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新元号「令和元年」 ~近代・ポストモダン社会における「天皇制」を考える!?

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元号「令和元年」 ~近代・ポストモダン社会における「天皇制」を考える!?

(文・T.SATO)
(2019年6月7日脱稿)


 2019(平成31)年4月1日、次の元号である「令和」が発表された。
 当日の各局の夜のニュースをいくつか観ていると案の定、学者や論説委員やコメンテーターが「令和」の「令」は「命令」だから「政権が国民に云うことを聞け」という意図を感じるとか、「和」は「昭和」の「和」だから未来志向ではなく悪しき復古志向だとかの、自身の専門分野の知見に裏打ちされたモノではなく、市井の床屋政談レベルの深読み発言をシカメっ面して憂いてみせている。


 百歩譲って、政権の意図が仮にそうだったとして、元号に「令」という文字を使うと、庶民大衆はお上に従うようになるのであろうか? 「和」という文字を使うと、日本人は復古志向に走るのであろうか?
 そんな呪術的・超能力めいたことが実現することを危惧するのは、戦前の「イザとなれば神風が吹く」というメンタルと同じであり、筆者から見ればオカルトである。言葉が霊力を持っていてそれが現実化するという類いの古代日本の「言霊」信仰が彼らにも無意識に刷り込まれていて、それが顕現しているのであろう。我が日本においてはサヨクも未開の土人のような非合理的な心性を持っていることがわかって心底ガッカリさせられる。


 実際、政権は元号制定過程を明かさないと明言したのに、選考委員はそんな「命令」を遵守する気もナイから、翌日以降は取材に来た記者にダダ洩れである。政権与党の目論見(?)は早くも失敗に終わったのであった。
 エッ、極右団体・日本会議こそが黒幕? いやぁ日本会議がアレだけ反対していた「日韓慰安婦合意」も結ばれ、実質「移民法」も平気で成立して、在特会の桜井や田母神さんが東京都知事選で小池さんや舛添さんに惨敗していたのはナゼ? 彼らに影響力ってあるの? フツーに経団連の方が影響力あるんじゃネ? てことは、経団連が猛反対しているサマータイムは実現しないってことだネ!(笑)


 2015年のTPP著作権の法整備で安倍ちゃんが「二次創作が萎縮しないように留意する」と明言していたけど、コレも日本共産党とお勉強会をしようと唱えていたマン防ことマンガ防衛同盟の後継系列ではなく、人気マンガ『ラブひな』(98年)・『ネギま魔法先生ネギま!)』(03年)の作者・赤松健(あかまつ・けん)らの団体による政府自民党やお役所へのロビー活動の成果だよネ?
 ことほどさように日本における政策は、膨大な数のプレイヤー・圧力団体の働きかけの折衷・合力として決定されていて、北の将軍さまの国のように安倍ちゃんの意向がすべて実現できるワケもなく、どころか彼にとっては不本意な政策も多々あることと思う(笑)。
 そのへんが判っていない、何でもカンでもアベノセイダーズやその反転としてのアベノオウエンダンの世界認識の単純さ&地アタマの悪さ(汗)――もちろんシングルイシューであれば女性宮家実現の棚上げなど、特定団体の意向だけが反映されている場合はある――。


 「令和」発表の日からは新元号をラベルに貼っただけの便乗商品が大量に販売を開始する。コレに対しても、「天皇制の強化につながる」との批判の声が一部で噴出。エェ~? 戦前だったら、こんな安易な便乗商品を作ったら「不敬罪」で逮捕だったと思うけど(笑)。筆者には(戦前的な)「天皇制」が実質的には死滅して、すでに国民の愛玩物と化したようにしか見えないのだが……。
 「天皇制」を否定したければ、元号の漢字の意味などの外堀を攻めるのではなく、シンプル・明快に「近代における平等の理念に反する」と主張すればイイだけなのでは? エッ、弾圧されるって? 田原総一郎センセイはじめ、今回もそーいう主張をしている御仁は一定数いるけど、誰も逮捕されてないから大丈夫ですよ~。


 エッ、「元号騒動」自体も右派の陰謀だって? 今回の「平成天皇生前退位」に一番反対して、論壇誌でも明らかに歓迎していなかったのは右派陣営だったよネ? 陛下の御心に背いたコイツらも戦前だったら「不敬罪」だヨ! 「皇室典範に根拠がナイ」とか「天皇の政治関与につながる」とか、今では右派も適度に近代化された「天皇機関説」の輩なのだなぁ(爆)。だけど、その男系絶対的な「機関説」がウラ目に出て、数世代後には「天皇制」が消滅する可能性も高いけど。


 まぁ筆者個人は「民主主義」も「天皇制(王制)」も信じちゃいない、古代ギリシャの哲学者プラトンが唱えた「哲人政治」を理想とする者なので(笑)、「天皇制」がドーなろうと正直ドーでもイイけれど。


 ただ、「王制」などの古典的な世襲身分を激烈に否定してみせる御仁が、人間に上下を付けずに誰とでも公平・対等に付き合おうとする人間であるかはカナリ怪しいとも思う。わかりやすい世襲身分の代わりに、今度は「リベラル」や「フェミ(ニズム)」か否かの濃淡で測る何らかの新たなカーストが誕生するとも思う。
 実際に「フランス革命」や「ロシア革命」や「中国文化大革命」では、「保守寄り」・「資本主義寄り」と目されたヒトたちが糾弾されてギロチンにかけられ、収容所で強制労働させられたり、「人民裁判」(=法律によらない裁判)の果てにヒステリー化した暴徒が集団リンチで群がってきて腹ワタまで食べちゃった! ……なんてな人食い土人みたいな世界が現出した逸話や、極左の「中核派」と「革マル派」が互いに「自身こそがサヨクとして純粋で、相手は保守反動・反革命だから殲滅せん」と鉄パイプで撲殺しあってきた歴史、第二次大戦の戦死者数よりも戦後の共産圏で粛清(処刑)されて死んだ人間の数の方が多いことを思えば(爆)、右派のみならず左派をも警戒すべきだし、残念ながら人間一般とは何らかのカースト――右でなければ左寄りのカースト――を作って、そこで優越感競争をしてしまうドーしようもない業があるらしい。


 実際、カーストを単に反転しただけの逆カーストを作って、その業績やイシューごとの善悪ではなく役職という属性だけで、学級委員や学校の先生に時の総理や天皇、そしてその罪は九族(9親等)に及ぶで、左翼なのに前近代的なメンタルで、親族までをも理性的な批判でなしにボロクソにケナしているのも昔からよく見る光景ではある――A級戦犯を糾弾したいのであれば本人だけを責めればイイのに、小学校の教師ぐるみで戦犯の息子たちをイジメ抜いていた……なんてな卑劣な話も調べればいくらでも出てくる(汗)――。
 この御仁は5年早く生まれてれば70年代前半の第2期ウルトラマンシリーズ擁護派ではなく60年代後半の第1期ウルトラマンシリーズ至上主義者になってたんじゃね? 30年早く生まれてればサヨクでなく軍国少年になってたんじゃね? ネトウヨではなく左翼学生運動連合赤軍に入ってたんじゃね? 単に生育した時代の違いで立場や罵倒相手が違っているだけで、敵を作って罵詈雑言する精神の型・性格類型としてはメタレベルで同じじゃね? と思わされる御仁は多い(笑)。


 右であろうが左であろうが、反対陣営のことはボロクソにケナしてもイイと考えている排他的な大勢を見るにつけ、やはり「自由」や「平等」などの近代の理念よりも上位に、たとえ封建的に見えても「道徳」「礼節」「惻隠」「節度」などの理念を措定していかないと、「言論の自由」の名の元に正当化されているロジック抜きの「罵倒」や「ヘイト」を抑止できないのではなかろうか? 近代社会の混乱も収まらないのではなかろうか?
 近代の次の時代があるならば、「自由」や「平等」よりもコレらの理念を上位としてほしい。よって、筆者は「日本国憲法」や「大日本帝国憲法」よりも、聖徳太子の「十七条の憲法」の方がはるかに優れていると私見するのだ(笑)。


 とはいえ、こーしたカーストなり反転カースト感情は減らすべきだとは思うけどゼロにできるとも思えない。
 そこで筆者が考えるのは、世襲身分や会社の役職などの唯一絶対のカーストがひとつだけある固定世界ではなく、細分化した膨大な小さなカーストを無数に並列させて用意しておき、ルックスではダメでも性格はイイとか、スポーツはダメでも勉強はできるとか、文章は書けないけど絵は描けるとか、何にもできないけどゲームが上手いとか、顔面偏差値は低いけど公園でバスケのシュートを華麗に決めるからギャラリーの女の子にモテるとか、胸は小さいけどスタイルはイイとか、私の方が美人だとか、私は可愛い系だとか、私の方がグラマーだとか、私の方がスレンダーだとか、私の方がマツ毛が長いとか、私は二重まぶただとか、私の方が脚が細いワとか、私の方が指がキレイだワとかのしょーもない(笑)、ドコかしらの小さなカーストに片足を突っ込めば、そこで小さな優越感や自尊感情も満たすことができるように社会をデザインしておいて、各自にガス抜きをさせることである。
 ある場所で上手くいかなくなっても、別のカーストに移ってそこで自尊感情を満たせばイイ。あるいは複数のカーストに帰属して、ドコかでダメになっても絶望させないようにすればイイとも思うのだ。さもしいけど、筆者もとい我々オタク同人もメタレベルで見れば、究極的にはそーいう行為を行なっているだけだともいえる(汗)。


 コレら膨大なカーストのひとつに「王制(天皇制)」があるとするのは少々ムリがあるけど、経済的に豊かになって自由度が増した近現代では、相対的には「王族(皇族)」の方が不自由で衆人環視でもあろうから、庶民からあえて「王族」になりたがる人間は少ないであろう。
 そこで「皇族」をブルジョワ批判の対象としてではなく、「皇族」もまた人権を侵害された被害者・犠牲者だからこそ「天皇制」を廃止すべきであるとするアクロバティックなロジックまでもが登場している。何か上手いことを云わないとイケナい大喜利の世界、ホントにご苦労様でございます(笑)。


 まぁ批判をしにくい(陰に陽に批判はし放題な?)「天皇」の名を利用して悪事が進められる危険性もたしかに確実にあるけど、「天皇制」を廃止してもトランプや石原慎太郎国家元首になって個人崇拝を強要してくることがあれば、「天皇制」と「首相や大統領制度」の危険性は実は等価だともいえる。
 ならば「三権分立」ならぬ「権権分離論」(権威と権力の分離)の立場から、世襲の「王族」と一応は民主的に選ばれた「首相」や「大統領」を並立させておくことも、いずれかの独裁を防ぐ意味で(完璧ではなくとも)有効ではあると思える。サヨクが持ち上げる北欧諸国が経済的にはリベラルでも政治的には実は「立憲君主制」なのは、そーいう知恵から来ているとも私見する。


 まぁ司馬遼太郎歴史小説花神(かしん)』(69年)で描いた蘭学医者上がりの幕末の志士・大村益次郎村田蔵六)みたいな誰にも「カリスマ性」を感じない超合理主義者はマレであり、我々凡人はウルトラマンなり仮面ライダーなりアイドルなりミュージシャンなりスポーツ選手なり先達の文化人を推したり崇めたくなる原始的なメンタルを元から持っていることまで見越しておいて、禁圧するのではなく「王制」も含む大小様々な「カリスマ」やネット上のあまたの「神」降臨(笑)を並立させて適度に分散発散させることで、独裁者を登場させにくくする制度設計・社会設計もあるようには思うのだ。
 清河に魚は住まない。毒物も適量であれば薬になるのだ。……などと云いつつ、以上は筆者が庶民・大衆・愚民の皆さまのことをちっとも信じていないからこその、性悪説に基づいた方策でもあるのだが(爆)。


 よって、「天皇制」が継続するには、彼らの人権を一部制限してもらい、温室育ちで培養して哲学者ルソーが云うところの「一般意志(公共益)」の人格的な表現――安寧(あんねい)を祈り、慰謝(いしゃ)を与えるポーズ――としてのキレイごとの「祭祀王(さいし・おう)」を演じてもらうかぎりで、崇めているようでも実は弱者でもあるから守ってあげたいとも同時に思わせるような機微や慈悲心を喚起することにしかポストモダン社会での存在根拠はナイとも思う――昭和天皇崩御前の病床の折りに女子高生たちが記帳に訪れる現象を指して、オタク第1世代の評論家・大塚英志が「可愛い天皇」と呼称・分析していたように(『少女たちの「かわいい」天皇』「中央公論」88年12月号~03年に角川文庫化・ISBN:4044191166)――。
 つまり、「男系」の血筋の継承とかはドーでもよくって、タテマエでもそのような一応の崇高な慈悲・慈愛的な精神を天皇家の家庭教育の中で培養・継承できるかに近代天皇制が存続できるか否かのキモがあって、それが継承されればそこに広い意味での「カリスマ」や「正当性」も感じられるので、右派陣営はその論法で「天皇制」を擁護すればイイとも思うのだけれども、フィジカル(物質・肉体的)に「Y染色体ガー」とか云っているのでムリポそうである――奈良時代初頭の元明天皇元正天皇の母娘間での皇位継承は、いかにヘリクツ付けようともすでに「女系天皇」が過去に実現していた前例だとも思うゾ――。


 しかし、学習院とかでも愛子さまをイジメた加害者少年をお咎めできないまでにリベラル化(笑)している現代日本では、いよいよイイ意味での適度な純粋培養もムズカしくなって、むしろテストステロン(男性ホルモン)過剰で嗜虐的な一部のヤンチャな子供間でのイジメのターゲットにされそうでもある。コレに加えて責任感や衆人環視がウスかったために戦前はスキャンダルが多発した旧宮家や側室制度が復活しようものなら、そこに一応の崇高な精神性・カリスマ性の継承は感じられないので、いよいよ「天皇制」にもトドメを刺される日が来るとも思うのだ。


 「天皇制」というか「祭祀的王制」&「民主制」のイイとこ取りも可能で、演技やポーズだとしても博愛的な態度や精神や行動とは何ぞや? ということも想起させられる装置であるかぎりで、「立憲君主制」にも相応の分を認める筆者ではあるけれど、右も左もバカばかりなので、そのときはそのときだとも思う(汗)。


(了)
(初出・オールジャンル同人誌『DEATH-VOLT』VOL.82(18年6月16日発行予定⇒8月1日発行))


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少女たちの「かわいい」天皇―サブカルチャー天皇論 (角川文庫)

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