假面特攻隊の一寸先は闇!読みにくいブログ(笑)

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ウルトラマンタロウ5話「親星子星一番星」  ~怪獣にも家族の情ありでも、人間との共生は困難! その解決策は理想か!? 欺瞞か!?

(CSファミリー劇場『ウルトラマンタロウ』放映・連動(?)連載!)
『ウルトラマンタロウ』4話「ウルトラの母は太陽のように」 ~人物像・超獣より強い大怪獣・母・入隊・ヒロイン・5兄弟の正統タロウ誕生を漏れなく描いた第1話!
『ウルトラマンタロウ』6話「宝石は怪獣の餌だ!」 ~怪奇演出満載でも、愚かなフリして聡明だった健気なヒロイン描写が光る!
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[ウルトラ] ~全記事見出し一覧
「ウルトラマンタロウ 再評価・全話評!」 〜全記事見出し一覧


『ウルトラマンタロウ』5話「親星 子星 一番星」 〜怪獣にも家族の情でも、人間との共生は困難! その解決策は理想か!? 欺瞞か!?

(脚本・上原正三 監督・吉野安雄 特殊技術・鈴木清)
(文・久保達也)
(2007年10月執筆)


 本話は前後編の後編でもある。


 前話である第4話『大海亀怪獣 東京を襲う!』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20071223/p1)のラストで、キングトータス&クイントータス夫婦が空中飛行しながら、上下からサンドイッチするかたちで、その身を回転させて巻き起こした「真空渦巻」に巻き込まれたウルトラマンタロウ!


 しかし、からくも難を逃れたタロウは、自らの身を高速回転させてドリルのようにして地中へと姿を消した。


 タロウも撤退してしまった今、今度は残された本作の防衛組織・ZAT(ザット)の隊員たちが、地上からZATガンで夫婦怪獣に攻撃をかける!


 クイントータスはその卵管から、キングトータスはそのクチから赤い火炎玉を吐いて、隊員たちを蹴散らした!


 そして、最後に残っていた夫婦怪獣たちの子殺し(卵殺し)の犯人たちでもあったゲスト悪役・黒崎と八田を追いつめていく!


 トータス夫婦は体を高速回転させて「真空渦巻」を巻き起こした!


 黒崎と八田が宙に舞い上がる!


 タロウですら苦戦した「真空渦巻」なのだ。人間なぞはひとたまりもない! 黒崎と八田はトータス夫婦の腹の中へと吸いこまれていった……


荒垣副隊長「復讐を遂げた。卵を食べた者は全員やられた……」


 佐久間は食べられてしまった。第4さくら丸の乗組員たちは船ごと海に沈められてしまった。白井は地割れの中に巻きこまれてしまった。先の黒崎と八田は腹の中に吸収されてしまった……


 夫婦怪獣たちの「卵」を食べた者に対して復讐を果たしたにせよ、それぞれで違う手法をとることで、ワンパターンに陥らせずに、飽きさせないばかりでなく、トータス夫婦の執念深さを一層感じさせる作劇的な工夫もなされていたのだ。


 この点が、前編の第4話評でもふれた、怪獣モスラ・怪獣ガッパ・怪獣ゴルゴなどとは異なる点でもあった。特撮マニアたちが70年代末期~90年代初頭にかけてよく用いていた表現だが、「怪獣」を「地震」や「台風」といった「大自然の脅威」といった観点で捉えていた。
 しかし、不本意ながらも都市破壊をしてしまったようにも見受けられたモスラ・ガッパ・ゴルゴらとは違って、トータス夫婦は「復讐」という明確な意思(!)を持って、卵を食べた者たちを殺害していくのであった……


 どれだけの被害をもたらそうが、「地震」や「台風」を罪に問うことはできない。しかし、いくら同情すべき点があったとはいえ、「復讐殺人」ともなれば、本来は断罪されてしかるべきなのだ。こういった描写が次の場面においては、大きな意味をもたらすことになるのだ!



朝日奈隊長「これは鮫島参謀」
鮫島参謀「紹介しよう。こちら、地球警備隊極東支部のスミス長官だ」
スミス長官「スミスです。よろしく」
朝日奈「朝日奈です」


 カタコトの日本語で話し出すスミス長官。そして、握手を交わすスミス長官と朝日奈隊長。


 ちなみに、「地球警備隊」とは、ZATの上位機関なのであろうか? 劇中には登場しないウラ設定だが、ZATの正式名称は「宇宙科学警備隊」であって、本部が国連(国際連合)のビル内にあることから、国連の傘下にある組織であるようにも推測できるのだ……
 まぁ、こういった幼児はともかく、小学生の怪獣博士タイプの少年たちが気にしてしまうような設定的な整合性は、当時のスタッフや本話の脚本家・上原正三(うえはら・しょうぞう)先生などは、深く気にしていなかったことであろう(笑)。ZATの上位組織でもよいし、ZATとは別に独立して存在している組織であっても、どちらであっても特に支障はないであろうが、こういったことを妄想することもまた楽しいのだ。


鮫島「さっそくだが、あの亀怪獣をどうするつもりだ?」
朝日奈「ああ、オロン島へ帰してやるつもりです。今、卵を運ばせるいいアイデアを思いついたところなんです」
スミス「亀怪獣はただちに攻撃し、そして殺すべきです!」


 ZAT一同に緊張が走った!


鮫島「亀怪獣をオロン島へ帰されては、困るとおっしゃってるんだ。オロン島は長官の領土なんだ」


 長官だとはいえ、南海の孤島が一個人の領土! スゴいなぁ(笑)。


朝日奈「困ると云われても、困りますよ。オロン島は亀怪獣の故郷(ふるさと)じゃありませんか」
スミス「怪獣を領土に入れることはできません。我が軍の潜水艦や軍艦が安心して活動できません。演習するにも邪魔です。すぐ退治しなさい!」
朝日奈「殺すわけにはいかない……」
スミス「なぜダメです?」
朝日奈「亀ってヤツは元来おとなしい動物なんです。人間とも極めて親しい間柄にある動物なんです。殺すわけにはいかない」
スミス「亀怪獣のために、さくら丸も沈没させられた。ウルトラマンタロウすらもやられている。それでもおとなしい動物ですか!?」


 隊員たちも黙ってはいられない!


光太郎(こうたろう)「さくら丸が襲われたのは、乗組員が亀の卵を食べたからです。彼らは日本に復讐のためにやってきたんです!」
荒垣「ご覧ください」


 モニターを指す荒垣副隊長。無邪気にじゃれ合うトータス夫婦の姿が映し出される。


荒垣「復讐を終えた途端、すごくおとなしくなりましたよ」
森山「オロン島へ帰してあげてください。卵さえ持たせてあげれば、素直に帰ると思うんです」
スミス「卵から4匹生まれたら合計6匹だ。オロン島一帯は亀だらけになってしまいます!」
光太郎「オロン島一帯を、亀親子の保護地区にしたらどうでしょうか。亀の楽園にするんです!」
荒垣「そりゃあいい! 夢があるじゃありませんか!」
スミス「あれくらい大きくなれば、もう怪獣だ! その怪獣を飼育するわけにはいきません!」
鮫島「どうかね、朝日奈くん。どうせ相手は畜生だ。この際、ひと思いにやってしまっては?」


 朝日奈の苦渋の表情が、アップ映像で映し出される! そして、「畜生」の語句! もちろん、畜生とは「動物」の意味である。


朝日奈「畜生だって、子を思う親の心に変わりはありませよ!」
鮫島「じゃあ、どうしても帰すつもりなのか!?」
朝日奈「そのつもりです」
スミス「もうZATには頼まない! その代わり、オロン島で亀怪獣が巻き起こす事件の責任は、すべてZATにある! いいですかね!」
朝日奈「わかりました。全責任をZATが負いましょう!」


 満足気にうなずいて軍帽をかぶって、足早にその場を去っていくスミス長官。


鮫島「君! いい加減なことを云って! 俺はもう知らんからな!」


 どうにも埋めようがないほどのミゾがスミス長官とZATの間に存在している。しかし、この一連の会話を見ると、「ただちに攻撃して殺すべき」かはともかく、その理由を語るスミスの主張はたしかにスジが通ったものである。


 それにひきかえ、朝日奈隊長をはじめとして、ZAT隊員たちの反論は、特に主人公・東光太郎(ひがし・こうたろう)隊員が「亀の楽園」を提案する件は、亀怪獣が近辺に存在することでの近隣島民や船舶の危険性をも考慮に入れれば、「他人事(ひとごと)だと思って、何を無責任なことを!?」と批判をする向きもあって、しかるべきでもある。


 だが、この場面におけるZATの「主張」は、あくまで「視聴者や、あるいは子供視聴者の意見を代弁したもの」だと考えるべきであろう。ある意味では、「大人と子供の対立」を、そしてZATの隊員たちが心優しいメンバーであることを表現するための、確信犯的な話運びであったとも捉えるべきものなのだ。


 ZATがスミスに同意して主張をあっさりと受け入れてしまって、トータス夫婦を攻撃して殺害してしまう! そして、卵から生まれたミニトータス4匹が両親の仇をとるためにZAT基地を襲撃! それすらをもZATとタロウが情容赦もなく抹殺する! などという、おぞましい展開にすることなぞ、子供向け作品や、あるいは一般層向けの娯楽活劇作品であっても、アリエナイからなのだ。


 そういうワケで、ZATの主張は、実は現実世界での野獣や害獣駆除などに当てはめて、現実的に考えてみせれば、実に甘いものであることは百も承知でこういった作劇をするものなのである。


 しかして、トータス夫婦はやはり人間とはなかなかに共存しにくい危険な野生の存在でもあった。それを視聴者にも悟らせるためか、トータス夫婦は単なる「大自然の脅威」でもなく、一見はおとなしい怪獣に見えながらも、時には「悪意」をも感じさせる「危険な存在」でもあり、時に明確に「復讐」の意図を感じさせて、なおかつその「復讐」の過程が事細かに実にていねいに、そして残酷にも演出されていたのだ。そして、それによってスミスの主張にも一理を与えることには成功していたのだ。


 トータス夫婦が単に「大自然の脅威」なり「人間の自然破壊による被害者」として描かれてしまったならば、この場面ではスミス長官は自分の都合や私利私欲のみを主張する、単なる一面的な悪役にもなってしまうからなのだ。鮫島参謀がスミス長官に加勢するわけでもなく、しばらくは会話のなりゆきをじっと見守り、あくまでスミス長官の意向を伝えに来た存在であるとして描かれていたのも、彼が記号的にして腰ぎんちゃく的な悪役になる一歩手前の寸止めとしても機能していたのだ。


 これと同様の手法は本作『ウルトラマンタロウ』第46話『日本の童謡から 白い兎は悪い奴!』などにも見受けられる。同話では、ペットの飼育は許されないアパートに住んでいたのにもかかわらず、こっそりとウサギを飼ってしまった少年・太一と、大の動物嫌いでもある大家(おおや)さんとの対立が描かれていた。しかし、現実世界での「社会通念」に照らして考えれば、やはりトータルでは太一の方が部が悪いのだ。それでも物語は太一の視点・主観で描かれていくために、同話にゲスト出演した「わんぱく宇宙人・ピッコロ」は太一の側について、「地球人は汚い!」とまで云わしめることになったのだ。


 こうした点を捉えて、『タロウ』を「反社会」的な作品だと非難することも論理的には可能なのだ(まぁ、そんなヤボなツッコミをする御仁はひとりもいないだろうが・笑)。だが、製作側の狙いはそういったことでもなく、そもそも『ウルトラマンタロウ』などに代表される子供向けジュブナイル作品とは「子供の目線に立った世界観」が描かれていることが多いことを理解する必要があるのだ。
 しかし、第46話でも動物嫌いの大家さんは一応の悪役として設定されてはいたのだが、演じた大泉滉(おおいずみ・あきら)の個性もあって、非常にコミカルなキャラクターとしても描かれており、「悪」という印象は薄められている。この配役がまた実に絶妙なのであった。これがいかにもクチうるさそうな頑固おやじタイプの俳優が演じていたならば、完全な悪役になっていたとも思うのだ。しかし、視聴者にそう思わせてしまったならば、やや浅いエピソードになってしまった可能性が高いだろう。なぜならば、時系列的に見れば最初に悪かったのは太一少年の方であって、大家さんではなかったからなのだ。


 スミス長官にしても、第一印象は実に温厚そうな紳士タイプ(演・ピエロ・カラメロ)――カワイイ芸名だ(笑)――であって、見るからに超タカ派タイプという人物像でもなかった――このあたりは脚本ではなく演出・キャスティング担当者側の管轄だろうが――。スミス長官も大家さんも「社会通念」上は一応の「正しい主張」をしているのだから、彼らに過剰に憎まれ役としての悪印象を与えなかったことは正解だったとも思えるのだ。


 だが、ゲスト怪獣やゲスト宇宙人に大暴れをしてもらわないと、ウルトラマンタロウと巨大怪獣の戦闘シーンも構築ができなくなってしまう(笑)。よって、結局はこのふたりは「ある一線」を超えてしまって、「悪役」へと転じていくことになる。たとえば、先の大家さんは毒を盛ったエサをウサギに与えて殺してしまうのだ!――その場面ですらもが「これ食べる。コロリ死ぬ。グフフフフ……」なんて調子なので、憎めきれないところもあったり、あるいはその場面の残酷さを緩和していたりもするのだが―― そして、本話におけるスミス長官の所業に至っては……


 一見、ユルユルな世界観でありながらも、その内実には極めてハードなところもあるのが本作「ウルトラマンタロウ』なのであった。よく「おとぎ話」や「アラビアンナイト」のような「夢を見る楽しさ」を与えてくれる作品であると評価されることが多い『タロウ』ではあった。しかし、そこには「それが許されるのは子供のうちだけだよ」などといった製作者のウラ側のホンネも見え隠れしていているエピソードも散見されるのだ。子供のころの淡い恋情を、ラストシーンでZATガンにて破壊してしまう北島隊員を描いていた第45話『日本の童謡から 赤い靴はいてた……』などはその究極といえるものでもあった。明確に「子供社会」からの「決別」を描いていた人間ドラマ編が、この第45話でもあったからだ。



 とはいえ、ともすれば、作品全体が陰欝なムードに包まれてしまいそうなネタを扱っていながらも、まったくそんな印象を感じさせずに済んでいる。それは、順序が前後するが、先述した険悪な雰囲気に覆われる場面の直前に、以下のようなZATのアットホームで明るくさわやかな社風(笑)を強調するような演出が施されてもいたからだ。


森山「(バスケットを手に)  東(ひがし)隊員、差し入れよ」
光太郎「えっ? オレに?」
森山「下宿のお嬢さんからよ」
光太郎「えっ? さおりちゃんから!?」


 あわてて外に飛び出そうとする東光太郎(ひがし・こうたろう)隊員。


森山「あっ、帰っちゃったわよ。お仕事の邪魔になっちゃいけないって」
光太郎「えっ、本当。残念だなぁ」
南原「可憐ですねぇ」
北島「おまえ、愛されてるな」
光太郎「そんなんじゃないんですよ〜」
南原「さぁ、この差し入れ、早速いただこうじゃないか!」


 バスケットに詰められた、さおり特製のおにぎりを手に取る一同。残ったひとつを光太郎が手に取ろうとするや、西田がそれを引ったくってしまう(笑)。


光太郎「西田、おまえ。それはないだろ、おまえ。これ、誰に来たと思ってんの。ねぇ」


 隣にいる森山隊員に同意を求める光太郎。ただ、おかしそうに笑っている森山隊員(笑)。


荒垣「おい、東。これはいい嫁さんになるぞ」
光太郎「そんなんじゃないんですよ! まいったなぁ」


 お手製のおにぎりをネタに光太郎を冷やかす一同。照れから必死でさおりとの恋愛関係を否定する光太郎。


 本当になごやかな一場面であり、一服の清涼剤としての役割を立派に果たしているのだ。上原脚本というよりかは、石堂淑朗(いしどう・としろう)脚本の方によくあるような、隊員たちやゲスト家族たちの雑談会話のノリではあったけど(笑)。しかし、これが一転して先述の場面へとつながるメリハリの強さもまた、ZATのメンバーたちの魅力なのであった。


 かつては特撮マニア間では「おふざけZAT」などとよく揶揄されていたものだ。しかし、スミス長官と対立する場面における隊員たちの表情や演技は、緊張感がうまく表現されている。硬軟の両極を器用に演じ分けてみせる役者たちの真摯な演技の姿勢には敬意を表したいものである。


 第2話に続いて、作戦室でメシを喰うZAT隊員たち。それを70年代には隆盛を極めており、しかして評論家スジからは「飯喰いドラマ」だと揶揄もされてきた「ホームドラマ」を逆転して再評価をするかたちで、「食事の場面にこそ重要な展開がある!」などと、第2話『その時ウルトラの母は』評(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20071209/p1)でも記したが、今回もまたしかりであったのだ!


北島「喰ってばっかりないで、少しはいい知恵出せよ、おまえ」
南原「そんなこと云ったってですよ。(バスケットを手に)こんなモンに入れて、ホイってわけにはいかないんですからね」
朝日奈「おい、ちょっと待て…… これはいけるぞ。『バスケット作戦』だ。さっそく準備にとりかかるんだ!」


 「卵」を取り返したはよいものの、それを故郷へと運ぶ手段がなくて、日本に居座り続けているトータス夫婦。彼らをモニターで見ていて、卵を故郷のオロン島まで運ばせる良い方法を思案していたZATであった。
 しかし、たまたまさおりが持ってきた「バスケット」を目にした朝日奈隊長が最善策を思いついたのだ! このひらめきの強さこそが、緊急時には臨機応変に作戦を着想・変更して、決断・即決もしていかなければならない「隊長」といった役職を務める人間の所以(ゆえん)であることも表現されているワケなのだ! 決してご都合主義などではなかったのであった!(やや苦しいフォローだが・笑)


 かくて、ZATによる「バスケット作戦」が決行された!


 トータス夫婦に静かに近づいていく「バスケット」を吊したクレーン車。このクレーン車による一連が、ミニチュア特撮による表現のみではなくて、光太郎と西田隊員がリモコンによって、それぞれが「クレーン車の動き」と「バスケットの開閉」を遠隔操作する場面をていねいに描いている点がまた、リアル感を増強しているのだ!


 トータス夫婦の卵が「バスケット」に収納されて、クレーン車は静かにその場を離れていった……


荒垣「おい、見本を示してやれ」


 荒垣副隊長に促された北島隊員と南原隊員が、ボールを卵に見立てて、バスケットを手にしての「ボディーランゲージ」で、トータス夫婦に卵の輸送法を伝授する。


北島「わかったか? さぁ、やってみろ!」
南原「こうするんだぞう〜~~!」


 クチに「バスケット」をくわえて、鳥のように手をバタバタさせる南原隊員の姿がなんともおかしい(笑)。このサマをロング(引き)の映像で捉えて、トータス夫婦の頭部を合成した特撮カットは、まさにトータス夫婦の目線で南原隊員を見下ろすかのような臨場感があった!


 だが、せっかくの見本もしょせんは畜生(汗)のトータス夫婦には理解ができなかった。



 そこで、光太郎の発案で、卵を収納した「バスケット」をアームで吊して、大型戦闘機・スカイホエールで運ぶことになった! トータス夫婦はそれらを追って大空へと舞い上がった!


 「親子、仲よく暮らすんだぞ〜~!」と手を振って、笑顔でトータス夫婦を見送る荒垣副隊長と南原隊員。作戦室のモニターを見て微笑む朝日奈隊長と森山隊員の姿は、短い場面ながらも彼らが実に心暖かいメンバーであることが最大限に表現されていた。


 美しい夕焼けに染まったオロン島の上空を飛行するスカイホエールが、卵を海岸沿いの陸地へと解放する。トータス夫婦も海上へと降下して、静かにオロン島に泳ぎ着いた。大事な卵とともに故郷に帰ることができたことを喜ぶ亀怪獣の夫婦……


 「バスケット作戦」の成功を喜ぶ北島隊員・西田隊員・光太郎であった。


 しかし、光太郎がふと彼方に目をやると、あまりにゾッとする光景が飛びこんできた! 美しい夕焼け空の下にはあまりに似つかわしくない、「地球警備隊」の艦隊がズラリ! と海上に並んでいたのだ!


 実に平和な情景を一瞬にして暗転させてしまう、このショッキングな演出が見事である!


 「ミサイル、シュート(発射)!!」といったスミス長官の声とともに、勝ち誇ったような笑みを見せるスミス長官の表情のアップと、艦隊がオロン島を一斉砲撃するサマをカットバックさせることで、演出的な効果も倍増! スミス長官はここで完全に「ある一線」を踏み超えてしまったのだった!


 一瞬の静寂……(これがまた、対比として効果的なのだ!)


 そのあと、耳をツン裂かんばかりの大爆発音の連続がオロン島一帯を覆い尽くした! トータス夫婦の周囲を埋め尽くした弾着を一斉に発火させて、砲撃のすさまじさが表現されている!(マジで火薬の量がハンパ(中途半端)ではない! よく撮影スタジオ内で事故が起きなかったものだ・汗)


 倒れこんだクイントータスの盾となって、「やめてくれ!」とばかりに両手を振るキングトータスの擬人化された演技は賛否あるだろうが、この手の番組はそういったものだと思えば、なんともイジらしくて感情移入をしてしまって可哀そうになってくるのだ……(これまたスーツアクターの名演技のたまものでもある!)


 「攻撃を中止してください! 亀は何もしません!」との光太郎の呼びかけも空しく、情け容赦なくトータス夫婦を砲撃し続ける地球警備隊の艦隊!


 圧倒的な炎の中で、卵も3つが破壊されて、残ったひとつをクイントータスが必死で口にくわえてこれを守っている。燃え盛る炎の中で、トータス夫婦が熱い抱擁をかわしてみせる…… 迫力と同時になんとも泣かせる描写なのだ。


 あまりの砲撃の威力に、トータス夫婦もろともオロン島は海中へと没していってしまった…… そのサマをモノクロのネガ写真のような反転処理を施してみせた映像演出がまた、よけいに視聴者にも空しさを募らせていくのだ……



光太郎「連れてくるんじゃなかった。連れてくるんじゃ……」


 まるでトータス夫婦に弔意を表しているかに見える「黒のタートルネック」とピンクのブルゾンに白のパンツ姿で失意の表情を浮かべて、トボトボと白鳥家へと帰宅した光太郎。


 「お帰りなさい」「ZATばんざい!」と、光太郎を暖かく出迎えるさおりと健一。


 バスケット作戦の成功を祝うためのお手製の白いレイを光太郎の首にかけ、「ZATバンザイ! 亀バンザイ!」と叫ぶ健一。「ZATありがとう!」と書かれた幕を背に床を行進している2匹の亀。


さおり「ZATが亀を殺すようだったら、悪いけど、光太郎さんにもこの家から出ていってもらうつもりだったのよ」


 この時点では、オロン島が地球警備隊の一斉砲撃によって、沈没した件はまだ報道されてはいなかったのだ(汗)。


 ウ~ム、なんという意地悪な作劇だ! そして、これらもまた視聴者、それも女性や子供たちの意見を代弁するものともなっている。地球警備隊の演習の邪魔になろうが、亀怪獣の存在が付近を航行する船舶や漁船の人命、あるいは漁獲高、そして生態系に影響を与えようが、そんなことなど関係ない。おとなしい亀怪獣を殺してしまうことにはどうしても反対なのだ。


 思わず庭に飛び出してしまって、せめてもの罪滅ぼしといった感じで、池に浮いていた親亀の甲羅に子亀を乗せてやる光太郎の姿が、彼の優しさを感じさせる秀逸(しゅういつ)な場面でもある。


 だが、腕時計型のZAT通信機の森山隊員の声に、再び衝撃が走る光太郎!


 クイントータスが復讐のために、東京へと飛行して舞い戻ってきたのだ! 緊張と弛緩を交互に繰り返す、この絶妙なテンポのよさ!



 ミニチュアセットのビル街からアオリで捉えた、頭部や手足を甲羅の中に引っこめて、回転飛行しながら急降下してくるクイントータス!


 続いて、クイントータスの突撃を喰らって破壊されるビルの建設現場!


 そういった30分枠の後半こと「Bパート」冒頭の特撮カットが実に臨場感にあふれてもいて、「大東京破壊絵巻」の巻頭としての効果も発揮している!


 都心を破壊するクイントータスの様子をモニターで眺めるZAT基地内の隊員たち一同のもとに、再び鮫島参謀が姿を見せに来た!


鮫島「ZATは何をしているんだ!? 早く出動して叩き潰すんだ!」
朝日奈「参謀、今しばらく様子を見させてください」
鮫島「スミス長官が言ったときに叩き潰しておけばよかっんだ! 見ろ! 東京はメチャメチャにされている! どうするんだ!?」
朝日奈「ですから、しばらく……」
鮫島「あれはもはや凶暴な怪獣だ! 君たちは怪獣をかばうのか!?」
光太郎「怪獣にしたのはスミス長官です! 無抵抗な亀を攻撃して、狂わせてしまったんだ!」
鮫島「黙れ! 亀をオロン島へ連れていったのは誰だ? その責任は、ZATが負うと云ったはずだな!」
朝日奈「云いました」
鮫島「だったら、ただちに責任をとれ! 亀怪獣を叩き潰すんだ! それがZATの責任というものだ!」


 クイントータスが都心から郊外の団地へと侵攻する様子が、モニターに映し出される!


南原「あ、若葉団地がやられる!」


 朝日奈隊長が苦渋の決断を下すときがきた!


朝日奈「出動!」
光太郎「隊長!? ……わかりました……」


 いくら発端がスミス長官が命じた一斉砲撃にあったとはいえ、安易に亀怪獣の保護を主張したZATにもその責任の一端はあるのだ。しかし、その責をすべて負わされるという展開はあまりに酷であり、子供向け番組としてはハードに過ぎるものである。


 一見はファンタジーの世界に見える『タロウ』だが、時としてその内実は第1期ウルトラシリーズ作品以上にシビアな展開もあるのだ。巨大な亀怪獣と共存するなどといった淡い幻想は、クイントータスが東京を徹底的に破壊する姿を通して、「そんなものはやはり甘い夢物語なんだよ!」と視聴者に呼びかけているかのようでもある。


 余談になるが、本作『タロウ』第38話『ウルトラのクリスマスツリー』には、この亀怪獣のために大きく人生を狂わされてしまった少女までもが登場するのだ! そして、これは子供目線ではなく、マニア化してからの目線なのだが、そういった先の話数のことまで考えながらでの再鑑賞だと、ここでの朝日奈隊長の決断がもう少し早ければ、その悲劇も起きなかったかもしれない……などとも思ってしまうのだ。


 若葉団地を襲撃するクイントータス! 住民たちも逃げまどっている! ここでのエキストラの数がハンパではなく、恐ろしいほどの大量動員なのだ!


 上空から北島隊員と南原隊員が搭乗するZATの戦闘機・コンドル1号が攻撃を加える!


 しかし、クイントータスは頭と手足を硬い甲羅に引っこめてこれを防御!


 ZATの特殊車両・ウルフ777(スリーセブン)で現場に急行して、地上からの攻撃を加える荒垣副隊長! 西田隊員! 光太郎!


 彼らに対してクイントータスは、その卵管から火炎玉を地面に転がして、一斉に発火させてこれを封じた!


 クイントータスのまさに完璧な防御能力である! そういった一進一退の攻防がまた、実に事細かくて、ていねいな本編演出&特撮演出でもあったのだ!


 退却を余儀なくされる荒垣副隊長と西田隊員。ただひとり、光太郎は団地に迫るクイントータスを見上げる! オープン撮影で、団地のミニチュアに迫ってくる姿をアオリで捉えているサマがまた大迫力なのだ!



 光太郎は、左腕の変身アイテム・ウルトラバッジを取り外して、それを高く掲げてウルトラマンタロウへと変身する!!


 だが、タロウによって引っ繰り返ったと見せかけたクイントータスは、またもや卵管から大量の火炎玉を、タロウ目がけて発射する!


 火炎玉がタロウの全身にからみつく!――複数の火炎玉を貼りつけたピアノ線をタロウに巻きつけているのだが、操演の技量もお見事!――


 クイントータスが両眼を光らせるとともに、その火炎玉が一斉に発火!


 またもや、タロウの全身が燃え上がる!――ウエットスーツって、そんなに耐火性があったっけ?(汗)――


 たまらずタロウは、クイントータスの腹めがけて必殺のストリウム光線を発射する!


 遂にクイントータスは大往生をとげた……


 ちなみに、この際のストリウム光線は前話での第4話よりもやや高い発射音であった。ひょっとすると、いつもの殺獣光線ではなく、やや威力を弱めた光線を発射したのかもしれない。肝心のストリウム光線の色彩も第4話と同じく、カラフルで油ぎった色彩ではなく、白いギザギザの光線であった。


 もちろん、この前後編の特撮は、円谷プロの分派にして『シルバー仮面』(71年)・『アイアンキング』(72年)・『スーパーロボット レッドバロン』(73年)などを制作した「日本現代企画」に下請けに出されていたことが、各種のマニア向けムックなどでも知られている。大冊同人誌『ALL ABOUT THE ★ ウルトラマンタロウ』(95年)では、この白かったストリウム光線については、「日本現代企画」から「デン・フィルムエフェクト」にストリウム光線の合成作画を依頼した際に、予算を削ったからなのでは? といった推測をしていたと記憶しているが、制作実態としてはこれが一番妥当な解釈にも思える(笑)。
 しかし、「深読み芸」としては、ここでタロウはいつもよりも威力を落としたストリウム光線を発射したのだとの解釈をしたいのだ。



 断末魔にクイントータスがクチから吐き出していた卵に、ヒビ割れが走った!(線画で白いギザギザを描写)


 そして、卵の中からついに子供の亀怪獣が誕生したのだ!


 それを本部内のモニターで見つめている朝日奈隊長と鮫島参謀。


 モニターに映っている亀怪獣は、タロウの両脚の間からのロング(引き)で撮られていた。先述の第45~46話や、第49話『歌え! 怪獣ビッグマッチ』~第50話『怪獣サインはV』の特殊技術(特撮監督)を担当した、特撮研究所の矢島信男がお得意とした手法を、鈴木清特撮監督も用いていたのが興味深い!


鮫島「そいつは怪獣の子供だ! 今のうちに叩き潰せ!」


 鮫島参謀の命令で北島隊員と南原隊員が攻撃に向かった!


 しかし、タロウがこれを必死に制止した! タロウの意を汲んだ朝日奈隊長は、


朝日奈「攻撃中止! ミニトータスを撃ってはならん!」


 ……ミニトータスの名付け親は、朝日奈隊長であったのだ(笑)。


鮫島「命令はオレが出す! 攻撃を続けろ!」


 叫ぶ鮫島のマイクを、朝日奈隊長が引ったくった!


鮫島「きさま! 上官に反抗するのか!」
朝日奈「攻撃、中止!」


 鮫島参謀は一応、上官だったのか!? それとも、別の組織ではあっても、役職的には上官になる、といった意味であるのか?


 『ウルトラマンA』第14話『銀河に散った5つの星』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20060805/p1)においても、主人公・北斗星司(ほくと・せいじ)が搭乗してゴルゴダ星の破壊へと向かった超光速ミサイル№7(ナンバーセブン)の脱出装置が故障した際に、「そのまま、ゴルゴダ星に突っこめ!」と命令した、同作のレギュラーの防衛組織・TAC(タック)の南太平洋本部最高責任者・高倉司令官と、「ただちに帰還せよ!」と命じた竜五郎(りゅう・ごろう)隊長とが激しく対立したシーンなども、ウルトラシリーズのマニアとしては思い出してしまう。もっとも、朝日奈隊長は竜隊長のように鮫島参謀を殴りつけはしなかったが……


 横たわったクイントータスのもとに、卵からかえったばかりのミニトータスが這い出てきて、必死に甘えようとする。今日の視点では甘く見えてしまう怪獣の着ぐるみ造形かもしれないが、ミニトータスのギニョールの頭や手の動きの操演は実に細かくて生物感にあふれてもいる。


 健気に鳴き続けるミニトータス。しかし、クイントータスはピクリとも動かない。期せずしてクイントータスを殺してしまったタロウも、弔意(ちょうい)を示して拝んでみせるが……


健一「バカァ! なぜクイントータスを殺したんだ!?」


 ミニトータスを哀れんで、手を差し出そうとするタロウ。


 しかし、ミニトータスはこれを拒絶し、タロウの手に噛みついた!


 どうすることもできないタロウ。


 そのとき、キングトータスが空からタロウに奇襲攻撃をかけてきた!


 ミニトータスのもとに着地したキングトータスは、「♪ 親亀の背中に子亀を乗せて〜」の童謡のごとく、ミニトータスを背中に乗せた。そして、空中からタロウに体当りをかまして、そのクチからは大量の火炎玉を降らせて、若葉団地もろともタロウを炎の海に包みこんだ!


 亀親子の主観目線で捉えたミニチュアの若葉団地の全景は、10数棟もの建物が並んでいた! 各部屋のベランダには、色とりどりの洗濯物や布団が干してあるほどの細やかさだ! そんな豪華なミニチュアセットにいくつもの弾着が炸裂! そして、またしてもタロウのスーツに引火してしまう場面は圧巻の一言!


 着地したキングトータスは、ミニトータスを背中から降ろして、角(ツノ)から成長化光線を浴びせた!


 たちまちミニトータスは全長42メートルにまで急成長! この際、SF的・科学的な根拠なぞはどうでもよい!(笑)  これにおおげさに驚いてみせる、さおりと健一を映すことで衝撃度を増しているのも絶妙であった。


 地上に寝そべってタロウの足に噛みついて、タロウの動きを封じるミニトータス!


 身動きができないタロウに、空中から連続で体当りをかませるキングトータス!


 タロウの胸の中央にある、ふだんは青いカラータイマーが、タロウの活動限界時間を示す赤い点滅を始めた!


 絶体絶命の危機におちいったタロウは……


タロウ「この親子亀を攻撃することはできない! オレにはできない!」


 まったく無防備のタロウに、北島隊員と南原隊員が呼びかける!


北島「タロウ! どうしたんだ!?」
南原「ストリウム光線を使うんだ!!」


 スミス長官とは対立した彼らであったが、事の結果のあまりの重大さに、ふたりはすでにZATとしての責任を果たす方向に傾いていたのだ。これもまた長じてからの再鑑賞だと、若葉団地にはじまる惨状を放置するワケにもいかない以上は、リアルに感じてしまうのだ。しかし、そんな彼らと対比させることでもまた、タロウの優しさを、そして戦士としてはまだまだ未熟であることがウキボリとなっていくのだ!


タロウ「このままではオレが倒されてしまう! いったいどうすればいいんだ!? そうだ……」


 タロウは死したクイントータスを大きく抱えあげて、大空へと舞い上がった!


荒垣「どうするつもりなんだ?」


 妻を、そして母を追って飛び立とうとするキングトータスとミニトータス。だが、図体はデカくなったものの、ミニトータスにはまだ飛行能力が備わっていなかったので、思わず引っ繰り返ってしまった!


 見かねてミニトータスを背中に乗せて飛び立とうとするキングトータス。しかし、急成長をとげた息子怪獣はとても重たくて、いっしょに引っ繰り返ってしまった! なんとも可愛らしい光景ではあるが、小学校の中高学年や中学生の時分などに鑑賞すると、こういった過度に擬人化された描写には、特撮作品もまた虚構であって、怪獣の着ぐるみの中には人間が入っていることがバレバレになってしまって、反発を覚える描写ではあるだろう。筆者もそういった時分での再鑑賞ではそのような感慨を覚えたものだ。しかし、幼児期やいわゆる「中二病」の時期を過ぎた年長の特撮マニアであれば、そこはご愛敬だと割り切れるのではなかろうか!?(笑)


 このあたりの一連は、映画『大巨獣ガッパ』(67年)のラストシーンにて、再会を果たしたガッパ親子が羽田空港から故郷のオベリスク島へと帰還しようとするも、子ガッパの方は飛び方がわからずに、両親ガッパが飛行法を伝授していた場面を踏襲したかのようでもあった。
 ところで、往年のマニア向け書籍『世界怪獣大全集』(81年・朝日ソノラマ)では、往時の特撮マニア間での主流の見解でもあった「怪獣恐怖論」――「怪獣」は「恐怖」を体現する存在でなければらない! といった論調――に即して、『ガッパ』のそんな点をつかまえて、「怪獣というものを何か勘違いした作品」などとヒドい言葉を浴びせていたものであったが(爆)。


西田「あっ、あれはなんだ!?」


 ♪ セブン~、セブン~、セブン~、セブン~〜


健一「セブンだ! ウルトラセブンだ!」


 そこに突如として飛来したのはウルトラ兄弟の三男・ウルトラセブンであったのだ!


 今回のセブンのスーツも、前作『ウルトラマンA』での客演時によく見られた、身体の前面の白くて細いラインが胸のプロテクター部分に達していない、誤ったペイント(塗装)のバージョンであった(笑)。しかし、まだ幼児でもあった当時の筆者は、ウルトラセブンのイラストを描く際には、必ずこちらの誤ったバージョンの方で描いていたものだ(汗)。それだけ、オリジナルの『セブン』の再放送よりも、『A』や『タロウ』に客演した際のセブンの方が、当時の筆者にはインパクトが強かったといったところであったのだろう。


 一方で、流れてきた『ウルトラセブン』の主題歌は、テレビサイズのバージョンとは異なり、「♪ ウルトラ〜セブン~、ファイタ~~セブン~」の部分を、「ジ・エコーズ」のみではなく「みすず児童合唱団」も歌唱していたバージョンでもあった。『セブン』の劇中にて主題歌を流した際には、必ずこちらのバージョンが用いられていたので(本放映当時に各社から発売されていたシングル盤でも、日本コロムビア製以外は大半がこのバージョンを採用していた)、今回もキッチリとこちらの方を踏襲していたのだ!――おそらく、当時の選曲者の方では、そういったバージョン違いのことなど意識すらもがしていなかったことであろうが(笑)――



荒垣「わかった! ウルトラ兄弟は、亀の親子をどっかへ連れていくつもりなんだ!」


 ウルトラセブンはミニトータスを背中に抱えた。そして、大空へと飛び立った!


 キングトータスもそれを追って、飛び立った!


 宇宙空間を行くウルトラ兄弟とトータス親子。タロウは兄のセブンにトータス親子の面倒を託した。


タロウ「お願いします!」
セブン「わかった!」


 セブンの声はおそらく、『A』第13話『死刑! ウルトラ5兄弟』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20060803/p1)ではウルトラ兄弟の長男・ゾフィーの声を演じていた市川治かと思われる。オープニングにクレジットがないうえに、セリフがおなじみのやや甲高い「わかった!」の一言のみだから断定はできないが……


 いつの間にやらチェーン(鎖)でつながれていたトータス親子が、タロウの手からセブンの手に引き渡されて、ともにウルトラの星へと向かっていく。


 そして、どういうワケか、クイントータスの両眼が赤く光って、しかも口までパクパクとさせている! いつの間に生き返ったんや!?(笑)


 まぁ、タロウやセブンが宇宙に運ぶ途中で、リライブ(再生)光線を浴びせたのだと考えることにしよう!(笑) 本来、このリライブ光線は、第8話『人喰い沼の人魂』にて初披露になるのだが……



光太郎「亀の親子は、宇宙へ行ったんだ?」
健一「宇宙のどこへ行ったの? ねぇ、光太郎さん!」
光太郎「おそらく、ウルトラの星へ……」
健一「ウルトラの星!? 本当?」
光太郎「この地球上に、あの亀の親子が安心して暮らせるところはない。ウルトラマンタロウはおそらくそう判断したんだ」
健一「そうか。ウルトラの星へ行ったのか」
さおり「平和に暮らせるといいわねぇ。今度こそ!」
光太郎「暮らせるとも! 親子3匹、いつまでも!」
健一「あっ! 亀の親子が見える!」
さおり「どこ?」
健一「ほらっ!」


 トータス親子のことを想った3人が見上げる青空の一角が亀の形に割れて、その向こうに星空の中で戯れるトータス親子の姿があった……


さおり「楽しそうね」
光太郎「あぁ」
健一「うん!」


 ……結局は、最もお手軽な方法で事態を解決した。一見するとそう思えるかもしれない。


 だが、光太郎に「この地球上にあの亀の親子が安心して暮らせるところはない」と断言させていたのを、スレたオトナ目線で見てしまうと、たとえトータス親子のような本来はおとなしい怪獣ではあっても、人間と共存することなど、とうてい不可能だといったことを示唆していたのだとも取れてしまう。


 たしかに我々も、ライオンやトラにクマなどの猛獣と生活圏をいっしょにするかたちでの共生などはできない。あるいは、ハエや蚊やゴキブリなどの害虫とも生活圏をいっしょにするかたちでの共生をすることなどできない。天然痘や黒死病(ペスト)などの悪性ウイルスとも共生することはできない(笑)。


 もちろん、人間と野生の動物との生活圏を分けるかたちでは共生できるのかもしれない。しかし、現実に身長50メートルから100メートルもの巨大怪獣が実在するとして、人間と怪獣との生活圏を分けたつもりでも、なかなか思い通りには行かずに、互いにテリトリーを侵犯し合ってしまって、事故が起きてしまうのではなかろうか? その意味では、怪獣との共存を夢見た『ウルトラマンコスモス』(01年)などよりも一歩先の世界を見ていたかとも思えるのだ。


 このようなスレたオトナの目線では、怪獣と人間との共生は困難であって、宇宙あるいはウルトラの星にて亀怪獣親子が平和に暮らしましたとサ……といったオチもまた、真の意味での解決ではない大ウソとしての解決なのでもあって、偽善であり欺瞞である……といったシニカルな見方も、たしかに正しいことは正しい。


 しかし、それを云ってしまってはオシマイであるのだ。子供向け番組のレビューとしてはヤボでさえある。オロン島に帰ることで、幼児にはともかく小学生の視聴者などには、人間とのトラブルがいつかは発生してしまう潜在的な可能性を想起させてしまう弱点をハラんでしまったようなオチもまた不充分なものではあるのだ。そうであれば、宇宙の彼方で平和に生活している……といったハッピーエンドについても、寓話的な子供向け番組のオチとしては、やはり夢もあるものなのだし、こちらの方がツッコミの隙も少なくなるのではなかろうか?



 ところで、キングトータス・クイントータス・ミニトータスの親子は、我々ウルトラシリーズファンの間では、今でもウルトラの星で平和に暮らしていることであろう。そうであれば、昭和ウルトラシリーズの四半世紀ぶりの直系続編『ウルトラマンメビウス』(06年)においても、トータス親子に再登場してもらって、ウルトラマンメビウスのピンチに「怪獣の恩返し」として駆けつけてきてほしい! と思った御仁は筆者だけではないハズだ!(笑)



「時間をかけて「ああでもない、こうでもない」とやればやるほどダメになる。『A』のころの僕には、もう自分の中で「燃え尽きたな」という感じはありましたね。僕の中でウルトラマンは終わっていたんです。だから申し訳なかったけれど、辞めるにあたって、自分の中になんの悔いもなかった。ウルトラシリーズの中に、心を残すところは、なかったんですね」

(デジタルウルトラプロジェクト・DVD『ウルトラマンA』Vol.12解説書より・04年11月26日発売・asin:B00024JJJC



 本話は昭和ウルトラシリーズにおける、脚本家・上原正三の最後のシナリオ回にもなった。


 上記の上原の発言については、後付けの印象・記憶による誇大脚色もあるであろう。『帰ってきたウルトラマン』や、特撮マニア間での世評はともかく『ウルトラマンA』や『ウルトラマンタロウ』における上原脚本回のレベルが低かった……といったことは決してなかったとも個人的には思ってもいる。むしろ、その要素要素やストーリー展開については実に凝ってすらおり、第1期ウルトラシリーズ時代のシナリオよりも熟練の域に達してきていたとも思えるのだ。


 しかし、氏は本話を最後に円谷作品から離れてしまった。そして、『ウルトラマンタロウ』と同じ1973年4月にスタートした東映の『ロボット刑事』(73年)に、サブライターとして参画する。


 以降は、東映特撮を中心に、『イナズマンF(フラッシュ)』(74年)・『秘密戦隊ゴレンジャー』(75年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20250414/p1)と、東映の巨大ロボットアニメ『ゲッターロボ』(74年)と『UFO(ユーフォー)ロボ グレンダイザー』(75年)などで、メインライターとして活躍する!


 ピー・プロダクション制作の特撮ヒーロー『鉄人タイガーセブン』(73年)・『電人ザボーガー』(74年)。宣弘社の巨大ロボット特撮『スーパーロボット レッドバロン』(73年)と日本現代企画の『スーパーロボット マッハバロン』(74年)などでも、メインライターとして登板していた。


 つまり、古巣(ふるす)の円谷プロダクション以外の他社の作品にて、おおいに健筆を奮うようになっていくのだ。


 そして、TBSの橋本洋二プロデューサー直伝の「人間ドラマ性」、つまりは防衛組織の隊員間でのやや重たい不和のドラマや軋轢のドラマ、職務の失敗による責任痛感のドラマ、青春ドラマ性やホームドラマ性については引っ込めていくのだ。その代わりに、やや乾いた「スパイ・アクション」や「ハード・ボイルド」といった、一進一退の攻防劇をメインに据えたエンタメ重視の作風へと切り替えていった感が強いのだ。


 そんな当時の氏にとっては、『タロウ』のようなマイルドでファンタジーな路線に対しては、ひょっとするとやや懐疑的であったのかもしれない。


 トータス親子を、自身が手掛けた『帰ってきたウルトラマン』における、怪獣シーゴラス&シーモンス夫婦編のような単なる「大自然の象徴」とは描かずに、「復讐」の方を前面に押し出すかたちで、それによって巻き起こった恐怖・サスペンス・葛藤の方を中心に展開させてみたあたりもまた、そういった心理がはたらいていたのかもしれない。


 だが、そんな氏の思惑(おもわく)はともかくとしても、実作品については充分にファンタジー性にもあふれてはおり、「畜生」を通して親子愛や生命の尊厳が重く伝わるばかりではなく、次に何が起こるのかがわからないようなスリルと意外性の連続にも満ち満ちた「ジェットコースター・ムービー」としても仕上げられてもいたのだ。昭和ウルトラ作品における上原脚本の「有終の美」を飾ったことは確かだったと思うのだ。



<こだわりコーナー>


*鮫島参謀を演じた大下哲矢は、第5話の放映(73年5月4日)からちょうど2ヶ月後に放映がスタートした『スーパーロボット レッドバロン』においても、同作のレギュラー防衛組織であった科学秘密捜査官・SSI(エス・エス・アイ)のキャップ(隊長)・大郷実役でもレギュラー出演! SSIの本部は自動車修理工場の地下にカモフラージュされており、大郷はふだんはその工場主としてオモテの顔を務めており、出入りをする子供たちや自転車刑事こと熊野一平――『ウルトラマンA』第38話『復活! ウルトラの父』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20070121/p1)でサンタクロースを演じた玉川伊佐男が好演!――に接する姿や、第26話『鉄面党デビラーの最後』における壮絶な殉職など、鮫島参謀とは正反対の「いい人」ぶりを見せていた。
 他のメンバーも主人公青年・紅健(くれない・けん)隊員は修理工、坂井哲也隊員は自動車セールスマン、堀大作隊員は通信社の原稿運び、松原真理隊員は通信社のカメラマンと、それぞれがカモフラージュの職業に就いており、はるか後年の『激走戦隊カーレンジャー』(96年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20110521/p1)のような設定でもある。防衛組織・UGMの隊員と中学校の教師を兼業していた矢的猛(やまと・たけし。『ウルトラマン80(エイティ)』(80年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/19971121/p1)の主人公)の設定の先駆けでもあった。それを思えば、『ウルトラマンメビウス』(06年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20070506/p1)の防衛組織・クルーGUYS(ガイズ)の隊員たちが、サッカー選手・ロードレーサー・保母・医者の卵からの転職組であることが、一部でモーレツに非難されていたものだが、しょせんはイイ意味での子供番組なのだから、別にそれくらいのノリでもイイのではないか!?(笑)


*その大下哲矢とオープニングで並んでクレジットされていたのが、『ウルトラマンティガ』(96年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/19961201/p1)第25話『悪魔の審判』にも登場していた、同作の防衛組織・GUTS(ガッツ)のイルマ女隊長の義理の母親でもあったミウラ・ヨリエや、『ウルトラセブン1999最終章』(99年・バップ発売のビデオ作品)第5話『模造された男』のカネミツ・タツを演じていた風見章子(かざみ・あきこ)だ。
 しかし、本編には一切登場していない。尺の都合で出演場面がカットされてしまったのだろうが、彼女は国際放映製作の『ケンちゃん』シリーズ(68〜82年・TBS)の後期作品にて「おばあちゃん」役を演じていたことから、ひょっとしたらさおりと健一の祖母役だったのではないか? などといった想像も膨らんでしまうのだが。
 なお、彼女は1921年(大正10年)7月23日生まれ。16歳のときに映画『時代の霧』(1937年・日活)でデビューして以来、近年でも日テレ火曜夜の2時間ドラマ枠「ドラマ・コンプレックス」での有吉佐和子原作小説の幾度目かのテレビドラマ化『恍惚(こうこつ)の人』(06年・日本テレビ)、映画『待合室』や『ハヴァ、ナイスデー』(共に06年)に至るまで、多数の映画・テレビドラマに出演を果たしてもいる。主演作の映画『忘れられぬ人々』(01年)にて、第22回フランス・ナント三大陸映画祭の「主演女優賞」を授賞。2007年で女優生活70周年を迎えた大御所であった!(後日付記:2016年に老衰にて95歳で大往生されました。合掌)


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2008年号』(07年12月29日発行)『ウルトラマンタロウ』再評価・全話評大特集より抜粋)


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#ウルトラマンタロウ #ウルトラマンタロウ52周年 #キングトータス #クイントータス #ミニトータス #ウルトラセブン



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