假面特攻隊の一寸先は闇!読みにくいブログ(笑)

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ウルトラマンブレーザー序盤合評 ~鑑賞前と1話の圧倒的映像&話題性! その後はオーソドックスに過ぎてやや地味か?

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ウルトラマンブレーザー』序盤合評 ~鑑賞前と1話の圧倒的映像&話題性! その後はオーソドックスに過ぎてやや地味か?

ウルトラマンブレーザー』プレミア発表会

(文・ビオラン亭ガメラ


 『ウルトラマンブレーザー』プレミア発表会(2023年6月12日)を観ました。


 防衛隊が前線で活躍する映画『シン・ウルトラマン』(22年)みたいで楽しみです。デジタル着ぐるみでもないし(笑)。田口監督作品はミリタリー色、出るよね~。自主製作短編特撮シリーズ『UNFIX(アンフィックス)』(19年)とか。ホント、好きねぇ~ なんか映像も今までと違う感じで、カメラが違うんですかね?


 ウルトラマンブレーザーが大胆なデザイン。モノクロ? 赤と青が静脈、動脈で人間を表してる? とか思いました。昔のウルトラマンって「人間(のような種族)が人工太陽プラズマスパークで進化した」という設定の現代版みたい?


 主演は『仮面ライダードライブ』(14年)の悪側のボスの人ですか。頼れる大人感、イイね。長官役の加藤雅也は悪役なのかなぁ……宇宙人乗っ取られ型かもしんないけど。それもよくあるパティーンで、21世紀のウルトラシリーズでも幾つかあったけど。


 変身アイテムはオモチャまるだしだけど、なんかデカくてこちらもなかなかカッコいいけど高額…… ブレスにハメる「石」を集めてらんねーわ(笑)。「石」のデザインも『機界戦隊ゼンカイジャー』(21年)の「戦隊メダル」(劇中での名は戦隊ギア)みたいで良いね!


 しかし、最近はLED玩具ばっか。昭和のライダーベルトなんかもLED仕様で復刻したら化けるかも? 発表会恒例の「みんなで変身コーナー」。これって売上に貢献してるの?(笑) いつも皆さん楽しそうで良いですね!


 防衛隊の怪獣型巨大ロボット・アースガロン。防衛隊の怪獣型メカは『ウルトラマンZ(ゼット)』(20年)のセブンガー以降の定番化。いい傾向です。しかし、あんまり元ネタの怪獣アーストロンに似てないよなぁ…… ツノ一本にしろや! 別にアーストロンを意識したデザインではなくて、名前は後付なのかもね? 今回は二人で操縦ってのもリアル。スーパーロボット感がなくてグッド!


 そして新怪獣! 昨今の状況を鑑みると怪獣の新造は相当厳しいんだろうなと。まぁ、過去には「よりによって、このマイナー怪獣をなんで新造したんだよ!」って思うことも多々ありましたが(苦笑)。今回、少しは予算おりたのか?


 今年のスーパー戦隊が「LEDウォール」(背景は巨大な高精細LEDモニターに映したものをそのまま撮影。今ではNHK大河ドラマなどでも多用)なんてのやってますけど、あれだって要するにロケ代浮かすためであって、令和の今、特撮ものなんてコスパ最悪のTVドラマなんですよね…… 正直、毎週ミニチュア特撮やってるなんてのは狂気の沙汰なんでしょうなぁ。今は知らんけど、昔のウルトラなんて、いつも億単位の赤字だったって聞いてるし…… そんな中でよくやってるよ! 偉いよ!


 「長年やってきて、やって良いこと、悪いことが分かってきた」、「基本、明るく楽しいウルトラマン」との田口監督の発言が……(涙)。『ウルトラマンオーブ』(16年)の絶対に実現できそうもない前日談や後日談を描く全「エピソード10」構想とかな!(笑)


 今からワクテカが止まりません。放映が楽しみです~ あと、またどっかでビックカメラ京王調布店、出してあげて~(笑)


(了)
(初出・特撮同人誌『『仮面特攻隊2023年号』(23年8月12日発行)所収『ウルトラマンブレーザー』序盤合評1より抜粋)


ウルトラマンブレーザー』序盤合評1 ~『ブレーザー』序盤評

(文・T.SATO)


 今度の新作ウルトラマンは、頭部の突起が左右非対称!


 こういったデザイン上での斬新かつ変化球の試みも、7年ぶりに再開されたTVシリーズが、もう10年以上の長きにわたって放映されているゆえだろう。マニアや子供たちにとっても、シリーズが浅い段階での冒険であればともかく、10年もの作品群の重みで、少々の冒険をした程度では、「ウルトラマン一般」という「キャラクター」や「ブランド」それ自体の「揺らぎ」は相対的にも減って感じられてくるものなのだ。


 とはいえ、映画『ウルトラマンサーガ』(12年)において、ウルトラマンゼロウルトラマンダイナ・ウルトラマンコスモスが合体して誕生した強化形態・ウルトラマンサーガが、全身にウロコが生えて紫色のクスんだ色調だったのに比すれば、いかに動脈や静脈を思わせる文様があろうとも、基調はキラびやかなシルバーの体色である以上は、ヒーロー性を棄損させてはいないし、子供ウケも外してはいないデザインなのである。


 その意味では、先入観なしに見れば、悪の黒いウルトラマンことウルトラマンベリアルに似ていて、彼の実子でもあった『ウルトラマンジード』(17年)の方が、幼児には少々怖かったろうとも思うのだ(笑)。


 さらに加えて、比較対象を広げれば、平成ライダーシリーズ第3弾の段階ですでに仮面ライダーのデザインを逸脱していた『仮面ライダー龍騎』(02年)や、デザイン的にはライダーですらなく同様に頭部が左右非対称でもあった『仮面ライダーエグゼイド』(16年)などと比すれば、大した冒険ではないともいえる。あくまで、ウルトラの中では異色に見えたというだけだ。


 一見はディテールアップをほどこされてリアルに見えても、あるワク内においてだけそう感じる……といった心理ゆえだろう。とはいえ、そこも狙って新鮮さを出し、子供やマニアの耳目も集めて話題を作ることも意識はしていたろう。感情的な好悪での脊髄反射ではなく、一歩引いたり無限背進をしてみせて、他社のヒーローシリーズとも比較をすることで、見えてくる多角的な光景を指摘することこそ「批評性」であるのだ。



 #1においては、全編を夜景のビル街を舞台に、巨大怪獣に対してカラフルではなく地味な色彩の軍服を着用した特殊部隊が迎撃したり、その怪獣とウルトラマンとの戦闘だけに特化していた。いわゆる「リアル&ハード路線」の作品世界&特撮映像の実現だ。人間ドラマはほぼない。
 まぁ、ひとつの到達点ではあり、ある意味では怪獣映画『シン・ゴジラ』(16年)や映画『シン・ウルトラマン』(22年)すら超えている。しかし、スレた特撮マニアとしては、子供向けヒーローものは、適度にB級かつ明るくヌルいノリで、とはいえマイルドでもなく、巨悪に立ち向かうヒロイズムの高揚や、勧善懲悪のカタルシスもほしいので、そのかぎりではやや殺伐にすぎる感はある。しかし、そこは百も承知の確信犯での#1だろう。


 『ウルトラマンX』(15年)や『ウルトラマンオーブ』(16年)、何より『ウルトラマンZ』(20年)といった、明るくにぎやかかつヒロイックでもあった作品群のメイン監督を務めた田口清隆メイン監督が、往年の『ウルトラマンネクサス』や映画『ULTRAMAN』(共に04年)のような、リアルどころか鬱展開も入ったゆえに、子供ウケ的には失敗した作品を、今さら中二病的にガチで作るとはとうてい思えない(笑)。


 実際にも、#2ではピーカン晴天の屋外にミニチュアを持ち出しての怪獣vsウルトラマン戦を見せるどころか、ウルトラマンの必殺ワザとなる「光のヤリ」を早くも釣り竿のように用いて怪獣一本吊りをしている! #3では発熱怪獣の体表にさわって「熱っち! アッチい!」とウルトラマンが叫んでみせている! ……ごくごく個人的には「そんなこったろうと思ったゼ」(笑)。とはいえ、これは批判ではない。ホメているのだ。


 #1については「映像的にはやろうと思えば、ここまでできますよ!」といった業界やマニアに向けてのアピールや、SNS上での反響作りといった面もあっただろう。だから、#1に大コーフンしたマニア連中をさぞや失望・悲憤慷慨させているのかと思いきや……。
 筆者が観測した範疇ではそうでもなかった。好意的に受容されていますネ。今では受け手の「ライト(?)層」のマニアの方がよほどスレていた(笑)。ある意味、素朴なリアル&ハード志向が主流派であった昭和や平成も遠くなりにけり……。



(後日加筆)


 今さらですけど、同作は変身後のウルトラマンの内宇宙での顔出し主人公のセリフや表情演技がないですネ~。


 そういや、タイプチェンジもないですねェ。手持ちの武器も今のところは出てこないですネ~。


●スフィア
●悪の3超人
セレブロ
ウルトラマントレギア
●愛染社長
●SF作家先生
●ジャグラズジャグラー
●ダークサンダーエナジー
ウルトラマンビクトリー
●友也青年
●闇のエージェント……


 といったシリーズを通じたライバルや悪役もいませんねェ~(まぁ今後、登場するのかもしれませんけど)。


 ……それがイイ! と思っている方々もいらっしゃるとは思いますので、それはそれで尊重はいたします。


 しかし個人的には、そのあたりがドーなのかなぁ? ……と思っておりまして(笑)。


 1話完結の予定調和のルーティン展開だと、子供たちでも飽きてくるとも思われるし、『快傑ライオン丸』や『人造人間キカイダー』(共に72年)のむかしから第3勢力キャラを出して、(小学生レベルでの意味なのだけど)ストーリーを適度に錯綜させてパターン破りを入れてみせたり、無人格な怪獣だけではなく人格悪なども登場させて、善悪ヒロイズムな抑揚も入れておいた方が、勧善懲悪エンタメ的な高揚としてはイイとも思うけれどもなぁ。


 変身ブレスレットにハメるメダルも種類が多数あると思うのですけど、今年はそういう描写もないですねぇ。



 ハードだ! ではなく、オーソドックスに過ぎる! といった作風で、玩具の売上面でも不安だなぁ。


 でもまぁ、昨2022年度の『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』が、ヒロイズム皆無(?)の脱力系人間ドラマが中心で、個人的には同人原稿としてそう書くかはともかく、子供向けヒーロー番組としてコレはダメダメだろ!(笑) と思っていたのに比べれば、『ブレーザー』はフツーに過ぎるヒーローものなのですけれども、『ドンブラ』は『ゼンカイ』よりも売上がよかったそうなので、自分の審美眼に自信がなくなってきた(汗)。


(了)
(初出・特撮同人誌『『仮面特攻隊2023年号』(23年8月12日発行)所収『ウルトラマンブレーザー』序盤合評2より抜粋)


ウルトラマンブレーザー』序盤合評2 ~『ブレーザー』序盤評

(文・久保達也)

*「10年」もつづいた「ウルトラマン」シリーズ!


 『ウルトラマンギンガ』(13年)のスタート以来、放映が継続してきたいわゆるニュージェネレーションウルトラマンシリーズが、2023年7月8日に放映を開始した『ウルトラマンブレーザー』(23年)で早いもので「10周年」を迎えた。


 現在よりも「ウルトラマン」の人気がはるかに高かった時代に放映された、


●『ウルトラQ(キュー)』(66年)『ウルトラマン』(66年)『ウルトラセブン』(67年)の「昭和」第1期ウルトラマンシリーズの放映期間が2年8ヶ月間
●『帰ってきたウルトラマン』(71年)・『ウルトラマンA(エース)』(72年)・『ウルトラマンタロウ』(73年)・『ウルトラマンレオ』(74年)の「昭和」第2期ウルトラマンシリーズの放映期間が4年間
●『ウルトラマンティガ』(96年)・『ウルトラマンダイナ』(97年)・『ウルトラマンガイア』(98年)の「平成」ウルトラマンシリーズ三部作の放映期間が3年間


だったことを思えば、「ニュージェネレーションウルトラマン」が「平成」から「新時代」――2019年5月1日から使用されている元号は個人的に容認していない(笑)――をまたいで「10年間」も放映を継続できているのは、少なくとも営業戦略上は一応の成功をおさめてきたのだと解釈すべきところだろう。


 もっとも、「10年間」とはいっても、実際には新作のテレビシリーズの放映期間は例年7月から12月――『ウルトラマントリガー』(21年)と『ウルトラマンデッカー』(22年)は何度も総集編をはさむかたちで翌年1月まで放映が継続した――の半年間である。
 毎年1月から6月の半年間は過去作品の名場面集や再放送などで構成された『ウルトラマン列伝』(11~13年)を踏襲(とうしゅう)した番組枠でつないでいるため、実質的には新作の放映期間は通算「5年間」ということになる(汗)。


 だが、それでも先述した昭和の第1期や第2期、平成ウルトラ三部作など、「新時代」になってもいまだに根強い人気を誇っている作品群よりも放映継続期間は長いのだ。


 「ウルトラマン」は今となっては「仮面ライダー」や「スーパー戦隊」に人気面でも営業面でも圧倒的な差をつけられている印象がたしかに強い。


 それでも動画無料配信サイト・YouTube(ユーチューブ)の「ウルトラマン公式チャンネル」で配信された『ウルトラマンブレーザー』第1話『ファースト・ウェイブ』の再生回数は、2週間で724万回(!)を稼いでいるのだ。


 その注目度の高さからすれば、やはりウルトラマンは現在でも相応の人気があるのだろう。


ウルトラマンブレーザーの見た目は、たしかにカッコいい!


 さて、今回の主役となるウルトラマンブレーザーは設定では地球から遠く離れた星・M421からやってきた光の巨人とされている(劇中では今のところいっさい語られていない設定だが)。


 『ウルトラマンティガ』の世界観に似せていた『ウルトラマントリガー』や、『トリガー』の続編で同様に『ティガ』の続編『ウルトラマンダイナ』をモチーフとした『ウルトラマンデッカー』の主役ウルトラマンたちは、筆者のような中年オヤジの世代からすればトリガーはティガと、デッカーはダイナと正直見分けがつかない(汗)と思えるようなデザインだった。


 だが、ブレーザーは両目の上から頭部にかけて青い結晶体が造形され、しかも左側の結晶体はギザ上に大きく突起しており、左耳の上から左頬(ほお)にかけても同様の青い結晶体が見られる。


 胸のカラータイマーは近年のウルトラマンが凝(こ)った形状が多かったのに対して、従来の円形だがやや大きく、それを周囲から包みこむかたちでデザインされた赤と青のラインが両肩と左腕・左足に延びており、ボディ中央から右半身にかけては黒いラインが描かれている。


 ブレーザーの左右非対称のデザインは、筆者の世代的には故・石ノ森章太郎(いしのもり・しょうたろう)先生原作の特撮ヒーロー作品『人造人間キカイダー』(72年・東映 NET→現・テレビ朝日)の主役ヒーロー・キカイダーを彷彿(ほうふつ)としたほどにインパクトが絶大であり、きわめて斬新(ざんしん)で超絶にカッコいいと感じられるほどだ。


 右手から発した青い光を巨大な槍(やり)に変化させて敵に投げつける必殺技もまた然(しか)りである。やはりこれも、世代的には『帰ってきたウルトラマン』の主役ウルトラマンウルトラマンジャックがウルトラブレスレットを変形させて放つ槍状の武器・ウルトラランスやウルトラクロスを連想せざるを得ないところだ。


 だから、放映前の事前情報の時点では、個人的には『ブレーザー』に好印象をもったものだ。


ウルトラマンブレーザーの見た目はハデなのに、作風は意外に地味……


 ここで序盤の作品をごく簡単に振り返る。


●第1話『ファースト・ウェイブ』では、主人公で特殊部隊の隊長であるヒルマ・ゲントが、その他大勢の隊員たちとともに夜の大都会で巨大怪獣と交戦するさまがひたすら描かれた末にウルトラマンに変身して怪獣と戦い、勝利する。
●第2話『SKaRDを作った男』では、部隊の参謀長から怪獣対応の新設部隊・SKaRD(スカード)の隊長に任命されたゲントが面会に向かうかたちで新入隊員たちが紹介される。
●第3話『その名はアースガロン』では、世界各地で新エネルギー源の貯蔵タンクをカラにし、ついに日本に上陸してきた怪獣に対し、SKaRDが二足歩行型怪獣兵器・アースガロンを出撃させる。


 これは『トリガー』や『デッカー』でも感じたことだが、近年の「ニュージェネレーションウルトラマン」の序盤は従来の「ニュージェネレーションウルトラマン」の序盤と比較してややツカミや華(はな)に欠け、インパクトが薄いとの印象が強い。


 先述した『ブレーザー』の第1話は本編・特撮ともに全編がナイトシーン一色(!)である。その画面の暗さには『シルバー仮面』(71年・宣弘社 TBS)の故・実相寺昭雄(じっそうじ・あきお)監督が演出した第1話を彷彿としたほどだった(笑)。


 また、主人公のゲント以外にメインキャラがいっさい登場せず、あとはその他大勢の特殊部隊の隊員たちと避難民のエキストラだけなのもきわめて異例だ。
 まるで往年のゴジラ映画をはじめとする東宝特撮怪獣映画とか、あるいは映画『シン・ウルトラマン』(22年・東宝)を強く意識したかと思えるような、隊員間の職務上の事務的なやりとりばかりが繰り返される演出は、開幕としてはきわめて地味に思えてならなかった。


 さらに、ゲントのウルトラマンブレーザーへの変身は彼が「力がほしい」と思った際に、ゲントの左腕にブレーザーのデザインと同じ意匠(いしょう)の青い結晶体に包まれた変身アイテムが浮かびあがる描写だ。


 ゲントがなぜウルトラマンとして選ばれたのかを示すための、従来は定番として描かれてきたゲントとブレーザーの出会いの場面すらも、第1話では割愛(かつあい)されていた。


 そして、トリガーやデッカーと同様にブレーザーも「しゃべらないウルトラマン」だ。『トリガー』や『デッカー』では描かれていた、変身中の主人公男性がウルトラマンの体内イメージ空間で感情を発露する描写すらもない。『ギンガ』ではじめて導入されて以来、視聴者の感情移入を誘うには最適な演出として「ニュージェネウルトラマン」では常に描かれてきたにもかかわらず……



 第3話で初登場したアースガロンにしろ、映画『ゴジラ対メカゴジラ』(74年・東宝)以来、往年のゴジラ映画で再登場を繰り返したほどの大人気だったロボット怪獣メカゴジラの複製の域を出ないデザインと造形である。ブレーザーのデザインが斬新なだけにややインパクト不足だ。


 おまけに、初登場にしてはロクに活躍もしなかった。せめて前座として登場した怪獣などを倒すくらいの活躍は見せるべきだったろう。


 つづく第4話『エミ、かく戦えり』に至っては、『ウルトラマンネクサス』(04年)に毎回登場した生理的に嫌悪感が強いデザイン・造形だったスペースビーストのような怪獣に、アースガロンはその弱点の物質を投げつけるだけのために登場した。


 そういえば、先述のミレニアムゴジラシリーズに登場したメカゴジラたちは光線を発射するばかりで全然格闘しない、などと批判されたものだが、第4話のアースガロンはまさにそれだろう。
 いったいなんのために怪獣型の二足歩行スタイルの兵器にしているのか? 毎回、両腕を使っておおいに格闘すべきだろう。弱点の物質をミサイルにつめて戦闘機かバズーカで撃ちこめば済む程度の役割なら、アースガロンでなくてもよいだろう(笑)。


 そもそも本来ならアースガロンは、『ウルトラマンZ(ゼット)』(20年)に登場した防衛隊の巨大ロボット・セブンガーのように、第1話から登場させて目立たせた方がよいような、ヒーロー性もあるキャラクターではなかったか!?


*「玩具の販促番組」としては弱点だらけ?


 もちろん、アースガロンが第3話で初登場となったのは玩具販促上の都合もあるだろう。


 バンダイが最もメインの商品とするブレーザーの変身アイテムは第1話が放映された2023年7月8日(土)の発売である。アースガロンのデラックス玩具の発売をこれとダブらせるのはたしかにウマいとはいえない。


 1話のなかに多数の新キャラクターや新武装を登場させても、個々の印象が薄まってしまう。よって、話数を分けて小出しに登場させていく方が、それぞれの玩具向けキャラクターや武器などが魅力的に描けることは必然なのだから、そうであって然るべきだろう。


 加えて、第3話が放映された同年7月22日(土)は、子供たちが夏休みに突入したのと同じタイミングでもある。変身アイテムとアースガロンの発売をズラしたのは営業戦略からすれば当然のことなのだ。



 ただ、それはそれとして、玩具の販売タイミングとはズレても、たとえば第1話で怪獣に苦戦するゲントたちの眼前に、特殊部隊の誰ひとりとして知らない謎の怪獣兵器・アースガロンが突然現れ、ゲントたちの危機を救って去っていく…… あるいは、往年のスーパー戦隊『バトルフィーバーJ(ジェイ)』(79年)の序盤4話分のように建造中のアースガロンのワンカットなどを見せる…… といった描写がホンの少しでもあったなら、視聴者に次回以降への興味を持続させる絶大な効果を発揮し、玩具販促上も有利に働いたのではあるまいか?



 そもそも、そうしたナゾ解き要素以前に、


●『ウルトラマンギンガ』の闇の巨人・ダークルギエル
●『ウルトラマントリガー』の三馬鹿大将(笑)
●『ウルトラマンデッカー』の地球人に恨みをもつ未来から来訪した異星人


 「ニュージェネレーションウルトラマン」で常に描かれてきたレギュラー悪の存在が、第3話までの時点では示唆(しさ)されておらず、登場した怪獣同士の関連性なども特に描かれてはいない。


 そして、第1話で主人公、第2話でサブキャラたち、第3話でメカ兵器が小出しにされてきた序盤の展開の中では、それらのキャラクター間の因縁(いんねん)ドラマが描かれることもなく、『ブレーザー』には「タテ軸」はあるのか? とさえ思えてしまうほどだ。


 オタク第1世代の特撮マニア層の間でいまだに根強く聞かれる「ウルトラマンは1話完結形式のアンソロジーこそが魅力」などという声に今さらに応えているのだろうか?


 それに加えて、ブレーザーが怪獣を倒す必殺技が第1話から3週連続で、先述した巨大な「光の槍」のみというのは…… 他の必殺技も見せて、ヒーローの万能性を感じさせるべきなのでは? 初代ウルトラマンがほぼ毎週スペシウム光線で怪獣を倒していた半世紀以上前や、スーパー戦隊の巨大ロボットが毎週同じ必殺剣で敵を倒していた80年代とは時代が違うのだぞ。


 ちなみに、ブレーザーはタイプチェンジもしないという話だ。しかし、それではブレーザーのソフトビニール人形にはデザイン的なバリエーションがまったくなく、放映期間の半年でただ1種類の人形しか発売されないということなのだろうか? この少子化の時代に、ひとりの子供に人形1体だけを購入してもらう方法では、よけいなお世話でも売上高的には不安である。


 そのようなワケで、「本編」にしろ「特撮」にしろ画面が変化に乏(とぼ)しい上に、全体的に演出が淡々としているために、観ていてあまり熱くならない、燃えてこないクールな印象が強いのだ。


*「ウルトラマン」は「玩具の販促番組」である!


 ところで、『ウルトラマンタイガ』は実はシリーズ後半のみではなく、わりと初期編のころから陰鬱(いんうつ)で湿っぽい話が続出していた。そして、シリーズ後半ではYouTubeの公式チャンネルでの1週間の再生回数が毎回30万回程度にしか達していなかった。


 『トリガー』や『デッカー』もシリーズ後半では失速していた。しかし、それでも最低50万回程度は稼いでいた。


 よって、『タイガ』が当初は喜んでいたマニア層の多くを失望させたことは厳然たる事実だろう。だが、『タイガ』にはもうひとつの意外な事実がある。


 バンダイナムコホールディングスの決算資料で示された、2019年度の「ウルトラマン」のトイホビー売上高の実績は43億円だったのだ。


 これは『タイガ』が放映されてた2019年7月から12月の半年間を含む数字である。しかし、いまだに根強い人気を誇る『ウルトラマンオーブ』(16年)が放映された2016年度の売上高は31億円に過ぎなかった。玩具の売り上げ面では、人気だった『オーブ』をかなり上回る実績をあげていたのだ。


 やはり、相応に人気があった『ウルトラマンジード』(17年)が大きく貢献したためか、『ジード』が放映された2017年度はこれが43億円にまで上昇している。『ウルトラマンR/B(ルーブ)』(18年)が放映された2018年度は44億円となっていた。


 しかし、『タイガ』の人気自体はシリーズ後半では低迷しても、玩具の売り上げでは『ジード』『R/B』から大きく下降することもなく、ほぼ同じ水準を保っていたのだ。


 ちなみに、放映当時にマニアたちから絶大な支持を集め、個人的にも大好きだった『快盗(かいとう)戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー』(18年)の実績を示す、2018年度の「スーパー戦隊」のトイホビー売上高は60億円だった。
 しかし、この数字は前作『宇宙戦隊キュウレンジャー』(17年)の実績が該当する2017年度の91億円を30億円以上も下回る数字であった。『獣電戦隊キョウリュウジャー』(13年)の実績である2013年度の144億円に比べれば、その半分以下にまで落ちこんでしまうという、実に惨憺(さんたん)たる結果だったのだ。


 そして、『タイガ』と同じ年度に放映され、ある意味では『タイガ』以上に陰鬱な作風(爆)だったとも個人的には目している『騎士竜戦隊リュウソウジャー』(19年)の実績を示す、2019年度の「スーパー戦隊」の売上高は、『ルパパト』と同じ60億円であった。『タイガ』と同様に前作から大きく数字を落とすことはなかったのだ。


 これらの事実は、YouTubeの再生回数に現れる、おそらく小学校高学年のマニア予備軍や中高生や社会人年齢以上の特撮マニア間での人気や作品評価と、作風が暗かろうとも、そういったことに対する審美眼すらまだなくて、単純にヒーローのデザインやアクションに玩具のギミック的な魅力しか見てはいないのだろう幼児層とでは、その評価や喜ぶツボも実は異なっているために(笑)、マニア人気や再生回数が単純に玩具の売り上げ低迷には直結するとは限らないことを示している。



 逆もまた真なりなのだ。たとえ円谷プロ側のチーフプロデューサーが本当にやりたかったことが陰鬱で湿っぽい人間ドラマではあっても(爆)、作品はひとりだけがつくっていくものではないし、各種インタビューなどでは最初から上の方ですでにそういう方針が決まっていたという趣旨のことを遠まわしにボヤきつつも、『タイガ』の序盤では現場の脚本家・監督・特撮監督のやりたいことや、あるいは玩具会社側のオーダー(注文)なども入ってくるので、そういった過度な人間ドラマ志向も巧妙に回避されて、画面的なにぎやかさやコミカルさでも視聴者をつなぎとめようとする絶妙な工夫が多々見られたものだった。


 『タイガ』第1話『バディゴー!』の冒頭では、ウルトラマンギンガからウルトラマンロッソ&ブルの兄弟に至るまでのニュージェネレーションウルトラマンが勢ぞろいし、レギュラー悪のウルトラマントレギアとの一大決戦が宇宙空間を舞台に描かれていた。
 さらに同話は、サーベル暴君マグマ星人・宇宙怪人セミ人間・若親怪獣ヤングマザーザンドリアス(笑)をはじめとする、筆者の世代には印象深い人気怪獣や宇宙人も多数登場した豪華な一編でもあった。


 先述したように、『ギンガ』からはじまったニュージェネレーションウルトラマンが『ブレーザー』に至るまでに「10年」も継続できた理由は、映画『ウルトラマンゼロ THE MOVIE(ザ・ムービー) 超決戦! ベリアル銀河帝国』(10年・松竹)で生み出された「多元宇宙=マルチバース」の設定も大きいだろう。
 たとえそれぞれの作品が別次元・別世界ではあっても、「ウルトラマン」作品の世界はそのすべてがゆるくつながっているとして描いてきたことで、マニアや子供たちにもその作品世界の背後にあるスケール感を実に大きく感じさせて、ワクワクさせてきたことにもあっただろう。


 『タイガ』では、あのウルトラマンタロウの息子として設定されたウルトラマンタイガをはじめ、『ザ★ウルトラマン』(79年)の主人公ウルトラマンであるウルトラマンジョーニアスと同じU40(ユーフォーティ)出身のウルトラマンタイタスに、ウルトラマンオーブやロッソ&ブルが光の戦士となる力を得た惑星・O‐50(オーフィフティ)出身のウルトラマンフーマ、都合3人ものウルトラマンが登場していた。
 主人公青年の工藤ヒロユキはこれら3人のウルトラマンへの変身が可能であった。そして、タイガ・タイタス・フーマがふだんはヒロユキにしか見えない手のひらサイズの存在として描かれて、彼らの間で繰り出された掛け合い漫才的な愉快なやりとりが、当初は若い特撮マニアの間でも大好評となっていたものだった。


 こういった要素自体は、子供や幼児層にも魅惑的で楽しい趣向であったハズだ。だからマニア層から見て、『タイガ』はシリーズ後半では番組自体が迷走しようが失速しようが、子供間での玩具の売り上げでは前作・前々作から大きく低迷することもなく、同水準をキープできていたのだろう。



 マニア層から見れば作風はやや暗くても、往年の『シルバー仮面』や『ミラーマン』(共に71年)ほどではないのだし、陰鬱な夜間撮影が多用されていたワケでもない以上は(笑)、子供や幼児はそのへんの作風やドラマ面でのことなどわかっていないものなので、「恐竜」と「騎士」のモチーフはカッコよかった『騎士竜戦隊リュウソウジャー』も、同様の理由で売り上げを確保できたといった分析もできるだろう。


 もっとも、実はこの2019年度に、ゲーム・イベント、海外展開なども含めたグループ全体売上高では、「スーパー戦隊」は「ウルトラマン」に逆転されていた! その後も低迷をつづけているために、それはそれで「スーパー戦隊」の行く末の方も心配である。
 作品それ自体の罪ではなく、時代の空気や風潮とも連動して、時代ごとに子供や幼児が好むものやあこがれるものは変わっていく。00年代のむかしであれば、10(テン)キー付きの携帯電話型の変身アイテムだったりしたが、もちろんガラケーが絶滅した今ではもうそんなことはないのだ。
 電子家電や電子パネルやスマホなどが普及しきってしまった2020年代の現代では、そういったものにも未来・非日常性・憧憬といった特別な高みなどを感じることはなくなっており、当たり前の日常になってしまった。


 そういった時代だと、メカやその延長線上にある巨大ロボットに対するあこがれなどは、ゼロにはならなかったにしても非常に目減りしてしまっていることだろう。それでは、2020年代の子供たちがワクワクするようなアイテムやモチーフとは何なのか? それについては別の機会に譲ることとしたい。


 本作のメイン監督で1980年生まれの田口清隆(たぐち・きよたか)監督が、小学生当時に観たことがあったであろう、リアルロボットアニメ『機動警察パトレイバー』(89年・東北新社 日本テレビ)に対するオマージュを本当はやりたかったという見立てもある――ネットではそれを指摘する声が多数だが、まだ小学校低学年だった氏は同時期には『ビックリマン』(87~89年)の天聖界と天魔界の数億年にわたる抗争を描いていたビックリマンシールにハマっていたそうなので、実際のところはどうなのだろうか?――。


 しかし、玩具販促のためにも、子供たちを、ひいては今時の年長マニア層を喜ばせるためにも(笑)、『ウルトラマンZ』の防衛隊の巨大ロボット・セブンガーや『ウルトラマンデッカー』の防衛隊の巨大ロボット・テラフェイザーのように、もっとアースガロンを爽快でヒロイックに大活躍させて、単独でも敵の巨大怪獣を必殺技で撃破してしまうくらいのことをすべきではなかろうか!?

2023.7.29.


追記


 『ウルトラマンブレーザー』第7話『虹が出た 前編』のYouTubeでの公式配信の再生回数が、配信開始の2023年8月26日(土)から1週間を経た同年9月2日(土)朝9時の時点で46万回にしか達していない。


 先述したように、『ウルトラマントリガー』や『ウルトラマンデッカー』も放映を重ねるごとに再生回数は減少していた。しかし、それでも少なくとも50万回には達していたし、それもあくまでシリーズ後半になってからのことだ。


 それと比較すれば、早くも序盤の時点で1週間の再生回数が50万回を下回っている『ブレーザー』は、かなり危機的な状況にあると解釈せざるを得ない。


 あえて第7話の詳細には触れないが、公式配信に寄せられたコメントで、最も「いいね!」を稼いでいたのは、以下のようなものだった。



「すごい、人間パートが分厚(ぶあつ)く丁寧(ていねい)に作ってあるから、ウルトラマンパートが終盤にたった2分しかないのに満足感がすごい」



 なにか古き良き20世紀の特撮マニアのような懐かしい意見である。筆者も含む70~80年代の特撮マニアたちはほとんどがそのような意見を語っていたものだが(笑)。


 しかし、人間ドラマを見たいのであれば、一般層向けのテレビドラマや映画を観た方がよい。いっそ、名作文学なども読んだ方がよい。社会問題を論じたいのであれば、論壇誌などにも目配せした方がよい。筆者もそうしている。


 その逆に、「ウルトラマン」作品にはドラマ性などいっさい不要だ! などと極論を云いたいのでもない。その意味では筆者も、『ブレーザー』の第1話は乾いた攻防バトルに徹しすぎていて、意図的とはいえウェットな人間ドラマが皆無であったあたりで、うるおいがなさすぎてバランス自体は悪かったと思っているくらいなのだ。だから、特撮変身ヒーローものには人間ドラマはいっさい不要だ! などといった極論も採らない。


 とはいえ、変身ヒーローや巨大怪獣やスーパーメカや特撮シーンといった非日常的な存在を目玉にしている作品では、まずはそれらを魅惑的にカッコよく魅せるべきだろう。ドラマやテーマもあってよい。しかし云ってしまえば、ドラマやテーマも、変身ヒーローや巨大怪獣やスーパーメカや特撮シーンがカッコよく見えることに奉仕すべき存在なのだ!


 そういったことを明確に言語化・意識化できているかはともかく、21世紀以降の特撮マニアの大勢はもうそのように思っていることだろう。


 だから、先に引用したコメントのように、「ウルトラマンパートが終盤にたった2分しかないのに満足感がすごい」といった基準で、「子供番組」を評価する者は現在では圧倒的な少数派であることは、『ブレーザー』の第1話が2週間で724万回もの再生回数を誇っていたにもかかわらず、第6話『侵略のオーロラ』が2週間で62万回にしか達しないほどに大激減してしまった事実からも明確であるだろう。



 ちなみに、『ブレーザー』同様に6月下旬~7月頭のスタートで、第6~7話あたりではやはり同様に前後編を放映していた近作『ウルトラマンZ』・『ウルトラマントリガー』・『ウルトラマンデッカー』では、もっと徹底した華やかな先輩ヒーロー客演編だったのだ!


●『ウルトラマンZ』第6話『帰ってきた男!』には、『ウルトラマンジード』の主人公ヒーロー・ウルトラマンジード、その後編である第7話『陛下(へいか)のメダル』にはウルトラマンジードに加えて、主人公ヒーロー・ウルトラマンゼットが勝手に「師匠」と仰(あお)いだニュージェネウルトラマンの兄貴的存在・ウルトラマンゼロが登場!
●『ウルトラマントリガー』第7話『インター・ユニバース』~第8話『繁殖する侵略』の前後編には、前作の主人公ヒーロー・ウルトラマンゼットが登場!
●『ウルトラマンデッカー』第7話『希望の光、赤き星より』~第8話『光と闇、ふたたび』には、前作の主人公ヒーロー・ウルトラマントリガーが登場!


 いずれも変身前の青年を演じた役者はもちろんのこと、それぞれの因縁の敵までもが総登場した実に豪華な前後編であった。YouTubeでの再生回数も1週間で数百万回にまで達していたのだ。


 それを思えば、「ウルトラマンパートが終盤にたった2分しかない」ドラマ主導の回などは、少なくとも序盤でやるべきではないだろう。



 また、第6話に登場した『ウルトラセブン』(67年)が初出であるオーロラ怪人カナン星人以外は、『ブレーザー』には今のところ過去のウルトラシリーズに登場した怪獣・宇宙人の再登場がない。新規にデザイン・造形された怪獣ばかりが登場している。


 もちろんこれは、近年のウルトラ作品の売り上げ好調で、予算的にも余裕が出てきたことが大きいのだろう。


 近年のウルトラ作品では、第1クール中盤に早くも先輩ウルトラマンを客演させていた手法を断ち切ったことからしても、『ブレーザー』を独立した世界として仕立てるために、あえて過去作品の先輩ヒーローや怪獣を出さないのでは? と勘(かん)ぐっている方々も多いだろう。


 しかし、第1話であれば、そういった手法は新鮮に映ったとしても、20世紀の本邦初のマニア向けムックの影響で先輩ヒーロー共演自体が悪とされたむかしであればともかく、今のマニア層にも「ウルトラ」であれ「ライダー」であれ「戦隊」であれ「プリキュア」であれ「アメコミヒーロー」であれ、先輩ヒーロー共演のイベント性それ自体が恒常化しており、そしてそれが日本だけでなく世界中でも望まれているのだ。



 既成のウルトラシリーズとは世界観を刷新させて独立した作品として行くのか? もちろん、それでも面白い作品を構築できたのであればケチをつける気はない。しかし、今のところは1話完結形式の旧態依然としたルーティンな展開がつづいており、作品にもそこまでのパワーがないようにも見える。


 それであれば、このオーソドックスな展開自体もまたフェイク・ミスリードであって、シリーズ後半では怒涛の連続ストーリーや、他の先輩ウルトラヒーローとの客演編などで驚かせたり、興奮させてほしいものなのだが……

2023.9.2.


(了)
(初出・特撮同人誌『『仮面特攻隊2023年9月号』(23年9月3日発行)所収『ウルトラマンブレーザー』序盤合評1より抜粋)


ウルトラマンブレーザー』序盤合評3 ~『ブレーザー』はツマらない!?

(文・ビオラン亭ガメラ


 原稿というほどでもない雑談ですが(汗。ぶっちゃけ、『ウルトラマンブレーザー』はツマんないですわ!


 子供にはウケてるのかなあ?


 放映されたばかりの7~8話の前後編にしてもベタもいいとこ……


 いや、ベタが悪いんじゃないんですよ。


 各地で異変 → 恩師に話聞きに行く → 人間の傲慢さを謳われ対立(このへん、耳タコでうぜー) → 怪獣呼んでたの恩師でした…… って、話が平坦すぎやしませんか?


 もうちょい伏線というか、起伏がないと今どきダメだろ?って思います。ちょっとのことでいいんで。例えば、


 恩師に話を聞きに行く → あーせいこーせいアドバイスもらう → さらに状況悪くなる → 実はアドバイスは怪獣ニジカガチを蘇らせるためのものでした! 私ひとりでは復活は困難だったので、君たちを利用させてもらったよ! ……とかさ。


 前作『ウルトラマンデッカー』(22年)でも、ゲストの女博士が怪獣をコントロールしてた! みたいな話あったけど、色々とストーリーや複雑で一理も二理もある行動動機を仕込んであって、ペンダントがどうとかなどもあったりして、話も面白かったし細部の密度もプリプリしてたよ?

 隊長が「人間だって、地球の一部だ!」と即答したのは良かったけどね。あそこで90年代~00年代あたりのの特撮変身ヒーローものの主人公は悪い意味で悩み過ぎで、その展開や悩み方自体がもうテンプレ・陳腐化していたから。


 後編では防衛隊の巨大ロボット怪獣・アースガロンが、パワーアップで両肩にバズーカ砲が付く! ということで、またもリアル寄りに過ぎる描写。地味なんですよ! パッと見では、大した火力でもなさそうでしょ?w


 もっとさ、電鋸(電動ノコギリ)とか、メーサー砲(光線砲)とかさ、ゴテゴテした装備をつけろよ! って思うんですよ。防衛隊の戦闘機なり無人飛行メカが分離して、アースガロン手持ちの剣と盾になる! とかで良いんですよ。


 本作の方向性だから仕方ないのかもしれませんが、正直ツマんねーと思います……。始まる前は楽しみだったんですが、フタ開けてがっかり。良い部分もあるけど、それ以上にツマらん要素が多すぎ。着ぐるみ有りの『シン・ウルトラマン』くらいで良かったのに……。子供向けの現行作が『シンウル』より地味でどうする!?


 ハードってわけでもなく、オーソドックスが過ぎる。


 変身アイテム・ブレーザーブレスって、LEDがめっちゃ綺麗な発色で良いおもちゃなんですよ。なんで変身にしか使わないのかなーと思いますわ。もう「他トラマン」召喚でもいいから使いまくればいいのに。
 ドラマが良ければおもちゃも売れる? 売れる売れないどうでもいいわ。良いおもちゃが大活躍する番組が観たいんだよ!(笑)


 ヲタ、もしくは一般大人ウケ狙いなんすかねぇ? 今年の『王様戦隊キングオージャー』(23年)の「もっふん」とか、東映作品ならまだしも、そこを狙わないのが「ウルトラマン」の良さのひとつだったんですがねぇ。そこの牌(パイ)ってそんなデカくないしさw


 かと思えば、前回の第6話のカナン星人なんて「機械はすべて人間に不満の感情を持っている!」なんて言い出すし。ええー!? リアル路線違うの? 『ブレーザー』の世界では機械にもアニミズム的な魂や精神が宿ってるの!? 急に80~90年代の東映不思議コメディシリーズみたいなこと言いだしたから「?」ってなりましたわ。


 いや、メカニック担当の隊員中心で、防衛隊の巨大ロボット怪獣アースガロンが活躍する回こそ、ファンタジー回にしたらあかんのでは?w こういうアニミズムでファンタジーな要素があってもいいけど、もっとボカして匂わすくらいにしときゃ許されただろうに……


 コインランドリーの乾燥機を「クルル」と名付けてるヤスノブ隊員はキモイなあ(笑) → カナン星人、全ての機械を操って地球征服する → 手を尽くすがどうにもできない → 最後は機械にも心は伝わるはず! クルルやめてくれ! → 一瞬だけ止まる → それきっかけで逆転 → クルルにも感情があったんだ! → そんなわけ……あるかも?


 くらいのニュアンスにとどめた方がしっくり来ると思うけどなあ。作風含めて。


 ギャグシーンもなんつーかサラリーマン親父ギャグ(?)っていうか。ボールペンサインのギャグとかさー。あれが各キャラクターを表現してるとか言うんだろうけどさー。メインターゲットの子供たちにはもっとベタなのが良いんじゃないですかね? 昼飯をすごい大喰らいするとかさ。
 2話でエミが喫茶店でなんかおしゃれ注文してたけど、そういうこだわりとかいらんのよ。


 防衛隊の「スカード体操」とかいった子供向け企画にも苦笑。もっと簡単な体操にすりゃいいのに(笑)。


 スカードよりウルトラマンブレーザーのが気になるんで、そっちを描いて欲しいですわ。少々乱暴な雄叫びと戦い方が仮面ライダーアマゾン(74年)ぽくてオモロいのに、今んとこはただの戦闘要員でしかないし。巨大な光のヤリを投げる必殺技はいいけど、ビームがないとやっぱ地味いわ。


 今までで合格点あげられるのは、エミ回くらいだなあ。アクションもあったし。


 アンケートでもあれば思いっきり書いてやろうかとも思うんですが(笑)、イマツブ(円谷イマジネーション)では1話しかアンケートしてないよね?


 5話と6話の間の恒例「特別総集編」は見逃してしまいました。アマプラ(アマゾンプライム)で観るか……と思いきや。総集編は配信されないんかい!?


(了)
(初出・特撮同人誌『『仮面特攻隊2023年9月号』(23年9月3日発行)所収『ウルトラマンブレーザー』序盤合評2より抜粋)


ウルトラマンブレーザー』序盤合評4 ~新たなる光の巨人の物語が始まる

(文・中村達彦)

第1話「ファースト・ウェイブ」


 宇宙甲殻怪獣バザンガが夜の池袋に出現。地球防衛隊GGFの迎撃、第1特殊機動団の隊長ヒルマゲントは、部下を率いて降下地上に降り立つ。
 バザンガ進路上に自隊を2つに分けて展開する。司令部からの作戦変更というアクシデントが起きた。部下からも大きな信頼を得ているゲントは巧みに航空部隊の掩護を得るが、部下たちが負傷する。


 ゲントは身動きができない部下たちへ駆けつけ、続いて携行した火器でバザンガを攻撃するが効き目がない。空からの攻撃も弾き返し、両腕から発射する光弾も含め圧倒的なバザンガ。動けない隊員たちが危機に。
 だが突如、ゲントの両手に輝くメダルとブレスが顕現。、両手がスパークしながら合わさった瞬間、光る巨人が出現した。


 巨人は倒れるビルを支えたあと、バザンガと戦う。威圧するように歓声を上げ、ビルへよじ登って飛びかかるなど。その姿にGGFの幹部たちは、昔から宇宙飛行士たちの間で囁かれた未確認大型宇宙人のコードネームウルトラマンを思い浮かべる。
 一進一退。バザンガの尻尾を使った猛攻に苦戦する。胸のランプが紅に目まぐるしく点滅するが、私服の女性が放ったグスタフの一弾がバザンガをひるませ、そこで逆襲、両腕を引きちぎる。
 続いて、光の槍を発生させ、投げつける! 直撃爆散するバランガ。戦い終わり、夜の空飛び立っていく巨人。直後、気を失っていたゲントは目を覚ます。部下は全員無事で、彼の手にはメダルがあった。



 脚本は小柳啓伍。『ウルトラマンZ』(2020年)の軍事考証。監督は田口清隆。『ウルトラマンギンガS』(2014年)以来、ウルトラシリーズに参加、仮面ライダーシリーズやゴジラシリーズにも関わる。樋口真嗣の後継者というべき。


 ストーリーはバザンガ出現後、駆除に向かう第1特殊機動団の様子から始まる。緊張感高まるBGMが流れる中で、隊員の会話が進む。頭に指をあてているゲント、立ち上がり率先して向かう。車の中かと思ったら航空機の中の高い空で、兵士たちの様子からゲントが高い信頼を置かれていることがわかる。そのリアルな空気感で最初から掴まれてしまった。


 舞台となるのは、豊島区の池袋で、東池袋のサンシャインビルのあちこちが撮影で使われ、訪ねたことがある方々であれば「オッ!」と思うだろう(「ウルトラマンフェスティバル」や同人誌即売会「サンシャインクリエーション」でおなじみの場所。だからサンシャインビル自体は破壊されなかったのか?・笑)。


 部下全員の生還を口にし、突然の作戦変更にも冷静に対処。上空航空部隊の援護を要請する様子。動けなくなった別隊の救助にひとり率先して向かっていくゲントの勇姿で、彼が主人公だとすぐにわかる作品構成になっている。ゲントは今回よりも前から変身能力を持っていようだ?


 怪獣バザンガは甲殻類と爬虫類の混ざり合った姿。地球防衛隊の攻撃にもダメージを受けない強靭さ、腕から発射する光弾や突きや尻尾の攻撃での戦いなど、#1に登場する怪獣として申し分ない。


 ウルトラマンブレーザーも、これまでのウルトラマンとは違うデザインと演出を見せてくれた。発光する頭部の右の部分(『仮面ライダーエグゼイド』や『華衛士F8ABA6ジサリス(センティカ・エフハチエービーエーロク・ジサリス)』に似ている)、全身は赤・銀・黒・青の複数のカラー螺旋で構成されている。
 怪獣バザンガに威嚇するように咆哮し、バザンガの攻撃にビルに駆け上ってから飛びかかって逆襲するなど、野生児のような戦いで、発生した光を槍にしてぶつける必殺技スパイラルバレードもスペシウム光線二番せんじと感じさせない。


 これまでとは違ったウルトラシリーズの幕開け。星雲賞を受賞した『シン・ウルトラマン』(2022)を意識する箇所も幾つかある。田口監督が師である樋口監督を意識して、「私だったらこうしましたが」と撮ったようにも見える。


第2話「SKaRDを作った男」


 バザンガ戦のあと、ケントはGGF日本支部司令部参謀長・ハルノレツから新たに創設されたSKaRD(スカード。特殊怪獣対応分遣隊)指揮を命じられる。光の巨人をウルトラマンブレーザーと呼ぶゲント。すでに隊員人選も進んでおり、


●バザンガとの戦いでグスタフを撃った女性・アオベエミ
●航空支援などでサポートしたナグラテルアキ
●格闘に長けたミナミアンリ


 以上の3名が加わった。最初は貧弱だった基地・車輛・火器もあっという間に揃えられていく。


 同じ頃、近海では船舶が怪獣によって沈没。出撃した潜水艦も沈められてしまった。陸地に迫って来る怪獣。エミが情報収集で先行、SKaRDは初出動準備を。江戸時代にも出現記録はある深海怪獣ゲードスは漁港・先美港に上陸する。陸からの迎撃もものともしない。


 SkaRDはテルアキが留守番を、ゲントとアンリが現地へ赴く。エミとも合流する。


 ゲードスが背中から熱を放出していることに気が付き、先行するゲント。自分の船を守ろうとするも気絶した老船長を気遣ったゲント。その時、両腕にブレーザーブレスとブレーザーストーンが発生、導かれてウルトラマンブレーザーへと変身した!


 高圧水流や触角に苦戦するが、エミとアンリの援護射撃に助けられる。不利を悟った怪獣ゲードスは海へ逃げ込む。
 しかし、ブレーザーが発生させた光のヤリ・スパイラルバレードが釣り竿になって海中深くへ。ゲードスを空高く釣り上げて。次いでスパイラルバレードが貫通する。


 帰還したゲントたちは、地下で5人目の隊員バンドウヤスノブと23式特殊戦術機甲獣アースガロンに対面する。



 前話同様、脚本は小柳啓伍。監督は田口清隆。SKaRDが創設されて、その隊員が紹介されていく話と、ゲードスが襲来する話が同時に進む。これまでウルトラシリーズはほとんど#1から防衛チームは完成して隊員メンバーが揃っていた状態であった。だが今回は、基地も隊員も1から始めなければいけない。


 ゲントにSKaRD隊長を命じたハルノ参謀長。演じるは加藤雅也。『超速パラヒーローガンディーン』(2021)ラストにも謎の男役で出演していたが(続編やらないのか?)、何かいわくがありそうで。


 時間の都合でカットしたのかもしれないが、ゲントが元いた第1特殊機動団を離れるとき、別れを惜しむ部下たちとのシーンが欲しかった。そして新しい部下たちとの出会い。エミと喫茶店で会話したり、テルアキやアンリが書類にサインなど、その他の絡みも、ぎこちなくあちこちにギャグが散りばめられていて笑ってしまう。ゲント自身にも隊長の威厳がない。


 最初にゲントと接触したエミ。バザンガへの攻撃は鼻孔に撃ち込むには、ゲントには装甲の隙間と間違って伝わったそうだが、それは意図的なものか? そもそも鼻孔が弱点と何故知っているんだ? 今後の伏線か? エミは私服姿で笑っている姿が可愛い。毎回違ったコスプレを披露するそうで。
 関西弁を喋りさりげなく車両のメンテナンスや銃のマニュアルをやってくれたヤスノブが最後に登場。同時に防衛隊の巨大怪獣型ロボット・アースガロンも登場する。その整備をする人たちもおり、5人と思ったSKaRDは大組織であった。しかし、その活躍は次回以降で。


 怪獣ゲードスの頭部は提灯アンコウ状の触覚で、深海魚の特徴をつかんだ身体と深海怪獣らしいデザインだ。海で暴れ出し、老船長が接触したことでその恐ろしさを語り、それから脅威が広がっていき、時速80ノットで先美港に上陸して蒲鉾(カマボコ)工場を襲う。怪獣出現襲来のパターンの要点を相応に抑えてドラマは動く。
 ゲードスに絞ってのドラマも観たかった。田口清隆がシナリオを手がけている連載マンガ『神蛇』(2023)を連想する。
 ブレーザーとゲードスの戦いは、エミとアンリの援護もあって勝つ。逃走したゲードスへ投げたスパイラルバレードが釣り竿になって釣り上げる『ウルトラマンタロウ』(1973)的な展開。まさに「ヘンテコリンな魚を釣ったぞ!」だ。そのオチのつけ方は好き嫌いの評価が分かれるだろう。


第3話「その名はアースガロン」


 巨大ロボット・アースガロンも加わり、SKaRDの装備は整いつつあった。その頃、ヨーロッパや北米ではプラント(工場)から液化ティーテリウムが抜かれる事件が続発していた。ゲントは新たな怪獣の脅威を予想し、出撃に備えて訓練に勤しむ。彼はかつて勤務中にウルトラマンブレーザー接触を受けた過去があった。
 怪獣がつくば市の研究施設を狙っていると予想したゲントは、アンリに戦いを想定させるが、直後に甲虫怪獣タガヌラーが沓波市に出現。防衛隊の総攻撃でタガヌラーが抜食していたティーテリウムが誘爆することを恐れ、先にあたることに。
 ゲントとアンリの搭乗したアースガロンが空へ出撃する。体内温度が上がっていくタガヌラー。ゲントは航空部隊の攻撃を中止させ、アースガロンを地上に降ろした。


 タガヌラーとアースガロンの戦い。口の荷電粒子砲がタガヌラーの右腕を切断する! 続いての肉弾戦で周囲に起こった爆発! アースガロンは機能を停止して倒れてしまう。ゲントは再起動させようと外へ出るが、ブレーザーブレスとブレーザーストーンが出現、変身する。


 タガヌラーと戦うブレーザーだが、吸食したティーテリウムで体内温度は1万度に達しており、高温に苦しむ。そのとき、ヤスノブの指示でアンリは緊急装置で尻尾のテイルVLSミサイルを発射! タガヌラーをひるませた。その後、タガヌラーは溜まったティーテリウムエネルギーを頭部のツノから放出。100万度の高エネルギーはブレーザーの制御により上空へと垂直に飛んでいく。続いてスパイラルバレードでタガヌラーは撃破された。



 本話も、脚本は小柳啓伍。監督は田口清隆。戦術機甲獣アースガロンの初陣で、『ウルトラマンブレーザー』の世界観とストーリーの基本を見せてくれた。アースガロンは、『ウルトラマンZ』(2020)の特空機、『ウルトラマンデッカー』(2022)のテラフェイザーに次ぐ、防衛チームの二足歩行のゴジラ型ロボット怪獣だ。カッコいいシーンをあちこち見せてくれた。玩具が欲しくなるアースガロン。
 起動して飛び立つ発進シークエンスは、英語のアナウンスが響き、あちこちで作業にあたる整備員の姿や動かされるアースガロンの細部が描かれ、往年の『ウルトラセブン』(1967)のウルトラホーク1号の発進シーンやその細部のカッコよさとも重なる(しかしアースガロンの重量は2万5千トン。それが最大マッハ4で飛行するのはやり過ぎのような……)。


 つくば市に到着してから、噴き出した白霧をバックに咆哮して、それを正面からアップで映ると、往年の東宝川北紘一特撮監督のような逆光。カットにはあちこち鉄の塊の力強さが出ている。武器を発射するその姿と活躍は、令和のメカゴジラといっても申し分ない。ワンダバのBGMも流れて盛り上がる。


 アースガロンを動かすSKaRD隊員たち。前半に厚いマニュアル片手にコクピットで操作の指導を受けたり、紙で作られた街で、操縦したときの模擬戦をシミュレートし、中盤以降のタガヌラーとの戦いは、隊員それぞれの活躍が描かれている。戦い終了後、テルアキが言った「良いチームにしていきましょう」は決まっている。


 隊員それぞれに屈託ない笑顔で接し、タガヌラー出現時には液化ティーテリウム管理の大川に情報収集で接し(この大川役は声優でもあり特撮作品にも多く声をあてている関智一!)、大声の全力で対しているエミと、真面目ながら小声で虫嫌いをひとり言のように言ってのける(笑)操縦担当のアンリは対照的だ。


 そしてゲント。それぞれの部下の長所を見てとり、アースガロンの到着時に、航空部隊を堂々と退かせる様子も渋い。そして、彼がウルトラマンブレーザーと出会ったのは、#1より前のことだったと回想で明かされた。


 今回戦ったタガヌラー。虫型怪獣の特徴を掴んでいる。ティーテリウムで体内温度は1万度に達し、ブレーザーも「アチチッ」と叫んでいる(笑)。でも世界各地のティーテリウムを吸い、溜まったエネルギーを最後に放出するだけで、今一つ説明不足だ。この怪獣は何がしたかったんだろう? アースガロンの引き立て役になった感がある。


第4話「エミ、かく戦えり」


 軟体怪獣レヴィ―ラが出現するが、コンテナに搭載されていた新型殺菌剤・FK1に触れて退散する。その後もレヴィーラは出現。FK1による撃退が続くが、その使用量が増えていく。FK1を作った大手化学企業ノヴァイオが怪しいと潜入調査をすることになる。
 ノヴァイオ社長・曽根崎の秘書としてエミが潜り込み、曽根崎の信頼を得る。ノヴァイオ孫会社の海生生物クリオネを改良した「人工クリオネ」がレヴィーラに似ていることや、曽根崎が元GGF科学者だったことが判明する。


 怪獣レヴィ―ラに対してアースガロンも出撃して、FK1を使って攻撃する。しかし、レヴィ―ラFK1耐久性は強くなるばかり。エミと水族館で接触していたゲントは、深まっていく疑惑から、一度調査を中止するように言うが、エミは激してしまう。


 夜間、社長室を調べ、GGFの資料を持ち出していた証拠を見つけるが、曽根崎らに見つかってしまう。レヴィ―ラは隕石に付着していた生物から作り上げ、意図的に出現させていた。FK1を使用させることだけでなく、自分に注目させ英雄視させることを狙っていた。得意げに語る曽根崎。
 だが全てが、水族館でエミが激したときから、曽根崎を引っ張り出すための芝居であった。駆けつけたゲントとエミは曽根崎らを一網打尽にする。


 乱戦の中でレヴィーラは目覚める。ゲントもブレーザーに変身! 苦戦するが、アースガロンも到着! エミのアドバイスで、液体窒素が投げられ、凍り付いたところをスパイラルバレードが突き刺さる。


 事件解決後、エミからゲントへ感謝の花束が贈られた。



 脚本は継田淳。『ウルトラマンZ』(2020)や『ウルトラマントリガー NEW GENERATION TIGA』(2021)も手がけた。監督は辻本貴則。『ウルトラマンX』(2015)から長くウルトラシリーズに関わり、セットやアクションで力の入ったカットが特徴。
 本話では、レヴィーラの怪獣アクションとエミのスパイアクションが両立して描かれていた。


 これまでのウルトラシリーズでも、初代『ウルトラマン』(1966)第10話のジラース、『帰ってきたウルトラマン』(1971)第34話のレオゴン、『ウルトラマンデッカー』(2022)第10話のネオメガスなど、人間に生み出された怪獣は存在してきた。
 しかし、レヴィーラは己を英雄視させる私欲で生み出されたことや、クリオネが元でこれまでの恐竜型怪獣とハ大きく異なった姿からか、異色の話となっている。
 くすんだ白色のカラーリングに、醜くゆがんだ女性の顔を思わせる容貌、自分を液化させ姿を消したり、即座に再生したりと異形の存在だ(#3のアンリが言ったごとく「気持ち悪い」)。


 自分を陶酔し賛美する歌まで作って自身向けに流している曽根崎。歴代ウルトラシリーズに登場してきた、自分に酔っている宇宙人キャラにも相通じている(笑)。


 ノヴァイオ社に潜入したエミの活動がメイン。社長秘書としての眼鏡のスーツ姿と、本話ラストの繁華街のギャルの姿は、口調も含めて同一人物には見えない。
 各話で違ったファッションをしていることについては、90年代に特撮ヒロインをイラストで連載解説して『空想流行通信』(97年)の著作を持っていた香坂真帆さんにどこかで取り上げてもらいたい(笑)。
 エミが夜間の社長室を捜索する姿や、その後に曽根崎の部下たち相手に凛として見せるアクションも決まっている。レヴィーラへ液体窒素をぶつける機転も利いている。


 ラスト、ゲントにピンクのガーベラの花束を渡す。ゲントの奥さんへと言っているが、本当はゲントへ。ガーベラの花言葉は「感謝」。自分を信頼して任せて、いざというときに守ってくれた上官への感謝なのだ。


 ゲントは、テルアキのハルノ参謀長への「報告しましょう」の発言に対してイヤな顔をする。苦手のようだ。交代でアースガロンを操縦し、前半ではテルアキとヤスノブ、後半ではテルアキとアンリが。両手の武装105ミリ機関榴弾砲・アースガンも披露した。


 曽根崎の撃った銃撃で配電盤が壊れ、レヴィーラが目覚めるが、御都合主義だろう。他にも複数のレヴィーラが眠ったままで、ブレーザーとの戦いのときもそのままだったが、その後、GGFに処分されたのだろうか?


第5話「山が吠える」


 GGFが開発を進めていたレールガン(=超電磁砲。すでに現実世界でも実現している科学兵器)であるメガショットの試験で、秋田県の市之字村にある訓練場へ飛んだアースガロンとSKaRD面々。


 市之字村はアンリが幼い時過ごした場所であった。メガショット設置反対を訴える女性・ミズホが、山神さまドルゴが目覚めると立ちはだかる。彼女はアンリの幼なじみでもあった。古い巻物を見せてドルゴの存在を訴えるが、確証がつかめず、メガショットとアースガロン模擬戦は実施される。


 その最中に、長い眠りについていた山怪獣ドルゴが、メガショットを背中に乗せて目覚めた。「山」そのものがドルゴだったのだ。光線をアースガロンに放ち麻痺させるも、水を飲んで二度寝に入る。しかし、1時間ほどで目覚めることが判明する。メガショットを背負ったまま暴れ出したら……。


 一同は討伐を考えるが、ミズホは撤去された祠(ほこら)にあった御神体を持っており、祠の穴に差し込めばドルゴは長い眠りにつくと訴える。東京で留守番をしていたエミの助言も後押しする。その意見を容れて、眠るドルゴの山へ登るゲントとアンリ。テルアキとヤスノブは整備員とアースガロン修理にあたる。


 ゲントたちが祠跡に着いたとき、ドルゴは目覚めて立ち上がった。地鳴りとともにバランスを失い空中へ落下するゲントは変身した。修理が成ったアースガロンが援護。ブレーザーはスパイラルバレードを折って投げつけ、メガショットを2つとも切断する。


 アンリが「眠ってけれー!」と御神体を祠の穴に差し込むと、ドルゴは眠りについた。ブレーザーに押し戻されて山に戻っていく。ミズホとアンリは笑い合い。SKaRDは帰途についた。



 前話同様、脚本は継田淳で、監督は辻本貴則。今回はアンリを中心に、舞台は東北の山村だ。クライマックスは日中で、#4とは対照的なエピソードとなった。しかし、どちらも怪獣主体である。もちろん、そこに人間が絡んでいくことで、怪獣と人間ドラマが両立して描かれていた。


 倒さずに済んだドルゴ。長い眠りで「山」と一体化したそのデザインは昭和の第1期ウルトラシリーズの怪獣デザインを手掛けた成田亨(なりた・とおる)ぽい。エピソードの方も、『ウルトラQ』(1966)と『ウルトラマン』(1966)のごとく牧歌的だ。


 「山」そのものが怪獣で、植林された草木もそっくり体毛や口ひげとなっており、角ばった四足歩行の姿に、超兵器の砲身・メガショットが載った姿は、『ウルトラセブン』(1967)第28話の恐竜戦車を彷彿とさせる。土着信仰で長く神さまと崇められていた怪獣というのは『ウルトラマンタロウ』(1973)に出てくる怪獣のようだ。


 メガショットを秋田の山村実験場で配置するのは、近年の秋田でのイージスアショア設置とも重なる。狙ったのだろう。毎時マッハ5の砲弾を毎分30発発射! 自動追尾装置も付いた優れものだ。ドルゴの背中にくっついており、ブレーザーを苦戦させた。だが実質的には固定砲台なので、どこに現われるかわからず高速で移動する怪獣に有効なのだろうか?


 前半の模擬戦では、アースガロンとメガショット、正面から手加減なく撃ち合っている。後半のドルゴとの戦いでは、空中で回転するシーンを見せ、その前にはアースガロンの首部で整備員が修理を行っているカットがあった。昭和には撮れなかっただろう。
 メガショット責任者はゲントたちに友好的で、反対しているミズホにも敵意を見せていない。メガショット設置に関してチェックしたと言い、事件後、色々な課題が見え頑張っていくと述べていた。この類の話に出てくる人は、頑迷で事態を悪化させていくのが多い。今後もメガショット開発が続けられていくが、アースガロンの武器になったりして……。


 ドルゴを記録した巻物は、科学博物館にも関連資料があるとされる。『ウルトラマンX』(2015)はじめ、作品世界観をまたいで近年の諸作に登場してきた古文書「太平風土記(たいへい・ふどき)」を連想する。


 アンリは小声でぼそぼそとした話し方で(快活なエミと対照的)、田舎にも良い感情を持っておらず、テルアキの田舎の自慢話も遮っているが、ミズホとの再会や事件の経緯から、ラストでは打ち解けていた。


 ゲントとアンリは移動指揮車両・MOPで、テルアキとヤスノブはアースガロンで帰ったが、整備員たちはどうしたのだろう?


特別総集編「巨大生物の正体を追え」


 怪獣出現を振り返り、新しい報道番組企画に取り組むTV局スタッフ。バザンガ以来の襲来する怪獣たち。その映像を観るテラシマヅサブロウタとニホンマツタクマ、バザンガ来襲でリポーターを務めたキヨシマダイラレイコ。
 この3人が怪獣や戦ってくれるウルトラマンブレーザーについて語り合う。レイコはティーテリウムを扱った大川にもタガヌラー来襲について取材し、ノヴァイオ社が生み出した怪獣や地方での怪獣騒動についても話が及ぶ。防衛隊への取材をしようと考えるが、ガードが固くて困難だったそうだ。
 サブロウタは真実を伝えるのが、俺の仕事だろうと意気込むが、報道番組はスポンサーの意向でアニメに変更になったとの連絡が入り(笑)、意気消沈する。



 脚本は足木淳一郎。2012年から『ウルトラマン列伝』(2011)以来、ウルトラシリーズには10年以上関わってきた。プロデューサーでもある。監督は「演出」名義で村上裕介。総集編であるが、本編には登場しないTV局のスタッフから、物語を別の視点から再び語らせるという描き方をしている。『ウルトラマンガイア』(1999)でもTV局の取材クルーがイレギュラー的に登場していた前例はあったが。


 映像を観ながらそれぞれが突っ込んでいる。しかし、我々が作品を観ながら思っていることとほぼ一致している。ただし、入手した映像や知っている情報も、曽根崎がレヴィーラを生んだ目的を知らないなど限られており、それらしく仕上がっている。


 今後の話数で彼らも登場するのか? SKaRDが今回のサブロウタらに取材される話はあるのだろうか? 『ウルトラマンX』(2015)第16話のごとく。


第6話「侵略のオーロラ」


 急に自動車や飛行機がコントロールできなくなる事件が相次ぐ。ヤスノブは器用で仕事熱心だが、皆の雑務を引き受けすぎてオーバーワークになる。さらにアパート近くのコインランドリーの乾燥機に「クルル」と名付け、愚痴を聞いてもらっている姿を、ゲントに見られてしまう。
 落ち込むヤスノブ。ゲントと入れ替わるようにコインランドリーに来たのは、オーロラ怪人カナン星人のハービーであった。機械を負の感情で操るオーロラ光線を乾燥機やヤスノブに浴びせる。頻発している事件もカナン星人の仕業で、レヴィーラの事件でアースガロンを知ったハービーは、ドルゴの事件でもオーロラ光線を撃ち込んでいた。アースガロンも操られて出撃してしまう。ハービーはヤスノブにも協力を呼びかける。


 拒否したヤスノブは、意思を持ったクルルが指し示した異空間を通ってハービーを追跡。ゲントもクルルからヤスノブの行き先を知らされ、テルアキ・エミ・アンリと指揮車両・MOPでカナン星人アジトに向かうが、暴走したアースガロンの攻撃を受ける。
 アジトへ突入したヤスノブはハービーに捕えられる。アースガロンはMOPを地面に放り投げ、外へ出たゲントは変身する。


 ウルトラマンブレーザーVSアースガロン。戦いの中、機械には心があると、ハービーの拘束から脱してきたヤスノブがアースガロンに呼びかける。流れ弾がアジトを直撃して、ヤスノブは吹っ飛ばされる! ブレーザーが救おうとしたが、先にアースガロンの手が伸びていた!


 スパイラルバレードが逃走する星人のアジトである宇宙船を両断する。その後、クルルを掃除するゲントとヤスノブがあった。



 三度、脚本は継田淳で、監督は辻本貴則。今回はヤスノブがメインで、ユーモアを含んだ異色のエピソード。


 『ウルトラマンブレーザー』も#6まで来た。最近のウルトラシリーズでの新たなパターンと化しつつあった、設定やストーリー、イベント編がほとんどなく、登場する怪獣も本作オリジナルが続いてきた。ややオーソドックスに過ぎる感じもあるが、怪獣に重点を置いた話が続いている。


 カナン星人は『ウルトラセブン』(1967)第24話以来の登場。むかしのアジトは灯台だったが、本作では海の近くに建つ風力発電所となっていた。メカを狂わせるオーロラ光線や、セブンが使役するカプセル怪獣ウインダムのように、コントロールされてブレーザーと戦ってしまうアースガロンなど、あちこちに原典へのオマージュを感じさせる。


 印象的なのはハービー。堂々とコインランドリーへやってきて、ヤスノブ相手に熱弁を振るう。カナン星人の衣装を示し「僕と一緒に来なよ(着なよ)!」と駄洒落を言う。考えてみれば、ヤスノブを誘わなければ、計画はうまく行っていた。アジトでは捕らえたヤスノブに、戦いに夢中になっている間に逃げられている。策士策に溺れる。だが、侵略者とはいえ、『ウルトラマントリガー』に防衛隊の一員として登場していたメトロン星人マルゥルにも被さって何か憎めない。


 ギャグ回かと思ったら、機械と人間とのドラマもあった。乾燥機を人間の友達のように話しかけている。どこかの芸人で似たような話を聞いたことがあったが(笑)。ヤスノブはクルルやアースガロンを対等な友人として接している。


 ヤスノブは暴走したアースガロンへ呼びかけ、それに応えてアースガロンも落下するヤスノブを救い、その前のMOPをつかんでいるときも、荷電粒子砲やアースガンを使ってはいない。ロボットにも心が芽生えた。
 これまでも多くのアニメ・特撮作品で、無機物の人型ロボットに心が芽生えたり、主人公とロボットとの友情ドラマが描かれてきた。『ジャイアントロボ』(1967)最終回や『ターミネーター2』(1991)のラストなど。


 他にも、ゲントが実に低姿勢でクルルにヤスノブの行き先を尋ねたり、最後まで彼と分かり合おうと努めたり、エミやアンリ同様に部下から見た理想の上司だ。そのヤスノブはオーロラ光線を浴びせられて服を脱いで半裸になったら、童顔に反してムキムキだったり、ヤスノブは勤務外では自宅アパート近くに行くのにも銃を持参していたり、ハービーの駄洒落に「おもんな(面白くない)」と返し、コインランドリーを出てカナン星人バービーを追いかけようと上半身裸のままで鉢合わせしてしまった男を演じたのは本話の担当ではないが田口清隆監督だったり、あちこちのシーンで小ネタの注目ポイントがあった。


(了)
(初出・特撮同人誌『『仮面特攻隊2023年9月号』(23年9月3日発行)所収『ウルトラマンブレーザー』序盤合評3より抜粋)


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(文・T.SATO)
(2022年2月19日脱稿)


 2013年度から始まったニュージェネレーション・ウルトラマンシリーズ第9作こと『ウルトラマントリガー NEW GENERATION TIGA(ニュー・ジェネレーション・ティガ)』(21年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20211021/p1)。通例では7月に始まってクリスマス商戦の年末12月に完結するニュージェネ・シリーズだったのだが、同作はイレギュラーな番外の総集編を3本挟んで、歳を越えた翌年1月下旬に完結した。


 各話のゲスト怪獣よりも強い敵幹部級の存在として、シリーズを通じて登場してきた、悪のウルトラマン3人衆こと「闇の3巨人」。彼らはシリーズ終盤ではひとりまたひとりと敗退していき、悪の3人衆の筆頭である女ウルトラマンことカルミラは、闇の力を借りて超巨大怪獣と化す! その名も邪神メガロゾーア! ……というようなストーリー展開になるだろうことは、子供たちはともかく我々大きなお友だちにはミエミエであっただろう。


 ただし、ミエミエだから悪いということでもない。原典の女ウルトラマンことカミーラ同様、カルミラが3000万年越しでティガもといトリガーを妄執込みで愛していたと描かれてきた以上は、彼女とのドラマ的・バトル的な決着が本作のラストに配置されていなければ、それはそれで腰の座りの悪いオカシな作品となったことであろう。


原典『ティガ』最終回&後日談映画のシャッフル作劇!


 ところで、この邪神メガロゾーアとは、本作の原典でも『ウルトラマンティガ』(96年)最終章3部作(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19961207/p1)に登場したラスボス超巨大怪獣こと邪神ガタノゾーアや、『ティガ』の後日談映画『ウルトラマンティガ THE FINAL ODYSSEY』(00年・ttp://d.hatena.ne.jp/katoku99/19961209/p1)に登場した悪の女ウルトラマンことカミーラがラストで変身した超巨大怪獣こと邪神デモンゾーアのリメイクでもある。
 本作『トリガー』最終回は、一応の『ティガ』の次世代作品を謳(うた)っているので、この『ティガ』最終章3部作と『FINAL ODYSSEY』をシャッフルした作りともなっていた。もちろん、この2作品のいずれかそのまんまの内容では、子供たちはともかく大きなお友だちからはブーイングが飛ぶだろう。その逆に、あまりにも別モノであっても、それでは『ティガ』の次世代作品を謳っている意味がないとイチャモンを付けられることだろう。


 メインターゲットは今現在の子供たちである以上は、大きなお友だちの反応なぞは無視してもイイだろう。しかし、それもまた現実的には、そして人間の人情としても困難なことではある。


 そこで本作『トリガー』では、原典とは異なりラスボス怪獣はまずは新宿都心に出現させたものの、原典とも同様に最終的には海上で決戦させることになる。
 原典ではシリーズ後半の1エピソードにのみ登場した悪のウルトラマンティガことイーヴィルティガの変身前の「中の人」である青年科学者が、変身能力を失って改心したことで最終章3部作では再登場して、その人間としての頭脳だけを活かして活躍するかたちを採っていた。


 本作『トリガー』では、その立ち位置はカナリ異なるモノのお宝ハンター宇宙人・イグニス青年が「闇の残留エネルギー」をゲットして、ウルトラマントリガーの3000万年前の姿であった闇の巨人・トリガーダークへと変身! 敵対関係から和解に転じて、トリガー&トリガーダークの2大ヒーローが共闘して邪神メガロゾーアに立ち向かって、一度はコレを撃破してみせることで原典との差別化を果たしている。


『ティガ』最終回&後日談映画とも異なる新機軸部分!


 しかし、クトゥルフ神話の怪物『這いよれ! ニャル子さん』(09年。12年に深夜アニメ化・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20150601/p1)ことニャルラトホテップ、もとい細身の邪神・メガロゾーアは異形で幅広で「名状しがたい」((C)クトゥルフ神話・笑)醜悪な第2形態へと変化! トリガー&トリガーダークを打ちのめす!


 一度は撤退するトリガーたち。だが、トリガーことケンゴ隊員や怪獣攻撃隊の隊員たちの発案で、「光」単体の力だけでは「闇」に対して拮抗する程度に過ぎなくても、「光」&「闇」のダブルパワーであれば「闇」をも陵駕することが可能なのだ! という、ある意味では計量的・合理的な、別の意味では言葉のお遊び・頓知的な発想の作戦を発案!――「擬似SF性」というヤツです(笑)――
 イグニス青年がトリガーダークの「闇のエネルギー」をケンゴ隊員ことトリガーへと返すことで、「光」と「闇」の両方の力を併せ持たもったトリガー最強形態・トリガートゥルースも誕生する!


 そして、しばし優勢に活躍するも、それでも敗北(汗)して海底へと沈んでいく……。
 といったところで、原典『ティガ』の最終回とも同様に、コレら一連のTV中継を観ていた各地の子供たちが声援を送る! すると、トリガートゥルースもその光のエネルギーで充填!
 さらに、怪獣攻撃隊の空中母艦・ナースデッセイ号を中継器として、本作のキーとしても描かれてきた「エタニティ・コア」なる超エネルギーの力もチャージすることで大逆転! といったところで、いったんのオチとなっている……。


 邪神ガタノゾーアやデモンゾーアもどきの出現! TV中継を通じた子供たちの応援によるウルトラマンの復活&大逆転劇! といったところで『ティガ』らしさを醸し出しつつも、「光」のエネルギーの強大化だけで邪神を打倒できていたティガとは異なり、「光」と「闇」の両方の力と「エタニティ・コア」の力を秘めている最強形態と化すことで、『トリガー』最終回は原典『ティガ』最終回との差別化を果たすこともできていた……といった交通整理はできるだろう。


伝説化された原典『ティガ』最終回も当時は賛否両論!


 とは云うものの、もう四半世紀が経ったので往時の議論百出が均(なら)されてしまって、「総合的・最大公約数的には『ティガ』最終回は傑作だった」という見解に平均化・一般化がなされることで神格視されてはいるけれども、ココの扱いが実はムズカしい。


 往時にもうすでに大きなお友だちであった特撮マニア諸氏は覚えていることだろう。この『ティガ』最終回についても、当時は賛否両論であったことに。そして、そのようであった最終回を踏襲してしまうことに、否定とは行かなくても少々複雑な感慨を覚えるロートルな諸氏も一定数はいることだろう。


 具体的に著名人で云えば、オタク第1世代の怪獣絵師こと開田裕治(かいだ・ゆうじ)画伯などは、当時の月刊アニメ雑誌ニュータイプ』のモノクロ情報ページの最下段を数ページにわたって占拠していた、オタク業界人多数による各人の数行程度の近況報告の中で、「『ティガ』も最終回は子供がたくさん出てきて、あんなんだったしなぁ(大意)」といった主旨の否定的なコメントを残していたのだ(汗)。
 この意見が大変不愉快であったらしい、『ティガ』最終回を執筆した脚本家・小中千昭(こなか・ちあき)などは、出典の書籍は失念してしまったものの、開田との対談でノッケからソレに対する先制パンチ(反論・当てこすり)をカマしていたものである。



 当時の特撮雑誌の読者投稿や特撮評論同人界でのマニア論客たちによる賛否の論陣は整理してみせれば、以下の通りであった。


●いわく、人間の知恵&科学を用いた現実的&物理的な努力で、邪神に敗北して石化したティガを復活させてみせてこそ、非民主的で選民思想的にもなりかねない「光」なぞではなく、非力な凡人ではあっても努力を実らせることができる「人」としての民主的&自力的な解決法を賞揚できるのだ。大人たちの努力が水疱に帰したところで子供たちがオカルト・精神主義的に奇跡を起こすのであれば、それは「人」としての努力の賞揚にはならないし、旧態依然の他力&神頼みのそれに過ぎないのだ。


●いわく、「大人の観賞にも堪えうる」というような旧態依然のテーゼで、メインターゲットである子供たちをないがしろにしてはイケナイ。大人たちでも達成できなかったティガ復活が、子供たちの純真な想い&合体でこそ達成ができたのであれば、それもまた子供たちにとっては痛快でもあっただろう。


 ちなみに、筆者個人は双方の意見いずれにも組してはいない。双方の意見それぞれに一定の理はあるとも思うが、ドチラかが圧倒的に正しくて、片方が圧倒的に間違っているとは思われない。
 もちろん、不肖の筆者も作品批評の最終審判者などにはなりようがない。しかし、子供たちの想いが金色のエネルギー奔流と化して、それらが結集してティガとも合体! ティガのインナースペースの中で大勢の子供たちが同時に一斉にパンチを繰り出したり、所定のポーズを取って必殺光線を放つ姿に対して、個人的には好意的であり微笑ましく捉えてもいたのだ。


原典『ティガ』最終回における子役大挙登場が議論の的!


 けれど、同時にこうも思ってはいた。コレらの描写は幼児~小学校低学年であれば抵抗はないであろう。
 しかし、小学校中学年~中学生の時分に視聴すれば、自身よりも年下の子供たちがややタドタドしい演技でパンチを放ったり所定ポーズを取っている姿に、やはりしょせんは子役たちによる絵空事の演技に過ぎないと看て取って、気恥ずかしさ&少々の幻滅を覚えてしまったのではなかろうかと。
 されど、さらに長じて高校生以上にもなってくれば、今度は子役たちの未熟な演技も割り切って観られて、その下手ウマさもまた微笑ましくて健気なモノにも思えてきて許せてくるのではなかろうかと(笑)。


 子供にかぎらず人々や庶民の祈りが「光」のエネルギーとなってヒーローが大逆転! といった作劇は、往年の合体ロボットアニメ『六神合体ゴッドマーズ』(81年)最終回や合体ロボットアニメ『元気爆発ガンバルガー』(92年)最終回の1話前などでも先行例はあった。広義では「光」のエネルギーではなくても戦いを見守っている人々の「声援」がそれに当たるものではあった。
 よって、『ティガ』最終回は画期的なのだ! なぞという意見には少々抵抗を覚えてはいた。むろん、主人公以外の人々の尽力や祈りも決してムダではなかったという「テーマ」を体現してみせる作劇意図の具現化としての映像表現としては有効なものであったとは思うし、『ティガ』以降のジャンル作品でもこのテの作劇は一般化もしていく……。


 しかし、げに作品批評とはムズカしい。一律に子供といっても、子供たちの成長段階に応じて、その受け取るであろう感慨には相応の違いが生じてしまうモノなのだ。
 そして、筆者個人も小学校中学年~中学生の年齢の時分に『ティガ』最終回に接したならば、子供たちの光がティガに結集していくあたりはともかく、そのあとにおける子役たちがパンチやキックやポーズをタドタドしく取っている姿で興醒めしてしまったのではなかろうかとも思うのだ(汗)。
――コレが逆にTVアニメ作品で全編が最初から作画&プロ声優で統一表現されていれば、子役と大人の役者さんとの演技の技量差・リアリティーラインの相違なども発生することはないので、そこで幻滅することなどもなくスンナリと受け容れることができていたかもしれない可能性なども含めて想起する――


 てなワケで、子供の味方をしてみせたつもりであっても、それは3~4歳児だけの味方に過ぎなくて、小学3~4年生にとっての味方ではなく敵になってしまっている可能性があるのだ(爆)。安倍ちゃんやトランプのせいにもできない、自らも免れえない人間一般が持っている「原罪性」(汗)。子供番組のレビューというモノも実にムズカしい。コレは永遠のアポリア(難問)でもあり、最終アンサーにはついに至ることもないのだろう。


 『ティガ』のリメイクにして続編という命題に沿いつつも、『ティガ』とは異なる差別化された新作でもあらねばならない……。個人的にはその命題に本作『トリガー』は一応は応えてみせていたとは思うのだ。


『トリガー』最終回に弱点アリとすればソレは何なのか!?


 しかし、そのことともまったく無関係に、「大きな危機に見舞われるも、最後には大逆転で観客にカタルシスを与えること」が主目的でもある「勧善懲悪エンタメ活劇」として、『トリガー』最終章が『ティガ』最終章と比して劣って見えてしまう箇所は、まずはその前段たる「クライシス描写のスケール感の小ささ」であろう。
 まがりなりにも世界規模・地球規模での危機が起きている! といった描写を入れることで、通常回とはケタ違いの危機を描いていた『ティガ』と比すれば、『トリガー』は日本の一部で局所的な危機が発生していた……といった程度の描写に収まってしまっている。


 世界各都市での戦闘特撮をたとえ点描でも挿入するのにも工数や予算もかかるのはわかる。しかし、本作の怪獣攻撃隊・GUTS-SELECT(ガッツ・セレクト)には海外支部の存在は描かれなかったものの、その上位組織はTPUこと地球平和同盟なのだから、昭和ウルトラシリーズ以来の伝統で世界各地に支部は存在するのだろう(笑)。であれば、


●『劇場版ウルトラマンX(エックス) きたぞ!われらのウルトラマン』(16年)終盤のように、あるいは『ウルトラマンZ(ゼット)』(20年)最終章(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210905/p1)ではセリフや静止画写真のみだったものの(笑)、世界各地で同時に昭和や平成期の怪獣たちが出現しているのだとか


●邪神メガロゾーアの周辺だけしか「闇」には包まれてはいなかったようにも見えるので(汗)、『ティガ』最終章や『ウルトラマンタロウ』ムルロア前後編に『ウルトラマンジード』の最強形態登場編のように、邪神が全身から噴き出した「暗雲」で日本のみならず世界・地球の全体が「闇」に覆われてしまった……


などといった、眼で見てもスケールが大きい危機が到来しているのだと子供でもわからせる点描、ワンカットの特撮映像――加えて、闇夜の世界各都市でも各支部の戦闘機・GUTSファルコンが「闇怪獣(やみ・かいじゅう)」とも交戦中など!――も描いてほしかったモノなのだ。


 逆に云うならば、筆者がイマ半だと思ったのはその点だけだったともいえるのだ。


 そーいう意味では、『ティガ』最終章に似ているのか否や? 子供の声援をドー見るのか? 子供の「光」と「スマイル」が同質か否かなぞは二次的なことである。そこが『トリガー』という「勧善懲悪エンタメ活劇」の成否に直結していたとも思われない――そもそも「光」も「スマイル」も「ポジティブ属性」であって「正義」という言葉の云い換えにすぎない――。


 もちろん、『ティガ』肯定派&否定派である年長マニア双方がソコを気にしてしまうのは心情的にはまぁわかる。
 しかし、それら「勧善懲悪エンタメ活劇」としての本質・成否・巧拙とは無関係でしかない些事がごときに、作品や事物の本質・構造・真善美などを虚心坦懐に究明・接近していくためのロジック(ロゴス)ではなく、枝葉末節についての言葉遊び・イチャモン的な珍妙なロジック(屁理屈)を、物事を改善したいという想いよりも論敵をツブしたいといった劣情の方が勝った礼節を欠いた物言いで延々と紡いでみせている行為などは、中世キリスト教的な神学論争・空理空論にしか見えないのだ(笑)。


 仮に『トリガー』最終章に問題点があったとしても、その根本原因は些末なディテールなどにはないだろう。


「巨悪が攻めてきた!」→「巨悪に立ち向かう孤高のヒロイズム!」→「押されている!」→「反撃!」→「勝利!」


といった一連である「エンタメ活劇」の普遍の大構造に即していて、各パーツがピタッとハマったかたちでウマく描けていたのか?
 「強敵感」や「絶望感」に、そこから来る「対比」「落差」の効果としての「逆転の快感」などを十全に描けていたのか?


 それらの成否についてをこそ、「作劇術」や「批評」はキモにすべきなのであって、その他についての議論なぞは事物の本質とは無関係な些末なことだとしか思えない。


 『トリガー』最終章の弱点とは、一にも二にも「通常回」とは異なるモノとしての「最終章」にふさわしいスケール感の少々の欠如。あるいは、ラスボス怪獣がもたらす被害の小ささだろう。
 スケールも大きい巨悪や絶望感あふれる危機の「絵図」を描いてこそ、そことの対比・落差の大きさから出る「逆転劇」の壮快さ、ラスボス怪獣をも上回るヒーローの強さ、もしくはサポーターとの共闘がもたらした勝利から来るカタルシスも強くなるからだ。
 そして、それこそが「勧善懲悪エンタメ活劇」の普遍的な骨格なのである――こう書くと、実に陳腐・凡庸なジャンルなのだけど(汗)――。


 子供たちの応援だの光&闇だのスマイルだのといった議論なぞは無意味だとまでは云わないものの、「テーマ」モドキを感じさせるための意匠・トッピング・スパイスに過ぎないのであって、「エンタメ活劇」の成否の理由を論じるにあたっては枝葉にすぎないのだ。


――しかし斯界(しかい)を見るに、作品の欠点を指摘するのにあたって、壮快な「勧善懲悪エンタメ活劇」を構築するための作劇術の巧拙や活劇としての深層構造などには眼を向けずに、擬似テーマ主義的に表層的な上っ面の劇中要素をダシに道徳的に論難して、作品論をただの通俗道徳論へと堕さしめてしまうような「重力の井戸」は、やはり今でもあまりにも強いことは痛感してしまう――


近作ウルトラシリーズにもあった最終章における弱点!


 ただまぁ、最終回にふさわしい大バトル&大逆転劇の巧拙における問題点は近作にも共通することであって、実は本作『トリガー』だけにかぎった話ではなかったのであった。


 個人的にはニュージェネ・ウルトラシリーズ各作の「最終回」は、『ウルトラマンギンガ』(13年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200819/p1)~『ウルトラマンオーブ』(16年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20170415/p1)や『ウルトラマンR/B(ルーブ)』(18年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20180826/p1)については、各作ごとの「通常編」よりもスケールアップされた大バトル劇で申し分がなかった。しかし、


●『ウルトラマンジード』(17年)最終章(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20180213/p1)では、ジードvsジードの父でもある黒くて悪いウルトラマンことウルトラマンベリアルと、ヒロインである刀剣女子vsベリアルと通じていたダンディーなSF作家先生との戦いが分離気味であり、後者がバトルよりも人間ドラマ寄りになることで活劇度がウスれてしまっている


●『ウルトラマンタイガ』(19年)については、作品自体にタテ糸や宿敵キャラである青黒色の悪いウルトラマンことウルトラマントレギアとの因縁要素がウスかったために、その最終章(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200112/p1)も取って付けたような少々の異物感がある


●『ウルトラマンZ』(20年)最終回(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210905/p1)なども、主人公青年&ヒロイン隊員の恋情確認の絶叫ドラマがキモなのであって、バトルとの一体化は辛うじて保たれてはいたモノの、純然たる攻守逆転劇にはなっていない。加えて、ベリアルの残骸細胞であったデビルスプリンターが意味を持ってこなかったり、宿敵たる寄生生命体・セレブロが倒すべき巨悪へと昇格していかなかったあたりにも不満


 ……などなど、各作自体の致命的な欠陥だとは云わないまでも、それぞれの作品に小さな不満を感じてはいたのだ。そして先にもふれた通りで、本作『トリガー』の最終展開や同作シリーズ後半にも上記の作品群に対するソレと同じ程度のレベルで、個人的にはいくつか小さな不満はあったということだ。


 よって、やはり1年間・全50話も放映されるTVシリーズとは異なり半年・全25話しかないTVシリーズなのだから、少々残念でも1話完結の単発ゲスト回などは極力排して、もっとメインストリームや基本設定それ自体にガッツリとカラんだエピソードだけを配置していくべきではなかっただろうか?――そのかぎりで単発話やゲスト話がほとんどなくって、基本設定や主要登場人物の人間関係を煮詰めることだけでストーリーを進行させていく近年の「仮面ライダー」シリーズはエラいと思うのだ――


ウルトラマンジード』シリーズ後半~最終章の弱点!


 『ウルトラマンジード』のシリーズ終盤回である、往年の『ウルトラセブン』(67年)#26に登場した巨大怪獣ことギエロン星獣が登場する#20「午前10時の怪鳥」なども、単発話としてはまぁ面白くはあったのだ。同作の実質のシリーズ構成を務めていた女性脚本家・三浦有為子が第1期ウルトラシリーズ的な乾いたSF的不条理感をも再現したかったのであろう気持ちはよくわかるし、それも成功していたとも思うのだ。
 しかし、そんなエピソードなぞよりも(汗)、『ジード』という作品においては、全宇宙に偏在している「幼年期放射」なる微弱電波とは何ぞや!?――その正体は宇宙サイズかつ宇宙の幼年期にまで拡散・稀釈化して、大宇宙自体を修復中であるウルトラマンキング!―― 「カレラン分子」とは何ぞや!?――それは生物の体内で幼年期放射を結晶化させて、リトルスターやウルトラカプセルとしての実体化を促進!―― 「分解酵素」とは何ぞや?――そのカレラン分子を無効にする物質!――
 一度は宇宙全体を破壊した「クライシス・インパクト」は6年前の出来事だったというのに、爆心地付近の病院で誕生した19才のヒロインの生誕にキングが干渉していたのはナゼなのか!?――光よりも速い速度で宇宙全体に拡大したことで、超光速タキオン粒子の原理でキングの身体は時間も逆行して、宇宙の幼年期の太古の時代にまで偏在していた!――
 ……といったところを、要人警護やアイテム争奪戦にカラめて、劇中設定も小ムズカしくないかたちの「絵」として説明すべきであっただろう。


ウルトラマンタイガ』シリーズ後半~最終章の弱点!


 『ウルトラマンタイガ』なども同様であった。外国人移民や難民問題を地球人の姿に変身しているゲスト宇宙人たちに仮託して描く方針を、子供向けヒーロー番組でやることを手放しで絶賛する気にはなれないモノの、その志の高さは認めよう。
 しかし、各話のドラマ性&テーマ性は高くはなってもやや陰気な作風になりがちであった以上は、主人公青年に憑依(ひょうい)していてコップのフチ(笑)などで余人には見えない小人姿でコミカルな挙動を見せていたユカイな新人ウルトラマン3人に、ゲストキャラの境遇に対する同情や論評などを加えさせるかたちでカラませて、作風を明るくしてバランスも取るべきではなかったか? 3人ウルトラマン各々の過去とゲストキャラとの境遇をオーバーラップさせるかたちで、彼らの肉付けももっと増量できたであろうし、子供たちにとってもその方がドラマ&テーマも伝わりやすかったことだろう。
 レギュラーかと思えばほとんど出なかった人間サイズの悪い着ぐるみ宇宙人集団・ヴィランギルドも、シリーズ途中で第3勢力からラスボス・トレギアの軍門に降るなどして目先の変化、敵のスケール感&攻防劇をも強調しておけば、かえって「移民・難民」問題もその説教臭がウスれてビビッドにイヤミなくそのテーマ性が浮かび上がってきたようにも思うのだ。


 タイガを昭和のウルトラマンタロウの息子だと設定、同作のラスボスであるウルトラマントレギアもタロウの旧友だとしたからには、タロウとトレギアが決別した理由を徐々に小出しに明かしていくようなタテ糸もあってしかるべきであった。
 トレギアも当初はタイガをヒヨっ子扱いにして愉快犯的に弄(もてあそ)んで、自身と戦うに足る強さを兼ね備えるまで余興的に待ったところで鼻っ柱を叩き折ることで嗜虐心を満たそうとはしたものの、予想を超えて強くなったことで焦ってホンキでツブしにかかってくる。終盤ではタロウが復活参戦するも苦戦。成長したタイガが最終的にトレギアを打倒してみせることで「父超えの物語」ともする。
 などといった、アリガチで常套的で先行きの予想が付いたとしても(笑)、カタルシスはあるビルドゥングスロマン(成長物語)としての構築をナゼに怠ってしまうのか? それらの要素が入っても、現今の「ライダー」「戦隊」と比すれば、まだまだ劇中要素は決して多くはないだろうに。


 関係各位の証言を読むに、かの実相寺昭雄(じっそうじ・あきお)カントクの会社・コダイ上がりの監督で、現在では円谷プロ側の雇われチーフ・プロデューサーを務めている北浦嗣巳(きたうら・つぐみ)の意向で、『タイガ』では昭和ウルトラシリーズ的な1話完結性を重視してしまったことのコレは弊害でもあっただろう。
 ここで玩具会社・バンダイなり円谷プロの若手スタッフの心ある誰かがダメ出しをして「オレがやる!」と手を挙げて主導権を握るべきでもあったのだ。最後は個別具体の特定個人の人格力・交渉力・声の大きさ、権力や権利の善用なのである。正しき者こそ強くあれ!


――『ウルトラギャラクシー大怪獣バトル』(07年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20080427/p1)~『ウルトラマンX』(15年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200405/p1)はバンダイから出向の岡崎聖・制作統括。『ウルトラマンオーブ』(16年)~『ウルトラマンR/B』(18年)は現場上がりの鶴田幸伸プロデューサーが主導していたことは各位の証言で明らかだ――


ウルトラマンZ』シリーズ後半~最終章の弱点!


 『ウルトラマンZ』においてもシリーズ中盤以降は、罪のないイイもん怪獣を倒してしまった主人公青年が悩みつづけたり、怪獣攻撃隊の巨大ロボット4号が異形のラスボス合体怪獣へと変化することで、行き過ぎた武力行使や科学に軍事力への警鐘ともしていた。テーマ的には一応は誠実だともいえるし、若手役者さんにとっても演技の振り幅を体験するという意味では有意義なことだったとは思うのだ――個人的には問題視すべきなのは「用途」なのであって、「技術」や巨大ロボットそれ自体が悪だとも見えかねない描写にはやや不満もあるのだが――。


 しかし、シリーズ前半同様にもっとおバカな熱血路線で、地球外生物セレブロに寄生されている怪獣攻撃隊の研究所に所属するカブラギ青年なども、若いオタク連中いわく近作の「円谷のヤベェ奴ら」同様に、キモいけど半分は笑ってしまう演技による「ネタキャラ」的な宿敵として(笑)、彼との攻防劇を主眼に描くべきではなかったか?
 『ウルトラマンX』のシリーズ後半ではダークサンダーエナジーにてゲスト怪獣が凶暴化するパターンが採用されていたが、『Z』後半でもカブラギ青年がデビルスプリンターを使ってゲスト怪獣を凶暴化させるべきではなかったか? 少なくともラスボス怪獣の組成にはデビルスプリンターをカラめるべきではなかったか?


 そうすれば最終回では、ベリアルの息子でシリーズ前半では客演も果たしたウルトラマンジードが! 怪獣攻撃隊のヘビクラ隊長とも因縁があるのでウルトラマンオーブが! ウルトラマンゼットの両脇を固めて、変身シーンのためだけに(笑)、1シーンのみ「中の人」も登場・変身して参戦させることでイベント性をさらに高めることも可能になったハズである!?――もちろん、ラスボス怪獣に対するトドメはゼットが刺すにしてもだ!――


 ……我ながら延々と「ボクの考えた最強の○○」といった類いを披瀝しており、お恥ずかしいかぎりではある(汗)。要は自分が好む作品については採点が甘くなるのは良くも悪くも人間の常だとしても、本作『トリガー』のみならず近作に対しても甘い採点に開き直ってしまったり、欠点や弱点は無視して一言も言及しなかったり、そも気付きもしない! などといった「お友だち内閣」的な言動ではアンフェアなのである。


ウルトラマントリガー』シリーズ後半~最終章の弱点!


 ここまで記してきた通り、『トリガー』も近作と同様の問題点を抱えているのだ。シリーズ前半には登場していたデビルスプリンターならぬ「闇怪獣」といったカテゴリーの怪獣たちが、シリーズ後半には登場しないのはいかがなモノか? それこそ後半では闇の3巨人がその闇の力で、着ぐるみは既成の怪獣の流用でも別名だけは「闇怪獣」(笑)へと凶暴化させて繰り出すべきではなかったか!?


 超古代文明の実態や滅亡の要因が判然とはしなかったことも、原典『ティガ』とも共通する欠点であった――『ティガ』も放映前のマニア誌などでは「超古代文明は怪獣や宇宙人の襲撃に遭っていた」という基本設定の紹介はあったのだが、映像本編ではそのようには言及されなかったのだ(汗)――。
 『ティガ』や『トリガー』とは世界観を異にする初代『ウルトラマン』(66年)に登場した、原典に準じて3億5千万年ならぬ3億5千年(笑)のむかしから復活した超古代怪獣アバラ&バニラスを登場させたこと自体はイイ。
 しかし、トリガーや闇の3巨人とも同じ3000万年前が出自だったとマイナーチェンジし、彼らこそが『トリガー』世界の超古代文明を滅亡させた元凶だったとして、そこで超古代文明の実態も明かしていった方がよかったのではあるまいか!?――むろん、3000万年前&3億余年前の文明双方を滅ぼしていたことにしてもイイ!――
 『ティガ』の代表的な悪役でもある人間型の悪の超人・キリエル人(びと)を『トリガー』にも登場させたこともよかったのだが、原典ではキリエル人も3000万年前の超古代文明よりも古い出自であったハズで、彼らにも往時の超古代文明の実態を語らせるべきではなかったか!?


 そこまでやってくれれば、「『トリガー』は『ティガ』をも余裕で超えることができていた!」と個人的には手放しで認定したくなったのに……。
――主人公青年が育てていた、ツボミのままのお花の名前は「ルルイエ」なので(クトゥルフ神話における超古代遺跡の名前で、転じて『ティガ』後日談映画での舞台とされた)、これを悪ではなく善の存在だとして終わらせてしまったあたりもイマ半だけど、まぁ許そう(笑)――


 なお、本作『トリガー』には前作のヒーロー・ウルトラマンゼット、ネット配信作品『ウルトラギャラクシーファイト』シリーズ(19年~・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200110/p1)で主役級で活躍しているウルトラマンリブット、本作の原典であるウルトラマンティガがゲスト出演するイベント編を3編も用意した。
 その試み自体はそれ以前のシリーズとは世界観を完全に刷新していた原典『ティガ』とも異なる手法なのだけど、筆者個人はヒーロー共演や異なる世界観の連結といった要素に、物語一般の無限の豊饒性や高揚感があると見ている者なので肯定的に捉えてはいる。


――その伝で、ウルトラシリーズ50周年記念作であった『ウルトラマンオーブ』なども、『オーブ』の前作『ウルトラマンX』における21世紀以降の先輩ウルトラマンたちが数話に一度はゲスト出演するというイベント要素を継承して、昭和や平成の先輩ウルトラマンたちが数話に一度はゲスト出演するような、アニバーサーリーにふさわしい作品を見せてほしかった。しかし、各種の人気投票企画でもご承知の通り、『オーブ』は先輩ウルトラマン登場がなくても若い特撮オタク間では高い人気を保っていることも認める――


1話完結を連続形式に変える者としてのライバルキャラ!


ウルトラマンゼロウルトラマンジードに対するウルトラマンベリアル
ウルトラマンオーブに対するジャグラスジャグラー
●古いところでは、キカイダーに対するハカイダー
ライオン丸に対するタイガージョー
●近年(?)では、ゴッドガンダムに対するデビルガンダム(笑)


 世界征服などという「大義」ではなくって、実はツンデレ――ツンツンと反発しているようでもデレデレと甘えた態度も取ること――な「恋情」や「私怨」が行動原理でもあることが恒例でもあるダークヒーローやライバルヒーローたちとも同様で、前々作『ウルトラマンタイガ』におけるウルトラマントレギアなどとは異なり、本作『トリガー』における悪のウルトラマンたちである闇の3巨人も「恋情」だったり第3勢力キャラ・イグニス青年とも「因縁」を持たせたり、今時の作品の通例でシリーズ途中ではお笑い担当として「ネタキャラ」化もしつつ、本作の背骨・一本線には成りえてはいたことで、作品を空中分解の危機からは救っていた。


 その意味では、往時の特撮マニア間では3度目・4度目の再登場や最終章ではラスボスとしての決戦も待望されていたのに、原典『ティガ』には実質2回しか登場しなかったキリエル人の扱いからは進歩して、同時期の90年代中盤の東映メタルヒーローで、


●主役ブルービートに対する宿敵ブラックビートが登場した『重甲ビーファイター』(95年)
●次世代ビーファイター3人に対して悪のビークラッシャー4鎧将(しがいしょう)が登場した『ビーファイターカブト』(96年)


 あるいは、マグマ星人がレギュラー敵として登場していた内山まもる先生による学年誌連載『ウルトラマンレオ』コミカライズ(74年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20061028/p1)の域に、2010年代以降のウルトラシリーズもようやくに到達したのだ! その伝で『トリガー』にかぎらず、ニュージェネ・ウルトラシリーズの方が平成ウルトラ3部作なぞよりも上回っているのだ! なぞというマッピング・見取り図で捉えている御仁は全然いないようだけど(笑)、ロートルな筆者はそのように『トリガー』も含めたここ10年ほどのウルトラシリーズを上位の作品としては捉えているのだ。


悪の女超人カルミラに見る、ジャンル近作での悪の救済!


 たとえば「大坂の陣」における淀殿(よどどの。幼名・茶々)は、2時間尺の映画やTV時代劇であれば単なる悪女にした方がブレずにキャラも立つ。しかし、1年間・全50話の大河ドラマであれば単なる悪女キャラだけでも飽きてくるので、愚かしくても豊臣家&息子・秀頼を守るために尽くした健気さも徐々に小出しにしていった方が、逆にキャラも立ってくるというモノなのだ。


 そのような尺数にも影響される作劇理論で(笑)、ティガとダイゴ隊員は別人であるハズなのに恋慕していた原典におけるカミーラの取って付けたような改心的な最期(さいご)よりも、トリガーダークに芽生えた良心の輪廻転生がケンゴ隊員であったとした本作における、トリガーの腕の中に抱かれての少々の「救い」もあるカルミラの最期の方がスムーズで、ナットクもできるものではあった。
 活劇的にはともかくドラマ面では妥当なあるべき決着なのだし、人間はその最期に看取ってくれる知己さえいれば、それだけで救われるモノでもあるのだろう……。
――個人的には昭和の芸人たちや名俳優・藤田まことなどの発言のように、飲んだくれてドブ川に落ちて最期は誰をも恨まず自らの滑稽さを笑いながら、明るくひとりで死んでいくダンディズムのカッコよさを世間はもっと賞揚してくれよ! なぞと思っていたりもするけれど(笑)――


 あくまでも「エンタメ活劇」としての成否をこのテの変身ヒーロー作品の批評では論じるべきだとは思うのだ。しかし、それを原理主義の域で捉える必要はないだろう。
 「悪」にはなりきれなかったジャグラスジャグラー同様に、悪の女ウルトラマンことカルミラに対しても、女児向けアニメ『美少女戦士セーラームーン』シリーズ(92年~・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20041105/p1)や『プリキュア』シリーズ(04年~・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20201227/p1)に、かの庵野秀明カントクの映画『キューティーハニー』実写版(04年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20041103/p1)やアメコミ洋画の最新作『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』(21年・日本公開22年)などとも同じく、チンピラ三下(さんした)はともかく幹部級の悪党には彼らのやむをえなかった事情なども描いて「心理的救済」や「成仏」をも与えてみせるといった作劇。
 「エンタメ活劇」だとはいっても、そーいった作劇も二次的には許容されてしかるべきではあろうし、盲目的で独善的ではあっても「恋情」を彼女の行動原理としてきた以上はこのように落とすべきでもあっただろう。
――たとえば良くも悪くも『ウルトラマンジード』の最終回などもこのパターンであって、本作『トリガー』最終回の作劇にも通じており、「闇」をも包摂するほどの器量の大きさを持った人格への成長・大慈悲の境地がテーマ的な着地点でもあったのだ――


活劇としてはともかく、あえて光と闇のテーマ性を解題!


 「光」と「闇」の力を併せ持ったという意味を持たせるために、そのデザインのカラーリングの一部に黒を加えただけのトリガートゥルースも、おそらくは円谷側での文芸設定的な意向などではないのだろう。往年の『ティガ』後日談映画などもそうだったのだろうが、バンダイ側が玩具の金型はそのままもしくは微改修で色彩だけを変えた商品点数を増やしたいというゴリ押しで、往年の「ティガダーク」ほかや近年の「黒い仮面ライダービルド」に「白骨の仮面ライダーセイバー」などとも同様に「販促ノルマ」として押しつけられたモノでもあったことは想像にかたくない(笑)。しかし、それすらも文芸的に劇中内にて必然性があるモノだとして昇華してみせるのが、作家たるべき者の務めなのである。


 本作では「闇」を拒絶して「光」だけを賞揚するといった展開は採らなかった。たしかに「正論」「理屈」だけでもヒトは救われないところがある。「人」個々人の内にもまたまぎれもなく怒りや恨みといった「闇」の劣情なども常に湧いてきてしまうモノでもある以上は、劣情にも寄り添って「共感」を示してこそ、当人も認められたと感じて癒やされたりして、そこを経過してこそはじめて改心できるのだという心理的カニズムもあるだろう。
――ただまぁ、筆者個人について自分語りをさせてもらえば、この生きにくい世の中を「理屈」で解釈して、手のひらの上に「縮図」として載せて、「価値判断」としては肯定はしなくても「事実認定」としてはナットクをすることで、擬似的に状況よりも上位に立って安心・救いを得ようとするタイプなので、他人なぞに寄り添ってもらって支えてもらいたいとは思わないけれど(笑)――


 「光」と「闇」の力を併せ持った最強形態・トリガートゥルース。そこにも文芸的な必然性を与えようとするならば、それはもうカルミラの「闇」をも包摂してみせる所業にしかなかったことであろう。ムリやりにテーマ面・文芸面を賞揚的に抽出してみせれば、そのあたりが一応の新機軸たりえていたとはいえるだろう。


――とはいえ、先ほどの発言とは矛盾するけど、「善」と「悪」とは対等な実在であるのか? 「善」(光)だけが真の実在で、「悪」(闇)とは実在ではなく善(光)の欠乏状態にすぎないと見るのか? 「光(源)」と「陽」(=光が当たっている側の物体の表面)と「陰」(=光が当たっていない側の物体の表面=SHADE)や「影」(=地面に映ったSHADOW)に「闇」といった5階層など、神学論争的には千年一日の議論ではあったりするという意味では決して新しくはなく、古来からの普遍的な問題設定なのかもしれないが――


『トリガー』における怪獣攻撃隊の面子をドー見るか!?


 加えて本作最終回では、怪獣攻撃隊の隊員たちが最終決戦にて単なるヒーローvsラスボスとの戦いの傍観者、バトルとドラマの分離も避けるべく、邪神の力の余波で生前の意識はナシで復活した闇の2巨人も怪獣攻撃隊の空中母艦内に人間サイズで出現して白兵戦! といったかたちで、隊員たちにも活躍の見せ場を与えていた。


 なお、ググってみると、彼ら隊員たちに漫画アニメ的・記号的なキャラ付けしかなされていないことには不満の声も上がっていたようだ。……そ、そーかなぁ。往年の『帰ってきたウルトラマン』(71年)や『ウルトラマンティガ』(96年)における怪獣攻撃隊のレギュラー隊員たちのようにリアルというよりナチュラルな人間描写もイイとは思うけど、子供向け番組一般の登場人物の造形法としては適度にマンガ的に誇張・極端化もされている方に筆者個人は軍配を上げるけれどもなぁ――100かゼロかという話ではなく、両方ともにあってイイという話ですヨ――。


 過去話やゲストキャラとのカラみなどでムリに肉付けなどしなくても、単体でキャラを立てることができていたという意味では、空中母艦・ナースデッセイ号を操艦する体育会系・テッシン隊員も、無人戦闘機を遠隔操縦するややエキセントリックな女性隊員・ヒマリも個人的にはスキだし評価もしている。


『トリガー』最終回における自己犠牲テーマもドー見る!?


 本作最終回では最終決戦後にもうひとつのクライマックスが設けられている。超エネルギーであるエタニティ・コアの暴走を鎮(しず)めるために、主人公青年がウルトラシリーズではともかく昭和の特撮やアニメではよくあった自己犠牲的な行為に及ぶのだ――このあたりは偶然なのだが、同時期に放映されていた『仮面ライダーセイバー』(21年)の最終回(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20220116/p1)とも通じるものがあった――。
 ただし、それを旧日本軍的な特攻だという批判を浴びせないようにするためにか(笑)、別れの悲壮感などは極力排されてはおり、むろん特攻死などにもなっていない。


 『セイバー』とは異なりエンディング主題歌が流れ終わったあとにも彼は生還しないで終わるのだけど(爆)、映像面ではエタニティ・コアの中で眠りながらも生存はしていることが明示されて明朗なエンドとなっている……。


――むろん、最終回の数話前から本作の中CMなどでも流されてきた最終回後の後日談映画『ウルトラマントリガー エピソードZ(ゼット)』(22年)の予告編映像にて彼は元気に活躍もしているので、近い未来に無事に生還することは確定済!(笑) 作品外での情報も駆使して、過剰に湿っぽい雰囲気を与えてしまう危険の回避もできていた――


総括:『トリガー』人気の高低を何でドー測定すべきか!?


 いろいろと書いてきたが、マニア間では大人気作となった直前作『ウルトラマンZ』と往年の人気作『ウルトラマンティガ』との板挟み、双方の批判の論拠は真逆で異なるものの、そこは自覚・整理されずにフワッとした野合となることで、『トリガー』はマニア間ではカナリな矢面に立つ作品となってしまったことは事実である――『ティガ』を未見の特撮マニアの方が今となっては多数派なのだが、むろん仮に実は少数派による批判であったのだとしても、それに対しても一定の尊重はされるべきではある――。


 ただし、それら自体がまた、あくまでも大きなお友だち・年長マニア間での評価にすぎない。子供間での人気の測り方もまた実にムズカしいものではあるけれど、玩具の売上高が一応の参考にはなるのだろう。
 今年2022年には判明する2021年度のウルトラシリーズの玩具売上高の発表を待って改めての参考ともしたい。筆者個人の作品評価と玩具売上(子供人気)が相反するものであった場合でも、それはそれで虚心坦懐に受け容れて、本作に対する見解も釈明・修正していきたいとは思うのだ。
――「謝ったら負け病」の人間なぞではないので(笑)。もちろん、作品は不人気でも玩具単独の魅力だけで売上高が上がるといったこともゼロではないのだろうけど、そのようなこともまた滅多にはないであろう――


追伸


 本作『トリガー』の次作は、『ウルトラマンティガ』の次作である『ウルトラマンダイナ』(97年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19971215/p1)がフィーチャーされることがすでに明かされている。『ティガ』主演のジャニーズ・長野博とは異なり、変身前の「中の人」であるつるの剛士(つるの・たけし)のギャラは相対的には安いであろうし、客寄せパンダ的にも喜んで大いに協力してくれそうではある。
 この流れで前作『ウルトラマンZ』までの作品が次々と順番に毎年リブートされるなどというようなことはないだろう。しかし、同じく「平成ウルトラ3部作」である『ティガ』と『ダイナ』はリブートされたのに、残りの『ウルトラマンガイア』(98年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19981206/p1)だけがリブートされないとなると、それはそれでかわいそうな気がしてくる。よって、『ガイア』まではリブートしてあげてもイイのでは?(笑)


追伸2


 「鵜の目 鷹の目(うのめ・たかのめ)」で作品の細部をチェックしていて、個人個人の見識としてはともかく、結果的に集合知といったモノが浮かび上がってくる巨大掲示板まとめサイトなどでの本編画像検証によれば、ウルトラマントリガーが第4形態・グリッタートリガーエタニティに強化変身した2021年10月9日(土)に放映された#12「三千万年の奇跡」の撮影日が、ヒロイン・ユナ隊員のデジタル腕時計の拡大映像(笑)にて判明している。少なくとも同話は2021年5月22日(土)に撮影されていたというのだ。
 よって、放映の約5ヶ月前には撮影がなされていたことになる。それにも関わらず、本作では3本の総集編が入った末に通常は年内で終わる放映が翌年1月に3話分もハミ出していた。


 昭和~90年代後半の平成ウルトラ3部作までの放映日ギリギリ納品の時代とは異なり、その反省に立って『ウルトラマンコスモス』(01年)以降は放映から半年ほどは先行して撮影を済ませていることは、往時からのマニア向け書籍などでのスタッフの証言でも明かされている。2010年代以降のニュージェネ・ウルトラシリーズも同様であるから、つまり『トリガー』も撮影自体は特に遅延していたとは云えないことになる。
 ニュージェネ以降は製作費を削減する大前提もあって、「本編」と「特撮」の2班体制はなくなりスタッフは「本編」「特撮」の兼任ともなっている――スタッフ・インタビューによると、コレによってやむをえずカナリの早撮りとなっているようだ――。よって、「本編」は撮影が順調ではあったものの「特撮」だけが遅延していたとも考えにくい。


 ということは、物理的な実体がある在り物・現物――役者・風景・ヒーロー・怪獣着ぐるみなど――の撮影さえできれば2話1組にて2週間ほどで撮了となるのであろう「撮影現場」側の都合ではなく、「ポスプロ」(ポスト・プロダクション=後処理=CGや合成)チーム側での不都合・遅延などがあったのであろうか?――CGや合成も予算はともかく一定以上のクオリティーを確保するためには日数を要するのだ(汗)――


 しかし、ご存じの通り『トリガー』においては、全話に登場するゲスト怪獣をすべてソフビ人形化するというバンダイ側の目論見もあった。そう考えると、多種にわたるソフビ人形の中国での製造や輸入に国内玩具店への配備などの問題で、ゲスト怪獣が登場する放映日に合わせたかたちで発売することが困難であったために総集編が3本も挿入されて、その分が翌年放映分に繰り越しになったといったことなのであろうか?――放映に連動したタイミングで都度都度に新発売にしていった方が、やはり売上もイイそうなので(笑)――


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2022年2月号』(22年2月20日発行)~『仮面特攻隊2022年号』(22年8月13日発行)所収『ウルトラマントリガー』最終回合評2より抜粋)


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ウルトラマントリガー&全ウルトラヒーロー ひみつ大図鑑 (講談社 Mook(テレビマガジン))

『トリガー』終章! 新世代ウルトラ各作も含めて総括!
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『トリガー』最終回総括! 『デッカー』にトリガー客演記念!
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『トリガー』最終回総括 ~カルミラが全ウルトラ怪獣大投票で46位記念!
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『トリガー』最終回総括! 『デッカー』総集編で「トリガー」最終回紹介記念!
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ウルトラマントリガー中盤各話評 ~Z・リブット・ティガ客演! 『ティガ』とは似て非なる並行世界を舞台とした後日談と判明!

(2022年3月27日(日)UP)
『ウルトラマントリガー』前半総括 ~『ティガ』らしさは看板だけ!? 後日談かつリメイク! 昭和・Z・ギャラファイともリンク!
『ウルトラマントリガー』最終回 ~新世代ウルトラ各作終章の出来も含めて賛否総括! 光と闇を包摂する真理!?
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 映画『ウルトラマントリガー エピソードZ』(22年)が公開記念! とカコつけて……。『ウルトラマントリガー』中盤各話評をアップ!


ウルトラマントリガー』中盤各話評 ~Z・リブット・ティガ客演! 『ティガ』とは似て非なる並行世界を舞台とした変型後日談!

(文・中村達彦)
(2021年12月27日脱稿)

#8~13 ウルトラマンZとの共闘、続いて息つがせぬ急展開


第8話「繁殖する侵略」


 前話(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20211021/p1)に続いて防衛チーム・GUTS-SELECT(ガッツ・セレクト)の空飛ぶ母艦・ナースデッセイ号に、平行世界から来たウルトラマンZことハルキ青年が滞在していて、トリガーことケンゴ隊員はアキト隊員の横で事情を聞いていた。その頃、地上では人々が謎のハッキングに襲われていた。スマホや車が次々に異常を来たす。被害は広がりナースデッセイにも及ぶ。ケンゴやアキト、ハルキや宇宙のお宝ハンター・イグニスも加わり、GUTS-SELECT一丸となって対処する。
 犯人は三面怪人ダダで、ナースデッセイを乗っ取り、ナースキャノンを発射する。更に自らの姿を見せて隊員たちを翻弄する。GUTS-SELECT隊員たちはハッキングに立ち向かう。更にダダは地上に倒れたままになっている、前作『ウルトラマンZ』(2020年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200723/p1)の防衛チームの巨大ロボット・キングジョーストレイジカスタムを乗っ取り暴れさせる。ハルキはZに、ケンゴはトリガーに変身する。アキト隊員がZの変身アイテムを研究して作ったハイパーキーにより、Zはアルファエッジ・ベータスマッシュ・ガンマフューチャー・デルタライズクローにタイプチェンジして戦う。
 ダダの操るキングジョーストレイジカスタムはZやトリガーを苦しめるが、ハッキングを排したナースデッセイの援護も加わり、Zのゼスティウム光線とトリガーのゼベリオン光線で撃破される。
 戦いのあと、ZとハルキはZの喋る武器・べリアロクの力で元の世界へ帰ることに。アキトとケンゴに見送られ、キングジョーストレイジカスタムの残骸と共に帰るZ。しかしダダとの戦いで超古代の巫女ユザレの姿を見たことで、ユナ隊員は自らの秘密に混乱するのであった。


 前回同様、脚本は小柳啓伍、監督は田口清隆。ダダは初代『ウルトラマン』(1966年)以来ウルトラシリーズに何度も登場しているが、本作に登場したダダは、昭和ウルトラシリーズとは世界観を別にした『ウルトラマンパワード』(1993年)版ダダである。パワードに登場したダダはオリジナルとは異なりコンピューター生命体の設定で、独自の生態を持つ。初代『ウルトラマン』のリメイクである『ウルトラマンパワード』でコンピューター生命体で登場したダダはオリジナルとは別の不気味さがあり、『ウルトラマンパワード』は『ウルトラマン』と比べていろいろと失敗しているが、ダダ編については成功していたと思う。『ウルトラマンパワード』ダダ編ラストでもダダは生きていることを匂わせていたが、本話に繋がっているのだろうか?
 ナースデッセイにハッキングするのを、GUTS-SELECTの隊員たちが総出で阻止しようとするが、部外者であるハルキやイグニスも加わり、力を合わせるのは第6話を思い起こさせる。それぞれに頑張るテッシン隊員やタツミ隊長、メトロン星人マルゥル隊員やアキトやユナ。いつもボソッと突っ込み役をするヒマリ隊員がアクションゲームのノリで中枢ハッキングを阻止する。コンピューターへの侵入シーンでは往年の円谷プロ製作で電脳空間で戦う特撮ヒーロー『電光超人グリッドマン』(1993年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20181125/p1)がコンピューターワールドへ突入する際と同じような映像を再現。
 ダダがキングジョーストレイジカスタムにハッキングし、トリガーやZの強敵となる。その強さは半端ない。『ウルトラマンZ』の時より強いような。更にダダはハッキングを重ねて、停車している車が宙を乱舞してウルトラマンを襲う。それはハッキングではなく超能力っていうんじゃあ(笑)。
 Zもハイパーキーの力で次々にタイプチェンジしていくが、アキト隊員はよくZのタイプチェンジの能力までキーにデザインできたなぁ。Zは元の世界へ帰れなくて今後はトリガーとしばらく共闘するのかと思ったら、べリアロクの力で戻れることが判明。なあんだ。あっさりしている。アキトとケンゴに頭を下げて帰っていくのは『Z』最終回(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210905/p1)を連想させる。最初から最後までアキトは嫌な顔をしているが、実際はそれほどケンゴのことを嫌っておらず、ハルキにも良い相棒だと見透かされている。前年度の『ウルトラマンZ』ではウルトラマンゼロウルトラマンジード・ウルトラマンエースの後輩だった半人前のZとハルキが、1年を経て今回は先輩に。実に感慨深い。


第9話「あの日の翼」


 久しぶりにナースデッセイを訪れた、シズマ財団や地球平和同盟・TPUを設立したシズマ会長。娘のユナ隊員の18歳の誕生日が目前に迫っていたが、シズマは今までの調査で解かったことを隊員たちに知らせる。そしてユナを伴って山中へ。山中の格納庫に整備されていたのは『ウルトラマンティガ』(1996年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19961201/p1)に登場した戦闘機・ガッツウイング。その機体を前に打ち明ける。自分は別の世界から来た人間で、元の世界にもティガというウルトラマンがいたことを。シズマの告白はケンゴらGUTS-SELECT面々も知ることに。そしてこの世界で出会ったユナの母親は、太古にいた巫女ユザレの末裔であるとも語られ、シズマは彼女の遺した指輪をユナに渡すのであった。
 そこへ太古にユザレが石化させて長い眠りについていた石化闇魔獣ガーゴルゴンが目覚めて襲いかかってくる。ケンゴやアキトが駆けつけシズマやユナを守り、ナースデッセイからファルコンが発進する。ガーゴルゴンにファルコンは撃ち落されるが地上に墜落寸前、トリガーに助けられる。シズマもガッツウイングを遠隔操作で操りガーゴルゴンを攻撃する。ユナは自らに呼びかけ、ユザレの力を目覚めさせ、ガーゴルゴンの攻撃を跳ね返す。トリガーはガッツウイングと力を合わせ、専用武器サークルアームズによるゼペリオンソードフィニッシュでガーゴルゴンを撃破する。戦いのあと、ナースデッセイ内の指令室でユナの誕生パーティーが行われた。


 脚本は林壮太郎、監督は辻本貴則。同時期にNHKで放映された特撮ヒーロー『超速パラヒーロー ガンディーン』(2021年)から続いての参加。ガーゴルゴンは『ウルトラマンX』(2015年)7話(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200405/p1)が初登場だが、辻本氏は同話も手がけており、ガーゴルゴンの着ぐるみは5年以上も使い倒されて、今回の話で再登場した時はボロボロだったとか。
 久しぶりに出演のシズマ役・宅麻伸(たくま・しん)。ユナに自分の出自を明かす姿や自らガッツウイングを操縦してガーゴルゴンを迎撃する姿はシブい。前年度の『ウルトラマンZ』では初老のメカ整備員・パコさんを演じた橋爪淳(はしづめ・じゅん)が印象的であったが、同じように年輪を重ねた宅麻の重厚な演技も印象的。宅間自身も特撮作品ではかつて『ゴジラ』(1984年)と『ゴジラ×メカゴジラ』(2002年)に出演している。
 シズマが自らの正体を告白し、『ウルトラマンティガ』との関わりも平行世界の関係だったことが明かされた。元の世界でTPC局員だったというが、『ティガ』の防衛チーム・GUTSのイルマ隊長の腹心の部下でティガに変身するダイゴ隊員のことも知っていたとかだったら面白い。『ウルトラマンティガ』の一応の続編だと納得させられた。ガッツウイングで単身この世界へ来てからは、シズマ財団や地球平和同盟・TPUを築くには並々ならぬ努力が必要だったはずだ。彼を支えたユナの母・ユリカを演じる逢沢りなは、『炎神(エンジン)戦隊ゴーオンジャー』(2008年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20080824/p1)でゴーオンイエロー・楼山早輝(ろうやま・さき)を演じていた(彼女の口癖も「スマイル、スマイル」だった・笑)。彼女は少ししか登場しなかったが、また出てほしい。
 ガッツウイング、山中からの発進シーンやガーゴルゴンへの攻撃シーン、怪獣の攻撃で機体が火を噴くも飛行しながら湖の水で消火して、ガーゴルゴンの眼を潰し、最後にトリガーと並んで飛行するなど、カッコいいカットが複数撮られている。ファルコンはいかにもCGぽいが、ガッツウイングは同じ無人機ながら、地上で遠隔操作する宅麻の演技も加わって、CGを感じさせない実在的な質感がある。
 『ティガ』絡みのシーンには『ウルトラマンティガ』のBGMが使われているし、シズマの回想ではティガの雄姿が登場し、かつて『ティガ』にハマったファンを感激させる回でもある。
 ラスト、ユナの誕生祝いにアキトがプレゼントしたものはスタンガン! ヒマリじゃなくともそのセンスのなさは笑ってしまう。


第10話「揺れるココロ」


 第5話でユナに頬を引っぱたかれた闇の巨人ダーゴンはユナのことが気がかりになる。そして根城の深海から人間サイズにミクロ化して地上へ。高校に通う彼女のあとをつけるが、ダーゴンのユナへの気持ちをイグニスは「恋」だと指摘して入れ知恵をする。一方、ナースデッセイ内に収蔵してある太古の石画の一部が剥がれ落ちて新たな絵が現われた。加えて地底に怪獣の気配が。その解析でエタニティコアなる超エネルギーの存在を知る。
 アキトに入った屋外のユナからのTV電話、その背後にはダーゴンの姿が。急ぎユナの許へ駆けつけるケンゴとアキト。ダーゴンはユナに壁ドン・ハグ・ナデナデと続け(笑)、自分の恋する気持ちを確かめようとする。嫌がって強気で対するユナは前話でアキトからプレゼントされたスタンガンで対する。到着した2人。ケンゴはダーゴンと戦い、ダーゴンは超古代にトリガーと共に活動していたことを語る。
 悩むダーゴンの地団駄から、変身怪獣ザラガスが出現して暴れ出す。ファルコンが攻撃、ケンゴもトリガーに変身するが、ザラガスは攻撃を受ければその分強くなり、甲羅を外し、全身に生えた突起から光線を放つ!
 ユナを守ってダーゴンに対するアキト。だが戦いの最中、ザラガスの下敷きになりそうになったアキトとユナをダーゴンが助けて、そのことから交流が生まれる。ファルコンから液体窒素を撃ち込まれたザラガスへ、赤いパワータイプに変身したトリガーの必殺技デラシウム光流が発射される。
 戦いが終わり、ダーゴンは人間が侮(あなど)れない相手であること、ユナにアキトが恋していることを解するも、そのまま去っていく。その頃、石板の壁画には3巨人と共にウルトラマンの姿も現れる……。


 脚本は林壮太郎、監督は辻本貴則。共に前話と同じで、両者は2010年代以降のウルトラシリーズを支え続けてきた。初代『ウルトラマン』第36話に初登場のザラガスも登場する。
 ユナに引っぱたかれたダーゴンが思い悩み、遂にストーカーと化して尾行する「まさか?」の話。第5話を受けたものだが、こういう展開になろうとは。ウルトラシリーズ初のエピソードだ。イグニスは「この世の生きとし生ける者は恋を重ねて強くなる」と言い、真面目に受け止めるダーゴン。発端はイグニスだが、騒動の途中で「知らねえっと」と逃げ出している(笑)。ダーゴンは真剣だったのだが……。
 その間、2人とも他の人に見られていないのか、イグナスとダーゴンは友好的に話しているが、別種族同士である2人は本当は何語で会話しているのだろうか? その超能力で互いに日本語で会話できているのだろうか? ダーゴンはユナに接触して壁ドン・ハグ・ナデナデを行うが行動は空回りして、視聴者が指をさして笑ってしまうツッコミどころが幾つも。前話の誕生パーティーでアキトからプレゼントされたスタンガンをユナが使い、ちょうど到着したケンゴが突っ込んでいる。
 だがギャグ回と見せておいて、後半では真面目な話になっていく。「誰かを守りたいという気持ちが私たちを動かす」と答えるユナ。そして闇の巨人ダーゴンも「生きとし生けるものは恋を重ねて強くなる。その強さとはすなわち、誰かを守りたいという強い思い。弱い人間を侮るべきではない」と教訓的なことを悟って、彼の光落ちの可能性も示唆する。人間との間にコミュニケーションが形成されたのだ。反面、ダーゴンはアキトもユナのことが好きなことを指摘し、すぐ横で聞いていたユナが嬉しそうにしている。
 ユナは高校へ通いながらGUTS-SELECTの隊員をしていると判明。二足の草鞋だが両立できるのか? 高校に怪獣が出てくる話も観てみたい気も。
 その頭上でのトリガーとザラガスのバトルもよい。地上の人工物を珍しそうにいじったり、『ウルトラマンギンガ』(2013年)出演回(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200825/p1)で初披露した第3形態から『シン・ゴジラ』(2016年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20160824/p1)のように全身から生えたトゲで放電攻撃するなど、ザラガスは実に怪獣らしい挙動をしている。そして町のセットも細部まで作りこまれていた。戦いで破壊されるマンションの室内ミニチュアも、ついさっきまで人がいたような生活感がある。


第11話「光と闇の邂逅」


 冒頭から突如始まった闇の女巨人・カルミラとトリガーの戦い。カルミラは昔トリガーと親しかったと告げながら、彼女専用武器の鞭をふるったあと、呪術で拘束。ケンゴは抵抗するが、超古代の時代へ跳ばされてしまう。アキトやユナはダーゴンに、ファルコンはヒュドラムに阻まれて見守るしかない。3000万年前の過去に飛ばされたケンゴの前に、超古代文明を破壊している闇の3巨人ともう1人の闇黒勇士・トリガーダークの姿、彼らに抗する地球星警護団の生き残りである超古代の巫女・ユザレの姿もあった。
 ケンゴはユザレと共に逃げ、巨人たちが宇宙誕生のビッグバンを起こせるほどの超エネルギー・エタニティコアを狙っていることを知る。次第にケンゴの明るさに打ち解けるユザレ。そこへ追ってきたトリガーダークがユザレをさらっていく。
 その頃、ケンゴがいなくなった現在の世界では、アキトが途方に暮れていた。ケンゴが落とした変身アイテム・GUTSスパークレンスを拾うが、直後にトリガーがいた場所にエネルギー反応が。
 超古代の世界では、さらわれたユザレが闇の3巨人のところへ。遺跡の中にあったゲートを開いて中へと入る巨人たち。エタニティコアを手に入れることで、闇の一族だけの宇宙を作ることを目論んでいたのだ。駆けつけたケンゴに変身アイテム・スパークレンスを渡すユザレ。ユザレはケンゴをルルイエ(希望)と呼ぶ。ケンゴは先にエタニティコアへ触れようとするトリガーダークへ呼びかけながら、スパークレンスをかざす。トリガーダークのインナースペース(精神世界)の中で向かい合うケンゴと人間サイズのトリガーダーク。ケンゴの説得に耳を貸さず殴りつけてくるトリガーダーク。一方、現在の世界でもゲンゴが分離してしまったトリガーの身体が元のトリガーダークに変化して出現した。その姿にアキトはユナのいる前でケンゴの名を叫ぶ。


 脚本は本作メインライターのハヤシナオキ、監督は武居正能。ハヤシは初のウルトラシリーズ参加である。唐突に序盤から3巨人とトリガーの戦いが始まり、超古代の世界へ飛ばされるケンゴ、トリガーダークの出現と急展開だ。
 過去のウルトラシリーズでも、主人公が試練を与えられ、それを克服した時、ウルトラマンは新たな力を得てパワーアップするというイベントエピソードは、ウルトラマンに限らず古今東西のヒーローもののお決まりのパターン。今回と次回の話はそれなのだが、そのストーリーはマンネリ・ワンパターンだと思わせず、いつも引き込まれる。ラストは決まっているが見逃せないのだ。
 前回はギャグ色が強いエピソードだったが、今回はそれを感じさせない。序盤から前振りもギャグもなく、リアルにカルミラとの戦いから始まる。トリガーが元・闇の3巨人の仲間である悪のウルトラマンであったことは、原典のウルトラマンティガもTV放映後に公開された後日談の映画『ウルトラマンティガ THE FINAL ODYSSEY』(2000年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19961209/p1)では同様の設定とされていたし、本作でもすでに示唆されていたことだ。今回もカルミラとは親しい男女間の機微も含んだ関係にあったと具体的に描かれている(カルミラは愛しいトリガーダークに最初にエタニティコアの力に触れさせようと譲っている)。トリガーが改心し、人間の味方になるというストーリー展開は容易に想像できるが、それは次話のレビューにて。
 「ルルイエ」は20世紀初頭の小説家・ラヴクラフトが考案して引用も自由としたクトゥルフ神話に登場する、太平洋にある海没都市の名。『ウルトラマンティガ THE FINAL ODYSSEY』の舞台となった海底遺跡の名前にも引用されているが、本作では「希望」という意味の言葉で、ケンゴが育てている花の名前にもなっている。ということは、ただの花ではなく希望の存在でもなく、危険な存在である可能性もあるのだろうか?
 今までの話数では比較的大人しくしていたカルミラが、本話では序盤からトリガーを圧倒したが、そのための伏線や準備を進めている場面をそれまでの話数にも入れてほしかった。ユザレ役はその子孫であるユナ役の豊田ルナによる一人二役なのだが、ユザレの白い髪はかつらであると一目瞭然。このユナもケンゴの正体がトリガーだと知ってしまった。他の3巨人とはデザインラインがかなり異なるトリガーダーク。鎧をまとったような姿は強そうで頑丈そうな悪のウルトラマンであることを強調しているが、3巨人と一緒にいるのはなにか不自然。一言も喋らないのも不自然だが、声優などに喋らせてしまうとケンゴの前世ではなく独立した別人格に見えてしまうことを避けるための便宜的な作劇なのだろう。


第12話「三千万年の奇跡」


 現代の世界で、ケンゴの正体がトリガーであることをユナに打ち明けるアキト。一方、ケンゴが分離したトリガーの身体が変化した現代のトリガーダークも暴れ出す。ファルコンやナースデッセイが向かうが、太刀打ちできない。
 超古代の世界では、ケンゴとトリガーダークはしばらく殴り合うが、涙ながらのケンゴの呼びかけにトリガーダークは応えて手を差し出した。そして2人は一体化、ウルトラマントリガーのマルチタイプ・スカイタイプ・パワータイプの3体に分離して3巨人と戦う。苦戦するも、ユザレからエタニティコアを受け取って、そのエネルギーで3巨人を石化して封印する。力を使い果たして消滅するユザレ。そのままトリガーは火星へ。ケンゴも時空を飛び越え、現代の世界へ戻る。
 ケンゴの姿に戻ったあと、アキトとユナに声をかけ、トリガーに再変身。元は現代のトリガーの抜け殻であるトリガーダークや3巨人と乱戦になる。トリガーダークに圧倒されるトリガー、そこへユザレからエタニティコアを受け取ったユナが、それをトリガーへ。「宇宙を照らす超古代の光!」の掛け声とともにケンゴは新たなトリガーの姿・グリッタートリガーエタニティに。そのパワーに退却する3巨人。トリガーダークとグリッタートリガーエタニティの一騎打ちになる。ケンゴは新たな力をうまく制御できないが、新たな剣型の武器・グリッターブレイドから放つ必殺光線・エタニティゼラデスでトリガーダークを撃破する!
 戦いが終わり、よろめきながら仲間の元へ戻るケンゴ。受け入れるアキトとユナ。だが空中に漂うトリガーダークの残留エネルギーをその戦いを目撃していたイグニスは体内に吸収していた……。


 前話に続いて脚本はハヤシナオキ、監督は武居正能。トリガーが人間の味方になった超古代での経緯と、次いで新たな力を手にする物語が明かされた。超古代の世界でケンゴがトリガーダークと殴り合い、やがて2人は理解し合い2人は1人のトリガーになる。いささか解かりにくいが、おそらく悪の所業を繰り返すトリガーダークの心のどこかで「これでいいのか?」と疑問が起こり、エアニティコアが存在する深淵に来た時には、その疑念も大きくなっていたのだろう。ケンゴは超古代のトリガーダークの心に芽生えた「良心」の部分だけが遥か未来に輪廻転生した存在だったのだ。しかし、向かい合う超古代のトリガーダークもいつしか3000万年未来のケンゴの姿に。2人は同一存在だということを象徴させるための映像演出だろうが、超古代の石板にも変身アイテムを掲げる青年の姿が描かれているので、超古代にトリガーダークが人間に逆変身した姿自体がケンゴと同じ姿だったということか?
 ケンゴを見守ってきたアキトが、暴れているトリガーダークを見上げながらケンゴへの本心を語るが、彼が口では「ウザい」と言っていても、ケンゴの「みんなの笑顔を守りたい」と言う姿に共感し、いつしか彼のバディ(相棒)となっていた。シリーズ後半もその人間関係が続くのだろう。ユナも本話でケンゴの正体がトリガーだと知ったことで各話の話運びも少々変わってくるだろう。そしてイグニスはトリガーダークの力に取り込まれた。今まで一応味方でギャグキャラであったが、これから違うポジションになるのであろうか?
 超古代の世界のトリガーダークと現代に現われたトリガーダークは、それぞれ異なるといってよいのか、それとも同一人物といってよいのか? いろいろ「?」があって深読みしがいがあるが、怪獣博士タイプの子供やマニア達の議論百出なども狙ったものだろう。
 強化形態のグリッタートリガーエタニティはトリガーともデザインは異なり、これまでのウルトラマン新バージョンのパターンとは違う。体色もオレンジ色のカラー部分が多く、3つのカラータイマーで胸部が構成されているがデザインはシンプルで、強化形態に付きものの強そうに見せる突起物などはなく、カラーリングもそれほど派手ではないデザインになっており、これはこれで親しめる。


第13話「狙われた隊長 ~マルゥル探偵の事件簿~」


 タツミ隊長が行方不明に、メトロン星人マルゥル隊員は調査を開始。テッシン隊員が怪しいとニラむが、実はタツミは会議で外に行っていたのであった。脚本は2010年代のニュージェネレーションウルトラマンシリーズの総集編を手がけてきた足木淳一郎、監督は内田直之。総集編+ギャグ回。
 大人気漫画『名探偵コナン』(1994年~)や『金田一少年の事件簿』(1992年~)、大人気TVドラマ『古畑任三郎(ふるはた・にんざぶろう)』(1994年)や『トリック』(2000年)、映画『男はつらいよ』(1969~95年)、古典『少年探偵団』(1936年)などのパロディが多数入っているが、高齢マニア向けのギャグにとどまらず、元ネタがわからなくても子供でも楽しめる賑やかなギャグに仕上がっている。メトロン星人繋がりで『ウルトラマンマックス』(2005年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060318/p1)や『ウルトラギャラクシー大怪獣バトル NEVER ENDING ODYSSEY』(2008年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100128/p1)にも出てきた缶飲料の眼兎龍茶(メトロン茶)やちゃぶ台も登場し、メトロンが初登場した『ウルトラセブン』(1967年)8話の舞台となった北川町という単語も出て来る。マルゥルの声を演じるM・A・Oが歌う挿入歌「メトロン・サンセット」も流れている。
 反面、まだケンゴがグリッタートリガーエタニティを使いこなせないことを明かしたり、イグニスがアキトの研究室から変身アイテム・GUTSスパークレンスの試作品を盗み出すなど、今後のシリーズ後半戦の伏線も入れてある。


#14~15 急展開続く息つがせぬストーリー


第14話「黄金の脅威」


 ケンゴは光の化身として戦うことを強く決意する。一方、深海でカルミラたち闇の3巨人は、トリガーを裏切らせたケンゴに怒りをぶつけるが、そこへ金色の超人アブソリュートディアボロとアブソリュート・タルタロスが出現。自分たちがトリガーからエタニティコアを手に入れることを黙認してほしいと言う。一巡して認めるカルミラ。ナースデッセイでは、アキトはナースデッセイ強化が必要だが膨大なエネルギーがいると言う。そこへ町にディアボロが送り込んだ機械怪獣ディアボリックが出現する。地上で戦うアキトとユナ。ケンゴもトリガーに変身する。
 猛攻、ディアボリックの火力にトリガーは苦戦するが、グリッタートリガーエタニティになり撃破する。だが未だにケンゴは新しい力をコントロールできていなかった。心配するユナ。イグニスはアキトに接触、ディアボリックを差し向けたアブソリューティアンについての情報を、失敬したスパークレンスの見返りに提供するのであった。
 ナースデッセイ内でディアボリックとの戦いで負った傷の手当てをするケンゴ。今度はディアボロが町に出現。すぐさまケンゴはユナの制止を振り切って変身。トリガーは赤色のパワータイプで立ち向かうが、圧倒的なディアボロのパワーに負け、エタニティのパワーを吸い取られるばかり。
 そこへ頭上からディアボロ目掛けて攻撃が。別の宇宙から来たウルトラマンリブットであった! クリスタルの盾と光の槍でディアボロを翻弄し退却させる。助けられたケンゴとユナの前にリブットの人間体の青年が現われた。同じ頃、アキトはタツミ隊長にナースデッセイの真の力について提案していた。


 脚本はシリーズ構成を務める足木淳一郎、監督は本作メイン監督の坂本浩一。坂本監督は第1~第3話も監督を務め、ここ10年ほど仮面ライダースーパー戦隊シリーズも手がけており、アクション演出に秀でており、ヒーロー共闘ではそれを意識したうまいカットを撮る。『ウルトラギャラクシーファイト』シリーズ(2019年~・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200110/p1)の監督でもある。足木も『ウルトラギャラクシーファイト』シリーズの脚本を手がけている。
 本話からシリーズ後半に突入。例年通り、OPとEDは歌詞や映像が変更。EDはケンゴ・アキト・ユナが歌っているが、そのメロディーはうら悲しい。これからの展開を反映させているのか? ケンゴがトリガーを裏切らせたと怒るカルミラ。だが、いつケンゴのフルネームを知ったのであろうか?(笑)
 訪れるアブソリュートディアボロとアブソリュート・タルタロス。後者は『ウルトラギャラクシーファイト 大いなる陰謀』(2020年)からの客演で、エタニティコアを手に入れるため、3巨人に自分たちの行動を黙認するように言うが、礼儀正しいと言うか、共闘ものの悪の組織同士のツボを衝いていると言うか。だが最初にディアボリックが町を襲った時、ディアボロも一緒に来てトリガーを倒してしまえば良かったのに……などと言ってはいけない。この手の作品のお約束である。ディアボリックは『劇場版ウルトラマンオーブ 絆の力、おかりします!』(2017年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200406/p1)や『ウルトラマンタイガ』(2019年)第4話(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190811/p1)にも登場した。
 ケンゴが帰還した時、トリガー同様に肩をケガしていると気が付くタツミ隊長だが、これが今後の伏線になるのかどうか。ケンゴが新しい力を使いこなせないことに焦り悩む姿がそこかしこで描かれている。
 今回は2度、ウルトラマンのバトルが撮られ、力の入った特撮カットが幾つも取られている。そのうち、ディアボリック襲来で本編撮影の地上からアキトとユナが攻撃し、その攻撃先が上方の実景・特撮合成カットのディアボリックに転じていくとか、ディアボリックが落としたビルが2人に落下する直前、頭上に特撮合成のトリガーが出現してビルを叩き落とすのが印象深い。


第15話「オペレーションドラゴン」


 アキトはイグニスからの情報でアブソリューティアンの情報を得た。彼らが持つ超エネルギーによってGUTS-SELECT空中母艦・ナースデッセイ号のパワーアップができるのだ。ナースデッセイ号がバトルモードに変形するには膨大なエネルギーを必要とするが、宇宙線研究所にアブソリューティアン・ディアボロを誘い出してそのエネルギーを吸取するというもの。タツミ隊長は提案に乗る。
 宇宙線研究所の屋上では、作戦準備が進められる。トリガーのエネルギーダミーを作り、騙されたディアボロからエネルギーを吸収するというものだ。作戦名はオペレーションドラゴン。準備を見守る謎の女性。アキトとマルゥルはナースデッセイを建造した話を思い出す。
 ケンゴとユナはタツミ隊長に連絡を入れて合流できないと告げ、青年リブットの特訓を受けることに。リブットによる体育館での特訓・武術・ダンスがケンゴとユナに課せられる。リブットいわく「1つのことに捕らわれるな」。いつしかイグニスもその訓練を見ている。
 オペレーションドラゴンの準備が終わった。謎の女性はカルミラであった。トリガーのダミーエネルギーに騙されたディアボロが出現したので、アキト・タツミ・テッシン・ヒマリ・マルゥルが配置につき、作戦は開始された。
 特訓の最後に一時的に青年リブットに昏睡状態にされていたケンゴをユナが起こす。「光であり、人である」。夢の中でのユナとの会話を通して、光の化身ではあるが、同時に自分はあくまでも人間だと自覚したケンゴ。
 ディアボロはエネルギー搾取を払いのけようとするが、ダーゴンやヒュドラムが羽交い絞めに。闇の巨人たちはオペレーションドラゴンを察し、一時的に人間に味方したのだ。
 ナースデッセイはディアボロのエネルギーでバトルモードへ、駆けつけたトリガー、ユナのハイパーキー、貸与されたスパークレンスで変身したリブットも戦いに加わり、それぞれの必殺技が炸裂、ディアボロを撃破する。トリガーの成長を見届けて元の世界へ帰っていくリブット。グリッタートリガーの力を制御できるようになったケンゴに迷いはなかった。だが撃破したディアボロは復活してM78星雲・光の国のウルトラ一族との戦いへ。ラストではイグニスも変身アイテムを使ってついにトリガーダークへ変身した!


 前話同様、脚本は足木淳一郎、監督は坂本浩一。第7話~8話に続くウルトラマン共闘に、ナースデッセイ号のパワーアップ、複数のイベントが同時進行で進むが、それぞれじっくり描かれていく。
 「光であり、人である」は『ティガ』第1話(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19961201/p1)ほかで巫女ユザレが主人公ダイゴ隊員に述べた言葉である。当初は深い作劇的意味はなく、主人公がウルトラマンに選ばれた理由の伝奇ファンタジー的な意味しかなかったと思うが、「光」になれることの選民思想的な危険性を脱臭するためか、シリーズ後半では変身前の「人」であることや「人」として出来ることを重視させる方向性でドラマを作っていった。『トリガー』のケンゴも現世ではたしかに人間の未熟な若者でしかないので、卑小な自分に気づいてまずは地道にやれることをやるしかないと決意させる作劇も妥当なものだろう。
 作戦を見守るカルミラが化けた人間の女性はカルミラの声を当てている上坂すみれ本人。人気アイドル声優である彼女がこういう形で出演するのは予想していたが。でもダーゴンやヒュドラムはそのまま等身大サイズで活動しているが、彼らも人間の姿に化けられないのか? ディアボロの声は小川輝晃(おがわ・てるあき)。『忍者戦隊カクレンジャー』(1994年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20120109/p1)のニンジャレッド、『星獣戦隊ギンガマン』(1998年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19981229/p1)の6人目の戦隊戦士・黒騎士ヒュウガ役でレギュラー出演した方で、現在は声優として活動中。リブット人間体の青年も本業は声優の土屋神葉(つちや・しんば)で、人気若手女優・土屋太鳳(つちや・たお)の弟。ダンスをするシーンは姉が主演したTVドラマ『チア☆ダン』(2018年)を連想させる。目の辺りが姉弟で似ているような。ダンスの時に流れた土屋神葉が歌う挿入歌は軽快で、今回はエンディング主題歌でもダンスをする姿ともども流されている。
 リブットはケンゴを鍛えるが、ウルトラセブンウルトラマンゼロらの昭和的な厳しい特訓とは違う。リブットも『ウルトラギャラクシーファイト 大いなる陰謀』でウルトラマングレートウルトラマンパワードに特訓を受けていたが、その際のグレートとパワードの台詞を踏襲して指導しており、新たな力を付け加えるのではなく最初から内に備わっていた能力を解放するための特訓だとしたあたりが、現代的だし東洋的だともいえる。
 アキトとマルゥルの回想から、かつて『ウルトラセブン』で円盤メカ竜である宇宙竜ナースを操ったワイルド星人と裏取り引きをして、このナースを手に入れたことが語られている。(今だとワイルドはスギちゃんのギャグ、ナースは看護婦をつい連想してしまう。そういえば『ティガ』放映当時も、防衛チーム・GUTS(ガッツ)のネーミングにあの有名宇宙人のことを反射的に連想してしまったものだが、『トリガー』の世界にもガッツ星人はいるのだろうか?・笑)
 ナースデッセイのバトルモードは、鳴き声はナースと同じでカラーリングは鼠色に。動きはCGでオリジナルより見劣りすると思うが、口からマキシマナースキャノン、全身からレーザーを発射するレーザーレインなどパワーアップ。トリガーやリブットと共同でディアボロを攻撃する姿は実に迫力がある決まった構図だ。
 『トリガー』が活躍している平行宇宙の地球からリブットは去っていき、タルタロスやディアボロもリブットが去った先である昭和ウルトラ世界のM78星雲・光の国のウルトラ一族との戦いへ。この続きは翌2022年配信予定だと告知されて、先のディアボロも新キャラクターとして登場する『ウルトラギャラクシーファイト』第3弾『ウルトラギャラクシーファイト 運命の衝突』(2022年)で描かれることになるが、同作にはウルトラファミリーがついに総出演するようだ。
 ちなみに、本話の翌月11月にはNHKで50周年の『仮面ライダー』を特集した『全仮面ライダー大投票』などの長時間特番や関連番組が放映されていたが、5年前の2016年にも50周年で『ウルトラマン』が同様の人気投票形式番組『祝ウルトラマン50 乱入LIVE! 怪獣大感謝祭』などの長時間番組やベスト10エピソードなどが放映されていた。


#16~19 語られる新たなウルトラマンストーリー


第16話「嗤(わら)う滅亡」


 前話のラストで宇宙のお宝ハンター・イグニスが変身したトリガーダークは、夜間の街でトリガーと戦う。怪獣キーで『ウルトラマンR/B(ルーブ)』(2018年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20181104/p1)などに登場してきた四つ足怪獣ホロボロスの力も発揮するダークトリガー。決着は付かなかった。町に新たな山が盛り上がる。
 翌日、ナースデッセイ号はこの山の調査に。アキト・ユナ・ケンゴ隊員たちが向かうが、そこへイグニスと闇の巨人ヒュドラムも。ヒュドラムはかつてイグニスの母星を滅ぼしていたことが明かされる。ヒュドラムはイグニスの仇であり、挑発されたこともあって再びトリガーダークに変身して戦いを挑む。そこへ山から怪獣が出現。ヒュドラムが持ち込んだ宇宙伝説魔獣メツオーガが戦いの影響で目覚めたのだ。急ぎトリガーに変身するケンゴ。ゼベリオン光線やビルさえ食するメツオーガ。
 ヒュドラムは退散し、トリガー・トリガーダーク・メツオーガの3つ巴の戦いに。メツオーガとは地割れから地底に落ちて戦うが、地上へ飛び出たトリガーはグリッタートリガーエタニティに強化変身。これに竜型になったナースデッセイ・バトルモードも加勢し、それぞれの必殺技がメツオーガへ突き刺さった。だが爆散するかと思ったメツオーガは、新たな姿の怪獣メツオロチへ進化するのであった。


 脚本は植竹須美男、深夜アニメや小説を中心に活動してきた方。監督は越知靖、前年度の『ウルトラマンZ』(2020年)も監督している。ウルトラマンやナースデッセイがパワーアップする前後編が続いたが、息もつかせず再び前後編のエピソードが続く。
 もうひとりのトリガーであるトリガーダークもイグニスが変身するかたちで再登場。加えて久しぶりに一応のオリジナル怪獣が登場。メツオーガは『ウルトラマンタイガ』(2019年)最終回(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200112/p1)に出てきた怪獣ウーラーにデザインや何でも食べる設定も似ていてその着ぐるみの改造だが、『ウルトラマンオーブ』(2016年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20170415/p1)中盤に登場した中ボス怪獣・マガオロチの着ぐるみの改造であるメツオロチに進化して新たに立ちはだかった。突起物が増えて立ち上がった姿が何か『ゴジラVSスペースゴジラ』(1994年)に登場したスペースゴジラに似ているような……。怪獣が新たな体に変身するのは『帰ってきたウルトラマン』(1971年)32話に登場したキングマイマイとも重なる。同話の脚本を手がけたのは千束北男こと今年2021年に亡くなった飯島敏宏。
 トリガーもナースデッセイも強くなったが、すぐに敵の怪獣も強くなって立ち塞がってきた。新たな力を手にしてトリガーを苦戦させるトリガーダークも、前話ラストにイグニスが「未来を染める漆黒の闇!」と前口上を述べてカッコよく変身した。イグニスはケンゴの正体がトリガーだとわかっているはずだが……。トリガーダークの残留思念がイグニスを取り込んだのだろうか? イグニスの意思の方がトリガーダークを取り込んだのだろうか? イグニスはトリガーダークの力を制御できないのか苦しんでいる。本話ではヒュドラムに殺されてしまった母星の仲間たちのことが忘れられず、いつものイグニスの飄々とした軽い感じはない。
 前話でゲスト出演したウルトラマンリブットはイグニスとも言葉を交わし、リブットの人間体の青年がユナ隊員から借り受けたスパークレンスでリブットに変身できたのを目撃して、イグニスも闇の超人トリガーダークに変身するヒントを得た。リブットもどこまでイグニスについて知っていたのだろうか?
 怪獣メツオーガはヒュドラムが持ち込んだものだが、怪獣メツオロチに進化したら、どういうふうに処理するつもりだったのだろう? いつもの通りに慇懃無礼な彼だが、実は素の姿通りの愉快犯で、何も考えていなかったりして。
 バトルモードのナースデッセイは飛び道具ばかりだが、『ウルトラセブン』に登場した原典の宇宙竜ナースのように敵に巻き付いたり、体を丸めて円盤に変形したりしないのは残念(鳴き声はオリジナルと同じなのだが)。バトルモードに変型すると、ナースデッセイ号の内部の居住区域はメチャクチャになってしまうのは、リアルに考えると問題アリなのだがフィクションにおけるギャグの場面としては成立している。
 2021年末現在、世界中で半導体が不足し、年末の電子機器商戦も苦戦すると言われているが、ナースデッセイやスパークレンスなどの『トリガー』の玩具供給も大丈夫だろうか?


第17話「怒る響宴」


 怪獣メツオロチにトリガーもトリガーダークも敗退。ナースデッセイ号は怪獣ガーゴルゴンの能力を保持したキーを用いた石化光線を発射してメツオロチを一時的に動けなくするが、その機体も動けなくなり緊急着陸する。メツオロチが行動を再開するのは20時間後。GUTS-SELECTはガーゴルゴンキーの影響でエネルギー兵器が使えず、旧式の武器を集めて戦う準備を進める。タツミ隊長以下、戦う姿勢を失わない隊員たち。
 やがて目覚めたメツオロチに地上から攻撃開始。上空からは無人戦闘機・GUTSファルコンの攻撃が。分析したアキトからツノが弱点との連絡が。逃げ惑う人々に自分の母星が襲われていた過去を重ねたイグニスは、トリガーダークに変身して参戦。ケンゴはメツオロチの反撃で、墜落したファルコンに乗って攻撃、ツノを破壊する。ファルコンが撃墜されたあと、続いてトリガーに変身する。
 そこへ闇の巨人カルミラが乱入、トリガーに襲いかかり、次いでダークトリガーと戦う。トリガーはグリッターに強化変身。サークルアームズとグリッターブレードを用いてメツオロチを倒す。次にカルミラは相撃ちながらトリガーダークを倒して手傷を負い、なおも既にエネルギーを消耗しているトリガーに迫るも、GUTS-SELECT隊員たちがトリガーを守って最強怪獣ゼットンのハイパーキーを装填した銃を構える姿に、ダーゴンの助言もあって撤退する。
 変身が解けたイグニスはトリガーダークであることを見抜かれて、GUTS-SELECTに拘束される。


 脚本は植竹須美男。監督は越知靖。前話と同じだ。トリガーもナースデッセイも敗れるも、あきらめないGUTS-SELECT。今回のその姿は、ウルトラ警備隊やMAT(マット)といった過去のウルトラシリーズに出てきた防衛チームと重なるものがある。通常はナースデッセイで指揮をとるタツミ隊長も地上で戦い、一般隊員も武器を持って戦いに加わり、いつもと違った戦いのカラーを感じる。
 加えて前半、大敵を前に不安そうなユナに「大丈夫」だとケンゴやアキト、タツミやテッシン、ヒマリやマルゥルがそれぞれ応じ、後半には消耗したトリガーの前に隊員たちが彼を守ろうと立ちはだかり、防衛チームの強い絆を感じさせるシーンが複数あって、感動してしまう。
 特撮では、夕陽の向こうに見えるメツオロチとか、ファルコンから脱したケンゴがトリガーに変身するが横滑りに現われるという、平成ガメラシリーズでも観たようなカッコよいカットが。トリガーがサークルアームズとグリッターブレードの二刀流((C)大谷翔平・笑)を使うシーンもカッコよい(『ウルトラマンZ』のゼットランスアローに比べると、サークルアームズはよく使っているなぁ)。CGも、隊員たちが視線のすぐ上にある怪獣メツオロチを攻撃したり、ファルコンがビルの間をぬって飛行したり、ビルを破壊しながらケンゴのそばに不時着するシーンで活用され、リアルなシーンに仕上がっている。序盤に怪獣を石化するが砲塔も石化してしまったナースデッセイがテッシンの操縦で地面に着陸するシーンもなかなか。
 メツオロチとの決戦。だがイグニスが変身したダークトリガーが戦いに加わり、トリガー・メツオロチ・カルミラとも戦って、本来あるべきストーリーを変質させてしまったように思う。幾つもおかしいところがあり、本話のレベルを低下させているのは残念だ。
 戦いで逃げる群衆をイグニスが観て、過去の母星の惨状と重ねるのはよい。しかしメツオロチが石化してから20時間以上が経過してから戦いが起こっているのだから、避難命令が出ていないのはおかしい。逃げる群衆の横には高架を走行中の電車の姿も(リアリズムではなく高架と電車の精巧なミニチュア特撮の方を見せたかったのは分かるが・笑)。ちょっとした異変でも電車は運転見合わせになるものなのに、怪獣が進軍中でも新幹線が走行していた1984年版『ゴジラ』のようだ。
 ケンゴはファルコンを操縦しているが今回が操縦するシーンは初めて。
いつ覚えたのだ? そもそもファルコンって遠隔操縦なのでは? ツノを破壊されたとはいえ、グリッタートリガーにあっさりやられすぎのメツオロチ。カルミラがトリガーではなくケンゴの名を呼びながら現われたが、GUTS-SELECTメンバーにも聞こえているのだろうか? ダーゴンは「人間を甘く見るな!」とカルミラを撤退させる。これは10話での彼の人間に対する心変わりを受けた描写でドラマチックではある。ここにダーゴンと共にヒュドラムが現われていたらマズかったかもしれないが(汗)。ラスト、変身アイテムを取り上げられて拘束されるイグニスだが、地上の施設でなくナースデッセイ内の一室に幽閉でいいのか?


第18話「スマイル作戦第一号」


 ケンゴはトリガーがカルミラと親しそうにする夢を観る。その後、タツミ隊長が新設されたTPUアジア司令官に昇進するとの報が。ケンゴは皆でお祝いをしようと提案し、容れられる。それは「スマイル作戦第一号」と名付けられる。隊員それぞれ役割を決めて、ケンゴはユナと地上へ降り買い物を。その頃、闇の巨人たちにも変化が。カルミラはトリガーが闇の陣営に戻ってくると言い出して嬉しそうだし、ヒュドラムもダーゴンから頼りにされる。そのダーゴンは地上へ降りてユナを尾行していたが、逆にユナから花束をもらってしまう(笑)。GUTS-SELECTでは、ヒマリが宝くじに当選、テッシンがモデルに、マルゥルは自分が住めるアパートが見つかったと嬉しいことが相次ぎ、拘束中のイグニスにも極上お宝の地図が。
 パーティーの準備がタツミ隊長にバレた直後、超古代闇怪獣ゴルバーが出現して暴れ出す。ケンゴはトリガーに変身して立ち向かう。トリガーとゴルバーの戦い、援護するファルコン。だがこのゴルバーはカルミラたちも差し向けた覚えがない。更にアキトも「僕もトリガーになれる」とスパークレンスを掲げる。戦いは広がっていき、ヒマリ・テッシン・マルゥルらが喜んでいた諸々にも被害が出て慌て始める一同。やがてユナの指摘で、タツミの司令官就任やイグニスのお宝の地図もまがいものだとわかる。皆、偽物であったのだ。ナースデッセイ援護下、グリッタートリガーにゴルバーは撃破されるが、ナースデッセイを見上げる人影がいた。


 脚本は根元歳三。監督は田口清隆。『トリガー』前半も手がけていたお二方。タツミ隊長の異動、お祝いをしようとすると、隊員たちにも闇の巨人たちにも異変が次々に。ギャグ話なのだが、何者かの遠隔操作でもあった実はホラー懸かった話。その犯人は次回で明らかになるが……。
 アジア司令官就任に喜ぶタツミ隊長、その辞令が偽物と知った時とギャップが大きい(実は健康診断の結果だった・笑)。普段は冷静にふるまっている皮肉屋のヒマリが宝くじ(それも偽物)を換金している銀行が破壊されて慌てるシーン、実は自分もトリガーになりたくてスパークレンスでカッコよく変身シーンを見せたいアキトの願望(タツミ隊長へのプレゼントとして新たな怪獣キーを考えるなど、ユナへの誕生プレゼントがスタンガンだったことと同様、一般人の感覚とはかなりズレている・笑)など、次々に隊員たちの秘め事が晒される。
 更に闇の巨人たちも、トリガーが超古代の時代のように彼らの許に戻ってくると浮かれているカルミラ、その姿に「あれはもうダメかもしれませんね」などと述べてダーゴンからも自分が頼りにされることで得意そうなヒュドラム、そしてダーゴンも10話のようにユナをストーキングしていたら彼女から花をプレゼントされる。
 何かがおかしい微妙にいつもと違うことが続いて、怪獣との対決終盤で皆が精神操作されていたことがわかる。ケンゴも昔カルミラと親しそうにしていた夢を見る。カルミラも嬉しそうにしていたが、あれも遠隔操作だったのか? 隊員のみならずトリガーも、闇の巨人やイグニスまでも惑わされてしまっていた。前話に続いて収監されているが、イグニスは意外に元気そうだ。マルゥルは木造二階建てのアパートに住めると喜んだが、これは『ウルトラセブン』第8話のメトロン星人へのオマージュ。
 本話の放送前は、転任するのは本当だが、タツミ隊長は最後に栄転を蹴って、ナースデッセイへ戻ってくる。そんな勇ましい筋の話を予想していた。実際には『ウルトラマンティガ』第45話(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19961206/p1)で超古代植物ギジェラの吐き出す花粉によって正気を失ったGUTS隊員たちのような話だった。
 唯ひとりユナは異変に見舞われなかったが、彼女は精神攻撃されなかったのか? それとも攻撃を受けたが、超古代の巫女ユザレの血筋の力で知らず知らずハネ返していたのか? 次回に明かされる理由によれば、彼女には現世利益的な俗っぽい欲望がそもそも少なかったせいのようだ。第1話で現われた怪獣ゴルバーとの再戦。ウルトラマンと怪獣の特撮班のバトル演出以外に、本編班側でケンゴが地上で走りながらトリガーに変身して、光に包まれて現われるグリッタートリガーなどカッコよいカットがある。あと、前話で砲塔が石化したナースデッセイはもう直ったのだろうか?


第19話「救世主の資格」


 前回の事件を話し合う隊員たち。そこへシズマ財団のシズマ会長が訪れ、モルフェウスRという宇宙線が原因だったと告げる。調査で空中母艦・ナースデッセイ号から地上に降りるケンゴとユナ。そこでユナは自分を見つめる男に気がつきあとを追うが、宇宙線による精神への影響のせいで仲たがいした闇の巨人たちが争いながら地上へと出現。ケンゴは巻き込まれつつもトリガーに変身して戦うことに。
 ユナは謎の男と対し、彼がモルフェウスRを発して「欲望や願望を持たない人間」を捜していたと知る。男はモルフェウスRの影響を受けなかったユナには「救世主」の資格があると言う。トリガーはグリッターに変身。ケンゴはカルミラが昔トリガーに好意を持っていたことも知っていた。指摘されて怒るカルミラ。そこへ駆けつけるシズマ会長。
 トリガーはナースデッセイ、ファルコンや巫女ユザレの援護で巨人たちを撃退するが、入れ替わるように男はユナにも資格がなかったと言うと、炎魔戦士キリエロイドに変身巨大化して、夜のビル街で戦いを挑む。闇の巨人たちとの戦いに続いての激闘、苦戦するトリガーを助けようとするユナ。
 そこでシズマの身体の中にあった光が。気付いたユナの力で光はウルトラマンティガへと変化。トリガーを助けてキリエロイドと戦う。空へ逃げるキリエロイド、共に紫色のスカイタイプにタイプチェンジして追う2大ウルトラマン。空中戦、再び地上へ。ティガ・トリガー2人のゼベリオン光線が突き刺さってキリエロイドは倒された。戦い終わって夜空の途中で光となって消えるティガ。


 前話同様、脚本は根元歳三。監督は田口清隆。キリエロイドの出現、夜街のバトル、ウルトラマンティガとの共闘と『ウルトラマンティガ』のカラーが強く、往年のウルトラマンエースが客演して大活躍した前年度の『ウルトラマンZ』第19話「最後の勇者」などのイベント編にも相通じている。『ウルトラマントリガー』ではウルトラマンゼットやウルトラマンリブットなど他のウルトラマンとの共闘が二度も描かれ今回は三度目だが、それまでの共闘とはやや違う。
 ティガの敵役であり、『ティガ』第3話によれば3000万年前の超古代文明よりも古い時代から地球にいたらしいキリエル人(びと)が暗躍する。前話の精神攻撃によるギャグ話もその仕業であったとされた。闇の巨人たちも翻弄し、彼らが争いを始めるので、後半の新たなレギュラー敵かとも思ってしまう。ユナの心も誘惑するが、その様子は『ティガ』でのキリエル人と重なる。かつてキリエル人を演じたのは有名子役上がりの高野浩幸。高野は『ウルトラマンタイガ』6話「円盤が来ない」でもゲスト主役を務めたばかり。今回は調整がつかなかったのか、本話のキリエル人を演じたのは違う俳優・高橋麻琴だったが、高野同様に良い演技をしていた。
 ティガとの共闘。その鍵はかつて『ウルトラマンティガ』の舞台となった平行世界から来たシズマだ。キリエロイドを見て、かつての自分の世界にもいたと言う。続いて自分の身体に沸いた輝き。そこからその輝きの光の球体がティガへ。『ウルトラマンティガ』最終回(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19961207/p1)や映画『ウルトラマンティガウルトラマンダイナ 光の星の戦士たち』(1998年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19971206/p1)ラストとも重なるシーンである。もっともシズマの持っていた光がなぜこれまでも目覚めなかったか? これからはもう再び目覚めないのか? など眉唾な描写でもあるが、ティガとトリガーの共闘は嬉しい。シズマが『ティガ』最終回でティガ復活に関わった子供の1人であったと独白するシーンがあれば盛り上がったのだが、ティガを目撃したり助けられたのは大人になってGUTSに所属してからだし、『ティガ』世界の後任・ウルトラマンダイナのことは知らないようなので、それはないか? 『ティガ』でキリエロイド編やその再登場編と最終回3部作の脚本を執筆した小中千昭は本話をどう思ったのであろうか?
 撮影は、キリエル人とユナが会話するカットはその背後が中庭吹き抜けの古いビル内で、第1期ウルトラシリーズの異色作を担当した実相寺昭雄監督のタッチを感じさせるアングルになっている。あと後半、空へ飛んで逃げるキリエロイドと追うトリガーとティガ、高速で飛行しているため空を飛んでいる姿が見えず、雲を引く航跡ばかりが激突するアニメ的な演出になっているが迫力はある。トリガーとティガがダブルゼベリオン光線を発射するシーンもなかなかだ。
 しかしシズマが突然ユナの前に現われ、彼女を戦いに巻き込んだことを詫びるのは唐突で、何を今更と感じる。あと前話のキリエル人の精神攻撃により争い始めて、取っ組み合ったままでコマのように回転しながら巨大化して、なだめようとするダーゴンの言うことも聞かなかったカルミラ。争ったままで退場していったが、これから彼女もギャグキャラ化するのだろうか? 悪女声で叫ぶカルミラの声は上坂すみれの声優歴からすれば意外な当たり役になると思う。もっともカルミラは太古にトリガーを好いており、実は今も……ということはケンゴにも見抜かれており、それも最終回までの物語の鍵となるのだろう。
 なお、人間の精神(脳?)に影響を与える宇宙から飛来する放射線モルフェウスRは、原典『ウルトラマンティガ』40話「夢」に登場した人間の脳波に影響して巨大怪獣も実体化させた宇宙線モルフェウスDへのオマージュであり、これと同種の宇宙線だということもネーミングで意味させているのだろう。



 次回は3回目の特別総集編「咲き乱れる悪の華」。前回の総集編同様、小怪獣デバンにこれまでのストーリーを語ってもらうかたちだが、敵役を中心にしている。



 『ウルトラマントリガー』は近年のウルトラシリーズの年末までの放送とは違い、年を越して1月22日までの放送となったが、眼が離せない。


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2022年1月号』(22年1月16日発行)所収『ウルトラマントリガー』中盤合評2より抜粋)


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ウルトラマントリガー』前半評1 ~『ティガ』らしさは看板だけ!? 後日談かつリメイク! 昭和・Z・ギャラファイともリンク!

(文・T.SATO)
(2021年10月20日脱稿)


 対外的・パブリシティ的には、往年の90年代後半にTV放映された平成ウルトラ3部作のトップバッターである『ウルトラマンティガ』(96年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19961201/p1)にリスペクト(尊敬)を捧げる……と謳(うた)われている本作『ウルトラマントリガー NEW GENERATION TIGA(ニュー・ジェネレーション・ティガ)』(21年)。


 本作にかぎった話ではないのだが、往年の作品にリスペクトを捧げるために新作を製作する場合に、それは往年の作品の続編・後日談とするのか? リメイクとするのか? の二択となる。


 55年もの歴史を持つ長大なウルトラシリーズにおいても、その始原である1966年にスタートした『ウルトラQ』およびその後日談世界でもある初代『ウルトラマン』~『ウルトラマン80(エイティ)』(80年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210315/p1)までの同一世界を舞台とする通称「昭和ウルトラ」世界の四半世紀後の正統続編として製作された『ウルトラマンメビウス』(06年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060625/p1)の例があった。よって、コレに準じて本作『トリガー』もまた「平成ウルトラ」こと『ウルトラマンティガ』世界の四半世紀後の正統続編とする可能性が高いと予想した特撮マニア諸氏は多かったことだろう。


 本作『トリガー』#1の冒頭は地球ではない。火星である。主人公青年が火星の大地で花を咲かせる植物を育てている光景だ。火星。それは『ウルトラマンティガ』の7年後の世界を描いた『ティガ』の次作『ウルトラマンダイナ』(97年)#1(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19971201/p1)ほかの舞台にもなっており、ウルトラマンダイナもまた火星の大地で初登場を遂げていた。そして、その『ダイナ』終盤では、前作『ティガ』の主人公とヒロイン隊員が火星に移民しており、花を咲かせる植物を育てていることが明かされていた。つまり、この#1冒頭は『ダイナ』#1やその終盤へのオマージュでもあり、よって『ティガ』世界でもある『ダイナ』よりも未来の時間を舞台にしたという意味での『ティガ』後日談なのだろうとも思わせたのだった――実はソレはミスリード演出だったのだが――。


 しかし、『ダイナ』よりもさらにあとの時代の『ティガ』世界が点描された映画『ウルトラマンサーガ』(12年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20140113/p1)という作品も存在し、そこではウルトラマンダイナことアスカ青年が地球を救った「英雄」とされて「記念日」まで設けられるほどの有名人となっていたことが明かされた。
 本作『トリガー』では、今となってはベテラン俳優・宅間伸(たくま・しん)が演じる大財閥の会長がウルトラマンティガにだけ言及してウルトラマンダイナには一言も言及しなかったり英雄・アスカのことも言及していない。コレは幼児はともかく怪獣博士タイプの児童や我々のような「大きなお友達」にとっては少々違和感の募るものともなる。
 むろん、このテの変身ヒーロー番組にはよくあるラフさやポカ・ケアレスミスだとして笑って流してもイイものだし、子供向け番組としては致命的な弱点だとまではいえないのかもしれないが、とはいえ欠点や弱点には違いないので、そこは出来ればキチンとていねいに整合性を確保して作劇してほしいところではあったのだ――むろんソレもまたミスリード演出だったのだが――。


 よって、本作『トリガー』序盤では、『ティガ』アフターの物語世界なのか? 『ティガ』リメイクの物語世界なのか? そのあたりが判然とはしなかった。しかし、その「すぐには判然とはさせなかった」あたりもまた、作り手の高等戦術・引っかけ・ミスリード演出でもあったのだ。
 本作は「アフター」ではなく「リメイク」でもなく、しかして広義での「アフター」ではあり広義での「リメイク」でもあった。それを2009年末に公開された映画『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20101224/p1)にて導入された物理やSFにおける「並行宇宙」の概念の導入で、異なる作品世界であるハズだった「昭和ウルトラ」と「平成ウルトラ」が次元の壁を越境できるようになったことで両者の共演も可能となったことを、本作『トリガー』の作品世界の設定それ自体にもまた応用してみせるのだ。
 つまりは、『ティガ』世界に出自を持つ大財閥の会長がワームホール=次元の壁を越境してきて、3000万年前の超古代文明以来の歴史を持つ『ティガ』世界に酷似するも似て非なる歴史をたどっている本作『トリガー』世界で、来たるべき超古代文明由来の脅威に備えていたことが#9にて明かされるのだ!


 なるほど! ポッと出のゲストキャラとのウダウダ愁嘆場な人間ドラマなぞではなく、幼児にはともかく小学校中高学年以上の怪獣博士タイプの子供や大きなお友達にアピールする、「ヒーローや怪獣の属性や特殊能力それ自体」や「作品の世界観」それ自体で擬似SF的な興味関心を惹起・ナゾ解きともしてみせるコレらのストーリー展開はカンゲイすべき趣向ですらある。
 エッ、幼児には理解ができない手法だって? ソレはまぁそーなのだけど、幼児には意味不明でタイクツまでしそうな延々とした会話劇でのナゾ解きなどにはなっていない。大財閥の会長による作品世界のヒミツの開陳内容に合わせて、ごていねいにも原典『ティガ』に登場した戦闘機・ガッツウイングが飛行・落下する新撮の特撮シーンまでもが回想として挿入されることで、幼児であっても画面に惹きつけられるだろうから大丈夫。
 「昭和ウルトラ」の時代だって、児童の年齢に上がればともかく、幼児などは人間ドラマ部分やオトナ同士の会話なんぞはロクに理解もしておらず、奇抜な特撮映像の羅列やヒーローによる悪の成敗で発生するカタルシスの部分しか認知していなかったハズであるから、ソレらと同じことでもあるので、そーであるならばこーいった要素もドシドシと投入すべきであるだろう。


 もちろん、このナゾ解きについては、最終回間際まで引っ張ってしまうと、逆に大きなお友達であっても飽きてきてインパクトにも欠けてしまった『仮面ライダーアギト』(01年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20011108/p1)における「あかつき号事件」のような事態になってしまう可能性はある(笑)。よって、適度なところで打ち切って、シリーズの1/3程度の話数を消化したこのタイミングで明かしたこともまたウマかったとも思うのだ。


「定番セリフ・変身ポーズ」と「ウルトラマンシリーズ」 ~その長き抗争関係&歴史的な変遷!


「スマイル、スマイル!」


 #1では早々に、主人公青年・ケンゴにリアルでナチュラルなセリフではなく、前述のような楽天的でマンガ・アニメ的な定番とするのであろうセリフを吐かせている時点で、スレた特撮マニア的には、


「あぁもう、ちっとも『ティガ』っぽくはないじゃん……」


とも気が付いたことだろう。……コ、コレは昭和ウルトラシリーズ直系の続編だと謳いながらも、東映特撮などと比すればやや重厚で写実的なドラマ・演出・作風であった「昭和ウルトラ」とは真逆な、非リアルかつマンガ・アニメ的に誇張・極端化された登場人物たちが大声で絶叫しあってコミカルなギャグも披露していた『ウルトラマンメビウス』のパターンではないか!?(……良い意味で・笑)


 そして、主人公青年・ケンゴがウルトラマンに変身するシーンでも、バンク映像でコレ見よがしに各種属性を意味する小型パーツを変身アイテムにカチッとセットする玩具的なプレイバリューも延々と見せつけて、


「未来を築く、希望の光! ウルトラマン、トリガーーー!!!」


なぞとイチイチ定番セリフを叫んでみせて変身を遂げている。『仮面ライダーカブト』(06年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070211/p1)や『仮面ライダー電王』(07年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20080217/p1)から始まって平成ライダーシリーズではもはや定着した、当時からでも「非リアルだ!」なぞと反発されることなく「非リアルで半分笑ってしまうけど、それでも半分はカッコいい!」といったニュアンスで、特撮マニア間での全員とはいわずともほとんどに好意的に受容されることになった、変身直前や変身直後の半分ネタ・半分カッコいい的な定番名乗り。それらは2010年代のウルトラシリーズにもパクリ……もとい導入されて久しいけど、本作『トリガー』でも踏襲しているのだ。


 こーいう歌舞伎や定番時代劇『水戸黄門』の印籠や『遠山の金さん』の桜吹雪の入れ墨などの定型的な披露などは、「特撮ジャンルを大人の観賞にも堪えうるモノにしよう!」なぞと必死であったマニア社会草創期の70年代末期~90年代においては、非リアルだから否定・唾棄されるべき要素なのだ! などと、かつては全面的な否定をされていた時代もあったのだ。
 そのようなマニア言説によって、主人公青年がほとんど無言やちょっとした掛け声だけでウルトラマンに変身する初代『ウルトラマン』(66年)や『ウルトラセブン』(67年)や『帰ってきたウルトラマン』(71年)の変身シーンは高尚なモノとされてきた。
 そして、同時期の昭和の『仮面ライダー』(71年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20140407/p1)の変身ポーズの子供間での大流行を受けて、変身時にイチイチ大きく腕をふってみせるポーズを取って「ウルトラ、タッッチッッッ!」「タロウ~~~!!」「レオ~~~!!!」などと絶叫してみせる、『ウルトラマンエース』(72年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070429/p1)や『ウルトラマンタロウ』(73年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20071202/p1)に『ウルトラマンレオ』(74年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20090405/p1)などの変身ポーズは幼稚で低劣で非リアルなモノとして、糾弾なりやや揶揄的に言及されていた時代も20世紀のむかしにはホントウにあったのだ(汗)。


 ゆえに、90年代後半の平成ウルトラ3部作でも、『ウルトラマンダイナ』(97年)と『ウルトラマンガイア』(98年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19981206/p1)は変身時に自身のヒーロー名を絶叫するものの『ウルトラマンティガ』(96年)においては、もっと云うなら原点回帰が至上とされていた時代の『ウルトラマングレート』(90年)と『ウルトラマンパワード』(93年)においても、変身時の変身ポーズや掛け声は基本的には廃されたのだった。よって、このあたりも『ティガ』っぽくは決してナイのだ。


 今や還暦に達した1960年前後生まれで、60年代後半に放映された初代『マン』や『セブン』の直撃を受けた、いわゆるオタク第1世代。彼らの一部が中高生になっても完全なる卒業ができずに『エース』や『タロウ』や『レオ』をヨコ目でチラ見していて、自身が学校や若者文化の中でうまく生きていけない不遇をカコつ心境とも無自覚に混交して(?)、それら70年代前半の第2期ウルトラシリーズに対して過剰に憎しみをブツけてしまって、その見解が70年代末期の本邦初の特撮マニア向け書籍で披瀝されてしまったのだという側面もあっただろう。まだまだジャンルの市民権も獲得されておらず、彼らも当時はほとんどが未成年の身であったことを思えば、そう思ってしまったことにもムリからぬところはあるとも思うので、ソレを過剰に責めようとも思わない。
 しかし、そこには新たなる別の問題もまた生じてしまっていた。本来ならば、それらの上の世代の見解に対して即座に真っ先に反発すべきであった、筆者のようなリアルタイムで『エース』や『タロウ』や『レオ』の変身シーンにまったく疑念を抱かずにスナオに「カッコいい!」と幼少期に楽しんでマネまでしていたハズのオタク第2世代のマニアたちのほとんども、先人による70年代末期のマニア向け書籍で陰に陽に披露されたソレらの見解に影響されて、第2期ウルトラシリーズを人身御供・足切り・売り渡しにするような否定的な見解を口マネにしてしまっていたからだ。ある意味ではオタク第1世代以上に罪が重たい唾棄すべき態度を70~80年代いっぱいは、あるいは20世紀いっぱいまで我らは採り続けていたのであった(爆)。


――70年代第2期ウルトラシリーズ擁護派の一部には、「自分たちは純真無垢なる被害者だ!(……ウラの声:必然的に自分は絶対正義となるから、論敵をその人格も含めていかに口汚く罵倒しようとも構わない! それは反体制・反権力でもあるから革命的正義なのだ!)」、「自分の内部に『悪』などない!(……ウラの声:自分の外側にだけ第1期ウルトラ至上主義者・安倍ちゃん・トランプ(笑)のような、ギロチン首チョンパで抹殺してもイイ『悪』がいるだけだ!)」ばりの主張をしていた、自省力・内省力にはいささか欠けていた御仁もいたけれど、「正義(?)の殺し屋」を描いていた往年のTV時代劇の前期『必殺』シリーズ風に云うならば、「いかに一理や理由があったとしても、我々オタク第2世代=第2期ウルトラ世代もまた口汚い批判に組したことがあって、その手を血で汚している以上は決して『無罪』ではアリエない。永遠に『原罪性』を抱えて『贖罪』しながら、完全には許されることがない一生を、今後も慎みながら生きていかねばならない」のだ(汗)――


2010年代以降の多士済々なウルトラマンシリーズの中での差別化としての「平成ウルトラ」の登用!


 で、そんな屈折した「原罪性」を抱えつつ(笑)、『ウルトラマントリガー』を観賞していると、『トリガー』も表層面では「スマイル、スマイル!」に象徴される2010年代のウルトラシリーズに特徴的な、子供番組としても実にふさわしい楽天的なイメージでパッケージはされている。しかし、それだけではなくイヤミやハナにつかないさりげない範疇でカナリ「屈折」させた作品構造・作品ギミックを持った作品であることもわかってくる――先に挙げた、本作が『ティガ』アフターであってアフターではなく、『ティガ』リメイクではなくてリメイクでもある、といったあたりもその象徴!――。


 まずは、ほとんどパーマネント(永久)キャラクターのシリーズと化した『仮面ライダー』シリーズや『戦隊』シリーズなども同様なのだが、シリーズである以上は何らかの大ワクでの「統一性」は必要。しかし、それだけでも子供たちには早々に飽きられてしまうので、各作ごとにキョーレツな「看板」「目印」ともなる小手先ではない「差別化」も必要となる。つまり「統一性」&「差別化」の相矛盾する要素を各作に投入することが必須となるのだ。


 ウルトラシリーズの場合は、銀色の鉄仮面マスクの巨大超人が登場して巨大怪獣と戦って腕から必殺光線を発射して撃破さえしてくれれば、シリーズとしての「統一性」はとりあえずは担保される。そして「差別化」の部分でも、


●山あいに近いローカルな校舎の周辺を舞台に、少人数の私服姿で牧歌的な男女高校生たちがミクロな怪獣事件を解決していく『ウルトラマンギンガ』(13年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200819/p1
●『ギンガ』の世界観での数年後に、地底の特殊鉱石をねらってきた宇宙人の侵略に対抗して、地底人種族の青年がウルトラマンビクトリーへと変身。怪獣攻撃隊に入隊したウルトラマンギンガに変身する主人公青年とも対立から和解・共闘へと至っていく『ウルトラマンギンガS(エス)』(14年)
●歴代ウルトラ怪獣の属性パワーを実体化して、さまざまな怪獣の鎧(よろい)を脱着しつつ、ウルトラマンゼロウルトラマンマックスウルトラマンビクトリー・ウルトラマンギンガ・ウルトラマンネクサスといった先輩ウルトラマンとの共演イベント目白押しであった『ウルトラマンX(エックス)』(15年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200405/p1
●さすらいの風来坊青年が「魔王獣」なる怪獣種族の一群やナゾのライバル青年を相手に、貧乏所帯な怪奇現象探索チームのメンバーと交わりつつ、歴代ウルトラマンの属性カードを収集。それを2枚ずつ混交させることでのタイプチェンジで戦う『ウルトラマンオーブ』(16年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20170415/p1
●悪の黒いウルトラマンことウルトラマンベリアルに造られた人造ウルトラマンである無邪気な主人公青年。6年前には劇中世界の大宇宙自体が崩壊。しかし、ウルトラ一族の長老・ウルトラマンキングが宇宙そのものと合体して修復、キングが「幼年期放射」なる周波数の電波となって拡散している世界で、闇落ちせずに正義に目覚めていく人造ウルトラマンを描いた『ウルトラマンジード』(17年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20170819/p1
●兄弟の青年がふたりのウルトラマンに変身して活躍し、妹や行方不明の母のナゾ解きもタテ糸に据えて、宿敵と闘う『ウルトラマンR/B(ルーブ)』(18年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20180826/p1
●M78星雲やU40(ユーフォーティ)にO50(オーフィフティ)といった出自の異なる3人のウルトラマンがひとりの地球人青年と合体。メイン格のウルトラマンは昭和の時代のウルトラマンタロウの息子でもあるとした『ウルトラマンタイガ』(19年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190811/p1
・地球人の怪獣攻撃隊がついに巨大ロボットを建造して、未熟な新人ウルトラマンとも共闘してみせる『ウルトラマンZ(ゼット)』(20年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200723/p1


といった作品群が製作されつづけており、似通った作品が1作たりともナイのだ。昭和の時代に4年間もシリーズが継続した70年代前半の第2期ウルトラシリーズもカナリ振り幅が広くて、各作が個性豊かなシリーズであったとは思うものの、2010年代のウルトラシリーズ8作品の方が今となってははるかに振り幅が広いだろう。正直、コレらの8作品とも明らかな差別化を果たせる魅力ある新作を思案するのは至難のワザだとも思うのだ。


 もちろん、お題・企画の方は今どきは東映作品も含めて製作会社が単独で考案しているワケがなく、玩具会社の玩具コンセプトが主導であって、そこに各作の物語を後付けで合わせていくといった側面も強いだろう。



 ところで、2009年の映画『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説』にて「並行宇宙」を越境可能とするSF概念を導入したことで、「昭和ウルトラマン」と「平成ウルトラマン」の両者の共演が可能になった。コレに先立つ2006年の『ウルトラマンメビウス』からウルトラシリーズはその作品世界の主軸を再度「昭和ウルトラ」としたことで、「平成ウルトラ」が否定されたワケでは決してなくウルトラマンダイナ・ウルトラマンコスモスウルトラマンガイア・ウルトラマンアグルといった90年代後半~00年前後の平成ウルトラマンたちが『ウルトラ銀河伝説』・『ウルトラマンサーガ』・『劇場版ウルトラマンギンガS 決戦!ウルトラ10勇士!!』(15年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200404/p1)・ネット配信作品『ウルトラマンオーブ THE ORIGIN SAGA(ジ・オリジン・サーガ)』(16年)といった作品に主要ゲストやレギュラー格として再登場はしつづけてはいたものの、2010年代の新世代ウルトラシリースが最新ヒーローとして勃興してきたこととも相まって、


「新世代 > 昭和 > 平成」


といった大小関係での比率・配合成分での注目度合いとなるのもまた必然であり、90年代後半の「平成ウルトラ」3部作の影がややウスくなっていたのも事実なのだ。


 そうなると、たしかにこの90年代後半の「平成ウルトラ」にそろそろスポットを当ててみせることこそが、現在2021年時点では一番斬新かつフレッシュな感じもしてくるのだ。むろんメインターゲットである子供たちにとっては、「平成ウルトラ」なぞ自身が生まれるよりもはるか前の作品であるから、そのへんの事情なぞはドーでもイイことではあるだろう。しかし、それを云い出したら、2006年当時の子供たちにとっては特別に思い入れがあるワケでもなかった「昭和ウルトラ」を復活させた『ウルトラマンメビウス』だって同罪なのである(汗)。
 まぁ、もっと無限背進して云ってしまえば、小さな子供たちには「昭和ウルトラ」と「平成ウルトラ」の区別すら付いてはいないであろうから、そのへんでのマウント取りを10代の少年マニアあたりが「赤勝て、白勝て」レベルで云う程度であれば「その稚気は愛すべし」ではあっても、成人マニアがムキになって優劣を付けようとしだしたならば、あまりに小人物に過ぎて見苦しいことこの上ないであろう(笑)――むろん個人の好みといったモノが生じてしまうのは仕方がないことでもあるのだが、それを無自覚・無防備に発露してしまって、「平成ウルトラ」ヘイトだから『トリガー』もまたキライである……なぞというお友達内閣・お仲間擁護の意識の反転でしかない感情論的な物の見方は、フェアネス・公平さとは程遠いモノなのである――。


 それはともかく、スタッフ自身もマンネリには陥らないために、各作ごとに新鮮なお題や目先の設定の変化を与えることでの作劇モチベーションを上げることを求めていたりもするのだろう(笑)。そして、むろんメインターゲットは子供であるにしても、少子化の時代とはいえ数百万人はいる子供たちと比すれば、数万人程度しかいないであろうから比率としては小さいにしても、我々のような「大きなお友達」に高額玩具や映像ソフトなどを購入させることで少しでも売上額を向上させたり、子供たちのパパ・ママ層にも好意的に感じてもらって財布のヒモを少しでもユルめさせるためにも、四半世紀前に放映された「平成ウルトラ」に白羽の矢を立ててみせるのはビジネス的には正解ですらあると思うのだ――今のパパ・ママ層はもはや「昭和ウルトラ」世代ではナイので――


 そう。そろそろ今年あたりに、「平成ウルトラ」をお題に据えて、特にそのトップバッターであった『ウルトラマンティガ』を材に据えた新作『ウルトラマン』を作ってみよう! しかも、今年はちょうど『ウルトラマンティガ』25周年のアニバーサリー・イヤーでもあるのだし! といったところが、本作の企画の発端なのであろう。
――もちろん、純粋なる作品愛ではない以上は不純といえば不純な動機である。加えて、時代の変化が早すぎて人々もますます飽きっぽくなっている時代なので、そのまた来年には「平成ウルトラ」ともまるで無関係な新作ウルトラが、「差別化」ビジネスとして登場するであろうことも、スレたご同輩たちにはアリアリと見えていることではあろうけど(笑)――


『ティガ』リメイクたりうるウルトラマン・戦闘機・空中母艦! リメイクたりえない変身道具&カートリッジ!


 そんなこんなで、看板的には往年の『ウルトラマンティガ』を前面に押し出してはいる。しかし、主役ウルトラマンには商品点数を増やす意味でも往年のウルトラマンティガをそのままの姿で「帰ってきた」ことにさせるワケにもいかない以上は、そのネーミングは「ティガ」――ティガのタイプチェンジの3形態こと「3」を意味するマレー語・インドネシア語――とも語感が似た新たなウルトラマンとしての「トリガー」――拳銃の引きガネなどを意味する英語――として、ルックスも往年のティガの体色模様を二重線ならぬ微妙にアレンジした新ヒーローだとしてみせる。このへんの経緯はもちろん筆者個人の憶測でしかないけれど、特撮マニア間での最大公約数的な憶測でもあって、当たらじといえども遠からずな見立てでもあるだろう。


 とはいえ、1996年の『ウルトラマンティガ』という作品の体裁そのままでは、2021年においては復活させられない箇所も相応にはある。それは特に玩具コンセプトの部分においてでだ。
 昭和というか戦後の高度経済成長期~平成初頭のバブル期にかけては、今のようにマイクロチップブラックボックスナノテクノロジーな「目で見てわかならい科学」ではなく、「目で見てわかる科学」の成果である重厚長大産業で金属の銀色の輝きを放っているロケットなりコンビナートなり乗用車の普及などの延長・派生形として、「モービル(乗り物)幻想」なり「科学的SF志向」が大人たちにも子供たちにも強くあったものだ。おそらくそーいう時代の空気・気分とも無意識にマッチ・後押しされるかたちで、我々は怪獣攻撃隊の戦闘機や特殊メカ、あるいは合体ロボットアニメや宇宙SFなどにワクワクして執着していたのだとも思うのだ。


 しかしご承知のとおり、近年ではウルトラシリーズに登場する怪獣攻撃隊の戦闘機の売上がよくないことは知られている。戦隊シリーズの巨大ロボも人型の姿をしているからかまだ辛うじて売れてはいるが、かつてほどの勢いはない。
 この現象の理由は、一般家庭の中に電子レンジ・エアコン・炊飯器にまで電子パネルのインジケーターが普及、スマホの画面に色とりどりのアプリ(ケーション)のアイコンが並んでいるのが日常となった現在では、「昭和の土俗的な日常」と「TVの中における科学的な計器や電飾が満載のコクピットや司令室」といった落差の大きさから来る「憧れ」が、ゼロにはなっていないにしても大幅に減じてしまったからだとも見る。つまり、作品自体の罪ではなく、作品の外側にある条件・環境の方が変わってしまったのだ。


 よって、本作『トリガー』でも、怪獣攻撃隊の戦闘機としては1種類の1機だけしか登場していない。そして、原典『ティガ』における怪獣攻撃隊の戦闘機・ガッツウイングが、現実世界の戦闘機にも近いややリアル寄りなフォルムを持っていたのと比すれば、『トリガー』における戦闘機・ガッツファルコンがロボットアニメ『超時空要塞マクロス』(82年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19990901/p1)シリーズに登場する可変戦闘機のように側後部が下部に回転して両脚のようになるあたりは実にカッコよくはあるものの、それは『ティガ』的なリアリズム寄りの方向性をねらったモノでは決してナイのだ。
 『ティガ』に登場した怪獣攻撃隊の宇宙戦艦アートデッセイ号とは似ても似つかぬ、往年の『ウルトラセブン』#11に登場したロボット東洋竜こと宇宙竜ナース型のメカ竜にも変型できるらしいメカメカしい空飛ぶ母艦・ナースデッセイ号に至っては、もう似通ったネーミングだけで原典『ティガ』との接点を持たせているだけに過ぎない(笑)。


 もちろん、ガッツファルコンやナースデッセイ号の存在をもってして『ティガ』の再生だ! あるいはその逆に『ティガ』とは異なる要素、フリだけのニセもの要素であるからリメイク・リマジン(リ・イマジン)たりえない! なぞという相反する2種の論法は論理的にはあってもイイ。
 しかし『ティガ』アンチが、ナースデッセイ号ごときを『ティガ』とも共通する要素(爆)だからこそ気に食わない! なぞという論法で批判をするのであれは、ソレはあまりに的ハズレな「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」といった、意図はしていなくとも「排他的ナショナリズム」にも通じている言動でもあるだろう。それでは「ナショナリズム」の部分に「昭和ウルトラ」「AKB48」「ラブライブ」を代入して、「平成ウルトラ」「モー娘」「アイドルマスター」を侮蔑するような、自分は排他的な右翼でないつもりでも実はメタレベルで精神の型としては排他的右翼とまったく変わらない、品性下劣な精神性とも同じになってしまう(笑)。


 2010年代においてよく売れているヒーロー系玩具は、2009年の『仮面ライダーW(ダブル)』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100809/p1)で始まった、カードやカプセルやメダルなどの収集型のサブアイテム多数と、それを開閉や音声などのプレイバリューもあるギミックを備えた変身アイテムにセット挿入する類いの玩具であった。コレが2016年の『ウルトラマンオーブ』以降にウルトラシリーズでも導入されて、様式美的な定番セリフとともに玩具のギミックを延々と見せつつ変身してみせるパターンが一般化している。
――そして、20世紀までとは異なり、メインターゲットの子供たちが喜ぶのであれば、我々大きなお友達もヤボを云うのはよそう! むしろソコで楽しまずにわざわざケチをつけてみせるのは子供番組卒業期の中二病的なメンタルだ! なぞと小バカにしてみせる、20世紀までとは真逆な風潮すら一般化するほどにマニア諸氏も成熟しているのだ――


 よって、本作『ウルトラマントリガー』でも主役ウルトラマンことトリガーは、変身アイテムの底部にカートリッジ(劇中ではハイパーキーと呼称)を差し込むことで変身することが商業的宿命ともなっている。体色が変わるタイプチェンジにあたっても、ティガのように自力で変転するのではなく、トリガーのインナースペース(体内・精神世界)にいる顔出しの主人公青年が、変身アイテムにそれ専用のカートリッジを差し込むことで、トリガーは赤色や紫色主体のモードにタイプチェンジを遂げている。


 こーいうあたりもまた、マニア上がりのスタッフたちが撮影現場で仕方なくノルマとして玩具的な変身アイテムを描写して、しかして変身ポーズは基本は取らせずに無言で変身させることで、第1期ウルトラシリーズへの回帰を図っている! なぞと当時の年長マニアたちの好評を博することができていた『ウルトラマンティガ』における変身シーンとは、まるで真逆で相反する様相を呈してもいるのだ。


『ティガ』的ではない玩具まるだし銃器にも変型する変身アイテムの疑似SF的な正当化の巧妙さ!


 とはいえ『トリガー』も、単に『ティガ』のリスペクトのようでも各要素を180度真逆にしただけだという、それはそれで芸のナイことをしているワケでも決してない。厳密には90度なり270度といった角度でヒネったアレンジにしてみせてもいるのだ。ソレが変身アイテムにいかにも玩具的なウルトラマンや怪獣の絵柄がプリントされた多数のカートリッジをハメることを、一応の『ティガ』的な『トリガー』世界の中で可能とするためのエクスキューズで擬似SF的な設定群のことである。
 ソレすなわち、ウルトラマントリガーに変身するためのアイテム自体は、劇中内でも超古代文明の遺物をモチーフにしたことが説明されている。しかし、ウルトラマンや怪獣の属性パワーを持ったカートリッジの方は遺物のレリーフだけでなく、地球怪獣や宇宙怪獣のデータなども基に怪獣攻撃隊の科学の力で製造したのだとするのだ!
 しかして、それだけだと怪獣攻撃隊にはヒーローの正体がバレていることにもなってしまう。『ウルトラマン』作品のみならず、邦洋も含めた変身ヒーローもの一般のアイデンティティだともいえる、一般人や怪獣攻撃隊がヒーローに安易に依存や依頼をしてこないようにするための作劇的直観的でもあった「ヒーローは正体を隠匿している」といったテーゼや「ヒーローの孤高さから来るヒロイズム」といった魅力には抵触してしまうことにもなるのだ。


 そこで『トリガー』が採った方策は……。劇中世界の大財閥の会長がその持てる資力と科学力で、内々に超古代文明由来の変身アイテムを製造したとする! そして、会長に養育されていた天才科学少年でもある隊員クンがあまたのカートリッジを製造したとする! そしてダメ押しで、主人公青年の秘めたる素質&運命を直観した会長が、#1中盤にて彼に変身アイテム&カートリッジを授与するのだ!
 つまりは、世人や怪獣攻撃隊の隊長や隊員たちは主人公青年がトリガーであることは知らない。しかし、会長と天才少年隊員クンだけはその正体を知っていて、そのサポートもすることで、「多数のサブアイテムを人間の科学技術での製造」としつつも「ヒーローの正体の隠匿」を両立させることが一応はできているのだ!


 ウルトラマントリガーのタイプチェンジにすら無関係な、怪獣属性のカートリッジの位置付けについてはドーするか? それについても、この変身アイテムを量産化した怪獣攻撃隊の一般装備(!)として、しかして変身には用いさせずに、銃型に変型させて怪獣カートリッジを差し込んだ銃器として使用することにしたのだ!


●古代怪獣ゴモラのカートリッジであれば、1966年の初代『ウルトラマン』初登場時の能力ではなく、はるか後年である2007年の『ウルトラギャラクシー大怪獣バトル』にて主役ヒーロー怪獣として登場したときの追加能力ではあるけれども「超振動波」を銃撃!
●宇宙怪獣エレキングのカートリッジであれば「電撃光線」を銃撃!
●宇宙恐竜ゼットンのカートリッジであれば「火球」を銃撃!
●潮吹き怪獣ガマクジラのカートリッジであれば「水流」を銃撃!


 こうすることによって、怪獣カートリッジの存在にも一応の理を持たせることができているのだ――まぁ本作にかぎった話ではないけど、近未来科学というよりかは遠未来科学、ほとんど魔法の域にも達しているのだが(笑)――。


 近年では仮面ライダーも主役ライダーは昭和以来の変身ベルトを常用するも、2号や3号ライダー以降の脇役ライダーたちは、あるいは戦隊ヒーローたちも、銃器にも変型が可能なプレイバリューのあるアイテムを変身道具として用いることが増えている。オトナや年長マニア目線で見れば非リアルでバカバカしいともいえる趣向なのだが、その価値観を背伸び盛りの小学校中高学年にはともかくメインターゲットである幼児層に適用してはゆめゆめならない。用意周到なマーケティング・リサーチや販売結果に伴なう幼児たちの趣味嗜好に応えたモノだからこそ、近年では変型ギミックが装備された変身アイテムが連発されているのであろうから。


前作ヒーロー&ライバルキャラもが同型変身アイテムを使用することで、商業性&SFドラマ性も両立!


 加えて、このカートリッジには前作ヒーロー・ウルトラマンゼットのタイプチェンジ各種までもが、あとで知ったことだが商品としてラインナップされていた(ナンでやねん!?・爆)。……そうか。それで本作『トリガー』でも早々にウルトラマンゼットが前後編で客演することにもなったのか!?(笑)
 もちろん、近年のウルトラシリーズの中では子供間でも好評だった『ウルトラマンZ』人気にあやかった商品ラインナップであることは明白だ。このへんも玩具会社・バンダイ側の主導であって、コレによってウルトラマンゼットの客演を『トリガー』製作である円谷プロにも要求。今や円谷側のスタッフもそのへんでヘンに潔癖になって反発することなどもなく実にサバけたものである。
 科学少年隊員クンがウルトラマンゼットへの変身アイテムでもある故障したウルトラゼットライザーを解析して、ゼットのタイプチェンジ属性までをも秘めている各種カートリッジを製造! さらに、ゲストで登場した前作主人公・ハルキ青年もまた、トリガーへの変身アイテムの同型版を貸与どころか譲渡されて、それを使用してウルトラマンゼットへと変身! そして、その変身アイテムをもらって、『トリガー』世界の地球を去っていく!
 オオッ! なるほど! そう来たか! コレであれば、前作『Z』がスキでも『トリガー』はソレほどでもない……なぞという小ナマイキ、もとい気ムズカしいガキもゲットできて、彼らも本作の変身アイテムを購入して「変身ごっこ遊び」をしたくなるやもしれない!?


 かてて加えて、半年放映シリーズの折り返し地点でもある、2010年代のウルトラシリーズでは製作予算節減のための総集編回でありながら、単なる番外編ではなくメインストリームにも接点を持たせることが毎作恒例ともなっている#13(笑)では、本作のレギュラー悪でもある悪のウルトラマンこと「闇の3巨人」ともまた別の第3勢力として登場していた宇宙のお宝ハンター青年・イグニスが、ナースデッセイ号内にある科学少年隊員クンの研究室に無造作に置かれていた変身アイテムの製造途中の予備を失敬してしまう(汗)。
 その1話前の#12ラストでも、「闇の3巨人」とも別の「闇の巨人」であり、ウルトラマントリガーの3000万年前における姿でもあったトリガーダークをようやく撃破した際に爆発四散した残滓のエネルギーを、イグニスはその体内に吸収している光景が描かれた。今度はこのイグニスが予備の変身アイテムを使って新たなるトリガーダークへと変身して、トリガーに立ち向かってくるのだろう! たしかに強敵キャラクター・トリガーダークが2話ぽっきりしか登場しないのであれば、あまりにもモッタイないので、コレもまたカンゲイすべき趣向ではある!


――往年の『百獣戦隊ガオレンジャー』(01年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20011113/p1)でも、シリーズ途中で参加のスマートでカッコいい敵幹部・狼鬼(ロウキ)の中の人が改心して6人目の追加戦士・ガオシルバーへと転生を遂げている。しかし、狼鬼が退場したことで作品の活劇度・熱血度がややウスれてしまったのも事実だったので、個人的にはガオシルバーとはまた別に狼鬼は狼鬼として単独で残留思念が自我&実体を持ったことにでもして、シリーズを通じて今度はガオシルバーとの因縁・鏡像バトルを繰り広げてほしかったことのリベンジの実現がココに!?(笑)――


 玩具性のイイ意味での強調。しかして、理屈ヌキでのムリくりな割り込みでもなく、一応の児童レベルでの知的好奇心を惹起する擬似科学・擬似SF的なエクスキューズは付けることで、ウルトラマントリガーへの変身アイテムを使用したのにウルトラマンゼットへ変身できたことの説明&正当化までもができていたのだ。
 むろん、ヒーロー活劇とはヒーローが悪党をやっつける「肉体的カタルシス」を擬似体験することが主眼のジャンルではある。しかし、それと比すれば二次的なモノではあっても、こーいう虚構性や玩具性の高い要素にパズルのピースをハメるように擬似SF的な言い訳を付けることで、そしてソレがまたピタッとハマったときの一応の「知的カタルシス」もまた2番目として、幼児はともかく児童たちにはアピールするものでもあるだろう。だから、今後とも子供たちのジャンク知識収集癖、怪獣博士的な「知的快感」を惹起するためにも、このような趣向は大いに導入すべきだろう!――もちろん3番目としてならば濃厚な人間ドラマやテーマ主義作品もあってイイ――


――前作『ウルトラマンZ』でも宿敵キャラや第3勢力キャラが変身アイテムをコピーして怪獣に変身したり、近作『ウルトラマンR/B』でもヒーローが所有するのと同型の変身アイテムを使用してライバルキャラたちがダークヒーローや怪獣に変身している、やはり子供もマニアも喜びそうなカンゲイすべき趣向があったことを、ここでホメたたえてもおきたいが――


闇の3巨人の原典、映画『ウルトラマンティガ THE FINAL ODYSSEY』の当時におけるビミョーな評価(汗)


 話は戻るが、前作ヒーロー・ウルトラマンゼットとの早々の共演! このあたりもまた、「昭和ウルトラマン」の世界観とは決別して、執拗なまでに昭和のウルトラ兄弟とは共演させようとはしなかった『ウルトラマンティガ』とはやはり別モノの趣向であった――『ティガ』終盤における初代ウルトラマンとの客演編は、円谷プロ草創期を描くことを主眼とした番外編に過ぎないので正編とは云いがたい――。


 先に本作『トリガー』は、「昭和ウルトラ」世界の後日談でありつつもその作風や作劇自体は真逆であった『ウルトラマンメビウス』の方法論に近いと述べた。しかし、それもまた「ニア・イコール(近似値)」の意味ではあって、『メビウス』の手法とは「イコール」そのものでもなかった。
 つまり、フタを開けてみれば、「平成ウルトラ」や『ティガ』要素はさほどに強くなく、「昭和ウルトラ」世界出自のメトロン星人が怪獣攻撃隊の少年隊員として参画していたり、「昭和ウルトラ」世界出自の怪獣ギマイラまでもが早々に登場を果たしていたのだ。


 そして、「闇の3巨人」の存在である。ご承知のとおり、この悪のウルトラマン3人衆は96年に放映が開始された原典『ティガ』に登場したキャラクターですらない。次作『ダイナ』も終了して2年ほどが経ってからの西暦2000年に公開された、『ティガ』と『ダイナ』の間の7年間の空白の時代を描いた映画『ウルトラマンティガ THE FINAL ODYSSEY』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19961209/p1)が初出である闇の3巨人をリメイクしたキャラクターなのである。


 当時を知らない年若い特撮マニア諸氏が、原典たるTV版『ティガ』とその後日談たる映画版『ティガ』をワンセットで同質なモノとして捉えて認識するのは仕方がないしムリからぬところもあるのだろう。しかし、当時の時代の空気を知っているロートル特撮オタクたちは覚えているハズだ。この映画版『ティガ』はその設定や内容が小出しに公表された時点で、そしてまた同作が公開後にも、特に熱烈なTV版『ティガ』ファンからは冷ややかな反応やプチ反発が上がっていたことを……。


 まず、TV版『ティガ』においてはカナリ不充分ではあっても終盤の#45「永遠の命」(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19961207/p1)にて、超古代文明が滅亡した理由が一応は明かされていた。そこでは超古代人類が快楽&怠惰に溺れたゆえに滅亡したとされたのだ。しかし、映画版『ティガ』ではその真相とはまったく直結してこないまるで別モノな設定、すなわち超古代文明を襲撃してきた超古代怪獣軍団を撃退した超古代ウルトラマン軍団の内部においても、闇に落ちた者がいて内紛劇が勃発したのだとされたのだ……。
 もちろんコレについても、知られざる秘史があったのだとして好意的に脳内解釈してあげることも可能だ。しかし、それはTV正編にもあった何らかの点描を後付けでも「伏線」として改めて見立て直すことによって、パズルのピースがピタリとハマった! というような「知的快感」などもまるでない、#45「永遠の命」で明かされた超古代人類が滅亡した一件よりも以前のことなのか? 以降のことなのか? それすらもが歴史年表的にも判然としてこない、ホントウにあまりにも取って付けた感が強くて、どころか不整合が生じたとすら感じられる描写であったあたりでプチ反発が広まったのだ。
 そして、『ティガ』世界におけるウルトラマンティガウルトラマンダイナといった、素体としては「光の巨人」としての属性しか持っていなかったハズである平成ウルトラマン像とも大幅にズレがあったことにも、当時のマニア諸氏は引っかかりを覚えていた。加えて、肝心のティガ自身も超古代においては「闇の巨人」であったという、やはりあまりにあんまりな追加設定にもプチ失望が広まった。
 コレはもう昭和の1970年代の「ウルトラ兄弟」の設定を「原点たる初代ウルトラマンウルトラセブンの神秘性を毀損するものだ」として、第1期ウルトラシリーズ至上主義者たちが批判していたことをも、はるかに超えてしまうくらいに振り幅がある平成ウルトラマン像の改変でもあったのだ(汗)。


 TV正編ではカルく一言で言及された程度で、詳細には説明されることがなかったが、超古代怪獣や宇宙人に襲撃されていた太古の地球における超古代文明を救った超古代のウルトラマンたちは、その後にその身体だけは巨石像として地球に残して、その本体である魂・精神・意識としての「光」は、「星の雲」という表現がなされた宇宙の彼方の星雲へと帰っていったとされていた――当時のマニア向け商業誌の各誌でも作品紹介的に説明されていた事項なので、TV正編での不明瞭な説明よりかは商業誌での説明のイメージが当時もう年長マニアであった世代人たちには強いかもしれない――。
 つまり、3000万年前のウルトラマンティガ自身の本体・意識はすでに宇宙の彼方へと去っており、その抜け殻であるティガの巨石像自体にティガ本人の意識はもうすでにないハズであるのだ。ティガという存在はある意味では巨大ロボットのようなモノであり、それに主人公青年たるダイゴ隊員が搭乗して操縦しているだけのモノであったハズなのだ。


 それが! 映画版『ティガ』における悪の女ウルトラマンことカミーラは、ティガをかつての恋人・ティガダーク本人だとして執拗にストーカーのようにして執着してみせる。……いや、現代のティガは抜け殻であって、その意識は現代人の主人公青年たるダイゴ隊員そのものなのであるから、そーいう不整合な描写はさすがにちょっと……(汗)。


 そーいう妄執的な恋情ドラマを展開するのだとしても、


①ティガ本来の本人である魂・意識でもある「光」がティガの身体に帰還してきて、無言でカミーラとも対峙なり拒絶(!)をしてみせる!
②カミーラは妄執で精神に異常を来しているので、ティガとダイゴが別人格であることがわからないほどに病んでいる!


などといったエクスキューズ描写が必要ではあっただろう――しかし、それであってもムリは生じてしまう。「闇の3巨人」自身も元は人間じみた卑小な感情からは解脱している「光の巨人」であったハズなのだ(多分)。実は太古において地球の超古代人類の人々と合体して、カミーラもティガダークもその人間の劣情や恋情によって悪影響を受けてしまったのだ! などといった、さらなる追加設定でもなければ言い訳がつかないモノなのだが、超古代のウルトラマンたちが人間と合体して地上に滞在していたというウラ設定もなかった以上は、この解釈もまたキビしいモノなのだ――


 そーいうワケで、清冽な雰囲気だったTV版『ティガ』正編とは空気感も含めてまるで別モノのややドロドロとしたものであり、超古代文明時代の歴史設定面では矛盾すらをも来たしてしまったビミョーなる評価を頂戴してしまったのが、当時の映画版『ティガ』であったのだ。
 なので、TV版『ティガ』と映画版『ティガ』をまとめて一枚岩のように『ティガ』的なるモノとして捉えている御仁も一部にはいるようだが、それもまた的ハズレではあるだろう。それは「平成ウルトラ」&「昭和ウルトラ」といった「東京」&「大阪」程度の相違でしかないモノを、地球の「北極」&「南極」や「極右」&「極左」のような二項対立・敵対図式で極端に捉えて、その片方を徹底的に撲滅せんとしてムダに戦いだしてしまうような(笑)、心理学でいうところの「認知の歪み」というモノだ。評論オタクを自認しないのだとしても未開の原始人ではないのだから、「昭和ウルトラ」・TV版『ティガ』・映画版『ティガ』といった3作品を直線上の両極端ではなく東京・名古屋・大阪の3地点に相当するモノとして測定したり、あるいは東経・北緯・西経・南緯のいずれの地点にマッピングするのが妥当であるのか? といったかたちで物事を認識できないようではマズいだろう(汗)。


 ただまぁ、映画版『ティガ』以前に、TV版『ティガ』単独だけで観た場合であっても問題がなくはなかった。そもそも超古代文明の実態やその滅亡の理由を小出しに明かしていくようなタテ糸・シリーズ構成が『ティガ』本編には存在しなかったからである。
 よって、#1で落下してきた隕石内から回収されて、超古代の巫女・ユザレからのメッセージを立体映像で投影する円錐型でハイテク金属製の「タイムカプセル」といったシリーズを通じたキーアイテムたりうる存在も忘れ去られて――マニア上がりの川崎郷太が脚本&監督を務めた#28「うたかたの…」(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19961204/p1)でだけ復習的に現物映像ヌキ(汗)でのセリフのみにて言及――、終盤では「タイムカプセル」もヌキにしてユザレの霊体だけが単独で出現してしまうなどで、統一感がないところもあったのだ。


原典たるTV版『ウルトラマンティガ』再論! 超古代怪獣と超古代文明は劇中で有効に活用されていたか!?


 四半世紀前に感じていた『ティガ』に対する少々の不満を愚痴ってみせるのも実に見苦しいことではあろうが(汗)、せっかくの機会なので少々語ってみせたい。『ティガ』において、作品の看板の一角を占めなければならなかったハズである「超古代怪獣」たちのことである。
 #1(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19961201/p1)では一挙に2種もが出現した「超古代怪獣」は、明らかにティガこと「光の巨人」像の破壊を意図的に目論んで日本に襲来していた。であれば、『ティガ』世界における「超古代怪獣」にカテゴライズされる怪獣たちは、通常の野良怪獣とは異なる独特の意図や特性を持った存在として描くべきであった。そして、#1以降も「超古代怪獣」種族を時折りは登場させて、それらには野良怪獣たちとは明瞭に異なる行動を取らせて、ネルフ本部の地下深くにある「リリス」を目指して襲撃してくる「使徒」怪獣よろしく、「タイムカプセル」や「光の巨人」目当てで防衛軍基地を目指して襲撃するパターンなどに統一する! そして、その行動パターンの徐々なる認知や「タイムカプセル」解読なども契機にして、「超古代文明」の実態や滅亡の真相も我らが「現代文明」が抱えている数々の難問との類似などでも風刺性を出しながら小出しにしていくべきだったのであり、そのようなストーリーであった方が『ティガ』という作品はもっと盛り上がったのではなかろうか?


 『ティガ』#23「恐竜たちの星」では、サイボーグとして改造された恐竜が登場した。太古の恐竜に対する人為的な改造の形跡! すわ3000万年前の超古代文明ネタとも関連させるエピソードが登場か!? と思いきや、かの超古代文明とはまったくの無縁の出来事として描かれてしまうどころか、たとえ結果的には無関係であっても、その可能性すら想起もされずに終わってしまうのだ……(遠い目・笑)。
 #23に先立つ#18「ゴルザの逆襲」では、#1で取り逃した超古代怪獣ゴルザが再登場を果たした回であった。が、ゴルザとの対決は同話でアッサリ決着してしまう……。ウ~ム。ゴルザを『ティガ』における特別格の怪獣扱いとして、このリベンジ戦でも「引き分け」で終わらせて、さらに幾度かの再戦を演じさせてあげてもよかったのではなかろうか? 2度目で決着が付いてしまうようではやや物足りないのだ。
――シリーズを通じて最低3度は対決してイイ勝負も演じてくれないと、強敵感なり好敵手感がイマイチ出せないという意味では、後年の『ウルトラマンメビウス』に登場した宇宙剣豪ザムシャー(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060928/p1)、あるいは『ティガ』以前に放映された『仮面ライダーブラックRX』(88年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20001016/p1)における前作『仮面ライダーブラック』(87年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20001015/p2)での悪の宿敵ライダー・シャドームーン復活編にも同じ問題点があるのだが(もちろん1回戦だけで終わってしまった場合と比すれば、2回戦でもやってくれた方がマシですよ。トリガーダークもコレに同じ)――


 そして、都合3種目の「超古代怪獣」が登場したのは、ズッとはるかに飛んでシリーズも3/4を消化してしまった#39「拝啓ウルトラマン様」に至ってのことだった。しかし、この回はゲストキャラによる人間ドラマ主導回であって、それはそれでイイとしても、そこに登場するのが「超古代怪獣」である必然性はない回であったのであり、その怪獣の特性や由来が主眼となることもなかったのであった(笑)。
 #44「影を継ぐもの」に登場した超古代狛犬怪獣ガーディーはいわゆる超古代怪獣ではなく、「光の巨人」に列する「光の巨犬」であろうからコレは除外とする――ティガやイーヴィルティガなどの巨人像とは異なり、巨犬像ことガーディーに超古代時代の意識が残っているあたりは設定的には不整合だが……カワイイから許す(笑)――。すると、あとは最終章3部作に登場した超古代尖兵怪獣ゾイガーのみとなる。そう、『ティガ』においては「超古代怪獣」というカテゴリーに当てはまる怪獣はたったの4種しか登場していなかったのだった(汗)。


 コレは次作『ダイナ』における#1~2のあとは第3クール後半にならないと登場しない「スフィア怪獣」や、「根源的破滅招来体怪獣」が結局あまり登場しない次々作『ガイア』にもいえる欠点である。むろんのこと全話に登場する全怪獣を「超古代怪獣」などに統一すべきだった! なぞという単調な主張をしているのではない。「魔王獣」というその作品独自の怪獣カテゴリーを登場させた『オーブ』や、宿敵が変身アイテムで怪獣に変身するのが基本であった『ルーブ』では、官僚主義的に硬直化したパターン化をさせずに時折りは野良怪獣も出現させていた。シリーズの「主敵」を異次元人ヤプールが繰り出す「超獣」としていた『ウルトラマンエース』における#7「怪獣対超獣対宇宙人」(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060618/p1)よろしく、ストーリーや登場怪獣のバリエーションにも変化を付けており、そういったパターン破り・柔軟さはむしろ子供の方こそ喜ぶようなモノだろう。
 しかし、シリーズの1/3くらいの話数は、その作品独自の「主敵」となるカテゴリーに含まれる怪獣を登場させることで、「超古代文明とは何か?」「人類の宇宙進出を妨害する銀球スフィアとは何か?」「根源的破滅招来体とは何か?」といった議題を小出しに並走させていくようなシリーズ構成にはなっていないことに対する批判は、特撮評論同人界などでは当時も少数ながらあったことは記録に残しておきたい。


 『ティガ』と同一世界の後日談作品である次作『ウルトラマンダイナ』でも、#10「禁断の地上絵」(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19971201/p1)では南米にある超古代文明遺跡ネタ、#14「月に眠る覇王」(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19971202/p1)でも月面上の超古代文明遺跡ネタが登場している。作品の世界観的にもソレらは前作『ティガ』に登場した3000万年前の超古代文明とも接点があるとして描いてあげた方が、当時の子供やマニア諸氏こそ狂喜したのではなかろうか?
 その意味で、地球ならぬ火星の大地にも3000万年前の超古代文明の遺跡があったとして描いた『トリガー』は、本来かくあるべき『ティガ』ならぬ『ダイナ』もココにある!(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19971204/p1) といった感もあるのだ(笑)。


――その伝で、本作『トリガー』では「超古代怪獣」ならぬ「~闇(やみ)怪獣」という、怪獣たちの「別名」によって本作独自の怪獣カテゴリーを作っているけど、シリーズも半分を消化した#13の時点で、原典『ティガ』とは異なりすでに4種もの「闇怪獣」が登場しているあたりもまた、児童レベルでの怪獣博士的な知的好奇心(笑)もくすぐってくるので好印象である――


 ……いやまぁ、超古代に飛来したウルトラマンたちが超古代怪獣&宇宙人の猛攻から辛うじて防衛を果たすも、甚大なる被害を受けた超古代文明は衰退していった……というような活劇チックでスケールのデカい真相が明かされるのかと思いきや、超古代怪獣や宇宙人の襲撃にはまったくふれずに、単に超古代の麻薬植物の快楽に溺れて超古代人類は自滅していった……なぞといった、TV版『ティガ』において明かされた真相もまたあまりに卑小で片手落ちに過ぎて、その時点ですでに落胆の念を覚えていたマニア諸氏もいたことも、歴史の片スミにひとつの証言として残させてもらいたい。


 そう。TV版『ティガ』本編にもその後日談たる映画版『ティガ』にも相応にスキや粗があるという評価は当時も少数ながらあるにはあったのだ。しかし、たしかに全員とはいわず当時の特撮マニアの大勢は、TV版『ティガ』本編については筆者が指摘してきたようなことどもは些事にすぎないとも見たようで、熱烈な絶賛を送っていたというのは事実ではある。
 けれど、映画版『ティガ』に対しては、酷評という域ではないにせよ冷ややかな評価を与えていたというのが、その当時にすでに子供ではなく成人マニアの年齢に達していたロートルな筆者による歴史証言となる。


『ティガ』の時代! 『激走戦隊カーレンジャー』『電磁戦隊メガレンジャー』『ビーファイターカブト』!


 付言させてもらえば、『ティガ』が放映された96~97年には、東映でもオタク第1世代が初めてメインプロデューサー&メインスタッフの中核を占めることができた時代で、東映の高寺成紀(たかてら・しげのり)プロデューサーによる『激走戦隊カーレンジャー』(96年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20110521/p1)や、脚本家・荒川稔久(あらかわ・なるひさ)&小林靖子(こばやし・やすこ)も頭角を現してくる『電磁戦隊メガレンジャー』(97年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20111121/p1)、メタルヒーローシリーズでも『重甲ビーファイター』(95年)の続編『ビーファイターカブト』(96年)などが放映されていた。そして、CG・デジタル合成の投入も本格的に始まったことによる斬新な特撮映像、脇役やゲストキャラの再登場またはイレギュラーキャラ化、シリーズ前作の舞台設定をも包含した超古代(!)から続いているスケールの大きな因縁劇といった、タテ糸・連続ドラマ性なども『ティガ』以上に高い精度で達成されていた。
 当時の筆者個人の評価も、『ティガ』も悪くはないけど、それよりかは『カーレン』『メガレン』『BFカブト』の方が完成度は高いというモノであった。しかし、当時はまだまだ東映特撮は一切観賞しない東宝・円谷至上主義者が多数派の時代であったので、特撮評論同人界などではともかく商業誌レベルでは『ティガ』賛辞だけが幅を効かせており、『カーレン』『メガレン』『BFカブト』などの東映作品に対しては、論評・読者投稿などでも批評的・好意的な言辞が大々的に表明されることはなく、複雑な気持ちにさせられたモノであった。


 幾人かのゲストキャラが話数をまたいで再登場したことをもって、『ティガ』にはそれまでの日本特撮にはなかった「連続性」がある! なぞという論法も当時は流通していた。しかし、担当脚本家は異なっていても怪獣攻撃隊の隊長の幼い娘や(『帰ってきたウルトラマン』)、隊員の母君が(『ウルトラマンタロウ』)、話数をまたいで再登場する作劇などは、合体ロボットアニメの元祖『ゲッターロボ』(74年)なども含めて70年代前半からあった趣向ではあり、80年代にも『宇宙刑事シャリバン』(83年)やスーパー戦隊超電子バイオマン』(84年)に『電撃戦隊チェンジマン』(85年)といった作品群では、『ティガ』以上の連続大河ドラマをすでに達成すらしていた。
 その逆に、少数ながらいた『ティガ』批判派も絶賛派による論法自体をヘンに内面化して評価基準としてしまっており、「『ティガ』はハードでシリアスでリアルな作風だから子供向け作品としてはダメだ」とか「連続性があるから子供向け作品としてはダメだ」などという論陣なども張っていた――いやそんなにハードで精巧な作りでもなく連続性にも欠如していた『ティガ』に対して、それもまた的ハズレな批判であるとしか思えなかったモノだけど――。
 そんな両極端な反応も見るにつけ、当時の「特撮評論」の未成熟、東宝&円谷と東映、60年代作品と70年代作品に対する論評の分断・亀裂を嘆いたモノである。……ひょっとすると、今でもあまり状況は変わっていないのかもしれないが(笑)。


ウルトラマントリガー』とは、本来かくあるべき『ウルトラマンティガ』だった!?


●火星にもあった超古代文明の遺跡や光の巨人像!
●昭和ウルトラ、もしくは平成ウルトラ3部作的な1話完結形式ではなく、キチンとしたタテ糸やシリーズ構成!
●ゲスト怪獣とは別のレギュラー悪の設定(悪の3大ウルトラマン!)
●レギュラー悪ともまた別の第3勢力キャラも配置!
●いかにも玩具的な変身サブアイテムや銃器を、劇中でムリなく登場させるためのエクスキューズ設定!
●タテ糸要素は映画版『ティガ』の反復だが、同作の弱点やツッコミどころに対する巧妙なるアレンジ!
●「超古代のティガダーク」と「現代人の主人公青年」とは別人だというある意味では致命的な弱点を、「超古代のトリガーダーク」の内面に生じた良心(魂)が輪廻転生した存在として「現代人の主人公青年」を設定したことでの回避!
●「超古代のトリガーダーク」の良心を呼び覚ました御仁自体が、超古代にタイムリープした「現代人の主人公青年」、つまりは「トリガーダークが転生した自分自身」だったとすることで、タイムパラドックスは発生せず、むしろタイムリープそれ自体が運命・必然だったようにも描いてみせるアクロバティックなSF作劇!


 筆者はある意味で、本来かくあるべきだった『ティガ』がここにある! という気もしているのだ(笑)


 いや、『ティガ』本編を否定したり傷つけたりもせず、オトナの態度でリメイクするのであれば、コレはもう原典ともパラレルワールドのかたちで接点を持たせた「後日談」であり「リメイク」でもあるとしてみせた『トリガー』の作り方には唸らせられるしかない。
 そして、単なるリメイクかと思わせてパラレルワールドな後日談でもあったという作りは、往年の名作深夜アニメ『ひぐらしのなく頃に』(06年)の完全リメイクかと思わせてパラレルワールドとしてのメタ後日談でもあり同作第5期(?)でもあった昨秋の深夜アニメ『ひぐらしのなく頃に 業』(20年)とも実は同じ作品構造になっているではないか!? ……と思ったら、同作も『トリガー』でメインライターを務めているハヤシナオキがシリーズ構成を務めていた(爆)。しかも、氏の正体は90年代末期~00年代にかけて「(美少女)泣きゲー(ム)」ジャンルを大いに勃興させた立役者のあの御仁であるらしい!?――「えいえんはあるよ。ここにあるよ」の作者さん!?――


――氏については『トリガー』のメイン監督も務める坂本カントクが招聘したそうだ。各種インタビューも閲覧するに、坂本カントクは自身の大好物だけを摂取している狭い御仁ではなく、アニメなどの隣接ジャンルのヒット作も意図的にお勉強として観賞するようにしているようだ。その万分の一にも満たない筆者ごときも、加齢に伴ないハシゴを徐々に外されていっている感があって(爆)、ある時期から意図的に隣接ジャンルも観賞するようにしているのだが、たしかにそこで得られた物の見方や批評尺度が、特撮作品批評のさらなる深掘りにも大いに重宝していたりもする――


 もちろん、1996~97年時点における『ティガ』の視聴率・玩具売上高・マニア間での反響といった次元では、本作『トリガー』はそれらを超えることはできないであろう。しかし個人的には、純・作劇の技巧面だけで云ってしまえば、序盤こそ近作『ウルトラ』との比較でいえばややオトナしかったものの、本作『トリガー』はすでに原典『ティガ』を超えているどころかはるかに陵駕しているようにすら、少なくともシリーズの前半折り返し地点を終了した現段階では思うのだ。


『ティガ』をも超えて、星辰の世界で展開される『ウルトラギャラクシーファイト』ともリンケージ!


 そして、シリーズ後半戦の一発目となる#14は、予告編によるとナンと! 今や少数派の還暦前後の第1期ウルトラ世代などはともかくとしても、筆者なども含む現今の特撮マニア諸氏には熱烈なる賞賛を巻き起こしているネット配信作品『ウルトラギャラクシーファイト』シリーズ(19年~・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200110/p1)とも連動!
 同作における敵種族である黄金色の悪のヒーロー集団こと究極生命体=アブソリューティアンのひとりで、来年2022年に配信される同作の第3作目こと『ウルトラギャクシーファイト 運命の衝突』に登場することがすでに告知されていた、両耳から反り上がった猛牛のようなツノが生えているアブソリュートディアボロが先行して登場! 『トリガー』世界の地球に侵攻してきて、トリガーとも戦うというのだ!
 そして、その『ウルトラギャラクシーファイト』シリーズで大活躍している東南アジアのマレーシア向けの新ウルトラマンことウルトラマンリブットまでもが助っ人参戦! 映画『ウルトラマンゼロ THE MOVIE 決戦!ベリアル銀河帝国』(10年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20111204/p1)ではメインヒロイン・エメラナ姫を演じた今をときめく土屋太鳳(つちた・たお)ちゃんの弟で、近年の深夜アニメ『荒ぶる季節の乙女どもよ。』(19年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210411/p1)や『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。完』(20年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20150403/p1)に『さよなら私のクラマー』や『白い砂のアクアトープ』(共に21年)などではメイン格のレギュラー声優としてもその名をチョクチョクと見かける土屋神葉(つちや・しんば)クンが顔出し出演(!)して、リブットの人間態を演じるのだともいうのだ!


 こ、こ、こ、こんな個別単独の作品世界を越境して、並走して展開中のほかの現役シリーズとも関係性を持たせて、作品自体やシリーズ全体の世界観をもスケール雄大に拡大させてワクワクさせてくれるエピソードや特撮ジャンル作品を観られる日が現実に来ようとは!
 たしかにマニア諸氏も明瞭に言語化して意識できているかはともかくとしても、以前からぜひとも観てみたかった、各作が連結された作り方の趣向だけれども、まさかそれがよりにもよって、『ティガ』リスペクトを謳っている本作『トリガー』にて実現しようとは!


 本作『トリガー』はホントにどのへんが『ティガ』リスペクトなのであろうか? 『ティガ』リスペクトって営業的売り文句・タテマエでしかないのではなかろうか? カナリ突き放したクールな目線からの実にクレバーな再構築・プラス・アルファな作品だとしか思えないのだけれども(笑)。


 2020年代のウルトラシリーズのみならず日本の特撮ジャンルは、例えればアメコミ(アメリカンコミックス)ヒーローにおける、主役級のヒーローが個々に看板作品を持ちつつも巨悪に対しては結集して立ち向かう、マーベル社の映画『アベンジャーズ』(12年~・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190617/p1)やDC社の映画『ジャスティス・リーグ』(17年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20171125/p1)路線を目指すべきである!――DC社の悪党キャラが大集合してさらなる巨悪(笑)に立ち向かう映画『スーサイド・スクワッド』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20160912/p1)などでも可―― それこそが「日本特撮の復興」もとい、さらなる「興隆」にもつながっていくのだ! といったことを微力ながらも主張していこうと考えていたのだが、現実の作品に先を越されてしまったではないか!?


――まぁ、坂本カントクが関わった東映の新旧ヒーロー共演チーム名『スペース・スクワッド』(17年)は『スーサイド・スクワッド』(16年)、円谷の新旧ヒーロー共演チーム名「ウルトラ・リーグ」(20年)も『ジャスティス・リーグ』(17年)で、万人にミエミエのネーミングの引用だったけれどもネ(笑)――


 ホントは2010年代初頭に、歴代仮面ライダーと歴代スーパー戦隊を映画『仮面ライダー×スーパー戦隊 スーパーヒーロー大戦』(12年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20201115/p1)で共闘させて、その翌年には映画『宇宙刑事ギャバン THE MOVIE』(12年)において登場させた2代目宇宙刑事たち3人とも連結させるかたちで、映画『仮面ライダー×スーパー戦隊×宇宙刑事 スーパーヒーロー大戦Z(ゼット)』(13年)までをも実現させていた東映ヒーロー作品でこそ、『ライダー』『戦隊』各作のプロデューサーレベルではなく、その上位に立つ東映白倉伸一郎プロデューサーや塚田英明プロデューサーあたりがもっと計画的・総合的に仕切って『ライダー』『戦隊』各作の1クールに1回くらいは、70年代東映特撮におけるクールの変わり目にあったような再生怪人軍団が登場するイベント編の現代的アレンジとして2代目宇宙刑事が宇宙から、作品によっては並行宇宙を超えてくるかたちで客演!
 地球はライダーやスーパー戦隊が守っているが、宇宙では宇宙刑事たちがまた別の敵軍団とも戦っているのだ! などといった2層・3層・多層構造を持った数年長レベルでの「連続性」「シリーズ構成」によるヒキ・興味関心も作っていき、年1で公開される映画などではTVでも小出しに顔見せしていた巨悪の本格的な襲来に対して、すでに面識もあるライダー・戦隊・宇宙刑事たちが一致団結して立ち向かう! などといったフォーマットにして、大いに盛り上げてほしかったモノだったのだけど……。
――あまりにもその場かぎりで、先輩ヒーロー・リスペクトの欠如、TVとの連動性もないラフでテキトーな作りの東映ヒーロー大集合映画や、それとも真逆なヒーロー大集合要素がない映画『仮面ライダー1号』(16年)のような作品が無計画に乱発されたこともあってか、夏休み映画と正月映画はともかく、毎年春休み~ゴールデンウィークの時期に公開されていた白倉プロデュースのライダー×戦隊のヒーロー大集合映画路線だけは興行収入激減の末に消滅してしまったのはご承知のとおりである(涙)――


 ここ10年ほど、2010年代のウルトラシリーズにおける中盤の総集編回の脚本を担当し、マニア諸氏も絶賛してきた『ウルトラゼロファイト』(12年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200314/p1)・『ウルトラファイトビクトリー』(15年)・『ウルトラファイトオーブ』(17年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20170603/p1)・『ウルトラギャラクシーファイト』シリーズ(19年~)や、『ウルトラマンタイガ』(19年)以降にTV本編と連動して無料動画配信サイト・YouTubeにて配信されるようになった、ウルトラシリーズ最新作をウルトラ一族の側から見たウラ側や番外編に前日談などを描いた「ボイスドラマ」でも脚本を担当している足木淳一郎。
 本作『トリガー』では先のハヤシナオキと連名で、ついに「シリーズ構成」の役職にまで昇格している。経歴を調べてみると82年生まれの円谷プロ所属で、毎年の年末年始に開催される「ウルトラヒーローズEXPO(エキスポ)」内にて上演されているTV正編の「前日談」や「後日談」に「秘史」といった位置付けのアトラクショーを「脚本」のみならず、その「演出」までをも手掛けているそうだ!――アトラクでの「前日談」や「後日談」なども明らかな矛盾が発生しないものはすべて、先の『ウルトラギャラクシーファイト』では正史として全肯定されて劇中のセリフでもその旨が言及されているそうナ――。よって、我々モノ書きオタクのような単なる文弱の輩(汗)とは異なり、ヒトさまにも号令できるコミュ力・胆力・交渉力などもあるのだろう。
 この世は結局は社風などではなく個人としての人間力・人格力がモノを云う。そうであれば、氏は今後は円谷プロ社内でもお偉いさんなりプロデューサー職などにも出世ができそうである。当時の現役ウルトラマンであったU40出身のウルトラマンタイタスやO50出身のウルトラマンフーマとは同族の先輩であるのに、世代人のみならず子供たちでも喜びそうなU40出身のウルトラマンジョーニアスやO50出身のウルトラマンルーブたちといった先輩戦士たちが助っ人参戦するイベント編が存在しなかった! などという『ウルトラマンタイガ』のような、いささかサービス精神には欠ける愚劣な作りの新作などは今度こそは回避して(笑)――同作をその一点をもって全否定をしているワケではないので念のため――、TVシリーズをネット配信作品やアトラクショーともどもヒーロー競演の『アベンジャーズ』的に連動させて盛り上げていくような作品を作っていくだけの才覚や手腕についても期待が持てそうだ。


 『ウルトラマン』TV最新作と続行中のネット配信作品『ウルトラギャラクシーファイト』とのあまりに理想的なスケール感もあふれるワクワクとさせる連動! ソコにこそ2020年代のウルトラの鉱脈があるようにも思うのだ。ウルトラシリーズの物語・人気・商業性のさらなる拡大と発展を祈念して、コレからもオタクの世界の片スミでひっそりと提言&論評をさせていただきたい。


(了)
(初出・当該ブログ記事)


後日付記:ナンと! 『トリガー』の後番組である恒例の半年つなぎの総集編・後番組は『ウルトラマンクロニクルD』(22年)で、『トリガー』の原典『ティガ』の後番組である『ウルトラマンダイナ』がフィーチャーされている! 『トリガー』の後番組は『ダイナ』も含む平成ウルトラ3部作とは無関係なのでは? などと上記文章で憶測していた筆者の面目は丸つぶれ(笑)。自戒も込めて、恥はそのまま晒しておきます(汗)。


ウルトラマントリガー』前半評2 『ティガ』回顧&『トリガー』#1~7評!

(文・中村達彦)

ウルトラマントリガー NEW GENERATION TIGA』視聴前の感慨 ~『ウルトラマンティガ』の時代

(2021年6月19日脱稿)


 2021年7月10日(土)、新しいウルトラマンストーリー、『ウルトラマントリガー』の物語が始まるという。1996年に放送された『ウルトラマンティガ』の続編なのか、スパークレンス(変身アイテム)やGUTS(ガッツ・防衛隊)やアートデッセイ号(戦闘母艦)など、『ウルトラマンティガ』から引用したネーミングの設定が公表されている。
 新しいウルトラマンのデザインとタイプチェンジの名前や色彩も、紫・赤・銀色のマルチタイプをはじめ、紫と銀色のスカイタイプ、赤と銀色のパワータイプとウルトラマンティガのデザイン・タイプチェンジ名を踏襲している。強いて言うなら胸部のアーマーのラインに金の模様が施されているのが大きな違いだ。
 『ティガ』の世界の未来ということだと、『ティガ』の次作『ウルトラマンダイナ』(1997年)の続きの時代ということにもなるのだが。


 前作『ウルトラマンZ(ゼット)』(2020年)に続いて坂本浩一監督らが今度はメインスタッフとして参加し、防衛チーム・GUTS-SELECT(ガッツ・セレクト)が活躍するとか、昭和ウルトラシリーズに登場したメトロン星人が隊員で加わるとか、『ウルトラセブン』(1967年)第11話に登場した悪の竜型メカこと宇宙竜ナースと『ティガ』の防衛隊の母艦アートデッセイ号を意識した巨大戦闘艇・ナースデッセイ号が登場するとの情報も伝えられてくる。
(かつては悪役として登場したメトロン星人だが、『ウルトラマンX(エックス)』(2015年)のファントン星人グルマン博士、『ウルトラマンジード』(2017年)のペガッサ星人ベガなど、近年のウルトラシリーズでも主人公をサポートしたり防衛隊の隊員となったレギュラー宇宙人は存在しており、このメトロン星人も同族別個体で、2014年の『ウルトラマンギンガS』では美少女アイドルの追っかけ(笑)をやっていたメトロン星人ジェイスが描かれている)


 それらを見聞きして「『ティガ』とはちょっと違うな」とも思う。『ウルトラマンティガ』にはそれまでのウルトラシリーズとは刷新された世界観でオリジナルの怪獣だけが登場する作品だった。それに今の時代に新しい『ウルトラマン』を作るにしても、前作『ウルトラマンZ』のような豪快なストーリーを想像していたのだが……。



 25年前に、『ウルトラマン80(エイティ)』(1980年)以来15年ぶりのTVで放映される新作『ウルトラマンティガ』がスタートすると聞いた時(その1996年は初代『ウルトラマン』誕生の30年周年でもあった)、筆者は半信半疑ではっきり言って期待していなかった。それまでにも新作『ウルトラマン』が作られるという話はあったが実現せず、1990年・93年に海外との合作で作られたビデオ作品の『ウルトラマングレート』や『ウルトラマンパワード』も個人的には面白くなかったからだ。
 この90年代前中盤当時でも、初期ウルトラシリーズの脚本家を論評した名著『怪獣使いと少年』(JICC出版局(現・宝島社)・93年・切通理作ISBN:4796606718)や、歴代ウルトラシリーズを等しく再評価した『ウルトラマン99の謎』(二見文庫・93年・青柳宇井郎・赤星政尚・ISBN:4576931180)などで、かつてのウルトラシリーズの面白さを再認識させられ、新作『ウルトラマン』を観たいという気持ちもあったのだが。


 1995年初夏には新作『ウルトラマンネオス』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210530/p1)の制作が進んでいるという発表が商業誌などでなされた。しかし当時、特撮ファンの心は3月に公開された平成『ガメラ』や10月からスタートした巨大ロボットアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』(共に1995年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20220306/p1)に行っており、新作『ウルトラマン』がTVでスタートすると聞いても「何を今さら」「どうせ路線変更とか打ち切りになるんだろう」と当時は思っていたのだ。


 翌1996年初夏。新作『ウルトラマン』は先の『ネオス』95年版とは異なり、ウルトラ一族の故郷・光の国やウルトラ兄弟が出てこないファーストコンタクトの話になることや、ティガという名前になることが公表された。しかし、ウルトラマンが用途に応じて色が変わること、ジャニーズのアイドルグループ・V6(ブイシックス)が主題歌を歌い、V6のメンバーの一人が主演すると聞いて、期待できない気持ちの方が後押しされた。


 それでも96年9月にスタートした第1話の土曜夕方6時からの本放映はリアルタイムでTVの前で視聴した。何だかんだで捨てきれない。心のどこかで子供の頃に見た初代『ウルトラマン』(1966年)や『ウルトラセブン』(1967年)の疑似SF的な面白さをまた見せてもらえるかもと思っていたからだ。
 超古代の巨大石像から目覚めるウルトラマンティガ。だが、久しぶりに観たウルトラマンストーリーの第1話は世界観やストーリーが説明不足でやはり期待外れだった。私事で恐縮だが翌日、都内で開催されたSFサークルの例会で、筆者を含めゴジラウルトラシリーズで産湯をつかって大人になってもそれらを横目で見てきたはずの誰もが『ティガ』について議題にしなかった。1時間経っても話が出ないから、サークル年長者のS氏が「どうして誰も『ウルトラマンティガ』の話をしないのかなー?」と話題を振っていた思い出がある。


 続いて第2話を観たが、第1話で出現した怪獣に備えるため武装が施されるようになる飛行メカ・ガッツウイングや、ティガに変身できる力に当惑する主人公・ダイゴ隊員の姿などが丁寧に描かれていた。
 次の第3話では、ティガが人類の味方か確言できない状況で「人類の味方だ」と言い切る、ウルトラシリーズ初の女性隊長イルマらの活躍が描かれる。
 またティガよりも優位な立場を主張する、ティガよりも太古から地球に先住していたらしい宇宙人・キリエル人(びと)が登場することで、ヒーローの正義がやや相対化される伝奇SF性が強調されていて、夜景のビル街でのキリエル人が変身巨大化した白黒モノトーンのキリエロイドとティガとのスマートな人間体型のキャラクター同士が敵味方で戦いあうさまが、この回から『ウルトラマンレオ』(1974年)でレオのスーツアクターを務めた二家本辰巳(にかもと・たつみ)がアクション監督に入ったこともあってか独特でカッコよかった。まさしく「こんなウルトラマンが観たかった!」が実現されたのだ。


(ちなみにイルマ隊長役の高樹澪(たかぎ・みお)は、1982年から数年間、NHK教育テレビで放送された土曜深夜の若者向け番組『YOU』に司会者のひとりとして出演していたことでも世代人には有名。同じくその番組の司会者であった河合美智子は、『ウルトラマンティガ』と同時期にスタートしたNHK朝の連続テレビ小説ふたりっ子』(1996年)にオーロラ輝子(てるこ)役で出演してブレイクしている)


 主人公ダイゴ役・長野博(ながの・ひろし)はV6での芸能活動のため、『ウルトラマンティガ』の序盤では出番が非常に少なかったが、その分イルマをはじめGUTSの隊員たちのドラマや世界観が深く掘り下げられた。ところどころで「?」の描写もあったが、回を重ねるごとにだんだんと面白くなっていった。
 スタッフは70年代からウルトラシリーズに関わった人から90年代に円谷プロ作品に参加した人まで玉石混交。『ウルトラマングレート』の企画や脚本に関わり、アメリカの作家・ラブクラフトが考案して後代のあまたのジャンル作品にも引用され続けている架空の体系・クトゥルフ神話やホラー・SFなどにもくわしい脚本家・小中千昭(こなか・ちあき)、独特の凝った映像センスを持っていてアメリカ留学の経験を持つ川崎郷太(かわさき・きょうた)監督などの名を意識するようになっていった。
 筆者は当時、先述したS氏とよく『ウルトラマンティガ』の話をしていたが、#22の脚本を執筆した人物にも注目した。その話では有名モダンホラー作家スティーブン・キングの作品を下敷きにしており、脇役メカや以前のエピソードのキャラクターの再使用、人間の闇や光をテーマにしていた。その脚本を執筆したのは長谷川圭一(はせがわ・けいいち)。#22のあとも『ティガ』で脚本を書き続けた。『ティガ』の撮影現場の美術班・装飾出身で、特撮やアニメのファンでもあるオタク上がりであった。脚本を執筆して円谷プロにも持ち込みを続けたが、撮影現場に新しい『ウルトラマン』の方向性を訴え、影のプロデューサーとも称されていたという。長谷川は以後も長く平成ウルトラシリーズを支え、TVアニメや平成仮面ライダーシリーズの脚本も手がけるようになる。


 97年2月、『ウルトラマンティガ』は半年ではなく1年間の放送となることが明らかになり、筆者は作品にいよいよハマった。いつしかV6の主題歌『TAKE ME HIGHER』も口ずさむようになっていた。
 その頃に放映されたシリーズの折り返し地点である#25は、半年で放映が終了すれば最終回になるエピソードであったと数年後の書籍で明かされているが、#3に登場したキリエロイドとの再対決の話となった。夜の都市でキリエロイドに苦戦するティガ。イルマ隊長は通信回線を開いて市民にティガに光を与えるように協力を呼びかける。人々からの電灯や乗用車のランプや懐中電灯などの光のエネルギーを得て復活、勝利を果たしたティガ。それをたたえる人々。
 同年3月、映画で『ウルトラマンゼアス2 超人大戦・光と影』が上映された。劇中ラスト、ゼアスと親しくなった少年や市民がゼアスに声援を送り、奮起したゼアスが勝利する。その時、『帰ってきたウルトラマン』(1971年)でウルトラマンこと郷秀樹(ごう・ひでき)隊員を演じた団次朗(だん・じろう)演じるニュースキャスターが「ウルトラマンが帰ってきました!」と言う台詞があったが、筆者は『ティガ』のことも指しているように思われた。


(ちなみに『ティガ』#25の脚本を執筆した小中千昭と、『ウルトラマンゼアス2』の小中和哉(こなか・かずや)監督は兄と弟で実の兄弟である。兄はシャープでクールなハイセンス志向、弟はマイルドで子役重視や美少女アイドル志向で、両者の芸風は真逆だった)


 『ティガ』のシリーズ後半では、昭和ウルトラでは考えられなかったアイデアが次々に映像化された。かつて初期ウルトラシリーズに参加した実相寺昭雄監督や脚本家・上原正三が参加したことも話題になった。そして、ティガを巡る様々な人々の思惑も映像化されて、過去のシリーズに劣らぬドラマを見せてくれた。
 ダイゴの同僚ヒロイン・レナ隊員とのドラマも、『ウルトラセブン』のダン隊員とアンヌ隊員を彷彿とさせるように描かれた。2人は序盤から友人であったが、ストーリーを重ねるごとに仲が進展していき、最終章3部作の1本目である第50話(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19961207/p1)では、空飛ぶ怪獣ゾイガーを追跡しながらレナはダイゴがティガであることを知っていることを打ち明ける姿も、屈指の名シーンであった。


 最終回も実写ウルトラシリーズで初めての3話構成となり、強敵怪獣ゾイガーとラスボス怪獣ガダノゾーアのために地球規模での大ピンチとなり、ティガも敗北して一度は石像と化す。GUTSをはじめ、今までティガに関わったゲストキャラたちが集まってティガを復活させようとするが、あと一歩で失敗。だが、その様子をTV中継で見守っていた世界中の子供たちの光でティガは復活、ガタノゾーアを打ち破る。
 当時、この終わらせ方にマニア間では賛辞とともに批判の声も相応にあった(批判の筆頭が怪獣絵師こと開田祐治画伯だ)。子供たちの力で復活させるより、頑張った大人たちの活躍でティガが復活するのが正しいのではというものだ。筆者個人は当時、子供たちによる復活でも良いと思った。しかし、何年かしてから大人たちの作戦による復活の方が良かったかもと考え直している(そういえば、昨2020年の『ウルトラマンZ』最終回(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210905/p1)でのハルキとヨウコの空中での自由落下中のドラマ会話とウルトラマンZへの変身シーンも、観ている最中はカッコ良かったが、あとで考えてみるとおかしいところが幾つもあった)。


 『ウルトラマンティガ』は1年の放送をまっとうした。視聴率は2桁に行かず、キャラクター商品も思ったほどには売れず、予算はオーバーしがちであったが、路線変更もなく、『ウルトラマン』や『ウルトラセブン』の香りがするSFドラマを見せてくれた。翌年の日本SF大会では星雲賞を受賞した(実は受賞自体やそのSFドラマの内実のSF性に対して整然と厳しい批判を唱えた人たちもいるにはいたのだが)。


 後年の小中千昭による脚本集『光を継ぐために ウルトラマンティガ』(洋泉社・2015年・ISBN:4800305896)や、自作を小説化した『ウルトラマンティガ 輝けるものたちヘ』(早川書房・2019年・ISBN:4152098686)もお薦めしたい。
 『ウルトラマンティガ』終了後、続編『ウルトラマンダイナ』が作られた。平成ウルトラシリーズは当時の特撮再ブームの一翼を担ったことは明らかである。2000年には平成ライダー第1作『仮面ライダークウガ』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20001111/p1)が放送されたが、超古代の遺跡から超人ヒーローが誕生するなど『ウルトラマンティガ』とも相通じている。


 V6解散のニュースも伝わる中、新たなるウルトラマンの物語のスタートが迫ってきている。『ウルトラマンティガ』同様の秀作となるかどうかだが、『ウルトラマントリガー』の物語をまずは観てみたい。


ウルトラマントリガー NEW GENERATION TIGA』#1~3 『ウルトラマンティガ』とも異なるストーリー展開。

(2021年8月14日脱稿)

1話「光を繋ぐもの」


 スタートした『ウルトラマントリガー』。その第1話「光を繋ぐもの」は、本作がオマージュを公言している『ウルトラマンティガ』(1996年)ではなく、その次作『ウルトラマンダイナ』(1997年)第1話がそうであったことを意識したのか火星を舞台にして始まる(『ダイナ』終盤でもティガことダイゴ隊員は火星に移住して植物を育てていることが明かされていた)。
 脚本は本作がウルトラシリーズ初参加でメインライターを務めるハヤシナオキ、監督は2009年からウルトラシリーズに参加し、本作には企画段階から関わった坂本浩一


 宇宙で長い眠りから目覚めた悪の女ウルトラマンである妖麗戦士カルミラ。かつて自分と戦ったウルトラマントリガーを求めて火星へと飛来。
 その火星は植民都市が建設され、若き植物学者マナカ・ケンゴが重金属成分の多い火星の土に合った花を育てるのに余念がなかった。彼は謎の巫女や巨人が現われる夢に悩まされていたが、良質の土を求めて超古代文明の遺跡がある場所へ向かった。


 奇しくもTPU(地球平和同盟)総監シズマ・ミツクニやケンゴの母親らも遺跡を訪れており、そこへ超古代闇怪獣ゴルバーが出現。攻撃を受けた際にケンゴはシールドを発生させて落石から自身を守る。その姿をシズマに見られて彼に自らの夢を語ったことから、アイテム・GUTSスパークレンスを託される。ケンゴは遺跡の下層に降りると、夢の中で見た巨人・ウルトラマンの石像があった。続いて人間サイズのカルミラが現われ、謎の巫女・ユザレも出現。
 ケンゴはカルミラの攻撃に晒されながら、脳裏に浮かんだイメージに導かれ、GUTSスパークレンスで巨人の石像と合体してウルトラマントリガーに変身!
 地上へと飛び出し、怪獣ゴルバーとカルミラに2対1で羽交い絞めにされるも、遺跡にあった巨大な剣・サークルアームズでゴルバーを倒して勝利する。戦いを終えたケンゴはシズマと共に地球へ行くことになった。



 第1話では火星に植民都市があると描写されて、人工雨を降らせるアナウンスが流れる。その人工雨は第1話後半のトリガーとカルミラの巨大超人同士の戦いでも降っていて、物語が「未来社会」であることを示しつつ、戦いを泥だらけで繰り広げることでの特別感もある特撮演出としても有効に機能していた。前作『ウルトラマンZ』(2020年)第1話(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200723/p1)でも、「巨大怪獣が以前から存在していた作品世界」を示すものとして、人々の携帯に一斉に「怪獣襲来」を報せる警報が鳴り響くシーンがあったが、『トリガー』でも第2話以降も「人類が火星にまで進出した未来社会」であることを示すようなSF的な台詞やシーンもあってほしい。
 地面に置いて上方を見上げるように広角で撮影できる超小型カメラの登場もあって、坂本監督は特撮アクションでもいろいろな角度から撮影している。CG合成で撮影スタジオの天井も大空に変えて、ミニチュアのビルもデジタル合成で大幅に数を増やしてカメラ手前を高速でヨコ移動させることで、スピード感と戦場の広大感を両立させており、長く特撮ヒーローアクションものを手がけてきた経験を活かしている。
 6年前に地球は怪獣に初めて襲われ、それに対抗するために対怪獣部隊・GUTS-SELECT(ガッツ・セレクト)が組織されたと説明されている。6年前に怪獣に襲われて『ティガ』の防衛隊・GUTSが設立されたというのならばまだわかるのだが、GUTSならぬGUTS-SELECTが設立されたとはどういうことなのか? この世界にGUTSは存在しなかったのか? それにしてはシズマ総監はウルトラマントリガーとウルトラマンティガとの姿の酷似の旨を口にしている。これはスタッフの単なるケアレスミスによるチョンボなのか? あるいは何らかのSF的な伏線なのか?
 作品の世界観を見せると共に、主人公以外のレギュラーの主要人物たちの性格も見せなければならないのが、連続TVドラマの第1話というものだが、この第1話は詰め込みすぎな感がある。


 主人公・ケンゴは「スマイル、スマイル」を口癖に、皆を笑顔にしたいという気持ちも語られた。その仕草やひたすら前向きで楽天的な気持ちは、近年のジャンル作品ではよくあるものであり、少年漫画も含めれば昔からあったものだが、前向きになれない我々オタクのような陰気な性格類型の人間や子供たちにとっては、押し付けっぽく感じられて苦手だったり反発を生むかも?(汗)


 シズマ役には俳優歴40年になり、往年の1984年版『ゴジラ』にも主要人物として出演し、近年では深夜ドラマ『勇者ヨシヒコ』(2011年~)シリーズのダンジョー役でも知られる宅麻伸(たくま・しん)。
 会ったばかりのケンゴにGUTSスパークレンスを渡すのは早すぎるとも思うが、ウルトラマンティガについて知っているなど謎が多い人物。謎はこれから明かされるのだろうか? 物穏やかな様子だが、怪獣メルバーに対してGUTSスパークレンスを銃器に変型させて戦う、いざとなれば勇敢な方である。しかしGUTSスパークレンスを変身アイテムでなく防衛隊の銃器としても使うとは。


 ケンゴの母・レイナ。演じる横山めぐみは大正時代の菊池寛の人気小説の映像化である大ヒット昼ドラ(マ)『真珠夫人』(2002年)の主人公役が有名だが、彼女も超古代文明の遺跡の発見者であり、ケンゴやシズマと交わす台詞でも何か秘密を匂わせているような……。


 悪の女ウルトラマンであるカルミラも、レギュラーとして今後もトリガーの敵役として立ち塞がる。このキャラクターは、『ティガ』と『ダイナ』の間の時代をあとから描いた映画『ウルトラマンティガ THE FINAL ODYSSEY』(2000年)における超古代の闇の3巨人のひとりであるカミーラのリメイクキャラであるが、これからトリガーとの超古代における因縁も描かれるのであろう。カルミラの声を演じる上坂すみれは声優歴がもう10年近くになり、大学のオタクサークルを描いた深夜アニメ『げんしけん二代目』(2013年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20160623/p1)では声の出演とともに主題歌を担当したり、女児向けアニメ『プリキュア』シリーズ(2004年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20040406/p1)でも『スター☆トゥインクル プリキュア』(2019年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20191107/p1)で追加戦士・キュアコスモなども演じた人気声優。色っぽさと悪っぽさを出している(上坂は自身が演じた役を「さん付け」しているが、カルミラさんと呼んでいるのだろうか?)。


 今回登場した怪獣ゴルバーは『ティガ』第1話に登場した超古代怪獣ゴルザと超古代怪獣メルバの2体を掛け合わせた新怪獣だが、最初にオエライさんとはいえ人間に過ぎないミツクニに撃退されたり、トリガーとの再戦ではカルミラのキャラを立てるためだろうが、カルミラに盾にされてトリガーに倒されるなどパッとしないのは残念。


第2話「未来への飛翔」


 いつものアバンタイトルなしにOP(オープニング)から主題歌「Trigger」でスタート。ケンゴを含む隊員たちがパンチの強い主題歌に合わせて並列して歩いてくるシーンは、往年の人気刑事ドラマ『Gメン75』(1975年)などのOP映像を彷彿させる。


 冒頭、火星や母と離れてシズマと地球へ来たケンゴ。自らも入隊するGUTS-SELECTの面々に引き合わされる。
 隊長のタツミセイヤ、空飛ぶ母艦ナースデッセイ号のパイロット・サクマテッシン、無線戦闘機の女性パイロット・ナナセヒマリ、技術オペレーターのメトロン星人マルゥル、そしてシズマの娘であるユナ、技術開発担当のヒジリアキト。
 ユナのルックスに夢で見た巫女・ユザレをダブらせるケンゴ。そんなユナへの態度を苦々しく見つめ、彼を「ウザい」と言い放つアキト青年。


 そこに巨大怪獣が出現。暴れ回る吸血怪獣ギマイラ。ケンゴ・アキト・ユナは空中母艦ナースデッセイ号から地上に降りて市民の避難誘導を、ヒマリはナースデッセイ下部に吊るしてある飛行メカ・GUTSファルコンを遠隔操作して、ギマイラを迎撃する。
 ケンゴは隙を見て、GUTSスパークレンスでトリガーに変身! ゼベリオン光線でギマイラを仕留めるが、その後にカルミラ同様の闇の巨人である剛力闘士ダーゴンの攻撃を受けて敗北してしまう。
 トリガーから人間の姿に戻ったケンゴを叱責するアキト。実は彼がGUTSスパークレンスを造ったのであり、ケンゴがウルトラマントリガーであることも知っていたのだ。幼い頃にアキトを引き取り育てたシズマは、アキトにケンゴの力になってやってくれと頼む。


 その夜、ダーゴンとの再戦に挑もうとするケンゴに、GUTSスパークレンスの底の部分に挿入するGUTSハイパーキーを渡すアキト。その力でウルトラマントリガーは赤いパワータイプにタイプチェンジ! 力vs力! 戦いは街、水中と転じていくが、トリガーが持つ大型武器・サークルアームズはカギ爪に変化してダーゴンを締めあげる。爆発の中に消えていくダーゴン。
 戦いが終わったあと、大空へ飛び立っていくナースデッセイ号、そしてそれを見上げている謎の男……。



 第1話同様、脚本はハヤシナオキ、監督は坂本浩一。GUTS-SELECTの隊員たちの面々、それぞれの個性が描かれていた。
 GUTS-SELECTのメカの開発にあたっては天才的な才能を持つも、ユナやトリガーを巡ってはケンゴに敵愾心を持ってしまう精神年齢は10代後半の年齢相応であるアキト。第2話のラストではケンゴに笑みで応え、以後も彼には親しい同僚として接しているが、「自分はウルトラマンになれない」「何でケンゴが?」といった気持ちから、シリーズ途中で敵対したりするのだろうか? 地上ではギマイラをGUTSスパークレンスを銃形態に変型させて攻撃する勇敢な姿を見せているが。
(その姿や性格に立ち位置は、『ウルトラマンギンガ』(2013年)のライバル青年・一条寺友也(いちじょうじ・ともや)も彷彿とさせる。そういえばダーゴンも、友也が操縦していた巨大ロボット・ジャンナインに似ているような……)


 ヒロイン・ユナ隊員を巫女・ユザレとダブらせるケンゴだが、ユザレの髪や瞳の色は白なので、同じ役者が演じているとはいえ、いささか強引には思える。


 ヒマリ隊員はふだんは口数が少ないクールな女性だが、GUTSファルコンを操縦する時は性格が変わってしまう変わり種。
 初対面でケンゴに可愛いと言われてしまうメトロン星人の少年隊員であるマルゥル(声はM・A・O(マオ)こと市道真央。『海賊戦隊ゴーカイジャー』(2011年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20111107/p1)のゴーカイイエロー(顔出し)や、『宇宙戦隊キュウレンジャー』(2017年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20180310/p1)のワシピンク(声のみ)でおなじみ)。
 体を鍛えることを好むテッシン隊員。
 ヒマリやテッシンを演じる俳優さんは、以前にもウルトラシリーズにゲスト出演したことがある人たちである。


 そして、闇の巨人・ダーゴン。カルミラに逆さまの姿で眠っていたのを目覚めさせられたが、3000万年からずっとその逆さまの姿でいたのだろうか?(笑)


 ケンゴは火星から地球へ来た時、重力や大気が違うはずだが何ともなかったのか? それとも火星はテラフォーミング(人工的な地球化)や人工重力などで、地球と同じ大気組成や重力になっていたのか?
 ケンゴが火星で育てていた花・ルルイエも地球の日本上空で浮遊しているナースデッセイ号の艦内にまで持ってきている。このルルイエもまた映画『ウルトラマンティガ THE FINAL ODYSSEY』に登場した超古代文明の遺跡の名前であり、クトゥルフ神話を引用したホラーSF小説群や日本の漫画アニメなどにも登場する超古代都市の名前でもある。このルルイエも今後の伏線や最終展開での重要アイテムとなるのだろう。


 今までは有人飛行であったウルトラシリーズの飛行メカも、人力による遠隔操作で操られているとはいえナンと無人戦闘機であり、時代の流れを感じさせる。GUTSファルコンが任務を終えて帰還・収容されるシーンはこれまでのウルトラシリーズの防衛メカ同様、描かれていないのが残念(ウルトラマンが人間に逆変身するなど、そういうものこそ子供もマニアたちも見たがるシーンだと思うのだが)。GUTSファルコン発進時、BGMで昭和の第2期ウルトラシリーズのようなワンダバマーチが流れたのもカッコよかった。


 今回のゲスト怪獣ギマイラは、『ウルトラマン80』(1980年)や『ウルトラマンタイガ』(2019年)に登場した時には強敵怪獣だったが、悪のレギュラーキャラとなるダーゴンを立てるためとはいえ、ゴルバー同様にあっさりやられてダーゴンの引き立て役になったのは惜しい。


第3話「超古代の光と闇」


 ユナはケンゴの教育係になる。GUTS-SELECT隊員であると同時に高校へも通っているユナ。その着替えを取りにシズマ邸に降りてケンゴとアキトも同行するが、ユナをねらう謎の青年の出迎えを受ける。
 空中母艦ナースデッセイ号に帰還後、その正体は闇の戦士・ヒュドラムだとシズマ総監は推測するが、次にユナが高校へ通学した際、今度はそのヒュドラムが人間サイズのの姿で現われ、ユナを拘束して「エタニティコア」なるものがある場所を案内するように迫ってきた。
 だがユナを捕らえたヒュドラムは、そこへ駆けつけてきた先の謎の青年とは別人であった。誤解して謎の青年を撃つアキトからかばうためにユナは巫女・ユザレに無意識に変身して超能力を発揮する。謎の青年も宇宙一のトレジャーハンター・イグニスを名乗った。
 ヒュドラムは変形闇怪獣ガゾートを投入し、戦闘機・GUTSファルコンが迎え撃つ。ケンゴもウルトラマントリガーに変身するが、イグニスに変身する瞬間を見られて正体がバレてしまう。
 戦いの中でタツミ隊長はトリガーを味方と判断し、GUTS-SELECTによるトリガー援護を決断する。戦いの中でトリガーはスカイタイプに、サークルアームズも弓矢に変形し、放たれた光の矢はガゾートを撃破する!
 だがその直後、巨大化した闇の超人・ヒュドラムが襲いかかった。トリガーを救ったのはナースデッセイ号から放たれた砲撃・ナースキャノンであった。邪魔されたヒュドラムは激昂するが、カルミラやダーゴンに抑えられて退散する。シズマ総監はケンゴやアキトにユナを任せて、エタニティコア調査のために地上に降りるのであった。



 トレジャーハンターのイグニスは実は宇宙人で、闇の巨人・ヒュドラムとも因縁があった。最初はイグニスがヒュドラムの人間体かとミスリードさせられた人も多かったのでは? 西洋の海賊のようなコスチュームで軽いしゃべり方をしているし。演じる細貝圭は『海賊戦隊ゴーカイジャー』でも宇宙帝国ザンギャック公認の私掠船(海賊船)に乗るレギュラー敵であるバスコ・タ・ジョロキア役でシリーズ中盤から登場していた。イグニスとバスコは相通じるところが多い。バスコは軽口ながら最後まで悪役に徹したが、果たしてイグニスは?
 第3話も脚本はハヤシナオキ、監督は坂本浩一。序盤3話までは基本設定紹介編なので、今回も闇の3巨人のひとりにスポットが当てられている。ヒュドラムは普段は知的だが、陰険で様々な戦いを得意とし、実は怒らせると手がつけられない。カルミラやダーゴンより先に目が覚めていたというが……(ふたりを起こしてやれよ・笑)。


 また、カルミラ・ダーゴン・ヒュドラムとトリガーの超古代での関係も気になる。映画『ウルトラマンティガ THE FINAL ODYSSEY』では太古にティガは闇の3巨人の仲間であったとされたが、巫女・ユザレにより光落ちしたと語られていたので、本作でもそれに類似した展開となるのが妥当だろうが。
 GUTS-SELECTはトリガーを人類の味方と認識して援護したが、前もってタツミたちがトリガーの正体や行動動機を巡って話し合うなどの前段シーンがないために唐突で、同様のシークエンスであった『ウルトラマンティガ』#3のイルマ隊長による同様の発言と比べたら盛り上がっていないし、ドラマ的クライマクッスにはならずにサラッと流されて演出されている。
 サークルアームズを持って夕陽をバックにしたトリガースカイタイプ! GUTSファルコンの側部が両脚に変型して滑走するハイパーモードになってガゾートを攻撃! ナースキャノンを発射するナースデッセイ! とカッコいいシーンが相次いで撮られているのに、タツミ隊長が発言もヤマ場になっていなかったのは惜しい。今回登場した怪獣ガゾートも闇の巨人の引き立て役で、『ウルトラマンティガ』(1996年)でのガゾート登場回のように本来は成層圏で生息している特殊な生態も少しは描いてほしかった。
 あとケンゴは故郷の火星でも植物学者だったが、ユナは高校生でアキトも同年齢。互いにタメ口で話し合っているが、実はケンゴの方が年上だった(汗)。


 基本設定編が3話続いて、主要キャラや世界観が紹介されたが、これからどういうストーリーを見せてくれるのか? 既にシズマ総監やアキト隊員、闇の巨人の陣営とも異なる第3勢力となるお宝ハンター・イグニスもケンゴの正体がトリガーだと知ってしまったわけだ(同時にユナに巫女ユザレが憑依していることも)。『ウルトラマンティガ』は終盤までティガの正体がダイゴ隊員であることが周囲に知られていなかったこととは大違いであり、対外的には『ティガ』をリスペクト(尊敬)すると言いながら、実は『ティガ』とは異なるストーリー展開に持っていくことが明示された3本だった。


ウルトラマントリガー NEW GENERATION TIGA』#4~7 掘り下げられるキャラクター、そしてウルトラマンZとの共闘。

(2021年9月19日脱稿)

第4話「笑顔のために」


 第4話「笑顔のために」では、空中母艦・ナースデッセイ号内で居眠りをしてしまうコミカルなケンゴも描かれる。彼は地上に降りて超古代遺跡の発掘調査に携わるが、発掘作業員に交じって遺跡をまさぐるイグニスと出会う。その後、ナースデッセイに戻ったケンゴらを追ってイグニスも出現。ナースデッセイ内でGUTS-SELECT隊員たちを翻弄し、出土品を奪って逃亡するイグナスだが、出土品が発光して地底から怪獣が導かれてくる。
 実は古代地底獣オカグビラが出土品を追いかけていたのだ。ナースデッセイを出たイグ二スは、オカグビラに襲われる。その後、ケンゴがウルトラマントリガーに変身してオカグビラを牽制する。アキトはイグニスが混乱して手放してしまった出土品を発見して回収し、安全な場所へとオカグビラを誘導する。そしてトリガーはパワータイプに変身してオカグビラを倒した。



 本話はレギュラーや世界観を紹介する基本設定編ではなく、悪側のレギュラーである闇の3巨人とのドラマもなく、その分、怪獣の存在がじっくりと描かれていた。脚本は根元歳三、監督は武居正能。共に前作『ウルトラマンZ』(2020年)にも参加していた。
 初代『ウルトラマン』(1966年)に登場した深海怪獣グビラ。2012年の映画『ウルトラマンサーガ』での再登場以来、ウルトラシリーズには度々再登場しているが、今回のオカグビラは見た目はグビラと同じでも、地底でも生きられる亜種だと設定されている。空高くトリガーを放り投げて自らも空へと飛び、先端の回転ドリルのツノでトリガーを攻撃する特撮シーンは印象深い。
 ヒマリ隊員が操縦する戦闘機・GUTSファルコンで地底のオカグビラを地上に吊り上げる特撮シーンがあるが、ここにカブる人間ドラマ部分に対する演出は、オカグビラに引っかったイグニスにケンゴが「スマイル、スマイル」と呼びかけたり、ユナが前話で自分を「ゴクジョー(極上)」だとねらってくれたのに今回は出土品目当てで自身には目もくれないイグニスを睨みつけていたりするコミカル風味となっていて、思わず笑ってしまう。困難な状況に陥っても、余裕の笑みを失わない悪役のイグニス。GUTS-SELECTを翻弄したが、愛嬌もある憎めないキャラとなっている。
 注目すべきはアキト隊員で、ナースデッセイ号内で研究ばかりしているのではなく、地上でケンゴやユナと市民の避難や怪獣攻撃に力を尽くしていた。今回もオカグビラがねらう出土品の発見で頑張る姿が眼につく。あとナースデッセイには、GUTS-SELECTのメンバー以外に乗組員はいないようだ。


「特別総集編」2本


 続いて「特別総集編」が2本。シリーズ序盤に今時、レギュラーキャラが登場してメインストーリーとリンクする新撮シーンすらない総集編が続けて2本も放映されるとは、例年よりも製作が遅延しているのだろう(汗)。
 『ティガ』第21話に登場したマスコット小怪獣デバンをゲスト司会に、これまでの『トリガー』のストーリーを解説するパターン。ウルトラマントリガー以外の近年のウルトラマンや防衛チームも紹介しており、今後の『トリガー』の紹介や、ネット配信作品『ウルトラギャラクシーファイト 大いなる陰謀』(2020年)についてもふれられており、ただの総集編ではないので飽きさせない。


第5話「アキトの約束」


 破壊暴竜デスドラゴが出現、暴れ回る。実はデスドラゴは6年前にも現われた怪獣であった。アキトはケンゴらと市民を避難させるためにナースデッセイ号から地上に降りるが、命令を無視してデスドラゴを攻撃する。ケンゴはウルトラマントリガーに変身して怪獣の攻撃からアキトを守るが、デスドラゴには逃げられてしまう。
 タツミ隊長はアキトに謹慎を命じるが、ユナはケンゴに、6年前のデスドラゴ襲来でアキトはシズマに協力していた科学者であった両親を失ったことを語る。ケンゴはミツクニ邸で謹慎するアキトを訪ねるが、そこにデスドラゴが再び現われたとの報が。
 ケンゴとアキトは一足先に怪獣と向かい合っているユナと合流するが、ユナをねらって人間サイズにミクロ化した闇の巨人・ダーゴンが出現する。アキトはデスドラゴをケンゴに任せ、自分はユナを守るために走る。彼の脳裏には両親を亡くしてふさぐ自分に声をかけ手を差し伸べたユナとの初対面があった。
 ユナを追い詰めたダーゴンに、駆けつけたアキトが立ち向かう。ダーゴンはアキトを吹っ飛ばすが、直後にユナの平手打ち(!)を受ける。ダーゴンはその勇気に免じて引き上げていく。デスドラゴもトリガーのスカイタイプが放つ光の矢・ランバルトアローストライクで撃破された。



 第4話と同様、脚本は根元歳三、監督は武居正能。アキトの両親を亡くした過去やユナとの出会いが明かされた。しかし、あちこちで「?」な部分がある。
 まず、両親を殺した怪獣への復讐から我を失うアキトがケンゴに慰められ、その後、再戦で自らの復讐よりユナを守ることを選択したが、それが彼の成長を示すことになるのか? と問われれば今一ピンと来ない。アキトを慰める時、ケンゴは尊敬を表わす白いバラを示したが、普段のケンゴからは考えられない仕草でアキトも当惑している。当然、「ウザいんだよ」とも言われていたが(アマチュア同人誌で「ボーイズ・ラブ」のネタに使われそうだ)。
 ユナを追い詰めたダーゴンが引っぱたかれてその勇気に免じて退散した。一発殴られたぐらいで退散するとは「そんなアホな」。カルミラやヒュドラムだったらこうはいかなかっただろう。第一、なぜダーゴンだけが来たのだ。
 デスドラゴは6年前にも現われた地底怪獣で、堅実なデザインで青い稲妻を放つ頭部のツノが鹿のツノみたいで個性的。6年前の戦闘で片耳を失ったが、ずっと治らなかったのか? 初戦でトリガーに撃退された後、地底でカルミラにエネルギーを注がれ目が赤くなったが、再戦で具体的にどう強くなったかが描かれなかった(6年前の回想シーンで戦闘機・ガッツウイングがデスドラゴを攻撃するシーンがあったが、搭乗していたのはミツクニ?)。


第6話「一時間の悪魔」


 突然現れた巨大ロボット・惑星破壊神サタンデロス。そのバリヤーをウルトラマントリガーは突破できず、敗北を繰り返す。幸い動くのは1時間に限られているが、トリガーやGUTS-SELECTの攻撃を3度も弾き返す。
 そこへナースデッセイ号内に入って来たイグニスが協力を申し出る。その計画はバリヤーをナースデッセイの主砲で一時的に破ったところへ、GUTSファルコンに搭乗した自身が突入、バリヤー発生装置を爆破するというもの。タツミ隊長はその作戦を容れて、GUTS-SELECTは一丸となって準備する。
 その最中、イグニスはケンゴに彼がトリガーであることを知っていると告げる。作戦は順調に進むが、サタンデロスに止めを刺す前にヒュドラムが出現する。ユナは巫女・ユザレに変身して対する。
 ユナをねらうヒュドラムにトリガーが当たり、トリガースカイタイプのランバルト光弾が炸裂する。サタンデロスはナースデッセイとファルコンが撃破する。戦いが終わってGUTS-SELECTはイグニスを仲間と認めるが、実はイグニスはリシュリア星人であり、彼の同族はヒュドラムに殺されていたことが判明する。


 今回も脚本は根元歳三、監督は武居正能。
 強敵怪獣に第三勢力であるイグニスの協力を得て勝利する話だが、シリーズ全体の構成から言って少し早いような気もする。自分の住居のように#4同様、ナースデッセイに入ってくるイグニス。作戦途中に寝返るとか戦いが終わってから見返りを要求するのがこの手のキャラクターのパターンだが、意外にも味方のままで終わった。
 イグニスが宇宙人でヒュドラムに滅ぼされた種族の生き残り。そしてトリガーも、かつては闇の3巨人の仲間であったことが明かされた。今後どういうふうにドラマは動くだろうか?
 今回は巨大超人であるトリガーは勝機を与えるだけでトドメを刺さず、人間であるGUTS-SELECT隊員たちが自身たちの兵器の一斉照射だけで強敵サタンデロスを倒すパターン破りが気持ちよい。主役はウルトラマンだが、防衛隊がいつも単なる前座で戦闘機も撃墜されているだけでは子供にとっても残念なのだ。たまには防衛隊の強さ・有能さを見せて子供や視聴者も喜ばせるべきなのだ。チームが一丸となって作戦準備を進める姿もあり、強敵を倒した直後、手を取って喜ぶアキトとマルゥルの姿も爽やかである。
 イグニスにトリガーとしての正体を知っていると告げられたケンゴが、その会話で近くにいたユナにごまかすため、空を指さし「鳥が!」と言うシーンにも笑ってしまう。
 サタンデロスは『ウルトラマンタイガ』(2019年)に登場したロボット怪獣ギガデロスの量産化された機体をヒュドラムが改造したというウラ設定。でも前回も緒戦で怪獣デスドラゴを倒せず、今回に至っては3回戦もあったのに3戦とも勝てないとは、どうなっているんだトリガー!?


第7話「インター・ユニバース」


 突然、前作『ウルトラマンZ』に登場した防衛隊の巨大ロボット・キングジョーストレイジカスタムが都心に落下してくる。調査に赴いたケンゴ・アキト・ユナはその内部でウルトラマンZと合体しているナツカワハルキ青年と出会う。ハルキはキングジョーストレイジカスタムを奪って逃亡した宇宙海賊バロッサ星人4代目を追跡中、四次元怪獣プルトンの超能力に巻き込まれてこの並行世界の地球に来たのであった。
 ケンゴがウルトラマンであることに気付いたハルキは、ウルトラマンZに変身する時の異空間・インナースペースへケンゴとアキトを連れていき、Zと引き合わせる。変身アイテム・ゼットライザーは破壊されていたが、アキトがハルキ専用のGUTSスパークレンスとGUTSハイパーキーを作ってZに変身できるようにしてくれる。
 一方、バロッサ星人は海賊雛怪獣ベビーザンドリアス・ケダミャーを通訳兼相棒として彷徨(さまよ)うが、そこへハルキやアキトの会話を盗み聞きして事情を察したイグニスが絡み、その後バロッサ星人は巨大化。この騒動にケンゴはトリガーに、ハルキもGUTSスパークレンスの力でZに変身して、バロッサ星人に立ち向かう。共にこの世界へ来ていたZの武器であり自我を持っておしゃべりもする短剣・べリアロクも加勢して、2大ウルトラマンは星人を撃破した。



 脚本は小柳啓伍、監督は田口清隆。前作『ウルトラマンZ』にも関わったお二方である。
 ウルトラマントリガーとウルトラマンZが共闘する話で、1年前の『Z』では数作前のウルトラマンジードが先輩としてゲスト出演して、今回のウルトラマンZやハルキが新人だったので、その成長が感慨深い(『ウルトラマンZ』は毎年恒例の『劇場版』映画は今回作られなかったが、今年2021年の「日本SF大会」では「星雲賞メディア部門」を受賞した!)。


 ハルキはキングジョーストレイジカスタムを奪ったバロッサ星人を追っていたが、あれっ? ハルキは最終回ラストでZとともに地球を離れて宇宙へ旅立ったんじゃあなかったっけ? この話の冒頭では『Z』のヨウコ隊員が防衛隊の巨大ロボット・セブンガーでZと共に追いかけていたが、セブンガーは宇宙へ行けるようになったのか?
 怪獣プルトンの能力でトリガーがいる並行世界へ跳ばされてしまったハルキがケンゴと出会い、彼もウルトラマンだと直感するが、ハルキとケンゴも髪型も直情径行な性格も似ている(笑)。ウルトラマンZはハルキとZが別々の人格であり、ウルトラマントリガーはトリガー自体に人格はなくケンゴの人格そのものであるところは違うが、意気投合するのは微笑ましい。ケンゴはインナースペースでZとも会話する(ところでハルキはヨウコをインナースペースへと連れていき、Zと対面させたのだろうか?)。
 アキトの協力でハルキもGUTSスパークレンスで変身できることに。だが、GUTS-SELECTの超装備のみならず、故障した変身アイテム・セットライザーからウルトラ一族の超科学力も解析してしまうアキトはスゴすぎる。マルゥルも前話でイグニスの正体を知っていたり、キングジョーストレイジカスタムの基となったロボット怪獣キングジョーがペダン星人に造られているのを知っている。


 2大ヒーローの共闘話ながら、相変わらずヘンなしゃべり方をするZ(「ナイス・ツウー・ミー・ツウ」という英語も・笑)。アキトがハルキとケンゴに挟まれ2人の会話にうるさそうにしながら質問に答えるツンデレぶり。ケダミャーとイグニス、宇宙海賊とトレジャーハンターの口論。『ウルトラマンメビウス』(2006年)に登場した恵比須(えびす)さまの木像が巨大化しただけの怪獣コダイゴンジアザーが抱えていた「鯛(タイ)の木像」など、怪獣にまつわる様々な小道具。「鯛の木像」も原典同様「商売繁盛!」を連呼しながらトリガーを苦しめていた。バロッサ星人の戦い方も2大ウルトラマンを相手に早足で逃げ回っているように見えるなどいろいろと笑わせてくれる。


 今回、闇の巨人たちは遠くから静観するだけ。カルミラは前回の戦いで傷ついたヒュドラムをからかい、ダーゴンは何かブツブツ言っている。何か往年のTVアニメ『タイムボカン』(1975年)シリーズの3悪人である「悪玉トリオ」を連想してしまいそうだ。
 ケダミャーこと駄々っ子怪獣ザンドリアスは『ウルトラマン80』第4話(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100523/p1)で初登場。『ウルトラマンジード』以降は何度かウルトラシリーズに同族別個体という設定で登場している。声は声優の湯浅かえで。アニメ『怪獣娘(かいじゅうガールズ)~ウルトラ怪獣擬人化計画~』(2016年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210919/p1)でもザンドリアスの声を演じ、『ウルトラマンR/B(ルーブ)』(2018年)では宿敵であるウルトラマンオーブダークに変身する愛染マコト社長のドローン型秘書ロボット・ダーリンの声も演じていた。『ウルトラマンオーブ』(2016年)や『ウルトラマンZ』(2020年)でジャグラスジャグラーを演じた青柳尊哉(あおやぎ・たかや)と今年2021年に結婚したばかりである。


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2021年秋分号』(21年9月26日発行)所収『ウルトラマントリガー』前半合評より抜粋)


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ウルトラマンZ』最終回・後半評 ~ネタキャラが敵味方に多数登場だが熱血活劇! 2020年代のウルトラはかくあるべし!

(文・久保達也)
(2021年4月22日脱稿)

*途中退場した巨大ロボット・セブンガー、予定調和されていた復活宣言!(笑)


 さて、『ウルトラマンZ(ゼット)』(20年)第21話~第25話(最終回)の最終章5部作には、往年の『ウルトラマンダイナ』(97年)第49話『最終章Ⅰ 新たなる影』・第50話『最終章Ⅱ 太陽系消滅』・最終回(第51話)『最終章Ⅲ 明日(あした)へ…』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19971211/p1)との類似性を指摘する声がかなり多かったものだ。
 それは『Z』『ダイナ』ともにその最終章は、「地球は我々人類自らの手で守らねばならない」とした初代『ウルトラマン』(66年)最終回(第39話)以来のテーマの変化球として、防衛組織の上層部が最強兵器=「人造ウルトラマン」の製造を強行した結果、逆に「地球最大の危機」を招くに至る展開となっていたからだ。


 ただ、たとえば『Z』第21話で筆者が最も印象に残ったのは、地球に大挙来襲した宇宙凶剣怪獣ケルビムの「マザー」としてデタラメにデカすぎる姿で宇宙空間に現れた親怪獣を、ウルトラマンゼット・デルタライズクローが「デスシウムスラッシュ!」と超特大の紫色のビームサーベルでブッた斬る描写だった。
 これに対して『ダイナ』の最終章で最も印象的だったのは、昭和の第2期ウルトラマンシリーズによく登場した横暴な「バカ長官」のごとく、防衛組織・スーパーGUTS(ガッツ)のゴンドウ参謀(さんぼう)がひたすら暴走する姿だった(笑)――「ゴンドウ参謀はホントウは善人だ」などと擁護(ようご)する声が意外に多いのは承知しているのだが、申し訳ないけど本編中の舌っ足らずな描写や演出では個人的にはとてもそうは思えなかった――。


 まぁ、『帰ってきたウルトラマン』(71年)でも「今度の作戦に失敗したら(防衛組織)MAT(マット)は解散だぞ!」と「バカ長官」がよく恫喝(どうかつ)していたが。しかし、『Z』の最終展開ではストレイジが本当に解散させられる(!)など、これまでの明朗快活な作風とは一変してやや陰鬱な描写もたしかに見られたのだ。
 だが、この最終章は本作のタテ軸・連続ドラマの総決算としてよりも、これまで『Z』の人気を支えてきた魅力の数々を総動員させてみたという印象が強く、やはり最後まで「ドラマ性」や「テーマ性」よりも「キャラクター」や「特撮」の魅力の方が主導で描かれていたと思えるのだ。


 第14話『四次元狂騒曲』で特空機3号として新たに装備された巨大ロボット・キングジョーストレイジカスタムにバトンを渡して、セブンガーは5年間の活躍を終えてついに退役(たいえき)、特空機のPR用として地球防衛博物館に展示されることとなった――小学館の幼児誌『てれびくん』2020年12月号掲載の『セブンガー友の会 特別編』によれば、初めて倒したのは火星怪獣ナメゴンだったそうだ!――。
 これには『ウルトラマンR/B(ルーブ)』(18年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20180826/p1)の「ネタキャラ」でもある当初の宿敵・愛染マコト(あいぜん・まこと)社長がシリーズ中盤で退場したことを彷彿(ほうふつ)としてしまい、失望を感じた人もいたかもしれない。だが、セブンガーの一時的な退場は、シリーズ終盤で再登場させるためだろうと予測したスレた特撮マニアも相応には多かったことだろうし、実際にも第22話『それぞれの明日(あす)』のクライマックスでのセブンガーの奇跡的な復活をおおいに盛り上げる意図で確信犯的に行われたのだ! と解釈すべきところだろう。


 しかし、その相手はあの「ネタキャラ」であるバロッサ星人の「三代目」であったのだが(笑)。


 ちなみに、バロッサ星人三代目はヨウコが飲んでいたタピオカドリンクに含まれる「でんぷん」(笑)をエネルギー源として巨大化する。コレは『激走戦隊カーレンジャー』(96年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20110521/p1)の敵組織・宇宙暴走族ボーゾックの怪人たちが地球の「芋長(いもちょう)」の「芋(いも)ようかん」を喰って巨大化していたのと同じノリだよな(爆)。
 かつてであれば非難必至であった科学的・SF的根拠もヘッタクレもない、こんな描写が堂々と映像化されたこと自体は、それだけマニア視聴者の側がこんなことでイチイチ目くじらを立てたりせずに、良い意味で子供番組らしい稚気満々(ちきまんまん)な描写だとして笑い飛ばせるだけの成熟(せいじゅく)を果たしたことの証(あかし)でもあるだろう(笑)。


 ストレイジが解散させられたことでセブンガー同様に退役状態だった女性隊員・ヨウコが、バロッサ星人三代目が巨大化して都市部で大暴れしたために、退役したハズのセブンガーのコクピットに私服姿で乗りこむ! いつでも出撃できるようにと、セブンガーは博物館に展示されて以降もストレイジ整備班の初老の班長イナバ・コジロー=通称・バコさんによって常に整備されていたと語られることが、退役から華麗な復帰をとげるセブンガーとヨウコのカッコよさに高い「ドラマ性」も与えている!


 ウルトラマンゼットの基本形態・アルファエッジが羽交い締め(はがいじめ)にしたバロッサ星人に、セブンガーがジャンピングキックを喰らわし(!)、その衝撃で精巧なミニチュアの中華料理店の周辺に配置された自転車が吹っ飛び、ブロック塀(べい)の手前にビルの破片が飛んでくる!
 坂本浩一監督お得意の「ガード下アングル」でバロッサVSセブンガー、そして別の男性パイロットが操縦するキングジョーストレイジカスタムが捉えられ、セブンガーが右腕の「ロケットパンチ!」もとい「硬芯鉄拳弾(こうしんてっけんだん)!」を発射する!


 臨場感とカタルシスにあふれる演出が、セブンガーの復活を実にカッコよく描いていた。


 特筆すべきはセブンガー&ヨウコを、ゼットの新武器でもある悪の黒いウルトラマンことウルトラマンベリアルの顔面を持つしゃべる魔剣・ベリアロクとカラませて、それぞれのキャラをさらに掘り下げたことだろう。


「おまえがオレさまを使うことなど、2万年早い!」


 ベリアルの因縁(いんねん)の宿敵であるウルトラマンゼロの定番フレーズ「2万年早いぜ!」をベリアル自身が、もといベリアロクがパクるのはどうかと思ったが(笑)、これは「良いか悪いか」ではなく「面白いかどうか」で行動を決めるベリアロクから見て「2万年早いぜ!」という物言い自体を「面白い」と判断したからこそだろう(爆)。


 「どうせ、できないんでしょ!?」というヨウコの挑発をも「面白い」とベリアロクが感じたからか、魔剣ベリアロクの使い手(!)となったセブンガー=ヨウコは、ストレイジの理系女子=オオタ・ユカが遠隔操作するキングジョーストレイジカスタムの脚部を構成する高性能輸送車・レッグキャリアーにスノーボードのように乗りこみ、バロッサ三代目に突撃する!


「セブンガー・波乗りスラッシュスペシャル!!」


 セブンガーが都心のビル街の奥のバロッサに向けて突っこむさまが、コクピット内のヨウコの主観から捉えられる!
 バロッサが爆発四散した衝撃で窓ガラスが室内に吹っ飛び、机が宙に舞うさまがオフィスのミニチュアを主観に描かれる!
 その大爆発を背景に、セブンガーがベリアロクを手に勝利のポーズをバッチリとキメる!


「なかなか楽しませてもらったぞ」


 ベリアロクは満足げにヨウコにそう語った。我々視聴者も「なかなか楽しませてもらった」のだが、それはその迫力あふれる「特撮映像」もさることながら、それだけでもなかったのだ。
 それは、一応のレギュラー悪・寄生生物セレブロに憑依(ひょうい)されてしまった地球防衛軍・日本支部クリヤマ長官に強引に解散させられたストレイジのハルキ・ヨウコ・ユカ・バコさん、そしてあえてここでは書かないがヘビクラ隊長が退役してもなお、チームとしての結束力の強さを誇っていたことを、セブンガーのカッコよさを通して見せつけられたからだ!


*放映終了後も凋落しない『Z』の「商品的価値」に象徴される「人気」度合い!


 近年のウルトラマンシリーズとしては珍しく(汗)、ネット上の反響や関連商品の売れ行きも比較的好調だった『ウルトラマンZ』が全25話をもって2020年末に放映を終了した。


 たとえば『ウルトラマンR/B』の場合、あまりにコミカル寄りに振り切った作風が第1世代の高齢特撮マニア層から反発を喰らっていたり、一応の敵キャラとしてシリーズ前半に登場した愛染マコト社長=ウルトラマンオーブダークノワールブラックシュバルツ(笑)=精神寄生体チェレーザが「ネタキャラ」としても大評判となるも、シリーズ中盤で退場したことでライト層の関心を少々ウスくしてしまう――このタイミングで同じく円谷プロ製作で放映を開始した変身巨大ヒーローが巨大怪獣と戦う深夜アニメ『SSSS.GRIDMAN(グリッドマン)』(18年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190529/p1)がアニメ&特撮ファンの間では大人気となったことで、やや話題も奪われた――。
 「ウルトラ」の関連玩具の不調が顕著(けんちょ)となったのはこの『R/B』当時であり、バンダイが『ウルトラマンX(エックス)』(15年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200405/p1)以来発売してきた20センチ強のソフビ人形『ウルトラBIG(ビッグ)ソフビ』と『ウルトラ怪獣DX(デラックス)』シリーズは『R/B』をもって打ち切られたほどだった――『R/B』主人公のウルトラマンロッソとウルトラマンブルの人形は放映終了数ヶ月を経ても売れ残って半額処分されていた(汗)――。


 また、『ウルトラマンタイガ』(19年)は第1話『バディゴー!』冒頭(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190811/p1)でせいぞろいした7大ニュージェネレーションウルトラマンたちの宇宙空間での大活躍を描いたり、ウルトラマンタイガ・ウルトラマンタイタス・ウルトラマンフーマといった3大ウルトラマントリオを主人公格とし、彼らの間でかわされるコミカルなやりとりが「カワイイ」(!)などとコメントされたほどにシリーズ序盤は好調だったのだ。
 だが、作品自体は昭和の時代に逆行したかのようにタテ軸・連続性がきわめてウスい「1話完結」形式の趣(おもむき)が強く、しかもレギュラー悪のウルトラマントレギアにそそのかされた平和的な宇宙人が葛藤(かっとう)の末に悪に走る陰鬱(いんうつ)で湿っぽい話が多発したために、こちらもシリーズ後半は失速したと見てもよいだろう(爆)。
 動画無料配信サイト・YouTube(ユーチューブ)での第1話の再生回数が1週間で100万回を超えていたのに、シリーズ中盤以降は毎回30万回程度に凋落(ちょうらく)したのがそれを端的に象徴する――『仮面ライダー』や『スーパー戦隊』と違って地上波で放映されない地域が多いことを思えば、ネット配信で鑑賞する地方在住の特撮マニアは相応にいたハズなので、コレは同作のファンの方々には非常に申し訳がないのだが『タイガ』の人気の低さを証明してしまう低い数字である――。
 ちなみに、そのYouTubeで『タイガ』シリーズ後半と同時期に週1回で配信されて、しかも『タイガ』の前日譚(ぜんじつたん)として製作された短編『ウルトラギャラクシーファイト ニュージェネレーションヒーローズ』(19年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200110/p1)の方が、ネットでしか鑑賞できない作品なので単純比較はできないものの、再生回数では毎回『タイガ』の倍以上を稼(かせ)いでいた(汗)。


 さて、『Z』の後番組として2021年1月から総集編番組『ウルトラマンクロニクルZ ヒーローズオデッセイ』(21年)が放映されている。これは『Z』、そして2021年で放映25周年を迎えた『ウルトラマンティガ』(96年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19961201/p1)・『ウルトラマンダイナ』(97年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19971215/p1)・『ウルトラマンガイア』(98年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19981206/p1)の「平成ウルトラ3部作」のテレビシリーズや劇場版などを特撮名場面を中心に再編集して構成した番組だ。
 同枠の同じく総集編番組『ウルトラマンゼロ THE CHRONICLE(ザ・クロニクル)』(17年)以来、毎年1月~6月の半年間にかつての『ウルトラマン列伝』(11~13年)や『新ウルトラマン列伝』(13~16年)と同様の形式で過去作の傑作選や名場面集を流す番組が放映されている。しかし、前年末に放映が終了したばかりの作品がメインで扱われるのは『Z』が初である! まぁ特撮場面が占める割合が近年のウルトラマンではダントツで高い『Z』ならワザワザ再編集せずにそのまま半年間再放送しても充分にイケるかと思えるくらいだが、やはり『クロニクルZ』自体が『Z』の反響の高さから企画された番組だと解釈してもよいだろう。


 そして、もうひとつ、注目すべき動きがある。
 先にバンダイのソフビ人形『ウルトラBIGソフビ』の発売が『R/B』で打ち切られたと書いた。しかし、その新商品として2021年5月29日に『Z』の主役ウルトラマンであるウルトラマンゼット・オリジナルと特空機1号のセブンガーが発売されるのだ!
 たとえばお金持ちのマニアを対象とした高額ブランド「プレミアムバンダイ」などでは『光る! 鳴る! 特空機1号セブンガー』なる高額な合金玩具など、ウルトラマンにかぎらず放映を終了した特撮やアニメの関連商品をネット限定で通販するのはまぁフツーに行われている。だが、一般の玩具店で販売される本来のターゲット=就学前の幼児に向けた商品として、すでに打ち切られたシリーズ展開がこのようなかたちで復活をとげるのはきわめて異例のことだろう。
 バンダイにそれを決断させたほどに『Z』、そしてセブンガーの商品としての価値はいまだに大きいのではあるまいか?――実際、セブンガーをはじめ、バンダイのソフビ人形『ウルトラ怪獣シリーズ』はきわめて好調で『Z』の放映中にすでにプレミア付きとなる商品まであった!――


 そうした動きがあとから余波として見られるほどに、『Z』は相応の評判を世間から得たと解釈してもよいだろう。


 2010年代以降のニュージェネレーションウルトラマンシリーズでは、最終章の撮影と並行して例年7~9月の時期に撮影されてきた来春公開用の最終回後の後日談でもある『劇場版』は、新型コロナによる2020年4~5月の緊急事態宣言に伴なう撮影一時中断の余波によって、『Z』にかぎらずこの手のテレビドラマの現場スタッフとは「作品」単位だけでなく拘束「期間」も込みでの契約であるために、やむなく流産させざるをえなかった……と捉えるのが妥当な推測だろう。しかし、『Z』のこの勢いがあれば興行収入も例年よりも高く行けそうなのだし、改めての製作Goサインを出してほしいところだなぁ……
――後日付記:かの庵野秀明(あんの・ひであき)監督による映画『シン・ウルトラマン』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20220618/p1)と公開時期がカブる可能性があったために、今回は最初から製作予定がなかったという情報もある――


 シリーズ後半で失速して当初は得られていた支持層を次第に失ってしまった前作の『タイガ』や前々作の『R/B』とは異なり、『Z』が放映終了まで、いや終了後もいまだに根強い「人気」を誇っているのはナゼなのか!? 今回は『Z』第2クール=シリーズ後半を振り返りながら、それを検証することで『Z』の総括としたい。


*敵にも味方にも視聴者がイイ意味でツッコミできる「ネタキャラ」(笑)たりうる珍妙なキャラクターを投入!


 ぶっちゃけ云わせてもらえば、『R/B』と『タイガ』がシリーズ後半で失速したのはコミカルな「ネタキャラ」を廃したのが大きな要因だったと思える。
 『R/B』の「ネタキャラ」はもちろん愛染マコトだったが、『タイガ』の「ネタキャラ」はタイガ・タイタス・フーマ、つまりウルトラマンたちそのものだったのだ(笑)。
 先述したように、『タイガ』のシリーズ序盤ではふだんは彼らが主人公青年・工藤ヒロユキ(くどう・ひろゆき)の周囲でミクロ化した半透明な姿と化して、ボケとツッコミの掛け合い漫才のようなやりとりを繰り出すのが本編場面での大きな見せ場となりえていた。
 だが、シリーズ中盤以降はそんな描写が極端に少なくなったどころか、タイタスまたはフーマが一度も登場しない回もあったために、タイタスが初変身の直後に延々と繰り出して大評判となったマッスルポーズもほとんど拝(おが)めなくなったのだ(笑)。


 さて、『Z』でも「ネタキャラ」はやはり主人公ウルトラマンであるゼット自身が務めている(笑)。第21話『D4(ディー・フォー)』~最終回(第25話)『遙(はる)かに輝く戦士たち』に至る最終章5部作ではさすがにそれまで通りとはいかなかったものの、地球防衛軍・日本支部の対怪獣ロボット部隊・ストレイジに所属する主人公青年=ナツカワ・ハルキ=ウルトラマンゼットとの間でかわされる、敬語とタメ口の区別もできないデタラメな日本語(爆)による会話はシリーズを通して描かれつづけた。
 また、ある意味ではゼット以上の「ネタキャラ」として、ストレイジの隊長であるヘビクラ・ショウタ=『ウルトラマンオーブ』(16年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20170415/p1)のライバルキャラ=ジャグラス・ジャグラーも最後まで健在だった。そういや、ハルキはジャグラーの変身態を「トゲトゲ星人」と呼んでいた。これはジャグラーの「ネタキャラ」ぶりや『Z』のコミカルな作風を象徴させるのには実に的確な呼称だったと思うのだ(笑)。


 ちなみに、第23話『悪夢へのプレリュード』ではヘビクラ隊長は銭湯(せんとう)で腰に手を当ててラムネを飲んでいた(笑)。この仕草(しぐさ)は『ウルトラマンオーブ』でも風来坊(ふうらいぼう)主人公のクレナイ・ガイ(ウルトラマンオーブ)の日々の楽しみとして描かれてきたものだ。映画『劇場版 ウルトラマンオーブ 絆(きずな)の力、おかりします!』(17年・松竹・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200406/p1)のラストで、ガイが銭湯でジャグラーに出くわして仰天(ぎょうてん)する場面があった。別世界といえど、ジャグラーはあれ以来、銭湯通いが習慣になったようであり(笑)、今回の銭湯の描写はかつて対立していたガイとの関係性が現在では良好なことまで暗示しているのかもしれない微笑(ほほえ)ましい演出だった。


*ゼットの新武器でおしゃべりする魔剣ベリアロクや、宇宙海賊バロッサ星人2代目も「ネタキャラ」だった!(笑)


 そして、『Z』ではシリーズ後半に入って以降、さらに新たな「ネタキャラ」が加えられたのだ。


 第15話『戦士の使命』には、第6話『帰ってきた男!』~第7話『陛下(へいか)のメダル』の前後編につづいて朝倉リク=ウルトラマンジードがまたまた再登場を果たし、『ウルトラマンX』の最終回前後編(第21話~第22話)に登場した強敵・虚空(こくう)怪獣グリーザを相手にゼットとの共闘が描かれた。
 この回ではウルトラマンジードとウルトラマンゼロの強化形態・ゼロビヨンドとウルトラマンベリアルの強化形態・アトロシアスのウルトラメダルを使い、ゼットが最強形態=ウルトラマンゼット・デルタライズクローの姿を初披露する。しかし、その専用武器となる剣からして「ネタキャラ」なのだ(笑)。


 宇宙からグリーザを追ってきたウルトラマンジードはグリーザの体内に取りこまれてしまう。しかし、その中にあった「宇宙の穴」を縫(ぬ)う「針」にジードの体を構成するジードの父でもあったベリアル因子(いんし)がふれたことで、持ち手の部分がまんまウルトラマンベリアルの顔(爆)をつけた黒い幻界魔剣(げんかいまけん)・ベリアロクが誕生する!
 映画『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE(ザ・ムービー)』(09年・ワーナー・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20101224/p1)でデビュー以来10数年、敵キャラとして登場するのみならず、近年ではウルトラマンの変身や強化アイテムにまで使われるほどのウルトラマンベリアルはすっかり「便利屋さん」キャラと化した感がある(笑)。ただ、今回は実の息子・ジードの体内に含まれる因子からの再生だったので、一応は疑似(ぎじ)科学的な説得力もあり、ジードがたしかにベリアルの息子だと改めて実感させてくれたのは好印象だろう。


 大地に突き刺さったベリアロクを引っこ抜くことでゼット=ハルキがその使い手となるのは、ちょうど同時期にスタートした『仮面ライダーセイバー』(20年)の第1章『はじめに、炎の剣士あり。』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20201025/p1)で主人公の小説家で書店も経営する青年・神山飛羽真(かみやま・とうま)=仮面ライダーセイバーが、炎の中に出現した長大なる聖剣・火炎剣烈火(かえんけん・れっか)を引き抜くことで「炎の剣士」=セイバーに変身するに至る描写も彷彿(ほうふつ)としてしまう。


 ただ、火炎剣烈火とは違い、


「オレさまを手に入れて、おまえは何をする?」
「オレさまは斬(き)りたいときに、斬りたいものを斬る!」
「オレさまの使い手は、オレさま自身が決める」


などと持ち手にあるベリアルの顔で主張する(爆)ほどに意志をもつベリアロクは、一筋縄(ひとすじなわ)ではいかなかった。


「この野郎! すみやかに抜けやがりなさいよ!」(大爆)


 史上最大のデタラメすぎる日本語でくやしがるゼットへのハルキのまじめすぎるツッコミが、その「ネタキャラ」ぶりにさらに拍車をかける!


「これからいっしょに戦うんだから、あいさつくらいしないと失礼っスよ!」(大笑い)


 ウルトラマンの最強形態、そして新必殺ワザ登場の前段としては通常ありえない描写だ。しかし、ベリアロクの行動の動機はあくまで「面白いかどうか」であり、面白くなければひたすら非協力的で、面白ければたとえ敵でも使われてしまう、いくらでも「立ち位置シャッフル」が可能なキャラなのだ。
 まぁ、ウルトラマンジャックのウルトラブレスレットとかウルトラマンタロウのキングブレスレットとかウルトラマンレオのレオマントなどと違い、刀=「武器」のクセに「人格」がある(爆)ベリアロクには隔世の感があるが。


 ちなみに、特撮ジャンルで「人格」があってベラベラとおしゃべりもする剣の第1号は、『五星(ごせい)戦隊ダイレンジャー』(93年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20111010/p1)で6人目の白い戦隊ヒーローである小学生が変身するキバレンジャーが変身や武器に用いていたトラの顔面がついた白虎真剣(びゃっこ・しんけん)である。もちろん、おしゃべりする剣の元祖は西洋の神話か洋ものファンタジーあたりかと推測するのだが、ネットでググってみてもその類例自体が発見できなかった――まさか、『ダイレンジャー』が世界初だったということはさすがにないよね?(汗)――。
 国産テレビゲームでは今もつづく西欧中世ファンタジー風ゲームの古典『テイルズ オブ』シリーズ(95年~)の第2作『テイルズ オブ デスティニー』(97年・ナムコ)という作品が元祖らしい。その後はあまたのマンガやライトノベルやアニメに登場しているそうだ。


 このベリアロクは、『仮面ライダー鎧武/ガイム』(13年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20140303/p1)や『魔法少女まどか☆マギカ』(11年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200329/p1)のメインライターでも有名な虚淵玄(うろぶち・げん)が手掛けた日本と台湾の合作による中華ファンタジーの特撮人形劇の大傑作『Thunderbolt Fantasy(サンダーボルト・ファンタジー) 東離劍遊紀(とうり・けんゆうき)』(第1期・16年(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20191109/p1) 第2期・18年(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20191110/p1) 第3期・21年)に出てきた、人心を惑わせて天下を乱す魔剣・妖剣・聖剣・邪剣を36種もおさめた「魔剣目録」に含まれている、おしゃべりもする剣たちの1本なのかもしれないが(爆)。


 これほどまでに「ネタキャラ」として描かれても、「デスシウムスラッシュ!」と叫んで「Z」型の光跡を残してグリーザを一刀両断する「カッコよさ」自体はしっかりと描かれてはいたのだ。


 しかし、第17話『ベリアロク』でベリアロクは自身と同じ「ネタキャラ」と対決することとなった(笑)。第10話『宇宙海賊登場!』にて『ウルトラマンレオ』(74年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20090405/p1)などに登場したサーベル暴君マグマ星人のマグマサーベルや暗黒星人ババルウ星人の鉄球付き刺股さすまた)などを強奪したほどの強敵として描かれるも――『ウルトラマンメビウス』(06年)第16話(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060928/p1)に登場した宇宙剣豪ザムシャーの刀・星斬丸(ほしきりまる)も含まれていたそうな!――、ひたすら「バロッサ、バロッサ」とワメくだけ(笑)だった海賊宇宙人バロッサ星人の「9999人」もいる弟(爆)のひとりがさっそく復讐(ふくしゅう)にやってきたのだ!


 先の第10話ではロシアの作曲家・ハチャトゥリアンのバレエ楽曲『剣の舞』で踊っていたバロッサだったが(笑)、第16話『獅子の声』のラストで宙から舞い降りてくるバロッサ星人を地上からの目線で捉えたカットでは、ウォルト・ディズニーのアニメ映画『ファンタジア』(1940年・アメリカ)や日本に空前のディスコブームを巻き起こした映画『サタデー・ナイト・フィーバー』(1977年・アメリカ)をはじめ、往年の特撮怪獣映画『決戦! 南海の大怪獣』(70年・東宝)の予告編にまで流れたロシアの作曲家・ムソルグスキーの手になる『禿山(はげやま)の一夜』が流された!


 決してロシアっぽくはない(爆)バロッサ兄弟の双方に、ロシアを出自とする有名楽曲をあえてつけてみせる音楽演出にも、バロッサをあくまでも「ネタキャラ」として描く意図がうかがえる。「バロッサ、バロッサ」としか云わなかった兄とは違ってしゃべりまくる弟の声を、大の「特撮」好きでも知られる声優・関智一(せき・ともかず)に演じさせたのもまたしかりだ。


・バロッサが開口一番、「聞いて驚け!」と自己紹介するのは、『獣電戦隊キョウリュウジャー』(13年)のキョウリュウレッドの名乗りのパクりである(笑)。
・宇宙忍者バルタン星人やどくろ怪獣レッドキングなど、着ぐるみの造形が明らかに異なるのに同一個体とされてきた再登場怪獣や宇宙人を、1978年に起きた第3次怪獣ブーム以来、本邦初のマニア向けムックや子供向けのウルトラ怪獣百科などでは「初代」「二代目」などと区別するのがすでに一般的になっていたのに、『ウルトラマン80(エイティ)』(80年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20110108/p1)映像本編などでは再登場怪獣や再登場宇宙人回でいまだにクレジットされていなかった「三代目」や「五代目」などの分類表記を、バロッサ星人の弟は自ら「二代目」と名乗ることで「公式」名称にしてしまったのだ!!(笑)
・「ハデに行くぜ!」だの「コイツは宇宙のお宝、いただいていくぜ!」だのは、バロッサ星人と同じ宇宙海賊だった『海賊戦隊ゴーカイジャー』(11年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20111107/p1)のキャプテン・マーベラス=ゴーカイレッドの決めゼリフの引用だ。氏が同作のナレーションや玩具の音声ガイダンスを務めていたことを意識したメタ的なギャグだが、海賊が海賊からパクるなよ(爆)。
・「ひきょうもラッキョウもあるものか!」は『ウルトラマンタロウ』(73年)第27話『出た! メフィラス星人だ!』に登場するも、兄の悪質宇宙人メフィラス星人・初代が紳士的だったのとは正反対に、バロッサ並みのチンピラ宇宙人(汗)として描かれたためにかつてはさんざんに非難された弟のメフィラス星人・二代目の迷セリフだったが、ここ10数年ほどは真逆の好意的なギャグ文脈で引用されているものである!(笑)――ちなみに、紳士的な初代ではなくチンピラの二代目の方が地球に来たのは、当時の小学館学年誌の記事によれば「(初代が)忙しかったから」だとのことだ(爆)――。


 まぁ、バロッサ星人が『ウルトラQ(キュー)』(66年)第4話『マンモスフラワー』に登場した巨大な怪奇植物ジュランの種(たね)を飲んで巨大化したり、初代『ウルトラマン』(66年)第38話『宇宙船救助命令』に登場した光熱怪獣キーラみたいに相手の目を眩(くら)ます「キーラフラッシュ!」を発射するのは台本にもあったのだろう。しかし、先に挙げたバロッサ二代目のセリフの大半は、自身が特撮マニアであることから「何をすれば我々のツボをくすぐるのか」を完全に熟知した関のアドリブだったのだろう(笑)。


 それは氏ばかりではなく、ひいては『Z』のスタッフが全体として、ここでは良い意味での「マニア」だったからこそ、『Z』を最後まで失速させなかったのではなかろうか!?
 

 一度はバロッサの手に奪われるベリアロクだったが、


「おまえの攻撃はつまらん。オレさまはもっと面白そうなヤツのところに行く」
「風の吹くまま、気の向くままさ」―― ←・風来坊かよ!(爆)――


などと云って、初登場から数週で早くも「立ち位置シャッフル」を見せたのも、スタッフたちの良い意味での「マニアック」さを象徴した作劇だろう。


 クライマックスではゼット=ハルキの逆転描写で、『Z』の作風には実にふさわしい主題歌『ご唱和ください 我の名を!』が絶妙なタイミングで流れはじめて、ゼットがベリアロクから放つ斬撃ワザ「デスシウムスラッシュ!」で「Z」字状にバロッサをブッた斬る!


 敵をやっつける必殺ワザのカタルシスとしてはそこまででも充分なのだが、まだ逃亡をつづけているバロッサをベリアロクから抜け出して巨大化した雲状のベリアルの顔面の幻影(!)が追いかけてきて、その口をバカでかく開けてバロッサをパックンチョと喰ってしまう!(笑)


 それを見たゼットがつぶやく。


「なんてヤツでしょう!?」(爆)


 日本版『アラビアン・ナイト』をねらった『ウルトラマンタロウ』でさえここまでデタラメな描写はなかったが、シリーズの序盤と比べてややテンションが落ちていた『R/B』と『タイガ』のシリーズ後半にこそ、こんなデタラメな特撮映像的ケレン味で、客引きすることが必要だったのではなかろうか!?


*「年上」好みだったヨウコが、「年下」=ハルキ好みに心変わりすることの作劇的な意味あい!?


「今この世界に怪獣の居場所はない。だから誰かに押しつけちゃいけない。命を奪う責任を……」


 これは第11話『守るべきもの』でゼット=ハルキが倒したどくろ怪獣レッドキングA(エー)が暴れたのは、妻のレッドキングB(ビー)が生んだ卵を守るためだったと知り、一時的に戦意を失うほどに意気消沈したハルキの「怪獣はどうしても倒さなきゃならないのか?」との問いにヨウコが第12話『叫ぶ命』で返した言葉だ。
 『ウルトラマンコスモス』(01年)や『ウルトラマンX(エックス)』(15年)など、かつても怪獣との「共存」をテーマとした作品はあったが、『Z』の世界では「怪獣の居場所はない」と云い切った。


ウルトラマンのどんなところが好きなの?」
「怪獣、殺すところ!」(汗)


 これは『宇宙戦艦ヤマト』(74年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20101207/p1)や『科学忍者隊ガッチャマン』(72年)のリバイバルブームを機に起きた空前の第1次アニメブームの最中だった1978年夏休みの時期に放送された朝のワイド番組『小川宏ショー』(65~82年・フジテレビ)で、子供たちに好きなヒーローやアニメについてインタビューした際の光景だ――アトラクション用の初代ウルトラマンと『ウルトラマンレオ』(74年)に登場した兄怪獣ガロンとの対決もその場で演じられていた――。
 先のハルキとヨウコの会話はウルトラマン、ひいては変身ヒーロー作品本来の性質を改めて見つめ直したものだ。しかし、「命を奪う責任」を導き出したのは、『Z』が単に勧善懲悪(かんぜんちょうあく)のカタルシスに「原点回帰」するだけではない、テーマ的にも一歩進んだ秀逸(しゅういつ)な結論だと感じられた。


 第11話~第14話まで引きずったこの展開は、明朗快活な作風の『Z』であえてやることはなかったのでは? との想いは正直、個人的にもある。
 ただ、第12話のクライマックスで爆撃雷獣グルジオライデンを前にゼットが両腕を十字に組んで必殺ワザ「ゼスティウム光線!」を放とうとするも、怪獣を倒すことに躊躇(ちゅうちょ)してしまってハァハァと息を荒げるハルキを演じる平野宏周(ひらの・こうしゅう)の演技や、ハルキの躊躇が原因でグルジオライデンに敗れたゼットの姿がアルファエッジから素体のオリジナルへと戻り、光の粒子となって消えてしまう描写などは実に見応えがあったのも確かだ。
 そして、先の会話に見られたように、あくまで仲の良い先輩後輩としてのハルキとヨウコの関係性が劇的に変化する発端(ほったん)としても、第11話のレッドキングの事件は必要不可欠だったかと思えるのだ。


 第13話『メダルいただきます!』ではこの展開にワンクッションをはさむかたちで、ストレイジの基地に突然現れたコイン怪獣カネゴンがハルキのウルトラメダルを全部喰ってしまうコミカルな総集編だった。しかし、その少ない新撮部分の脚本でも、ハルキに先の件をまだ引きずらせるかたちで、彼の苦悩を視聴者に念押しさせている。


 そのラストシーンで映された、ハルキの机に置かれたカップ焼きそばには、


「とにかく食べな ヨウコ」


とのメッセージが書かれた付箋(ふせん)が貼(は)られていた……


 この総集編の冒頭で、「なんかモヤモヤして……」と腕立て伏せをするハルキは「あの一件」以来、食欲がないと口にして、ヨウコは「ほどほどにしなよ」と忠告した。これはその気づかいを端的に象徴するものだ。
 ここでもし、出前で注文した重たそうで胃もたれもしそうな「カツ丼(かつどん)」などが机に置かれていたら、ただでさえ意気消沈していたハルキや視聴者からすれば、いくら先輩といえども少々の押しつけがましさを感じたかもしれない(笑)。
 だが、カルめの「カップ焼きそば」ならば、ハルキにそうした精神的な重み・負担をかけることもなかろうと判断したヨウコの人間性には、先の「命を奪う責任」について語ったのと併(あわ)せて、個人的にはお株が急上昇したものだ。


「ヨウコ先輩はオレを助けてくれた。今度はオレが助ける番だ!」


 これは第17話でバロッサ星人二代目の攻撃からヨウコが搭乗するウインダムがゼット=ハルキをかばった際にハルキが叫んだものだ。「助けてくれた」には「カップ焼きそば」に象徴されるヨウコの精神的な支えも含まれていたことだろう。


 第23話の冒頭、ストレイジの解散で地球防衛軍基地の警備員となってしまったハルキは青空を見上げるや、セブンガー・ウインダム・キングジョーストレイジカスタムの形をした雲を見つけて溜め息をつく。私事で恐縮だが筆者も先日、東宝怪獣映画の大スター・ゴジラの頭部から背びれの部分を彷彿とさせる雲を見かけてハルキとは逆に狂喜したが(笑)、日頃の鬱積(うっせき)したものがそんな幻影を見せたとばかりに、ハルキの内面を描いたこの演出は実に秀逸だった。


 そんなハルキのもとに、今は防衛軍の航空隊に所属するヨウコが「お昼いっしょに食べない?」と現れる。サンドウィッチを食べるハルキに「お昼それだけ? 大丈夫なの?」とヨウコが見せる気づかいも印象的だが、


「最近、目が死んでたよ」(!)


と、冒頭の場面との係り結びとしてハルキを語るヨウコの洞察(どうさつ)力の鋭さを示した多面的な描写も好印象だ。


 そして、これまで点描されてきた、ハルキを含めた男性隊員たちとの「腕相撲(うでずもう)」にこだわるヨウコの動機が明かされる! 曾祖父(そうそふ)の代からつづく軍人一家(爆)を出自とするヨウコは、父から「自分より強い男としか結婚するな!」(汗)との教えを受けたために、実はこれまで男性との交際経験が皆無(かいむ)だったのだ。
 ヨウコがハルキとの腕相撲を重ねてきたのは、自分に勝てるような「強い男」になってもらうため、つまりハルキに対する明確な意志表示と解釈すべきところだろう!


「勝ったら結婚ですか!?」(爆)


 この天然ボケが実にハルキらしいが、ヨウコが「勝ってから云え」(笑)と冷徹に放ったことに「チェスト~!!」とおもいっきり気合いを入れて勝負したことからすれば、決してまんざらでもないのだろう。


 『ウルトラマンティガ』(96年)・『ウルトラマンダイナ』(97年)・『ウルトラマンマックス』(05年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060503/p1)など、主人公の青年と女性隊員が最終展開で急速に進展し、中には結婚にまで至る例もあった。しかし、ハルキとヨウコの関係性の変化に見られた発端となる事件や心の変遷(へんせん)はさして描かれなかったように思えて、個人的には共感しづらいものがあったものだ。
 ヨウコが設定年齢59歳のバコさんや「だいたい5000歳」(笑)のウルトラマンゼットに恋するような「超年上」好みとして当初は描かれたのは、シリーズ中盤以降に「年下」=ハルキ好みに心の変遷をとげるさまをメリハリをもってシンボリックに描くためではなかったか!? その意味でも第11話~第14話のいわゆる「鬱(うつ)展開」は、ハルキとヨウコの関係性の変化を描くには欠かせない要素となりえたのだ。


 そんな淡い恋愛描写と並行して、防衛軍が本作にもゲスト出演したウルトラマンゼロをモチーフにして建造させたとおぼしき特空機4号・ウルトロイドゼロの公開機動テストを強行したために、ウルトロイドゼロを「敵」と認識した『帰ってきたウルトラマン』などに登場したオイル怪獣タッコングと、初代『ウルトラマン』や映画『大決戦! 超ウルトラ8兄弟』(08年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20101223/p1)に登場した海獣キングゲスラが湾岸地帯に、『ウルトラQ』などに登場した古代怪獣ゴメスと地底怪獣パゴス、そして『ウルトラマンX』などに登場した溶鉄怪獣デマーガが山間部に現れる!
 ニュージェネウルトラマンでは怪獣が単体ではなく複数で登場する回がもはや当たり前となっている。しかし、同一の着ぐるみを同一種族の複数個体に見立てたのではなく、別種族の怪獣を5体も一気に登場させる「怪獣総進撃」状態(!)はテレビシリーズでは初のことだ! それもタッコング&キングゲスラにはハルキが変身したゼットを、ゴメス・パゴス・デマーガにはヨウコが搭乗するウルトロイドゼロを対戦させることで、本編で描かれてきたハルキとヨウコの関係性の変化をさらにドラマチックに見せる意図もあるのだ! 「ドラマ」と「バトル」の両立・一体化!
 先述した『ウルトラマンダイナ』最終章3部作でも、「ドラマ」と「バトル」が並行するのではなく、こうした大乱戦の怪獣バトルに「人間ドラマ」を挿入・点描する手法をとっていたら、個人的にはその印象はまったく異なっていたかと思えるのだ。


*みんな「大好き」、ジャグラスジャグラー=ヘビクラ隊長の「真意」とは!?


 さて、序盤の第5話『ファースト・ジャグリング』で、視聴者にはすでにヘビクラ隊長の正体がジャグラーだと明かされていた。しかし、ハルキ=ゼットがようやくそれを知るのは第23話のラストシーンのことだ。


「見えるものだけ信じるなって、教えただろ」


 第2話『戦士の心得(こころえ)』で神出鬼没(しんしゅつきぼつ)な透明怪獣ネロンガの攻略に苦慮していたハルキへのヘビクラの助言「見えるものだけ信じるな」との見事な係り結びとして、ヘビクラがハルキの眼前でジャグラー怪人態に変身する描写がまた実に絶妙だった。


 ところで、第20話『想い、その先に』でユカがすっとんきょうな叫び声を上げたために、ヘビクラ隊長が盆栽(ぼんさい)の枝を誤って切り落としてしまう描写があったように、これまでストレイジの基地内でヘビクラが盆栽を手入れするさまが点描されていたことに注目していた人は多いことだろう。そして、鋭い人はそれがさりげないかたちでヘビクラ=ジャグラーの行動の動機を描いた演出だと気づいていたのではなかったか?


「むかし、大きな樹(き)を斬ったことがあってな……」


 第24話『滅亡への遊戯(ゆうぎ)』で唐突にジャグラーが切り出したこんな話にハルキは困惑した。これは『ウルトラマンオーブ』の放映終了直後からAmazon(アマゾン)プライム・ビデオで週1回の更新で全12話が配信された『オーブ』の前日譚『ウルトラマンオーブ THE ORIGIN SAGA(ジ・オリジン・サーガ)』(16年)episode(エピソード)7『くるる~眩る~』で描かれた出来事を指している。
 『THE ORIGIN SAGA』の前半は地球から7万光年離れた緑豊かな星・王立惑星カノンを舞台としていた。そこには北欧神話に登場する超巨大な末広がりの世界樹ユグドラシルのような「命の樹」なる大樹が太古から存在し、これを失うとカノンに滅びが訪れるとの伝説があったのだ。
 だが、その「命の樹」こそカノンが戦乱に明け暮れる元凶だと見なしたジャグラーは、「命の樹」をかばおうとするアマテ女王が巨大化変身した戦神(いくさがみ)ともども斬り倒してしまい(汗)、惑星カノンの王族を敵に回してしまう。
 しかも、その行為をアスカ・シン=ウルトラマンダイナから「光の戦士の戦い方じゃない!」と否定されたことから、ジャグラーは良き相棒だったガイに別れを告げてひとりカノンを去っていく……


 ちなみに、『THE ORIGIN SAGA』には、アスカ以外にも『ウルトラマンガイア』の高山我夢(たかやま・がむ)=ウルトラマンガイアと藤宮博也(ふじみや・ひろや)=ウルトラマンアグルや『ウルトラマンコスモス』の春野ムサシ=ウルトラマンコスモスも並行宇宙を越境してきて、ほとんどレギュラーとして登場している。そういう先輩ヒーロー客演イベントはWeb(ウェブ)ドラマだけでなく地上波放送でもやってください!(笑)


 『THE ORIGIN SAGA』当時はまだ、後年とは正反対に冷静で任務に忠実なエリート戦士だったジャグラーが後年に「闇」に支配されるに至ったのは、この出来事で自身の「正義」を否定されたのが発端(ほったん)だったのだ。
 そんな苦い過去から、自身の「正義」を絶対視する人類とセレブロに「正義」の「危(あや)うさ」を思い知らそうとして、ジャグラーは双方を常に監視可能なストレイジの隊長となり、セレブロに踊らされた人類がつくった「正義」の象徴=ウルトロイドゼロを奪うために、これまで「立ち位置シャッフル」を繰り返してきたことが判明するのだ!


「見返してやれ。エラそうな能書きだけで人の生き方を否定するヤツらを。オレもそうするつもりだ」


 人生途上でさんざん自身の「生き方」を否定されてきた筆者としては、とても共感するセリフである(爆)。これはストレイジの解散から間もない第22話のラストでジャグラーがヘビクラ隊長の姿でハルキに語りかけたものだ。『Z』は『THE ORIGIN SAGA』、ひいては『オーブ』の間接的な続編でもあるのだとジャグラー自身が雄弁に物語っていたといえよう。


 『Z』の視聴者の大勢としては、通販サイトの最大手・Amazonのプライム会員(月額500円で見放題・笑)にしか視聴できなかった『THE ORIGIN SAGA』を観ていない人の方が圧倒的大多数だったかと思われる。特撮マニアでその作品の存在やアラスジを知ってはいても実際には観ていない御仁も多いだろう(汗)。そんなきわめて狭い層しか知らない作品で描かれたキャラのバックボーンを、現行の最新作で導入しても通じないとの批判は当然あろう。
 これは往年の70年代の小学館学年誌の特集記事のみに記載されていた、映像本編では語られなかったウルトラシリーズのウラ設定の数々にも通じる問題である――当時の学年誌は数百万部の発行部数を達成していたが、それでも子供たちの全員が学年誌を読んでいたワケではないのだ――。


 ところで、実は前日談『THE ORIGIN SAGA』もまた、厳密にいえばテレビシリーズの『オーブ』にはそのまま直結してはいないそうだ(汗)。


 マニア諸氏はすでにご存じだろうが、実は『ウルトラマンオーブ』の物語は、メインだった田口清隆(たぐち・きよたか)監督とメインライターの中野貴雄(なかの・たかお)によって『THE ORIGIN SAGA』の製作後、映像化されなかったウラ設定も含めた全10章からなる「エピソード10」が構想されていた。


・第1章『命の樹』編
・第2章『俺は銀河の渡り鳥』編
・第3章『ブラックホールを盗んだ男』編
・第4章『激闘! イシュタール文明』編
・第5章『ルサールカより愛をこめて』編
・第6章『さすらいの太陽』編
・第7章『宇宙魔女賊ムルナウの逆襲・サデスの帰還』編
・第8章『超空大凶獣デザストロ』編
・第9章『冥府魔道の使者』編
・第10章『渡り鳥、宇宙(そら)を行く』編


 「エピソード10」構想では、第1章が前日譚『THE ORIGIN SAGA』、飛んで第6章がテレビシリーズ本編『ウルトラマンオーブ』、第7章が映画『劇場版 ウルトラマンオーブ 絆の力、おかりします!』、第8章が映画『劇場版 ウルトラマンX きたぞ! われらのウルトラマン』(16年)のラストと『劇場版 ウルトラマンオーブ』のラストで言及された怪獣デザストロとの戦い、第9章が『ウルトラマンゼロ THE CHRONICLE』の枠内で放映された短編『ウルトラファイトオーブ』(17年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20170603/p1)と、時系列に沿った位置づけが巧妙になされているのだ。
 そして、第2章でオーブはのちに『劇場版オーブ』の悪役として登場した宇宙魔女賊ムルナウとガピヤ星人サデスと初めて出会い、第5章ではテレビシリーズのタテ軸のカギとして回想されてきた過去話である西暦1908年における出来事であったロシア人(北欧人?)の美少女・ナターシャと光ノ魔王獣マガゼットンが登場するのだ。
 余談だが、第3章のサブタイトルは、歌手の沢田研二が主演した中学教師が原爆を製造する退廃的な名作カルト映画『太陽を盗んだ男』(79年・東宝)から「盗んだ」ものだろう(爆)。


 なので、『Z』を「エピソード10」構想につづく『オーブ』の第11章以降の物語として連続性を持たせて、ウルトラマンシリーズの「大河(たいが)ドラマ」の一端として「世界観」を拡大させたのは、視聴者の興味を持続させるのにはきわめて有効な設定的なお遊びだっただろう。
 そして、仮に『THE ORIGIN SAGA』で描かれたジャグラーの出自を知らなかったとしても、「正義」に懐疑(かいぎ)的なそのキャラクター自体は決して視聴者の理解を超えるものではないのだ。マニア誌やネット媒体であとから『THE ORIGIN SAGA』や『オーブ』ネタの挿入や作品の存在を知って、それからそれらの作品をさかのぼって鑑賞するようなライト層や子供たちも確実にいるだろうことを思えば、長大なるウルトラマンシリーズそれ自体に関心を持ってもらうという意味でもバンバンザイなのである。



涼「現実に耐えきれない人間もいる」
翔一「どうしてですか? こんなに世界はキレイなのに。ほら、空も雲も木も花も虫も鳥も家も草も水も……」
涼「世界は美しいだけじゃない」
翔一「そうかな? そういうのって見方によるんじゃないですか」
涼「人間が皆、自分と同じだと思わない方がいい」


 これは2021年で放映20周年を迎えた『仮面ライダーアギト』(01年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20011108/p1)の第12話における津上翔一(つがみ・しょういち)=仮面ライダーアギトと葦原涼(あしはら・りょう)=仮面ライダーギルスの会話だ。
 基本的には「いい人」だが、自分の価値観を絶対視する翔一に対し、何に対しても懐疑的な(汗)涼は多面的なものの見方を提示している。……個人的にもたしかに世界なんてキタナイものだらけだとは思うけど(爆)。


 「正義」のヒーローが「絶対悪」を倒せばよかった昭和の時代とは異なり、「正義」を疑う観点もが示された平成仮面ライダーが放映されて早20年が経過し、多様な価値観を群像劇を通じて描く手法は特撮変身ヒーロー作品では今やすっかりスタンダードとなっているのだ。
 この20年間さんざんに面白い『仮面ライダー』を観てきたハズなのに、いまだに『アギト』が超面白いと思えるのは――個人的にはリアルタイム以上に!――、やはりその作劇やテーマ自体も実に優れていて普遍性もあったからだろう。


 第11話~第14話にかけての、自身の卵を守るという「正義」を示したレッドキングを倒さなくてはならない「正義」を、ハルキが疑いつづけた展開はたしかに少々陰鬱ではあった(汗)。しかし、そうした観点は特撮変身ヒーロー作品ではもはや必要不可欠な要素であり、それを提示するキャラは本作『Z』では、やはり善悪があいまいで揺れているがゆえに物事を多面的に見られたり、悪に落ちてしまう人間にも一理を認めてあげられる視点があるジャグラーこそが最もふさわしかったのではあるまいか?


 第24話でクリヤマ長官に憑依したセレブロに「選択肢(せんたくし)はふたつだ」と脅迫されて、当初の目的であったハズのウルトロイドゼロを奪うことよりも、ハルキの命を救うことを優先してしまったジャグラーが、


「また、やっちまった……」


とボヤくのも、一方では非情に徹しきれない彼の「人間性」を象徴するものだ。


 ジャグラーは単に「ネタキャラ」として消費するだけでは実にもったいない、背景に高い「ドラマ性」をもっており、「善悪の多様性」や「物事の多面性」といった「テーマ面」でも有効に活用することができるキャラクターとして我々は再認識をする必要があるだろう。


 その意味では、ふだんはノーテンキなユカが第23話で放った、「正義」が守るべき範疇(はんちゅう)に「地球」や「怪獣」も含めるか、「人類」だけに置くかで変わってくる、以下の嘆きも高く評価されるべきだ。


「地球を守るんじゃなくて、人類が人類、守ってるだけじゃん!」


*魅力的なラインナップの「怪獣軍団」と魅惑的なセレクトの「合体怪獣」までもが「最終章」には登場!


 第24話で『ウルトラセブン』(67年)に登場した発泡怪獣ダンカン(!)、『帰ってきたウルトラマン』(71年)ほかに登場した凶暴怪獣アーストロン、『ウルトラマンタロウ』(73年)ほかに登場した火山怪鳥バードン、『ウルトラマンレオ』(74年)に登場した宇宙昆虫サタンビートル(!)、『ウルトラマン80』(80年)第1話(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100502/p1)に登場した月の輪怪獣クレッセント、『ウルトラマンG(グレート)』(90年)に登場した昆虫怪獣マジャバ(!!)などの怪獣たちが「世界各地」でいっせいに目を覚ます怪獣ファン狂喜必至の描写は、第22話で「人類が人類を守るだけのウルトロイドゼロ」に対する反乱として「日本各地」で怪獣が出現した一連を、異なる怪獣たちで反復することでいっそうドラマ性やテーマ性を深めていた。
 その怪獣たちがウルトロイドゼロに吸収されて、それらの各部位が装甲を突き破るように露出した「合体怪獣」である「殲滅(せんめつ)機甲獣デストルドス」が誕生する!


 2010年代のニュージェネレーションウルトラマンの最終章に個人的にはいまひとつの感があったのは、初代『ウルトラマン』の宇宙恐竜ゼットン、『ウルトラマンA(エース)』(72年)最終回(第52話)(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070429/p1)の合体超獣ジャンボキング、『ウルトラマンメビウス』(06年)最終章3部作(第48話~第50話)の暗黒宇宙大皇帝エンペラ星人などの最終回登場怪獣に匹敵するほどにインパクトの高い怪獣が登場しなかったことが大きい――強(し)いて挙げれば『ウルトラマンR/B』の最終章に登場した、ハデな原色のケバケバしいデザインで『A』の超獣を彷彿とさせた怪獣「コスモイーター・ルーゴサイト」は魅力的に感じていた――。
 やはり「合体怪獣」という存在はそれぞれの怪獣のパワーが結集して倍増したようにも思えて強そうに見えるものなのだし、ウルトラマンシリーズの「合体怪獣」としてはジャンボキングに次ぐ二番手となる『ウルトラマンタロウ』に登場した暴君怪獣タイラントがいまだに根強い人気を誇っているのを思えば、それらを彷彿とさせる「合体怪獣」を最終章で登場させた『Z』の方法論はやはり正しいものだろう。
 第1期ウルトラシリーズの美術デザイナー・成田亨(なりた・とおる)は古代ギリシャ神話の神獣キメラ(キマイラ)のような「合体怪獣」には否定的だったが、先人には敬意を表しつつも個人崇拝のような原理主義にもなってはイケナイとも思う。今後のウルトラシリーズでも終盤などではこのように強そうな「合体怪獣」を登場させてほしいものである!


 ところで、ウルトロイドゼロは第11話で救われたレッドキングBをも吸収してしまっており(!)、ハルキのトラウマを誘発するかのようにデストルドスの右肩にレッドキングの首が伸びている(汗)。カオス的であるのみならず、セレブロの頭脳戦・心理戦をも象徴する形態であるのもデストルドスの大きな魅力だろう。


*ハルキとバコさん、そしてウルトラマンゼットとの感動的な「別れ」が描かれた!?


 さて、主人公青年がウルトラマンとしての正体を最終章まで決して明かさなかった昭和以来の伝統が『ウルトラマンメビウス』で途切れて以降、シリーズの序盤から主人公の正体が主要キャラには公然となっている『ウルトラマンジード』(17年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200523/p1)のような例も見られるようになったが、『Z』では最終回の1本前である第24話でハルキがその正体を告白する。
 先述した流れからすれば、その相手がヨウコでもドラマチックに描けたことだろう。なにせヨウコが熱を上げたゼットの正体がハルキだったのだから(笑)。
 だがこのとき、ヨウコはセレブロに憑依されて、ウルトロイドゼロのコクピットでラリった表情でエキセントリックに絶叫していたために(汗)――ヨウコ役の松田リマの明確に差別化した演技が絶品!――、実際にハルキが告白した相手は意外や意外、バコさんだったのだ!


 防衛軍の整備班がクローズアップされるのは故・綿引勝彦(わたびき・かつひこ)が演じるアライソ整備班長が登場した『ウルトラマンメビウス』第15話『不死鳥の砦(とりで)』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060924/p1)以来かと思うが、特空機なる架空のロボット兵器に現実感を醸(かも)し出すために、『Z』では整備班は大人数の隊員が所属する重要部署との位置づけがなされていた。
 登場しない回もあったが、バコさんは決して「周辺キャラ」にとどまらず、戦闘飛行メカを「もっとていねいに扱え!」などと『メビウス』の防衛組織・GUYS(ガイズ)の隊員たちを怒鳴り散らしていた一本調子の印象が強いアライソ班長とは対照的に、格闘技やトランプ手品にマグロの解体(爆)などの多彩な特技を持ちながらも「むかし…… ちょっとな」と多くを語らないバコさんは、ハルキからしても真実を明かしやすい相手ではあったろう。


 だが、特筆すべきはそのシチュエーションの描き方である。


「ちょっとドライブ、行かないか?」


 この緊急事態時にバコさんがハルキをドライブに連れ出すのはもちろんそれなりの意図があってのことだ。ウルトラマンゼットの正体をウスウス気づいていたであろうバコさんがハルキから話を引き出すための有効な手段だったのは想像に難(かた)くない。


 だが、ハルキもバコさんも車中ではひたすら「黙して語らず」。やがて……


「やっぱオレ、行きます!」
「行くって、おまえ……」


 この場面でのハルキのセリフはそれっきりだ。「実はオレ、ウルトラマンゼットなんです!」とはひとことも云っていない! だが、バコさんをひたすら見つめるハルキの表情だけで、自身の予感が的中したことを確信したバコさんもまた


「そうか…… 行ってこい」


と声をかけるのみだった。


 運転席でやや呆然(ぼうぜん)としたバコさんの横顔の背景に、車外へ駆けだしたハルキが変身直前に入る直方体の「光の異空間」に突入するさまが車窓越しに描かれる特撮合成演出がまた絶妙だ!


「最近のウルトラマンはしゃべりすぎだ! 神秘性がなくなる!」


 『ウルトラマンR/B』第8話『世界中がオレを待っている』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20181104/p1)でのウルトラマンオーブダークによる、この旧態依然としたオールド特撮マニアのような否定的文脈での主張にはまったく賛同しないし、ウルトラマン自身がベラベラとしゃべって彼ら自身のドラマを展開していくことにウルトラシリーズの新たな鉱脈すらある! くらいに個人的には思っているのだが(笑)、たとえ「多くを語らず」とも通じ合えているハルキとバコさんの関係性を端的に描いたこの場面がサイコーにカッコよく感じられたのもまた事実なのだ。


 「むかし…… ちょっとな」というセリフの「むかし」という語句には、メタフィクション的にはバコさんを演じた橋爪淳(はしづめ・じゅん)が、特撮マニアには映画『ゴジラVS(対)スペースゴジラ』(94年・東宝)の主人公・新城功二(しんじょう・こうじ)役や映画『ゴジラ FINAL WARS(ファイナル・ウォーズ)』(04年・東宝http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060304/p1)の国連事務総長秘書官役、『大江戸捜査網』(90年)や『若大将天下ご免!』(87年)などのテレビ時代劇の主演などを務めてきたことまでダブル・ミーニングがされているのだろうが、先述したバコさんの静的なカッコよさは、ロマンスグレーの頭髪に白いヒゲがめだつ熟年俳優だからこそ成しえた必殺ワザだろう。


 ハルキとバコさんの別れの場面も哀愁(あいしゅう)が漂(ただよ)う演出だったが、デストルドスに敗れたゼットがガラスのように砕(くだ)け散り(!)、一心同体だったハルキと分離してしまう場面もまたしかりだ。ここでは『ウルトラマン』最終回(第39話)『さらばウルトラマン』でゼットンに敗れた初代ウルトラマンを迎えに来た宇宙警備隊の隊長でウルトラ兄弟の長男・ゾフィーと初代マンが、赤い球体の中で会話する描写のオマージュがなされた。
 初代マンに変身していた防衛組織・科学特捜隊のハヤタ隊員と初代マンがゾフィーによって分離され、長い「別れ」となったように、ゼットとハルキも「別れ」のときを迎えたのかも!?――最終回ラストはまだなので、そんなことになるハズはないのだが(爆)――と視聴者に衝撃を与えるミスリード演出としては絶妙だった。


「こういうとき、地球では……ウルトラさびしい気持ちでいっぱいでございます」


 ゼットがいつもながらのウルトラデタラメな日本語(笑)でハルキに「別れ」を告げても、それを笑った視聴者は誰ひとりとしていなかっただろう。むしろこんなウルトラ非常事態でさえゼットの「らしさ」を貫いた演出こそが、視聴者の涙をより誘ったのではなかったか?


*「タテ軸」「連続もの」要素よりも「ウルトラ面白カッコよさ」の方が優先!?


 デストルドスが世界の主要都市を次々に破壊する中、セレブロの「正義」に鉄槌(てっつい)をくださんと、ジャグラー=ヘビクラ隊長によって解散したハズのストレイジが整備班のメンバーも含めて再結集する!
 そして、キングジョーストレイジカスタムにハルキが、ウインダムにヘビクラが、セブンガーにバコさんが搭乗して全特空機が出撃、デストルドス撃退とヨウコ救出のためにストレイジが総力戦を展開した!


 平成の『ウルトラマンティガ』以降のウルトラマンシリーズの最終回は3部作や前後編などの連作形式によって全世界的な危機が描かれ、主人公側が総力戦で挑(いど)むのが恒例(こうれい)となっている。それは『Z』でも踏襲(とうしゅう)されたのだが、先述したハルキとヨウコの関係性の変化が最終回のクライマックスで頂点に達することで、本編の「人間ドラマ」と「特撮バトル」の双方を渾然一体(こんぜんいったい)にして盛り上げた作劇的技巧は、ニュージェネウルトラマンの最終章の中でも突出して完成度が高かったかと思える。


 ウルトロイドゼロのコクピットで、ヨウコはハルキとの「腕相撲」の日々を回想した末に、


「よっしゃぁ~~! やっと勝ったぁ~~!! ……あ、結婚しなくちゃいけないのか?」(爆)
「アンタ、なんで泣いてんのよ!」


と、ハルキがついにヨウコに勝利するさまを夢に見る。


 この場面は『帰ってきたウルトラマン』最終回(第51話)『ウルトラ5つの誓い』の冒頭で、触覚宇宙人バット星人に捕らわれた『帰ってきた』最終第4クールのヒロインである女子大生・村野ルミ子が主人公の郷秀樹(ごう・ひでき)=ウルトラマンジャックと結婚式を挙げる夢を見る描写を彷彿とさせる。
 最終展開で侵略宇宙人に拘束(こうそく)されるヒロインが「主人公と結ばれる夢を見るシチュエーション」がまったく同じなので、おそらくは『帰ってきた』のオマージュも入っていたのだろうが、これはヨウコがバコさんやゼットのような「超年上」好みから「年下」のハルキに心変わりしたさまの何よりの証(あかし)となっている。


 キングジョーをロボットモードに変型させて高空でデストルドスと組み合ったハルキは、デストルドスの腹部からヨウコを抜き取ることに成功する!
 しかし、乱気流の中でヨウコは宙をまっ逆さまに落下! 救出に向かうハルキが空に飛び出す!


 アニメ作品などで時折り見るような、まさにナマ身でのランデブー落下飛行の状態で向き合うハルキとヨウコの背景に、「光の異空間」内での変身シーンのバンク映像でハルキの真後ろに出現する際のようなウルトラマンゼットの巨大な姿が「実景」の大空の中に現れた!


 そして……


ゼット「ご唱和ください、我の名を!」
ハルキ「ウルトラマン、ゼぇぇ~~ット!!」


 ハルキだけではなくヨウコも、そして地上でこれを見守っていたストレイジの隊員たち全員が「ウルトラマン、ゼぇぇ~~ット!!」と唱和して熱く叫ぶ!!


 これには『ウルトラマンA』のシリーズ前半で描かれた主人公の防衛組織・TAC(タック)の隊員・北斗星司(ほくと・せいじ)と南夕子(みなみ・ゆうこ)の変身時の掛け声「ウルトラ・タッチ!」のように、ハルキとヨウコがウルトラマンゼットに合体変身をとげるのか!? とおもわず錯覚したほどだった。
 また、『ウルトラマンメビウス』最終回(第50話)(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070505/p1)やその後日談であるオリジネルビデオ作品『ウルトラマンメビウス外伝 アーマードダークネス』(08年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20080914/p1)で主人公のヒビノ・ミライ=ウルトラマンメビウスとともに「メビウ~~ス!!」と叫んだGUYS隊員たち全員が、ウルトラマンメビウスの最終強化形態であるウルトラマンメビウス・フェニックスブレイブに合体変身した描写をも彷彿とさせた。
 『ウルトラマンティガ』最終回(第52話)(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19961207/p1)で世界中の子供たちの「光」がウルトラマンティガを復活させ、ティガと合体して体内で共闘する描写もそうだったが――正直、個人的には『ティガ』にあまり良い印象を持っていないのだが(汗)、最終章単独では高く評価している――、こうした演出こそ視聴者が劇中キャラとの一体感を得られて、感情移入をより高める効果を発揮するのだ。


 主題歌のタイトルでもある「ご唱和ください、我の名を!」なるゼットのウルトラ変な定番セリフは、最終章を盛り上げるために逆算して考案されたのではなかったか!? と思えてくるほどである。


 バトルシーンには実にふさわしい、『Z』の主題歌『ご唱和ください 我の名を!』が流れる中、


「まだまだイケますね、ゼットさん!」
「もちろんでございますよ!」


と、最終決戦の最中でさえハルキとゼットがそんなやりとりをしてしまう「ウルトラ面白カッコいい」作風こそ『Z』最大の魅力なのだろう。


 デストルドスを撃破して、「宇宙で困ってる人を助けに」とゼットとともに地球を離れることとなったハルキとヨウコの「別れ」の場面すらもが、


「盆と正月には帰ってきますね!」
「実家みたいに云うな!」(笑)


なんて調子だったのだから。


 セレブロの方は最後は虫取り網(あみ)で捕獲(汗)されたほどにラスボスとしては小物感が拭(ぬぐ)えず、そもそもセレブロに憑依された青年・カブラギが登場しない回も多かったとか、怪獣を狂暴化させる要因とされた宇宙全体に飛び散っている「ベリアル因子」でもある「デビルスプリンター」の件は結局、文字通り「回収」されずに終わったなど、タテ軸的には「?」な欠点もたしかにあった――最終回のラストでゼットが「これからハルキとデビルスプリンターを回収する旅に出るのでございますよ!」などというセリフでも入れてくれれば言い訳がついたであろうに――。


 だが、そういった欠点がありつつも、「キャラクタードラマ」としての面白さを優先した作劇こそが、『Z』が最後まで子供たちやマニア層からの支持を離さなかった大きな要因かとは思えるのだ。


 平成ウルトラ3部作はリアルタイムではテーマやドラマ的な部分で当時の年長特撮マニアたちの注目を集めたり、そこを中心に論じられたりもしたものだ。しかし、それとは別に防衛組織の隊員たちやそれを演じる役者さんたちにも熱い視線を送るファン層も一定数は存在していた。
 当時の筆者は特撮番組をそんなミーハーな視点で語るのは邪道だと考えていたのだが(汗)、実際に商業的には久々に成功したといえる『Z』に対する若いファンたちの盛り上がりぶりを見るにつけ、もう21世紀に入ってからはとっくにそのようにも考えを改めてはいたのだが(笑)、ヒーローや登場人物のキャラクター人気が主導するような『ウルトラマン』作品こそが実は充分に魅力的な作品でもあったのだ! という結論を再確認の意味でも噛みしめているのであった。


*エースからゼットの手に! ウルトラマンエースウルトラマンゼットに、先輩ヒーロー客演編の普遍性を透かし見る!


 さて、『Z』がマニア層から支持された要素について考察してきた結果、本来ならば筆者が最も語りたかった、昭和のウルトラマンエースが客演した第19話『最後の勇者』について語る紙幅がなくなってしまった(汗)。ここではその最も重要な部分のみについてふれさせていただこう。


ヤプール! かつておまえは云った。『勝った者は負けた者の怨念(おんねん)を背負って生きるんだ』と。それでも私は、ウルトラマンは戦いつづける! この宇宙に真の平和が訪れるその日まで!」


 『ウルトラマンA』の名作回である第48話『ベロクロンの復讐』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070402/p1)での女ヤプールの捨てゼリフに対する返答にもなっている、この熱血少年マンガ的な超カッコいい名セリフは、この『Z』第19話にも登場した『A』第13話『死刑! ウルトラ5兄弟』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060803/p1)~第14話『銀河に散った5つの星』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060805/p1)の前後編が初出である殺し屋超獣バラバの創造主である、というか今回のバラバの正体でもあるらしい、バラバの姿で不完全な復活を果たしている異次元人ヤプールに向けてウルトラマンエースが放ったものなのだ。これとの係り結びとしてラストでウルトラ意外な事実も明かされる!


「ゼット(=Z)にはなぁ、地球の言葉で『最後』という意味がある。おまえがこの宇宙から戦いをなくして平和をもたらす『最後の勇者』となれ……」


 マニアや怪獣博士タイプの子供であれば、『ウルトラマンZ』というネーミングに昭和の『ウルトラマンA』のネーミングとの共通項を誰もが連想したことだろう。しかし、『A』と『Z』のアルファベットの最初と最後から採った名前つながりで、エースとゼットがすでに旧知の仲であったのだとした描写自体がまずは秀逸である。そして、そこに後付けでも意味やドラマ性を持たせるために、エース自身がまさにゼットの名づけ親だったとしてみせる! もちろんそれは点描でしかない。ナマ身の人間によるドラマではなく宇宙人・仮面ヒーローたちによるドラマではある。しかし、それであっても高いドラマ性を与えることはできるのだ!


 なお、『Z』第19話は動画無料配信サイト・YouTubeで配信当日に「急上昇ランキング」の第29位にランクインし、1週間で再生回数が150万回を超えていた!――この時期の通常回の再生回数は80万~100万回前後――
 往年の昭和のレジェンドヒーローがゲストで登場するサプライズ回でも、世代人でもない若年層やライト層までもが支持をするのだという厳然たる事実があることに、もはや疑いの余地はないだろう――そもそも『A』をリアルタイムで観ていた世代の方が今となっては少数派だろう(笑)――。ウルトラシリーズにかぎらず各社のシリーズヒーローものでも、積極的にレジェンドヒーロー客演回や客演映画を製作するべきなのである!

2021.4.22.


(了)
(初出・当該ブログ記事)


 2021年9月現在、放映中のTV特撮『ウルトラマントリガー』(21年)に、前作のヒーロー・ウルトラマンゼットが並行宇宙を越境してきて客演した#7のサブタイトルは「インター・ユニーバース」! 直訳すると、「宇宙」と「宇宙」間、異なる「宇宙」と「宇宙」相互同士の「関係性」! といった意味になる。「グローバリズム」とは異なる「インター・ナショナル」という語句とも同様に、両者が溶け合って混ざって平均化・均質化されてしまったのではなく、互いの個性・特質を保ったままでの併存! もしくは、鎖国ではなく併存しつつも相互で影響を与え合っている! といったことを意味する言葉にもなるので、実に示唆的でもある。


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  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200827/p1

ウルトラマンオーブ』(16年)最終回「さすらいの太陽」 ~田口清隆監督の特撮で魅せる最終回・ジャグラス改心の是非・『オーブ』総括!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20170415/p1

ウルトラファイトオーブ』(17年)完結評 ~『オーブ』・『ジード』・昭和・平成の結節点でもある年代記的な物語!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20170603/p1

ウルトラマンジード』(17年)最終回「GEEDの証」 ~クライシスインパクト・幼年期放射・カレラン分子・分解酵素・時空修復方法はこう描けば!?

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20180213/p1

ウルトラマンタイガ』(19年)最終回「バディ ステディ ゴー」 ~『ウルトラギャラクシーファイト』『スカイウォーカーの夜明け』『仮面ライダー令和』 ~奇しくも「父超え」物語となった各作の成否は!?

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200112/p1

ウルトラマンタイガ』(19年)最終回「バディ ステディ ゴー」 ~タロウの息子としての物語たりえたか!?

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210606/p1

『ウルトラギャラクシーファイト ニュージェネレーションヒーローズ』(19年)最終回 ~戦闘連発でも多数キャラの動機・個性・関係性は描破可能! 物語よりも点描に規定される作品の質!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210620/p1

ウルトラマンZ(ゼット)』(20年)最終回「遙かに輝く戦士たち」・後半評 ~ネタキャラが敵味方に多数登場だが熱血活劇! 2020年代のウルトラはかくあるべし!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210905/p1(当該記事)

ウルトラマントリガー』(21年)最終回「笑顔を信じるものたちへ」 ~新世代ウルトラ各作終章の出来も含めて賛否総括! 光と闇を包摂する真理!?

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20220326/p1


ウルトラマンエース』(72年)最終回「明日のエースは君だ!」 ~不評のシリーズ後半も実は含めた集大成!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070429/p1

『ザ☆ウルトラマン』(79年)最終回 #47「ウルトラの星へ!! 第1部 女戦士の情報」

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100328/p1

『ザ☆ウルトラマン』(79年)最終回 #48「ウルトラの星へ!! 第2部 前線基地撃滅」

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100404/p1

『ザ☆ウルトラマン』(79年)最終回 #49「ウルトラの星へ!! 第3部 U(ウルトラ)艦隊大激戦」 ~大幅加筆!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100411/p1

『ザ☆ウルトラマン』(79年)最終回 #50「ウルトラの星へ!! 完結編 平和への勝利」 ~40年目の『ザ☆ウル』総括!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20200508/p1

ウルトラマン80(エイティ)』(80年)最終回 #50「あっ! キリンも象も氷になった!!」 ~実は屈指の大名作!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210315/p1



てれびくん超ひゃっかシリーズ ウルトラマンZ ヒーロー&怪獣ずかん

ウルトラマンZ』後半評! ゼットが『ウルトラマントリガー』にゲスト出演記念!
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ウルトラマンZ』最終回評 ~デストルドスが全ウルトラ怪獣大投票で53位記念!
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