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ウルトラギャラクシーファイト ~パチンコ展開まで前史として肯定! 昭和~2010年代のウルトラマンたちを無数の設定因縁劇でつなぐ活劇佳品!

『ウルトラギャラクシーファイト ニュージェネレーションヒーローズ』最終回 ~戦闘連発でも多数キャラの動機・個性・関係性は描破可能! 物語よりも点描に規定される作品の質!
『ウルトラギャラクシーファイト』『ウルトラマンタイガ』『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』『仮面ライダー令和』 ~奇しくも「父超え」物語となった各作の成否は!?
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『ウルトラギャラクシーファイト ニュージェネレーションヒーローズ』 ~パチンコ展開まで前史として肯定! 昭和~2010年代のウルトラマンたちを無数の設定因縁劇でつなぐ活劇佳品!

(文・久保達也)
(2019年12月7日脱稿)

*「昭和」「平成後期」「令和」のウルトラマンを「ひとつの世界」に!


 2019年9月29日から無料動画配信サイト・YouTube(ユーチューブ)の円谷プロ公式チャンネル・ULTRAMAN OFFICIAL(ウルトラマン・オフィシャル)にて、毎週日曜朝10時の更新で『ウルトラギャラクシーファイト ニュージェネレーションヒーローズ』(19年)が世界同時配信されている。
 番組のフォーマットは各回約5分前後の全13回で構成されており、かつてテレビ東京系で歴代ウルトラマンシリーズのセレクト再放送や名場面集を放映する枠として存在していた『ウルトラマン列伝』(11~13年)、およびそれを継承しつつも『ウルトラマンギンガ』(13年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200819/p1)・『ウルトラマンギンガS(エス)』(14年)・『ウルトラマンX(エックス)』(15年)といった新作テレビシリーズをも放映する枠となった『新ウルトラマン列伝』(13~16年)の枠内で放映された短編シリーズである、


●『ウルトラゼロファイト』(12~13年)
●『ウルトラファイトビクトリー』(15年)
●『ウルトラファイトオーブ 親子の力、おかりします!』(17年)


と同一のスタイル・作風であり、『ファイトビクトリー』や『ファイトオーブ』と同じく脚本・足木淳一郎と坂本浩一監督のコンビが手がけている。


 ところで、この足木淳一郎なる人物は、先述した『ウルトラマン列伝』の途中から構成・脚本や音響効果として放映中の『ウルトラマンタイガ』(19年)に至るまでクレジットされている。手がけた作品を見ると『ウルトラマンオーブ』(16年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20170415/p1)から『タイガ』に至るまでの第13話、つまり毎年の恒例(こうれい)であるシリーズの折り返し地点である第13話で総集編を書いてきたかと思えば、『タイガ』では『ウルトラセブン』(67年)第45話『円盤が来た』の50年後の続編である第6話『円盤が来ない』を書いているほか、設定監修として名前があったりする。
 また、近年のニュージェネレーション・ウルトラマンの放映休止期間にあたる毎年1月から6月までの半年間に、『ウルトラマン列伝』的な再放送と名場面集として放映されている『ウルトラマンゼロ THE CHRONICLE(ザ・クロニクル)』(17年)や『ウルトラマンオーブ THE CHRONICLE』(18年)、『ウルトラマン ニュージェネレーションクロニクル』(19年)も手がけているのだ。
 この経歴から推測させてもらうならば、実は足木氏とは1990年代からバンダイビジュアルの『ばっちしV(ブイ)』シリーズをはじめとするウルトラマンの格闘名場面を再編集したビデオソフトや、1960年代後半から1970年代初頭に発売されたソノシートを彷彿(ほうふつ)とさせるようなウルトラマンや怪獣が大挙登場するドラマCDなどの構成・脚本・音響効果で活躍してきた、円谷プロの秋廣泰生(あきひろ・やすお)氏のペンネームではないのかと憶測したりする――違っていたら申し訳ないのだが、足木氏の名前が出るようになって以降、秋廣氏をスタッフクレジットで見たことがないので(笑)。~後日付記:67年生まれの秋廣氏よりもはるかに年下である82年生まれの別人なのだそうで、失礼いたしました(汗)――。
 いや、どちらも濃ゆいオタク過ぎてよほど波長が合うのか、坂本監督と共謀(きょうぼう)して我々のような怪獣博士的なオタク心をくすぐりつづけつつも、大衆・ライト層をもエンタメ的に喜ばせる「活劇」が描くことができる、円谷の文芸部の足木淳一郎氏は注目の人物ではある。


 さて、


●先の『ウルトラゼロファイト』は、映画『ウルトラマンサーガ』(12年・松竹・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20140113/p1)の直接的な続編であった。『サーガ』で競演したウルトラマンダイナとウルトラマンコスモスの力を受け継いでタイプチェンジを果たし、別個体という設定で敵の触覚宇宙人バット星人までもがひきつづき登場していた。


●『ウルトラファイトビクトリー』もまた、映画『劇場版 ウルトラマンギンガS 決戦! ウルトラ10勇士!!』(15年・松竹・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200404/p1)の続編であった。地球の地底人であるショウ=ウルトラマンビクトリーが『劇場版』のラストで見習い隊員となった防衛組織・UPG(ユーピージー)の隊員服姿で登場していた。


●『ウルトラファイトオーブ』は、映画『劇場版 ウルトラマンオーブ 絆(きずな)の力、おかりします!』(17年・松竹・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200406/p1)の続編であるのみならず、映画『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE(ザ・ムービー)』(09年・ワーナー・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20101224/p1)では宿敵となった悪の黒いウルトラマンことウルトラマンベリアルの武器であった100体もの怪獣を自在に操れるギガバトルナイザーをキーアイテムとして描くことで、ベリアルの息子=ウルトラマンジードが主役となった次作『ウルトラマンジード』(17年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20180213/p1)の前日譚(ぜんじつたん)ともなっていた。


 本作『ウルトラギャラクシーファイト』も、映画『劇場版 ウルトラマンR/B(ルーブ) セレクト! 絆のクリスタル』(19年・松竹・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190407/p1)の続編である。この『劇場版』でデビューを飾り、『ウルトラマンタイガ』のレギュラー悪となっているウルトラマントレギアが登場し、『ギャラクシーファイト』最終回で描かれるのだろう7大ウルトラマンvsトレギアの戦いが、そのまま『タイガ』第1話『バディゴー!』の冒頭(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190811/p1)へとつながっていく。
 そして、『ゼロファイト』・『ファイトビクトリー』・『ファイトオーブ』と同様に、「昭和」「平成」の歴代ウルトラマンたちを総登場させることで、「新時代」最初のウルトラマンである『タイガ』が前作の『ウルトラマンR/B』(18年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20180826/p1)のみならず、「昭和」「平成」の歴代ウルトラマンシリーズとも連続性を持ち、世界観を共有する「ひとつの世界」と成りえているのだ。


*予算の都合だろうが、既存の着ぐるみキャラだけで有効活用! ウルトラマンリブット・ウルトラダークキラー・偽ウルトラマン軍団!


 本作で新規に登場するキャラとしては、宇宙の災厄(さいやく)から生命を守るウルトラ一族の故郷であるM78星雲・光の国の一組織であるギャラクシーレスキューフォースの一員でもあるウルトラマンリブット、そしてウルトラの名を冠する者をすべて抹殺しようとするウルトラダークキラーが挙げられる。


 これまでのウルトラマンの概念(がいねん)を打ち破るかのような革新的なデザインが多かったニュージェネレーション・ウルトラマンたちとは異なり、初代ウルトラマンに赤のラインを少々増やしただけに見えるウルトラマンリブット。そのデザインは平成初期に誕生したウルトラマングレート(90年)・ウルトラマンパワード(93年)・ウルトラマンネオス(94年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19971115/p1)などに先祖帰りしたかのような印象が強く、逆におもわず注目してしまうものがある――ただ、手足にはギャラクシウムなる青い硬質なクリスタル状の装飾が配されて、左腕にはやはり青いクリスタルが印象的な小さな盾(たて)であるリブットブロッカーを装備している――。
 ウルトラマンリブットは幼児にイスラム文化を教える知育・情操番組としてマレーシアで放送されている3DCGアニメ『ウピンとイピン』(07年)に円谷プロの公認で2014年に登場したのを出自としているそうだ。日本の映像作品への登場は本作が初なのかと思いきや、2016年の『新ウルトラマン列伝』最終回(第155話)『グランドフィナーレ! ウルトラ戦士よ永遠に!』にもすでにモブキャラ映像として登場していたそうであり――そんなもんネットでの反響までチェックしていなければ気づけるワケがない(爆)――、今回は2度目の登場となるのだそうだ。


 ちなみに、「リブット」とはマレー語で「嵐」を意味するものだそうだ。リブットの動きにはマレー現地の武術・シラットが取り入れられている。現地でアトラクション用に製作されたスーツをベースにしたリブットのアクションを、坂本監督はこのシラットを基本に演出しているそうだ。
 初登場のEpisode3(エピソード・スリー)でリブットが『ウルトラQ(キュー)』(66年)に登場した冷凍怪獣ペギラと対戦する。映画『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説』でグリーンバックを背景にしたワイヤーアクションによるウルトラマンの動きを確立させ、その後も継承させるに至った坂本監督である。このリブットvsペギラのバトル場面は本作『ウルトラギャラクシーファイト』におけるほかのウルトラマンたちのアクション演出と比べ、明らかに差別化されている。


 地球と同様に青空を背景とした水の惑星・リクエターの湖で冷凍光線を吐いて暴れまわり、星の住人・海底原人ラゴンを危機に陥(おとしい)れるペギラに対して空からスピーディーな高速キックを合成映像で浴びせかけるリブットこそ、いつもながらの坂本演出だ。しかし、「ギャラクシーレスキューフォースウルトラマンリブット、出動!」と、武術のような構えでリブットが名乗りをキメて以降は、そのアクションは翼竜型怪獣でもあるペギラの緩慢(かんまん)な動きに合わせるかたちで、スピード感よりも巨大感や重量感を強調した演出となっていた。
 惑星に着地したリブットを真下から超アオリで捉えた足下(あしもと)に猛烈な水しぶきが湧き上がったり、建造物がない代わりに周囲に常に樹木を配置して、そのバトルを絶えずアオリで捉えるのもさることながら、湖での戦いを斜めに傾いたカメラが手前に森をナメながら超高速で横移動しながら捉えているさまは、リブットvsペギラのバトルの重厚でもやや緩慢で今時の飽きっぽい視聴者からすればややローテンポな映像にもなりかねないシーンになりかねないところを、手前の樹木を超高速で動かすことで「重厚感」と同時に「スピード感」をも付与して、両者を両立(!)もさせている秀逸(しゅういつ)な演出なのだ!


 リブットが両腕をゆっくりと回すことで周囲から光の粒子が集結して放たれる必殺光線「ギャラクシウムブラスター!」をペギラに浴びせる場面で、リブットが振り回している両腕の残像がCGで描かれているのは、名作時代劇映画やテレビ時代劇『眠狂四郎(ねむり・きょうしろう』シリーズの必殺剣技・円月殺法(えんげつ・さっぽう)由来のもので、『バトルフィーバーJ』(79年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20120130/p1)や『電子戦隊デンジマン』(80年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20120205/p1)の戦隊巨大ロボットのバンク映像による必殺剣の特撮映像などにも引用されてきた残像処置である。これによって、やはり力押しだけではない東洋的な神秘を感じさせるワザであることも含意させており、ウルトラマングレートがオーストラリア、ウルトラマンパワードアメリカ出身であったのに対して、リブットが東南アジア出身――といっても儒教圏ではなくイスラム圏だが――であることから着想された演出でもあるだろう。


 一方のウルトラダークキラーは、2012年にパチンコメーカーの京楽(きょうらく)からリリースされた『CRぱちんこウルトラマンタロウ 戦え!! ウルトラ6兄弟』がデビュー。同作以降は同社の『CRぱちんこウルトラマンタロウ 暗黒の逆襲』(13年)・『CRぱちんこウルトラバトル烈伝 戦えゼロ! 若き最強戦士』(15年)に連続して登場した敵キャラクターである。本作『ギャラクシーファイト』にも主要キャラとして登場するウルトラマンゼロウルトラマンタロウとも深い因縁(いんねん)を持った敵であり、ウルトラ兄弟に倒された怪獣や宇宙人の怨念(おんねん)が生み出した闇の超人として描かれていた。
 『ギャラクシーファイト』ではウルトラマンエックスダークネス・ウルトラマンジードダークネス・ゼロダークネス、そしてウルトラマンオーブダークノワールブラックシュバルツ(笑・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20181104/p1)ではなくウルトラマンオーブダークネスといった闇の超人たちが敵キャラとして登場する。


 これらはもちろん、本作もまた低予算作品なので、着ぐるみキャラをゼロからデザインして新規造形すると高額の予算を要してしまうために、既存の着ぐるみの色の塗り替えだけで済む、そして強そうにも見えるニセモノのウルトラマンを登場させたといった趣向だろう。


 ウルトラダークキラー自体もタロウに酷似(こくじ)した胸のプロテクターの中央には、ウルトラマンたちのようにエネルギー切れ間近を示すワケではないものの常に赤く光っているカラータイマーを備えており、タロウと同じく両耳部分にはウルトラホーンなる巨大なツノがあり、両腕の手甲(てっこう)にはウルトラセブンアイスラッガーのような鋭利な刃物を装着している暗黒の超人である。


 デビュー作の『戦え!! ウルトラ6兄弟』ではウルトラ5兄弟と合体したスーパーウルトラマンタロウが放った特攻自爆の必殺ワザ「ウルトラダイナマイト!」に敗れて、続編の『暗黒の逆襲』ではウルトラ5兄弟をベースにした黒いウルトラ5兄弟ことウルトラダークキラーブラザース(!)を生み出し、『戦えゼロ!』では異次元空間でウルトラマンゼロを待ちかまえていたウルトラダークキラー。
――もちろん、このウルトラダークキラーも、内山まもる先生が『小学三年生』に連載した『ウルトラマンレオ』コミカライズ(74年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20061028/p1)に登場させたオリジナル敵キャラ・ウルトラキラーゴルゴが元ネタだろう――


 本作でも数々のウルトラマンたちのダークネスこと闇の超人を生み出すのはもちろんのこと、Episode1では『ウルトラマンR/B』の2大主役ウルトラマンであるウルトラマンロッソ&ウルトラマンブルが不在となった綾香市(あやかし)の森で光線の訓練をしていたウルトラウーマングリージョをかばったゼロが、ダークキラーによってグリージョとともに「無限の闇」こと「ダークキラーゾーン」に幽閉されて、Episode5ではかつてウルトラ5兄弟と合体したスーパーウルトラマンタロウが「ウルトラダイナマイト!」でダークキラーを葬(ほうむ)った過去がタロウの回想として語られる。
――つまり、本作『ギャラクシーファイト』では『ぱちんこ』展開などはパチモンである! なぞとは斬り捨てずに、うれしいことに正史・前史として全肯定的に描いてもいることになるのだ!――


 ここ数年はヒーロー共演が恒例である劇場作品でも、2010年代のウルトラ先輩戦士は客演しても昭和のウルトラマンがあまり登場していないが、足木氏と坂本監督は、


●『ウルトラファイトビクトリー』ではウルトラマンエースウルトラマンレオ&アストラ兄弟
●『ウルトラファイトオーブ』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20170603/p1)ではゾフィーウルトラセブンウルトラマンジャック


を放映当時の最新ウルトラマンや歴代平成ウルトラマンたちとも競演させており、たとえ回想のかたちではあっても今作でも「昭和のウルトラマン」の活躍を描くことで、平行世界を越境できるという2010年代以降のウルトラシリーズの新設定も活(い)かして、「平成ウルトラマン」や「ニュージェネレーション・ウルトラマン」とも世界観を共有する「ひとつの世界」としてまとめあげているのは評価されてしかるべきだろう。


 本作でダークキラーと手を組む悪党が、


●2010年代のニュージェネレーション・ウルトラマン最初の作品『ウルトラマンギンガ』のラスボスだった暗黒の魔神ダークルギエル
●坂本監督作品の映画『劇場版 ウルトラマンギンガS』に登場した超時空魔神エタルガー
●そして、『劇場版 ウルトラマンR/B』でデビューを飾って、『ウルトラマンタイガ』の宿敵となったウルトラマントレギア


 それぞれがタロウやゼロ、ギンガやビクトリーらに因縁がある敵をせいぞろいさせることで、いきなり初登場しただけの敵キャラでは強敵としての属性しか存在しないであろうところを、人間関係のもつれ的なドラマ性が自然と醸(かも)されてきて、加えて個別単独の作品を超えたウルトラシリーズとしての連続性のような感慨まで惹起(じゃっき)されてくるのだ。


 Episode6の冒頭でのマイナスエネルギーに満ちている惑星テンネブリスのダーク宮殿にて、ダークルギエルがギンガを、エタルガーがビクトリーはオレが倒すなどと口にする中、ウルトラマントレギアが「全ウルトラマンのダークネスをつくる本来の目的を忘れては困る」などと語るさまは、さながら昭和の時代からある東映ヒーローものや合体ロボットアニメに登場した敵組織の幹部たちのようである。
 これはそのことをマネであるなどといってバカにしている発言ではない。むしろ、正義の軍団vs悪の軍団との攻防劇を、敵キャラクターのお団子状態にはさせずに多数の各キャラクターを描き分けるためには、このようなそれぞれの思惑(おもわく)の違いを短い尺の中で点描していくことこそが正解でもあるからだ!


*バトルや幕間でも点描されていく、ウルトラマンたちの「人物相関図」!


 さて、先述したようにゼロとグリージョがダークキラーによって捕らわれの身となるのと並行して、


●惑星サンダウィンではウルトラマンエックス&ウルトラマンジードvsエックスダークネス&ジードダークネスにつづいて、ダークルギエルがエックスとジードを襲撃!
ウルトラマンオーブウルトラマンロッソ&ウルトラマンブルの兄弟がウルトラマンとしての力を授(さず)かった惑星・O-50(オー・フィフティー)では、サンダウィンから移ってきたエックスダークネス&ジードダークネスがオーブを急襲!
●光の国の宇宙警備隊本部でタロウからグリージョの危機を知らされて、彼女の救出へと向かっていたロッソ&ブルの兄弟は、エタルガーによって惑星ペノルに撃墜されて、そのまま強敵のエタルガーと対戦!


 ……と、全宇宙狭しと大活躍するニュージェネレーション・ウルトラマンたちが描かれていく。


●惑星サンダウィンの背景の宇宙は、夕陽のような逆光を背景に両眼と胸中央にあるカラータイマーのみが妖(あや)しく光っているエックスダークネス&ジードダークネスのシルエットが陽炎(かげろう)の中に浮かんでいる、Episode1の冒頭におけるインパクト絶大なカットが象徴するように真っ赤
●惑星O-50は暗雲がたちこめる漆黒の空
●惑星ペノルは地球同様に青い空に白い雲


 と、その舞台が明確に映像的にも差別化されている。


 ウルトラマンたちが次々とタイプチェンジを披露しながら戦うさまは、本作が役者が演じる人間キャラが登場しない完全な「仮面劇」であり、延々とバトル場面がつづくだけに、縦横無尽(じゅうおうむじん)に目先の変化を繰り出すことで、視聴者を飽きさせないための工夫がなされている。
 ウルトラ兄弟の長男・ゾフィーウルトラマンベリアルのカードの力を借りてタイプチェンジするウルトラマンオーブ・サンダーブレスターのキックやパンチで、エックスダークネス&ジードダークネスが受ける衝撃波がCGで描かれてその衝撃度も強調されているように、スローモーで重厚な演出がなされたかと思えば、ゼロやウルトラマンジャックの力を借りたウルトラマンオーブ・ハリケーンスラッシュにタイプチェンジした途端に、スピード感にあふれるバトル演出に一転するのはその典型例なのだ。


ウルトラマンビクトリーがテレビシリーズ以来の能力である、その右腕をどくろ怪獣EX(イーエックス)レッドキングのデカすぎる握りこぶしに変化させて、それを大地にたたきつけて前面に延びていく地割れからマグマを噴出!
ウルトラマンエックスがテレビシリーズ以来の能力である、宇宙怪獣エレキングを模(も)したアーマー(ヨロイ)を装着して、「エレキング電撃波!」をエックスダークネスに浴びせる!


 これらの描写などを観ていると、そういえばここ数作のニュージェネレーション・ウルトラマン作品にはここまで視覚的にインパクトがある、ある意味ではデタラメに誇張された漫画チックな大ワザがあまりないのは、今時の子供番組としては少々地味かもしれないなぁ……などと複雑な気持ちになったりもするのだが。


 そして、オーブをビクトリーが、エックスとジードをギンガが、ロッソ&ブルをタロウからのウルトラサイン――おなじみ、ウルトラ文字を宇宙空間に表示させる連絡手段!――を受けたリブットが救出する!
 これらの描写もまた、エックス以前のウルトラ戦士であるギンガ・ビクトリー・リブットが先輩としての強さを示すのみならず、ウルトラマン同士の関係性をも端的に表わすやりとりが点描されることで、たとえバトル場面が中心ではあってもキャラクターの個性も描いている群像劇として完成されているのだ。


●ふだんは少々ガラの悪いヤンキーキャラでありながらも、深い闇の中で苦しむグリージョに胸のカラータイマーから自身の光のエネルギーを与えるゼロ。


●「ここで負けたらウルトラマンの名が泣きますからね!」と、ダブル必殺光線でダークルギエルに一矢報いた(いっし・むくいた)エックスとジードを「上出来だ、後輩!」と讃(たた)えて、「話せる兄貴」的な姿を見せるギンガ。


●「おまえらは修行が足りてない。ゼロ、いや、(ウルトラマン)レオ兄弟に鍛(きた)えてもらった方がいい」などと、本作には登場しないレオ兄弟にも言及することで、ウルトラシリーズの作品世界の広さも示している。とはいえ、レオ兄弟とは面識がない後輩キャラたちであるロッソ&ブルは「レオって誰だよ?」とボケさせることで、ロッソ&ブルにもいかにもそれらしいキャラ性を同時に立てることもできていた。


 ちなみに、ウルトラマンビクトリーは『ウルトラファイトビクトリー』(15年)でウルトラマンレオ&アストラ兄弟と競演している。先述した映画『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説』(09年)でレオ兄弟がウルトラマンゼロの師匠として描かれて以降、その続編となったオリジナルビデオ作品『ウルトラ銀河伝説外伝 ウルトラマンゼロVSダークロプスゼロ』(10年・バンダイビジュアルhttps://katoku99.hatenablog.com/entry/20200125/p1)でもレオとゼロとの師弟関係&共闘劇は描かれてきた。ビクトリーのロッソ&ブルに対する一喝はそれらの先行作での描写を継承するかたちで、あのゼロの上にもさらにレオ兄弟なる偉大な存在がいることを立体的に示唆(しさ)してもいるのだ。


●そんなロッソ&ブルに同じくO-50出身の後輩として「よろしくな」と暖かく声をかけるオーブの姿に、「もしかしてオーブ!?」などと突然の先輩の登場にミーハーに喜んでいるロッソ&ブル
●宇宙警備隊本部に遅れてやってきたギンガに「遅いぞ」と声をかけたビクトリーに、「ゼロが云ってたろ。主役は遅れて来るって」と余裕の冗談を口にし、彼らが地球で所属した防衛組織・UPGの合言葉「ガレット!」も口にして拳(こぶし)を合わせるギンガとビクトリー


 ちなみに、ゼロが「よく云うだろ。主役は遅れて来るってな」と左手で二本指を立てて語ったのは、『ウルトラマンジード』第8話『運命を越えて行け』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200523/p1)の際だった。ギンガがこの回に登場したワケでもないのにそれを知っているのは、ゼロが遅刻の言い訳としてしょっちゅうこれを口にしているからだろう(笑)。
 そして、映画『劇場版 ウルトラマンR/B』で競演したことから「ひさしぶり!」と手を振って声をかけるロッソ&ブルに気づかないほどに――リアルに考えればコレもアリエない描写なので、ここもやはり漫画チックな描写なのだが、それが悪いというワケでもない。むしろジードのキャラクターも立つのと同時にクスッと笑えるのだ!――、「ここが光の国か!?」と初めて目にする故郷の星に感動して、「ペガやライハにも見せてあげたかった」と、『ジード』のレギュラーキャラであるペガッサ星人ペガや同作のヒロインの名前を挙げるかたちで、仲間に想いを寄せるジードも描くことで、『ジード』の作品世界や登場人物たちとも本作は確実につながっているのだという気持ちにもさせてくれるのだ。


 Episode5で描かれたこれらの短い描写は、過去作品で描かれたセリフや世界観を受けた描写だった。しかし、たとえそれらの過去作を観てはいない視聴者にとっても、それぞれのウルトラマンのキャラクターの違いや関係性や物語性がフワッと想起させられてくる演出にはなっているのだ! ひいては、本作のこれらの描写がフック(引っかかり)となって、過去作を観てみようと思う視聴者だって少数であっても確実にいることだろう!


 そして、グリージョの救出に力を貸してほしいとのロッソ&ブルの頼みを先輩ウルトラマンたちが快諾(かいだく)し、7人のウルトラマンが光の国のエメラルドグリーンに輝くクリスタルタワーの上空にいっせいに飛び立って、ブラザースマントを着用した今や重鎮のウルトラ6兄弟たちが見送っているEpisode6の場面で、タロウが「我々にも頼もしい仲間が増えましたね」などと、2010年代のニュージェネレーション・ウルトラマンたちのことを感慨深げに昭和のウルトラ兄弟たちにつぶやく描写は、昭和のウルトラ6兄弟と2010年代のニュージェネレーション・ウルトラマンがたしかに魂の系譜としても「つながった」瞬間であるとして、多くの視聴者にも心に深く刻(きざ)まれる演出だったことだろう。


*シーソーバトルから大逆転劇へ至る、新世代ウルトラマンたちのウルトラマンゼロとの因縁&奮起!


 「来たな、ウルトラマン」と憎々しげにつぶやくウルトラダークキラーがアジトとする惑星テンネブリスに、リーダーとなるギンガを中心に横並びで着地する7人のウルトラマンにカメラが高速でズームイン! ギンガの「行くぜ、みんな!」を合図に全ウルトラマンがファイテングポーズをキメる、最高にカタルシスにあふれる描写でEpisode7は開幕する!


 ここは昭和の時代のいかにも模型ミニチュアな飛び人形などではなく(笑)、スーツアクターが着用した着ぐるみ姿で高速飛行している7人のウルトラマンが真横のアングルからカメラも高速移動で追随しているように捉えられて、それぞれのウルトラマンのニセモノことダークネスと対戦するためにエックス・オーブ・ジードの3人だけは「ここはオレたちが(引き受けて戦います)!」と惑星の荒野へと着地する!


 彼らに任せて奥地へと先行したギンガ・ビクトリー・ロッソ・ブルが向かったダーク宮殿ではダークルギエル&エタルガーが待ちかまえており、対戦相手としてご指名を受けたギンガとビクトリーは、ロッソとブルをゼロとグリージョが幽閉されているさらなる奥地へと急行させる!


 一度は大集結したウルトラマンたちが過去作での因縁の敵と対戦するために散り散りになっていくさまを、坂本監督はすでに映画『劇場版 ウルトラマンギンガS』のクライマックスでも描いていた。大集合のカタルシスを描きつつも、バトルにおいて個々のキャラクターの強さやカッコよさを描くためには、再びバラバラに戦場を分散させた方が都合がよいのだ(笑)。


 エックスとエックスダークネスが画面手前に向かって空中戦を展開する!


 その真下ではオーブが大型の必殺剣「オーブグランドカリバー!」でイナズマを巻き起こす!


 オーブダークネスも剣先を回して紫色の光線を発射!


 その先の空ではジードダークネスが高速で舞いながらジードを攻撃!


 それに向かって両腕から必殺光線・レッキングバーストを放つジードを、周囲の360度から超高速で回り込みつつ下からのアオリで捉えるジード定番の必殺ワザの発射直前の演出も漏れなく見せてくれる!


 ギンガが自身の主演作での最終回(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200827/p1)と同様に、ギンガスパークランスなる白い光の槍(やり)でダークルギエルと剣術バトルを繰り出すさまを真下からアオリで捉える!


 かと思えば、その右腕を宇宙ロボット・キンギジョーカスタムのそれに変化させて砲撃連射「キングジョー・ランチャー!」をブっ放しながら画面左奥へと高速で後ろ向きに飛んでいくビクトリーを、画面右手前から追撃するエタルガーが背面から描かれる!


 まさに「蝶(ちょう)のように舞い、蜂(はち)のように刺す」ようなアクション演出といっても過言ではないほどに、臨場感とスピード感にあふれるバトル演出は最高にカッコいい!


 だが、先輩ウルトラマンたちが善戦する中で、ゼロとグリージョを救うために戦うロッソ&ブルの必殺ワザはウルトラダークキラーにことごとく弾(はじ)かれてしまい、Episode8のラストでダークキラーはゼロの眼前でゼロから奪取していたエネルギーを正負反転させてゼロダークネスを生み出してしまう!
 このゼロダークネスは、先述した『ウルトラゼロファイト』の第2部『輝きのゼロ』(12年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200314/p1)終盤で、ウルトラマンベリアルの怨霊(おんりょう)がゼロに憑依(ひょうい)して誕生したものだ。Episode9では映画『ウルトラマンゼロ THE MOVIE 超決戦! ベリアル銀河帝国』(10年・松竹・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20111204/p1)以来、使用されている楽曲『ベリアルのテーマ』が流れる中で、ゼロダークネスがベリアルのようにカッタルそうに首を回す動きを継承することで、ゼロの因縁の敵であることをより印象づけていた。


 そして、ダークキラーはウルトラマンたちの身長よりも倍に近い姿へと巨大化! これはもちろん、ダークキラーがウルトラマンと同サイズのままではウルトラマンたちによる集団イジメに見えてしまいかねないことを回避して、1vs多数の爽快な集団戦を描いてみせるための処置でもある(笑)。
 そんな巨大な姿となったダークキラーを背景に、ニュージェネレーション・ウルトラマンたちの大活躍を描きつつも、大ピンチの描写も重ねられてダークキラーの絶大なる力を端的に示すアクション演出が危機感をあおっていく。


 しかし、この手の作品は最後には正義のヒーローたちに勝利してもらわなければならない(笑)。そこでは音楽演出も機能してくる。ウルトラマンたちの大逆転劇を描くファンファーレとして流れ出すのは、先述した映画『ゼロ THE MOVIE』アバンタイトルで、ゼロがM78星雲を飛び出して超光速で宇宙の果てを突破し、マルチバース=多元宇宙を飛行する場面に1コーラスのみが流れた勇ましい主題歌調の幻の名曲『すすめ! ウルトラマンゼロ』なのだ!


 「ゼロさんは親子の力を教えてくれた!」と、ゼロの父であるセブン&ゼロの力を借りた姿であるエメリウムスラッガーにタイプチェンジするオーブ!


 「ゼロの想いは時空を超えてオレたちをつなぐ!」と、ゼロが装着するヨロイ・ウルティメイトイージスをコピーしたゼロアーマーをまとうエックス!


 「ゼロがいたから、僕は運命を変えることができた!」と、ゼロ&ウルトラの父のウルトラカプセルでマグニフィセントの姿に強化変身するジード!


 そして、先述した映画『劇場版 ギンガS』でゼロの特訓を受けたウルトラマンギンガ&ウルトラマンビクトリーは、ゼロの勇気と諦めない心を胸に同作同様に「ウルトラタッチ!」の掛け声とともにウルトラマンギンガビクトリーへと合体変身をとげる!


 ゼロの上半身の巨大なイメージ映像を中央バックに、


ウルトラマンギンガビクトリー
ウルトラマンエックス・ゼロアーマー
ウルトラマンオーブ・エメリウムスラッガー
ウルトラマンジード・マグニフィセント


といった、先行シリーズでのゼロの力を継承した姿でもある4大ウルトラマンが並び立つ!


 これらの描写はあまりにも強い敵・ダークキラーを倒すためにも、ニュージェネレーション・ウルトラマンたちが過去作での設定やドラマを忘れずに、ゼロ由来の力でテレビシリーズでもお馴染みの強化形態へとタイプチェンジを果たしたことで、あれほどまでに強かったダークキラーを倒せることへの劇中内での一応の合理的・物理的・肉体的な説明としての「説得力」にも昇華しているのだ。
 加えて、ただ単にウルトラマンたちが物理的・肉体的にパワーアップしただけでもない。各自の最強・最終形態に変身したのでもなく、ゼロによる特訓や彼との交流に由来する中間形態としての強化形態に変身するかたちで、過去作でのドラマをそれらの強化形態に投影・反復・想起させることで、仮面のキャラクターたちが繰り広げるやりとりにいわゆる「人間ドラマ性」をも高く付与することができているのだ! 「アクション性」と「ドラマ性」を同時に兼ね備えさせている一粒で二度オイシい作劇&描写!


*息の長いキャラや息の長い消費をされるためにも、先輩ヒーロー助っ人参戦やヒーロー大集合作品が必須!


 Episode10では、グリージョさえもが「絆をあきらめない! 私だってウルトラマンです!」などとゼロを助けるために奮起して、あの強敵・ゼロダークネスをキックやヒジ打ちで攻撃したあげくに、全身から強烈な閃光を放ってダークキラーとゼロダークネスを遠方へと吹っ飛ばす!
 そして、兄のロッソ&ブルに逆にエネルギーを与えて回復させるという、一見は昭和の時代の特撮変身ヒーロー番組にはよくあったお荷物の人質キャラのままかと思わせて、登場キャラのすべてに見せ場を与える点描も挿入されるかたちで開幕する。


 ウルトラマンロッソ&ウルトラマンブルが合体変身した姿でもある、彼らが主演のテレビシリーズ後半でもおなじみのウルトラマンルーブが、ゼロダークネスが両腕をL字型にして放った必殺光線・ワイドゼロショットを右手だけでしばらく受け止めてから払いのける!
 それらが炎のシャワーとなって後方に降り注いで着弾! 盛大な爆炎を上げているさまを背景に、画面の手前に悠然と闊歩してくる最新ヒーロー・ルーブの絶大な「強さ」を印象づける演出も実にカッコいい!
 伏せたゼロダークネスの背中の上で側転してダークキラーにキックを浴びせたり、ロッソに変身する主人公の青年・湊カツミ(みなと・かつみ)は野球が得意だった設定を活かして、テレビシリーズ同様にピッチャーがボールを投げるように振りかぶってからゼロダークネスにパンチを浴びせるアクションも最高にカッコいい!


 ニュージェネレーション・ウルトラマン作品の主題歌メドレーが流れ出す中で、


●オーブエメリウムスラッガーは、頭頂部の3本のトサカとなっているブーメランこと、『ウルトラファイトオーブ』終盤でも披露した緑や青のあざやかな3本のスラッガーを念動力で宙に舞わせて敵にブツける「ハイパーウルトラノック戦法!」
●エックスは、ゼロアーマーをゼロのヨロイであるウルティメイトイージス同様に、脱着して中空で弓矢状に変形させてから発射する「ファイナルウルティメイトゼロ!」
ジードマグニフィセントは、両腕をL字型に組んで発射する、ウラ設定では77万度もある緑色の電撃光線「ビッグバスタウェイ!」――この77万度という設定はウルトラマンレオの故郷であるL77星からの駄洒落的な引用であるらしいことに今ごろ気づいた(爆)――
●ギンガビクトリーも、ゼロの必殺ワザである両腕をL字型にして発射する光線「ワイドゼロショット!」


をそれぞれで放った! 各自の因縁の敵キャラを、見た目も含めて実にあざやかに倒していき、ウルトラダークキラーが率いた暗黒軍団はついに全滅する!



 とはいうものの、本作の真の黒幕でもある悪の青いウルトラマンことウルトラマントレギアは健在であり、放映もあと3回残っているのだ。しかし、個人的にはこの『ウルトラギャラクシーファイト』は、Episode9のラスト~Episode10にかけてこそが最大のドラマ&アクション的なクライマックスではなかったかと思える。
 ニュージェネレーション・ウルトラマンたちが皆、口々にウルトラマンゼロへの想いを吐露(とろ)してパワーアップをとげるさまは、彼らの背景に常に先輩として助っ人参戦や昭和的な特訓(笑)をほどこしてくれたゼロの存在があったことを最大限に象徴しているのだ。


 映画『ウルトラ銀河伝説』でウルトラセブンの息子として華々しくデビューを飾ったゼロであった。しかし、その公開から続編映画『ゼロ THE MOVIE』に至るまでの1年の間にゼロが正規の映像作品に登場したのは、先述したビデオ販売作品『ウルトラ銀河伝説外伝 ウルトラマンゼロVSダークロプスゼロ』くらいのものであり、主役となるテレビシリーズを製作することはできなかった。そのために、世間にゼロの存在が充分に認知されることがないまま、作品自体の完成度は高かったにもかかわらず『ゼロ THE MOVIE』は興行的には大コケをしてしまった。ヘタをすれば、この時点でゼロの商品的価値がそれこそゼロとなってしまう危険性もあったのだ(汗)。


 だが、その反省もあってか、映画『ウルトラマンサーガ』(12年)の前哨戦・宣伝の意味も込めて、ゼロは先述した再編集番組『ウルトラマン列伝』(11年)の番組ナビゲーターを担当し、後番組である『新ウルトラマン列伝』(13年)の番組ナビゲーターも含めて足掛け5年に渡って務めつづけて、その枠内では自身が主役となる短編シリーズ『ウルトラゼロファイト』(12年)なども放映された。
 『ウルトラマンサーガ』や『ウルトラゼロファイト』第2部で主演作品は一応は最後となったものの、「ちょいワル」なのに決して下品にはならずに育ちはよさげな不良少年(笑)といった絶妙な塩梅のキャラクター性で、子供たちの間でも大人気を博しつづけて、映画『劇場版 ウルトラマンギンガS』(15年)・映画『劇場版 ウルトラマンX きたぞ! われらのウルトラマン』(16年・松竹)・映画『劇場版 ウルトラマンオーブ』(17年)・映画『劇場版 ウルトラマンジード つなぐぜ! 願い!!』(18年・松竹・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20180401/p1)に至るまで、ニュージェネレーション・ウルトラマンの劇場版にゼロは4年連続(!)で客演を果たしてきた。
 そして、『ウルトラマンX』(15年)第5話『イージス 光る時』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200405/p1)にゲストで登場したのにつづいて、『ウルトラマンジード』(17年)でゼロはジードとのダブル主人公としてレギュラー入りを果たす快挙を成し遂げたのだ!


 ニュージェネレーション・ウルトラマンシリーズの第1作である『ウルトラマンギンガ』においては、昭和ウルトラ~『ウルトラマンメビウス』~『ウルトラゼロファイト』へと至る昭和ウルトラ直系の歴史がまたもリセットされて、せっかくの名キャラクター・ウルトラマンゼロが客演することはもうないのかも……と危惧されたものの、『劇場版 ウルトラマンギンガS』で先輩平成ウルトラマンたちと客演して以来、いつしかニュージェネレーション・ウルトラマンシリーズには欠かせない存在と化して成長していったゼロであった。
 ただし逆に云うと、ゼロの強烈なキャラクターは目立ちすぎてしまうという欠点もあり、本作ではゼロの弟子挌である若手のニュージェネレーション・ウルトラマンたちを活躍させるためにも、本作では冒頭において強敵ボスキャラによって閉鎖空間に幽閉されてしまう処置が採られている。たしかに各キャラクターの強弱バランスをとるためにもこういった処置の作劇を採るしかないだろう(笑)。


 とはいえ、ずっと幽閉されたまま、弱いまま、負けたままであっても、昭和のウルトラシリーズにおける先輩ウルトラマンたちの客演話(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20061105/p1)のようになってしまって、視聴者のフラストレーション(欲求不満)も溜まってしまうものだろう。よって、本作では最後にニュージェネレーション・ウルトラマンたちの大決戦と並行して、ゼロにも大活躍を果たさせてゼロダークネスを撃破するという役回りを与えているのだ。
 ニュージェネレーション・ウルトラマンたちを主役格として立てつつも、副主人公挌のポジションとしてゼロにも最後には目立たせるという、実にクレバーな活劇としての作劇だったのであった。今さら云っても詮(せん)ないことなのだが、この点では昭和のウルトラシリーズの先輩ウルトラマン客演編も見習ってほしかったところだし、昭和の時代に映像作品でもこのようなウルトラ兄弟客演編を観たかったものだ(笑)。


 もちろん、主役となるテレビシリーズがまともに製作されず実に変則的な活躍を余儀なくされてきたゼロが、ここまでの息の長いキャラクターと成りえたのは、その強烈なキャラクター性の魅力もさりながら、単純にこの10年に渡って絶えず映像作品に露出をつづけてきたことが大きい。


 たとえば、ゼロが誕生するたかだか3年前に放映された『ウルトラマンメビウス』(06年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20070506/p1)は当時は子供間でも年長マニア間でもそれなりの人気を博したものだ。しかし、映画『大決戦! 超ウルトラ8兄弟』(08年・松竹・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20101223/p1)や映画『ウルトラ銀河伝説』に客演して以降は、映画『劇場版 ウルトラマンギンガS』に客演した以外は露出が皆無(かいむ)となってしまったことから、すでに放映10年後の2016年の時点では完全に「過去のキャラクター」と化してしまった感もあったのだ――もちろん『メビウス』という作品自体は特撮マニア諸氏と同様に筆者も大スキなのだけど――。


 テレビシリーズが長らく中断していた時期にビデオ販売作品などで活躍していた、そんな過去の幻のキャラクターとなってしまった平成初頭のウルトラマンたちがその怨念(笑)で闇の超人と化して、昭和の時代ほどではないとはいえ平成初頭の時代以上には人気を博しているニュージェネレーション・ウルトラマンたちに復讐を果たそうとする作品が、ライダーシリーズのそれと同様に製作されてもよさそうなほどなのだ(爆・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190804/p1)。過去作のウルトラヒーローたちのソフビ人形も売るためにか、劇場版や今回のような短編シリーズで夢の競演を重ねる方針が継続されて、放映後も露出をつづけることでまだまだ現役感を出せている2010年代以降のニュージェネレーション・ウルトラマンたちは、その意味では今後しばらくは安泰(あんたい)だと見てよいのかもしれない。


 『ウルトラマンタイガ』につづく最新ウルトラマンたちやシリーズもののテレビ特撮作品の最新ヒーローたちが、放映から10年を経てもゼロのような息の長いキャラクターとなるためにも、本作のようなヒーロー共闘作品や先輩戦士が助っ人参戦するエピソードが継続して製作されていくべきなのである!


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2020年号』(19年12月28日発行)所収『ウルトラギャラクシーファイト』評より抜粋)


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ウルトラマンタイガ』中盤評 ~悩めるゲストのみならず、ボイスドラマでの超人たちのドラマこそ本編に導入すべきだ!

(文・久保達也)
(2019年11月20日脱稿)

*序盤は好調だった『ウルトラマンタイガ』に募っていく違和感!


 2019年9月29日から無料動画配信サイト・YouTube(ユーチューブ)で配信されている『ウルトラギャラクシーファイト ニュージェネレーションヒーローズ』(19年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200110/p1)。そのラストからつづくかたちで、


●『ウルトラマンギンガ』(13年)~『ウルトラマンR/B(ルーブ)』(18年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20180826/p1)に登場した7人のウルトラマン
●映画『劇場版 ウルトラマンR/B セレクト! 絆(きずな)のクリスタル』(19年・松竹・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190407/p1)で初登場した、悪の青いウルトラマンことウルトラマントレギア!


 この両者が、宇宙狭(せま)しと一大バトルを繰り広げる場面から、『ウルトラマンタイガ』(19年)第1話『バディゴー!』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190811/p1)は開幕した。


 ツカミとしてはあまりにも豪華なこの導入部の描写や、民間の警備会社・E.G.I.S.(イージス)の新人隊員であり、主人公の工藤ヒロユキ(くどう・ひろゆき)がウルトラマンタイガ・ウルトラマンタイタス・ウルトラマンフーマといった3人ものウルトラマンに変身する新機軸。
 そして、中心となるタイガがかのウルトラマンタロウの息子であったり、昭和から平成に至る歴代ウルトラマンシリーズに登場した悪の宇宙人たちで結成された犯罪組織=ヴィランギルドの登場など、過去作品との密接なつながりと世界観の拡大を感じさせる設定の数々には、筆者にかぎらず今後の展開に期待した視聴者はきっと多かったことだろう。


 事実、先述した第1話の完成度が、『ウルトラマンギンガ』(13年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200819/p1)以降のニュージェネレーション・ウルトラマンシリーズの最高傑作! といっても過言ではないほど高かった。いや、毎回あれだけの高レベルのものを観せろ! と主張するつもりはない。しかし、すでに『タイガ』は第1クール半ばくらいの時点で、先述したようなシリーズ序盤で示された世界観からすれば、個人的にはどうにも違和感がつきまとうような作風・路線である印象が強いのだ。
 その違和感と戦いながら視聴してきた『タイガ』も、執筆時点で第20話『砂のお城』までが放映されて、早くも終盤を迎えようとしている。そこで、今回は『タイガ』につきまとう違和感はいったい何が要因で生じているのかを検証してみたい。


*「お悩み相談」のゲストとして登場する宇宙人……


 まず、『タイガ』で描かれる地球では、オープニング・ナレーションにも語られているように多数の宇宙人がひそかに暮らしている。これまでに登場した宇宙人たちを以下に並べてみる。


●第1話『バディゴー!』 → サーベル暴君マグマ星人、宇宙商人マーキンド星人、宇宙怪人セミ人間、昆虫宇宙人クカラッチ星人
●第2話『トレギア』 → 宇宙商人マーキンド星人、電波怪人レキューム人
●第3話『星の復讐者』 → 未登場
●第4話『群狼(ぐんろう)の挽歌(ばんか)』 → 変身怪人ゼットン星人ゾリン、健啖(けんたん)宇宙人ファントン星人
●第5話『きみの決める未来』 → ダマーラ星人
●第6話『円盤が来ない』 → 宇宙ヒットマン・ガピヤ星人アベル、サイケ宇宙人ペロリンガ星人
●第7話『魔の山へ!!』 → 暗黒星人ババルウ星人、集団宇宙人フック星人
●第8話『悪魔を討て!』 → 未登場
●第9話『それぞれの今』 → 戦略星人キール星人、殺戮(さつりく)宇宙人ヒュプナス
●第10話『夕映(ゆうば)えの戦士』 → 暗殺宇宙人ナックル星人オデッサ
●第11話『星の魔法が消えた午後』~第12話『それでも宇宙は夢を見る』 → 宇宙怪人ゼラン星人オショロ
●第13話『イージス超会議』 → (総集編)
●第14話『護(まも)る力と戦う力』 → 高次元人イルト
●第15話『キミの声が聞こえない』 → 頭脳星人チブル星人マブゼ
●第16話『我らは一つ』 → 未登場
●第17話『ガーディアンエンジェル』 → 宇宙怪人ペダン星人、昆虫宇宙人クカラッチ星人・ミード
●第18話『新しき世界のために』 → 触覚宇宙人バット星人、変身怪人ピット星人、集団宇宙人フック星人
●第19話『雷撃を跳(は)ね返せ!』 → 憑依(ひょうい)宇宙人サーペント星人
●第20話『砂のお城』 → 変身怪人ゼットン星人ゾリン、宇宙帝王バド星人エル・レイ、ヘイズ星人ミスティ


 第1話と第2話では、マグマ星人やレキューム人が怪獣を生物兵器として売買するさまが、マーキンド星人――「魔」+「商人(あきんど・笑)」星人――が主催する宇宙のオークション会場を舞台にして描かれていた。


 これはスポンサーのバンダイナムコが発売中のスマホ向けゲームで、ヴィランギルドのリーダー格として『タイガ』に登場するゼットン星人が出演するCMでおなじみの『ウルバト』こと『ウルトラ怪獣バトルブリーダーズ』(18~21年)と完全に連動した展開であるかのようにに見えたことから、マーキンド星人主催のオークション場面は毎回の定番として描かれるものだと筆者は思っていた。


 ところが、この描写は第3話以降まったく描かれなくなった。悪の宇宙人組織=ヴィランギルドが登場しなくなったワケでは決してない。ババルウ星人やフック星人、キール星人にヒュプナス、ペダン星人やクカラッチ星人などはれっきとしたヴィランギルドの一員として登場はする。しかし、彼らの悪事と対するE.G.I.S.やウルトラマンとの攻防がメインで描かれるワケではない。いわば、戦闘員的なチンピラ宇宙人としての扱いにとどまっているのだ。


 ちなみに、ネット版の百科事典・Wikipediaウィキペディア)の『ウルトラマンタイガ』の項目には「ヴィランギルド」に関する説明文がなかった。その存在感の薄さがうかがい知れるというものだ(汗)。レギュラー悪、いや、セミレギュラー悪(笑)であるヴィランギルドよりも、


●怪獣召喚士(かいじゅうしょうかんし)であるも本当は地球を侵略したくないと悩むセゲル星人の人間態の女性・葵(あおい)
●50年前に地球に取り残されて故郷の星に帰りたいと願うペロリンガ星人の人間態の中年男――『ウルトラセブン』(67年)第45話『円盤が来た』で7歳にして(!)ペロリンガ星人が変身した男の子を演じた高野浩幸がその50年後(?)を演じたことには素直に感動させられた!――
●故郷の惑星・サラサを謎の存在に滅ぼされた魔法使いの女性・麻璃亜(まりあ)――第11話&第12話に登場――


 彼らのような地球人に擬態した宇宙人ゲストをメインで描いた話の方が、『タイガ』では圧倒的に多かったのだから。


 いや、それは近年の「仮面ライダー」や「スーパー戦隊」でも初期の第1クールくらいまではそうなっている。レギュラーキャラを掘り下げるためにゲストの境遇と重ね合わせて描く作劇は、最近の若いマニアたちから「お悩み相談方式」と呼ばれるほどに定着しているものだ。決して『タイガ』だけでも近年の「ウルトラマン」作品にかぎったものでもないことは確かなのだ。


 ただ、ペロリンガ星人はともかく、第10話の劇中で「帰ってきたウルトラマン」ことウルトラマンジャックのシルエットが描かれたように、『帰ってきたウルトラマン』(71年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20230402/p1)第37話『ウルトラマン夕陽に死す』~第38話『ウルトラの星 光る時』に登場した個体と同一であるようにも見せていることから――もちろん別次元の同族別個体なのである――、ナックル星人オデッサがその後の50年も戦いをやめて平穏(へいおん)に暮らしていたという設定は、リアルタイム世代からすればやや違和感が残る(笑)。むしろ、闘争本能の件はともかく平穏に暮らしていたという一点に限定すれば、『ウルトラセブン』第6話『ダーク・ゾーン』に登場した放浪宇宙人ペガッサ星人などの方がふさわしいかと思えるのだ。


 また、第15話でヴィランギルドのオークションで落札したベリアル細胞を元に、ウルトラマンベリアル・どくろ怪獣レッドキング・古代怪獣ゴモラを合成させて「培養(ばいよう)合成獣スカルゴモラ」――『ウルトラマンジード』(17年)#1(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20170819/p1)ほかにも登場――を誕生させたチブル星人マブゼが、スカルゴモラウルトラマントレギアに倒された途端に姿を消してしまうことにも違和感をおぼえた。知能指数5万(笑)であり、「宇宙最高の頭脳」を自称するほどチブル星人はプライドが高いのだから、トレギアに復讐もせずに黙っているなんぞあり得ないと思ってしまうのだ……


 そんなヴィランギルドのような絶対悪ではない、おもわず視聴者の感情移入を誘うお気の毒な宇宙人をメインで描くにせよ、たとえば第18話などは、


●導入部で夜の大都会での宇宙怪獣ベムラーVSウルトラマンフーマの戦いを、走行する電車のミニチュアの車内の主観から描く!
ウルトラマンタイタスが額(ひたい)にある緑色をした星型のアストロスポットから、同じくU40(ユー・フォーティ)出身のウルトラマンジョーニアス――アニメ作品『ザ☆ウルトラマン』(79年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/19971117/p1)の主人公ウルトラマン――のごとく、星型のアストロビームをベムラーに放つ!
●宇宙恐竜ゼットンが白昼の都会で暴れはじめる場面に、かのドボルザーク交響曲第9番『新世界より』が流れ出す!――なおゼットンの着ぐるみは、『ウルトラマンマックス』(05年)第13話『ゼットンの娘』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20060315/p1)での登場時に新規で造形されて以来、再三酷使(さいさん・こくし)されたかなりスリムなものではなく、初代『ウルトラマン』(66年)最終回(第39話)『さらばウルトラマン』初登場時の造形を忠実に再現された新造の着ぐるみが使用されていた――
ゼットンVSタイガのバトルを、『ウルトラマンタロウ』(73年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20071202/p1)でのそれのようにカメラがヨコ移動して捉えるのみならず、家屋や店舗、自転車や自販機などが配置された狭い路地からの主観で捉えて、そこに「オレの店が!」と慌てているラーメン店の店主や、E.G.I.S.の隊員でその正体は宇宙人であることが明かされている副主人公挌・宗谷ホマレ(そうや・ほまれ)らが合成される!
ゼットンVSタイガの巨大戦を背景に、ビルの屋上でのホマレVSバット星人との等身大バトルを描く!


などといった、3大ウルトラマンゼットン、正義側の隊員たちのカッコいい活躍を強く印象づけている。


 これによって、異質な存在を排除する地球人たちに復讐を果たそうとするバット星人をメインに描きつつも、過剰に湿っぽくも陰鬱(いんうつ)にもならずに、「子供向けエンタメ」としてのみならず「一般層向けエンタメ」としての体裁(ていさい)を保(たも)ててもいるのだ。


――そういった処置とは相反してしまうのだが、バット星人の「彼女」として登場したピット星人の人間態が、1970年代初頭の邦画・ドラマ・歌謡曲などで幅広く描かれていた「やさぐれ女」風だったことは、ふたりの宇宙人がこれまで地球で虐(しいた)げられてきたことを表現することには説得力を与えていた(笑)――


 つまり、『タイガ』のYouTubeでの配信に「重たい話が多い」とのコメントが寄せられていたということは、そんなイメージを払拭(ふっしょく)できないほどに、「子供向け番組」「変身ヒーロー作品」としての見せ方に不足している点があったということだろう。



 良い意味での「お悩み相談」形式をとって、たとえベタでも悩めるゲストの境遇にタイガ・タイタス・フーマらが自身の過去の境遇を重ねて回想させたり、所感を述べたり、賛否の議論をさせたりといったかたちで、彼らのキャラクターをもっと描くべきであったと思うのだ。メインターゲットの子供たちにも、声優さんたちによるやや誇張・記号化された演技によるそういった会話の方が、そのテーマもまた通じやすくて頭に入ってきただろうとも思うのだ。


*もっと、「3大ウルトラマン」のコミカルな個性をウリにすべきだ!


 そういったドラマ性やテーマ性以前に、そもそも主人公のヒロユキがタイガ・タイタス・フーマの3種類のウルトラマンに変身するという、せっかくの魅力的な設定だったのに、タイタスかフーマのどちらかが劇中では一度も登場しない残念な回も多かった。


 クライマックスのバトルでは登場しないにせよ、たとえば第3話のように、


●E.G.I.S.の若き女社長・佐々木カナが契約書を捨てたゴミ箱の中を、小人化しているタイガとタイタスがのぞきこむ(笑)
●話数は失念したが、ヒロユキが飲んでいたコーヒーのカップ内に小人化したタイガが落ちてしまい(!)、タイタスとフーマがあわてふためく(笑)


 本編で「重たい話」を描くのならば、エンタメとしてはそうしたコミカルな描写でバランスを取ることは必須かとも思えるのだ。しかし、そういった描写も序盤で描かれた以降は極端に少なくなっている。


 これは決して子供ばかりではなく、YouTubeの配信に寄せられたマニア層によるコメントでも、ミクロ化したウルトラマンたちを「カワイイ」とする声が多く見られたように、実は今時の大人層の過半をも喜ばせる要素であるだろう!


 また、『タイガ』では女性ゲスト、それもムダに美人女優が演じることが多い。たとえば、それを受けて、先述した魔法使いの麻璃亜――演ずるはアイドルグループ・AKB48(エーケービー・フォーティエイト)の元メンバー・大島涼花(おおしま・りょうか)!――をカワイイとしたタイガに対して、フーマがそれより第7話~第8話に登場した電波系霊能力ネットアイドル天王寺藍(てんのうじ・あい)の方がイイと主張する一方、タイタスだけは目もくれずにひたすら筋トレに励(はげ)んでいる……などといった言動を描けば(笑)、先述した今時のネット上のマニアの反応からすれば、そうした俗っぽい描写の方がウケただろうし、そういった要素が拡散されることで『タイガ』がライト層にも認知される効果も期待できたのではないのだろうか?


 いっそのこと、『仮面ライダー電王』(07年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20080217/p1)に登場した正義のレギュラー怪人・イマジン(怪人)たちのパクリと云われようが、タイガ・タイタス・フーマに憑依(ひょうい)された主人公・ヒロユキの人格が変わってしまう描写もやってしまえばよかったのに……とさえ思えるほどだ。


 総集編であった第13話の予告編では、カナ・ホマレ・旭川ピリカ(あさひかわ・ぴりか)がそれぞれタイガ・フーマ・タイタスの登場ポーズをキメていた。このことから、筆者はてっきり各人に「推(お)しキャラ」とするウルトラマンが憑依するのかと思ってしまっていた。おそらくマニア視聴者の大勢もこの第13話といわず、今時の融通無碍(ゆうづう・むげ)な作品のつくり方であれば、そういったストーリー展開をシリーズ後半では秘かに期待していたことだろう。



 もちろん、3人ものウルトラマンを登場させる以上、そんなコミカルな役回りだけをさせておけばよいとも云わない。


 YouTube限定で配信されている音声のみのドラマ『トライスクワッド ボイスドラマ』(19年)では、『タイガ』本編では描かれなかったタイガ・タイタス・フーマの出自や過去の活躍が、本人たちの回想によって語られている「正編」としての一編ともなっていた。


 往年のテレビアニメシリーズ『ザ☆ウルトラマン』では、同作のウルトラマンたちの故郷として描かれたウルトラの星・U40。そこを出身地としていたタイタスの父親は、実はかつて「物質であって物質ではない命の素・ウルトラマインド」を悪用してU40を追放されて、暗黒星雲の彼方に一大帝国を築(きず)いたウルトラ人の反逆者・ヘラーが率(ひき)いるヘラー軍団(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20100118/p1)の一員であったことが明かされる!


 そして、ウルトラマンタイタスは赤ん坊のころに父がなぜだか手放して、同作の第20話『これがウルトラの星だ!! 第2部』に登場したウルトラ艦隊の司令・ザミアス(!)(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20090914/p1)によって養育されたという!


 さらには、「反逆者の子」という出自に悩みながらもヘラー軍団との戦争での活躍で、U40の長老である大賢者に認められ、U40の住民は全員がウルトラマンに変身できるものの、その中でも巨大化変身ができる戦士だけに与えられる、胸の中央にある「星型の勲章」で宇宙空間を自在に航行できる能力も与えられる「スターシンボル」(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20091102/p1)を授与されるに至ったというのだ!


 ウルトラマンフーマは、ウルトラマンオーブウルトラマンロッソ&ウルトラマンブルの兄弟がウルトラマンの力を授(さず)かったという惑星・O-50(オー・フィフティ)に住んでいた。しかし、そこに訪れる戦士たちから盗みを働いていたほどに荒(すさ)んでいたというのだ。しかし、ウルトラマンの力を得るために来訪した宇宙人・ゲルグから道案内を頼まれたのを契機に彼と親交を持ったことで、瞬間移動能力や光の手裏剣(しゅりけん)などの術を伝授されて、O-50の山々の中の最高峰である「戦士の頂(いただき)」でウルトラマンの力を得たとされるのだ!


 まさに、1970年代に発行された小学館学年誌で掲載された昭和のウルトラ兄弟の「裏設定」を紹介する役割を、今の世にこの『ボイスドラマ』が担(にな)うかたちとなっているのだ! 昭和の第2期ウルトラマンシリーズにも感じられたように、こうしたことを「裏設定」だけで終わらせてしまうことはあまりにもったいない。


●ヘラー軍団の残党がウルトラマンタイタスを裏切り者扱いして復讐に来る!


●育ての親・ザミアスの息子でタイタスの幼なじみ・マティアや、部隊の隊長だったグリゴレオスを殺害した合成獣キシアダーがトレギアによって復活する!


ウルトラマンフーマを戦士の頂まで運んでその後は消息不明だったゲルグが、フーマのピンチに駆けつける!


●彼らを危険視していた星間連盟が、フーマのことをウルトラマンと認めずに攻撃に来る!


 そうした因縁(いんねん)で結ばれた人物相関図を活かした作劇をテレビシリーズ『ウルトラマンタイガ』本編でこそ描くことで、お気の毒な宇宙人たちの「お悩み相談」よりも、よほど人物造形に厚みのある「人間ドラマ」として完成するように思えたからだ。


*タロウの息子としてのタイガではないが、やはりタロウの息子ではある!


 ちなみに、『トライスクワッド ボイスドラマ』第13回~第15回の前中後編3回連続ストーリー『その拳は誰がために』では、ウルトラマンタイガの過去が語られていた。
 宇宙警備隊の訓練生だったころのタイガが、『ウルトラマン80(エイティ)』(80年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/19971121/p1)終了後に小学館学年誌でのグラビア連載や連載漫画(81年〜)を経て関東ローカルの平日帯番組として放映された『アンドロメロス』(83年・円谷プロ TBS)に登場したアンドロ超戦士ことアンドロメロス・アンドロウルフ・アンドロマルス・アンドロフロルたちの新しき仲間とされた新キャラ・アンドロアレス(!)と出会っていたとされたのだ!
 そして、いまだ光線技を習得していなかったタイガの目前で、『アンドロメロス』の敵組織であるグア軍団の戦闘隊長・イムビーザが放った超獣ブロッケンならぬ改造ブロッケンと火山怪鳥バードンならぬメカバードン(!)を、アンドロアレスが瞬殺する活躍も描かれていたのだ!


 そうであれば、映像本編でもアンドロ超戦士やグア軍団の再登場も願いたいところだった。つまり、『帰ってきたウルトラマン』第41話『バルタン星人Jr(ジュニア)の復讐』にて初代ウルトラマンに倒された宇宙忍者バルタン星人の息子・バルタン星人Jrが登場したように、タロウに倒された極悪宇宙人テンペラー星人の息子や、火山怪鳥バードンが生んだ卵が実はひとつ残っていて、その息子が復讐に来るなどの因縁バトルなども構築可能ということなのだ。


 『ウルトラマンタロウ』第39話『ウルトラ父子(おやこ)餅つき大作戦!』で月に帰された、うす怪獣モチロンがタロウの世話になったお礼にと平行宇宙を超えてタイガのピンチに助けに来るなどといった展開も個人的には妄想してしまう。ペロリンガ星人やナックル星人のストレートな50年後ではなかったが、変則的な50年後とも取れる姿が描かれていたことを思えば、モチロンでそうしたことをしてみせても大丈夫だろう! なにせ、テンペラー星人バードンもモチロンもアトラクション用も含めれば着ぐるみがあったハズだし。
 もっと云うなら、モチロンとのつながりで、『ウルトラマンA(エース)』(72年)第28話『さようなら 夕子よ、月の妹よ』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20061111/p1)で月星人としての正体を明かして退場し、当の『タロウ』第39話にもゲストで登場していた『A』のもうひとりの主人公・南夕子を演じた星光子サンにも出演してもらって、「その節はお父さん(タロウ)にお世話になりました」と語ってもらうとか(笑)。


 冗談はともかく、『ボイスドラマ』第1回『未来の思い出 前編』では、常に「タロウの息子」と呼ばれることにイヤ気がさしていたタイガを、光の国の宇宙科学技術局の資料庫を管理しているウルトラ一族のひとりであるフィリスがたしなめるという描写がある――ちなみに、フィリスは「頭脳労働が得意」な「ブルー族」とされている。かつて小学館学年誌で「ブルー族」を「力持ちで肉体労働が得意」とされた解説を読んでいた筆者からすれば、やや違和感はあるのだが(汗)――。


 先述したテンペラー星人バードン・モチロンといった、かつてタロウと対戦した宇宙人や怪獣の再登場は決して『タロウ』ファンを喜ばせるだけではない。父であるタロウと深い因縁があるキャラたちを鏡像として、いくらその重圧から父のことを否定しようがタロウの息子である事実からは決して逃れられないことをタイガが前向きに痛感し、あらためてそこに向き合って突破していくような心の変遷(へんせん)を描くことで、タイガの成長物語を描くこともできるハズだからだ。



 そのタイガの「成長の証(あかし)」の途中過程として第16話で、


「燃え上がれ! 仲間たちとともに!!」


とのヒロユキの決めゼリフにより、ヒロユキ・タイガ・タイタス・フーマといった地球人・M78星雲人・U40人・O50人の合体強化形態として、全身に赤の配色が増して両耳部分のツノも赤く大きくなったウルトラマンタイガ・トライストリウムも誕生した!


 もちろん、タイガがヒロユキやタイタス・フーマとの絆を深めた象徴として描かれてもいた。そして、ヒロユキが「闇堕(お)ち」したタイガを逆に救ってみせるかたちで、ヒロユキにも主人公としての華(はな)を持たせているかたちで描かれてはいたのだ。逆にタイガの方は、ここに至る過程で、それまでに収集してきた「怪獣の力」を秘めてるリングタイプのアクセサリーを必殺技で使用しつづけてきた結果として、タイガが闇堕ちしてしまったことになっている…… 「力」とは「過ぎたるは及ばざるがごとし」で、毒にも薬にもなるといった道徳説話的な展開!


 これもまた、悪の黒いウルトラマンであるウルトラマンベリアルの力を借りて強化変身したウルトラマンオーブ・サンダーブレスターがその力を制御できずに自我を失い暴走してしまったり、昭和の仮面ライダー1号がショッカーの催眠術にかかって仮面ライダー2号と戦ってしまうといった、それもまた広義での「王道」パターンではある。正義のヒーローである以上は、いずれは洗脳から目が覚めて正義のために頼もしく戦ってみせることはミエミエだとしても(笑)、そのカタルシスを強調するためにも、その前段では落差をつくっておいて「危機」におちいったり「闇堕ち」したりといった作劇なのであった。


*『ウルトラマンタイガ』の弱点とは!?


 思えば、近年のウルトラマンシリーズはナゾ解き要素を強調したタテ糸を主軸とする連続ものである印象が強かったものだ。


●『ウルトラマンオーブ』(16年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20170415/p1)では、主人公のクレナイ・ガイ青年=ウルトラマンオーブが108年前の北欧での戦いに巻きこまれた少女・ナターシャを救えなかった過去がガイのトラウマとして描かれていた。そして、シリーズ中盤以降はヒロインの夢野ナオミの出自をめぐるナゾ解きも展開された。ナオミがナターシャの末裔(まつえい)だったと判明したり、ナターシャが実は無事だったと明らかにされていた。


●『ウルトラマンジード』では主人公の朝倉リク=ウルトラマンジードが、映画『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE(ザ・ムービー)』(09年・ワーナー・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20101224/p1)以来、悪役として描かれてきたウルトラマンベリアルの息子として設定された。そして、それを知ったことによるリクの葛藤(かっとう)や、ベリアルに忠誠を誓う伏井出ケイ(ふくいで・けい)=ストルム星人をヒロインの鳥羽ライハ(とば・らいは)が両親の仇(かたき)として復讐の炎を燃やすも、最終回ではそれらの関係性の劇的な変化も描かれていた。


●『ウルトラマンR/B』でも、シリーズ中盤以降に登場した謎の美少女・美剣サキ(みつるぎ・さき)が当初は怪獣を召喚する敵対者的なキャラとして登場していた。しかし、実は1300年前に地球を守ろうとした先代ウルトラマンロッソと先代ウルトラマンブルの妹であることが明らかにされていた。主人公の湊カツミ(みなと・かつみ)=ウルトラマンロッソ、湊イサミ(みなと・いさみ)=ウルトラマンブル、湊アサヒ(みなと・あさひ)=ウルトラウーマングリージョら3兄妹の母親であるミオが行方不明となった原因のナゾや、アサヒの出自をめぐるナゾ解きも展開されていたのだ。


 そういった要素は『タイガ』では皆無(かいむ)に近い。「昭和」のウルトラマンシリーズのような1話完結形式に戻っているのだ。しかし、それはよいことなのであろうか? 本邦初の特撮マニア向け雑誌『宇宙船』VOL.1(80年)などでも、当時の現行のテレビ特撮作品をつかまえて「V・S・O・P」=「ベリー・スペシャル・ワン・パターン」の作劇に過ぎて、だから年長の視聴者なり小学校高学年などが離れていってしまうのだ。リアルロボットアニメ『機動戦士ガンダム』(79年)などに流れていってしまうのだ! といった趣旨の批判が展開されていたというのに…… いくらなんでも、そういった部分では「先祖返り」をし過ぎだろう!


●自身がウルトラマンに選ばれなかったことから、オーブことガイに恨みをつのらせた『オーブ』のジャグラス・ジャグラー
●故郷のストルム星の崩壊から自身を救ってくれたベリアルを主君と仰(あお)いだ、『ジード』の伏井出ケイ
ウルトラマンオーブを真のウルトラマンと信じるがために(?)、ほかのウルトラマンの存在を断じて認めようとしなかった『R/B』の愛染マコト(あいぜん・まこと)社長=ウルトラマンオーブダークノワールブラックシュバルツ(笑)=精神寄生体チェレーザ(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20181104/p1


 彼ら近年の「ウルトラマン」作品に登場したレギュラー悪のキャラクターは、深夜枠で放映されたヒーローアニメ『SSSS.GRIDMAN(グリッドマン)』(18年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190529/p1)に登場し、自身が気に入らない人間を怪獣を使って次々に殺害してしまった「銀髪ショートの萌(も)え系・美少女キャラ」であった新条アカネ(しんじょう・あかね)を含めて、ネット界隈では「円谷のヤベーやつ四天王(してんのう)」として「HOT(ホット)ワード」と化したほどに、若いマニア間では「ネタキャラ」として注目を集めていた。


 『タイガ』のレギュラー悪のキャラであるウルトラマントレギアの人間態である霧崎(きりさき)青年もたしかに「ヤベーやつ」ではあった。しかし、コミカルだったりオオゲサだったりといった狂的な演技付けはなされていないし、特定のお約束的な決めゼリフなどもない。あるいは、本人がいたってマジメにやっていることが視聴者には「お笑い」として映ってしまうといった演出でもない。よって良くも悪くも、皆で話題にしたり口マネして遊べことができる「ネタキャラ」としては成立していないのだ。


 ウルトラマントレギアが先行して登場した『劇場版 ウルトラマンR/B セレクト! 絆のクリスタル』でのトレギアは、その身や両手や指をクネクネとくねらせており、悪のピエロのような口調と動作の演技付けがなされていた。それであれば、本作『ウルトラマンタイガ』でも、トレギアの人間態である霧崎を演じる七瀬公(ななせ・こう)に対して、そのようなクネクネとした動的な芝居やフザケた口調を踏襲させるべきではなかったか? そのへんでも不整合を感じてしまうのだ。


 もちろん、若手役者の一存ごときで特定キャラの芝居の基本方針は決まらないだろうから、おそらくは『タイガ』のメイン監督なり、製作プロデューサー陣による、役者さんへのディレクション(演出・演技付け)に問題があったのではなかろうか? と愚考をしているところだ。


 トレギアの声を演じる若手イケメン声優の内田雄馬(うちだ・ゆうま)。先述したウルトラマンオーブダークノワールブラックシュバルツも務めたスーツアクター・石川真之介(いしかわ・しんのすけ)が演じる、変身後のトレギアのボディランゲージ主体のラリった演技。それ自体はよかったものの……



 それにしても、先述したジャグラー・ケイ・マコト・アカネといった「ヤベーやつ」らには行動動機が明確であった。しかし、霧崎=トレギアはそれが少々ブレていたように思える。


 タロウのかつての親友であり、タロウのことを恨んでおり、12年前のM78星雲・光の国の近傍での戦いでタロウの息子・タイガ、そしてその仲間のタイタスとフーマを一度は消滅させてしまった! といったほどの、本作でメインとなる4大ウルトラマンたちとも強い因縁を持っているハズのトレギア。彼が時折りにタロウやタイガへの恨みを口にするのでもなく、レギュラー悪として怪獣を召喚するワケでもなく、ヴィランギルドの怪獣兵器やタイガたちをただおちょくるだけの愉快犯にしか見えない描写がつづいたことには、やはり視聴者には物足りなかったのではなかろうか? 皆が観たかったのは、タロウやタイガへの遺恨も感じさせるトレギアの発言や心情描写そのものだったのだろうから!


 ちなみに第7話・第9話・第11話・第20話では、霧崎はトレギアへの変身どころかいっさい登場すらしていない。もちろん、たまにはそういったエピソードがあってもよいだが、基本設定を盤石(ばんじゃく)にすべきシリーズの前半にそういったエピソードを配置してしまうと、霧崎=トレギアの存在感もややウスくなってしまうだろう。やはり、霧崎=トレギアに対しても、タイガやヒロユキにも劣らない心の変遷を描いていくようなタテ糸を確固として設けるべきではなかったか?



 『タイガ』の第1話はYouTubeでの視聴回数が1週間で100万回を超えていた。しかし、その後は右肩下がりとなっていく。第18話に至っては1週間で29万回と、その1日遅れで配信が開始された『ウルトラギャラクシーファイト』の「Episode(エピソード)6」が1週間で稼いでいた62万回の半分にも到達していなかった。


 もっとも、テレビ本編で鑑賞できる『タイガ』とYouTubeでしか鑑賞できない『ギャラクシーファイト』を同列に比較することはできない。そして、『ギャラクシーファイト』も「全世界同時配信!」を高らかに喧伝(けんでん)した、かの坂本浩一監督作品であることを思えば、62万回という数字も決して高いものではない。
 なにせ、『仮面ライダー電王』・『仮面ライダーW(ダブル)』(09年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20100809/p1)・『仮面ライダーOOO(オーズ)』(10年)といった10年も前の「平成仮面ライダー」作品が毎回50万~60万回を稼いでいたのだから……  『タイガ』がそれらの平成旧作ライダーの半分程度しか稼げていないということは、やはり現在の「ウルトラマン」の商品的価値とはその程度なのだと解釈すべきところだろう。



 前作『ウルトラマンR/B』の後半では、歳若いマニア間では同じ円谷プロ製作(主導権はアニメ制作会社側だが)の深夜アニメ『SSSS.GRIDMAN』に話題を持っていかれたような感があった。『タイガ』もまた『ギャラクシーファイト』の配信開始によって注目度が低くなってしまっている印象がある。


 ただ、せめて『タイガ』の最終展開や2020年春に公開されるであろう『劇場版 ウルトラマンタイガ』では、第1話の冒頭で2010年代のニュージェネレーション・ウルトラマンが勢揃いして大宇宙で総力戦を繰り広げてくれたことで、多くの視聴者が『タイガ』に抱(いだ)いたであろうトレギアVSニュージェネレーション・ウルトラマンたちの再戦! そういった期待を裏切らないスケールも壮大な映像作品を観せてくれることを切に願いたいものだ。


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2019年晩秋号』(19年11月24日発行)~『假面特攻隊2020年号』(19年12月28日発行)所収『ウルトラマンタイガ』中盤賛否合評5より抜粋)


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『劇場版ウルトラマンジード つなくぜ!願い!!』(18年) ~新アイテムと新怪獣にも過去作との因縁付与で説得力!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20180401/p1

ウルトラマンジード』(17年)最終回「GEEDの証」 ~クライシスインパクト・幼年期放射・カレラン分子・分解酵素・時空修復方法はこう描けば!?

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20180213/p1

ウルトラマンジード』(17年)中盤総括 ~Wヒーロー・特オタ主人公・ラブコメ! 希代の傑作の予感!?

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200523/p1

ウルトラマンジード』(17年)序盤評 ~クライシス・インパクト! 平行宇宙のひとつが壊滅&修復! その原理とは!?

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20170819/p1

ウルトラファイトオーブ』(16年)完結評 ~『オーブ』と『ジード』の間隙ほかを繋ぐ年代記的物語!

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ウルトラマンオーブ』(16年)最終回「さすらいの太陽」 ~田口清隆監督の特撮で魅せる最終回・ジャグラス改心の是非・『オーブ』総括!

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ザ・ウルトラマン ジャッカル対ウルトラマン』(15年) ~日本アニメ(ーター)見本市出展作品!

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『SSSS.GRIDMAN』(18年)前半評 ~リアルというよりナチュラル! 脚本より演出主導の作品!

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『SSSS.GRIDMAN』(18年)総括 ~稚気ある玩具販促番組的なシリーズ構成! 高次な青春群像・ぼっちアニメでもある大傑作!

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ウルトラマンタイガ

美少女アニメつぐもも』2期(20年)第1話「お悩み相談室」(笑)#タイガ #ウルトラマンタイガ
『タイガ』評! ~悩めるゲストのみならず、ボイスドラマの超人たちのドラマも導入すべき!
#ウルトラマンタイガ #ウルトラマンタイタス #ウルトラマンフーマ #ニュージェネレーションスターズ



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ウルトラマンタイガ序盤総括 ~冒頭から2010年代7大ウルトラマンが宇宙バトルする神話的カッコよさ! 各話のドラマは重めだが豪快な特撮演出が一掃!

『ウルトラマンタイガ』中盤評 ~悩めるゲストのみならず、ボイスドラマでの超人たちのドラマこそ本編に導入すべきだ!
『ウルトラマンタイガ』最終回「バディ ステディ ゴー」 ~タロウの息子としての物語たりえたか!?
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ウルトラマンタイガ』序盤総括 ~冒頭から2010年代7大ウルトラマンが宇宙バトルする神話的カッコよさ! 各話のドラマは重めだが豪快な特撮演出が一掃!

(文・T.SATO)
(2019年8月9日脱稿)


 2010年代の「ウルトラマン」シリーズもついに7年連続の番組製作という快挙を達成!――そういう意味では、円谷一族や旧態依然のメンツによる万年赤字体制で通年での番組製作が不可であった時代よりも、映像会社やパチンコ会社を経てバンダイに主導権を握られた今の時代の体制の方を筆者は高く評価している――


 この間、敵も味方もソフビ人形を使って怪獣を召喚したりヒーローに変身したり、右腕をあまたの怪獣の豪腕に換装できたり、幾多のカードでヒーローや怪獣の属性を備えた複数のヨロイに着替えるウルトラマンや、ふたりの先輩ウルトラマンの能力をブレンドして活躍するウルトラマン、ついには常時ふたりのウルトラマンが主役ヒーローとして活躍する作品までもが作られてきた。


 もちろん、それは競合ジャンルや刺激の多い現今の移り気な子供たちの関心を喚起し、「前作と同じじゃん」と見クビられて早めに卒業されてしまうことを回避するためでもある。本作では作品ごとの目先の新しさや旗印、キャッチーなヒキとしては、3人ものウルトラマンが主役級として同時に登場するサプライズを採用!


●しかも、3人の中核となる新ウルトラマンこと「ウルトラマンタイガ」は昭和の「ウルトラの父」と「ウルトラの母」の実子でありサラブレッドでもある「ウルトラマンタロウ」のそのまた息子(!)と設定! 顔のデザインもタロウを踏襲しつつもやや丸顔で未熟さ&可愛さをアピール、両耳部から斜め上方にはタロウのようにツノが生えている!
●ゴッツいマッチョな「ウルトラマンタイタス」は、往年の70年代末期の第3次怪獣ブームの頂点で誕生して、昭和ウルトラとは別世界であるも第3期ウルトラシリーズのトップバッターであるTVアニメシリーズ『ザ☆ウルトラマン』(79年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/19971117/p1)ことウルトラマンジョーニアスの故郷の惑星・U40(ユー・フォーティ)が出自! かの星のウルトラマンたち同様に額や胸中央のカラータイマーが五芒星のかたちとなっている!
●ネーミングからして忍者モチーフでありスマートで身軽そうな青いウルトラマンこと「ウルトラマンフーマ」の出自は、『ウルトラマンオーブ』(16年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20170415/p1)や『ウルトラマンR/B(ルーブ)』(18年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20180826/p1)の2大ウルトラマンことウルトラマンロッソとウルトラマンブルの故郷の惑星・O50(オー・フィフティ)!


 2009年の映画『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20101224/p1)で「ウルトラ」作品にも「平行宇宙」のSF概念が導入されたことで、異なる作品世界の「次元」の壁を超えて「平成ウルトラマン」たちと「昭和ウルトラマン」たちが共演できるようになってから早10年!
 2010年代に入ってからは、平成ウルトラとも昭和ウルトラともまた別の並行宇宙で作品ごとに異なる地球を舞台として、太古の伝説超人・ウルトラマンノアから受領した並行宇宙を越境できるヨロイ・ウルティメイトイージスを装着したウルトラマンゼロが各世界のウルトラマンたちを友人知人としてつないできた。


 それがついに本家のTV正編でも、往年のTVアニメ『ザ☆ウルトラマン』まで正式に連結されて、それがサプライズ&マニアの大勢の喜びとともに歓迎されて、「昭和ウルトラ」「平成ウルトラ」「2010年代ウルトラ」「TVアニメのウルトラ」までもが全肯定されて、それらが奇跡の共演が果たされる日が来ようとは!


 幼少時に昭和のウルトラ兄弟が共演するサマに驚喜しつつも、70年代末期から始まるオタク第1世代による、


「特撮ジャンルに市民権を得るためには、特撮ジャンルはオトナの鑑賞にも堪えうる本格志向でなければならない! そのためにはイロモノ要素は不要! 怪獣には恐怖性を! ヒーローには人間味ではなく神秘性を! そのためには人類がヒーローや怪獣と初遭遇した作品こそが至上! であって、ヒーローの共演などは邪道! 子供たちへの媚びへつらい!」(大意)


だとされてきたことで、昭和のウルトラ兄弟たちのTV本編での共演・共闘が長年、叶わなかった時期からでも幾星霜!(感涙)


――もちろん、アトラクショーや児童向け漫画などでは、好き者でそのへんの機微もよくわかっているマニア上がりの世代人のスタッフや漫画原作者たちが、昭和のウルトラ兄弟ウルトラマンジョーニアスを当時の最新ヒーローたちと共闘させてきた。90年代中盤に児童誌『コミックボンボン』にて連載された漫画『ウルトラマン超闘士激伝』(93~97年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210131/p1)でもウルトラマンジョーニアスが同族のU40のウルトラ戦士であるエレク・ロト・5大戦士らと、「噛ませ」ではなく「頼れる助っ人」として二度も参戦してくれたことを覚えている御仁もいることであろう。


 厳密にはウルトラシリーズにおける「並行宇宙」の導入は、映画『ウルトラマンティガウルトラマンダイナ&ウルトラマンガイア 超時空の大決戦』(99年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/19981206/p1)が初である。当時のマニア上がりの作り手たちは、ティガに変身するジャニーズ・V6(ブイシックス)の長野博が出演不可能で、ダイナに変身するつるの剛士(つるの・たけし)は出演可能といった事態を、『ティガ』『ダイナ』のいずれかに偏らずに中立を気取るためにか、『ティガ』&『ダイナ』世界とはまた別の「並行宇宙」を映画の舞台としてみせていたのだ。
 とはいえ、それならば、「昭和のウルトラ兄弟」とも「並行宇宙」のSF概念を使って共演させた方が、話題面でも客寄せ面でも盛り上がること間違いなしなのでは!? などと筆者は主張していたのだけど、当時の「ウルトラ兄弟の設定を悪」だとする特撮マニア間での風潮の中では「ナニを奇妙キテレツなことを云っているのだ?」的に華麗にスルーされたのであった(汗)――


『レオ』準備稿に登場したウルトラマンタイガーを知ってるか!?(笑)


 そして、「ウルトラマンタイガ」なる新ウルトラマンのネーミング。実はこの名前に酷似したウルトラ戦士は、往年の『ウルトラマンレオ』(74年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20090405/p1)#1準備稿の冒頭にも登場している由緒もある名前でもあったのだ!?――「タイガ」ではなく「タイガー」ではあったのだけど――。


 レオがまだ亡国の獅子座・L77(エル・ななじゅうなな)星の出自ではなく、昭和のウルトラ兄弟の故郷であるM78(エム・ななじゅうはち)星雲・ウルトラの星の出自の設定であった時期に執筆されたというこの検討稿では、ウルトラセブンの下で若きウルトラマン3人が修行に励んでいるのだ。そして、その3人の名前がウルトラマンレオウルトラマンタイガー・ウルトラマンジャック(帰マンそのヒトではナイけど)であったのだ!


 前作『ウルトラマンタロウ』(73年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20071202/p1)や学年誌でのグラビア特集記事であの時点なりの「完成」の域に達していた「ウルトラ一族」とその「故郷」や彼らが結成した宇宙を守護する「宇宙警備隊」の「下部組織」などのウラ設定! そして、それらのウラ設定を活用して、すでに学年誌での内山まもる先生の漫画版『ウルトラマンタロウ』終盤(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210124/p1)などでも、南極大陸での超巨大怪獣vsウルトラ兄弟&ウルトラの一般兵士数百名といったスペクタクルなビジョンは提示されてはいたのだ。
 それらとも通じる、人間世界とはまた別の「天上世界」でも繰り広げられている抗争劇を、すでに1970年代中盤の『レオ』の時点でTV正編でもやろうとしていた構想には、「スケール雄大な世界観の拡大」が感じられてワクワクせずにはいられない!


――以上は老舗特撮サークル『夢倶楽部』主宰・大石昌弘氏が所有していたシナリオの提供を受けて、同じく老舗特撮サークル・ミディアムファクトリーで特撮同人ライター・黒鮫建武隊氏がそれを紹介した往年の名同人誌『続ウルトラマンレオ大百科事典』(92年)からの情報に基づいている。レオが単調な訓練にアキて持ち場を離れた際に、マグマ星人&怪獣マグマギラスが襲撃してきてセブンは重傷を負ってしまい、タイガー&ジャックは惨殺されてしまうという役回りではあったけれども――


冒頭から10年代7大ウルトラマンが活躍、新ヒーローへバトンタッチ!

 
 それから45年の『タイガ』#1の冒頭! 幻のセブン・レオ・タイガー・ジャックの宇宙での戦いを再現どころか、それをブローアップ! エメラルド色に輝く巨大な「ウルトラの星」を間近に眺める大宇宙空間で、光に照らされた部分とそうでない部分との陰影が照明の当て方で強調されている2010年代の全主役ウルトラマンたち、通称ニュージェネレーションことウルトラマンギンガ・ウルトラマンビクトリー・ウルトラマンエックス・ウルトラマンオーブウルトラマンジード・ウルトラマンロッソ・ウルトラマンブル!


 彼ら7大ウルトラマンたちがのっけから全員集合して、超高速で軽快に飛行・旋回、敵の光線をアクロバティックにかわしながら、ナゾの青黒い超人とのバトルを繰り広げている!


 ようやく合わせワザの連発と強力なダブルパンチで悪の超人を小惑星群のひとつに叩きつけることでその強さも見せつける! その小惑星に降り立った7人のウルトラマンのヨコ並びの勢揃いを斜めヨコから写してみせたカッコいい映像!!


 たしかにこの7人勢揃いの映像は、本作『タイガ』の前番組にして1週間前の過去作再編集番組『ウルトラマン ニュージェネレーションクロニクル』(19年)最終回にも使用されていたモノだ。しかし、『ニュージェネレーション』最終回用に撮り下ろされた番外サービスカットだとばかりに思っていたけど、まさか『タイガ』本編の映像からの抜粋であったとは!


 それだけでもワクワクさせられるのだけど、そこに後輩として「先輩!」と叫びながら本作の主人公ウルトラマンたち、タイガ・タイタス・フーマも駆けつける! さらには御大(おんたい)・ウルトラマンタロウも駆けつける! 都合10人もの新旧ウルトラマンが集結する感動!!


 もちろん、ヒーローの頭数が大ければイイというワケではない。たとえばポッと出の新たなスーパー戦隊ヒーローが新番組の#1の序盤でこのようにイキナリ登場しても、それなりの新鮮さやカッコよさはあっても、ここまでの感動はナイであろう。あくまでも、半年なり1年なり1本の映画作品で看板を張ったことがあった単独主役級のウルトラマンなり仮面ライダーなりアメコミ洋画ヒーローなり東宝特撮怪獣たちが集合してみせるからこそ、彼らの単独主演作をアタマひとつは上回った、より「格上」の作品としての「風格」「品格」を持っている! といった感慨をもたらすものなのだ。


 70年代前半の第2期ウルトラシリーズの先輩ウルトラマン客演編ではよくあった、現役の最新ウルトラマンを引き立てるために「噛ませ犬」として先輩ヒーローが敗北してしまうことで、爽快感や先輩たちの魅力を減じてしまうパターンであってもあまり意味はナイのである。


 同時期の昭和の第1期仮面ライダーシリーズでは、先輩ライダーが客演すると「勝って勝って勝ちまくる!」ことで、「ドラマ性」よりも「エンタメ性」や「イベント性」を優先させることで、当時の子供たちを熱狂させてきた。


 「ヒーロー共演のイベント編」でこそニガ味がある「人間ドラマ」をブチ込んできた往時の第2期ウルトラの製作者たちのキマジメで真摯(しんし)な意図も長じてからの再視聴ではわからなくもないのだ。しかし、やはりそのへんは第2期ウルトラのあれやこれやまでをもムリやりにでも全肯定をしないと気が済まない! というのも第2期ウルトラ狂信者のふるまいであって、公平さや説得力には欠けるものなのだ。残念ながら第2期ウルトラのそれらよりも、昭和ライダーの先輩ヒーロー客演編の方に一日の長があったことを認めざるをえないのだ――100かゼロかではなく6対4か7対3の違いの指摘で、第2期ウルトラの客演編がまったくの無意味であったと云いたいのではナイので、くれぐれもそこは誤解のなきように――。


 『タイガ』#1の冒頭では、新米戦士のタイガ・タイタス・フーマが悪の超人に敗北! それを受けて、タロウと悪の超人は全身を互いに炎上させて自爆特攻する超必殺ワザ・ウルトラダイナマイトにて相打ち!! といったかたちで、ニュージェネレーションの7大ウルトラマンたちは直接的な敗北描写が巧妙に避けられることで、勝ったワケでもないけれども、彼らが弱かったようにも写らないようには描かれている塩加減・アクション演出のマジックも実にうまい!



 そして、新旧ウルトラマンが10人がかりで対峙しないとイケナイくらいに圧倒的に強い、新たなる強敵超人の出現! その正体は仮面舞踏会の黒い仮装目飾りを付けたような群青の青い悪のウルトラマンことウルトラマントレギア!


 本作『タイガ』放映をさかのぼること4ヶ月前、春の映画『劇場版ウルトラマンR/B(ルーブ) セレクト!絆のクリスタル』(19年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190407/p1)でも、先行して同作の主人公青年やゲスト青年を試してくる悪魔・メフィストフェレスのような立場のボスキャラとして終始出ずっぱりで戦闘力も高かった彼であった。


 しかし、こうして直前作のヒーローと最新ヒーロー作品の2作品をまたいで登場することで醸されてくる、ユルやかでメタ的な「連続感」や「越境感」や「架橋感」! コレ、コレ! こーいった感覚が現今の子供たちやマニアたちの「知的関心」や「興味関心」を惹きつけるためには必要なものなのだ!――いやもちろん、先の映画を鑑賞していないと理解ができない、観客をせばめてしまう類いとしてのドラマ的な「連続性」ではなく、一般層にも開かれたモノにはなっているので、この手法が「閉じた方法論」だとの批判は当たらない!――


ゲスト怪獣に加えて、レギュラー敵や第三勢力を設定して、作劇を拡張!


 なんというのか、ヒーローvs怪獣の1vs1の戦いを1話完結で描くのが、近代的な超人変身ヒーロー以前の古来からの英雄豪傑譚なり覆面ヒーローものの基本フォーマットではあるので、それ自体は否定はしない。しかし、それもまた一長一短ではあるのだ。あまりにもマンネリのルーティンに過ぎると、幼児はともかく児童であれば次第に単調・退屈・幼稚に感じられてくることも事実だろう。


 しかし、そこに1話ぽっきりのヤラれ怪人やヤラれ怪獣だけではなく、話数をまたいで中長期にわたって登場するライバルヒーロー! たとえば、ハカイダー(『人造人間キカイダー』72年)やタイガージョー(『快傑ライオン丸』72年)! そういった各話ごとのゲスト怪人とは格上に当たる第三勢力的なライバルキャラクターを配すればアラ不思議! 作品は予定調和を逸脱して、戦闘シークエンスの「パターン破り」の楽しさや、作品に「二層構造」が与えられることによって、物語のストーリー展開は豊穣性をハラみだすのだ!


 このへんの機微を30年以上も前に分析してみせたのは、ジャンル系の女流作家の故・中島梓(なかじま・あずさ)による書籍『わが心のフラッシュマン』(88年・91年にちくま文庫化・ISBN:448002591X)であった。


 TVのない中島家(爆)で息子にせがまれて買い与えていたというヒーローvs敵怪人の単調バトルを延々と描いてみせるのかと思われていたスーパー戦隊超新星フラッシュマン』(86年)の「写真絵本」(!)。そのシリーズ中盤から、第三勢力として銀河の彼方から美形のダンディーな顔出し悪役であるサー・カウラーとボー・ガルダンが乱入してきて混戦となるサマに彼女はワクワクとしてしまう!


 そして、彼ら美形悪役たちの知られざる「前日談」や「スキ間の物語」をついつい妄想したり創作したくなってしまう内的な衝動を自覚して、自身が執筆している小説群はもちろん、このテの子供向けヒーロー作品、あるいは物語作品全般(!)といったモノが、結局はそのような情動・創作衝動に突き動かされて生産されており、あるいは消費されていることに思い至る……といった内容であったのだ。


 本作『タイガ』も各話単位では古典的なヒーローvs怪獣のフォーマットを取っている。しかし、作品世界のメタ・上位の構造としては、タイガのみならずウルトラ一族とも因縁があって敵対している悪の超人ウルトラマントレギアとの戦いもまた平行して潜在的に背後にはハラまれているという「二重構造」となっているのだ!
 『タイガ』の劇中ではまだ語られていなかったと思うものの、事前のマスコミ情報ではウルトラマントレギアはタイガの父・ウルトラマンタロウと過去には親友同士であったのだともいう!――第3次怪獣ブームの時期の79年にも、過去に親友同士であったというウルトラマンタロウウルトラマンエルフという名のオリジナルのウルトラマンが対決する内山まもるの漫画があったことなども思い出す。同名のTVアニメとはまた別の『ザ・ウルトラマン』名義の漫画作品として単行本にも再録されているので、未見の読者はこの機会にぜひに!――


 そして、それは各話単位での怪獣をも上回る「格上の強敵」をも同時に相手にしなければならない身震い・ヒロイズムも喚起して、「地上世界」ともまた別に「天上世界」では神話的な「神々の抗争劇」をも控えている! といった広大なスケール感をも感じさせてくる!


 ……コレですよ! 「ウルトラ」にかぎらず「仮面ライダー」であろうが「スーパー戦隊」であろうが、「ライダー」&「戦隊」が共闘する「スーパーヒーロー大戦」であろうが、「2代目宇宙刑事」たちが「新旧東映ヒーロー」たちをクロスオーバーさせる「スペーススクワッド」であろうが、各話のルーティンバトルの背部にもあった上層での「巨悪」との抗争劇の「二重構造」!


 かつてのヒーロー・仮面ライダーV3(73年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20140901/p1)はヨーロッパで、人造人間キカイダー(72年)はモンゴルで、仮面ライダーアマゾン(74年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20141101/p1)は南米でいまも戦っているとされた映画『ジャッカー電撃隊VS(たい)ゴレンジャー』(78年)冒頭のようなものなのだ!


 こういった要素で、子供たちやマニアたちの興味関心を中長期にわたって喚起して、あまたの作品群が連結していく、広大な「メタ作品世界」の中で、我々マニア観客たちを人間的にスポイル・廃人・ダメにもしていく(笑)、もとい「空想の広大な作品世界」の中で中長期にわたって遊ばせてくれる方向性を、「ウルトラ」にかぎらずジャンル作品全般は目指すべきではなかろうか!?


 『タイガ』では#1冒頭の4分間強こそ、ウルトラマンが総計10人も登場して神話的な大バトルを繰り広げてくれていた。しかし、本稿執筆時点の#5までを観るかぎりでは、まだ本作には明瞭な連続性のようなものは発生していない。作品の背景に神話的な神々の戦いがあったとはイチイチ描かれてもいない。
 けれど、イチイチには描かれてはいないものの、#1冒頭シーンのその圧倒的な「残り香」で、この作品の背部にはそういった要素がある! と我々の脳内の片スミをイチイチに刺激してくれることで、作品世界にプリプリとした密度感やワクワク感、イイ意味での底上げ(笑)で、作品世界への興味関心・視聴意欲を惹起しつづけてくれてもいるのだ!


本編ドラマ部分に等身大宇宙人とのアクションを導入! そのメリットとは!?


 「天上世界」の話ばかりしてしまったので、『タイガ』における「地上世界」の話にも戻そう。


 本作における、「昭和ウルトラ」の地球とも「平成ウルトラ」の地球とも「2010年代ウルトラ」のあまたの地球とも異なっているこの「地球」では、すでにあまたの歴代ウルトラ宇宙人が潜伏していることは、オープニング主題歌映像の冒頭でナレーションにて毎回毎回クドいくらいにごていねいにも説明しているとおりだ。


 この世界観ビジョンは『劇場版ウルトラマンジード つなぐぜ!願い!!』(18年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20180401/p1)や先ごろフル3D-CGアニメ化(19年)もされた漫画『ULTRAMAN』(11年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190528/p1)にも見られるものでもあった――細かく云うと、ウルトラシリーズの元祖『ウルトラQ』(66年)#21「宇宙指令M774」が初出やもしれないけど、アレはラストのナレーションでその可能性を提示しているだけなので……(汗)――。


 これによってゲスト役者に予算を使わなくても、既存の宇宙人の着ぐるみ&スーツアクターの投入で安く済ませることができるし(笑)、幼児の目から見ればフツーの人間の悪党よりも着ぐるみの宇宙人の方に視線が向くであろうから、幼児を特撮ならぬ本編ドラマ部分でも退屈させないというメリットもある。


 2010年代のウルトラでは同様の試みがすでに散々になされてきた。そして、人間サイズの宇宙人たちを東映ヒーローものにおける戦闘員のように扱ってバトルアクションを盛り込むことで、ここは筆者個人が特に愛する第2期ウルトラ作品に対する少々の批判にもなってしまうのだけど(汗)、子供にとってはやや重ためでイヤ~ンな感じも残ってモヤモヤしかねない本編ドラマ部分、いわゆる30分ワク後半のBパート終盤でのウルトラマンvs怪獣の特撮バトルに至る前菜・前段の部分である30分ワク前半のAパートの部分でも、東映特撮変身ヒーロー作品のように子供たちの目を引くような「活劇性」や「エンタメ性」を高めることができているのだ!


各話のドラマは重ため。しかし、豪快な特撮演出がそれまでの重さを一掃!


 ……などと、『タイガ』のバトルエンタメとしての軽妙さを賞揚するようなことをココまで散々につづってきたけれど。


 そうは云ったものの、各話のドラマの出来は2010年代のウルトラとしては重ためではある。ナゼだか映像それ自体も後処理でやや「明度」や「彩度」を下げているような気配もある――いやもちろん、ウルトラにかぎらず70年代前半の特撮・アニメ・時代劇などと比すれば、その作風は軽やかなのだけど。牧歌的な60年代までの作品群や、低成長でも安定が達成された70年代後半以降の作品群と比すると、あの時代は例外・特殊な特異点の時代だったので(笑)――。


 #3は、宇宙空間の人工衛星軌道上で事故にあってしまったという宇宙飛行士の夫妻カップルのうちの旦那さんの方が怪獣化して地上に復讐しに来るという、テーマとしては重たいエピソードではあった。長年の特撮マニアであれば、初代『ウルトラマン』(66年)の欧州の宇宙飛行士が怪獣化して地球に復讐に来てしまう棲星怪獣ジャミラが登場する#23「故郷は地球」。搭乗員まるごと宇宙船自体が怪獣化して襲来してくる『ウルトラマンティガ』(96年)#4「サ・ヨ・ナ・ラ地球」(https://katoku99.hatenablog.com/entry/19961201/p1)などを想起してしまうところだ。


 #4もまた、副主人公ともいえる青年・宗谷ホマレ(そうや・ほまれ)隊員を今エピソードの主人公として、地元の下町でギャング宇宙人どもを巻き込んでダーティーでもあるような捜査をしていくうちに、往年の「東映Vシネマ」ばりのバイオレンスな展開ともなっていき、ホマレ隊員とは幼なじみであった青年との悲痛な展開にもなっていく――と同時に、#1につづいて彼もまた超人的な体力や跳躍力を誇ったことから、その正体は地球人ではなくウルトラマンでもないけれども、宇宙人であることも示唆されていく――。


 #5では、女性隊員・ピリカちゃんを主人公として、彼女と偶然にも接点を持ってしまった女性ゲストとの交流が描かれる。ややブラック企業が入った彼女のリアルな労働疲労感なども吐露されて、オッサンオタクとしては実に滋味も感じられたものの……。


――ヒロイン・ピリカ役の当初の女優さんが台湾の民主化の英雄である李登輝(り・とうき)・元総統の映画に出演していたばかりに、関係各位が中国に忖度(そんたく・爆)して放映直前に交代・撮り直しが発生してしまったミソが付いてしまったことは残念だったけれども――


 #3~5のコレらの一連は幼児がタイクツしてしまいそうなストーリー展開だっただろう……と思いきや!



 #3では宇宙飛行士夫妻の片割れの嫁さんの精神体(魂)が飛来してきて、彼女を通じてウルトラマンタイガと合体しているヒロユキ青年主人公の許に長年の生き別れであった「力持ちの賢者」ことウルトラマンタイタスも帰ってきて合体して巨大ヒーローとしても実体化!


 夜のビル街でのハデハデでダイナミックな特撮怪獣バトルが、ウルトラマンタイタスのユカイなトークとともに明るく繰り広げられている。そのことで、このエピソードの重めの雰囲気が一掃されるどころか、ある意味ではタイタスがすべてを持っていってしまう!(笑)


 これは「脚本」の時点でそれを目論んでいたのやもしれないけど、それを実現してみせている「特撮演出」側のパワーであったともいえるだろう。


 #4も同様であって、ウルトラマンフーマのスピーディーで忍者チックなカッコいい「特撮バトル」で、それまでの「東映Vシネマ」ばりだったダーティーなドラマをイイ意味で忘れてしまうのだ(笑)。


 #5もまた同様であって、「女性ゲストの述懐や女性隊員とのやりとり」がその回の「ゲスト怪獣との攻防劇」とあまりに分離しすぎだろ! と思っていたら、ゲスト女性こそが侵略宇宙人(の手先)でもあって、尖兵として彼女が怪獣を召喚していたとすることで、「本編ドラマ」と「特撮バトル」が最終的には一体化する!


 理性では「それでもシミったれた重ためな話だよなぁ、子供はこーいう話はスキじゃないだろう」などと思いつつも、改心したゲスト女性が自身の身を犠牲にしてでも怪獣の暴虐を阻止せんとして身を呈するさまを、女性隊員がやめさせようとする熱演の一連に、感情面では筆者もホダされて実は落涙していたりもするのだけど(笑)。


 しかし、こういった泣きのドラマも、ゲスト女性がもたらした解毒ワクチンによって復活をとげたウルトラマンタイタスの豪快な反撃が始まるや、ジメジメした泣きの要素を一掃! ユカイ痛快な読後感の方が勝ってしまうのだ!


――ゲスト女性の正体が宇宙人だったとはいっても、それはセリフのみで処理されて、着ぐるみの異形の宇宙人の正体などはさらしていない。彼女が担当したのは「抽象」や「観念」の方が優先されがちな「キャラクター仮面劇」ではなく、あくまでも「ナマっぽい地ベタに足が着いた人間ドラマ」なのであって、彼女が人間の姿を終始取りつづけていたこと自体には、年長のマニア目線ではこのエピソードには合っていたとは思うのだ。作り手もバカではナイのだから(汗)、意図的にそのようにもしていたのであろう。
 とはいえ、幼児や子供たちが観た場合に、絵で見てわかる類いの描写ではなかったので、少々理解が困難ではあることだろう。そういった小さな弱点はともかく、後付けの「怪獣百科事典」的な設定では、彼女は地球人と同一の姿をしたヒューマノイド型の宇宙人だったということにしておけばイイだろう(笑)――


 映像作品における「演出」「ディレクション」「方向付け」によっての視聴者に対して情動の誘導!――広い意味では洗脳!(笑)―― 少なくとも本作のシリーズ序盤では、「本編ドラマ」部分よりも「特撮バトル」部分の「演出」の方がイイ意味で主導権を握っているようだ。陰鬱な「ドラマ」を「カタルシス強制発生装置」でもある各話の終盤に配置されている定型的なラスト「バトル」で払拭して昇華してしまっている好例だともいえるだろう!


――とはいえ何事も程度問題ではあって、往年の『ウルトラマンエース』(72年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20070430/p1)の名編である#48「ベロクロンの復讐」(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20070402/p1)のように、「シリアスな本編演出」と「ヒロイズム」ではなく「オフザケの方向に行ってしまった特撮演出」とが「水と油」にすぎて観客をシラケさせてしまっては失敗なのである。それをも擁護しようとする一部の狂信者たちのふるまいは、かえって第2期ウルトラ擁護派全体のお株を下げて脚も引っ張るネトウヨやパヨクのような行為でメーワクなのであって(笑)、そういった低次な論法での擁護はやめてほしいなぁ(汗)。
 まぁ、1980年代前半の『宇宙刑事』シリーズの時代あたりまでは、「本編ドラマ」が異色作や泣きの話なのに「アクション部分」はいつもと同じ演出であって、今やJAC社長の金田治アクション監督は脚本を読まずに殺陣(たて・アクション)を付けているだろう!? と思わせるようなことが、むかしは多々あったものだけど(笑)――


 あとは、音楽演出も大きいであろう。これもまた第2・3期ウルトラや平成ウルトラ3部作などの音楽演出に対する批判になってもしまうけど、ピンチのときに「いかにもピンチです!」という楽曲を定型的に流しすぎてしまうと、他社のヒーローものや合体ロボットアニメと比して、そのウルトラヒーローがやや弱く見えてしまったり、殺陣の流れがワンパターンでマンネリに見えすぎてしまう傾向があるからだ。


 そこのところを、爽快な楽曲一発で延々と通してみせているところも大きいとは思うのだ――筆者などもウスウスとそういった音楽演出の欠点を子供心に感じつつも、信者(爆)的に押し黙っていたところを、子供番組卒業期の小学校の同級生たちなどは忖度せずに(笑)、このテの音楽演出のマンネリさゆえに「ウルトラ」作品を小バカにしていた悪夢の光景の記憶が、彼らの意見に一理も二理もあるだけに、トラウマともなっている(汗)――。


マニアの成熟。リアル・シリアスよりエンタメ性重視が当たり前な今日!


 ……などとエラそうにここまでホザいてきた。しかし、「まとめサイト」や「巨大掲示板」に「個人ブログ」などをザザッとググって巡回してみると、「やや重ための本編ドラマを豪快で壮快でカッコいい特撮バトルで一掃して明朗なカタルシスを喚起している!」といったレビューが今の時代はけっこうフツーに……どころか膨大にありますネ。というか、特撮世論の多数派でもありますネ。


 ナンという成熟度合い! イイ歳こいて子供番組を観ている自分をナンとか自己正当化するために、「特撮作品には人間ドラマや社会派テーマがあるんだゾ!」と息巻いていた時代。


 そしてそれから、そのドラマ性やテーマ性の素晴らしさも充分に理解したその上で「でもそれもまた、幼少時の素朴な感慨とは離れたモノであって、幼児は置いてけぼりの本末転倒になる危険性もあるよネ!」などと、そんな風潮を相対化してみせようと長年、四苦八苦していた筆者も含む80年代後半~90年代以降の特撮評論同人ライターたちの労苦も遠くなりにけり……。


 これはもちろん、筆者ごときの泡沫の努力の成果ではなかっただろう(汗)。結局のところ、特撮同人ライターの努力はムダだったとはいわずとも、ほぼ影響力は皆無であった(笑)。特定のオピニオンリーダーがいた! などといったことでもなく、時代を経ていくうちに特撮マニア諸氏もまた約20年にもわたった某巨大掲示板などでの言説や論戦の積み重ねで、じょじょにそのような変遷を遂げるに至って、作り手たちもまたそのような「シリアス至上」ではなく「エンタメ性」至上の理念で、番組製作やその作劇を考えるようになっていった……といったところが事の真相だろうとは思うのだ。


 ロートルな特撮評論同人オタクとしては、現実の方が追いついたどころか、現実の方が先に行ってしまって、置いていかれてしまったような気にもなっている(笑)。今後の身の振り方としては、現状のイイ意味での追認的な言語化・言説化くらいしかヤルことがナイような気もしてくるのだけれど……(汗)。


 いや待て! 本邦特撮ジャンル作品を、アメコミ洋画『アベンジャーズ』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190617/p1)や来年2020年公開予定の『ゴジラvsキングコング』のような、複数の「作品世界」を連結&シリーズ化していく路線はまだまだうまく行っていないどころか、迷走さえしており、日暮れて道遠しなのだ。ここが残された最後の尽きないフロンティア・物語的な鉱脈だとも見定めて、そういったことが実現するメリットを声高らかに主張していくこととしようではないか!?


 その意味でも、『タイガ』#1冒頭の7大ウルトラマンによる宇宙バトルと係り結びとなるような、壮大なる最終展開を本作には望みたいものだ!


「ウルフェス」に新造スーツのジョーニアス登場! 本編への逆採用を!


 『ウルトラマンX(エックス)』(15年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200405/p1)では、クールの変わり目のシリーズ中盤回では3部作で、前作のヒーローであるウルトラマンギンガとウルトラマンビクトリーが客演してみせていた。
 なので、本作『タイガ』のシリーズ中盤でも、本作の3人目のウルトラマンであるウルトラマンフーマと同じくO50出自のウルトラマンロッソ&ウルトラマンブルが助っ人参戦するようなエピソードも作ってほしい! 本作の2人目のウルトラマンタイタスと同じくU40出自のウルトラマンジョーニアスが助っ人参戦するようなエピソードも作ってほしい!


 毎夏開催されているイベント『ウルトラマン フェスティバル2019』のアトラクショーでは、ウルトラマンジョーニアスの超スマートでハンサムな顔面&スタイル抜群の着ぐるみが新造されて助っ人参戦! 観客たちを感動のルツボに叩き込んでもいるのだから!


――この新造着ぐるみは『ウルトラマン ニュージェネレーションクロニクル』最終回には登場しなかったことから、アトラク部門の円谷プロ直属のアクションチーム「キャスタッフ」側の今年度の予算でそちらの好き者スタッフが新造させたモノだろうと憶測しているけど(?)、TVシリーズの映像本編でも逆採用してほしいなぁ!――


 ヘンに「人間ドラマ」主導や「レギュラー登場人物」主導で、本作『タイガ』のストーリーや最終回後の続編「劇場版」のストーリーなどを構築しないで、もっと「イベント性」主導でそちら方面から逆算して作劇してみせるくらいの意気込みで、『タイガ』のストーリーやシリーズ構成を構築していってほしいものである!


 とりあえず、ウルトラマンジョーニアスの登場が実現した暁には、ギャラ面では厳しそうだけど、原典通りにベテラン俳優・伊武雅刀(いぶ・まさとう)氏にそのボイスをアテてほしい!(笑)


 実はちょうど10年前の2009年にも、CSファミリー劇場にて『ザ☆ウルトラマン』の毎週の放映が開始されるにあたっての宣伝番組『ザ☆ウルトラマンのすべて』にて、TVガイド誌などの各種出版物でも伊武雅刀氏がゲストだと表記されたことがあったのだ!


――『ザ☆ウルトラマンのすべて』とは、同局での昭和ウルトラシリーズの毎週放送と連動していた『ウルトラ情報局』の出張版である。各作ごとの『~のすべて』のゲストには該当作品の主人公を演じた役者さんが登場! この流れの熱気が昭和ウルトラの直系続編『ウルトラマンメビウス』(06年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20070506/p1)の一源流にもなっていたとも私見する! ……実際にはスケジュールが合わなかったのか伊武雅刀は同番組には出演されずに、同作の科学警備隊の2代目隊長・ゴンドウキャップを演じた大ベテラン声優・柴田秀勝が出演しておられた――


 この勢いで、ついでに実写の映画版「ウルトラマン」作品の新作などにも伊武雅刀にワンポイントだけでもイイのでゲスト出演してもらい、スポーツ新聞あたりに騒いでもらうことで、TVのワイドショーでも新聞つまみ読みコーナーなどで取り上げてもらうことで話題性も高めてもらう! ついでに、ジョーニアスと合体していた地球人の青年であった科学警備隊のヒカリ超一郎隊員を演じていたベテラン声優・富山敬(とみやま・けい)があの時点でも故人であったので、古代ギリシャ風の貫頭衣を着けていた人間体のジョーニアス本人として地球に来訪して、ウルトラマンジョーへと変身してほしいと思ってからでも幾星霜!



 レギュラー登場人物たちの「人間ドラマ」としての集大成とかは別にイイので(爆)、本作の来春の続編劇場版では「ウルトラマン フェスティバル2019」を見習って、まずは映画『仮面ライダー平成ジェネレーションズ』シリーズ(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20171229/p1)(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190128/p1)のようなイベント性・お祭り性重視の総力戦体制で行ってほしいものである!


(「ウルトラマンフェスティバル」情報提供:佐藤弘之・清水忠彦)


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2020年準備号』(19年8月10日発行)~『仮面特攻隊2020年号』(19年12月28日発行)所収『ウルトラマンタイガ』序盤合評7より抜粋)


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ウルトラマンタイガ Blu-ray BOX I

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ウルトラマンR/B中盤評 ~宿敵ウルトラマンオーブダークノワールブラックシュバルツ(笑)に見る特撮マニアの価値観の大地殻変動!?

(2019年12月1日(日)UP)
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『劇場版ウルトラマンR/B セレクト!絆のクリスタル』 ~小粒良品で好きだが、新世代ウルトラマン総登場映画も観たい!
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ウルトラマンR/B(ルーブ)』中盤評 ~宿敵ウルトラマンオーブダークノワールブラックシュバルツ(笑)に見る特撮マニアの価値観の大地殻変動!?


ウルトラマンR/B』中盤合評1 ~『ウルトラマンR/B』の「ヤベーやつ」(笑)

(文・久保達也)
(2018年10月28日脱稿)

*「ネタキャラ」としての敵・悪役キャラ


 今、ネット界隈(かいわい)では「円谷のヤベーやつ四天王(してんのう)」が、HOT(ホット)ワードと化している。


 その「四天王」とは


・『ウルトラマンオーブ』(16年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20170415/p1)のジャグラス・ジャグラー
・『ウルトラマンジード』(17年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20180213/p1)の伏井出ケイ(ふくいで・けい)=ストルム星人
・『SSSS.GRIDMAN(グリッドマン)』(18年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190529/p1)の新条アカネ(しんじょう・あかね)


 そして、『ウルトラマンR/B(ルーブ)』(18年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20180826/p1)の愛染マコト(あいぜん・まこと)なのだ。


 宇宙開発や新エネルギーの研究で名高いアイゼンテック社の社長であり、舞台となる綾香(あやか)市のセレブであるも、常に全身白のスーツに身を包み、


「愛と善意の伝道師、愛染マコトです!」


と、両手でハートをかたちづくる愛染は、先述したジャグラーや伏井出とは異なり、序盤から「ネタキャラ」として描かれていた。


 もっとも、この「ネタキャラ」なる造語は、本来は「脇役(わきやく)以下の、ストーリーにからまないお笑い要員」を指す言葉だったのだが、最近はその用法に若干(じゃっかん)変化が生じているのだ。


 近年の特撮ジャンルでは、『仮面ライダーエグゼイド』(16年)に登場した檀黎斗(だん・くろと)=仮面ライダーゲンムが「ネタキャラ」の代表例であり、当初はクールな二枚目としての悪役だったのが、役者のノリノリ演技がおもわぬ化学反応を起こしたことで、後半ではほぼ毎回、「わ~た~し~は~、神だぁぁぁ~~~っ!!!」と叫ぶような、完全な「お笑い要員」と化していた(笑)。


 つまり、脇役以下どころか、主人公と敵対する主要キャラであり、本人はきわめてまじめにやっているにもかかわらず、それが視聴者からすれば「お笑い」にしか見えないような、黎斗やジャグラー、伏井出のような、エキセントリックなキャラこそが、現在では「ネタキャラ」として位置づけられているのだ。


 ちなみに、新条アカネのことを、この檀黎斗の「ネタキャラ」ぶりと、『仮面ライダー龍騎(りゅうき)』(02年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20021109/p1)に登場した、「イライラすんだよ」という理由だけで多くの人間を暴行・殺害した浅倉威(あさくら・たけし)=仮面ライダー王蛇(おうじゃ)を、足して2で割ったような女だと、ツイッターでつぶやいていた人がいたが、これ以上にふさわしい表現はない(爆)。


 それだけ「円谷のヤベーやつ四天王」(笑)は、皆キャラが立っているということになるのだが、たとえばジャグラーは『オーブ』のヒロイン・夢野ナオミに「夜明けのコーヒーを飲もう」と誘い、伏井出は常にカフェできどって紅茶をたしなみ、アカネは廊下を歩きながらストローでトマトジュースをすすり、スマホ歩きの担任教師とぶつかったために、それが床に血のようにしたたり落ちる(爆)など、その好物が設定されていたことが、そのキャラの性格設定を掘り下げることにもおおいに貢献(こうけん)しているのだ。


 愛染の場合、それは抹茶(まっちゃ)を立ててすすることだったのだが(笑)、その和風テイストを統一する手法として毎回、毛筆で短冊(たんざく)に格言をしたためる描写が演出されたことがまた大きかった。
 なにせ毎年夏に恒例(こうれい)で開催される『ウルトラマンフェスティバル』の2018年度の会場では、劇中で披露されたものも含めた、愛染の格言をまとめた日めくりカレンダー「愛染マコトのお言葉」(笑)が販売されたほどだったそうだ。


・蝶(ちょう)のように舞い、泣きっ面(つら)に蜂(はち)
・一男(いちなん)蹴(け)って、また次男(じなん)
・他人のファンタジーで相撲(すもう)をとる
・腹が減ってはフィクサーができぬ


 愛染のキャラを象徴するものを抜粋(ばっすい)してみたが、最後の格言にある「フィクサー」とは、企業の営利活動における意志決定の際に、正規の手続きを経(へ)ずに決定に対して影響を与える手段・人脈を持った人物のことであり、まさに愛染そのものを指しているといえるだろう。


 ちなみに


「浦島の父がいる。浦島の母がいる。そして太郎がここにいる」


と、『ウルトラマンタロウ』(73年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20071202/p1)の主題歌の歌詞をパロったものまであるのだが、作詞した故・阿久悠(あく・ゆう)の関係者には、ちゃんと話が通っているのだろうな(笑)。


 この「愛染マコトのお言葉」は、80年代後半から90年代末期にかけてプロテニスプレーヤーとして活躍し、現在はスポーツキャスター兼タレントである、元祖「テニスの王子様」(笑)こと松岡修造(まつおか・しゅうぞう)の格言をまとめた「日めくり まいにち、修造!」(14年・PHP研究所)以降、不定期で新版が発行されている日めくりカレンダーを彷彿(ほうふつ)とさせる。いや、これの完全なパクリだろう(笑)。
 松岡氏も本人はいたってまじめなのだろうが、その時代錯誤(さくご)的な熱血コメントが、視聴者には「お笑い」として映ってしまう、いわば現実世界の「ネタキャラ」として世間では受容されているのだ――氏が現役だった80年代の時点で、「熱血」は現在以上に嘲笑(ちょうしょう)の対象となっていたのだから――。


 シャツに大きな汗ジミができるほど、社長室でエクササイズに励(はげ)んだり、アクロバティックとまではいかないものの、軽い身のこなしでオーバーアクションを繰り出しながらセリフを放つ愛染のキャラは、この松岡氏をモデルにしているようにも思えるのだ。


ウルトラマンオーブダークノワールブラックシュバルツ!


 これだけなら愛染の立ち位置はご近所の「ヘンなオジサン」、つまり、「モブキャラ」本来の意味である「ストーリーにからまないお笑い要員」で済んでいたのだが、第4話『光のウイニングボール』でどくろ怪獣レッドキングを召還(しょうかん)する姿が描かれたことで、愛染は敵・悪役キャラであると、視聴者に示されることとなった!
 そして、第8話『世界中がオレを待っている』にて、兄弟ウルトラマンの主人公・湊(みなと)カツミ=ウルトラマンロッソと、湊イサミ=ウルトラマンブルがついにそれを知ることとなり、兄弟にとってはちょっと「ヘンなオジサン」だが「いい人」だったハズの愛染との関係性に、大きな変化が生じることとなったのだ。


 これまで社長室のモニターでロッソとブルのウルトラ兄弟(笑)の戦いを観て、セレブなのに貧乏ゆすり(笑)をしながら文句をつけていた愛染は、「昭和」の時代に小学館学年誌が恒例(こうれい)でウルトラ兄弟の成績比較を特集記事にしていたように(笑)、ひそかに湊兄弟の成績表をつけていた。


 それは兄弟の「日常」「戦闘中」「戦闘後」について項目ごとに、たとえば「戦闘中」では、


・人間や飛行機を手に持つときは、力加減に気をつける
・変身後は私語を慎(つつし)む
・簡単に敵を倒さず、適度にピンチを迎える
・夕陽をバックに戦うときは気合いを入れる
・流血などの残酷な倒し方は控える


など、まさに「昭和」の時代からのウルトラマンシリーズのお約束(笑)について、湊兄弟を「よい」「まあまあ」「だめ」の3段階で評価したものだったのだ。


 ちなみに「戦闘後」の項目の中には、


「変身解除後は、さわやかに手を振りながら帰ってくる」


なんてのもあった(爆)。


 愛染のあまりに辛辣(しんらつ)な評価では、兄弟ともに「よい」がひとつもなく、カツミに向けた所見は


「弟と違って頭はキレるようだが、私生活を優先しすぎだ! ヒーローの自覚を持て!」


というものだった。


 近年「公(こう)」よりも、「私(し)」を優先しているかに見えるヒーローがめだつことに、愛染も業(ごう)を煮やしていたのだ(笑)。


 自分たちをウルトラマンだと知っている愛染を不審がった湊兄弟に、愛染は


「そう! 私は人間ではない。だが、おまえらより高い市民税、いっぱい払ってるぞ~!」(爆)


と叫び、ウルトラマンオーブの変身アイテムに酷似(こくじ)したオーブリングNEO(ネオ)で、


「絆(きずな)の力、お借りします!」


と、オーブの変身時の掛け声をパクってウルトラマンに変身する!


 ウルトラマンオーブの本来の姿・オーブオリジンに酷似したデザインながらも、両目や額(ひたい)の縦長のクリスタル部分に、カラータイマーが赤いウルトラマンは、


ウルトラマンオーブダークノワールブラックシュバルツ!」(笑)


と名乗って、オーブオリジンの剣状の武器・オーブカリバーと同じ形状のオーブダークカリバーを振りかざし、ウルトラマンロッソとウルトラマンブルを、すさまじいまでの説教攻撃(笑)で徹底的に痛めつけたのだ!


 第5話『さよならイカロス』で、空を飛ぶことにあこがれる女子大生とイサミが「いい関係」になったことをうらやんだかと思えば、第6話『宿敵! あねご必殺拳』で、湊兄弟が幼いころから「コマねえ」と呼んで慕(した)っていた元・婦人警官の小牧(こまき)カオルが、メカロボット怪獣メカゴモラの体内にとらえられ、イサミ=ブルが攻撃できなかった件を、


「敵を倒すか、仲間を救うか、ウルトラマンにはよくあるシチュエーションだ。それを2週間もグズグズ悩みやがって! まぁ繊細(せんさい)でいらっしゃること!」


と、オーブダーク(以下略・笑)は兄弟のウルトラマンとしての姿勢にこと細(こま)かにツッコミを入れるのだが、愛染のセリフに連動したスーツアクター・石川真之介(いしかわ・しんのすけ)の演技の、まぁ芸コマでいらっしゃること!(笑)


「あ~ぁ、汚れちゃった」


と、湖で手を洗っていたところを背後から攻撃したロッソにブチギレたオーブダークは、


「名乗りの最中と変身の途中で攻撃するのは言語道断(ごんごどうだん)! ルール違反なんだぞぉ~!」


と、ウルトラマンにかぎらず、仮面ライダースーパー戦隊をはじめ、すべてのヒーロー作品に共通するお約束を破ったロッソに、両腕をクロスして「×(ばつ)」を示した(笑)。


 そして……


「最近のウルトラマンはベラベラしゃべりすぎだ! 神秘性がなくなる!」


 いや、アンタも充分しゃべりすぎなのだが(爆)。


 ウルトラマンとしては前代未聞(ぜんだいみもん)のトンデモ演出がなされた、この第8話が放映された2018年8月25日付で、愛染を演じる深水元基(ふかみ・もとき)が


「わたくし、ついに! ウルトラマンオーブダークノワールブラックシュバルツになりました!」


と、ウルトラマンの顔を象(かたど)った白い化粧用のパックを顔面に貼りつけた(笑)氏の画像入りでつぶやいたツイッターに、3000を超える数の「いいね!」が寄せられたのをはじめ、しばらくの間は個人ブログやツイッターに、この回をネタにした書きこみがあふれることとなった。


 そればかりではない。無料の動画配信サイト・YouTube(ユーチューブ)の円谷チャンネルでは、各話の予告編に監督のコメントをつけた約4分前後の映像を配信しているが、ほかの話の再生回数が5万~7万回であるのに対し、この第8話のものはなんと48万回と、異様なまでに突出しているのだ! 良くも悪くも、第8話のトンデモ演出が、少なくともネット界隈では注目を集めたことだけは確かなのである。


*愛染の説教は、かつての我々の主張か?


 ところで、第8話で描かれたオーブダークの説教について、各ブログやツイッターでは「愛染マコトの考えに共感しちまった」などと、「よくぞ云ってくれた!」的なコメントが一定数見られたものだ。


 いまだにウルトラといえば『ウルトラQ(キュー)』(66年)・『ウルトラマン』(66年)・『ウルトラセブン』(67年)に限るとする、第1期ウルトラ至上主義者や昭和ウルトラ至上主義者、『ウルトラマンティガ』(96年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/19961201/p1)・『ウルトラマンダイナ』(97年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/19971215/p1)・『ウルトラマンガイア』(98年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/19981206/p1)の平成ウルトラ3部作至上主義者などからすれば、愛染が痛烈に批判したような『ウルトラマンギンガ』(13年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200819/p1)以降のニュージェネレーションウルトラマンシリーズに顕著(けんちょ)に見られる特徴は、やはり欠陥(けっかん)として映るのであろうから。


 だが、彼らはそれこそ愛染並みの、大きなカン違いをしているのだ(笑)。


「オレは夕陽の風来坊(ふうらいぼう)! とぉ~っ!」


だの、


ウルトラマンさん! ティガさん!」(笑)


だの、その後もオーブダークに変身するたび、『ウルトラマンオーブ』で主人公のクレナイ・ガイを演じた石黒英雄(いしぐろ・ひでお)のモノマネをしていたほどに――これがまた異様に似ていた(笑)――、愛染がオーブに心酔(しんすい)していたことからすれば、『R/B』の世界観は、かつてウルトラマンオーブが地球を守っていた世界と同一線上にあるのか、愛染もまた次元を超えた並行宇宙でオーブの活躍を目撃してきたのだろう。


 オーブの勇姿が目に焼きついたことで、愛染の中では「ウルトラマンはオーブのようであるべきだ!」といった、確固たる信念が渦(うず)巻くこととなり、それにそぐわないウルトラマンロッソとウルトラマンブルは、「断じてウルトラマンではない!」と、愛染は批判するに至ったのだ。


 だが、それは


「第2期ウルトラマンシリーズにはドラマやテーマがない!」


と批判した第1期ウルトラ至上主義者や、


「平成ウルトラ3部作はドラマやテーマを優先するあまりに、ヒーローものとしてのカタルシスに欠ける!」


などと批判した、かつての筆者を含む昭和ウルトラ至上主義者と同じ姿ではないのだろうか?


 そして、愛染は近年のウルトラマンの姿勢を批判しながらも、それが大きな矛盾(むじゅん)をはらんでいることに、まったく気づいてはいないのだ。
 「最近のウルトラマンはベラベラしゃべりすぎだ!」とか、「ヒーローが悩むな!」などの愛染の主張は、実は愛染が心酔する『ウルトラマンオーブ』にもおおいにあてはまることなのである(笑)。


 特に後者については、オーブがかつて北欧――ロシアにしか見えないが(笑)――で活躍していたころに、光ノ魔王獣マガゼットンとの戦いに巻きこまれた金髪女性・ナターシャを救えなかった自責の念から、オーブ=ガイはヒロインのナオミがナターシャ――ロシア人の名前だとしか思えないが(笑)――の子孫であることが判明するまで、その件をずっと引きずっていたほどであり、先述したイサミの「2週間もグズグズ悩みやがって!」どころではなかったのだ。


 これもまた、たとえば『ウルトラマン』や『ウルトラセブン』のバトル場面でも擬人化した演出がいくつかあったにもかかわらず、『ウルトラマンタロウ』で散見されたそうした演出ばかりを


「完全に幼児向け」


としてあげつらったり、


「平成ウルトラ3部作をドラマ・テーマ至上主義にすぎる」


と批判しながらも、ドラマ&テーマ至上主義の原点かもしれない『帰ってきたウルトラマン』(71年)の特に初期編に見られた「人間ドラマ」偏重(へんちょう)の作風には口をつぐむ、といったように、自分が好きな作品に関しては都合の悪いことにフタをしたり、「なかったこと」にしていた、かつての我々の姿そのものではないのだろうか!?(汗)


 『R/B』第8話の演出は、決して近年のウルトラマンに批判的な人々の主張を代弁していたワケではなく、むしろ愛染のように


ウルトラマンはこうあるべきだ!」


と頑(かたく)なに主張し、それに該当しないウルトラマンを断じて認めない者たちが、それこそ


「ヤベーやつ」


であり、いかに滑稽(こっけい)であるかを皮肉っていたのではないのだろうか?


 まぁ、第8話もまた、


「最近のウルトラマンは変身にかける時間が長すぎる! いつまでも変身アイテムを長々と映してんじゃない!」


などとは愛染は主張しないワケであり、最も都合の悪いことにはしっかりとフタをしているのだが(爆)。


 もっとも、それ以前の問題として、愛染にこんなメタ的なネタを平気でやらせてしまうような、『R/B』のあまりにコミカルな作風自体が問題なのだ、とする声が一部にあるのは確かだ。
 これはウルトラマンにかぎらず、先述した『仮面ライダーエグゼイド』や『仮面ライダービルド』(17年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20181030/p1)など、近年の仮面ライダーで顕著に見られるようになったコミカル演出を「ふざけすぎだ!」と批判する声は、やはりいまだに根強いものがあるのだ。


 ただ、巨大掲示板・5ちゃんねるの『エグゼイド』や『ビルド』のアンチスレを見ると、むしろコミカル演出自体を問題視する声は少数派であり、「世界観やドラマの展開がシリアスなのに、その流れをさえぎるかたちで唐突にギャグが描かれるのが問題」だとする意見が散見されるのだ。


 個人的には決してそれらに賛同するワケではないのだが、その中には


「『ウルトラマンタロウ』は主人公が怪獣の背中に飛び乗ったり、防衛組織・ZAT(ザット)の隊員たちがさんざんフザケたりと、ユルい世界観であることが序盤でしっかりと示されていたため、後半でギャグ系の怪獣が頻繁(ひんぱん)に登場しても違和感は少ない」


とするような、かつて『タロウ』のコミカル演出が


「人間側の不必要なドタバタ」


などと批判された時代に比べれば、はるかに成熟した主張も見受けられるのである。


 ちなみに、


「『R/B』は、『仮面ライダー電王』(07年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20080217/p1)と同じタイプであり、コミカルだが本筋は結構まじめだよ」


と評する声もあったのだ。


 そうした観点でとらえるならば、本編ドラマが明るく空騒ぎな作風であるのみならず、序盤の時点でウルトラマンロッソとウルトラマンブルが、本編で描かれる湊兄弟によるボケとツッコミのかけあい漫才と連動するかたちで、軽妙で擬人化したアクションに徹していた『R/B』では、たとえどんなギャグが描かれたとしても決して違和感がないほどの世界観が、すでに充分に築(きず)き上げられていたのではあるまいか?


 第11話『アイゼン狂騒曲』で、ロッソとブルを背後から襲おうとした宇宙悪魔ベゼルブ――ネット配信された『ウルトラマンオーブ THE ORIGIN SAGA(ジ・オリジン・サーガ)』(16年)が初出の怪獣である――に、ロッソとブルが昭和の漫才トリオのように、双方から肘鉄(ひじてつ)を食らわせてベゼルブをコケさせた描写こそ(笑)、『R/B』の世界観を端的に象徴する演出だったように筆者には思えたのだ。


*「ネタキャラ」戦略のおおいなる可能性


 さて、愛染は第11話から登場した青い瞳の謎の美少女・美剣(みつるぎ)サキにより、精神寄生体チェレーザを分離させられて自我を取り戻すこととなった。
 同時にアイゼンテック社の社長の座をサキに奪われたがために、第16話『この瞬間が絆』を最後に、急にサッパリとした憑き物(つきもの)が落ちたような顔になって、自転車で「世界一周の旅に出る」(笑)として退場となってしまった。


 ウルトラマンの力を求めて地球に来訪したガス状の生命体・チェレーザが、15年前に愛染に憑依(ひょうい)した際の回想では、本来の愛染は父が経営していた町工場・愛染鉄工で働いていた、さえない工員だったのであり、先に述べてきたような「ネタキャラ」としての素質は、あくまでチェレーザのものだったようだ。つまり、ウルトラマンオーブにあこがれていたのは愛染ではなく、チェレーザだったということになるのだ。


 これは先述した『仮面ライダービルド』の敵・地球外生命体エボルトも、火星探検の宇宙飛行士だった石動惣一(いするぎ・そういち)に憑依していたものの、あの「ちゃお~♪」(笑)をはじめとするハイテンションキャラが石動ではなく、エボルトのキャラだったことと相似(そうじ)している。まぁ、偶然なのだろうけど。



「古き友は云った」


として、各話で歴史上の偉人の格言を引用して語ったり、


「今の女子高生の間ではこんなのが流行(はや)っているのか?」


などと、ビルの屋上で怪獣を背景にして自身の姿をスマホで「自撮り」(笑)したりなど、サキも愛染並みに、完全に「ネタキャラ」として描かれてはいる。


 だが、ハロウィンの特別編として描かれた第17話『みんなが友だち』に愛染が登場しなかったことに、おおいなる喪失(そうしつ)感をおぼえてしまったのは、決して筆者だけではないだろう。


 実際に愛染が退場した第16話の放映直後から、ネットではそれを惜しむ声があふれており、中には


「『R/B』観るモチベーションの半分くらいが愛染だったのにどうしてくれる」


とか、


「オーブダークが出てこないと番組を薄味と感じてしまう」


などというものまであり、愛染が「ネタキャラ」としてライト層の間でいかに注目を集めていたかが、うかがい知れるというものだ。


 おそらくは視聴者のこうした反応は製作側としては狙いどおりであり、世界一周から帰ってきた愛染が、最終展開で改心したチェレーザに再度、憑依されて、今度こそ市民のために戦うウルトラマンとして、ロッソ&ブルの兄弟と共闘することでおおいに盛りあげるのではないのか? と、個人的には予想するのだが。


 邪道(じゃどう)との見方もあるだろうが、特撮といえば「仮面ライダー」と「スーパー戦隊」しか知らず、「ウルトラマンってナニそれ?」といった感じだったライト層の間でも、ようやく「ウルトラマン」が流通することとなったのは、「ヤベーやつ」として彼らの注目を集めるほどの「ネタキャラ」を登場させるようになった、この数年の作品群の功績が大きいかと思えるのだ。


 『仮面ライダージオウ』(18年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20191020/p1)で「20作品」を達成した「平成」仮面ライダーシリーズの悪役の大半が「ヤベーやつ」だった(笑)ことを考えても、将来的な展望を見据(す)えた戦略として、「ネタキャラ」としての敵・悪役の登場は、やはりアリなのではなかろうか?


(了)


ウルトラマンR/B』中盤合評2 ~ウルトラマンオーブダーク・ノワールブラックシュバルツ(笑)登場!

(文・T.SATO)
(2018年11月4日脱稿)


「同級生とイイ雰囲気になるとか……。ちょっとイイ話なんか要らないんだヨ!」(#5のことを指す・笑)


「知り合いのことで2週間もグズグズ悩みやがって!」(#6~7)


「野球にかまけて出動が遅れたナ!」(#4を指す)


「デザインが気に入らん! なんだぁ、その猫耳ィ」(ウルトラマンロッソの頭頂の2本ヅノを指す)


「名乗りの最中と変身の途中で攻撃するのは言語道断! ルール違反なんだぞォ!!」(まさに現状を指す・笑)


「最近のウルトラマンはベラベラしゃべりすぎだ! 神秘性がなくなる!!」(爆笑)


 前々作『ウルトラマンオーブ』(16年)後半に登場したウルトラマンオーブの実は本来の姿・オーブオリジンを模して黒くした悪のウルトラマンウルトラマンオーブダーク・ノワールブラックシュバルツ(笑)が、我らが兄弟主人公ヒーローたる2本ヅノの赤いウルトラマンロッソと1本ヅノの青いウルトラマンブルに対して語る語る!


 序盤の4話分はユルユルのスカスカ、悪い意味でのルーティン・バトルのマイルドな作品という印象で、ヒロイズム的なバトルの高揚や吸引力にはいささか欠けるかなぁ……。


 兄弟主人公の弟クンのキャラの肉付けもするためか、鳥のような機械のツバサで空を飛ばんとする健気なリケジョ(理系女)ゲストを弟クンにカラませて、はじめて本格的にウエットな人間ドラマも導入した#5「さよならイカロス」。
 いわゆる「イイお話」なのだけど、こーいうのは幼児にはわからないやもしれないし、あるいは理解ができても男児には気恥ずかしかったりもするモノなのだから、そのエピソードの存在を全否定はしないにしても、もっとシリーズ後半の回に廻した方が良くなくネ?


 つづく#6「宿敵! あねご必殺拳」も、兄弟主人公を幼少時から見守っていた元・婦警さんで、世界中を放浪していた70年代ヒッピー風衣装の姉御(あねご)ゲストとのユカイで軽妙なやりとりはよかった。
 しかし、ラストにおけるゲスト怪獣・メカゴモラの体内に幽閉された姉御をめぐって、メカゴモラを倒すべきか否かの逡巡&決断の一連には、姉御との兄弟の幼少時の回想シーンまで流して、オッサン目線では滂沱の涙を流していたのはココだけのヒミツだけど(汗)、シメっぽいお話を気恥ずかしく思ってしまうであろう男児を遠ざけてしまうやもしれない問題は残るよネ?


 さらには#7「ヒーロー失格」で、前話ラストで助かった姉御が病院に入院中という設定で予想外の連続登板!
 イジワルに見れば子供向けヒーロー番組ではアリガチ・ご都合主義的なヒーローのピンポイント必殺光線(笑)で助かってメデタシめでたしだったオチにセルフ・ツッコミ、その天文学的確率の偶然・奇跡に弟クンを改めて恐怖させ、弟クンがウルトラマンに変身することに躊躇する姿を描くことで、平成ライダー戦隊シリーズのはるかに後塵を拝したとはいえ、「点」と「点」での取って付けたような連続性ではなく、「線」になっている連続ドラマ性がついにウルトラシリーズでも実現したのはイイ。
 けれどもその連続ドラマ性も、ヒーローや怪獣の特徴やら弱点、世界観設定それ自体に焦点を当てた一進一退・シーソーバトルの話数をまたいだ攻防劇・逆転劇、あるいはナゾ解きといった、子供たちが喜ぶであろう「活劇面での高揚」や「“世界”や“事件”に対するちょっと不思議なミステリ感・ワクワク感」をもたらす「連続性」ではなく、中学生以上にならないと理解ができないような人間ドラマ面での「連続性」であって……。


 なぞと筆者も、七面倒クサいことをグダグダと思い連ねていたのだけれど(笑)。


 #7では自らが怪獣に変身、#8「世界中がオレを待っている」ではついに悪のウルトラマンにも変身した愛染マコト社長自身が、筆者のようなスレたマニア諸氏の想いも先廻りして、あまりに端的な短文で的を射た、しかも「笑い」も取れる語彙選び・言葉使いで、先のように#4「ウイニングボール」~#7「ヒーロー失格」を一挙に見事に「批評」的に総括してしまったのであった!!


 しかも、それは本作の#4~7の総括どころではない! 2010年代のウルトラシリーズを、いやウルトラシリーズ50年間の紆余曲折を、ウルトラ「評論」40年間の歴史の二転三転も踏まえて、総括してしまってもいたのだ!! そのあたりについては後述していこう。


ウルトラマンオーブダーク退場! 女子高生が敵ボスに昇格!(笑)


 しかし、本作は個人的には「化けた」と思う。というか、今どきの作品であるから、当初からそのようなシリーズ構成であったのであろう。まんまとしてヤラれたのであった……(気持ちのイイ敗北感です)


 今どき悪い意味で珍しい、ルーティンバトルな1話完結の序盤。しかして、舞台となる企業城下町のユカイな白背広スーツ姿の愛染マコト社長は、レギュラーでも本スジにはカラまないコミックリリーフの立場なのかと思いきや……。
 社長自身が「怪獣メダル」から怪獣を召喚しているらしき描写が点描されて、それが確信へと変わり、彼自身もウルトラマンたちと同型の変身アイテムを保持しており、それを使って#1に登場した因縁の怪獣グルジオボーンへと変身! 続けて悪のウルトラマンへも変身!!


 そして#8~12に至って、悪のウルトラマンウルトラマンオーブダークとの激闘が数回戦にも渡って繰り広げられて、と同時に#10~12には今春の映画『劇場版ウルトラマンジード つなぐぜ!願い!!』(18年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20180401/p1)に登場したばかりの四足歩行怪獣のイイもの獅子聖獣・クグルシーサーの着ぐるみを改造したとおぼしき白毛が特徴的な豪烈暴獣ホロボロスも相手とする正義2体vs悪2体とのバトルともなった。


 並行して#11からは、黒い服装に身を包んだ美少女が登場。


 彼女にもマンガ・アニメ・記号的な誇張・極端化されたキャラ付けがなされて、毎回毎回、


「古き友は云った。~~」


と学識豊かにも、古人の名言を引用してみせる。


 彼女の場合、最低でも1300歳だから、実際にオスカー・ワイルドシェイクスピア徳川家康とも友人であったのだろうけど(笑)。
――「石橋に当たって砕けろ」「云わぬがお花畑」「蝶のように舞い、泣きっ面に蜂」(笑)などとインチキ格言を毎週のように述べていた愛染マコト社長とはエラいインテリジェンスの違いだが、広いイミでは似たようなモノである(爆)――


 そして、愛染マコト社長の退場後には、まさかの彼女が敵ボスキャラへと昇格! 大企業・アイゼンテックの次期社長の座まで奪ってしまうのだ!


主人公の妹が「非実在青少年」!(笑) 敵の女子高生もウルトラ何十番目かの妹だった!?


 加えて、主人公兄弟の妹である、元気で可憐なアサヒ嬢にも話数をまたいだナゾを与えている。
 たしかに当初から、江戸時代の武家でもあるまいに、家族に対しても敬語――相手との距離感が少々ある言葉――でしゃべっているあたりに「ナゼ?」というプチ疑問も生じてはいた。けれど、語尾に何でも「~ですゥ」「~にょ」(笑)などを付与するマンガ・アニメ的な記号的キャラ付けか? という程度で好意的に解釈もできていたのだ。


 しかし、ナンと! この常に敬語で発言すること自体も伏線であったらしくて、主人公家族のアルバムに彼女の幼少時の写真が一切ナイことで、またまたナゾ解きのドラマも構築していく。
 と同時に、捏造された記憶や存在であったとしても、アソコまで親愛な関係になれば、すでに彼ら彼女らはまごうことなき家族でもあり、人間ドラマ的には最終的にソコに感動的にオトしていくことも眼に見えてはいるのだけれども……。
 まず間違いなく、今の彼女にその自覚はなくて表層的にはアーパーな女子高生(笑)ではあったとしても、彼女もまたその真の正体は超越的な存在なのであろうけど、どのようなSFギミックでそれを解明していくのか興味は尽きないところだ。


 そして明かされる、黒服の美少女こと、暫定的に名付けた美剣サキ(みつるぎ・サキ)こと、略してツルちゃん(略している位置がヘンだろ・笑)のヒミツ!
 彼女は今のウルトラマンロッソ&ウルトラマンブルではなく、1300年前の先代ウルトラマンロッソ&ウルトラマンブルの真の妹でもあり、往時は#1に登場した怪獣クルジオボーンでもあったのだ!――しかして、クルジオボーンそのものであったのか? それとも、怪獣メダルの力を使ってクルジオボーンに変身していただけであったのか?――


 そして、彼女の真の目的は、1300年周期で再来する強敵怪獣を打倒することであり、そのためには地球をまるごと道連れに粉砕することも辞さないことを、TVでの中継を通じて全世界に告知もする!


 ……もちろん、子供向けジュブナイルである以上、そんなアンハッピーエンドなオチになるワケもなく、すでに兄弟主人公の妹・アサヒとのコミュニケーション・ドラマで、彼女自身に自覚はなくても軟化している描写も与えられている以上は、それを伏線としてラストの大カタストロフを回避するための説得ドラマも構築されていくのだろう。



 このように「怪獣」以外の要素で連続ドラマを構築していく流れになると、「怪獣」の魅力が減退するやもとの危惧もごもっともではある。
 だが、本作にかぎらず2010年代のウルトラシリーズは、むしろプリプリとした「密度感」のあるナゾ解き連続ドラマ空間に「怪獣」が置かれることで、出自や境遇や怪獣にも五分の魂などの同情すべき事情(笑)などのムズカしいことは考えずに、純粋に「怪獣」としてその属性や特徴を駆使して戦うことで、むしろ生き生きとしているようにも個人的には感じられるのだ。


 加えて、ギチギチの形式主義官僚主義的な融通の効かない作劇で、本作に登場するすべての怪獣が「怪獣メダル」から召喚されていたワケでは決してなく、地底に眠っていた古代怪獣のゴモラの復活であったり、愛染マコト社長――というより寄生していた宇宙人――が密かに建造していたロボット怪獣キングジョーであったりなどの、マンネリには陥(おちい)らせないバリエーションも付けているあたりもホントに好印象なのだ。


 そして、兄弟ウルトラマンふたりが合体、番組タイトルを名乗る3本ヅノの進化形態・ウルトラマンルーブも登場! 颯爽とした活躍を見せる!


 主人公家族の行方不明になっていた母親役を、00年代グラドル(グラビアアイドル)上がりの往時のブログの女王眞鍋かをり(まなべ・かおり)が演じることも近ごろ公表されたが、この母親がどのように本作終盤にて作品の終結装置として機能するのかも含めて、ラストスパートを見守る前に、愛染マコト社長の再登板にも期待したいので、社長の格言集を最後に振り返りたい(笑)。


「デザインが気に入らん! なんだぁ、その猫耳ィ」(笑)


 まず、「デザインが気に入らん! なんだぁ、その猫耳ィ」という発言は、70年代後半~00年前後においてマニア論壇では主流であった、



「70年代前半の昭和の第2期ウルトラシリーズウルトラマンたち――ウルトラマンエース(72年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20070430/p1)やウルトラマンレオ(74年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20090405/p1)――の複雑なデザインやゴテゴテした意匠が、いかにも低年齢の子供向けであるから“悪”である。いわんや頭部両側面に「ツノ」が生えている――ウルトラの父(72年)やウルトラマンタロウ(73年)――なぞはもっての他! 対するに、60年代後半の第1期ウルトラシリーズ初代ウルトラマン(66年)やウルトラセブン(67年)のシンプルなデザインは“正義”である!」



 といった論法を踏まえたモノである。


 このマニア論壇の論法が本編にも逆照射されて、80年代~00年前後のウルトラマンのデザインは非常にシンプルなものとなる――ウルトラマンエイティ(80年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/19971121/p1)・ウルトラマングレート(90年)・ウルトラマンパワード(93年)――。


 仮面ライダーシリーズに対する当時のマニア論壇&作り手側も同様で、仮面ライダーブラック(87年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20001015/p2)・仮面ライダーZO(ゼットオー)(93年)・仮面ライダーJ(94年)のデザインがコレにパラレルで該当するであろう。


 「突起物」などは絶対悪のタブーとされて(汗)、その逆張りのデザイン思想から、頭部の一部を細かいミゾのように削るという方策が採られて、それを快挙と持ち上げる論法までも今度は現れるようになった――ウルトラマンティガ(96年)・ウルトラマンガイア(98年)――。


 しかし、このマニア論壇における論法の宗教的な域にまで達したドグマ(教条主義)が、作り手側や玩具会社のデザイナー側でも否定といわず相対視はされてきたのであろう。00年代中盤においては、歴代ウルトラマンが一挙に並んだときに映える・差別化ができるといった理由で、


・「ツノ」ではないけど背中に超長方形のパネル状の羽が生えたウルトラマンノア
・「複雑」で流線的な頭部&体表模様のウルトラマンネクサス(共に04年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20060308/p1


などが登場。


 続けて、従来は赤であった体表を青くして、両肩や両耳に「ツノ」のような小さな「突起物」もあるウルトラマンヒカリ(06年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20060910/p1)も登場する。


 そして、ついに禁断を破って、余計な「突起物」の最たるモノだともいえる2つの「突起」を頭頂部に持ち、それが分離して刀やブーメランにもなり、青と赤のボディーカラーも併せ持ったウルトラマンゼロ(09年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20101224/p1)が登場!
 ゼロはさらに先輩のウルトラマンダイナやウルトラマンコスモスとも合体して、ウルトラマンレオのような複雑なフラクタル曲線による複数の「突起」を頭頂部に冠したウルトラマンサーガ(12年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20140113/p1)にもタイプチェンジする!


 以降は、


・ネーミングの由来「V」の字を額やスネなどの体表の各所にかたどって、右腕を往年の人気怪獣の巨腕やシッポに換装できるウルトラマンビクトリー(14年)
・同じく「X」の字をかたどり、各種の怪獣型ヨロイまで装着できるウルトラマンエックス(15年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200405/p1
・ついにはウルトラマンタロウの力を借りることで、頭部にアレほどまでに否定されていた「両ヅノ」を生やすに至ったウルトラマンオーブ(16年)の一形態・バーンマイト
ウルトラの父の力を借りることで、同様に「両ヅノ」を生やしたウルトラマンジード(17年)の強化形態・マグニフィセント


までもが登場した!


 そして、本作『ウルトラマンR/B(ルーブ)』(18年)においては、ついにウルトラマンロッソが「猫耳」(笑)となるのであった。


――以上の流れもまた、日本むかし話の主人公たちをモチーフに、桃から生まれた『桃太郎』の「真っ二つに割れた桃」(笑)を顔面のモチーフとしていた仮面ライダー電王(07年)や、コウモリを両眼の意匠とした仮面ライダーキバ(08年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20080225/p1)に、バーコード(爆)をモチーフとした仮面ライダーディケイド(09年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20090308/p1)などを皮切りに、イロモノ要素も適度にブレンドされて自由過ぎるデザインを持つに至った平成仮面ライダーたちのデザイン史ともパラレルだともいえるだろう――


 70年代末期~00年前後にこのようなデザイン的な冒険をしようモノなら、あるべきドグマに反するものとして、子供はともかく年長者のマニア論壇からはほぼ全員総出の猛反発の火の手があがったことであろう。
 しかし現在では、筆者の観測する範囲ではそのような光景はほとんど見られない。いたとしても極々少数派の絶滅寸前種族であり、むしろ今となっては保護すべき対象に値する存在であるのかもしれない(笑)。


 客観的に見れば、コレは特撮マニアの価値観の大地殻変動コペルニクス的転回とでもいうべき事態である。
 なのだけど、この転回は、5年・10年・15年という長期スパンでの漸進的(ぜんしんてき)なオズオズ・ユルユルとした変化でもあったために、扇動家がいてフランス革命ロシア革命が成就したのではなく、いや扇動家もいたやもしれないけどさして影響力は発揮できずに遠吠えの空振りで(笑)、マニアの側もナンとなく消極的に時流に飼い慣らされてしまって、強固な「理論」もヌキにフワッとした「今ではそれでもイイよね」程度の「空気」で事後承認をしているだけ、といったことが事の真相なのやもしれない。


 まぁ、それでもイイのかもしれないけれども、筆者のようなロートル評論オタクは「むかしはむかし。今は今」「長いモノには巻かれろ」で、何の「総括」や「自己反省」もナシに昨日と今日とで主張を180度、真逆に変えてしまって、恬として恥じない自堕落な態度は、戦前~戦後に突如急変した往時の大多数の日本人の姿を再び見るようでもあって、あまり気分のイイものではない。


 「むかし」の原理主義的なデザイン論の方が間違っていて、あるいは誤りであるとはいえないにしても未熟なデザイン思想であったから、「今」の多彩で自由なデザイン論の方が正しいと気付いて、それゆえに乗り換えたのか?
 しかし、その場合でも、「今」の正しい方に乗り換えること自体はイイとして、「むかし」の間違っていた見解に加担していた自分をどのように「総括」するのか?
 オレは戦前の政府にダマされていただけの無垢な被害者だからまったくの「無罪」なのだ! と居直ってしまうのか?


 「主犯」ではなく「従犯」ではあるけれど、そこに加担したという意味では小なりとはいえども自分の意志による選択・決定はあったワケだから、自分もB・C級ではあっても「戦犯」ではあったと客観視・自己規定をして、そのかぎりでは懺悔・反省をすると云うのであれば、ヒトとしてのスジも通ると思われるのだけど……。


 とはいえ、シンプルなデザインこそ糾弾されるべき「絶対悪」であり、複雑で玩具チックなデザインこそが「正義」である! という逆立ち論法もまた正しいとはいえるのか? 単にそれでは、それまでにあった論法を単純にひっくり返しただけに過ぎず、対立項に対する排他的・敵対的なメンタルという点では共通ではないのか? ……というような疑問なり、自己懐疑・自己相対視も次には浮上するであろう――まぁ浮上しないヒトもいるのであろうけど(笑)――。


 つまり、シンプルなデザインにも良さがあり、複雑であったり玩具チックなデザインにも良さがある。


 あるいは4分法で、


①シンプルなデザインで良いもの。
②シンプルなデザインだけど悪いもの。
③複雑なデザインで良いもの。
④複雑なデザインだけど悪いもの。


……というように、さらにていねいに選り分けて腑分けしていけば、我々が無意識に日々直観的に感じているであろう、デザインに対する感慨の複雑な実態のそのヒダヒダにも、より正確に接近していくようにも思われる。


 というワケで、今の時代の特撮マニアの大勢は、前近代的・宗教的・原理主義的で偏狭なドグマは持たずに、シンプルなモノでも複雑なモノでもイイものはイイ、シンプルなモノでも複雑なモノでもイマイチなものはイマイチ、という判断ができるように近代的・合理的・理性的な思考をするように成熟したのだとも私見するのだ。


 そう、大マスコミとネットニュース、ドッチが正義でドッチが悪という2元論ではなく、それぞれに真実のニュースを流すこともあれば、それぞれがフェイクや誤報も流すことがある、というように4分法で考えるという行為こそが、理性的な思考法なのだ(……話がズレてます・笑)。


「最近のウルトラマンはベラベラしゃべりすぎだ! 神秘性がなくなる!!」


 「最近のウルトラマンはベラベラしゃべりすぎだ! 神秘性がなくなる!!」(笑)という発言も同様である。


 コレは70年代後半~90年代中盤においてマニア論壇では主流であった、


「昭和の第1期ウルトラシリーズにおけるウルトラマンたちには完成された神秘性があったから“善”である。対するに昭和の第2期ウルトラシリーズにおけるウルトラマンたちからは神秘性がウスれて、兄弟やファミリーといった矮小な擬人化まで推進されたから“悪”である」


といった論法を淵源(えんげん)に持つものでもある。


 メンドいので結論を先に云えば(笑)、神秘性を強調したウルトラマンにも良さがあり、人間クサさや未熟さを強調したウルトラマンにも良さがある。
 しかし、神秘性を強調しすぎてスベってしまったウルトラマンもいれば、未熟さが「弱さ」の域に達して子供の憧れたりえなかったウルトラマンもいる。そんなところであるだろう。


 とはいえ、「神秘性」の有無という尺度で、歴代ウルトラマンたちをそんなにスッパリと2元論でカテゴライズできるものでもない。いかに人間クサくて未熟で弱いウルトラマンが過去にいたとしても、人間ではなく超人や宇宙人である以上は、「神秘性」が皆無になるワケでもなかった。
 その逆に、神に近しい「神秘性」を強調していたとしても、天地創造の神さまそのものではなくヒト型の形をしている超人である以上は、ヒトとしての属性が醸されてくるモノだ――少々の喜怒哀楽とか、敵対怪獣に対して優勢か劣勢かで見せる余裕や切迫感などの感情――。


 つまりは、オール・オア・ナッシングの2元論ではなく、「神秘性」の濃淡のなだらかなグラデーションのドコに位置するのか?
 「神秘性」と「人間性」が100か0ではなく、このウルトラマンの場合には90:10であり、そのウルトラマンの場合には20:80であり、あのウルトラマンの場合には60:40である……といったように、特撮マニアの大勢がそこまで意識的に考えているかといったら、それも怪しいけれども(笑)、そちらの複雑系の方向性で漠とでも思考ができるように変化してきたのではないのかなぁ……。そうであることを祈りたいものだ。


 要は作品によって、


ウルトラマンを人間から見て「神秘的」で不可知の圧倒的な超越者として描くことでもたらされる「SF的な感慨」を主軸にすえてもイイ
ウルトラマンを人間から見ても「人間的」に描くことでもたらされる「人情味」や「青春・成長ドラマ性」や「滑稽味」にも良さがある


といったことなのだ――後者の近年での好例が、ウルトラマンゼロとDAIGO演じるタイガ隊員との関係であり、ウルトラマンゼロと冴えないサラリーマン・伊賀栗レイトとの関係でもある(笑)――。


 ……まぁ、完全なるフィフティ・フィフティという関係もウソくさくて、6:4とか4:6の微差もあるハズなので、時流に沿っていたり、長寿シリーズの後継作としては、後者の方にやや分があるようにも思うけど。


 次に、


「名乗りの最中と変身の途中で攻撃するのは言語道断! ルール違反なんだぞォ!!」


うんぬんという発言も……。


 このあたりの話も、賢明な読者諸氏にはこのあとに筆者が書こうとしている論旨の予想がつくやもしれないけれども(笑)、時間の都合でここで筆を置こう(オイ・汗)。


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2018年秋号』(18年11月4日発行)~『仮面特攻隊2019年号』(18年12月29日発行)所収『ウルトラマンR/B』中盤合評5・6より抜粋)


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ウルトラマンルーブ』序盤総括 〜ユルい作風。その玩具性・名乗りの是非。ウルトラ史上最強の空中戦特撮!

(文・T.SATO)
(2018年8月10日脱稿)


 今年2018年度の『ウルトラマンR/B(ルーブ)』は、シリーズ中盤からの増員やライバル・悪役ポジションとしてではなく、最初からほぼ対等・拮抗した正義のコンビのダブル・ウルトラマン体制となった。
 加えて、カードやカプセルならぬ、今度のコレクション・アイテムはメダルである!――劇中ではクリスタルと呼称―― 漢字の「火」をかたどったウルトラマンタロウのメダルを変身アイテムに装着するや、頭頂部が上に向かって末広がりの「W」字型となる2本ヅノの赤いウルトラマン・ロッソへと変身! 片や漢字の「水」をかたどったウルトラマンギンガのメダルを装着するや、垂直1本ヅノの青いウルトラマン・ブルへと変身!


 彼らのツノには炎が燃え盛っているような模様も付けることで、そのツノを色彩的にも少々強調するようなアクセントも加えられている。
 頭部の違いで両者の違いを強調したのでやや頭部が大ブリになったことを目立たなくするためか、胸筋や背面の肩甲骨の部分には赤銅や青銅のメタリックな硬質パーツをまとってもいる。両肩の腕側にも銀色の硬質な肩パットをまとうことで上半身にたくましい厚み&肩幅を少々増やして、一昨年の『ウルトラマンオーブ』(16年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20170415/p1)同様、腹部から下の下半身は膨張色ではなくシルバー&黒のカラーリングとして色彩的に締まった印象も与えることで、バランスも取っている。


 この赤と青は基本的には固定なのかと思いきや、メダルを交換して変身することで、赤い2本ヅノ・ロッソは青色に、青い1本ヅノ・ブルも赤色にカラーチェンジできることで少々ヤヤこしい(笑)。だからこそ、区別を付けやすくするためにも、2本ヅノ&1本ヅノのコンビにしてみせたといったところなのだろうが。
 #5では新たな漢字の「風」をかたどったウルトラマンティガのメダルで紫色のウルトラマンにも変身! なんだか漢字の文字がそのままモチーフにもなるなんて、『侍(さむらい)戦隊シンケンジャー』(09年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20090712/p1)を想起させるけど。


 本作『R/B』におけるウルトラマンのタイプチェンジは、古代ギリシャで唱えられていた物質の根源であるエレメント(四元素)、「火」「水」「風」「土」がモチーフとなっている。物質の元素(原子)は90種類以上もあって、「火」や「水」や「風」は根源単位じゃないよ! それらは「水素」や「酸素」やらが化合したモノだよ! と判明して久しい現在では、SFというよりオカルト的なインチキ設定なのだが、細かいことは気にするナ。未来世界の大宇宙に20世紀の軍艦や機関車が飛ぶような古式ゆかしい風情があるじゃないか!?(笑)
 この調子で色違いのウルトラマンに再変身することで商品数を増やしたり、この地上・物質世界ではなく宇宙・天上界・高次元世界を組成する元素であるフィフス・エレメント(第5の元素)の強化形態ウルトラマンが出てきたり、最終的にはふたりがウルトラタッチ(笑)で合体変身してひとりとなったかたちの最強形態ウルトラマンなども登場するのであろうけど――ネット上にはすでに玩具業界情報バレで、3本ヅノの全身銀ピカのウルトラマンがリークされてますネ(汗)。


「まとうは火!」「まとうは水!」 〜ヒーローの唐突な名乗りをドー考えるか!?


 変身シーンは、メダルをバックルにハメたあとで、往年の野球マンガ巨人の星』(66年・68年にTVアニメ化)の大リーグボール養成ギブスか、胸筋&腕を鍛えるエキスパンダーがごとく、左右両方から3回連続して引っ張ることで変身できる、玩具のプレイバリュー性をも強調して見せるモノともなっている。


 そして、2010年代の平成ライダー同様に、あるいは少年マンガ的に歌舞伎的様式美を優先して、毎回のお決まりの啖呵(たんか)には、


「まとうは火! 紅蓮(ぐれん)の炎!!」
「まとうは水! 紺碧(こんぺき)の海!!」


などの文語的・劇画的な仰々しいセリフを吐かせてもいる。


 一部の世評を見るに、ナゼにそのようなセリフを天然で吐けるのかを疑問視する声もいまだにあるようだ。


 たしかに純然たる物理的・科学的・唯物論的なテクノロジーによって誕生した、70〜80年代中盤までの改造人間・強化服タイプの特撮ヒーローならばオカしい。しかし、コレもまた剣と魔法の西欧中世風ファンタジーが勃興した80年代後半以降、神秘・魔術・大自然の精霊・神的パワーに根拠を持つ超自然的なヒーローや合体巨大ロボット(笑)が勃興した以降の、SF考証ならぬオカルト考証(笑)的なロジックを用いてみせれば説明は付くであろう。


 神のごとき知性や意思を持った、高次で神秘のパワーが初登場のヒーローたちをして、


「俺は太陽の子! この世のすべて、生きる者すべてを守る! 仮面ライダーBLACK! RX!!」(88年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20001016/p1
「大地の使者! (絶対無敵)ライジンオー!!」(91年)


などのセリフを吐かせしめて――「大地」の精霊がナゼに「機械」の合体ロボットを生み出したのか? というようなツッコミはさておいて(笑)――、それまで知りもせず練習したこともなかった必殺ワザも「本能」的に繰り出させているのだ! という解釈ができるのだ。


 そしてそれにより、ある意味では「ヒーロー」の「本質」そのモノだともいえる、非・常識的な「圧倒性」・「超越性」・「善性」・「神聖性」・「正統性」のような抽象的・理念的・シンボリックなモノまでをも純化して抽出ができたり、その正反対のモノである「邪悪」・「卑劣」・「野望」などのマイナスのエレメント(要素)を敵側に付与することで、単なる出自設定をも超えて作品自体に「道徳的」なテーマ性までをも付与ができるのだ。
 1990年前後にもまた、そのようなことを可能にする設定的な「発明」、ジャンル全体に何度目だかの「エポックメイキング」や「パラダイム・シフト」があったのだと個人的には観ているのだが、本作『R/B』や00年代後半以降の平成ライダーシリーズにおける変身時や変身直後の「名乗り」もまた、そのようなモノの延長線上のモノとして筆者は捉えたい。


 一方で、そのようなことを「リアリズム」の観点から、70年代末期~00年前後にかけては過剰に批判したのは、イイ歳こいてこのテの子供向け番組を鑑賞している自己を正当化するために、そしてそのジャンルの市民権を得るための理論武装として、作品に過剰に「リアリティー」や「社会派テーマ」を求めた、第1〜第2世代オタクに特有な、かつマニア論壇・草創期の中2病的な時代の産物だったかとも私見をするのだ。


 とはいえ、そのように「リアリズム」の観点から見て、「弱点」や「矛盾」と思われる箇所に、幼児はともかくジャンル番組卒業期の子供たちまでもが幻滅してしまい、その卒業を早めてしまうようであれば、それはやはり見逃せにできない欠点ではあるだろう。よって、そのへんに対する自己言及やエクスキューズに設定的な補強を、劇中でも施(ほどこ)すこと自体はむしろ積極的に許容されてしかるべきであるとも考える。小池都知事も昨2017年に云っていた正・反・合のアウフヘーベン弁証法的発展)というヤツである(笑)。


 実際このへんには、ジャンル作品でもすでに手当てが行なわれていて久しい。女児向けアニメ『プリキュア』シリーズ(04年〜・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20201227/p1)の#1などを鑑賞していると数作に1回程度は、初変身直後に自分のヒロイン名をナチュラルに堂々と名乗ったり必殺ワザ名を叫んだりしたあとで、「アレ? なんでアタシ、こんなことしゃべってるんだろう?」的なセリフを吐かせていたりもする――もちろんコレは神秘のパワーが本能的にプリキュアたちに云わせているのだ! ということの逆説的な設定説明でもある――。
 こーいう描写でナットクを与えられることで、卒業を回避してマニア予備軍になってくれるガキもいることであろうから(笑)、必要悪として矛盾をスルーするのではなく、そーいう言い訳まがいなセリフも適度に散りばめておいてから安心して全力でヒロイックなアクションに走っていく方が、「リアリズム」&「歌舞伎的様式美」の両立(!)としてもクレバーだとは思うのだ。


 まぁ、ムズカしいことはともかくとしても、初期にはアレほどリアル指向であった平成ライダーシリーズも、『仮面ライダーカブト』(06年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070211/p1)や『仮面ライダー電王』(07年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20080217/p1)あたりから、子供やマニアたちに「待ってました!」「そー来なくっちゃ!」的なお約束反復ネタで、カッコいいけど半分笑っちゃう、みんなでマネして半笑いをしてみせるコミュニケーション・ツールとしての「名乗り」や「決めゼリフ」などの燃料も投下されるようにもなっている。もはや大方のマニアたちもみんながスレていて「それはオカシい! リアルじゃない!」なぞと糾弾することもなくなって、あからさまな矛盾は論外にしても少々オカしい程度であればご愛嬌的に楽しんで、絶叫上映会などでは積極的に反復唱和までをもしてみせる! などという共犯関係になってからでも久しい(笑)。


主人公のホームベースは欠損家庭! 〜1970年代前半の特撮作品では欠損家庭がしきりに描かれたのはナゼなのか?


 本作のふたりのウルトラマンは、リサイクルショップ(?)を経営している家族と同居している青年の年齢に達している兄弟として設定されている。ここに元気で可憐な女子高生の妹と頼りないパパさんを設定することで、人間ドラマ部分の背景舞台も集約化。ホームドラマとしてのテイストも本作には付与するようである。
 パパさんを演じる山崎銀之丞は、我々ロートル世代には『3年B組金八先生』第5シリーズ(99年)以降の熱血空回り教師役として知られてもおり、前年度の『宇宙戦隊キュウレンジャー』(17年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20180310/p1)終盤では主人公・シシレッドの生き別れの父親にして異星の王さまとしても好演したばかりだが、やはりその特撮体験あっての抜擢なのであろう。


 とはいえ、彼らの母親は15年も前に突如として失踪してしまったのだという設定も与えてられおり、ノーテンキなばかりではなくややドラマチックな要素も付与してはいる。
 レギュラーやゲストに欠損家庭を設定すると聞くと、ロートル世代的には70年代前半の第2期ウルトラシリーズや、同時代の子供向けTVアニメ・児童向けTVドラマ・学年誌などの「家なき子」や「母をたずねて三千里」パターンの読みもの連載なども連想してしまう。明朗な1960年代ともやさしさ&落ち着きがある1970年代後半ともまた異なる、やや陰があったり荒々しさがあったりするドラマやテーマを持った作品群が、1970年代前半のアニメ・特撮・時代劇では隆盛を極めていたのは、後知恵(あとぢえ)で思うに、何かそのような時代の空気の反映もあったのだろうと思われる。


――70年安保などに連動した学生運動・学園紛争の終焉。日本のTVアニメ・TV特撮が草創期を過ぎたことで、スタッフたちも習熟の果てに自身たちが作っている作品における「ドラマ性」や「テーマ性」を一歩先に進めてみたかった。もっと云うならば「作家性」といったものも押し出してみたかった。あるいは、日本は60年代に高度経済成長をいったんは遂げていたので、それと比すれば70年代は相対的には裕福になっていた。とはいえ80年代以降と比すれば、まだまだ良くも悪くもミーイズムが弱く離婚率も低くて終身雇用で、実際には当時は欠損家庭は少なかったハズなのに、戦中派の作り手たちは終戦直後の焼跡闇市における両親や片親のいない戦災孤児や浮浪児たちの存在を目撃や仄聞してきた世代であったので、彼らは自身たちの責務として、何よりもその実存的・文学的・内的必然として、子供向け作品群にその残滓をぜひとも焼き付けておきたかったのだ…… などなどの諸々の総合として――


欠損家庭を高いドラマ性をもって描くのならば、活劇性も増量すべきであった70年代第2期ウルトラシリーズ


 とはいえ、アニメと実写の媒体の違いゆえでもあろうけど、実写ドラマで欠損家庭の物語を描いていた第2期ウルトラシリーズなどは、そのドラマ性の高さを後年に認めるにやぶさかではないけれど、子供時代にはその作風がやや重たくシミったれて感じられて気恥ずかしかったことも事実なのであり(汗)、それゆえにドラマ性はカナリ抑えてゲーム的な攻防劇に徹したことで大ヒットを記録した、同時期の昭和の『仮面ライダー』シリーズと『マジンガーZ』シリーズの後塵を拝していた面も否めない。
 コレは何も二者択一で、一方を全肯定して他方を全否定しようというのではない。しかし、もう少し巧妙に、往時も小学館学年誌などで連載されていた第2期ウルトラシリーズのコミカライズ作品群のごとく、月1くらいでカラッとしたイベント編・攻防編・先輩ウルトラ兄弟客演編を配置して、子供たちのプリミティブ(原始的)な暴力衝動やヒロイズムを刺激・発散させつつ、残りの話数でニガ味の残る欠損家庭の子供たちの人間ドラマを描くような心情ドラマを配置する、というような巧妙なシリーズ構成を達成ができてさえいれば……。


ウルトラマンレオのピンチに、直前作のウルトラマンタロウや、変身不能になっていたモロボシ・ダン隊長がウルトラの父の力で一時的にウルトラセブンに変身して助けたり!
●アンチラ星人が化けていたニセ郷秀樹の前にホンモノの郷秀樹が出現、ウルトラマンジャックに変身してウルトラマンエースと共闘したり!
ウルトラ兄弟の長男・ゾフィー兄さんやウルトラセブンが宇宙から湖水を蒸発させたり、宇宙で怪獣を元の動物に戻したり、臨死体験時に励ましに登場(笑)するだけでなく、その回では地球でエースと共闘したり!
●ラスボス級キャラの異次元超人・巨大ヤプール登場回では、ヒーローひとりでは倒せないほどの強敵として描くためにも、エースを異次元に召喚してくれたゾフィー兄さんもそのまま共闘してくれたり!
●ウルトラ5兄弟をブロンズ像化して全滅させたほどのヒッポリト星人であるならば、復活したエースのいつものメタリウム光線一発で倒せてしまったら凡敵に見えてしまうので、かつて強敵・異次元超人エースキラーを撃破した、ウルトラ5兄弟全員のエネルギーを結集した超必殺ワザ・スペースQを再使用して倒したり!
●各作品の最終回は、昭和の『仮面ライダー』各作の終盤がごとく前後編や3部作で、世界規模での再生怪獣軍団vsウルトラ兄弟の総力戦を描いてくれたならば!!


 このようにスケール雄大で殺陣(たて)=アクション面でも先輩ヒーローがカッコよく見えるように特撮怪獣バトルを演出面でも気を使っていれば、娯楽活劇作品としてのカタルシス面でも人間ドラマとしての味わいの面でもバランスが取れてきて、第2期ウルトラシリーズも当時のTV特撮の中では昭和の第1期『仮面ライダー』と比すれば№2、『マジンガーZ』を含むTVアニメなども含めれば、子供番組全般の中では№3の上位メジャーの域にはあったけど、それら2トップの人気にさらに肉薄・拮抗することができたようにも思えるのだ。


 もっと云うなら、「禍福(善悪)はあざなえる縄のごとし」「人間万事塞翁が馬(じんかん・ばんじ・さいおうがうま)」で、そのようなヒロイズムの高揚・カタルシス・爽快感の記憶をヨスガに、世代人のオタクたちに長じてからの追体験・再鑑賞意欲を惹起して、レンタルビデオなどについつい手を伸ばして再鑑賞をさせてしまうことで、「意外にも第2期ウルトラにも人間ドラマがある!」「いや、第2期ウルトラにこそ、過剰なまでに濃厚な人間ドラマがあったのだ!」などという、それはそれで「ドラマ性」や「テーマ性」至上主義を解毒して「エンタメ性」や「アクションのカタルシス」を賞揚する運動とはやや矛盾も発生してしまうけれども(笑)、そのような「再発見」に関与する特撮マニアの動員規模も大なるモノとなることで、70年代末期~00年前後に長らく隆盛を極めていたマニア第1世代による第2期ウルトラ酷評をくつがえすだけの再評価の波も、もっと早くに進んだかもしれないとも思うので……。


重苦しすぎるドラマが子供や視聴者を遠ざけるならば、コミカル演出や演技にも一理あり!


 そのような反省があったということでもないのだろうし、80年代以降、あるいは往年の『宇宙刑事ギャバン』(82年)に登場した民間人側のレギュラー、『3年B組金八先生』(79年)シリーズの大森巡査役でも知られる鈴木正幸が演じる、UFO専門のルポライター・大山小次郎のやたらと明るくテンションが高い演技(笑)なども発端とするのであろうけど、その成れの果て(?)としての本作『ウルトラマンR/B』でも、近年の平成ライダースーパー戦隊などとも同様に、人間ドラマ部分の演技プランは喜劇的なトーンで統一されている。


 たしかに、クールで乾いたSFドラマ性ともまた異なる、第2期ウルトラシリーズ特有の重たくシメっぽい人間ドラマが「イヤ〜ンなニガ味」や「気恥ずかしさ」を与えて、子供たちを引かせてしまう事実もあったのだ。そして他方では、「ミガ味」とは真逆なモノになるけれども、『帰ってきたウルトラマン』(71年)の怠け怪獣ヤメタランス編や『ウルトラマンタロウ』(73年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20071202/p1)のギャグ怪獣回でのハイテンションなコミカル演技を、「SF的ワクワク感」を毀損する子供をバカにしたモノとして受け取るような子供番組卒業期の小賢しいマニア予備軍の筆者(笑)、もとい子供たちの感性もたしかにかつて存在したのも厳然たる事実ではあるのだ。


 このへんの問題は固定的・絶対的な正解があるモノではないのだろう。ある「一定の幅」の中での「ヘビーな作風」〜「ライトな作風」は、実はすべて子供向け番組・特撮変身ヒーロー番組においてはグラデーションとして子供たちもOKだと受け取っているようにも、現在の筆者は個人的には考えている。
 しかし、それは「ナンでもアリ」という意味でもない。やはり、過ぎたるは及ばざるがごとしである。「あまりにヘビーな作風」および「あまりにライトな作風」。つまりは、先の「一定の幅」の「右」や「左」にハミ出しすぎた極端なモノは、やはり両方ともに子供たちにとっても――実はそれは特撮マニアや一般大衆たちにとっても――アウトになるのであろう。もちろん、そこに個人の好みやキャパシティー・守備範囲のちがいまで加わっていくことで、さらにヤヤこしくなっていくのだが(汗)。


 その前提の上で云うのだが、筆者個人は90年代以降、あるいは21世紀以降の子供向け番組の作り方としては、70年代前半の第2期ウルトラ的な重たい児童向けドラマのトーンではなく、コメディ的なトーンでディレクションしていった方がベターであろうと考えている。
――まぁ、今だからこそそのようにも思うけど、ごくごく個人的な感慨を云わせてもらえば、『宇宙刑事ギャバン』における大山小次郎こと鈴木正幸のハイテンションなコミカル演技などは、それが狂騒・狂躁的な80年代の到来とシットリとして優しかった70年代への決別のようにも思えて、筆者個人はイヤでイヤでたまらなかったモノだけど(笑)。加えて云うなら、幼少時はともかく思春期以降の再視聴では、第2期ウルトラシリーズにおける「ニガ味」もある児童ドラマ群のことが筆者も大スキである。しかし、アレらをそのまま80年代以降の特撮作品群に導入しても子供たちやマニア・大衆たちにもドン引きされるであろうから、うまくマイルドに寸止めして視聴者たちに伝達するような手法がナイものなのかを漫然と考えつづけてもいるのである――


 とはいえ、『母をたずねて三千里』的な要素は、本作『R/B』という作品が過剰にシメっぽくはならないようにするためにか「点描」にも近いけれども、本作にかぎらず『特命戦隊ゴーバスターズ』(12年)や『ウルトラマンX(エックス)』(15年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200405/p1)などにも「親探し」の要素が導入されたジャンル作品は、近年になってからだが散見はされるようにもなっている。80年代〜90年代初頭のバブル期のように、ダウナーな要素が過剰に忌避されるネアカ至上で狂躁的な時代もまた終わって久しいようではあるので、個人的には実に好ましい方向性での時代の変化ではあるのだ(笑)。


兄弟主人公を共に「熱血」として描く試みは、成功か!? 失敗か!? それとも一長一短か!?


 主人公である青年兄弟ふたりについても、もう少しふれてみたい。フツーはコンビ・バディー(相棒)ものだと、ふたりの差別化・描き分けのために、日本の往年の変身ヒーローものでも、古くは『超人バロム・1(ワン)』(72年)、あるいはそれを模したとおぼしき新しめのところでも『仮面ライダーW(ダブル)』(09年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100809/p1)、女児向けTVアニメ『ふたりはプリキュア』(04年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20040406/p1)などのように、「熱血漢」と「沈着冷静」の2者コンビとしての性格設定を与えるものである。それはそれで間違っているとは思わない。しかし、このキャラクターシフトは、前者の猪突猛進が物語を引っ張って戦闘においても先陣を切る行動隊長の役回りとなるために、後者がやや分が悪く見えるのも事実なのである。
――21世紀以降の子供向けならぬ思春期・青年期以降向けのジャンル作品だと、熱血漢よりもクールな軍師・策士タイプである頭脳派のキャラクターの方をカッコよく描いていく『デスノート』(03年)・『コードギアス 反逆のルルーシュ』(06年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20081005/p1)・『アルドノア・ゼロ』(14年)のような作品も登場してはいるけれど――


 本作についても、青い私服を着ている「弟」が頭脳派だという設定をドコかで読んだので、そのテの陥穽にハマった作品でもあるか? などと思いつつ、フタを開けてみたのだが……。パソコンを操って分析担当! みたいなこともしてはいるけど、しょせんはその程度であって(笑)、あとは兄に負けじ劣らじフツーに熱血青年でもあったことよ(笑)――いかにも「弟」的な「甘ったるさ」はアリつつも――。
 コレならば、「兄」の方が強くて颯爽としてカッコがよくって、「弟」の方が地味で少々弱いから子供人気の面では劣る…… なぞという事態には陥りにくそうではある。ソコまで先回りして計算した上でのこのキャラクターシフトであったかは怪しいけれども(笑)、結果オーライというべきであろう。


 もちろん何事も一長一短ではあるので、ふたりの性格的・思想的な描き分けという面ではたしかに少々弱くはなってくる。しかし、頭脳派の「弟」がサブ扱いとして少々ワリを喰ってしまう「デメリット」と、「弟」も熱血漢でありつつも「兄」とほぼ対等どころか「頭脳派」の長所も付与されることで「兄」とも拮抗すらする「メリット」が与えられたことを、総合的に比較考量すれば、本作における「弟」も「兄」同様の「熱血」として描くという手法はたしかに成功したようにも思えるのだ。


怪獣紳士録 〜乙一&田口清隆再登板! 鳥型怪獣とのウルトラ史上最強の空中戦特撮!


 毎回登場するゲスト怪獣は、2010年代の低予算ウルトラシリーズの通例に則(のっと)って、#1は新作ソフビ怪獣人形とも連動した新造着ぐるみ怪獣で、黒と溶けた鉄のような赤が印象的な蛇腹のグルジオボーンが登場。ボーンというからには骨がモチーフである怪獣である(笑)。#2以降はやはり2010年代恒例である既存の着ぐるみ怪獣の使い回しとなり、3年前のウルトラマンエックスとも戦ったブラックキングが#2に、同じくエックスと戦ったガーゴルゴンが#3に、歴代ウルトラマンとも戦ってきた人気怪獣レッドキングが#4に登場して活躍している。


 2010年代のウルトラシリーズも観続けている特撮マニアであれば特筆すべきなのが、#5に登場した鳥型怪獣グエバッサーであろう。前々作『ウルトラマンオーブ』における敵の怪獣種族=「魔王獣」のうちの1体・マガバッサーの色の塗り替えにすぎないのだけれども、禍々(まがまが)しいダークな青と黒の色彩を白に塗り替えるや、あら不思議。フォルムは同じなのに随分と優美に見えてくる。ぜひとも『ウルトラ怪獣擬人化計画』で華麗に女体化してほしいモノである(すでにしている?)。


 そのマガバッサーならぬグエバッサーが登場した#5では、脚本に前作『ウルトラマンジード』(17年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20170819/p1)でメインライターを務めた作家の乙一(おついち)こと安達寛高が再登板! いやぁ本業がある御仁だから、『ジード』1作こっきりの登板かと思っていたので、またプロデューサー氏がお声掛けをして、さらに氏がそれに応えて執筆してくれるというのが実に意外。
 お話の方はメインライターが設定紹介編をやるならば、サブやゲストのライターは設定の補強や傍流の肉付け、ゲストを主体にするなどのパターンのものに仕上がってもいる。「弟」の方の人物像を肉付けするために、彼の大学生活で知り合った、キャンパスでも翼型パーツを付けて鳥人間コンテストのように空を長時間にわたって飛ぼうとして失敗しつづけてもいる、男に媚び媚びとしたイロ目を使いそうにはない、いかにもマジメそうな小柄で黒髪ショートの健気そうな、美人というより可愛い系寄りの理系女(リケジョ)とカラませる。
 まだシリーズも序盤なので、このテのシットリとしたドラマ編はもう少しあとの回にまわした方がイイようにも思ったけれども、単独作品としての評価は高得点を与えてもよいくらいの面白さであったとは私見する。


 彼女が在籍する大学の雑然とした研究室には、19世紀の先人・リリエンタールが作ったようなハングライダーの巨大骨格模型が吊されているのをはじめ、様々な小物で飾られており、実にそれらしい映像的説得力まで醸されて、本編美術班のがんばりにも驚かされる。恒久的なスタジオセットも用意されず、屋内部分は東京郊外・多摩地方の廃校の小学校しか登場しなかった、2010年代ウルトラシリーズの1発目『ウルトラマンギンガ』(13年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200819/p1)のころと比すればエラい予算のアップである(笑)。
――もちろんリアルに考えれば、彼女のあの装備では空気力学的にも空を飛べることはナイのだけど、そこはサブタイトルでも謳われるギリシャ神話のイカロスと掛ければ、役者さんが自力で力強く羽ばたいてもみせるあの姿に、彼女のがんばり&シンボリックなロマンも込められようというモノだ――


 こーいう人間ドラマ主導の回だと、特撮シーンは惰性の段取りになりがちである。もちろん#1や最終回にイベント編ではない通常回では、そのようなお約束のルーティン段取りに留まった特撮怪獣バトル回があってもイイのだけれども……。しかし、そこは特撮自主映画監督上がりで、本話の本編演出のみならず特撮演出も担当している田口清隆! 先にゲットした「風」のメダルの力でウルトラマンがはじめてカラーチェンジして初活躍する回でもあるからだろう、特撮部分も実に力が入っている!


 手前に「妹」とゲストのリケジョが小さくたたずむ引きの実景(コレも特撮セット?)の小高い芝生の斜面越しの奥に、特撮セット内にも用意した、またまた緑の斜面越しにいる鳥型怪獣を合成してみせる。それがフィックス・固定したアングルでの合成ならば特にドーということもナイけれども、カメラがヨコ(円周?)移動をはじめても、実景(?)+特撮セットのヨコ移動合成もズレたりせずにナチュラルに維持されつづけていくという、遠景・奥の方はいつものスタジオ内の特撮ミニチュアセットであることはバレバレでも、それでも映像的なサプライズやカッコよさを視聴者に感じさせてもくる特撮演出の妙!!


 強風が吹きすさぶ曇天下、「弟」が変身して青い姿のウルトラマンブルに変身するや、そのまま横を通り過ぎていくウルトラマンをカメラの首振りで追っかけるのかと思いきや、地面に沿って全身を水平にピンと伸ばして超低空飛行を開始したウルトラマンの背中や後頭部を、遠近感豊かにカメラは付かず離れずで大追跡!!


 さらにはカットを割らずにそのままウルトラマンの主観視線の映像(!)となって、空中に浮遊する鳥型怪獣グエバッサーに猛迫して、ウルトラマンの右手や左手だけが写っている図でパンチやチョップを繰り出してみせるという絵が!!


 またまたカットを割らずに、空中で組み合って戦いつづけているウルトラマンとグエバッサーの頭部やバストショットを捉えた巨大感あふれるドUP映像のままで、彼らの周囲を高速で360度グルグルと回り続けるカットまで!!


 グエバッサーが超高速で逃げ出して、その姿がケシ粒のように瞬時に小さくなっても、すぐに追いかけて追いつくウルトラマン!!


 実際にはカットも割ってCGなどでシーンがつながっているかのように加工しているとは思うけど(?)、いずれにしても、こんなにもカッコがよくってスピーディーで、なおかつ力強くて迫力もある空中戦の特撮演出なぞは観たことがナイ! 歴代ウルトラシリーズ史上、最強の特撮空中戦が誕生したかもしれないのだ!?


怪獣を召喚するアイゼンテック社長が、ウルトラマンオーブハモニカ曲を口笛で披露!?


 本作は『ウルトラマンギンガ』や『仮面ライダーW』などとも同様、一地方都市を舞台としている――その地名がベタにも、綾香市(あやかし。旧名は妖奇村(あやかむら)・笑)。怪獣の「怪」の読みでもあると思えば、ベタでも由緒は正しいのだ!――。そして、企業城下町でもあるというあたりで、『仮面ライダー鎧武/ガイム』(13年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20140303/p1)も想起する。その城下町を牛耳っているワケでもないけれども、町を富み栄えさせているのは、ハイテク大企業「アイゼンテック」!(旧名は町工場の愛染鉄工・笑)


 実は往時のサウジアラビアで大人気であったという円谷プロ製作の、本編人間ドラマ部分はセル画アニメで描いた男女合体変身の特撮ヒーロー『恐竜大戦争アイゼンボーグ』(77年)が、オイルマネーで昨2017年末に当時の声優さんまで起用して新作映像が製作されたことにあやかったネーミングでもあろうか?(笑)


 両手の指でハートマークをかたどってみせたりする――プリキュアの名乗りポーズか!?(笑)――この企業の社長さん。彼がやたらとハイテンションでガナっているような演技を披露するところで、『仮面ライダー000/オーズ』(10年)の宇梶剛士が演じた鴻上(こうがみ)財団会長をも想起させるけど、白いスーツをまとった長身のアイゼンテック社長・愛染マコトのお芝居がかった大仰で軽妙なコミカル演技にはついつい笑ってしまうのだ――先にもふれた「ヘビー」&「ライト」と「個人の好み」の問題にも抵触するので、戯画(ぎが)的なお芝居が不愉快な方々にはホントに申し訳がないのだけれども(汗)――。


 彼は初老の域には達してはいないけど、壮年のオッサンにすぎるので、若者ヒーローと拮抗する悪党には当初、見えなかったモノなのだが……。


 ナンと彼は「怪獣メダル」を所有しており、ヒーロー側と同じかたちの変身アイテムを、テンション高く「アン・ドゥ・トロワ~~」を3回連呼しながらエキスパンドもして(笑)、怪獣を召喚していたことが判明!


 #5のラストでは、一昨年度の『ウルトラマンオーブ』の風来坊主人公のトレードマークでもある黒い革ジャンをキツそう(爆)に羽織りつつ、やはり風来坊のトレードマークであったハーモニカ曲までをも口笛にて披露! ウルトラマンオーブのメダルもナデている姿で俄然、作品世界に対する興味・関心も惹起されてきた!


 正直、イイ意味でユルめな作風の2010年代のウルトラシリーズの中でも、本作は格段に輪をかけてユルい牧歌的な香りが序盤では漂っていた。しかし、やはりこのテのヒーローものは基本は戦闘モノなのだから、もう少しアグレッシブ(攻撃的・戦闘的)な要素や、タテ糸の要素を想起させるライバル的なキャラとの攻防要素、ひたすら並クラスの怪獣とのルーティンバトルではなく中ボスやラスボス怪獣なども適宜(てきぎ)登場させる起伏も付けてほしいよなぁとも正直思っていたので、この趣向には大賛成である。コレからも本作を注視していきたい気持ちにさせられた。


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2019年準備号』(18年8月11日発行)所収『ウルトラマンR/B』序盤合評7より抜粋)


『假面特攻隊2019年準備号』「ウルトラマンR/B」関係記事の縮小コピー収録一覧
・各話視聴率:関東・中部・関西。各クール平均・全話平均視聴率
・スポーツ報知 2018年4月25日(水) 7・7から「ウルトラマンR/B」 シリーズ初!!兄弟で変身 円谷プロ勝訴 ウルトラマン著作物 海外利用権巡り訴訟
産経新聞 2018年7月1日(日) 週刊番組ガイド 家族の絆描くウルトラマン 小池亮介 平田雄也 (役者表記の順は写真の左右並びに準じたもの)
西日本新聞 2018年7月16日(月) 次の連載随筆 かいじゅうタイムズ 小説家 乙一さん 23日から ――筆者の言葉――
西日本新聞 2018年7月24日(火) かいじゅうタイムズ2 ウルトラマンジードの話
西日本新聞 2018年7月31日(火) かいじゅうタイムズ7 Tシャツの話 (『R/B』#5の裏話)
・デーリー東北 2018年7月24日(火) 爆笑問題がウルフェスPR セブンが小声で暑いと漏らす?


ウルトラマンR/B』各話平均視聴率:関東1.4%(#1〜4)・中部1.5%(#1のみ)・関西0.9%(#1のみ)
おはスタ』2018年7月6日(金)「ウルトラマンR/B登場」視聴率:関東0.6%・中部0.6%・関西0.2%
ウルトラマンオーブ THE CHRONICLE』全26話平均視聴率:関東1.2%・中部0.9%・関西0.8%


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