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追悼、岸辺シロー ~『西遊記』での沙悟浄役での活躍回を振り返る!

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追悼、岸辺シロー ~『西遊記』での沙悟浄役での活躍回を振り返る!

(文・田中雪麻呂)
(2020年9月20日脱稿)

岸部シロー(きしべ シロー) ミュージシャン・俳優 2020年8月28日(金)逝去 享年71歳


 拡張型心筋症(心室が広がり、全身に必要量の血液を送り出すことができなくなる)による、急性心不全で亡くなる。


 昭和40年代生まれの筆者にとっては、TVに出ているのが、至極当然に思われたひと。


 日本テレビ系の朝のワイドショーの雛型(ひながた)となった『ルックルックこんにちは(1979~2001)』では、司会者(2代目)を担当(1984~98)。それも本当の意味での司会者である。岸部はスタジオにいて各コーナーへの進行をするだけで、自分の意見めいたものは一切言わなかったし、そういうことを公(おおやけ)に求められてもいなかった希有(けう)な存在であった。



 TV時代劇では杉良太郎(すぎ りょうたろう)が主演した人気番組『遠山の金さん(1975~77、79)』で、長身痩躯(ちょうしんそうく)・無能で居丈高(いたけだか)だが、どこか憎めない南町奉行所(みなみまち ぶぎょうしょ)の同心(どうしん=今でいう警察官)・赤目玄蕃(あかめ げんば)を好演。時代考証にはうるさい杉の作品には珍しく、丸眼鏡を掛け、江戸が舞台であるのに近畿方言を使うという、岸部の素(す)のキャラクターが生かされたものになっていた。


 因(ちな)みに、かつて岸部は1969年に当時トップ・スターだったグループ・サウンズ(ロック・グループ)「ザ・タイガース」にアイドルとして加入したとき、それまではアイドルにはタブーとされてきた「眼鏡」と「方言」を取り入れ、彼自身がムードメーカーになることに成功し、その後グループの音楽性を広げることにも貢献したことを付記しておく。


 岸部は共演者にも恵まれた。軽みのある短駆(たんく)な俳優・植田峻(うえだ しゅん)が、赤目の子分の御用聞き「花川戸の新八」を演じたことで、凸凹(でこぼこ)コンビのようになり、コミカルなシーンには欠かせぬ存在ともなっていた。同作は北町奉行所の名奉行(警察長官にして裁判官のようなもの)である遠山金四郎(杉)が、町人のなりをして市井(しせい)に潜入するのがお定まりの筋書きなのだが、赤目はいつも遠山を胡乱(うろん)に思い彼をつけ回す。当然、主役といつも絡む立ち位置であるため、大変な儲け役である。


 筆者が印象に残っているシーンは、いつものように新八とともに遠山を詮議(せんぎ)する赤目だが、その回は特に厳しく彼を追い詰める。遠山も逃げ道に窮(きゅう)する。どうするのかなと思って観ていたら、遠山が突然、奉行の威厳を以(もっ)て逆ギレし、赤目らはビビって逃げていく(笑)。身分制度が骨の髄(ずい)まで行き渡っていた江戸時代だからこそ、宜(むべ)なるかなと感じ入ったシーンであった。



 そして岸部シローといえば、やはり毎週日曜夜8時に放映されていた大ヒット番組『西遊記(1978~79)』と『西遊記II(ツー)』(1979~80)の沙悟浄(さ ごじょう)役にトドメをさすだろう。
 『西遊記』は日本テレビ開局25周年の企画として製作費10億円で全26話が放送された。特撮部分は「ウルトラマンシリーズ(1966~)」の円谷プロが担当し、当時から話題になっていた。孫悟空(そん ごくう)が堺正章(さかい まさあき)、猪八戒(ちょ はっかい)が西田敏行(にしだ としゆき)、釈迦如来(しゃか にょらい)に高峰三枝子(たかみね みえこ)など配役も豪華だった。
 岸部が沙悟浄役の候補に上がったのは、背の高い人(彼は身長187センチある)を探していたからだという。また、『遠山の金さん』の赤目玄蕃と同じく沙悟浄も関西弁を用いるが、これはそのようにプロデューサー側からお願いしたという。
(元・円谷プロ所属で当時は東宝系列の製作会社・国際放映側のプロデューサーとして関わっていた熊谷健(くまがい けん)の発言。『時代劇マガジン Vol.15』辰巳出版㈱/2007年1月5日発行より)


 もともと『西遊記』の企画自体は、大物俳優・若山富三郎(わかやま とみさぶろう)が持ち込んだものであり、孫悟空は若山がやり、三蔵法師(さんぞう ほうし)は歌舞伎役者の坂東玉三郎(ばんどう たまさぶろう)、八戒は力士の高見山大五郎(たかみやま だいごろう/当時)、沙悟浄は名優の仲代達矢(なかだい たつや)がイメージされていた。
 玉三郎にオファーしたところ受けてくれなかったため、その時点で若山メインの企画は流れたのだが、熊谷プロデューサーはその「躓(つまず)きの石」を翻案(ほんあん)し、「悟空と三蔵がふたりとも男というのは面白くない。宝塚歌劇のような中性的な女性、たとえば相良直美(さがら なおみ=ホームドラマもこなしたスター歌手)のような人はどうだろうか?」と、発想の大転換を試みた。
 結果、当時まだ新人の夏目雅子(なつめ まさこ)が三蔵役に起用される。夏目のデビュー作である平日昼の帯ドラマ『愛が見えますか(日本テレビ系/1976年放送)』に熊谷プロデューサーが関わっていたという縁(えにし)からである。


 ここで筆者は、「若山富三郎が改めてTVの企画として『西遊記』を製作したときの配役はどうなるか?」を妄想する。
 悟空は若山、八戒は山本麟一、沙悟浄草野大悟、釈迦如来清川虹子あたりか(笑)。三蔵法師は女性に演らせるという発想がないだろうから、若山の子分で一番中性的な高岡健二が演ったかもしれない(笑)。
 妄想終了、すいません。


 沙悟浄の前世(ぜんせ)が、天上界(てんじょうかい)の高官・捲簾大将(けんれん たいしょう)であることは、スキモノなら当然ご存知であろう。
 岸部も口髭(くちひげ)に冠(かんむり)姿で、捲簾の名前通り、天帝(天上界で最高位の貴人)の御前に掛かっている御簾(みす)を恭(うやうや)しく上げて見せていた。
 しかし『西遊記』の原作に当たると、本当に御簾を上げ下げする役目ではなく、それくらい天帝(原作では玉帝)のお側(そば)近くにいるという近衛兵(このえへい)の総大将の意味であるというからややこしい(笑)。


 TVドラマである本作『西遊記』では、天上界に召還(しょうかん)された孫悟空(堺)が御簾越しにいる天帝の素顔が見たくなり、御簾を上げようとするが、控えていた岸部演じる捲簾に阻止され、一触即発となる。悟空が捲簾に「ケッ! スダレの番人か!」と悪口を浴びせる場面は名シーンだけに印象的で、タチが悪いのだが(笑)。


 また、沙悟浄といえば河童(かっぱ=日本各地の水辺に棲む妖怪)というイメージが確立しているが、これは『西遊記』を扱ってきた日本の児童書のミステイクであるという。『西遊記』の原作を紐解けば、沙悟浄の外見は「藍色(あいいろ)の顔色で、光る丸い目玉を持った妖怪」としか書かれていない。河童の特徴である「頭のお皿」や「背中の甲羅」「指の間の水掻(か)き」「尖った嘴(くちばし)」などは全く記載されていないのだ。


 河童の好物は胡瓜(きゅうり)とされているが、ドラマの中で沙悟浄がそれを食べたりする場面も特にない。ドラマの放送後のバラエティー番組や番宣番組で、岸部シロー沙悟浄に因んで、胡瓜で誘き寄せられるというような演出は多くなされているので、混同している人も多いと思われるが。
 因みに、胡瓜はインド西北部のヒマラヤ山脈山麓地帯が原産地である。紀元前10世紀ごろには西アジアに定着、中国には6世紀に伝播(でんぱ)した。同じ頃に日本にも中国から胡瓜は伝わったということである。


 では、沙悟浄の苦手なものとは何か? #8で鱗青魔王(りんせい まおう/演・中尾彬)の虜(とりこ)にされ、ある生き物を使っての拷問の際に判明する。それは蛇(へび)である。演じる岸部シロー自身も爬虫類がキライで、「君たち(爬虫類)は何で存在しているの? と思うくらいに苦手です。」と、CS「ファミリー劇場」での『西遊記』放映宣伝特番で語っている。


 私的なことだが、後年筆者はこの#8の「悟空危うし! 鱗青魔王の逆襲」のシナリオを入手した。後年に『西遊記』の裏番組であるNHK大河ドラマなどを手掛けるほどに大出世する脚本担当のジェームス三木(みき)の悪ノリがヒドく、沙悟浄拷問のシーンはかなりハードに描かれ、沙悟浄の口や鼻の穴にも蛇が出たり入ったりする描写がある。勿論(もちろん)映像化された作品にはそれほどのシーンはないのだが、撮影当時この同じ台本を見た岸部の心中いかばかりであったろうか(笑)。


 捲簾大将は天上界の宝を壊してしまったため、天帝の怒りに触れて、地上の流砂河(りゅうさが)に堕(お)とされ、河の邪気によって妖怪に変じる、というのが原作のあらまし。日本の児童書の多くは主体が孫悟空であるために、沙悟浄の天上界での前世云々(うんぬん)をほぼ端折って、イキナリ悟空が流砂河で沙悟浄に対面するシーンから記載されているので、「水から出て来た妖怪」ということで「河童」になったのではないかという意見が大勢を占めているらしい。
 何(いず)れにせよ河童に扮した岸部シローのビジュアルが、少なからずこの「沙悟浄=河童」のイメージをさらに助勢したことは論を待たないだろう。



 岸部演じる沙悟浄の名場面は多い。


 まずは#3で、河童として孫悟空と初めて対峙したシーン。普段、土地神(とちがみ)を顎(あご)で使っているように、沙悟浄をこの大河の水先案内人に便利使いしようと、彼の住み処(すみか)に押し掛ける孫悟空沙悟浄は半笑いで「この猿が。」と受け流し、一転「不法侵入やぞ!」と悟空を組伏せ、凄味を効かせる。珍しく悟空が「この勝負は天竺(てんじく=インド)の旅から帰るまでお預けだ。」と泣きを入れることで、沙悟浄はそのままその取経(しゅきょう)の旅に加わる。


 #13では、自分の頭のお皿をいつも磨いていることが高じて、鏡磨きの技術を持つ沙悟浄は、殺人光線を使うワル妖怪に対向するべく、光線を跳ね返すポータブルなトーチカ(防御陣地)を作成する。
 #19では、移動する「幻の湖」を追うバッタ女王(演・緑魔子(みどり まこ))を助けるため、沙悟浄は水脈を辿って井戸を掘削(くっさく)し、見事水源を確保する。
 #16では変身能力で敵を撹乱させ、三蔵一行の勝機に結びつけた。



 恋愛関係も、一番派手なのが沙悟浄である。
 孫悟空プラトニック・ラブ専門であるし、三蔵法師は邪念による愛欲に苦しみ、猪八戒は多淫だが後を引かない。


 沙悟浄は、#5でワル妖怪の聖嬰大王(せいえい だいおう)の恋女房・其美(きび/演・服部妙子)に岡惚れしたのを皮切りに、#22では幽鬼の一族の三女・美宝(びほう/演・島本須美)に骨抜きにされたり、『西遊記II』の#10では河童の国・沙陥国(さかんこく)の姫君・翠玉(すいぎょく/演・山口美也子)を大魚妖怪から救い出し、ナイトぶりを見せたりと幅広い。
 『~II』の#1では、沙悟浄は取経の旅の途中に天上界に舞い戻り、貴人の婢(はしため)の悠明(ゆうみん/演・児島美ゆき(こじま みゆき))にウィンクひとつでモーションをかけ、婚約・結婚・天上界でのマイホーム購入までをハイ・スピードで成してしまう(笑)。


 『西遊記』の最終回では、最強妖怪の鉄砂大王(てっさだいおう/演・南利明)が、地獄を支配している冥府太閤(めいふ たいこう/演・牧よし子)とタッグを組んで一行の前に立ち塞がる。じわじわと締まっていく鉄の輪を首にかけられた三蔵法師。三弟子が外すべく尽力するが、成す術(すべ)がない。
 窮余の一策として沙悟浄が発案したのは、鉄砂を唯一溶かすことができる仙水壺(せんすいつぼ)を所有する滴水娘々(てきすい にゃんにゃん/演・丘ゆり子)を召還することであった。滴水娘々は河童族の一派で、沙悟浄の許嫁(いいなずけ)の醜女であった。用が済むや挨拶もそこそこに帰らされる滴水娘々。沙悟浄の酷薄な側面が垣間見られる。


 沙悟浄は恋愛に関していったい硬派なのか遊び人なのか純情なのか判然としない。より多面的であるということは、悩みの多い我々衆生(しゅじょう)に一番近い存在であるということなのであろうか?



 沙悟浄の父親と称する河童妖怪が出てきて、彼の存在そのものが揺らいだエピソードもあった。#7の「日照り妖怪の子守唄」である。これも脚本はあの悪ノリ大好きなジェームス三木である。
 村人から生け贄(いけにえ)として、決まって男の子どもを供出させては喰い殺していた日照り妖怪(演・桑山正一)を捕らえた孫悟空だが、実はそれが沙悟浄の実父であることが判明する。日照り妖怪によると、沙悟浄は由緒正しい河童の生まれだという。幼い頃に人間に誘拐され、その後に天上界に昇って捲簾大将になったのだろうか? いわば、前世の前世が河童だというのだ。
 天帝の近衛の総大将にまで上り詰めた男が、天から堕とされたとき、邪気のある大河に引き寄せられるように墜落し、先祖返りするようにまた河童に変じたのだろうか?



 岸部シロー氏が亡くなって、まだ二十五日ほどしか経っていない。黄泉(よみ)の国には、まだ立ち入ってはいないだろう。これから三途(さんず)の川を渡り、極楽往生されるのだろうが、川端では呉々(くれぐれ)も濡れないようにお気をつけ頂きたい。


 岸部はあるバラエティー番組で、


「河童の役を演っていたのですが、水に濡れたりするのが嫌で嫌で……。オープニングテーマで、僕が水辺から飛び上がってくる映像を、まあ逆回しで流すために、その高い所から水の中に僕が後ろ向きで飛び込まなきゃならなかったのですが、それも嫌で……。」


と、延々とコボしていて可笑(おか)しかったので。



 本物の天竺に抱かれた岸部シロー氏のご冥福を心よりお祈り致します。たくさん楽しませて下さって本当にありがとうございました。


(了)
(初出・当該ブログ記事~オールジャンル同人誌『DEATH-VOLT』VOL.86(2020年晩秋発行)所収予定)


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仮面ライダーゼロワン』最終回・総括 ~力作に昇華! ラスボス打倒後もつづく悪意の連鎖、人間とAIの和解の困難も描く!


仮面ライダーゼロワン』終盤の挑戦!

(文・T.SATO)
(2020年9月脱稿)


 最終回の4~5本も前に、我らが仮面ライダーゼロワンは巨悪のラスボスを打倒することについに成功! しかし、物語はそこでは終わらない。
 物理的な大カタストロフ(破壊)が回避できたというだけであって、「自我」や「感情」が芽生えた人型ロボット「ヒューマギア」たちにとっては「人間」に対する「不信感」や「齟齬」、ひいては「怒り」が解消されるものでは決してナイ! 彼らはプラカードを掲げてデモや団交(!)、一部は暴動までをも引き起こす!――エキストラも相応に動員することで映像的な説得力も増している! もちろんシナリオの執筆時期的にはアメリカでの黒人差別反対デモを反映したものであるワケもないけれども、映画の神さまのイタズラか結果的には少々シンクロもしてしまう――


 本作シリーズ当初の宿敵であった悪意の人型ロボット集団「滅亡迅雷.net」も巨悪を倒すためにゼロワンと共闘したものの、


・「人間とヒューマギアとの共生」を目指す仮面ライダーゼロワンことアルト社長
・「人間支配からのヒューマギアの解放」を目指すヒューマギア・滅(ほろび)


 この両者では目指すべき道が違っていた。そして、ふたりの間で再度はじまる闘争!


 加えて、物語は仮面ライダーゼロワン自身の「闇落ち」へ! 最凶最悪の新たなラスボスと化してしまう! 同作における一応の正義側の2号ライダー・3号ライダー・4号ライダーたちがコレを何とかせんとして立ち向かう!
 しかし、「ゼロワンと戦ってしまう」という行為自体が、ゼロワンをますます「悪」へと追いやってしまう可能性もあるという。しかして、彼の暴走を放置しておくワケにはいかないという二律背反……。ウ~ム。


 いやぁ~。たしかにスゴいストーリー展開だけれども、戦ってはイケナイのかもしれないとなってしまうと、娯楽活劇作品としては爽快感を得られにくくなってしまうし、劇中でのバトルがもたらす爽快感自体をも否定しかねないクリティカル・ポイント(臨界点)の線上に立ってしまったとも思うのだ。どころか、一歩先に踏み越えて勝利のカタルシスを得られにくいところにまで立ち入ってしまったような、いやソレをギリギリのところで寸止めで留めることができてもいるような、マニア諸氏の見解も別れそうなビミョーな地点に着地しているともいえるだろう。


 しかし、コレはもう個人の好みの次元に入ってくるけど、筆者個人も手放しではナイけれども、本作『ゼロワン』をトータルでは肯定したいと思うのだ。もちろん、年長マニア目線も意識した作品であるとはいえ、ココまで子供向け番組でやらなきゃイケナイのか!? という私的な感慨もあったりはする。しかしココまでやらないと、あまたの意表外なラストに着地して、様々なテーマ的達成をも実現してきた2010年代の平成ライダー諸作との差別化ができないのもまた事実ではある。よって、作家陣やプロデューサー陣もまたそうしたテーマ的・作劇的な実験をしてみたくなる(?)という気持ちも僭越ながらよくわかる。


ラスボス打倒後も、人の心に悪があるかぎり、悪が蘇る展開をガチで描く


 「人間の心に悪があるかぎり、私は必ずよみがえる……」。これは往年の『仮面ライダーBLACK(ブラック)』(87年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20001015p2)最終回で、暗黒結社ゴルゴムの大首領にしてその正体は生ける巨大な心臓(!)であった創世王の断末魔のセリフである。
 『BLACK』放映の時点で、元祖『仮面ライダー」(71年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20140407/p1)世代の特撮オタクたちはすでに20歳前後に達していたので(汗)、この創世王の断末魔がまた、『仮面ライダー』シリーズの原作者・石ノ森章太郎(いしのもり・しょうたろう)が手掛けた往年の名作人気マンガ『サイボーグ009(ゼロゼロナイン)』(64年)シリーズの当初の完結編であった「地底帝国ヨミ編」最終回(67年)へのオマージュであることに気付いた御仁も多かったし、そのことを当時もう隆盛を極めていた特撮雑誌の読者投稿欄やら特撮評論同人誌にあまたの論客たちが言及をしていたモノである――ただし必ずしも好意的な論評だけだったとはかぎらない。評論オタクは良くも悪くもスレすぎているので、その時点でも今で云うテンプレ・陳腐な結末に過ぎなくて、少しは前代の『009』とは異なる新たなビジョンも提示しろ! というような批判もあったモノである――。


 009たちの宿敵集団・ブラックゴーストの3大幹部がロケットで逃亡した先の衛星軌道上で009に発したのは、「人間の心の中にある悪が私たちの正体……」「だから僕たちは滅びない……人がいるかぎり」というセリフであった。
 まさにそのゴルゴムやブラックゴーストのような権力悪のごとき存在を滅ぼすことができたとしても、無条件に善良な存在であると思われがちである庶民・大衆自身にも実は悪意や害意や醜い欲望があるのであって、その空白の王座には別のラスボスがそのうちに鎮座するであろう。あるいは鎮座しないまでも、ミクロな学級・職場・地域内での人々の不和が解消することもまたナイであろう。モラルや他人に対する共感性に乏しい学級・職場・地域のボスが安倍ちゃんやトランプと連動して消滅するということもまた決してナイ以上は、学級・職場・地域内でのイジメやパワハラモラハラなどが解決することもまたナイのであろう。


 往年のマルクス主義的な「階級闘争」図式で、暴虐な王さまなり権力悪なり安倍ちゃん・トランプ・武器商人をギロチンに架けて首チョンパなり、その銅像を引き倒してみせたり、王都(首都)を陥落(かんらく)させて、「革命」さえ達成できれば、そこで即座に平和でバラ色な地上天国が訪れる……などとは描かなかった石ノ森章太郎センセイ。
 今の若い方々には信じられないだろうけど、世界中の左翼知識人たちがソ連(現ロシア)・中国・北朝鮮などのマルクス主義的な共産主義諸国を信奉し、世界中でいずれは資本家や権力者が革命で首チョンパされて万人が平等で善意に満ち満ちた社会主義共産主義社会が到来することが歴史的必然・科学的真理である――コレを科学的社会主義という(爆)――と信じていた人々が多かった1960年代に、それをも懐疑して別のオルタナティブな境地に到達していた石ノ森章太郎の先見性が改めて忍ばれる。
 むろんコレは「権力悪」を糾弾するのがまったくの無意味だというのではナイのは念のため(ムダな全否定ではなく是々非々で見ることは重要だとは思うけど)。「権力悪」とはまったく別個に独立・並行して存在する、日常で出会う「小さな悪」とも我々は対峙して解決を目指していくべきなのであり(短期的にならば退避・逃走をも含む)、この通底はしていない両者との二面戦が必要だという考えを筆者個人は持っている。


 『ゼロワン』#42のサブタイトルは「ソコに悪意がある限り」。そう、『ゼロワン』終盤はゴルゴムやブラックゴーストなどの巨悪が滅びたあとにも残る不和を描くのであった――ラスボス存在に「悪意」をラーニングさせた本作中盤における宿敵・仮面ライダーサウザーこと大企業・ZAIA(ザイア)のアマツ・ガイ社長の過去の行為が「原因悪」ともいえるけど、それは単に時系列的な発端(ほったん)に位置する小悪党に過ぎなくて彼はラスボスたりえずに、開発者や媒介者の制御をすでに離れて独立して現に巨悪として君臨・暴走している方をラスボスとして描くあたりも実に示唆的ではある(仮に元凶悪たるサウザーを倒しても、ラスボス存在に昇格する悪の人工知能を搭載した人工衛星・アークが滅びるワケではないので)――。


人型人工知能ロボットたちに目覚める「悪意」と同時に「神」の概念!


 ただまぁ、放映短縮による影響なのやもしれないけれども、ラスボス打倒後も解決されなかった市井の不和描写については、失敗はしていないものの十全たる描写でもなかったやもしれない。
 たとえば一度はその存在を危険視されて製品回収の憂き目に遭ってしまった「ヒューマギア」たちは、社会に復帰できても一応の「自我」や「感情」がすでに芽生えてしまっている。つまりは人間ほどではないのだろうけど「懐疑」や「不信」や「不満」や「悪意」といった感情というのか「実存」も芽生えてしまっているのだ。それらの心情を仮託するものとして、「ヒューマギア」の一部にかつてのラスボス「人工知能・アーク」を「神さま」のように感じているといった事象も生じていることが語られる。
 ただし、それは本作のメインヒロインである秘書ロボ・イズのセリフ一言で済まされてしまって具体的な実例描写がなかったので(笑)、「神さま」といった物理的には非実在な存在をも想念できてしまう「人工知能」という魅惑的なシチュエーションそれ自体はやや空回りで終わっていたともいえるだろう。


 むろん、筆者ももっと即物的・子供向けヒーロー番組的に「アーク」が亡霊のように復活! あるいは、サイバーSFマンガ『攻殻機動隊』(89年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20170510/p1)シリーズ的に「アーク」がインターネットの世界に自我を持ったデータとして遍在するようになってしまって復活を果たすのか!? ……などとも思いはしたものの、作り手たちは意外にストイック(禁欲的)であり、そのようなある意味では安直な――と同時にヒーロー活劇としては正しい――展開にはならなかったのであった。
 好意的に解釈すれば、「アーク」は自身のデータが膨大ゆえにか、自身のような存在が二体以上も存在することを危険視したのか、バックアップ・コピーなどは取らずに、単独で悪の新変身ベルトに宿った末に――変身ヒーロー番組である以上はメタ的には「アーク」自身もワル者で隻眼(せきがん)のライダー・仮面ライダーアークゼロとして実体化してガチンコバトルを演じさせる必要があったため――、最期(さいご)は他のヒューマギアや記憶媒体に憑依し直す暇もなく物理媒体上で破壊されてしまっているので、まさに物理的なデータ実在ではなく「ヒューマギア」たちの高度な思考上で生じた「非実在」の抽象的な「観念」・「概念」として「アーク」は想定されているということになるのであろうけど、メインターゲットの幼児たちはもちろん大きなお友達でも理解がしにくかったのではなかろうか?(汗)


 ただまぁ、そーは云っても、単なるデータの集積であるハズの「アーク」自身も、変身ヒーロー番組的な映像表現としては、物理法則を超えて空中に浮かぶ黒紫のトゲトゲとしたCG球体として出現して、宙を移動して人語をしゃべったりする姿までをも見せたり(笑)、「アーク」滅亡後もその残存データだとも解釈ができる黒紫のウヨウヨが地を這ってゼロワンやヒューマギアに憑依したりする、適度にロウブロウ・通俗的なビジュアル表現もなされてはいるので(ホメてます!)、ムダに無意味な難解さはなく子供番組としての仁義も守られてはいるのだけれども……。


ラスボス打倒後、ヒロイン殺害、ゼロワンが復讐心からラスボス化!


 終盤の4本は仮面ライダーゼロワンvs滅亡迅雷の滅が変身する仮面ライダー滅との思想対決も交えた最終決戦ともなっていく。しかし、ここでもスタッフは一捻りを加えて、それまでは善意のかたまりのようであった主人公青年・アルト社長自身に「悪意」を克服することの困難さを最終試練として与えている。
 すなわち、寝食を1年ともにしてきたメインヒロインである美少女秘書型ヒューマギア・イズを敵の毒牙にかけたことである! 特殊なヒューマギアであってデータ・バックアップも存在しないイズは真の意味での死を迎えてしまうのであった……(昭和の時代ならばともかく、今どきの子供向け番組としては実にイジワルな展開だなぁ・汗)。


 果たして、コレを恨まずにいられようか!? もちろん恨まずにはいられない。それもまた実に「人間」的な、いやむしろあまりに「人間」らしい心でもある! 平静心を失って復讐心にカラれたアルト社長は禁断のアークの変身ベルトを用いて、新たなる白黒モノトーンの禍々(まがまが)しきライダー・仮面ライダーアークワンへと変身して圧倒的なパワーを見せつけた果てに、滅をかばった滅亡迅雷の迅(じん)こと仮面ライダー迅(ジン)をも期せずして爆散させてしまう!
 元々は父親型ヒューマギアとして造られた個体であったことがそれまでに判明していた滅は、当初は支配の対象として、途中からは父性愛の対象に変じていった迅を喪ったことで激高!


 状況は絶望的になる一方である。でもまぁ、子供番組である以上はアンハッピーエンドに落とすワケにはいかないし落とすべきでもナイ。バトル自体がイケナイ、激高の果てには新たなアークが誕生するやもしれない!? などという、『仮面ライダークウガ』(00年)終盤(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20001111/p1)でも見られたような展開にもなっていく。
 しかして、肝心のラストバトルが省略されてイキナシ後日談になってしまった『クウガ』とは異なり(爆)、名作時代劇映画『七人の侍』(54年)やそれへのオマージュでもあった名作TV時代劇『斬り抜ける』(74年)#4における戦場の方々に刀剣を刺したり立て掛けたりして野盗と乱戦におよんだように――日本刀は何度も斬りつけていると湾曲したり血糊で切れ味が鈍ってしまうため。その意味で実は百人斬りなどは不可能なのである(汗)――当初からお互いに無数の刀剣武器を出現させて方々に配置しておき、武器を取っ替え引っ替えしながら壮絶なラストバトルをボリュームいっぱい展開してみせる!
 80年代以降のジャンル作品のお約束で、戦闘中に禅問答を繰り広げるスタイルで、人間の多面的で時に制御不能な衝動などの複雑玄妙な心理なども言語化・セリフ化して総合的に掘り下げつつも、その果てに到達した思想的境地で両者は一応の決着・和解(?)へと至るのであった……。


 やや頭デッカチで思弁的なオチになった気もするけど、ギリギリ空中分解は免れているとは思うし、相応に胸を打たれるところもあるしで、筆者も心の片隅に分裂した感慨(少々の不満)を抱いていなくもないのだけれども、やはりあくまでもジュブナイルでありファミリー向け作品でもあるのだから、このオチでイイんじゃないのかなぁ。


悪意一般を過去作はドー捉えた!? 前例『ドライブ』と反例『鎧武』!


 エッ? 5年前の『仮面ライダードライブ』(14年)終盤はトータルではハッピーエンドでも、細部を見れば「人間から悪意がなくなることはない……」「悪意を撤回することができない人間もいる……」というミもフタもないテーゼが提示されていたって? しかもその実例たるラスボスは、同作における1号ライダーの親族であったとしてしまうとドラマがあまりに重たくなりすぎてしまうからか、2号ライダー・仮面ライダーマッハやその姉であるメインヒロイン姉弟の実の父でもあった仮面ライダーゴルドドライブ・蛮野博士の方に割り当てられたけど、少年マンガ美少女アニメ的な「善意の説得」が実らない方向での決着だったって?
 そーいやそーでしたネ(汗)。まぁ、あの作品はそれでも、息子と娘は彼を翻意させようと最善の努力は尽くした……、その努力は実らなかったけど、しかして親と子はあくまでも別人・別人格なのであり血の呪いのようなモノを感じる必要もナイことを提示しつつも、主人公たる青年刑事クンも「人間一般から悪意がなくなることはない」ことを最終回で達観する決着になっていて。しかして、それでニヒリズムに陥(おちい)ることなく、だからこそ自他の悪意を抑える側に廻ろうと冷徹に決意するオチでもあって――最終回の1週あとに話数調整であろうか放映された次作ヒーローも客演する後日談番外編でも、その達観を念押しのダメ押し。しかも往年の『ウルトラマンタロウ』(73年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20071202/p1)最終回ラスト(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20130317/p1)のようにヒーローにすら変身せずに人間としての力でだけで事件を解決してみせもする!――。


 しかして、その真逆のパターンの作品すらもがあった。ラスボスというのか事態の元凶が、異界から浸食してきた「悪意」自体を持たない(!)侵略的外来植物に過ぎなかった『仮面ライダー鎧武(ガイム)』(13年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20140303/p1)である――コレも人格悪や階級悪を超えて特定個人の意志や悪意でもなく集合意識や法人格のようなモノが勝手に自律的に動き出してしまう、非人格的・非人称的な組織やシステムの隠喩も込めていたとも思われる――。
 超長期的には人間や生物や宇宙の生命を進化させ、「黄金の果実」として知恵・知性をもたらすことまであるものの、短期的には人類との共生が不可能な「異界植物」と「植物由来の敵怪人」たち。そんな存在たちを神通力で宇宙の彼方の新天地の惑星へと一挙に瞬間移動させて、「人間」と「植物」&「怪人」たちを「棲み分け」というかたちで救ってみせたのは、生物種としての人間を超えて神近き存在へと進化してしまった主人公青年とヒロインであったというオチ。しかも彼らは人間としての「生」を犠牲にして、彼の地でこそ争いのない世界を造るのだともいう……。
 コレなども一応のハッピーエンドではあって安息も感動も得られはしたけれども、ウラを返してシニカルに見てしまえば、SF的・純論理的にはこのような解決方法も仮定はできるけど、それはあくまで絵空事であって現実的にはまるでムリですよ~と主張しているようにも見えなくもないのであって……(汗~いや、もちろん色々な深読みや賛否が出るように、あえて多面的に描かれた含蓄があるラストにしたのであろうけど)。


 本作『仮面ライダーゼロワン』終盤もまた、2010年代のそんな意欲作ばかりなライダーシリーズ終盤に列伍できたとも私見するのであった。


(了)


仮面ライダーゼロワン』総括

(文・久保達也)
(2020年9月20日脱稿)

*「令和」初の仮面ライダーは「昭和」と「平成」のイイとこ取りでもある!?


 改元後初の仮面ライダーとして華々(はなばな)しくスタートしたものの、2020年に全世界を襲った新型コロナウィルスの影響で話数短縮の憂(う)き目にあった『仮面ライダーゼロワン』(19年)が当初の予定どおり2020年8月末をもって大団円を迎えた。


 第1話『オレが社長で仮面ライダー』~第16話『コレがZAIA(ザイア)の夜明け』に至るまでは、AI(エー・アイ)=人工知能を搭載したヒューマノイド型ロボット・ヒューマギアがありとあらゆる業種で人間とともに働く近未来を舞台に、


・元は売れないお笑い芸人だったが第1話でヒューマギア開発企業の社長に就任した、茶髪で一見軽薄な印象の強い主人公青年・飛電或人(ひでん・あると)=仮面ライダーゼロワン
・対人工知能特務機関「A.I.M.S.(エイムズ)」に所属する黒髪カーリーヘアの一見イケメンだが激熱(げきあつ)キャラの不破諫(ふわ・いさむ)=仮面ライダーバルカンと、同じく「A.I.M.S.」に所属する黒髪ストレートロングでスレンダーなクールビューティー美女・刃唯阿(やいば・ゆあ)=仮面ライダーバルキリー
・ヒューマギアを怪人化させて人類絶滅をたくらむ組織である「滅亡迅雷.net(めつぼうじんらい・ネット)」


 彼らの三つ巴の戦いが描かれていた。


 第17話『ワタシこそが社長で仮面ライダー』~第29話『オレたちの夢は壊(こわ)れない』に至っては、或人が社長を務める飛電インテリジェンスのライバル企業・ZAIAの社長であり、自身の指針としてやたらと「1000%(せん・パーセント)」を口にし、常にクリーム色のスーツに白のタートルネックを着用する、ホントは45歳だが自称「永遠の24歳」(爆)の天津垓(あまつ・がい)=仮面ライダーサウザーが新たに登場!
 「滅亡迅雷.net」に代わってレギュラー悪となり、飛電インテリジェンスの買収をたくらむ垓と或人が思考能力を補助する小型機械「ZAIAスペック」を装着した各界の人間とヒューマギアのどちらが優れているかを競う「お仕事五番勝負」(笑)を繰りひろげた末に或人は垓に敗れてしまい(!)、社長の座を降りて飛電インテリジェンスを去るまでが描かれた。


 本稿では便宜上(べんぎじょう)、第1話~第16話を第1部「滅亡迅雷.net編」(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200517/p1)。第17話~第29話を第2部「天津垓=仮面ライダーサウザー編」(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200518/p1)と呼称する。
 第30話『やっぱりオレが社長で仮面ライダー』~第41話『ナンジ、隣人と手をとれ!』、つまり飛電インテリジェンスの新社長も兼任して全ヒューマギアの強制停止と一斉リコールを開始した垓が、12年前に犯罪心理や人類の愚かな争いの歴史をラーニング――情報技術を用いて「学習」を行うこと――させたことで、その本体は人工衛星でもある「悪の人工知能・アーク」が本格的に復活して人類を滅亡させようとしたり、セキュリティが万全のはずだった「ZAIAスペック」がハッキングされて装着者の人間が暴走をはじめる第3部は、さしずめ「アーク編」と呼ぶべきところであろう。
 ラスボス・アークが滅んだあとにも平和が到来することなく闘争はつづイテ、「アークの意志」を体現することから離れて自立をはじめた「滅亡迅雷.net」に所属する悪の人工知能存在でもある4大ライダーと、自我と権利意識にめざめたヒューマギアたちも人間に団交やデモや暴動で要求を開始する(!)、第42話『ソコに悪意がある限り』~最終回(第45話)『ソレゾレの未来図』は「最終章」としておこう。


 『仮面ライダードライブ』(14年)・『仮面ライダーエグゼイド』(16年)・『仮面ライダービルド』(17年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20180513/p1)などの、東映の大森敬仁(おおもり・たかひと)がチーフプロデューサーとして手がけてきた「仮面ライダー」作品では主人公が戦う対象がシリーズ中に変化を遂げていく傾向が強かった。
 『ドライブ』では、当初は人工生命体・ロイミュード怪人が敵であったが、中盤からは人間とロイミュードが融合して誕生する新たな怪人が登場するようになり、最終展開ではかつてロイミュードを生みだした張本人であり、2号ライダー・詩島剛(しじま・ごう)=仮面ライダーマッハとその姉・詩島霧子(しじま・きりこ)の実の父・蛮野天十郎(ばんの・てんじゅうろう)=仮面ライダーゴルドドライブがラスボス的な扱いで描かれて、それまでは主人公・泊進ノ介(とまり・しんのすけ)=仮面ライダードライブと敵対してきたハズのロイミュードの幹部たちが共闘するまでに至っていた。
 『エグゼイド』では、コンピューターウィルスから生まれたバグスター怪人に加勢していたゲーム会社の若社長・檀黎斗(だん・くろと)=仮面ライダーゲンムがシリーズ前半のレギュラー悪として描かれた。しかし、中盤以降黎斗は正義側のライダーおよびネタキャラと化して(笑)、以降は新たに登場した黎斗の父・檀正宗(だん・まさむね)=仮面ライダークロノスがレギュラー悪となっていた。
 そして『ビルド』では、謎の組織・ファウストと彼らが生みだした未確認生命体・スマッシュ怪人との戦いを描いた第1章、日本が3つに分断された世界観でそれぞれの国家の仮面ライダーたちが代表戦を演じる第2章、それらすべての元凶である地球外生命体・エボルトがレギュラー悪となる最終章と、先述した傾向が最も顕著に表れていた。


 もちろん、大森P以外の作品でも、インベスなる怪人たち → 悪徳企業(笑)ユグドラシル・コーポレーション → 異界・ヘルヘイムの森に生息するオーバーロードなる侵略者 と、主人公が戦うべき相手が変化を遂げていった『仮面ライダー鎧武(ガイム)』(13年)などの事例も存在する。しかし、『仮面ライダーW(ダブル)』(09年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100809/p1)以降のいわゆる第2期平成仮面ライダーシリーズで目立つようになったこうした目先の変化は、昭和の仮面ライダーシリーズで描かれていた敵組織の幹部交替劇を彷彿(ほうふつ)とさせるようでもある。
 実際に幹部交替劇にとどまらず、元祖『仮面ライダー』(71年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20140407/p1)ではショッカー → ゲルショッカー、『仮面ライダーアマゾン』(74年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20001008/p2)ではゲドン → ガランダー帝国、『仮面ライダーストロンガー』(75年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20201231/p1)ではブラックサタン → デルザー軍団、『仮面ライダースーパー1(ワン)』(80年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210822/p1)ではドグマ → ジンドグマと、敵組織そのものが交替する事例がすでに多く見られてはいた。それらを近年のライダーシリーズが参考にしたとは思わない。しかし、これはある意味では昭和以来の仮面ライダーシリーズの伝統・様式美の意図せざる隔世遺伝(かくせい・いでん)なのかもしれない。


 そして、平成仮面ライダーといえば敵が味方に、味方が敵にとキャラの立ち位置シャッフルを繰り返すことで人物相関図を激変させる、集英社週刊少年ジャンプ』連載作品では昭和の時代から行われてきた手法を導入した作劇こそ大きな魅力のひとつである。しかし、先述したように主人公が戦うべき相手が変化する中で、『ドライブ』ではロイミュードの幹部だったチェイス=魔進(マシン)チェイサーが仮面ライダーチェイサーに、『エグゼイド』ではバグスターの幹部格・パラドが仮面ライダーパラドクスに、『ビルド』ではファウストの幹部・氷室幻徳(ひむろ・げんとく)=ナイトローグが仮面ライダーローグへと、近年のライダーでは敵キャラが完全に正義側へと転じる例が散見されていた。
 『仮面ライダージオウ』(18年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190527/p1)をはさんで大森がチーフプロデューサーに返り咲いた『ゼロワン』もまた先述したような作風を継承した印象が強かった。しかしもうひとつ加えるならば、『ドライブ』の蛮野、『エグゼイド』の正宗、『ビルド』でヒロイン・石動美空(いするぎ・みそら)の父・石動惣一(いするぎ・そういち)の身体に憑依(ひょうい)していたエボルトと、仮面ライダーが最後に敵対する相手が「父性」を象徴するキャラだったことをも『ゼロワン』は継承していたのだ。


*「自由」のために共闘した或人&迅!


「人とヒューマギアが笑える未来をつくる。それが仮面ライダーゼロワンだ!」
「人間からヒューマギアを解放して自由を与える。それがボク、仮面ライダー迅(ジン)だ!」


 第30話では或人と「滅亡迅雷.net」のひとり・迅(じん)=仮面ライダー迅がたがいの「夢」を語り、「お仕事五番勝負」で勝利して飛電インテリジェンスの社長となった垓がこの世のすべてのヒューマギアを廃棄処分にするのみならず、仮面ライダーゼロワンの変身システムや全ヒューマギアを管理している人工衛星ゼアに保管されていたバックアップデータをも消去しようとする中で、迅は或人の頼みではなく「ボクの意志」で或人の秘書で黒髪ショートボブヘアのロリ少女型ヒューマギア・イズを助けだした。
 そしてイズに対し、今後はゼアの指令ではなく自分の「意志」で動くようにともに説得した或人と迅は、イズを破壊しに来た垓と新生「A.I.M.S.」を相手にダブルライダーとして華麗に共闘した! チェイス・パラド・幻徳らと同様に、迅もまた正義側の仮面ライダーへと転じたように描かれた。しかし、迅の場合は敵組織である「滅亡迅雷.net」を離脱することなく、所属したままだったのが特異な点であったろう。


 つづく第31話『キミの夢に向かって飛べ!』では、第30話で或人と和解したかに見えた迅が、第5話『カレの情熱まんが道』にも登場した漫画家から或人が復元を依頼されたアシスタント型ヒューマギア・森筆ジーペンを、「人間の道具じゃない」と主張して連れ去ってしまう。


「おまえにはおまえの意志があるだろ?」


 迅の説得を理解不能とし、あくまでゼアの命令を求めようとするジーペンの姿は、元々「戦闘人形」として生みだされて戦争の終結で手紙の代筆屋に勤めることとなったものの、今も生きていると信じるかつての上官の命令を求めつづけている美少女を主人公とした、かの京都アニメーション製作の毎回泣かせる卑怯なアニメ(笑)であった『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』(18年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20211121/p1)を彷彿とさせるが、垓の命令でジーペンを破壊しに来た唯亜と部下の隊員たちの前で、或人は漫画家が語っていた「ジーペンを漫画家としてデビューさせたい」という「夢」をジーペンに伝える。
 ジーペンが「描いてみたいです」という「意志」を或人に示したことで、あくまでもジーペンを破壊しようとする垓が変身した仮面ライダーサウザーと或人が変身した銀色のボディーの強化形態である仮面ライダーゼロワンメタルクラスタホッパーの飛電製作所前での戦いに、迅は仮面ライダー迅バーニングファルコンとして乱入する。しかし、それは或人が主張した「人もヒューマギアも夢を持つのは自由だ」に共感した迅が、


「おまえが云う夢ってヤツに、友達の未来をかけてみるのも悪くないかもしれない」


と心の変遷を遂げたゆえの行為だったのだ。

 
 全身が真っ赤に染まったバーニングファルコンの炎と全身が銀のクリスタルに包まれたメタルクラスタホッパーが放った水色の光弾が渾然一体となって仮面ライダーサウザーを倒すクライマックスでは、デカすぎるカタカナで表記された必殺ワザの名称が画面を覆(おお)い尽くしたためにスーツアクターの演技が見えづらくなるほどだった(笑)。
 だが、この演出は第30話の時点では正式には和解していなかった或人と迅が、ここに至って劇的に関係性が変化したことの象徴として機能しているかと思えるし、そこまで迅が心の変遷を遂げたのは、ヒューマギアに「自由」を与えると主張する迅同様に、或人もまたヒューマギアが夢を持つのを「自由」としたことに端を発するのでは? と解釈したくもなる。


 元祖『仮面ライダー』のオープニングナレーションで故・中江真司(なかえ・しんじ)の名調子により、


仮面ライダーは人間の自由のためにショッカーと戦うのだ!」


と語られていたように、決して「正義」や「平和」のためではなく、「自由」のために戦うとした或人と迅が共闘するに至ったのは、まさに仮面ライダーとして必然ではなかったか?


 そして迅ばかりではなく、『ゼロワン』第3部では「夢」「意志」をキーワードに主要キャラの人物相関図が絶え間なく激変する様相となり、最後の最後まで緊張感を持続させる展開となっていたのだ。


*「夢」を得て共闘に至った不破&亡!


「立場が変わっても、夢に向かって飛ぶだけです」


 第29話のラストで、或人は福添(ふくぞえ)副社長と黒ブチ眼鏡の腰ぎんちゃく・山下専務にそう云い残して飛電インテリジェンスを去っていった。第31話の冒頭ではイズがネット上で即座に設立した町工場のような、垓いわく「吹けば飛ぶような会社」(爆)である飛電製作所の社長に就任した或人は、社訓をどうするか思案した末に横書きの毛筆で「夢に向かって飛べ」と記した。


 周知のとおり、新型コロナウィルスの影響による製作スケジュールの変更で、『ゼロワン』は新作の放映が第35話『ヒューマギアはドンナ夢を見るか?』をもって一時中断された。しかし、先述したようにこれまで敵対関係にあった或人と迅が第31話で完全なる共闘関係へと転じたのを皮切りに、


・第32話『ワタシのプライド! 夢のランウェイ』では、第2部の中盤以降で描かれてきたように、仮面ライダーへの変身用として垓によって不破の脳に埋めこまれたチップ内に、かつてZAIAで兵器開発を担当していた性別のないヒューマギアで「滅亡迅雷.net」のメンバー・亡(なき)の人工知能が内蔵されていたために、垓の意志のままにあやつられて苦悩していた不破と亡も共闘関係へと至り、
・第33話『夢がソンナに大事なのか?』では、第1部で「滅亡迅雷.net」が全滅したかに見えたことで出向先の「A.I.M.S.」から本来の勤務先であるZAIAへと戻り、第2部では上司の垓が野望を実現させるための「道具」として酷使され、或人や不破にとっての敵キャラとして描かれるほどに立ち位置が激変していた唯阿が、不破との関係性を好転させた末に垓に辞表をたたきつけ(笑)、
・第34話『コレが滅(ほろび)の生きる道』&第35話では、第25話『ボクがヒューマギアを救う』で科学者型ヒューマギア・博士ボットが語っていたように、その個体のルーツが幼児教育用の父親型ヒューマギアだと或人に思い知らされた「滅亡迅雷.net」のリーダーで金髪にターバンを巻いた青年・滅=仮面ライダー滅(ホロビ)が、敵対関係はつづけながらも「ヒューマギアの未来を変える男かもしれないな……」とつぶやいたほどに或人に対する印象をやや好転させる、


などの主要キャラの関係性の変化が、「夢」をキーワードにファッションモデル型ヒューマギア・デルモ、テニスコーチ型ヒューマギア・ラブチャン、農婦型ヒューマギア・ミドリらゲスト扱いで登場したヒューマギアとカラめながら立てつづけに描かれて、それぞれのキャラをいっそう掘り下げていたのだ。


 第32話では垓にあやつられてデルモに銃を向けた仮面ライダーバルカンアサルトウルフ=不破を、迅は或人に「ボクを信じてくれ」と告げて連れだし、「滅亡迅雷.net」のアジトで不破の身体から亡を解放しようとする。
 不破の横顔を捉えた背景の壁に亡の影が映る描写が実に効果を高めていた。亡が自身の「意志」「夢」を持つこの回のクライマックス直前に至るまで、亡の語りに「シャーーーーーッ」という1970年代のまだ音質が悪かった時代のカセットテープの再生音につきまとっていたヒスノイズ(通称・シャーシャーノイズ)のような雑音がかぶせられて、その姿をモノクロ映像で映しだしていた演出もまた然(しか)りだ。


「夢がなんなのかわからない。だから代わりにヒューマギアの夢をかなえたい。誰かデルモの夢をかなえてあげて」


 或人・イズ・デルモらにヒューマギアが「夢」を持つのは「自由」だと諭(さと)された亡は、


「わたしはヒューマギア。でも、道具じゃない!」


と主張する。その瞬間、モノクロ映像で表現されていた亡が一転してカラーに、その声もヒスノイズがなくなって鮮明に聞こえるようになる演出も実にあざやかだ!


「オレにも聞こえた! 亡の声が!」


 不破の中に亡が存在する事実は、第2部終盤で小出しに明らかにされていった。そのために垓にあやつられた不破は


「オレは道具じゃない!」


と苦悩・葛藤(かっとう)をつづけ、自身から亡を追い出そうと必死になるさまが描かれた。


 だが、第29話であくまで「ZAIAをぶっつぶす!」との不破の主張に或人が


「その先にある不破さんの夢ってなんだ?」


と投げかけたのを契機に、それまで「夢」なんて考えたこともなかったハズの不破が以降は「夢」について語るようになったのだ。


 たがいに「道具」であることを拒絶し、「夢」を持つに至った不破と亡が、


不破「オレたちは!」
亡「道具じゃない!」


と双方からサウザーに殴りかかるさまを交互に捉えたり、銃型の変身アイテム・ショットライザーを宙にかかげる不破の描写に同じポーズの亡の姿を一瞬だけ挿入するアクション演出は、本編ドラマのクライマックスと絶妙に融合することで視聴者の感動を倍増させた!


 それにしても、血色のない蒼白な顔面で白いシャツにネクタイをして黒いロングコートをまとった一見は美少年のようなルックスであり、無感情で片言のような口調で話す亡を演じる役者に、あまりにイメージがピッタリな本業がファッションモデルの中山咲月(なかやま・さつき)が起用されたことは、『ゼロワン』にとっても実に幸運ではなかったか? ちなみに、1998年生まれの氏はアニメや変身ヒーロー作品を愛好しており、幼いころは『百獣戦隊ガオレンジャー』(01年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20011113/p1)のヒロイン・ガオホワイトではなくガオブルーになりたかったのだとか(笑)。


*強い「想い」で共闘関係へと戻った唯阿&不破!


「おまえら、夢夢夢夢うるさい!」


 第33話の唯阿の叫びには、「夢」を万能視することに内心では疑念も持っている筆者としては正直共感してしまったが(爆)、ゲスト主役のテニス少年に「夢」を持つことの重要性を語り聞かせる或人・不破・ラブチャンに唯阿が怒り心頭に達したのは、不破、そして亡すらも「夢」を持ち、「道具」から脱したにもかかわらず、自身がいまだ垓の「道具」として生きていることへの葛藤からだった。
 第31話で垓の命令に背(そむ)いてジーペンを破壊しなかった唯阿に、垓は机上のチェスをひっくり返して(笑)怒りまくった。このチェスも垓が社員は自身の野望を実現させるためのコマにすぎないと考えている象徴演出なのだろう。


「君の12年前の記憶、あれはすべてウソの記憶だ」(!!)


 『ゼロワン』序盤で語られた12年前のヒューマギア運用実験都市で起きた謎の爆発事故=「デイブレイク」で暴走したヒューマギアに中学生当時に同級生をすべて殺害されたがために、第1部で毎回「ヒューマギアをぶっつぶす!」と叫ぶに至らせた不破の動機となる過去が、実は不破にヒューマギアに対する憎悪(ぞうお)を抱かせるために垓が仕組んだ偽(いつわ)りの記憶だったと第33話で明かされる。


「あんたはテクノロジーで人の夢をもてあそんだ。わたしは、わたしはあんたを絶対に許さない!」


 自身が「道具」として酷使されること以上に、「テクノロジーは人に寄り添ってこそ意味がある」とする自身の技術者としての信念から垓を許せなくなったと唯阿は垓に主張する。しかし、それもまた一面であり、心の片隅ではこれまでの自身の行動の動機がすべてウソだったと明かされて茫然自失となった不破に対して、「女」としての個人的感情が揺り動かされた面もあったのではあるまいか?
 近年の仮面ライダーではレギュラーキャラ同士の明確な恋愛関係が描かれることがめっきり少なくなっている印象が強い。まぁマニア側でも男性キャラ同士のBL(ボーイズ・ラブ)関係や女性キャラ同士の百合(ゆり)関係描写の方に萌(も)える方向性での受容のされ方が増大してきた21世紀以降のジャンル作品では、男女の恋愛関係描写はよけいな夾雑物(きょうざつぶつ)にもなりかねないものなのかもしれず、そうした描写を意図的に避けているのかもしれない。むろん「子供番組」である以上は恋愛感情ばかりを行動原理にされても困るけど(爆)、各作の終盤くらいはヒーローやヒロインが「公」のためではなく「私」のために戦う姿を描くのも個人的にはアリかと思っている。


 唯阿に心の変遷を生じさせる契機となった不破による


「想いはテクノロジーを超えるんだよ!」


というセリフは、不器用な不破の口説き文句として機能しているようにも思える。


 自身に対してではなく、垓の不破に対する扱いを動機として垓に反乱を起こした唯阿と、今のオレには仮面ライダーという「夢」があるから過去の記憶なんかどうでもいい! と、実にあっけなく立ち直った不破が(笑)、『ゼロワン』序盤の第1部以来の共闘関係へと修復を見せる!
 久々に唯阿が変身した仮面ライダーバルキリーは垓が変身したサウザーへの銃撃やサウザーの剣さばきを伸びやかな宙返りで逃れたり、キックから反転してしなやかなバック宙返りの果てに着地する描写などにワイヤーアクションが多用されている。これはアクションのカッコよさやバルキリーの強さを描くことだけではなく、唯阿が垓の「道具」から解放されてようやく自分自身の想いで自律的に動くことを選択した「自由」の象徴としても演出されているのだろう。
 ハチをモチーフにした黄色と青が目立つデザインの仮面ライダーバルキリーライトニングホーネットの主観で宙から俯瞰(ふかん)して地上のサウザーを捉える描写もまた然りであり、青と水色を基調とした仮面ライダーランペイジバルカンに変身する不破のショットライザーから放たれた10種ものカラフルな動物たちのイメージがそこに描かれることで、唯阿と不破の関係性の好転が華々(はなばな)しく演出されていた。
 仮面ライダーバルキリースーツアクターは、『仮面ライダーウィザード』(12年)の仮面ライダーメイジや『仮面ライダー鎧武』の仮面ライダーマリカなどで、その細身を活かして女性ライダーを演じてきた「女形(めがた)スーツアクター」の中堅・藤田慧(ふじた・さとし)。


 これとは対照的にラストで


「これがわたしの辞表だ!」


と、唯阿が垓の顔面にパンチをくらわす場面はデカい夕日を背景に両者がシルエットで描写される1970年代の青春学園ドラマを彷彿とさせる演出だったが(笑)、唯阿が垓を殴る寸前に放り投げたショットライザーを不破がガッチリとキャッチする描写こそ、ふたりの関係性の好転を絶妙に表現した演出だ。
 それにしても、垓へのグーパンチの映像に「これがわたしの」という文字がデカデカとL字型にタイプライターの荒々しい打鍵音(だけんおん)とともに表記される演出は、それが本作における仮面ライダーたちと同等の唯阿の「必殺ワザ」であることを端的に示したものだろう(爆)。


*自身の「意志」に気づかせた或人に対して滅は……


 さて、第34話では「滅亡迅雷.net」の完全復活をたくらむ滅が、第1部でごく短い時期に登場していたメンバーの雷(いかづち)=仮面ライダー雷(イカヅチ)のデータを或人から得るために人質としていたゲストヒューマギアのミドリを「人間に汚(けが)されたヒューマギアは廃棄する」と破壊したために、


「滅、おまえを倒すしかない」


と決意した或人と滅のガチンコ対決が描かれた。


 滅の出自が父親型ヒューマギアだと説得する或人に、滅は


「過去に興味はない」


と返した。これは「夢」があるから「過去」なんかどうでもいいと前向きな主張をした不破と対比させることで、「過去」に興味がないとする滅をむしろ後ろ向きなキャラとして描いたものだろう。


 そこに乱入した仮面ライダー迅バーニングファルコンが変身を解除された或人から雷のデータを奪って、


「ヒューマギアを解放するんじゃなかったのかよ!?」


と動揺する或人でこの回は幕となる。ここで迅の真意を明かさずに再度迅が裏切ったかのように見せてしまう作劇こそ、立ち位置シャッフル群像劇の極(きわ)みというものだろう。


 第35話冒頭の「滅亡迅雷.net」のアジト近くのダムでの戦いではゼロワン=或人の相手が迅へと移行する。そして、迅に向けたゼロワンによる必殺のライダーキックの前に滅が立ちはだかって、迅の盾(たて)となってみせる!


「オレはなぜ今、動いた!?」


 前回ではいったんは滅を「倒すしかない」と決意していた或人が、この滅のとっさの行動を目にしたことで滅の中に「父親」としての記憶が眠っているのを確信して再度の説得へと向かうさまは、レギュラー悪に対して正義側が常に話し合いに努めてきた平成仮面ライダーシリーズの立派な継承であり、「絶対悪」を描きにくい時代ならではの作劇でもあるだろう。
 その再度の説得にあたって、「滅亡迅雷.net」壊滅のために大軍を率(ひき)いてきた垓が変身した仮面ライダーサウザー仮面ライダー滅に向けたキックの前にゼロワン=或人が立ちはだかって盾となり、滅と同じ行動を示して、自身の想いを体現してみせる描写も実に効果を高めていた!
 人工知能・アークの「意志」に沿っていたのではなく、おまえは迅の父親であることを願っている「心」を持っているのだと滅を諭した或人は、サウザーが差し向けた数体の巨大ロボット型兵士にゼロワンに変身して立ち向かい、その巨体に踏みつぶされても全然平気(爆)なデタラメな強さを見せていた。これまでも周囲の人間たちに多大なる影響を与えて、彼らに心の変遷や関係性の変化を生じさせてきた或人のまさに主人公にふさわしい無敵の「人間力」を端的に表現している誇張描写(笑)だともいえるだろう。


 なお、この第35話では不破の本当の過去=失われた記憶を取り戻すために、唯阿によって不破の脳内チップ内から遂に解放された亡が負傷した不破の病室に現れて、唯阿と不破にその過去の真実を真顔で語り聞かせるが、


唯阿「驚いたな…… 何も、ない」
亡「ええ、フツーでつまらん人生です」(爆)


と、『ゼロワン』史上最大のギャグをかまして(笑)、緊張感が連続する第3部の絶好の潤滑油(じゅんかつゆ)となり得ていた。しかも、亡は相変わらずの無表情と感情のこもらない口調で


「不破のふとんが、フワッと吹っ飛んだ」


とやらかして、「ダブルじゃないか!?」と不破だけを狂喜させていたが(笑)、「はっぴを着れば気分はハッピー!」「おいしいレタスがとれたっす!」などという或人のギャグが不破の笑いのツボにハマる動機すらもが高いドラマ性をもって描かれることとなったのだった。


*或人の「夢」を主要キャラに共感させた新キャラ!


 さて、第35話ラストで雷が復活を果たしたことで「滅亡迅雷.net」が勢揃いし、遂に悪の人工知能・アークが本格的に起動して人類滅亡を高らかに宣言した。
 多数のトゲ状のギザギザに包まれた黒い球体として現れたアークは、先述した『仮面ライダービルド』のエボルト同様にさまざまなキャラに憑依(ひょうい)して、全身が黒色でアークの赤いコア部分がそのまま左目となったデザインである仮面ライダーアークゼロとしても実体化して、ゼロワンらを圧倒する!
 このアークゼロのスーツアクターは、『仮面ライダーアギト』(01年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20011108/p1)から前作『仮面ライダージオウ』に至るまでのほとんどの1号ライダーを演じつづけて、改元とともに『ゼロワン』でその座を縄田雄哉(なわた・ゆうや)に譲った高岩成二(たかいわ・せいじ)が務めている。アークは滅に憑依することが圧倒的に多いために、すでに仮面ライダー滅を演じてきた高岩がアークゼロを兼任するのがやはり適任だろう。


 ただ、ここで注目したいのは、人工知能の「負」の側面を象徴するアークと対照的な存在として、


「今のオレだから、つくれるヒューマギアがあるんじゃないか?」


と考えた或人の依頼で科学者型ヒューマギア・博士ボットが製作した、人型ではなく手のひらサイズの安っぽい白い立方体の形をしただけの、人間との会話ができるグーグル・スピーカーのような人工知能・アイちゃん――「AI」のローマ字読み(笑)――が登場する。


・第36話『ワタシがアークで仮面ライダー』で不破、
・第37話『ソレはダレにも止められない』で唯阿、
・第38話『ボクは1000%キミの友だち』で垓


 彼ら3人の主要キャラとも、『海賊戦隊ゴーカイジャー』(11年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20111107/p1)のゴーカイイエローを演じた市道真央(いちみち・まお)こと現在では人気声優でもあるM・A・O(まお)が声を当てているアイちゃんは、かつて人工知能やヒューマギアを敵視していたキャラたちのお話相手となることで心境の変化を生じさせ、或人の「夢」である人間とヒューマギアが共存する未来・可能性を肯定(こうてい)させるに至ったことだ。


 垓に偽りの記憶を植えつけられたためにすでに家族は皆亡くなっていると思いこんでいた不破は、亡によって家族が実は生存していることを知って、それを確かめに行くべきか散々迷った末にアイちゃんの助言で新興住宅街にある実家を訪れて、遠巻きに家族の様子を見つめる。ふとんを勝手に干したと母親に文句をつける弟に、父親は


「ふとんだけに、ふっとばすぞ!」


などとオヤジギャグをかましている。あまりにフツーな日常の中で繰りだされる、そんなつまらないギャグこそが不破の笑いのツボの原点だったと示したうえで、


「つまらないほどフツーで、安心した……」


と不破がつぶやく描写には、新型コロナウィルスの影響で「フツーの日常」が失われている世界の惨状の中では、視聴者の心に重く響いたのではあるまいか?


「あのAI、悪くないな」


 或人にそう語った不破が、すぐさま唯阿に対して、


「今のおまえに、必要なともだちだ」


などと、アイちゃんを貸し与える描写が、彼個人のAIに対する見解と、唯阿とのさらなる関係性の好転ぶりをも、一言のセリフのみにて象徴させていた。


 また、第36話では第34話で迅が或人から雷のデータを奪った真意が明かされる。その所在は宇宙を周回している人工衛星でもあるアークを破壊するには、その実体データを地上へとおびきだす必要があり、そのために亡と雷を解放して「滅亡迅雷.net」を復活させるのだ! と迅は唯阿に協力を求めていた。そして、その結果として仮面ライダーの力でも到底およばないほどの強敵としてアークを復活させてしまった罪悪感に唯阿はさいなまれていたのだ。そして、第37話では垓の「道具」に成り下がっていた当時の自身の行為を不破に謝罪したいとする意志をアイちゃんに看破されてしまった唯阿は、


「申し訳なかった……、とアイちゃんが云えと云っていた」


と遂に詫びの言葉を口にする。このあまりに「素直じゃないコ」ぶりはマニア諸兄と同様に実にカワイイと思えるところだ(笑)。


 ただ、ZAIAの一員ではなくなった唯阿のことをいまだに「隊長」として慕(した)っている「A.I.M.S.」隊員たちの姿を見て、


「見つかったんじゃねえか。おまえの居場所……」


と不破が語ったのは、唯阿の想いが充分に伝わった証であるのと同時に、不破もまた唯阿の人徳を認めてみせたことの証だともいえるだろう。


*飛電家の「夢」を実現させるために!


 そして、実に秀逸(しゅういつ)だったと思えることが、これまで人工知能に対して良い印象を持たなかった不破と唯阿の意識が好転する一方で、当の或人がアークのあまりの強敵ぶりに、人間を超えたAIの力を「怖(こわ)い」として一時的に不信感を抱いてしまう、いわば変化球としての精神面での立ち位置シャッフルが描かれたことだ。
 そんな或人を奮起させるに至るのが、第1部……特に序盤で或人を社長の座から引きずりおろそうと画策するさまが描かれた飛電インテリジェンスの福添副社長と山下専務であるほどに、『ゼロワン』では徹底して立ち位置シャッフルが繰り返されてきた。


 第3クールでは唯阿がライダーではなくファイティングジャッカルや「A.I.M.S.」隊員たちがバトルレイダーに変身するために用いていた、暴走したヒューマギアとの戦闘が可能となる変身ベルト・レイドライザー。それを一般市民向けにも販売するためのデモンストレーション・やらせを垓社長は画策するのだ。それは第2部「サウザー編」でのZAIAによる「ヒューマギア不要論」の体現でもあった片耳イヤホン&メガネ型のメカを着用した人間たちには「人工知能」と同等の思考能力を与える次世代インターフェイス「ZAIAスペック」の悪用であった。これを一時的に暴走させてやることで、装着者の一般市民を秘かに暴走させようというのだ。あまりにも非倫理的な命令を下しはじめた垓社長に対して「それはいくらなんでも人倫的にヒドすぎる……」とばかりに業を煮やした福添副社長と山下専務は、今度は垓を失脚させて或人を飛電インテリジェンス社長に戻すために零細新会社・飛電製作所を訪れる。


「飛電或人くん、キミがヒューマギアを信じないでどうするんだ!?」


 「夢に向かって飛べ」という社訓をはさんで向き合う或人と福添の描写は、「或人の祖父・飛電是之助(ひでん・これのすけ)はヒューマギアの開発者」、「或人の父・飛電其雄(ひでん・それお)はヒューマギア」であり、そんな飛電家の人々から自分は人工知能の未来、そしてヒューマギアの可能性を教わってきたという福添の主張、そして12年前の「デイブレイク」で或人を守って亡くなった其雄の姿や


「私は信じている! ヒューマギアの可能性を!」


と語ってみせていた是之助の回想シーンとともに、或人がついに立ち直るに至ってみせる演出としては絶大なる効果があった。


 「ありがとうございます!」と90度の角度で(!)頭を下げたほどに、福添の言葉は或人の心を大きく揺り動かすこととなった。福添を演じた児嶋一哉(こじま・かずや)はお笑いコンビ・アンジャッシュの活動で広く知られ、『ゼロワン』でもコメディリリーフ的に起用されてはいたが、氏の演技は今回のようなシリアスな場面でこそがぜん威力を発揮していた。


 むしろ、「ZAIAにあいさつをしてこい」とアークに命じられた亡が地下駐車場で仮面ライダー亡(ナキ)に初変身を遂げて、その両腕の鋭く長いツメによって衣服をバラバラに切り裂かれてしまった垓がパンツ一丁になってしまう描写の方が、よほどコメディリリーフでコント的だったりもする(爆)――むろんコレくらいにコミカルに描いて「現実度」を下げないと、垓が味方側に寝返ったストーリー展開に対して視聴者側でもムリを感じてしまうだろうから、その違和感を緩和するための演出でもあった――。


 なお、全身が銀色の装甲に包まれた仮面ライダー亡は、『電撃戦隊チェンジマン』(85年)のピンクの戦士・チェンジフェニックスから『特命戦隊ゴーバスターズ』(12年)のイエローバスターに至る戦隊ヒロインや、『獣電戦隊キョウリュウジャー』(13年)のキャンデリラ、『烈車戦隊トッキュウジャー』(14年)のノア婦人などの悪の女幹部を多数演じてきた「女形スーツアクター」の大ベテラン・蜂須賀祐一(はちすか・ゆういち)が務めており、性別のない亡を演じるにはこれ以上の適役はないだろう!


「おれはおまえが怖(こわ)い。だけど、逃げない!」


 残念ながらこの回でもゼロワンの力は仮面ライダーアークゼロにおよばなかったが、大地に倒れ伏した或人の主観からアオリでアークゼロを捉えたカットが、その圧倒的な力の差を端的に表現した演出だった。


 ただこの回では、アークゼロよりも揃い踏みした「滅亡迅雷.net」の4人が横並びでいっせいに変身を遂げる、実にカッコいい描写の方にマニア諸氏も興奮したことだろう。それだけこの一斉変身に至るまでの彼らの背景にドラマ性があふれる紆余曲折の変転を与えてきたことも大きいからだ。


*見よ! 垓=サウザーの「大変身」!


 垓の解任動議のために福添は副社長の秘書だったヒューマギア・シエスタの復活を或人に依頼。シエスタは垓の汚職や悪事に関する膨大なデータをヒットさせるが――山下専務によれば垓は会社のカネをエステやヘアサロン、岩盤浴(がんばんよく)など自身の美容のために使いこんでいたという(笑)――、垓は第38話でそれらをすべて消去してしまい、或人たちの前で文字通りに社長のイスにしがみついてしまって離れない(爆)。


「なんでそこまでこだわるんだよ。本当は飛電のことが好きなんじゃないか?」


 垓は自分を解任しようとする福添らを、社内に自身が設けた秘密通路でサウザーに変身して襲いかかってきた!――イズいわく「変身による暴行は重大なパワハラ行為」……ってパワハラどころじゃないだろう!(笑)―― メタルクラスタホッパーに変身した或人が彼らを守るが、そのはずみで或人の胸ポケットからアイちゃんが転がり落ちてしまう。


 一同が去ってひとりになった垓にアイちゃんが話しかけたことで、最初は「友達など必要ない!」と拒絶していた垓の口から、35年前の10歳当時の過去が語られる。


「甘えず、頼らず、おのれ自身の力で!」


 少年のころの垓にそう云い聞かせていた厳格な父親はテストで100点をとった垓に、「100点で満足せず『1000点』をとれる男になれ!」などと諭していた。この当時に垓が「サウザー」と名づけて常に遊んでいたのが、飛電インテリジェンスがヒューマギア以前に開発した人工知能を持つ犬型ロボットだった――劇中ではソニーが99年に発売した初代ロボット犬・AIBO(アイボ)がこれを演じている! そして、仮面ライダーサウザーのネーミングの由来も少年期に可愛がった犬型ロボットの名前であったことが明かされることで、彼の根の善良さまでもが示唆される!――。しかし、垓がテストで99点をとった際、父親は「そんなもんにうつつをぬかしているからだ!」と激怒して、垓は「もう誰の助けもいらない」とばかりにサウザーを手放すことにしたのだった……


 ちなみに、垓の父親を演じたのは加藤厚成(かとう・こうせい)。『ウルトラマンネクサス』(04年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20041108/p1)の防衛組織・ナイトレイダーの石堀隊員=その正体はラスボスキャラ・ダークザギ、『ウルトラマンメビウス』(06年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070506/p1)でも主人公のヒビノ・ミライ青年の正体がウルトラマンメビウスだと知って彼を恫喝(どうかつ)してくるトップ屋・ヒルカワ、『ウルトラギャラクシー大怪獣バトル NEVER ENDING ODYSSEY(ネバー・エンディング・オデッセイ)』(08年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100312/p1)の策略宇宙人ペダン星人・ダイルなど、平成ウルトラマンシリーズではどうしようもない性悪(しょうわる)なキャラばかり演じてきたので、まさに垓の父親役には適任だった(爆)。
 先述した『仮面ライダーエグゼイド』の檀正宗&黎斗の親子関係を彷彿とするほどに、非人道的な経営方針で飛電インテリジェンスを私物化することとなった垓の出自でも描かれたように、大森敬仁チーフプロデューサーが一貫して敵キャラの中に「父性」を描いてきた理由が、後述するが『ゼロワン』の終盤で明らかにされたかと思えるのだ。


 ただ、垓が変身ベルト・レイドライザーの大量生産を命じた際には反応しなかった人工衛星ゼアが、垓がアイちゃんに心情を吐露(とろ)するや、垓が少年のころに遊んだのと同様の犬型ロボットの最新型を社長室隣接の工房の3Dプリンターで構築し――これまたソニーの最新型AIBOなのだが、初代からは格段に進歩したルックスや細かい仕草が実に愛くるしい!――、それを抱きしめた垓が


「こんな私なのに、そばにいてくれて……」


と涙する描写(!)は先述した出自も含めてベタではあるけれど、特に我々オタクたちのような(ひとり)ボッチな淋しい視聴者であれば(爆)、おおに感情移入せずにはいられない描写だっただろう。


 迅に憑依したアークが仮面ライダーアークゼロとなってZAIAの宇宙開発センターを襲撃してくる! 或人は第1部以来、かなり久々に黒地に蛍光イエローのゼロワンと同じ塗装のバイク・ライズホッパーを疾走させて、そのまま変身ベルト・ゼロワンドライバーにプログライズキーをセットし、ライズホッパーの周囲を駆けてくる巨大な黄色いCG表現によるデジタルデータのバッタが或人に合体して変身! その絶妙なタイミングで主題歌も流れだす!
 道路使用許可上の問題や予算などの理由で近年の仮面ライダーではバイク使用場面が激減しているが、むしろ「ここぞ!」という場面で限定して描かれるからこそ、そのインパクトが高くなることもあるだろう! ライズホッパーと合わせるかたちで基本形態のライジングホッパーとなったゼロワンが、ウィリー走行でアークゼロに突撃していくさまは最高にカッコいい!


 だが、やはりアークゼロは強敵であり、変身が解除された或人をアークゼロの火球攻撃が襲う! しかし、それを長剣ではじき返したのは……
 『ゼロワン』でも数多く描かれてきた立ち位置シャッフルの中でも、垓=サウザーの味方化は実に劇的に描かれた! 或人がすでに看破していたように、垓が或人とヒューマギアのことを許せなかったのは飛電インテリジェンスを愛していたゆえだと語ったのだ!


「アークを倒すぞ! 我々ふたりの手で!」


 垓の叫びを合図に、第39話『ソノ結論、予測不能』の冒頭で遂に或人と垓は共闘へと至った! 立体駐車場でのメタルクラスタホッパー&サウザー VS アークゼロの場面では第38話のクライマックス同様に主題歌が流れる一方で――その直前に画面を斜め2分割にして両者の目が光るカットを挿入する演出が実にイイ!――、衛星ゼアに構築された犬型ロボットが変身時やバトルの最中にゼロワンとサウザーの周囲で祝福して動きまわっているかのようなコミカルな合成演出がある。
 第38話&第39話を担当した作野良輔監督は、『仮面ライダービルド』の終盤(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20181030/p1)でも監督として数本クレジットされていたが、ともに坂本浩一監督作品である『4週連続スペシャル スーパー戦隊最強バトル!!』(19年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190406/p1)や総集編番組『ウルトラマンゼロ ザ クロニクル』(17年)の枠内で放映された短編『ウルトラファイトオーブ』(17年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20170603/p1)では助監督を務めていた。主人公がバイクを走らせたままで変身したり、バトル場面で主題歌を積極的に流したり、マスコットキャラをクライマックスで効果的に活かすなどの演出はまさに坂本監督の技法を継承しているようでもあり、氏の今後に期待したい。


*凶悪な敵を「ネタキャラ」として描いた責任として!?


 先述したように敵キャラが主人公側の仮面ライダーへと転じるのは、近年ではもはや恒例(こうれい)行事といっても過言ではない。ただ、『仮面ライダーエグゼイド』の中盤以降に味方化した檀黎斗=仮面ライダーゲンムの場合、それまでの彼の行動で主要キャラが心身ともに傷つけられ、多くの犠牲が出たハズなのに、


「謝罪せねばならないことをした覚えはない」(!)


などと黎斗はおもいっきり開き直って、そのネタキャラぶりに拍車がかかるばかりだった(爆)。個人的には黎斗はそれでもよかったと思っているが(笑)、やはりいかに漫画的・コミカルに演出されようとも倫理的にそれはどうなのか? などという批判も相応にあったのだろうが、黎斗に比べると改心した垓に対する周囲の見方はかなり厳しいものとして描かれてもいた。


 これまでの行為を謝罪すると頭を下げた垓に、イズは最敬礼の角度は90度だと指摘。基本は人が良さそうな当の或人までもが


「謝って済む問題じゃない」(!)


として、垓がアークに人間の悪意をラーニングさせた件や不破と刃の人生を左右した責任を激しく追求する。そして、或人は今後の行動で誠意を示せと垓を諭す。これに対して、垓が「1000%」の誠意を示す! と語ったほどに、長らく自身の動機ともなってきた大袈裟で軽薄にも聞こえてくる「指針」がいまだに口癖となって出てくるので、「自分を変えようと思ったら、まずその『1000%』をやめれば?」などと或人が指摘するのも含めて、ある意味では近作のライダーシリーズの中ではリアル寄りに深刻に描かれてもいる。


 また、垓は不破と唯阿を飛電インテリジェンスに呼びつける。そして、ロボット犬のサウザーとともに土下座する(笑)。しかし、唯阿は垓が不破の人生を破壊した責任をなじり、不破は元々は内閣直属であった「A.I.M.S.」を「ZAIA」の配下から独立させるように垓に要求する。
 不破も唯阿も自分に対してではなく、パートナーである不破や唯阿に対する謝罪を垓に要求してみせているのが、やはりその関係性が好転した証ともなっていた。


*或人の「夢」の具現化=仮面ライダーゼロツー誕生!


「その結論は予測済みだ!」


 常に相手の行動を先読みすることで連戦連勝する仮面ライダーアークゼロの攻略のために、或人はアークの予想を超えるための研究に没頭。その成果として第40話『オレとワタシの夢に向かって』では、最終フォームとなる仮面ライダーゼロツーが誕生する!
 この回は、かの京都アニメーション出世作となった学園SFアニメ『涼宮(すずみや)ハルヒの憂鬱(ゆううつ)』(第1期・06年 第2期・09年)の第2期で、8週にも渡って作画は異なるものの同じストーリーを繰り返したことで当時おおいに物議を醸(かも)した――個人的にも正直「ふざけんな!」と思った(爆)――第12話~第19話『エンドレスエイト』編を彷彿とさせるように、或人がイズに施(ほどこ)した何十億通りもの予測シュミレーションのホンの一部=似たような仮想映像が、さも現実世界で起きている出来事であるかのようにつづけて流されてもいた。
 その真相を明かさずに或人・不破・唯阿・垓がアークゼロの発砲でホントに死亡したかのように見せてしまう詐欺(さぎ)的な演出(爆)も実に絶品だった。そして、第15話『ソレゾレの終わり』・第24話『ワタシたちの番です』・第30話『やっぱりオレが社長で仮面ライダー』などでも、ゼロワンの強化フォームや新たな武器の誕生・逆転勝利が或人とイズの関係性の深化の象徴としても描かれてきたように、ゼロツーが誕生する描写もまたこれに準じるものだったのだ。


 シミュレーションであることはわかっているハズなのに、ご主人さまともいえる死亡してしまった或人社長にすがって「指示をください」と涙を流してホンキで傷ついてしまう健気なイズの描写。それは先述した第31話に登場したヒューマギア・ジーペン以上に先の『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』の主人公少女をも彷彿とさせるものだ。しかし、イズのシミュレーション上の存在でしかないハズである迅がその涙をも「動力部の冷却水漏(も)れか?」(爆)などとシニカルに解釈しているのは、味方化したとはいえ迅にはまだ人間と同等の心が完全に宿ってはいないことをイズ自身がそう推論して、イズ自身もこのシミュレーションで傷つきながらもコレを心の半分ではきちんと仮想体験だと認識していることを端的に示してもいる描写に仕上がっていた。


「もっとあなたの夢を追いかけていたい……」


 それは異性への「愛情」にも近い感情の発現である。或人が「オレの集大成」として立案した「人と人工知能がひとつになる仮面ライダー」の企画書の中の「シンギュラリティ」の文字の上にイズの「涙」が落下した瞬間、つまり今までになかった感情がイズに芽生(めば)える。そして、その心に反応した衛星ゼアが起動して、イズの左耳のモジュールの中からゼロツープログライズキーが誕生する!


 「シンギュラリティ」=「技術的特異点」とは、自己をフィードバックすることで改良・高度化した人工知能自身が、人類に代わって文明の進歩の主役となる「時点」のことを指し示す「未来学」の概念でもある。実際、人類に取って代わって主役となろうとする「滅亡迅雷.net」のメンバーがこの「シンギュラリティ」到達をめざそうとするさまが本作では延々と描かれてきた。
 あくまで人類とともに歩むことを願うイズは、人工知能が人類にとって代わろうとする野望の拒絶、そして人間=或人への愛情をも意味する「涙」を流してみせたことで、「人と人工知能がひとつになる仮面ライダー」=仮面ライダーゼロツーの変身アイテムが誕生するのだという描写は、非リアルなのかもしれないがドラマチックではあるだろう!


「じいちゃん、父さん、飛んでみせるよ……」


 ゼロツープログライズキーを感慨深く見つめる或人とイズが笑顔で手を取り合い、その手の中に変身ベルト・ゼロツードライバーが誕生する描写では、或人が記した「企画書」を背景映像にしてみせているのもまた然りだろう!


「これがオレの夢の証。人と人工知能がともに歩んでいく証だ!」


 ゼロツーの変身では、ドライバーから赤い「02」の文字が浮かび上がり、宙から俯瞰して捉えられた或人には衛星ゼアのイメージがかぶせられて、黄色と赤の2匹の巨大なバッタが或人を包みこむようにして合体する!


 近年の仮面ライダーの最終フォームといえばもうデコレーションのてんこ盛り(笑)というくらいに全身がゴテゴテと装飾されていた。しかし、ゼロツーはゼロワンの両手を赤くして首下に赤いマフラー状のパーツを付けただけという一見手抜きのようなデザインである。それに加えて、話数短縮の影響もあったのかもしれないが、後述するとおり或人は終盤では闇落ちしてまた別の悪のライダーに変身してしまうことになるために、実質的にはゼロツーが活躍するのはわずか数回だけにとどまってしまっていた。
 ただ、ゼロツーがゼロワンとほぼ同じデザインで手袋が赤なのは、昭和の仮面ライダー1号と仮面ライダー2号(通称・新2号)を今の世に再現して筆者のような古い世代を喜ばせようとしたのが最大の理由であるだろう(爆)。


*或人&滅、ついに共闘! だが……


 第41話『ナンジ、隣人と手をとれ!』では、人工衛星アークにハッキングされた人工衛星ゼアの攻撃で各地の都市が無差別に爆撃される。しかし、そもそもアークの意志に従い、アークの本格復活を目指してきた「滅亡迅雷.net」のメンバーに対して、アークはなんの指令も出さなかった……


雷「なぜアークは指示をしない!?」
亡「アークはひとりで人類を滅ぼす気では? わたしたちはなんのために存在するのですか?」
滅「アークはゼロツーの出現でプランを変更しただけだ。いずれ我らを導く」
迅「違う! アークを信じちゃダメだ!」


 同じ「滅亡迅雷.net」のメンバー間でもアークに対する想いがこれだけ違うのだ。これこそ「群像劇」として描かれる仮面ライダーの魅力を端的に象徴するものだろう。


迅「ボクたちは自由であるべきだ」
亡「自由の先に、何があるというんですか?」
迅「夢を持つんだよ。自分の意志で生きるんだ!」
滅「黙れ! アークの意志にさからうものは廃棄する!」


 アジト内で激しく対立した滅と迅は変身して戦うこととなる。両者がたがいに背を向けて変身する描写がふたりの間に埋まらない溝(みぞ)が存在することを実に的確に演出してみせる!


「ボクを滅ぼすんだ? それはアークの意志なのか? 滅自身の意志なのか?」


 迅の問いに答えずに、静かに去っていく仮面ライダー滅の背中には、すでに滅の心の中に芽生えつつあった「迷い」も語られていたかのように、背中での演技や演出もできているのだ……


 人工知能が人類を滅亡させようとする緊急事態に、垓が会社の幹部たちを召集して開いた会議の席上にて垓は辞任を宣言し、次期社長として或人を指名する。


「今、世界中の人たちが、かつて経験したことのない困難に直面しています! これを乗り越えるためには、人とヒューマギアが協力するしかない! もう一度信じてもらえませんか!? ヒューマギアの心を!」


 第41話が放映された2020年8月2日(日)当時、日本では新型コロナウィルス感染の第2波が到来して、特に首都圏で感染者が激増。盆休みを前に県外への移動自粛が広く呼びかけられていた状況とも奇しくもマッチして、この或人の主張はある種の説得力を帯びて視聴者に届いたことかもしれない。


「いつか笑いあえる日が来ると確信しています!」


 新社長に就任した或人が人とヒューマギアの一致団結を呼びかける会見を各地で目にする滅・亡・迅・雷の姿は、アークに対する不信感から自身の存在を問い直して、心の変遷が生じるに至る心理描写として実に効果的に機能していた。


 医療・警察・消防などが崩壊した現場にはそれまでのシリーズにゲスト出演してきた、


土建屋型ヒューマギア・最強匠(さいきょう・たくみ)親方5人衆
・医師型ヒューマギア・Dr.(ドクター)オミゴト
・消防士型ヒューマギア・119之助(いちいちきゅうのすけ)


 彼らが集結してくるさまはまさにレジェンド仮面ライダー大集合に匹敵するほどのカタルシスが感じられたものである。現実問題としても新型コロナウィルスに感染する心配がないAIであれば、彼らを現場に投入していく動きは「新しい生活様式」の一環として中長期的には加速化していくだろうし、人と人型ロボットが共存する未来というものもそう遠いものではないのかもしれない。


亡「わたしたちはなんのために存在するのですか?」
不破「おまえはもうわかっているハズだ」


 亡が不破のもとに現れ、そして元々宇宙野郎・雷電として衛星ゼアのメンテナンス要員を務めていた雷(いかづち)が弟の宇宙野郎・昴(すばる)の前に現れるさまは、すでに亡と雷の心がアークから離れていたのを象徴する描写だ。これと併せて、幼児たちとお遊戯(ゆうぎ)をしている保育士型ヒューマギアに弓矢を向けていた滅が、第35話で滅が迅を助けた動機を


「おまえが迅の父親になりたかったからだ!」


と看破した或人を回想したことで、弓矢を降ろしてみせる描写が、滅もまた亡や雷と同じ心境に達していることをも端的に表してもいた。


迅「なぜボクを助けたの? それが滅自身の意志だったんじゃない?」
滅「違う! オレは……」


 再度、迅に自身を殺害せずに助命した理由を問われてしまった滅が迅と視線を合わせられない描写には、もう視聴者の感情移入を一気にかっさらう盛り上がりを見せている。


 そこに今まではなんの命令も与えてこなかったアークが現れ、新たな結論として用済みとなったヒューマギアをすべて滅ぼすのが私の意志だと告げる! アークに憑依されて迅を襲う滅に或人が呼びかけたことで、これまでの回想をフラッシュバックさせた滅は


「オレの、意志?」


と、アークが憑依する際に描かれる「滅」「亡」「迅」「雷」の赤い文字状の泡に包まれる中で、仮面ライダーアークゼロに鉄拳をくらわす!


「ヒューマギアこそ、この星の主。それがオレの意志だ!」


 人工知能・アークに憑依されてアークゼロと化した迅を助けるために、廃工場内にて或人と滅がダブル変身!――昭和の時代から仮面ライダーの変身カットでは変身者をアップで捉えることが長くつづいたが、近年ではたとえば『仮面ライダービルド』ではプラモデルのランナー状の物体から切り離された数々のパーツが装着されたり、『仮面ライダージオウ』では背景に巨大な時計の文字盤が描かれるなど、さまざまな特殊効果を加えるためにロング(引き)で捉えることが主流となりつつあるようだ――


 今回の変身場面では或人には黄色と赤の巨大なバッタ、滅には黒の巨大なサソリが合体するためになおさら効果的になるのだが、今回のようにキャラ同士の大きな関係性の変化が生じるエピソードの場合には、そのドラマ性を高めるためにも変身カットやバトル場面はワザとらしいくらいに極力派手にシンボリックに演出するべきだろう。
 或人が変身した仮面ライダーゼロツーの必殺ワザ「ゼロツービッグバン!」は、画面右手からゼロツーがアークゼロにかましたキックの勢いが画面左手へとアークゼロを押しつづけるさまが、カメラを横移動しながらスローで表現されており、それこそ「ゼロツーインパクト!」が絶大に見えてくる演出だった。


 これと並行して


昴「今だ、兄さん!」
雷「あばよ、アーク!」


と、宇宙兄弟がアークに支配された衛星ゼアを破壊したことでアークは滅んだ。そして、「滅亡迅雷.net」のメンバーも完全に味方となったかのように描かれた。


「おまえのおかげでオレにも夢ができた」


 滅は或人に謝意を示すも、その夢とは皮肉にも「人類滅亡」だと語るのだ!


*和平ムードが一転! 全面戦争へとドロ沼化!?


 シリーズ終盤を迎えて主人公側と敵側が和解する雰囲気が本作では濃厚に漂(ただよ)った。そして、ラスボス的な存在すらも早くも退場してしまった……


・第42話『ソコに悪意がある限り』では、滅に人類への攻撃をやめるよう単身で説得しようとしたイズを滅が破壊(殺害!)したことで、或人の滅に対する復讐心=「悪意」がアークを復活させ――人工知能・アークそのものの声は聞こえてこないので残留思念・残存データのようなものか?――、アークに憑依された或人が白と黒を基調とするデザインの仮面ライダーアークワンと化す!
・第43話『ソレが心』では、「イズの仇(かたき)」とアークワンが放った攻撃から滅をかばった迅が死亡する!
・第44話『オマエを止められるのはただひとり』では、迅=息子を殺すに至った或人=人間は敵だと認定して、滅がヒューマギアたちに「聖戦」を呼びかけて、各地で反乱や暴動が巻き起こる!


といった具合に「悪意」の連鎖が描かれた。主人公側と敵側のリーダーがともに最も大事な存在を失ってしまったことで、これまで丹念に積み重ねられてきた交流までもが一気にガラガラと崩れ去っていく、かなりショッキングな展開となっていた。


 個人的にはこの最終展開にはおおいに楽しませてもらった。しかしその一方で、やはり話数短縮の影響が色濃く出てしまったとの印象を強くしている。第1部と第2部ではメイン監督だった杉原輝昭監督が、第3部以降ではわずかに第44話(最終回1本前)と最終回のみの登板となっている。やはり監督のローテーションにも強く影響したのだろう。


 当初は1年間の放映を予定していた『ウルトラマンネクサス』は、平成仮面ライダーシリーズが10%前後の視聴率を稼いでいた当時に土曜早朝放映というハンデがあったとはいえ2~3%台を低迷し、防衛組織のメカや基地の玩具も全然売れないほど商業的に大コケしたために、放映を全37話に短縮して打ち切られることとなった。
 主人公・春野ムサシ=ウルトラマンコスモスを演じた杉浦太陽(すぎうら・たいよう)が放映以前に起こしていたとされた事件で誤認逮捕されたためにシリーズ終盤間近で放映を5週休止した『ウルトラマンコスモス』(01年)の場合には、当時としてもすでに古クサかった一話完結形式(汗)だったために、当初から予定されていた2002年9月末までにキッチリ終わらせるためには5話分のエピソードを未放映とするだけで済んでいた――そのことがまったく作品の最終展開にも影響を与えなかったほどに、タテ糸となる要素が皆無に近かったということでもあったのだが(笑)――。
 だが、平成仮面ライダーシリーズと同じく連続ものとしての要素が強かった『ネクサス』の場合にはそんなワケにもいかず、おまけに打ち切りが決定した時点で大半の撮影がすでに終了していたために(汗)、前後編として製作した回を1話分に編集するなどして話数を短縮する措置(そち)がとられたり、最終回に至っては本来は3話分となる内容を強引に1話にまとめたそうだ(爆)。


 『ゼロワン』は新作の放映を休止した時点でどこまで製作が先行していたかは不明だが、おそらくは休止中に『ネクサス』と同様の処理がなされたことが推測される。なにせ次作『仮面ライダーセイバー』を例年通りの9月スタートとするために6話分も短縮されたのだから、『ネクサス』の最終回のように3話分を1話にとまではいかなくとも必要最小限なセリフ・描写・バトルなどを厳選して再構成することとなっただろう――第35.5話『ナニが滅亡迅雷を創ったのか?』は総集編ではなく新作エピソードとして扱われているが、どうひいき目に見ても「滅亡迅雷.net」名場面集=「総集編」だ!(笑)――。
 ゆえに「遊び」や「余韻(よいん)」の部分、たとえばギャグ演出とか恋愛要素、ほかにも本筋にはさして影響はないとされたものが脚本やすでに撮影された分から削(そ)ぎ落とされたことで、「子供番組」としてはいささかハードな要素ばかりが残る結果となったのかもしれない。『ネクサス』の場合、放映では割愛(かつあい)された部分が映像ソフトではディレクターズカット版として本来のかたちで再編集したエピソードが収録されているだけに、『ゼロワン』の映像ソフトではそれらがどのように扱われるのか、気になるところだ。


 それにしても第42話のイズ、そして第43話の迅の最期(さいご)はともに廃工場内で大量に火薬を使って、駆け寄る或人、そして滅の動きがスローモーションで描かれるインパクトもドラマ性も絶大なる演出だった。


「滅も、いつか笑えますよね?」


 吹き上がった炎からイズの衣装の緑色のリボンが床に落ちてくる…… 夕日が差しこむ工場内にて、或人を慰めようと寄っていった唯阿を不破が制止して「或人とイズのふたりだけにさせてやろう……」と無言で伝えたほどに、それをじっと見つめて悲しみに暮れている或人。


「たったひとりの、お父さんだから」


 廃工場に仮面ライダー迅バーニングファルコンの赤い羽根が多数舞い散る中で、ひざまづいて涙を流している滅……


 実に壮絶にすぎる悲劇演出なだけに、やはり幼児にとってはトラウマとなったのではなかろうか?(汗)


*或人の「夢」を守るために!


 「総集編」(笑)の第35.5話で先行登場したが、第42話から最終回に至るまで、人工知能・アークの秘書でイズに酷似(こくじ)したルックスのアズ(爆)がレギュラーキャラとなる。ショートボブのイズと違ってアズはロングヘアだが、これはイズと二役で演じる鶴嶋乃愛(つるしま・のあ)の地毛であり、イズの髪型の方がウィッグ(かつら)なのだそうだ――第1話から毎回のオープニング主題歌の映像中でも実はこのロングヘアのアズは伏線的に登場していた!――。


「せっかくあなた好みの色に変えたのに~」


 可憐(かれん)なイズとは正反対の愉快犯的なアズのキャラは、そのイベントコンパニオンのような衣装も含めて往年の『仮面ライダー555(ファイズ)』(03年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20031108/p1)の悪徳企業(笑)・スマートブレイン社のマスコット・スマートレディを彷彿とさせる。


「人間に悪意があるかぎり、またアークが生まれる……」


 第41話のラストでそう語った滅は、彼の呼びかけに応じたヒューマギアの軍勢を率いて都内各地を急襲する。


「やめろ、戦うな! このままじゃ滅がアークになる!」


 「悪意」はむしろ滅の方だと看破していた迅が戦闘中の仮面ライダーバルカン=不破と仮面ライダーバルキリー=唯阿を説得するが、彼ら、そして滅の眼前に仮面ライダーアークワンが宙から光臨することで、滅以外にアークと成りうる謎の存在が示される!
 ここまでは大半のマニア視聴者には想定内だったかもしれない。しかし、正義のヒーローであるはずの或人自身がアークを復活させてラスボス級キャラクターへと変貌してしまう展開は意外だっただろう。大切な人を殺された「怒り」や「恨み」それ自体は正当なものですらある。しかし、やはりその気持ちに執着しすぎて、それが行き過ぎれば周囲に被害を与えてしまう。そして、それ自体が新たなる「悪」ともなってしまうのだ……


 ただ、第43話では或人も滅も「悪意」を全開にした一見は凶暴なキャラに変貌しながらも、それでも最低限の「心」があることを示す多面的な演出がなされていた。
 イズを殺した滅への復讐のために仮面ライダーアークワンがアジトへと向かうトンネル内で、アークを或人の中から引きずり出そうとした不破・唯阿・垓がライダーに変身してこれに挑むが、アークワンは彼らの攻撃をよけるばかりでいっさい反撃はしないことで、彼らを傷つけない。そして、垓の変身ベルト・サウザードライバーと不破&唯阿の脳内の変身用チップだけを破壊する。これは「仲間」であった彼らの仮面ライダーへの変身能力を奪うことこそ、彼らと戦わずに済む最善策と考えた或人の「心」を表したものだ。


「オレに心など存在しない! オレの中にあるのはヒューマギアの安息を守る正義だけだ!」


 そう強硬に主張して或人との決戦に向かおうとする滅の右手が震(ふる)えていたのを迅は見逃さなかった。そして、迅が滅を守ろうとして最期を迎える直前、滅をとめる決意をした際に迅の手が震えるさまを係り結び的に描写することで、滅にも迅と同様の「心」がすでに存在すると示した演出も実に秀逸だ!


 さらには、第44話では或人と滅の対立を発端として各地でヒューマギアの暴動が勃発(ぼっぱつ)、それを武力で制圧せんとする人間との全面戦争に発展しかねない危機的状況の中で、これまで或人が蒔(ま)いてきた種(たね)が収穫のときを迎えたかのように、変身能力を失った不破・唯阿・垓のみならず、或人の「夢」を守ろうとするすべてのキャラが実にカッコよく描かれることになった!


 垓が「A.I.M.S.」を一企業にすぎないZAIAから政府の管轄へと戻したことで、唯阿はヒューマギアへの武力行使を実行しようとした「A.I.M.S.」隊員たちを「撃つな!」と制止する権限を得られた。


「我々の正義とはなんだ!?」


 この唯阿のセリフで、ヒューマギア鎮圧という作戦自体に苦悩していた隊員たちも銃器をバラバラと地面に放棄していく描写がそのカッコよさをさらに引き立てている!


「みんな話を聞いてくれ!」


 或人社長を出せ! と飛電インテリジェンスのロビーに押し寄せた大勢のヒューマギアに、福添副社長は誠心誠意をこめて


「人間を信じてくれ!!」


と土下座をするや、その姿をヨコ目で見ていた秘書のシエスタも感じ入ってシンギュラリティを起こしたのか、ともに土下座する! 加えて山下専務も土下座する!!(感涙)


「人間は心を教えてくれた! おまえをかばった迅の心もな!」


 元・宇宙飛行士のわりには茶髪の巻き舌口調でヤンキーキャラ(笑)だが、「自分を見失うな!」と雷は滅をそう一喝(いっかつ)してみせる!


「ヒューマギアの夢を壊す気か!? あなたを信じる、人類を信じる、ヒューマギアの心を裏切るのか!?」


 あくまで滅にイズを殺された復讐を果たそうとする或人に亡はそう投げかけて、歩道橋上から眼下にいた不破に


「飛電或人をとめろ!」


とゼツメライズキーを投げ渡す!


「おまえの意志、たしかに受け取った!!」


 不破と亡がダブル変身して共闘する絵は最後まで描かれなかったが、この「意志」のバトンタッチとでも呼ぶべきあまりにカッコいい描写こそが立派な共闘であり、ふたりの関係性が頂点に達した結晶なのだ!


「オレにコジ開(あ)けられないものは、何ひとつねぇ!!」


 その前段として不破が語っていた「社長の心はオレがコジ開ける!!」と係り結びとなっている叫びだが、本来はドライバーに装着してから解除するよう開発されたプログライズキーを不破が毎回「うぉぉぉ~~~っ!!」と強引にコジ開けてきたのは、この回のクライマックスを盛りあげるために逆算して描かれてきたのかと思えるほどだ!


「滅をぶっつぶしてその先に何がある!? その先にあるおまえの夢はなんだ!?」


 バルカンの青と亡の銀を基調としたデザインの仮面ライダーオルトロスバルカンは、本来はヒューマギアが変身して着用することを想定して開発されたために人間の身である不破には大きな負担となっており、アークワンを倒すには至らなかったのだが、第25話『ボクがヒューマギアを救う』でZAIAをぶっつぶす! と主張していた不破に或人が投げかけていた、


「その先にある不破さんの夢ってなんだ!?」


という問い掛けを、今回はそのまま不破が或人に返すこととなったのだ。


 第25話のその或人の投げかけこそ、或人と不破の関係性が変化する発端となったものだ。そのように或人の言動によって心境を変えていったキャラたちが、当の或人が暴走する中で或人の「夢」を守るために奮起するさまが畳み掛けられていく演出には、たとえこのまま或人が元に戻らなかったとしても、彼らが立派にその「夢」を実現させてくれるだろうと思えるほどに、視聴者を感動の渦(うず)へと巻きこんでいくのだ!


*或人、滅、そしてスタッフの真意とは?


 最終回はビルの屋上、そして立体駐車場で展開された或人と滅のラストバトルの描写が大半を占めており、本来は冒頭に流れる本作主題歌がエンディングタイトルで流されて、主要キャラたちのその後の日常を端的に見せる構成となっていた。
 或人が滅との決闘を選んだのは自身の「復讐心」からの暴走をとめられるのは滅だけだと考えたこと、そして滅に命を賭けて「心」を教えようとしたためであって、滅は時折り自身の行動をも邪魔してくる「心」に恐怖を感じており、そんなものを自身に与えた人間が憎かったのだという、両者の真意も明かされることになった。


 たとえば人間とヒューマギアの「悪意」が集結して巨大な怪物となり、人間側とヒューマギア側の仮面ライダーたちが共闘してそれを倒すことでともに笑いあえる未来が開かれる…… などという見せ方の方が子供たちには伝わりやすかっただろう。そういうわかりやすい展開は当初は2020年7月23日(金)公開の予定が同年12月18日(金)公開に延期された映画『劇場版 仮面ライダーゼロワン』(20年・東映https://katoku99.hatenablog.com/entry/20211114/p1)に期待するべきなのかもしれない。
 ちなみに、公式ホームページでは9月20日時点でいまだに内容の概要がアップされてはいないのだが、この『劇場版』はテレビシリーズ放映途中の出来事として製作していた内容をテレビシリーズのその後の物語として改変している最中のためかと思われる。本来、同時上映の予定だった映画『魔進(マシン)戦隊キラメイジャー THE MOVIE(ザ・ムービー)』(21年・東映)を来年2021年新春に延期して、それぞれを単独公開の映画としたことで新規撮影部分を加えて尺を長くしている可能性も高いかもしれない。


 或人と滅が「悪意」を乗り越えたときに、イズの形見である緑のリボンが青空に舞う描写は実に象徴的だったが、バックアップデータがないために復元ではなく、再現されたイズに或人がギャグをかます際の決めポーズ、「アルトじゃあぁぁ~~~ ないとぉぉぉ~~~!」を手取り足取りでラーニングする実に微笑(ほほえ)ましい明るい描写でテレビシリーズは幕となっていた。この新生イズと或人との関係性の進展具合もまた、『劇場版』には期待したいところだ。


 或人を守って命を落とした父代わりのヒューマギア・其雄、元々は幼児教育用ヒューマギアとして開発されたためか迅に対する態度が支配から父性愛のように変じていった滅、人間なのに「1000%」を息子にたたきこんでいた垓の父、『ゼロワン』では三者三様の父親像が対比的に描かれていた。子供を守るのも良い方向に導くのも決して仮面ライダーではなく親や社会の役目なのだと、スタッフたちは『仮面ライダー』作品を通して訴えていた側面もあったのかもしれない。しかし、筆者はあえてこう云いたい。「親はなくても子は育つ」(笑)。

2020.9.20.


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2020年秋分号』(20年9月22日発行予定分)所収『仮面ライダーゼロワン』総括合評3・4より抜粋)


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[芸能] ~全記事見出し一覧


菅田将暉・2020年夏トーク番組3本まとめ ~相手・番組・視聴者層に合わせた当意即妙な切返し術&人間力

(文・田中雪麻呂)
(2020年8月29日脱稿)

2020年夏の菅田将暉トーク番組への、ゲスト出演まとめ。


 菅田将暉(すだ まさき)、27歳。言うまでもなく当節売れっ子のイケメン俳優で、現在のエンタメ・シーンを牽引(けんいん)しているひとりである。
 菅田は見目麗(うるわ)しいだけでなく、如才ない言動や振る舞いで敵を作らないことにも長(た)けている。


 もう菅田がデビューして10年くらいになると思うが、彼はずっと主演級で売れ続けている。年に何本も封切られる映画の宣伝のため、TVのバラエティー番組のお座敷も多い。共演者とのロマンスもわりと数があるスターだが、不思議と妬(ねた)まれることもない。


 今回は今夏放送した菅田将暉トーク番組を幾つか検証し、彼の「他者に好まれる」技術を解き明かすべくモニター前に陣取った。


サワコの朝(TBS系/2020年8月15日放送)』


 著述家で最近は女優としての顔もある阿川佐和子(あがわ さわこ)が司会を務める。土曜日の早朝の爽やかなトーク番組。


 司会の阿川と菅田は何と初対面だそうだ。阿川の


「あちらこちらで飛ぶ鳥を落とす勢いで活躍してらっしゃる。」


という、慇懃無礼(いんぎんぶれい)な紹介で、対談はスタート。


 阿川がカマした「あちらこちら」とは、俳優業だけでなく歌手や服飾の才能も開花している菅田に対する一種のイジりだ。


 菅田はそれを満面の笑顔だけで受け流す。


 続けて阿川は、菅田のデビュー作が「仮面ライダーシリーズ」であることについて畳み掛ける。菅田が16歳で主演した作品は『仮面ライダーW(ダブル)(2009年)』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20100809/p1)だ。やはりイケメン俳優・桐山漣(きりやま れん、当時24歳)とふたりでひとりの仮面ライダーに変身するキャラクターを演じた。


 菅田は当時、まだ自身が芝居が未経験である上に、歴史ある「仮面ライダー」の主演をすることに強い不安を感じた、と述懐する。


 続けて菅田は、


「(桐山)漣君が、僕より8歳上なんですよ。じゃあ僕の8歳下を考えたらもう8歳で、それは視聴者のお子さんの年齢じゃないですか。」


と笑わせる。


 筆者も一瞬ニヤリとさせられたが、16歳の身空(みそら)からすればはるか年上の24歳と共演することになった当時新人の菅田の状況が、如何(いか)に異常で重圧的なものであったかがすぐに伝わり、複雑な心境になる。


 ちなみに、菅田のいちばん下の弟は、彼が上京した時にはやはり8歳であったそうで、何か「数の奇縁」のようなものを感じさせる。


仮面ライダーは一年間、同じ役柄をしっかり演じることができる環境を与えて呉(く)れ、仮面ライダーの映画の舞台挨拶での巡業で、一遍に何千人ものちびっ子が声援してくれて、ヒーローを演じる心積もりもできました。」


と、菅田は綺麗にまとめてみせた。


 仮面ライダーに関するトークは5分近くにも及んだ。30分番組、実質25分の内の5分である。これは菅田をあまり知らない層に向けてのものであるとおぼしい。土曜日の早朝という時間帯にもこれは正しい措置だと思う。


 菅田の所属事務所の直属の先輩として、眉目秀麗(びもくしゅうれい)な俳優・中村倫也(なかむら ともや)が「菅田将暉に物申す」という触れ込みでVTR出演。もう初手(しょて)から中村はボケをする顔で出てくる(笑)。


「菅田に音楽を教えたのは僕なんですね。10年ぐらい前に僕がギターを爪弾いて菅田が歌ったりしたみたいなことが、彼を音楽に目覚めさせたのかな、と。それをTVで全然言わないのはどうなのかと。以後はこのエピソードをどんどん言ってもらうと僕は幸せに思います。」


と、往年の陣内孝則(じんない たかのり)もかくや、というくらいに先輩風を吹かせまくる中村(笑)。


 スタジオの菅田は、


「いや、懐かしい話ですけど……。」


とずっと苦笑いである。


 一見ムダな時間なようだが(笑)、菅田が如何に周りに愛されているかの確認作業である。


 後半は、米津玄師(よねづ けんし、29歳)、あいみょん(25歳)、松坂桃李(まつざか とおり、31歳)、石崎ひゅーい(36歳)ら、同年代のアーティストとの関わりについて菅田が語る。


「一番刺激を受けるのは同世代で頑張ってるやつですね。自分と同じ時間を使っているはずなんで。だからもし(彼らに)負けたとしたら、時間の使い方に負けたということなんですね。」


などと哲学的なことを菅田はさらりと語る。


 彼らについての呼称も、米津とあいみょんは呼び捨て、松坂と石崎はそれぞれ君づけと絶妙。特に石崎には


「自分から近づいた。僕の恩師です。」


と敢(あ)えてリスペクトしてみせた。


 やはり、業師(わざし)の菅田である。嫌味な姑(しゅうとめ)然とした阿川を向こうに回して100点満点のパフォーマンスである。


 ただ今回、菅田が唯一答えに窮していたのが、阿川が番組開始早々に発した


「痩(や)せてらっしゃいますか?」


の一言であった。初対面であるのにもかかわらずである。


 トーク術の武芸百般に秀でた菅田将暉も、年配の女性インタビュアーによくある、何の悪意もないが自分目線だけの天然(てんねん)発言までは回避することはできなかったのである(笑)。


『A-Studio+(TBS系/2020年8月21日放送)』


 もう10年以上も続いている(奇しくも菅田将暉のキャリアと同じ年数である)、笑福亭鶴瓶(しょうふくてい つるべ)のトーク番組。


 ジャニーズのアイドルKis-My-Ft2(キスマイフットツー)の一員、藤ヶ谷太輔(ふじがや たいすけ、33歳)が、鶴瓶とダブル司会を担当。この番組はMC自身がゲストゆかりの人に直接取材をしてスタジオ収録に臨むのが特色だが、鶴瓶とは別のルートで藤ヶ谷も取材に赴く。


 菅田将暉に対しての藤ヶ谷太輔は、立ち位置が微妙だと思う。16歳から現在までずっと第一線で活躍してきた菅田に比べて年上なのに、藤ヶ谷はグループでのデビューがなかなか決まらず、本格的な芸能活動期間は10年に満たない(ちなみに藤ヶ谷のジャニーズ入所は11歳である!)。


 藤ヶ谷から見ればかなり年下の菅田ではあるが、実質の芸歴もその内容も自分たちは菅田に及ぶべくもない。菅田の取材をして盛り上げ役をしなければならないという役柄がそもそも、現在の彼らの位置関係を雄弁に物語っている。


 呼び込まれて菅田将暉がスタジオに登場。全方位に頭を下げながら、緊張の面持ちで自分の席まで歩んでくる。


「菅田の(映画)作品をぎょーさん(沢山)観返したよ。俺は『セトウツミ(2016)』が好きで……。」


鶴瓶が切り出す。


 『セトウツミ』は地味な映画なので、虚を突かれ笑い出す菅田。笑いが大きすぎて、菅田は肘(ひじ)で脇に置かれていた飲み物のグラスを動かし、こぼしてしまう。


 すぐにすくっと立ち上がり、


「すいません、ホント。」


と真顔で恐縮する菅田。バッドなアクシデントであるのに、菅田に品があるので、番組序盤の良いアクセントになるのがニクい。


 菅田の映画の話の流れで、鶴瓶が何気なく


「映画とか出えへんの?」


と藤ヶ谷に振る。


「そんなに、ウチら(Kis-My-Ft2)は(映画の仕事は)ないかもしれないです。」


と、ややぎこちなく答える藤ヶ谷。


 菅田が


「藤ヶ谷さんの鼻はスクリーン映えしますよ、横顔とか。(僕の好きな鼻は)生田斗真(いくた とうま)か、藤ヶ谷さん。」


と台詞をキメて、笑いが起こった。


 藤ヶ谷は既に何本も有名な映画で主演をしているのだが、鶴瓶も菅田もそれを知らなかったのだろうか。


 藤ヶ谷が


「何言ってるんですか。僕何回も映画やってますよ。」


という野暮(やぼ)な切り返しをしなかったのは、良い選択だったと思う。おかしな雰囲気になっていただろうから。


 藤ヶ谷は快活に


「映画、やってみたいすね!」


と応え、鶴瓶


「映画はいいよ。変わるよ。」


と藤ヶ谷に満足げに教授し、そのタームは終わった(笑)。



 番組中盤から、菅田を映画俳優に育てた著名な映画監督が3人、菅田を音楽畑に導いたレコード会社の人、菅田が担当するラジオ番組の放送作家など、菅田の恩人が連続して写真パネルで登場。


 スタジオの菅田は大変だ。彼は各人と自分の繋がりを明快に述べ、モノマネも駆使して各人の人となりを詳述し、エピソードとして成立するように笑いもまぶしてご機嫌を伺う。八面六臂(はちめんろっぴ)の大活躍である。


 また、その情報量がハンパではない。半日一日時間を掛けたような取材が、本編では数分で消化されてゆく。


 おまけにMCの鶴瓶が、取材の為に観た菅田の何本もの映画、聴いたCD(アルバム2枚分!)のリストを示して、菅田本人に


「俺はお前に、どんだけ時間を割(さ)いたと思てんねん!」


とコボしてみせ、追い討ちをかける(笑)。 


 菅田は更に恐縮し、


「すいません! 次(の自分)の出演の時には何もしないで、寝てて下さい!」


とヘロヘロに。


 番組のシメには藤ヶ谷が菅田に駆け込みで、彼の異性へのフェチについて質問。


 いちいち丁寧に回答をする菅田に触発されたのか、藤ヶ谷は自分の「女の子のオデコの産毛(うぶげ)」フェチを詳細に解説し始めてしまい、鶴瓶に一喝され、ゲストの菅田にも強めに突っ込まれて、番組はヘンな感じで終わった(笑)。


 これは「押し引き」でいう、ジャニタレの「引く」タレント。


 次の項は、ジャニタレの「押してくる」メンツである。


TOKIOカケル(フジテレビ系/2020年8月26日放送)』


 国分太一(こくぶん たいち、45歳)・城島茂(じょうしま しげる、49歳)・長瀬智也(ながせ ともや、41歳)ら、ジャニーズのベテラン(?)アイドル・TOKIO(トキオ)の4人が回すトーク番組。


 年下のゲストには初出(はつだ)しのエピソードを要求したり、無茶振りのシチュエーションを与えたりと、ある意味容赦(ようしゃ)がない。


 菅田はこの番組には5回目の出演。2017年には年明けとその年の秋に2回も出演している。


 菅田は番組冒頭、


「この番組は一番台本が薄いけど、何か(こちらが)準備してくるとかないのでフリーでやれて良い。」


リップサービス


 菅田自身、平素から


「叱ってくれる人がいることは有難い」


と考えている人となりだから、番宣番組でも何でも目上から課題を出される状況はウェルカムなのかもしれない。また、それを臨機応変にこなす自信もあるのだろうし。


 菅田は役作りの一環として、自分の演じるキャラクターはどういう顔つきなのかをまず考えるというエピソードを初出し。実際に目を見開いたり、前髪を分けておでこを出したりと百面相をしてみせ、変顔を連発で大サービス。


 菅田によると、自分の右目は少し吊っていて、左目は柔らかい印象なので、鋭い役柄は顔の右側で、優しい役柄は左側で演じるようにしている、と秘話を語る。


 おおっ! 昭和の女優の逸話(いつわ)だ! 大原麗子だ!(笑)


清水アキラさんみたいだよね!」


と初老の国分太一が、若いひとには解らない喩(たと)えで交(ま)ぜっ返す。 


 また、菅田はドラマや映画のクランクイン前日は眠れないので、敢(あ)えて寝ずに現場に行ったりしがちであると、これも秘話を語る。
 前日の緊張感や野性味も残したいし、実際問題、初日は1シーンか2シーンを撮るくらいだから(体力的に)乗りきれるものだという。これはずっと映画を活動の主軸でやってきた菅田ならではの「映画俳優あるある」である。


 「濡れ場(ラブシーン)」を初日に撮ることもあると菅田。平常心ではない時に早くやらしてくれとも思うと語ると、国分太一がすかさず、


「やらしてくれって!」


と下ネタで揚げ足をとる。


 どうでもいいけど、菅田からの切り返しの国分の顔は、ホントにオジサンで汚く見えるなぁ。三谷幸喜(みたに こうき、脚本家・映画監督)がいるのかと思った(笑)。


 番組中盤には、菅田将暉の歌手としての代表作である『まちがいさがし(2019)』に因(ちな)んで、菅田を含む総員で「最近、まちがえてしまったこと」を発表し合う。要は形を変えた大喜利(おおぎり)である。


 趣向(しゅこう)として悪趣味なのは、それぞれの面白噺(ばなし)のオチを言い終わった後に、各人の手元のボタンを押すと、菅田が歌唱する『まちがいさがし』のサビの部分が流れ、演者はそれに合わせて変顔をして終わることだ(笑)。


 ひとの著作物を本人を目の前にしてお笑いのオチの擬音効果にするのだ。それも刹那的(せつなてき)な代物に。いったい他事務所の看板アーティストを何だと思っているのだろう(笑)。この企画の発案者はもちろん国分太一(笑)。ホントに悪い奴だ。悪相の原因は持ち前の底意地の悪さに起因しているのではないかト(笑)。


 TOKIOはいろいろあって、もうグループとしての音楽活動は難しくなっている。メンバーの一部も退所するだとか何だとかごちゃごちゃとやっている。
 敵(菅田)は若くして、アイドル俳優として絶頂を極め、その後性格俳優の立ち位置を堅固にし、その余技として有名アーティストの後ろ楯で歌手デビューした大スターだ。企画にかこつけて、彼に僅(わず)かでもダメージを負わせたい! そのようにロートルのアイドルが潜在的に謀(はかりごと)を企(くわだ)てたとしても誰が責められようか!?(笑)


 菅田はセンパイたちのパワハラ(笑)に、


「ああ、(曲への)解釈は自由なんで……。」


と笑顔でコナす。


 菅田が


「これは少し違うな。」


と思ったとしても、相手のホームだし、他事務所のベテランタレントが4人で圧を出してくるし、少なくとも現場では言い出せる雰囲気ではないだろうし。


 菅田も大喜利に参戦。誰よりも面白いエピソードを披露し、自分の曲のサビでちゃんと変顔をキメてみせた。


 人間としての器(うつわ)が大きいなぁ。ブラボー! 菅田はサムライである!


〈結論〉


 菅田将暉は関西出身だが、身内に関するトークは内輪話に堕(だ)さぬようよくまとめられており、ひとつひとつが情報として通用するよう腐心している。
 もともと状況を、自分の位置も含めて即時に認識する力が、菅田の臨機応変な受け答えに生きている。


 自分のトークの「息(いき)」でずっと話し続けるのではなく、時としてMCの「息」に委(まか)せ、同じ呼吸で会話を進めることがあり、耳に心地よい。デビュー作の『仮面ライダーW』がまさにそうであったが、幾つも相棒(バディ)もので成功をおさめてきた菅田の真骨頂ではないだろうか。


 菅田の安定路線を避けることで成功してきた映画俳優としてのスタンスは、バラエティー番組のセレクトにも通底している。番組には予習復習を以(もっ)て真摯に挑む菅田だが、自分がそれに加わったことで生じる化学変化を心待ちにし、良い意味での爪痕(つめあと)を残したいと切望している節がある。


 しかし、同業者のセンパイの番組に出るのは少し考えものだ(笑)。それも、アイドルの「稼業」を拗(こじ)らせたヤカラがMCの番組は特に。不幸と精神性は感染(うつ)るものともいうし(笑)。


(了)
(初出・当該ブログ記事)


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『誰も知らない志村けん-残してくれた最後のメッセージ-』  ~志村最後の新境地「志村どうぶつ園」創世秘話・志村の「素」と「家族」に迫った佳作ドラマ

(2020年8月22日、『24時間テレビ 愛は地球を救う43』枠内テレビドラマ)

24時間テレビ43」ドラマ『誰も知らない志村けん-残してくれた最後のメッセージ-』

(文・田中雪麻呂)
(2020年8月25日脱稿)


 「ドラマ」と「ドキュメント」と「音楽」を通して描く新機軸のヒューマン・ストーリー。
 16年余りに渡って放送された大人気動物教養番組『天才! 志村どうぶつ園(日本テレビ系/)(2004~)』のディレクター・保科(ほしな 演・重岡大毅(しげおか だいき))の目から見たMC(司会)の志村けんの実像に迫る。ドラマ部分はランニングタイム90分強。


 保科は二十代後半の設定。愛犬家として有名な大物喜劇俳優・志村を動物バラエティのMCに引っ張り出すべく尽力する。ジャニーズWESTの重岡の瑞々(みずみず)しい演技は好評を博した。


 ドラマ開始から10分程してやっと志村けんが登場。演じるのは相川裕滋(あいかわ ゆうじ)。再現ドラマ風に顔をところどころライティング等で消して対象に寄せる手法だ。


 保科は憧れのスターに自分たちの渾身の動物番組の企画を熱くプレゼンするが、志村はポツリとか細い声で


 「面白くないよね。」


 と一言。


 4分半で交渉決裂し帰社する保科に、チーフプロデューサー役の柄本明


 「志村さんはスタッフが一生懸命考えてきたものに一方的にダメを出すような人じゃない。何か別の意味があるんじゃないのか?」


 と助言する。


 開始早々、面倒臭えな、志村(笑)。


 志村の真意は、自身の「素の喋り(すのしゃべり)」が面白くないよという意味だったのでは? という仮説を立てた保科は、更に大胆に


 「志村さんの『素の喋り』が見たいんです。志村さんのお家でのワンちゃんたちとのやり取りを、自撮りで撮って来てもらえませんか?」


 と志村サイドに要望を出す。


 保科の独断に、スタッフルーム全体が震え上がる。


 ドラマでは触れていないが、志村はお昼の国民的バラエティ番組への出演を生放送で断ったり、高名なCM演出家のアドリブのダンスの要求に激怒したりと、「扱いにくい大御所」としてつとに有名だったから、これはリアルだった。


 お笑いタレントのタカアンドトシの二人が中堅ディレクター役で出演。露骨に志村を煙たがる。


 実人生で志村の飲み仲間だった肥後克広(ひご かつひろ。ダチョウ倶楽部)も本人役で出てきて、


 「作り込んだコントこそ志村さんの持ち味。「素」(す)の志村けんを求める人がまだいるとは?」


 と呆れてみせる。


 志村の名前の大きさに対して、彼個人のタレントとしての不器用さ、ある種の奇人ぶりが巧みに描かれている。


 私的なことだが、筆者は数年前に、志村と彼の先輩タレント・加藤茶がふたりでやっていた人気バラエティ番組『加トちゃんケンちゃんごきげんテレビ(TBS系/1986~1992)』のコント台本を十数冊譲ってもらえる幸運に恵まれた。それには同じ回で、準備稿や決定稿等、何種類もの台本が揃っているものもあった。


 筆者はそれを何回も読み返すうち、あることに気がついた。志村けんの台詞部分の直しが夥(おびただ)しいのだ。志村の喋り方に合わせて、台本の台詞も変更されていく。中には手書きの直しをコピーしたものを、そのまま台本に糊付けしたものもあった。


 志村は自身の著書でも、自分の口調を子飼いの放送作家に即時に書き留めさせたり、自分の喋り方や物の考え方を熟知している放送作家を私的にお抱えにしたりといったエピソードを披露している。番組では何気なく会話を交わしているように見えていたが、彼ほどそういうものをデリケートに捉えていた喜劇人はいないのではないか。


 保科の提案は志村サイドになぜか受け入れられ、志村MCの動物番組は大評判。そのままレギュラー番組に昇格し、志村もMCの続投をなぜか快諾。そしてレギュラー化初の収録後にある事件が起こる。


 強(したた)かに酔ったアイドルの相葉雅紀(あいば まさき)が宴席で、あろうことか志村の膝(ひざ)を枕に寝入ってしまったのである。
 現在は国民的アイドルの「嵐」のメンバーである相葉だが、番組開始当初の16年前は彼はまだ何者でもなかった。慌てて相葉を起こそうとする保科たちを志村は静かに制して、


 「こういうのを待ってたから。」


 と謎の言葉を呟(つぶや)く。


 この作品には、前出の柄本・タカアンドトシをはじめ、上島竜兵(うえしま りゅうへい。ダチョウ倶楽部)・土屋アンナ原田泰造(はらだ たいぞう)ら志村ゆかりの芸能人が多数参加している。もちろん、故人の追悼のための特別出演だとは思うが、どうしても著名人が何かの役をやっていると目が散ってしまう。
 相葉雅紀もあの有名な「膝枕(ひざまくら)事件」に本人役で出ているのだが、このひとに限っては目が散らないのが不思議でならない(笑)。理由は解らない。国民的な人気者とはそういうものなのかもしれない。


 ドラマ開始から約1時間後、保科の幾つもの疑問は鮮やかに氷解してゆく。


 「ドキュメント」部分として、志村の幼なじみの紳士のインタビューが挿入される。彼は教職に就いていた厳格な志村の父親について話をしていた。不慮の事故の後遺症で54才の若さで早逝したという。


 突然、脇で控えていた紳士の奥様が、口を衝(つ)く感じで、


 「(志村さんは)あの年齢で、番組(『志村どうぶつ園』)を成功させたかったのよ。」


 と割って入った。


 「ドラマ」部分のプロデューサー・保科が膝を打つ。志村がMCを引き受けた年齢は、奇しくも彼の父親の享年(きょうねん)であった。志村はその年齢で、芸能の世界に自分の「家族」を作りたかったのではないか?


 しかし、彼のお笑いの舞台「志村魂(しむらこん)」の一座(いちざ)をはじめ、既に志村の「ファミリー」は幾つもある。何故、お笑い番組の「ファミリー」ではダメだったのか?


 志村けんのお笑いは、彼が一代で築いたものではない。ザ・ドリフターズというグループがあり、志村はそこで修行し、ドリフの笑いを受け継いだかたちだ。もちろん志村けんの加入でドリフの笑いは飛躍的に変わったのだが、やはり「作り込んだその笑い」には生涯こだわっていた。
 つまり、ドリフのメンバーとそれに属した人脈は、志村の中で決して「家族」にはなり得なかった。志村が対外的にいかに偉くなろうとそれは変わらなかった。折り目正しい彼は、そういうことは強く弁(わきま)えていたであろうし。


 貴重映像として、志村けんが自分の「家族」である(当時)5頭の犬を自宅で自撮りしたものが流れた。志村がそういうことをするのは極めて異例だったという。


 率直に言ってヒドい映像であった。


 昼間、5頭の犬が主人の言うことを何も聞かないで傍若無人(ぼうじゃくぶじん)。障子紙はビリビリに破れ、壁には犬が原因で大穴が空いている。高そうな家具の足はどれも犬が囓(かじ)って、ボロボロである。
 深夜に志村が帰宅する。既に横になっている犬たちを、主人は揺すって起こし、さんざん飲んで来たであろうに、更に晩酌をしてそれに付き合わせる。志村は目が完全に座っており、「TVに出てはいけない貌(かお)」になっている。
 お風呂に犬の一匹を連れて入り、何故か自分の股間も自撮りする志村。寝床でも犬を抱いて横たわり、寝オチしたように彼は爆睡する。


 ダメだこりゃ(笑)。


 志村も、自分は世間一般でいう普通の「家庭」を作る才はないことは薄々気付いていたであろうとおぼしい。
 しかし、『天才! 志村どうぶつ園』は多くの彼の「家族」を芸能畑で花開かせ、「作り込んだ笑い」ではない、「自宅を自撮り」したような、時に人目も気にせず「爆睡」してしまうような「素」を見せてしまう、新たな「ファミリー」を作る起点となった。
 ベッキー坂上忍(さかがみ しのぶ)・きゃりーぱみゅぱみゅ・DAIGO(ダイゴ)・森泉(もり いずみ)・振分親方(ふりわけ おあやかた=高見盛精彦(たかみさかり せいけん)元力士)、みんなそうだ。


 番組は本(2020)年9月に閉園(終了)するが、志村の意思を継ぐ相葉雅紀がMCとなり、また動物番組が始まるらしい。


 志村けんの夢と浪漫は、まだまだ終わらないのだ。


(了)
(初出・当該ブログ記事~オールジャンル同人誌『DEATH-VOLT』VOL.86(2020年晩秋発行)所収予定)


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西遊記#2「温泉の国」/〔温泉の国 美人姉妹と豚の恋!?〕

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西遊記#3「夢の国」/〔再会、母よ! 夢かなう寺の怪〕 ~今シリーズ最高傑作! 94年版や79年版の同系話など

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西遊記#4「砂の国」/〔激辛!! 砂の国の腕ずもう大会〕

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西遊記#5「子供の国」/〔子供の国 悟空がパパになる!?〕

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西遊記#7『幽霊の国』/〔幽霊の国 熟女になった悟空!?〕 ~本家中国84年TV版も!

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西遊記#8「時の国」/〔タイムスリップ!! 過去への旅〕 ~タイムスリップ! 94年版と比較

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西遊記#9「花の国」/〔最強妖怪の罠〕

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西遊記#10「滅法国(めっぽうこく)」/〔妖怪の国 凛凛の意外な正体!!〕

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妖怪シェアハウス ~アマビエ人気に便乗!? お岩さん・座敷童・酒呑童子・ぬらりひょんと現代で同居! 侮れない佳品!

『大江戸もののけ物語』 ~NHKの妖怪ドラマ。女性目線のライトドラマ風味もドー観る!?
『トクサツガガガ』(TVドラマ版)総括 ~隠れ特オタ女子の生態! 40年後の「怪獣倶楽部~空想特撮青春記~」か!?
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『妖怪シェアハウス』 ~アマビエ人気に便乗!? お岩さん・座敷童・酒呑童子ぬらりひょんと現代で同居! 侮れない佳品!

(文・田中雪麻呂)
(2020年8月23日脱稿)

コロナ禍で大人気の妖怪・アマビエについて。


 新型コロナウイルスの蔓延(まんえん)で、エンタメ・シーンは何ヵ月も「ほぼ封殺」された。ハリウッド映画も、ディズニー作品も、ドラえもんも戦隊ヒーローも疫病が相手では成す術(すべ)がなかった。


 しかしその中でただ一人、否(いや)一匹、ブレイクしたキャラクターがいた。


 アマビエだ。伝承の妖怪(ようかい)である。


 魚の身体に、長い髪の毛のようなもの(身体が光っている描写だという説もある)と、長い嘴(くちばし)のようなものを付けた顔を持つ幻獣だ。


 幕末に近い江戸時代(弘化3年/1846年)の肥後国(現・熊本県)の海に強い光とともに出現し、豊作・疫病に関する予言をしたという。
 この妖怪の姿絵(すがたえ)が疫病を退散させるという伝説から、2020年3月からアマビエの図像がSNS上で大流行、翌月4月から令和時代の厚生労働省の啓発キャラクターとして、当時のアマビエの姿絵のまま起用されたのだ。


 アマビエは魚体だが、吉凶を人間に伝えて助ける妖怪としては、やはり身体は魚で人間の頭部を持つ「人魚(にんぎょ)」が全国的に有名である。アマビエが出現した時期と同じく、奥州(現・東北地方)では頭に角(つの)を2本生やし胸元に貝を3つ付けた美女の人魚が出現、疫病発生を予言している。それより20年も早い尾張国(現・愛知県)には、やはり2本角を持った美形の人魚「姫魚(ひめうお)」が出現。コレラの防疫に尽力したとされる。


 ちなみにアマビエは、妖怪をテーマにした漫画を多く描いた漫画家・水木しげるの作品にはすでに1984年に登場し、彼の作品のひとつ『ゲゲゲの鬼太郎』のアニメ版(第5シリーズ。2007年)ではセミレギュラーとして活躍している。


 コロナ禍が半年余り続き、その間に筆者は芸能というものが実は如何(いか)に脆弱(ぜいじゃく)なものであるかを思い知らされた。それは発信する側はもとより受け手側の余裕のなさも尋常(じんじょう)ではなく、色々考えさせられた。


 結局、コロナ禍で勝ち残ったのが、お札(ふだ)に描かれた古(いにしえ)の幻獣とは! とどのつまり、人間は江戸時代から何ら文化的には進歩していないのではないか。個人的にはある種、痛快ではあったが。


 一流の娯楽とされているありとあらゆる作品は、緊急時においては何の安らぎも受け手には与えることができず、逆に著名な俳優・演出家の代表者たちは芸も見せずに、国に一方的に救いを求め、またはかつての観客たちから如何に言葉巧(たく)みにカネを引っ張ろうかと腐心している始末であった。


善なる疫病退散妖怪が隆盛のご時世に、深夜ドラマ『妖怪シェアハウス』が登場!


 そんな時節だからであろうか。2020年8月1日(土)深夜から怪(あや)かしが集う連続ドラマ、その名も『妖怪シェアハウス』が放送されている。否(いや)、時節に合わせるならシェアハウスは避けるか(笑)。


 仕掛人は芸能事務所・オスカープロモーション古賀誠一テレビ朝日の敏腕(びんわん)プロデューサー・内山聖子(うちやま さとこ)。
 主要スタッフがバタバタ辞めていくブラック企業の噂のあるオスカーの代表と、東山紀之(ひがしやま のりゆき)主演の『必殺仕事人』シリーズ(2007~)や『ドクターX(エックス)~外科医・大門未知子(だいもん みちこ)~』(2012~・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20211212/p1)で、ニッポンのTVドラマを決定的にダメにしたA級戦犯のコンビだ(笑)。
 さぁ、どうなるか(笑)。


 主演は『トクサツガガガ(2019)』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190530/p1)で、けなげな特撮オタ女子OLを演じた小芝風花(こしば ふうか)。気弱で運気も最低なヒロイン・目黒澪(めぐろ みお)が信頼していた彼氏に裏切られ、有り金すべてを掠(かす)め取られ、疲労困憊(ひろうこんぱい)で神社で倒れ込んでしまう。


 澪を救ったのが、古民家シェアハウスに住まう四谷伊和(よつや いわ)(演・松本まりか)。しかし伊和は江戸時代の怪談噺(ばなし)の『四谷怪談(よつやかいだん)(1825)』で有名な幽霊の「お岩さん」その人であった……というのが概要(笑)。


 もちろんお岩さんと住んでいるシェアメイトも怪かしであり、座敷わらし(演・池谷のぶえ)、酒呑童子(しゅてんどうじ)(演・毎熊克哉)、ぬらりひょん(演・大倉孝二)と東西の有名妖怪が詰めている。シェアハウスの井戸(いど)を伝って、日本各地の妖怪が集まって来るという設定もある。


 そこに女性視聴者層も大いに意識して、シェアハウスと隣接する神社のイケメン神主(演・味方良介)、澪のスパルタ上司(演・大東駿介)の二人が、澪を中心に恋の鞘(さや)当てを繰り広げるという布陣(ふじん)でご機嫌を伺(うかが)うのだが。


 やはり目を奪われるキャラは、妖怪たちだ。


 彼らは丑三つ時(うしみつどき=午前2時頃)を過ぎると醜怪な妖怪態に変じるのだが、それとは別に人間態の姿も持ち、現代の日本に溶け込んで生活している。


 お岩さんはお洒落なアイパッチで片目を隠した美貌のナース。ハウスのムードメーカー。虐げられる女性を見過ごしにできず、妖怪と人間の垣根を越えても助力しようとする。


 寮母然(りょうぼ ぜん)としたオバサンの座敷わらしは料理をはじめ家事を万端整える。何かと江戸時代に喩(たと)えてモノを言うのが癖。自分は妖怪ではなく「精霊」だという優位感を強く持つ。


 酒呑童子(劇中では鬼の頭領とされている)は赤ら顔のワイルド系の美青年。真贋(しんがん)を見分ける目を持ち、オークション会社の鑑定士として重用されている。


 ぬらりひょんはスーツ姿で頭には七色のターバンを巻いた怪人物。弁護士と経営コンサルの資格を持つインテリで、顔相も診(み)る才人。ハウスの頭脳的存在である。


 やっぱり、ぬらりひょんを演じる大倉孝二の存在は出色だなぁ。
 大倉孝二。身長187センチ、体重78キロ。今やコメディリリーフとしては欠かせない貴重な俳優である。
 長駆(ちょうく)であるのに威圧感を感じさせない物腰、脚本のニュアンスを現場で無理なく生かせる技術、自身のオーラを自在に点(つ)け消しできる器(うつわ)の大きさと、可能性のカタマりのような役者である。
 2002年に公開され、当時の映画賞を総ナメにした青年誌漫画原作(1996)の実写映画『ピンポン』で、主役に軽妙に絡むアクマ(左久間学)役で注目されて以来、ずっと第一線で各作品を彩ってきた実力派である。 


 ぬらりひょんという妖怪は、そもそも鬼とか座敷わらしみたいに確(かく)としたビジュアルの雛型(ひながた)がない怪かしであった。過去の文献を当たっても「大きなクラゲやタコを妖怪と見立てたものであろう」くらいの記述に過ぎない。
 前述した水木しげるが自身の作品で活躍させたために国民的な人気妖怪、転じて大出世して「妖怪の総大将」(笑)に登り詰めたと言ってよい。
 それを説得力を以て演じせしめた大倉の才能に改めて敬服する。


 #1~3まで観てみたが、ストーリーは「刑事ドラマ」の形式に一番近いだろうか。澪や彼女の周りの女性がワルい男に騙されかけるが、フェミニストの妖怪たちが立ち上がり、事なきを得るという筋立てだ。


 妖怪に蹴散らされる悪漢は、柾木玲弥(#1/二股&寸借詐欺男)、蕨野友也(#2/不倫&パワハラ男)、渋谷謙人(#3/成り済まし詐欺男)と、当代一流の二枚目俳優たちが演じている。彼らを妖怪態のお岩さんらが追い回し、心に深いトラウマを与え、悪事を遂行できない心理状態にまで追い込む。


 同時に妖怪らは騙される女性側の方をもあまり信用していない。従って心囚(こころとら)われている女性たちには、妖怪たちは彼らの捜査網をすべて使って、まず動かぬ証拠を提出して彼女らの洗脳を解く。
 ドライにクールに、しかし然程(さほど)苦労するでもなく、着々と証拠固めをしていく妖怪たちは不気味で、どこか可笑(おか)しい。


 お岩さんに救われた澪だが、シェアメイトが総員、人間である彼女をウェルカムかというとそうではない。
 酒呑童子ぬらりひょんも必要以上に人間と関係することによる「障(さわ)り」に心が休まらない。「二千年の禁を破っては……。」という台詞が妖怪側から発せられる。言葉通りに受け取れば、妖怪は古代ローマ時代、日本でいうなら弥生時代から存在しているのか?(笑)
 しかし澪も一文(いちもん)無しで、妖怪シェアハウスに身を寄せるしかない。居たたまれない雰囲気になるが、適宜(てきぎ)にお岩さんや座敷わらしがフォローに回り、澪はまた妖怪たちと寝食を共にする。
 こういう処(ところ)、昭和の青春ドラマの趣(おもむき)があり、ペーソス(哀感)溢れる泣き笑いの文芸であり、懐かしい感じがする。


 懐かしい、といえば44年ぶりであろうか。このドラマで「ゲキメーション」に再会したのだ!


 「ゲキメーション」とは、「劇画」と「アニメーション」を組み合わせた造語(ぞうご)である。
 平板な二次元の「アニメーション」ではなく、「絵」と「絵」を立体的に組み合わせて奥行きを出したり、登場人物を「切り絵」にして個別に動かしたり、火が燃えるシーンでは実際に絵の中に炎を合成したりと、とにかく臨場感を第一に設(しつら)えられた映像表現である。


 有名な作品としては、1976年にテレビ東京(当時は東京12チャンネル)で24話に渡って連続放送した『妖怪伝 猫目小僧(ねこめこぞう)』がある。
 漫画家・楳図かずおの原作漫画(1967)を元に、時代や設定を変更して製作された。当時の技術賞も獲得し、後年VHSビデオソフトや全話のLD-BOX(レーザーディスク・ボックス)がリリースされるなど、話題となった作品である。


 『妖怪シェアハウス』では、この「ゲキメーション」はお岩さん・酒呑童子らメインキャラの紹介VTRの体裁で流された。絵柄も心なしか楳図かずお寄りである。


 エンディング・テロップを追っていくと「ゲキメーション/宇治茶(うじちゃ)」の文字が!
 筆者は浅学なので知らなかったのだが、宇治茶監督は何年も前から劇場版の「ゲキメーション・ムービー」を何本も製作し、大評判を受けていた新進のクリエイターであった。
 この「ゲキメーション」を見られるだけでも、このドラマを観る甲斐はある。怪奇もののファン・楳図かずおファン・昭和レトロファンには必見である。


 と、#4の放送(8月22日)の予告を見た処、満を持して妖怪「アマビエ」がゲストで登場する(笑)。
 演じるは、ジャンルものでも多く怪人・妖怪役をこなしてきた個性派俳優・片桐仁(かたぎり じん)! ドレッドヘアに四角いメガネを掛け黄色い嘴(くちばし)を口にカジュアルに張り付けている。予告を見ただけでもふざける気満々である(笑)。


 令和の妖怪ドラマは、昭和ドラマの哀愁も味方につけていた。侮(あなど)れない作品といえる。


(了)
(初出・当該ブログ記事~特撮同人誌『仮面特攻隊2020年秋分号』(20年9月22日発行)所収『妖怪シェアハウス』評より抜粋)


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