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ぶらり信兵衛−道場破り−


[時代劇] 〜全記事見出し一覧


(1973年 フジテレビ・東映
(07年12月〜08年3月 月〜金 AM10:00、PM10:00 時代劇専門チャンネル 放送)
(08年6月4日(水)より 月〜金 AM7:00、PM7:00 時代劇専門チャンネル 再放送!)


(文・Y.AZUMA)
 人情ものの時代小説の大家・山本周五郎原作、高橋英樹主演の名作の誉れ高いテレビ時代劇。
 長屋に住み着いた浪人・松村信兵衛(まつむら・しんべえ)。欲がなく仕官する気もない武家の彼だが、長屋の町人たちがトラブルに遭うや、放っておけない。
 得意の剣術で道場破り。門下を散々に打ち破るも、最後は道場主に負けたふり、勝てないふりをして、道場主から金子(きんす)をせしめ、その金子で町人たちを助けるのが毎回のストーリー。



 大宮敏充(おおみや・としみつ。浅草を中心に活躍したコメディアン)演ずるそば屋の重助爺さんのさまざまな台詞が良いなあ。
 強くもないし、世の中の日なたばかりを歩いてきた訳ではない老人による言葉は、それだけで重みがある。


 それに、「現実離れしたファンタジーワールド」としての時代劇ではなく、「日常の延長上のファンタジーワールド」としての時代劇を、再認識できる。


 このドラマを見ていると、『必殺仕置人』(73)やら『鬼平犯科帖』(89)あたりが、何とまあ、ずいぶんザクザクと人を殺すかが嫌というほどわかる。
 今のテレビの中で、いかに殺人や傷害、精神的なジェノサイドや詐欺・横領が跳梁跋扈する世界になってしまったか、そして、私たちはその世界観にいかに慣らされてしまったかを痛感してしまう。


 だって、このドラマを見ていると、人は殴られれば痛がるし、刀で切られれば大怪我をして下手すれば死ぬし、「人殺しー」っていう言葉は、人聞きの悪い言葉だし、みな日常的な生活をしていて、それが新鮮に見えるのである。
 それにこの世界の人、普通の人間の感覚をそのまま伸ばして使っているので、見ていて安心する。


 この長屋には、「お金があったら何もしないで楽して暮らしたい。」「世の中を面白おかしく暮らしたい」という非常に能天気な人たちがそのまま出てきている。最近のドラマではほとんど見かけない人たちだ。
 テレビアニメ『山ねずみロッキーチャック』(73)の中の「緑が森」の住人たちのように、のびのびとおおらかで自分の思うとおりに行って、その挙句に大失敗(といっても大したことはない。財布の中身を全部なくすくらい)をしでかすという至ってお気楽な人たちである。


 確か原作の『人情裏長屋』では、松村信兵衛さんの出てくる話は、ひとつだけなので他の話はすべて他の作品を原作にするかしているはずである。本放送時、谷村昌彦の酔っ払いおやじの話とほとんどおんなじストーリーの時代劇を別のチャンネルで見た覚えがある。
 「時代小説」は、私の知らない沃野であるので、今後の人生で読めると思うととても楽しみである。


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2008年春号』(08年4月20日発行)『近作評EXTRA』より抜粋)



編集者付記:

 TV時代劇マニア間では評価が定まっている名作『ぶらり信兵衛―道場破り―』。原作は現在、短編小説集『人情裏長屋』(80年・新潮文庫ISBN:4101134324)に所収されている同名の短編小説『人情裏長屋』。
 初出は終戦直後の1948年(昭和23年)7月『講談雑誌』。
 編集者個人は20数年前の十代中後盤のころに読了(……自慢・笑)。それを原作とするTV時代劇の存在は、92年夏のテレビ東京でのお昼の再放送で知ったクチ。
 後年、高橋英樹自身の主演で舞台『ぶらり信兵衛−紫陽花の花−』(94年・明治座)、『お助け信兵衛 人情子守唄』(95年・日本テレビ・ユニオン映画)のタイトルで2時間単発スペシャルとしてリメイクもされている。
 記録によれば、TV草創期の60年、61年にも『裏長屋物語』の題名にて単発で映像化されている。前者は三橋達也主演。
 若村麻由美吉田栄作主演、山本周五郎原作のNHK連続時代劇『柳橋慕情(やなぎばしぼじょう)』(00年)でも、なぜだか居酒屋の常連客のレギュラーとして浪人・松村信兵衛さんが登場。こちらを演じるのは居合いの名人でもある俳優・滝田栄
 スピンオフ出演なので、あまりメイン話にからんでいないし大活躍もしていない(もちろん主役じゃないのでそれでイイのだが)。NHKスタッフたちが単に出したかったから……としか思えないお遊びであった。いや、うれしかったが(笑)。
 また、畏友・山科想四郎が主宰するTV時代劇同人誌『むらさき』バックナンバー(号数失念)によると、高橋英樹主演の人気長寿TV時代劇『桃太郎侍』(76〜81年)は長寿シリーズの常で初期は番組フォーマットが定まっておらず、『ぶらり信兵衛〜』のフォーマットのような回もあったとか。昭和中期の人気時代小説家にして『桃太郎侍』(初出は戦前の1940年(昭和15年)新聞小説・書籍化は終戦直後の1946年(昭和21年))の原作者・山手樹一郎(やまて・きいちろう)は、雑誌編集者でもあり山本周五郎の担当でもあったというから、問題ないのだろう(……そうか?)。
 (↑後日付記:バックナンバーをあさってみたところ、このような記述は見つけられず、どうも記憶違いでしたようで……スミマセン・汗)
 山本周五郎の短編小説を連続TV時代劇化した例は他にも、『雨あがる』(初出は1951年(昭和26年)・現在は短編集『おごそかな渇き』(71年・新潮文庫ISBN:4101134154)に所収)を原作にしたこれもマニア間で名作TV時代劇として名高い藤田まこと中村玉緒主演『夫婦(めおと)旅日記 さらば浪人』(76年・フジテレビ・勝プロ・映像京都(旧・大映京都撮影所))がある。『雨あがる』も世界の黒澤明監督の遺稿脚本を元に2000年に黒澤プロにて映画化。


 あと、怖〜いTV時代劇マニアの方々からのツッコミに予防線。
 もちろん本作でも道場破りのシーンに、第2クール第14話からなぜだか剣戟の効果音ではなく、ナンセンスさ&お笑いをねらった銃撃(笑)の効果音を使用して、暴力の痛みをリアルではなくスマートに記号的に描いているシーンもある。
 逆にあまたのTV時代劇でも、たとえば『必殺』シリーズや『鬼平』シリーズであっても、話数によってはテーマ編として、たとえ犯罪者でもヒトを斬ったり裁いたりすることの矛盾への懐疑や痛みを描いたアンチテーゼ編もあったり――有名なところでは今まで殺してきた悪人たちにも恋人や息子がいて彼らへの愛情もあったろうと言及する必殺シリーズ第4弾『暗闇仕留人(くらやみしとめにん)』(74年)最終回――、そのまた逆に確信犯で不謹慎にも人をゴロゴロと多数殺していく必殺シリーズ第1弾『必殺仕掛人』(72年)#24『士農工商大仕掛け』などのギャグ編もあって、ヒトを殺すか否かの多寡でもって作品の優劣を決めることはできない、是々非々であるとツッコミをしたい方もいるかもしれませんが……
 そのへんはコアなTV時代劇マニアではない、でもオタク人種によるあまりにユニークな本作への新鮮な驚きをつづったもの、としてご寛恕くださると幸いです。


 本作を扱った同人誌としては、福井県人氏が主宰するサークル・懐旧的映像資料室が発行した『懐旧的映像資料室Vol.1「ぶらり信兵衛道場破り(上)』(95年8月)、同『Vol.2〜(下)』(96年8月)という労作が存在する。全話ガイド・当時の新聞雑誌資料・各話の原作短編探し・道場破り13勝20敗4引分・図解十六店長屋・おぶんちゃん妄想45連発・舞台・2時間SP・ファンの感想アンケートなど、これを超えるものは多分発刊されないだろうと思われる。手放す方もなかなかいないだろうが、機会に恵まれればファンには入手を勧めたい)



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