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かつての「お笑い芸人」は、教室の中心にいる出たがり・目立ちたがりの人気者・お調子者、つまりは強者がなる職業であった。しかし、人気深夜番組『アメトーーク!』(03年~)の「中学の時イケてない芸人トーク」(09年~)に象徴されるように、1990年代末期あたりからは教室のスミっこにいたような弱者が自分を変えるため、リハビリのために(笑)「お笑い芸人」になったような連中が勃興しだすようになる。拙ブログ主宰が見るところ、そんな彼らに10年先行していた第1号でもあるようにも思える落語家・立川志らくがいま話題になっているのにカコつけて……。『立川志らく』評をアップ!
落語家・立川志らく論 ~人物・騒動・発言・弱点・文春砲・修羅場の人!
(文・田中雪麻呂)
(2020年3月9日脱稿)
オレの大好きな立川志らくが大変だッ(笑)。
立川志らく(たてかわ しらく)、56歳。
人気落語家にして、俳優、映画監督。劇団を主宰し、権威あるお笑いコンテストの審査員も務め、近年は朝のワイドショーのMCに起用される。落語家団体の大幹部でもある。
文化人。旬の人物である。
TVタレントとしての魅力は、端正な容姿でぐさりとやる社会風刺、毒舌の意外さ。カルチャー番組における、創造的才能。そして、世間一般との埋められない感覚のズレ(笑)などが挙げられるだろう。
ズレているというくだりは、決して悪口(あっこう)ではない。メンタルの強さであり、プライドの堅持に必要だし、芸人としては得難い愛嬌(あいきょう)にもなっている。
志らくは、社会人としてちょっとズレたまま、若くしてお笑いスターとしてブレイクした。
還暦近い年齢だが、二十代のときの了見(りょうけん)で、未だに理解し、考え、喋っているように見える。うん、多分そうだ。
志らくは、タレントとしてはSNSで何度も炎上しては、焼け太りのカタチで大きくなってきたタイプだ。彼の隙(スキ)だらけでキッチュな物言いに反応する層が多かったのだろう。
志らく自身が名言を残している。
「私(志らく)に噛みつくのはバカな奴らで、賢い人たちはそもそも相手にしないんです。」と。
志らくの著書を何冊も購入して熟読したが、何というか、ヤバいヤツである(笑)。
カゲキなことを言うのが、即ちアウトローであり、芸人だと思い込んでいる。
目に入るものを、片端から否定、攻撃する。ポリシーがないから、いきおい、自分と自分の半径百メートルを除いて、全て艦砲射撃で焼け野原にする。
それについてのオチはない。レトリックもない。逆に「ワタシは落語家ですから。」と威張って見せている。
筆者は志らくのことが、当初嫌いだった。
何という我が儘(まま)勝手だ。芸は一流かもしれないけど、人間としてそれじゃダメだよッ(笑)。
でも違う。そうじゃない。
志らくは「好きなこと以外はどうでもいい」のだ。
つまり、同人(どうじん)なのだ。筆者と同類だったのだ。筆者が感じた嫌悪感は、「近親憎悪」だったのだ(笑)。
志らくの監督した映画、演出した舞台の特性を思い出して頂きたい。
ほぼ全てが彼の本業の落語と、愛好する映画とを掛け合わせたものだ。
それも、それぞれのキャラクターを彼の価値判断で分析、融合、関係付けしたパロディ作品である――だから、ダサくて恥ずかしいのだが――。
既にある作品に立脚して、擬似的に成立したものだ。同人的な趣向と大きく重なる。
出役(でやく)としての華(はな)、芸術を分析する理解力、広範な作品を統(す)べる記憶力、加えて行動力と鈍感力、そういう才能を全て持ち得たのが志らくの志らくたる所以(ゆえん)であって、彼の現在の栄華に繋がっている。
で、まあ、文春砲である(笑)。
「週刊文春 2020年3/12号(文藝春秋)」(2020年3月5日(木)発売・ASIN:B085FR6N75)に、彼ではなく、彼の妻君の不倫疑惑が報じられた。
志らくの自宅――元々は彼の師匠である故・立川談志(たてかわ だんし)の私邸――に横付けされた自動車の中で、イケメンの志らくの元弟子と過分に戯れていたのが、写真付きで報じられたのだ。
無名のアイドル上がりのこの妻君は38歳。志らくとの間に二児もある。志らくの劇団とは別に、自身でも劇団を主宰している。
25歳のこの元弟子は、志らくの落語家としての弟子であったが、それを休業して妻君の劇団の役者に移ったという変わりダネだった。
情報としてまず奇矯(ききょう)だ。
雑誌発売日の当日の朝、志らくはMCを務める生放送のワイドショー『グッとラック!(TBS系)』で、冒頭にコメントを発表。
異例だった。
昨2019年の9/30に鳴り物入りで始まった同番組だったが――惹句は「落語界のハリー・ポッターが降臨!」――、お昼のワイドショー『ひるおび!(TBS系)』(2016年~)のコメンテーターでは鳴らしたものの、志らくのキャラクターが朝から受け入れられず、視聴率低迷が続いていた。
番組はスタジオの志らくからではなく、VTRから始めたりと、次第に「志らくを避けるように」なっていた(笑)。
志らくのコメントは想像通りだった。
「自分は妻を信じているし、離婚は絶対にない。」というような、自分の家族の都合だけを一方的にまくし立てた。
弟子は、まず他人(ひと)様の大切な子どもであり、預かりものであるというような気遣いは感じられなかった。
その日の番組の締めでは、古典落語『紙入れ』の山場を志らくは熱演。やっぱり巧いなぁ。それが仕事だとはいえ、強く惹き付けられる。
だが、その動機付けが良くない。同誌の口絵で、「志らくの『紙入れ』」と揶揄(やゆ)されたからだ。
『紙入れ』は女房を間男(まおとこ)に寝とられるマヌケな亭主を嗤(わら)う噺だ。
熱演して、「この落語はそういう解釈じゃないッ! シロウトが何を言うか!」と胸を張ったところで、番組は終わった(笑)。
人物造形として鑑(かんが)みても一貫性がある。
こういう人格の人間ならばこう云うだろう、こう動くだろうとのヒトの期待に応えてやまない(笑)。
立川志らくは、落語界のエリートである。
日大芸術学部の落語研究会で、人気放送作家・高田文夫(たかだ ふみお)に見出だされ、憧れの天才落語家・立川談志に弟子入りを許されるという、この上ないスタートだ。
立川談志は落語の名人だが、荒っぽくて気難しいというイメージがあった。しかし残されたものを読むと、思索家にして繊細、質よりも量、研鑽(けんさん)よりアイディアの斬新さを買う才人であったようだ。
その基準が、志らくのキャラと合致した。
元々お坊っちゃんで、物怖じせぬ志らくは、その目鼻立ちの整ったアイドル的容姿も手伝って、談志のお気に入りの弟子になった。
立場に慢心することなく、落語愛も薄れず、さらに談志の趣味嗜好のカルチャーの幾つかを同好するに至って、志らくは談志自慢の愛(まな)弟子となる。
若手お笑いで深夜番組『アンモナイト(テレビ東京)』(1993年)に出れば、折からの落語ブームで大人気。当時は浅草キッド・爆笑問題と肩を並べる、新進のムーブメントの旗手の一人だった。数多(あまた)の女性からアイドル的な人気も博した。
だから志らくにコンプレックスがあるとすれば、彼の魅力のひとつでもある眉目秀麗(びもくしゅうれい)な容姿が起因している。
自分は、見た目で大衆の歓心を引いて、中央に出てきた訳ではない、と折に触れて力説する。
従って、セクシャルな事象には否定的である。
落語の廓噺(くるわばなし)は達者な彼ではあるが、タレントとしてピンク女優と絡むなどの柔らかい仕事は御法度(ごはっと)である。
有名なアイドル・グループへの賑やかし役で、高値で起用されたのに気が乗らなかったから途中で帰ってやったと、伝説として自分で語っている。
師匠の立川談志は意気に感じればポルノ映画にも出演した洒落者だったが、その談志のツテで官能小説家・団鬼六(だん おにろく)からSM作品のオファーが来たときは、志らくは飛んで逃げて拒否していた(笑)。
性的な興味で自分を見に来るとおぼしい同性の客にも「薄気味悪い!」とバッサリである。
どんな客がいたって、いいだろ別に(笑)。
唯一、志らくは若手タレントのとき、深夜番組でAV女優と絡むコーナーを持っていたことがあり、余程それが黒歴史(くろれきし)なのか、セクシー業界を敵視、蔑視した発言は多い。
志らくは、そういう生まれ育ちだ。
だから今回の愛妻のスキャンダルというか下ネタの報道は、さぞやメンタルにこたえたことだろう。
しかし、地上波TVは結果的に志らく擁護(ようご)に動いた。
週末の所謂(いわゆる)「閻魔帳(えんまちょう)」番組でほぼこの件が取り上げられることはなかったのである。ラッキーなことに「スキャンダルは漏らさず発言する」が信条の松本人志(まつもと ひとし)の日曜午前の芸能番組『ワイドナショー(フジテレビ系)』(2013年~)も、マラソン中継で休止になっていた(笑)。
志らくは各局に看板番組があり、新型コロナウィルスという国家的災厄が続いており、「志らく自身のスキャンダルではない」ということに加えて、あまりに彼の妻君のはっちゃけは「ハードコア」過ぎて、茶の間で叩き辛かった(笑)。
こんな風に、世情に微妙に赦(ゆる)されるというのも、志らくらしい間の抜け方というか、はたまた彼の人徳の成せるわざか。
他所で、もうひとつの奇跡(きせき)が起こった。
件(くだん)の『文春』が発売された同日、人気週刊漫画雑誌『モーニング 2020年3/19号(講談社)』(ASIN:B085C763L8)に話題作が掲載されていた。
『修羅場(ひらば)の人』。
ちなみに読みは「ひらば」で正しい。講談(こうだん)という芸能の用語で、「修羅場(ひらば)読み」とは独特の蕩々(とうとう)と流れるような読み方のことだそうだ。
女盛りの女性講釈師(こうしゃくし=落語に対する咄家(はなしか))がヒロイン。「落語」に比べてマイナーな「講談」の世界が舞台。38歳のヒロインは夫のある身ながら、23歳の弟弟子(おとうとでし)を憎からず想い、芸がメロメロになる。
え? これって志らくのとこのスキャンダルじゃね?(笑)。
講釈師のヒロインにはトラウマがある。
女の自分を芸でなく、性的興味や可愛い綺麗で見てくる男の客に傷ついている。
え? これって志らく自身のことじゃん(笑)。
そう思って監修者を見たら、何とこの2020年2月に襲名したばかりの(6代目)神田伯山(かんだ はくざん)――神田松之丞改め――の名前が! カラーの口絵に頁(ページ)丸々彼の近影も掲載されている! 凄いなぁ、やってるなぁ伯山!(笑)
神田伯山は講談界の新星にして、TVでも大人気のトリック・スターである。
毒舌家としても鳴らしていて、多くの先輩タレントに噛み付く芸風も持つ。浅学なのに社会風刺をしてスベリ倒す立川志らくをよくイジっている。
って、やっぱ志らくの家のことじゃんか!(笑)
『修羅場の人』は一旦休載するが、今夏から腰を据えて『月刊モーニング・ツー(講談社)』で連載する予定だという。
まだまだ志らくの家の物語は続くようだ(笑)。
みんな、どうしてこんなに立川志らくのことが好きなのだろう。
やはりスターなのだ。彼が何か呟(つぶや)いても、嗤(わら)っても、咳をしても、皆その度に志らくのことが気になってしまう。
こんなにスターなのに、今朝も心ここに有らずで、ズレた焦点に目を泳がせ、居心地が悪そうにスポットライトを当てられている志らくは何を思うのか。
立川志らくは何処へ行く……。
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#志らく #立川志らく
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