(ファミリー劇場『ザ★ウルトラマン』放映開始記念「全話評」連動連載開始!)
『ウルトラマン80 宇宙大戦争』 ~マンガ版最終章は連続活劇! TVでも観たかったウルトラ兄弟vsバルタン軍団総力戦!
『ウルトラマン80』#45「バルタン星人の限りなきチャレンジ魂」 ~俗っぽい侵略の超合理性!
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『ザ・ウルトラマン』第8話「ヒカリ隊員の秘密が盗まれた!?」 〜バルタン星人登場!
宇宙忍者バルタン星人登場
(サブタイトル表記の他、モンスター怪獣ミコノス登場)
(作・荒木芳久 演出・安濃高志)
(視聴率:関東12.3% 中部13.5% 関西9.5%。
以上、ビデオリサーチ。以下、ニールセン 関東14.2%)
(文・内山和正)
(1997年執筆)
ナゾのUFO出現により戦闘機でスクランブル発進して山間部まで追跡した主人公・科学警備隊のヒカリ隊員は、UFOが岩山に開けた大きな穴から出現した怪獣ミコノスに襲われ、ウルトラマンに変身して戦って勝利する。その光景を撮影しているナゾの男。彼はテレビ局にウルトラマンの戦いの映像を売り込み、ウルトラマンの秘密が写されていると告げる。焦(あせ)ったウルトラマンことヒカリ隊員はナゾの男を追うが……
(以上、ストーリー)
バルタン星人の登場は予告編やサブタイトルで視聴前に判っている。もっと言うなら、本作放映開始前から本作『ザ・ウルトラマン』にバルタン星人が登場予定であることも、当時は隔月刊だったSF洋画中心の月刊マニア雑誌『スターログ(日本版)』(78~87年)などでも本作の第1クール分の各話の情報とともにすでに告知されてきた。よって、このナゾの男の正体がバルタン星人であることも、ヒカリ隊員をおびきだすつもりであることも容易に察しがつく。
しかし、『ウルトラセブン』(67年)39〜40話「セブン暗殺計画(前後編)」の分身宇宙人ガッツ星人が豪力怪獣アロンを使って行なったように、あるいは『帰ってきたウルトラマン』(71年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20230402/p1)37話「ウルトラマン夕陽(ゆうひ)に死す」の暗殺宇宙人ナックル星人が再生ベムスターや再生シーゴラスを使って行なったように、ウルトラマンジョーニアスの戦力を分析するために怪獣ミコノスを使役したのかと思ったら、単におびきだしフィルムを作るためだけだったので実にもったいない。ある意味でアロンよりも可哀想な怪獣といえるかもしれない。まあ、どっちも可哀想か?
科学警備隊のマスコットロボット・ピグでさえ探知できなかったために、ヒカリ隊員のUFO目撃が隊員たちにも信じられないというあたりは、直前のピグ主役編であった7話「攻撃指令 目標はピグ!!」(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20090613/p1)でも最新型ロボットではなくても実はピグの総合的な能力が探知能力や判断能力も含めて極めて優秀であったとして描かれていただけに、より事の重大さを感じさせるのだ。脚本家がそれを意識して執筆していたかはともかく。おそらく近い話数なので前回のストーリーを知らずに執筆しているのだろうが、結果的にエピソードの配列的にも説得力が増しているのだ。
おびきだしの方法が「マスコミを利用してウルトラマンの正体を公表してしまうのではないか!?」とヒカリ隊員の不安を煽るものであるあたりも「精神攻撃」としては巧妙だ。フィルムはテレビ局で試写される。そこに科学警備隊の面々も同席することになるあたりもリアルだ。そして、そのフィルムには結局、ウルトラマンの秘密を示唆するものがなかったことで、「肩透かし」と「安堵」を同時に描写し、そして次のストーリー展開へと気を持たせるあたりもウマい。
・本作の世界観では、日本のみならず、描かれてはいなくても世界各地で怪獣が出現していること
・世間の人々にウルトラマンの真剣な戦いを興味本意で軽々には見てはほしくないという科学警備隊の心情
・科学警備警備隊の隊員目当ての罠なのでは? と推測して、ウルトラマンと怪獣ミコノスの戦いの場所であった山岳地帯の調査や、ふつうの人間が撮影できる場所ではないために登山者の調査を部下に命じるアキヤマキャップ(隊長)の有能な指揮者ぶり
そういったディティールがわりと細かく描かれているのも良いのだ。調査の結果に説明不足の部分もあるのは残念だが。
果たして、ナゾの男を科学警備隊の専用車で山間部まで追跡したヒカリ隊員は、ナゾの洋館に閉じこめられてしまう。しかも、その洋館の中ではウルトラマンに変身できなかった!
バルタン星人が採取した様々なエネルギーを使って仕掛けをこらした洋館でヒカリ隊員を殺そうとするあたりの描写は、洋室の鹿の首の剥製の絵がリアルタッチであったりして推理ミステリもの的な不気味さを感じさせる。
ヒカリのピンチを隊員たちが救う。それも電気エネルギーの盗難情報を基に洋館の場所を特定して、そして洋館を操作している超科学的な装置を破壊したことで、ヒカリは脱出に成功! 科学警備隊の隊員たちにも勝機につながる有能な活躍を与えているあたりもよい。
そのあとで、彼らは巨大化したバルタン星人に、初代バルタン星人も使った両腕の巨大なハサミ状の開口部から発するストップ光線で動きを止められて失神してしまう。それを見て、ヒカリはウルトラマンに変身して一人だけで戦う。本話のアニメ版バルタン星人はその両腕のみならず、両足も巨大なハサミ状の形状をしていることが特徴だ。激闘の末にウルトラマンはバルタン星人を必殺技・プラニウム光線で倒した。
防衛隊の隊員たちの活躍を一度は描くも、やむをえず敵宇宙人の特殊能力で失神。その機も活かしてウルトラマンが心置きなく変身して活躍。正体を隠したスーパーヒーローと変身前の彼が所属する防衛軍の関係の諸相を描いている、隊員とヒーロー双方の活躍を同時に描いてみせなければならない必要性があるヒーロー活劇における、あまたある理想の作劇パターンのうちのひとつといえるかもしれない。
バルタン星人のあの特徴的な鳴き声が、録音スタジオが実写作品とは異なる関係で使われていないあたりが、この時代のラフな製作体制の限界である。バルタン星人を演じる声優による笑い声の演技で済まされているのだ。幼児はともかく児童であれば、当時は旧作の再放送もひんぱんにあったので、あの印象的なバルタン星人の鳴き声が使用されていないことで、微妙に違和感を抱いて残念に思ってしまった御仁もいたかもしれない。
そこで手を抜かずに、せめて円谷プロ側からオリジナルの鳴き声の音声のダビング・テープを提供すべきだったとは思うのだ。(編註:関東地方では本作放映の前年1978年夏~秋にかけても、平日夕方18時の帯番組枠でバルタン星人が幾度か登場する初代『ウルトラマン』(66年)が再放送されたばかりだったのだ)
ちなみに、本話のバルタン星人の声を演じたのは、名作テレビアニメ『科学忍者隊ガッチャマン』(72年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200119/p1)のレギュラー敵幹部であるベルク・カッツェ役の神経質な甲高い声が印象に残ることで有名なベテラン声優・寺島幹夫(てらしま・みきお)だった。
ラストシーンでの隊員たちの談笑で、作品としては禁忌・タブーであるハズのウルトラマンの正体談義となって、ヒカリ隊員にも話題がふられる。ヒカリはもちろん苦笑、沈黙してごまかすしかない。本話が意図していたことではないのだが、『ザ・ウルトラマン』という作品は第15話「君がウルトラマンだ」(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20090808/p1)で、ヒカリ隊員がウルトラマンと合体していることで、ウルトラマンが活躍中にはヒカリ隊員が戦場でいなくなってしまうことで起きるディスコミュニケーション劇と、それでも腐らず開き直ったりもせずに正体を隠したままで誤解をされ続けることでも気高く淡々とあることを賞揚していくようになっていく。同話が契機となって、このテーマはシリーズ後半でも時折り反復されつつ、最終章4部作(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100418/p1)では見事な決着を迎えることになるのだ。
本話のラストシーンをその萌芽だとして見ることも可能なのだろう。
※:製作No.9『恐怖の人食い家』
シナリオでは、ミコノスの別名は「おとり怪獣」名義。
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http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19971117/p1
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