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2019年9月20日(金)からアニメ映画『HELLO WORLD(ハロー・ワールド)』が公開記念! とカコつけて……。
『HELLO WORLD』の伊藤智彦カントクが担当した深夜アニメ『ソードアート・オンライン』(12年・2期14年)の後日談アニメ映画『劇場版 ソードアート・オンライン -オーディナル・スケール-』(17年)評をアップ!
『劇場版 ソードアート・オンライン -オーディナル・スケール-』 ~大人気作にノレない私的理由と、大ヒットのワケを分析!
(2017年2月18日(土)公開
(文・T.SATO)
(2017年4月27日脱稿)
西欧中世ファンタジー風の異世界ではなく、その趣向のバーチャルゲーム世界に閉じこめられた人々の右往左往を描く大人気ライトノベル原作(09年)で、ヒットも必至と見込まれたか予算も潤沢な2クールのヌルヌル動く高作画アニメが都合2期分、つまりは4クール分も作られた深夜アニメ『ソードアート・オンライン』(12年)――略称『SAO』――のさらなる続編が映画で登場。
あまたの2週間限定公開の深夜アニメの総集編や、新作アニメの先行公開、玄人好みの劇場アニメが隆盛でも、それらの最終興行収入が1~2億のニッチ(隙間)な商売にすぎないのに、本作は人気深夜アニメ『魔法少女まどか☆マギカ』(11年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20120527/p1)・『ラブライブ!』(13年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20150615/p1)の続編映画『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ [新編] 叛逆の物語』(13年)・『ラブライブ! The School Idol Movie』(15年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20160709/p1)をも上回る初動で、アッという間に興収が23億を突破!
あの大人気深夜アニメ『ガールズ&パンツァー』(12年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190622/p1)の続編映画『ガールズ&パンツァー 劇場版』(15年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190623/p1)でさえ1年かけてようやっと24億に達したというのに(汗)。いかに本作が若いオタの圧倒的な支持を受けていたかがよくわかる。
アニメの映像ソフトの1巻あたり数百・数千・数万枚といった露骨な売上差もそーだけど、こーいう現実を見せつけられると、数々のアニメの人気差やその動員規模が、ドングリの背比べではなく、十倍・百倍といった2桁規模の越えられない壁であることが残酷なまでに可視化されて、複雑な気持ちになる。
――付言するけど、筆者は売上と作品の質がイコールだ! なぞとは考えてはいないので、その点はくれぐれも念のため――
で、今回の続編劇場版は、流行の機を見るに敏で、VR(仮想現実)ではなく昨今流行りの「ポケモンGO(ゴー)」みたいなAR(拡張現実)ゲーム。ヘッドギアの眼鏡越しに都心の特区を観るや、そこは異世界へと様変わり。そこでゲーマーたちは自らの身体を動かし、剣戟バトルを繰り広げる。
ARにはノリ気でない主人公少年。顧客を奪われ閑散としてしまったVR世界。TV版での陰謀家が善人のように協力する意外感。
ウ~ム。ファンの方々には申し訳ないけど、ダメダメではナイけど、個人的にはイマいちノれない。
VRにおける手指だか脳内だかによるコントローラー操作による剣士としての強さと、ARにおける自らの運動神経&体力がモノをいう剣士としての強さは、別モノだろうと理性は訴えるものの、その部分のオカシさについては実はあまり気にならない。それは本作が実写ではなくやはりアニメだからであろう――くれぐれも云っておくけど、媒体の優劣をあげつらっているワケではない――。
それよりも気になるのが、本作における主人公少年&アイドル声優・戸松遥演じる細身でお上品でも豹のようにしなやかなメインヒロインの圧倒的で時にチートにも見える強さと、両者のベタベタしすぎてはいないけど盤石にすぎるカップルぶりである。原作は知らないが、この両者の描写&関係性が、個人的にはTV序盤から引っかかっている。
多数が参加する大規模ネットゲームであるにも関わらず、3次元での素の人格も同様なのであろう、主人公は当初は誰ともチームを組まず、他人との雑談も苦手とおぼしき孤独なプレーヤーとして描かれる。メインヒロインも同様で当初は孤高のプレーヤーとしてツンケンしている。
VR世界で次々起こるメインイベントと並行して、サブではそんな彼&彼女の「心の変遷」「接近」「集団適応」が描かれていくのかと思いきや……。
まだ初期話数なのにふたりでともにVR世界のログハウスで過ごして仲良くなってしまう。その直前には、主人公は強者の余裕としてそのスキルを隠して中高生ゲーマーのチームに加わり、ヒロインもいつの間にやら別チームに所属して活躍する姿も描かれる。
しかし、そこで主題となるのは、内向的な人種が既成集団にあとから参入する際の心理的な敷居の高さではなく、仲間の喪失や集団内部のイザコザである。
このへんの「イベント」と「心理描写」の順番&優先順位が、筆者個人のドラマツルギー美学とは合わない(汗)。
が、現実にはこの作品は大ヒットしている。となると自分には合わないと連呼するのも芸がナイ。
そこで気付く。非日常や異世界を描く作品に心を躍らせ、そーいう状況が現実に招来すれば、ミジメな今の自分を解放して十全に能力も発揮し、全能感・万能感を味わえるに違いない! と若いころは妄想を逞しくしていたことに(笑)。
若造にはリアルでていねいな段取りを踏んだ「心の変遷」よりも「超越への飛躍」が作品評価や好悪の尺度としては優先される。そんなトコではなかろうか?――違ってたらゴメンなさい(汗)――
なので、同様に西欧中世風VR世界を描きつつも、車イス少女やクタビれたオッサンに性格異常の小学生など、ゲーマーたちの3次元での実像や屈託も描いていた深夜アニメ『.hack//SIGN(ドット・ハック・サイン)』(02年)の方が筆者にとっては良かったなぁ――古過ぎて若い子は知らない?――。
近作でもゲームの世界に幽閉される同趣向の『灰と幻想のグリムガル』(16年)・『オーバーロード』(15年)は個人的には楽しめたのだけど――大急ぎでフォローしとくと、『SAO』原作者による別作品『アクセル・ワールド』(12年)は筆者も楽しめた――。
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[関連記事] ~映画『HELLO WORLD』の脚本家・野崎まどが手掛けた深夜アニメ評
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