイチ短い! 突きや蹴りの一連が粘り足りない!(汗)


 とはいえ、個人的には大きな弱点に思えた点が一点。それはラストバトルの尺が短いことだ(笑)。
 ここを適度にクドくならない程度に粘って、敵vs味方の突きや蹴りの一挙手一投足をもう少しボリュームをもって描いてくれないと、先鋒や中堅の敵キャラとは異なるラスボスの強敵感、ラスボスとの最終バトルでの拮抗&苦戦、ついには大逆転といった爽快感・カタルシスが弱くなってしまうようにも思うのだ。
 このへんは脚本に描ききれるものではない、ドラマやテーマにも還元されない、撮影現場での本編監督とアクション監督の裁量やアイデアやこだわりになるのであろう。だが、こーいったところでの最後の一押しが、ラスボスの強敵感や憎々しげ感と、正義の超人たちのヒロイズムや凜々しさ、両者の力の図り合いや、善悪はいったん棚上げしたところでの双方の器量・度量の認め合いを際立たせ、ひいてはそれが観客の高揚や勧善懲悪感情を満たすことで、作品も彼ら登場人物たちの人物像も観客の心の中で完成・完結させることができるのだとも私見する。
 それを思えば、序盤〜中盤までのアクション演出の疾走感が、終盤ではもう一押しで失速してしまったようにも思えて惜しい。


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2018年初夏号』(18年6月17日発行)〜『仮面特攻隊2019年号』(18年12月29日発行)所収『ガーディアンズ』評より抜粋)


[関連記事] 〜ヒーロー大集合映画評

ジャスティス・リーグ』 〜スーパーマンバットマンワンダーウーマン共演作は、ヒーロー大集合映画の教科書たりえたか!?

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20171125/p1

仮面ライダー平成ジェネレーションズFINAL ビルド&エグゼイドwithレジェンドライダー』 〜ヒーロー大集合映画の教科書がついに降臨か!?

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20171229/p1

アベンジャーズ/エンドゲーム』 ~タイムパラドックス&分岐並行宇宙解析!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190617/p1

アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』賛否合評 〜もはやブランド・権威ゆえ、思考停止で高評価・深読みされてやしないか!?

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20180619/p1

シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』 〜ヒーロー内紛劇は成功したか!? 日本特撮が立ち遅れた原因は!? 世界観消費へ!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20160701/p1

[関連記事] 〜2018年上半期・特撮映画評

牙狼〈GARO〉 神ノ牙-KAMINOKIBA-』 〜小粒良品!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20180601/p1

ガーディアンズ』 〜酷評のロシアのスーパーヒーロー集合映画を擁護する!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20180604/p1

ブラックパンサー』 〜アメコミ黒人ヒーロー映画で傑作だが、新型のポリコレ・黒人搾取でもあるか!?

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20180607/p1

『ヴァレリアン 千の惑星の救世主』 〜多民族が「共生」ではなく「棲み分け」(笑)する未来像!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20180610/p1

パシフィック・リム:アップライジング』 〜巨大ロボ×巨大怪獣×ロリチビ少女×中国大企業×東京&富士山!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20180613/p1

『レディ・プレイヤー1』 〜ガンダムvsメカゴジラ! 仮想現実に逃避するオタの心理描写が秀逸(涙)

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20180616/p1

アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』賛否合評 〜もはやブランド・権威ゆえ、思考停止で高評価・深読みされてやしないか!?

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20180619/p1

GODZILLA 決戦機動増殖都市』 〜地球人・X星人・ブラックホール第3惑星人・インファント島民 ゴジラvsメカゴジラ!?

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20180622/p1