假面特攻隊の一寸先は闇!読みにくいブログ(笑)

★★★特撮・アニメ・時代劇・サブカル思想をフォロー!(予定・汗)★★★ ~身辺雑記・小ネタ・ニュース速報の類いはありません

侍戦隊シンケンジャー 〜前半賛否合評2


『侍戦隊シンケンジャー』 〜序盤賛否合評
『侍戦隊シンケンジャー』 〜前半賛否合評1
[戦隊] 〜全記事見出し一覧


 映画『侍戦隊シンケンジャーVSゴーオンジャー 銀幕BANG!!』(10年)公開記念!
 『侍戦隊シンケンジャー』(09年)完結!
 『天装戦隊ゴセイジャー』(10年)放映開始記念!


 ……とカコつけて(汗)、


・『侍戦隊シンケンジャー』 〜前半賛否合評1
・『侍戦隊シンケンジャー』 〜前半賛否合評2 #15〜19評
・『仮面ライダーディケイド』#24〜25「シンケンジャーの世界」前後編評
・『侍戦隊シンケンジャー』 〜後半賛否合評


 を4週連続、毎週日曜UP予定!(……日曜深夜の月曜日付かも・汗)

侍戦隊シンケンジャー 〜前半評3

(文・鷹矢凪弥寿士)
(09年7月執筆)

侍戦隊シンケンジャー』2クール前半エピソード評 『一筆献上』


 “スーパー戦隊シリーズ”第33作として出陣した『侍〈さむらい〉戦隊シンケンジャー』(以下『シンケン』)。
 メカニカルなイメージの強かった前作『炎神〈えんじん〉戦隊ゴーオンジャー』[08・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20080824/p1]とは打って変わり、「侍」というモチーフに象徴される如く、和風ティスト満載のシリーズとなった。


 21世紀以後の“戦隊”ではお馴染みだった見せどころの幾つかを敢えて取り払っている点も、却〈かえ〉って潔(いさぎよ)い。
 例えば
・OP〈オープニング〉でのメンバー & 配役のシンクロ
・ヒーローが纏〈まと〉うシンボルカラーのジャケット
・名乗り時のキャッチフレーズ
・人面を出した敵の女幹部
・ED〈エンディング〉のダンスetc.……。


 さらに、恐らく多数のファンが指摘されているはずだろうが、レッドが「殿」、他のメンバーが「家臣」という関係も画期的。
 「主従関係」が物語の進行につれて「仲間」となっていく……というありがちな展開ではなく、「互いに命を預ける」という新しい形の「主従関係」を築き上げる(「第十二幕・史上初超侍合体〈しじょうはつ・ちょうさむらいがったい〉」)ことで、独自性を強く打ち出している。


 今のところ、私は本作を結構気に入って見ている。ただ半面、「これはちょっと残念だな」と感じてしまう部分があるのも否定できない
 (役者陣の演技については敢えて問わない。作品同様『これから』なのだし)。


 もちろん、自分自身の好印象を大きく揺らがせるものではないのだが……。
 良い作品だからこそ、気になる部分も目についてしまうものである。決して粗〈あら〉探しをする意図はないので、誤解なきよう。


 今回は、本作のターニングポイントとなった6人目のシンケンジャー=シンケンゴールド登場編を中心に、2クール前半のエピソードについて語らせて頂く。
 

 なお、今般より作品問わずTVシリーズの場合、基本的に以下の執筆形式を採る(場合によっては劇場映画、Vシネマなどでも)。


1.番組の要素を以下の通りに分類する。
   ○●=人物
   ☆★=ストーリー
   □■=敵キャラ
   ◇◆=バトル
   △▲=その他


2.各要素にて気になった点に関し、色別の二評価に基づき詳細な感想を綴る。
 〔例:☆=ストーリーで良かった点
    ★=ストーリーで惜しかった点
    〈「悪かった点」ではないので誤解なきよう〉〕


3.必ずしも全ての項目ではなく、特に目を惹いた点に限る。



 暫〈しば〉しのおつきあいヨロシク。

「いざ、参る!!」


 

「第十五幕・偽物本物大捕物〈にせものほんものおおとりもの〉」

〈脚本:石橋大助/監督:渡辺勝也


★ジャンル作品定番ストーリーの一つ「偽物」ネタ。
 敵がヒーローの偽物に化けてチームワークを崩そうとするが、ヒーロー間の堅固な信頼関係に屈する……というのが大まかな展開。


 しかし、十二幕「史上初超侍合体」で絆が強まったばかりなのに、こうアッサリ崩れかける筋運びは頂けない。


 偽者のターゲットが谷 千明〈たに・ちあき〉〔演:鈴木勝吾〈すずき・しょうご〉〕=シンケングリーンというのも安直。
 一番単純な性格の彼が狙われるのは妥当と言えなくもないが、他のメンバーの誤解程度が著し過ぎて、千明が不憫〈ふびん〉に見える。
 これが、例えば池波流ノ介〈いけなみ・りゅうのすけ〉〔演:相葉弘樹〈あいば・ひろき〉〕=シンケンブルーか白石茉子〈しらいし・まこ〉〔演:高梨 臨〈たかなし・りん〉〕=シンケンピンクだったなら皆も即疑うはずだから、興を殺〈そ〉ぎかねない……との危惧が起きたのか?


 今回の脚本家は初参加らしいが、設定を一応咀嚼〈そしゃく〉しているとは思えるものの、目の肥えたファンからは却って不興を被〈こうむ〉るのではないだろうか。


 実は他のメンバーも疑ったフリをしていた……という結果の方が「意表を突く」という点では好印象を遺〈のこ〉したかも
 (それはそれで無理が生ずる恐れもあるけど)。


☆一方で「“殿”=志葉丈瑠〈しば・たける〉〔演:松坂桃李〈まつざか・とおり〉〕=シンケンレッドだけが真実をそれとなく察していた」と見せる動かし方は良かった。
 千明が「真剣白刃取り」の特訓をしていたことを唯一見抜いていたり、千明からの連絡を疑う家臣たちを「命令だ」と出陣させる。本作の特性が上手く作用していた。


○千明の負けず嫌いな性格、ここぞという時は冴える面 〜偽ことはを見破り、逆に罠を仕掛ける〜 はちゃんと反映されていた。


 花織〈はなおり〉ことは〔演:森田涼花〈もりた・すずか〉〕=シンケンイエローも、千明の変貌を信じ切れない思いやりが、僅〈わず〉かながら浮き彫りにされていた。
 そのため、こちらものちに登場した偽ことはをしばらく本物と思ってしまった。この演出には感心。
 

□今回の敵の怪人アヤカシ=ナリスマシは、ジャパン・アクション・エンタープライズ(=以下「JAE」)所属の大林勝〈おおばやし・まさる〉氏が演技・声とも担当されている。
 やたらに大仰な仕草と声が、その卑怯さを逆説的に強調していた。大林氏の快演に敬意を表したい。


 なお、大林氏は本作の敵組織・外道衆〈げどうしゅう〉の参謀格=“骨のシタリ”〔声:チョー〕*1スーツアクターでもある。


「第十六幕・黒子力〈くろこのちから〉」

〈脚本:大和屋暁/監督:渡辺勝也


茉子「黒子さんがいるから、私たちは安心して戦える。私たちが戦うから、黒子さんはサポートに徹することができる」


千明「黒子ちゃんたちと張り合ってる場合じゃない……ってことか」


流ノ介「互いに違う役割の者が、張り合うことなど無意味……」


ことは「信頼し合って力合わせていくってことが大切や、ってことか」


ジイ「うむ、まさに適材適所という奴じゃな」

 
☆流ノ介・千明・ことはは、誤って志葉家家宝の壺を割ってしまう。
 日下部彦馬〈くさかべ・ひこま〉=ジイ〔演:伊吹吾郎〈いぶき・ごろう〉〕〜以下便宜上「ジイ」で統一〜にこっぴどく叱られた3人は、黒子たちの爪の垢でも煎じて飲ませてやりたい……というジイの小言を受け発奮する。


 志葉家で侍たちの生活を補助するだけでなく、街に溶け込み地道に働く黒子たち。
 流ノ介たちは彼らを出し抜き人々の役に立とうと試みた。しかし思い通り運ばず、逆に悉〈ことごと〉く黒子たちに先を越されてしまう。


 流ノ介たちの勘違いぶりに半ば呆れつつ、“殿”=丈瑠と茉子は彼らに、黒子たちの真の役割を説く……。


 本作の特徴の一つである黒子たち。目立たないがシンケンジャーをサポートしてあらゆる仕事をこなす“縁の下の力持ち”だ。
 そんな黒子たちにスポットが当たった本エピソードには、派手な職業だけでなく、地味でも大切な仕事を果たしてこそ社会は成り立つんだよ……という教訓が籠〈こも〉っている。


 “適材適所”というテーマも押しつけがましくなく滲み出ている。
 厳しい社会情勢が騒がれて久しいが、そうした世間にも一縷〈いちる〉の希望をもたらしてくれる好編。

 
○黒子たちの存在意義を改めて考えさせられる。裏方キャラがこれほど目立つ“戦隊”も珍しい。


 同じ時代劇モチーフの先駆けである『忍風〈にんぷう〉戦隊ハリケンジャー』[02・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20021112/p1]にも、ハリケンジャーが所属する疾風〈はやて〉流忍術の砦=忍風館で働く“黒子ロボ”が登場したが、一応役に立ってはいたものの、本作の黒子たちほど存在感は強くなかったと個人的には思う。
 また、ハリケンジャーの存在や戦いは極力隠匿〈いんとく〉しなければならないため、黒子ロボはハリケンジャーの戦いを見た者の記憶を消す使命をも担っていた
 (何らかの事情で消せなかった場合もあったが)。


 私個人は『ハリケン』を高く買っているが、この設定だけはどうにも頂けなかった。
 そのため、シンケンジャーにまつわる記憶を消したりせず、町のために貢献し、市民の避難誘導をも引き受ける志葉家の黒子たちに一層好感を覚える
 (設定の優劣やキャラの出来云々ではありません)。


●しかし黒子たちも完璧ではなく、時にはドジも踏む。本話ラストではジイまで巻き込んで失敗の連鎖をやらかしてしまう。
 多少やり過ぎの感は残るけれど、こういう「ヌケた」〜悪い意味でなく〜姿を見せておく方が、物語上活きると思う。


□ゲスト怪人マリゴモリ〔声:市来光弘〈いちき・みつひろ〉〕は硬い甲羅を持つ〜実在の生物ではセンザンコウダンゴムシを連想する。妖怪サザエ鬼がモチーフとも言われる〜が、それゆえか引っ込み思案という珍しいタイプの怪物。


 「自分の殻に閉じ籠る」を地で行く奴だ。「自分以外皆不幸になれ」と豪語してやまず、しかも堅固な防御力を誇るのだから厄介だ。
 しかし“適材適所”を体現して戦うシンケンジャーにはあえなく敗れる。「自分の殻に閉じ籠っているだけでは、結局不幸になるのは自分のみ」という教訓も覗(のぞ)く。
 作品テーマと能力が上手く融合した傑作アヤカシ。その意味では奴も“適材適所”だったかも?


◇“適材適所”を活かした戦術が栄〈は〉えていた。
 マリゴモリの甲羅を壊すため、まずグリーン & イエローが“モヂカラ”で作った木と土で壁を作って敵の動きを止め、ピンクの風で倍加したレッドの炎をぶつける。そしてブルーの水で冷やし、急激な温度変化で甲羅を脆〈もろ〉くする。
 ビジュアル的効果も相まって、説得力を生んでいた。


□文脈上ここで書くが、タイトル直後の女敵幹部・薄皮太夫〈うすかわだゆう〉〔声:朴路美〈ぱく・ろみ〉〕*2と腑破十臓〈ふわ・じゅうぞう〉〔演(人間体)・声:唐橋 充〈からはし・みつる〉〕の会話から、ふたりの間に「何か」があった……と匂わせるシーンにニヤリ。今後どう絡んでくるか、興味津津〈きょうみしんしん〉。


 人間でありながら、強さを求めて三途の川に入り外道衆となった十臓。
 同じ唐橋氏が演じた『仮面ライダー555〈ファイズ〉』[03・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20031102/p1]のレギュラーキャラ・海堂直也=怪人スネークオルフェノクを彷彿させる「はぐれ者」である立場が、偶然にせよ興味深い。


 ただし、海堂が人間とオルフェノクの狭間で生き方に迷う存在だったのに対し、十臓は自分の立場を逆手に取って新しい生き方を築こうと目指す姿が魅力的。今後の行動が楽しみだ。*3


△黒子たちに道路を渡る手助けをされる老人は依田英助〈よだ・えいすけ〉氏。「戦隊」「ライダー」ほか70〜90年代まで様々なヒーロー番組で、怪人の声を数多く演じられた。
 御年齢もあってか、ここしばらく御無沙汰だっただけに、この顔出し出演は嬉しかった。できれば、また怪人を演って頂きたい。


 なお、この道路をはじめ黒子たちが溶け込む街中は、09年度前期のNHKテレビ小説『つばさ』でも舞台になった、今でも小江戸と呼ばれる埼玉県川越市(かわごえし)。志葉家の館が存在してもおかしくない街としての風情もロケにて出している。


「第十七幕・寿司侍〈すしさむらい〉」

〈脚本:小林靖子/監督:諸田 敏〉


☆すわ外道衆出現! でも空振りだった。だが、その時から丈瑠は自分を見つめる謎の視線に悩まされる。


 折しも、志葉家周辺に『ゴールド寿司』なる屋台を駆〈か〉る妙な寿司屋の青年が出没する。
 志葉家の結界を破り「近日見参」《※》と書かれた矢文〈やぶみ〉を打ち込んだのも彼らしい。


 《※「けんざん」と読まれがちだが、正確には「げんざん」である》


 ふたつの謎を追う侍たち。


 丈瑠を見ていた影は、外道衆の妖術使い=イサキツネ〔声:沢木郁也〈さわき・いくや〉〕だった。
 敵幹部・骨のシタリの指示を受け、志葉家に伝わる
 「外道衆総大将=血祭ドウコク〔声:西 凛太朗〈にし・りんたろう〉〕《※》封印の文字」
 を探るために、密かに丈瑠の髪の毛を入手し“鏡映しの術”で覗いていたのだ。


 《※『五星戦隊ダイレンジャー』[93]の敵=ゴーマ帝国幹部・シャダム中佐で知られる。近年は声優を主体として活動中》


 “清浄〈しょうじょう〉の谷”の泉に潜ることで術を破ったシンケンレッド。
 だが術のせいで心身ともに消耗していた。殿様に危機が迫る!


 そこへ、例の妙な寿司屋が現われた。


 「一貫献上!」


 トロの握り寿司のような形のアイテム(=スシチェンジャー)を使い、変身する青年。


 「俺が6人目のシンケンジャー、シンケンゴールドだッ!!」


 戸惑う他のシンケンジャー、そしてイサキツネ。


 そうこうする間に、シンケンゴールドは見事な居合いでナナシ連中を次々に斬り伏せていく。目を見張る一同。
 果たして彼の正体は……?


 謎の視線を受け疑心暗鬼になる丈瑠と、6人目のシンケンジャー登場。二つの流れを遊離させず絡ませ、結実させるストーリーに感服。
 いずれも丈瑠が軸となるが、心理的な罠に陥りかける丈瑠の脆さ、それを克服する強さが上手く現われている。

 
○早くも登場した6人目のシンケンジャー=シンケンゴールド。
 その正体は梅盛源太〈うめもり・げんた〉〔演:相馬圭祐〈そうま・けいすけ〉〕。以後の話で判明するが、丈瑠の幼馴染みだ。
 とにかく表情豊かで、言動もいちいちオーバーだが、それだけに観る者へ与える印象は強烈だ。浸透するのも意外と早いだろう。


□ゲスト怪人イサキツネは、人を惑わせるという言い伝えを持つキツネと、天狗を融合させた出で立ちが秀逸。
 顔立ちはヤツデの葉を思わせるが、天狗が神通力を使う時に振るうと言われる“葉団扇〈はうちわ〉”を模したものであろう。
 また『ウルトラマンA〈エース〉』[72]#14「銀河に散った5つの星」〈脚本:市川森一/監督:吉野安雄・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060805/p1〉に登場した“異次元超人エースキラー”〜エース抹殺のために造られた人造超人〜にも似ている。偶然だろうけど。


◇火の“モヂカラ”を持つシンケンレッドが、逆の作用を持つ水の力で逆転を図る戦術は、泉から飛び出し斬りかかる姿と合わせて痛快だった。


◇目にも止まらぬ居合いを披露するシンケンゴールド。これも彼の個性をダイレクトに打ち出す演出として秀逸。


△今回より侍たちの衣装が夏服に変わり、より開放的なスタイルになった。
 これまでのジャケットは統一感を打ち出し、シンボルカラーが判り易〈やす〉かった代わりに、少々堅いムードが漂う難点もあった。
 少し野暮なことを言えば「夏場は暑くないかな?」と余分な心配をした視聴者もおいでかも知れない。


 シンケンジャーは基本的に私服で、しかもシンボルカラーに拘〈こだわ〉り過ぎない(服のどこかにあしらわれてはいるが)自由闊達なムードが好ましい。
 一方、出陣時の着物姿はビシッと決まっており、普段の自由さゆえに厳粛さが増幅される。
 変身前の衣装に関しては、昭和から平成初期に先祖帰りした印象だが、却って画期的に感じる。


「第十八幕・侍襲名〈さむらいしゅうめい〉」

〈脚本:小林靖子/監督:諸田 敏〉


★裃〈かみしも〉を纏〈まと〉い、勇んで志葉家へ乗り込んできた源太。
 だがジイや流ノ介は、彼が侍を名乗ることを許そうとしない。我流の剣術は危険だからだ。しかも、丈瑠までが彼を冷たく突き放す。


丈瑠「お前は6人目でもなければ侍でもない。お前の助けは要らない!」


 「タケちゃんが殿様になったら、俺も家来になる!」


 幼き日、タケちゃん=丈瑠と交わした約束……。それを果たせず失望した源太は、志葉家を出ようとする。そんな彼の背中を押したのは、千明とことはだった。


 一方茉子も、殿様の真意=「幼馴染みを巻込みたくなかった」を見抜いていた。
 彼を巻き込めば隙を見せられず、強くいられる自信がないのだろう……と
 (責めるでも諭〈さと〉すでもなく、淡々と指摘する口調が逆説的に重く響く)。


 勝手な推測だ、と退けようとする丈瑠。だが、実は図星だった。
 さらに戻ってきた源太が言い募〈つの〉る。


源太「幼馴染みを助けたら何で強くねェンだ! 水くせェぞ! 俺だって覚悟を決めてるんだ、いくらだって命預ける! だから巻き込めよ、俺を!」


 そして千明 & ことはも源太から聞いた丈瑠の秘密=「実は相当の怖がり」を暴露した。もう強がりは通じない。殿様は渋々(?)源太の参入を承知する。
 喜んだシンケンゴールドは大張り切りで出陣、レッドとの共闘で見事敵を討つ。


 丈瑠の弱味を覗かせ「彼の威勢は“やせ我慢”の裏返しだった=堅いだけの殿様でない」とし、と視聴者に証明しようとの狙いは解る。
 ただ少し行き過ぎの感は否めない。幼児期の失態まで持ち出すのはどんなものか。
 ひとつ間違えばイジメの変形とも取られかねない。基本対象年齢である幼児を考えれば、一番テーマを伝え易い手段・描写だったのだろうが……。
 源太の懇願自体は真摯なだけに、なおさら惜しい。

 
 ともあれ、ついに源太は“6人目のシンケンジャー”として認められたのだった。

 
●源太の裃姿にその場では堪えたが、席を外すと噴き出してしまう丈瑠。そして呟く。


丈瑠「あいつ、変わってない……。」


 口ではああ言ったものの、本当は源太が来てくれて、この上なく嬉しかったのだろう。それを押し隠す辺りは、やはり「殿様」だ。
 その気構えゆえに素直になれない複雑な心境は醸し出されていたが、源太を頭ごなしに叱るのではなく、もう少し柔らかい態度を執〈と〉らせても良かったのでは?


○ことは & 千明は源太を励まし、茉子は丈瑠の心を思いやる。
 そして、二人の間に立ち、源太をフォローする形で受け入れましょう……と殿様に進言する流ノ介。
 このキャラ配置は絶妙だった。


□ゲスト怪人ヒャクヤッパ〔声:鈴木千尋〈すずき・ちひろ〉〕*4は、両手の刃を縦横無尽に振り回し、さらに身体の至る所から刃を伸ばして襲う、どうにも物騒な奴である。
 また、いつどこから攻めてくるか解らないため反撃の糸口を掴ませにくく、それがそのまま彼の強靭さに繋がっている。
 鈴木氏の御熱演にも裏打ちされ、手のつけられぬ凶暴さを漲らせていた。
 ネーミングは、「人が持つ煩悩の数」と言われる数字=「108」と、刃物を意味するスラング〈隠語〉〜主として警察関係で使われるらしい〜「ヤッパ」の合成だろう。
 このアヤカシは、煩悩のままに刃を繰り出すヤバい奴だから、やっぱ一番相応しい名と言える。


■「前話のゲスト怪人イサキツネとは旧知の仲」という背景は説得力不足。
 悪キャラのメリハリづけと、レッド+ゴールドのチームワークと対比させる意図とが働き、策士イサキツネとは敢えて真逆の性格にした……とも読めるが。
 (編:キツネの神様・お稲荷さまを百八匹祭る京浜伏見稲荷神社からの連想か? でも戦後にできた神社だから、それはないかなぁ・笑)


◇全身凶器の危険な敵を打破するため、レッドとゴールドは互いの剣術を融合させる。


レッド「奴の剣は分裂する。ひとりでは捌〈さば〉き切れないが……」
ゴールド「ふたりなら……か。任せろ、捌くのは得意だからよ!」


 ゴールドの背景を踏まえた冴えたセリフとともに繰り出された剣が、凶暴な刃を打ち砕いた。


♪「侍とは、裏切らない、一度誓った仲間のこと……」


 バックに流れるOPテーマの歌詞の2番が、ふたりの繋がりを暗示させる功を奏している。


 そして烏賊折神〈いかおりがみ〉とシンケンオーが合体した「イカシンケンオー」も登場。
 必殺技「槍烏賊一閃〈やりいかいっせん〉」で巨大ヒャクヤッパを撃破した。

 
◇他のシンケンジャーが振るう“シンケンマル”が長剣なのに対し、ゴールドの“サカナマル”は短剣だ。小回りが利き機動性が高いため、居合いにはうってつけだろう。
 ここで軽く触れよう。居合い斬りとは「一瞬で抜刀して斬り即座に鞘へ納める」という一撃必殺の技である。よく言われる「抜く手も見せぬ」迅速な刀捌きが要求される。
 従って、実際には居合いだけで複数の相手を倒す状況などあり得ないのだ。
 ただ、あまり堅い苦言をつけるのも野暮〈やぼ〉なので、ゴールドの場合は、複数を相手にする際には居合いに匹敵するほど素早く刀を繰り出せる力量を備えているのだ……と解釈したい。


●さて、もう少し源太について観てみよう。ここではシンボルカラーのゴールドを主軸に据える。
 スーツの腕や脚のカラーは、レッドたちの黒に対しゴールドは青。
 精悍な印象とともに、シンボルカラーの金と併せて「青空に輝く太陽」といったイメージでもある。


 同じく中途参入+金色をシンボルカラーに持つ戦士としては『ゴーオン』の須塔大翔〈すとう・ひろと〉〔演:徳山秀典〈とくやま・ひでのり〉〕=ゴーオンゴールド、
 さらに遡〈さかのぼ〉れば『魔法戦隊マジレンジャー』[05・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060313/p1]の天空勇者マジシャイン=ヒカル/天空聖者サンジェル〔演:市川洋介〈いちかわ・ようすけ〉〕が先〈さき〉んじている。
 このふたりは戦術・戦力とも初期メンバーより上で、冷静かつ真摯な性格だった(物語が進むにつれ徐々に砕けていったが)。
 さらにヒカルは、「ヒカル先生」と呼ばれマジレンジャーの教官としての役割 & 人間ではなく天界の魔法使いという背景まで持つ。


 一方、源太は先達のふたりとは立場・性格とも真逆で、むしろ『獣拳戦隊ゲキレンジャー』[07・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20080817/p1]の追加戦士・久津ケン〔演:聡太郎〕=白の戦士ゲキチョッパーに近い感じだ。視聴者にはその方が溶け込み易いのかも知れないが。


 何にせよ、源ちゃんのキャラは『シンケン』に新しい風を吹き込んでくれそうだ。
 シンケンゴールドは、寿司屋という職業も手伝ってか、通常は他の侍たちとは心ならずも少々距離を置いている。
 成り行き上援軍を務めたゴーオンゴールドや後見人的役割の濃かったマジシャインとは、その意味でも一線を画している。
 先輩のゴールド戦士たちよりも「遊軍」という雰囲気が強い。これも一種の“適材適所”だろう。
 

○変身のシークエンスも5人とは微妙に異なる。
 源太の携帯電話型の変身アイテム“スシチェンジャー”は、“モヂカラ”を筆で宙に「書く」動きの5人の“ショドウフォン”に対し、“電子モヂカラ”を携帯電話のダイヤルボタンで「打ち出す」姿。
 5人の「一筆奏上」は優雅さが漂う一方、源太の「一貫献上」は豪快さが前面に出ている……
 など、先述のコスチューム差異と相俟〈あいま〉って、ゴールドの特異な背景&戦術を巧〈うま〉く演出している。
 

○ところで、脱線して恐縮だが、源太の性格や寿司屋という背景、何よりも姓=「梅盛」から、年長の諸氏ならば、あるキャラを想起されないだろうか。
 そう、今なお根強い人気を得る、吉沢やすみ氏原作の人情ギャグアニメ『ど根性ガエル』[原作=70〜76/集英社週刊少年ジャンプ』連載、アニメ=72〜74]で活躍した寿司屋「宝ずし」の住み込み店員=「梅さん」こと佐川梅三郎〈さがわ・うめさぶろう〉〔声:原田一夫〈はらだ・かずお〉〕*5である。
 粋〈いき〉でイナセ、ちょっとお調子者で時々無茶もやるが、曲がったことは大嫌いで人情に厚い……と、源太と梅さんは相似した点が多い。
 当初は脇役だったが、やがて『ど根性〜』もう一人の主役とも呼べるまでに出世した梅さんに倣〈なら〉い、源太も、侍として、また“6人目のシンケンジャー”として今後の成長が期待される。


 

「第十九幕・侍心手習中〈さむらいごころてならいちゅう〉」

〈脚本:小林靖子/監督:竹本 昇〉


源太「俺は確かに侍になりたくてしょうがねェよ! なれて嬉しかったし、“ごっこ”かも知れねェ……。だけど、外道衆が誰かの命を奪うなら、命張って守る! これだけは絶対“ごっこ”じゃねェ……。助けなきゃいけない人がいるのに、侍が自分の命守るかよ!」


☆なんとかシンケンジャーに参入を果たし、大ハシャギの源太。
 だが、流ノ介はまだ彼を「侍」として認めない。
 源太は黒子になりすまして流ノ介の生活を観察し、侍心を身につけようとするが……?


 真面目な流ノ介とオフザケ者の源太。好対照な二人を組ませて対比の面白さを際立たせるとともに、源太の本質を浮き彫りにする筋運びが巧〈たく〉み。


 『ゴーオン』のゴーオンジャー初期5人VSゴーオンウイングス2人(ゴーオンゴールド&シルバー)の対立構図を彷彿とさせる。
 『ゴーオン』ではあとから現われたウイングスの方が能力的に上で、先に動いていたメンバーを軽く見ていたが、流ノ介VS源太の場合は『ゴーオン』とちょうど逆転した構図になっている。


 アニメ作品では、以前本誌での『ゴーオン』評で例示した往年の大ヒット作『美少女戦士セーラームーン』シリーズ[92〜97](以下シリーズタイトルは『セラムン』と略記)第3作『セラムンS〈スーパー〉』[94]における セーラームーン+四守護神チーム VS 外部太陽系チーム の例がある。
 こちらのキャラ配置&構図はむしろ『ゴーオン』に近かった。天王はるかセーラーウラヌス〔声:緒方恵美〈めぐみ〉〕がムーンたちの戦いを“戦いごっこ”と罵倒するエピソードもあった。
 これは本話で流ノ介が源太を非難した際の“侍ごっこ”にも通じる。


 しかし、それに反発しキッパリと自分の意思をぶつける源太。冒頭に挙げた彼の宣言には、裏のない“真剣さ”が溢れていた。
 最終的には流ノ介も源太の「人を守ろうとする気概」だけは“ごっこ”ではない……と理解してくれた。言葉ではなく行動で示したことが効いたのだろう。

 
○時計のように規則正しく几帳面な生活を送る流ノ介。
 筆の稽古に遅れたことから流ノ介の危機を察して駆けつける仲間達の姿を見せることで、彼の性格の利点や「侍心」を源太に、そして視聴者に知らしめる辺りは上手い。


 「信じるんじゃなくて疑わねェンだ、これっぽっちも……。なるほどねェ、侍が命預けるってのは、こういうことか!」


●真面目さばかりが表に出ると却って嫌味になるのだが、流ノ介の場合、真面目さの反転として時折覗く頑固さが滑稽〈こっけい〉に映る場合もあり、親しみ易さが湧く。
 ただしこれも「真面目であることを嘲笑する」風潮に加担する恐れもあるので、度を越さぬよう留意してほしい。


■ゲスト怪人オイノガレ〔声:桜井敏治〕は、三途の川へ続く井戸を開くため9人の女性を生贄〈いけにえ〉にしようとする残忍さ & 身体の油を利用してシンケンジャーの刀を受け付けない狡猾〈こうかつ〉さは良く出ているが、他の存在感はいささか薄く残念。
 賽〈さい〉の河原*6の石でできた斧に油をかけて効かなくしてしまう間抜けさ & 油が火に弱いのを忘れて、火を操るシンケンレッドに挑む無謀さは笑えるけど。


◇ブルー+ゴールドの連携攻撃=「清流百枚おろし」。
 ふたりの息が合ってきたことを示すとともに、映像の美しさも手伝い、穢〈けが〉れを浄化する意味合いも持つ点が見事。
 巨大戦ではイカシンケンオーの合体が解けピンチになるが、烏賊折神は墨〈すみ〉を吐いて脱出する(笑)。危機を巧みにかわすゴールドのスマートな発想に拍手。

 
▲多少余談になるが……スマートといえば、かつては仮面ライダーBLACK(87・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20090802/p1)・仮面ライダーBLACK RX(88・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20090726/p1)・仮面ライダーシン(92)・仮面ライダーZO(ゼットオー)(93)・仮面ライダーJ(94)・メガブラック(97)などを演じられたシンケンゴールドのスーツアクター=JAE所属のベテラン俳優・岡元次郎〈おかもと・じろう〉氏であるが、既に40歳を超えられている。
 そのためか、大変失礼ながら「最近“ビール腹”になられた」という評判が立っている、とお伺いする。私が見た限りでは、それほどとも思えないのだが……?
 とはいえ、年齢や体格を感じさせない動きは流石〈さすが〉だ。寧〈むし〉ろ「恰幅〈かっぷく〉がついた」、もしくは本当の意味で「スマートになった」と言えるのではないか?


 私を含め〈笑〉壮年を迎えつつある、或いは迎えてしまったファン連にも大変励みになる。
 或いはお子様と見ているパパさんファンの中にも、そうした視点から岡元氏に心の内で声援を送っておられる方が、少なからずおいでなのではないだろうか。
 岡元氏には今後ともヒーロー俳優として、できるだけ永く頑張って頂きたい。


△今回よりシンケンゴールドもOPに加わる。画面テンポもアップしたし、ゴールドの登場シーンもテロップとシンクロしていて良い。
 『ゴーオン』での6〜7人目の戦士ゴーオンウイングスのOP参加はやや時期尚早にも見えたが、シンケンゴールドはファンに馴染み易いキャラなので、これで良かったかも。


▲それだけにEDには未登場なのが残念。撮影が大変なのは解るが、ウイングスのED参加が物語終盤に入ってからと結構遅かったので、シンケンゴールドはなるべく早く入れてやってほしい。

 
◎さて、先述の通り『シンケン』は、私にとって好感触の作品である。新しい試みや工夫も、今のところは良い方向に機能しているようだ。
 しかし半面、物語展開や人物の言動などに未だ堅さが漂うなど、惜しい部分も見受けられる。
 ただ、源太の参入も手伝い、今後は少しずつ良い意味で砕けて、馴染み易い物語になっていくだろう。そうした希望も篭〈こ〉めて、今回はゴールド登場前後のエピソードを主体に語らせて頂いた。


 彼らの行く手には様々な試練が待ち受けていそうだが、それを乗り切って外道衆を滅ぼし、真〈まこと〉に「天晴〈あっぱ〉れ!」との賛辞を受けられるチーム、そしてシリーズに成長することを期待している。
 といった次第で、拙者の『シンケンジャー』所感、まずはこれまで……。



 
★初出時(「假面特攻隊」2010年準備号)の本作評中、話数表記がすべて「●●之巻」と『ハリケンジャー』のそれとつい誤認して表記しておりました。
 正しくは今回の通り「第●●幕」です。訂正&お詫び申し上げます。


※文中、以下の各誌並びにインターネットフリー百科事典「ウィキペディア」に於ける本作解説&関連記事を一部参考にさせて頂きました。
☆『東映ヒーローMAX〈マックス〉』28&29号[09/2&5・辰巳出版
☆『宇宙船』124&125号[09/4&7・ホビージャパン


【2009/7/20〜12/3一部改訂】


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2010年準備号』(09年8月14日発行)所収『侍戦隊シンケンジャー』序盤合評5より抜粋)


[関連記事]

侍戦隊シンケンジャー』 〜前半賛否合評2

  (当該記事)

侍戦隊シンケンジャー銀幕版 天下分け目の戦 〜初3D賛否合評 20分の尺でドラマは可能か?

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100810/p1

女シンケンレッド志葉薫姫・スーツアクター大研究! 〜80年代戦隊ヒロイン蜂須賀祐一×戦隊ヒロイン3年目シンケンピンク人見早苗!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20110502/p1


炎神戦隊ゴーオンジャー BUNBUN!BANBAN!劇場BANG(バン)!!』

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20080831/p1

獣拳戦隊ゲキレンジャー』 〜終了・肯定評

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20080817/p1


[関連記事] 〜腑破十臓役・唐橋充がレギュラー!

仮面ライダー555ファイズ)』 〜前半合評1 「夢」を持たないのは悪いことか?・唐橋充主役編#7・8!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20031102/p1

ウルトラギャラクシー大怪獣バトルNEO』 〜前半評 キール星人グランデ!・唐橋充主役編#6・7!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100211/p1


[関連記事] 〜脚本家・小林靖子作品評

仮面ライダー電王』 〜後半評 複数時間線・連結切替え!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20080217/p1

*1:NHKの教育番組『たんけんぼくのまち』[84〜92]の主人公=“チョーさん”でお馴染み。当時は本名の「長嶋雄一」だったが、06よりこの名をそのまま芸名とされた。近年はおもに声優として活動されているが、意外にも特撮作品はこの骨のシタリが初となる。

*2:鋼の錬金術師』[03・09/4よりリメイク版も放送]の主人公=エドワード・エルリックなどの少年役を始め、幅広い演技で定評のある人気声優。こちらも特撮作品は薄皮太夫が初となる。
 なお、朴さんのお名前の「ろ」は、正しくは「王(おうへん)」に「路」という字ですが、パソコンでは出しにくい字なので、ここでは「路」表記とさせて頂きます。

*3:なお唐橋氏は『ウルトラギャラクシー大怪獣バトル・NEVER ENDING ODYSSEY〈ネバー・エンディング・オデッセイ〉』[08・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20091230/p1]にも、キール星人グランデ役でセミレギュラー出演(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100211/p1)。日本特撮を代表する3大シリーズ=「ウルトラ」「ライダー」「戦隊」のすべてにおいて、ひと味違ったライバルキャラを演じた、稀有な俳優となられた。イラストレーターとしても活躍中。

*4:津田雅美氏原作に拠る少女漫画『彼氏彼女の事情』[95〜05/白泉社]のTVアニメ版[98]で、主人公のひとり・有馬総一郎〈ありま・そういちろう〉役でデビュー。現在は若手から中堅の域に入っているが、多彩な声の演技の抽斗〈ひきだし〉を備え、或る意味ベテランの風格も漂う。
 “戦隊”では
 『轟轟戦隊ボウケンジャー』[06・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070108/p1]の敵種族アシュ〜クエスター・レイ(Task.17〜42/準レギュラー)、
 『ゴーオン』GP‐32「秘宝ヲサガセ」〈脚本:武上純希/監督:渡辺勝也〉・GP‐33「原始エンジン」〈脚本:武上純希/監督:諸田 敏〉の敵怪人・蛮機獣〈ばんきじゅう〉ドリルバンキの声を担当。
 冷静で理知的ながら残忍さを秘めるレイが特に印象的だが、ヒャクヤッパはレイとは真逆=粗暴&残虐さを隠さない奴である点が偶然にせよ興味深く、鈴木氏の演技力の幅広さを感じさせる。

 なお、デビューキャラ=有馬総一郎も、複雑な生い立ちと家庭環境に因〈よ〉り、優等生ながら心に闇を秘めた少年だったが、恋人となった宮沢雪野〈みやざわ・ゆきの〉や養父母〜血縁上は伯父と義伯母だが、今は実の親子以上に深く強い絆を築いている〜・友人たち、そして偶然再会した実父らの助けで闇から解放された(アニメでは、そこまでは描かれず)。

*5:設定年齢28歳。ベランメエ口調と大きな顎〈あご〉が特徴。同作の主人公で中学2年のワンパク少年・ひろし&平面ガエル・ピョン吉とも仲がいい。
 実は赤ん坊の頃に養護施設「どんぐりの家」の門前に捨てられ、そこで育った過去を持つ(就職後もクリスマスには必ず「どんぐりの家」を訪れ後輩の孤児たちと遊ぶ)が、普段はそれを感じさせないサッパリした性格。
 空手八段の腕前だが、よほどのことがなければ振わない自制心も持つ。
 アニメでは初期から、原作では開始から1年ほど経過してから登場。
 自転車〜アニメではバイク〜での出前中に仲良しカップルを冷やかし、調子に乗って転倒する悪いクセがある。
 ひろしの通う中学の国語教師・山中ヨシコ先生を巡り、ひろしの担任で数学&体育担当の南よし雄先生と三角関係=恋の鞘当てを繰り広げた(アニメでは未決着、マンガでは一応梅さんの勝利で終わったが、本文では詳説しない)。
 なお、同作は『新・ど根性ガエル』[81]として再アニメ化(初期ほどのブームは得られず半年余りで終了。声優もほとんど代わったが、梅さんは引き続き原田氏)。
 さらに90年代末頃より大鵬薬品工業の胃腸薬『ソルマック』のCMにも起用され、成長した同作キャラたちの姿が見られる(原田氏が惜しくも98年に他界されたため、梅さんは難波圭一〈なんば・けいいち〉氏《※》が担当)。

 《※特撮作品では『ウルトラマンメビウス』[06]のウルトラマンヒカリ=ハンターナイトツルギ及び#12「初めてのお使い」(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060915/p1)の“魔神怪獣コダイゴンジアザー”・『獣拳戦隊ゲキレンジャー』[07・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070624/p1]「修行その12・ゾワンゾワン! 臨獣拳、修行開始」の敵怪人“臨獣イール拳ナギウ”のCV(シーブイ。キャラクター・ボイス)が記憶に新しい》

*6:親より先に亡くなってしまった子供がその報いで苦行を受けるとされる場所。親の供養のために石の塔を積み上げようとするが、何度も鬼に邪魔にされて果たせない……という行である。