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ウルトラマンエース40話「パンダを返して!」

ファミリー劇場ウルトラマンA』放映・連動連載!)


「ウルトラマンA 再評価・全話評!」 〜全記事見出し一覧


(脚本・田口成光 監督・鈴木俊継 特殊技術・川北紘一
(文・久保達也)


 「人間たちが好きでたまらないパンダを我々の星に持って帰る」


 なんと今回登場する宇宙超人スチール星人(オープニングでは「宇宙超獣」とクレジットされている)は世界中からありとあらゆるパンダグッズを強奪してしまうという、私のようなコレクターの鏡みたいな侵略者である。
 しかし何故にパンダ収集を? といぶかる向きもあるだろうが、これには当時の世相が大いに反映されているのである。


 『A』放映当時の72年、故・田中角栄首相によって日中国交正常化が実現し、中国政府から親善大使として東京の上野動物園ジャイアントパンダ2頭が寄贈された。
 同年11月5日の初公開の日には上野動物園に5万6千人もの入園者が訪れ、6百人もの警備員で警戒にあたってもパンダ舎の前は大混乱となり、パンダとの対面時間は各人わずか30秒たらずだったという。結局パンダを見学できたのは5万6千人のうち1万8千人に過ぎなかったらしい(以上、日本文芸社『にちぶんMOOK 懐かしの昭和こども新聞』05年12月25日発行を参照)。


 以後コアラやエリマキトカゲウーパールーパー(笑)やら直立するレッサーパンダなど、今日まで連綿と続く珍獣ブームのはしりだったわけであるが、このパンダブームは72年末〜73年初頭の児童向けジャンル作品にもすぐさま波及した。
 72年12月17日封切の『東宝チャンピオンまつり』においては今をときめく宮崎駿が脚本、高畑勲が演出を務めたアニメ作品『パンダ コパンダ』が上映された
 (同時上映は『怪獣大奮戦 ダイゴロウ対ゴリアス』(円谷プロ)と『ゴジラ電撃大作戦(『怪獣総進撃』(68年)の改題短縮版)』!)。
 『ジャンボーグA(エース)』(73年)第5話『叫べナオキ! いまだ』にはパンダのぬいぐるみが怪獣化したデスコングキングが登場している。
 そして『アイアンキング』(72年)第14話『脳波ロボットの秘密』にはパンダ型の小型通信機が登場し、『人造人間キカイダー』(72年)第34話『子連れ怪物ブラックハリモグラ』ではブラックハリモグラの息子が終始パンダのぬいぐるみを抱いていた。
 さらに72年末にケイブンシャが発行した『原色怪獣怪人大百科 第2版』にはなんとパンダのポスターまで付いていたという具合である。


 それだけ当時の人々がパンダに熱狂していたという事実が容易に見てとれるわけだが、スチール星人はそれに目をつけ、異次元人ヤプールや地獄星人ヒッポリト星人がウルトラ兄弟を全滅させて地球人に心の拠(よりどころ)を失わせたような効果を狙ってパンダを盗んだと思われ、決して自身のコレクションのためではないのであろう。
 筆者も怪獣ソフビのコレクションが侵略者に盗まれでもしたら、おそらく絶望して当分の間は寝込んでしまうかも(笑)。


 スチール星人は全身が鋼鉄の20倍の固さの金属に覆われた宇宙人であるという設定であり、フワフワとした毛に覆われたパンダとの対比が絶妙である。
 またその設定とは裏腹に着ぐるみは軽量化がはかられており、エースとの対戦ではトランポリンアクションを多用し、文字通りの肉弾戦が繰り広げられ、スピーディーなバトルが魅力的に描かれている(もちろん当時多用されていた着ぐるみに仕組んだフラッシュからの光線技や火炎放射も披露し、都市破壊描写も絶品である)。
 また巨大感を演出するためにオープン撮影で下からのあおりを多用しているのも今回は印象的である。
 それにしてもスチール星人の人差指が異常に大きいというのも手癖が悪いということが端的に表現されており、デザイン担当者に対して頭が下がる思いである。


 人間体を演じた大村千吉(おおむら・せんきち)は、往年の東宝特撮映画の常連俳優であり、よく怪獣の被害に遭う役を演じていたが(ウルトラシリーズにも『ウルトラQ』(66年)以来、何度も出演し『A』では第12話『サボテン地獄の赤い花』でも被害者役で出演。ウルトラシリーズでの出演履歴は第12話の項を参照・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060801/p1)、
 今回は全身に黒マントをまとい、顔の演技と奇声だけで不気味な侵略者を見事に怪演している(二役で演じている耳の不自由な清掃人の演技がまた絶品!)。


 一見色モノ的作品ではあるが、今回監督を務めているのは『ウルトラセブン』(67年)第7話『宇宙囚人303』や第44話『恐怖の超猿人』でホラー演出に冴えを見せた鈴木俊継であり、スチール星人の不気味さは適格に表現されている。



 まあこれだけ書いても「パンダ泥棒の話なんてねえ……」と軽視する向きもあるだろうが、パンダマニアの薬屋の店主から「ミンミン」と名付けられたパンダのぬいぐるみをもらい、「ミンミンちゃんは絶対メスよ」と主張した少女がダンから「そんなことわかるもんか!」と反論された際に放つ


 「男には女の子の気持ちがわからないのよ」


 というセリフが全てを云い当てているように思う。


 ダンもまた姉の香代子がパンダ好きであることを知り、


 「女の子の気持ちってわかんねえや」


 と嘆く。つまりスタッフもそのへんの機微をわかっていて製作しているのだ。
 男女それぞれの性でしか理解できないものがあっていいと考える筆者としては近年の平等教育が……(ジェンダー論争をする気はないので以下略)。とにかく「パンダ盗難事件」は女の子にとっては一大事なのである!!
 もっとも今「パンダを返して!」と力強く叫んでいるのは、(05年現在)靖国神社参拝を強行して挑発を繰り返す日本国首相に対して怒りを燃やす中国政府かもしれないが(笑)。



<こだわりコーナー>
*薬局「パンダ堂」の店主を演じたのは横山あきお
 後年の『ウルトラマン80(エイティ)』(80年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19971121/p1)第46話『恐れていたレッドキングの復活宣言』ではその瓢々とした演技そのままに魔法使いのマージンを演じていた。
 また『ミラーファイト』(74年・『ミラーマン』(71年)本編からの抜き焼きと、アトラクション用着ぐるみを格闘させた新撮からなる平日帯番組)でもその瓢々とした声でナレーションを務めていた。
 なお氏は東映の連続TVドラマ『怪盗ラレロ』(68年)にも主演しているが、書籍『ウルトラマン・クロニクル』(竹書房・97年・asin:4812402697)のスチール星人紹介文の中には「かつてマラリア星から地球に逃亡してきた怪盗ラレロに似た長身の黒マントの男に変身し」という一節がある(笑)。


*今回中国からスチール星人が盗んできた本物のパンダも登場……って着ぐるみ丸出しであるが(笑)、一応世界的な規模で事件が起きているという壮大なスケール感を醸し出すのに一役買っている。苦しいフォローだ(笑)。


*視聴率16.2%


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2007年号』(06年12月30日発行)『ウルトラマンA』再評価・全話評大特集より抜粋)



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