『ウルトラマンメビウス』1話「運命の出逢い」 〜感激!感涙!大傑作!
『ウルトラマンメビウス』2話「俺達の翼」 ~リアリズムか? ダイナミズムか?
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『ウルトラマンメビウス』3話「ひとつきりの命」 ~火山怪鳥バードン・カラータイマー・恩返し!
(『ウルトラマンメビウス』序盤評・短期集中連載!)
(文・T.SATO)
ついに来た! 待ちに待ってた! 真正・M78星雲出身のウルトラ兄弟系作品の『ウルトラマンメビウス』(06年)!
#1~2についても語りたいことは山ほどあるのだが、速報コピー誌(註:初出時)の誌面構成面でのウリとしては、昨日06年4月22日(土)夕方放映の#3である「ひとつきりの命」の方が適切であろうと、涙を呑んで#1~2語りはオミットして、#3についてだけ語らせていただこう。
昭和『ウルトラ』シリーズに思い入れがある特撮マニアであるならば、誰が語っても似たような感想にはなりそうだけど。
早くも#3にして、初代バードンも出現したことがある、あの今も噴火していた大熊山(!)に出現した最強級の怪獣・火山怪鳥バードンが再出現!
「ド」は濁音で読まずにバー「ト」ンというのが実は正しい、劇中でもそう呼称されていたという説もあるけれど――『帰ってきたウルトラマン』(71年)に登場した透明怪獣エレドータスが、劇中では逆に濁音でエレドー「ダ」スと呼ばれていたようなものである。むかしはそこいらへんはラフであったものなのだ――。
あの独特の「エ〜イ エイヤ〜ッ!(ヤァヤァ・木霊のようなエコー・笑)」という甲高い鳴き声までもが同じだよ!――長年の特撮マニア的には円谷プロ製作の特撮巨大ヒーロー『ミラーマン』(71年・円谷プロ)の某怪獣の鳴き声でもある――
バードンといえば、『ウルトラ』シリーズ初の前中後編の3部作でもある『ウルトラマンタロウ』#17~19に登場して、毛虫の怪獣である怪獣ケムジラ(笑)、ウルトラマンタロウ、そしてウルトラ兄弟の長兄・ゾフィー兄さんを一度は殺害してしまったほどの特A級の強敵怪獣でもあるのだ!
『ウルトラマンレオ』(74年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20090405/p1)放映終了直後に学年誌「小学三年生」で1年間の連載がなされて、1978年には創刊間もない児童マンガ誌「コロコロコミック」でも再録連載がなされた、内山まもる大先生の名作マンガ『ザ・ウルトラマン』(75年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210110/p1・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20160914/p1)でも、宿敵・ジャッカル大魔王がその超変身能力で宇宙恐竜ゼットン・用心棒怪獣ブラックキング・異次元超人エースキラーなどの超強豪怪獣たちに次々と変身していく中での一体にもセレクトされたほどの、そしてまたその姿でウルトラ兄弟たちを再打倒してみせたほどの最強怪獣の1頭でもある!
――『ザ・ウルトラマン』は、小学館のてんとう虫コミックスで単行本化(78〜80年・全4巻(ASIN:B000J8L868))。98年にも小学館コロコロ文庫に所収(ISBN:4091941214)。その後も新書サイズなどで度々再販。同98年には双葉社(ASIN:4575935514)。00年にも小学館(ASIN:4091402410)。07年にもコンビニ漫画化(ISBN:4091087183)されてきた歴史をまたいできた名作。79年放映の同名TVアニメシリーズ『ザ☆ウルトラマン』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19971117/p1)とは別作品なので念のため――
そんな強敵怪獣が、#1~2ではあんなにヘタクソな側転と戦い方で弱かった、宇宙警備隊の新人隊員ことウルトラマンメビウスごときに倒せるワケがないのだ!(笑)
――いや、#1で敗退してしまったり敵怪人にトドメを刺せなかったことで当時の子供たちにも弱く見えてしまっていた、往年のウルトラマンレオや仮面ライダーアマゾンなどとは異なり、両腕を十字型に組んで放つ必殺光線で敵怪獣に見事にトドメは刺してみせているので、「弱さ」と「強さ」の描写の絶妙なブレンドであって、子供たちにも最低限の強くて頼れるカッコいいヒーローとしては担保されている塩梅は見事だったけど!――
と思っていたら、オープニング主題歌が流された直後の本編パートで早々に登場したバードンに、やはり早々に変身して対戦したウルトラマンメビウスは、バードンのクチバシで突き刺されてアッサリとやられてしまうのだ!
そう来なくっちゃっ!
新米のメビウスごときがあの強敵バードンをアッサリと倒してみせたならば、先輩のウルトラマンタロウやゾフィー兄さんの立場がなくなってしまうので、筆者はイヤだよ!(笑)
……でも、刺された箇所が太モモでよかったよネ。コレでウルトラマンの心臓たる胸の中央にあるランプでもあるカラータイマーを突かれてしまっていたならば、#3にしてメビウスは死んでいたよ!(爆)
それではドーする!? そうだ! ウルトラマンメビウスと怪獣攻撃隊が協力してバードンを倒すしかなくなるのだ! #2とまったくおんなじ構図でもある。でも、そーいうプラスアルファがあるのならば、あの強敵バードンを1話だけの登場で倒したことを許してあげてもイイのだ! 少なくとも筆者は許す!
もちろん、筆者も腐れオタクであるからには、事前に『メビウス』序盤の放映予定リストを見てはおり、怪獣バードンが1話ぽっきりの登場のみで退場することはわかりきってはいたことでもある。そしてイイ歳こいてそこに過剰にケチをつけようというのでもないのである。けれども、1話ぽっきりで退場するのならばするなりのバードンの強敵ぶりの描写と、ひとひねり&説得力もある撃退描写を展開してほしい! というのが、世代人の思い入れというヤツではあって……。あとはバードンの同族の個体差ということで、この2代目バードンは初代と比べてやや弱かったのだと脳内補完をするからサ(笑)。
そして、もちろんメビウスを#3で早々に死なすワケにもいかないという、作品の外側での都合論もあることもよくわかるのだ――死なれたら死なれたで、まだ#3であってはそのメビウスの一応のヒーローとしての強さも充分には描かれてはいない段階だから、視聴者たちにもあまりにも弱く見えすぎてしまって、子供たちの憧れのヒーローたりえなくもなってしまうのだし――。
そうなると、ウルトラマンたちの心臓・急所でもあるカラータイマーではない別の箇所を突かれて、ダメージを負って一度は敗退してしまう! というのが妥当な作劇とはなるのだろう。
以上は、怪獣バードンの強さをモノサシにした場合の、世代人としてのモノの見方とリクツの付け方、そしてナットクの仕方(笑)でもある。
ホントウの真実は、今回の『ウルトラマンメビウス』という作品自体が、ウルトラシリーズ最大の弱点だともいえる、昭和の子供たちでもクソ生意気にもツッコミを入れていた「ウルトラマンさえいれば、怪獣攻撃隊なんていらないじゃん!」といったツッコミに対するフォローを入れることでもあるからだ!
それを解決するために採用された2大看板。
●未熟で発展途上の成長する新人ウルトラマン!
●ウルトラマンを的確にアシストするだけの超絶科学をゲットした怪獣攻撃隊!
それに加えて、1期ウルトラシリーズの人気怪獣の復活を看板にも据えていた直前作『ウルトラマンマックス』(05年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060311/p1)につづいて、本作『ウルトラマンメビウス』では、
●第2期ウルトラシリーズの人気怪獣復活!
これらの3要素が本作『メビウス』の特徴であることを、端的にシリーズ序盤で体現するための都合論として、
●強敵怪獣バードン出現!
●新人ウルトラマンの敗退!
●怪獣攻撃隊の超絶大活躍!
以上を#3の最優先の主眼としていたであろうことについては、さすがに不肖の筆者でもわかってはいるのであった――ここに並クラスの人気怪獣の復活ではなく、最強クラスのバードンを投入した点については、やや噛み合わせが悪かったのかもしれないけれども(汗)――。
とはいえ、この#3では実に爽快なる特撮の見せ場も描かれることになったのだ! それは、先の#2につづいて披露される、歴代の昭和ウルトラシリーズで撃墜されてきた侵略宇宙人たちの円盤群の残骸から採取されたというオーバーテクノロジーこと「メテオール」! そして、その超絶科学を用いた怪獣攻撃隊の戦闘機による、イイ意味でのCGバリバリな超高速飛行描写で描かれたバードンとの時間制限付きの大空中戦のことである!
リュウ隊員「ガンフェニックス! スプリット(分離)!!」
(大型戦闘機・ガンフェニックスが、ガンウィンガーとガンローダーの前後2機に分離する!!)
トリヤマ補佐官「メテオールの使用を許可する! メテオールの制限時間は1分間!!」
リュウ&ジョージ両隊員「バーミッション・トゥ・シフト! マニューバ!!」
(戦闘機の翼が幾重にも展開! 昭和ウルトラシリーズの円盤の飛行音も聞こえてきて超高速飛行へと移行!!)
ジョージ隊員「ブリンガーファン! ターンオン!!」
マリナ隊員「G・I・G!!」
(ガンローダーの両翼のファン部分から強烈な大竜巻が発生!!)
ジョージ隊員「バリアブルッ・パルサー!!」
(ビーム砲、発射!!)
往年の合体ロボットアニメ調の分割画面! 号令! 応答! 必殺ワザの名称の血管がブチ切れそうな大絶叫!! そしてレバーやボタンの押下!!
ひょえーー! カッチョえーー!! 熱い! 燃える!!
こういった暑苦しい叫びのような号令や応答やボタンやレバーの押下は、実は昭和ウルトラシリーズの怪獣攻撃隊には見られなかったものである。その伝では昭和ウルトラシリーズの「らしさ」の再現ではないのだ。そう。実はこういう描写は1970年代に大隆盛を極めていた、第2期ウルトラシリーズの宿敵ともいえる合体ロボットアニメにおける文法の方の再現でもあったのだ!
……でも、それはそれでイイではないか!? 燃えるではないか!? 場面も盛り上がるではないか!?
時間制限付きの高速バトルは、今年の『仮面ライダーカブト』(06年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060806/p1)でもすでにやってるよ! というツッコミももちろん成り立ちはするだろう。それはそうなのだ。だけれども、別にイイじゃんかよ(笑)。これはこれで魅力的だよ! カッコいいよ! 今までに見たことがなかった画だよ!
ガンフェニックスの後ろ部分である戦闘機・ガンローダーのブリンガーファンで大竜巻を巻き起こして、あの巨体の怪獣バードンをもキリモミ状態にして翻弄! そして、海面へと落下させる!!
そして、ガンフェニックスの前の部分である戦闘機・ガンウィンガーが待ち伏せするも、超高速飛行をしているバードンへの攻撃タイミングは逃がしてしまう!
ジョージ隊員「(通信)リュウ! 何でもいい! ぶっぱなせ!!」
リュウ隊員「だから、お前が命令するなっつってんだろ!!」
……スゴいガラの悪い会話である(笑)。
実景の大海原をバックに、超高速のチェイスが開始される!
ついには追いつき追い越して、超高速飛行をしているバードンの前方も取ってしまって、機首を飛行方向とは真逆の後ろに向けて(!)照準も付けているというのに、そのまま超高速で慣性飛行をつづけているという、現実的な飛行メカではアリエナイことを実現してみせている映像的な快感!
コレならば1分間の時間制限さえなければ、もう怪獣攻撃隊単独の力で……、ガンウィンガーからのスペシウム弾頭弾でバードンを倒せていたのではなかろうか!?
――CG映像ながらここまでの描写ができてしまうということは、1970年代以降は合体ロボットアニメの戦闘シーンや飛行シーンの描写においては負けていた実写特撮が、ここに至ってついにそれに拮抗、いや凌駕さえしてしまったということでもあるのだ!――
しかし、このままGUYSがバードンを倒してしまっては、ウルトラマンメビウスの存在も不要になってしまう。だから、GUYSの作戦はメテオールの時間切れによって失敗してしまう(笑)。
そして、バードンは太平洋上から北上して日本の漁村へと不時着した!
ここからは古典的なスタジオ特撮になるけれども、大海原といい、日本家屋の屋根のミニチュアといい、羽ばたいて強風を起こして大波を逆巻かせる映像といい、イイ感じの特撮映像にも仕上がっている。
GUYS基地の作戦室でこれらの一部始終を見ていた主人公青年・ミライ隊員は、ついにたまらずウルトラマンメビウスへと変身して現地へと急行する!
しかし、先の対戦によるバードンの毒で衰弱しているウルトラマンメビウスは、出現時から活動限界が近いことを示すカラータイマーが赤色点滅してピコピコと鳴ってしまう!
「ミツバチは自分の毒で死ぬ」というリクツで、バードン殲滅作戦を行なっていたGUYS隊員たちは、メビウスが羽交い絞めにしたバードンの両頬に垂れ下がっている毒袋の静脈を、今度は地上から狙撃した!!
そして、バードンが自らの毒がまわって弱ってきたところを、メビウスが必殺光線・メビュームシュートで撃破する!!
しかも同時に、その瞬間をねらってバードンの毒が飛散しないようにと、メテオール技術で大爆発の周囲に「光学バリア・フィールド」を張ってみせる銃弾も発射する!――公式設定では「メテオールカートリッジ・キャプチャーキューブ」というのだそうだ!――
先の前回である#2にしろ、本話の#3にしろ、
●怪獣攻撃隊の戦闘機の格納庫移動 〜 発進シークエンス!
●戦闘機 VS 巨大怪獣!
●ウルトラマン VS 巨大怪獣!
以上の3要素がなんだかんだといっても最大の見せ場にはなっていて、時間的な尺のボリュームも長々とたっぷりで、人間ドラマ部分は付焼刃の言い訳にすらなっている。
先の#2もリアリズムで考えれば、ド素人のメンバーたちがいかに義侠心にカラれようとも生命に関わる危険な任務でもある怪獣攻撃隊にスンナリとは入隊するワケがないだろう(笑)。しかし、そこをネチネチ・グチュグチュと懊悩してみせる人物像を描いても、我々のような年長マニアがよろこぶだけであり、メインターゲットである幼児たちには判らなくてツマラナイ描写にもなるだろう。何よりも、頼もしいあこがれの人物像には見えなくなるであろうことまで考慮をするならば、少々の葛藤の末にアッサリと入隊してしまう作劇も決して間違いではないとも思えるのだ。
少なくとも子供向け怪獣番組のシリーズ初期編としては、この程度の描写でよいのではなかろうか? それでも物足りなければ、シリーズ中盤などでそういう要素を補完するようなエピソードを作ればよいのである。もちろんスタッフの方も、それをわかっていて確信犯でこう作っているのだろう。
だから、この#3の冒頭でも言い訳的に、前話で勢いで入隊したばかりである本作『メビウス』における怪獣攻撃隊であるGUYSの隊員たちは、やはり入隊してしまったこと自体を、そして前の職場でやり残してきたことも含めて悩んでしまう寸描があるワケで……。いや、この後悔シーンすらもが実は言い訳であって、真実は女性隊員の水着姿を見せたかっただけだったりしてェ~(笑)。
……これらは決して欠点ではない。むしろ、子供向け番組としてはまことに正しい作劇であったとすら思うのだ。
コレを本末転倒して、我々が子供のころに最も夢中になっていたハズの「特撮映像」や「バトル」それ自体の原初的な「驚き」・「快感」・「快楽」を軽視して、やれ「人間ドラマ」や「社会派テーマ」に「SF性」や「リアリティー」、「オトナの鑑賞にも堪えうるアンチテーゼ編や異色作を描くことこそが本道だ」などと云いだして、「特撮」ジャンルそれ自体のアイデンティティー・特質を放棄して、「特撮」を「SF」や「一般ドラマ」に「文学」などのサブジャンルにおとしめるような、作り手&マニアたちによる往年の啓蒙行動。
そういった風潮が、特撮ジャンル作品を純然たる「娯楽活劇」作品へとステップアップさせることの足を引っぱって、ゆえに煮え切らない作品群を多発させ、子供間にしろ一般層にしろ、日本の「特撮」ジャンルが「大衆娯楽」の頂点に立てないどころか、イマイチ流通しきれていないことの一因にすらなってきた……と、筆者個人はそう見ている者でもある。
もちろん、「テーマ」や「ドラマ」に「SF性」などが「特撮」ジャンルには一切不要なのだ! などという暴論を云う気もまた毛頭ない。しかし、それらは決して必要条件ではないのだ。あくまでもそれらは「特撮」ジャンル作品のクライマックスたる「特撮場面」や「アクション場面」といった「主」たる要素に、観客の感情のクライマックスが、あるいは劇中キャラクターの感情のクライマックスも集約するように配置していくべき「従」の要素であるべきなのだ。
とはいえ、その「従」の要素に、しょせんは年長マニアでもある筆者ももちろん大いに関心は持ってはいて……(笑)。
まずは、怪獣博士ことボンボン医学生のクゼ・テッペイ隊員さんちの豪邸に住まっているメイドさん。その名前も萌(モエ)さん!(爆笑)
ベタベタで筆者は大笑いしたけど、なにか巨大掲示板などを参照しているとイヤだった方々も多かったようですネ(汗)。「あーいうキャラクターはアニメでならばイイけれども、実写ではヒク……」って、フツーの一般大衆たちの方こそがアニメ絵で超音波声のメイドさんキャラクターたちに対してよっぽどヒクとも思うけど(笑)。でもまぁ、この萌さんの声は、けっこうアニメ声ではありましたが(笑)。
特撮変身ヒーロー作品、特に『ウルトラ』シリーズのような、1980年前後の初期特撮評論の影響がとても濃厚であって、ハード&シリアス&リアル志向一辺倒の風潮が強かったシリーズ作品群には、これくらいのマンガ・アニメチックな非リアルな要素も導入して、作品としての作風の自由度の幅を拡げていった方がイイようにも私見するのだ。
ハード・シリアス・リアルは至上の価値では決してない。仮にそれには合致していなかったとしても、平成『ライダー』シリーズや『超光戦士シャンゼリオン』(96年)的なオシャレなアダルトさにマンガ・アニメ的でエキセントリックなキャラクターの立て方や、平成『戦隊』シリーズ的なチャイルディッシュでもポップな楽しさも当然のことながら充分にありうるのである。
天下のアメコミヒーローを描いているハリウッド映画だって、『スパイダーマン2』(04年)に出てくる「核融合装置」などは、下町にある建物の特殊装置の中心で浮遊している直径20メートルほどの小さな太陽だったりもするのだ(爆)。しかも、しまいにはそのミニ太陽が転がり出して、街中のコンクリ造りのドブ川を転がっていくほどのインチキな描写なのである!――しかも、水蒸気爆発すら起こらない!(笑) 科学考証・SF考証などはドコ吹く風なのであった。かの『空想科学読本』シリーズなどでもツッコんでほしいところではある。ただし、非リアルだから『スパイダーマン2』がダメだと云っているワケではないのは、くれぐれも念のため(笑)――
そもそも、ハード&シリアス&リアルに作れば、オトナの鑑賞に堪えうる作品となって大衆にも受容されるという、まことしやかな観念それ自体にも、特撮マニア諸氏は疑義の目を向けた方がイイのだろう。そんなものをよろこぶのは結局は我々のような特撮マニアだけだったのである――もちろん、筆者などもかつてはその典型のようなひとりではあったのだけれども(汗)――。
一般大衆・庶民というものは、良くも悪くももっと低俗でIQも低くてTVのお笑い番組が大スキなのである――これは必ずしも大衆批判ではない!――。特撮マニアたちは自分の価値観や趣味嗜好が、世間一般の人間たちのそれとは懸け離れていたことを、もっと自覚して自己を相対視した方がイイのだろう。
日本でもさかのぼれば、すでに1970年代の中盤において、初期特撮マニアたちによる「恐怖の象徴としての怪獣が出現する怪獣映画を作れば、怪獣映画や日本特撮は再興するのだ!」といった、いわゆる「怪獣恐怖論」とは合致しないどころか、正反対のギャグ怪人を擁していた『戦隊』シリーズが大ヒットを飛ばしており、子供間でも絶大なる人気を誇っていたものなのだ。
初期特撮マニアたちからは「組み体操」などと揶揄されていた『戦隊』シリーズは、それ以降も商業的には実写子供番組の頂点に君臨しつづけて、ついには世界進出も成し遂げて、『恐竜戦隊ジュウレンジャー』(92年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20120220/p1)を原典とする『パワーレンジャー』第1作目(93年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20080518/p1)も、原典『ジュウレンジャー』以上にユルユルな内容(汗)だったというのに、メリケンや世界中の子供間では大ヒットを飛ばしたものなのである。
非リアルでも、普遍的なドラマやテーマは構築可能なのだ。ドラマやテーマがない作品でも面白い作品は成立しうるのだ。マンガ・アニメ・コメディ的な要素の導入で、作風の幅を拡げることや登場人物たちのキャラを立てること。21世紀の現在では、そちらの方向性にこそ「特撮」ジャンルを世間へと流通させるための可能性があるとすら思うのだ。
そもそもが『戦隊』シリーズのコミカル作風やギャグ怪人の存在も、系譜的には特撮マニア間では不当に低評価を与えられてきた『ウルトラマンタロウ』(73年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20071202/p1)のコミカル作風やギャグ怪獣の方こそが、実は先んじていたものでもあったのだ。
第2期『ウルトラ』シリーズへのリスペクトと、今のところはイイ意味でのマンガ・アニメ的な要素の導入やキャラクターの立て方が、早くも散見されている今回の『ウルトラマンメビウス』には、コミカル・コメディ・ギャグ風味の方向性も、一方で大いに積極的に取り入れてほしいところではある。
以上、萌さんの存在を肯定せんためにつらつらと述べてきた(笑)。
今回の#3の役目でもあった「基本設定」の紹介については、
●3週連続で怪獣が出現したことでの、25年ぶりの「怪獣頻出期」の再来を言明!
●ウルトラマンを殺したことがある怪獣バードンを配することで、ウルトラマンも「生物」の一種であることを改めて宣言!
●ウルトラマンの地球上での3分間の活動限界を示すカラータイマーを物理的な意味だけではなく、まだ生きているウルトラマン自身の「生命の輝き」として再定義!
以上の3本柱をマニフェスト(宣言・公約)とすることで、本作独自の設定の地固めも見事にできていたとも私見する。
もちろん、#1で25年ぶりの降臨を群集たちの大歓喜の声でもって迎えられたくらいに劇中世界では超メジャーな存在でもあるウルトラマンなのだから、彼らが生物(宇宙人)であることくらいは、そしてその活動限界を示すカラータイマーのことなども、劇中世界の一般庶民のみなさんは、特に年配者のトリヤマ補佐官なども、知っていて当然そうな気がすることは確かだ。
しかし、メインターゲットである幼児やウルトラシリーズにはくわしくないパパ・ママ層のことまでをも考慮に入れれば、このあたりについては劇中世界での大衆たちは実は無知であったとして、あらためて説明的に言及してみせることも、それはそれでそーいう都合論としてはアリにも思えるのだ。だから、筆者個人にとっては、このような描写も一応は許容範囲内ではあるのだ。
そしてラストでは、マンガ・アニメ的に半分はギャグのシーンとしているけど、ウルトラマンメビウスこと主人公青年のミライ隊員自身が、GUYS作戦室内での隊員間の談笑シーンで、
とつい自分の本名を失言してしまって、
「ヒマだったんで、考えてみたんです!」
などと、ヘタな言い訳をすることで、隊員間での新人ウルトラマンの名称も実の「本名」で決定する(笑)。
旧GUYSの生き残りでもあるリュウ隊員は、先の#2ではウルトラマンに頼ることを潔(いさぎよ)しとはしてはいなかったのだけれども、コレもこのシーンで、
「まぁ、オレたちがいっしょに戦ってやらないと、危なっかしいヤツだけどな」
などとそのポリシーを少々曲げて、妥協をしてみせる(笑)。
ジョージ隊員「アミーゴ。リュウの云う通りだ……。(腑に落ちたように)そうか、そのためにオレはここに……」
マリナ隊員「GUYSの仕事をつづけるってことは、ウルトラマンといっしょに戦うこと(喜)」
コノミ隊員「それって、恩返しになりません? 過去に地球を守ってくれたウルトラマンへの……。そしていつか、ウルトラマンメビウスに『ありがとう』って。そう云うの(悦)」
この一連のシーンについては、初見ではフツーに「まぁイイ感じかな?」くらいではあった感慨が、本稿の執筆にあたってセリフを採録するために、ビデオでくりかえしてこのシーンを再生して鑑賞しているうちに、何か超・名セリフのような気がしてきてしまって、今後のストーリー展開におけるテーマ的な伏線やその重奏・輻輳に、1年後の最終回ラストのことまでもが妄想されてしまい、早くも泣けてきたりして(笑)。
かくして作品自体の基本設定・屋台骨を紹介・確立すべき、「シリーズ構成」こと本作のメインライターでもある赤星政尚(あかほし・まさなお)センセイ脚本による『メビウス』序盤3話は、#1冒頭のセリフでもある「ありがとう」とも係り結びになるかたちで見事に完結したのであった……。