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ウルトラマンエース15話「黒い蟹の呪い」


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#15「夏の怪奇シリーズ 黒い蟹の呪い」

(脚本・田口成光 監督・山際永三 特殊技術・田渕吉男)
ファミリー劇場ウルトラマンA』放映・連動連載!)
(文・久保達也)
 夜、瀬戸内海に面した小さな漁村で灯篭(とうろう)を浮かべ、父親を供養(くよう)していた白シャツ半ズボンの少年・夢二(ゆめじ)が、落ちていた巻き貝を耳に当てると父親の声が聞こえてきた。
 カブトガニ(大蟹・おおがに)の密漁をしていた男。彼は夢二を追い払おうとすると仲間の男が巨大な何かによって海に引きずりこまれてしまった。
 三ヶ月前のある夜、ひとりで漁に出たまま行方不明になった夢二の父親はカブトガニを介して夢二に対し、岡山に迫る危機を警告し続けるのだった……


 今回から始まる『夏の怪奇シリーズ』であるが、この第15話は巻き貝を介して蟹(カニ)と話のできる不思議な少年・夢二を主軸に描いており、どちらかと云えばおとぎ話のような趣である。
 陽光きらめきさざ波寄せる瀬戸内海の海岸でウトウトと眠りこける今野隊員、夏休みを利用して東京から親戚の家に遊びにきた少女ユミコ(今野隊員の姪。巻き貝を珍しがる)と夢二の交流(脚本の田口成光らしさか)など、ロードムービー的で夏の海岸の情景が実に美しく(特にラストシーンの夕暮れの風景は絶品!)、味わい深く描かれており、そちらの印象の方が強くなって怪奇的な色合いは薄くなっている感がある。


 しかしながら公害によって海を汚染されたカブトガニの怨念をも地球侵略の手段としてヤプールが利用するという題材は十分に怪奇性に満ちており、変に幽霊話や妖怪変化などを扱うよりは直前の第14話『銀河に散った5つの星』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060805/p1)にて本作を離れたメインライター・市川森一が得意としていたファンタジー性の継承という意味でもふさわしいかと思える。


 精巧な瀬戸内海のコンビナート群や塩田や漁村、鷲羽山(わしゅうざん)ハイランド(=遊園地)の広大な特撮セットを意外に長大で立派な尻尾で叩き壊し、徹底的に焼き尽くす大蟹(おおがに)超獣キングクラブの眉間からの火炎の量はハンパではなく、まさにこれまでに積もり積もった恨みを晴らすかのようで迫真性に満ちている。


 また本作のキーワードとして登場するカブトガニは国の天然記念物なのだから普通なら造形物で済ませそうなところだが実物を撮影に使用しており、「蟹と会話するなんて科学的根拠がねえ」などと嘆くばかりではなく、こうした点に製作スタッフの意気込みを感じるべきであろう。蟹と会話をする少年の話を信じる北斗のことは、既に劇中で山中隊員が「あいつ岡山に来てボケたな」「いい加減にしろよ」などと散々バカにしているのだから(笑)。
 なおこの「おとぎ話」的世界観は次作『ウルトラマンタロウ』(73年)へと立派に昇華を遂げている。



<こだわりコーナー>
*今回登場するキングクラブは人食い蟹・超獣蟹・カブトガニ超獣などとも劇中で呼称される。ベロクロン・ドラゴリー・サボテンダー・ユニタング同様、緑と赤(あずき色?)の色彩だが、生物的なスタイルのゆえかなぜかサイケな印象はない。
 だがやはり異次元人ヤプールが造った生物兵器。一度は姿を消し(透明化?)、遊園地の上空に潜む。戦闘機タックアローが投下した窒素爆弾で姿を現し、酸素を遮断されて苦しむところは生物的だが。蟹モチーフゆえか口先の大きな開閉するハサミ、横っ腹に三本ずつ出た大きな突起、操演で表情豊かに動かすトゲだらけの長い立派な尻尾が特徴的だ。


*キングクラブは『A』中では比較的マイナーな超獣に属すると思われるが、なんと92年にバンダイから『ウルトラ怪獣シリーズ』の1種としてソフビが発売されている。同シリーズから商品化された『A』登場超獣は他にベロクロン・バキシム・アリブンタ・バラバ・エースキラー・巨大ヤプール・ヒッポリト星人であり(エースキラーとヒッポリト星人以外は(05年)現在絶版)、なぜカメレキングやガランを差し置いてこれがリリースされたかは大いなる謎である。
 同じバンダイの『HGシリーズ』でも今後リリースされるかどうか極めて微妙なこのキングクラブ、まともな商品化はほぼ望めないと思われるので持っている人は大事にした方が良い(筆者は地方の玩具店の売れ残りをかろうじて入手しましたが)。


*この回のためだけに造られた、漁村の石垣やら枝ぶり豊かな松の木やら精巧な木造・萱の小屋群やら洗濯物まで干してある住居など、特撮美術がまたすごいぞ。
*特撮マニア界には少ない、特撮シーンもきちんと観る特撮マニア(笑)には注目度が高い東宝の鬼才・田淵吉男特撮監督が、『A』第9『超獣10万匹! 奇襲計画』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060708/p1)、10話『決戦! エース対郷秀樹』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060709/p1)に続いて再登板。
 エースがピンチの際には背景を紫のスモークのイメージ映像にしたり、平成ウルトラにも受け継がれたウルトラマンに初めて相撲(すもう)の四股(しこ)を踏ませたギャグ演出(翌年のTV特撮巨大ヒーローもの『流星人間ゾーン』(73年・東宝)でも田淵はさらに各種特撮演出をスケールアップしているので要チェック!)、危機脱出時のドリル状光線や最後のトドメに新光線技を披露させたりとまたまたやってくれてます。


*夢二という少年のネーミングの由来は今回のロケ地である岡山県出身の画家・竹久夢二(たけひさ・ゆめじ)からかと思われる。70年代というより60年代風の薄汚れた白シャツ半ズボン姿(マンガ『花田少年史』(93年・02年にTVアニメ化)のような)がまた、当時の田舎の少年という感じで実に風情が出ている。
*漁村の警官「TACの。ほなら、今野さんトコの親戚かいの?」。村中が善くも悪くも顔見知りばかりの田舎らしさの風情を一言でうまく出したセリフだ。夏季休暇中とはいえ、北斗から異常の有無を問う定時通信が入ってしまうのがTACの職業のつらいところか(笑)。なお休暇中の定時通信は、『帰ってきたウルトラマン』第43話『魔神月に咆(ほ)える』における伊吹隊長が田舎に帰省した際の休暇風景でも見られる。


カブトガニ「人喰い蟹がおる。誰かが蟹を造り替えて、操っとるんじゃ」「毎日どんどん大きゅうなっていく。おまけに人間を恨む気持ちも、だんだん強うなっていくんじゃ」「魚も、貝も、棲みにくうなったからの。海辺の街を襲うらしいぞ」。
 ユミコとも会話ができなかったカブトガニ。試しに我らが北斗隊員が巻き貝に耳をあてると無言で意思疎通ができた。カブトガニ「驚いた。お前の心にある力はなんと強いのじゃ。おそらく人間の世界で一番強い力の持ち主じゃ。(略〜元凶は)そうじゃ、ヤプールじゃ!」。
 人間を同族とは捉えていないような達観した自然の使者ぶりの発言、夢二が「父ちゃん!」だけではなく「大蟹!」とも呼ぶところからも、夢二の父ではなくその声音を借りた、永年生きて高次な意識・精神を獲得したカブトガニの精だったのだとの解釈もできるだろう。
*ラストシーンでカブトガニは夢二に北斗と夕子を指して「おまえのうしろにいる人はウルトラマンエースじゃ」と告白する……ってそんなことバラしていいのか?(笑)


*視聴率18.3%


*本話よりオープニングのテロップで「TAC隊員」表記のみだった4人の隊員が、「山中一郎」「今野勉」「美川のり子」「吉村公三」と役名も表記されるようになる。兵器開発研究員・梶だけ役名が表記されないのは残念だが……
*超獣キングクラブの長大にして立派な尻尾の暴れっぷりはスタッフ間でも印象的だったのか、次作『ウルトラマンタロウ』第40話『ウルトラ兄弟を超えていけ!』で合体怪獣タイラントの尻尾として転生を遂げた。


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2006年号』(05年12月30日発行)『ウルトラマンA』再評価・全話評大特集より抜粋)



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