(文・J・SATAKE)
白と黒の激突!
舞台はモラルと価値観が崩壊した2011年のネオ歌舞伎町。装着すると異常な興奮状態と力を得られるコンタクトレンズ・スカルアイ。
そんなドラッグがはびこり様々な欲望が渦巻く街で、ホストを生業(なりわい)にする主人公・獅子丸(波岡 一喜)。生来の性格からか、風の吹くまま気の向くままの生活で店での成績もさっぱりだ。
当然のごとく借金を抱えた彼に豪山興業のジュニア(遠藤 憲一)からお呼びがかかる。スカルアイをつけて街を暴れる集団・スワンキーズが、ジュニアが世話をしたホストを襲ったのだ。スカルアイを流しているのはジュニアの父・豪山(石橋 蓮司)なのだが、身内が痛め付けられては黙っておられず、借金三か月分の棒引きで獅子丸に囮役を務めろというのだ。
同伴出勤を装うため同じく借金のあるナイスバディのキャバクラ嬢・サオリ(小林 恵美)や、豪山お抱えの用心棒・錠之介(大田 恭臣)がつくと聞いて安請合いする獅子丸だが、実は見殺しにして保険で返済させようという『厄介払い』だったのだ。
指図されるままアジトへと向かう獅子丸ら。錠之介は出番になっても現われず、スワンキーズに容赦なく襲われる二人。その時現われたのは、以前街で顔を合わせたことのあるホームレス風の男=果心居士(かしんこじ)(大久保 鷹)だった。彼は獅子丸に小刀を渡し鞘を抜けという。
言われるままに従うと激しい光と風が巻き起り、獅子丸は獣人『ライオン丸』へと変身した!
TVドラマ『ケイゾク』(99)や『TRICK(トリック)』(00)で注目された製作会社・オフィスクレッシェンドが特撮ヒーローを扱うということで、様々な小ネタを交え笑わせながらも物語を進めていく独特のスタイルはそのままに、新しい『ライオン丸』を創り出しています。
私は世代人でも本家『快傑ライオン丸』(72)は正直なところ鮮明に覚えていないです。なので比較するかたちではなく、今作の感想を書きます。
まずは特異なキャラたちから。
獅子丸を贔屓にしている二人の客(ブスかわいい? で評判の女性お笑いコンビ・ハリセンボン)と店長の蘭丸との、アドリブなのか緻密な計算なのか微妙な掛け合いであるとか、サオリの妹でタウン誌・ネオ歌舞伎町マガジン(人気&ダメホストランキングから街の怪情報まで扱う話題の雑誌らしい)のライターも務めるペンネーム・コスK(小田 あさ美)の通う定時制校の教師が、某ミュージシャン(ヤボな編註:尾崎豊です・笑)に心酔していて全てを彼に結びつけた授業しかしないなど(他にもサオリらの行きつけの店のマスター役がひかる 一平なので『スナックZ』。これは生徒役で出演した『三年B組金八先生2』(80)でのバイト先からいただいたようです。細かいっ!)、とにかく『ヘンなキャラ』が目白押しなのですが、一番の注目はジュニアです(この名前、以前遠藤氏が怪演した『忍者戦隊カクレンジャー』(94)の敵幹部・貴公子ジュニアから拝借したのでは? キャスティング・ネーミング共にスタッフのお遊び満載です)。
父である豪山に認められたいがため、理想の姿を求めて衣装を替えて毎回登場。その職業になりきろうとするため(大工に寿司職人、マッサージ師、さらにはSMの女王様、メイド喫茶のウエイトレスまで!)組員や獅子丸たちが迷惑を被る(錠之介の嫌悪感たっぷりの冷たい視線も笑いを誘ってしまいます)。
サオリ役の小林 恵美は小池 栄子やMEGUMIなどを輩出したイエローキャブの現役グラビアアイドルですが(コスK役の小田 あさ美と共にタイアップコミック誌にグラビア出演もしてますね)その彼女を差し置いて『男のコスプレ』がお楽しみのひとつになっています。
(いや勿論深夜枠ですから、彼女にもそれなりのサービスカットがあって期待を裏切らないようになってます)
そんな横道がありつつも、普通の人が獣の姿となり大きな力を得た時に迷い、悩む様を硬軟織り交ぜて描いています。誰でもあんな状況になったら怖くて逃げるのが当然だし、世界を救ってくれと言われても勘弁してよと拒否しても仕方ないでしょう。
確かに獅子丸の職業がホストというオタク族と全く対極にある人種であり(錠之介と同じく『なんでこんな奴が』と思っている本家のファンは多いでしょうね)そのイメージは特撮ヒーローとは結び付き難いですが、波岡氏のやわらかーい演技と実はダメホストで小心者、でも心の奥にはちょっぴり正義感も持っているその姿は正直で許せてしまいます。
アクションシーンは生のものを中心にして時にコミカル、時にケレン味たっぷりとなっていて飽きさせません(スワンキーズが野球チームなのでスライディングでアタックするとブリッジでかわすライオン丸! 刀で斬り結ぶライオン丸とタイガーがそのままきりもみ回転を始めて、カメラも大きく周り込みながらそれを捉えるなど、おっと思わせるシーンがありますね)。
ライオン丸とタイガージョーのコスチュームはそれぞれ白と黒をメインとして変身前からイメージを統一されています(獅子丸は真っ白なスーツと金髪、錠之介は黒革で精悍なオールバックで決めています)。
変身後の頭部は獣が更にマスクを着けた状態でかなり個性的で面白い造りですね。パッと見ると本家のように如何にも獣人、というイメージは薄められていますがなかなか味のあるデザインになっています。
二人が持つ刀・キンサチ、ギンサチは状況によって鎖鎌や槍、楯など様々な得物に変化することができ、殺陣にバリエーションを持たせています。
そして主題歌は本家と同じく『風よ光よ』。OPのレトロなTVから流れる本家の映像がニクい演出です。串田 アキラ氏の歌声が胸にグッときますね!
ライオン丸になることをためらっていた獅子丸も様々なトラブルに巻き込まれ、錠之介=タイガージョーと刃を交えたことで己の運命と向き合わざるを得なくなってきました。
タイガーだけでなく不気味な忍者を手駒に持つ豪山の目的は? 両親を殺され戦いに生きる道を選んだ錠之介の願いは? 彼に恋したサオリの思いは届くのか?
果心居士の語る『選ばれし者』の運命とは? 真に目覚めたあとの(本当に目覚めてくれるのか?)獅子丸と錠之介の対決の行方はいかに……。本家のファンとそれを見ていない世代、どちらも満足させることができますかどうか!?
(『ライオン丸G』は先日、06年12月24日放映分にて最終回。最終展開の評については、近日中に当該記事に加筆予定)
- 出版社/メーカー: キングレコード
- 発売日: 2007/02/21
- メディア: DVD
- クリック: 12回
- この商品を含むブログ (4件) を見る