假面特攻隊の一寸先は闇!読みにくいブログ(笑)

★★★特撮・アニメ・時代劇・サブカル思想をフォロー!(予定・汗)★★★ ~身辺雑記・小ネタ・ニュース速報の類いはありません

劇場版ソードアート・オンライン-オーディナル・スケール- ~大人気作にノレない私的理由と、大ヒットのワケを分析!

『正解するカド』 ~40次元の超知性体が3次元に干渉する本格SFアニメ。高次元を材としたアニメが本作前後に4作も!
『蒼き鋼のアルペジオ -アルス・ノヴァ-』 ~低劣な軍艦擬人化アニメに見えて、テーマ&萌えも両立した爽快活劇の傑作!
拙ブログ・トップページ(最新10記事)
拙ブログ・全記事見出し一覧


[アニメ映画] ~全記事見出し一覧
[アニメ] ~全記事見出し一覧


 2019年9月20日(金)からアニメ映画『HELLO WORLD(ハロー・ワールド)』が公開記念! とカコつけて……。
 『HELLO WORLD』の伊藤智彦カントクが担当した深夜アニメ『ソードアート・オンライン』(12年・2期14年)の後日談アニメ映画『劇場版 ソードアート・オンライン -オーディナル・スケール-』(17年)評をアップ!


劇場版 ソードアート・オンライン -オーディナル・スケール-』 ~大人気作にノレない私的理由と、大ヒットのワケを分析!

(2017年2月18日(土)公開
(文・T.SATO)
(2017年4月27日脱稿)


 西欧中世ファンタジー風の異世界ではなく、その趣向のバーチャルゲーム世界に閉じこめられた人々の右往左往を描く大人気ライトノベル原作(09年)で、ヒットも必至と見込まれたか予算も潤沢な2クールのヌルヌル動く高作画アニメが都合2期分、つまりは4クール分も作られた深夜アニメ『ソードアート・オンライン』(12年)――略称『SAO』――のさらなる続編が映画で登場。


 あまたの2週間限定公開の深夜アニメの総集編や、新作アニメの先行公開、玄人好みの劇場アニメが隆盛でも、それらの最終興行収入が1~2億のニッチ(隙間)な商売にすぎないのに、本作は人気深夜アニメ『魔法少女まどか☆マギカ』(11年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20120527/p1)・『ラブライブ!』(13年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20150615/p1)の続編映画『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ [新編] 叛逆の物語』(13年)・『ラブライブ! The School Idol Movie』(15年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20160709/p1)をも上回る初動で、アッという間に興収が23億を突破!
 あの大人気深夜アニメ『ガールズ&パンツァー』(12年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190622/p1)の続編映画『ガールズ&パンツァー 劇場版』(15年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190623/p1)でさえ1年かけてようやっと24億に達したというのに(汗)。いかに本作が若いオタの圧倒的な支持を受けていたかがよくわかる。


 アニメの映像ソフトの1巻あたり数百・数千・数万枚といった露骨な売上差もそーだけど、こーいう現実を見せつけられると、数々のアニメの人気差やその動員規模が、ドングリの背比べではなく、十倍・百倍といった2桁規模の越えられない壁であることが残酷なまでに可視化されて、複雑な気持ちになる。
――付言するけど、筆者は売上と作品の質がイコールだ! なぞとは考えてはいないので、その点はくれぐれも念のため――



 で、今回の続編劇場版は、流行の機を見るに敏で、VR(仮想現実)ではなく昨今流行りの「ポケモンGO(ゴー)」みたいなAR(拡張現実)ゲーム。ヘッドギアの眼鏡越しに都心の特区を観るや、そこは異世界へと様変わり。そこでゲーマーたちは自らの身体を動かし、剣戟バトルを繰り広げる。
 ARにはノリ気でない主人公少年。顧客を奪われ閑散としてしまったVR世界。TV版での陰謀家が善人のように協力する意外感。


 ウ~ム。ファンの方々には申し訳ないけど、ダメダメではナイけど、個人的にはイマいちノれない。
 VRにおける手指だか脳内だかによるコントローラー操作による剣士としての強さと、ARにおける自らの運動神経&体力がモノをいう剣士としての強さは、別モノだろうと理性は訴えるものの、その部分のオカシさについては実はあまり気にならない。それは本作が実写ではなくやはりアニメだからであろう――くれぐれも云っておくけど、媒体の優劣をあげつらっているワケではない――。


 それよりも気になるのが、本作における主人公少年&アイドル声優戸松遥演じる細身でお上品でも豹のようにしなやかなメインヒロインの圧倒的で時にチートにも見える強さと、両者のベタベタしすぎてはいないけど盤石にすぎるカップルぶりである。原作は知らないが、この両者の描写&関係性が、個人的にはTV序盤から引っかかっている。


 多数が参加する大規模ネットゲームであるにも関わらず、3次元での素の人格も同様なのであろう、主人公は当初は誰ともチームを組まず、他人との雑談も苦手とおぼしき孤独なプレーヤーとして描かれる。メインヒロインも同様で当初は孤高のプレーヤーとしてツンケンしている。
 VR世界で次々起こるメインイベントと並行して、サブではそんな彼&彼女の「心の変遷」「接近」「集団適応」が描かれていくのかと思いきや……。


 まだ初期話数なのにふたりでともにVR世界のログハウスで過ごして仲良くなってしまう。その直前には、主人公は強者の余裕としてそのスキルを隠して中高生ゲーマーのチームに加わり、ヒロインもいつの間にやら別チームに所属して活躍する姿も描かれる。


 しかし、そこで主題となるのは、内向的な人種が既成集団にあとから参入する際の心理的な敷居の高さではなく、仲間の喪失や集団内部のイザコザである。
 このへんの「イベント」と「心理描写」の順番&優先順位が、筆者個人のドラマツルギー美学とは合わない(汗)。


 が、現実にはこの作品は大ヒットしている。となると自分には合わないと連呼するのも芸がナイ。


 そこで気付く。非日常や異世界を描く作品に心を躍らせ、そーいう状況が現実に招来すれば、ミジメな今の自分を解放して十全に能力も発揮し、全能感・万能感を味わえるに違いない! と若いころは妄想を逞しくしていたことに(笑)。
 若造にはリアルでていねいな段取りを踏んだ「心の変遷」よりも「超越への飛躍」が作品評価や好悪の尺度としては優先される。そんなトコではなかろうか?――違ってたらゴメンなさい(汗)――



 なので、同様に西欧中世風VR世界を描きつつも、車イス少女やクタビれたオッサンに性格異常の小学生など、ゲーマーたちの3次元での実像や屈託も描いていた深夜アニメ『.hack//SIGN(ドット・ハック・サイン)』(02年)の方が筆者にとっては良かったなぁ――古過ぎて若い子は知らない?――。
 近作でもゲームの世界に幽閉される同趣向の『灰と幻想のグリムガル』(16年)・『オーバーロード』(15年)は個人的には楽しめたのだけど――大急ぎでフォローしとくと、『SAO』原作者による別作品『アクセル・ワールド』(12年)は筆者も楽しめた――。


(了)
(初出・オールジャンル同人誌『SHOUT!』VOL.69(17年5月4日発行))



劇場版 ソードアート・オンライン -オーディナル・スケール- フルグラフィックTシャツ

#アニメ感想


[関連記事] ~映画『HELLO WORLD』の脚本家・野崎まどが手掛けた深夜アニメ評

正解するカド KADO: The Right Answer』 ~40次元の超知性体が3次元に干渉する本格SFアニメ。高次元を材としたアニメが本作前後に4作も!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190929/p1


[関連記事] ~アニメ映画評

『映画 スター☆トゥインクルプリキュア 星のうたに想いをこめて』(19年) ~言葉が通じない相手との相互理解・華麗なバトル・歌と音楽とダンスの感動の一編!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20191108/p1

機動戦士ガンダムNT(ナラティブ)』(18年) ~時が見え、死者と交流、隕石落下を防ぎ、保守的家族像を賞揚の果てに消失したニュータイプ論を改めて辻褄合わせ!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20181209/p1

GODZILLAゴジラ) 星を喰う者』(18年) ~「終焉の必然」と「生への執着」を高次元を媒介に是々非々で天秤にかける!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20181123/p1

『劇場版マクロスΔ(デルタ) 激情のワルキューレ』(18年) ~昨今のアイドルアニメを真正面から内破すべきだった!?

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190504/p1

『映画 中二病でも恋がしたい! ―Take On Me―』(18年) ~眼帯少女も高1なら可愛いけど高3だとヤバいかも…に迫る逸品

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190904/p1

夜は短し歩けよ乙女』『夜明け告げるルーのうた』(共に17年) ~鬼才・湯浅政明カントクのイマ半と大傑作!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190621/p1

宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち 第一章~第三章』(17年・TVアニメ先行上映) ~戦争モノの本質とは!? 愛をも相対視する40年後のリメイク!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20181208/p1

『映画 聲(こえ)の形』(16年) ~希死念慮・感動ポルノ・レイプファンタジー寸前!? 大意欲作だが不満もあり

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190901/p1

ガールズ&パンツァー 劇場版』(15年) ~爽快活劇の続編映画に相応しい物量戦&よそ行き映画の違和感回避策とは!?

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190623/p1

ラブライブ! The School Idol Movie』(15年) ~世紀の傑作!? それとも駄作!?

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20160709/p1

這いよれ!ニャル子さんF(ファイナルカウントダウン)』(15年・OVA先行公開)

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20150602/p1

『天才バカヴォン ~蘇るフランダースの犬~』(15年)

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20150706/p1

機動戦士ガンダム THE ORIGIN(ジ・オリジン)』(15年・OVA先行公開) ~ニュータイプレビル将軍も相対化! 安彦良和の枯淡の境地!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190707/p1

機動戦士ガンダムUCユニコーン) episode7 虹の彼方に』(14年・OVA劇場先行公開)

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20160904/p1

たまこラブストーリー』(14年) ~親密な商店街にオタの居場所はあるか!?

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20160514/p1

宇宙戦艦ヤマト 復活篇』(09年) ~肯定評!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20091011/p1

サマーウォーズ』(09年) ~話題作だがイマイチでは?

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20091011/p1

鉄人28号 白昼の残月』『河童のクゥと夏休み』『ミヨリの森』 ~2007年アニメ映画評

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20071014/p1

『劇場版 機動戦士Z(ゼータ)ガンダム ―星を継ぐ者―』(05年) ~映画『Z』賛美・TV『Z』批判!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20060325/p1

劇場版『エスカフローネ』(00年) ~いまさら「まったり」生きられない君へ……

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/19990912/p1

マクロスプラス MOVIE EDITION』(95年)

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/19990904/p1

超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか』(84年) ~シリーズ概観&アニメ趣味が急速にダサいとされる80年代中盤の端境期

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/19990901/p1