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ウルトラマンタイガ最終回「バディ ステディ ゴー」 ~タロウの息子としての物語たりえたか!?

(2021年6月12日(土)UP)
『ウルトラマンタイガ』序盤総括 ~冒頭から2010年代7大ウルトラマンが宇宙バトルする神話的カッコよさ! 各話のドラマは重めだが豪快な特撮演出が一掃!
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 ウルトラマンシリーズの正統番外編であるネット配信『ウルトラギャラクシーファイト』(19年)の第2弾『ウルトラギャラクシーファイト 大いなる陰謀』(20年)が、2021年5月26日(水)にBD&DVD発売記念! そして、同作にウルトラマンタイガも登場記念! とカコつけて、『ウルトラマンタイガ』最終回合評をUP!


ウルトラマンタイガ』最終回「バディ ステディ ゴー」 ~タロウの息子としての物語たりえたか!?

(文・久保達也)
(2020年1月12日脱稿)

*「最終章」ではなかった『ウルトラマンタイガ』の最終章(汗)


 仮面ライダースーパー戦隊もそうだが、近年のウルトラマンシリーズの「最終章」は、レギュラー悪との最終決戦に的をしぼった連続ものの形式で描かれることが常だったものだ。


・『ウルトラマンオーブ』(16年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20170415/p1)におけるライバル青年ジャグラス・ジャグラー
・『ウルトラマンジード』(17年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20170819/p1)におけるラスボス・ウルトラマンベリアル、そして彼と通じている壮年SF作家・伏井出ケイ(ふくいで・けい)=ストルム星人
・『ウルトラマンR/B(ルーブ)』(18年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20180826/p1)における大企業社長・愛染マコト(あいぜん・まこと)=ウルトラマンオーブダーク=精神寄生体チェレーザに、ナゾの美少女・美剣サキ(みつるぎ・さき)――彼女は厳密には「悪」ではなかったが――


 「昭和」や「平成」中盤までの時代に放映されたウルトラマンシリーズとは異なり、『ウルトラマンギンガ』(13年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200819/p1)以降のいわゆるニュージェネレーションウルトラマンシリーズでは、もはやレギュラーの敵キャラが登場するのが当たりまえとなっている。仮面ライダースーパー戦隊のように正義側のキャラと悪側のキャラの間にある深い因縁で結ばれた人物相関図を描く群像劇のクライマックスとしてもおおいに盛りあがり、視聴者につづきを早く観たくてしかたがないと思わせるこの手法。近年のウルトラマンシリーズがこの手法を採用したこと自体は正解だったと見てよいだろう。


 本作『ウルトラマンタイガ』(19年)でも、レギュラー悪としてナゾの青年・霧崎(きりさき)=ウルトラマントレギアが登場してきた。
 しかもトレギアは、『タイガ』で主役ヒーローとして活躍するウルトラマンであるウルトラマンタイガの父であるウルトラマンタロウのかつての友人として設定されていた。そして、第1話『バディゴー!』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190811/p1)の冒頭で描かれたように12年前に、


ウルトラマンギンガ
ウルトラマンビクトリー
ウルトラマンエックス
ウルトラマンオーブ
ウルトラマンジー
ウルトラマンロッソ
ウルトラマンブル


 といった7大ニュージェネレーションウルトラマンと宇宙空間で一大決戦を展開した!


 トレギアはウルトラ一族の故郷で自身の故郷でもあるM78星雲・光の国を攻撃しようとするも、


ウルトラマンタイガ
ウルトラマンタイタス
ウルトラマンフーマ


 といった、『タイガ』に登場する新米ウルトラマンたちも駆けつけてきてこれを阻止するが、圧倒的な猛威を見せつけるウルトラマントレギアによって3人のウルトラマンは宇宙の藻屑となって消え去ってしまう!
 タイガの父・タロウもまた、自身の全身を炎上させて自爆特攻する捨て身の荒技・ウルトラダイナマイト(!)でトレギアと相打ちになって姿を消してしまう!



 ウルトラマントレギアがこれだけの因縁も深い強敵として描かれた以上は、『タイガ』の終盤でも近年のウルトラマンシリーズの作劇を踏襲してタイガ・タイタス・フーマとトレギアの最終決戦を「最終章」として連続ものの形式で描くのだと、筆者は当然のように思っていたものだ。


 だが、『タイガ』終盤である第21話『地球の友人』~最終回(第25話)『バディ ステディ ゴー』は、そんな「最終章」「最終展開」とは呼びがたい構成となっていた。


 まず、第21話『地球の友人』は第18話『新しき世界のために』の続編的な内容であり、往年のウルトラシリーズでは初代ウルトラマンを倒したこともあるほどの最強怪獣である宇宙恐竜ゼットンの都市破壊で母親が重傷を負ったことで、宇宙人に復讐を果たそうとする青年をゲスト主役としていた。これは『ウルトラマンタロウ』(73年)第5話『親星子星一番星』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20080511/p1)でのタロウと大亀怪獣との戦いで両親を失った少女をゲスト主役にした名作回である第38話『ウルトラのクリスマスツリー』を彷彿とさせる趣向ではあった。


 ただ、そのゲスト青年が霧崎にそそのかされて復讐を果たそうとした相手は、宇宙恐竜ゼットンとは何の関係もないどころか、『ウルトラセブン』(67年)第48話~最終回(第49話)『史上最大の侵略』前後編では全人類を地底ミサイルで滅亡させようとした強敵宇宙人である幽霊怪人ゴース星人であった。
 『タイガ』第10話『夕映(ゆうば)えの戦士』に登場した暗殺宇宙人ナックル星人オデッサや第18話『新しき世界のために』に登場した触覚宇宙人バット星人のように、昭和のウルトラシリーズでは強豪宇宙人であったナックル星人やバット星人が人類に友好的で平和に暮らす宇宙人として、そのキャラを大幅に改変されての登場となっていた。


 いくら『ウルトラセブン』や『帰ってきたウルトラマン』(71年)などの昭和ウルトラシリーズとは別の並行宇宙にある別次元の地球が舞台である『タイガ』で、たしかにその宇宙人種族の全員が悪党ではない可能性もあるとはいえ、このようなエピソードにやや善良で同情の余地もあるゲストに割り振るのであれば、かつてのウルトラシリーズでは問答無用の凶悪宇宙人であったキャラクターを配するのではなく、それこそ先の『タロウ』第38話『ウルトラのクリスマスツリー』に登場した善良な宇宙人であるエフェクト宇宙人ミラクル星人などの方がよかったのではあるまいか?――当時の着ぐるみも現存しており、映画『ウルトラマンギンガ劇場スペシャル ウルトラ怪獣☆ヒーロー大乱戦!』(14年)でも再登場したのだし!――


 これではゴース星人ではなく、その着ぐるみを流用して別キャラクターとして登場した円谷特撮『戦え! マイティジャック』(68年・円谷プロ フジテレビ)第16話『来訪者を守りぬけ!』に登場した友好的な宇宙人・モノロン星人ではないか!?――つーか、それをねらったんだろうが、そんなネタは我々オッサン世代にしか通じないわい!(笑)――
 先に挙げた『セブン』最終回前後編でもウルトラセブンを絶体絶命の危機に追いやったハズの強敵怪獣である双頭怪獣パンドンに至っては、モノロン星人が飼っていた小さな猿が環境の激変で巨大化して大暴れした悲劇の怪獣・パッキーと同等の扱いであった(爆)。


*「王道」回のハズなのに『タイガ』の中では「異色作」!


 まぁ、上記の「変化球」のエピソードは『タイガ』としては「通常回」だったワケだが(苦笑)、つづく第22話『タッコングは謎だ』では、『帰ってきたウルトラマン』第1話『怪獣総進撃』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20230402/p1)~第2話『タッコング大逆襲』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20230409/p1)に登場したオイル怪獣タッコングが、それこそ『セブン』のカプセル怪獣のように「人類の味方」として、タイガとタッグを組んで『帰ってきた』第1話に登場した凶暴怪獣アーストロンの兄怪獣・凶猛怪獣ギーストロンと戦った。


――往年の初代アーストロンの着ぐるみを改造しての登場となった『帰ってきた』第8話『怪獣時限爆弾』の爆弾怪獣ゴーストロンはアーストロンの弟だったとウラ設定されていた。同じく近年のアーストロンの着ぐるみを改造したギーストロンを、筆者も特撮マニア諸氏らの見解と同様、アーストロンの兄だと解釈させてもらおう(笑)――


 『帰ってきた』の劇中音楽を大量に流用したり――しかもクライマックスバトルではかの名BGM『夕陽に立つウルトラマン』が流れた!――、『セブン』第42話『ノンマルトの使者』に登場したゲスト少年・真市(しんいち)みたいに、鼻の左に大きなほくろがあるボーダーシャツを着た少年・シンジ(笑)をゲスト主役にしたりと、かなりマニアックな演出が目立つ回ではあった。
 しかしながら、ギーストロンが両腕にある金色のトゲ状部分から発射した三日月(みかづき)状のカッターをタッコングが高速回転してカワしたり(!)、宙をジャンプしたタッコングがギーストロンにケリを入れたり、夕陽が水平線に沈んでいく海へとタッコングが帰還するラストシーンなどに、東宝の怪獣映画・昭和ゴジラシリーズ(54~74年)の後期作品群や、大映の怪獣映画・昭和ガメラシリーズ(65~80年・大映)のラストシーンなどを彷彿としてしまったのは、決して筆者ばかりではないだろう。


 球形のボディーの股下部分に小顔が突き出ている可愛らしくて親しみやすいデザインである怪獣タッコングは、その憎めないルックス的にも「悪の怪獣」としてよりも「正義の怪獣」としての配役の方が望ましいとしての処置だろう。たしかに『タイガ』としては「異色作」ではあるのだが、ゴジラガメラといった「正義の怪獣」「ヒーロー怪獣」に声援を送った世代としては、タッコングのヒロイックな描写も広い意味での「王道」ではあるのだろうし、本来のターゲットである現代の子供たちにも受け入れられるように思えてならないのだ――ただし、この回ではレギュラー悪のハズである霧崎=トレギアが登場する余地がなくなってしまっていたが(汗)――。


 そして、第23話『激突! ウルトラビッグマッチ』には、第15話『キミの声が聞こえない』に登場した頭脳宇宙人チブル星人マブゼが、凶悪宇宙人サラブ星人・反重力宇宙人ゴドラ星人・高速宇宙人スラン星人とともに再登場。
 第15話では、『ウルトラマンジード』第1話(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20170819/p1)ほかに登場した、同作の宿敵であるSF作家・伏井出ケイが悪のウルトラマンであるベリアルの力と、どくろ怪獣レッドキングと古代怪獣ゴモラの能力を秘めた携帯型の怪獣カプセル2種を起動して変身していた、いわゆる合体怪獣であるベリアル合成獣スカルゴモラの着ぐるみの使い回し(笑)だった培養(ばいよう)合成獣スカルゴモラをつくる際に使用した「ベリアル因子(いんし)」を再利用して、チブル星人がニセウルトラマンベリアル(!)を誕生させる! そして、今は亡き本来のベリアルの長年の宿敵であったウルトラマンゼロ、そしてトレギアを巻きこむかたちで、市街地をリングとしたタイガ&ゼロ VS トレギア&ニセベリアルのタッグマッチが繰りひろげられた!


 ニセベリアルはオリジナルとの差別化として手のツメが黄色く塗装されていたが、これは元祖『仮面ライダー』(71年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20140407/p1)終盤の白眉(はくび)となった第92話~第94話=ニセ仮面ライダー編3部作に登場した、ショッカーライダー1号から6号の手袋とブーツが黄色かったのを意識したものか?(笑)


 ゴドラ星人がベリアルのことを


「あいつは(ウルトラマンジードに負けたハズでは?」


と語るのは、ゴドラ星人(の同族)が『ウルトラマンジード』第16話『世界の終わりがはじまる日』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200523/p1)にも登場していたこともあり、『タイガ』と『ジード』が異なる並行宇宙を舞台としていても、近年のウルトラシリーズに登場する宇宙人たちは拳銃の連射で空間の一部を切り取って別の空間につなげることができたりと、並行宇宙間での越境が技術的にも容易になっているようなので(笑)、広い意味では歴代シリーズがつながった世界であることを表現もできており、「ハードSF」ならぬ「ソフトSF」(笑)としてワクワクさせるには絶大な効果を上げていた。


 その『ジード』ではレギュラーのサブヒーローであったゼロがニセベリアルを指さして、


ジードがせっかく成仏させたっていうのに……」


と語るのもまたしかり。タイガが自身と合体している主人公青年である工藤ヒロユキ(くどう・ひろゆき)に、ベリアルを「光の国の大罪人」としてやや説明的(笑)に紹介するのは、映画『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE(ザ・ムービー)』(09年・ワーナー・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20101224/p1)にて父であるウルトラマンタロウがベリアルと直接対決したことから、タイガにとっても因縁深い敵であることを表現した実に秀逸(しゅういつ)な描写だろう。
 そればかりか、ニセタイガに変身しようとしたザラブ星人をゴドラ星人が「光の国の連中に目をつけられる」(!)と制止する場面は、たとえ「昭和」のウルトラマンの世界とは別次元の並行宇宙ではあったとしても、今や『タイガ』の並行宇宙でも「昭和」の「光の国」出身のウルトラマンたちの存在が宇宙人たちに知られていることが明確にされたことになるのだ!


 また、先の第15話では苦労して誕生させたスカルゴモラをトレギアに瞬殺されたにもかかわらず、そのままチブル星人が退場してしまったことには違和感が残ったが、今回はニセベリアルを「でくのぼう」と称したトレギアに、再登場したチブル星人が「ワタシの芸術を愚弄(ぐろう)するか!?」と怒り心頭となって、配下の宇宙人たちにさらにベリアル因子を注入させた描写は、知能指数5万(笑)で「宇宙最高の頭脳」を自称するほどにプライドが高いチブル星人でも、知識はあっても知性はない(笑)、知識はあっても人格や徳性面では劣ったキャラ(笑)であることを的確に描けていたかと思えるのだ。


 さらに、タイガとニセベリアルが戦う最中にトレギアがビルに腰かけて高見の見物を決めこんだり、乱入したかと思えば「ホラよ」と両腕をうしろに組みながらウルトラマンフーマの足を蹴って転倒させたり、


「こんにちは、みなさん。そして、さようなら……」


と人間大サイズの侵略宇宙人たちが潜伏している部屋を覗(のぞ)きこんで――室内からの主観で窓越しにトレギアの巨大な顔面をとらえたカットが実に効果的だった――、そこに突進してきたニセベリアルをトレギアがかわしたことでそのビルがガラガラと崩れていくや、トレギアが軽やかにスキップして去っていく(笑)といった一連の描写は、トレギアをいわゆる「ネタキャラ」として存分に描きつくした演出となっていた。


 地球でひっそりと暮らしている宇宙人たちの人間態をゲスト主役とした話が「通常回」(汗)であった『タイガ』では、着ぐるみのままの宇宙人キャラを多数登場させてシーソーバトルに徹したこんな「王道」回が「異色作」に見えてしまったが(苦笑)、「子供番組」で「重い話」をひんぱんに描くのなら、視聴者を逃さないためにもこうした回も合間合間に挟むべきではなかったか?


*1話完結形式の弊害。そして「いきなり最終回」!(笑)


 「通常回」である第21話、「異色作」である第22話、「王道回」である第23話と、『タイガ』の終盤は良く云うならばバラエティに富む構成で、悪く云うならば最後の最後まで「昭和」のウルトラマンさながらの「1話完結形式」であり、視聴者の興味を完結まで持続させるにはどうなのか? と思えたものだったが、残るはもう第24話『私はピリカ』~最終回『バディ ステディ ゴー』の前後編だけである。
 かつて宝島社が名作マンガの最終回だけ(!)を集めて発行していたオムニバス本のタイトルではないが、連続ものの様相を呈していた近年のウルトラマンシリーズの終盤とは異なり、『タイガ』はまさに「いきなり最終回」となっていた(笑)。


 それにしても、主人公のヒロユキが所属している民間の警備会社・E.G.I.S.(イージス)でオペレーターを務めていた娘・旭川ピリカ(あさひかわ・ぴりか)までもが、「いきなりアンドロイド」(爆)だったとして語られてしまうとは……


 映画『ゴジラモスラキングギドラ 大怪獣総攻撃』(01年・東宝)の主人公・立花由里(たちばな・ゆり)役や、映画『特捜戦隊デカレンジャー THE MOVIE フルブラスト・アクション』(04年・東映http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20041106/p1)のレスリー星人マリー・ゴールド=デカゴールド役ですでに特撮出演歴のあるグラビアアイドル上がりの女優・新山千春(にいやま・ちはる)が演じたE.G.I.S.の女社長・佐々木カナは第24話で、ピリカの正体が実は7年前にカナが道端でひろったアンドロイドであると、E.G.I.S.の隊員ですでにその正体が地球人ではなく宇宙人として描かれてきた青年・宗谷ホマレ(そうや・ほまれ)とヒロユキに唐突に語ったのだった。
 これは『ウルトラマンA(エース)』(72年)第28話『さようなら夕子よ 月の妹よ』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20061111/p1)で、それまで主人公の北斗星司(ほくと・せいじ)といっしょにウルトラマンエースに合体変身していた南夕子が突然、月星人の正体を明かして退場したのを彷彿とさせたほどの唐突さであった(笑)。


 いや、彼女の正体が実はアンドロイドだったなんて、それまでのシリーズで何の伏線もなかったよね? 『A』の場合は種々の「大人の事情」で夕子を退場させねばならなくなったのだが、そんな「昭和」の時代ならばともかく、今の時代にこんな荒っぽい展開は通常ありえないのではあるまいか?


 これについては、カナ社長とホマレとヒロユキがカップラーメンの銘柄(めいがら)をめぐってジャンケンで争う場面にピリカだけがいなかったなど、ピリカだけが食事をする描写がなかったために、それがアンドロイドとしての「伏線」だったとする意見がネットで見られたものだけど、筆者のみならずほとんど全員の視聴者や特撮マニアたちが気づかないような「伏線」ではそもそも「伏線」としては機能していないし(笑)、いくらなんでもそれはあまりに好意的に解釈しすぎなのではあるまいか?
 たとえばもっとあからさまに、ヒロユキとホマレが人間大サイズの宇宙人たちに囲まれてピンチに陥(おちい)る中に乱入してきたピリカが突然、常人とは思えない怪力を発揮して宇宙人たちを全滅させるさまや、ピリカには子供時代の記憶がなくてそのことを自分でも悩んでいたりするようなさまをベタでもシリーズ中盤で描いたりして、「ピリカの正体とはいったい?……」といった、視聴者の興味関心を持続させる手法くらいは取るべきだったと思えるのだ。


 前作『ウルトラマンR/B』では、主人公兄弟の湊カツミ(みなと・かつみ)=ウルトラマンロッソと湊イサミ=ウルトラマンブルの妹として描かれてきた女子高生・湊アサヒ(最終的にはウルトラウーマングリージョに変身!)が、シリーズ中盤で家族アルバムの写真や思い出の品が何ひとつ存在しないと判明したことで、アサヒの正体をめぐってネット上では特撮マニアたちがさまざまな憶測が飛び交わせる二次的な楽しみ方もできるつくりになっていた。
 これと並行して兄妹(きょうだい)たちの母親である湊ミオ(演じたのは元グラビアアイドルである真鍋かをり!)が行方不明となっていることのナゾ解きなども展開されたことで、アサヒは実はミオが変身した姿ではないのか? といった憶測なども、筆者も含めた当時のマニアたちが下馬評を楽しく展開していたものだ。
 実際にはその予測は見事にハズれてミオとアサヒは別人だったワケだが(笑)、たしかに前作ともネタがカブってしまうとはいえ、そしていくら1話完結形式とはいえ、いや、だからこそ、せめてこうしたナゾ解き展開で視聴者の興味を持続させようとしなかったことは、やはり今どきの21世紀の作品としてはいかがなものだっただろうか?


 第17話『ガーディアンエンジェル』のラストにて霧崎がカナ社長を狙撃したのを皮切りに――ゲスト主役の宇宙人・ミードが身代わりとなってくれることで難を逃れたが――、ホマレとピリカが順に霧崎の襲撃を受けていく…… これらはヒロユキを精神的に動揺させるためにあえて周囲の大切な人物たちをねらったのだと霧崎自身が語ってもおり、霧崎=トレギアが最終回前後編で宇宙から呼び寄せた宇宙爆蝕(ばくしょく)怪獣ウーラーの活動を阻止する重大な使命を実は担(にな)っていたピリカのことが邪魔だからとして襲ったワケではなかったのであった。


 シリーズ途中からでもトレギアがピリカの正体に気づいたりするようなかたちで接点をつくることもなく、むしろトレギアの陰謀阻止とはまったくの無関係なものとしてピリカが抱えていた怪獣ウーラー撃滅の使命が設定されていたために、ピリカ暗殺未遂劇や第24話のピリカの正体明かしがより唐突に感じられてしまうのである……
 強(し)いて云うならば、霧崎がピリカを襲おうとした際に、ウーラーが地球に迫(せま)ってくるビジョンをピリカから感じとった霧崎がほくそ笑(え)んでいる描写があって、ピリカとウーラーにはなんらかの関係があるとは示されてはいたのだが、彼女の正体が宇宙人製造のアンドロイドである伏線としては説明不足にすぎるというものだろう。


*トレギア&ヴィラン・ギルドの動機が「理由なき反抗」でイイのか!?


 最終回前後編ではウルトラマンタイガ・ウルトラマンタイタス・ウルトラマンフーマ VS ウルトラマントレギアの最終決戦よりも、単身でウーラーの阻止に向かったピリカをE.G.I.S.のメンバー、そしてピリカの勇気ある行動に心を動かされたサーベル暴君マグマ星人と宇宙商人マーキンド星人の共同による救出劇に主眼が置かれた印象が強かった。
 一見は感動的な展開に見えるのだが、このようなストーリー展開にする予定があったのであれば、マグマ星人とマーキンド星人を毎回のレギュラーとまではいかなくとも、数話に一度くらいは憎めない宇宙人として登場させることで、彼ら侵略宇宙人たちの地球人に対する心の変遷(へんせん)劇なども描くべきであったと思えてしまい、やはり唐突感は否(いな)めなかったものである。


 彼らはその最後の行動動機を「怪獣兵器を売る商売がしやすかった地球を守るためだ」などと偽悪的にウソぶいて主張していたが(笑)、それまでにもマグマ星人は第1話『バディゴー!』、マーキンド星人も第1話と第2話『トレギア』に登場しただけだったし、そもそもの彼らの「商売」自体がシリーズ全編を通して描かれてもこなかったし、彼らの商売を邪魔したトレギアに対して一泡(ひとあわ)吹かせてやるといった発言すらもがなかったのであった(汗)。
 本作『タイガ』における侵略宇宙人たちの犯罪組織として設定されていた「ヴィラン・ギルド」だが、多種の宇宙人が単発的にしか登場しなかった。最終回で共闘するのであればそこから逆算して、少なくともマグマ星人とマーキンド星人は、たとえば時にはタイガたちと共闘して彼らの商売の邪魔になるトレギアを攻撃したり、その逆にトレギアと同盟してタイガたちを襲ってくるといった、敵が味方に味方が敵にとその立ち位置をシャッフルさせて、タイガ・トレギア・ヴィラン・ギルドの三つ巴(みつどもえ)の戦いを描いていくことを、一方のタテ糸にしておいた方がよかったのではなかろうか?――『ウルトラマンオーブ』に登場した第3勢力であったハズなのに、数名(笑)しか構成員が存在しなかった悪の宇宙人軍団である「惑星侵略連合」も、合計3話分程度しか登場しなかったので(汗)「ヴィラン・ギルド」と同じような作劇上の問題を抱えていた――


 本作『タイガ』のコレクション玩具でもある「怪獣の力を秘めたリングタイプのアクセサリー」をトレギアから奪ってオークションにかけてしまい、怒り狂ったトレギアとヴィラン・ギルドとの壮絶なお宝争奪戦が展開する!――それこそこの作品世界に登場する宇宙人たちには高値で売れるだろう(笑)―― といったような、「悪」同士のコミカルな対立劇などもやるべきではなかったか?
 最終回では「宇宙人(=外国人のメタファー・汗)を地球から追い出せ!」と叫んでいた排外主義的なデモ隊のメンバーを、よりにもよってその宇宙人たちである第18話で古い木造アパートのひとつ屋根の下でバット星人と暮らしていた変身怪人ピット星人がラスボス怪獣ウーラーの攻撃による都市破壊から救う描写があった――ピット星人は第18話に登場した人間態の「やさぐれ女」(笑)と同じく黒の皮ジャンにジーンズを着用することで同一個体であることを表現していた――。
 それ自体はとても良いシーンなのだが、しかし同時に、「ヴィラン・ギルド」の宇宙人の誰かも、ここで助っ人参戦・人助けに登場させてもよかったとも思うのだ。



 そのトレギア=霧崎が、第24話で自身には「何の目的もない……」などとニヒルなことをピリカに語っていたのに至っては、さすがに少々首をヒネらざるを得なかった。そこはベタでも旧友・ウルトラマンタロウに対する妬みや恨みや憎しみでなければ、『タイガ』という作品の基本設定的にもダメだろう!
 おそらく一種の意外性をねらって、タロウとその息子であるタイガへの単なる「憎しみ」ではなく、もっと「虚無的」「ニヒリズム」なところに行動動機を設定しようとしたのだろうが、それが成功していたとはとうてい思えない。
 タロウの古い友人だと設定されても、トレギアがいったいタロウとの間に何があって、なぜに闇堕(やみお)ちしてしまったかについてが結局、最後まで語られなかったこともあってか、これまでタイガやヴィラン・ギルドに対して散々やらかしてきたイヤがらせの類いは、その行動動機を裏づけるものが何もないものに堕(だ)してしまったようにも思えてならない。


 こうなると、『タイガ』はその「シリーズ構成」が最後の最後で破綻(はたん)してしまったというよりかは、「1話完結形式」として個々のドラマ性を重視しすぎたあまりに、シリーズとしての全体的な流れを考えないままで突き進んでしまったために、しかもその最終展開や一応のラスボスとして君臨してきたトレギアのキャラに関しては、その最後があまり盛り上がらないものになってしまったのではなかろうか?
 どんな作品でもスタッフは良かれと想って作品をつくっている以上は失礼な発言になってしまうのだが、『タイガ』がこうなってしまったA級戦犯は、各所でのインタビュー記事などで推測はつく。


 ウルトラシリーズ番外編シリーズである『ウルトラギャラクシー大怪獣バトル』(07年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20080427/p1)~『ウルトラマン列伝』(11年)~『ウルトラマンX(エックス)』(15年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200405/p1)までのメインプロデューサーを務めたのは、『列伝ブログ』なども執筆していたバンダイから出向してきたプロデューサー・岡崎聖(おかざき・ひじり)であって、テレビシリーズにおけるウルトラマンエックスの最終形態のアーマー(ヨロイ)は、アーマーを着用したエックスの着ぐるみをチェックしている際に、それまでに登場してきたあまたの形態のアーマーの各所を合体させた最強アーマーを思いついて急遽それを実現させたという、実にチャイルディッシュな発想に基づいた逸話(いつわ)に象徴されるように、ウルトラマンシリーズを21世紀の子供たちにも合うようなエンタメ性や玩具性を高める方向性での番組づくりを進めてきた御仁であった。
 その次の『ウルトラマンオーブ』(16年)・『ウルトラマンジード』(17年)・『ウルトラマンR/B』(18年)では、『ジード』のメインライターに人気作家の乙一(おついち)を連れてきた製作畑上がりの鶴田幸伸が主導権を握っていたのであろうことが読み取れる。
 しかし、本作『タイガ』では円谷側の筆頭プロデューサーであり、かの実相寺昭雄監督の製作プロダクションである株式会社コダイ出身で、平成ウルトラ3部作ではシャープでクールな本編演出や空中戦特撮を披露してきた北浦嗣巳(きたうら・つぐみ)が主導権を握っていたようであり、氏は「昭和の時代のような1話完結形式のウルトラシリーズに戻したい」という主旨の発言を各所でしてきた御仁でもあったのだ。そんな氏だから、おそらくタイガがタロウの息子であるという設定にも関心はさほどなく、そこの設定を掘り下げてタイガ自身のドラマも構築していくという発想もなかったのだろう(汗)。


 ……ウ~ン。1話完結スタイルのテレビシリーズに、今の時代の子供たちや特撮マニアたちが喰いつくと想っているあたりでそうとうに絶望的に感覚が古いような(汗)。というか、今から40年も前の特撮マニアたちも、特撮雑誌『宇宙船』の創刊号(80年)などで「当時の『宇宙戦艦ヤマト』(74年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20101207/p1)や『機動戦士ガンダム』(79年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19990801/p1)などの人気テレビアニメが続きものとしての連続ストーリー性を獲得して年長視聴者の鑑賞にも堪えうるものをつくっているのと比較して、当時のスーパー戦隊シリーズなどのテレビ特撮の方は1話完結型式の『VSOP(ベリー・スペシャル・ワン・パターン)』になっていて観るに堪えない……(大意)」などといった主旨の批判をしていた時代があったというのに……(汗)


 筆頭プロデューサー側がそういう意識でも、いやだからこそ撮影現場ではそれに抵抗して、むしろ良い意味での「愉快犯」としてトレギア=霧崎を描写・演出していけばよかったのでは? という想いもある。


 『タイガ』放映開始の数ヶ月前に公開された『劇場版ウルトラマンR/B セレクト! 絆のクリスタル』(19年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190407/p1)では、主に主役ではない2号ウルトラマンや悪のウルトラマンを演じてきた名スーツアクター・石川真之介による、他人を小バカにしたようなピエロ的に小気味よく軽やかにしなやかな仕草やアクションをしてみせる演技と、声優・内田雄馬によるイケメン悪役なボイスによって、「悪」ではあっても過剰な重たさはないようなキャラクター造型が、同作で初登場したウルトラマントレギアにはなされていた。
 しかし、『タイガ』では第1話~第2話のパイロット編を担当してメイン監督ともなった市野龍一監督による、トレギアの人間態である霧崎役の役者さんに対するディレクション・演技付けの方向性にはやや問題があったのではなかろうか? その正体であるトレギアとは異なり霧崎は、その出で立ちがモノトーンのピエロ的な扮装でも直立不動のままで静的に佇んでいるだけであり、道化(どうけ)て狂ってもいるような軽妙なお芝居を与えられてはいなかったのだ。そのへんでジャグラー・伏井出ケイ・愛染マコト・美剣サキちゃんといった、若い特撮オタたちいわく「円谷のヤベーやつ」(笑)といった強烈なインパクトが出せなかったのも事実ではなかろうか? まぁ、このへんは役者さんの一存でできるお芝居ではないので、メイン監督がヘタに前作までの差別化としてそのように撮影現場で静的にディレクションしてしまったことにも責任があったのではないのかとも推測するのだ。


 脚本内容が仮にまったくの同一であったとしても、霧崎役の役者さんにジャグラーや愛染マコト社長のようにテンション高くてフザケまくったお芝居をさせてあげていれば、本作『タイガ』の作風はもっと明るく弾(はじ)けて、ひいてはバランスも取れて、対比の妙で「お気の毒なゲスト宇宙人」たちの人間ドラマも際立って、「明るさ」と「暗さ」の行き来でメリハリもついたのではなかろうか?――完成作品としての『タイガ』については、近年のウルトラシリーズとしてはやや「暗さ」の方が勝ってしまった作品に仕上がった……という結論が、衆目の一致するところでもあるだろう――



 それでも『タイガ』で最後まで一貫していたのは、最終回に登場した宇宙の星々を食い尽くすウーラーまでもが、ピリカが語ったように「おなかが空いてるだけ」の「お気の毒な宇宙人」ならぬ「お気の毒な怪獣」として描かれたことだった(笑)。
 先述したジャグラス・ジャグラーや伏井出ケイ、愛染マコトらがたとえ「ネタキャラ」ではあってもその行動には「悪」なりの明確な動機があったのに対して、そういう動機が実は「何もなかった」とされてしまった以上は(汗)、トレギアがもはや憎々しげな倒してしまっても構わない、むしろ倒してしまうことで爽快感も得られる「大悪党」としての精彩を欠いてしまっていただけに、これでは「変身ヒーロー作品」のラストとして本来ならば最大限に描かれてしかるべき「勧善懲悪のカタルシス」が得られるハズもないだろう。


 それにしても、『ウルトラマンギンガ』のラスボスである悪のヒーロー・ダークルギエルから『ウルトラマンR/B』のラスボス怪獣であるルーゴサイトに至るまで、ニュージェネレーションウルトラマンシリーズの最終回に登場した怪獣たちはバンダイのソフビ人形『ウルトラ怪獣シリーズ』ですべて商品化が先行して登場したのにもかかわらず、『タイガ』の最終回に登場したウーラーだけは発売されることがなかった。
 玩具会社・バンダイ側の意向や販売スケジュールが先行して、子供たちに売れそうな怪獣デザインも昭和の時代とは異なり脚本完成以前に決定しているのだろうと思われる近年のウルトラマンシリーズとしては珍しい処置なのだが、そういう意味ではバンダイ側の『タイガ』担当者も悪い意味での右から左へと流していくだけのサラリーマン仕事で、最終回の怪獣のデザインなどにも強く関与してこなかったのだとすれば、この場合はその処置が「凶」と出てしまったのではなかろうか?(汗) 製作現場のトップたちにエンタメ的なセンスがなさそうならば、玩具会社の担当者の方でエンタメ性の増強のためにシャシャリ出てきて、ウチで販売するこのラスボスにふさわしい怪獣を大活躍させるようなストーリーをつくりなさい! なぞと介入をするべきだったのだ!(笑)


*テーマ・ドラマ・人間描写の方が優先か? ウルトラマンたちの描写の方が優先か?


 全世界的に自国第一主義が蔓延し、移民排斥の動きが強まる中で、日本も決して例外ではなく、悪化する一方の日韓関係や中国で新型コロナウィルスが発生した件に便乗した、韓国人や中国人に対するヘイトをはじめとする民族差別が、ネトウヨだけならまだしも出版物や一部のマスコミにまで横行している始末である(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210213/p1)。
 そんな惨状の中で、宇宙人たちがひそかに暮らしている並行宇宙の地球を舞台に、カナ女社長=地球人、ヒロユキ=ウルトラマン、ホマレ=宇宙人、ピリカ=アンドロイドで結成されたE.G.I.S.の活躍を描くことで、人種を超越したさまざまな生命体の共存を訴えていた『タイガ』の志自体は、おおいに評価してもよいだろう。ウーラーを一見、醜悪に見える怪獣としてデザイン・造形して、最後にはウーラーとも共存へと至るのも、そのテーマとも整合するものとして好意的に解釈してもよいかもしれない。


 ただし、『タイガ』よりも2ヶ月遅れで放映が開始されて、AI(エーアイ)=人工知能を備えたヒューマノイド型ロボット=ヒューマギアと人類との共存を訴える『仮面ライダーゼロワン』(19年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200517/p1)と比べると、実は同じような異種族同士の共存テーマをやっているのにもかかわらず、そのテイストはあまりにも異なっている。
 アメリカで同時多発テロが起きた2001年に放映されて、『タイガ』と同様に怪獣と人類との共存を訴えていた『ウルトラマンコスモス』(01年)の商業成績はイマイチに終わったが、テロを口実にイラクを武力攻撃したアメリカが主張した「正義」に異を唱えた東映のプロデューサー・白倉伸一郎が、多くの「正義」をぶつけることで自分とは異なる意見の持ち主をどう対処するのか? を世に問いかけた『仮面ライダー龍騎(りゅうき)』(02年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20021109/p1)は空前の大ヒットを飛ばすことになった。
 地球環境の保護を訴えるために『ウルトラマンガイア』(98年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19981206/p1)では2号ウルトラマン・藤宮博也=ウルトラマンアグルが「地球環境を汚している人類」に対する批判を再三口にしていたが、『炎神(エンジン)戦隊ゴーオンジャー』(08年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20080824/p1)では敵組織の蛮機族(ばんきぞく)・ガイアークが「地球環境を汚している作戦」を深刻にではなくあくまでもコミカルに描きつつ、ゴーオンジャーが動物と乗りものの特性を兼ね備えた異種族でもある機械生命体・炎神たちともカッコよく共闘しているさまが描かれていった。
 同じような環境テーマを描くにせよ、深刻な「人間ドラマ」主導によってテーマを陰気に強調してしまうのか? それともあくまで悪が暴れてそれを倒すヒーローを描くための背景・舞台装置としてとどめるか? 時代は移り変わっても、円谷プロはあいかわらず前者であって、東映は後者であるように思える。


ウルトラマンゼロ客演・先輩ヒーロー客演・追加ヒーロー登場編の突出した再生回数でも明白!


 たとえ「重い話」が多かろうが、3大新ヒーローであるウルトラマンタイガ・ウルトラマンタイタス・ウルトラマンフーマの初登場時のバトル演出のカッコよさや、彼らが交わすコミカルなやりとり、戦闘のプロフェッショナル集団ではない警備会社にすぎないE.G.I.S.が人間大サイズの敵宇宙人たちと頻繁に格闘してみせたりと、『タイガ』は序盤の時点では「社会派テーマ」が明朗な「アクション」といい感じに中和できているとたしかに感じられたものだった。


 だが、中盤を経てもなお「お気の毒な宇宙人」をゲスト主役にした「重い話」ばかりがあまりにもつづいたことに、さすがに飽きてきてしまった視聴者も多かったのではなかろうか?
 本誌に掲載された関東地方での視聴率表を参照すると、最高だったのは第5話『きみの決める未来』と第9話『それぞれの今』が1.1%。最低が第13話『イージス超会議』と第14話『護(まも)る力と闘う力』の0.6%だったが、その差はわずか0.5%(汗)では正直指標としてはほとんど意味をなさない。悪い意味で安定していたと解釈すべきところだろう。関西に至っては最高が0.6%、最低が0.1%であり、こうなるともう最高視聴率と最低視聴率も誤差の範囲内だろう(苦笑)。
 ただ、中部地区では最高が第1話と第2話の1.8%、最低が関西の最高よりも高い(笑)第9話『それぞれの今』と第19話『電撃を跳(は)ね返せ!』の0.7%であり、少なくとも1980年前後のころから関東や関西に比べて変身ヒーロー作品の視聴率が高くなる傾向が強かったことを思えば、いまだに『ウルトラマン』が受け入れられやすい土地柄なのかもしれない。


 旧態依然の集計方法が現在の時代にはそぐわないかと思える視聴率よりも、個人的には動画無料配信サイト・YouTube(ユーチューブ)の再生回数の方が、番組の人気がストレートに表示される指標だと最近では考えている。もちろんメインターゲットの子供たちが占める割合は極少だろうし、リアルタイムでの視聴にこだわったり、しっかりと毎週タイマー録画して、高額の映像ソフトを購入するような熱心なマニアたちの数もそこにはさして含まれていないかとは思える。むしろ週末に早起きして観るのもタイマー録画も面倒だ、映像ソフトなぞは買う気にもならない、でもちょっとは気になる……といったマニアの中での「ライト層」の若い世代こそが、YouTubeで現行番組を視聴する場合が多いのではなかろうか?


 『タイガ』の場合、第1話の再生回数は1週間で100万回を超えていたのだが、その後は右肩下がりをつづけて、中盤以降は30万回を超えるのがやっとという状況がつづいていた――第18話に至っては30万すら下回る29万回だった(汗)――。
 『仮面ライダー電王』(07年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20080217/p1)や『仮面ライダーW(ダブル)』(09年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100809/p1)、『仮面ライダーOOO(オーズ)』(10年)といった10年も前の平成仮面ライダー作品が毎回50万回~60万回だったのだから、現行作品の『タイガ』がそんな旧作の半分程度の再生回数しか稼げなかったあたりで、現在のウルトラマンの人気の低さが如実(にょじつ)に表れているといえるだろう――2019年12月から配信中の『仮面ライダーフォーゼ』(11年)に至っては、毎回「急上昇ランキング」の上位に入るほどの高い人気を誇っている!――。


 だが、2019年でデビュー10周年を飾って、いまだに根強い人気を誇っているウルトラマンゼロと、その宿敵であるウルトラマンベリアルのニセもの=ニセウルトラマンベリアルがゲスト出演した『タイガ』第23話の再生回数は、1週間で通常回の倍以上となる70万回にまで達していたのだ!――そして、その翌週に配信された第24話=「最終回前後編の前編」は1週間で35万回と、またいつもどおりに戻ってしまったのであった――


・高速道路を走っている自動車のミニチュアからの主観(!)で白昼の都会に現れたニセベリアルをとらえて、次の瞬間にニセベリアルが高速道路を破壊したり!
・ニセベリアルが右手のツメから紫色のブーメランを発射して、空中のウルトラマンタイガを撃ち落としたり!
 ウルトラマンタイタスとニセベリアルが拳法アニメ『北斗の拳』(84年・東映動画→現東映アニメーション フジテレビ)のごとく、すばやい高速の動きで両手のこぶしを打ちあったり!
ウルトラマンフーマが放った手裏剣(しゅりけん)を、ニセベリアルが持ちあげたビルでかわしたり!
・宙に浮かぶオーロラのシャワーの中から、ウルトラマンゼロが腕組みして登場したり!
・タイガ&ゼロ、そしてトレギア&ニセベリアルが発射した必殺光線がX(エックス)字状に交錯するさまを、上空から俯瞰(ふかん)してとらえたり!
・ゼロの父であるウルトラセブンウルトラマンジャックにウルトラブレスレットを与えたように、ゼロが「オレの力をこめたブレスレット」をタイガに与えたり!


 現在の若いマニア層も、「変身ヒーロー番組」「特撮番組」に求めているのは、やはりこのようなイベント性豊かな娯楽活劇編ではないのだろうか?


 ちなみに、昭和の時代に高い人気を誇った『仮面ライダーV3(ブイ・スリー)』(73年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20140901/p1)や『仮面ライダーX(エックス)』(74年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20141005/p1)、『仮面ライダーアマゾン』(74年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20141101/p1)などの再生回数は、先述した平成ライダー作品群からゼロを取った5万回前後にとどまっている(汗)。しかし、昭和の4号ライダーことライダーマンが初登場する『V3』第43話『敵か味方か? 謎のライダーマン』は1週間で20万回! 映画『五人ライダー対キングダーク』(74年・東映)と連動してその当時までの昭和ライダーの総集編として製作された『X』第27話『特集 5人ライダー勢ぞろい!!』は11万回! 仮面ライダー2号仮面ライダーV3がゲストで登場した『X』第33話『恐怖! キングダークの復しゅう!!』は9万回に達していたのだ!
 これは昭和の作品群にはあまり興味がないかと思われる若い層ですらもが、新ヒーローの登場や新旧ヒーローの競演・大集合が描かれた回だけはついつい観てしまうという事実を裏づける現象ではあるだろう。


 なので、『タイガ』の最終回におけるトレギアとのラストバトルは、ヒロユキ青年との合体抜きでもその肉体も含めてついに完全復活を果たしたタイガ・タイタス・フーマの3人を第1話の冒頭のように並べて登場させて、3対1のかたちで描くべきだったと思えるのだ。
 主人公のヒロユキが3タイプではなく3人もの別人のウルトラマンに変身できる画期的な設定こそが『タイガ』最大の特徴であり魅力であったように、タイタスは第3話『星の復讐者』、フーマは第4話『群狼(ぐんろう)の挽歌(ばんか)』と、それぞれの初登場回ではバトルスタイルがじっくりと描かれた。だが、それ以降はネット上でも「従来のヒーローたちのタイプチェンジと変わらない」という声が散見されたほどに、ほぼ毎回、ヒロユキはまずタイガに変身して、戦況に応じてタイタスやフーマにチェンジするといった調子であり、タイタスかフーマが劇中一度も登場せずに割を食う回すらあったほどだった。
 2010年代以降のニュージェネレーションウルトラマンが総登場した第1話や、先輩ウルトラマンであるゼロとの競演が描かれた第23話が突出した人気を呼んだことからすれば、もちろん3人のウルトラマンが全合体している状態である強化形態であったウルトラマンタイガ・トライストリウムもいいのだけれど、せめて最終回くらいはタイガ・タイタス・フーマが個別に登場して大活躍して、その共闘を描いたあとにトライストリウムに再合体するかたちにして、3大ウルトラマンの活躍をまんべんなく見せるべきではなかったのか?


*ドラマ性を重視でも、肝心のウルトラマンたちにはドラマ性が希薄


 ただ、これは決して最終回としての絵的なハデさばかりを求めた上での提言ではない。先述したように、『タイガ』はさまざまな生命体の共存をテーマにした作品だった。であるならば、


・M78星雲にある光の国出身であるタイガ
・U40(ユー・フォーティ)出身であるタイタス
・O‐50(オー・フィフティ)出身であるフーマ


 出自が異なる3人のウルトラマンがいかにして過去においてトライスクワッドなるチームを結成するに至ったかについても、劇中でキッチリとしかるべき本編と連動した回想のかたちで描くべきではなかったのか?
 YouTubeで配信されていた『トライスクワッド ボイスドラマ』では、3人のウルトラマンが「しょーもないこと」(笑)でコミカルに争うさまが再三描かれていたが、テレビシリーズ『タイガ』本編ではタイガ・タイタス・フーマの対立はほとんど描かれてはいなかった。やはりその回のゲスト宇宙人や怪獣に対する各自の考え方・思惑(おもわく)の違いで少々争うくらいの不和描写はあってもよかったかと思えるのだ。
 そうした中で各自の成長・関係性の変化・心の変遷が生じたことにより、タイガ・タイタス・フーマが人種の違いを乗り越えた結果として、因縁の敵であったトレギアを共同で倒すに至る群像劇こそが、「共存」をテーマにした『タイガ』のクライマックスとして描くべきではなかったか? 「お気の毒な宇宙人」たちと比べ、タイガ・タイタス・フーマには劇中で描かれたかぎりでは、彼ら自身の「ドラマ性」があまりにも感じられなかったものである。それこそが『タイガ』が中盤以降に失速したり、マニアたちの興味関心を維持できなかった要因ではないかと考える。


 もっとも、変身前の主人公と変身後のヒーローが完全に同一人格である仮面ライダースーパー戦隊に比べると、変身する主人公とヒーローが一心同体ではあるものの、あくまで別個体であることが多かったウルトラマンの場合には、合体している人間とヒーロー双方のドラマを描きこむのはやや難しいところなのかもしれない。しかし、主人公青年・野上良太郎(のがみ・りょうたろう)に人格や個性もある複数のユカイなイマジン怪人たちが交互に合体することでヒーローのタイプチェンジも表現していた『仮面ライダー電王』が大ヒットしたことを想えば、やはりヤリ方次第であるのには違いない。
 たとえばシリーズ中盤から終盤にかけては、タイガ・タイタス・フーマの存在がE.G.I.S.の各隊員たちにも知られて、彼らとも合体して、隊員たちが変身できるようになったりすることで、イベント性を高めることもできたのではなかろうか? 「お気の毒な宇宙人」たちのドラマばかりをやっている場合ではないのである!


 ネット上でも散見された声ではあるが、「タイガがあのタロウの息子である必然性がない」とされてしまったほどに、この魅力的な設定は結局はほとんど活かされることがなかった。
 自身の因縁の敵であるトレギアを息子のタイガが苦労の末にようやく倒したのだから、せめてタロウが「よくやった。さすがわたしの息子だ」などと云って、ウルトラサインでタイガを誉(ほ)め称(たた)える描写くらいは入れるべきではなかったか? 先述した映画『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE』のラストシーンでも、戦闘中に亡くなったと思われたウルトラセブンがゼロの前に現れて、見事にベリアルを倒したゼロを「さすが、オレの子だな」と称えたあげくに抱きしめる場面があったくらいなのだから。
 まぁ、そんな描写は2020年3月6日公開予定の映画『劇場版 ウルトラマンタイガ ニュージェネクライマックス』(20年・松竹・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210704/p1)に期待すべきなのかもしれないが。ちなみに最新の予告編によれば、テレビシリーズの最終回で死んだように見えたトレギアは実はしぶとく生き残っていたことが判明している(笑)。


 いや、それ以上に、『タロウ』最終回(第53話)『さらばタロウよ! ウルトラの母よ!』に登場した宇宙海人バルキー星人を再登場させることで――アトラクショー用の着ぐるみの流用だったのだろうが、『ウルトラマンメビウス』第16話『宇宙の剣豪』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060928/p1)でも同族の別個体が登場、『ウルトラマンギンガ』前半でもまた別の個体がレギュラー悪として登場している――、その因縁の敵を相手に、巨大化しているバルキー星人をタロウの力を捨ててあくまでもひとりのナマ身の人間としての才覚と力だけで倒してみせた(!)『タロウ』主人公こと東光太郎(ひがし・こうたろう)を篠田三郎(しのだ・さぶろう)氏(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20071118/p1)が再度演じて(!)、東光太郎が並行宇宙を越境してきて闇堕ちしたタロウを救うこととなる展開を、望みウスでも個人的にはおおいに期待したいものである(笑)。

2020.1.12.


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2020年冬号』(20年2月9日発行)所収『ウルトラマンタイガ』終盤合評4より抜粋)


ウルトラマンタイガ』最終回間近、迫る地球の危機

(文・中村達彦)
(2019年12月14日脱稿)


 『ウルトラマンタイガ』(2019年)も2019年12月が最終回。その展開は近年の「ウルトラマン」シリーズの中でもややハードだ。

第21話「地球の友人」


 民間警備組織E.G.I.S.(イージス)に入社したい青年・田崎修がやって来る。第18話「新しき世界のために」の宇宙恐竜ゼットン襲撃で、母親を負傷させられた修は、宇宙人に異様な敵意を抱いており、カナ社長は修の態度に危惧しつつ彼を仮採用するのであった。主人公青年・ヒロユキやホマレ隊員は修に研修を行い、それにはE.G.I.S.に支給されたばかりの宇宙人識別装置・CQの使用法も含まれていたが、修はCQを持ち出してしまう。彼の背後には霧崎(悪のウルトラマンことトレギア)がいた。
 霧崎に導かれて修は市民に交じっている幽霊怪人ゴース星人を発見し電磁警棒で痛めつける。ゴース星人は駆け付けたホマレを翻訳機代わりにして、修とのコミュニケーションをとり敵意のないことを示すが、修は聞く耳を持たない。
 一方、霧崎はヒロユキと対峙し、挑発する口調でタイガのことをジグソーパズルになぞらえる。そのうちにゴース星人の飼っている双頭怪獣パンドンが山中から出現する。ヒロユキはタイガに変身して対峙する。火炎を吐き岩石を投げつけて対抗するパンドン


 拘束されたゴース星人はパンドンが暴れている理由は親代わりになっている自分を助けたいからだと言う。その様子に母を案じる自分と重ねて心を動かされた修は、ゴース星人のいましめを解いてタイガへ戦いの中止を訴える。
 しかしトレギアはパンドンを切り裂いて一瞬にして絶命させてしまう。そしてタイガから強化変身したトライストリウムの攻撃をかわしながら自分の真の狙いを明かす。ゴース星人の円盤には地底ミサイルが搭載されており、その地底ミサイルを手に入れるためにゴース星人を引き離す。修は利用されていたのであった。
 トレギアは去る前に地底ミサイルを発射する。ミサイル発射で地底から放出された地球や天体を構成する超物質・エーテルを目当てに、ナゾの存在が地球に接近してくる。
 パンドンの墓を作ってあげたゴース星人に謝罪をする修。それを許す星人。そして修は母の看病のこともあって、E.G.I.S.を退職するのであった。


 『ウルトラセブン』(1967年)第48&第49話(最終回)「史上最大の侵略」前後編に登場したゴース星人とパンドンが登場する。『ウルトラマンタイガ』第18話も関係している。しかし題材から当初想像していたストーリーとは異なっていた。『ウルトラセブン』では侵略者であったゴース星人が、パラレルワールドとはいえ『ウルトラマンタイガ』では善良な宇宙人として描かれた。霧崎からの地底ミサイル使用の依頼も断っている。力づくで地底ミサイルを奪えばよいのに、修を利用しようとするあたりは霧崎らしい。だがこのゴース星人はなぜ地球に来ていたのだろう? そこが語られなかったのは残念である。
(ゴース星人といえば、30年前に『ビッグコミックスピリッツ』に連載された漫画家・澤井健による『表萬家裏萬家(おもてまんけうらまんけ)』(1989)第1巻後半に、「史上最大の侵略」に登場したウルトラセブンそっくりのセブンの上司こと「セブン上司」のパロディと共に登場していた・笑)


 前話である第20話「砂のお城」で登場したCQが配備されており、その回でカナ社長が心配していた事態になってしまった。地球人の友情で物語は締めくくられたのが救いである。しかし第18話のゼットン出現の正確な経緯をホマレやヒロユキは修に説明したのか、それが明かされなかったことは残念である。本話と第18話に似た姉妹編的なエピソードは、『ウルトラマンタロウ』(1973年)の第5話「親星子星一番星」と第38話「ウルトラのクリスマスツリー」が姉妹編になっていた前例もある(ウルトラ兄弟が助命したほどの善良な亀怪獣の美談の裏にも怪獣災害にあった被害者がいたという話)。本話の脚本を執筆したのは、本作第11話「星の魔法が消えた午後」~第12話「それでも宇宙は夢を見る」の前後編も担当していた小林弘利
 そしてトレギアの計画も明かされた。親切そうに修に接していたが、実はそれは地底ミサイルを奪うためであった。地球から放出された超物質・エーテルに導かれて迫るもの、それは第19話でピリカの奥に霧崎が見たものであった……。


第22話「タッコングは謎だ」


 夜、本部でTVの前で語らっていたE.G.I.S.メンバーは、埠頭に怪獣が上陸したと知る。飛び出すヒロユキ。ウルトラマンタイガ・ウルトラマンタイタス・ウルトラマンフーマへと次々変身してそれぞれで対するが、戦意はないものの吸盤や石油で対抗する怪獣に次々に撃退されてしまう。翌日、怪獣は埠頭で眠り続けている。ヒロユキは出会った少年シンジに、そのオイル怪獣タッコングは凶猛怪獣ギーストロンを鎮めるために現われたが、タッコングは老いているとのこと。更にシンジはヒロユキとウルトラマンたちの関係についても知っており助けを求める。
 ヒロユキが事の次第が呑み込めないでいるうちに、地面を貫いてギーストロンも姿を現わした。眠っていたタッコングは目を開け、全身にツノを張り巡らせたギーストロンに立ち向かう。ヒロユキもタイガに、次いでトライストリウムに変身して、タッコングと共同でギーストロンに戦いを挑む。ウルトラマンと怪獣が共に戦う!
 ギーストロンからレーザーを受けるが、タッコングはその巨体をジャンプさせ、続いて口から吐く炎で全身を包んで体当たり攻撃! 同時にトライストリウムも攻撃も浴びせかける。ギーストロンを倒したあと、夕焼けの海へ帰っていくタッコング。その背中にはシンジの姿があった。
 その後、ヒロユキは宇宙から迫る何かを感じていた。


 タイガと『帰ってきたウルトラマン』(1971年)に登場した怪獣タッコングの共闘が描かれた。『ウルトラマンタイガ』の傑作話のひとつに数えられるであろう。『セブン』のペロリンガ星人が登場した第6話や『帰ってきた』のナックル星人が登場した第10話とも比べてしまう。
 怪獣アーストロンに類似したギーストロンの登場や、『帰ってきたウルトラマン』のBGMの使用など、タッコング登場回と同じ演出も見られる。本話は『帰ってきたウルトラマン』第1話へのオマージュが強い話だが、シンジ少年の立ち位置は『ウルトラセブン』第42話「ノンマルトの使者」に登場した真市(しんいち)少年とも重なる。ふたりを対比させると、シンジの方がヒロユキたち地球人に理解を示していて好感が持てるのだが。
 タッコングもギーストロンも地球人の環境破壊に怒りを感じているとシンジを通して語られている。ラスト近くで、ヒロユキも環境問題に前向きである様子にシンジは安心しているが、現在も日本内外で環境破壊が問題になっていることも思い浮かべてしまう。それがスタッフの狙いでもあるのだろう。
 人々が宇宙人のことを、続いて怪獣のことを、各々TV番組での街頭インタビューで否定的に語って、それにヒロユキやホマレが反応を見せるシーンがあるが、我々が日々感じていることと相通じている。


 特撮面では後半の戦いにおけるギーストロンのレーザー照射や、タッコングとトライストリウムが両者ともに全身火炎状態になって突撃するタロウの必殺技・ウルトラダイナマイトを模した攻撃描写に力が入っている。街のミニチュアセットにタコがモチーフの怪獣タッコングが登場しているせいか、たこ焼き屋や公園のタコ型すべり台などタコも強調されている。第20話での「タイ焼きが好きでタコを食べない」描写を念押しするように、ピリカがタコの玩具を見せホマレが嫌がるシーンもあった(笑)。


第23話「激突! ウルトラビッグマッチ!」


 ウルトラマンタイガやウルトラマントレギアのために地球侵略ができない宇宙人たちの前に第15話にも登場したチブル星人が再登場して、ベリアル因子を使って悪のウルトラマンであるベリアルを復活させようと提案する。最強のウルトラマンベリアルを我々宇宙人たちが倒せば、光の国も手が出せないと言う。宇宙人たちはその案に乗る。
 市街に姿を見せるニセウルトラマンベリアル。ヒロユキはE.G.I.S.を脱け出し、タイガに変身してニセベリアルに対抗するが、偽者とはいえ強い戦闘力を持つベリアルはタイガやタイタスをものともしない。霧崎もウルトラマントレギアに変身して戦いに加わり、チブル星人はベリアル因子を注入してニセベリアルを狂暴化させる。激化する戦い。トレギアの策略でニセベリアルは宇宙人たちのいるビルを破壊してしまう。強化形態フォトンアースに変身したタイガも苦戦する。だがベリアルの攻撃からタイガを救ったのは、ベリアル因子を追って現われたウルトラマンゼロであった!
 タイガは強化形態トライストリウムに変身してゼロと共にベリアル・トレギアと戦う。ゼロとトレギア、超高速でパンチを浴びせ合う。互いに光線を撃ち合う4人のウルトラマン。タイガはゼロから与えられたブレスレットであるプラズマゼロレットでタイガダイナマイトシュートを発射する。トレギアに盾にされてニセベリアルは消滅する。ゼロは手の上でヒロユキを介抱し言葉を交わしたあと、別のベリアル因子捜索のために地球を去っていく。
 だが、ゼロの攻撃を逃れたトレギア=霧崎は宇宙へ視線を向けていた。


 本話の見どころは、タイガとゼロの共闘である。昭和のウルトラシリーズを彷彿させるが、当時の多くはただの顔見せに過ぎなかったウルトラ兄弟の客演に比べて、ゼロの活躍が相応に描かれている。
 今年2019年はゼロとベリアルが初登場してからちょうど10年。その再登場は嬉しい。ちなみにゼロはウルトラセブンの息子、タイガはウルトラマンタロウの息子だが、むかしの小学館学年誌などのでの設定によると、ウルトラの母の姉はウルトラセブンの母だから、タイガとゼロは「はとこ」の関係になる。
 宇宙人たちの会話やゼロの発言で、本物のベリアルは既に前々作の最終回でウルトラマンジードに倒されていることにもきちんと触れている。第15話「キミの声が聞こえない」で登場したチブル星人マブゼも再登場。ベリアル因子でベリアル・レッドキングゴモラを融合させたスカルゴモラを作った設定を生かしてニセベリアルを登場させたが、納得できる展開である。
 イベント性の高い熱血の共闘話ながら前半はギャグ話でもあり、初代『ウルトラマン』(1966年)第18話に登場した凶悪宇宙人ザラブ星人、『ウルトラセブン』第4話に登場した反重力宇宙人ゴドラ星人、『ウルトラマンマックス』(2005年)第4話(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060311/p1)に登場した高速宇宙人スラン星人が集まって(皆、人間への変身能力を持った宇宙人だ!)、ウルトラマン対策を話し合うシーンには良い意味で笑ってしまう(深夜の特撮コメディ番組だった『ウルトラゾーン』(2011年)か?)。
 E.G.I.S.も個々の隊員たちの活躍を描きつつ、ランチ選びにも熱心で、続いてTVに映ったベリアルの姿を「カッコ悪い……」と評するなど普段の緊張感がなく、ギャグ的に演出されている(このシーンに登場するインスタントラーメンの商品名は、過去のウルトラシリーズ作品でウルトラマンゼロと合体したことがある人間たちの名前になっている(笑)。ちなみに2012年の映画『ウルトラマンサーガ』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20140113/p1)でゼロに憑依されたのはDAIGO演じるタイガ・ノゾム隊員)。
 宇宙人たちはそれなりに作戦を考えてはいるが、チブル星人の方はベリアルを復活させたのは良いけど、その後どう扱うのかは考えていないようだし、ザラブ星人やゴドラ星人は『タイガ』とは別作品での個体だったが、利用しようとしていたベリアルに瞬時に倒されたことがあるのを忘れていてマヌケとして演出されている(笑)。結局、トレギアの策略により自分たちが生んだベリアルに、彼らが潜伏していたビルに突っ込まれてまとめて落命してしまった。
 その寸前にチブル星人が「チブルの科学は宇宙一(うちゅういち)~~~!!」という大人気漫画『ジョジョの奇妙な冒険』(1986年~)で聞いたような台詞を口にするのには笑ってしまった。


 トレギアは自分のゲームに熱心で、タイガやヒロユキに比べて偽者のベリアルやゼロの方には関心がない。ビルの上に乗っかって戦いを見ているシーンもある。そしてゼロもベリアルを倒したあと、すぐに別の平行宇宙へと去ってしまうが、もう少し滞在していてもよかったのでは? プラズマゼロレットは返却せずにまだタイガが持っているのだろうか? もうすぐこの世界の地球にもトレギアが呼び寄せた大いなる脅威が訪れるのだからこの武装は必要である。ゼロとタイガは10年ぶりの再会だそうだが、光の国のウルトラ一族たちはこの別の平行宇宙にいるタイガの所在がわかっているのだろうか?


 そしてこの次の回では、いよいよトレギアが招いた大いなる脅威がその姿を見せる……。


第24話「私はピリカ」

(以降、2020年2月8日脱稿)


 地球に迫ってきていた大いなる脅威が遂に埠頭近くの海に降りてくる。その衝撃に晒されるE.G.I.S.基地でピリカは失っていた記憶を取り戻した。カナ社長はホマレとヒロユキに7年前に宇宙から飛来したアンドロイドであったピリカとの出会いについて明かす。ピリカの正体についてはショックだが、ヒロユキに憑依している3人のウルトラマンたちもピリカが地球人ではないことに今まで気づかなかったのだろうか?(笑)
 外へ出たピリカだが、地球人としての意識も失ってはいなかった。そして霧崎は『ウルトラマンオーブ』(2016年)や『ウルトラマンジード』(2017年)、そして『劇場版ウルトラマンオーブ 絆の力、おかりしますす!』(2017年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200406/p1)や『劇場版ウルトラマンジード つなくぜ!願い!!』(2018年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20180401/p1)にも登場したロボット怪獣であるシビルジャッジメンター・ギャラクトロンMK2(マークツー)を繰り出してきた。ヒロユキはタイガに変身して戦いを挑み、プラズマゼロレットの力を使って額からウルトラセブンの必殺技エメリウム光線と同様の光線を放つ。


 だが、必殺技が強敵を撃破するより先に、地下から現われた宇宙爆蝕怪獣ウーラーがギャラクトロンを食べてしまう! タイガは強化形態トライストリウムに変身してウーラーにあたるが、長剣トライブレイドやエネルギーすら食べてしまうウーラーになすすべがない。
 ウーラーは宇宙のある文明が宇宙にゴミの廃棄を続けた結果、生まれた疑似生命であり、体内にブラックホール(!)を持つ。更にビルを食べ続けて、このままでは地球という惑星自体が食べられてしまう!
 その頃、ピリカはヴィラン・ギルドのアジトに向かい、地球から逃走しようとする宇宙人たちからコントロール装置を奪って操作する。自分にはウーラーを止めることができるとわかっていたのだ。
 アジトへ駆け付けたカナ社長やホマレ・ヒロユキらの説得を振り切り、自らの身をウーラーに突入させるピリカ。直後に外へと駆け出すヒロユキ。


 第19話や第21話でトレギアが仕組んだ計略は、地球にウーラーを呼び寄せることだったことが明らかになる。ピリカの正体も明かされて話は盛り上がるが、取ってつけた感もある。
 ウルトラシリーズにおけるアンドロイドの存在は、『ウルトラマンマックス』の女性ロボット隊員・エリーや『ウルトラマンギンガS(エス)』(2014年)でレギュラー敵のチブル星人が造ったアンドロイド・ワンゼロなどの前例がある(後者は改心して怪獣攻撃隊の隊員になる)。ピリカも宇宙人に作られたアンドロイドで、7年前にカナ社長に拾われたと明かされるも、それを裏付ける台詞やシーンはこれまでになく(コンピューター操作に優れているくらいか?)、伏線が語られて来なかったのでピンと来ない。
 第13話などでウルトラマンたちはピリカが地球人ではないと気付かなかったのか? 第23話ではたしかにひとり、ランチをめぐるジャンケンに加わっていなかったが遅すぎる。その前から皆と物を食べるシーンはなかったのか?
 今までは記憶を封じられていて、怪獣ウーラーが地球に飛来したから、アンドロイドとしての記憶に目覚めたわけでもなかった。本話で街をさまよっていたピリカは霧崎と出逢い、第19話では一方的に圧倒されていたのと違って、今回のピリカは霧崎に言い返してもおり、彼を苛立たせてもいるが、スカッとさせる半面、唐突すぎる変化でもあるから、キャラクターの不統一を感じてしまう。


 トレギアの策略も今までの陰険さから比べれば、実際にその策略の正体を見せられると内容が小さく感じられてしまう。もっと別にタイガを追い詰める方法があったはずだ。とはいえ霧崎は、先にギャラクトロンを送り込んでタイガと戦わせると見せかけて、実はウーラーに食わせてしまうことが目的で、その威力やそれまでの作品のボスキャラとの違いを視聴者にも見せているが。
 宇宙に棄てられたゴミから生まれた疑似生命・ウーラーの設定は、母星に見捨てられた者の復讐を描いた第3話や環境破壊ネタの第22話も反映しているのだろうか? グロテスクなデザインが効いている。


 悪い宇宙人たちの犯罪集団であるヴィラン・ギルドは、


・『ウルトラマンレオ』(1974年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20090405/p1)や『アンドロメロス』(1983年)に『ウルトラマンメビウス』(2006年)、『ウルトラマンギンガ』(2013年)や『ウルトラマンX(エックス)』(2015年)に本作『タイガ』第1話にも登場してきたサーベル暴君マグマ星人
・『ウルトラセブンX(エックス)』(2007年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20080413/p1)第3話や『ウルトラマンX』第14話にも登場してきた宇宙商人マーキンド星人


 などが登場するが、ピリカやE.G.I.S.の面々に圧倒されており、本来の悪人面を発揮できていない。ギャグ・キャラになっている(しかもそのギャグ・キャラを最終回まで引っ張るとは)。反面、ピリカに思いとどまるように説得するカナ社長・ホマレ・ヒロユキの真情あふれる態度には確かな迫力があった。


第25話「バディ ステディ ゴー」


 タイガは再びウーラーに対するが、光線エネルギーすら食してしまう怪獣ウーラーにまたも敗れ去る。そのヒロユキへと歩み寄る人影。人々はウーラーの出現を地球に居住している宇宙人たちの仕業だと思い込む。一方、E.G.I.S.のカナ社長やホマレに佐倉警部は、ウーラーの体内に入ったピリカからのメッセージをキャッチする。それによると、ウーラーには悪意はなく、ただ怯えているだけだという。そこへヒロユキが戻ってきて、同行したヴィラン・ギルドのマグマ星人やマーキンド星人がピリカの行動に感動して力を貸してくれることを伝える。マグマ星人の円盤に搭載されたマグマウェーブでウーラーを地上に引っ張り出し、タイガの力で宇宙へと放り出す作戦になる。その会話内容から、やはりE.G.I.S.メンバーはヒロユキとウルトラマンタイガの関係にすでに気づいていたことが判明する。
 ホマレとマグマ星人が操縦する円盤から発するマグマウェーブで地表に出てきたウーラー。そこへタイガが飛びかかるが、群衆の慌てる様子を見ていた霧崎もウルトラマントレギアに変身して割って入る。ウーラーを叩きのめすトレギア。その時、崩落してきたガレキから宇宙人排斥デモをしていた地球人を守ってみせる潜伏宇宙人たち。
 その後、トレギアに空へと飛ばされたタイガのブレスレットであるプラズマゼロレットがウーラーを宇宙へ。その時に地球を覆った輝きのあと、トライストリウムとトレギアとが戦う。その戦いの中で遂に「タロウの息子」であることを受け入れたタイガ。最後にタイタスとフーマ、そしてヒロユキの力を合わせた必殺光線・クワトロスクワッドブラスターが放たれて、トレギアは爆発の炎に飲み込まれていく……。
 地球は救われた。戦いのあと、佐倉警部にも認められてE.G.I.S.に入社するマグマ星人とマーキンド星人。続いてウーラーの体内から実は脱出ができていたピリカが姿を見せて物語は終わる。


 敵対していたヴィラン・ギルドのマグマ星人たちとE.G.I.Sの共同作戦、加えてラスボスのような怪獣を倒さずに地球を救ってみせるのは歴代ウルトラシリーズになかった展開でもある。トレギアとの戦いではタイガが「タロウの息子」であると受け入れたことに加えて、タイタスとフーマもそれぞれが初登場した第3話と第4話でトレギアに翻弄されていたのに、今回はトレギアを大いに苦戦させたのには、それぞれの成長を感じさせてくれる。
 そしてトレギア。大空に広がった輝きの美に思わず見とれてしまって、タイガにそのことを突っ込まれてしまう。直後に笑い出してタイガに敵対したが、一瞬改心しかけたのか否かについては、視聴者それぞれの想像と今後のウルトラシリーズでの展開に任せるしかないだろう。トレギアを注意して見てみれば、顔面のあちこちにまだウルトラ一族の名残りを感じさせてくれる。さすがに今までの悪行の数々を考えると仮に改心したとしても簡単には受け入れられない。一方、以前にヒドい目に合わされたのにも関わらずトレギアをも許してみせるような態度のタイガには人格的な器量の成長を感じさせてくるが……。


 前作『ウルトラマンR/B(ルーブ)』(2018年)最終回ラストの主人公兄弟の妹・アサヒ同様、ピリカがなぜ助かったのかが描かれなかったことについては疑問が残る。それと『ウルトラマンX』最終回のように、E.G.I.S.隊員たちとタイガら3大ウルトラマンたちが遂に最後に言葉を交わしあうようなシーンが観たかったのだが。
 マグマ星人たちもE.G.I.S.に入社した。『ウルトラマンタイガ』においては作品テーマ的にも「地球人と宇宙人の共存」を示しているシーンとして許容されるが……。次作では宇宙人たちとの関係描写はどうなるのだろうか? 欲を言えば、製作費(ギャラ)の問題をクリアできるのであれば『ウルトラマンタイガ』にこれまでゲストで出演した宇宙人役の役者さんたちにも最終回で再出演してもらうかたちで、戦いに巻き込まれた地球人を助けるシーンを作ってもらいたかった。


第26話(最終話)「そしてタイガがここにいる」


 最終回だが総集編であり新作ではない。実質的な最終回である前話の時点で来春2020年3月に公開される映画『劇場版ウルトラマンタイガ ニュージェネクライマックス』の予告編が流れて、この劇場版がTV最終回の後日談であり、E.G.I.Sの活躍や真の最終回である前話で死亡フラグが立っていたピリカの姿も確認できてしまっていたが、先にネタ晴らしをしてしまうようで面白さが半減した。予告編は今回の本当の最終話の方で流してほしかった。
 しかし、2013年の『ウルトラマンギンガ』からの歴代主人公たちが勢ぞろいするのにはシビれる。TV最終回で死んだように見えたトレギアがまだ生きていて、この劇場版でも敵役になることは紛れもなくなったが。



 総体的には『ウルトラマンタイガ』は全体としては、前作『ウルトラマンR/B』よりもハードな作品カラーであった。ここ数年のウルトラシリーズは昭和の旧作オマージュや旧作エピソードの変形後日談のような作品も多く、むかしの怪獣や宇宙人に寄り掛かっている感は否めないのだが、同時に現代社会に通じる問題を描いてみせていた。奇しくも本作最終回の直後の2020年1月に亡くなられた脚本家・上原正三のテイストを多く含んでもいる。果たして上原氏は『ウルトラマンタイガ』を観ていたのであろうか? とはいえ、上原テイストとは真逆かもしれない『ウルトラマンタロウ』テイストを含んだエピソードなども観たかったものだが。
 ヴィラン・ギルドの犯罪者宇宙人たちをはじめ、それとは別に地球に移民として住んで生活している宇宙人たちの事情についても、もう少し説明してほしかった。2014年の『ウルトラマンギンガS』以来のウルトラシリーズでは地球人に扮装して生活している宇宙人たちについてもたしかに描いてきており、今回の『ウルトラマンタイガ』ではそれらをより突っ込んで描いた作品であったとも捉えることができるが。地球で暮らす宇宙人たちとの共存は、次作以降のまた異なる平行宇宙が舞台となる『ウルトラマン』シリーズでも認められている設定になるのであろうか?


 ヒロユキはその前向きさと勇敢さは主人公としては申し分がない。しかし、E.G.I.S.の面々や霧崎の方も個性が出ていた。E.G.I.S.も一見は地球人でもその正体は宇宙人にアンドロイドなど、出自の違う者が集まって作られた組織で、予算や装備もなく怪獣と戦わない優しい民間企業の防衛チームとして、霧崎もまた主人公と相対するライバルキャラクターとして最後まで描かれ切っていた。
 ウルトラマンウルトラマンタイガの他にも、ウルトラマンタイタス、ウルトラマンフーマ、そしてタイガ強化形態フォトンアース、タイガ強化形態トライストリウムと5体も登場した。玩具を売る必要もわかるのだが、2クールしかない作品としては数が多すぎないだろうか? タイタスとフーマは、昭和の光の国出身のウルトラマンではない。しかし映像本編ではそのへんの説明があまりなされていない。1話分をまるまる費やしてタイガ・タイタス・フーマの3人の出会いとトライスクワッド結成を見せる番外編的なエピソードなども観てみたかった。


 果たして次作以降の『ウルトラマン』はどういうかたちになっていくのだろうか? その敵役はトレギアなのだろうか? 注視していきたい。


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2020年冬号』(20年2月9日発行)所収『ウルトラマンタイガ』終盤合評2より抜粋)


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ウルトラマンタイガ』『ウルトラギャラクシーファイト』『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』3大作品完結! 『仮面ライダー 令和 ザ・ファースト・ジェネレーション』公開! ~奇しくも「父超え」物語となった各作の成否は!?

(文・T.SATO)
(2019年12月27日脱稿)


 2019年の年末、奇しくもTV特撮『ウルトラマンタイガ』とネット配信『ウルトラギャラクシーファイト ニュージェネレーションヒーローズ』にSF洋画『スター・ウォーズ』の「続3部作」が完結を迎えた。映画『仮面ライダー 令和・ザ・ファースト・ジェネレーション』(いずれも19年)も公開されている。
 暫定的な速報として、この4作品をまとめて横断的にレビューして、4作に通底している「似て非なる要素」と「似て同なる要素」を明らかにしつつ、2020年代の日本特撮が目指すべき方向性を、微力ながらも透かし見てみたい。


ウルトラマンタイガ』は「ウルトラマンタロウの息子」としての物語たりえたか!?


 まずは『ウルトラマンタイガ』だが、本作のファンの方々には非常に申し訳ないけど、その最終回にかぎらず、シリーズ全体を通じてやや物足りない思いが私的には残った。
 タイガは昭和の時代のウルトラ兄弟中でも高い知名度&人気を誇るウルトラマンタロウの息子として設定された。そして、シリーズを通じた宿敵として青黒い悪の超人・ウルトラマントレギアもまたウルトラマンタロウの旧友であるとウラ設定されていた。アリがちといえばアリがちな因縁設定ではあるが、『ウルトラマン』のTVシリーズ作品としては珍しい設定ではある。
 加えて、本作#1冒頭で2010年代の7大ウルトラマン・昭和のウルトラマンタロウ・新番組ウルトラマンタイガに登場する3大ウルトラマンウルトラマンタイガ・ウルトラマンタイタス・ウルトラマンフーマ)vs悪のウルトラマンことトレギアとの一大バトルでトレギアは一歩も譲らず、トレギアとの相打ちの爆発四散のイメージでタロウの消息も行方不明になったというドラマチックな展開で開幕もしていた。


 そうであれば、シリーズのタテ糸として、ウルトラマンタイガは宿敵ウルトラマントレギアが実父ウルトラマンタロウと旧友であったことを、そしてその決裂の理由や経緯をシリーズ中盤で徐々に知っていき、トレギアもまた当初はヒヨッコのタイガを愉快犯的にもてあそび、あるいはのちのちの余興のためにタイガが自分と戦うのにふさわしい強さを兼ね備えさせるための鍛錬まで施して、しかして最後にその鼻っ柱を叩き折って絶望させることで嗜虐心を満たそうとするも、意表外にも強くなりすぎたことに脅威を覚えて、タロウへの憎しみをその息子のタイガにも重ねてホンキで叩き潰そうとするようになる……。
 しかして、終盤ではタロウも復活して助っ人参戦せねばならないほどの危機も迎えさせて、タロウは善戦して頼もしいところを見せつつもトレギアに苦戦し、しかして成長して逞しくなったタイガがトレギアを倒すことで主人公を立ててみせ、タイガの父超えの物語、ビルドゥングス・ロマン(成長物語)としてもストーリーを構築する!
 アリがちで常套で先行きの予想がついたとしても、カタルシスのある「王道の物語」ではあり、幼児はともかく児童や我々大きなお友達であれば、かようなストーリー展開・シリーズ構成を期待したのではなかろうか?



 心理学者フロイトが云うような「父超え」(父殺し)の物語はまったくの偶然だが、映画『仮面ライダー 令和 ザ・ファースト・ジェネレーション』と『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』でも作品の骨組み・背骨となっていた。ただし、コレらの作品でも「父超え」テーマありきではなく、まずはキャラクターがありきであったと推測される。「父超え」云々は後付けであり、キャラクターにサプライズな出自設定を肉付けしていく過程で、この「父超え」テーマに結果的に到達したのではないのかとも私見する。


仮面ライダー 令和 ザ・ファースト・ジェネレーション』も「父超え」の物語であった!


 『令和ライダー』はここ10年の現行&前作の2大仮面ライダー共演の正月映画の伝統に則り、最新作『仮面ライダーゼロワン』(19年)と直前作『仮面ライダージオウ』(18年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20191020/p1)が共闘する。さらにココにドラマ性やテーマ性はともかく、映画的な華・旗印やイベント性&キャラクター玩具の販促も込みでの映画限定のキャラクターとして、


・黒の素体に蛍光イエローのパーツがまぶしいゼロワンのさらなるマイナーチェンジ進化型の「仮面ライダー001(ゼロゼロワン)」
・001とゼロワンの系譜を遡及した先行プロトタイプともいえる、黒の素体にシブめの青いパーツをまとった「仮面ライダー1型(いちがた)」
・ゼロワンをいわゆる「敵怪人」にアレンジした存在だともいえる「アナザーゼロワン」


と都合3体もの新ライダーを登場させて、コレを目印としている――かてて加えて、ラスボスには昭和の1号ライダーのネガである「アナザー1号」まで登場!――。


 もちろんコレらをただ漫然とお団子状態で出しても、そのキャラクターが立ってはこない。
 そこで本作では「仮面ライダー1型」を、ゼロワンこと主人公の青年プータロウ社長(字義矛盾・笑)の今は亡きハズの父親が、歴史改変後のアナザー世界では生存していたとして、彼が「1型」に変身を遂げて主人公に立ちはだかる存在だともする。
――父といっても、本作冒頭から明かされて主人公青年も幼いころから熟知していた通り、実父ではなく『ゼロワン』世界で普及している高度なAI(人工知能)を搭載したアンドロイド(人型ロボ)であり、コレをTVシリーズ1話同様、中堅の域に達した俳優・山本耕史(やまもと・こうじ)が演じている――


 「アナザーゼロワン」ことアナザーライダーは、前作『仮面ライダージオウ』における各話ごとの敵怪人にあたる存在だ。それは未来から来た敵集団タイムジャッカーが過去の時代でアナザーライダー怪人を誕生させると、その時代に活躍する正規の平成ライダーが消滅、歴史も改変してしまう存在であるとされていた。この原理でアンドロイドが革命を起こして政権を奪取し、しかして人間とアンドロイドが平等に暮らす世界ではなく(汗)、アンドロイドが人類を旧勢力として抹殺せんとしている世界を舞台とした。
 『ゼロワン』世界の大企業の社長も主人公青年ではなくゲストである壮年アンドロイドが務めており、彼がアナザーゼロワンへと変身! 価値観の異なる3者による三つ巴の戦いとなっていく。
――アナザーゼロワンの蜂起は主人公の祖父(演・西岡徳馬)がアンドロイドへの報酬の概念を笑い飛ばした失望に遠因する。それでは祖父が悪人かといえば、彼も彼でアンドロイドの襲撃から社員を守って絶命。権力や粗暴犯などの積極的な悪だけでなく、善良な個人間の消極的な悪=無神経・不作為・無礼もまた分裂を拡大すると見るのも実に風刺的だ――


スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』は2つの「父超え」の物語でもあった!


 実は『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』も同趣向である。「旧3部作」の黒仮面の宿敵ダース・ベイダーもどきの仮面をかぶった悪役青年が主敵となるこの「続3部作」では、この悪役青年はダース・ベーダーの孫であり、「旧3部作」のメインヒロインであるレイア姫とチョイ悪アニキのハリソン・フォードもといハン・ソロ夫妻の息子でもあり、「旧3部作」の主人公ルーク・スカイウォーカーの不肖の弟子でもあって、ダークサイドに墜ちてしまった青年として設定されている。
 加えて、この「続3部作」の完結編でもある本作では、1部&2部では伏線のカケラもなかったのに(笑)、取って付けたように20世紀の「旧3部作」の最後で旧主人公ルーク青年に敗れて死んだハズであった顔面白塗り黒コートの老人、悪の旧・銀河帝国皇帝パルパティーンが36年ぶりに冒頭からすでに復活済みの状態で登場!!
 ネタバレさせてもらうけど、無名の庶民出と思われていた主人公の女剣士もまた、ウルトラマンジード(17年)のごとく銀河帝国皇帝の孫であったことが判明する。そして、物語は悪役青年のみならず、女剣士自身の父超え(祖父超え)の様相をも呈していくのだ。


――まぁたしかに今回の「続3部作」の前2編に登場した旧銀河帝国残党ファースト・オーダーやその老指導者スノークはやや小粒で、彼らとの小規模な前哨戦を延々と描いている感は否めなかったので、最終第3章にふさわしい大スケール・大バトル・大団円を描くためには、チリやホコリを払って説明ヌキでも大物悪党として描ける旧ラスボスにお出まし願って、実はファーストならぬファイナル・オーダー(笑)なる数百数千の無人スターデストロイヤー大艦隊もすでに準備済みであったと描くのは、活劇エンタメの作劇的な都合論ではあるけれども、物語の最後にボリューム感もあるドンパチを配置するために逆算するならば、コレがベストではなくともベターだとは思う。もちろん、ただ出てきただけでもナンなので、悪役青年のみならず主人公の女剣士とも強烈な因縁を持たせることで、彼女に主人公らしい葛藤ドラマを構築することもできる――


『ウルトラギャラクシーファイト』もまた「父超え」の物語の一種!


 牽強付会をさせてもらえば、『ウルトラギャラクシーファイト ニュージェネレーションヒーローズ』も「父超え」テーマに結果的にカスった作品でもあった。この作品は最新作『ウルトラマンタイガ』を除く、2010年代の7大ウルトラマンが活躍する作品ではあるのだが、フタを開けてみれば昭和のウルトラ6兄弟や21世紀の大人気キャラ・ウルトラマンゼロに、本作配信半年前の映画でデビューしたばかりのウルトラウーマングリージョまでもが登場する豪華な一編ともなっていた。
 黒いボディーの偽ウルトラマン軍団と宇宙の各所で大バトルを繰り広げる本作ではあるが、2010年代には新米ウルトラマンたちの頼もしい先輩・兄貴分として後輩たちのピンチに助っ人参戦、時に特訓もほどこしてきたウルトラマンゼロが本作では立場を逆転、閉鎖時空に囚われの身として描いて、むしろ7大ウルトラマンたちがゼロを奮闘の末に救出してみせることで、単なるシーソーバトルを描くのみならずドラマ的・テーマ的には7大ウルトラマンたちの成長、一種の「父超え」をも描いているのだ。


『タイガ』における地球に潜伏する宇宙人を「移民・難民」のメタファーとして描くことの是非!


 話を『ウルトラマンタイガ』に戻そう。『タイガ』にもむろんドラマやテーマはある。むしろそれは意表外にも社会派テーマであったりもした。
 『仮面ライダーゼロワン』が2019年9月に放映が開始されて、アンドロイドが人間の労働を一部肩代わりもしている世界観を披露した際、筆者のようなオッサンオタクで窓際族の肩叩き(リストラ)要員でもある我々は(汗)、ついつい条件反射でアンドロイドに職を奪われた人々の苦衷を脳裏に浮かべて、アンドロイドの労働力をバラ色の未来ではなく否定的に捉えもした――手前ミソで恐縮だが、本誌の『ゼロワン』序盤合評を参照されたし(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200517/p1)――。
 ヘソ曲がりの筆者なぞは後出しジャンケンで、その「アンドロイド」を「移民・難民」で代入してみせたら、それでも否定的に論じるのであろうか? 否定的には論じないまでも、失業問題&賃金下降圧力を勘案すれば、「グローバリズム」の美名の許での「移民推進」は善行のように見えて、資本家の利益に加担するだけの悪業に他ならないとナゼにわからないのであろうか? などとイジワルなことを考えていたのだが(笑)。


 しかし、映画の神様のイタズラか、10月からの『ウルトラマンタイガ』後半は、あまたの「宇宙人」が秘かに市井に潜伏しているSF設定を逆手に取って、「宇宙人」を現今の「移民・難民」のメタファーとして描く話が連発されていく!
――むろん7~12月の半年放映、翌春には90分尺の映画を公開する年間スケジュールが確定している2010年代のウルトラは、SNSでのスタッフの発信を見るかぎり、安価で製作するために4~8、9月のほぼ4~5ヶ月間で突貫撮影を敢行しており、全話の脚本も撮影前までにはほぼ完成しているようであるから(今どきの3ヵ月の深夜ドラマも2ヵ月間での撮影を敢行しており同様のようだが)、『タイガ』が9月開始の『ゼロワン』に刺激を受けて向こうを張ったということはアリエナイ――


 「宇宙人」を「移民・難民」のメタファーと捉えてニガ味のあるドラマを構築した態度を「快挙」と見るか「愚挙」と見るかは各自が決めることであり、両方の意見があってイイとも思うけど、個人的には「その志は壮とすべしだが、子供向け活劇エンタメとしてはいかがか?」といった感をいだいてはいる。
 よしんば往年の『帰ってきたウルトラマン』(71年)におけるアンチテーゼ編である#33「怪獣使いと少年」のごとき「移民・難民」「差別」テーマをやるにしても、であればなおのこと、彼らを苦境に追いやるトレギアvsそれを阻止せんとするタイガとの善悪対決色を強めるべきではなかったか?
 レギュラーかと思えばほとんど出てこなかった(爆)ヴィラン・ギルドなる着ぐるみの悪い等身大宇宙人集団も、トレギアの部下としてヒエラルキー化することで、ある程度のスケールがある悪の軍団に立ち向かうヒロイズムも同時に強調しておけば、かえって対比として「移民・難民」問題も「意識高い系」的なクサみがウスれてイヤみなくビビッドにそのテーマも浮かび上がったようにも思うのだ。「甘さ」を引き立てるためには「塩味」を、その逆に「ニガ味」を引き立たせるためにこそ時に「甘味」も混ぜる複合作劇も必要なのである。


 『タイガ』は「移民・難民」問題の一方で、主人公青年が属する民間警備組織の武闘派の先輩格・ホマレ青年にもその正体が宇宙人であるとの出自を与えて、シリーズ前半で彼がその正体を告白する小ヤマ場を作っている――着ぐるみでの宇宙人姿がナイので、幼児には理解ができなさそうではあるけれど(汗)――。
 民間警備組織の紅一点・ピリカ嬢もまた、宇宙人由来のアンドロイドであったことが終盤に明かされることで、チームメンバー全員にもドラマを与えてそのキャラを立てようとしていることもわかる。
 ついにはヴィラン・ギルドの悪役宇宙人の一部も、終盤では地球規模の危機に際して民間警備組織に協力、ラストでは民間警備組織の新入社員となった姿を描くことで、地球人と宇宙人(移民・難民)の平和的な共存を示唆するクロージングも与えていた。


 それはそれで「要素」「点」としてはイイ。しかし、それはウルトラマンタロウの息子として設定されたウルトラマンタイガを主役とした作品に、「イの一番」で期待されていたストーリーやテーマであったのか?


タイガ・タロウ・トレギア・タイタス・フーマの過去や因縁は、YouTubeボイスドラマのみならず本編でも組み込むべきだった!


 むろん、各話のゲストに仮託された「移民・難民」テーマを放棄しろなどと二者択一的なことは云わない。
 しかし、タイガ・タロウ・トレギアの因縁を描きつつ、あるいは動画配信サイト・YouTube上の円谷プロ公式サイトで展開された音声のみのボイスドラマで描かれたような、本作の3大ウルトラマン、タイガ・タイタス・フーマの過去話をTVシリーズ本編にも組み込むことも可能だったのではあるまいか?
 TVアニメシリーズ『ザ☆ウルトラマン』(79年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/19971117/p1)の世界のウルトラの星・U40(ユー・フォーティー)が出自であるタイタスは、同作#20「これがウルトラの星だ!! 第2部」(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20090914/p1)に登場したウルトラ人のウルトラ艦隊司令官ザミアスに育てられ、同作#37「ウルトラの星U40の危機!! ウルトリアの謎?」(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20100118/p1)以降、第4クールを通じて最終回までに至る宿敵でウルトラ人の反逆者・ヘラー軍団が占領したU40でレジスタンス活動をするも、両親がヘラー軍団に属していたことに引け目を感じていたこともボイスドラマで明かされている。


 もちろんTV本編は役者さんが演じるレギュラー陣がメインであり、彼らが「移民・難民」性を仮託された宇宙人ゲストたちとの交流でドラマを構築する形式でも基本は構わないのだけれども、ここでタイガやタイタスやフーマがヒロユキの内面世界で所感を述べたり、彼らがゲストと自身の過去の境遇とを重ね合わせて述懐させたり、いっそヒロユキに強引に憑依して各々が独特のクセのある口調で(笑)ゲストに直接語りかけることで、タイガやタイタスやフーマの出自や人間味を肉付けしていく二重作劇こそ採用すべきではなかったか?


 加えて云うなら、『タイガ』序盤では主人公青年・ヒロユキにだけ見えるかたちで、小人化して半透明に発光しているタイガ・タイタス・フーマが寝転がったりコップの縁に腰掛けて足をブラブラさせながら愉快なトークを繰り広げるシーンが散見されて、コレならば早くヒーローや怪獣が見たくて人間ドラマ部分は飛ばし見したい移り気な幼児たちも画面に眼が行くであろうと思えたけど(笑)、そのような合成映像が中盤以降は減ってしまったことも不満であった。
――ググってみるとヒロイン役者の交代・撮り直しが勃発したために、この部分の撮影がオミットされたとのウワサも出てきたが(汗)――


ウルトラマンタイタスのピンチにウルトラマンジョーが、ウルトラマンフーマの危機にはウルトラマンオーブやルーブが助っ人参戦するイベント編もあるべきだ!


 ボイスドラマのみならず、『タイガ』放映開始の7月からは例年夏休みに開催されている『ウルトラマン フェスティバル 2019』のアトラクショーで、タイタスと同族のザ☆ウルトラマンことウルトラマンジョーニアスが、フーマと同族のウルトラマンオーブウルトラマンルーブといった先輩ウルトラマンたちとともに、タイガの助っ人として登場して、特にジョーニアスの登場には名のみ知る幻のレアな主役ヒーローの登場に観客たちは感嘆の声をあげていた。
 もちろんそれは世代人限定のローカルな感慨ではナイ。『ウルフェス』にワザワザ足を運ぶようなマニアやマニアの気がある「怪獣博士」的な人種であれば、世代人ではなくとも歴代シリーズのヒーローの存在やその基本設定などは知っており、数話ぽっきり登場のゲストヒーローならばともかく1年を通じての看板を背負ったヒーローなればこその重み&有り難みがあって、微量であっても憧憬を募らせるという心理が人々にも相応にあるから、かような感動を観客一同に巻き起こせるのである。
 そうであれば、アトラクのみならずTV『タイガ』本編でもウルトラマンジョーがタイタスを助けに、ウルトラマンオーブやルーブがフーマを掩護に助っ人参戦するイベント編も各々1話ずつは作るべきではなかったか? TVの後日談の劇場版でもゲスト参戦させるべきではなかったか?
 良くも悪くも人々は結局はドラマやテーマよりも現役ヒーローや先輩ヒーローの勇姿や活躍を確認するために、TVを観たり映画館に足を運ぶのであるのだから。


仮面ライダー令和』も近年の正月ライダー映画同様、近作先輩ライダー5~6人が助っ人参戦する華がほしかった!


 それはまさに新旧2大ヒーロー共演の『仮面ライダー』お正月映画もまたそうなのだ。興収が長期低落傾向にあった『ライダー』正月映画は3作前の『仮面ライダー平成ジェネレーションズ Dr.パックマン対エグゼイド&ゴースト withレジェンドライダー』(16年)から路線を変更、2010年代の近作先輩ライダー5~6人が変身前の中の人も含めて助っ人参戦するスタイルに舵を切ったところ、グイグイと興収を上げたのだ。
 人々はTVとはスケールが異なるお祭りとしての先輩ヒーロー大集合映画を観たがっていることが如実に証された出来事でもあった。


 その伝で云うならば、今回の映画『令和ライダー』が旧来の新旧2大ヒーロー共演路線に戻ってしまったことは残念だ。メインストリームのドラマやテーマは申し分がなくても、やはり映画的な華には欠けているので地味に思えてしまうのだ。ドラマやテーマがあのままでも『仮面ライダージオウ』終盤同様、並行宇宙が再度融合しつつあるSF大設定を逆用した言い訳を付ければ、唐突に先輩ライダーたちが登場してレジスタンスたちに加勢をしても許されたようにも後知恵で思うので……。


「旧3部作」「新3部作」「続3部作」「TVアニメ」キャラも総動員した『スカイウォーカーの夜明け』!


 その逆に『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』は歴代シリーズの遺産を引用しまくったイイ意味で二次創作的な作品に仕上がっているともいえる。
 先にもふれた旧銀河帝国皇帝のみならず、20世紀の「旧3部作」にも登場したR2-D2やC-3POなどの人気ロボットをはじめ、今回の「続3部作」の第1部で死した旧副主人公ハン・ソロや、第2部で死した旧主人公ルークも、この最終第3部では霊体となって再登場――前者は霊体ではなく幻覚だとかの、劇中では説明されていない細かいウラ設定は置いといてください(笑)――。
 「旧3部作」に参戦した魅惑的な脇役たちまでもが幾人も再戦。さらには歴史上の今は亡き歴代のジェダイの騎士たちが声のみで窮地の主人公の女剣士に声援を送るが、何となく予想は付いたもののググってみると、20世紀の「旧3部作」のヨーダやオビワンやアナキン(ダース・ベーダー)に、世紀の変わり目に作られて「旧3部作」よりも1世代前の時代を描いた「新3部作」こと『スター・ウォーズ エピソード1』~『エピソード3』(99年・02年・05年)に登場した先代ジェダイの騎士たちに、「新3部作」と「旧3部作」の隙間の時代を描いた『スター・ウォーズ 反乱者たち』(14~18年)や、『エピソード2』と『エピソード3』の隙間の時代を描いた『スター・ウォーズ/クローン・ウォーズ』(08~14年・20年)などの3D-CGのTVアニメシリーズに登場した歴代ジェダイの騎士たちでもあるという……。何というシリーズの全肯定!!
 演じる役者さんが急逝したレイア姫もといレイア将軍に至っては、今回の「続3部作」の第1部の未使用映像を流用合成したというワリには、ほとんど冒頭から終盤まで出ずっぱりとなった上に(!)、主人公の女剣士に勝機さえ与える厚遇ぶり!
 そう、世界観を同じくする続編である以上は、作品の広大な「世界」と遠大な「歴史」設定を活かしてほしく、ついでに先輩ヒーローたちの再登場&大活躍をも期待してしまうのは、洋の東西を問わない人々の普遍的な心理なのであり、むしろだからこそその願いを叶えるべきなのだ。


地球人たちのドラマと並行して、超人ヒーローたちのドラマや大集合も描いた先駆作『ザ☆ウルトラマン』(79年)を参照する!


 レギュラー陣の役者さんたちを活かして、「移民・難民」問題も描きつつ、タイガ・タロウ・トレギア・タイタス・フーマの因縁や出自劇をも同時に描くことは困難であったとの見解も巷間では散見される。しかし、筆者はそれらの見解には同意しない。
 奇しくもこの2019年には先の『ザ☆ウルトラマン』がタイタスの出自つながりでネット配信されていた。この作品は春~初夏にかけてのシリーズ序盤はオーソドックスな怪獣との攻防劇であり、ゲストキャラのドラマにはあまり頼らない作りであった。しかし、夏休み放映の3部作で200万光年彼方のウルトラの星を紹介しつつ、ウルトラ人との抗争を長きに渡って演じてきた、爬虫類から進化したために意思疎通ができないという宇宙人・バデル族が200万年ぶりにウルトラの星に来襲、互いに宇宙戦艦数千艘を繰り出す宇宙大戦争を展開し、蘇生手術中のジョーニアスを除いたエレクやロトをはじめとする巨大化変身可能な7人のウルトラマンが敵戦艦を撃破していく勇姿も描かれた。
 その後の展開は1話完結の怪獣退治モノに戻るも、秋口の第3クールでは2~3話に1回程度の頻度で、宇宙から来た強敵に対してエレク&ロトらに助っ人参戦させることで時にバトルを宇宙規模にスケールアップ(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20091102/p1https://katoku99.hatenablog.com/entry/20091115/p1https://katoku99.hatenablog.com/entry/20091220/p1)。初代『ウルトラマン』(66年)最終回へのオマージュかウルトラの星での滞在記憶を消されていた主人公ヒカリ隊員も、彼に恋い焦がれるジョーの妹アミアの地球来訪を契機に記憶を蘇らせたり(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20091129/p1)、滅びたバデル族が残していた怪獣兵器を登場させるなどの各話単位を超えてシリーズを貫くタテ糸のドラマも設定していく。
 最終第4クールでは、最強の敵は同族ウルトラ人の反逆者集団とした連続モノの体裁を取って、それまでにも幾度か描かれてきたレギュラーである怪獣攻撃隊の隊員間での恋情や、戦闘中に不在となることでの不和も、終盤では最大の葛藤ドラマとして並行して描きつつ、しかしてエンタメ面や事態のスケール面ではウルトラ人が超古代に地球の南極大陸に隠した超巨大宇宙戦艦でU40奪還を企図し、8大ウルトラ戦士も大活躍する4部作の大バトルとすることで、その作風を過剰に重たくさせずにカタルシスが一掃する担保もできていた。
 重たいテーマやドラマを描きつつも、過剰に重たくはさせずに爽快感も与えるヒーロー活劇として、しかもルーティンな1話完結ではなく通常回を超えたスケールを呈示するために連続モノ的な悪の大軍団vsヒーロー大集合も描いてみせるこの手法!


映画作品でこそヒーロー大集合を! TVシリーズや前日談・後日談に過去作や別媒体ヒーローとの接点・因縁を張り巡らせて、子供やマニアの興味関心を長期に渡って維持させる「世界観」消費を!


 東映は2010年代前半の春休みには、仮面ライダースーパー戦隊が共闘する映画で大ヒットを飛ばしてきたが、東映の白倉プロデューサーも老いたりか、電車モチーフの『烈車戦隊トッキュウジャー』(14年)が放映された折りには同じく電車モチーフの『仮面ライダー電王』(07年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20080217/p1)との共闘映画を構想はしたモノの、本人の言によれば「それを義務的な仕事」と感じて実現させずに、悪い意味でマニアックでニッチなネタの映画『スーパーヒーロー大戦GP(グランプリ) 仮面ライダー3号』(15年)や映画『仮面ライダー1号』(16年)に走って失速し、春休み映画のワク自体を消失させてしまった。
 しかし当時の特撮マニアが観たかったのは、まさに『トッキュウジャー』と『電王』が同じモチーフゆえの接点を契機にブツかって化学反応を起こすような作品ではなかったか?


 クルマ&警察がモチーフである『仮面ライダードライブ』(14年)が放映されていた折りには2015年のエイプリル・フールに一介の特撮マニアがオフザケ企画として、警察ライダーのドライブが往年のロボット刑事(73年)や機動刑事ジバン(89年)に特警ウインスペクター(90年)~特捜エクシードラフト(92年)や仮面ライダーG3に仮面ライダーアクセルなどの刑事・警察ヒーローと共闘するウソの夏休み映画をコラージュポスターのかたちで流布させてマニア連中を狂喜乱舞させていたモノだが、人々が観たいお祭り映画とはこのような企画のモノだったとも思うのだ。
――正直、その後の夏休み映画『劇場版 仮面ライダードライブ サプライズ・フューチャー』(15年)の濃いめの青を基調とした映画ポスターよりも、コッチの背景を黄色とした明朗な4月馬鹿ポスターの方が目立てていると思うしセンスもイイと思う(笑)――


 その伝で、3大歴代恐竜戦隊が集合した映画『獣電戦隊キョウリュウジャーVS(たい)ゴーバスターズ 恐竜大決戦!さらば永遠の友よ』(14年)のあとに、TVでは2大先輩忍者レッドが登場したにも関わらず3大歴代忍者戦隊を集合させなかった映画『手裏剣戦隊ニンニンジャーVS(たい)トッキュウジャー THE MOVIE 忍者・イン・ワンダーランド』(16年)のことを残念に思ったマニア諸氏は多かったのではあるまいか?



 思うに春休みのライダー&戦隊共闘映画こそが、アメコミ洋画で云うところのマーベル社の『アベンジャーズ』(12年~・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190617/p1)でありDC社の『ジャスティス・リーグ』(17年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20171125/p1)なのである。
 新旧2大ライダー共演の正月映画や新旧2大戦隊共演の早春映画で、直前作のヒーローたちのドラマを完結させずに引っ張って、春休みのライダー&戦隊共闘映画に合流させて、そこで彼らのドラマや主題を真に完結もさせるような二重構造の連続性ある導線を作って観客を吸引・動員するようなヒキを、日本特撮も真剣に目指すべきではなかろうか?


 地球上ではライダーや戦隊が平和を守って戦うも、宇宙の星々では2代目宇宙刑事たちスペース・スクワッドが悪の秘密結社・幻魔空界と攻防を繰り広げており、現行ライダーや現行戦隊にも1クールに1回くらいはゲスト出演して彼らと共闘させることで子供たちにも認知させて、映画館ではライダー・戦隊・宇宙刑事が共闘してみせる! といったような多層的な展開は、マニアのみならず子供たちも児童レベルでの知的好奇心・スペシャル感を刺激されてワクワクすると思えるだけに。


 ある意味では『ウルトラギャラクシーファイト』もそれを狙った作品ではあるのだが、この場合は逆にTVの「ウルトラマン」本編でも中盤あたりに番外編として、全編が宇宙を舞台とした仮面劇でもある先輩ヒーロー大集合編を設けることで、子供たちを大興奮させてほしいようにも思うのだ。
 2020年代の日本特撮が目指すべき方向性は、そこにあるとも思えるのだ。


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2020年号』(19年12月28日発行)折込コピー速報『ウルトラマンタイガ』『ウルトラギャラクシーファイト』『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』『仮面ライダー 令和 ザ・ファースト・ジェネレーション』合評1より抜粋)


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仮面ライダー平成ジェネレーションズFOREVER』(18年) ~並行世界・時間跳躍・現実と虚構を重ねるメタフィクション、全部乗せ!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190128/p1

ウルトラマンメビウスウルトラ兄弟2』 ~東光太郎! 幻の流産企画!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20130317/p1

パワーレンジャーFOREVER RED』(02年) ~歴代パワレンレッドが全員集合! 坂本浩一監督作品・戦隊を逆照射!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20080518/p1

百獣戦隊ガオレンジャーVSスーパー戦隊』(01年) ~赤星政尚・竹本昇、出世作! 「戦隊」批評の特殊性!

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ウルトラファイトオーブ』(17年)完結評 ~『オーブ』と『ジード』の間隙ほかを繋ぐ年代記的物語!

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ウルトラマンジード』(17年)序盤評 ~クライシス・インパクト! 平行宇宙のひとつが壊滅&修復! その原理とは!?

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ウルトラマンジード』(17年)最終回「GEEDの証」 ~クライシスインパクト・幼年期放射・カレラン分子・分解酵素・時空修復方法はこう描けば!?

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『劇場版ウルトラマンジード つなくぜ!願い!!』(18年) ~新アイテムと新怪獣にも過去作との因縁付与で説得力!

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『ウルトラギャラクシーファイト』(19年) ~パチンコ展開まで前史として肯定! 昭和~2010年代のウルトラマンたちを無数の設定因縁劇でつなぐ活劇佳品!

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ウルトラマンタイガ』『ウルトラギャラクシーファイト』『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』『仮面ライダー令和』 ~奇しくも「父超え」物語となった各作の成否は!?

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200112/p1(当該記事)



決定版 ウルトラマンタイガ 最強ひみつ超百科 (テレビマガジンデラックス)

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ウルトラギャラクシーファイト ニュージェネレーションヒーローズ総括 ~戦闘連発でも多数キャラの動機・個性・関係性は描破可能! 物語よりも点描に規定される作品の質

(2021年6月22日(火)UP)
『ウルトラギャラクシーファイト』 ~パチンコ展開まで前史として肯定! 昭和~2010年代のウルトラマンたちを無数の設定因縁劇でつなぐ活劇佳品!
『ウルトラマンタイガ』序盤総括 ~冒頭から2010年代7大ウルトラマンが宇宙バトルする神話的カッコよさ! 各話のドラマは重めだが豪快な特撮演出が一掃!
『ウルトラマンタイガ』『ウルトラギャラクシーファイト』『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』『仮面ライダー令和』 ~奇しくも「父超え」物語となった各作の成否は!?
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 ウルトラマンシリーズの正統番外編であるネット配信『ウルトラギャラクシーファイト』の第2弾『ウルトラギャラクシーファイト 大いなる陰謀』(20年)が、2021年5月26日(水)にBD&DVD発売記念! とカコつけて……。『ウルトラギャラクシーファイト』の第1弾『ウルトラギャラクシーファイト ニュージェネレーションヒーローズ』(19年)総括・合評をUP!


『ウルトラギャラクシーファイト ニュージェネレーションヒーローズ』総括 ~戦闘連発でも多数キャラの動機・個性・関係性は描破可能! 物語よりも点描に規定される作品の質



『ウルトラギャラクシーファイト』総括・合評1 ~尺は短いがウルトラヒーロー共闘でまとめられたストーリー

(文・中村達彦)
(2020年2月8日脱稿)


 2019年3月公開の『劇場版ウルトラマンR/B(ルーブ) セレクト!絆のクリスタル』と2019年7月放映開始の『ウルトラマンタイガ』第1話を結ぶ作品。『ウルトラマンギンガ』(2013年)から『ウルトラマンR/B』(2018年)までのウルトラマンロッソとウルトラマンブルの兄弟、更にウルトラマンタロウをはじめウルトラ6兄弟やウルトラマンゼロウルトラマン妹のグリージョや外国で製作されたウルトラマンリブットも登場している。アクションを重視したストーリーだ。俳優は登場せず、着ぐるみスーツで占められている。
 監督は坂本浩一。海外の『パワーレンジャー』シリーズ(1993年~・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20080518/p1)をはじめ、日本ではウルトラシリーズ以外にも東映特撮などを手がけている。東映でもヒーロー大集合映画を手掛けており、それぞれの見せ場を見事に作っているので、担当監督としては申し分ないだろう。


 ストーリーは各惑星でウルトラマンが襲われる事件が続発し、ウルトラマンロッソとウルトラマンブルが去ってしまった地球でも、ウルトラウーマングリージョと彼女を助けに来たゼロがウルトラダークキラーに襲われ捕まってしまう。ロッソとブル兄弟は強制的に召喚されて、昭和ウルトラ一族の故郷である光の国でウルトラマンタロウからその異変を聞かされて、彼らの妹であるグリージョの捜索に向かうが、岩の惑星ペノルで『劇場版ウルトラマンギンガS(エス) 決戦!ウルトラ10勇士!!』(2015年)に登場した超時空魔神エタルガーの攻撃を受けてしまう。同じ頃、ウルトラマンオーブウルトラマンX(エックス)とウルトラマンジードに極似したふたりの黒い戦士の攻撃を受けていた。
 ロッソとブルを救ったのはタロウの依頼を受けたウルトラマンリブットで、他の惑星にいたウルトラマンX・ジード・オーブも駆け付けてきたウルトラマンギンガ・ウルトラマンビクトリーに助けられる。


 改めて光の国に集まるウルトラマンたちへウルトラダークキラーからのメッセージが。囚われのグリージョとゼロは惑星テンネブリスにいるという。2人を助けるため、飛び立つ7人のウルトラマン
 ウルトラダークキラーは、かつてウルトラマンたちを苦しめた強敵エタルガーやダークルギエル、ウルトラマンXやウルトラマンオーブウルトラマンジードのエネルギーを吸収して作った3体の悪のウルトラマンXやウルトラマンオーブウルトラマンジードとともにダークネスなる軍団を構成している。それらを見守る謎の影。


 テンネブリスに到着したウルトラマンたちを迎え撃つダークネス軍団。次々に敵を引き受けていくが、残ったロッソとブルはウルトラダークキラーの攻撃を受ける。だがグリージョを助けるため、エネルギーを与え続けていたゼロの姿にウルトラマンたちは奮起。各々はゼロの力を由来とする姿にタイプチェンジして、ダークネス軍団を撃破する。
 残ったダークキラーはなおも暗黒エネルギーで巨大化、ウルトラマンゼロダークネスを生み出すなど抵抗するが、ウルトラマンタロウの援護、ジードの力を借りて強化形態に変身したゼロビヨンドと、ロッソ・ブル・グリージョが合体したウルトラマングループが登場。ウルトラマンたちの一丸となっての一大攻撃で倒される。


 新鋭ウルトラマンリブットにその存在を暴かれて、ラストにウルトラマンたちの前に姿を表す、事件の黒幕である悪のウルトラマンでもあるウルトラマントレギア。トレギアを追って飛び立っていくウルトラマンたちと、ゼロとともに故郷の綾香市へと戻っていくグリージョの姿で終幕となる。



 2010年代に登場した新世代ウルトラマンたちの共闘を描いて、『ウルトラマンタイガ』の物語の直前に起きていた戦い。トレギアが黒幕であったことは周知のことであろう。歌唱グループ・ボイジャーなどが奏でる各『ウルトラマン』の主題歌BGMが劇中に流れて、否応なく盛り上げてもいる。またウルトラファンをニヤリとさせる単語があちこちにありそれらも嬉しい。海外製作のウルトラマンリブットも顔見せ程度に終わっておらず、その強さを見せている。
 他にもウルトラ5兄弟とウルトラ6重合体したウルトラマンタロウがその全身を炎上させて自爆特攻するウルトラダイナマイトでダークキラーを倒した過去の戦いが、セリフのみならずきちんと映像で描かれたり、ゼロやグリージョにも見せ場が用意されているあたりもよい。もっとも最新作『ウルトラマンタイガ』の3大新ウルトラマンであるウルトラマンタイガ・ウルトラマンタイタス・ウルトラマンフーマが最後までチラリとも現われなかったのは残念だし、ウルトラマンオーブの好敵手・ジャグラスジャグラー登場が外されたのも残念だったが……。


 しかし、近年では作品ごとに異なっているはずのパラレルワールドで、その越境は容易ではないとされていたはずなのに、特に説明もなく越境ができていたり、昭和ウルトラの世界である光の国に、他の並行宇宙の世界にいるウルトラマンたちが簡単に集合してしまえるのは少し安易な気がする。何らかの説明なり秘密の次元越境が可能な人工ルートができたなどのウラ設定を作った方がよいのでは?


 ウルトラマンの敵は回りまわってウルトラマンというのがここ10年のパターンだが、同様に強敵に苦戦する中でウルトラマン同士の絆からスーパーパワーが発揮されて、超ウルトラマンが登場し、戦いに勝つパターンも目に付く。その流れは、今度の映画『劇場版ウルトラマンタイガ ニュージェネクライマックス』でも継承されているようで……。


 飛び立った7人のウルトラマンは、変身前の俳優ごと今度の映画に登場するが、『タイガ』第1話の冒頭と『タイガ』本編の間でも時間は12年くらいが経過しているはずなので、変身前の地球人たちは12年分の歳を取っていないと矛盾が発生してしまう(笑)。次の『ウルトラマン』ではこのへんにも矛盾が発生しないように、あるいはSF的な言い訳をつけることで実は矛盾はないとするような工夫をして、そういった要素でも子供やマニアたちを疑似SF的な知的遊戯で楽しませてほしい。


(了)


『ウルトラギャラクシーファイト』総括・合評2

(文・久保達也)
(2020年1月25日脱稿)

*『ウルトラマンR/B』と『ウルトラマンタイガ』の間に起きた史実!


 2019年9月29日(日)から無料動画配信サイト・YouTube(ユーチューブ)の円谷プロ公式チャンネル・ULTRAMAN OFFICIAL(ウルトラマン・オフィシャル)にて毎週日曜朝に週1回で配信されてきた各回約5分の短編シリーズ『ウルトラギャラクシーファイト ニュージェネレーションヒーローズ』(19年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200110/p1)が、同年12月21日(日)に全13話で完結した。


 本作『ウルトラギャラクシーファイト』では、映画『劇場版 ウルトラマンR/B(ルーブ) セレクト! 絆(きずな)のクリスタル』(19年・松竹・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190407/p1)でデビューを飾った敵キャラ・ウルトラマントレギアが一応のウラのラスボスキャラである。
 しかし実質的には、パチンコメーカー・京楽(きょうらく)が2012年にリリースした『CRぱちんこウルトラマンタロウ 戦え!! ウルトラ6兄弟』以降、同社のウルトラマンを題材にしたパチンコにラスボスとして登場してきたウルトラダークキラーが本作のラスボスキャラを務めている。


 そして、トレギアとダークキラーが手を結んでつくりだした偽ウルトラマンこと黒いウルトラマンであるウルトラマンエックスダークスネス・ウルトラマンジードダークネス・ウルトラマンオーブダークネス・ウルトラマンゼロダークネスに、歴代シリーズのラスボス級キャラである暗黒の魔神ダークルギエルや超時空魔神エタルガーたちと、『ウルトラマンギンガ』(13年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200819/p1)から『ウルトラマンR/B(ルーブ)』(18年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20180826/p1)に登場してきた、いわゆるニュージェネレーションウルトラマンたちが宇宙を狭(せま)しと激闘を繰りひろげてきた。


 最終回となったEpisode(エピソード)13のラストにて、唯一(ゆいいつ)生き残ったトレギアを追って、ダークキラーの本拠地・惑星テンネブリスを飛びだしていく7人のニュージェネレーションウルトラマンたちに、トレギアが高笑いするイメージ映像をかぶせて幕となる……
 本作は昨2018年度の直前作『ウルトラマンR/B』の後日談である『劇場版 ウルトラマンR/B』後のエピソードであり、そしてこの『劇場版R/B』で初登場したトレギアがレギュラー悪として登場した最新作『ウルトラマンタイガ』(19年)第1話『バディゴー!』冒頭(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190811/p1)のウルトラマントレギア VS 7大ニュージェネレーションウルトラマンとの宇宙空間での大決戦の間に起きた史実として、両者をつなぐ役割をも担(にな)っていたのだ。


 だが、決してそればかりではない。映画『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE(ザ・ムービー)』(09年・ワーナー・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20101224/p1)でデビューを飾って、2010年代のウルトラシリーズではニュージェネレーションウルトラマンたちを常に支える頼もしい先輩としても描かれてきたウルトラマンゼロを起点とした、後輩ウルトラマンたちの「人物相関図」が点描されることで、本作は『ギンガ』以降のニュージェネレーションウルトラマンの総決算ともなりえていたのである。


*登場キャラ全員をカッコよく描いてみせる、感覚的なようで実は技巧的な作劇&演出!


 映画『劇場版R/B』で女子高生・湊アサヒ(みなと・あさひ)が初変身したウルトラウーマングリージョを、Episode1では『R/B』の舞台となっていた並行宇宙の地球である日本の綾香市(あやかし)で、ウルトラダークキラーからその身を呈してかばって以降、本作でのゼロはEpisode10に至るまで、ダークキラーがつくりだした無限の闇・ダークキラーゾーンの中でグリージョとともに囚(とら)われの身となってしまっている。


 これはたとえば、


●『ウルトラマンA(エース)』(72年)第13話『死刑! ウルトラ5兄弟』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060803/p1)に、ゲストとして登場したウルトラ4兄弟=ゾフィー初代ウルトラマンウルトラセブンウルトラマンジャックのように、せっかくマイナス宇宙にあるゴルゴダ星に全員が集結したのも束の間(つかのま)、ロクな活躍も見せないうちに異次元人ヤプールによって十字架に磔(はりつけ)のままになってしまったり
●同作の第26話『全滅! ウルトラ5兄弟』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20061030/p1)では、地獄宇宙人ヒッポリト星人にブロンズ(青銅)像として固められてしまったウルトラマンエースを助けに来たのに、自分たちもほとんど一矢(いっし)も報いずにすぐにブロンズ像に固められてしまったり
●『ウルトラマンタロウ』(73年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20071202/p1)第18話『ゾフィが死んだ! タロウも死んだ!』で、ウルトラ兄弟の長男・ゾフィーが火山怪鳥バードンに火だるまにされたあげくにやられっぱなしだったり
●同作の第40話『ウルトラ兄弟を超えてゆけ!』で、ウルトラ5兄弟が暴君怪獣タイラントに次々とあっけなくやられていったり


 同時期の70年代前半の昭和の仮面ライダーシリーズに客演した先輩仮面ライダーたちと比べると、「兄さん」なのに「弱い」「情けない」といった印象がつきまとっていたのと同様だ! といった批判も論理的にはありえるのかもしれない。


 しかし本作のゼロは、70年代前半の第2期ウルトラシリーズに客演した先輩ウルトラ兄弟たちのようには必ずしも弱くて噛ませ犬のようには見えてはいないだろう。それは単身で一方的にヤラれているような負け方では決してなく、あくまでもウルトラウーマングリージョを守るための重荷を背負ったハンディキャップ・マッチになっているというエクスキューズがある作劇、そしてそれらを的確に体現してみせているアクション演出があったからだ。
 つまり反実仮想で暗黙裡に、グリージョがこの場にいなければウルトラマンゼロは勝てないまでもウルトラダークキラーにここまで一方的にはヤラれることはなかったハズなのだ! 敵わずとも拮抗はできたかもしれない! そのように視聴者の心の片隅に思わせるような作劇&演出ができていたからでもあったのだ。



 平成仮面ライダーシリーズのヒロインたちは決して守られるだけの存在ではなく、中には仮面ライダーに変身までするほどに活躍を見せるコもいるのとは異なり、昭和の仮面ライダーシリーズにレギュラーで登場してきた「ライダーガールズ」たちは単なる「人質要員」としての印象が強かった。グリージョも一見するとその「ライダーガールズ」のような扱いかと思われそうではある。


 だが、そのグリージョもEpisode10では、


「私だって、ウルトラマンです!」


と叫んで、全身から強い閃光を放ってウルトラダークキラーとウルトラマンゼロダークネスといった2体の強敵を勢いよく吹っ飛ばしてみせる点描を入れてみせている。敵に一矢を報いてみせることで、ゼロの足を引っぱっているだけといった、ややもすれば昭和の先輩ウルトラ兄弟やライダーガールズたちのように視聴者に少々の不快感をも与えかねない印象をも回避(かいひ)することに成功しているのだ。


 これらは脚本の足木淳一郎氏や坂本浩一監督が、先述した『A』や『タロウ』のウルトラ兄弟客演編などで、当時や後年の子供たちや特撮マニアたちも感じていただろう不満や鬱憤を、ここぞとばかりに数十年後のリベンジ(笑)として解消しようとした作劇&演出でもあっただろう。


 先輩ウルトラ兄弟たちがワリを喰ってしまうことで往時の子供たちをガッカリさせてしまっていた作劇とは異なり、『ウルトラギャラクシーファイト』においては先輩ウルトラ戦士やライダーガールズ(笑)にも大活躍の場面を、あるいは結局は敵に押されて負けてしまうような場面であったとしても、敵に対して一矢は報いていたり、別のキャラクターを助けたり守ったりするためのハンディキャップがあったからだ! とするようなディテール描写を随所に挟んでいっているのだ。


 「最初は負けても、最後には勝つ!」といった作劇が「勧善懲悪・娯楽活劇」の普遍ではあり、ひいては昭和のウルトラ兄弟客演編や本作『ウルトラギャラクシーファイト』でも、「アラスジ」のレベルではそこに還元されてしまう同類項のものではある。しかし、そのような「エクスキューズ作劇」や一矢は報いてみせたという「反撃アクション演出」の有無などで、作品の印象やクオリティーといったものは天と地ほどにも異なって感じられてきてしまうものなのだ。
 そういう意味では、「ストーリー」「アラスジ」なぞは作品の「本質」などではまるでなく、苦戦や敗北した際の「エクスキューズ作劇」や「反撃アクション演出」の有無なども作品のキモなのであって、作品の「本質」ですらあるのかもしれないくらいなのだ!



●映画『劇場版 ウルトラマンギンガS(エス) 決戦! ウルトラ10勇士!!』(15年・松竹・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200404/p1)が初出で本作でも復活した超時空魔神エタルガーを倒すために、「地獄の特訓」(笑)をウルトラマンギンガ&ウルトラマンビクトリーに課したウルトラマンゼロ
●映画『劇場版 ウルトラマンX(エックス) きたぞ! われらのウルトラマン』(16年・松竹)では、ウルトラマンエックス・初代ウルトラマンウルトラマンティガが東京で戦っている間に、世界各地の主要都市に現れた溶鉄怪獣ツルギデマーガを倒すために歴代ウルトラマンたちとともに駆けつけたウルトラマンゼロ
●映画『劇場版 ウルトラマンオーブ 絆の力、おかりします!』(17年・松竹・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200406/p1)でも、ウルトラマンオーブとともに奇機械改竜ギャラクトロンと戦ったウルトラマンゼロ
●テレビシリーズ『ウルトラマンジード』(17年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20170819/p1)では、レギュラーキャラとなってウルトラマンジードと共闘したウルトラマンゼロ


 ニュージェネレーションウルトラマンたちの頼もしい先輩として大活躍をさせてきたウルトラマンゼロを本作ではあえて囚われの身として描いたのは、もちろんそろそろ従来作との差別化として、年輪を重ねてきたニュージェネレーションウルトラマンたちの方を逆にゼロよりも大活躍させることで、彼らニュージェネもまた強く成長したのだということを描いて、視聴者にゼロの大活躍とはまた別種のカタルシスも与えよう! といったところが、本作最大の目的でありコンセプトでもあったためだろう。


 恩人でもあり師匠でもあるゼロを救出するために、若き7大ウルトラマンが邁進(まいしん)する姿がひたすらカッコよく描かれる。そして、彼らにはゼロに助けられてきた「恩義」を感じているといった「行動動機」をそのセリフでも語らせてみせている。
 そして、これらのセリフによっても、歴代ウルトラシリーズを長年にわたって鑑賞してきた特撮マニアたちや、後追いでも歴代シリーズを鑑賞してきた特撮ファンや子供たちが、それらの作品に対する「記憶」までをも勝手にダブらせてしまうことまで計算したことで、単なるアクション連発だけの作品にも堕(だ)さずに、クドクドとした説明ヌキでの端的な「点描」だけでも「ドラマ性」をしっかりと宿らせることができているのだ。
 教科書的な意味での狭義のドラマツルギーとしては反則ワザでも(笑)、このような「点描」もまた広義の意味では「作劇的な技巧」そのものだ! といってもよいのではなかろうか!?


*「ドラマ性」を高めるためのものとしての「ヒーローの最強形態」!


 本作の終盤で、そのニュージェネレーションウルトラマンたちによるゼロへの「恩返し」の最大の象徴として描かれているのが、Episode11のクライマックスである。
 その直前回であるEpisode10で、ニュージェネウルトラマンたちの大活躍によって倒されたハズのウルトラダークキラーが、トレギアの力によりジャンル作品の毎度のお約束によって「質量保存の法則」を無視してデタラメにデカい姿となって復活する!――科学的・ハードSF的にはオカシいけど、ヒーロー活劇・ライトSF的には正しい作劇だと思うので、もちろん大カンゲイだ(笑)――


 ここでジードが、


「今度はボクたちがゼロを助ける番だ!」


と、テレビシリーズ『ジード』ではウルトラマンギンガ・ウルトラマンビクトリー・ウルトラマンエックス・ウルトラマンオーブの超パワーを模したエネルギーが小型カプセルから放射されて強化変身できる能力であったハズのものが、その場にいるウルトラマンギンガ・ウルトラマンビクトリー・ウルトラマンエックス・ウルトラマンオーブご当人たちのエネルギーを直々に浴びせることで、ウルトラマンゼロをその強化形態・ウルトラマンゼロビヨンドへと強化変身させるのだ!


 このゼロビヨンドは、実は『ジード』の中盤(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200523/p1)ではギンガ・ビクトリー・エックス・オーブの超パワーを再現するニュージェネレーションカプセルの力だけではなく、ゼロが地球で合体している妻子持ちのさえないサラリーマン・伊賀栗レイト(いがぐり・れいと)が「オレに限界はねぇ!」という掛け声とともに強化変身させるに至った形態であったハズだった。
 4人の新世代ウルトラマンの超パワーの結晶として、本作でもこのニュージェネレーションカプセルでの変身のバンク映像をキッチリと再現するのみならず、地球でのゼロとレイトとの間に生まれた絆をヌキにしてもゼロがビヨンドに変身できてしまった設定矛盾については、ジードはゼロに対して「レイトさんにはナイショで……」と頼みこんでいた(笑)。


 もちろん「アラスジ」レべルで云えば、ニュージェネウルトラマンたちがウルトラマンゼロに「恩返し」をするのならば、ぶっちゃけ単にウルトラダークゾーンからゼロを救出してみせる! というノルマさえ達成できれば、それだけで済むのである。


 Episode9のラストにおいては、ウルトラマンギンガ・ウルトラマンビクトリー・ウルトラマンエックス・ウルトラマンオーブウルトラマンジードに、それぞれウルトラマンゼロに対する「恩義」を端的に象徴するセリフを激アツに叫ばせながらウルトラマンゼロの力に由来するそれぞれの強化形態にタイプチェンジしていった。その描写を反転させるかたちで、今度は逆に後輩ウルトラマンたちの方からその力でウルトラマンゼロを強化形態に変化させるような描写を挿入しているのだ。これはもちろん、各ウルトラマンたちのタイプチェンジ形態をたくさん出すことで、画面をにぎやかにしたり変化をつけて視聴者を少しでも飽きさせないようにしようという意味もあっただろうが、それだけでもないだろう。
 ニュージェネウルトラマンたちがウルトラマンゼロを単に物理的・形式的に救出ができた! ということのみならず、各々の想いが込められたウルトラマンたちの光線エネルギーが注入されていくことで、ニュージェネたちの「恩返し」を具体的・即物的かつ「ドラマチック」な「ビジュアル」としても「象徴」させることができている「映像演出」にも昇華しているのだ!


 本作でのゼロビヨンドは、その姿への変身からEpisode12における、ゼロ自身のネガ像でもあリ短編シリーズ『ウルトラゼロファイト』第2部『輝きのゼロ』(12年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200314/p1)が初出でもある、悪の黒いウルトラマンでもあったベリアルの怨霊に憑依されたウルトラマンゼロがその全身の体色を黒色に染めた姿でもあったウルトラマンゼロダークネスの単独出現版とのガチンコバトルに至るまで、その全身が金色に光り輝いたままとなっていた。
 そして、キックの残像までもが星のようにキラキラと金色に輝くほどの演出がなされることで、テレビシリーズでは白銀主体の体色であったゼロビヨンドよりもパワーアップしていて、その全身が金色と銀色にキラキラと輝いていたゼロの真の最強形態・シャイニングウルトラマンゼロにも近いような、シャイニングとビヨンドとの中間形態なのだろうことも含意させているのだ!――後日付記:後付けのようだけど(?)、この形態にはウルトラマンゼロビヨンド・ギャラクシーグリッターという正式名称が付与されていた――


 もちろんフィクション・つくりものの物語であるからには、最後の最後に正義の味方であるウルトラマンたちが勝利することは、たとえ幼児であっても直観的にはわかっていることだろう(笑)。しかし、先述したように本作ではニュージェネウルトラマンたちのキャラを立てるためにもウルトラマンゼロが相対的にはワリを喰わされてきた。けれど、それだけでは視聴者のフラストレーション・欲求不満も少々たまってしまうだろう。よって、クライマックスではゼロにも相応のバトルを演じてもらうことが必要なのだ! そして、そのためにもこの終盤でのゼロのパワーアップしてからの反撃描写は有効に機能しているのだ。


 ゼロの父であるウルトラセブンのトサカ部分が外れてブーメラン武器となるアイスラッガーを継承する、ウルトラマンゼロの姿では2つ、ゼロの力を借りたウルトラマンオーブのタイプチェンジであるウルトラマンオーブエメリウムスラッガーでは3つあったトサカを、4つもそびえさせてそこから放ったクワトロスラッガーをゼロダークネスに向けて飛ばしたゼロビヨンド!


 しかし、ゼロダークネスにハネかえされてしまった金色に輝くスラッガーを、今度はその両腕の中で2体ずつで合体させて巨大な三日月状の刀2振りと化さしめた!


 ゼロビヨンドがその二刀流「ツインギガブレイク!」でゼロダークネスをスレちがいざまにブッた斬る!!


 これらのさまはまさに時代劇や劇画調の演出となっている! 斬られたゼロダークネスが燃え上がっている炎を背後に、二刀流をかまえたゼロビヨンドをアオリで捉えたカッコいいカットもまた、実は東映メタルヒーロー時空戦士スピルバン』(86年)や1年飛んで『仮面ライダーBLACK RX』(88年)の必殺ワザが決まった直後の各話の様式美的なシーンを発端に、それが日本特撮先般や合体ロボットアニメにまで波及して定着したものでもあった。
 しかし、マネであろうが良いものは良いのだし飽きも来ないのだ! ともかく最高にカタルシスが得られるシーンとなっていた!


*「アクション演出」で「ドラマ性」を高めることでもできる! 昭和ウルトラの先輩客演編を反面教師として!


 先述した往年の『A』や『タロウ』のウルトラ兄弟客演編では、兄さんたちがカッコいいところをほとんど見せずに終わってしまっていた。加えて、ウルトラ5兄弟を一度は全滅させたほどのヒッポリト星人が相手であるのに、通常回で多用するいつものウルトラマンエースの必殺ワザ・メタリウム光線一発で倒してしまっていたのだ。


 しかし、それではヒッポリト星人は通常回に登場する並みの怪獣と同じ強さしかなかったことになってしまうのだ。そのへんが子供心にも辻褄が合わないように感じられて腑に落ちなかったところでもある。


 だからそこは、助っ人に飛来したウルトラの父がエネルギーをチャージ(充電)して復活したウルトラ5兄弟が、ここぞとばかりに必殺光線を一斉照射!
 もしくは、超強敵・異次元超人エースキラーを倒した際のように、エースの頭頂部にウルトラ4兄弟のエネルギーを照射してからエースが放つ合体光球・スペースQをここぞとばかりに再披露をすべきであっただろう!


 「敵に一矢を報いる」アクション演出を敵キャラ側にも援用してみせれば、合体光線やスペースQを浴びてしまったヒッポリト星人にも、即座に爆発四散はさせずにしばらくは堪え忍んでみせているさまを、ヒイてジラして描いてみせる「タメ」の演出を挿入する!
 そのことで、最後には敵キャラが爆発四散して滅びるのは確定路線なのだとしても(笑)、それによってヒッポリト星人がますます強く見えてくるし、そんな強敵をも撃破してみせるヒーロー側の強さも際立つことで、最後の勝利のカタルシスをも倍増させることができたハズなのだ!


 歴史的な大傑作ではあるものの、一度にウルトラ一族100万人を敗退させたほどのジャカル大魔王を相手にして、最後にはウルトラ一族の長老・ウルトラマンキングの神秘の力によって復活したウルトラ6兄弟の合体光線で決着がついてしまった漫画『ザ・ウルトラマン』(75年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210110/p1)のラストバトルも、実にアッサリとしてしまっている。


 しかし、ジャッカル大魔王が復活を果たした(厳密にはジャッカル四天王のひとりが進化した)、先の『ザ・ウルトラマン』の実質的な続編でもあった漫画『ウルトラマンメビウス外伝 アーマードダークネス ジャッカル軍団大逆襲!!』(08年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210117/p1)のラストバトルは実にスゴい!


●今は亡き暗黒宇宙大皇帝エンペラ星人のヨロイ・アーマードダークネスの一部をやむをえずに着用して、ジャッカル破壊光線を阻止せんとするウルトラマンメビウス
●けれども、ヨロイの「闇の意思」に飲まれそうになってしまうメビウス
●それに対抗するために、ウルトラ6兄弟がメビウスとウルトラ7重合体を果たした最強形態・ウルトラマンメビウスインフィニティーが出現!
●されど、宇宙の各所からアーマードダークネスの残りの全パーツが飛来してきてメビウスインフィニティーの全身を覆(おお)ってしまうという再度の大ピンチが到来!
●そこに駆け付けたウルトラ一族の長老・ウルトラマンキングが、ヨロイの呪いを弱めるためにウルトラの国の秘宝・ウルトラベルの鐘の音(かねのね)を響かせる!


 ……といった攻守逆転のツルベ打ちといった感もある、粘りに粘ってみせる「アクション演出」の一連によって、ラストバトルもおおいに盛り上げてみせていたのだ!


 ハッキリ云って、「ストーリー」や「アラスジ」なぞではなくって、この手の勧善懲悪エンタメ活劇の成否のキモとは、このような


●「シーソー的な秘術の尽くし合い」の「パワー合戦の連発」
●たとえ敗退してしまうにしても、一矢は報いてみせたという「反撃アクション演出」の有無
●一時的にでも耐え忍んでみせるような「タメ演出」


といったディテール描写の有無によって「傑作か否か」や「名勝負か否か」といった品格が決まってしまうものなのだ。むしろソコしかないともいえるだろう。


 そして、「作品批評」もまたソコを析出して語っていくことこそが、作品の「本質」にも接近していくことができるショートカット・近道ですらあるのだともいえるだろう!――加えて、ついでに云わせてもらえば、「読ませる文章」一般の極意といったものも、この「シーソー感覚」や「タメ演出」といったものであって、「エンタメ活劇の作劇」や「アクション演出」の巧拙のテクニックにも通じているものがあるようにも思えるのだ(汗)――


●変身怪人アンチラ星人が化けていた偽・郷秀樹の前にホンモノの郷秀樹が再登場して、帰ってきたウルトラマンことウルトラマンジャックに再変身してウルトラマンエースとも共闘! アンチラ星人&サイゴン VS エース&ジャックの大激闘を描く!
●火山怪鳥バードンに一度は殺害されたゾフィー兄さんも最後にはウルトラの母の力で復活を果たして、タロウと共闘して地球最強の怪獣であるバードンをやっつける!
●暴君怪獣タイラントに太陽系の各惑星でひとりずつ対戦して敗退していったウルトラ5兄弟たちだったが、最後には死力を振り絞ってリベンジのために地球に飛来してきて、タロウを含むウルトラ6兄弟が組んずほぐれつの果てに合体怪獣タイラントを打ち負かす!
●重苦しい特訓ドラマや所帯じみた学園ドラマの中でも、月に1回くらいは助っ人参戦してくれるウルトラ兄弟とも共闘を果たして、ウルトラマンレオウルトラマンエイティが強敵怪獣を実に爽快にやっつける!
円谷プロ創立10周年記念作である怪獣映画『ダイゴロウ対ゴリアス』(72年)などもマイルドな良作だったとは思うけど、『東映まんがまつり』の枠内で上映された仮面ライダーシリーズの映画『五人ライダー対キングダーク』(74年)などのように、『ウルトラ5兄弟VS超獣軍団』(!)のようなひたすらに戦闘シーンが連発しているだけの新作映画をあの時代においても製作してみせる!(笑)


 往年の昭和の第2期~第3期ウルトラシリーズにおけるウルトラ兄弟客演編でもこのようなストーリーの作品が存在していれば、往時の子供たちに失望感や欲求不満を与えることもなく、最後には気持ちのいいカタルシスだけが残ったハズであったのだ! ひいては、それによって第2次怪獣ブームどころか特撮変身ブーム自体も失速せずに、かえって子供間での特撮ヒーロー作品の人気も沸騰して、変身ブーム自体ももっと延命させることができたのではなかろうか!?


――その伝では、そのへんの子供たちの喜ぶ機微をわかっていて、客演編では先輩ライダーたちをほとんどピンチに陥(おちい)らせることなく大活躍をさせてきた昭和のライダーシリーズを担当してきた東映の故・平山亨(ひらやま・とおる)プロデューサーは実に偉大であったのだ……(氏の感覚自体が非常に子供っぽかったともいえるけど・笑)――。


*各ヒーローの関係性&立ち位置を最大限に活かす「点描」とは!?


 もちろん、バトル演出だけではない。


 ニュージェネの中では最も後輩である『R/B』の主人公ウルトラ兄弟の兄であるウルトラマンロッソが、妹のグリージョをずっと守ってくれたウルトラマンゼロに対して深々と頭を下げている演技。


 先輩たちを「(初代)ウルトラマンさん! (ウルトラマン)ティガさん!」などと敬称をつけて呼んでみたり「お疲れさまです!」などと丁寧語や敬語で労をねぎらっていたオーブが(笑)、それらをきちんと踏襲(とうしゅう)して「ゼロさん、大丈夫ですか?」などと語りかける描写。


 鼻につく域には達してはいなかったものの、やや不遜な言動だったギンガ――というかギンガと合体している地球人青年・礼堂ヒカル(らいどう・ひかる)の言動――は、やはり先輩のゼロに対してもタメ口であったりする(笑)。


 基本的には腰が低くて常識人キャラであるジードも、その看板番組でずっと共演してきたゼロに対してだけは「先輩」というよりかは、いつもの「友だち」感覚(笑)で接しているのだ。


 これらの点描は、それぞれのキャラクターたちの個性やゼロとの関係性のちょっとした相違を端的に示してもみせている名描写ともなりえている。


 そのゼロが右手を後頭部に当てながら頭を左右にコキコキと動かす「あ~、疲れた」とでも云いたげな、妙にオッサンくさい仕草(爆)を見せる演出・演技も実によい(笑)。


 すでにデビューから10年が経過して、ニュージェネウルトラマンたちからすれば、ゼロが立派な大先輩=レジェンドウルトラマンと化していることを最大限に象徴する秀逸(しゅういつ)な描写にもなりえているのだ。


――『ウルトラゼロファイト』第2部ラストから、『ウルトラマンギンガ』第1話冒頭で描かれたウルトラ一族全員がソフビ人形化させられてしまった大戦争「ダークスパークウォーズ」までの間にも相応の歳月が過ぎていたであろう。さらに、それから1000年後の時代が『ギンガ』本編における並行宇宙の地球の世界でもあったので、作品世界の中でもゼロのデビューからは実はもうすでに数千年~数万年が経っているのかもしれない(笑)――


 そして本作では、ニュージェネウルトラマンたちの中では最も先輩であるウルトラマンギンガにリーダー感を与えて、先輩格キャラとして立てることにも成功していた。


 加えて、ゼロダークネスをゼロ本人にまかせて、ニュージェネウルトラマンたちが本作のラスボスであるウルトラダークキラーと決着をつけようとしたそのとき、先述した『CRぱちんこウルトラマンタロウ 戦え!! ウルトラ6兄弟』などのパチンコでの展開までをも本作は前史・史実として肯定(こうてい)したことで、そのウルトラマンタロウがダークキラーの因縁の相手としても必然性をもって現れることとなったのだ!


 ウルトラマンオーブウルトラマンジード・ウルトラマンロッソにその弟のウルトラマンブルに至るまで、近年のウルトラマンは歴代レジェンドウルトラマンのパワーを使って変身したりパワーアップするのが当たり前となった。その中でも昭和のウルトラマンの中では両耳から巨大なツノを生やしている強烈なルックスもあってか、キャラクターとしては根強い人気を誇(ほこ)っているウルトラマンタロウは、各ウルトラマンのタイプチェンジの一形態の元パワーのひとつとして扱われることが多かった――ロートルな筆者などよりもさらにはるかに年上である、初代『ウルトラマン』や『ウルトラセブン』などの第1期ウルトラシリーズだけを神格視してきた、今や還暦戦後の第1世代の特撮マニアにとっての『タロウ』とは、いまだに否定されるべき作品なのだとしてもだ!――。


 だが、今回もウルトラマンギンガの因縁の宿敵として再登場した悪の人型巨人・ダークルギエルが、かつてM78星雲・光の国で勃発(ぼっぱつ)したウルトラマンVS怪獣軍団との全面戦争「ダークスパークウォーズ」の最中(さなか)に、ウルトラマンたちや怪獣たちをもすべてを手のひらサイズのソフトビニール人形と化してしまったために、『ギンガ』本編ではタロウも人形のかたちとはいえレギュラー出演することとなっていた――そして『ギンガ』終盤では、その巨人としての本来の姿を復活させていた!――。
 つまり、タロウと「相棒」として直(じか)に常に接してきたのは、ニュージェネウルトラマンたちの中では『ギンガ』の男子高校生主人公・礼堂ヒカル=ウルトラマンギンガだけだったのだ。ギンガのみがレジェンドウルトラマンであるタロウと旧知どころか実に親しい仲であった史実を踏まえた描写がここで正しくなされているのだ。


 Episode12のクライマックスでは、さらにそのギンガのリーダーとしてのキャラを立てるための作劇&演出がなされていた。


 その前段ではタロウの力を借りることで、テレビシリーズ『ギンガ』の続編『ウルトラマンギンガS(エス)』(14年)におけるタロウのデザイン意匠(いしょう)をまとった強化形態・ウルトラマンギンガストリウムへと久々に変身する!


 そして、ウルトラマンビクトリー・ウルトラマンエックス・ウルトラマンオーブウルトラマンジードもこれに合わせてそれぞれの最強形態に、ウルトラマンロッソ・ウルトラマンブル・ウルトラウーマングリージョの3兄妹はオーロラのシャワーが降り注ぐ中で手をつないで、映画『劇場版R/B』で初披露となった最強形態・ウルトラマングルーブへと合体変身をとげてみせた!


 タロウの力を得たギンガがタロウの必殺光線でもある「ストリウム光線」を放ったのを皮切りに、ウルトラダークキラーが紫色の細いストレート状の光線を何重にも発射する中で、ウルトラマンビクトリー・ウルトラマンエックス・ウルトラマンオーブウルトラマンジード・ウルトラマングルーブが、レーザーブレード・電撃スパーク・七色の光輪など見た目も含めて実にあざやかにダークキラーに猛反撃を繰り出していく!
 オーブに至ってはエックスの攻撃に隙(すき)を見せたダークキラーに、「よそ見するな!」と云いながら空から急襲してキックをかますのがちょっとヒドかったりするけれど(笑)。


 もともと無敵の強さを誇っていた悪の巨人であるダークキラーをワザワザ「超巨大化」させる手法は、アタマの硬い旧型オタクたちには「近年の特撮作品によくあるマンネリの超巨大化ラストバトルだ!」などと批判をするのだろう。しかし、多数のヒーローの大活躍を気兼ねなく気持ち良く描写するためには、ラスボスがウルトラマンたちと同じサイズであると「集団イジメ」に見えてしまいかねないのだ(笑)。そういった印象を回避するためには、ラスボスには超巨大化してもらった方がよい。そうであれば、心置きなくフルボッコにできるのだ(笑)。そういう意味では絶対的に必要な演出でもあったのだ! ウルトラシリーズにかぎらず、あまたのヒーロー大集合作品のラストバトルが超巨大化ネタに収斂(しゅうれん)していくのは必然だとさえいえるのであった(笑)。


 ヒーローよりも巨大なサイズのラスボスと戦うヒーロー集団! といったシチュエーションの原点は、『仮面ライダーX(エックス)』(74年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20141005/p1)の劇場版で昭和の5人ライダーと戦ったラスボス・キングダークや、『仮面ライダーストロンガー』(75年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20201231/p1)の最終回で7人ライダーと戦った岩石大首領に、『(新)仮面ライダー(通称・スカイライダー)』(79年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210102/p1)最終回で8人ライダーと戦ったドラゴン型の巨大怪獣がその正体であったネオショッカー大首領などであろう。
 やはり平山亨プロデューサー作品であり、当時のことだから明確に意識して作劇したものであったかは怪しいものの、スタッフが無意識に集団イジメに見えることを回避するために採った処置でもあったのだろう。……いや、この手のラスボスの巨大化は、往年の名作特撮時代劇映画『妖怪大戦争』(68年)が元祖であったか?(笑)


 2019年11月28日に惜しくも亡くなられた特撮研究所矢島信男特撮監督が、『ジャイアントロボ』(67年)にはじまる東映特撮を発端(ほったん)として、外様(とざま)として招聘(しょうへい)された円谷プロ製作の『ミラーマン』(71年)や『ウルトラマンタロウ』(73年)に『ウルトラマンレオ』(74年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20090405/p1)などでもそのような特撮演出をしていたように、ダークキラーの背面を画面手前に配して、股下(またした)と両脚の間から(!)その奥にいるビクトリーをとらえたカメラアングルで巨大感&遠近感を両立させていた手法もここでは採られている。


 画面の左の隅に超巨人と化したダークキラー、右の隅には通常サイズの巨人であるウルトラマングルーブを配して、『タイガ』を除けばまだ最新のヒーローでもあるウルトラマングルーブの強大なるパワーがもたらす高速突撃攻撃をもってすれば、超巨大なダークキラーでさえもが超高速で押し出されて後方へと吹っ飛ばされていくダイナミックなアクション特撮などは、ダークキラーとウルトラマンのどちらかが強弱のバランスにおいてワリを喰ってしまうものではなく、双方の強さが同時に両立して描けてもいるカタルシスあふれるアクション演出たりえてもいるのだ!


 深読みをさせてもらえば、ダークキラーを攻撃する直前のグルーブの腕の構え方にやや女性的な柔らかい仕草が感じられるのも、グルーブにウルトラウーマングリージョも合体していることを、そして同時にグルーブの最強形態としての強者の余裕をも含意させようとしたスーツアクターの演技、もしくはアクション監督によるディレクションでもあるのだろう。



ウルトラマンタロウ「みんなのエネルギーを、(ギンガの)ストリウムブレスに集めるのだ!」


 ウルトラダークキラーの本来の因縁相手は昭和のウルトラマンタロウであった。最後のバトルの見せ場はニュージェネウルトラマンたちに譲るにしても、ここでウルトラマンタロウを参上させて、ダークキラーと最後の会話をさせるのもドラマ的には辻褄が合っている。


 タロウの指示で、『ウルトラマンギンガS』第1話でタロウがギンガの左手首に授与したブレスレットであったストリウムブレスに、ニュージェネウルトラマンたちの光のエネルギーを結集させることで、ギンガが強化変身をとげたウルトラマンギンガストリウムは、単身で全身を赤く炎上させてダークキラーへと超高速飛行で突撃を敢行する!


「これがオレたち! ニュージェネレーションの力だ!!」


 そう叫んでいる声はギンガのみならずグリージョも含めたニュージェネ勢全員の声である! これによってギンガ個人の突撃ワザでありながらニュージェネウルトラマン全員の想いやエネルギーが込められていることを、ベタでも映像的にも象徴させることができているのだ!――こういったていねいかつ親切なフォローの描写が存在しないと、ギンガ以外のニュージェネウルトラマンたちがいかにも補助的な役回り・傍観者へと堕してしまって、ワリを喰って見えてしまうワケだから、これもまた絶対的に必要なフォロー描写なのだ!(笑)――


 燃えさかる炎を背景に超高速突撃していくギンガの顔面のアップカットの周囲に、全ニュージェネウルトラマンの顔面をイメージ的に合成して繰り出された最強の必殺ワザは、タロウがその全身を炎上させて体当たりする自爆特攻ワザ「ウルトラダイナマイト」を継承した「ニュージェネレーションダイナマイト」だ!


 『ウルトラマンタロウ』の映像本編では一度しか披露されなかった、その全身を光学合成で赤く半透明で炎上させて敵に突撃して自爆する特攻ワザである「ウルトラマンダイナマイト」!――もちろん、その直後にウルトラマンのご都合主義的な万能の超能力でバラバラになった身体は復活するのだが(笑)―― それは当時の学年誌のグラビア記事やウルトラシリーズのオリジナル漫画での披露、70年代の子供向け豆百科などの書籍で連綿とその設定が語られてきたこともあってか、実に印象深いタロウの必殺ワザでもある。


 『ウルトラマンメビウス』(06年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070506/p1)でタロウが助っ人参戦した際(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20061203/p1)にも、強敵ロボット怪獣を相手に30数年ぶりに「ウルトラダイナマイト」を披露したことで、長年のウルトラシリーズマニアたちは狂喜乱舞! 本稿執筆時点での最新作である『ウルトラマンタイガ』(19年)第1話冒頭でも、タロウが「ウルトラダイナマイト」を披露していたことも記憶に新しい。
 ゼロの弟子にしてタロウの弟子でもあるギンガが、ここでウルトラ一族の中でも別格の必殺ワザといった印象もある「ウルトラダイナマイト」の系譜を継承する新必殺ワザを披露することは、映像的にも設定的にも実に盛り上がるものがあるのだ!


 『ウルトラマンメビウス』以来、地上波での放映に長らくブランクが空いたこともあってか玩具の売上高も半減しており、製作資金の調達には苦労したと思われる『ギンガ』。国内特撮のミニチュアを一手に製造・保有もしているマーブリング・ファインアーツ社――東宝東映・円谷作品を股にかけて活躍した特撮美術監督である故・大澤哲三などもここの所属であった――から、都市街を組めるような大量のミニチュアセットをレンタルしてくる予算を確保できなかったためであろうが(汗)、同作では山間部の小さな村落にある夏休み中という設定である高校の校舎を舞台にしたほどに、低予算作品ゆえの小さな世界観や若い役者陣によるお芝居を中心としていた作風については評価が分かれるところだろう。
 だが、この『ギンガ』を皮切りとして毎年、ウルトラマンシリーズが製作できるようになったのであり、その間に玩具展開的にも特撮技術的にも一定の進歩をとげていくこととなったことも、一方では見逃せにできない事実なのだ。



 そして、このギンガをニュージェネウルトラマンたちのリーダー的な存在として本作『ウルトラギャラクシーファイト』では描いてきたことも、昭和の第2期ウルトラシリーズではウルトラ兄弟の長男であるゾフィー兄さんや次男であった初代ウルトラマンが真っ先に噛ませ犬(汗)にされてしまった、当時の子供たちも残念に思っていたその処置を反面教師にした処置でもあっただろう。
 つまり、ウルトラヒーロー多数が登場する作品でヒーローたちの多少の強弱の濃淡をつけるのであれば、2010年代のニュージェネウルトラマンのトップバッターであったギンガこそを最も頼もしい存在として描いて、そのキャラを立ててみせる方法論がベストでもあったからだ――その逆に近作のニュージェネウルトラマンたちはお約束でもまだまだ未熟さが残るキャラクターとして描かれており、そういった差別化によってもまた彼らのキャラが際立っても来るのだ――。


 2010年代のニュージェネレーションウルトラマンが続々と生まれる好況を生み出す発端となった『ギンガ』に対するリスペクトが感じられるところはとにかく望ましいところだ。もちろん、このギンガやゼロのみを特別扱いとして、その他のウルトラマンたちをスタッフのたかが個人の好悪ごときで噛ませ犬にしてしまうような不公平さなども一切感じさせずに、全ウルトラマンたちをひとりのムダもなく個性豊かに活躍させつつ、最後の最後に勝利のカタルシスもきちんと到来することになる、微に入り細をうがった至れり尽くせりの作劇で、このクライマックスは最高に高揚感があふれるものともなっていた!


*本作の「仮面劇」&「作劇」をテレビシリーズでも実現させよ!


 本作の最終回であるEpisode13にて、本作の真の黒幕であるウルトラマントレギアがグリージョを真っ先に囚われの身とした理由は、先の『劇場版R/B』にてトレギアが一敗地まみれてしまった、ロッソ・ブル・グリージョの合体形態であるウルトラマングルーブの登場を阻止するためであったことが、ゼロの口から語られる。


 そう、ここでもトレギアは以前にグルーブに負けている史実をキチンと押さえており、そしてグルーブもまた「強者」としての存在であることをきちんと描いて、グリージョもまた単なる「人質キャラ」ではなく「重要なカギとなるキャラクター」であったことの説明も三重にできているのだ。そして、こういった念押しの描写やセリフがまた、マニア心や怪獣博士タイプの子供心をそそるものでもあったのだ。


 そして、その場に姿を見せたトレギアのことを、『劇場版R/B』でも共演したウルトラマンジードとウルトラマンロッソが敵対したこともある「既知」の存在だとして先輩たちに語ってみせている。ここでもまた、本作がジード・ロッソ・ブル・グリージョの4大ウルトラマンが共闘してトレギアに立ち向かった『劇場版R/B』のそのすぐあとの続編でもあることが改めて示されているのだ。


 トレギアとタロウがすれ違って、互いに振り向きもせずに立ち止まる、ホンの一瞬のバストアップの回想カットにつづいて、


「やはり、消すしかないな。タロウを、光の国を……」


とつぶやかせることで、今後のウルトラシリーズの展開に対する伏線フラグも立てて、トレギアはその場を去っていく……


「これはオレたちだけの問題じゃない!」


とエックスが語ったのを皮切りに、ニュージェネウルトラマンたちが同じウルトラマンとして、彼ら自身の故郷ではないもののM78星雲のウルトラ一族の故郷・光の国を守る決意を固めるさまを象徴的、というかそのまんま即物的(笑)に描くために、円陣を組んでコブシを合わせる7人の姿が真下から捉えられ――もちろん『仮面ライダーストロンガー』最終回における、円陣を組んだ7人ライダーを真下から見上げたシーンへのオマージュだ(笑)――、ウルトラマンたちはトレギアを追うためにゼロとグリージョに別れを告げる。


 『R/B』の舞台でもあった並行宇宙の地球の平和を兄であるロッソとブルに託されたグリージョは、当初は兄たちのことを心配するものの、「仲間を信じるのもウルトラマンの大事な資質だ……」などとEpisode2でゼロにかけられた言葉を絶妙な係り結びで口にしてみせることで、『R/B』の続編として、そしてグリージョのさらなる精神的な成長までもが描かれているのがまた秀逸である。


 眼下の地球を見下ろしながら宇宙空間で浮遊しているグリージョがゼロと会話を交わしている場面では、その背景映像として地球がかなりの大きさで描かれているのも、まずは「絵」になるからであろうが(笑)、二次的には地球防衛の使命・責任の重さを映像演出面でも象徴する効果を高めていた。



 時系列的には『ウルトラマンタイガ』直前の物語でもある本作『ウルトラギャラクシーファイト』の方が、製作時期的には同時期にテレビで放映された『ウルトラマンタイガ』よりもおそらくあとに企画も製作もスタートしていたのだろうが(?)、この『ウルトラギャラクシーファイト』最終回の直後が『ウルトラマンタイガ』第1話冒頭における光の国があるウルトラの星を眼前に控えた大宇宙空間でのトレギア VS 7大ニュージェネウルトラマン&タロウ・タイガ・タイタス・フーマの激闘シーンに直結していくこととなる……
 そのことは事前に製作側でも喧伝されてきたし、大方の特撮マニア諸氏であれば想定もできていたことでもあり、だからこそ「そこにつながってくれなければウソ!」ではある描写ではあったのだ。その意味でも『ウルトラギャラクシーファイト』最終回のラストは特撮マニア諸氏の望みも叶えてくれていた。


 そして、できれば『ウルトラギャラクシーファイト』直後の物語でもあった『ウルトラマンタイガ』の最終展開は、『タイガ』の物語の一応の終結点であるのと同時に、『ウルトラギャラクシーファイト』でのストーリー展開もすべてとはいわずとも一部は引き受けている壮大なる展開であってほしかったのだ。


 しかし……


 『ウルトラマンタイガ』は第1話冒頭でこそトレギア VS ウルトラ戦士団との激闘が描かれて、子供たちやマニア諸氏をおおいに狂喜させることとなったのにもかかわらず、その後の『タイガ』は本作『ウルトラギャラクシーファイト』での出来事などは想起すらされずに、どころか大宇宙スケールでのウルトラ一族の因縁錯綜劇とは接点すら持たない、作風的にも『ウルトラギャラクシーファイト』とは完全にかけ離れた作品になっていく……(汗)



 2020年3月6日(金)公開予定(執筆時点)の『タイガ』後日談である映画『劇場版 ウルトラマンタイガ ニュージェネクライマックス』(20年・松竹・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210704/p1)では、ニュージェネレーションウルトラマンたちが『ウルトラギャラクシーファイト』や『タイガ』第1話冒頭につづいて再び集結するのみならず、その最新の予告編では新ヒーロー・ウルトラマンレイガの誕生も告知されている。


 もちろん、テレビとは異なる映画ならではの豪華な雰囲気を醸(かも)し出す意味でも先輩ヒーロー大集合という企画自体は戦略として大正解だとは思える。しかし、あの第1話があったのであれば、『タイガ』はシリーズ中盤なり終盤などではニュージェネウルトラマン全員とはいわずとも数名程度は客演するエピソードも配置しておくことが、基本設定的にも適切であったであろうに……と思えてならないものがあるのだ。


 いや、『タイガ』にかぎった話ではなく、テレビのウルトラシリーズでも年に一度だけの劇場版のみではなく、いっそのことテレビシリーズ中盤などでも地球をメインの舞台とすることからはいったん離れて、宇宙空間や地球以外のどこかの惑星を舞台として、ニュージェネウルトラマンたちが変身前の役者陣の確保ができないのであれば声の出演だけの仮面劇になってもよいので、前後編で大活躍をさせるようなエピソードを毎年つくるべきではなかっただろうか?
 『ウルトラマンX』(15年)のシリーズ中盤では3部作で、前作のヒーローであるウルトラマンギンガ&ウルトラマンビクトリーが助っ人参戦するエピソードが用意されて、先輩ウルトラ戦士の共演編としては全ウルトラシリーズの中でもダントツの最高傑作が誕生したか!? と思えるほどの名編が製作されたが、本稿執筆の2020年1月現在ではこの試みが同作だけにとどまっており、後続のニュージェネウルトラシリーズには継承されていないことが実に残念ではある。
 今やオッサンである第2期ウルトラ世代がそのリアルタイムで、あるいはその下の世代でも20世紀のむかしには途切れなく放送されていた再放送などで鑑賞したその日や翌日には、全国の小学校で子供たちが大興奮して話題に挙げたり、ごっこ遊びで再現していた各作のシリーズ中盤でのウルトラ兄弟助っ人参戦編やウルトラ兄弟勢ぞろい編! この手法は現代の子供たちにもいまだに有効であるだろうと信じて疑わないのだ!


 たとえ「バトル中心」のストーリーではあっても、そのちょっとした作劇的な技巧によって、やや頭デッカチなテーマ主導の作品となってしまった『タイガ』などよりもはるかに地に足が着いている確かなドラマ性が感じられた『ウルトラギャラクシーファイト』を鑑賞していると、改めて手前ミソでもその持説を強く主張をしてみせる必要性を感じてしまう。


 地上波でのテレビ放映がある作品とネット配信のみの作品という相違はあるので単純比較はできないものの、実際にYouTubeでの再生回数も『ウルトラギャラクシーファイト』の方が『タイガ』の中盤以降のエピソードの倍くらいの数字をほぼ毎回稼いでいた(汗)。


 しかし、その当の『タイガ』も第1話の冒頭部のニュージェネレーションウルトラマンが勢揃いしての大バトル! については、歳若い特撮マニアたちこそ大歓迎して壮大ににぎわっていたのだ。
 それらのことを思えば、1970年代の学年誌や児童漫画誌コロコロコミック』などにおける内山まもる先生をはじめとする、大宇宙を舞台にウルトラ兄弟たちが大活躍するウルトラ漫画群(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210124/p1)のその数十年後の実写映像化作品としての側面もあったといえる『ウルトラギャラクシーファイト』などの「多数の先輩ヒーローが登場する連続ストーリー活劇」の方法論の方こそを、むしろ今後のウルトラシリーズの展開の「主軸」「中核」に据えていき、子供たちやマニアたちの興味関心を惹起・継続していくくらいでないと、もうこれ以上のウルトラシリーズ浮揚の勝算はないのではなかろうか!?


――その逆に、昭和の1話完結形式に戻って、「外国人」差別を「宇宙人」差別に代入していたような『ウルトラマンタイガ』の方法論は、その志(こころざし)の高さ自体は壮とすべしではあっても、子供向けあるいは大衆向けエンタメとしてはやや問題があったのではなかろうか?(汗)――


追伸


 『ギャラクシーファイト』のEpisode11から12にかけて、ウルトラマンゼロやニュージェネウルトラマンたちのラストバトルと並行して描かれた、M78星雲のウルトラ兄弟たちが所属する「宇宙警備隊」とはまた別の組織であるらしい「ギャラクシーレスキューフォース」の一員であるウルトラマンリブットの戦いでは、どくろ怪獣レッドキングの初代と二代目がコンビで登場するという、それこそ年季の入った特撮マニアたちのお遊びや二次創作的な妄想にすぎなかったものがホントに映像化されてしまっていた。
 しかも二代目の方は、初代『ウルトラマン』(66年)に登場した原典が水爆を飲みこんでいた設定を忠実に再現するかたちで、ワザワザ首を太くして初代とは正しいかたちで差別化されていたのだ!(笑) この二代目は基本的にはやはり低予算作品で流用キャラクターや色を黒く塗り替えただけの偽ウルトラマンたちの登場で済まされてきた本作『ウルトラギャラクシーファイト』の中では珍しく、実はわざわざ新造された着ぐるみであったそうだ。


 ……おカネの使い方を誤っているような気がしないでもないのだが、ロートル・マニア的にはついつい歓迎してしまう(爆)。


――後日付記:このレッドキング初代と二代目は、『ウルトラマンZ(ゼット)』(20年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200723/p1)第11話『守るべきもの』に、早くも初代は「レッドキングA」(オス)、二代目は「レッドキングB」(メス)という、それぞれ原典や『ウルトラギャラクシーファイト』に登場した個体とは別個体として、同時に再出演を果たしていた(笑)――

2020.1.25.


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2020年冬号』(20年2月9日発行)所収『ウルトラギャラクシーファイト ニュージェネレーションヒーローズ』総括合評1~2より抜粋)


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ウルトラギャラクシーファイト
ウルトラギャラクシーファイト2

ウルトラギャラクシーファイト ニュージェネレーションヒーローズ 01 場面写デザイン アクリルアートボード[A5サイズ]

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『ギャラファイ』評 戦闘連発でもキャラの動機・個性・関係性は描破可能!
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『ウルトラギャラクシーファイト ニュージェネレーションヒーローズ』 ~パチンコ展開まで前史として肯定! 昭和~2010年代のウルトラマンたちを無数の設定因縁劇でつなぐ活劇佳品!

(文・久保達也)
(2019年12月7日脱稿)

*「昭和」「平成後期」「令和」のウルトラマンを「ひとつの世界」に!


 2019年9月29日から無料動画配信サイト・YouTube(ユーチューブ)の円谷プロ公式チャンネル・ULTRAMAN OFFICIAL(ウルトラマン・オフィシャル)にて、毎週日曜朝10時の更新で『ウルトラギャラクシーファイト ニュージェネレーションヒーローズ』(19年)が世界同時配信されている。
 番組のフォーマットは各回約5分前後の全13回で構成されており、かつてテレビ東京系で歴代ウルトラマンシリーズのセレクト再放送や名場面集を放映する枠として存在していた『ウルトラマン列伝』(11~13年)、およびそれを継承しつつも『ウルトラマンギンガ』(13年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200819/p1)・『ウルトラマンギンガS(エス)』(14年)・『ウルトラマンX(エックス)』(15年)といった新作テレビシリーズをも放映する枠となった『新ウルトラマン列伝』(13~16年)の枠内で放映された短編シリーズである、


●『ウルトラゼロファイト』(12~13年)
●『ウルトラファイトビクトリー』(15年)
●『ウルトラファイトオーブ 親子の力、おかりします!』(17年)


と同一のスタイル・作風であり、『ファイトビクトリー』や『ファイトオーブ』と同じく脚本・足木淳一郎と坂本浩一監督のコンビが手がけている。


 ところで、この足木淳一郎なる人物は、先述した『ウルトラマン列伝』の途中から構成・脚本や音響効果として放映中の『ウルトラマンタイガ』(19年)に至るまでクレジットされている。手がけた作品を見ると『ウルトラマンオーブ』(16年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20170415/p1)から『タイガ』に至るまでの第13話、つまり毎年の恒例(こうれい)であるシリーズの折り返し地点である第13話で総集編を書いてきたかと思えば、『タイガ』では『ウルトラセブン』(67年)第45話『円盤が来た』の50年後の続編である第6話『円盤が来ない』を書いているほか、設定監修として名前があったりする。
 また、近年のニュージェネレーション・ウルトラマンの放映休止期間にあたる毎年1月から6月までの半年間に、『ウルトラマン列伝』的な再放送と名場面集として放映されている『ウルトラマンゼロ THE CHRONICLE(ザ・クロニクル)』(17年)や『ウルトラマンオーブ THE CHRONICLE』(18年)、『ウルトラマン ニュージェネレーションクロニクル』(19年)も手がけているのだ。
 この経歴から推測させてもらうならば、実は足木氏とは1990年代からバンダイビジュアルの『ばっちしV(ブイ)』シリーズをはじめとするウルトラマンの格闘名場面を再編集したビデオソフトや、1960年代後半から1970年代初頭に発売されたソノシートを彷彿(ほうふつ)とさせるようなウルトラマンや怪獣が大挙登場するドラマCDなどの構成・脚本・音響効果で活躍してきた、円谷プロの秋廣泰生(あきひろ・やすお)氏のペンネームではないのかと憶測したりする――違っていたら申し訳ないのだが、足木氏の名前が出るようになって以降、秋廣氏をスタッフクレジットで見たことがないので(笑)。~後日付記:67年生まれの秋廣氏よりもはるかに年下である82年生まれの別人なのだそうで、失礼いたしました(汗)――。
 いや、どちらも濃ゆいオタク過ぎてよほど波長が合うのか、坂本監督と共謀(きょうぼう)して我々のような怪獣博士的なオタク心をくすぐりつづけつつも、大衆・ライト層をもエンタメ的に喜ばせる「活劇」が描くことができる、円谷の文芸部の足木淳一郎氏は注目の人物ではある。


 さて、


●先の『ウルトラゼロファイト』は、映画『ウルトラマンサーガ』(12年・松竹・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20140113/p1)の直接的な続編であった。『サーガ』で競演したウルトラマンダイナとウルトラマンコスモスの力を受け継いでタイプチェンジを果たし、別個体という設定で敵の触覚宇宙人バット星人までもがひきつづき登場していた。


●『ウルトラファイトビクトリー』もまた、映画『劇場版 ウルトラマンギンガS 決戦! ウルトラ10勇士!!』(15年・松竹・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200404/p1)の続編であった。地球の地底人であるショウ=ウルトラマンビクトリーが『劇場版』のラストで見習い隊員となった防衛組織・UPG(ユーピージー)の隊員服姿で登場していた。


●『ウルトラファイトオーブ』は、映画『劇場版 ウルトラマンオーブ 絆(きずな)の力、おかりします!』(17年・松竹・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200406/p1)の続編であるのみならず、映画『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE(ザ・ムービー)』(09年・ワーナー・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20101224/p1)では宿敵となった悪の黒いウルトラマンことウルトラマンベリアルの武器であった100体もの怪獣を自在に操れるギガバトルナイザーをキーアイテムとして描くことで、ベリアルの息子=ウルトラマンジードが主役となった次作『ウルトラマンジード』(17年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20180213/p1)の前日譚(ぜんじつたん)ともなっていた。


 本作『ウルトラギャラクシーファイト』も、映画『劇場版 ウルトラマンR/B(ルーブ) セレクト! 絆のクリスタル』(19年・松竹・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190407/p1)の続編である。この『劇場版』でデビューを飾り、『ウルトラマンタイガ』のレギュラー悪となっているウルトラマントレギアが登場し、『ギャラクシーファイト』最終回で描かれるのだろう7大ウルトラマンvsトレギアの戦いが、そのまま『タイガ』第1話『バディゴー!』の冒頭(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190811/p1)へとつながっていく。
 そして、『ゼロファイト』・『ファイトビクトリー』・『ファイトオーブ』と同様に、「昭和」「平成」の歴代ウルトラマンたちを総登場させることで、「新時代」最初のウルトラマンである『タイガ』が前作の『ウルトラマンR/B』(18年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20180826/p1)のみならず、「昭和」「平成」の歴代ウルトラマンシリーズとも連続性を持ち、世界観を共有する「ひとつの世界」と成りえているのだ。


*予算の都合だろうが、既存の着ぐるみキャラだけで有効活用! ウルトラマンリブット・ウルトラダークキラー・偽ウルトラマン軍団!


 本作で新規に登場するキャラとしては、宇宙の災厄(さいやく)から生命を守るウルトラ一族の故郷であるM78星雲・光の国の一組織であるギャラクシーレスキューフォースの一員でもあるウルトラマンリブット、そしてウルトラの名を冠する者をすべて抹殺しようとするウルトラダークキラーが挙げられる。


 これまでのウルトラマンの概念(がいねん)を打ち破るかのような革新的なデザインが多かったニュージェネレーション・ウルトラマンたちとは異なり、初代ウルトラマンに赤のラインを少々増やしただけに見えるウルトラマンリブット。そのデザインは平成初期に誕生したウルトラマングレート(90年)・ウルトラマンパワード(93年)・ウルトラマンネオス(94年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19971115/p1)などに先祖帰りしたかのような印象が強く、逆におもわず注目してしまうものがある――ただ、手足にはギャラクシウムなる青い硬質なクリスタル状の装飾が配されて、左腕にはやはり青いクリスタルが印象的な小さな盾(たて)であるリブットブロッカーを装備している――。
 ウルトラマンリブットは幼児にイスラム文化を教える知育・情操番組としてマレーシアで放送されている3DCGアニメ『ウピンとイピン』(07年)に円谷プロの公認で2014年に登場したのを出自としているそうだ。日本の映像作品への登場は本作が初なのかと思いきや、2016年の『新ウルトラマン列伝』最終回(第155話)『グランドフィナーレ! ウルトラ戦士よ永遠に!』にもすでにモブキャラ映像として登場していたそうであり――そんなもんネットでの反響までチェックしていなければ気づけるワケがない(爆)――、今回は2度目の登場となるのだそうだ。


 ちなみに、「リブット」とはマレー語で「嵐」を意味するものだそうだ。リブットの動きにはマレー現地の武術・シラットが取り入れられている。現地でアトラクション用に製作されたスーツをベースにしたリブットのアクションを、坂本監督はこのシラットを基本に演出しているそうだ。
 初登場のEpisode3(エピソード・スリー)でリブットが『ウルトラQ(キュー)』(66年)に登場した冷凍怪獣ペギラと対戦する。映画『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説』でグリーンバックを背景にしたワイヤーアクションによるウルトラマンの動きを確立させ、その後も継承させるに至った坂本監督である。このリブットvsペギラのバトル場面は本作『ウルトラギャラクシーファイト』におけるほかのウルトラマンたちのアクション演出と比べ、明らかに差別化されている。


 地球と同様に青空を背景とした水の惑星・リクエターの湖で冷凍光線を吐いて暴れまわり、星の住人・海底原人ラゴンを危機に陥(おとしい)れるペギラに対して空からスピーディーな高速キックを合成映像で浴びせかけるリブットこそ、いつもながらの坂本演出だ。しかし、「ギャラクシーレスキューフォースウルトラマンリブット、出動!」と、武術のような構えでリブットが名乗りをキメて以降は、そのアクションは翼竜型怪獣でもあるペギラの緩慢(かんまん)な動きに合わせるかたちで、スピード感よりも巨大感や重量感を強調した演出となっていた。
 惑星に着地したリブットを真下から超アオリで捉えた足下(あしもと)に猛烈な水しぶきが湧き上がったり、建造物がない代わりに周囲に常に樹木を配置して、そのバトルを絶えずアオリで捉えるのもさることながら、湖での戦いを斜めに傾いたカメラが手前に森をナメながら超高速で横移動しながら捉えているさまは、リブットvsペギラのバトルの重厚でもやや緩慢で今時の飽きっぽい視聴者からすればややローテンポな映像にもなりかねないシーンになりかねないところを、手前の樹木を超高速で動かすことで「重厚感」と同時に「スピード感」をも付与して、両者を両立(!)もさせている秀逸(しゅういつ)な演出なのだ!


 リブットが両腕をゆっくりと回すことで周囲から光の粒子が集結して放たれる必殺光線「ギャラクシウムブラスター!」をペギラに浴びせる場面で、リブットが振り回している両腕の残像がCGで描かれているのは、名作時代劇映画やテレビ時代劇『眠狂四郎(ねむり・きょうしろう』シリーズの必殺剣技・円月殺法(えんげつ・さっぽう)由来のもので、『バトルフィーバーJ』(79年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20120130/p1)や『電子戦隊デンジマン』(80年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20120205/p1)の戦隊巨大ロボットのバンク映像による必殺剣の特撮映像などにも引用されてきた残像処置である。これによって、やはり力押しだけではない東洋的な神秘を感じさせるワザであることも含意させており、ウルトラマングレートがオーストラリア、ウルトラマンパワードアメリカ出身であったのに対して、リブットが東南アジア出身――といっても儒教圏ではなくイスラム圏だが――であることから着想された演出でもあるだろう。


 一方のウルトラダークキラーは、2012年にパチンコメーカーの京楽(きょうらく)からリリースされた『CRぱちんこウルトラマンタロウ 戦え!! ウルトラ6兄弟』がデビュー。同作以降は同社の『CRぱちんこウルトラマンタロウ 暗黒の逆襲』(13年)・『CRぱちんこウルトラバトル烈伝 戦えゼロ! 若き最強戦士』(15年)に連続して登場した敵キャラクターである。本作『ギャラクシーファイト』にも主要キャラとして登場するウルトラマンゼロウルトラマンタロウとも深い因縁(いんねん)を持った敵であり、ウルトラ兄弟に倒された怪獣や宇宙人の怨念(おんねん)が生み出した闇の超人として描かれていた。
 『ギャラクシーファイト』ではウルトラマンエックスダークネス・ウルトラマンジードダークネス・ゼロダークネス、そしてウルトラマンオーブダークノワールブラックシュバルツ(笑・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20181104/p1)ではなくウルトラマンオーブダークネスといった闇の超人たちが敵キャラとして登場する。


 これらはもちろん、本作もまた低予算作品なので、着ぐるみキャラをゼロからデザインして新規造形すると高額の予算を要してしまうために、既存の着ぐるみの色の塗り替えだけで済む、そして強そうにも見えるニセモノのウルトラマンを登場させたといった趣向だろう。


 ウルトラダークキラー自体もタロウに酷似(こくじ)した胸のプロテクターの中央には、ウルトラマンたちのようにエネルギー切れ間近を示すワケではないものの常に赤く光っているカラータイマーを備えており、タロウと同じく両耳部分にはウルトラホーンなる巨大なツノがあり、両腕の手甲(てっこう)にはウルトラセブンアイスラッガーのような鋭利な刃物を装着している暗黒の超人である。


 デビュー作の『戦え!! ウルトラ6兄弟』ではウルトラ5兄弟と合体したスーパーウルトラマンタロウが放った特攻自爆の必殺ワザ「ウルトラダイナマイト!」に敗れて、続編の『暗黒の逆襲』ではウルトラ5兄弟をベースにした黒いウルトラ5兄弟ことウルトラダークキラーブラザース(!)を生み出し、『戦えゼロ!』では異次元空間でウルトラマンゼロを待ちかまえていたウルトラダークキラー。
――もちろん、このウルトラダークキラーも、内山まもる先生が『小学三年生』に連載した『ウルトラマンレオ』コミカライズ(74年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20061028/p1)に登場させたオリジナル敵キャラ・ウルトラキラーゴルゴが元ネタだろう――


 本作でも数々のウルトラマンたちのダークネスこと闇の超人を生み出すのはもちろんのこと、Episode1では『ウルトラマンR/B』の2大主役ウルトラマンであるウルトラマンロッソ&ウルトラマンブルが不在となった綾香市(あやかし)の森で光線の訓練をしていたウルトラウーマングリージョをかばったゼロが、ダークキラーによってグリージョとともに「無限の闇」こと「ダークキラーゾーン」に幽閉されて、Episode5ではかつてウルトラ5兄弟と合体したスーパーウルトラマンタロウが「ウルトラダイナマイト!」でダークキラーを葬(ほうむ)った過去がタロウの回想として語られる。
――つまり、本作『ギャラクシーファイト』では『ぱちんこ』展開などはパチモンである! なぞとは斬り捨てずに、うれしいことに正史・前史として全肯定的に描いてもいることになるのだ!――


 ここ数年はヒーロー共演が恒例である劇場作品でも、2010年代のウルトラ先輩戦士は客演しても昭和のウルトラマンがあまり登場していないが、足木氏と坂本監督は、


●『ウルトラファイトビクトリー』ではウルトラマンエースウルトラマンレオ&アストラ兄弟
●『ウルトラファイトオーブ』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20170603/p1)ではゾフィーウルトラセブンウルトラマンジャック


を放映当時の最新ウルトラマンや歴代平成ウルトラマンたちとも競演させており、たとえ回想のかたちではあっても今作でも「昭和のウルトラマン」の活躍を描くことで、平行世界を越境できるという2010年代以降のウルトラシリーズの新設定も活(い)かして、「平成ウルトラマン」や「ニュージェネレーション・ウルトラマン」とも世界観を共有する「ひとつの世界」としてまとめあげているのは評価されてしかるべきだろう。


 本作でダークキラーと手を組む悪党が、


●2010年代のニュージェネレーション・ウルトラマン最初の作品『ウルトラマンギンガ』のラスボスだった暗黒の魔神ダークルギエル
●坂本監督作品の映画『劇場版 ウルトラマンギンガS』に登場した超時空魔神エタルガー
●そして、『劇場版 ウルトラマンR/B』でデビューを飾って、『ウルトラマンタイガ』の宿敵となったウルトラマントレギア


 それぞれがタロウやゼロ、ギンガやビクトリーらに因縁がある敵をせいぞろいさせることで、いきなり初登場しただけの敵キャラでは強敵としての属性しか存在しないであろうところを、人間関係のもつれ的なドラマ性が自然と醸(かも)されてきて、加えて個別単独の作品を超えたウルトラシリーズとしての連続性のような感慨まで惹起(じゃっき)されてくるのだ。


 Episode6の冒頭でのマイナスエネルギーに満ちている惑星テンネブリスのダーク宮殿にて、ダークルギエルがギンガを、エタルガーがビクトリーはオレが倒すなどと口にする中、ウルトラマントレギアが「全ウルトラマンのダークネスをつくる本来の目的を忘れては困る」などと語るさまは、さながら昭和の時代からある東映ヒーローものや合体ロボットアニメに登場した敵組織の幹部たちのようである。
 これはそのことをマネであるなどといってバカにしている発言ではない。むしろ、正義の軍団vs悪の軍団との攻防劇を、敵キャラクターのお団子状態にはさせずに多数の各キャラクターを描き分けるためには、このようなそれぞれの思惑(おもわく)の違いを短い尺の中で点描していくことこそが正解でもあるからだ!


*バトルや幕間でも点描されていく、ウルトラマンたちの「人物相関図」!


 さて、先述したようにゼロとグリージョがダークキラーによって捕らわれの身となるのと並行して、


●惑星サンダウィンではウルトラマンエックス&ウルトラマンジードvsエックスダークネス&ジードダークネスにつづいて、ダークルギエルがエックスとジードを襲撃!
ウルトラマンオーブウルトラマンロッソ&ウルトラマンブルの兄弟がウルトラマンとしての力を授(さず)かった惑星・O-50(オー・フィフティー)では、サンダウィンから移ってきたエックスダークネス&ジードダークネスがオーブを急襲!
●光の国の宇宙警備隊本部でタロウからグリージョの危機を知らされて、彼女の救出へと向かっていたロッソ&ブルの兄弟は、エタルガーによって惑星ペノルに撃墜されて、そのまま強敵のエタルガーと対戦!


 ……と、全宇宙狭しと大活躍するニュージェネレーション・ウルトラマンたちが描かれていく。


●惑星サンダウィンの背景の宇宙は、夕陽のような逆光を背景に両眼と胸中央にあるカラータイマーのみが妖(あや)しく光っているエックスダークネス&ジードダークネスのシルエットが陽炎(かげろう)の中に浮かんでいる、Episode1の冒頭におけるインパクト絶大なカットが象徴するように真っ赤
●惑星O-50は暗雲がたちこめる漆黒の空
●惑星ペノルは地球同様に青い空に白い雲


 と、その舞台が明確に映像的にも差別化されている。


 ウルトラマンたちが次々とタイプチェンジを披露しながら戦うさまは、本作が役者が演じる人間キャラが登場しない完全な「仮面劇」であり、延々とバトル場面がつづくだけに、縦横無尽(じゅうおうむじん)に目先の変化を繰り出すことで、視聴者を飽きさせないための工夫がなされている。
 ウルトラ兄弟の長男・ゾフィーウルトラマンベリアルのカードの力を借りてタイプチェンジするウルトラマンオーブ・サンダーブレスターのキックやパンチで、エックスダークネス&ジードダークネスが受ける衝撃波がCGで描かれてその衝撃度も強調されているように、スローモーで重厚な演出がなされたかと思えば、ゼロやウルトラマンジャックの力を借りたウルトラマンオーブ・ハリケーンスラッシュにタイプチェンジした途端に、スピード感にあふれるバトル演出に一転するのはその典型例なのだ。


ウルトラマンビクトリーがテレビシリーズ以来の能力である、その右腕をどくろ怪獣EX(イーエックス)レッドキングのデカすぎる握りこぶしに変化させて、それを大地にたたきつけて前面に延びていく地割れからマグマを噴出!
ウルトラマンエックスがテレビシリーズ以来の能力である、宇宙怪獣エレキングを模(も)したアーマー(ヨロイ)を装着して、「エレキング電撃波!」をエックスダークネスに浴びせる!


 これらの描写などを観ていると、そういえばここ数作のニュージェネレーション・ウルトラマン作品にはここまで視覚的にインパクトがある、ある意味ではデタラメに誇張された漫画チックな大ワザがあまりないのは、今時の子供番組としては少々地味かもしれないなぁ……などと複雑な気持ちになったりもするのだが。


 そして、オーブをビクトリーが、エックスとジードをギンガが、ロッソ&ブルをタロウからのウルトラサイン――おなじみ、ウルトラ文字を宇宙空間に表示させる連絡手段!――を受けたリブットが救出する!
 これらの描写もまた、エックス以前のウルトラ戦士であるギンガ・ビクトリー・リブットが先輩としての強さを示すのみならず、ウルトラマン同士の関係性をも端的に表わすやりとりが点描されることで、たとえバトル場面が中心ではあってもキャラクターの個性も描いている群像劇として完成されているのだ。


●ふだんは少々ガラの悪いヤンキーキャラでありながらも、深い闇の中で苦しむグリージョに胸のカラータイマーから自身の光のエネルギーを与えるゼロ。


●「ここで負けたらウルトラマンの名が泣きますからね!」と、ダブル必殺光線でダークルギエルに一矢報いた(いっし・むくいた)エックスとジードを「上出来だ、後輩!」と讃(たた)えて、「話せる兄貴」的な姿を見せるギンガ。


●「おまえらは修行が足りてない。ゼロ、いや、(ウルトラマン)レオ兄弟に鍛(きた)えてもらった方がいい」などと、本作には登場しないレオ兄弟にも言及することで、ウルトラシリーズの作品世界の広さも示している。とはいえ、レオ兄弟とは面識がない後輩キャラたちであるロッソ&ブルは「レオって誰だよ?」とボケさせることで、ロッソ&ブルにもいかにもそれらしいキャラ性を同時に立てることもできていた。


 ちなみに、ウルトラマンビクトリーは『ウルトラファイトビクトリー』(15年)でウルトラマンレオ&アストラ兄弟と競演している。先述した映画『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説』(09年)でレオ兄弟がウルトラマンゼロの師匠として描かれて以降、その続編となったオリジナルビデオ作品『ウルトラ銀河伝説外伝 ウルトラマンゼロVSダークロプスゼロ』(10年・バンダイビジュアルhttps://katoku99.hatenablog.com/entry/20200125/p1)でもレオとゼロとの師弟関係&共闘劇は描かれてきた。ビクトリーのロッソ&ブルに対する一喝はそれらの先行作での描写を継承するかたちで、あのゼロの上にもさらにレオ兄弟なる偉大な存在がいることを立体的に示唆(しさ)してもいるのだ。


●そんなロッソ&ブルに同じくO-50出身の後輩として「よろしくな」と暖かく声をかけるオーブの姿に、「もしかしてオーブ!?」などと突然の先輩の登場にミーハーに喜んでいるロッソ&ブル
●宇宙警備隊本部に遅れてやってきたギンガに「遅いぞ」と声をかけたビクトリーに、「ゼロが云ってたろ。主役は遅れて来るって」と余裕の冗談を口にし、彼らが地球で所属した防衛組織・UPGの合言葉「ガレット!」も口にして拳(こぶし)を合わせるギンガとビクトリー


 ちなみに、ゼロが「よく云うだろ。主役は遅れて来るってな」と左手で二本指を立てて語ったのは、『ウルトラマンジード』第8話『運命を越えて行け』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200523/p1)の際だった。ギンガがこの回に登場したワケでもないのにそれを知っているのは、ゼロが遅刻の言い訳としてしょっちゅうこれを口にしているからだろう(笑)。
 そして、映画『劇場版 ウルトラマンR/B』で競演したことから「ひさしぶり!」と手を振って声をかけるロッソ&ブルに気づかないほどに――リアルに考えればコレもアリエない描写なので、ここもやはり漫画チックな描写なのだが、それが悪いというワケでもない。むしろジードのキャラクターも立つのと同時にクスッと笑えるのだ!――、「ここが光の国か!?」と初めて目にする故郷の星に感動して、「ペガやライハにも見せてあげたかった」と、『ジード』のレギュラーキャラであるペガッサ星人ペガや同作のヒロインの名前を挙げるかたちで、仲間に想いを寄せるジードも描くことで、『ジード』の作品世界や登場人物たちとも本作は確実につながっているのだという気持ちにもさせてくれるのだ。


 Episode5で描かれたこれらの短い描写は、過去作品で描かれたセリフや世界観を受けた描写だった。しかし、たとえそれらの過去作を観てはいない視聴者にとっても、それぞれのウルトラマンのキャラクターの違いや関係性や物語性がフワッと想起させられてくる演出にはなっているのだ! ひいては、本作のこれらの描写がフック(引っかかり)となって、過去作を観てみようと思う視聴者だって少数であっても確実にいることだろう!


 そして、グリージョの救出に力を貸してほしいとのロッソ&ブルの頼みを先輩ウルトラマンたちが快諾(かいだく)し、7人のウルトラマンが光の国のエメラルドグリーンに輝くクリスタルタワーの上空にいっせいに飛び立って、ブラザースマントを着用した今や重鎮のウルトラ6兄弟たちが見送っているEpisode6の場面で、タロウが「我々にも頼もしい仲間が増えましたね」などと、2010年代のニュージェネレーション・ウルトラマンたちのことを感慨深げに昭和のウルトラ兄弟たちにつぶやく描写は、昭和のウルトラ6兄弟と2010年代のニュージェネレーション・ウルトラマンがたしかに魂の系譜としても「つながった」瞬間であるとして、多くの視聴者にも心に深く刻(きざ)まれる演出だったことだろう。


*シーソーバトルから大逆転劇へ至る、新世代ウルトラマンたちのウルトラマンゼロとの因縁&奮起!


 「来たな、ウルトラマン」と憎々しげにつぶやくウルトラダークキラーがアジトとする惑星テンネブリスに、リーダーとなるギンガを中心に横並びで着地する7人のウルトラマンにカメラが高速でズームイン! ギンガの「行くぜ、みんな!」を合図に全ウルトラマンがファイテングポーズをキメる、最高にカタルシスにあふれる描写でEpisode7は開幕する!


 ここは昭和の時代のいかにも模型ミニチュアな飛び人形などではなく(笑)、スーツアクターが着用した着ぐるみ姿で高速飛行している7人のウルトラマンが真横のアングルからカメラも高速移動で追随しているように捉えられて、それぞれのウルトラマンのニセモノことダークネスと対戦するためにエックス・オーブ・ジードの3人だけは「ここはオレたちが(引き受けて戦います)!」と惑星の荒野へと着地する!


 彼らに任せて奥地へと先行したギンガ・ビクトリー・ロッソ・ブルが向かったダーク宮殿ではダークルギエル&エタルガーが待ちかまえており、対戦相手としてご指名を受けたギンガとビクトリーは、ロッソとブルをゼロとグリージョが幽閉されているさらなる奥地へと急行させる!


 一度は大集結したウルトラマンたちが過去作での因縁の敵と対戦するために散り散りになっていくさまを、坂本監督はすでに映画『劇場版 ウルトラマンギンガS』のクライマックスでも描いていた。大集合のカタルシスを描きつつも、バトルにおいて個々のキャラクターの強さやカッコよさを描くためには、再びバラバラに戦場を分散させた方が都合がよいのだ(笑)。


 エックスとエックスダークネスが画面手前に向かって空中戦を展開する!


 その真下ではオーブが大型の必殺剣「オーブグランドカリバー!」でイナズマを巻き起こす!


 オーブダークネスも剣先を回して紫色の光線を発射!


 その先の空ではジードダークネスが高速で舞いながらジードを攻撃!


 それに向かって両腕から必殺光線・レッキングバーストを放つジードを、周囲の360度から超高速で回り込みつつ下からのアオリで捉えるジード定番の必殺ワザの発射直前の演出も漏れなく見せてくれる!


 ギンガが自身の主演作での最終回(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200827/p1)と同様に、ギンガスパークランスなる白い光の槍(やり)でダークルギエルと剣術バトルを繰り出すさまを真下からアオリで捉える!


 かと思えば、その右腕を宇宙ロボット・キンギジョーカスタムのそれに変化させて砲撃連射「キングジョー・ランチャー!」をブっ放しながら画面左奥へと高速で後ろ向きに飛んでいくビクトリーを、画面右手前から追撃するエタルガーが背面から描かれる!


 まさに「蝶(ちょう)のように舞い、蜂(はち)のように刺す」ようなアクション演出といっても過言ではないほどに、臨場感とスピード感にあふれるバトル演出は最高にカッコいい!


 だが、先輩ウルトラマンたちが善戦する中で、ゼロとグリージョを救うために戦うロッソ&ブルの必殺ワザはウルトラダークキラーにことごとく弾(はじ)かれてしまい、Episode8のラストでダークキラーはゼロの眼前でゼロから奪取していたエネルギーを正負反転させてゼロダークネスを生み出してしまう!
 このゼロダークネスは、先述した『ウルトラゼロファイト』の第2部『輝きのゼロ』(12年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200314/p1)終盤で、ウルトラマンベリアルの怨霊(おんりょう)がゼロに憑依(ひょうい)して誕生したものだ。Episode9では映画『ウルトラマンゼロ THE MOVIE 超決戦! ベリアル銀河帝国』(10年・松竹・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20111204/p1)以来、使用されている楽曲『ベリアルのテーマ』が流れる中で、ゼロダークネスがベリアルのようにカッタルそうに首を回す動きを継承することで、ゼロの因縁の敵であることをより印象づけていた。


 そして、ダークキラーはウルトラマンたちの身長よりも倍に近い姿へと巨大化! これはもちろん、ダークキラーがウルトラマンと同サイズのままではウルトラマンたちによる集団イジメに見えてしまいかねないことを回避して、1vs多数の爽快な集団戦を描いてみせるための処置でもある(笑)。
 そんな巨大な姿となったダークキラーを背景に、ニュージェネレーション・ウルトラマンたちの大活躍を描きつつも、大ピンチの描写も重ねられてダークキラーの絶大なる力を端的に示すアクション演出が危機感をあおっていく。


 しかし、この手の作品は最後には正義のヒーローたちに勝利してもらわなければならない(笑)。そこでは音楽演出も機能してくる。ウルトラマンたちの大逆転劇を描くファンファーレとして流れ出すのは、先述した映画『ゼロ THE MOVIE』アバンタイトルで、ゼロがM78星雲を飛び出して超光速で宇宙の果てを突破し、マルチバース=多元宇宙を飛行する場面に1コーラスのみが流れた勇ましい主題歌調の幻の名曲『すすめ! ウルトラマンゼロ』なのだ!


 「ゼロさんは親子の力を教えてくれた!」と、ゼロの父であるセブン&ゼロの力を借りた姿であるエメリウムスラッガーにタイプチェンジするオーブ!


 「ゼロの想いは時空を超えてオレたちをつなぐ!」と、ゼロが装着するヨロイ・ウルティメイトイージスをコピーしたゼロアーマーをまとうエックス!


 「ゼロがいたから、僕は運命を変えることができた!」と、ゼロ&ウルトラの父のウルトラカプセルでマグニフィセントの姿に強化変身するジード!


 そして、先述した映画『劇場版 ギンガS』でゼロの特訓を受けたウルトラマンギンガ&ウルトラマンビクトリーは、ゼロの勇気と諦めない心を胸に同作同様に「ウルトラタッチ!」の掛け声とともにウルトラマンギンガビクトリーへと合体変身をとげる!


 ゼロの上半身の巨大なイメージ映像を中央バックに、


ウルトラマンギンガビクトリー
ウルトラマンエックス・ゼロアーマー
ウルトラマンオーブ・エメリウムスラッガー
ウルトラマンジード・マグニフィセント


といった、先行シリーズでのゼロの力を継承した姿でもある4大ウルトラマンが並び立つ!


 これらの描写はあまりにも強い敵・ダークキラーを倒すためにも、ニュージェネレーション・ウルトラマンたちが過去作での設定やドラマを忘れずに、ゼロ由来の力でテレビシリーズでもお馴染みの強化形態へとタイプチェンジを果たしたことで、あれほどまでに強かったダークキラーを倒せることへの劇中内での一応の合理的・物理的・肉体的な説明としての「説得力」にも昇華しているのだ。
 加えて、ただ単にウルトラマンたちが物理的・肉体的にパワーアップしただけでもない。各自の最強・最終形態に変身したのでもなく、ゼロによる特訓や彼との交流に由来する中間形態としての強化形態に変身するかたちで、過去作でのドラマをそれらの強化形態に投影・反復・想起させることで、仮面のキャラクターたちが繰り広げるやりとりにいわゆる「人間ドラマ性」をも高く付与することができているのだ! 「アクション性」と「ドラマ性」を同時に兼ね備えさせている一粒で二度オイシい作劇&描写!


*息の長いキャラや息の長い消費をされるためにも、先輩ヒーロー助っ人参戦やヒーロー大集合作品が必須!


 Episode10では、グリージョさえもが「絆をあきらめない! 私だってウルトラマンです!」などとゼロを助けるために奮起して、あの強敵・ゼロダークネスをキックやヒジ打ちで攻撃したあげくに、全身から強烈な閃光を放ってダークキラーとゼロダークネスを遠方へと吹っ飛ばす!
 そして、兄のロッソ&ブルに逆にエネルギーを与えて回復させるという、一見は昭和の時代の特撮変身ヒーロー番組にはよくあったお荷物の人質キャラのままかと思わせて、登場キャラのすべてに見せ場を与える点描も挿入されるかたちで開幕する。


 ウルトラマンロッソ&ウルトラマンブルが合体変身した姿でもある、彼らが主演のテレビシリーズ後半でもおなじみのウルトラマンルーブが、ゼロダークネスが両腕をL字型にして放った必殺光線・ワイドゼロショットを右手だけでしばらく受け止めてから払いのける!
 それらが炎のシャワーとなって後方に降り注いで着弾! 盛大な爆炎を上げているさまを背景に、画面の手前に悠然と闊歩してくる最新ヒーロー・ルーブの絶大な「強さ」を印象づける演出も実にカッコいい!
 伏せたゼロダークネスの背中の上で側転してダークキラーにキックを浴びせたり、ロッソに変身する主人公の青年・湊カツミ(みなと・かつみ)は野球が得意だった設定を活かして、テレビシリーズ同様にピッチャーがボールを投げるように振りかぶってからゼロダークネスにパンチを浴びせるアクションも最高にカッコいい!


 ニュージェネレーション・ウルトラマン作品の主題歌メドレーが流れ出す中で、


●オーブエメリウムスラッガーは、頭頂部の3本のトサカとなっているブーメランこと、『ウルトラファイトオーブ』終盤でも披露した緑や青のあざやかな3本のスラッガーを念動力で宙に舞わせて敵にブツける「ハイパーウルトラノック戦法!」
●エックスは、ゼロアーマーをゼロのヨロイであるウルティメイトイージス同様に、脱着して中空で弓矢状に変形させてから発射する「ファイナルウルティメイトゼロ!」
ジードマグニフィセントは、両腕をL字型に組んで発射する、ウラ設定では77万度もある緑色の電撃光線「ビッグバスタウェイ!」――この77万度という設定はウルトラマンレオの故郷であるL77星からの駄洒落的な引用であるらしいことに今ごろ気づいた(爆)――
●ギンガビクトリーも、ゼロの必殺ワザである両腕をL字型にして発射する光線「ワイドゼロショット!」


をそれぞれで放った! 各自の因縁の敵キャラを、見た目も含めて実にあざやかに倒していき、ウルトラダークキラーが率いた暗黒軍団はついに全滅する!



 とはいうものの、本作の真の黒幕でもある悪の青いウルトラマンことウルトラマントレギアは健在であり、放映もあと3回残っているのだ。しかし、個人的にはこの『ウルトラギャラクシーファイト』は、Episode9のラスト~Episode10にかけてこそが最大のドラマ&アクション的なクライマックスではなかったかと思える。
 ニュージェネレーション・ウルトラマンたちが皆、口々にウルトラマンゼロへの想いを吐露(とろ)してパワーアップをとげるさまは、彼らの背景に常に先輩として助っ人参戦や昭和的な特訓(笑)をほどこしてくれたゼロの存在があったことを最大限に象徴しているのだ。


 映画『ウルトラ銀河伝説』でウルトラセブンの息子として華々しくデビューを飾ったゼロであった。しかし、その公開から続編映画『ゼロ THE MOVIE』に至るまでの1年の間にゼロが正規の映像作品に登場したのは、先述したビデオ販売作品『ウルトラ銀河伝説外伝 ウルトラマンゼロVSダークロプスゼロ』くらいのものであり、主役となるテレビシリーズを製作することはできなかった。そのために、世間にゼロの存在が充分に認知されることがないまま、作品自体の完成度は高かったにもかかわらず『ゼロ THE MOVIE』は興行的には大コケをしてしまった。ヘタをすれば、この時点でゼロの商品的価値がそれこそゼロとなってしまう危険性もあったのだ(汗)。


 だが、その反省もあってか、映画『ウルトラマンサーガ』(12年)の前哨戦・宣伝の意味も込めて、ゼロは先述した再編集番組『ウルトラマン列伝』(11年)の番組ナビゲーターを担当し、後番組である『新ウルトラマン列伝』(13年)の番組ナビゲーターも含めて足掛け5年に渡って務めつづけて、その枠内では自身が主役となる短編シリーズ『ウルトラゼロファイト』(12年)なども放映された。
 『ウルトラマンサーガ』や『ウルトラゼロファイト』第2部で主演作品は一応は最後となったものの、「ちょいワル」なのに決して下品にはならずに育ちはよさげな不良少年(笑)といった絶妙な塩梅のキャラクター性で、子供たちの間でも大人気を博しつづけて、映画『劇場版 ウルトラマンギンガS』(15年)・映画『劇場版 ウルトラマンX きたぞ! われらのウルトラマン』(16年・松竹)・映画『劇場版 ウルトラマンオーブ』(17年)・映画『劇場版 ウルトラマンジード つなぐぜ! 願い!!』(18年・松竹・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20180401/p1)に至るまで、ニュージェネレーション・ウルトラマンの劇場版にゼロは4年連続(!)で客演を果たしてきた。
 そして、『ウルトラマンX』(15年)第5話『イージス 光る時』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200405/p1)にゲストで登場したのにつづいて、『ウルトラマンジード』(17年)でゼロはジードとのダブル主人公としてレギュラー入りを果たす快挙を成し遂げたのだ!


 ニュージェネレーション・ウルトラマンシリーズの第1作である『ウルトラマンギンガ』においては、昭和ウルトラ~『ウルトラマンメビウス』~『ウルトラゼロファイト』へと至る昭和ウルトラ直系の歴史がまたもリセットされて、せっかくの名キャラクター・ウルトラマンゼロが客演することはもうないのかも……と危惧されたものの、『劇場版 ウルトラマンギンガS』で先輩平成ウルトラマンたちと客演して以来、いつしかニュージェネレーション・ウルトラマンシリーズには欠かせない存在と化して成長していったゼロであった。
 ただし逆に云うと、ゼロの強烈なキャラクターは目立ちすぎてしまうという欠点もあり、本作ではゼロの弟子挌である若手のニュージェネレーション・ウルトラマンたちを活躍させるためにも、本作では冒頭において強敵ボスキャラによって閉鎖空間に幽閉されてしまう処置が採られている。たしかに各キャラクターの強弱バランスをとるためにもこういった処置の作劇を採るしかないだろう(笑)。


 とはいえ、ずっと幽閉されたまま、弱いまま、負けたままであっても、昭和のウルトラシリーズにおける先輩ウルトラマンたちの客演話(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20061105/p1)のようになってしまって、視聴者のフラストレーション(欲求不満)も溜まってしまうものだろう。よって、本作では最後にニュージェネレーション・ウルトラマンたちの大決戦と並行して、ゼロにも大活躍を果たさせてゼロダークネスを撃破するという役回りを与えているのだ。
 ニュージェネレーション・ウルトラマンたちを主役格として立てつつも、副主人公挌のポジションとしてゼロにも最後には目立たせるという、実にクレバーな活劇としての作劇だったのであった。今さら云っても詮(せん)ないことなのだが、この点では昭和のウルトラシリーズの先輩ウルトラマン客演編も見習ってほしかったところだし、昭和の時代に映像作品でもこのようなウルトラ兄弟客演編を観たかったものだ(笑)。


 もちろん、主役となるテレビシリーズがまともに製作されず実に変則的な活躍を余儀なくされてきたゼロが、ここまでの息の長いキャラクターと成りえたのは、その強烈なキャラクター性の魅力もさりながら、単純にこの10年に渡って絶えず映像作品に露出をつづけてきたことが大きい。


 たとえば、ゼロが誕生するたかだか3年前に放映された『ウルトラマンメビウス』(06年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20070506/p1)は当時は子供間でも年長マニア間でもそれなりの人気を博したものだ。しかし、映画『大決戦! 超ウルトラ8兄弟』(08年・松竹・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20101223/p1)や映画『ウルトラ銀河伝説』に客演して以降は、映画『劇場版 ウルトラマンギンガS』に客演した以外は露出が皆無(かいむ)となってしまったことから、すでに放映10年後の2016年の時点では完全に「過去のキャラクター」と化してしまった感もあったのだ――もちろん『メビウス』という作品自体は特撮マニア諸氏と同様に筆者も大スキなのだけど――。


 テレビシリーズが長らく中断していた時期にビデオ販売作品などで活躍していた、そんな過去の幻のキャラクターとなってしまった平成初頭のウルトラマンたちがその怨念(笑)で闇の超人と化して、昭和の時代ほどではないとはいえ平成初頭の時代以上には人気を博しているニュージェネレーション・ウルトラマンたちに復讐を果たそうとする作品が、ライダーシリーズのそれと同様に製作されてもよさそうなほどなのだ(爆・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190804/p1)。過去作のウルトラヒーローたちのソフビ人形も売るためにか、劇場版や今回のような短編シリーズで夢の競演を重ねる方針が継続されて、放映後も露出をつづけることでまだまだ現役感を出せている2010年代以降のニュージェネレーション・ウルトラマンたちは、その意味では今後しばらくは安泰(あんたい)だと見てよいのかもしれない。


 『ウルトラマンタイガ』につづく最新ウルトラマンたちやシリーズもののテレビ特撮作品の最新ヒーローたちが、放映から10年を経てもゼロのような息の長いキャラクターとなるためにも、本作のようなヒーロー共闘作品や先輩戦士が助っ人参戦するエピソードが継続して製作されていくべきなのである!


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2020年号』(19年12月28日発行)所収『ウルトラギャラクシーファイト』評より抜粋)


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ウルトラマンX(エックス)』(15年)前半評! 5話「イージス光る時」・8話「狙われたX」・9話「われら星雲!」 ~ゼロ・マックス・闇のエージェント客演!

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『劇場版ウルトラマンオーブ 絆の力、おかりします!』(17年) ~イイ意味でのバカ映画の域に達した快作!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200406/p1

ウルトラファイトオーブ』(17年)完結評 ~『オーブ』と『ジード』の間隙ほかを繋ぐ年代記的物語!

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ウルトラマンジード』(17年)序盤評 ~クライシス・インパクト! 平行宇宙のひとつが壊滅&修復! その原理とは!?

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20170819/p1

ウルトラマンジード』(17年)中盤総括 ~Wヒーロー・特オタ主人公・ラブコメ! 希代の傑作の予感!?

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ウルトラマンジード』(17年)最終回「GEEDの証」 ~クライシスインパクト・幼年期放射・カレラン分子・分解酵素・時空修復方法はこう描けば!?

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20180213/p1

『劇場版ウルトラマンジード つなくぜ!願い!!』(18年) ~新アイテムと新怪獣にも過去作との因縁付与で説得力!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20180401/p1

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ウルトラマンタイガ中盤評 ~悩めるゲストのみならず、ボイスドラマでの超人たちのドラマこそ本編に導入すべきだ!

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ウルトラマンタイガ』中盤評 ~悩めるゲストのみならず、ボイスドラマでの超人たちのドラマこそ本編に導入すべきだ!

(文・久保達也)
(2019年11月20日脱稿)

*序盤は好調だった『ウルトラマンタイガ』に募っていく違和感!


 2019年9月29日から無料動画配信サイト・YouTube(ユーチューブ)で配信されている『ウルトラギャラクシーファイト ニュージェネレーションヒーローズ』(19年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200110/p1)。そのラストからつづくかたちで、


●『ウルトラマンギンガ』(13年)~『ウルトラマンR/B(ルーブ)』(18年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20180826/p1)に登場した7人のウルトラマン
●映画『劇場版 ウルトラマンR/B セレクト! 絆(きずな)のクリスタル』(19年・松竹・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190407/p1)で初登場した、悪の青いウルトラマンことウルトラマントレギア!


 この両者が、宇宙狭(せま)しと一大バトルを繰り広げる場面から、『ウルトラマンタイガ』(19年)第1話『バディゴー!』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190811/p1)は開幕した。


 ツカミとしてはあまりにも豪華なこの導入部の描写や、民間の警備会社・E.G.I.S.(イージス)の新人隊員であり、主人公の工藤ヒロユキ(くどう・ひろゆき)がウルトラマンタイガ・ウルトラマンタイタス・ウルトラマンフーマといった3人ものウルトラマンに変身する新機軸。
 そして、中心となるタイガがかのウルトラマンタロウの息子であったり、昭和から平成に至る歴代ウルトラマンシリーズに登場した悪の宇宙人たちで結成された犯罪組織=ヴィランギルドの登場など、過去作品との密接なつながりと世界観の拡大を感じさせる設定の数々には、筆者にかぎらず今後の展開に期待した視聴者はきっと多かったことだろう。


 事実、先述した第1話の完成度が、『ウルトラマンギンガ』(13年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200819/p1)以降のニュージェネレーション・ウルトラマンシリーズの最高傑作! といっても過言ではないほど高かった。いや、毎回あれだけの高レベルのものを観せろ! と主張するつもりはない。しかし、すでに『タイガ』は第1クール半ばくらいの時点で、先述したようなシリーズ序盤で示された世界観からすれば、個人的にはどうにも違和感がつきまとうような作風・路線である印象が強いのだ。
 その違和感と戦いながら視聴してきた『タイガ』も、執筆時点で第20話『砂のお城』までが放映されて、早くも終盤を迎えようとしている。そこで、今回は『タイガ』につきまとう違和感はいったい何が要因で生じているのかを検証してみたい。


*「お悩み相談」のゲストとして登場する宇宙人……


 まず、『タイガ』で描かれる地球では、オープニング・ナレーションにも語られているように多数の宇宙人がひそかに暮らしている。これまでに登場した宇宙人たちを以下に並べてみる。


●第1話『バディゴー!』 → サーベル暴君マグマ星人、宇宙商人マーキンド星人、宇宙怪人セミ人間、昆虫宇宙人クカラッチ星人
●第2話『トレギア』 → 宇宙商人マーキンド星人、電波怪人レキューム人
●第3話『星の復讐者』 → 未登場
●第4話『群狼(ぐんろう)の挽歌(ばんか)』 → 変身怪人ゼットン星人ゾリン、健啖(けんたん)宇宙人ファントン星人
●第5話『きみの決める未来』 → ダマーラ星人
●第6話『円盤が来ない』 → 宇宙ヒットマン・ガピヤ星人アベル、サイケ宇宙人ペロリンガ星人
●第7話『魔の山へ!!』 → 暗黒星人ババルウ星人、集団宇宙人フック星人
●第8話『悪魔を討て!』 → 未登場
●第9話『それぞれの今』 → 戦略星人キール星人、殺戮(さつりく)宇宙人ヒュプナス
●第10話『夕映(ゆうば)えの戦士』 → 暗殺宇宙人ナックル星人オデッサ
●第11話『星の魔法が消えた午後』~第12話『それでも宇宙は夢を見る』 → 宇宙怪人ゼラン星人オショロ
●第13話『イージス超会議』 → (総集編)
●第14話『護(まも)る力と戦う力』 → 高次元人イルト
●第15話『キミの声が聞こえない』 → 頭脳星人チブル星人マブゼ
●第16話『我らは一つ』 → 未登場
●第17話『ガーディアンエンジェル』 → 宇宙怪人ペダン星人、昆虫宇宙人クカラッチ星人・ミード
●第18話『新しき世界のために』 → 触覚宇宙人バット星人、変身怪人ピット星人、集団宇宙人フック星人
●第19話『雷撃を跳(は)ね返せ!』 → 憑依(ひょうい)宇宙人サーペント星人
●第20話『砂のお城』 → 変身怪人ゼットン星人ゾリン、宇宙帝王バド星人エル・レイ、ヘイズ星人ミスティ


 第1話と第2話では、マグマ星人やレキューム人が怪獣を生物兵器として売買するさまが、マーキンド星人――「魔」+「商人(あきんど・笑)」星人――が主催する宇宙のオークション会場を舞台にして描かれていた。


 これはスポンサーのバンダイナムコが発売中のスマホ向けゲームで、ヴィランギルドのリーダー格として『タイガ』に登場するゼットン星人が出演するCMでおなじみの『ウルバト』こと『ウルトラ怪獣バトルブリーダーズ』(18~21年)と完全に連動した展開であるかのようにに見えたことから、マーキンド星人主催のオークション場面は毎回の定番として描かれるものだと筆者は思っていた。


 ところが、この描写は第3話以降まったく描かれなくなった。悪の宇宙人組織=ヴィランギルドが登場しなくなったワケでは決してない。ババルウ星人やフック星人、キール星人にヒュプナス、ペダン星人やクカラッチ星人などはれっきとしたヴィランギルドの一員として登場はする。しかし、彼らの悪事と対するE.G.I.S.やウルトラマンとの攻防がメインで描かれるワケではない。いわば、戦闘員的なチンピラ宇宙人としての扱いにとどまっているのだ。


 ちなみに、ネット版の百科事典・Wikipediaウィキペディア)の『ウルトラマンタイガ』の項目には「ヴィランギルド」に関する説明文がなかった。その存在感の薄さがうかがい知れるというものだ(汗)。レギュラー悪、いや、セミレギュラー悪(笑)であるヴィランギルドよりも、


●怪獣召喚士(かいじゅうしょうかんし)であるも本当は地球を侵略したくないと悩むセゲル星人の人間態の女性・葵(あおい)
●50年前に地球に取り残されて故郷の星に帰りたいと願うペロリンガ星人の人間態の中年男――『ウルトラセブン』(67年)第45話『円盤が来た』で7歳にして(!)ペロリンガ星人が変身した男の子を演じた高野浩幸がその50年後(?)を演じたことには素直に感動させられた!――
●故郷の惑星・サラサを謎の存在に滅ぼされた魔法使いの女性・麻璃亜(まりあ)――第11話&第12話に登場――


 彼らのような地球人に擬態した宇宙人ゲストをメインで描いた話の方が、『タイガ』では圧倒的に多かったのだから。


 いや、それは近年の「仮面ライダー」や「スーパー戦隊」でも初期の第1クールくらいまではそうなっている。レギュラーキャラを掘り下げるためにゲストの境遇と重ね合わせて描く作劇は、最近の若いマニアたちから「お悩み相談方式」と呼ばれるほどに定着しているものだ。決して『タイガ』だけでも近年の「ウルトラマン」作品にかぎったものでもないことは確かなのだ。


 ただ、ペロリンガ星人はともかく、第10話の劇中で「帰ってきたウルトラマン」ことウルトラマンジャックのシルエットが描かれたように、『帰ってきたウルトラマン』(71年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20230402/p1)第37話『ウルトラマン夕陽に死す』~第38話『ウルトラの星 光る時』に登場した個体と同一であるようにも見せていることから――もちろん別次元の同族別個体なのである――、ナックル星人オデッサがその後の50年も戦いをやめて平穏(へいおん)に暮らしていたという設定は、リアルタイム世代からすればやや違和感が残る(笑)。むしろ、闘争本能の件はともかく平穏に暮らしていたという一点に限定すれば、『ウルトラセブン』第6話『ダーク・ゾーン』に登場した放浪宇宙人ペガッサ星人などの方がふさわしいかと思えるのだ。


 また、第15話でヴィランギルドのオークションで落札したベリアル細胞を元に、ウルトラマンベリアル・どくろ怪獣レッドキング・古代怪獣ゴモラを合成させて「培養(ばいよう)合成獣スカルゴモラ」――『ウルトラマンジード』(17年)#1(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20170819/p1)ほかにも登場――を誕生させたチブル星人マブゼが、スカルゴモラウルトラマントレギアに倒された途端に姿を消してしまうことにも違和感をおぼえた。知能指数5万(笑)であり、「宇宙最高の頭脳」を自称するほどチブル星人はプライドが高いのだから、トレギアに復讐もせずに黙っているなんぞあり得ないと思ってしまうのだ……


 そんなヴィランギルドのような絶対悪ではない、おもわず視聴者の感情移入を誘うお気の毒な宇宙人をメインで描くにせよ、たとえば第18話などは、


●導入部で夜の大都会での宇宙怪獣ベムラーVSウルトラマンフーマの戦いを、走行する電車のミニチュアの車内の主観から描く!
ウルトラマンタイタスが額(ひたい)にある緑色をした星型のアストロスポットから、同じくU40(ユー・フォーティ)出身のウルトラマンジョーニアス――アニメ作品『ザ☆ウルトラマン』(79年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/19971117/p1)の主人公ウルトラマン――のごとく、星型のアストロビームをベムラーに放つ!
●宇宙恐竜ゼットンが白昼の都会で暴れはじめる場面に、かのドボルザーク交響曲第9番『新世界より』が流れ出す!――なおゼットンの着ぐるみは、『ウルトラマンマックス』(05年)第13話『ゼットンの娘』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20060315/p1)での登場時に新規で造形されて以来、再三酷使(さいさん・こくし)されたかなりスリムなものではなく、初代『ウルトラマン』(66年)最終回(第39話)『さらばウルトラマン』初登場時の造形を忠実に再現された新造の着ぐるみが使用されていた――
ゼットンVSタイガのバトルを、『ウルトラマンタロウ』(73年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20071202/p1)でのそれのようにカメラがヨコ移動して捉えるのみならず、家屋や店舗、自転車や自販機などが配置された狭い路地からの主観で捉えて、そこに「オレの店が!」と慌てているラーメン店の店主や、E.G.I.S.の隊員でその正体は宇宙人であることが明かされている副主人公挌・宗谷ホマレ(そうや・ほまれ)らが合成される!
ゼットンVSタイガの巨大戦を背景に、ビルの屋上でのホマレVSバット星人との等身大バトルを描く!


などといった、3大ウルトラマンゼットン、正義側の隊員たちのカッコいい活躍を強く印象づけている。


 これによって、異質な存在を排除する地球人たちに復讐を果たそうとするバット星人をメインに描きつつも、過剰に湿っぽくも陰鬱(いんうつ)にもならずに、「子供向けエンタメ」としてのみならず「一般層向けエンタメ」としての体裁(ていさい)を保(たも)ててもいるのだ。


――そういった処置とは相反してしまうのだが、バット星人の「彼女」として登場したピット星人の人間態が、1970年代初頭の邦画・ドラマ・歌謡曲などで幅広く描かれていた「やさぐれ女」風だったことは、ふたりの宇宙人がこれまで地球で虐(しいた)げられてきたことを表現することには説得力を与えていた(笑)――


 つまり、『タイガ』のYouTubeでの配信に「重たい話が多い」とのコメントが寄せられていたということは、そんなイメージを払拭(ふっしょく)できないほどに、「子供向け番組」「変身ヒーロー作品」としての見せ方に不足している点があったということだろう。



 良い意味での「お悩み相談」形式をとって、たとえベタでも悩めるゲストの境遇にタイガ・タイタス・フーマらが自身の過去の境遇を重ねて回想させたり、所感を述べたり、賛否の議論をさせたりといったかたちで、彼らのキャラクターをもっと描くべきであったと思うのだ。メインターゲットの子供たちにも、声優さんたちによるやや誇張・記号化された演技によるそういった会話の方が、そのテーマもまた通じやすくて頭に入ってきただろうとも思うのだ。


*もっと、「3大ウルトラマン」のコミカルな個性をウリにすべきだ!


 そういったドラマ性やテーマ性以前に、そもそも主人公のヒロユキがタイガ・タイタス・フーマの3種類のウルトラマンに変身するという、せっかくの魅力的な設定だったのに、タイタスかフーマのどちらかが劇中では一度も登場しない残念な回も多かった。


 クライマックスのバトルでは登場しないにせよ、たとえば第3話のように、


●E.G.I.S.の若き女社長・佐々木カナが契約書を捨てたゴミ箱の中を、小人化しているタイガとタイタスがのぞきこむ(笑)
●話数は失念したが、ヒロユキが飲んでいたコーヒーのカップ内に小人化したタイガが落ちてしまい(!)、タイタスとフーマがあわてふためく(笑)


 本編で「重たい話」を描くのならば、エンタメとしてはそうしたコミカルな描写でバランスを取ることは必須かとも思えるのだ。しかし、そういった描写も序盤で描かれた以降は極端に少なくなっている。


 これは決して子供ばかりではなく、YouTubeの配信に寄せられたマニア層によるコメントでも、ミクロ化したウルトラマンたちを「カワイイ」とする声が多く見られたように、実は今時の大人層の過半をも喜ばせる要素であるだろう!


 また、『タイガ』では女性ゲスト、それもムダに美人女優が演じることが多い。たとえば、それを受けて、先述した魔法使いの麻璃亜――演ずるはアイドルグループ・AKB48(エーケービー・フォーティエイト)の元メンバー・大島涼花(おおしま・りょうか)!――をカワイイとしたタイガに対して、フーマがそれより第7話~第8話に登場した電波系霊能力ネットアイドル天王寺藍(てんのうじ・あい)の方がイイと主張する一方、タイタスだけは目もくれずにひたすら筋トレに励(はげ)んでいる……などといった言動を描けば(笑)、先述した今時のネット上のマニアの反応からすれば、そうした俗っぽい描写の方がウケただろうし、そういった要素が拡散されることで『タイガ』がライト層にも認知される効果も期待できたのではないのだろうか?


 いっそのこと、『仮面ライダー電王』(07年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20080217/p1)に登場した正義のレギュラー怪人・イマジン(怪人)たちのパクリと云われようが、タイガ・タイタス・フーマに憑依(ひょうい)された主人公・ヒロユキの人格が変わってしまう描写もやってしまえばよかったのに……とさえ思えるほどだ。


 総集編であった第13話の予告編では、カナ・ホマレ・旭川ピリカ(あさひかわ・ぴりか)がそれぞれタイガ・フーマ・タイタスの登場ポーズをキメていた。このことから、筆者はてっきり各人に「推(お)しキャラ」とするウルトラマンが憑依するのかと思ってしまっていた。おそらくマニア視聴者の大勢もこの第13話といわず、今時の融通無碍(ゆうづう・むげ)な作品のつくり方であれば、そういったストーリー展開をシリーズ後半では秘かに期待していたことだろう。



 もちろん、3人ものウルトラマンを登場させる以上、そんなコミカルな役回りだけをさせておけばよいとも云わない。


 YouTube限定で配信されている音声のみのドラマ『トライスクワッド ボイスドラマ』(19年)では、『タイガ』本編では描かれなかったタイガ・タイタス・フーマの出自や過去の活躍が、本人たちの回想によって語られている「正編」としての一編ともなっていた。


 往年のテレビアニメシリーズ『ザ☆ウルトラマン』では、同作のウルトラマンたちの故郷として描かれたウルトラの星・U40。そこを出身地としていたタイタスの父親は、実はかつて「物質であって物質ではない命の素・ウルトラマインド」を悪用してU40を追放されて、暗黒星雲の彼方に一大帝国を築(きず)いたウルトラ人の反逆者・ヘラーが率(ひき)いるヘラー軍団(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20100118/p1)の一員であったことが明かされる!


 そして、ウルトラマンタイタスは赤ん坊のころに父がなぜだか手放して、同作の第20話『これがウルトラの星だ!! 第2部』に登場したウルトラ艦隊の司令・ザミアス(!)(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20090914/p1)によって養育されたという!


 さらには、「反逆者の子」という出自に悩みながらもヘラー軍団との戦争での活躍で、U40の長老である大賢者に認められ、U40の住民は全員がウルトラマンに変身できるものの、その中でも巨大化変身ができる戦士だけに与えられる、胸の中央にある「星型の勲章」で宇宙空間を自在に航行できる能力も与えられる「スターシンボル」(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20091102/p1)を授与されるに至ったというのだ!


 ウルトラマンフーマは、ウルトラマンオーブウルトラマンロッソ&ウルトラマンブルの兄弟がウルトラマンの力を授(さず)かったという惑星・O-50(オー・フィフティ)に住んでいた。しかし、そこに訪れる戦士たちから盗みを働いていたほどに荒(すさ)んでいたというのだ。しかし、ウルトラマンの力を得るために来訪した宇宙人・ゲルグから道案内を頼まれたのを契機に彼と親交を持ったことで、瞬間移動能力や光の手裏剣(しゅりけん)などの術を伝授されて、O-50の山々の中の最高峰である「戦士の頂(いただき)」でウルトラマンの力を得たとされるのだ!


 まさに、1970年代に発行された小学館学年誌で掲載された昭和のウルトラ兄弟の「裏設定」を紹介する役割を、今の世にこの『ボイスドラマ』が担(にな)うかたちとなっているのだ! 昭和の第2期ウルトラマンシリーズにも感じられたように、こうしたことを「裏設定」だけで終わらせてしまうことはあまりにもったいない。


●ヘラー軍団の残党がウルトラマンタイタスを裏切り者扱いして復讐に来る!


●育ての親・ザミアスの息子でタイタスの幼なじみ・マティアや、部隊の隊長だったグリゴレオスを殺害した合成獣キシアダーがトレギアによって復活する!


ウルトラマンフーマを戦士の頂まで運んでその後は消息不明だったゲルグが、フーマのピンチに駆けつける!


●彼らを危険視していた星間連盟が、フーマのことをウルトラマンと認めずに攻撃に来る!


 そうした因縁(いんねん)で結ばれた人物相関図を活かした作劇をテレビシリーズ『ウルトラマンタイガ』本編でこそ描くことで、お気の毒な宇宙人たちの「お悩み相談」よりも、よほど人物造形に厚みのある「人間ドラマ」として完成するように思えたからだ。


*タロウの息子としてのタイガではないが、やはりタロウの息子ではある!


 ちなみに、『トライスクワッド ボイスドラマ』第13回~第15回の前中後編3回連続ストーリー『その拳は誰がために』では、ウルトラマンタイガの過去が語られていた。
 宇宙警備隊の訓練生だったころのタイガが、『ウルトラマン80(エイティ)』(80年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/19971121/p1)終了後に小学館学年誌でのグラビア連載や連載漫画(81年〜)を経て関東ローカルの平日帯番組として放映された『アンドロメロス』(83年・円谷プロ TBS)に登場したアンドロ超戦士ことアンドロメロス・アンドロウルフ・アンドロマルス・アンドロフロルたちの新しき仲間とされた新キャラ・アンドロアレス(!)と出会っていたとされたのだ!
 そして、いまだ光線技を習得していなかったタイガの目前で、『アンドロメロス』の敵組織であるグア軍団の戦闘隊長・イムビーザが放った超獣ブロッケンならぬ改造ブロッケンと火山怪鳥バードンならぬメカバードン(!)を、アンドロアレスが瞬殺する活躍も描かれていたのだ!


 そうであれば、映像本編でもアンドロ超戦士やグア軍団の再登場も願いたいところだった。つまり、『帰ってきたウルトラマン』第41話『バルタン星人Jr(ジュニア)の復讐』にて初代ウルトラマンに倒された宇宙忍者バルタン星人の息子・バルタン星人Jrが登場したように、タロウに倒された極悪宇宙人テンペラー星人の息子や、火山怪鳥バードンが生んだ卵が実はひとつ残っていて、その息子が復讐に来るなどの因縁バトルなども構築可能ということなのだ。


 『ウルトラマンタロウ』第39話『ウルトラ父子(おやこ)餅つき大作戦!』で月に帰された、うす怪獣モチロンがタロウの世話になったお礼にと平行宇宙を超えてタイガのピンチに助けに来るなどといった展開も個人的には妄想してしまう。ペロリンガ星人やナックル星人のストレートな50年後ではなかったが、変則的な50年後とも取れる姿が描かれていたことを思えば、モチロンでそうしたことをしてみせても大丈夫だろう! なにせ、テンペラー星人バードンもモチロンもアトラクション用も含めれば着ぐるみがあったハズだし。
 もっと云うなら、モチロンとのつながりで、『ウルトラマンA(エース)』(72年)第28話『さようなら 夕子よ、月の妹よ』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20061111/p1)で月星人としての正体を明かして退場し、当の『タロウ』第39話にもゲストで登場していた『A』のもうひとりの主人公・南夕子を演じた星光子サンにも出演してもらって、「その節はお父さん(タロウ)にお世話になりました」と語ってもらうとか(笑)。


 冗談はともかく、『ボイスドラマ』第1回『未来の思い出 前編』では、常に「タロウの息子」と呼ばれることにイヤ気がさしていたタイガを、光の国の宇宙科学技術局の資料庫を管理しているウルトラ一族のひとりであるフィリスがたしなめるという描写がある――ちなみに、フィリスは「頭脳労働が得意」な「ブルー族」とされている。かつて小学館学年誌で「ブルー族」を「力持ちで肉体労働が得意」とされた解説を読んでいた筆者からすれば、やや違和感はあるのだが(汗)――。


 先述したテンペラー星人バードン・モチロンといった、かつてタロウと対戦した宇宙人や怪獣の再登場は決して『タロウ』ファンを喜ばせるだけではない。父であるタロウと深い因縁があるキャラたちを鏡像として、いくらその重圧から父のことを否定しようがタロウの息子である事実からは決して逃れられないことをタイガが前向きに痛感し、あらためてそこに向き合って突破していくような心の変遷(へんせん)を描くことで、タイガの成長物語を描くこともできるハズだからだ。



 そのタイガの「成長の証(あかし)」の途中過程として第16話で、


「燃え上がれ! 仲間たちとともに!!」


とのヒロユキの決めゼリフにより、ヒロユキ・タイガ・タイタス・フーマといった地球人・M78星雲人・U40人・O50人の合体強化形態として、全身に赤の配色が増して両耳部分のツノも赤く大きくなったウルトラマンタイガ・トライストリウムも誕生した!


 もちろん、タイガがヒロユキやタイタス・フーマとの絆を深めた象徴として描かれてもいた。そして、ヒロユキが「闇堕(お)ち」したタイガを逆に救ってみせるかたちで、ヒロユキにも主人公としての華(はな)を持たせているかたちで描かれてはいたのだ。逆にタイガの方は、ここに至る過程で、それまでに収集してきた「怪獣の力」を秘めてるリングタイプのアクセサリーを必殺技で使用しつづけてきた結果として、タイガが闇堕ちしてしまったことになっている…… 「力」とは「過ぎたるは及ばざるがごとし」で、毒にも薬にもなるといった道徳説話的な展開!


 これもまた、悪の黒いウルトラマンであるウルトラマンベリアルの力を借りて強化変身したウルトラマンオーブ・サンダーブレスターがその力を制御できずに自我を失い暴走してしまったり、昭和の仮面ライダー1号がショッカーの催眠術にかかって仮面ライダー2号と戦ってしまうといった、それもまた広義での「王道」パターンではある。正義のヒーローである以上は、いずれは洗脳から目が覚めて正義のために頼もしく戦ってみせることはミエミエだとしても(笑)、そのカタルシスを強調するためにも、その前段では落差をつくっておいて「危機」におちいったり「闇堕ち」したりといった作劇なのであった。


*『ウルトラマンタイガ』の弱点とは!?


 思えば、近年のウルトラマンシリーズはナゾ解き要素を強調したタテ糸を主軸とする連続ものである印象が強かったものだ。


●『ウルトラマンオーブ』(16年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20170415/p1)では、主人公のクレナイ・ガイ青年=ウルトラマンオーブが108年前の北欧での戦いに巻きこまれた少女・ナターシャを救えなかった過去がガイのトラウマとして描かれていた。そして、シリーズ中盤以降はヒロインの夢野ナオミの出自をめぐるナゾ解きも展開された。ナオミがナターシャの末裔(まつえい)だったと判明したり、ナターシャが実は無事だったと明らかにされていた。


●『ウルトラマンジード』では主人公の朝倉リク=ウルトラマンジードが、映画『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE(ザ・ムービー)』(09年・ワーナー・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20101224/p1)以来、悪役として描かれてきたウルトラマンベリアルの息子として設定された。そして、それを知ったことによるリクの葛藤(かっとう)や、ベリアルに忠誠を誓う伏井出ケイ(ふくいで・けい)=ストルム星人をヒロインの鳥羽ライハ(とば・らいは)が両親の仇(かたき)として復讐の炎を燃やすも、最終回ではそれらの関係性の劇的な変化も描かれていた。


●『ウルトラマンR/B』でも、シリーズ中盤以降に登場した謎の美少女・美剣サキ(みつるぎ・さき)が当初は怪獣を召喚する敵対者的なキャラとして登場していた。しかし、実は1300年前に地球を守ろうとした先代ウルトラマンロッソと先代ウルトラマンブルの妹であることが明らかにされていた。主人公の湊カツミ(みなと・かつみ)=ウルトラマンロッソ、湊イサミ(みなと・いさみ)=ウルトラマンブル、湊アサヒ(みなと・あさひ)=ウルトラウーマングリージョら3兄妹の母親であるミオが行方不明となった原因のナゾや、アサヒの出自をめぐるナゾ解きも展開されていたのだ。


 そういった要素は『タイガ』では皆無(かいむ)に近い。「昭和」のウルトラマンシリーズのような1話完結形式に戻っているのだ。しかし、それはよいことなのであろうか? 本邦初の特撮マニア向け雑誌『宇宙船』VOL.1(80年)などでも、当時の現行のテレビ特撮作品をつかまえて「V・S・O・P」=「ベリー・スペシャル・ワン・パターン」の作劇に過ぎて、だから年長の視聴者なり小学校高学年などが離れていってしまうのだ。リアルロボットアニメ『機動戦士ガンダム』(79年)などに流れていってしまうのだ! といった趣旨の批判が展開されていたというのに…… いくらなんでも、そういった部分では「先祖返り」をし過ぎだろう!


●自身がウルトラマンに選ばれなかったことから、オーブことガイに恨みをつのらせた『オーブ』のジャグラス・ジャグラー
●故郷のストルム星の崩壊から自身を救ってくれたベリアルを主君と仰(あお)いだ、『ジード』の伏井出ケイ
ウルトラマンオーブを真のウルトラマンと信じるがために(?)、ほかのウルトラマンの存在を断じて認めようとしなかった『R/B』の愛染マコト(あいぜん・まこと)社長=ウルトラマンオーブダークノワールブラックシュバルツ(笑)=精神寄生体チェレーザ(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20181104/p1


 彼ら近年の「ウルトラマン」作品に登場したレギュラー悪のキャラクターは、深夜枠で放映されたヒーローアニメ『SSSS.GRIDMAN(グリッドマン)』(18年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190529/p1)に登場し、自身が気に入らない人間を怪獣を使って次々に殺害してしまった「銀髪ショートの萌(も)え系・美少女キャラ」であった新条アカネ(しんじょう・あかね)を含めて、ネット界隈では「円谷のヤベーやつ四天王(してんのう)」として「HOT(ホット)ワード」と化したほどに、若いマニア間では「ネタキャラ」として注目を集めていた。


 『タイガ』のレギュラー悪のキャラであるウルトラマントレギアの人間態である霧崎(きりさき)青年もたしかに「ヤベーやつ」ではあった。しかし、コミカルだったりオオゲサだったりといった狂的な演技付けはなされていないし、特定のお約束的な決めゼリフなどもない。あるいは、本人がいたってマジメにやっていることが視聴者には「お笑い」として映ってしまうといった演出でもない。よって良くも悪くも、皆で話題にしたり口マネして遊べことができる「ネタキャラ」としては成立していないのだ。


 ウルトラマントレギアが先行して登場した『劇場版 ウルトラマンR/B セレクト! 絆のクリスタル』でのトレギアは、その身や両手や指をクネクネとくねらせており、悪のピエロのような口調と動作の演技付けがなされていた。それであれば、本作『ウルトラマンタイガ』でも、トレギアの人間態である霧崎を演じる七瀬公(ななせ・こう)に対して、そのようなクネクネとした動的な芝居やフザケた口調を踏襲させるべきではなかったか? そのへんでも不整合を感じてしまうのだ。


 もちろん、若手役者の一存ごときで特定キャラの芝居の基本方針は決まらないだろうから、おそらくは『タイガ』のメイン監督なり、製作プロデューサー陣による、役者さんへのディレクション(演出・演技付け)に問題があったのではなかろうか? と愚考をしているところだ。


 トレギアの声を演じる若手イケメン声優の内田雄馬(うちだ・ゆうま)。先述したウルトラマンオーブダークノワールブラックシュバルツも務めたスーツアクター・石川真之介(いしかわ・しんのすけ)が演じる、変身後のトレギアのボディランゲージ主体のラリった演技。それ自体はよかったものの……



 それにしても、先述したジャグラー・ケイ・マコト・アカネといった「ヤベーやつ」らには行動動機が明確であった。しかし、霧崎=トレギアはそれが少々ブレていたように思える。


 タロウのかつての親友であり、タロウのことを恨んでおり、12年前のM78星雲・光の国の近傍での戦いでタロウの息子・タイガ、そしてその仲間のタイタスとフーマを一度は消滅させてしまった! といったほどの、本作でメインとなる4大ウルトラマンたちとも強い因縁を持っているハズのトレギア。彼が時折りにタロウやタイガへの恨みを口にするのでもなく、レギュラー悪として怪獣を召喚するワケでもなく、ヴィランギルドの怪獣兵器やタイガたちをただおちょくるだけの愉快犯にしか見えない描写がつづいたことには、やはり視聴者には物足りなかったのではなかろうか? 皆が観たかったのは、タロウやタイガへの遺恨も感じさせるトレギアの発言や心情描写そのものだったのだろうから!


 ちなみに第7話・第9話・第11話・第20話では、霧崎はトレギアへの変身どころかいっさい登場すらしていない。もちろん、たまにはそういったエピソードがあってもよいだが、基本設定を盤石(ばんじゃく)にすべきシリーズの前半にそういったエピソードを配置してしまうと、霧崎=トレギアの存在感もややウスくなってしまうだろう。やはり、霧崎=トレギアに対しても、タイガやヒロユキにも劣らない心の変遷を描いていくようなタテ糸を確固として設けるべきではなかったか?



 『タイガ』の第1話はYouTubeでの視聴回数が1週間で100万回を超えていた。しかし、その後は右肩下がりとなっていく。第18話に至っては1週間で29万回と、その1日遅れで配信が開始された『ウルトラギャラクシーファイト』の「Episode(エピソード)6」が1週間で稼いでいた62万回の半分にも到達していなかった。


 もっとも、テレビ本編で鑑賞できる『タイガ』とYouTubeでしか鑑賞できない『ギャラクシーファイト』を同列に比較することはできない。そして、『ギャラクシーファイト』も「全世界同時配信!」を高らかに喧伝(けんでん)した、かの坂本浩一監督作品であることを思えば、62万回という数字も決して高いものではない。
 なにせ、『仮面ライダー電王』・『仮面ライダーW(ダブル)』(09年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20100809/p1)・『仮面ライダーOOO(オーズ)』(10年)といった10年も前の「平成仮面ライダー」作品が毎回50万~60万回を稼いでいたのだから……  『タイガ』がそれらの平成旧作ライダーの半分程度しか稼げていないということは、やはり現在の「ウルトラマン」の商品的価値とはその程度なのだと解釈すべきところだろう。



 前作『ウルトラマンR/B』の後半では、歳若いマニア間では同じ円谷プロ製作(主導権はアニメ制作会社側だが)の深夜アニメ『SSSS.GRIDMAN』に話題を持っていかれたような感があった。『タイガ』もまた『ギャラクシーファイト』の配信開始によって注目度が低くなってしまっている印象がある。


 ただ、せめて『タイガ』の最終展開や2020年春に公開されるであろう『劇場版 ウルトラマンタイガ』では、第1話の冒頭で2010年代のニュージェネレーション・ウルトラマンが勢揃いして大宇宙で総力戦を繰り広げてくれたことで、多くの視聴者が『タイガ』に抱(いだ)いたであろうトレギアVSニュージェネレーション・ウルトラマンたちの再戦! そういった期待を裏切らないスケールも壮大な映像作品を観せてくれることを切に願いたいものだ。


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2019年晩秋号』(19年11月24日発行)~『假面特攻隊2020年号』(19年12月28日発行)所収『ウルトラマンタイガ』中盤賛否合評5より抜粋)


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