(ファミリー劇場『ウルトラマンエイティ』放映記念「全話評」連動連載!)
『ウルトラマン80』総論 〜あのころ特撮評論は思春期(中二病・笑)だった!
『ウルトラマン80』#19「はぐれ星爆破命令」 ~遊星接近ネタの若槻文三脚本! 人類存続!? 他天体の生物を犠牲!? 葛藤&天秤!
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『ウルトラマン80』第20話「襲来!! 吸血ボール軍団」 ~怪獣オコリンボール! ふざけた名とは真逆なハード編
コブ怪獣オコリンボール登場
(表記の他、吸血ボール登場)
(作・土筆勉 監督・野長瀬三摩地 特撮監督・高野宏一 放映日・80年8月13日)
(視聴率:関東8.1% 中部8.6% 関西12.9%)
(文・内山和正)
(1999年執筆)
当時の幼児誌『テレビマガジン』の連載マンガ版では中学校が舞台となっていた。シナリオとして土筆勉(つくし・つとむ)氏の名も記載されていたので、TV版もひさしぶりに教師ものになるのかと期待し、いつもながらのUGMものだったのでガッカリした記憶がある。
宇宙勤務を終えて一年ぶりに地球へ帰るムーンセレナーデ号のひとびと。銀色で平べったい直方体のボディが格好いい宇宙船だ。友や家族・恋人との再会をテレビ通信で果たしたばかりの彼らが宇宙空間を飛行する未確認物体に命をうばわれる冒頭は、パターンとはいえ残酷でつらい。観ているこちらが歳をとったせいか。
そのボール状の大量の物体群は地球上に降下して、次々とひとびとの首や手足に喰らいつき命をうばいミイラ状態に変えていく。日本中のひとびとが襲われたとされて、その映像化もされているのだから、『ウルトラマン80(エイティ)』(80年)という作品中でもめずらしい大惨事といえる。怪獣のふざけたネーミングとは対照的に残酷でハードな雰囲気を持った回なのだ。
ボール状物体数体がミイラ事件を目撃して調査のために停車中であった、本作のレギュラー放映組織・UGMの特殊車両・スカウターS7(エスセブン)の中にまで忍び込んでしまい、UGM基地の車両格納庫内にまで侵入し、車両整備員や警備員、そしてタジマ隊員までもがその餌食となってしまう。
その事態の連絡を司令室で受けたイトウチーフ(副隊長)は、ハラダ隊員・城野エミ(じょうの・えみ)隊員が、
「見殺しにするんですか!?」
と反対するような、ある処置をとる。
ちなみに、特撮ものにかぎらずTVドラマは基本的に「二本撮り」(2話分を1班体制でまとめて撮影する)のためか、今回もオオヤマキャップ(隊長)は不在となっている。説明はないが、前話に準じるのであれば、まだ海外に滞在中だと解釈すべきだろう。
強引にも格納庫を密閉シャットアウトし、実は完全ではないとされる防毒マスクの着用も命じて呼吸を浅くさせ、神経性ガスを5分間注入することを命じたのだ。それが彼を冷淡にも有能にも感じさせて、またもイトウのキャラクターを印象づけている。
タジマ隊員はとりあえず命をとりとめたものの、左首に取り付いたボール状の物体から伸びる触手が脳髄や心臓に達しているために(リアルなX線写真も!)、外科手術は不可能であり、生かすためには1000分の3の成功確率しかないという生存率の低い「低温療法」で、ボール状物体のみを殺すことに賭けるしかない。
そこまで深刻さで盛り上げておいて、あとはラストの怪獣とウルトラマン80の戦闘後に、タジマ隊員の容態の結果がわかるだけなのは多少物足りないかもしれない。ラストはタジマの回復を喜ぶUGM隊員たちがお見舞いしていた1階の病室に、ボールが飛び込んできて緊張が走って、しかしてその正体は!? といったところで「笑い」で締めとなっている。
物体が合体して怪獣オコリンボールになるシーンは、今ならCGでもう少しうまく処理できたかもしれないのだが……
◎東宝ビルトのセットでの特撮部分のみならず、本編部分でも怪しい生物感を漂わすピンク色の大量のボール状物体の造形物(短い触手もついている!)を用意。これを操演で浮遊させ演技させている。けっこうリアルで表情と躍動感ある多彩な動きをするので、本編班の助監督連中のみならず、特撮班の操演スタッフなども本編撮影に出張して手掛けたものではなかろうか?
◎反対に特撮部分になると、劇中でナレーションによる言い訳もなされるが、生物感と触手のないボール状物体へとなぜか変型をとげている。ウルトラマン80との戦いでは弾力を想起させるボールモチーフであることを活かして、80が怪獣に組み付いても弾き返されたり、背負い投げしようにもスッポリと両腕がスリ抜けてしまったり、倒れても即座にフィルムの逆回しで立ち上がったりとコミカルにも演出されることで、この怪獣の個性を強調している。
◎脚本の土筆勉は、一般ドラマや映画などでも有名な脚本家・石森史朗(いしもり・ふみを)の弟子筋で、東映特撮『5年3組魔法組』(76年)・『ザ・カゲスター』(76年)・『仮面ライダー(新)』(79年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210102/p1)・『仮面ライダースーパー1(ワン)』(80年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210822/p1)などにも参加。『スーパー1』のメインライター・江連卓(えづれ・たかし)同様、当時流行のアングラ(アンダーグラウンド)劇団の主宰をしていたとの情報もある。
(後日編註):役者や映画監督など多彩な活躍もしてきた本話の脚本家である故・土筆勉が、実は『ウルトラマンエース』(72年)で長らくナゾであった異次元人ヤプールの声優を務めていたことが2010年前後に有志の研究にて判明している!!