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ウルトラマン80 16話「謎の宇宙物体スノーアート」 ~硬質な手触りのSF怪奇編! エミ&イトウ活躍!

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ウルトラマン80』第16話「謎の宇宙物体スノーアート」 ~硬質な手触りのSF怪奇編! エミ&イトウ活躍!

テレパシー怪獣デビロン 友好宇宙人ルリヤ星人登場

(作・平野靖司 監督・広瀬襄 特撮監督・高野宏一 放映日・80年7月16日)
(視聴率:関東9.3% 中部10.8% 関西13.8%)


(文・内山和正)
(1999年執筆)


 科学技術館での「宇宙展」の目玉となっている、巨大な雪の結晶のような美しい宇宙物体スノーアートから、異常音波が発生していた。本作の防衛組織・UGMは調査に向かうが、館長は展示期間が終わるまで待ってくれと利益を重視する。主人公・矢的猛(やまと・たけし)と城野エミ(じょうの・えみ)両隊員はひそかに私服姿での調査を命令されるが……



 本話に登場するスノーアートとは、宇宙船オリオン号が海王星冥王星の軌道の中間で回収した、美術のオブジェのような無機物かつ巨大な雪の結晶状の物体である。そして、超音波をキャッチしたのは、UGMの電波通信班という部署であった。


 第1クールまでの中学教師編が終了して、マドンナ教師・京子先生も退場したことで、ヒロインに昇格したエミ隊員を印象づけようとしてだろう、前回15話「悪魔博士の実験室」(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100808/p1)での実験怪獣ミューとの絆につづいて、今回はスノーアートの美しさに魅せられて、中に閉じ込められていた怪獣デビロンに乗り移られてしまう姿が描かれている。


 それまでは中学校での描写が中心だったために、隊員の個性が比較的ウスかったUGMのテコ入れ用キャラクターなのだから当然なのだが、イトウチーフ(副隊長)を目立たせようという方針も濃厚だ。スノーアートの美への鈍感さを示しながらも、その虚実を見抜いていくのも彼なのだ。



 閉館時にトイレに隠れて、調査を続行する矢的とエミ。エミがペンライト状の携帯機械で赤外線を照射するや、スノーアートは震動しだして、小爆発とともに倒壊! その中からドライアイスが出てきて、足元を這うやエミ隊員を包みこんで、怪物へと実体化した!


 デビロンは垂直歩行の人間体型のようでもあり、カミキリムシのような節(ふし)ばった長い触手を頭部から下半身にまで垂らすことで異形(いぎょう)さも醸し出している。胸には細かな結晶の破片を付けていて、我々のような脊椎動物のような両眼ではなく、電飾が点滅する複数の眼を保持していることで、人間・動物的な愛嬌や安易な感情移入を拒絶する、白濁色のボディーを持ったデザインもとても独創的に仕上がっている。


 時すでに遅しだったが、その超音波の内容もUGMによって解読できていた。それは馬頭星雲に住むというルリヤ星人による警告であった。スノーアートは宇宙の檻(おり)であって、念力とテレパシーで生物同士を争わせて自滅させる宇宙の悪魔デビロンを封印したものだというのだ。デビロンの弱点はひとつしかなく、それは体内に瞬間的なエアポケット現象(急激な気圧変化)を起こして呼吸を止めさせることだけだというのだ。


 ナレーションによる説明と並行して、夜間の町々や高速道路の高架といった実に精度の高いミニチュアが特撮で表現されており、デビロンが光となって通過するや、その念力で爆発する様が描かれて、車両が高架から飛び出して燃えながら近辺のビルのベランダに突っ込むシーンも実に凄い。


 いま巷(ちまた)で活動しているデビロンが怪物デビロンであるのかエミ隊員であるのか、隊員たちによる葛藤の議論を挟みつつ、デビロンは白昼のビル街や荒れ地にもついに出現する!


 その眼から発する青白い光線のテレパシーによって、人心を「悪」へと変えるデビロン! 市民たちは互いに闘争を始めて車両の破壊などにつとめだした!


 このシーンでは、デビロンやUGMの隊員たちをクレーン(撮影機材)を使用して空中に吊るしてみせたり、ジープやトラックで「UNDA」(地球防衛軍)の軍服姿をした一般隊員たちのエキストラまで登場して、上層部からUGMとは別個にデビロン射撃を命令されたことが判明するあたりなども、実に凝っている。


 ウルトラシリーズのお約束で、デビロンは巨大化する!


 隊員たちがデビロンの青白い光線を浴びて正気を失った姿を見て、矢的もウルトラマン80(エイティ)へと変身巨大化する!


 80は、デビロンとそれに操られたUGM戦闘機部隊のふたつの敵を相手に苦闘する。


 と、デビロンが苦悶しだして、動きが止まった!(緑色の照明を当てて異常を表現)


 隊員たちの洗脳も突如として解けた!


 それはエミ隊員の意志であった。そして、エミ自身がデビロンのテレパシーを通じて、80に「このままでは……」「私を殺して」と訴えかけてくるのだ。


 同じく前回のラストで、おとなしくなって膝小僧をかかえている実験怪獣ミューに対峙するやさしい仕草の80につづいて、エミの「私を殺して」との訴えに、右拳をにぎりしめて気持ち下を向いて苦悩をしてみせる80のスーツアクター・福田浩の演技もすばらしい。


 80は背後からデビロンを羽交い絞めにして苦しめて、エミではなく80自身にデビロンを憑依させるという驚くべきバクチの手に打って出た!


 幸運にも意識を乗っ取られずに、そのまま宇宙空間まで飛び出して、デビロンを分離させた80は、ついにこれを自身の必殺技・サクシウム光線で粉砕するのであった……



 危険な目にあったのにも関わらず、美しいもの=スノーアートにまだ懲りていないことを表明するエミ隊員と、それにアキれる隊員たちとで、本話は明るくシメとなる。



 本放送当時は「エアポケット」というはじめて聞く単語が印象に残ったくらいで、何か内容が難しかったという記憶とデビロンの強さについての恐怖感だけが残っていた。いま見ると、悪に変えられた隊員たちや市民たちの眼のまわりのワザとらしい派手なメイクと演技とで、東映ヒーローもの的な安っぽいおかしさも感じられてきてしまう。とはいえ、そこを除けば、楽しめるエピソードであった。



◎「宇宙展」が開催されている科学技術館は皇居の近く、東京は九段下(くだんした)にある武道館の隣に実在している、近年ではスーパーフェスティバルなどのホビー系のイベントの会場としても使用されている、実在する科学技術館でのロケである。


◎前話で宇宙母艦スペースマミーが半年間の巡航から帰還したとあり、1980年の翌年(?)である可能性を指摘してみた。しかし、本話では科学技術館の建物の入り口の上に貼られた「宇宙展」の巨大な垂れ幕(本編美術班の力作だ!)をじっくりと見てみると、本話が放映される1980年の7月中の開催とあった(汗)。


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2000年号』(99年12月26日発行)『ウルトラマン80』大特集・合評8「ウルトラマン80全話評」より分載抜粋)



謎の宇宙物体スノーアート

ウルトラマン80 城野エミ写真集 MEMORIES OF EMI
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#ウルトラマン80 #ウルトラマンエイティ
『80』16話「謎の宇宙物体スノーアート」43周年評! ~硬質な手触りのSF怪奇編! エミ&イトウ活躍!
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