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侍戦隊シンケンジャー銀幕版 天下分け目の戦 〜初3D賛否合評 20分の尺でドラマは可能か?

侍戦隊シンケンジャー 〜序盤賛否合評
侍戦隊シンケンジャー 〜前半賛否合評1
侍戦隊シンケンジャー 〜前半賛否合評2
仮面ライダー電王 〜後半評 複数時間線・連結切替え!
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 映画『天装戦隊ゴセイジャー エピックON THEムービー』公開記念!


 ……とカコつけて(汗)、昨年の「戦隊」映画『侍戦隊シンケンジャー銀幕版 天下分け目の戦』賛否合評を発掘UP!


侍(さむらい)戦隊シンケンジャー銀幕版 天下分け目の戦(たたかい)

(2009年8月8日封切)
(脚本・小林靖子 監督・中澤祥次郎 アクション監督・石垣広文 特撮監督・佛田洋

侍戦隊シンケンジャー銀幕版 天下分け目の戦 〜評1

二度は出来ない禁じ手

(文・いちせたか)
(2009年8月執筆)


 開巻するなりいきなりの大合戦シーンに目を奪われているうちにサラっとキャストのクレジットが入り、ああオープニングは特にないんだなあとちょっとガッカリ。


 なるほど近年のNHK大河ドラマ(『葵 徳川三代』(00年)・『新選組!』(04年)・『義経』(05年))のように派手な合戦でまず目を引き、後で経緯の話に戻るパターンか、と理解しつつ観ていると(同時上映『劇場版 仮面ライダーディケイド オールライダー対大ショッカー』(09年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20091213/p1)の方がそのパターンだった)、そのまま経緯の話に戻らず現在進行形で話が進みあっという間に終わってしまった。



 ここで「なんだか前後編の後編だけを上映した昔の『東映まんがまつり』みたいだなあ」と思ったが、鑑賞後に読んだ『東映ヒーローMAX SPECIAL(マックス スペシャル)』(辰巳出版ISBN:4777806901)掲載の小林靖子氏のインタビューによれば、20分という短い尺を生かすため最初からTVで言うところの「Bパートから始まる」形で脚本を書いたのだとか。道理で前後編の後編みたいになるはずだ。


 ついでに脂目マンプクの陣に突入したシンケンレッドが馬上から斬りかかるシーンは川中島の戦い上杉謙信がモチーフなのかなあと思ったら同誌の中澤監督のインタビューでマンプクに武田信玄のイメージを持たせてあると語っていたのでやっぱりそうなのだろう。


 マンプクの声を演じた大和田伸也氏は好演。近年は話題作りで有名芸能人にアフレコさせる例があとを断たないが、やはり発声や芝居がきちんとできている人は少ない。今回の大和田氏は成功。



 余計な贅肉を極限までそぎ落としたノンストップアクション。それだけに脂目マンプクの万単位の大軍とシンケンジャーの戦いは見応えもあり、敵の給水時だけがわずかな休息という危機感はなかなか良い。普段変身の際に華々しくうち立てたてられる幟(のぼり)がクサレ外道衆の雑兵に踏み躙られる光景もショッキングだ。


 ただシンケンジャーと外道衆の戦いは実際の戦国時代の合戦とは違うので、一気に大勢を倒せる大技や合体技をあまり使わずナナシ軍団と延々と斬り合いを続けてこちらがどんどん疲弊していくのが不自然と言えば不自然な気もしないでもない。


 まあそれはともかく、説明不足を説明ゼリフで補う強引さに目をつぶれば、見せ場続きでサクサクと進む展開は心地よく、全員の見せ場もそれなりにある。ハードな戦いの中にもナナシのコスプレシーンでは笑いを、神社で願い事をする姉弟のシーンでは優しさを盛り込み一応のバランスを保っている。


 馬上での名乗りはカッコいいし、復活した折神(おりがみ)キョウリュウマルの凄さも映像から十分伝わり、バトル自体は十二分に堪能できた。
 ラストで戦いから余韻なしで突入するエンディングも楽しく(雪ん子コスプレの花織ことは(イエロー)がカワイイ)、ただ……、そうした画面上の勢いや一通りのおもしろさを確かに認めつつ、自分の中でちょっとした葛藤がある。


 
 この作品の構成は、『作品』として『アリ』なのだろうか? と。



 3D映画としても上映されることや併映作品との時間配分、子供たちの集中力の持続時間など諸々のオトナの事情を踏まえても、どうしてもこの作品の極端な構成を全面的に評価できない自分がいる。


 というのは前述の小林氏のインタビューで、


 「20分ではドラマなど入れられない」


 と発言している点が気になったからだ。


 劇場用新作の時間として20分は確かに短い。エンディングの分があるので実際の本編はTVシリーズより短い。そのためにああいう形になったというのだが、過去スーパー戦隊シリーズには長く30分ではなく25分枠の時代があり(『科学戦隊ダイナマン』(83年)第9話〜『電磁戦隊メガレンジャー』(97年)第7話)、そのころの本編は約17分である。
 だがその時代でも戦隊は数多くの傑作エピソードを残してきた。決してドラマが描けない尺ではないはずなのだ。


 今回の作品の要素をちゃんと盛り込み、マンプクの復活や初代秘伝ディスクの情報を過不足なく見せ、エンディングの前にエピローグを挿入することはホントに不可能なのだろうか?


 中途半端になるくらいならあえてBパート開始のつもりで作ろうとしたことは大きな決断だし、そうした発想自体を否定する気はない。
 ただ出来上がった作品を観ると、やはりどこか物語としてのいびつさを感じてしまう。 



 見せ場の連続は観ていて確かにカッコいいが、その一つ一つには本来そうなる原因も気分が盛り上がるための『間』もある。それが不十分なとき、名場面の連続はただのプロモーションと化してしまう。そこに果たして2度3度と繰り返し観たくなる力があるだろうか?


 この作品を観た人に改めて聞いてみたい。この作品は、『作品』として『アリ』?


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2010年準備号』(09年8月14日発行・速報折込みコピー)〜『仮面特攻隊2010年号』(09年12月31日発行)所収『侍戦隊シンケンジャー銀幕版』合評1より抜粋)


侍戦隊シンケンジャー銀幕版 天下分け目の戦 〜評2

『強襲流転立体絵巻』

(文・鷹矢凪弥寿士)
(2009年9月執筆)


☆『侍戦隊シンケンジャー銀幕版・天下分け目の戦』〜以下、本文の猥雑化を防ぐため、便宜上『シンケン銀幕版』と表記〜。


 開巻早々、シンケンジャーが本作独自の敵=クサレ外道衆の大攻勢によって惨敗を喫する。


 主人公チームの敗北から開幕される“スーパー戦隊シリーズ”劇場映画としては第29作『魔法戦隊マジレンジャー』[05]映画版『魔法戦隊マジレンジャー THE MOVIE インフェルシアの花嫁』[05・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060313/p1]〜同様の理由で以下『映画マジレン』〜があるが、あちらはインパクトをもたらす効果を狙って「敗北シーンを先に見せ、その理由=発端を後から見せる」という構成を執っていた。


 しかし『シンケン銀幕版』は何の前触れもなくシンケンジャーが打ちのめされる場面から始まるのだ。
 クサレ外道衆は1万人以上(!)という軍勢から成るため、やむを得ない状況とも思わせる。無論シンケンジャーとて大軍勢を向こうに回し力を尽くしたのだろうが、それでも及ばず地に伏してしまった辺り、クサレ外道衆、そしてその頭目・“脂目〜あぶらめ〜マンプク”〔声:大和田伸也〈おおわだ・しんや〉〕の並々ならぬ強さを印象づけて衝撃を与える一方で、後半でのシンケンジャー逆転の構図に向け期待を煽〈あお〉るという絶大な効果を生むのだ。
 

○逆転のカギである初代秘伝ディスクを手に入れるため、敵陣にある神社へ潜入すべく、戦闘員クサレナナシに変装するシンケンジャー
 提案したのは池波流之介〈いけなみ・りゅうのすけ〉〔演:相葉弘樹〈あいば・ひろき〉〕=シンケンブルーと花織〈はなおり〉ことは〔演:森田涼花〈もりた・すずか〉〕=シンケンイエローだった。
 ふたりのズレた発想なら巧〈うま〉い手段を見いだせるかも……と当人たちに自覚はないがそれまで口にせずとも実は彼らの性格を見抜いていた(笑)志葉丈瑠〈しば・たける〉〔演:松坂桃李〈まつざか・とおり〉〕=シンケンレッドも提案を認め、作戦決行、潜入に成功した。


 だが見つかった初代秘伝ディスクに残されていたのは、志葉列堂〈しば・れつどう〉〔演:合田雅吏〈ごうだ・まさし〉〕=初代シンケンレッドのメッセージのみだった。

 
 「正しく相応〈ふさわ〉しき者、やがて“力”を目にする……」

 
 勝つ手段が掴めない。自棄になった谷 千明〈たに・ちあき〉〔演:鈴木勝吾〈すずき・しょうご〉〕=シンケングリーンは初代秘伝ディスクを投げ捨てるが、たしなめられてすぐに反省。
 僅〈わず〉かな場面だが、彼の静かな成長が伺える。
 短い時間ながら、各人の性格や心理を上手く盛り込む手法には感心した。

 
☆そこへ同じく敵の眼をかいくぐってお参りにやってきた幼い姉弟が、父母を、そして皆を救って下さい……と祈る姿を神社の中の陰から見聞きした侍たちは、マンプクを倒し人々を守る決意を新たにするのだった。


 先達の“戦隊”映画では、ゲストもだいたい戦士や宇宙人などの超越者であり、『映画マジレン』の女子高生・山崎由佳〈やまざき・ゆか〉〔演:平田 薫〈ひらた・かおる〉〕(小津 魁〈おづ・かい〉〔演:橋本 淳〈はしもと・あつし〉〕=マジレッドのガールフレンド)のように戦隊メンバーの誰かと関係を持つ人物を除き、一般人が物語に関与することは少なかった。
 それだけに今回の姉弟は目新しく感じ、さらにヒーローの奮起を促す存在としても大きく機能している。


 近年のヒーローものの難点の一つ=「物語内で一般人にアピールするヒーロー性の弱さ」を、ささやかながら挽回してくれて、少し嬉しかった。
 

☆再出陣に際しての丈瑠の宣言も、実にカッコイイ。


 「いいか、侍の本分は死ぬことに非ず……狙うはマンプクの首ひとつ!」


 敵を倒し、自らが生き延びねば本当の勝利ではない。自己犠牲の精神は尊いが、それを一歩進めた覚悟に、戦士としての頼もしさを覚えた。
 戦って死ぬのはた易いが、敵に打ち勝ってなお生き延びることは難しい。しかし、それこそが人々を救うことに繋がるのである。殿の宣言は、厳しい社会情勢の中、観る人にも「生きる勇気」を与えたと思う。


◇再出陣→合戦の迫力は、筆舌に尽くし難い。本作の“売り”である「フルデジタル3D映画」の利点が存分に発揮されていた。シンケンジャーが馬に乗って攻め入るシーンも凄い。


 『映画マジレン』と同時上映の映画『劇場版 仮面ライダー響鬼〈ひびき〉と7人の戦鬼』[05・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060314/p1]でも同様のシーンがあったが、本作はスケール&迫力という部分で、同作を大きく超える。
 そしてマンプクとシンケンレッドの一騎討ち。馬から斬りかかるレッドの姿には尋常でない気合が感じられ、カッコ良かった。
 奮戦するレッドだが、次第に追い詰められる。あわやという時に、“力”の意味を悟ったレッドは、敵将の身体に渾身の一撃を叩き込む!


 そしてマンプクの身体に封じられていた“恐竜折神〈きょうりゅうおりがみ〉”の“力”を得て「ハイパーシンケンレッド」となったシンケンレッドは、同じくシンケンマルが進化した刀“キョウリュウマル”を振るい、遂にマンプクを仕留めた。
 赤い陣羽織〈じんばおり〉を纏〈まと〉い、キョウリュウマルを携えたハイパーシンケンレッドは、まさに“殿様”の出で立ちで、通常以上に凛々しく見えた。


◆前後するが、いくら5対1万とはいえ、初戦でシンケンジャーが一気に大勢を倒せるいつもの必殺技をほとんど振るう間もなく敗れたのはおかしい……という意見もあろうけれど、敵が矢継ぎ早に攻め立てればそこまでの余裕も持てなかったはずである。
 個人的にはそう解釈したい。数の差は意外と馬鹿にできないのだ。


◇番外戦として6人目の戦士・梅盛源太〈うめもり・げんた〉〕=シンケンゴールド対はぐれ外道・腑破十臓〈ふわ・じゅうぞう〉〔演(人間体)・声:唐橋 充〈からはし・みつる〉〕が織り込まれる。
 源太は折神〈おりがみ〉たちが初戦で傷つけられ動けないため、せめて殿=タケちゃん(丈瑠)を援護するため駆けつけたのだ。
 だが、十臓にとっては丈瑠と闘い、倒すことだけが今の生き甲斐なのだ。


 「寿司屋、引っ込んでろ!」

 
 と叫びつつ、ゴールドの剣を受ける十臓。


 TVシリーズの2クール終盤でも源太×十臓の交流が増えたが、この番外戦はTVでのふたりの微妙な絆・丈瑠を巡る立場や心境の違い=〈“守る者”対“倒そうとする者”〉を反映しているかのようだ。
 瓢々〈ひょうひょう〉としているが誠実な源太と、不遜にしてニヒルな十臓。両者の対照性も興味深い。
 同時に、大戦〈おおいくさ〉に参加できない源太の、せめて十臓を足止めしよう……という心意気にも、好感が持てた。*1
 

◇冒頭の戦いは廃墟と化した市街地、決戦は広原で行われている。時刻は、前者が正午から日暮れにかけて、後者が朝と思われる。


 前者の背景&時刻はシンケンジャーの敗戦&窮地を暗示し、後者のソレはシンケンジャーの勝利に懸ける決意を投影しているものと考えられる。街の中ではシンケンジャーも上手く立ち回れず、力を存分に発揮できなかったのも敗因だろう。


 それに対し、広原では馬を駆ったこともあり文字通り縦横無尽に暴れ回ることができた。それゆえ敵の油断を呼べたのだろう。クサレナナシ連中を林の中に誘い込んだり、縄で捉えて引きずり回すシーンなど、侍たちの戦上手ぶりが際立つ。
 また、決戦場はマンプクが指示したと推測できるが、優勢ゆえの余裕と驕〈おご〉りの成せる技だったのかも知れない。そこに付け入る隙も生じたのだ。


□マンプクは底知れぬ強さを持っているが、逃げずに挑戦してきたシンケンジャーを褒めたり、シンケンレッドとの一騎討ちを敢えて受けるなど、単純な“悪”でない懐の広さも見せた。


 「先祖も倒せなかった拙者を、お前如きが倒せるか!」

 
 それでも、決戦時に言い放ったこの台詞には傲慢さが籠っており、やはり赦〈ゆる〉せざる“悪”としての凄味を湛えていた。これはCV〈シーブイ=キャラクターボイス〉=大和田氏の貢献も大きいだろう。


□恰幅〈かっぷく〉の良い体格に似合わぬ素早さと目敏〈めざと〉さは、流石〈さすが〉の貫録だった。
 “二の目”=巨大化したあとの本体はタコ、腹から飛び出すもう一つの口はウツボを思わせ、タコが具〈そな〉える相反する二面=愛嬌とグロテスクさのうち後者を際立たせた上、ウツボの得体の知れなさを加え、手強さを裏打ちしていた。
 

◇巨大化マンプクVS巨大ロボ(?)キョウリュウシンケンオーは、立体画面を活かしてのウツボと恐竜の首を突端にした刀が斬り結ぶシーンが興味深かった。
 柔軟性と鋭さをそれぞれ駆使しての闘いだったが、より柔軟性を具えた刀・キョウリュウマルに軍配が上がった。


 オープニングテーマ『侍戦隊シンケンジャー』使用も、シンケンジャーの覚悟とマッチした歌詞と合わせ、最終決戦のムードを高揚させていた。


■マンプクに関して残念だったのは、復活過程が端折〈はしょ〉られていたこと。これがあれば、奴の強大さが一層明確に打ち出されたはずである。
 パンフレットや本作関連ムックなどに掲載された大和田氏へのインタビューでは、復活シーンについて触れられていた。撮影は行われたが、尺の都合などでカットされたと考えられる。


 また外道衆総大将=血祭ドウコク〔声:西 凛太朗〈にし・りんたろう〉〕に一応従ってはいるが、腹の底では首領に成り替わる野心が燃えていたことは確実なので、それをもう少し覗かせても良かったと思う。ドウコクとの会話シーンでは冗談混じりだったものの、一応仄〈ほの〉めかされてはいたが。


☆ラスト、TVでの「勝利の一本締め」ならぬ映画独自の「勝利の三本締め」も賑やかで良かった。
 先述の姉弟も一緒にやっていたが、これは彼らの父母も助かったという暗示なのだろう。彼らがシンケンジャーの存在&活躍を認知していたか否かは定かではないが、この三本締めこそ侍たちへの御礼の表現だった、と解釈したい。ゲストの心情に一応のケジメがついた……という意味でもネ。


☆エンディング。TVでの高取ヒデアキ氏にシンケンジャーメンバーの歌唱が加わり、ED〈エンディング〉テーマ「四六時夢中〈しろくじむちゅう〉シンケンジャー〜銀幕版〜」(ASIN:B002GWP758)が流れる中、TVとはかなり違った雰囲気で動く侍たちが微笑ましい。


 ここで注目したいのは源太だ。


 「♪5つの本気を合わせて〜」 という部分では、


 「6つ、6つ!」 と一生懸命アピールし、


 「わっしょい!」 のところではクラッカーを鳴らす。


 彼の性格&立場を上手く現わしていて、面白かった。
 TVでは、この歌詞の場面はジイがエレキギターを弾く姿*2で、それはそれで面白いのだが、源太にもなるべく早くEDに加わってもらいたい。


 「♪一件落着、日本晴れ〜」


 の部分では、侍たちの衣装が目まぐるしく代わり、ちょっとしたコスプレショーのようで、なかなか愉〈たの〉しかった。

 
★欲を言えば、大ラスは全員での


 「またねェ〜!」


 ではなく、TVナレーションの締め括りに使われる


 「まずはこれまで」


 であってほしかった。
 

△御存知の通り、「ジイ」こと日下部彦馬〈くさかべ・ひこま〉役=伊吹吾郎氏は、既に40周年&40シリーズを数える人気長寿時代劇『水戸黄門〈みと・こうもん〉』[69/8/4〜]第14〜28シリーズ[83/10〜00]で3代目・渥美格之進〈あつみ・かくのしん〉=格さんを演じられた。


 また本作『シンケン銀幕版』の志葉列堂役=合田雅吏氏も第32シリーズ[03/7]より5代目格さんとして出演中。さらに合田氏は『超力戦隊オーレンジャー』[95]では三田裕司〈みた・ゆうじ〉=オーブルー役だった。つまり、その意味でもシンケンジャーの大先輩なのである。


 そして、マンプクのCV=大和田氏も2代目格さん(第9〜13シリーズ[78〜83/4])だった。配役にはそうした「歴代格さん集結」という“お遊び”的背景もあったと言われる。*3


 関連して『星獣戦隊ギンガマン』[98]のギンガブルー=ゴウキ役・照英〈しょうえい〉氏も『水戸黄門』第31〜37シリーズ[02〜07]に、水戸光圀〈みと・みつくに〉老公一行に協力して悪と戦う巨漢忍者・風の鬼若〈おにわか〉として出演された。

 
▲さて、最後に「假特隊2010準備号」速報版に本映画評を寄稿されたいちせたか氏が、同評中にて提出された疑問=


 「この作品は、『作品』として『アリ』?」


 について、私なりの解答を示させて頂こう。


 結論から言えば個人的には『アリ』であると思う。


 確かに、本映画には幾つかの難点がある。いちせたか氏が寄せられた疑問についても、当然と感じる。しかし、本映画は物語の尺や性質・構成上、さらに公開条件から見ても最善の形であった……と私は認めている。


 脚本担当の小林靖子氏が述べられた、

 
 「20分枠ではドラマなど入れられない」

 
 は、氏なりの謙遜だったと解釈している。短くても相応のドラマは確かに存在したのだから。


 まァ、それは贔屓〈ひいき〉としても、散見した問題点もひっくるめて、ひとつの『映画』としてはギリギリながら『アリ』と思う。


 もちろんドラマ性の高低での評価ばかりでなく、「皆で力を合わせて、世に仇成す悪を討つ」物語=勧善懲悪絵巻としても『アリ』と評価できる。


 或いは、先述したマンプクの復活過程や件の姉弟の素性について復活させた「ディレクターズカット版」がDVDなどで出版されるかも知れないが、それは既にオリジナルの『シンケン銀幕版』とは似て非なる形の『作品』として観るべきものであろう。


 作品は、最初に世に出た形で先ず評価すべきものだ。その視点からでも『シンケン銀幕版』は『アリ』だ……と、私自身は認めたい。

 
 といった次第で、今回の「假特隊」に於ける拙者の『シンケン銀幕版』所感、まずはこれまで……。
 


※文中、以下の各誌並びにインターネットフリー百科事典「ウィキペディア」に於ける本作解説&関連記事を一部参考にさせて頂きました。
☆『東映ヒーローMAX』29&30号[09/5&8・辰巳出版
☆『東映ヒーローMAX SPECIAL・侍戦隊シンケンジャー INTERVIEW BOOK』[09/8・辰巳出版
☆『TVドラマ水戸黄門 我らが副将軍! 世直し40年』[08・白夜書房


【2009/9/13〜10/10一部改訂】


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2009年秋号』(09年9月27日発行)〜『仮面特攻隊2010年号』(09年12月31日発行)所収『侍戦隊シンケンジャー銀幕版』合評2より抜粋)


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*1:源太=相馬圭祐〈そうま・けいすけ〉氏の『シンケン』撮影参加は、この『シンケン銀幕版』が事実上初であり、例の番外戦はそこから派生したものとも見えるが、本文では考慮外とする。

*2:ジイ役・伊吹氏の趣味&特技はフラメンコギター演奏だそうな。『シンケン』本編では未だその腕は披露されていないが、ジイには「密かにロックバンドを結成している」という裏設定があるとか?

*3:初代格さんは横内正氏(第1〜8シリーズ[69〜78])、4代目格さんは山田純大〈やまだ・じゅんだい〉氏(第29〜31シリーズ[01〜02、終了は03/3])。ちなみに山田氏は初代助さん〈佐々木助三郎〉役(第1〜2シリーズ[69〜71])=あの杉良太郎〈すぎ・りょうたろう〉氏の御子息である。
 また山田氏とともに助さんを演じられた岸本祐二〈きしもと・ゆうじ〉氏は映画『人造人間ハカイダー』[95]でハカイダー=リョウを演じられた。
 蛇足ながら、杉良太郎氏について80年代末頃、「実写モノクロTVドラマ版『忍者ハットリくん』[66]で、ハットリくんのライバル=甲賀忍者ケムマキを演じられていた」との説が一時流布したが、のちに完全なデマであると判明した。