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★★★特撮・アニメ・時代劇・サブカル思想をフォロー!(予定・汗)★★★ ~身辺雑記・小ネタ・ニュース速報の類いはありません

宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち 第一章「嚆矢篇」 〜キナ臭い主張を期待したい(爆)

『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち 第七章「新星編」』 ~不評の同作完結編を絶賛擁護する!
『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち 第一章~第三章』 ~戦争モノの本質とは!? 愛をも相対視する40年後のリメイク!
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 アニメ映画『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち 第一章「嚆矢編」』(17年)にあたる、TVアニメ『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』(18年)#1〜2が放映記念! とカコつけて……(本日は#3の放映ですけれど・汗)。


宇宙戦艦ヤマト2202(ニーニーゼロニー) 愛の戦士たち 第一章「嚆矢篇(こうしへん)」』 〜キナ臭い主張を期待したい(爆)

(2017年2月25日(土)・封切)
(文・T.SATO)
(2017年4月27日脱稿)


 本誌読者の過半が生まれる前、約40年前の1978年夏の第1次アニメブーム時に大ヒットし、当時まだ上限が20歳前後だったティーン中心のアニメファンたちの涙を振り絞った映画『さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』とそのTVお下がり版『宇宙戦艦ヤマト2』(共に78年)のリメイク版が公開。


 その第一章は『ヤマト2』初期話数のリメイクなのだけど、それだけだとツカミが弱いからか、冒頭からカネと手間をかけたドンパチを配置。遠宇宙での地球艦隊&ガミラス艦隊の数百数千艘におよぶ連合艦隊vs白色彗星ガトランティス艦隊との大海戦を描く。一進一退の攻防の末、小惑星に偽装されていたガトランティスの超巨大な大戦艦が出現して形勢は不利に。そこに地球軍の現場はもちろんガミラス全軍は一切知らなかった、地球防衛軍の起死回生の切り札・新造戦艦アンドロメダが投入されて、超兵器・拡散波動砲の一撃で敵軍を蹴散らす! さらにワープして地球に自爆特攻しようとした満身創痍の敵艦1艘を、軍命ナシに(笑)機転を利かした主人公の戦艦が追いかけて、地球に繋留中のヤマトと連携して撃破する!


 この美麗かつ迫力ある戦闘シーンには酔わせられる。いやぁ「ボクたちは敵と争う前に愛し合わなければならなかったんだ!」なんてウソだよね。あるいは事後の言い訳だよね。ボクたちはカッコいい戦闘シーンが、ひいては戦争が大スキなんだよネ!(爆)


 本誌ライター陣とは異なり、原典第1作のリメイクである前作『ヤマト2199』に対する筆者の評価は高い――ただしその良さは、『ヤマト』初作という盤石な型があった上でのディテールUPの良さであって、もうマニア間でも忘却されている巨大ロボアニメ『ラーゼフォン』(02年)の出来も見るに、メカデザイナー上がりの出渕カントクの素の手腕については疑念あり――。しかし、異星のオーバーテクノロジーである艦首の波動砲をラストで封印する展開は、その意図は判るものの、悪い意味で日本的な偽善クサい空想的な平和主義という感じで、イイ感じはしなかった――加えて出渕らオタク第1世代は重度の『ヤマト』初作至上主義であり、続編どころか続編のリメイクすら封じるかのごとき作劇は、小学生時代に『ヤマト2』もフツーに楽しみ、その続編のTV長編『新たなる旅立ち』にも狂喜した筆者としてはプチ反発も覚えている――。


 ところで続編が作られる以上は、ヤマトの目玉である波動砲を発射しないワケにもいくまい!? となれば、積極的ではなくとも消極的には波動砲――軍備や核の隠喩!――の封印を解かねばなるまい。その過程で新スタッフがキナ臭い主張を行間に込めてくれたならば! なぞと筆者は秘かに思っていたのだが(笑)。しかし、大勢の理解は得られそうもないし、この『第一章』を観たかぎりでも、ヤマト乗員たちはアンドロメダ波動砲に反対しているので、人類の手に余る超兵器への懐疑とその慎重な運用といったあたりに着地するのだろう。まぁ大勢向けをねらうエンタメとしてはそれが順当な作りではある。


 若干のキナ臭さの投入こそ『ヤマト』原作者の故・西崎義展プロデューサーの国粋的な本音に報いる道ではないのかとも思うけど(笑)、本作では「この宇宙には愛が必要だ」と豪語する白色彗星のズォーダー大帝の方に西崎Pが投影されているようでもある(汗)。


 当時はともかく今から見ると、『さらばヤマト』でヤマトが上層部を無視して、現場の独断で助けを求める異星へと旅立つ展開は、近代の軍隊にはあるまじき行為ではあった――もちろん本作『2202』では冒頭の独断行動に対して軍上層からキツいお咎めがあり、主人公青年・古代進(こだい・すすむ)がオトナの態度で神妙に拝聴している姿も描かれる――。だからあくまでも「たとえば」ではあるのだけれども、ポストモダン=近代の次の時代における軍隊vsゲリラとの非対称的な戦争では、現場での即応性・自由裁量制が求められて……などといった現代的な言い訳が、ヤマト再出撃にもほしかったところだ。だが、このへんは前作終盤のコスモリバースシステム起因か死したハズの沖田艦長の残留思念と、神田沙也加が声をアテている異星の美少女・テレサによるターゲットを絞った超指向性テレパスによるヤマト乗員への招命で、オカルト的にヤマト再出撃の動機を担保するようでもある。まぁこのへんも苦肉の策ではあるだろう。


 チベット人のごとき僧侶星人たちの大量虐殺も描かれたが、それで腐れオタとして妄想するのが、先ごろ自衛隊の撤退が決まったスーダンなどのPKOネタ。無法地帯を国際社会は見捨ててしまってもイイのか? あるいは見捨てられたと絶望する現地民ネタの寓話化である。などと書きつつ、そんな方向へと本作が進むとは筆者も思ってはいないけど(笑)。21世紀型の戦争ではなくても、戦艦モチーフにふさわしい日米太平洋戦史のトレース&アレンジでも何でもイイので、ウェルメイドな娯楽活劇作品を作ってくれればそれでOKだ。


(了)
(初出・オールジャンル同人誌『SHOUT!』VOL.69(17年5月4日発行))


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ウルトラマンルーブ』序盤総括 〜ユルい作風。その玩具性・名乗りの是非。ウルトラ史上最強の空中戦特撮!

(文・T.SATO)
(2018年8月10日脱稿)


 今年2018年度の『ウルトラマンR/B(ルーブ)』は、シリーズ中盤からの増員やライバル・悪役ポジションとしてではなく、最初からほぼ対等・拮抗した正義のコンビのダブル・ウルトラマン体制となった。
 加えて、カードやカプセルならぬ、今度のコレクション・アイテムはメダルである!――劇中ではクリスタルと呼称―― 漢字の「火」をかたどったウルトラマンタロウのメダルを変身アイテムに装着するや、頭頂部が上に向かって末広がりの「W」字型となる2本ヅノの赤いウルトラマン・ロッソへと変身! 片や漢字の「水」をかたどったウルトラマンギンガのメダルを装着するや、垂直1本ヅノの青いウルトラマン・ブルへと変身!


 彼らのツノには炎が燃え盛っているような模様も付けることで、そのツノを色彩的にも少々強調するようなアクセントも加えられている。
 頭部の違いで両者の違いを強調したのでやや頭部が大ブリになったことを目立たなくするためか、胸筋や背面の肩甲骨の部分には赤銅や青銅のメタリックな硬質パーツをまとってもいる。両肩の腕側にも銀色の硬質な肩パットをまとうことで上半身にたくましい厚み&肩幅を少々増やして、一昨年の『ウルトラマンオーブ』(16年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20170415/p1)同様、腹部から下の下半身は膨張色ではなくシルバー&黒のカラーリングとして色彩的に締まった印象も与えることで、バランスも取っている。


 この赤と青は基本的には固定なのかと思いきや、メダルを交換して変身することで、赤い2本ヅノ・ロッソは青色に、青い1本ヅノ・ブルも赤色にカラーチェンジできることで少々ヤヤこしい(笑)。だからこそ、区別を付けやすくするためにも、2本ヅノ&1本ヅノのコンビにしてみせたといったところなのだろうが。
 #5では新たな漢字の「風」をかたどったウルトラマンティガのメダルで紫色のウルトラマンにも変身! なんだか漢字の文字がそのままモチーフにもなるなんて、『侍(さむらい)戦隊シンケンジャー』(09年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20090712/p1)を想起させるけど。


 本作『R/B』におけるウルトラマンのタイプチェンジは、古代ギリシャで唱えられていた物質の根源であるエレメント(四元素)、「火」「水」「風」「土」がモチーフとなっている。物質の元素(原子)は90種類以上もあって、「火」や「水」や「風」は根源単位じゃないよ! それらは「水素」や「酸素」やらが化合したモノだよ! と判明して久しい現在では、SFというよりオカルト的なインチキ設定なのだが、細かいことは気にするナ。未来世界の大宇宙に20世紀の軍艦や機関車が飛ぶような古式ゆかしい風情があるじゃないか!?(笑)
 この調子で色違いのウルトラマンに再変身することで商品数を増やしたり、この地上・物質世界ではなく宇宙・天上界・高次元世界を組成する元素であるフィフス・エレメント(第5の元素)の強化形態ウルトラマンが出てきたり、最終的にはふたりがウルトラタッチ(笑)で合体変身してひとりとなったかたちの最強形態ウルトラマンなども登場するのであろうけど――ネット上にはすでに玩具業界情報バレで、3本ヅノの全身銀ピカのウルトラマンがリークされてますネ(汗)。


「まとうは火!」「まとうは水!」 〜ヒーローの唐突な名乗りをドー考えるか!?


 変身シーンは、メダルをバックルにハメたあとで、往年の野球マンガ巨人の星』(66年・68年にTVアニメ化)の大リーグボール養成ギブスか、胸筋&腕を鍛えるエキスパンダーがごとく、左右両方から3回連続して引っ張ることで変身できる、玩具のプレイバリュー性をも強調して見せるモノともなっている。


 そして、2010年代の平成ライダー同様に、あるいは少年マンガ的に歌舞伎的様式美を優先して、毎回のお決まりの啖呵(たんか)には、


「まとうは火! 紅蓮(ぐれん)の炎!!」
「まとうは水! 紺碧(こんぺき)の海!!」


などの文語的・劇画的な仰々しいセリフを吐かせてもいる。


 一部の世評を見るに、ナゼにそのようなセリフを天然で吐けるのかを疑問視する声もいまだにあるようだ。


 たしかに純然たる物理的・科学的・唯物論的なテクノロジーによって誕生した、70〜80年代中盤までの改造人間・強化服タイプの特撮ヒーローならばオカしい。しかし、コレもまた剣と魔法の西欧中世風ファンタジーが勃興した80年代後半以降、神秘・魔術・大自然の精霊・神的パワーに根拠を持つ超自然的なヒーローや合体巨大ロボット(笑)が勃興した以降の、SF考証ならぬオカルト考証(笑)的なロジックを用いてみせれば説明は付くであろう。


 神のごとき知性や意思を持った、高次で神秘のパワーが初登場のヒーローたちをして、


「俺は太陽の子! この世のすべて、生きる者すべてを守る! 仮面ライダーBLACK! RX!!」(88年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20001016/p1
「大地の使者! (絶対無敵)ライジンオー!!」(91年)


などのセリフを吐かせしめて――「大地」の精霊がナゼに「機械」の合体ロボットを生み出したのか? というようなツッコミはさておいて(笑)――、それまで知りもせず練習したこともなかった必殺ワザも「本能」的に繰り出させているのだ! という解釈ができるのだ。


 そしてそれにより、ある意味では「ヒーロー」の「本質」そのモノだともいえる、非・常識的な「圧倒性」・「超越性」・「善性」・「神聖性」・「正統性」のような抽象的・理念的・シンボリックなモノまでをも純化して抽出ができたり、その正反対のモノである「邪悪」・「卑劣」・「野望」などのマイナスのエレメント(要素)を敵側に付与することで、単なる出自設定をも超えて作品自体に「道徳的」なテーマ性までをも付与ができるのだ。
 1990年前後にもまた、そのようなことを可能にする設定的な「発明」、ジャンル全体に何度目だかの「エポックメイキング」や「パラダイム・シフト」があったのだと個人的には観ているのだが、本作『R/B』や00年代後半以降の平成ライダーシリーズにおける変身時や変身直後の「名乗り」もまた、そのようなモノの延長線上のモノとして筆者は捉えたい。


 一方で、そのようなことを「リアリズム」の観点から、70年代末期~00年前後にかけては過剰に批判したのは、イイ歳こいてこのテの子供向け番組を鑑賞している自己を正当化するために、そしてそのジャンルの市民権を得るための理論武装として、作品に過剰に「リアリティー」や「社会派テーマ」を求めた、第1〜第2世代オタクに特有な、かつマニア論壇・草創期の中2病的な時代の産物だったかとも私見をするのだ。


 とはいえ、そのように「リアリズム」の観点から見て、「弱点」や「矛盾」と思われる箇所に、幼児はともかくジャンル番組卒業期の子供たちまでもが幻滅してしまい、その卒業を早めてしまうようであれば、それはやはり見逃せにできない欠点ではあるだろう。よって、そのへんに対する自己言及やエクスキューズに設定的な補強を、劇中でも施(ほどこ)すこと自体はむしろ積極的に許容されてしかるべきであるとも考える。小池都知事も昨2017年に云っていた正・反・合のアウフヘーベン弁証法的発展)というヤツである(笑)。


 実際このへんには、ジャンル作品でもすでに手当てが行なわれていて久しい。女児向けアニメ『プリキュア』シリーズ(04年〜・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20201227/p1)の#1などを鑑賞していると数作に1回程度は、初変身直後に自分のヒロイン名をナチュラルに堂々と名乗ったり必殺ワザ名を叫んだりしたあとで、「アレ? なんでアタシ、こんなことしゃべってるんだろう?」的なセリフを吐かせていたりもする――もちろんコレは神秘のパワーが本能的にプリキュアたちに云わせているのだ! ということの逆説的な設定説明でもある――。
 こーいう描写でナットクを与えられることで、卒業を回避してマニア予備軍になってくれるガキもいることであろうから(笑)、必要悪として矛盾をスルーするのではなく、そーいう言い訳まがいなセリフも適度に散りばめておいてから安心して全力でヒロイックなアクションに走っていく方が、「リアリズム」&「歌舞伎的様式美」の両立(!)としてもクレバーだとは思うのだ。


 まぁ、ムズカしいことはともかくとしても、初期にはアレほどリアル指向であった平成ライダーシリーズも、『仮面ライダーカブト』(06年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070211/p1)や『仮面ライダー電王』(07年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20080217/p1)あたりから、子供やマニアたちに「待ってました!」「そー来なくっちゃ!」的なお約束反復ネタで、カッコいいけど半分笑っちゃう、みんなでマネして半笑いをしてみせるコミュニケーション・ツールとしての「名乗り」や「決めゼリフ」などの燃料も投下されるようにもなっている。もはや大方のマニアたちもみんながスレていて「それはオカシい! リアルじゃない!」なぞと糾弾することもなくなって、あからさまな矛盾は論外にしても少々オカしい程度であればご愛嬌的に楽しんで、絶叫上映会などでは積極的に反復唱和までをもしてみせる! などという共犯関係になってからでも久しい(笑)。


主人公のホームベースは欠損家庭! 〜1970年代前半の特撮作品では欠損家庭がしきりに描かれたのはナゼなのか?


 本作のふたりのウルトラマンは、リサイクルショップ(?)を経営している家族と同居している青年の年齢に達している兄弟として設定されている。ここに元気で可憐な女子高生の妹と頼りないパパさんを設定することで、人間ドラマ部分の背景舞台も集約化。ホームドラマとしてのテイストも本作には付与するようである。
 パパさんを演じる山崎銀之丞は、我々ロートル世代には『3年B組金八先生』第5シリーズ(99年)以降の熱血空回り教師役として知られてもおり、前年度の『宇宙戦隊キュウレンジャー』(17年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20180310/p1)終盤では主人公・シシレッドの生き別れの父親にして異星の王さまとしても好演したばかりだが、やはりその特撮体験あっての抜擢なのであろう。


 とはいえ、彼らの母親は15年も前に突如として失踪してしまったのだという設定も与えてられおり、ノーテンキなばかりではなくややドラマチックな要素も付与してはいる。
 レギュラーやゲストに欠損家庭を設定すると聞くと、ロートル世代的には70年代前半の第2期ウルトラシリーズや、同時代の子供向けTVアニメ・児童向けTVドラマ・学年誌などの「家なき子」や「母をたずねて三千里」パターンの読みもの連載なども連想してしまう。明朗な1960年代ともやさしさ&落ち着きがある1970年代後半ともまた異なる、やや陰があったり荒々しさがあったりするドラマやテーマを持った作品群が、1970年代前半のアニメ・特撮・時代劇では隆盛を極めていたのは、後知恵(あとぢえ)で思うに、何かそのような時代の空気の反映もあったのだろうと思われる。


――70年安保などに連動した学生運動・学園紛争の終焉。日本のTVアニメ・TV特撮が草創期を過ぎたことで、スタッフたちも習熟の果てに自身たちが作っている作品における「ドラマ性」や「テーマ性」を一歩先に進めてみたかった。もっと云うならば「作家性」といったものも押し出してみたかった。あるいは、日本は60年代に高度経済成長をいったんは遂げていたので、それと比すれば70年代は相対的には裕福になっていた。とはいえ80年代以降と比すれば、まだまだ良くも悪くもミーイズムが弱く離婚率も低くて終身雇用で、実際には当時は欠損家庭は少なかったハズなのに、戦中派の作り手たちは終戦直後の焼跡闇市における両親や片親のいない戦災孤児や浮浪児たちの存在を目撃や仄聞してきた世代であったので、彼らは自身たちの責務として、何よりもその実存的・文学的・内的必然として、子供向け作品群にその残滓をぜひとも焼き付けておきたかったのだ…… などなどの諸々の総合として――


欠損家庭を高いドラマ性をもって描くのならば、活劇性も増量すべきであった70年代第2期ウルトラシリーズ


 とはいえ、アニメと実写の媒体の違いゆえでもあろうけど、実写ドラマで欠損家庭の物語を描いていた第2期ウルトラシリーズなどは、そのドラマ性の高さを後年に認めるにやぶさかではないけれど、子供時代にはその作風がやや重たくシミったれて感じられて気恥ずかしかったことも事実なのであり(汗)、それゆえにドラマ性はカナリ抑えてゲーム的な攻防劇に徹したことで大ヒットを記録した、同時期の昭和の『仮面ライダー』シリーズと『マジンガーZ』シリーズの後塵を拝していた面も否めない。
 コレは何も二者択一で、一方を全肯定して他方を全否定しようというのではない。しかし、もう少し巧妙に、往時も小学館学年誌などで連載されていた第2期ウルトラシリーズのコミカライズ作品群のごとく、月1くらいでカラッとしたイベント編・攻防編・先輩ウルトラ兄弟客演編を配置して、子供たちのプリミティブ(原始的)な暴力衝動やヒロイズムを刺激・発散させつつ、残りの話数でニガ味の残る欠損家庭の子供たちの人間ドラマを描くような心情ドラマを配置する、というような巧妙なシリーズ構成を達成ができてさえいれば……。


ウルトラマンレオのピンチに、直前作のウルトラマンタロウや、変身不能になっていたモロボシ・ダン隊長がウルトラの父の力で一時的にウルトラセブンに変身して助けたり!
●アンチラ星人が化けていたニセ郷秀樹の前にホンモノの郷秀樹が出現、ウルトラマンジャックに変身してウルトラマンエースと共闘したり!
ウルトラ兄弟の長男・ゾフィー兄さんやウルトラセブンが宇宙から湖水を蒸発させたり、宇宙で怪獣を元の動物に戻したり、臨死体験時に励ましに登場(笑)するだけでなく、その回では地球でエースと共闘したり!
●ラスボス級キャラの異次元超人・巨大ヤプール登場回では、ヒーローひとりでは倒せないほどの強敵として描くためにも、エースを異次元に召喚してくれたゾフィー兄さんもそのまま共闘してくれたり!
●ウルトラ5兄弟をブロンズ像化して全滅させたほどのヒッポリト星人であるならば、復活したエースのいつものメタリウム光線一発で倒せてしまったら凡敵に見えてしまうので、かつて強敵・異次元超人エースキラーを撃破した、ウルトラ5兄弟全員のエネルギーを結集した超必殺ワザ・スペースQを再使用して倒したり!
●各作品の最終回は、昭和の『仮面ライダー』各作の終盤がごとく前後編や3部作で、世界規模での再生怪獣軍団vsウルトラ兄弟の総力戦を描いてくれたならば!!


 このようにスケール雄大で殺陣(たて)=アクション面でも先輩ヒーローがカッコよく見えるように特撮怪獣バトルを演出面でも気を使っていれば、娯楽活劇作品としてのカタルシス面でも人間ドラマとしての味わいの面でもバランスが取れてきて、第2期ウルトラシリーズも当時のTV特撮の中では昭和の第1期『仮面ライダー』と比すれば№2、『マジンガーZ』を含むTVアニメなども含めれば、子供番組全般の中では№3の上位メジャーの域にはあったけど、それら2トップの人気にさらに肉薄・拮抗することができたようにも思えるのだ。


 もっと云うなら、「禍福(善悪)はあざなえる縄のごとし」「人間万事塞翁が馬(じんかん・ばんじ・さいおうがうま)」で、そのようなヒロイズムの高揚・カタルシス・爽快感の記憶をヨスガに、世代人のオタクたちに長じてからの追体験・再鑑賞意欲を惹起して、レンタルビデオなどについつい手を伸ばして再鑑賞をさせてしまうことで、「意外にも第2期ウルトラにも人間ドラマがある!」「いや、第2期ウルトラにこそ、過剰なまでに濃厚な人間ドラマがあったのだ!」などという、それはそれで「ドラマ性」や「テーマ性」至上主義を解毒して「エンタメ性」や「アクションのカタルシス」を賞揚する運動とはやや矛盾も発生してしまうけれども(笑)、そのような「再発見」に関与する特撮マニアの動員規模も大なるモノとなることで、70年代末期~00年前後に長らく隆盛を極めていたマニア第1世代による第2期ウルトラ酷評をくつがえすだけの再評価の波も、もっと早くに進んだかもしれないとも思うので……。


重苦しすぎるドラマが子供や視聴者を遠ざけるならば、コミカル演出や演技にも一理あり!


 そのような反省があったということでもないのだろうし、80年代以降、あるいは往年の『宇宙刑事ギャバン』(82年)に登場した民間人側のレギュラー、『3年B組金八先生』(79年)シリーズの大森巡査役でも知られる鈴木正幸が演じる、UFO専門のルポライター・大山小次郎のやたらと明るくテンションが高い演技(笑)なども発端とするのであろうけど、その成れの果て(?)としての本作『ウルトラマンR/B』でも、近年の平成ライダースーパー戦隊などとも同様に、人間ドラマ部分の演技プランは喜劇的なトーンで統一されている。


 たしかに、クールで乾いたSFドラマ性ともまた異なる、第2期ウルトラシリーズ特有の重たくシメっぽい人間ドラマが「イヤ〜ンなニガ味」や「気恥ずかしさ」を与えて、子供たちを引かせてしまう事実もあったのだ。そして他方では、「ミガ味」とは真逆なモノになるけれども、『帰ってきたウルトラマン』(71年)の怠け怪獣ヤメタランス編や『ウルトラマンタロウ』(73年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20071202/p1)のギャグ怪獣回でのハイテンションなコミカル演技を、「SF的ワクワク感」を毀損する子供をバカにしたモノとして受け取るような子供番組卒業期の小賢しいマニア予備軍の筆者(笑)、もとい子供たちの感性もたしかにかつて存在したのも厳然たる事実ではあるのだ。


 このへんの問題は固定的・絶対的な正解があるモノではないのだろう。ある「一定の幅」の中での「ヘビーな作風」〜「ライトな作風」は、実はすべて子供向け番組・特撮変身ヒーロー番組においてはグラデーションとして子供たちもOKだと受け取っているようにも、現在の筆者は個人的には考えている。
 しかし、それは「ナンでもアリ」という意味でもない。やはり、過ぎたるは及ばざるがごとしである。「あまりにヘビーな作風」および「あまりにライトな作風」。つまりは、先の「一定の幅」の「右」や「左」にハミ出しすぎた極端なモノは、やはり両方ともに子供たちにとっても――実はそれは特撮マニアや一般大衆たちにとっても――アウトになるのであろう。もちろん、そこに個人の好みやキャパシティー・守備範囲のちがいまで加わっていくことで、さらにヤヤこしくなっていくのだが(汗)。


 その前提の上で云うのだが、筆者個人は90年代以降、あるいは21世紀以降の子供向け番組の作り方としては、70年代前半の第2期ウルトラ的な重たい児童向けドラマのトーンではなく、コメディ的なトーンでディレクションしていった方がベターであろうと考えている。
――まぁ、今だからこそそのようにも思うけど、ごくごく個人的な感慨を云わせてもらえば、『宇宙刑事ギャバン』における大山小次郎こと鈴木正幸のハイテンションなコミカル演技などは、それが狂騒・狂躁的な80年代の到来とシットリとして優しかった70年代への決別のようにも思えて、筆者個人はイヤでイヤでたまらなかったモノだけど(笑)。加えて云うなら、幼少時はともかく思春期以降の再視聴では、第2期ウルトラシリーズにおける「ニガ味」もある児童ドラマ群のことが筆者も大スキである。しかし、アレらをそのまま80年代以降の特撮作品群に導入しても子供たちやマニア・大衆たちにもドン引きされるであろうから、うまくマイルドに寸止めして視聴者たちに伝達するような手法がナイものなのかを漫然と考えつづけてもいるのである――


 とはいえ、『母をたずねて三千里』的な要素は、本作『R/B』という作品が過剰にシメっぽくはならないようにするためにか「点描」にも近いけれども、本作にかぎらず『特命戦隊ゴーバスターズ』(12年)や『ウルトラマンX(エックス)』(15年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200405/p1)などにも「親探し」の要素が導入されたジャンル作品は、近年になってからだが散見はされるようにもなっている。80年代〜90年代初頭のバブル期のように、ダウナーな要素が過剰に忌避されるネアカ至上で狂躁的な時代もまた終わって久しいようではあるので、個人的には実に好ましい方向性での時代の変化ではあるのだ(笑)。


兄弟主人公を共に「熱血」として描く試みは、成功か!? 失敗か!? それとも一長一短か!?


 主人公である青年兄弟ふたりについても、もう少しふれてみたい。フツーはコンビ・バディー(相棒)ものだと、ふたりの差別化・描き分けのために、日本の往年の変身ヒーローものでも、古くは『超人バロム・1(ワン)』(72年)、あるいはそれを模したとおぼしき新しめのところでも『仮面ライダーW(ダブル)』(09年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100809/p1)、女児向けTVアニメ『ふたりはプリキュア』(04年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20040406/p1)などのように、「熱血漢」と「沈着冷静」の2者コンビとしての性格設定を与えるものである。それはそれで間違っているとは思わない。しかし、このキャラクターシフトは、前者の猪突猛進が物語を引っ張って戦闘においても先陣を切る行動隊長の役回りとなるために、後者がやや分が悪く見えるのも事実なのである。
――21世紀以降の子供向けならぬ思春期・青年期以降向けのジャンル作品だと、熱血漢よりもクールな軍師・策士タイプである頭脳派のキャラクターの方をカッコよく描いていく『デスノート』(03年)・『コードギアス 反逆のルルーシュ』(06年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20081005/p1)・『アルドノア・ゼロ』(14年)のような作品も登場してはいるけれど――


 本作についても、青い私服を着ている「弟」が頭脳派だという設定をドコかで読んだので、そのテの陥穽にハマった作品でもあるか? などと思いつつ、フタを開けてみたのだが……。パソコンを操って分析担当! みたいなこともしてはいるけど、しょせんはその程度であって(笑)、あとは兄に負けじ劣らじフツーに熱血青年でもあったことよ(笑)――いかにも「弟」的な「甘ったるさ」はアリつつも――。
 コレならば、「兄」の方が強くて颯爽としてカッコがよくって、「弟」の方が地味で少々弱いから子供人気の面では劣る…… なぞという事態には陥りにくそうではある。ソコまで先回りして計算した上でのこのキャラクターシフトであったかは怪しいけれども(笑)、結果オーライというべきであろう。


 もちろん何事も一長一短ではあるので、ふたりの性格的・思想的な描き分けという面ではたしかに少々弱くはなってくる。しかし、頭脳派の「弟」がサブ扱いとして少々ワリを喰ってしまう「デメリット」と、「弟」も熱血漢でありつつも「兄」とほぼ対等どころか「頭脳派」の長所も付与されることで「兄」とも拮抗すらする「メリット」が与えられたことを、総合的に比較考量すれば、本作における「弟」も「兄」同様の「熱血」として描くという手法はたしかに成功したようにも思えるのだ。


怪獣紳士録 〜乙一&田口清隆再登板! 鳥型怪獣とのウルトラ史上最強の空中戦特撮!


 毎回登場するゲスト怪獣は、2010年代の低予算ウルトラシリーズの通例に則(のっと)って、#1は新作ソフビ怪獣人形とも連動した新造着ぐるみ怪獣で、黒と溶けた鉄のような赤が印象的な蛇腹のグルジオボーンが登場。ボーンというからには骨がモチーフである怪獣である(笑)。#2以降はやはり2010年代恒例である既存の着ぐるみ怪獣の使い回しとなり、3年前のウルトラマンエックスとも戦ったブラックキングが#2に、同じくエックスと戦ったガーゴルゴンが#3に、歴代ウルトラマンとも戦ってきた人気怪獣レッドキングが#4に登場して活躍している。


 2010年代のウルトラシリーズも観続けている特撮マニアであれば特筆すべきなのが、#5に登場した鳥型怪獣グエバッサーであろう。前々作『ウルトラマンオーブ』における敵の怪獣種族=「魔王獣」のうちの1体・マガバッサーの色の塗り替えにすぎないのだけれども、禍々(まがまが)しいダークな青と黒の色彩を白に塗り替えるや、あら不思議。フォルムは同じなのに随分と優美に見えてくる。ぜひとも『ウルトラ怪獣擬人化計画』で華麗に女体化してほしいモノである(すでにしている?)。


 そのマガバッサーならぬグエバッサーが登場した#5では、脚本に前作『ウルトラマンジード』(17年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20170819/p1)でメインライターを務めた作家の乙一(おついち)こと安達寛高が再登板! いやぁ本業がある御仁だから、『ジード』1作こっきりの登板かと思っていたので、またプロデューサー氏がお声掛けをして、さらに氏がそれに応えて執筆してくれるというのが実に意外。
 お話の方はメインライターが設定紹介編をやるならば、サブやゲストのライターは設定の補強や傍流の肉付け、ゲストを主体にするなどのパターンのものに仕上がってもいる。「弟」の方の人物像を肉付けするために、彼の大学生活で知り合った、キャンパスでも翼型パーツを付けて鳥人間コンテストのように空を長時間にわたって飛ぼうとして失敗しつづけてもいる、男に媚び媚びとしたイロ目を使いそうにはない、いかにもマジメそうな小柄で黒髪ショートの健気そうな、美人というより可愛い系寄りの理系女(リケジョ)とカラませる。
 まだシリーズも序盤なので、このテのシットリとしたドラマ編はもう少しあとの回にまわした方がイイようにも思ったけれども、単独作品としての評価は高得点を与えてもよいくらいの面白さであったとは私見する。


 彼女が在籍する大学の雑然とした研究室には、19世紀の先人・リリエンタールが作ったようなハングライダーの巨大骨格模型が吊されているのをはじめ、様々な小物で飾られており、実にそれらしい映像的説得力まで醸されて、本編美術班のがんばりにも驚かされる。恒久的なスタジオセットも用意されず、屋内部分は東京郊外・多摩地方の廃校の小学校しか登場しなかった、2010年代ウルトラシリーズの1発目『ウルトラマンギンガ』(13年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200819/p1)のころと比すればエラい予算のアップである(笑)。
――もちろんリアルに考えれば、彼女のあの装備では空気力学的にも空を飛べることはナイのだけど、そこはサブタイトルでも謳われるギリシャ神話のイカロスと掛ければ、役者さんが自力で力強く羽ばたいてもみせるあの姿に、彼女のがんばり&シンボリックなロマンも込められようというモノだ――


 こーいう人間ドラマ主導の回だと、特撮シーンは惰性の段取りになりがちである。もちろん#1や最終回にイベント編ではない通常回では、そのようなお約束のルーティン段取りに留まった特撮怪獣バトル回があってもイイのだけれども……。しかし、そこは特撮自主映画監督上がりで、本話の本編演出のみならず特撮演出も担当している田口清隆! 先にゲットした「風」のメダルの力でウルトラマンがはじめてカラーチェンジして初活躍する回でもあるからだろう、特撮部分も実に力が入っている!


 手前に「妹」とゲストのリケジョが小さくたたずむ引きの実景(コレも特撮セット?)の小高い芝生の斜面越しの奥に、特撮セット内にも用意した、またまた緑の斜面越しにいる鳥型怪獣を合成してみせる。それがフィックス・固定したアングルでの合成ならば特にドーということもナイけれども、カメラがヨコ(円周?)移動をはじめても、実景(?)+特撮セットのヨコ移動合成もズレたりせずにナチュラルに維持されつづけていくという、遠景・奥の方はいつものスタジオ内の特撮ミニチュアセットであることはバレバレでも、それでも映像的なサプライズやカッコよさを視聴者に感じさせてもくる特撮演出の妙!!


 強風が吹きすさぶ曇天下、「弟」が変身して青い姿のウルトラマンブルに変身するや、そのまま横を通り過ぎていくウルトラマンをカメラの首振りで追っかけるのかと思いきや、地面に沿って全身を水平にピンと伸ばして超低空飛行を開始したウルトラマンの背中や後頭部を、遠近感豊かにカメラは付かず離れずで大追跡!!


 さらにはカットを割らずにそのままウルトラマンの主観視線の映像(!)となって、空中に浮遊する鳥型怪獣グエバッサーに猛迫して、ウルトラマンの右手や左手だけが写っている図でパンチやチョップを繰り出してみせるという絵が!!


 またまたカットを割らずに、空中で組み合って戦いつづけているウルトラマンとグエバッサーの頭部やバストショットを捉えた巨大感あふれるドUP映像のままで、彼らの周囲を高速で360度グルグルと回り続けるカットまで!!


 グエバッサーが超高速で逃げ出して、その姿がケシ粒のように瞬時に小さくなっても、すぐに追いかけて追いつくウルトラマン!!


 実際にはカットも割ってCGなどでシーンがつながっているかのように加工しているとは思うけど(?)、いずれにしても、こんなにもカッコがよくってスピーディーで、なおかつ力強くて迫力もある空中戦の特撮演出なぞは観たことがナイ! 歴代ウルトラシリーズ史上、最強の特撮空中戦が誕生したかもしれないのだ!?


怪獣を召喚するアイゼンテック社長が、ウルトラマンオーブハモニカ曲を口笛で披露!?


 本作は『ウルトラマンギンガ』や『仮面ライダーW』などとも同様、一地方都市を舞台としている――その地名がベタにも、綾香市(あやかし。旧名は妖奇村(あやかむら)・笑)。怪獣の「怪」の読みでもあると思えば、ベタでも由緒は正しいのだ!――。そして、企業城下町でもあるというあたりで、『仮面ライダー鎧武/ガイム』(13年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20140303/p1)も想起する。その城下町を牛耳っているワケでもないけれども、町を富み栄えさせているのは、ハイテク大企業「アイゼンテック」!(旧名は町工場の愛染鉄工・笑)


 実は往時のサウジアラビアで大人気であったという円谷プロ製作の、本編人間ドラマ部分はセル画アニメで描いた男女合体変身の特撮ヒーロー『恐竜大戦争アイゼンボーグ』(77年)が、オイルマネーで昨2017年末に当時の声優さんまで起用して新作映像が製作されたことにあやかったネーミングでもあろうか?(笑)


 両手の指でハートマークをかたどってみせたりする――プリキュアの名乗りポーズか!?(笑)――この企業の社長さん。彼がやたらとハイテンションでガナっているような演技を披露するところで、『仮面ライダー000/オーズ』(10年)の宇梶剛士が演じた鴻上(こうがみ)財団会長をも想起させるけど、白いスーツをまとった長身のアイゼンテック社長・愛染マコトのお芝居がかった大仰で軽妙なコミカル演技にはついつい笑ってしまうのだ――先にもふれた「ヘビー」&「ライト」と「個人の好み」の問題にも抵触するので、戯画(ぎが)的なお芝居が不愉快な方々にはホントに申し訳がないのだけれども(汗)――。


 彼は初老の域には達してはいないけど、壮年のオッサンにすぎるので、若者ヒーローと拮抗する悪党には当初、見えなかったモノなのだが……。


 ナンと彼は「怪獣メダル」を所有しており、ヒーロー側と同じかたちの変身アイテムを、テンション高く「アン・ドゥ・トロワ~~」を3回連呼しながらエキスパンドもして(笑)、怪獣を召喚していたことが判明!


 #5のラストでは、一昨年度の『ウルトラマンオーブ』の風来坊主人公のトレードマークでもある黒い革ジャンをキツそう(爆)に羽織りつつ、やはり風来坊のトレードマークであったハーモニカ曲までをも口笛にて披露! ウルトラマンオーブのメダルもナデている姿で俄然、作品世界に対する興味・関心も惹起されてきた!


 正直、イイ意味でユルめな作風の2010年代のウルトラシリーズの中でも、本作は格段に輪をかけてユルい牧歌的な香りが序盤では漂っていた。しかし、やはりこのテのヒーローものは基本は戦闘モノなのだから、もう少しアグレッシブ(攻撃的・戦闘的)な要素や、タテ糸の要素を想起させるライバル的なキャラとの攻防要素、ひたすら並クラスの怪獣とのルーティンバトルではなく中ボスやラスボス怪獣なども適宜(てきぎ)登場させる起伏も付けてほしいよなぁとも正直思っていたので、この趣向には大賛成である。コレからも本作を注視していきたい気持ちにさせられた。


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2019年準備号』(18年8月11日発行)所収『ウルトラマンR/B』序盤合評7より抜粋)


『假面特攻隊2019年準備号』「ウルトラマンR/B」関係記事の縮小コピー収録一覧
・各話視聴率:関東・中部・関西。各クール平均・全話平均視聴率
・スポーツ報知 2018年4月25日(水) 7・7から「ウルトラマンR/B」 シリーズ初!!兄弟で変身 円谷プロ勝訴 ウルトラマン著作物 海外利用権巡り訴訟
産経新聞 2018年7月1日(日) 週刊番組ガイド 家族の絆描くウルトラマン 小池亮介 平田雄也 (役者表記の順は写真の左右並びに準じたもの)
西日本新聞 2018年7月16日(月) 次の連載随筆 かいじゅうタイムズ 小説家 乙一さん 23日から ――筆者の言葉――
西日本新聞 2018年7月24日(火) かいじゅうタイムズ2 ウルトラマンジードの話
西日本新聞 2018年7月31日(火) かいじゅうタイムズ7 Tシャツの話 (『R/B』#5の裏話)
・デーリー東北 2018年7月24日(火) 爆笑問題がウルフェスPR セブンが小声で暑いと漏らす?


ウルトラマンR/B』各話平均視聴率:関東1.4%(#1〜4)・中部1.5%(#1のみ)・関西0.9%(#1のみ)
おはスタ』2018年7月6日(金)「ウルトラマンR/B登場」視聴率:関東0.6%・中部0.6%・関西0.2%
ウルトラマンオーブ THE CHRONICLE』全26話平均視聴率:関東1.2%・中部0.9%・関西0.8%


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ウルトラマンダイナ』(97年)#1「新たなる光(前編)」~#11「幻の遊星」

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ウルトラマンティガ』(96年)#1「光を継ぐもの」~#15「幻の疾走」

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ウルトラマン80(エイティ)』(80年)#1「ウルトラマン先生」 ~矢的猛先生!

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『ザ☆ウルトラマン』(79年)#1「新しいヒーローの誕生!!」 ~今観ると傑作の1話だ!? 人物・設定紹介・怪獣バトルも絶妙!

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ウルトラマンタロウ』(73年)#1「ウルトラの母は太陽のように」 ~人物像・超獣より強い大怪獣・母・入隊・ヒロイン・5兄弟の正統タロウ誕生を漏れなく描いた第1話!

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ウルトラマンエース』(72年)#1「輝け! ウルトラ五兄弟」 ~超獣・破壊・防衛組織結成・先輩&新ヒーロー登場を豪華に描く!

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帰ってきたウルトラマン』(71年)#1「怪獣総進撃」 ~第2期ウルトラシリーズ・人間ウルトラマンの開幕!

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ウルトラマンR/B

ウルトラマンルーブ R B 1(第1話~第6話) [レンタル落ち]
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#ウルトラギャラクシーファイト にカコつけて #ルーブ #ウルトラマンルーブ #田口清隆
#4「光のウイニングボール」が配信中につき、『R/B』序盤総括!
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本放映当時の『R/B』序盤評! ~ユルい作風・その玩具性・名乗りの是非・空中戦特撮!
#ウルトラマンルーブ #ジェネスタ #ニュージェネスターズ #ニュージェネレーションスターズ



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デッドプール2 〜軟派C調破天荒ヒーロー改心!? デッドプールvsターミネーター(笑)

(2018年9月8日(土)UP)
『LOGAN/ローガン』 〜老X-MEN映画に、活劇の教科書を見る! 殺ってもイイ悪党の造形法(笑)
『デッドプール』 〜X-MENも客演! 私的快楽優先のヒーローは、日本でも80年代以降は珍しからず!
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デッドプール2

(2018年6月1日(金)・日本封切)

デッドプール2』 〜合評1

(文・くらげ)
(2018年6月15日脱稿)


 『X-MEN(2000〜)』ユニバース最大のヒット作になってしまった『デッドプール(2016)』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20160705/p)。2作目も大ヒット中で興収ツートップは確定のようです。スピンオフの邪道ヒーローにトップの座を持ってかれて、本家『X-MEN』メンバーは複雑な心境じゃないでしょうか。監督は前作のティム・ミラーが降板し、キアヌ・リーブス主演のアクション映画『ジョン・ウィック(2014)』のデヴィッド・リーチに交替してます。
 続編はいきなりデッドプール=ウェイド・ウィルソン(ライアン・レイノルズ)が自殺する場面からスタートします。不死身なので自殺してもどうせ死なないんですが、何をそこまで落ち込んでるかと言うと……


【WARNING】ここから完全なネタバレですが、これに触れないと先に進まないので、観てない人は読み飛ばして下さい。


 前作から2年後、麻薬の売人やマフィアの殺し屋として活躍するデッドプールは、恋人ヴァネッサ(モリーナ・バッカリン)と誕生日を祝い、子供の名前を考える幸福な日々でした。しかし好事魔多し、突然の賊の襲撃でヴァネッサはあっさりと殺されてしまいます。
 始まって10分くらいだしどうせシャレでしょ? と思って観てるとどうやらそうではないようです。まあ『スパイダーマン』あたりのヒロインなら死んでもどうってことないんですが(←おい)、ヴァネッサはデッドプールという歪なパズルに唯一合うピースだと前作でさんざん描いてるので、まさか2作目で殺すとは思いません。こうなると「あんないい女二度と出会えないだろうに」と我が事のようにデッドプールに同情してしまいます。


 唯一の心の支えを失ったデッドプールは絶望し、自宅に山ほどの可燃物を持ち込んで火をつけ、バラバラに吹っ飛びますが死にません。死後の世界でヴァネッサの元へ行こうとすると透明な壁に阻まれ現世に戻されてしまいます。不死身のヒーローの悲劇ですね。失意のデッドプールを慰めるため(というか放っておくと何するか分からないので)、X-MENのコロッサス(声・ステファン・カピチッチ)やネガソニックティーンエイジ・ウォーヘッド(ブリアナ・ヒルデブランド)がX-MEN加入を勧めます。
 色々あってX-MEN見習いとして働き始めるデッドプールですが、初仕事でミュータントの孤児院で暴れていたラッセル少年(ジュリアン・デニソン)に同情し、職員を射殺して逮捕されてしまいます。
 何故かこの少年が未来から来た殺し屋、ケーブル(ジョシュ・ブローリン)に狙われていて、デッドプールが奮闘することになります。無宿渡世のヤクザ者が子供を押し付けられるのは『男はつらいよ』『座頭市』の時代から定番ですね。


 デッドプールラッセルはミュータント刑務所「アイスボックス」に収監され、特殊な首輪で超能力を封じられます。デッドプールはヒーリング能力を失ってガン患者に戻ってしまい、これでやっと死ねる、ヴァネッサの元へ行けるとか思ってるところへ、武装したケーブルが襲って来て刑務所は大混乱になります。
 何故ケーブルがラッセルを狙うかというと、ラッセルは未来では“ファイヤーフィスト”を名乗る悪のミュータントになっていて、ケーブルの家族を殺した仇だったのです。成長して手に負えなくなる前に殺そうとするケーブルに対し、デッドプールラッセルを正しい方向へ導くべきだと考えます。ヴァネッサの幻影に励まされ、ラッセルも自分も「いい人間」になれるはずと奮闘するデッドプールが、R指定の血まみれコメディとは思えない感動を呼びます。


 デッドプールラッセル救出とケーブル打倒のためミュータントを集め、チーム「Xフォース」を結成しますが、即席チームにしては豪華なメンバーが集まります。透明人間“バニッシャー”は透明なので見えませんがブラッド・ピットが演ってます。一瞬だけ姿が見えるので見逃さないように。何を間違えたか普通の人間の中年親父“ピーター”も面接に来ますが、やる気を買ってこれも採用します。Xフォースは移送中を狙って上空からパラシュート降下し、ラッセルを奪還しようとしますが、パラシュートが強風に煽られ着地前に全員死亡します(笑)。ただ一人「運のいい」ミュータント“ドミノ”(ザジー・ビーツ)だけが生き残ります。運がいい超人ってジャンプ漫画『とっても!ラッキーマン(1993)』みたいですね。


 何の役にも立たなかったXフォースですが、ドミノの活躍でラッセル救出には成功します。ところが護送車から怪力のミュータント“ジャガーノート”が現れて、デッドプールの前に立ち塞がります。力ではジャガーノートに勝てないデッドプールは、あっさり真っ二つに引き裂かれます。
 それでも死なないデッドプールは切り口から赤ちゃんみたいな下半身が生えてきて再生しますが、3頭身のデッドプールのよちよち歩きが気持ち悪いです。ちぎれた下半身の方はどうなったんでしょう。
 そっちもデッドプールが生えて来て、プラナリアみたいにデッドプールが増殖したらイヤだなあと思ったんですが(笑)、逃走したラッセルはジャガーノートと共に孤児院へと向かい、自分を虐待した理事長(エディ・マーサン)に復讐を果そうとします。


 クライマックスは理事長を殺そうとするラッセルと、それを止めるデッドプール達が入り乱れての戦いですが、敵を倒す戦いじゃなく未来の悪人が最初に手を汚すのを止めようとする戦いなのが面白いですね。
 ケーブルもデッドプールに賛同し、協力してラッセルの最初の殺人を止めることになります。コロッサスやネガソニックX-MENも参戦し、ジャガーノートと派手なバトルを繰り広げます。今回ネガソニックの恋人の“ユキオ”が登場するんですが、これを日本の若手女優・忽那汐里(くつなしおり)が演っていて、一瞬だけの登場かと思ったら電撃を操るミュータントとして派手に活躍します。
 というか主役のデッドプールの戦い方が一番地味ですね。日本刀と拳銃ですから。それでもラッセルの未来のために命を懸けるデッドプールにはグッと来ます。デッドプールの誠意が少年の運命を変えた瞬間、ケーブルの運命もまた変わるのが感動的で、こんな映画なのに泣きましたね。


 今回おふざけ要素は控えめに感じましたが、デッドプールの「第4の壁を破る」能力は健在で、スクリーンの中から観客に話しかけたり脚本に文句を付けたりします。ケーブル役のジョシュ・ブローリンに「サノス」(『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー(2018)』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20180619/p1)のラスボス)と呼びかけたりして。デッドプールの場合内輪ネタじゃなく「自分の世界がフィクションだと認識できる」超能力なんですよね。
 予告編だとスタン・リー(原作者)に対して「黙れ! スタン・リー!」とツッコむギャグがありましたが、本編には無くて残念でした。『アナと雪の女王(2013)』の曲が「愛のイェントル」のパクリなんてネタも、バーブラ・ストライサンドジョシュ・ブローリンの義理の母なんて芸能情報も知っておくと味わいが増すでしょう。そんなデッドプールでも「この映画、『ターミネーター(1984)』にそっくりだな」とは言わなかったですね(笑)。


 この映画に限ってはエンドタイトルの途中で帰らない方がいいです。映画の内容をひっくり返す大どんでん返しがありますから。本家『X-MEN フューチャー&パスト(2014)』も真っ青の反則技で、映画の内容ついでに主演のライアン・レイノルズ黒歴史までひっくり返しますよ。


(了)


デッドプール2』 〜合評2

(文・T.SATO)
(2018年6月16日脱稿)


 前半は少々カッタるい。後半は人情ドラマとしても盛り上がる。
 悪人にも一分の魂、ロクデナシのC調おしゃべりヒーロー・デッドプールが、施設で虐待されて育ったデブのイケてない、ミュータント(突然変異)能力が発現した白人少年を闇落ちから救うため、イイひとになってしまうあたり、このテはもう続編では使えなくなってしまったゾ!(笑)
 まぁ後先考えずにヤリきってしまうのも、良作を作るためのひとつのテではあるだろう。前作の方が僅差で面白かったような気もするけれど(汗)。


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2018年初夏号』(18年6月17日発行)〜『仮面特攻隊2019年号』(18年12月29日発行)所収『デッドプール2』合評1&2より抜粋)


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デッドプール』 〜X-MENも客演! 私的快楽優先のヒーローは、日本でも80年代以降は珍しからず!

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デッドプール2』 〜軟派C調破天荒ヒーロー改心!? デッドプールvsターミネーター(笑)

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『ヴァレリアン 千の惑星の救世主』 〜多民族が「共生」ではなく「棲み分け」(笑)する未来像!

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『レディ・プレイヤー1』 〜ガンダムvsメカゴジラ! 仮想現実に逃避するオタの心理描写が秀逸(涙)

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GODZILLA 決戦機動増殖都市』 〜地球人・X星人・ブラックホール第3惑星人・インファント島民 ゴジラvsメカゴジラ!?

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スパイダーマン:ホームカミング』 〜クイズ研究会(?)に所属する文化系スパイダーマンの弱者友人たち(汗)

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マイティ・ソー バトルロイヤル』 〜新敵出現で宿敵の悪神が正義に協力!(笑) 欧米も実は神仏習合だ!?

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ブラックパンサー』 〜アメコミ黒人ヒーロー映画で傑作だが、新型のポリコレ・黒人搾取でもあるか!?

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ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』 〜世界的に好評だが私的にはイマイチ。軽薄ヒーローもの全般にいえる作劇的弱点!

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アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』賛否合評 〜もはやブランド・権威ゆえ、思考停止で高評価・深読みされてやしないか!?

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ワンダーウーマン』 〜フェミニズムの英雄か!? 単なるセックス・シンボルか!?

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スーサイド・スクワッド』 〜アメコミ悪党大集合。世評は酷評だが佳作だと私見

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20160912/p1

GODZILLA 決戦機動増殖都市 〜地球人・X星人・ブラックホール第3惑星人・インファント島民 ゴジラvsメカゴジラ!?

(2018年9月12日(水)UP)
『ゴジラ評論60年史』 ~50・60・70・80・90・00年代! 二転三転したゴジラ言説の変遷史!
『シン・ゴジラ』 〜震災・原発・安保法制! そも反戦反核作品か!? 世界情勢・理想の外交・徳義国家ニッポン!
『GODZILLA 怪獣惑星』 〜『シン・ゴジラ』との相似と相違!
『GODZILLA 星を喰う者』 〜「終焉の必然」と「生への執着」を高次元を媒介に是々非々で天秤にかける!
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GODZILLA 決戦機動増殖都市』

(2018年5月18日(金)・封切)

GODZILLA 決戦機動増殖都市』 〜合評1

(文・T.SATO)
(2018年6月16日脱稿)


 21世紀前半に怪獣軍団に蹂躙されて、人類は2大異星人種族の助力を得るも、それでもゴジラをはじめとする怪獣たちを撃滅することはできず、外宇宙へと脱出した。
 しかし、生存に適した地球型惑星を見つけることはできず、過酷な船内生活に倦(う)んだ人々は地球帰還を決断する。
 ウラシマ効果で2万年が過ぎた地球。しかし、そこはゴジラ型生物で生態系が激変した地球であった!


 ……といったCGアニメ表現だからこそ可能な、SF仕立ての『ゴジラ』映画3部作の第2章『決戦機動増殖都市』――SF風『ゴジラ』といえば、もう40年近くもむかしに特撮雑誌『スターログ』日本版(79年)で、『ア・スペース・ゴジラ』という絵物語の連載があってですネェ(ゴホッ、ゴホッ)――。
 アニメ製作は元は下請けCG屋で、近年ではメカも人物も(ほぼ)フルCGの宇宙SF深夜アニメ『シドニアの騎士』(14年)の製作で、好事家を驚かせたポリゴン・ピクチュアズであり、スタッフもだいたいスライドしており、絵柄的にも『シドニア』の延長線上のモノ。


 もちろん怪獣映画『シン・ゴジラ』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20160824/p1)級の超特大ヒットなぞを、物事の細分化が進展した果ての21世紀に住まう今の東宝の若手プロデューサー陣がねらうワケもなく、大衆ではなくニッチなハイブロウマニア層をねらっているとの発言をドコかでも眼にしたけど、まさに本作はそのようなクールでシリアスな方向性で構築されている。
 20世紀のSFアニメ全盛の時代とは異なり、21世紀の萌えアニメ全盛の時代に、アニメのゴジラ映画で今の若いオタが釣れるのだろうか? と思いきや……。『シン・ゴジラ』の余波に、脚本・シリーズ構成が『魔法少女まどか☆マギカ』(11年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20120527/p1)の虚淵ブランドで、イケメンボイスの人気声優の登板もあってか、劇場にはけっこう若いオタが来てますナ。
 2014年のハリウッド版『GODZILLA』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190531/p1)では、客層が50代メインという感じだったので、よかったよかった。まぁ両作ともに子供の観客は見当たらなかったけど(爆)。


 生き残りの人類から進化したのか、別種の昆虫などから進化したのか、東宝怪獣映画『モスラ』(61年)シリーズで、モスラを崇めるインファント島の民のような(改変された)自然と共生する部族が2万年後の箱根に住まっていたり、それとの対比でかつてメカゴジラを建造したマッチョなブラックホール第3惑星人の超科学技術・合理主義・富国強兵志向もウキボリとなって、自然志向と科学志向の両者の相容れない価値観の相克と、その狭間で揺れる地球人や宗教的・瞑想的な価値観で生きるX(エックス)星人との多様な対比も描かれたりはする。


 地上に上陸した部隊の地球人たちも、厭戦派・主戦派に分かれており、復讐の対象であるゴジラを打倒せんとするネバギバな主人公青年のハルオは後者であり、その不屈の闘志にブラックホール第3惑星人も共感を示していたのだが、ゴジラに勝つためにはメカ(=ナノ・メタル)との融合も辞さない第3惑星人にはハルオが拒否を示すサマを、ゴジラとの最終ロボットバトル中に描くことで、バトルとドラマのクライマックスも同時に持ってくる。
 筆者のようなヒネくれた人間には、別に当人――第3惑星人や地球人のメインヒロイン――が承知の上で行なうなら、TVシリーズ最終回のあと、外宇宙から新たに飛来した金属生命体との戦争で、最後には意思疎通が不能なハズの金属生命体とも融合して戦争を終結してみせた主人公を描いた『劇場版 機動戦士ガンダム00(ダブルオー) ―A Waking of the Trailblazer―』(10年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100920/p1)みたいなオチもあってイイとも思うけど(笑)。
 もちろん、それはシニカルなあえてするツッコミで、本作では人間とメカとの融合が「一線を超えた非人間性の象徴」として描かれる。まぁそのへんはSF物語のバリエーションのひとつとして、相対化して受け止めさせてもらおう。


 しかし基本的にはそれらの対比・対立劇は本作を高尚っぽく見せるための言い訳であり、前作では空飛ぶバイク型メカ群vs50メートル級ゴジラとの激闘を描いたけど、本作では高速で空を飛ぶ中型ロボット数機&メカメカ都市vs300メートル級の超ゴジラとの大激闘をメインに描いていく。
 メカゴジラをキチンと登場させた同時期公開の洋画『レディ・プレイヤー1(ワン)』(18年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20180616/p1)の方がエラいともいえるけど、まぁ本作の設定・作風からして、たとえ登場しなかったとしても不思議じゃなかったし、予想や期待をハズしてくるだろうと、大衆はともかくスレたマニア層であれば、鑑賞途中で想起されてくるので、この試みを手放しでは絶賛はしないけど、まイっか! といったところか?(異論は受け付けます・笑)
 筆者個人が最上級で理想とする作劇ではないし、大スキという作品でもないけれど、むろん自分の好み以外の作品は身体が受け付けないというほどにはケツの穴が小さくはないつもりなので、本シリーズもそーいう中間ポジションにおいては楽しめたし肯定もしておきたい。


 この第2章の脚本は、クレジットの順番的にも実質的には虚淵ではなく、『シドニアの騎士』でもメインライターを務めて、『ブギーポップは笑わない』(00年)・『キノの旅』(03年)・『魍魎の匣(もうりょうのはこ)』(08年)・『夏目友人帳』(08年)シリーズなどのハイブロウ系アニメばかりを手掛ける印象がある村井さだゆきの筆によるものだと思われる。特撮マニア的には『ウルトラマンダイナ』(97年)の怪作である#38、実相寺昭雄カントク担当回「怪獣戯曲」(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19971209/p1)の衒学的で頭デッカチな脚本が印象に残るが、併映作品の短編アニメ映画『ウルトラニャン』(97年)の脚本家でもあった(笑)。


(了)


GODZILLA 決戦機動増殖都市』 〜合評2

(文・仙田 冷)
(2018年6月12日脱稿)


 見ての感想だが、かなり『魔法少女まどか☆マギカ』(11年、以下『まどマギ』)の要素が入っているなというのが、正直な印象である。
 例えば、目的を果たすために犠牲が出るのは、それが合理的なものである限り許容するというビルサルドのスタンスは、まどマギのキュゥべぇことインキュベーターを思わせる。実態をろくに説明せずに結果だけを押しつけるあたりも何だか似ている。
 一時はビルサルドの思想に共鳴するも、真相を知って恐怖の悲鳴を上げることになるヒロイン・ユウコは、何だか魔法少女の一人・美樹さやかを思い出させる。さやかもまた、奇跡を願って魔法少女になるも、やがて実態を知り、絶望に沈むキャラだった。そのプロセスをもうちょっと急激にやると、今回の映画のようなことになる感じか。
 まあそれを言ったら、ゴジラまどマギのクライマックスに現れた大魔女・ワルプルギスの夜で、それに憎悪を燃やすハルオは魔法少女暁美ほむらのポジションか。しかしながら、この事態を救済するはずの鹿目まどかにあたる存在は、未だに姿を見せない。今回本格的に活躍したフツアの双子の少女・マイナとミアナなのか、それとももっと別の誰かなのか。いずれにしても結論は、11月公開予定の第3部で出るはずである。


 今回のバトルは、ゴジラ対メカゴジラという触れ込みだったが、ふたを開けてみれば、全長300メートルのゴジラ・アース対メカゴジラをベースに構築された要塞都市という異種戦であった。特定の何かを迎撃するために要塞都市を構築するというところで、『新世紀エヴァンゲリオン』(95年)または『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』(07年)シリーズ(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20220306/p1)の第3新東京市を思い出した向きは多かろうと思う。
 怪獣同士のガチバトルを期待した向きには、外されてしまった感じもあるのではないかと想像する。私などは、ちょっとばかり意外な成り行きで、これはこれで面白いと思った方であるが。三部作の2話目にはよくあることで、物語の発端とクライマックスとの間に挟まれて、中だるみとは言わないまでも、どうしてもつなぎっぽい感じになるのは仕方のないところか。ハルオの作戦も、基本的には第1部『GODZILLA 怪獣惑星』(17年)での対ゴジラ作戦のブローアップヴァージョンだし、そういう意味では新鮮味はないかも知れない。
 でも、伏線の張り方は面白かった。
 クライマックスで戦闘メカ・ヴァルチャーに乗った3人のうち、なぜハルオだけがナノメタルによる浸食を免れたのか。その前振りとなるのが、フツアの民と出会ったビルサルドが、フツアが自分たちのナノメタルを加工して武器にしていることに気づく場面である。つまり、なぜ日常的にナノメタルに触れているフツアの人々が、ナノメタルの浸食を免れているのか、ということ。それに回答を提示するのが、途中で提示される、フツアの村で傷の手当を受けた人間が、メカゴジラシティに入ったとたんに、ハルオも含めて、軒並み体調を崩しているという事実。フツアの民がまとう鱗粉は、ナノメタルと相性が悪いというか、何らかの相互作用があるのではないか、というわけである。
 それで思い出したのが『怪奇大作戦』(68年・円谷プロ)の第2話「人喰い蛾」。動物を溶かして消化する作用を持つ細菌・チラス菌を植え付けた蛾を使っての殺人を描いた話だが、こう思った人は少なくないのではあるまいか。チラス菌を植え付けられた蛾は溶けないのか? と。劇中ではその辺、特に説明はなかったが、個人的には蛾の鱗粉が、チラス菌に対して防御作用を持つのではないかと想像している。フツアの鱗粉も、ナノメタルに対してそういう作用があったのではという話である。
 実はもう一つ、面白い伏線だと思った部分があったはずなのだが、どこだったのか思い出せない。いずれこの原稿も、改稿する機会があると思うので、その時までには思い出しておこうと思う。


 さて本作、第3部『GODZILLA 星を喰う者』(18年)への布石もいろいろちりばめられている。
 まずフツアの双子少女は、どう見てもモスラ出現のフラグだ。X星人をもじってエクシフ、ブラックホール第三惑星人をもじってビルサルドであるように、フツアというのも多分関連する何かのもじりなのだろう。彼女たちはやっぱり、ザ・ピーナッツやコスモスのように、あの歌を歌うのだろうか。てゆーか、ここまで旧作のネタを取り込んでおいて、今さら歌わないなんて言われたら、その方が嘘だ。
 また本作のラストでは、エクシフの文明を滅ぼした怪獣が「ギドラ」と呼称されていることが明かされる。となれば当然、キングギドラの登場も予想される。実際、次回予告の一枚絵では、幾何学的に絡み合った3本の龍の首が描かれている。何だかその絡み具合が、三浦健太郎氏のダークファンタジーマンガ『ベルセルク』(白泉社ヤングアニマル連載)において、「贄(にえ)」(悪魔に捧げられた生け贄と思えばいいかと)とされた者につけられるマーキングと似ているのは、果たして故意か偶然か。
 ゴジラモスラキングギドラ……あれ、この並びは、金子修介監督の『ゴジラモスラキングギドラ 大怪獣総攻撃』(01年)と同じじゃないか。これでバラゴンが出てくれば完璧なのだが、まあそこまではないだろう。いずれにせよ第3部は、いよいよ本当に「大怪獣総攻撃」になりそうだ。そこにハルオたち人類勢がどう絡むのか。ビルサルドとの信頼関係には、今回の件でひびが入ったことは容易に想像できる。まさか今度はエクシフとも一悶着起こすんじゃあるまいなという不安もある。ハルオは、エクシフのメトフィエスとは仲がいいみたいだから、よほどのことがなければそういうことにはなるまいが。
 泣いても笑っても、物語はいよいよ次で完結する。いったいどんな結末を迎えるのか、楽しみに待つとしよう。


(了)


GODZILLA 決戦機動増殖都市』 〜合評3

(文・久保達也)
(2018年5月27日脱稿)

*見よ! メカゴジラの超進化!


 前作のアニメ映画『GODZILLAゴジラ) 怪獣惑星』(17年・東宝http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20171122/p1)のラストで、身長300メートル・体重10万トンの超巨大ゴジラの襲撃で全滅したかに見えた人類だったが、主要キャラは全員ちゃんと生きていた(笑)。


 各種宣材のキービジュアルにあったように、今回の『GODZILLA 決戦機動増殖都市』(18年・東宝)最大のウリは、映画『ゴジラ対メカゴジラ』(74年・東宝)以来、往年の東宝怪獣映画・ゴジラシリーズに再三に渡って登場し、「昭和」から「平成」にかけ、世の男子たちをワクワクさせてきたロボット怪獣メカゴジラ対怪獣王ゴジラの決戦絵巻だ。
 果たして、アニメで描かれるメカゴジラとはいったいどんな姿なのか? と、大半の観客、いや、少なくとも筆者の興味の中心はそれだったのだが、今回は実にいいかたちで裏切られたといった感が強い。


 ゴジラのデザインをベースに、全身シルバーに光る装甲で武装したメカゴジラは、再登場を繰り返すたびにそのデザインを変化させていったが、今回登場したのはまさにその究極体である。
 前作『GODZILLA 怪獣惑星』に登場した、本来は惑星開発用の掘削(くっさく)機能を持つ重機を兵器に転用したパワードスーツが、ロボットアニメ『機動戦士ガンダム』シリーズ(79年〜・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19990801/p1)のモビルスーツだとするなら、今回のメカゴジラはロボットアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』シリーズ(95年〜)の主役メカ・エヴァンゲリオンだと云っても過言ではない。
 いや、実際異様にヒョロ長い腕と足をした、全体的に超スリムなボディは、誰がどう見てもエヴァンゲリオンだし(笑)、巨大な鳥のような翼で宙を高速で舞い、ゴジラに奇襲攻撃をかけるさまは、まさに「蝶(ちょう)のように舞い、蜂(はち)のように刺す」という表現がピッタリとくるものがある。
 実はこの兵器はメカゴジラではなく、ハゲタカ=猛禽類(もうきんるい)を意味するヴァルチャーと名づけられているのだ。かのアメコミヒーロー・スパイダーマンの長年の宿敵にも同名の怪物がいるほどなので、ベタではあるものの戦闘メカにはふさわしい力強いネーミングと云えるだろう。
 もっとも、翼で宙を高速で舞う姿からすれば、メカゴジラと云うよりは映画『空の大怪獣ラドン』(56年・東宝)の主役怪獣を戦闘メカにアレンジした、メカラドンと呼ぶ方がふさわしいかも(笑)。


 おいおい、これでは肩すかしだ、拍子(ひょうし)抜けだ、詐欺(さぎ)だ、と怒る熱心なゴジラファンもいるかもしれないが、このヴァルチャー登場の経緯にはうならされるを得ないのだ。
 前作の冒頭で描かれた、西暦1999年から2048年に至る怪獣たちと人類との半世紀にもおよぶ激闘史の中で、2036年に母星を捨てて地球に来訪した種族・ビルサルドがゴジラ対抗兵器としてメカゴジラを開発するも、2046年に基地ごとゴジラに破壊されたことが、ほんのわずかだが映像でも説明されていた。
 このとき、破壊されたメカゴジラの残骸(ざんがい)を構成する自立思考金属体・ナノメタルが、ごく一部の人類が生存可能な星を求めて地球を離れていた20年=地球時間で2万年(!)の間に増殖を遂げ、メカゴジラシティなる、巨大な金属からなるコンビナートのような都市を形成するに至っていたのだ。
 メカゴジラ自体は劇中には登場しないものの、このメカゴジラシティがメカゴジラの残骸から形成されていることに説得力を持たせるため、逆算するかたちで先述したヴァルチャーと同じく腕や足が細く、背から尾にかけてゴジラのようなヒレが多数並ぶ、全体的にシャープな印象のメカゴジラも、製作の過程でデザインされている――マニア向けの高額商品を売るブランド・プレミアムバンダイ限定でソフビ人形を売るという目的も大きいだろうが(笑)――。


 そもそも、ビルサルドは先述した『ゴジラ対メカゴジラ』にメカゴジラで地球を侵略する悪役として登場したブラックホール第3惑星人がモチーフであり、そのビルサルドのメカゴジラ建造プラントがあった場所、つまり現在の機動増殖都市は、かつての富士山麓(ふじ・さんろく)にあることが今回語られるのだ。
 そう、映画『怪獣総進撃』(68年・東宝)で、宇宙超怪獣キングギドラ対地球怪獣連合軍の決戦場となったのをはじめ、映画『ゴジラモスラキングギドラ 大怪獣総攻撃』(01年・東宝)の時代に至るまで、幾度(いくど)となく怪獣たちが活躍する舞台として描かれた、あの富士山麓なのだ!
 往年のゴジラファンの心の琴線(きんせん)に触れるキーワードを巧妙に散りばめつつも、それらをそのままリメイクするのではなく、時代に受け入れられやすいかたちで昇華させていることこそ、メカゴジラのみならずゴジラシリーズ自体の超進化と云っても過言ではないのだ。


*萌え系キャラに転生した「小美人」


 それは前作のラストで、主人公のハルオ・サカキを超巨大ゴジラの襲撃から助けた存在としてチラッとだけ描かれた、今回主に前半で活躍するエキゾチックな美少女キャラについても同様だ。
 ハルオを助けたミアナと双子の姉・マイナの姉妹は、映画『モスラ』(61年・東宝)から映画『ゴジラ FINAL WARS(ファイナル・ウォーズ)』(04年・東宝http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060304/p1)に至るまで、巨大蛾(が)怪獣モスラを呼び寄せる存在として登場しつづけた、インファント島の小美人をモチーフとしたものだ。
 『恋のバカンス』『ウナセラディ東京』『恋のフーガ』などのヒット曲で人気絶頂だった双子デュオのザ・ピーナッツを小美人に起用することに成功した『モスラ』『モスラ対ゴジラ』(64年・東宝)『三大怪獣 地球最大の決戦』(64年・東宝)。
 そして、現在はすっかりメジャーな女優と化し、アニメ映画『コクリコ坂から』(11年・東宝)や『君の名は。』(16年・東宝)をはじめ、声優としての実績もある長澤まさみ(ながさわ・まさみ)が小美人を演じた映画『ゴジラ×モスラ×メカゴジラ 東京SOS』(03年・東宝)『ゴジラ FINAL WARS』に至るまで、小美人は20歳前後の女優たちによって演じられてきたものだった。
 ちなみに、映画『ゴジラVSモスラ』(92年・東宝)では、当時『愛がとまらない』『淋(さび)しい熱帯魚』などのヒット曲を連発していたアイドルデュオ・ウインクを小美人に起用する案もあったが、残念ながら流れてしまった。


 だが、今回登場したミアナとマイナの姉妹は、従来描かれてきた小美人の系譜を継承しつつも、萌(も)え系の美少女キャラとなったのだ。
 そしてポイントとなるのが、従来の小美人は身長が30センチ(!)だったのが今回は身長145センチと、人類の少女と同じ姿に改変されたことである。
 大人に近い年齢の女性たちが演じてきた小美人の身長を人間大にしたのと反比例するかのようにキャラが低年齢化したのだが、身長30センチのキャラよりも観客の感情移入を容易にするためでもあったのだろう。
 そして、その狙いはかなり的(まと)を得ていたのだ。


 たとえば、地底王国の洞窟(どうくつ)に築(きず)かれた祭壇場で、巨大な卵や謎の文字が描かれた壁画に手をかざしたミアナとマイナが、「卵をたたえよ、大地の闇こそ、フツアの憩(いこ)い……」などと、従来の小美人のように精神感応(かんのう)=テレパシーで呪文(じゅもん)を唱(とな)えつづける場面だ。
 水色とグレーの中間色のショートボブヘアで、前髪部分をモスラが翼を閉じたような形状に整(ととの)えた、ハルオを助けたやさしいミアナはややタレ目、ハルオの仲間たちを敵と認識して攻撃をかけてきた姉のマイナはややツリ目と、一応の差別化がはかられた双子の美少女キャラの、気高(けだか)さと神秘性を強調した演出は、筆者の萌え感情を呼び起こさずにはいられなかった(笑)。
 ミアナがハルオの名前をうまく呼ぶことができず、「は……る……おい」と呼んでしまう場面の、「おい」もまたしかりだ(爆)。


 ミアナとマイナの呪文の中で、「フツアの神もゴジラに敗れ、今や卵を残すのみ」とあるように、ミアナとマイナをはじめとする人型種族・フツア族は、モスラを神として崇(あが)めていることが明確に描かれながらも、メカゴジラ同様、モスラも今回は登場しない。
 だが、フツア族は人型の種族でありながらも、単なる人類の生き残りではなく、昆虫の遺伝子を持つ突然変異体として設定されており、モスラの必殺技であった鱗粉(りんぷん)を発したり、モスラの巨大な羽根と同様の模様が、褐色(かっしょく)の肌の全身に細かく描かれていることで、たとえモスラは登場しなくとも、往年のインファント島の原住民以上に、モスラと因縁(いんねん)が強い種族として描くことに成功しているのだ。
 もっとも、フツア族の長老のキャラクターデザインは、初期モスラ作品に登場したインファント島の長老そのまんまという感が強いのだが(笑)。
 また、先述した『モスラ』で小美人が発する声として製作された、ハモンドオルガンで演奏されたメロディを彷彿(ほうふつ)とさせる音楽が、洞窟の一連の場面で流れていたことも相乗効果を高めていたように思える――なお、『モスラ』の音楽を手がけた故・古関裕而(こせき・ゆうじ)は、先述した『君の名は。』の元ネタ(?)となった純愛映画『君の名は』(54年・東宝)の音楽も担当していた――。
 そして、小美人を身長30センチではなく、身長145センチの小さな美人として描いたのは、主要キャラに心の変遷(へんせん)を生みだし、それらの関係性に大きな変化を与えるためでもあったのだ。


*「群像劇」で魅せるゴジラ映画


 特に目立ったのが、ハルオの幼なじみであり、ハルオにあこがれる後輩女性として描かれながらも、前作『怪獣惑星』ではキャラの味付けがやや薄いと思えたユウコ・タニの躍進ぶりだ。
 先述した「は……る……おい」(笑)をはじめ、ミアナがハルオと親しくしていることに、ユウコは「なによあれ」と、露骨に不快感を示すのだが、もしミアナが従来の小美人のように身長30センチのキャラとして描かれていたならば、ユウコがこのような感情を呼び起こすことはなかったに相違ない。
 この直後、ハルオがミアナの呼びかけで難を逃れたのと同じ場所で、映画『ゴジラVSビオランテ』(89年・東宝)に登場したバイオ怪獣ビオランテの触手を彷彿とさせる捕食植物にユウコが襲われるのがのちの伏線となっているのだが、これについては後述する。


 前作でゴジラ討伐作戦に同胞たちを巻きこむこととなったハルオだが、ゴジラを倒したとは云え多くの犠牲者を出したことを悔(く)いたり、代わって現れた超巨大ゴジラを本当に倒すことができるのか? と悩んだりと、前作では決して見せなかった面が今回は描かれる。
 前作と比べると出番はかなり少ないが、母星を怪獣に滅ぼされて地球に来訪した宗教国家の種族・エクシフのメトフィエスが隊員たちの心を癒(いや)す集会にハルオがフラリと現れ、メトフィエスが「めずらしいね」とつぶやく場面が、まさに象徴的に機能しているのだ。
 ゴジラに復讐(ふくしゅう)の炎を燃やす一方だったハズが、いつしか救いを求めるようになっていたハルオに、ユウコは「どこまでも先輩についていきます」とハルオを励(はげ)ますのみならず、自分の方からハルオにディープキスをかましてしまう!
 ミアナとマイナの姉妹が地球連合の動きを監視しているのを承知のうえで、ユウコはミアナに見せつけるために強硬な手段に出たとしか思えない(笑)。おそらくフツア族にはないであろう習慣を物陰から目撃していたミアナが、案の定、ビクっ! とした動きを見せるのがまたカワイイ(爆)。


 さらに、ユウコはおそるべき変化を見せる。
 ゴジラ打倒のためにビルサルドは部隊全員がナノメタルと同化し、メカゴジラシティの一部となるべきだと主張する。ハルオをはじめ人類は猛反発するが、ユウコはビルサルドの主張に同調してしまうのだ!
 原始時代のような生活を営むフツア族を、科学の最先端をいくビルサルドが露骨に見下す描写が何度もあるのだが――フツア族が矢じりやナイフにナノメタルを使用するのを見たことから、ビルサルドが近辺にかつての基地があることを確信するのも良い伏線となっている――、ユウコもまた、ミアナに対する個人的な反発に端を発するかたちで、フツア族を蔑視(べっし)するビルサルドに同意しているかのように見受けられるのだ。
 どちらかと云えば、端正な顔つきをしたメインヒロインであるにもかかわらず、ここまでイヤ〜ンな女(笑)を極めてしまうユウコは、脚本の虚淵玄(うろぶち・げん)がメインライターを務めた『仮面ライダー鎧武(ガイム)』(13年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20140303/p1)に登場した湊燿子(みなと・ようこ)=仮面ライダーマリカを個人的にはどことなく彷彿としてしまうのだが、この10年間勢いがとまらない、ユウコ役の花澤香菜(はなざわ・かな)の演技には要注目だ。「また花澤かよ」などと云ってる場合ではない。個人的に花澤のカエル顔は好みだし(爆)。


 ゴジラを倒すにはゴジラを超える存在にならねばならず、そのためには肉体も感情も不要だと主張するビルサルド。人間であることを捨ててゴジラに勝っても価値はないと主張するハルオ。激情に突き動かされるままに、ヴァルチャー搭乗を決意するユウコ。フツア族やメカゴジラシティとの出会いを機に、主要キャラが心の変遷をとげ、立ち位置をシャッフルさせていく展開は、『鎧武』のみならず、まさに「平成」仮面ライダー最大の魅力である群像劇を彷彿とさせる!


 そして迎える衝撃の結末……


 「感情を持つことが人類の最大の弱点」(大意)なるビルサルドの主張がクライマックスで最大の説得力をもって響くこととなり、ユウコはゴジラ攻撃の中で絶体絶命の危機に陥(おちい)り、ユウコを救いたいがために感情を捨てられなかったハルオは、最大の目的だったハズのゴジラ打倒が困難となってしまう……
 ゴジラに復讐の炎を燃やしていたにもかかわらず、前作ではハルオがその感情を終始押し殺していたのは、まさに確信犯的な演出だったと云うよりほかにない。
 それにしても、自身の目的を果たすために周囲の人間を巻きこんできた本来は「巻きこみ型」の主人公が、いつしか周囲に翻弄(ほんろう)されてしまう「巻きこまれ型」のキャラに転じてしまうとは!?


 80年代以降のジャンル作品では、地球の存亡をかけた大人たちの陰謀(いんぼう)に巻きこまれてしまう『仮面ライダー鎧武』の若者たちをはじめ、「平成」、いや、「昭和」の仮面ライダーの主人公たちも、圧倒的に「巻きこまれ型」が多くなっている。本稿執筆時点で放映中の『仮面ライダービルド』(17年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20180513/p1)もまたしかりだ。
 アイドルグループやバンドを結成したいがために周囲の生徒たちを巻きこんでしまう美少女アイドルアニメ『ラブライブ!』(13年〜・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20160330/p1)や美少女バンドアニメ『BanG Dream(バンドリ)!』(17年〜・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190915/p1)の女子高生主人公のような「巻きこみ型」は、特撮ジャンルにおいては「この学校の全員と友達になる男だ!」として、仮面ライダー部を結成したヤンキー高校生・如月弦太朗(きさらぎ・げんたろう)を主人公にした『仮面ライダーフォーゼ』(11年)が希有(けう)な例ではなかろうか?


 その意味では、今回ハルオが「巻きこまれ型」へと転じたのは、2018年11月公開予定の最終作『GODZILLA 星を喰(く)う者』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20181123/p1)で、ハルオがついに超巨大ゴジラを倒す真のヒーローへと至る成長過程として描かれたのかと見るべきかもしれない。
 そして、「平成」仮面ライダーが、登場キャラを一面ばかりではなく、常に多面的に描いているように、ハルオもまた決して一枚岩ではいかない存在として描くことで、観客の感情移入を増幅させる効果を発揮しているのだ。


 従来のゴジラ映画の常として、肝心の主役であるハズのゴジラが、なかなか出てこないという不満があったものだ。
 だが、ハルオの苦悩、ユウコの激情、ビルサルドの合理主義、エクシフの心の救済といった、それまで描かれてきた知的生命体の営みをあざ笑うかのように、超巨大ゴジラがクライマックスでのみ、破壊の限りを尽くすさまが存分に描かれるからこそ、怪獣王ゴジラとしての尊厳が保たれるのではないのか? と思えたほど、今回の群像劇は実に魅力的に描かれており、「平成」ライダーを彷彿とさせる作風は、今後の展望を考えるならば正しいのではなかろうか?
 筆者は静岡県静岡市のシネシティザートで公開2週目の土曜日のレイトショーを鑑賞したが、観客は20〜30代の若い層が圧倒的であり、ハルオ役の宮野真守(みやの・まもる)、メトフィエス役の櫻井孝宏(さくらい・たかひろ)ら、声優目当てとおぼしき女性客の姿もかなり見られたものだ。
 ハリウッド版『GODZILLA』(14年・東宝)の観客層が「メインは50代の方だった」ことから――筆者が観た劇場でもそうだった(爆)――、若い層を獲得するためにアニメ版のゴジラを構想した東宝の戦略は、結果的に正しかったことが実証されたと云っても過言ではないだろう。
 まぁ、だからと云って、筆者を含めた中高年の観客が皆無(かいむ)に近くなるほどまでに(汗)、切り捨ててもよいのか? という問題もあるのだが、つづく最終作『GODZILLA 星を喰う者』には、モスラメカゴジラと来たら、古い世代にはたまらないハズのアイツが、ついに帰ってきますよ! そう、サイボーグ怪獣ガイガンです、って違う!(笑)


2018.5.27.
(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2018年初夏号』(18年6月17日発行)〜『仮面特攻隊2019年号』(18年12月29日発行)所収『GODZILLA 決戦機動増殖都市』評3〜5より抜粋)


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アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』

(2018年4月27日(金)・日本封切)

アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』 〜合評1

(文・くらげ)
(2018年6月15日脱稿)


 『アベンジャーズ(2012)』第3作にしていよいよ最強の敵“サノス”の登場です。やはり強敵が出ないとヒーローものっぽくないですよね。監督はシリーズ常連のアンソニー&ジョーのルッソ兄弟。かなり詰め込み気味の内容ですが、2時間半の長丁場をまったく飽きさせずに見せます。あらすじを紹介するだけでも一苦労ですが最後までお付き合い下さい。登場キャラも多すぎるのでキャスト名は割愛です。自分で調べて下さい(笑)。


 さて考えてみるとこれまでアベンジャーズに登場のヴィラン(悪役)はチタウリとかウルトロンとか、数ばかり多くてヒーロー総出で戦うには地味な敵でした。ヒーローを活躍させるにはひとり強力な悪役を出すのが手っ取り早いですが、どうしても話が安易になります。
 悪のラスボスがいてそいつさえ倒せば万事解決という物語はビンラディンあたりで終わって、さすがに能天気なアメリカ人にも通用しなくなってるんですね。でも今はアメリカ大統領が悪のラスボスですけどね(笑)。


 そんな時代に登場するサノスは古き良きというか、人格と目的を持つ悪役らしい悪役です。原作ではメジャーなヴィランも、知らない人が見ればプロレスラーみたいなオッサンで、こんな青白いハゲ親父がアベンジャーズのラスボス? とガッカリする人も多いでしょう。彼の目的は「宇宙の生命の半分を消滅させる」ことで、そのために宇宙に6つある“インフィニティ・ストーン”を集めています。
 唐突な新アイテム登場がネタに詰まった漫画のテコ入れみたいですが、すでに6つのうち5つは過去作のパワーアイテムとして登場してるんですね。『マイティ・ソー(2011)』の弟神ロキの杖とか、アベンジャーズの一員ヴィジョンの額の宝石とか。1つ1つがすでに強力なアイテムですが、6つ集めると指一つ鳴らすだけで宇宙を終わらせることができます。てっきり比喩的な表現と思えばそうじゃなかったことが分かるんですが。


 今回の物語は宇宙から始まります。『マイティ・ソー バトルロイヤル(2017)』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20171116/p1)からの続きですが、アスガルドから地球へ向かう宇宙船にソーとロキとハルクが乗っていてソーは何故か片目です。『バトルロイヤル』を観なかった自分には何のことやら分かりません。この宇宙船がサノスの襲撃を受けます。サノスはソーやハルクさえパワーで軽く圧倒し“四次元キューブ”に形を変えた【スペース・ストーン】を奪います。
 サノスの左手のガントレットにはすでに【パワー・ストーン】が嵌められていて、これは『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー(2014)』に登場したザンダー星が滅ぼされたことを意味します。ハルクは間一髪地球へと転送されるんですが、ロキは奇策及ばずサノスに殺されます。
 ロキには死んだと見せかけて生き返った前科があるのでみんないまいち本気にしません。「でも今度はダメなんじゃないの?」なんてやり取りが笑います。地球に転送されたハルクは、ドクターストレンジの下にたどり着き、協力を仰ぎます。


 いっぽう地球ではアイアンマンとペッパーがデートを楽しむ平和な日々です。『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ(2016)』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20160701/p1)の内紛でアベンジャーズは解散状態で、アイアンマンとキャプテンアメリカに至っては口も聞かない状態が続いています。
 そんなアイアンマンのもとにハルクとストレンジが現れ、地球に危機が迫っていることを警告します。間もなくニューヨークに現れるのがサノスの部下のエボニー・マウで、ドクターストレンジの首飾りに埋め込まれた“アガモットの目”こと【タイム・ストーン】を奪いに来ます。
 これにストレンジおよびアイアンマン&スパイダーマンの師弟コンビが立ち向かうわけですが(ハルクは変身できなくて見物だけ)このエボニー・マウが絵に描いたような参謀キャラで「愚かな地球人よ。サノス様に勝てると思うのか?」みたいな感じがいいです。
 頭脳派っぽい癖にやたら強くて、指一本動かさずニューヨークを破壊していきます。普通の映画ならこの戦闘だけでクライマックスですよ。ストレンジの首飾りには呪文がかかっていて外せないと分かったエボニー・マウは首飾りごとストレンジを拉致し、アイアンマン&スパイダーマンはストレンジを追って宇宙船に潜入し、サノスの故郷、惑星タイタンへと向かうことになります。


 舞台が宇宙ということで主役級の活躍を見せるのが“ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー”の面々で、同じマーベル出身ながらなかなかアベンジャーズの一員と思えないメンバーですが、サノスとの因縁が物語で重要な意味を持つことになります。ガモーラとネビュラが実はサノスの娘とか、ドラックスがタイタン人に家族を殺されたとか、ちょっとした裏設定と思えばおもいっきり伏線だったんですね。
 まあ『ガーディアンズ…』は宇宙の果ての物語にスターロード一人が地球人なのが面白かったんですが、アベンジャーズと共闘したことで一気にレア感が薄れます。彼らは宇宙を漂流中のソーを助けたことでインフィニティ・ストーンの争奪戦に巻き込まれていきます。


 ソーは武器であるムジョルニアを失っていて(これもバトルロイヤルの中の事件らしい)新しい武器が必要と考えたソーは、ガーディアンズのロケットとグルートをお供に武器作りの達人、ドワーフのエイトリの住む惑星ニダベリアへと赴きます。
 エイトリは小人役者のピーター・ディンクレッジが演じますが、小人なのに身長10メートルくらいの巨人なので小さいのか大きいのか分かりません。サノスはインフィニティ・ストーンを嵌め込むガントレットをエイトリに作らせたんですが、エイトリだけを残して他のドワーフは殺してしまったんですね。ソーは失意のエイトリにサノスへの復讐を誓い、新たな武器である石斧“ストームブレイカー”を完成させます。


 この間にも【リアリティ・ストーン】を巡ってガーディアンズとサノスが惑星ノーウェアで鉢合わせしたり、エボニー・マウが宇宙船から放り出されたり、サノスがネビュラを拷問したり、【ソウル・ストーン】を探しにサノスとガモーラが惑星ヴォーミアに行ったり色々あるんですが(そろそろ面倒くさくなってきた)、クライマックスはアベンジャーズが地球チームと宇宙チームに分かれてサノス軍と激闘を繰り広げることになります。


 地球で戦場になるのは『ブラックパンサー(2018)』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20180607/p1)のティ・チャラ国王が治めるワカンダ国で、アイアンマン2号のウォーマシンが黒人ヒーローのネットワークを使って(かどうか分かりませんが)ワカンダ国王テイ・チャラ=ブラックパンサーの協力を仰ぎます。開国早々自国を戦場にされるのも迷惑な話ですが、テイ・チャラは快諾します。ワカンダで生きていたウインターソルジャーことバッキー・バーンズもアベンジャーズに復帰し、キャプテンアメリカとの旧交を温めます。
 そこへサノスの大軍勢が現れ、地球に残ったインフィニティ・ストーンを巡る激しい戦闘が始まります。今回ハルクは冒頭でサノスにのされたのがよほど応えたらしく後半はまったく変身できません。そこでスターク社から改良版の「ハルクバスター(巨大アイアンマン)」を借りて変身前のブルース・バナー博士のままで戦います。ハルクバスターで戦うハルクはシュールで面白いんですが、最後はハルクバスターをぶち破ってハルク復活! という場面が見たかったですね。ソーも新兵器ストームブレイカーを携えてワカンダの地に駆けつけます。


 同じ頃惑星タイタンではアイアンマン、スパイダーマン、ストレンジ、スターロードがサノスを相手に凄まじい戦いを繰り広げています。すでにインフィニティ・ストーンを4つ持ったサノスのパワーは強力で、タイタンの月を瞬時に砕いて無数の隕石を降らせるとかとんでもない攻撃をして来ます。
 アイアンマンとスパイダーマンのスーツはナノテクで瞬時に装着したり自己修復したりができるようになったんですが、何かありがたみが薄れましたね。産業用ロボットでガチャガチャ部品をくっつけていくアイアンマンのリアリティが好きだったんですが。
 ナノテク仕様の新規スパイダースーツは背中から6本の触手が出て自由自在に動くのが目玉ですが、ヒーローというより悪役っぽくて、ライミ版『スパイダーマン2(2004)』のドクター・オクトパスみたいでした。
 健闘空しくサノスにナノテクスーツを破壊され、いまにも殺されようとするアイアンマンの助命と引き換えに、ストレンジは【タイム・ストーン】を渡してしまいます。『ドクター・ストレンジ(2016・日本公開2017)』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20170504/p1)を観た人なら“アガモットの目”と呼ばれた【タイム・ストーン】がどれほど強力なアイテムか知ってると思いますが、あれがサノスの手に渡るわけです。


 5つのインフィニティ・ストーンを手に入れたサノスにとって数万光年の宇宙を越えるなど造作もありません。あっという間に地球へとワープしたサノスは最後の1個【マインド・ストーン】を持つヴィジョンに迫ります。これを奪われたら今度こそ最後とアベンジャーズのメンバーがサノスを止めようと立ちふさがりますが、すでに5個のストーンを持つサノスの敵ではなく、一人ずつ殴り倒されて行きます。
 勝ち目はないと悟ったヴィジョンはスカーレットウィッチに命の源である【マインド・ストーン】を破壊させ、ヴィジョンは死にますが、サノスは【タイム・ストーン】で時間を巻き戻し、何事もなかったようにヴィジョンを生き返らせると、額の【マインド・ストーン】をもぎ取ります。
 ヴィジョンは二度殺されます。悲劇を悲しむ暇もなく、6つのストーンをガントレットに収めたサノスが指をパチンと鳴らした後で何が起こるかは自分の目で確かめて下さい。色んなヒーローものがありますが、これだけバッドエンドに終わる作品は少ないでしょう。


 とはいえ、この映画の主役は最初からサノスなんですね。『インフィニティ・ウォー』はアベンジャーズにとってはバッドエンドでも、さまざまな障害を乗り越えて6つの宝を集めるサノスの旅が成就する物語であるわけです。
 そもそもどうしてサノスが生命の数を半分にしようと思ったか。力を誇示する暴虐なら皆殺しでいいわけですが、サノスは半分にこだわります。サノスはこれまでも色んな惑星で知的生命体を半分に間引くということをやっていて、それが滅びゆく惑星を回復させると確信を得ています。
 まずその星の住民を種族や身分に関係なく二つの集団に分け、そのうちの一つを皆殺しにする。例外を設けずランダムに半数を消滅させるわけで、特定の種族を根絶やしにする地球流のジェノサイドとは違うわけです。何にせよバランスを保つために半分殺すなんて許されるはずもなく、だからこそサノスは悪役なわけですけど。


 宇宙のバランスを望んでもサノス一人の力では限界がある。そこで万能の願望機たるインフィニティ・ストーンに目を付けるわけです。人気アニメ『Fate/Zero(2011)』の衛宮切嗣ですよ。天秤の重い方を残して半分ずつ減らしていくという。サノスも昔は純粋だったんでしょうね。「僕はね、正義の味方になりたかったんだ」って。インフィニティ・ストーンは実際に願いを叶えるので聖杯よりも良心的です(笑)。
 この映画がアベンジャーズでなく、美しい空を見上げる満足げな表情のサノスで終わるのは、生命の数が半分になり宇宙のバランスが回復された暗示なんでしょう。「人間の数が半分になったら いくつの森が焼かれずにすむだろうか」(これは違う漫画のセリフ)。
 ヒーロー側から見れば後味の悪い物語が、悪役の視点で捉えるとまた違った物に見えます。


 徒党を組んでイヤイヤ地球を守るアベンジャーズのモチベーションは、宇宙全体を視野に入れるサノスに最初から負けています。最大の難関【ソウル・ストーン】を手にするため「愛する者を代償にせよ」との試練を与えられ、葛藤の末に愛娘を手にかけるサノスなんてほとんどギリシャ悲劇で、悲しみを乗り越えて力を手にする神話的なドラマが、ヒーローでなく悪の側に用意されることでも主役がサノスの側であることは明らかです。
 考えてみるとインフィニティ・ストーンが発動すればサノスの部下も半分は消滅なわけで、それを承知の上でサノスに従う部下たちも宇宙のバランスを考える立派な人たちなのかも。
 ちなみにサノスの演者というかCGの素材になってるのがジョシュ・ブローリンで、2018年6月現在公開中の『X-MEN』シリーズの一篇『デッドプール2(2018)』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20180625/p1)でも“ケーブル”役をやってます。同じマーベルのアベンジャーズX-MENのかけもちで敵役やってるわけで、ごっちゃにならないか心配です。


 しかしアベンジャーズの中でも比較的良心的なメンバーが消滅し、もめ事の種ばかり生き残るのは、つまりは世の中そういうものってことでしょうか。生き残ると予想された新規参入組が全滅し、マーベル参入直後のスパイディまで消滅とは。トビー・マグワイヤ版もアンドリュー・ガーフィールド版も打ち切られ、ようやくマーベルに帰還すればあっさり消滅と、スパイディの受難は続きます。
 スパイダーマンの有名悪役を主役に据える公開を控えた映画『ヴェノム(2018)』は主役不在のヴィランになるんでしょうか。普通に考えれば『ドクター・ストレンジ2』も『ブラックパンサー2』もできないわけですが、ディズニーが大ヒットとなったブラックパンサーを手離すとも思えませんしね。来年の『アベンジャーズ4』はインフィニティ・ストーンをサノスから取り返して、消滅したメンバーを蘇らせる『ドラゴンボール』な展開になるんでしょうか。


 ちなみにいつものようにエンドロール後にオマケがありまして、いつものあの人が「マザファッカ」を半分しか言えずに消滅するんですが、この時に現れるエンブレムが“キャプテン・マーベル”のものだそうです。壊滅状態のアベンジャーズがどうやって立ち直るのか、次作での展開に期待しましょう。


(了)


超大作だが、出来が悪いと私見。もはやブランド・権威ゆえ、思考停止で高評価・深読みされてやしないか!?

(文・T.SATO)
(2018年6月16日脱稿)


 アメコミ洋画としては大ヒットを記録した本作。しかし、本作をスキな方々には申し訳ないけど、個人的にはツマラなかった(汗)。
 毎春の仮面ライダースーパー戦隊が共闘する『スーパーヒーロー大戦』映画の出来が悪い部類を観たあとのような感慨を個人的にはいだいた。


 絵的にチャチなところはもちろんナイ。しかし、AとBが戦う! CとDの気が合う同士が共闘! EとFの仲が悪い同士も共闘! というようなことは本作でも一応はやっていたかもしれないが、そのへんの楽しさがまずはあまり盛り上がってはいなかったように私見する。
 最終的には本作の宇宙から来た強敵に歴代ヒーローたちが敗退していくにしても、そこに至る過程では歴代ヒーローたちも充分に強いんだゾ! カッコいいんだゾ! 善戦したのだゾ! というところを見せてくれないと。


 いやまぁ2時間半の尺があっても、あまりに膨大なキャラを描くためには尺が足りなかっただろうけど、アリがちでも敵の先兵や戦闘員を設定して、まずはそれらを蹴散らすことで、ヒーローたちの壮快な強さ・カッコよさ・頼もしさ・いかにもな人となりを現わすセリフなどを補充するようなことは必要じゃネ? ラスボスの強さを描いたり、ヒーローの苦戦や敗退を描くのは、そのような助走台があった上であるべきでは?
 あと敗退するにしても、一部ヒーローたちにはもっと一矢は報いたみたいな変化球も必要だったのでは? なにか予定調和でヒーローが次々と負けていったり、消えていったようにも思えて……。
 ヒーローたちの半数が消滅してしまって、来年の「『アベンジャーズ4』につづく!」となるラストも、このあとドーなる!? というような圧倒的な絶望感・焦燥感はなく、あまりに淡々としていやしまいか?(汗)
 ちょっとしたアクション演出に挟まれるべき人間描写、会心の一撃が決まった際の余裕の笑みや、ワザが効かなかったり劣勢になった際の焦りの表情の切り取りとか、そーした細部の短い描写の欠如ゆえに、戦闘シーンも物語もメリハリが欠如して観えてしまうのか?


 『アベンジャーズ』初作(12年)ラストでもすでに登場していて、ついに登板した本作のラスボスは、CGでボリュームアップされたキン肉モリモリのマッチョな長身大男であり、いかにも強そうでワルそうではある――先のDC社のアメコミヒーロー大集合映画『ジャスティス・リーグ』(17年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20171125/p1)の宇宙から来たラスボスのマッチョな長身大男と、その悪事に吉川英治の戦前の時代小説『鳴門秘帖』(1927年)などにはじまるアイテム争奪戦をカラめたあたりも、イメージがまるカブりだけど――。
 ただし、単なる悪ではなく往年の8号ライダー・スカイライダーこと『仮面ライダー(新)』(79年)のネオショッカーのごとく、全宇宙の知的生命体を半数に減らすことを目的としているあたりで、即物的で粗暴な問答無用の悪党ではなくなってしまう。
 あげく、日本のヒーロー特撮で云うなら、異形の脚本家・井上敏樹パターンで、世界規模の戦いなのに敵も味方も因縁や旧知があったりして、本作で云うなら宇宙人種族でもあるラスボスの大男は、おバカなアメコミ宇宙人ヒーロー集団『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』(14年)の顔面緑塗りのメインヒロインや、その映画第2作『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』(17年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20170513/p1)では敵対して殺し合った青塗りの妹とは、原典通りではあるのだろうけど、親子関係でもあるという!
 いやまぁ「父殺し」や「兄弟殺し」は、聖書やギリシャ神話の時代からの普遍の物語構造ともいえるけど、少し世間が狭い感じもするなぁ。


 単純比較はしちゃイケナイかもしれないけど、直前に放たれた大傑作『ブラックパンサー』(18年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20180607/p1)や、『マイティ・ソー バトルロイヤル』(17年)・『スパイダーマン:ホームカミング』(17年)(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20170901/p1)・『ドクター・ストレンジ』(16年・日本公開17年)などの、人間ドラマ部分での情緒・激情がラストバトルにもそのままなだれこむことで感情的にも盛り上がる作りの、娯楽活劇としては理想型の快作群の作劇と比すれば、本作は劣っているとも私見
 石を投げられる覚悟で云えば、世評は低いようである(汗)DC社のアメコミヒーロー大集合映画『ジャスティス・リーグ』の少々小粒良品でもまとまってはいた作りの方を、筆者個人は高く評価する。
 このテのオールスター映画では、「ていねいな人間ドラマの積み重ね」などは不要。メインキャラを立てるために最後は敗退するにしても、それまでの展開で各々のキャラにオイシいところや「らしい」ところを印象的に気持ちよく見せる「点描」の羅列を主眼にした作劇にすべきだとも思う。


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2018年初夏号』(18年6月17日発行)〜『仮面特攻隊2019年号』(18年12月29日発行)所収『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』合評1・2より抜粋)


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