假面特攻隊の一寸先は闇!読みにくいブログ(笑)

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BALLAD 名もなき恋のうた 〜子役の行動・絡ませ方に見る原典との差異

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『BALLAD(バラッド) 名もなき恋のうた

(2009年 白組)

BALLAD 名もなき恋のうた』 〜合評1

(文・Y.AZUMA)


 2009年9月23日(水・祝日)12時55分の回を日比谷スカラ座で鑑賞。
 アニメ映画『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ!アッパレ戦国大合戦』(2002年)が原案の実写映画。主演の俳優さんが泥酔して捕まったため、上映できるか気をもんだけれど無事観ることが出来た。


 結論。
 阪東妻三郎(ばんどう・つまさぶろう)版『無法松の一生』(1943・昭和18年)を観たあとに、三船敏郎版『無法松の一生』(1958・昭和33年)を観たような、そんな感じ。


 悪くはないんだけれど、元作を尊重すればするほど、消化不良感が出てくるような、そんな印象。たぶん、単体で観れば悪くはないと思うのだけれど、それだけ、『クレしん』版が安定感のある作品になっているのでしょう。


 決して嫌いではないので、褒めるところを書きます。

●黒沢映画への完璧なリスペクト

 香川京子が老侍女で出ていたし、春日の重臣Bのダルマ顔は、確かに油井昌由樹(ゆい・まさゆき。黒澤明監督の『影武者』(1980年)のオーディションで徳川家康に選ばれた俳優さん)である。
 油井は黒沢映画の常連さんである。カメラアングルもセットの作り方も、黒沢映画に対して完璧なリスペクトをしていた。

●合戦映画へのリスペクト

 意外にも、戦国時代の合戦シーンが元作同様、丁寧に描かれていた。CGを使っていなければ、「総制作費○○億円!」と惹句に使われそうな凝り方である。
 戦国時代の合戦シーンは、かなりな見もの。これもリスペクトである。

●単体としては、輸出向け「タイムスリップ戦国SF映画」

 単体で観れば、「タイムスリップ戦国SF映画」として、ヨーロッパやアメリカで受けるのではないか。

●とうさんは日常性でしか関われない

 しんちゃん一家は特殊な能力がある訳ではない普通の人たちである。そのため「悪」と戦うわけにはいかない。せめて「名刺」と「台詞」をぶつけるくらい――たしか、しんちゃんパパがどこかの作品で敵に対し「名刺」をぶつける攻撃をしたことや、劇場版『クレヨンしんちゃん 暗黒タマタマ大追跡』(1997年)で「名刺の交換はサラリーマンの神聖な儀式や」と言ったシーンを勝手に思い浮かべて書いたものです――。
 この映画でもお父さんは普通の人。彼が関われる方法は、彼の職業である写真の撮影。この辺もきちんとしんちゃん映画を踏襲している(「ふしゅう」ではない)。


 「しんちゃん映画が元なんだから、もっと子どもの視点で又兵衛さんや蓮姫を描いても良かったのでは。」と妻。


 そうだなあ。いろいろな意味で『クレヨンしんちゃん』は、日本の映画の中に進出しているのだろう。
 返す返すも原作者・臼井儀人(うすい・よしと)さんの急逝は残念である。ご冥福をお祈りします。


BALLAD 名もなき恋のうた』 〜合評2

(文・C.AZUMA)


 原案が『クレヨンしんちゃん 嵐をよぶアッパレ! 戦国大合戦』(原作・臼井儀人、監督・原恵一 02年)。
 黒沢明映画のオマージュでもあった「しんちゃん」の映画が実写化されたので、なんというか、グルッと一回りして元に戻ったような不思議な気分。


 合戦シーンは迫力あったし、アニメにもあったシーンが実写で見られるという楽しみもあった。だけど、稲垣浩が監督した阪東妻三郎主演の『無法松の一生』(1943年)と三船敏郎主演作(1958年)のような違いを感じた。


 合戦シーンのリアルさはアニメ版以上だった。だけど、廉姫(れんひめ)が打掛を脱ぎ捨てて走り出すシーンは、アニメ版の方が姫の逸(はや)る気持ちが伝わってきた。
 新垣結衣(あらがき・ゆい)ちゃんの廉姫は凛々しくていいんだけれど、着物での立ち居振舞い、歩く・走るなどは香川京子さんの方が優雅で美しいのだ。


 原案と違い、戦国時代へタイムスリップするのは小学生の真一君、彼は一人っ子。ここは原案通りに妹(ひまわりちゃんは赤ちゃんだけど、6歳くらいにする)を出した方が画面も賑やかになったと思う。


 又兵衛が自分の気持ちを姫に伝えるよう背中を押すのがしんちゃんで、廉姫を押す方を妹がやるとか、良い意味で子どもの視点に徹して欲しかった。


 子どもには大人の事情は分からないけれど、皆必死に生きているんだ、そういう視点に立ってくれた方が大人の観客はもっと楽しめたかもしれない。


 映画が始まってすぐに思い出したのが、何故か『ゴジラ・ミニラ・ガバラ オール怪獣大進撃』(69年)だった。ちょっと気弱な子がミニラと冒険をすることで勇気を獲得していく。怪獣たちがいる島がここでは戦国時代なのだろうと、勝手に想像してしまった。


 見応えはそれなりにあったのだが、できれば上映時間が2時間をちょっと切るくらいにして欲しかった。その方がテンポが良かったろうと思うのと、同じ姿勢で座ってるから、腰がちょっと痛い…… ああ、情けない理由だ。


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2009年秋号』(09年9月27日発行)『近作評EXTRA』より抜粋)


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