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ウルトラマンメビウス2話「俺達の翼」 ~快作!リアリズムか?ダイナミズムか?

『ウルトラマンメビウス』1話「運命の出逢い」 〜感激!感涙!大傑作!
『ウルトラマンメビウス』3話「ひとつきりの命」 ~火山怪鳥バードン・カラータイマー・恩返し!
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ウルトラマンメビウス』2話「俺達の翼」 ~快作! リアリズムか? ダイナミズムか?

(『ウルトラマンメビウス』序盤評・短期集中連載!)
(文・久保達也)


 リアリズムのモノサシで鑑賞すればオカしなところがあるストーリーともいえるが、ダイナミズムのモノサシで鑑賞すれば少年漫画的な快作だともいえるストーリーである(笑)。


 第1話『運命の出逢い』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060625/p1)の前半で、リュウ隊員を残して全滅してしまった怪獣攻撃チームである防衛組織・旧GUYS(ガイズ)。第1話のラストで新たに赴任したサコミズ隊長のもとで、リュウ隊員とその正体は実はウルトラマンメビウスである主人公青年ヒビノ・ミライ隊員が参画することで、新生GUYSが早くも結成される。


 とはいえ、3人しかいない以上は隊員の補充が急務となるワケだ。そのために、主人公・ミライ隊員がリュウ隊員を連れて、第1話でともに保育園のウサギたちを助けたテッペイ・ジョージ・マリナ・コノミの4人をスカウトに回る。


 当然のことながら、スンナリとGUYSに入隊してしまってはドラマにならないし(笑)、リアリズム的に考えても怪獣攻撃隊に民間のド素人が入隊するワケはないのだし、皆それぞれの事情で断ることになるのだが当然のストーリー展開だろう。各自それぞれに夢もあり、たまたま現場に居合わせただけだったというのに、危険極まりないGUYSの任務につかねばならない義理などあるワケがないからだ。


 ところがリュウ隊員は、


「どいつもこいつも、自分のことばっかり考えやがって!」


 などと短気にも熱くなって非難するわ、ミライはミライで


「あの人たちはGUYSのクルーにふさわしい人たちなんです!!」


 などとまぁ、彼らがGUYSの隊員になるのはすでにマスコミ媒体で明かされているのだから規定路線だとしても(笑)、それにしても劇中内ではあまり根拠がない主張を、必ずしも悪い意味でも批判でもないのだが、リアリズムよりもダイナミズムが優先されがちな、実写ドラマよりも熱血風味のテレビアニメや少年漫画などに登場するキャラクターたちのように暑苦しく叫んでいる(笑)。


 リュウ隊員はGUYSに新たに導入された大型戦闘機・ガンフェニックスに、自身の通信機などにもペイントしていた「炎」の模様の塗装を施していた。これもホントにホントのリアリズムで考えると、第1次世界大戦・第2次世界大戦期ならばともかく、航空機も塗装ひとつで空気抵抗も変わってくるのだから、専門家が専用の業務用スプレーなどで塗装をするのではなく、ペンキをハケで機体に塗るようなことはアエリナイのだろうが、細かいことは気にするな(笑)。


 すると、そこにミライ隊員が例の4人を連れてやってくる。


「この人(ミライ)がどうしても、って云うもんだから……」


 というマリナのセリフが示すように、半ば強引に連れてこられたらしい。このあたりも、リアルに考え出すと、機密情報のかたまりであろう戦闘機の格納庫に、たとえ不審者ではなくても民間人をアッサリと入れてしまうのはオカシいともいえるのだが、細かいことは気にするな(笑)。


 しかし、リュウ隊員は叫ぶ!


「地球はウルトラマンに守ってもらえばイイ! なんて考えるヤツにこの翼はさわらせない! 地球は我々人類、自らの手で守らねばならないんだ!」


 オオッ! このセリフは、初代『ウルトラマン』(66年)第39話(最終回)における防衛組織・科学特捜隊のムラマツキャップ(隊長)の発言や、『ウルトラセブン』(67年)第49話(最終回)における防衛組織・ウルトラ警備隊のキリヤマ隊長の発言でもあるのだ!


 そして、


●『ウルトラマンタロウ』(73年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20071202/p1)最終回
●『ウルトラマンレオ』(74年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20090405/p1)最終回
●『ザ★ウルトラマン』(79年)最終回(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200508/p1
●『ウルトラマン80(エイティ)』(80年)最終回(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210315/p1


などでもテーマとして変奏されてきたことなのだ! このセリフが早くも第2話で登場するだなんて!


「だが、地球はこれまでウルトラマンに守られてきた! オレはGUYSをそうじゃないチームにしたいんだ!!」


 オオッ! そうなのだ。実際には地球は怪獣攻撃を専門とする防衛組織が救ってきたワケではなかったのだ。怪獣を倒してきたのは、いくつかの例外を除けば、防衛組織ではなくウルトラマンだったのだ! そして、それは幼児はともかく児童であれば、誰もが気が付いていることではあり、昭和の時代の子供たちも「ウルトラマン」が大スキだったとしても、小賢しくも小生意気なことに「ウルトラマンさえいれば、怪獣攻撃隊なんて要らないじゃん!」なぞと罵倒してきたことも事実なのだった(汗)。


 それを考えれば、劇中キャラに早くも第2話で、そんな子供たちでも想起してしまうツッコミに対する予防線を張らせてしまうという、リュウ隊員の……いやスタッフのなんというクレバー(利口)さと志(こころざし)の高さであることよ!


 この熱い叫びに「心意気」を感じた4人は、ガンフェニックスの塗装をみんなで手伝いだすのだ(笑)。そして、寝食を共にして心も通じ合って仲間意識も芽生えていく姿が、セリフなしのイメージ映像で表現されていく……


 ベタといえばベタ。素朴な性善説が勝利して、何かの小さな共通目的を達成することで仲間となっていく描写は、高度なオトナのやりとりの描写といったモノではなかったことは確かだ。昭和のウルトラシリーズの防衛組織の隊員たちの描写はもっとオトナでオジサンたちのやりとりだったことを思えば、やはり昭和ウルトラとも平成ウルトラとも異なる、少年漫画チックな「お仲間になっていく」描写ではある。
 しかし、個人の好みの問題であることは重々強調しておくけど、ある意味では安易であっても、本作『ウルトラマンメビウス』は「熱血」とか「ド根性」とか「仲間のサポート」や「応援」といったものが「勝利」に直結していく、良い意味での精神主義的な「少年漫画」のノリになっていくことも想像されてくるのだ……


 そして、大型戦闘機・ガンフェニックスがその玩具同様に(笑)、機体の各所に「炎」のマーキングがキレイに塗装されて、


「オレたちの翼だ!!」


 などと一同が感動していたそのとき、実にタイミングがよく鳴る警戒ブザー(笑)。


 なんと、あの『帰ってきたウルトラマン』(71年)第5話『二大怪獣 東京を襲撃』~第6話『決戦! 怪獣対マット』の前後編にも登場した強敵でもあった地底怪獣グドンが出現したのだ! いや、放映開始前から直前作『ウルトラマンマックス』(05年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060311/p1)での第1期ウルトラシリーズの人気怪獣復活に続いて、今回の『ウルトラマンメビウス』では第2期ウルトラシリーズに登場した人気怪獣が復活することは事前に告知されていたので驚きはしないけれども、それでもやはり胸が高鳴ってきてしまうのだ!


 リュウはミライを連れて出撃しようとするが、なんとミライはGUYS作戦室にナゼだかまたまた入室してきたジョージとマリナに


「いっしょに戦ってください!」


などと懇願するのだ!――現実世界の一般企業でさえセキュリティーが厳しくなって、磁気カードやICカードがなければ入館・入室ができなくなっているご時世なのだけど、細かいことは気にするな!(笑)――


「ペイントを手伝うだけだったのに……」
「あんな怪獣なんか、相手にするなんて聞いてねぇぞ!」


などと困惑するふたりだったが、


「オレたちの翼で行くんです!」などと熱く説得され続けて、ついにその「オレたちの翼」で出撃してしまうのだ(笑)。


 そして出撃後、民間人を戦闘に巻き込んだことを非難するトリヤマ補佐官! 無理解なオトナといった悪者の役回りをここでは与えられているが、トリヤマの非難も実は正当なものではある(笑)。


 そのトリヤマ補佐官とサコミズ隊長のやりとりを、「オレたちの翼」のコクピット内の無線で聞いていたマリナは、


「決めた! アタシ、GUYSに入るっ!」


などと正式に決意を固めてしまう! これで民間人を戦闘機に強引に乗せて戦闘行為までさせてしまった! という左派・野党勢力からの正当な批判(笑)もかろうじてゴマカせることができるゾ!


 「これはリアル志向の特撮マニアたちは発狂寸前になるだろう」と密かにほくそ笑んだ筆者であった(笑)。


 そうなのである! 巨大ヒーローVS巨大怪獣が戦うようなリアルに考えれば噴飯ものな特撮ヒーロー作品は、しょせんはドコまで行ってもウソがありムリがある作品群なのである。ウルトラマンVS怪獣との戦いのスペクタクル! たとえ前座であってもカッコいい超近代的スーパーメカを操る怪獣攻撃隊の勇ましさ! そういったところがクライマックスなのであり、第1話や第2話ではそのへんを早々に到達して設定を消化しなければならないのである。
 1クール13話をまるまる怪獣攻撃隊のメンバーのリアルで懊悩や逡巡に満ち満ちた集結劇や結成劇などに費やしては、我々のようなごくごく一部の特撮マニアは喜んでもメインターゲットである幼児はドッチラケなのである(笑)。


 そう考えれば、ド素人のメンバーたちが、ペンキ塗りを通じて寝食を共にすることで心が通じ合い、そして怪獣出現と上層部の悶着を目撃して義侠心にかられて怪獣攻撃隊のメンバーになってしまうことを即断してみせる、この第2話のストーリー展開も安直ではあるものの間違いではないのである。


 そして、非リアルでもこういう少年漫画的なトントン拍子に話が進む、ある意味では勢い重視のノリを排除してきたからこそ、平成に入ってからのウルトラシリーズは熱血温度が低くて、『週刊少年ジャンプ』系の人気漫画の後塵を拝してしまって、子供たちの人気も得られずに来たのだと信じて疑わない筆者としては、こういうノリは大歓迎をしたいのだ!


 ミライの熱い呼びかけに、いとも簡単に4人が心を動かされることについては、メインターゲットである子供たちに対しては「他人とも話せばわかりあえるのだ!」という性善説をこれくらいに誇張してもイイのではなかろうか?
 もちろん、口うるさい特撮マニアのお兄さん、いやオジサン、もとい中年(爆)の方々にとっては「心意気くらいで民間人がそう簡単に危険な任務に飛び込むワケがないだろう!? 他人とも早々に理解しあえるワケがないだろう!?」とご不興であろうことは筆者も重々承知はしている…… いやぁ、たしかにそうなんですよ。アナタたちの方がホントウは正しいのです(笑)。


 でもまぁ、ちょっと考えてみてほしい。第1世代の特撮オタクたちが、「リアル」だの「国産映像SF最高峰作品」だのともてはやしてきた、かの『ウルトラセブン』第1話『姿なき挑戦者』でも、のっけから主人公青年モロボシ・ダンはヨット・パーカーの姿でウルトラ警備隊の作戦室になぜだか入りこめていた(笑)。そして、紅一点のアンヌ隊員に、


「ダン、あなたの地球が危機にさらされているのよ。なにかいい方法はないの?」


と尋ねられている。リアルに考えれば、天下の防衛組織の隊員が正体不明の民間人に「作戦」アイデアを要求することなどありうることだろうか?(笑) しかも、モロボシ・ダンは即座に、


「敵の(透明な)宇宙船を見えるようにすることだ」


などと主張する。そして、その方法を開発するのにどれくらい時間がかかるか? とキリヤマ隊長にたずねられると、


「科学班の協力があればすぐです!」


ってオマエ、なぜ科学班の存在を知っていて、開発に要する時間までもがわかるのだ!?(笑)


 ついでに、その正体は正義の宇宙人・ウルトラセブンであり、特定の地球人の個人と合体したワケではないのだから、戸籍も何もあるハズがない身元不詳である風来坊の青年モロボシ・ダンを、天下のウルトラ警備隊にすぐに入隊させてしまうのも、リアルに考え出したらオカシいのである――彼の正体が悪い組織のスパイだったり、侵略宇宙人だったらドーするというのだ!?(爆)――。


 実は天下の『ウルトラセブン』の第1話にも、この本作『ウルトラマンメビウス』第2話と同じようなツッコミの余地はいくつもあるのだ(爆)。だが、我々がそれをあまり問題視してこなかったのは、ひとえに特撮マニア諸氏が『セブン』を初鑑賞したのが幼少期の時期だったからであり、そのような不備は気にならなかったことがインプリンティング・刷り込みともなっており、それで後年の再視聴でも採点を甘くしてしまっているのにすぎないのだ(汗)。要はそれらの評価のされ方がダブル・スタンダードになってしまっているのだ。


 とはいえ、筆者もこの『メビウス』第2話における勢いで押すだけの描写を「十全のものであったのだ!」などというムチャな主張をする気もない。ミライ隊員も第1話で「運命の出逢い」を遂げたこの4人をGUYSの隊員にしようとするのであれば、「人手が足りないんだからしょうがないじゃん。ちょっと手伝ってよ!」みたいなノリでスカウトするのではなく(笑)、第1話でも彼らが個々に見せていた「動体視力」や「聴力」や「医師」や「保母」といった特殊技能、そしてなによりも危険に陥った人々を守りたいと思うような「博愛的な精神」が、怪獣退治や地球防衛にも有用であることをこんこんと説くようなノリであった方がよかったとは思えるのである。
 でもまぁ、今回みたいなテキトーなノリで、あとは勢いと熱血だけで押していき、ストーリー展開もサクサクと進めていくような少年漫画的なノリの導入こそが、東映ヒーロー作品と比するとどうしてもアンチテーゼ編や社会派テーマ編をやりたがって往々にして陰鬱な作風になってしまって、一部のマニアだけが喜んで子供たちはドッチラケになりがちだった平成ウルトラシリーズにこそ必要だったとも考えているので、この『メビウス』第2話には個人的には大きな不満がないどころか、むしろ歓迎しているくらいなのであった(笑)。


 しかし、地底怪獣グドンが出現した際の、「34年前に東京を襲った怪獣だ! ツインテールを食べたヤツだ!」というテッペイのセリフはやはり嬉しい!――ご存じ、原典では地底怪獣グドンは古代怪獣ツインテールを捕食する怪獣だったのだ! 厳密にはグドンツインテールが登場した『帰ってきたウルトラマン』は1971年に放映されているので、2006年から数えれば34年前ではなく35年前にすべきだとも思うけど、細かいことは気にするな(笑)――


 欲を云えば、ここで初代の地底怪獣グドンが登場した『帰ってきたウルトラマン』第5話~第6話の前後編のライブフィルムをGUYS作戦室のスクリーンで流してほしかった気はする――もちろん、過去のウルトラシリーズの映像や音声を流すのにも、今の時代にはJASRACジャスラック)のような著作権団体や過去作の監督・脚本家などへの相応額のギャランティーが発生するかもしれないので、おいそれとは流用ができないこともわかるけど(汗)――。


 ついでに、ウルトラマンジャック帰ってきたウルトラマン)が両腕を十字型に組んで、その右手から発する必殺技・スペシウム光線グドンを木っ端微塵に粉砕する映像まで作戦室のスクリーンで流して、サコミズ隊長に「我々はウルトラマンスペシウム光線を徹底的に分析して「スペシウム弾頭弾」を完成させた。ガンフェニックスはそれを搭載している。グドンに決定的なダメージを与えられるハズだ!」などと云わせることで、「スペシウム弾頭弾」に重みを持たせてほしかったのだが(笑)。


 ちなみに、GUYS隊員たちが命令に対する返答として使用している


「GIG(ジー・アイ・ジー)!」


なる掛け声は、イギリスの特撮人形劇『サンダーバード』(65年)の流れを汲んでいるやはり特撮人形劇『キャプテン・スカーレット』(67年・英)の「SIG」(Spectrum Is Greenの略。「了解」の意味)に対するオマージュだ。



 サコミズ隊長の「出動!」の意味で使っている


「サリー・ゴー!!」


も、円谷プロの分派がつくった『スーパーロボット マッハバロン』(74年・日本現代企画)の防衛組織・KSS(キス)での同様のセリフへのオマージュだろう。


 ついでに云うならば、GUYSのマル補佐官秘書が解説した「メテオール」という、過去の侵略宇宙人たちの宇宙船の残骸を回収して分析して得られた、翼を持った飛行機型の機体では空気力学的には不可能な、宇宙人の円盤のような奇抜な飛行をガンフェニックスが可能とする技術に言及するシーンでは、歴代の昭和のウルトラシリーズの侵略宇宙人たちのさまざまな宇宙船を作戦室のスクリーンに映してほしかった!(笑)


 ただし、GUYSの戦闘機の飛行音が『ウルトラセブン』の防衛組織・ウルトラ警備隊のウルトラホークと同一であるとか、ビルの破壊音や基地の自動ドアの開閉音までもが昭和のウルトラシリーズで使用された効果音をそのまま使用していることについては…… 大喜びしている特撮マニア諸氏が圧倒的大多数なのだろうが、個人的には完全に同型のメカや戦闘機ではないのだから、まったく同じ効果音を使用してしまうことにはやや違和感はある(汗)。


 「スぺシウム弾頭弾」も「光線」ではなく、要は「スペシウム」という物質――初代『ウルトラマン』第2話によれば、火星にもある鉱石――を「火薬」のように爆発させる「砲弾」にすぎないのだから、その砲弾の飛行音がウルトラマンスペシウム光線と同じ効果音だというのは、説明的な意味を込めた確信犯であることもわかるのだけど、やはりオカシい。ふつうに「砲弾」の飛行音でよいだろう(笑)。


 「原点回帰」というのか「原典オマージュ」というのは、そこまで形式主義に徹することではなく、昭和のウルトラシリーズが持っていた、ジョージ的に云えば「スピリッツ!」(笑)、マリナ的に云えば「心意気」のことだと思うのであるが……


 それでも、地底怪獣グドンの鳴き声だけは完全に同一種族の別個体なのでオリジナルの鳴き声を正しく流用していることは正しいのである(笑)。それにしても、30数年ぶりに復活した人気怪獣グドンは今回も実にカッコよく、原典に忠実に造形されていた! 凶悪なツラ構えも往年の姿そのままだし、最大の武器である両腕のムチを徹底的に振り回しまくって大暴れ! 正直、グドンがここに登場する必然性はなにもないのだが(笑)、カッコよく出てきて大活躍さえしてくれればそれでよいのだ!


 脱線するが、長年の特撮マニアであればご存じのとおり、この怪獣グドンは円谷特撮『ファイヤーマン』(73年・円谷プロ)第9話『深海からの挑戦』にも登場している。ツインテールを捕食していたはずのグドンが、今度は逆に殺し屋怪獣ネロギラスに喰われてしまう役回りなのだが(汗)。しかし、なんで地底怪獣が海底にいるんだよ!?(笑) そんなやられ役だったら近い時期である『帰ってきたウルトラマン』第1話に登場した東京湾に出現したヘドロ怪獣ザザーンの方が適役だったよなぁ。もちろん、メインのゲスト怪獣以外の新怪獣の着ぐるみを造形する予算がなくて、怪獣倉庫にあったアリモノの怪獣をつかっただけだったのだろうけど(汗)。おまけにケイブンシャの『全怪獣怪人大百科』では、その名前を「グドン」ならぬ濁音抜きの「クドン」に変えられて(単なる誤植か?)「ネロギラスに食べられてしまう、弱くてかわいそうな怪獣」などと解説されている始末であった(爆)。


 それはともかく、長じてからの第2世代以降の昭和の特撮マニアたちは、古代怪獣ツインテール < 地底怪獣グドン < 殺し屋怪獣ネロギラス の構図が「怪獣の生態系」そのものだ! といったことをネタにすることが定番となっている(笑)。



 しかし、このグドンと戦う防衛組織・GUYSとウルトラマンメビウスもカッコいい!


 ガンフェニックスはウルトラシリーズの飛行メカのお約束で、子供たちがいかにも喜びそうなガンウィンガーとガンローダーの2機に分離した! そして、超絶科学・メデオールを発揮したガンローダーは、空中に残像を残しつつ瞬間移動をくりかえしてグドンを翻弄する! そして、両翼のプロペラ部分から大竜巻を巻き起こして体重が何万トンもあるグドンを遥か上空へと吹っ飛ばしてみせる!!――風力アリすぎだろ!?(笑)――


 そしてミライ隊員は、左腕甲に出現させた変身アイテム・メビウスブレスにかざした右腕を大きく振り下ろして、左腕を高々と掲げて、


「メビウ~~〜~ス!!!」


 と叫んで、我らがヒーロー・ウルトラマンメビウスへと変身した!


 そして、ウルトラマンメビウスグドンの両腕をつかんで、ジャイアントスイングかましてコマのようにその場で回転してグルグルとグドンを振り回す!!


 そこまではイイ。そこでグドンだけを遠心力で遠くへ放り投げるのならばともかく、そのままグドンといっしょにメビウスも含めて、ビル街から遠く離れた場所へと放り投げられてしまうのだ! ウ~ム。物理運動的にはあまりにもオカシな描写なのだけど……。細かいことは気にするな(笑)。


 そして、グドンが飛ばされていった先は、第1話とは異なりビル街などが見当たらない、閑散とした埋め立て地チックな平原の荒野である(汗)。


 ところで、あまたの役職の分業化が進んだ現在では、ビルのミニチュアは円谷プロの持ち物ではなく、主に平成ゴジラ平成ガメラ・ウルトラ・スーパー戦隊シリーズなどの特撮美術監督・大澤哲三なども在籍している特撮美術やミニチュア造形を専門とする株式会社マーブリング・ファインアーツなどの所有物であり、あるいは東宝東映大映などからもレンタルしてくるそうであり、ビル1個につきレンタル料金なども決まっていることが、『円谷プロファンクラブ』会報での映画『ウルトラマンティガウルトラマンダイナ』(97年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19971206/p1)撮影レポートなどでも過去に明かされている。
 これは多分、前作『マックス』よりも予算を抑えられていそうな本作『メビウス』では、ビル街がたくさん出てくるのは第1話と第2話の前半までであり、今後はビル街はあまり登場させられませんよ~、というメタ・メッセージなのではなかろうか?(笑)


 前回の第1話ではメビウスは両腕を十字型に組んで発する必殺光線・メビュームシュートで敵怪獣のトドメを刺したが、今回は左腕甲のメビウスブレスに右手をかざすと、そこに一瞬小さな「メビウスの輪」=無限大のマークである「∞」がキラめくや、そのメビウスブレスの先端からメビュームブレードなる「光の剣」が突き出してきた!


 両者がしばし無言で対峙したあと、高速でスレ違う瞬間に、グドンに対して左腕甲から突き出ている光の剣で斬りつける!


 グドンは苦痛に顔をゆがめて(この表情の変化を見逃すな!)、木っ端微塵に粉砕されていく!


 剣で斬りつけたのに、なんで胴体が両断されずに爆発するんだよ!? というツッコミも正当なものなのだが、皆さまもご存じのとおりで、切断シーンは千人だか万人にひとりはいるだろう異常性格者がマネをしてしまうリスクを考えれば、その切断シーンのオミットも仕方がないことなのだろう。切断シーンをマネするバカが出てきた場合に筆者も責任は取れないし(汗)。


 剣で斬っただけなのに敵怪獣が大爆発した件については、光の剣が胴体にメリこんでいる瞬間に膨大な光線エネルギーが注入されたのだと脳内補完をすれば、充分に許容範囲でもあるだろう!?(苦しい言い訳だ・笑)


 たしかに細部にはツッコミどころが多々ある展開の話だった。でも、そんなものをすべて吹っ飛ばしてしまうほどの明朗な娯楽活劇パワーが確信犯でこの『メビウス』には込められていることは間違いがないだろう。


 しかし、厳密に云えば、世界観こそ昭和ウルトラ世界の直系後日談とされているが、その良い意味でデタラメな勢いで押していくようなノリは、シックな作風でもあった昭和ウルトラのものとはかなり異なっている。むろんのこと平成ウルトラシリーズの作風ともまた異なっている。昭和ウルトラとも平成ウルトラとも異なる第3の方法論でもある、この少年漫画的な「ダイナミズム」の作劇術の導入。これこそが今回の『メビウス』のねらいであり特徴なのではなかろうか!?


 これだ! 筆者はこの10年、こんな熱血活劇風な方向性に振り切れた『ウルトラマン』が観たかったのだ!



ウルトラマンって、死んだことがあるんですか?」


 『メビウス』第3話『ひとつきりの命』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060629/p1)の次回予告編で流されたGUYSに入隊したコノミ隊員のこのセリフ!


 そう。次回に登場するのは、第2期ウルトラシリーズの大人気怪獣である火山怪鳥バードンの同族別個体なのだ! そして、この火山怪鳥バードンは前中後編の3部作で登場して、その中編である『ウルトラマンタロウ』第18話『ゾフィが死んだ! タロウも死んだ!』(当時の公式名称はゾフィーではなくゾフィ・笑)では、そのサブタイトルのとおりにウルトラ兄弟の長男であるゾフィーウルトラマンタロウを一度は絶命させたこともあるほどの超強敵なのである!


 「ウルトラマンって、死んだことがあるんですか?」という疑問符のセリフと、『ひとつきりの命』というサブタイトル。まぁ、この手の超人が登場する変身ヒーロー番組や少年漫画の通例で、たとえ死んでも超常的な方法で超人は生き返ったりもするものなのだし、それはゾフィー兄さんやタロウとて例外ではなかった。しかし、そのことには穿(うが)って見てしまえば、子供たちに対する微量な悪影響が生じる可能性もあっただろう。そのことについてのエクスキューズや落とし前を『メビウス』ではどう付けてくれるのか? 期待をさせられるではないか!?

2006.4.18.


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2006年春号』(06年4月23日発行)『ウルトラマンメビウス』初期話評・合評④後半より抜粋)


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