(ファミリー劇場『ザ★ウルトラマン』放映「全話評」連動連載!)
ザ☆ウルトラマン#37「ウルトラの星U40の危機!! ウルトリアの謎?」 〜前後編の前編
ザ☆ウルトラマン#38「ウルトラ大戦争!! 巨大戦闘艦ウルトリア出撃」 〜前後編の後編
ザ☆ウルトラマン#39「ねらわれた巨大戦闘艦ウルトリア」
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#40『怪獣を連れた少年』
ペット怪獣オロラーン登場
(作・平野靖司 演出・辻勝之 絵コンテ・吉田透)
(視聴率:関東10.7% 中部13.6% 関西14.8%)
(文・内山和正)
(1997年執筆)
怪獣オロラーンを操り街を破壊する少年フェデリコ。
足をケガして逃げた彼を追ったムツミは銃をつきつけられながらも身を挺して雪崩(なだれ)から彼を救い、その心を少し開いた。
彼は自分の住むオペルニクス星を地球人が狙っているとヘラー軍団のロイガーに騙されて地球人を倒しに来たのだった。
ヘラー軍の円盤がオロラーンをさらっていったことを知った彼はヘラー軍基地に取り戻しに行くが、オロラーンはコントロール装置を埋め込まれており、それを取り外せば細胞分裂して死ぬ体になっていた。
(以上、ストーリー)
◎ムツミに少年が心を開くまでは無難な仕上がりなのだが、それ以後は強引。少年を死なせて悲しさや怒りをもたせるためだけのような。
◎放送時は好めなかったオロラーンだが、形態こそオリジナリティに欠けるものの、表情や体を丸めて玉になることなどアニメならではのユニークな魅力を感じる。
※:製作No.40『緑の星から来た少年(仮)』
#40『怪獣を連れた少年』
(文・T.SATO)
(2010年書き下ろし)
地球防衛軍のパトロール機が、高速で飛来する黄色い鋭角的な小型宇宙船と巨大な楕円型のピンク色に輝く光球とスレちがった!
即座に出撃する地球防衛軍・極東ゾーンの科学警備隊が今は所有するウルトラ人の巨大戦闘艦ウルトリア!
都市部のビル街を割って着陸した光球と宇宙船。宇宙船から降りてきた緑色の宇宙服のかわいらしい声の少年が、ピンク色の球を巨大な光球の頂点に投げるや、光球は首長竜のようなかわいいピンクの怪獣に変貌を遂げた!
その愛らしい姿に似合わず、その長い首を巻きつけてビル街を破壊し、口から冷凍ガスを吐いて地球防衛軍の戦闘機を氷結、撃墜させていく首長四足怪獣。
その姿は、蛇腹(じゃばら)や節目も何もない、ほとんどのシーンで影すら付けられていないベタな一色塗り。よく動いてはいるが、作画もよくない(笑)。
ほとんどギャグ漫画の絵柄の文法のような、鼻なしの丸い眼にアヒルくちびる、口のなかには歯も見えない人間ののどちんこが見えそうな(見えないが)、真ん中にスジも入った肉厚なまるい舌が見えるもの。首長竜のようでありながらも、骨格が感じられず、アメーバーのように不定形でもあり、極限にまで線を削ったそのデザインは、年長マニアからはケチも付きそうだ。
が、もうシリーズも終盤だし、筆者個人は変化球としては本話のような怪獣もアリではないかと思う。自分が最終審判者だなどとはもちろん思い上がってはいないし、平均的な視聴者像であったともいえないかもしれないが、リアルタイムの小学生時代の視聴で、この怪獣オロラーンの初期形態をイヤに思った記憶はない。……シリーズの序盤でこーいう顔つきの怪獣が出てきたら、さすがに少しイヤだったかもしれないが(笑)。
俊英・科学警備隊の小型戦闘機・バーディ3機の機銃攻撃の連続に、怪獣はついに突っ伏す。
しかし緑色の宇宙服の少年の
「オロラーーン!! 立て、立て! 立つんだ!」
との再三の呼びかけに、怪獣は立ち上がり、強力な冷凍ガスを吐いて、巨大戦闘艦ウルトリアも衝撃で煽られて、レーザー砲も作動しなくなり、一時撤退を余儀なくされてしまう。
怪獣を操っているのはあの少年だと気付いた、上空でバーディ3機を駆る科学警備隊の面々。だが、躊躇するヒカリ隊員とムツミ隊員を尻目に、マルメ隊員は少年を機銃掃射してしまうことで、キャラを描き分けている。
しかし怪獣はマルメ隊員やヒカリ隊員のバーディをその巨腕をふりまわして不時着させる。
バーディがビルに軽く一度突き刺さって落下するという変則パターンの映像を見せつつ、その直前にコクピットから宙に脱出したヒカリ隊員は空中でウルトラマンに変身!
ウルトラマンと怪獣オロラーンの戦いが早くも30分もの前半のAパートではじまった。激闘の末、チョップやキックの連発でついに地に伏すオロラーン。
不時着した機体の中で気絶から復活したマルメ隊員は機体から降りて、緑の少年に
「待て、坊主!」
と銃口を向ける。
「止まれ! 逃げると打つぞ!」と云いつつも、人間の子供の姿をした宇宙人をさすがに撃てないのか、敵に後ろを向けて逃げ出すも、転んで右ヒザをスリ向いてしまった少年を、
「危ない! 大丈夫か?」
と駆け寄るマルメ隊員の描写で、人物描写を単純なイジワル役にはさせていない。
ナマ身の人間なら当然想定されうる多面性をも保持させて、ここでは多少の憎まれ役(?)ではあっても、視聴者に対して過剰にイヤな感じをいだかせないようにしているとも受け取れる。
深読み的なことをいえば、#2「光るペンダントの秘密」(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20090510/p1)でムツミ隊員に接近するためヒカリ隊員を部屋に閉じ込めたマルメ隊員の欠陥人間ぶりは、つづく#3「草笛が夕日に流れる時…」(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20090516/p1)で危険な怪獣の子供を飼育してしまうゲスト少年に対して、充分にオトナとしてふるまい厳しくも悲しいケジメも付けさせるあたりで早くも中和、その多面性も初期編から担保されているワケでもあるのだし。
ふつうの人間の生活実感からいっても、小さな子供の姿をした存在を撃てる大人はなかなかいないものだろう。
この一連のマルメ隊員のバストアップ(胸より上のアップ)の表情演技シーンは、なぜかダントツですべて作画がよい。シッカリと影も付けられている(笑)。
本話のゲストであるフェデリコ少年はそれほどの作画でもないのだが。
いま本作を見返すと、本話にかぎったことではないが、ヒーローや怪獣にメカのシーンよりも、人間キャラの顔アップのシーンの方が、作画は概してよいことが多い(毎回流用されるバンクシーンは別として……。当時の他のヒーローもの・ロボットものなどのTVアニメでもそうだったのかしら?)。
まぁ人間キャラの作画が悪いと、見た眼的にもその落差はヒーロー・怪獣・メカシーンのそれとの比ではないのだろうから、アニメ製作の実務管理者なり各話演出家なり作画監督が考える配分・割り振りとしても、そちらに重点を置くのだろう。
あまりにマルメ隊員の作画がイイので、初期編のバンクセル画の流用か? それであれば、上がってきたセル画の出来があまりにヒドくて、撮影スタッフの方で、バンクセル画を流用撮影したのかとも思ったが(笑)。
ヘルメットの青い透明ガラスのゴーグルの片面の反射描写が、初期編だとスモークだったが、本話では他の後半の話と同様、この時代に流行りだすタテ長の白ベタになっているので、キチンとした新作画だろうと思われる。
(一応、初期編のエピソードでのマルメ隊員のバストアップを早廻しで確認してみたけど(汗)。上がってきたマルメ隊員の原画があまりにヒドくて、テロップにはなくても、キャラデザ・作画監修の二宮常雄センセイが直した可能性なども妄想するけれど・笑)
1回戦の終了後、怪獣は再びピンクの光球となり、黄色い宇宙船ともども高空に離脱する。
追跡するウルトラマン・バーディ・ウルトリア。
なぜか二手に分かれた光球と宇宙船。
光球はヘラー軍団の宇宙船に収容される。
かたや黄色い宇宙船は、少年のキズで操縦に難儀したのか、天気晴明なれども冬の雪積もる山岳地帯に不時着。
それを見て、二手に分かれてひとり先行して追跡していたバーディを滑走着陸させ、キャノピーを開けるやヘルメットを脱ぎ捨て、さっそうと飛び降り少年のもとへと駆けつける紅一点・ムツミ隊員。
ちなみに、キャノピーを空けてヘルメットを脱ぎ捨て一瞬アタマをふるって優美に髪をなびかせて飛び降りる流麗なシーンは、#19「これがウルトラの星だ!! 第1部」(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20090913/p1)からの流用でもある。流用もあるってことは、先のも新作画ではなく、やっぱり流用か?
ここから本話の(人間)ドラマがはじまる。人間の姿をした少年宇宙人とムツミ隊員との交流。
女性らしい優しさ・母性的感情から(もちろん職務からのふるまいもあるだろう)、少年を治療しようとするムツミ。
それを「来るな!」と拒み、「女なんか撃ちたくないんだ!」と云いつつも、銃口を向ける少年。
雪崩が起きて、脚が不自由で動きがままならない少年を抱えて宇宙船内に逃げ込むシーンは、お約束でもいったん転んで、腹ばい匍匐(ほふく)前進で間に合わせることで、スリルを増している。
山の中腹まで流されて気絶から眼覚めるや、ムツミ隊員はキズ口に包帯を巻いてあげていて、次第に心を開いていく少年。
そこに科学警備隊の面々が救出に駆けつけて、豪腕・強面(こわもて)なゴンドウキャップが船内に入ろうとするも、
「おまえは入ってくるな!」
と拒絶されて(笑)、しかしてムツミ隊員には心を許す一連の描写は、コレもお約束ともいえるがなかなかよい。
「ムツミのことだ、心配いらん」とのたまうも、あとから駆けつけたヒカリ隊員とマルメ隊員に「ムツミ隊員はどうしたんですか?」と問われて、無言で一瞬「なにがなんだかサッパリ不明」という表情で両手を広げて、即座に片手でアゴを支えて、もう片手で船内を指差すしぐさも味がある。
このへんは演出・絵コンテ・作画者の芝居心の勝利だろう。
少年はフェデリコという本名を明かし(ラテン系=イタリア・スペイン系の名前ですな)、回想シーンの映像も交えて、平和な故郷のオペルニクス星からヘラー軍団――本作第4クールの宿敵にしてウルトラの星・U40(フォーティ)の反逆者――のロイガー司令にそそのかされて、ペットのオロラーンとともに侵略者の星・地球攻撃に参加したことを物語る。
語りつつ真相も察知したフェデリコ少年は、「オロラーンはヘラー軍団の云うことなど聞かないから」と、オロラーンとともに故郷へ帰るためにヘラー軍団の基地(多分、土星の衛星タイターン基地)へとひとりで向かう。
……ココでハッピーエンドで終わってしまっては、何よりウルトラマンと怪獣とのバトルのクライマックスがなくなってしまうし(笑)、不謹慎なことを云えば、善意が勝利しても物語としてはあまりドラマチックなものではなくなってしまうので(汗)、話はまだつづく。
オロラーンは檻に封じ込められていた。すでに赤茶色の体色に染まり、歯と長大な二本の牙を生やし、手足に爪、巨大な背びれにシッポの先にも何本ものトゲを生やすという凶暴な形相ではあるも、頭頂部にムキ出しのメカが埋め込まれているという痛々しい姿で。
オロラーンは濃緑色のヘラー軍団の円盤に収容されて、地球攻撃に再度遣わされていく。
その場から必死で脱走するフェデリコ少年。ロイガー司令の「射殺してもかまわん!」とのひとことと、逃走中のフェデリコが軍団の兵士たちの銃撃を肩に浴びてしまうことで、敵の憎々しさをも演出。
オロラーンは工業地帯に再出現。
(資料では「改造オロラーン」と呼称。先のオロラーンと体色からしてちがうが、劇中では同一怪獣として科学警備隊にはスンナリ認知。そのへんはこだわるナ・笑)
フェデリコ少年の変節を疑うマルメ隊員と、何か事情があるにちがいないとかばうムツミにヒカリと、対比をまた描く。
遅れて到着したフェデリコ少年の存在を気にも留めずに、シッポでたたきふせようとするオロラーンの変貌をもシッカリと描写。
フェデリコは涙を流しつつ、オロラーンのことに気を遣いつつも、「倒されても仕方がない」とばかりに怪獣の弱点を健気に伝えて「オロラーンと天国でまた逢いたい」と、ヒカリ隊員の胸の中で息絶える。
ヒカリはウルトラマンに変身してオロラーンを倒す。
フェデリコ少年の遺体は、たくさんの花びらとともにカプセルの柩(ひつぎ)に入れられ、巨大戦闘艦ウルトリアから静かに射出され、隊員たちが敬礼を捧げる中、宇宙葬にふされるのであった……。
2010年現在でもTV特撮『トミカヒーロー レスキューファイアー』(09年)のライターとして活躍されておられる脚本家・平野靖司(現・平野靖士)氏。
リアルロボアニメ『銀河漂流バイファム』(83年)で頭角を現し、玩具メーカー・タカラ提供の90年代児童向け合体ロボアニメ「勇者シリーズ」初期三部作『勇者エクスカイザー』(90年)・『炎の勇者ファイバード』(91年)・『太陽の勇者ダ・ガーン』(92年)のメインライター、つづけて同じくタカラと円谷プロが組んだ実写特撮『電光超人グリッドマン』(93年)のメインライターを務めたことで、ジャンルファンには知られている。
デビュー自体は、円谷プロの特撮アニメ融合作品『恐竜大戦争アイゼンボーグ』(76年)で、『アイゼンボーグ』当時は円谷プロの契約社員として働いていたとCS放送ファミリー劇場『ウルトラ情報局』にて語っていたが。
本作『ザ☆ウル』放映当時はまだまだ若手のライターだったが幾本かを担当し、ゲストライター的な立場からだろうか、王道娯楽編も執筆されているが叙情的な泣かせる話で印象に残る。
その筆頭が初参加となった悲劇の傑作、同居怪獣オプト編の#12「怪獣とピグだけの不思議な会話」(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20090719/p1)だろう。
フェデリコ少年の声は、いたいけな子供の声が得意な栗葉子(くり・ようこ)。
(円谷プロ作品では、『ウルトラセブン』#19「プロジェクト・ブルー」のグレイズ・ミヤベ、映画『ウルトラマンZOFFY(ゾフィー)』や『アニメちゃん』(共に84年)でともに友好珍獣ピグモンの声を演じている)
TVアニメ『小さなバイキングビッケ』(74年)のビッケや、『昆虫物語みなしごハッチ』(70年)のハッチなど主演声優としても強い印象を残す。
さすがに本作でも名演で、かわいらしい健気な声ゆえに、正義の味方側を疑ったり敵対したりはしても、過剰にイヤな感じがしたりハナについたりはまったくない。
その最期(さいご)のシーンも、アリガチのお約束でも個人的にはけっこうグッと来て泣かせるが……。湿ったウエットなお話がキライであったり苦手な御仁を説得する自信もないけれど。
そしてスレたマニア的には、ゲスト少年が凶暴化した怪獣と決別する本作#3や、怪獣が悲劇の最期を迎える#12とも少し印象がカブるけれども、個人的には本話は通常編における良編だとも思う。
◎過去にマニア向け書籍等にて明かされて、DVDボックスのライナーノーツにも記述されている本話の仮題は、「緑の星から来た少年」。それに準じてか、シナリオに指定があったのか、少年の宇宙服も緑色に設定されている。
「緑の髪の少年」というと、近年ではマニア的には合体ロボットアニメ『勇者王ガイガイガー』(97年)の少年キャラを思い出す御仁も多いだろうが(?)、「色」付きの『緑色の髪の少年』というと往年(1948or49年・アメリカ・日本公開50年・ASIN:B000M06E4O)の反戦戦争の名作。このへんから、本話は着想されたのか?
◎そのDVDライナーに、『科学忍者隊ガッチャマン』(72年)の各話作画監督でも有名な、本作『ザ☆ウル』のキャラデザ・二宮常雄氏の筆によるフェデリコ少年のキャラクター設定画が掲載されているが……。エリを立てた宇宙服で、ワンパクで不敵そうな表情に少しカーリーヘアも入った中南米の混血少年ぽくって。
デザイン単独としては魅力的だけど、差別的な意味でなく云うのだが、悲劇ストーリーには似合わない、栗葉子の声も似合わないようなキャラデザとなっているので、だれの判断かは不明だけど、ことコレに関しては変更は妥当だったと思える(変更する気はなくて、単に設定画に似なかった……ということは、エリの省略からもナイとは思うのだけれども……?・笑)。
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