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ウルトラマン80 19話「はぐれ星爆破命令」 ~遊星接近ネタの若槻文三脚本! 人類存続!? 他天体の生物を犠牲!? 葛藤&天秤!

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『ウルトラマン80』全話評 〜全記事見出し一覧


ウルトラマン80』第19話「はぐれ星爆破命令」 ~遊星接近ネタの若槻文三脚本! 人類存続!? 他天体の生物を犠牲!? 葛藤&天秤!

惑星怪獣ガウス登場

(作・若槻文三 監督・野長瀬三摩地 特撮監督・高野宏一 放映日・80年8月6日)
(視聴率:関東8.5% 中部13.7% 関西13.4%)


(文・内山和正)
(1999年執筆)


 太陽系に接近する巨大で真っ赤な燃える星。そのはぐれ星はレッドローズ(赤いバラ)と名付けられた。国際宇宙研究所のコンピューターが軌道を計算、それは地球と激突するコースを指し示していた。


 地球に接近してくる星という設定は、


●初代『ウルトラマン』(66年)25話「怪彗星ツイフォン」
●レギュラー敵であるインベーダーの母星・惑星X(エックス)が接近してくる円谷特撮『ミラーマン』(71年)最終回前後編(脚本・山浦弘靖
●怪奇隕石アクマニアが接近してくる『ウルトラマンレオ』(74年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20090405/p1)33話「レオ兄弟対宇宙悪霊星人」
●ウルトラの星自体が接近してくる『ウルトラマンレオ』38話~39話「レオ兄弟対ウルトラ兄弟」「レオ兄弟ウルトラ兄弟 勝利の時」
●『ザ・ウルトラマン』(79年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100430/p1)14話「悪魔の星が来た!!」(脚本・梓沢四郎 http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20090803/p1
●怪獣墓場から強奪した往年の人気怪獣たちを乗せた悪魔の星バラドンが地球に漂着する『ザ・ウルトラマン』27話「怪獣島(じま)浮上!!」(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20091102/p1
●『ザ・ウルトラマン』34~35話「盗まれた怪獣収容星」前後編(脚本・平野靖士 http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20091220/p1)(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20091227/p1


 などの前例がある。


――もっと云うなら、東宝特撮映画でも『妖星ゴラス』(62年)という古典特撮もある。こちらは、『ウルトラマンA(エース)』(72年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070430/p1)7話「怪獣対超獣対宇宙人」(脚本・市川森一 http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060618/p1)~8話「太陽の命 エースの命」(脚本・上原正三 http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060624/p1)の前後編でも、「ゴラス」ならぬ「妖星ゴラン」としてリメイクされている――


 地球人に自分の暮らしていた星を破壊された生物が核爆弾の影響で怪獣化し地球に復讐に来たという設定は、『ウルトラセブン』(67年)26話「超兵器R1号」(脚本・若槻文三)に登場したギエロン星獣や、『ウルトラマンタロウ』(73年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20071202/p1)24話「これがウルトラの国だ!」~25話「燃えろ! ウルトラ6兄弟」前後編(脚本・田口成光)に登場した怪獣ムルロアなども連想させる。


 調べてみると、これらのほとんどの作品を、本話と同じ若槻文三(わかつき・ぶんぞう)氏が脚本を担当していた。


 とはいえ、重く沈痛な作品だったように思う「超兵器R1号」に比べると社会派味はやや薄めでライトである。


 世界各国のすべての核ミサイルを発射して巨星レッドローズを破壊するローズ・プロジェクトが秘密裏に発動されることを、防衛組織・UGMのイトウチーフ(副隊長)は司令室で隊員たちに明かす。その最中に、長官室に呼び出しされるイトウチーフ。長官は本話には登場しないが、ナンゴウ長官のことだろう。


 何らかの非常事態を察知したマスコミに取材攻めにあってしまう、しかし作戦内容を明かすことができない(実は彼自身も作戦内容を知らない)立場のUGM広報班の太っちょ・セラの描写を挟んで、作戦室でのイトウチーフによるローズ・プロジェクトの説明がなされる。


 それは、レッドローズの現在地点と地球との中間地点であるポイント・UUV261(ツーシックスワン)でレッドローズを撃破するというものだった。そのために、手前のUUV248(ツーフォーエイト)まで宇宙戦艦スペースマミーで進行し、地上から射ち上げた核ミサイルを確実に命中させるために電波誘導する必要もあるのだ。超遠方であることと、核爆発の影響で危険がともなうその任務には、各国のUGMの中から我らが極東エリアのUGMメンバーが当たることが上層部の会議で決定されたことも明かされる。


 イトウチーフの判断で、自身とハラダ・タジマの若手両隊員がスペースマミー搭乗に任命されるが……。



 巨星レッドローズや核ミサイル群のミニチュアとその宇宙航行、地球に飛来するイメージ映像の合成シーンなどは、やはり後代の作品であるだけに、往年の「妖星ゴラス」などよりもリアルな出来の特撮映像となっている。ちなみに、『ウルトラマンA』の特撮も、本作同様に「東宝」に下請けに出されていたので、「妖星ゴラス」は「妖星ゴラン」のミニチュアにも流用されている(笑)。


 また、本話の宇宙は「漆黒」ではなく、初代『ウルトラマン』と『ウルトラセブン』の間に放映された60年代の東映宇宙特撮『キャプテンウルトラ』(67年)や、70年代のTVアニメの夜間シーンや宇宙のシーンのように「青みがかった色彩」で演出されている。


 巨大感あふれるスペースマミーを艦底から捉えて、前方奥へと進んでいく航行映像も長尺でたっぷり見せるなど、映像的には見ごたえのあるものとなっている。


 一方で、任務から外された主人公・矢的猛(やまと・たけし)隊員が、スペースマミー出撃寸前の基地内でハラダ隊員に影から当て身を喰らわし失神させて、代わりに搭乗したり、のちにそのことに医務室で気付いたハラダが憤慨するなどのヒューマンな描写も忘れていない。


 なお、世界各国が協力して巨星を核ミサイルで粉砕するネタは、実は前年のSFパニックの大作洋画『メテオ』(79年)からの引用でもあった。



 本作の場合、放っておいては地球自体を消滅させてしまう「はぐれ星」を破壊する際に、生物が存在していない(と地球人は信じていた)近くの四つの惑星も巻き添えを喰らって消滅してしまう……という状況となっている。地球人にとってはやむを得ない行動だろう。それらの惑星の生物の存在を知らなかったこともあり、責任がないとはいえないが、過失致死というべきものであり、被害にあった側が復讐してくるのは当然だとしても、人類の存亡がかかった地球人側の自衛行為を視聴者側が全面的には否定はできまい。


 さらに、復讐に来た地球で殺されてしまったギエロン星獣とは違う。滅びたガウス星から来た怪獣ガウスは命乞いをして、生存のための代用星へウルトラマン80にテレポーテーション(瞬間移動)で運んでもらうのだから、一応は口当たりの良いラストとなっている。


 宇宙人・ウルトラマン80であるがゆえにガウス星の生物の存在を知っているが、正体を隠すためにその事実を明かすことができない矢的猛の苦悩と、矢的を演じる長谷川初範氏の表情演技が痛々しく心にせまる。核ミサイル爆発寸前、ガウス星に生物反応が確認されるも、もうどうしようもできないあたりで、イトウを演じる大門正明氏の苦衷の表情演技もよい味を出している。


 その反面、80の超能力で最悪の事態になる以前に何かできたのではないかと少し疑問にも思う。


 もちろんドラマ的には矢的の苦悩・無力さに比重を置くために、ハラダの代わりにせっかくスペースマミーに搭乗したものの、有効な手立てを発揮することができない苦渋の方にスポットを当てた作劇としたのであろうが。



 防衛組織・UGMのオオヤマキャップ(隊長)は、ローズ・プロジェクトに関する作戦会議で海外・パリへ行っているという設定で出演していない――おそらくオオヤマを演じる中山仁(なかやま・じん)が『80』以外の仕事で出演が不可能だったのだろう――。


 UGM広報班のセラが密着取材のために無断でスペースマミーに搭乗して、イトウチーフに叱責されるあたりもよい味を出しているし、本作第2クール以降の新キャラである両者を目立たせることに成功している。



◎作戦行動を急ぐため、通常のように一度は衛星軌道で周回してから外宇宙へと航行するのではなく、衛星軌道をすっ飛ばして外宇宙にスペースマミーを直接進行させたからG(加速度)がキツかった……というあたりは科学的だ。しかし、レッドローズ接近の影響で、我らが太陽の熱エネルギーがそのレッドローズに吸収されていると設定されてしまうあたりについてだけは、あまり科学的・SF的ではないかもしれない。


◎本編監督は野長瀬三摩地(のながせ・さまじ。脚本担当時は南川竜の名義)。1960年代後半に放映された『ウルトラQ』・『ウルトラマン』(共に66年)・『ウルトラセブン』(67年)といった第1期ウルトラシリーズに参画以来、実に10数年ぶりの登板となる。


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2000年号』(99年12月26日発行)『ウルトラマン80』大特集・合評8「ウルトラマン80全話評」より分載抜粋)



編:『ヒーロー雑学もの知り大百科』(82年・ケイブンシャの文庫本サイズの子供向け豆百科)以来、明かされている通りで、本話の放映日は8月6日の広島の原爆忌であり、それを考慮して本放映では「核爆弾」「核兵器」のセリフがカット(差し替えか?)されて放映されたそうである。後年ソフト化されたものについては、本来のバージョンであるそうだ。


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