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『SSSS.GRIDMAN』総括 ~稚気ある玩具販促番組的なシリーズ構成! 高次な青春群像・ぼっちアニメでもある大傑作!

(文・久保達也)
(2019年2月8日脱稿)

作品世界がメインヒロインの造った箱庭だった!


 ハイパーエージェントを名乗る正義のヒーロー・グリッドマンと一体化した男子高校生・響裕太(ひびき・ゆうた)と、クラスメイトの内海将(うつみ・しょう)・宝多六花(たからだ・りっか)の3人で結成された「グリッドマン同盟(どうめい)」と、グリッドマンの支援組織「新世紀中学生」の4人が、同級生の美少女・新条(しんじょう)アカネが毎回生みだす怪獣と戦う、学園ものと巨大変身ヒーローものを絶妙に融合させた深夜アニメとして、放映開始当初から大きな注目を集めた『SSSS.GRIDMAN(グリッドマン)』(18年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20181125/p1)。
 その第6話『接・触』では、本作の原典である特撮変身ヒーロー作品『電光超人グリッドマン』(93年・円谷プロ TBS)第6話『恐怖のメロディ』に登場した音波怪獣アノシラスの二代目が、幼女の姿に変身して登場し、「先代がお世話になった」として、裕太たちが住む町・ツツジ台の恐るべき秘密を明かした。
 それによれば、ツツジ台もそこの住人たちも、すべてはアカネがつくりだしたものであり、アカネはツツジ台の創造主=「神」なのであった!
 つまり、アカネがクラスの人気者となっているのは、パープル髪のショートボブヘアにワインレッドの瞳、やや巨乳(笑)で黒ストッキングにつつまれた美脚、といったルックスや、女子力・コミュニケーション能力の高さではなく、自身の都合のいいように、世界の破壊と創造を繰り返していたからなのだ!


玩具販促番組的なシリーズ構成&巨大戦演出!


 ひとクセもふたクセもある新世紀中学生たちが長剣・大型トレーラー・ドリル戦車・戦闘機といったアシストウエポンに変身し、それぞれが合体することでグリッドマンがタイプチェンジするのみならず、4機のアシストウエポンがグリッドマンに合体した超合体超人フルパワーグリッドマン、さらにグリッドマン抜きで全アシストウエポンが合体した巨大ロボット・合体戦神パワードゼノンらが、アカネが生みだす怪獣をカッコよく倒すカタルシスこそが、本作の大きな魅力のひとつである。
 雨宮哲(あめみや・あきら)監督は架空のマーチャンダイジングを想定することにより、本作では新メカ・新ヒーロー登場回やパワーアップ回、再生怪獣軍団登場回など、グリッドマンやアシストウエポンの合金玩具を視聴者がほしくなるような流れを構成していたのだから。
 製作当初は架空だったマーチャンダイジングが、大きなお友達向けに実際に合金玩具が発売されるに至ったのも、ヒロイック作画チーフなんて役職が設けられたほどに、本作のバトル演出が多くの視聴者に魅力あふれるものとして映ったからであろう。


 深夜アニメなのに、主人公の裕太が「アクセス・フラッシュ!」、新世紀中学生たちがそれぞれのアクセスコードを叫び、六花のママが経営する喫茶店を兼ねたジャンクショップに置かれた古いパソコンの画面に飛びこんで変身する、実に稚気(ちき)満々な描写を「ガキっぽい」などと批判することもなく、「特撮変身ヒーロー作品」だった原典の『グリッドマン』を知らないハズの若い世代が本作を好意的に受け入れているのは、我々のような古い世代が若かったころよりも、むしろ彼らの意識は成熟しているのだと解釈すべきかもしれない。
 また、巨大ロボットアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』(95年~・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20220306/p1)や、怪獣映画『シン・ゴジラ』(16年・東宝http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20160824/p1)の音楽も担当した鷺巣詩郎(さぎす・しろう)が手がけた、時に男声合唱も入る編成の厚いオーケストラによる劇中音楽は、グリッドマンの登場やアシストウエポンの合体場面をまさに「神」と思わせてくれるほどの格調の高さ・荘厳(そうごん)な雰囲気にあふれており、若い世代が「変身ヒーロー」を観ることに対する、一種の気恥(は)ずかしさを感じさせないよう、大きな効果をあげていたのだ。
 そして、バトル場面になるとやたらと画面に電線が張られ、怪獣の光線で地上から浮きあがった高層ビルが爆発したり、画面手前にグリッドマンが倒れこんできたり、高校の廊下の窓の主観からグリッドマンが歩行するさまをとらえたり、ヒロインの六花を画面手前に配置し、背景の空に蒸気を噴射して上昇するグリッドマンを描いたり、グリッドマンのバトルを背景に、画面手前に4人の新世紀中学生が駆けてきたり……などなど、まさに遠近感や空気感を与えるためのカメラアングルの工夫や、臨場感を感じさせる合成ショットといった、本来は特撮ならではの演出が存分に盛りこまれていることこそ、本作の特異な点であり、最大のアイデンティティーだといっても過言ではないだろう。


 だが、それでもあえて云わせてもらうなら、本作がそのシリーズ序盤に特徴的だったセンスのよい雰囲気アニメなだけの存在にはとどまらず、その後も息切れせずに深夜アニメファンや特撮マニアたちからも絶大な支持を集め続けられたのは、その演出面や文芸面で、2010年前後に深夜枠で勃興(ぼっこう)した(ひとり)ボッチアニメや、味方が敵に、敵が味方に、と登場キャラの立ち位置をシャッフルさせつつ、各キャラの関係性の変化・離合集散・強者集結を描く「平成」仮面ライダーhttps://katoku99.hatenablog.com/archive/category/%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%80%E3%83%BC)的な群像劇としての要素が、もうひとつの大きな柱として、確固たる存在感を示していたからではないだろうか?


衝撃の真相! しかし、深刻さの中でもコミカルさを忘れない


 先述した第6話のアノシラス二代目による爆弾発言は、「なかよし3人組」だったハズのグリッドマン同盟の関係性にも、一時的に亀裂を生じさせた。
 第7話『策・略』の時点では、裕太がアノシラスから聞かされた荒唐無稽(こうとうむけい)にすぎる話を、内海は「おまえブン殴りますよ」(笑)、六花は例によって「気持ちワルッ」と、ふたりともまったく信じてはいなかったのだが、この際のブチギレではなく、「プチ」ギレ(笑)といった感じの内海の真顔と、やや上目づかいで怪訝(けげん)そうに裕太を見つめる六花の表情は、実にリアルに描かれていたかと思えるのだ。


 この回では第1話『覚・醒』にて、アカネが気炎万丈怪獣グールギラスで殺害したバレー部の少女の父が経営する中華料理店に裕太を連れだし、そこにアカネの心の闇を利用するレギュラー悪のアレクシス・ケリヴが、頭から白い湯気(ゆげ)を吹き上げながら、「ど~もど~も、アレクシス・ケリヴです」(笑)と店に入ってくるのみならず、全身黒マントに覆われた異形(いぎょう)の怪人・アレクシス――デザインの元ネタは『ウルトラマンメビウス』(06年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070506/p1)のラスボス・暗黒宇宙大皇帝エンペラ星人では?――のことを、店主がまったく不審がらずに、平然と「坦々(たんたん)黒ゴマだれ餃子(ぎょうざ)で~す」(爆)と、料理を出す場面がある。
 しかも店内のテレビでは、我々の世界では放映されていない、2014年から『ガシャポンワールド』内の公式サイトで連載中のWeb(ウェブ)マンガ『ウルトラマン超闘士激伝 新章』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210131/p1)のアニメが流れている。ズルいぞ、アカネ!(笑)
 一見コミカルな描写ではあるものの、これこそがアカネによって都合よくつくられた世界の端的な象徴であり、先のアノシラスの話を実証しているのだ。
 怪獣に殺されたハズの娘が交通事故で亡くなったとして記憶を改変された店主=父は、アカネとアレクシスに怒りを向けるどころか、大事なお客様として扱うほどであり、店の外で激しく吠(ほ)える犬だけが、唯一(ゆいいつ)アレクシスの正体を知っているかのような音響演出も実に秀逸(しゅういつ)だった。


文化祭の中での孤独 ~我々オタの鏡像としての「ぼっちアニメ」要素


 近年の学園ものアニメで定番として扱われる文化祭の回では、登場キャラたちの関係性が劇的に急変するのが定石(じょうせき)だが、本作の該当(がいとう)回・第8話『対・立』も例外ではなかった。
 先述したボッチアニメの元祖『私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!』(13年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20150403/p1)の文化祭回の予告編では、スクールカーストの最底辺に位置するオタの女子高生主人公・黒木智子が、イケメンスポーツマンでモテモテの中学生の弟に、「なぁ、文化祭なんか爆弾で吹っ飛ばしたいと思わねぇか?」(爆)とホザいていたが、アカネはグリッドマン同盟に対し、文化祭を怪獣に襲撃させると宣戦布告(せんせんふこく)する!
 楽しそうに文化祭の準備をする生徒たちを、アカネが廊下の窓から物憂(ものう)げな表情で見つめ、「だってキライなんだもん」とつぶやく描写は、先述した智子=もこっちがおもわず「爆弾で吹っ飛ばしたい」と漏(も)らしたのと同様の、疎外(そがい)感を彷彿(ほうふつ)とせずにはいられなかったのだ。


 やはり楽しそうな生徒たちの準備風景をカットバックしつつ、「あと○日」としたカウントダウン演出も、迫りくる危機感をおおいにあおっていた。
 そもそも、アカネが教室でグリッドマン同盟に見せたお手製の怪獣フィギュアに対する、同級生の女子たちの「ナニそれ、めっちゃカワイイ!」「プロじゃん!」といった反応もまた、アカネによって都合よくつくられた世界を象徴するものだろう。フツーの女子高生ならそんな怪獣フィギュアを見せられたらドンびきするに違いないのだから(笑)。


副主役の特オタ少年・内海 ~正論・正論の取りこぼし・女性の扱い方


 高嶺(たかね)の花だと思っていたアカネが、第6話で実は怪獣が大好きなことを知り、狂喜していた特撮オタの内海がアカネとの徹底抗戦を主張するのは、オタとて決して夢ばかりを見ているワケではないとして、内海が大半の視聴者の代弁者となり得ているかのような描写であり、大きな共感を得られたのではなかったか?
 ただ、「同級生と戦うのがふつうなの?」と異議を唱(とな)えた六花に、内海が「おまえは感情でしか考えられないもんな」と批判したのはあきらかに行きすぎだったのだが――その直後に「明日から女子の間で拡散される! オレの高校生活はこれで終わりだ」(笑)などと、罪悪感にさいなまれる描写があるため、内海は決して無神経なだけの人間ではないのだ――ここで新世紀中学生の、黄色髪ツインテールで一見少女に見える低身長の少年・ボラーが示した反応が、実に効果をあげていたのだ。
 「(『ウルトラセブン』(67年)第34話)『蒸発都市』だよ! (発泡怪獣)ダンカンだよ!」などと、自分が好きな特撮ネタになると急にイキイキとする(笑)内海に、普段ならエキセントリックに怒鳴り散らしながらケリを入れるほどに、言動も態度もやたらと乱暴なボラーが、このときばかりはボソッと、「今のはダメだろ」とつぶやいたにとどまったのだ。
 これは内海と六花の関係性にヒビが入ったことの重大さ・深刻さをより強調するのみならず、以前は六花を「メンドくさそうな女だな」(笑)と評していたハズのボラーに、アカネを断固として友達だと主張する六花を見て、心の変遷(へんせん)が生じるさままでもが描かれているのだ――むしろここではボラーとは逆に、内海が六花のことを「あ~メンドくせぇ」とつぶやくことが、六花との関係性の破綻(はたん)を最大に象徴している!――。


 また、この場面に限らず、本作では舞台全体を俯瞰(ふかん)して全員の立ち位置を示すカットが多く、各キャラの関係性を描くうえでその効果を高めていたように思われる。
 第7話で見られた、「人の心が怪獣を生みだすのはウルトラシリーズなら定石」とつぶやいた内海を、一同が無言で見つめる(笑)カットや、ボラーに蹴られて倒れた内海を介抱(かいほう)する六花、空を飛べるヤツがグリッドマンを助けに行け! と主張するボラー、ポ~っとした表情でカウンターに座ったままの、常にやる気がなさそうな新世紀中学生のヴィットたちがいる喫茶店を俯瞰し、一瞬の間を置いたあとで、画面手前のボラーが奥にいるヴィットに「おめえに云ってんだよ」とボヤく場面などは、決して絶妙なギャグ演出として機能していたばかりではないのだ。


黒髪セミロングのリア充寄りのサブヒロイン・六花 ~変遷&決意


 一方の六花も、通学バスの中でアカネから町の住人は皆自分を好きになる設定にされており、六花は怪獣からつくられた存在だと明かされたことで、心の変遷を遂げていく。
 第4話『疑・心』でアカネのために買った定期入れを、六花が自室で「渡さなきゃ」とつぶやく描写がその前にあるのも、より効果を高めているのだ。
 「だから友達」として、アカネが後部座席から六花を抱きしめる場面に聖歌のような女性合唱が流れるあたり、先述した『エヴァンゲリオン』を彷彿とさせる印象があり、近年の深夜アニメに多い、女性同士の性愛を描く百合(ゆり)ものっぽくもあるのだが(笑)、六花が受けた衝撃の強さ、そして、アカネが生みだそうとしている怪獣との戦いを決意するに至る、六花の心情の変化を存分に描きだした演出だ!
 アカネが内海に謝ると裕太に語る場面で、「あの人、アタシから謝るなんて考えてなさそうじゃん」と、目を細めてニコッと微笑(ほほえ)む描写もまた、それを最大に象徴するものなのだ。


 黒髪ロングヘアのツンデレ系で、制服のミニスカが白いトレーナーの裾(すそ)に隠れるように着用し、両手をポケットにつっこんで常にかったるそうにしている六花はプチヤンキー(笑)といった趣(おもむき)が強いのだが、そんなキャラがこうした意外な表情を見せる演出こそ、視聴者の印象を好転させるには絶大な効果があるのではなかろうか?
 グリッドマン同盟がこうして関係性の危機を乗り越え、結束をより固める過程が描かれたからこそ、新世紀中学生が「全合体!」し、全身黄金に輝いたフルパワーグリッドマンが、「フルパワーフィニッシュ!」と、第1話登場のグールギラスを武装強化した捲土重来(けんどちょうらい)怪獣メカグールギラス――よく見ると、前方に突き出た頭部の上に、『ウルトラセブン』第14&15話『ウルトラ警備隊西へ』に登場した宇宙ロボットキングジョーの顔がまんまくっついている(笑)――を倒すクライマックスが、おおいに盛りあがったのだ。
 それにしても、頭部がドリルに変化するメカグールギラスのギミックには、やはり合金玩具がほしくなる。せめてソフビ人形で出してくれまいか?(笑)


銀髪ショートのメインヒロイン・新条アカネ ~媚態・誘惑・憂鬱


 第7話では、すでにグリッドマンの正体を裕太だと察知したアカネが裕太の部屋に突然現れ、枕を抱きしめて「響(裕太)くんのにおいがする」(笑)だの、裕太の頬(ほお)に「フッ」と息を吹きかけ、「ねぇ、こっちこない? 仲間にならない?」などと、アカネが甘いささやきで裕太をベッドに誘う(爆)描写がある。
 その一方、裕太から出されたペットボトルのお茶を、アカネがコップを使わずに一気にラッパ飲み(!)する描写は、それらとは対比的に、アカネの内に秘められた凶暴性が端的に演出されていたのだ。
 全編に渡って踏切の警報音がグリッドマン同盟の不安をあおる、アバンギャルドな演出がたまらない第9話『夢・想』では、裕太はアカネの理想の彼氏として設定された存在として描かれていたが、その夢ははかなく終わってしまい、それを機に、繊細(せんさい)なアカネの心は崩壊していく……


 第9話では、裕太と、内海と、六花と、こんな関係でありたかったとするアカネの夢が並行して描かれた。特に裕太との関係性は、第1話冒頭で描かれた、記憶喪失(そうしつ)の裕太をママの店で介抱し、病院やコンビニを経て裕太を自宅へ送るまでの六花の姿が、そのままアカネに置き換えられていたのだ。
 ただし、第1話で記憶喪失の裕太からの「どーゆーカンケイ?」との問いに、六花が「今日はじめて話したくらいのカンケイ」と答えたのに対し、アカネは「アタシたち、つきあってんですけど」と語り、裕太を自宅マンションの玄関にまで送ったアカネは、「キスとかしないんすか?」と迫り、驚いた裕太に「ウッソ~」とかましてキャッキャと去っていく(笑)。


 先述した第7話の裕太の部屋での描写も含め、このあたりはアカネの声を演じる上田麗奈(うえだ・れいな)が、無職の主人公が社会復帰の実験として高校生活をやり直すアニメ『ReLIFE(リライフ)』(16年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20160903/p1)で演じた、実は主人公を被験者として選んだ研究所の20代の所員なのに、ピンク髪メガネっ娘の女子高生に変身して主人公を誘惑したりする実験を重ねていた小野屋杏(おのや・あん)の愉快犯ぶりを彷彿とさせるが、そんな理想の彼氏と敵同士の関係であるアカネの深い葛藤(かっとう)をも表出させた演出といえるだろう。
 また、裕太に対するアカネの夢想場面で、建設現場の杭(くい)打ちの音がスローで流れているのは、今まさにアカネが自分の世界をつくりあげている最中であることを暗示する音響演出であるとともに、先述した踏切の警報音同様、これも裕太の不安をあおるものだ。
 私事で恐縮だが、60年代末期~70年代初頭の高度経済成長期の終わりに幼いころを過ごしたオッサンである筆者は当時、自宅周辺がビルの建設ラッシュで頻繁に杭(くい)打ちの音が聞こえることに恐怖を感じたものであり、この音響演出は実に的(まと)を得ていると思えたのだ。


オタ趣味を接点に接近する内海&アカネ ~夢を見せつつ、夢を否定


 だが、なんといっても大半の視聴者が最も共感したのは、怪獣・特撮好き同士として、アカネが内海とこんな関係でありたいとして描かれた夢想の場面であるだろう。
 画面手前の監視カメラから、書店で特撮情報誌『宇宙船』(ホビージャパン)を立ち読みする内海とアカネを俯瞰したり、本棚の隙間(すきま)からふたりをとらえた遠近感と、親密さにあふれる演出もたしかに目を惹(ひ)いた――なお、『宇宙船』の表紙にある『アンドロメロス』(83年・円谷プロ TBS)は、雨宮監督がウルトラマンをアニメ化したいと円谷プロに打診した際、その代わりとして『グリッドマン』とともに候補としてあげられたものだ。雨宮監督、やはり『アンドロメロス』もやる気マンマンなのでは?(笑)――。
 これに加え、アカネが『宇宙船』に掲載されたマイナーどころのウルトラ怪獣の名前をスラスラと答えたり、内海が90年代中盤にバンダイから発売された玩具『出撃!! ウルトラメカセレクションⅡ(ツー)』(ASIN:B001BDOJEI)を「コレほしい」とつぶやいたことに、「こないだ中野で見た。今からいっしょに行こうか?」と誘ったり!


 ちなみに『出撃!! ウルトラメカセレクション』とは、ウルトラマンシリーズに登場した防衛組織のスーパーメカのミニチュアをセットした商品であり、初代『ウルトラマン』(66年)の科学特捜隊~『ウルトラマン80(エイティ)』(80年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19971121/p1)のUGM(ユー・ジー・エム)、『ウルトラマンG(グレート)』(90年)のUMA(ユーマ)に『ウルトラマンパワード』(93年)のW.I.N.R.(ウィナー)、映画『ウルトラマンゼアス』(96年)のMydo(マイド)、『ウルトラマンティガ』(96年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19961201/p1)のGUTS(ガッツ)に『ウルトラマンダイナ』(97年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19971215/p1)のスーパーGUTSまでの代表的なメカが、アカネが検索したように(笑)第4弾まで発売された。
 あくまで一般玩具店流通の子供向け商品ではあったが、ウルトラメカといえば科学特捜隊のジェットビートルや『ウルトラセブン』の防衛組織・ウルトラ警備隊のウルトラホークにポインター、あとはせいぜい『帰ってきたウルトラマン』(71年)に登場したMAT(マット)のマットアロー1号ばかりが商品化される時代がつづいていただけに、このラインナップにはマニア層も注目せずにはいられなかったものだ。
 なお、内海が欲しがった第2弾は、MATに『ウルトラマンA(エース)』(72年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070430/p1)のTAC(タック)、『ウルトラマンタロウ』(73年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20071202/p1)のZAT(ザット)に『ウルトラマンレオ』(74年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20090405/p1)のMAC(マック)、そして先述したUGM・UMA・W.I.N.R.のメカをセットした商品であり、これにはいまだに日陰ものとしての扱いを受けている(?)第2・3期ウルトラマンシリーズや海外との合作を、若い層に注目させようとする雨宮監督の意図を感じずにはいられない(笑)。
 それはそうと、内海とアカネがメカセレを買いに行った、東京・中野にあるマニア御用達(ごようたし)の「まんだらけ」をモチーフにした店の名前が「せぶんだらけ」って……(爆)


 さらに内海とアカネは、92年から年3回開催されている古今東西の玩具の祭典・スーパーフェスティバルにまでいっしょに出かける。劇中では具体的な言及はないのだが、それを特定できるのは会場である東京の科学技術館がリアルに描かれているからだ。
 なお、科学技術館は先述した『ウルトラマン80』の第16話『謎の宇宙物体スノーアート』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100815/p1)でロケ地に使用されたことから、中学の修学旅行で実際に行った際はまさに聖地巡礼との想いがしたものだ――小学校の修学旅行で京都の国際会議場に行った際は、クラスの男子のほとんどが「ウルトラセブンとキングジョーが戦った場所だ!」(劇中では神戸は六甲の防衛センターとして登場)と大騒ぎしたために、担任から大目玉を食らったものだった(笑)――。
 「こういうのにつきあってくれる友達がほしかった」と、万感(ばんかん)の想いをこめて語る内海に、皆感情移入せずにはいられなかったであろうが、そんな内海をアカネは「今からウチにこない?」と誘うのだ。
 アニメ映画『ウルトラマンUSA(ユー・エス・エー)』(89年・東宝http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100821/p1)も、平日早朝のミニ番組『ウルトラマンボーイのウルころ』(03年)も、99年に全国ネットで再放送された『ウルトラマンティガ』のCM枠で流された『ウルトラマンナイス』(99年)も、モノクロ作品『ウルトラQ(キュー)』(66年)をカラーライズ化した『総天然色ウルトラQ』(11年・バンダイビジュアル)もあるから、って、こんな美少女高校生いるワケねぇ!(笑)


 だが、内海が夢から覚めたのは、決してそれが理由ではなかった。
 ここにはオレの友達がいない……その世界に裕太や六花の姿がまったく見えないことに、内海はそこがアカネによってつくられたものだと悟(さと)ったのだ。
 特撮オタならではの黒ブチメガネをかけてはいるものの、緑髪で高身長のスリム体型であり、メガネをはずしたら結構なイケメンか? と思える内海は、第10話『崩・壊』でも、たとえアカネにつくられた世界でも自分たちには生活が、やらねばならないことがあるからとして、六花の店=ひみつ基地で連日開かれる作戦会議にも行かずに、テスト勉強にうちこんでいたほどに、現実としっかりと向きあうことができるオタなのだ。


自律した意志を持つ被造物にも反逆された、か弱き孤独な造物主の少女


 当初は「才色兼備」が理由でアカネに夢中になり、同じ怪獣好きであることが発覚したために親近感を得られるも、その正体を知ることで内海が夢から覚めるに至った過程にしてもそうだったが、内海とは対比的に、アカネはずっと夢を見ていたいと考える少女だった。
 第7話でアカネが裕太を味方に引き入れようとした際、裕太は「友達を裏切れない」としてそれを拒否、アカネは「私は、友達じゃないの?」ととまどっていたが、「ここにはオレの友達がいない」とした内海の言葉に、再度アカネが「私は、友達じゃないの?」と繰り返す姿に、おもわずいたたまれなくなった視聴者は多いことだろう。
 走る電車と併走するアカネの姿の周囲に、これまでのグリッドマン同盟との回想をカットバックさせ、あいかわらず鳴りやまない踏切の警報音をかぶせるアバンギャルドな演出が、次第に焦燥(しょうそう)の色を濃くしていくアカネの胸の内を残酷なまでに描きだす!


「夢だから目覚めるんだよ」


 理想の彼氏・裕太とのデートの末に、そう告げられたアカネと裕太との間を、「そっちには行けない」とする裕太を象徴するように、黒くてブ厚い壁がふたりを隔(へだ)てるカット、そして、厳しすぎる現実に直面し、涙せずにはいられなくなったアカネの姿も実に強烈だ。


「夢でも届かないの?」


 アカネが自身の都合の良いようにつくった世界の中で、先述したバレー部員の同級生やチャラい大学生たちのように、アカネの意にそわない人間たちが存在することを矛盾(むじゅん)だと指摘する声も一部に見られたが、同じようにアカネにつくられたハズの裕太・内海・六花の「反乱」までもが描かれたことで、現実は決して自分の想いどおりにはいかないが、決して目をそむけてはならないとする本作の裏テーマ・メッセージを、より強調することになったかと思えるのだ。
 長い夢から覚めた裕太・内海・六花が「やるべきことが!」と駆ける中、新世紀中学生の4人のみが合体して誕生した巨大ロボ・パワードゼノンが、裕太たちにアカネの夢を見せていた、四つ足歩行の首長竜なのに巨大な翼をもつ有象無象怪獣バジャック――中に人が入った着ぐるみのように、後ろ足が折れている!(笑)――を倒すや、ようやく踏切の警報音が鳴りやむ演出も実に絶妙だった。
 だが、裕太・内海・六花は不安を払拭(ふっしょく)することができたが、「どうしたらいいの?」と絶望したアカネの中では、踏切の警報音がよりいっそう激しさを増していたのではあるまいか?


ヒーロー、そして「人間」へと変化したライバル怪獣アンチ


 アカネの心の変遷とともに描かれたのが、アカネにグリッドマンを倒す怪獣として設定された、赤い目玉の目力が鋭く(笑)、銀色ショートボブヘアで紺の学生服姿の低身長の少年・アンチが、同盟や新世紀中学生の味方となるに至る過程だ。
 グリッドマンを倒せずにいたことから、アカネからさんざん邪険(じゃけん)に扱われていたアンチは、シリーズ後半に至ってもグリッドマンを倒すことに異様なまでの執念(しゅうねん)を見せ、第7話では裕太が通う高校にまで乱入し、「グリッドマンを出せ!」と、裕太に激しく詰め寄る姿が描かれた。
 ここで、裕太をボコボコにするアンチではなく、校舎が激しく揺れる(笑)さまに生徒たちの悲鳴をかぶせる演出が、正体が怪獣であるアンチの凶暴性を、より的確に描いていたといえるだろう。


 突然、学校に現れて裕太を急襲したアンチにいらだったアカネは階段からアンチの顔面にケリを入れた(!)ほどだったが、それ以上に衝撃だったのが、アンチが裕太から奪ったスペシャルドッグをアカネが踏みつぶして去ったことだ。
 第1話で昼食を用意してこなかった裕太にアカネがあげたスペシャルドッグを、バレー部員の女子生徒たちがボールでつぶしてしまった件こそ、アカネがグールギラスをつくりだした発端(ほったん)だったにもかかわらず、まったく同じことをされたアンチの想いを、アカネは察することができないのだ。
 第7話ではアカネではなく、アンチがアレクシスにつくらせた、まさに『ウルトラマンレオ』第4クールに登場する円盤生物を彷彿とさせる幽愁暗恨怪獣ヂリバーが登場するが、そのことを知ったアカネはアレクシスが映るパソコンのモニターにケリを入れ、部屋に残るアンチの小さな靴跡を見て、「チッ」と舌打ちまでやらかす(笑)。
 ここまでの悪態を見せつけられても、筆者がアカネをカワイイと想うことに変わりはなかったのだが(爆)、アンチのスペシャルドッグを平気でつぶしてしまうアカネの描写は、後述するが、アカネの本質の的確な演出でもあったのだ。


 第8話で「オンナを探している」と、アンチが六花の店に現れたのは、グリッドマン打倒の目的は同じでも、そんなアカネに辟易(へきえき)したアンチが、第3話『敗・北』で雨にぬれるアンチに傘を手渡そうとしたり、第4話で公園のゴミ箱をあさっていたアンチにスペシャルドッグをくれた六花に会うことで、せめてものやすらぎを得たいと考えたからだろう。
 つまり、シリーズ前半で描かれたアンチと六花の関係性は、怪獣であるアンチに心がめばえ、味方化するに至る伏線であったと解釈すべき描写だったのだ。
 あいにく六花が不在で六花ママが出てきたことに、「違う」(爆)と落胆し、あまりの空腹にその場に倒れてしまったアンチだったが、ママが「カフェめしで悪いけど」と軽食を出してくれたことに、決して表情や言葉には出さなかったものの、六花同様に常にかったるそうでエプロンに両手をつっこんでいたりする(笑)ママに、アンチが六花に通じる優しさを感じたであろうほどに、心が動きはじめる描写としては実に的確だったと思える。


 ママに礼も云わずに立ち去ろうとしたアンチに、ボラーはナイフを向けて「ママさんに云うことあんだろ」とすごむが、黒髪で目の舌のクマがめだつ猫背の素浪人(笑)=サムライ・キャリバーが「礼儀はあとで教えればいい」と逃がしてしまう。これにキレたボラーが、リーダー格で緑髪の長髪で常に口元にマスクをした巨漢のマックスにキャリバーに対する不満をグチるものの、無反応なことにボラーは「なんだそのリアクション、アメリカ人か」とホザく(笑)。
 アンチに対する考えの違いから生じる群像劇というよりは、ボケとツッコミのかけあい漫才的な新世紀中学生たちによるこうしたコミカルなやりとりもまた、本作の大きな魅力であったに違いない。アンチをはじめて見た六花ママが、「君たちのお友達?」とたずね、「ウチらといっしょに見えます?」とたずねたヴィットに、「うん」と答える(笑)描写もまた然りなのだ。


 新世紀中学生にしろアンチにしろ、ぶっちゃけ身元不明の挙動不審者(爆)であるにもかかわらず、そんな連中にも気さくに接する六花ママの暖かさを継承した六花こそが、アンチに心をめばえさせたのだと実感させる演出であったともいえるだろう。
 第11話『決・戦』のクライマックスでは、裕太がジャンクのモニターに飛びこむさまを六花ママに目撃されたことに、つづいて出撃するのを新世紀中学生たちが躊躇(ちゅうちょ)するが、ママが「あ、気にしないでつづけてつづけて」(笑)としたことから、新世紀中学生たちもラストバトルの舞台へと旅立っていく!
 それを「いってらっしゃい」と見守る姿こそ、六花ママの人柄を最大限に描きだした演出なのだ。


 第9話で新世紀中学生たちから裕太・内海・六花を眠らせつづける怪獣・バジャックを倒さない限り、グリッドマンは現れない、と聞かされたアンチは、仲間であるハズのアカネが生みだしたバジャックを、本来の怪獣の姿で攻撃するまでに至る。そして、巨大ロボ・パワードゼノンがバジャックを倒してもグリッドマンが現れないことに立腹したアンチを、新世紀中学生たちはアンチは心をもった生きものだから、グリッドマンは絶対に戦わない、と諭(さと)すのだ。
 第10話で怪獣は生きものではなく、アカネの悪意そのものだとグリッドマンが定義したことで、アンチは怪獣としての存在価値を明確に否定されたが、それはグリッドマンばかりではなかった。


 夢が破れて、雨に濡れながら失意の底に沈むアカネに、アンチは透明なビニール傘を差し出す。これは先述した第3話での、六花のアンチに対する最初の行動と絶妙な係り結びとなり、アンチに心が生まれたことの端的な象徴として描かれていたのだ。
 そんなアンチを、アカネまでもが「怪獣は人の気持ちを読んだりしないよ」として、怪獣であることを否定する。怪獣は人の気持ちを読んだりしない。これは先述した第7話で、裕太から奪ったスペシャルドッグをつぶされたアンチの気持ちを読めないアカネの方こそ、アンチ以上に怪獣そのものだと解釈すべきセリフだろう。
 アンチが路上に置いていった傘に、「君は失敗作だよ」とのアカネの声がかぶるカットもまた、アンチがすでに怪獣ではなくなった事実を端的に描きつくした名演出だ!


 グリッドマンを倒すこと、そして、自身が怪獣であることに執着し、葛藤をつづけた末に、人の気持ちを読めるようになったアンチは、全身が紫とオレンジの装甲に覆われたメタルヒーロー・グリッドナイトに転生!
 やる気をなくしたアカネがつくったユルキャラみたいな怪獣ナナシA、そして、アレクシスが「おや? 中の人(笑)が出てきたね」とつぶやいたように、フルパワーグリッドマンに倒されたナナシAの中から出てきた、第4話でアカネがLINE(ライン)のアイコンにしていた、『ウルトラマンティガ』や『ウルトラマンダイナ』に登場した悪質宇宙人レギュラン星人(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19971210/p1)のようなトガった頭部のナナシBを、アンチ=グリッドナイトが「アカネの心が読める!」として倒すに至るのは、「人間ドラマ」と怪獣バトルを絶妙に融合させたクライマックスだったのだ。


最後は再生怪獣軍団登場&脇役にも全員ドラマ的見せ場!


 第11話は六花の店でアカネにカッターで刺された裕太が床に倒れ、アカネが投げつけたジャンクのモニターが真っ黒になるという、衝撃の導入部で幕を開けた。
 そして、グリッドマンを倒したことで、「もう怪獣はいらない」と、アカネが怪獣をつくろうとしないために、アレクシスは「ありものですませるか」(笑)と、これまでにアカネが生みだした怪獣たちを総出動させる!


 一方、裕太がめざめない限り出撃できない新世紀中学生たちに対し、アンチは「借りは返す。それが礼儀と教わった」と、先述した第8話の六花の店での描写と係り結びになるかたちでグリッドナイトに変身、たったひとりで怪獣軍団に立ち向かう!
 昏睡(こんすい)状態からようやくめざめた裕太もグリッドマンとして参戦、「これを使え!」と、サムライ・キャリバーが変身した電撃大斬剣・グリッドマンキャリバーをグリッドナイトに貸し与えて共闘するクライマックスこそ、裕太&新世紀中学生とアンチの関係性の変化を最大に象徴するものだ。
 怪獣軍団を撃滅したダブルグリッドマン(!)の背景の市街地に、デカすぎる炎があがる、2010年代のウルトラマンシリーズでのかの坂本浩一監督お得意の特撮演出を彷彿とさせる、実にカタルシスにあふれる描写こそ、変身ヒーロー作品最大の魅力なのである。


 だが、戦っていたのは彼らばかりではない。六花も、そして内海もまた、決してスーパーヒーローではない一般人の自分たちにも、「やるべきことが!」とばかりに戦っていたのだ!


 高校に向かった六花は、グリッドマン同盟とは別の、もうひとつの「なかよし3人組」としてつるんでいる同級生の女子生徒で、茶髪ショートヘアで赤のジャージを腰に巻いている、ボーイッシュな活発娘・なみこと、濃い緑髪のセミロングヘアの右側をリボンで束(たば)ね、新世紀中学生のマックスみたく、常に口にマスクをしている(笑)はっすに、至急避難するように告げ、そそくさと去っていく。
 六花は何か隠しごとをしているのでは? と不審がるなみこに、「云えないってことは、云わないことを六花なりに考えてたんだよ」としたはっすの描写は、はっすが人の気持ちが読める人間であることの象徴であり、屋上にいるふたりの眼前で暴れまわる、人の気持ちを読んだりしない怪獣軍団との絶妙な対比も効(き)いていたのだ。その割には第8話ではっすは「新世紀中学生」を、「ダッサい名前のバンド」(爆)とケナしていたりするのだが。


 第7話で自室のベットに寝ころび、アカネを想ってポ~ッとしていた六花に、試験前にノートを貸してほしいと電話をかけ、了承した六花を「尊(とうと)いぜ~」「神かよ~」とたたえたり、第8話の文化祭で六花を「粗茶(そちゃ)ろうぜ」――こんな日本語があったのか?(笑)――と誘ったりなど、まさにそのへんの女子高生を連れてきて演じさせているかのような、六花・なみこ・はっすの実にナチュラルなやりとりこそが、教室や廊下のスピーカーから流れる音質の悪い(笑)校内放送や、シリーズを通して鳴きつづけた(爆)セミの声といった音響演出とともに、学園ものとしてのリアルな雰囲気を醸しだしていたのだ。
 なみこの声を演じた三森すずこ(みもり・すずこ)は、『探偵オペラ ミルキィホームズ』シリーズ(10~18年)のシャーロック・シェリンフォードや、『ラブライブ!』(第1期・13年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20160330/p1 第2期・14年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20160401/p1)の園田海未(そのだ・うみ)、『少女☆歌劇 レビュースタァライト』(18年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190728/p1)の神楽(かぐら)ひかりなど、主要ヒロインを多く演じてきただけに、本作のなみこのような周辺キャラ、しかもややガサツな(笑)キャラへの起用は意外だったが、実に器用に演じていたのはさすがだった。


被造物世界でも透明なボッチと化して絶望したアカネ嬢を救うには?


 裕太の病室に戻った六花は、自分の店にママを連れて駆ける新世紀中学生たちを窓ごしに見つめた際、バス停が目にとまり、通学バスでアカネと語り合った過去が頭の中でフラッシュバックするが、第8話で意図的に隠されていた、バスの「○ヶ丘」なる行き先表示が、実は「桜ヶ丘」、つまり、本作原典の『グリッドマン』の舞台であることが明かされる! これは最終回(第12話)『覚醒』のクライマックスで描かれた感動的な展開の、さりげない伏線として描かれたものだろう。
 先述した第7話で自身が存在する意味をアカネから聞かされ、強い衝撃を受けたハズの六花は、ビルの屋上にひとりたたずむアカネを見つけ、自分はアカネの友達として以外、生まれてきた意味なんかいらない! と、激アツに叫ぶ!
 最終回でそれをあざ笑ったアレクシスが、「怪獣をつくる人間は怪獣そのもの」と語ったのは、実に的を得ているといえるだろう。怪獣をつくる人間=怪獣が好きな我々のような種族は、人の気持ちを読むことが大の苦手、つまり、怪獣と同等の存在といっても過言ではないのだ(大汗)。


 最終回で「君自身が怪獣になればいいんだよ」と、アカネがアレクシスによって怪獣化した自縄自縄怪獣ゼッガーの声はアカネの叫びを加工したものだったが、実はこれまでアカネが生みだした怪獣の声のすべてが、アカネを演じた上田麗奈の声からつくられており、これは怪獣たちがアカネの悪意の象徴だと強調する音響演出だったのだ。
 「彼女は元からああなんだ」と、今回怪獣化する以前からアカネは怪獣そのものだったと語るアレクシスに、六花は「わたしたちがアカネを変える!」と、その決意を表明した。
 その六花からさまざまな善意・好意を受けてきた怪獣=アンチは、獅子のたてがみを模したブ厚い装甲に覆われた、ゼッガーの顔の6つに裂ける口の中に見える白い人面に、グリッドナイトとして「おまえは怪獣じゃない! 新条アカネだ!!」と叫ぶ。


 心に大きな傷を受けた若者たちが「思春期症候群」なる不可解な現象に悩まされるアニメ『青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない』(18年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190706/p1)の第1話では、主人公のやさぐれた男子高校生が、学校という空間はその場の空気を読めないだけでダメなヤツ扱いされ、しかもその空気をつくりだしている生徒たちには当事者意識が皆無(かいむ)だと語る。
 そして、メインヒロインの黒髪ロングのツンデレ女子高生は、「見たくないものは見ない」とする空気にあふれた街の人々から、次第にその存在を認識されなくなり、ついに「透明人間」と化してしまうのだ!
 空気を読めない人間はダメなヤツ。そんな「見たくない」人間の存在をいっさい認めようとしない。残念ながら、それが現在のこの国を完全に支配する風潮(ふうちょう)であり、そのために周囲から「透明人間」にされてしまい、生きづらさを感じる人々が続出しているのである。


 アカネが過去に受けた心の傷については劇中では具体的に描かれないものの、誰からも好かれるクラスの人気者として、裕太みたいな彼氏、六花みたいな親友、内海みたいな特撮好きの友達がいる夢をずっと見ていたいと願ったアカネもまた、「透明人間」にされた過去があったのではないのだろうか?
 そんな空気を読めないダメなヤツ=怪獣そのものとして社会から排除されてしまう、アカネのような人間に対してさえも、六花は友達として、その想いを継承したアンチは人間として、アカネを受け入れようとするのだ!
 ゼッガーの体内に突入し、無数の手に束縛されたアカネに手を差しのべ、引っぱりあげて救うアンチの描写はそれをストレートに絵にしたものだったが、そんなアンチをアカネは再度「失敗作」だと評した。
 たしかにアンチは怪獣としては「失敗作」だったのだろうが、人間として生まれ変わって以降のアンチは、立派な「成功作」なのだ! 先述したアニメ『青春ブタ野郎』第1話のラストにも、「透明人間」と化したことで買いものすらできなくなり、空腹に悩まされるヒロインに、主人公が好物のクリームパンを差し出す、実に心暖まる描写があった。彼やアンチのように、せめて我々だけでも、「透明人間」や怪獣として社会から排除されてしまう人々を、暖かく受け入れられる人間であるべきではないのだろうか!?


内海の葛藤 ~バトル作品を楽しむことの快楽&罪悪


 一方、内海は最終展開でかなりの葛藤を見せることで、彼自身と戦う姿が描かれる。
 第11話で裕太の病室に現れたアンチの正体が怪獣だと聞かされた内海は、アンチをはじめとする怪獣の足下(あしもと)で、どれだけ多くの人間が死んだと思ってるんだ! と、つかみかからんばかりにアンチを非難するが、怪獣とグリッドマンの戦いを楽しんでいた自身もまた、その足下で死んでいく人間たちに想いが至らない点ではアンチと同等、つまり、怪獣そのものだと思い知らされたのだ!――ここでも裕太の病室と隣の病室を俯瞰し、内海とアンチの衝突に驚く隣の見舞い客を描写する、実に秀逸な演出がある――。
 すっかり憔悴(しょうすい)した内海は、市街地で怪獣軍団が暴れている状況下、「こんなときウルトラならどうなるんですかぁ~?」とおどけたボラーに、「ウルトラシリーズならM78星雲・光の国からウルトラ兄弟が駆けつけるのが定石」(笑)と返す元気もなかったほどだが、アカネが怪獣そのものだと語られた先述した場面以上に、この際の内海におもわず身につまされた視聴者は、決して筆者ばかりではないだろう(汗)。


 最終回、裕太にいっしょに来てくれと声をかけられるものの、自身のやるべきことが見つからずに苦悩していた内海は即答できずにいたが、その内海の背中を押したのも六花だった。
 ボラー同様に内海の足に乱暴にケリを入れ、イラついた調子で「あのさぁ~、内海くんは響(裕太)くんのなんなの」と、どやしつけるさまはまさにプチヤンキーだが(笑)、だからこそ、「友達だよ!」と叫ぶのが精一杯だった内海に、一転して「その友達が来てくれ、って云ってんですけど」と、内海に向けた六花の暖かいまなざしが、絶大な印象を残す効果をあげていたのだ。
 ここにグリッドマン同盟は華麗に復活をとげ、4人の新世紀中学生の腕には裕太と同じ変身アイテム・アクセプターが装着される!
 六花と内海が見守る中、最後の「アクセス・フラッシュ!」が描かれるが、アレクシスに刺されて倒れたアンチが宙を見上げ、「アクセス・フラッシュ……」とつぶやいていたのを見すごしてはならない。つまり、最後に登場したグリッドマンは、裕太と新世紀中学生のみならず、アンチの想いも一体化していたのだ!


原典のグリッドマン復活! 原典と地続き、かつ新機軸でもある作り方


「これが本当のグリッドマンの姿!」


 「なつかしい姿じゃないか!」と狂喜したのは、決してアレクシスばかりではない。
 原典である『電光超人グリッドマン』の主題歌『夢のヒーロー』が流れる中、コンピューターワールドを背景に、アカネの情動を吸収して巨大化したアレクシスに必殺技「超伝導キック!」を繰りだしたグリッドマンは、原典で活躍したオリジナルのデザインで描かれたのだ!
 四半世紀も前の、甲冑(かっちゅう)に覆われた騎士といった印象のデザインが、今回新規にリメイクされたグリッドマンと比較してもまったく違和感がないことには、やはり先見性と普遍(ふへん)性を兼ね備えていたのだと、あらためて驚嘆(きょうたん)の声をあげずにはいられないものがあったのだが、一時期のウルトラマンシリーズが、新作のたびに世界観をリセットしてしまい、過去のシリーズとは完全に独立していたことを思えば、今回これを実現させたことには隔世(かくせい)の感のみならず、やはりこれこそが、かつて夢中になった世代とライト層の若い世代双方を満足させる手法なのだと、強く実感させられたのである。
 ラストで重傷だったアンチを助けるアノシラス二代目が変身した少女の背後に、その親である初代アノシラス(!)が描かれているのもまた然(しか)りなのだ。


 感動はこれだけでは終わらない。この世界をつくったアカネの心を救う力「フィクサービーム!」をグリッドマンが発射する中、裕太も、六花も、内海もまた、「アカネの心を救う力」を発揮する!
 高校の校舎の屋上で、「私に広い世界なんかムリ!」と絶望するアカネに、自分たちを頼ってほしい、信じてほしい、そのための関係だからと、グリッドマン同盟が呼びかけたイメージシーンで、アカネはついに心の扉(とびら)を開けることとなったが、先述したように、現代社会に最も必要なのは、こうした「心を救う力」かと愚考(ぐこう)するのだ。


 こういった孤独なキャラクターに救いの手が差し伸べられてハッピーエンドとなる展開はそれはそれでアリガチではある。ジャンル作品では女児向けアニメ『美少女戦士セーラームーン』(92年)あたりからの定番ですらあった。しかし、そこは時代を超越している人間の普遍的な悩みなのだというべきだ。『電光超人グリッドマン』を知らないハズの若い世代にも本作が広く受け入れられたのは、それが強く感じられたから、つまり、アカネと同様の悩みをかかえる者が、それだけ多く存在するということだろう。


 「これが、命ある者の力だ!」と、激アツに叫んだグリッドマンとアレクシスが、スローモーションでクロスカウンターをキメる、絶大なカッコよさにあふれたカット! このへんは、人間ドラマ的なシメっぽさだけで終わらせずに、アクションのカタルシスに良い意味で走ることで、作品にも爽快感をもたらしていた(笑)。


 「私は臆病(おくびょう)でずるくて弱虫で」と泣きじゃくるアカネに「知ってる」と、そのすべてを受けいれたうえでアカネを「友達」として認め、いつか買った定期入れを手渡す六花の姿もまた然りだ。
 オープニングに流れる王道のヒーローソング『UNION(ユニオン)』もいいのだが、アカネに六花、なみこにはっすと、女性キャラのみが描かれるエンディングに流れる、声優の内田真礼(うちだ・まあや)が歌唱する『youthful beatiful(ユースフル・ビューティフル)』が、実は個人的にはそれ以上に好きだ。
 「君が待っててもいなくても 走るよ」との歌詞は、まさに六花の「心を救う力」を象徴するものだが、記憶喪失の裕太を介抱したのも、怪獣だったアンチを人間にしたのも、沈んだ内海を奮起させたのも、アカネに心の扉を開かせたのも、すべては六花の「心を救う力」だったのだ。アカネを目当てに観ていたものの、ややキツめでもやさしいところがある六花にいつしか惹(ひ)かれるようになった視聴者は多いことだろう。


 そんな六花に裕太が心惹かれるさまが前半では描かれたものの、後半では第8話のラストにて、文化祭の出しもの・男女入れ替わり喫茶で白いマリンルックの水兵に扮(ふん)した六花を遠巻きに見つめる描写があった程度だった――劇中キャラにさまざまなコスプレをさせたいがために、近年の深夜アニメでは必然性もなしに定番で行われる手法だ(笑)――。
 裕太の六花に対する想いが描かれなくなったのは、第11話で「私はグリッドマンだ」と語った裕太に、内海が「なんかキャラ違うぞ!?」(爆)と混乱したほどに、実は裕太の人格がグリッドマンそのものだったことの伏線としてであろう。
 学園ものの深夜アニメとしては、本来なら最終展開で裕太と六花の恋愛模様を進展させるところだろうが、あくまで変身ヒーロー作品として、アカネの心を救うことを最優先させた展開こそ、視聴者の大きな共感を得られたかと思えるのだ。
 グリッドマンの中で眠ったままの本来の裕太は、グリッドマンによれば「六花への想いは変わらなかった」とのことであり、裕太と六花の恋の行方(ゆくえ)については、ぜひ第2期で描いてほしいところだ――映像ソフトの予約状況や各種イベントの盛況からすれば期待できるのでは?――。


 原典である『電光超人グリッドマン』の放映が開始された際、主人公の3人組が中学生でその舞台となる町が「桜ヶ“丘”」だったことに、筆者は「桜ヶ“岡”中学校」の教師で防衛組織・UGMの隊員でもある矢的猛(やまと・たけし)=ウルトラマンエイティを主人公とし、そのドラマや特撮は充実していたものの、人気面でも商業的にも決して成功したとは云いがたかった『ウルトラマン80』のリベンジでもあるかと思えたものだ。
 本作『SSSS.GRIDMAN』第7話に、「憎しみが強いほど強い怪獣が生まれる」とのセリフがある。先の『80』でも、人間の醜(みにく)い心や汚れた気持ち=マイナスエネルギーが怪獣の発生源・活動源とされていた。


 今であればアリガチな設定で、『セーラームーン』や『プリキュア』シリーズのような女児向け魔法少女アニメのゲスト怪人などはすべてが『80』的な設定となることで、これによってドラマとバトルの一体化まで果たされることになっている。しかし、1980年往時の筆者や特撮マニアにかぎらず子供たちでさえ、精神エネルギーがそのまま物理的な巨大怪獣となってしまうことには、やや断絶・飛躍がありすぎるようにも感じられて突飛に思えたものだった。
 つくり手側もそのように思っていたのだろう。当初の設定どおりに映像化された作品は『80』ではごく一部にとどまり、ゲスト主役の生徒のドラマとその回に登場する怪獣の出自が別個に扱われていき、当時のマニアも子供たちもそれはそれでホッとしていたのも事実なのだった(汗)。


 しかし、1980年前後とは異なり90年代以降になると、人間の精神エネルギーが実体化して巨大怪獣となる設定にはあまり違和感がなくなり、視聴者側の慣れもあるのか、ジャンル作品でもそういった精神世界的な心のエネルギーを賞揚する作品が増えてきたからなのか、むしろ深みすら感じるようにもなっていく(笑)。
 90年代中盤にウルトラシリーズが復活するや、『ウルトラマンティガ』第38話『蜃気楼の怪獣』では「人間の心の闇が実体化した怪獣」が出現している。もちろん、作品のテイストがややユルい学園もの的な『80』第1クールの学校編で即物的に登場させたのか、やや思弁的なテイストの『ティガ』第38話で真偽不明の仮説のままで登場させたのか、といった相違も大きかったものの、少々引っかかりながらも同話に登場した怪獣の存在をナンセンスだと批判する意見は特撮マニア間でもあまりなかったとも記憶する。


 本作『SSSS.GRIDMAN』に登場する怪獣たちが、アカネの繊細な心から発せられるマイナスエネルギーから生み出されていたことに、本来はウルトラマンシリーズをアニメ化したかった雨宮監督は、『グリッドマン』のリメイクだと偽(いつわ)って、実は『ウルトラマン80』のハイセンス化されたリファイン版をも円谷プロにまんまとアニメ化させてしまったのではないのか!? とも、筆者は愚考をしてしまうのだ。


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2019年GRIDMAN号』(19年2月10日発行)~特撮同人誌『仮面特攻隊2020号』(19年12月発行予定)所収『SSSS.GRIDMAN』総括合評1より抜粋)


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(文・T.SATO)
(2019年5月3日脱稿)


 かつての巨大ヒーロー・初代『ウルトラマン』(66年)のデザインを模して、銀色のボディーに赤いラインが施されたメタリックな光沢を放つ金属製の強化スーツ。制服男子高校生クンが右拳を天に突き出すや、その強化スーツが科学特捜隊のヒミツ基地から粒子化されて転送・装着されることで、おなじみの効果音とともに超人的なパワーを発揮して悪と戦う人間サイズの変身ヒーローが誕生!


 エネルギー源としては初代ウルトラマンの必殺ワザ・スペシウム光線のそれと同じでスペシウムを基としており、戦闘時には両腕の側腕部分にナイフや防御用とおぼしきスペシウム・エネルギー由来であろう細長い電光が終始流れることで暗闇にも映えている。初代マンのように両腕を十字に組んで、左腕と右腕のアタッチメントを結合させれば、その右手側面からはスペシウム光線を! 両手を胸の前で合わせれば光輪を発生させて、初代マンとも同様にウルトラスラッシュとしても放つことができる!


 中盤からは、初代『ウルトラマン』の後継作『ウルトラセブン』(67年)の主人公・モロボシダンの名を踏襲した諸星弾なる細メガネをかけた黒背広姿のクールな青壮年が、科学特捜隊の厳しい上司として登場する。しばらくはモッタイぶった末に、期待にたがわずウルトラセブンのデザインを模して赤を主体としたカラーリングで頭部と胸部がシルバーでもある、ウルトラマンスーツ・タイプ・バージョン7.0(ナナ・テン・ゼロ)、通称「セブン」と呼称される強化スーツを、おなじみの効果音とともに装着!
 原典における頭頂部のトサカが外れてブーメランとなる武器・アイスラッガーを想起させる刃物も投擲(とうてき)! セラミック調のハイテックな装飾や空隙が多数穿(うが)たれた真っ直ぐな長剣も武器に、主人公よりも先輩のヒーローとして八面六臂の活躍を開始する!


 終盤では、『ウルトラマンエース』(72年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20070429/p1)の主人公・北斗星司(ほくと・せいじ)の名前を冠した中性的なハスキーボイスの華奢な美少年も登場――演じるのは『手裏剣戦隊ニンニンジャー』(15年)で美少年ボイスの敵幹部・九右衛門(きゅうえもん)や『ウルトラマンジード』(17年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20170819/p1)のペガッサ星人の幼体・ペガも演じた潘めぐみ――。
 彼もご多分に洩れずに、原典同様に拳骨を組んだ両腕を胸の前で左右からブツけるや、閃光とともにおなじみの効果音が響いて、頭頂部の巨大なトサカに円型の空洞が穿たれたウルトラマンエースを基にした、銀色に赤いラインが施された強化スーツをまとった姿に変身! 両腕も左右や上下に開げるや、原典のウルトラマンエースも得意としていた光学合成の必殺ワザ・バーチカルギロチンやホリゾンタルギロチンを想起させる巨大な光の弧を発生させて、そのまま懐に飛び込んできた敵を斬ったり、遠方に高速で放つや強敵を一刀両断にもする!


 セル画ライク・2DライクなCGアニメでは不可能な、フル3D-CGだからこそ可能な、金属の銀色のグラデーション豊かな反射や輝きを質感豊かに再現することで、劇中内特別感・重厚感・ハイブロウ感・カッコよさ・ヒーロー性もいや増して、たとえ虚構作品の範疇ではあっても物質感・実在感、ひいては硬質な作品の空気感をも喚起する。
 そして、そんなズッシリしたスーパーヒーローたちが、人間サイズの悪い宇宙人(笑)相手に軽妙にパンチやチョップやキックを連発、側転やバク転を幾度も繰り出し、腰を地に着けるほどに低く落としてコマのように回転しながら蹴りを見舞う! カナリの長尺を使って、しかもダレることなく、カッコよくて血湧き肉も踊るバトルを、エピソードによっては1話分の尺をも費やすくらいにして披露する!


 幼児向け作品ならぬマニア向け・年長者向けの作品でもあるので、TVの「ウルトラマン」シリーズでは90年代から封印されている切断ワザも披露! たとえ大ウソの虚構作品であっても、束の間・一瞬のショッキングさを出すために、視聴者にもその痛みを一時的に錯覚させる手法で、悪い宇宙人キャラ相手や超人と化して死にそうもない人間キャラに限定して(笑)、時に片腕が切断されたり、頭頂部から左右に両断されたり、手刀や光線がボディーを貫通!(~しかして、大抵は死なない・笑)


プロダクションI.G製作! 実力派・神山健治&荒牧伸志のダブル監督体制!


 我らが『ウルトラマン』の名を冠する新作のフル3D-CGアニメ『ULTRAMAN』(19年)がネット配信媒体・Netflix(ネットフリックス)にて、全世界で各国語吹き替え版までもが製作されて全13話を一挙に同時配信。製作はタツノコプロ分派で今や世界のプロダクションI.G。監督は神山健治(かみやま・けんじ)と荒牧伸志(あらまき・しんじ)のダブル監督体制!
 本作の原作となったのは、読者もご承知の通り、東日本大震災があった2011年、『月刊ヒーローズ』創刊号の目玉として鳴り物入りで大々的に喧伝されて連載が開始された漫画『ULTRAMAN』である。大手出版社・小学館が母体となったことで実現できたのであろうけど、コンビニでの陳列売りも実現したので、筆者もアタマの数話については立ち読みした記憶があるモノだ。そのうちにまとめて読もうと思ってノロノロとしていたら、早くも8年が過ぎており……。歳を取ると歳月が経つのは早い(汗)。


 ちなみに、私事で恐縮だが、漫画『ULTRAMAN』の原作&作画コンビが月刊『チャンピオンRED(レッド)』で連載した巨大ロボット漫画の深夜アニメ化『鉄(くろがね)のラインバレル』(08年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20090322/p1)であれば、筆者も鑑賞している。
 正義感はあっても空気が読めない虚栄心満々の主人公少年のイタい言動もヒイた視線で描いていく、作品テーマ的には意欲作ではあり、その志しは壮とすべしなのだが、ダメダメではないけれどもイマイチな出来だとも思われて――その原因は原作漫画版に起因するのかアニメ版に起因するのか、前者を未読の筆者には不明なのだが――、この原作&作画コンビが手掛ける作品だということで、あまりイイ印象は持っていなかったのも極私的な事実ではある。


 しかし、特撮作品のみならずアニメも鑑賞するロートルオタであれば、神山健治と荒牧伸志のダブル監督布陣は衝撃的ではなかったろうか?
 神山は実質的には70年代刑事ドラマに電脳ネタを散りばめたような骨太な傑作深夜アニメ『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX(スタンド・アローン・コンプレックス)』全2作(02年・04年)で名を上げた御仁。以降も、『精霊の守り人(もりびと)』アニメ版(07年)や『東のエデン』(09年)、本作と同じくフル3D-CGアニメ映画『CYBORG 009 CALL OF JUSTICE(サイボーグゼロゼロナイン コール・オブ・ジャスティス)』3部作(16年)などの良作を手掛けてきた御仁でもある。
 氏の師匠スジに当たる押井守カントクがムダにハイブロウで難解・晦渋な作風となっていく中で、ハイブロウではあっては無意味な難解さはなくて、間違って一般層が鑑賞してしまったとしてもナチュラルに観られる作品群を放っているようにも思えて、筆者のごくごく個人的な評価も高い御仁である。


 対するに荒牧も、アクションや芝居部分にモーションキャプチャーを用いたフル3D-CGアニメ映画の先駆けで、やはり『攻殻機動隊』(89年)を手掛けた士郎正宗(しろう・まさむね)が放った本邦電脳系SFの古典漫画ともいえる『アップルシード』(85年)の映画版(04年)なども手掛けており、コチラもお高くとまっただけの中身スカスカ作品とは異なり、フツーにメリハリもある娯楽活劇を作れる御仁という感じであって、やはり同様に筆者個人の評価は高かった。


 もちろん、上記の評価は筆者独自のモノではなく、通の間ではワリと一般的な見解であろうとは思うけど、その両者が『ULTRAMAN』のスタッフとしてタッグを組んでいたことを知ったときの驚きといったら! てなワケで、俄然興味が湧き、とてもイイ機会なので、原作漫画版ではなくネット配信の3D-CGアニメ版にて、本作の内容を確認してみようと思った次第でもある。


初代『ウルトラマン』のみが史実の世界だが、歴代シリーズへのオマージュも満載!


 本作『ULTRAMAN』は初代『ウルトラマン』(66年)のみが劇中内での歴史的事実とされており、後継の『ウルトラセブン』(67年)以降の歴代ウルトラシリーズは存在しなかったモノとして扱う世界観の作品でもある。
 邦洋・東西で長命なシリーズ作品ではよくある手法でもあり、我らが本邦特撮シリーズでは、1954(昭和29)年の『ゴジラ』初作のみを歴史的事実とし、それ以降のシリーズはなかったモノとして扱う新『ゴジラ』(84年)や、初作は史実でもそれ以降は歴代シリーズとは異なるパラレルな歴史をたどった『ゴジラ×メガギラズ G消滅作戦』(00年)や『ゴジラ×メカゴジラ』(02年)などの前例を、ロートルオタとしてはついつい想起もしてしまう。


 我らがウルトラシリーズでも、初代『ウルトラマン』の歴史のみが存在しており、その最終回で宇宙恐竜ゼットンに敗れて一度は死んで故郷へと帰還したハズの初代ウルトラマンが、単なる敗北のみであって地球に残留したままだと設定された再編集映画『蘇れ! ウルトラマン』(96年)や、『ウルトラセブン』の史実のみが存在していて後続ウルトラシリーズはなかった扱いであった平成『ウルトラセブン』シリーズ(94~02年)などでも採られた手法でもあり、そーいう意味では目新しいモノではない――平成『セブン』は劇中における怪獣データバンクに後続ウルトラシリーズの怪獣も存在していたので別解釈の余地はあれども(笑)――。


 本作でも初代ウルトラマンが地球を去った数十年後、怪獣・宇宙人も出現しなくなったことから、オモテ向きは怪獣退治の専門集団・科学特捜隊が解散した世界を舞台としており、『ウルトラマン』の主人公でもあり、かつて初代ウルトラマンとも合体していた科学特捜隊のハヤタ隊員が初老の姿で防衛大臣へと出世した姿で、今では記念館として公開されている科学特捜隊の基地を見学に訪れて、旧同僚のイデ隊員とも再会を果たすことで、原典との直結感は出している。
 とはいえ、後継の歴代ウルトラシリーズの要素がないがしろにされているワケでは決してナイ。先にもウルトラセブン型やウルトラマンエース型の強化スーツをまとった追加ヒーローが登場したと語った通り、初代『ウルトラマン』至上主義やら、『ウルトラセブン』までのいわゆる第1期ウルトラシリーズ至上主義の気配といったモノもまるでナイ。


 それが証拠に、にぎやかな渋谷の街の路地をヌケると、そこは雪国ならぬ、SF洋画『ヴァレリアン 千の惑星の救世主』(18年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20180610/p1)の中盤に登場した某惑星のバザールのように、おそらく異次元というより空間を人為的に広げた拡張次元のようなモノなのであろうか、天空には白昼でも天の河が浮かぶ東南アジアのような猥雑とした露店街や古びた中層ビル街が構えており、そこには地球人の姿に自力で変身したり、変身できない少数派は変身デバイスなるアイテムで擬態している宇宙人の怪しげで一癖も二癖もありそうな移民たちがタフに――悪く云えば少々の悪事もしながら――暮らしており、そこで筋骨隆々の長身イケメンでもあるジャックと名乗る若き日の俳優・団次郎(現・団時郎)にクリソツな情報屋の青年とも出逢ったりするのだ。


 ジャックに団次郎! 今さら大勢には説明は不要であろうが、『帰ってきたウルトラマン』(71年)に後年の84年に付与された名称・ウルトラマンジャックから引用されたネーミングでもあり、団次郎とはジャックに変身する前の人間・郷秀樹青年の中のヒトでもあり、原典作品ではシリーズ中盤回でウルトラセブンから授与された万能武器・ウルトラブレスレット型のブレスレット(笑)を左手首に装着していることで、彼が「帰ってきたウルトラマン」に相当するキャラクターであることを視聴者にダメ押ししている。


 この3D-CGアニメではジャック青年はウルトラマン型のスーツをまとうことはナイけれども、ググってみるとその後の展開では彼もウルトラマン型スーツをまとうようである!
 「帰ってきたウルトラマン」を一度は倒したこともある、用心棒怪獣ブラックキングもどきの人間サイズの(といっても2~3メートルはある)怪獣型宇宙人までもが登場! しかし、異星人街の賭けバトルのファイターとして活躍するも、超常的な怪力の持ち主でもある地球人・ジャックにブチのめされてしまう役回りを務める。コレもググってみると、ナンと! この3D-CGアニメ独自のオリジナル宇宙人であるのだとのこと!


――余談だが、アニメ映画『バケモノの子』(15年)でも、渋谷の路地を抜けると獣人たちが住まう異界につながっていたが、本作の原作漫画はそれよりも先んじていた? 加えて、『劇場版ウルトラマンジード つなぐぜ!願い!!』(18年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20180401/p1)でも、沖縄に同趣向の宇宙人街や情報屋が存在していたけど、コレも本作原作からの引用であったか?――


 そして、科学特捜隊とは別個にウルトラマンエース型のスーツを作っていた、服は着ているも全身は赤い体表とおぼしき、弱そうな宇宙人のご老人の名前はヤプールでもある。
 ヤプール! それは『ウルトラマンエース』のレギュラー敵でもあり(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20061012/p1)、その後も『ウルトラマンタロウ』(73年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20071202/p1)や『ウルトラマンメビウス』(06年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20070506/p1)に『ウルトラマンギンガS(エス)』(14年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200404/p1)や『ウルトラファイトビクトリー』(15年)などに登場してきたウルトラシリーズ屈指の悪役でもある! それがカナリ矮小化した姿で登場しているのはやや引っかかるモノの、この作品は歴代ウルトラシリーズとはパラレルワールドの世界なのだから、我らが知るヤプールとは同一の存在ではナイけれど、異なる生物進化をたどった同族だと好意的に深読みしてあげれば許せるのではないのか!?(笑)


 そして極め付けは、『ウルトラマンエース』で異次元人ヤプールの伏兵としてウルトラ兄弟を倒したこともあり、のちに『ウルトラマンメビウス』や『ウルトラマンゼロ外伝 キラー・ザ・ビートスター』(11年)に『ウルトラファイトビクトリー』などにも再登場を果たしたロボット超人・エースキラー! その名を冠して姿や武器を模した宇宙人の殺し屋が、圧倒的な強敵として本作のウルトラマンエースウルトラマンウルトラセブンの前に立ちはだかるのだ!
 そして、この殺し屋とタッグを組んでいる植物宇宙人は、地に伏したマンやセブンをそのツルで縛って、十字架状にも吊してみせる!――『ウルトラマンエース』#14「銀河に散った5つの星」(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20060805/p1)にて描かれたマイナス宇宙(ウラ宇宙)にあるゴルゴダ星でのウルトラ兄弟・十字架ハリツケシーンへのオマージュ!――


 コレら70年代前半のいわゆる第2期ウルトラシリーズ帰ってきたウルトラマン』や『ウルトラマンエース』へのオマージュにも満ち満ちたキャラクター! 70年代末期~90年代にかけての第1期ウルトラ至上主義者による第2期ウルトラシリーズへの酷評や弾圧を受忍してきた身からすれば、実にうれしいモノがある。


 またまたググってみると、まだ映像化はされていない今後の展開では、『ウルトラマンタロウ』の隠れたドラマ的名編でもある#45「赤い靴はいてた…」の悪役であったドルズ星人も登場するのだとのこと!――同じく童謡「赤い靴」を材のひとつとしていた映画『大決戦! 超ウルトラ8兄弟』(08年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20101223/p1)でもぜひともドルズ星人を再登場させ、あのエピソードの後日談をもあくまで出しゃばらずに本流の脇で慎ましくもやることで、今やヌルオタ層でも一般化した佐々木守脚本&実相寺昭雄監督コンビの第1期ウルトラの異色作だけに留まらず、第2期ウルトラ以降の埋もれた名作・異色作をも発掘しているスレたマニアたちをも唸らせて、それをもってして一般マニア(形容矛盾・汗)たちをも啓蒙するような作品も観てみたい! と願っていたマニアとしても実にうれしい趣向ではある。


 一見さんの視聴者にはわからない趣向ではあろうけど、そのストーリーの理解には支障が出ないサービスや余技の域のモノであるのならば、このようなタブル・ミーニングの作劇で年配マニアにはチョットした喜びを、若いマニアたちには旧作へのフック・引っかかりをもたらす趣向は、コレからも作り手たちには臆せず多用してほしいと考える。ひいては、それが近年のアメコミ洋画シリーズ群における原典マンガや幾度もリセットされたリメイクや続編シリーズ群に対するオマージュや「掛け言葉」的な小ネタの数々のように、ジャンルやシリーズへの関心を永続させて延命もさせていく豊穣な養分にもなると考える。


 もちろん原典の再現志向ばかりではなく、初代『ウルトラマン』の直前作『ウルトラQ』(66年)の悪い宇宙人・セミ人間や初代『マン』のバルタン星人のバリエーションとおぼしきオリジナルの悪い人間サイズ宇宙人、同じく初代『マン』の白黒シマウマ模様の悪い宇宙人ダダとドー見ても同族だろ! というような善悪不明瞭なスマート体型の強敵宇宙人、『ウルトラセブン』のメトロン星人のバリエーションとおぼしき悪い人間サイズの宇宙人などなど、あまたの悪い新宇宙人たちもが登場!
 一応、地球人を除く宇宙人同士での平和協定が結ばれて「星団評議会」なる存在が結成されたから、宇宙人による地球侵略や怪獣出現がなくなったという世界観のワリには、善良な宇宙人は完成フィルムには登場しないことで――もちろん先の移民街では暮らしているのであろうけど――、作風から湿っぽさや下町人情味は廃して、作品世界の空気をクールでシャープな雰囲気に統一もしている。


しかし「ウルトラ」っぽくはない? ヒーローものにおける主人公像や若者像の変遷!


 とはいえ、設定面では歴代シリーズの諸設定やその換骨奪胎を投入することで、我々ウルトラシリーズのマニアをクスぐりには来ているけど、その作風は実はウルトラシリーズっぽくはナイ。しかし、コレは悪い意味ではない。主人公をハヤタ隊員の晩婚のご子息・早田進次郎こと元から超人的な体力を保持していることを父親にも隠している――父親の方はむろん知っている――常にブレザー服タイプの制服姿をした高校生少年としたことで、むしろ思春期的な懊悩ドラマ性を積極的に導入もしている。


 ちなみに、日本であれば、初代『ウルトラマン』にかぎらず、1960年代以前のアニメ・特撮・時代劇のヒーローの大勢は、すでに人格形成が完了した品行方正な「キマジメ誠実ストイック」主人公であった。
 それが1970年前後になると、「子供」時代が終わるやすぐに「大人」の社会に組み込まれて浮わつかずに老成した「オジサン」となっていった前代とは異なり、世の中が相対的に豊かとなり学生時代も延長されて、それを謳歌する人間の人数も増加したことで、モラトリアム期間も延長されたことから「子供」と「大人」の中間である、まだまだ未熟で揺れ動く「若者」といった人格類型がクローズアップ。そんな彼らが主人公となる『ウルトラセブン』や『帰ってきたウルトラマン』が誕生する。


 さらに、そこにヤンチャな不良性感度が同時多発的に投入されたのが1972年であり、コレが我らが『ウルトラマンエース』の北斗星司や『デビルマン』の高校生主人公・不動明に『マジンガーZ』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200119/p1)の高校生主人公・兜甲児や『太陽にほえろ!』で先ごろ逝去した萩原健一が演じた新人刑事・マカロニといった人物たちであったとも私見する。
 さらには、実写特撮では子役の拘束や演技面での困難があるので一般化はしなかったけれども、80年代以降の漫画やアニメでは10代の少年少女がスーパーヒーロー・スーパーヒロインとなることで、そこに思春期ドラマも導入されて、年齢構成的には偏ってはいてもある方向性でのドラマ性は高めていく。


 その点では後塵を拝した実写特撮ではあるも、1992年の『恐竜戦隊ジュウレンジャー』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20120220/p1)あたりで、ほとんど思春期前の小学生のようなメンタリティのキャラクターが多数派を占めるヒーロー集団が登場(笑)。この場合は複雑なオトナの心理は描けないのでドラマ性もさして高まらないけど、幼児性の再帰的な再発見の妙味は出せていたとは思うので、アレはアレで個人的には好きである。


 読者もご承知の通り、約80年もの歴史を持っているアメコミヒーローも同様の歴史を先行してたどっており、1930年代末期の品行方正な『スーパーマン』(38年)、大人のダークな香りがする『バットマン』(39年)や、時代が飛んで高校生を主人公とすることで思春期性や成長ドラマ性を投入した『スパイダーマン』(62年)に、さらには最初からヒト型をしていない人外や異形であり人格者ではない『ファンタスティック・フォー』(61年)やら『X-MEN(エックスメン)』(63年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20170519/p1)などの集団ヒーローを経て、チョイ悪や乱暴者で悪党を懲らしめ過ぎることで背徳感ある暴力のカタルシスも感じさせる後発の膨大なヒーローたちなど、日本でいうなら脚本家・井上敏樹が描くニヒルで欲望肯定・私的快楽肯定なヒーロー像とは同一ではないにせよ、それに類するキャラクターたちもすでに数十年前のアメリカの地で確認できることであろう。


 本作『ULTRAMAN』に関しても、男子高校生が主人公となり、彼がその巨大な力にビミョーに浮かれたりするサマも描くことで、あえてアメコミ洋画をモノサシにカテゴライズをするならば、『スパイダーマン』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20170901/p1)に似た香りもしている。


 しかも、序盤のウルトラマン型強化スーツの初装着時の戦闘を除けば、しばらくは悪い宇宙人(笑)相手ではなく、首都高速での交通事故での炎上目前トラックの救出に投入されたり、偶然に遭遇した中層マンションでの監禁事件や高層ビルのガラス拭きのゴンドラ落下事故を解決したりもしているので、善の超人vs悪の超人との大激闘を描く昨今のアメコミ洋画(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20180619/p1)(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20171125/p1)ではなく古き良きアメコミ作品や、日本の1960年代における超人化する前の覆面をかぶっただけの人間ヒーローもののテイストも本作には感じてしまう。そーいった意味では、「ウルトラマン」に限定したモノではなく、スーパーヒーローもの全般の総括といった感もある。


メインヒロインが女子高生アイドル! そこから構築される華やドラマ性!


 かてて加えて、この男子高校生クンが懸想する女子高生ヒロインが、アイドル活動もしている可愛い子ちゃんでもある。彼女はTVでも「ウルトラマン好き」を公言しており、その彼女が劇中で中堅アイドルとして熱唱する歌曲までワザワザ作られて(!)、アイドルアニメ『アイドルマスター』(11年)やら『ラブライブ!』(13年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20150615/p1)などのように観客がペンライトを持って応援する、中規模ステージでのライブシーンまでもが描かれることでトドメを指す!――つまりは、往年のリアルロボアニメ『超時空要塞マクロス』(82年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/19990901/p1)じゃないけれど、「私の彼はパイロット」ならぬ「私の彼はウルトラマン」なぞというベタな萌えを突いてくるのだ。そーいう部分では実は志しが低い作品でもある(笑)――


 フツーの女子高生ではなく、アイドル活動もしている女子高生とお近づきになるあたりは天文学的な確率となるのでリアルではない気もするけれども、スーパーヒーローだの宇宙人だののキャラ立ちしまくった存在が次から次へと登場する本作においては、コレくらいにケバ立ったメインヒロインを登場させないと「絵」としてやや沈んでしまい「華」が弱くなってしまうやもしれないので、「アイドル」という濃いキャラ付けをするくらいの方がバランス的にはちょうどイイのやもしれない。


 彼女は本作の序盤から渋谷駅のガード下でガラの悪い不良高校生にナンパされて困惑している姿で登場を果たして、それをオズオズと主人公少年クンがトメに入るかたちで接点が作られる。
 しかして、そこですぐにイイ仲になってしまうと安直なので、彼女を近眼として同じ場所で再会してもあのときの彼だとはなかなか気付けないとする。一般公開されている記念館としてオモテ向きはカモフラージュされた科学特捜隊のヒミツ基地の展示物を見学に来ても、彼女はそこで放課後にバイトをしている主人公少年クンが渋谷で助けてくれた彼だとはまたも即座に気付かないことでギャグ描写ともする(笑)。
 主人公少年クン自身もドキマギしながら彼女と同席することにウキウキして、ドー見ても正体バレバレな失言を連発し、しかしそれでもメインヒロインたる彼女が天然ボケにもその正体になかなか気付けないことで、ラブコメとしての味わいも出していき、しかして最後には彼の正体を半ば察知することで、全13話の背骨ともなる甘酸っぱい起承転結感も出していく。
 手法だけを取れば、『スーパーマン』のヒロインなどむかしからよくあるコテコテなのだが、それゆえにヒトの心を普遍的に揺り動かす鉄板・王道なのだともいえる。


 とはいえ、この過程で彼女のウルトラマン好きはタテマエであって、ホンネではウルトラマンvs巨大怪獣との激闘に巻き込まれて死した母親のことを想って、ウルトラマンを実は恨んでもいる両面性も明かされて、作品構造を単純にはしていない。


 彼女の母親が彼女の幼少時に死亡したという事実だけは、彼女や主人公少年が誕生したのも初代ウルトラマンが地上を去って、すでに数十年後が過ぎたあとであったとする世界観とは不整合が生じてしまっているけど(汗)。劇中での回想シーンに登場するウルトラマン初代ウルトラマン以外の別のウルトラマンにして(主役TV作品を持たないウルトラ兄弟の長男・ゾフィー兄さんあたりならばよかった?・笑)、例外的に一度だけ怪獣が出現したことがあったとするとか、死亡したのは彼女の母親ならぬ祖母にすればよかったか?


――後日付記:2023年5月から配信された本作『ULTRAMAN』の第3期こと「FINAL SEASON」を鑑賞していると、本作は初代マンが去ってから20年弱(17年)あとの時代が舞台であったようだ。原典の初代『マン』映像本編の時代設定はあの時代(1966年)に製作された作品にアリガチなことにテキトーで各話ごとにバラバラではある。しかし、某国の宇宙飛行士が怪獣化した#23のラストの墓標碑に1993年と記載されており、これに準拠すれば本作『ULTRAMAN』も配信時期の2020年前後だということにもなって、矛盾はなかったことになっていた。不明を恥じる次第である(汗)――


 老害オタ的なウンチクもココでついでに述べさせてもらえば、怪獣災害の被害者を本格的に描いたのは怪獣映画『ガメラ3 邪神(イリス)覚醒』(99年)が初だと世間的には思われているようだが、ホントは『ウルトラマンタロウ』#38「ウルトラのクリスマスツリー」の方が先である。
 そのことが60年前後生まれの第1期ウルトラ世代のマニアたちの眼中には入らなかったのは、彼らが『タロウ』放映当時はちょうど中高生年齢であり、70年代前半には子供番組を長じて鑑賞する人種がいること自体が世間にまったく流布しておらず、過剰な後ろめたさを持ってしまって、かつ往々にしてマジメなマニア小僧にアリがちなギャグやコミカルにチャイルディッシュを忌避するハードでシリアスでクールな乾いたSF風味至上主義者であったがためだろう。さらに、成人~中年以上の年齢に達すれば理解できたであろうウェットな人間ドラマが、ちょうど年齢&当時主流のマニア間での風潮とも反していたことで盲点となってしまい、あるいは稚気もある児童向けドラマの良さに対して過剰に羞恥を感じて悪印象を持ってしまったからではなかろうか? とも愚考する。
 彼ら先達オタクたちも還暦前後(!)に達してマルくなったであろう昨今、改めて第2期ウルトラを再鑑賞してみれば、おのずとかつての見解も改まると思うのだけれども、いかがであろうか?



 加えて、ご都合主義だともいえてしまうけど、この女子高生ヒロインの父親は警視庁の刑事でもある。しかして、警察と科学特捜隊とは競合関係にもあることで、怪事件に対する複眼的な描写や、警察よりも科学特捜隊の方が上位にあるとする描写も可能となっている。


――19年冬アニメの『魔法少女特殊戦あすか』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20201206/p1)でも、級友の父親が警視庁の刑事であり、警察と特殊部隊がライバル関係にあって、その級友が悪党に狙われるという話を観たばかりだけれども(笑)。もちろんお約束で、本作『ULTRAMAN』の刑事さんは『ウルトラセブン』#8「狙われた街」に登場したようなアパートに張り込んで、アイドルでもある娘のファンの間で実は進行していた不可能殺人事件を捜査したりもしている――


 そして、殺人事件の被害者たちこそがネット上の巨大掲示板に当のアイドルに対する悪口雑言をカキコミしていた人間たちであり、その抹殺をウラ社会の人間に依頼していたのは、今は滅びた異星から来たゴリラ顔の亡命王子であり、彼は今では零落してアパートでの一人住まいの身でもあったとゆー。しかして、彼を真に唆していたのはヤンキーDQN(ドキュン)な日本の不良若造どもでもあって……。
 そんな没落王子を中心に、アイドルとの握手会でマゴついていた体格には恵まれないチビで貧相な彼を蹴飛ばして転ばせるようなガラの悪い若造たちをも同時に描くことで、純然たる子供向け作品のような安直な人間性善説、牧歌的な手触りの方は放棄しているあたりは、地球人と宇宙人をその品性下劣さにおいてフェアに描いており含蓄もある。


 極め付けは、サンデル教授の白熱教室における線路を高速で突進するブレーキの壊れた「トロッコ問題」。ひとり(アイドル)の生命を救うのか? 大勢(観客)の生命を救うのか? という永遠に解決が付かないアポリア・難問を、ライブ会場にて崩れた天井の鉄骨を支えているウルトラマン型強化スーツを着用した主人公少年に、「アイドルよりもオレたち観客を守れ!」と絶叫して主張してくる先の黒幕不良少年たちの姿でブツけてくることで、テーマ的にもトドメを刺す!


――この3D-CGアニメ版では描かれなかったけど、ググってみるとコイツらは死人にクチなし、近代法における証拠裁判主義&推定無罪の原則の欠点を突いて、その後も無罪を主張して、警察もパクれないでいる模様だ(爆)――


善悪がめまぐるしく変転していく、意表外でトリッキーなストーリー!


 直前の例示はわかりやすい人格悪だが、やはり年長マニア向けの作品なので、技巧的・トリッキーな作劇や、善悪が定かならずで一見善人のようでもありながら悪人のようでもあり、悪人のようでもありながら善人のようでもある作劇も、本作では多用している。


 まずは初代ウルトラマンをその最終回にて宇宙恐竜ゼットンをけしかけて敗死させた、黒背広を着ているゼットン星人の生き残りでもある、名前はエドなる御仁が科学特捜隊の重職を務めている。ワウ・フラッター(回転むら)があるテープレコーダーによる再生のような、『ウルトラマンエース』#1(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20060514/p1)でナレーターの岸田森(きしだ・しん)が「ウルトラエース」と語っているらしきところを急遽の改題に伴い「ウルトラ“マン”エース」にオーバーダビングしたらしき箇所のような不協和な音声でしゃべるゼットン星人の彼は、どうやら高校生主人公クンを意図的にピンチに陥れて、しかもその彼が都度切り抜けていくことをも目的としているらしい。
 イデ隊員の成れの果ての初老のオジサンも、ゼットン星人ほどではないし邪気もナイけど、ゼットン星人とは別個に高校生主人公クンが徐々に新たに力に目覚めるサマを喜んでもいるようでもある。


 宇宙人連合である「星団評議会」のエージェント(おとり捜査官?)でもあるダダの同族モドキも、最初はアイドル事件の黒幕かと思わせて、その真意は前2者ともまた別に、主人公少年に試練を与えて、新たなる力を覚醒させることにあるようで、しかもその真の目的は平和連合ではなく悪の連合やもしれない「星団評議会」とも一戦を交えようともしているサマも描いていく。


 本作序盤では、初老のハヤタ隊員や早田進次郎少年を襲撃した、シルエットがトゲトゲになっているウルトラマン型強化スーツをまとった「始まりの敵」なる別名を持つベムラー――初代『ウルトラマン』#1に登場した宇宙怪獣の名前であることはご承知の通り――と呼ばれる存在は、当初は12年前の航空機爆破の真犯人かと思わせておいて、先のダダだかヤプールに彼は航空機を守ろうとしていたのだとも語らせる。


 片やウルトラマンエース型の強化スーツをまとう北斗星司少年も、当初は第3勢力の敵なのか? と思わせて、ウルトラマン型やウルトラセブン型とも交戦するけど、彼はかの航空機事故の唯一の生き残りでもあるとすることで――公的には死亡扱い――、『仮面ライダーアギト』(01年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20011108/p1)における客船「あかつき号事件」のようなナゾともしていく。


 トドメはベムラーで、終盤で透明化していた姿を現わした超巨大宇宙船とそれが放った巨大ミサイルを、人間サイズの姿ながらも十字に組んだ圧倒的な光量の必殺光線で撃破することで、コレはドー見ても彼の正体は零落した初代ウルトラマンであり(?)、当初の一連の行動もまた早田進次郎少年の特殊能力を次から次へと覚醒させるための実に手の込んだ茶番劇だったということをも示唆していく。


しかして本作は、やはりコラえた末に発散するカタルシス志向のヒーローものであった!


 ……なぞと書き連ねてしまうと、シチ面倒クサいストーリーなのか? と未見の読者に誤解をされてしまうので、大急ぎでフォローをしておこう。
 本作もまたよくできたヒーローもの、娯楽活劇作品のセオリーに乗っ取った、往年の竹熊健太郎サルでも描けるまんが教室』(89年)で云うところのいわゆる「イヤボーンの法則」、往年のアニメ映画『幻魔大戦』(83年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20160521/p1)などにも顕著な、主人公の少年少女が悪党によって大ピンチに陥って「イヤ(嫌)~~~!!」となったところで、潜在パワーや潜在武装が覚醒して「ボ~~~ン!!」と超絶パワーで反撃に転じて、それまでとの落差から生じる作劇的メリハリ・カタルシスを強制的に発生させる心的メカニズムにも準拠した物語にもなっている。


 不良どもにカラまれていたアイドル少女を助ける!


 事件や事故に巻き込まれた人々を助ける!


 渋谷のスクランブル交差点でのバルタン星人モドキとの戦闘で、科学特捜隊司令部からの電波で強化スーツのリミッターが解除されることで3分間の制限付きで超絶パワーを発揮する!


 やはりスクランブル交差点での怪獣型宇宙人・ブラックキングとの激闘で、強い思念から空中浮遊・飛行能力をも獲得する!


 エース型スーツをまとった北斗星司との相打ちで、第2期ウルトラシリーズの一部怪獣たちのようにボディーに喰らったパンチでチープな筒抜け穴が空いても生き返ったエースキラーを、激情パッションとともに自らの超精神パワーで強化スーツのシステム・プログラムをも改変して自力でリミッターを解除した主人公クンが、超絶の域に達した太っといスペシウム光線の光の奔流を発してついに溶かし去ってしまう! ……等々。


 ハイブロウな意匠に包まれてはいても、ヒーローものや娯楽活劇作品の根源・セオリーとは、短すぎず長すぎずのボリュームでの一進一退・シーソーバトルの果てに逆転大勝利を収める運動エネルギーの作劇的な型にすぎないようにも思うのだ――もちろんイイ意味で!――。


 そんなことをも再確認させてくれた――自説に牽強付会もさせてくれた(笑)――本フル3D-CGアニメ作品『ULTRAMAN』を筆者は高く評価したい。


追伸


 文脈的に収まらなかったのでココに書くけど、シャープでクールな作風やスタイリッシュな画面でゴマカされてしまいがちだけど、本作に登場する悪い宇宙人たちはのきなみ、第2期ウルトラでいうところの石堂淑朗(いしどう・としろう)脚本回に登場するような、宇宙のSF的神秘とは程遠い、ベラベラとしゃべり下品に哄笑もする、マニア間では悪しざまに罵られてきたいわゆる「チンピラ宇宙人」たちでもある(笑)。
 しかしだからこそ、SF性はともかく善悪の対比・メリハリは付くので、勧善懲悪のヒーローものとしては、殺っちゃってもイイ悪党、罪悪感なく殲滅できる悪党の造形法としてはコレが正解でもあり、その観点から第2期ウルトラにおける石堂脚本に登場したチンピラ宇宙人の再評価も切に望みたい。いやマジで。


 なお、主人公少年のモーシャンキャプチャーを担当したのは、平成ウルトラセブンに変身するカザモリ隊員を演じた山崎勝之(やまざき・かつゆき)。ハヤタ隊員のモーションを演じたのは『忍者戦隊カクレンジャー』(94年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20120109/p1)のニンジャレッド・サスケを演じた小川輝晃(おがわ・てるあき)。モロボシダンのモーションを演じたのも『未来戦隊タイムレンジャー』(00年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20001102/p1)で追加戦士・タイムファイヤーを演じた笠原紳司(かさはら・しんじ)であり、そのへんはロートルオタであればスタッフ・ロールでとっくにお気付きでもあるよネ。


 ネット配信会社も、全世界のケーブルTV&個人から集金する「規模の経済」で、映像製作に乗り出せて、黎明期だから本作のような企画が通っているのだろうけれども、数年を経て何が売れて何が売れないというマーケティングが判明してしまったならば、ニッチな『ULTRAMAN』みたいな企画は通らなくなって、続編も製作されないんじゃないのかとも恐れる。アマゾン・プライム・ビデオでも、『仮面ライダーアマゾンズ』(17年)は第2期(18年)が作られたけど、『ウルトラマンオーブ THE ORIGIN SAGA』(ジ・オリジン・サーガ)』(16年)の方は同系企画が続かなかったみたいなモノで(汗)。


(2020年1月2日・後日付記:ネット配信媒体・Netflixの日本での2019年度に最も観られたアニメ作品は、本作『ULTRAMAN』だったそうで、上記の懸念(けねん)は杞憂(きゆう)に終わったのであった・笑)


 本作におけるウルトラマン型強化スーツの装着は、往年の『宇宙刑事ギャバン』(82年)のように戦闘スーツを戦場へ微粒子化しての電送~蒸着だが、原作マンガでは基地などに戻って装着するスーパー戦隊ジャッカー電撃隊』(77年)や『電脳警察サイバーコップ』(88年)のパターンなのだそうだ。一長一短・好みの問題だが、後者の方がリアリティは高いけど展開がモタつき、前者の方がヒーロー性・万能性は高まり展開もサクサクと行く。長じると良さもわかるのだが、筆者は幼少時『ジャッカー』の変身に憧憬を感じなかったので、本作の蒸着変身の方が好みである。


後日付記


 2019年6月12日(水)、本作フル3D-CGアニメ『ULTRAMAN』の「SEASON2」の製作決定が、フランスの「アヌシー国際アニメーション映画祭2019」にて発表された。



(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2019年ULTRAMAN号』(19年5月4日発行)~『仮面特攻隊2019年GW号・第2刷』(19年5月6日発行)~『仮面特攻隊2020年号』所収『ULTRAMAN』評より抜粋)


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仮面ライダージオウ前半評 ~未来ライダー&過去ライダー続々登場!

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仮面ライダージオウ』前半総括! ~未来ライダー&過去ライダー続々登場!

(文・T.SATO)
(2019年4月29日脱稿)


 『仮面ライダージオウ』(18年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190126/p1)も早くも1年間放映スケジュールの半分以上を消化した。
 当初は「平成仮面ライダー20作記念」作品として、同じく10年前の「10作記念」作品であった『仮面ライダーディケイド』(09年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20090308/p1)の作劇パターンを踏襲し、過去の時代の平成ライダーの世界をめぐっていくのであろうかと思いきや。
 第2クールのアタマというべきか、製作スタッフ的には年末年始の休止で間が空いてしまうから、2018年放映分のシメ括り、1年間を4分割4クールならぬ3分割として、最初の1/3が終わったという括りにしている気もするけど、改めて本作の基本設定をおさらいもする。


・本作の発端でもある50年後の西暦2068年の荒廃したディストピアな未来へと、仮面ライダージオウこと常磐ソウゴ(ときわ・そうご)少年を飛ばして、直にも目撃させることで舞台設定を再確認
・2068年の世界で逢魔時王として君臨している仮面ライダーオーマジオウ。いかんともしがたい超パワーを放つオーマジオウを倒すことは叶わない。ならばと反オーマジオウの2大陣営、レジスタンス&タイムジャッカーは過去の世界へ飛んで、歴史改変を目論んでいること
・本作の2号ライダーである仮面ライダーゲイツことゲイツ青年&黒髪ロングのメインヒロイン・ツクヨミは、2018年の世界でジオウこと18歳の常磐ソウゴ少年の抹殺を試みんとするも、様子見として奇妙な同居生活を送っていること
・タイムジャッカーの3人、ダンディな強面のオジサン・スウォルツ、少女みたいな美少年・ウール、でこ出しミニスカ美少女・オーラは、各々の時代の平成ライダーを誕生させずにアナザーライダー怪人が誕生する歴史へと改変することで、あるいはアナザーライダー怪人自体をオーマジオウとは別の「王」として擁立することで、オーマジオウが誕生しない歴史を招来しようとしていること


 しかも彼を未来へと飛ばすのは、本作の2号ライダー・仮面ライダーゲイツことゲイツ青年や、メインヒロイン・ツクヨミ嬢が搭乗する中型ロボ・タイムマジーンではない。#13~14の『仮面ライダーゴースト』(15年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20160222/p1)編にて姿を現わし、過去の時代へタイムトラベルしない#15~16の基本設定おさらい編にも継続して登場する、本作の10年前に放映された平成ライダー10作記念の『仮面ライダーディケイド』こと、不敵な態度でモラルもあるのかナイのかナゾめいた青年像が相変わらずな青年・門矢士(かどや・つかさ)なのだ!
 本作の暫定的な敵でもあるタイムジャッカーの3人とも付かず離れずでつるんでいるようにも見えて、ジオウこと常磐ソウゴ少年の人間としての器量・度量を試しにかかっているようにも見える門矢士。
 『ディケイド』における映像的な目玉でもある並行世界を超えることができる銀色の波めくオーロラカーテンが、ここではナゼか時間さえをも超える能力を獲得しており(笑)、ジオウことソウゴ少年を2068年の世界へと飛ばして、改めて自身の未来の姿でもある魔王が君臨する世界の惨状を垣間見させて、しかも天皇やお公家さんのように御簾(みす)のウラに控えている魔王とも対面させて問答させることで、善良なお坊ちゃんでもあるソウゴ少年のアイデンティティに揺さぶりをかけてくる!
――しかもオーマジオウは、ソウゴ少年が変身ベルトを捨てれば未来の自身でもあるオーマジオウも消滅すると、自己否定のようなナゾ掛けもしてくる(実際、一時的には変身ベルトを捨てることで消滅もする!・汗)。セリフの字面だけで取れば、自身の現状に後悔しているようにも取れるけど、自信満々に不敵に語っているので、多分そんな殊勝な気持ちはさらさらナイ!?――


 ディケイドから貸与された腕時計の文字盤型な変身補助アイテム・ディケイドウォッチがコレまた、他の平成ライダーのウォッチとは異なる形状をしていることで、歴代ライダーの中でもそれまでの平成ライダーに2弾変身可能であった(今回は彼以降の時代のライダーにも変身可能な)ディケイドだけは別格として扱いたい――そしてそれは妥当にも思える――バンダイ側の好き者スタッフの意向も透けて見える――個人的には玩具展開は、東映側の発案ありきではナイと憶測するけど、いかがでしょ?――
 そして、仮面ライダージオウはディケイド型のヨロイをまとって、頭には四角いハコ(笑)をかぶったような、しかもそのハコの正面の平面には、そのパワーを使用中の歴代ライダーの顔面の図像(笑)がセットされているという、稚気満々でイロモノ臭も漂うデザインの強化形態へとパワーアップ!(個人的にはスキなデザインだ・笑)


仮面ライダーシノビ・仮面ライダークイズ・仮面ライダーキカイ!


 歳が明けた2019年放映分からは、さらに意表外な展開が待っていた! もう『仮面ライダーディケイド2』とは云わせないゾ! とばかりに、レギュラーの3号ライダーや4号ライダーですらない新ライダーが続々と登場してくるのだ。
 オーマジオウが君臨する歴史時間軸とはまた別の、2022年の世界から来たという、忍者がデザインモチーフとなっている、そのまんまなネーミングである仮面ライダーシノビ!(#17~18)
 同じく2040年の世界から来たという、クイズがデザインモチーフでもあり、両胸に「○」と「×」が、頭頂部には「?」マークのトサカがついている仮面ライダークイズ!(#19~20)
 オーマジオウが君臨する2068年よりもはるか未来、シノビやクイズの時間軸の延長線上の2121年とおぼしき時代を舞台に、機械生命体に支配された世界で人間の味方をしている、往年の石森章太郎原作の東映特撮ヒーロー『人造人間キカイダー』(72年)がモチーフとおぼしき仮面ライダーキカイ!(#23~24)


 その作劇は、フツーに予備知識もなく鑑賞していると、本作『ジオウ』の追加ライダー、新レギュラーの初登場話にしか見えないモノともなっている――というか、筆者は追加レギュラーなのだと誤解した(爆)――。
 もちろんヒーローの新造スーツなぞは1体が100万円以上もかかるという話だからシャレで出せるワケもない以上は――ググってみると、既成キャラクターのスーツの組み合わせ改造だとのマニア間での分析が出ているので、もっと安くて済んでるだろうけど(笑)――、1号ライダージオウや2号ライダーゲイツが過去ライダーの属性パワーを宿したヨロイをまとうように、真の3号ライダーともなる仮面ライダーウォズも未来ライダーの属性パワーを宿したヨロイをまとうために、仮面ライダーシノビ・仮面ライダークイズ・仮面ライダーキカイらを登場させたという、玩具展開ありきの展開なのであったろう。
 加えてここに、本作のスピンオフ・番外編でもあるネット配信媒体でも主役も張る新ヒーローの先行お披露目といった役回りも結果的に与えることで、ウルトラマンオーブ(16年)やウルトラマンジード(17年)において2大先輩ウルトラ戦士の力をブレンドすることで新形態に2弾変身するも、玩具カードのみに図版が登場して着ぐるみ化は果たされなかったあまたのバージョンが、メディアミックス的にも即座に着ぐるみ化が叶ったような幸福な展開でもあろうか?


 仮面ライダーシノビの変身前は、ド新人には見えない盤石なヒーロー演技だナと思ってググってみると、忍者つながりで『手裏剣戦隊ニンニンジャー』(14年)の金色の追加戦士、メリケン帰りの忍者・スターニンジャーことキンジ・タキガワを演じた多和田秀弥が演じていたとわかる。
 仮面ライダークイズの変身前のヒトも、研究者の父が家庭に帰らず淋しい思いで病没した母を持つシットリとした青年という役どころ、かつ軽妙な「○×クイズ」をテンション高く繰り出す芝居がウマいなと思ってググってみたら、『特命戦隊ゴーバスターズ』(12年)のレッドバスターを演じた鈴木勝大(すずき・かつひろ)。
 仮面ライダーキカイは、映画『キカイダー REBOOT(リブート)』(14年)にてキカイダーことジローを演じた入江甚儀で、コレはすぐにわかったけど、やはり5年の歳月は長い。大根芝居であった往時からは格段の進歩を遂げている(笑~まぁ無垢な機械人間の設定なのだから、往時はその朴訥とした芝居でもよかったのだけれども)。


 で、本作序盤では見たことも聞いたこともない、ある意味でデタラメなキャラクターが頻出する展開にも、キチンとSF的な言い訳は付けており、幼児はともかく小学校中学年以上や我々大きなお友達にもナットクがいくようにはしていることは好印象。
 それすなわち、レジスタンスやタイムジャッカーや仮面ライダージオウらが、歴史を自在に飛び交って攪拌してきた行動の末に、オーマジオウが君臨する未来とはまた別の分岐した未来へと通じる時間軸が発生した可能性である!


 どころか、仮面ライダーキカイに至っては、彼が年明け2019年の現代へとタイムリープしてきたのではなく、現代に登場するのはアナザーキカイ怪人の方であり、ソウゴ少年自身は睡眠中に2121年の世界で実体化して、仮面ライダージオウにも変身して仮面ライダーキカイと共闘することでの変化球な作劇パターンとし、コレをもって彼は予知夢や局所的な時間巻き戻しが可能なレベルではなく、自分が望む遠未来をも現実化できるレベルの域に達した神のごとき超絶の力を保持している可能性さえ、ツクヨミ嬢の弁を借りて示唆される。そして、そのことでソウゴ少年に同情的になっていた彼女をして恐怖もさせるのだ。
――そのサマを見て、本来はツクヨミ嬢よりも強硬派であったハズのゲイツ青年の方がむしろ困惑して、ソウゴ少年を擁護したい心情にかられているであろう描写も同居させ、多角的な演出を達成しているあたりもまた絶品!――


 そして、仮面ライダーオーマジオウが君臨する未来とはまた別の時間軸。2022年には仮面ライダーシノビが、2040年には仮面ライダークイズが、2121年には仮面ライダーキカイが活躍する時間線の未来とは、2019年4月の「オーマの日」に魔王にならんとした仮面ライダージオウを2号ライダー・仮面ライダーゲイツが倒したことで新しく生じた歴史であったとする!
 そこでは仮面ライターゲイツの方が魔王ならぬ救世主として崇められているらしくて(?)、そちらの時間軸の歴史を守るために、オーマジオウが君臨する時間軸の歴史の方を守るために派遣されていたレギュラーキャラのウォズ青年ともパラレル・シンメトリカル(対称的)な存在である、もうひとりのウォズ青年が第4勢力(?)として登場!


 その彼が新たなるライダー・仮面ライダーウォズへと変身する!――変身時に背後に浮かぶのは、1号ジオウのアナログ時計、2号ゲイツのデジタル時計(Gショック)につづいて、数年前に話題となった腕時計型端末(アップルウォッチ)がモチーフかとも思われる(笑)――
 なぞとハイブロウなSF的背景設定を持ちつつも、本家のウォズ青年同様に、ネタキャラ・狂言回し・説明役としての役回りも濃厚に持つので、アップルペンみたいな電子ペンでタブレット端末に望みうる未来を記述すると、現実世界もそのように展開していくという『ドラえもん』のヒミツ道具のような安直で即物的な、我々大きなお友だち的には笑ってしまうような能力も併せ持っている。


17年後の『仮面ライダー龍騎』編! アナザーリュウガ! ジオウⅡ!


 コレらのエピソードに挟みこむかたちで、『仮面ライダー龍騎(りゅうき)』(02年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20021109/p1)を材とするエピソードも挿入(#21~22)。しかも、それは2002年の時代へと飛んで、アナザー龍騎怪人を誕生させることで、龍騎の存在をなかったことにするという展開ではない。『時をかける少女』(67年)などの前史的な作品群を除けば『仮面ライダー龍騎』という作品は、あまたのオタ向けジャンル系作品で隆盛して今や空気のように一般化もしている「バトルロイヤル」要素や「時間ループ」要素の発端・始原ともなった画期の作品でもある。
 そして、『龍騎』世界には、「TVスペシャル」(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20021105/p1)・「劇場版」(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20021104/p1)・「TV版」(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20021103/p1)といくつかのバージョンがあり、しかもそれは「TV版」最終回での黒幕青年が絶望して発したセリフによれば、すべての作品が「時間ループ」(幾度もの歴史改変)で連結されており、しかしてそれは「TV版」最終回で開始の時点に戻って、そもそもバトルロイヤルが発生しなかった歴史へと改変されたので、『ジオウ』の歴史にも龍騎は公的・表層的には存在しなかったことになるのだ。
 そーいうところまで考慮したのであろう。この『ジオウ』「龍騎」編では、TV『仮面ライダー龍騎』最終回(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20021108/p1)でバトルロイヤルも仮面ライダー龍騎も存在しなかったことになった結末を迎えた、その17年後の2019年が舞台となる。
 しかして、『龍騎』でバトルが展開された左右反転のミラーワールドには、最終回先行放映という大ボラ(笑)を吐いて公開された『劇場版 仮面ライダー龍騎 EPISODE FINAL』(02年)に登場した主人公・城戸真司(きど・しんじ)青年の心理的ネガ・ダークサイドともいえる存在が変身した仮面ライダーリュウガ――当時の最初期の公表名は「仮面ライダー龍牙」名義であったと記憶――が残存しており、そのアナザーライダー怪人としてアナザーリュウガ怪人が登場するという変化球!


 ここに鏡の世界に住まう、善良な育ちのイイお坊ちゃんとは真逆な、主人公・常磐ソウゴの心的ネガ・ダークサイドでもある、通称・裏ソウゴも出現! 表ソウゴの心の中にもある偽善、あるいは偽善とはいえなくとも微量にはある邪心や虚栄心の存在をも突いてくる作劇も秀逸だ。
 たしかに、善人ではあっても微量には存在して抹消のしようもない偽善や虚栄心が、人間には永遠に残るのであろう。自身の内にもある「悪」を、「価値判断」の次元で肯定はしないけど「事実判断」としては微量であっても存在するのを自覚することはたしかに重要でもある。
 そのへんに無頓着な自省心に欠ける底の浅い善人が、偽善や虚栄心や二枚舌の世界にカンタンに転んで、しかもそのことに自身ではまったく気付けていない愚かなサマがこの世にはどれだけハビこっていることか? 一度でも失敗した御仁や少々ヘンだという程度の御仁に対しても、悪人だと決めつけて包摂せずに実に冷淡に排他的にふるまい、自身にも泥が付くことを極端に厭うあまりに困窮している他人を救ってみせようとは思いもしない薄情な輩がどれだけ多いことか? はたまた、現実世界で実地に使えるツール・処世術ではなく、ヒトを救えもしない歯の浮くような理想論・キレイごとだけを云って、自己満足している御仁がいかに多いことか?
――もちろん確信犯で悪事をするヤンキーDQN(ドキュン)な粗暴の輩と比すれば、彼らは全然マシではあるにしても――


 そーいう意味での自身の内にもある「悪」をも包含して、「正」⇒「反」⇒「合」的な意味合いをも持たせた仮面ライダージオウの新形態、今度はアナログの針時計を1台から左右2台としたデザインでもある「仮面ライダージオウⅡ(ツー)」なる安直ネーミングな新キャラが、この『龍騎』編にて初お披露目!
 顔面の片側を占めるもうひとつの時計は、左右に反転している時計であると見立てることで、短時間であれば局所的に時間を巻き戻すことも可能というチート(何でもアリ)能力も発揮できるようにもなる!――「スーパー戦隊」の歴史においても時間戻し能力を発揮できる戦隊ヒーローがたまにいて、まぁ「戦隊」らしいアホアホな技という感じで笑いながら観てるけど、本作は時計がモチーフのライダーなので、ハードSF的にはともかくライトSF、シンボリックな次元で一応はナットクが可能(笑)――


 善悪二元論ではなく、善が絶対で悪を相対とする一元論、善悪を包含してその上位に立つ一元論、上位には立たないけど自身の尾を噛むウロボロスのヘビ的な陰陽思想など、一元論は哲学でも宗教でも紀元前から東西で存在するモノではあるので、いろいろと示唆的ではある。
 善悪・敵味方が相対化された80年代以降は、ジャンル作品にもこの発想が導入されており、近年だとウルトラ兄弟の長男ゾフィー&悪のウルトラマンことウルトラマンベリアルの力を借りて強化変身したウルトラマンオーブサンダーブレスター、初代ウルトラマン&同じくベリアルの力で変身するウルトラマンジードや、ウルトラマンキング&同じくベリアルの力で強化変身したウルトラマンジードロイヤルメガマスター、人工知能ロボが「善でも悪でもイイ! 私に力を!!」と叫んで、失敗続きであった1号ロボ&2号ロボの合体を緊急時には成功させた児童向け合体ロボアニメ『勇者警察ジェイデッカー』(94年)の中盤回なども想起する。
 まぁコレもサジ加減ではあって、必要悪としての酸いと甘い、善と悪とのブレンドだとは思ってはいても、往々にしてヒトは悪に飲み込まれてしまったりもするので、「混ぜるな危険」も有効ではあるけれど。


 もちろんこの珍妙なデザインや玩具発売スケジュールの方が先にありきで、各話での先輩ゲストライダー選定などはそのあとではあろうけど、デザインが左右反転の腕時計2個となったところで、鏡の中の異世界に住まう主人公の鏡像・ネガ存在(の腕時計)とも合体して誕生するヒーロー新形態を、ミラーワールドを舞台とする『仮面ライダー龍騎』ともシンボリックにカラめていく作劇はウマい手法だとは思うのだ。
――シニカルに見れば、『ジオウ』でも『龍騎』でもミラーワールドとは人間や動物が存在しない無人の世界ではあるので、現実世界とは完全対称ではナイじゃん! しかも、本人の性格的ネガ存在が登場するだなんて、少々劣位の世界じゃん! とのツッコミはできるけど、物理的にも完全対称・完全対等・完全平等の同一世界だと、道義的・説話的な要素は発生しないので、そのへんは寓話とするためにも、インチキではあろうが少々劣位なネガ世界として設定することでイイんじゃないですか?(笑)――


 加えてこの「龍騎」編では、かつては新進のネット配信サイト・ORE(オレ)ジャーナルで名をなした城戸真司と大久保編集長の零落した現況が語られる(!)。そして、さらなるネット媒体の進化で、個人が情報を直接発信するようになり、無名の個人たちが情報を寄せてくれることでも成立していたOREジャーナルは廃れていったことを確認し、それゆえに「負け」たこと自体もしかと認めて、千尋の谷の底でも「分相応」で生きていこうではないか! と確認しあう滋味あるやりとりで幕となる。
 現実の世界でも趣味の世界でもパッとせず、時流にも乗り遅れてハシゴをハズされた感もある、二流三流のアナログな旧型オタである筆者としても、少々慰められるオチではある。「負け」ていることを認めつつ、筆者もヘンに自意識を肥大させずに河原乞食・ピエロ・三枚目としてふるまって、まだまだ地ベタを這いずり回って、最期(さいご)には誰も恨まずカラカラと笑いながら無一文で死んでいく所存である(笑)。


裏ソウゴならぬ、アナザージオウまで出現! ソウゴvsゲイツも決着!


 裏ソウゴ少年を登場させた作劇パターンの延長線として、#25~28は4話連続で、今度は「アナザージオウ」なるジオウとはアナザー(別)でオルタナティブ――代替可能。ありえたかもしれない、もうひとつの可能性――なアナザーライダー怪人までもが登場して、再生怪人軍団(アナザーライダー怪人軍団)をも率いるダントツの強敵として、ソウゴ少年に揺さぶりをかけてくる。
 アナザージオウ! たしかに歴代平成ライダーには対応するアナザーライダー怪人が存在するというのなら、アナザージオウも存在しないとオカシい。
 この怪人に変身する人間のその正体は、10年前に西暦2000年生まれの子供たちを集めた中型バスが、トンネル内にて激突して炎上した事故で両親を失っても生き残った唯二でもある、加古川飛流少年! 彼は事故直前にメインヒロイン・ツクヨミ嬢がバス内に乱入してきて、「ソウゴ!」と呼びかけながら銃撃してきたことの記憶を持っており、発端でもあるジオウことソウゴ少年を恨んでみせる資格もある、ジオウの心的ネガではないけれども、物的ネガたりうるオルタナティブな存在なのである。


 真相を確かめようと10年前の西暦2009年に向かった2号ライダー・ゲイツ青年は、そこでまた別行動として過去へと向かったツクヨミ嬢がまだ8~9歳であるソウゴ少年に銃口を向けて発砲までする光景を目撃してしまう。続いてトンネル内にて激突・炎上するバスの姿!
 自分が本来の若き仮面ライダージオウの打倒・抹殺という目的を忘れ去ったとはいわなくとも、彼に情が移り改悛するまでの猶予を与えてしまった自身の甘さ、禍福はあざなえる縄のごとしで、ツクヨミ嬢の手を汚させて子供殺しの大罪を犯させてしまったパラドックスに恐れおののき、後悔・悲嘆の塗にくれるゲイツ青年。なかなかにイジワルな展開でもある。
 しかして本作は、やはりイイ意味での子供番組。ツクヨミ嬢はソウゴ少年に銃口を向けたのではなく、敵の攻撃から守ったのであって、ツクヨミ嬢も死なずにバスの運転手に化けていた2009年に活躍していた仮面ライダーディケイドこと門矢士に助けられていたのであったとする(笑)――厳密には2009年の彼ではなく2019年の彼なのであろうが――。


 これら一連の過程で、ゲイツ青年がソウゴ少年を歴史改変のために抹殺しようとするも、非情に徹し切れずに悶々とした果てに、最終的にはソウゴ少年と和解するに至るのがミエミエな本作ではあったにしても――悪口じゃないですヨ――、意表外にもまだまだシリーズ半ばであるのに、この両者の関係は決着を見てしまう!
 子供番組である以上、戦隊シリーズほどではナイけれど、我が平成ライダーシリーズもチョイ悪の役でも真性にワルそうで怖そうな、幼児がドン引きしてしまうような雰囲気の役者さんを配することはあまりナイ。
 よって、主人公を抹殺することが使命であるキャラだとはいっても、おやっさんが営む時計屋で同居生活を送る、今では懐かしで昭和の時代には隆盛を極めるも現在では滅びた「ホームドラマ」――当時はお高くとまったスカした連中などから「飯食いドラマ」と呼ばれて揶揄されていた(笑)――のようなテイストも付与されてきたワケだ。


 しかし、何度かの本来の使命の再確認を経て、この第2クールでは、ゲイツ青年&ツクヨミ嬢が時計屋からもついに引き払って、いよいよ両者間での闘争が深刻となったサマが描かれた果てに、戦闘のさなかでソウゴ少年の奮闘をついに認めて、というか内心の本心が土壇場で迸(ほとばし)って、


「コイツは誰よりもやさしく、誰よりも頼りになる!  それにコイツはオレの友だちだ!!」


 と叫ばせて、再生怪人軍団との大乱戦ともなるサマは、ベタでも感動的であった。


 もちろんコレはソウゴ少年&ゲイツ青年との間での双方向なモノでもある。
 コレに先だって、ソウゴ少年が両親を喪った10年前のバス事故の件も含めて、少年を引き取った叔父こと時計屋のおやっさんの回想シーンや、彼のことを配慮して立ち入ったり叱ったことがなかったことを悔いてもいるという心情吐露も描くことで、叔父さんにもドラマ的な華を持たせていた――まぁ大人しそうなソウゴ少年はワルさをするような子供だったとはとても思えないので、叱る必要がある事態はとても少なかったろうけど、ガチンコで感情をぶつけあったあとで遠慮を少なくするような体験には欠如していたという意味であろうネ――。


 それと同時に、彼が友人を自宅に連れてきたことがなかった事実も明かされて、本作にも2010年代には内々ではカミングアウトしてもイイことになったことにより勃興した(ひとり)ボッチアニメの要素も導入したかのような描写もなされている。それらも受けての、先の感動的なセリフでもあったのだ。
――もっと細かく腑分けして云うならば、本作序盤での高校生活描写も観るに、彼はそこまでは弱々しくはないので、クラスの中では完全に侮られたり浮ききってしまっていたのではなくって、敬して遠ざけられる程度のポジションであったとは解釈したいところだ――


 コレらに加えて、ゲイツ青年&ツクヨミ嬢との同居生活の解消を、叔父さんの進言で「淋しい」とハッキリ感情を発露するシーンも含めた一連の総決算として、ソウゴ少年&ゲイツ青年の対立ドラマも一応の決着をここに見ることとなる。


並行世界の2人のウォズ。3号ライダー・仮面ライダーウォズへと変身!


 第2クールを通じて描かれた、ソウゴ少年・ゲイツ青年・ツクヨミ嬢・白ウォズこと別の可能性の未来世界から来たもうひとりのウォズ青年らの離合集散・ブラウン運動の連発。
 それとも並行して描かれる、ソウゴ少年・レジスタンス・タイムジャッカー3勢力の思惑を阻止して、オーマジオウが君臨する2068年へと至る「正しい歴史」を守るための役回りを務めるハズの黒ウォズこと本来(?)のウォズ青年にも変化が訪れる。
 彼もこの一連で心変わりをしていき、ついには新たな可能性の時間軸世界も見てみたい! と願ったことで、ソウゴ少年・ゲイツ青年らとも手を結んで、ついには白ウォズが変身していた本作における3号ライダー・仮面ライダーウォズの変身ベルトも奪って、彼が変身を遂げるのだ!


 その半面、ゲイツ青年がソウゴ少年の抹殺に成功して誕生した新たなる時間軸の未来から当初は到来したと云っていたのに、次第にそのへんは虚言かも? と思わせて最期(さいご)にはウヤムヤになって敗退もしてしまった白ウォズ青年の描き込みがややウスくなることで分も悪くなってしまい、そのへんは正義や価値観の多様性を謳ってきた平成ライダーシリーズらしくはなくってモッタイないとも思うものの、尺の都合のバランス的にもあまりに煩雑に過ぎてしまうので、仕方がナイといったところか?


 個人的にはゲイツ青年が勝利してウォズ青年が白ウォズとして生誕した未来も消滅したワケでは決してなく、白ウォズがいた未来の歴史にはつながりようがナイ、分岐した別の歴史へと『ジオウ』の世界が突入をはじめたことで、2022年の仮面ライダーシノビ・2040年の仮面ライダークイズ・多分2068年(?)の白ウォズ・2121年の仮面ライダーキカイが存在する時間線と、『ジオウ』2019年4月中旬以降の時間線とは交通ができなくなってしまったので、白ウォズも『ジオウ』4月中旬以降の世界からはその存在が排除されてしまったのだと解釈したい。
 しかし、分岐点越しの2段飛びでの時間跳躍がテクノロジー的に可能になったとかのSF的な言い訳も付けて、シノビやクイズにキカイや白ウォズの再登場も切に望みたい(笑)。


仮面ライダー剣』『仮面ライダーアギト』。歴史改変ではない後日談!


 アナザージオウとの4話に渡る闘争で、『ジオウ』シリーズ前半のクライマックスも終わって、しばらく過去の平成ライダーたちをゲストに迎える通常編がつづくことになる。
 しかし、ナンとココでもビックリ! タイムジャッカーが過去の時代へと飛んで、アナザーライダー怪人を登場させて正規の平成ライダーの存在&歴史を消滅させていたそれまでの展開とは異なるのだ。
 先の『龍騎』編とも同様に2019年の現在が舞台となって、そこでアナザーライダー怪人を誕生させるので、『仮面ライダー剣ブレイド)』(04年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20041113/p1)の歴史と『仮面ライダーアギト』(01年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20011108/p1)の歴史はなかったことにはならなくなるのだ。よって、『剣』や『アギト』のメンツたちも記憶を失ってはおらず、正編での事件も史実となるので、ほぼ正統な後日談が描かれることになる!
――もちろんTV正編と比すれば、細部に矛盾はあるのだろうけど、それであっても、『ジオウ』世界の過去の平成ライダーたちはTV正編と同じような歴史をたどったパラレルワールドだと捉えれば無問題だし、TV正編最終回の後日談のシミュレーションともなるであろう――


 2019年の現在に、仮面ライダーブレイドの戦友にして宿敵でもあった仮面ライダーカリスこと相川始青年の影をいまだに追いつづける、レギュラー小学生少女であった天音(あまね)ちゃんが、15年の歳月を経て25歳の成人女性として、当時の子役が再演するかたちにて再登場!
 いまだに一途に想いつづけているだなんて何という健気さ! 世の平均以上のルックスの放っておいてもモテる女性は、需要と供給の法則で選び放題の買い手市場となっていて、男性と付き合っていても、運命のヒトだ! ではなく、もっといいヒトがいるかも? もっともっといいヒトがいるかも? と渡り歩く、一途さとは正反対な輩ばかりだというのに(爆)。


 しかして、彼女はその未練を利用されてか、アナザーブレイド怪人と化してしまう! 彼女の異変を察知して、相川始はついに長年の封印を破って仮面ライダーカリスへと変身!
 相川始。実は彼の正体はヒトではなく、トランプのルーツともなり、その各々のカードに該当する53種の生物種の祖が定期的にバトルロイヤルしてその都度、地球上の万物の霊長を決めるという生物の歴史の中で――『剣』の世界観は進化論に反したそーいうモノになっているのです(笑)――、トランプのジョーカーに該当する存在であって、イレギュラーな不死存在がその正体であったことがシリーズ終盤にて明かされた。
 そして、バトルロイヤルの決着が付いてしまうと、SF映画『2001年宇宙の旅』(68年)に出てきたナゾの巨大石板・モノリスみたいな神のごとき存在が降臨してきて、それまでの優越生物種(現在は人類)が支配してきた世界は終末を迎えてしまうことも判明したため、終末を回避するためにも最終勝者を作らず、「スペードのエース」に該当する仮面ライダーブレイドも人為的に第2の「ジョーカー」と化すことで不死となり、「ハートのエース」であり元々「ジョーカー」でもあった仮面ライダーカリスと永遠に拮抗・均衡、親友になりながらも互いに近付かないとすることで、ヒトであることをやめて人間社会からも去っていくことで、終末回避と平和を同時に達成した哀しき自己犠牲で幕を閉じた作品でもあった。


 その危うい均衡が15年後の今、ついに破られたのだ! という同作を知る特撮マニアにとっては、ナンとも劇的な状況が訪れる。禁忌を破ってしまった仮面ライダーカリスの前には、剣崎一真(けんざき・かずま)こと仮面ライダーブレイドも当然駆けつけて、両者の激闘がはじまる!
 そして、天空が割れて、ナゾの物体が降臨し……といったところで、コレが本作序盤から散々に云われてきた「オーマの日」でもあり、4月中旬の夜間に南中する獅子座のα星(該当星座中で最も明るい星)ことレグルスの輝きが強まるどーこーと云っていたあたりともウマく結びつけられていたら良かったのだけれども、そのへんはやや不首尾に終わっているようで(汗)、その代わりに(?)仮面ライダージオウⅡにつづけて、仮面ライダージオウ仮面ライダーゲイツ仮面ライダーウォズの3人ライダーが奇形的に合体した姿、仮面ライダージオウ・トリニティが爆誕する!


 最後にブレイドとカリスのパワーがジオウのウォッチに納められることで、ブレイド剣崎のクチから垂れていた血も緑から赤へと変わって、彼が不死のジョーカー存在から人間へと戻ったことも示唆される、まさかのオチまで迎えてしまい……。イイのだろうか?(笑) いや、15年後のハッピーエンドでよしとしよう!――『剣』世界の数百年後を舞台とした『小説 仮面ライダーブレイド』(13年・ISBN:4063148556)の立場は?(笑~もちろんいくつにも分岐したパラレルワールドマルチバースとして全肯定をいたします!)――


 すでにTV正編でアナザーアギトなる存在が登場していた『仮面ライダーアギト』におけるアナザーライダー怪人はドーなるのか!? アナザー・アナザーアギトなのか?(笑) などと論争の的にもなっていた『ジオウ』「アギト」編も面白かった。近年でもネット配信『仮面戦隊ゴライダー』(17年)でも再登場したばかりで、往時の着ぐるみも残っていたアナザーアギトが、すでにTV正編では死した天才外科医・木野さんの変身ではない別の存在として、アナザーアギトの名前のままにて再登場!
 それに対して、TV正編ではメインヒロインでもあった真魚(マナ)ちゃんも勤務する、TV最終回にて開店したレストラン・アギト(笑)を経営するアギトこと津上翔一本人も、実は自分の本名は沢木哲也であり、かつては記憶喪失であったことまでくわしく語って、同じくレジスタンス活動以前の過去の記憶がないことが判明したツクヨミ嬢を励ますという、ドラマ的にも実にオイシい年長者としての役回りも務める!
 そして、最後には仮面ライダーアギトにも再変身して、そこに流れ出すのは往時も戦闘シーンになると流れた、あの挿入歌! ロートルオタクにとっては、気分はすっかり18年前の『仮面ライダーアギト』だ!


 てなワケで、つづく『仮面ライダー響鬼(ヒビキ)』(05年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20070106/p1)編以降も現在を舞台とすることで、『ウルトラマンメビウス』(06年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20070506/p1)後半や『海賊戦隊ゴーカイジャー』(11年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20111107/p1)的な先輩ヒーロー後日談連発の様相も呈しているけど、紙幅の都合でそのあたりは機会を改めて語りたい。


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2019年GW号』(19年4月29日発行)所収『仮面ライダージオウ』前半合評3より抜粋)



『假面特攻隊2019年GW号』「仮面ライダージオウ」前半合評関係記事の縮小コピー収録一覧
・スポーツ報知 2018年12月23日(日) 仮面ライダージオウ×ビルド映画初共演(初日舞台挨拶)
スポーツニッポン 2018年12月23日(日) 仮面ライダー20作記念映画 奥野「いつの時代もここにいます」(初日舞台挨拶)
・デイリースポーツ 2018年12月23日(日) 平成ライダー銀幕に大集結(初日舞台挨拶)
・日刊スポーツ 2018年12月23日(日) 仮面ライダー10年ぶりに出演「僕の原点」佐藤健
徳島新聞 2019年1月6日(日) 犬飼貴丈さん(徳島出身)が初写真集 古里で撮影 夢かなう
スポーツニッポン 2019年4月23日(火) 夫に“変身”賀集利樹結婚(『仮面ライダーアギト』主演)
・スポーツ報知 2019年4月23日(火) 「仮面ライダーアギト賀集利樹結婚
日刊ゲンダイ 2019年4月4日(木) 愉快な“病人”たち 俳優 村上弘明さん62歳 大腸がん ステージゼロだから大丈夫と言われ… 「それなら手術しないでよ」って内心叫んでいました(『仮面ライダー(新)』(通称・スカイライダー)主演)
中日新聞 2018年12月6日(木) 東映、特撮番組プロデューサーの採用募集 人気背景に初の試み
・デイリースポーツ 2019年1月26日(土) 犬飼貴丈「富岡西パワー」 上田まりえ「とんがれ米東」 センバツ出場校決定・芸能人卒業生も歓喜選抜高校野球出場校OB&OG)


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  • 発売日: 2019/05/08
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 2019年5月4日(土)に、NHK・BSプレミアムにて『発表! 全マクロス大投票』放映記念! とカコつけて……。『マクロスΔ』評(16年)&『劇場版マクロスΔ 激情のワルキューレ』(18年)評をアップ!


マクロスΔ』 & 『劇場版マクロスΔ 激情のワルキューレ』 ~昨今のアイドルアニメを真正面から内破すべきだった!?


マクロスΔ(デルタ)』

(文・T.SATO)
(2016年12月16日脱稿)


 うら若き女性アイドルとその歌謡曲が、文化を知らない戦闘巨人族の宇宙大艦隊を圧倒する! そんな80年代前半に一世を風靡したリアルロボアニメ『マクロス』シリーズの35年目(!)の最新作。


 後続の『マクロス』は、初作は必ずしも「文化」「歌」の力で平和をもたらしたのではなく、歌で脅して怯んだ隙に敵を撃滅してただけじゃネ? という身も蓋もないネジくれた自己言及・自己相対視型のアンチテーゼも織り込んで、シリーズを継続させてきた。


・歌の洗脳性を問題視した『マクロスプラス』。
・戦場なのに銃撃せずにガチで歌だけで戦争を終結せんとするも、果たせないで戦場をムダに攪乱するだけで終わるロック青年を描く『マクロス7(セブン)』(共に94年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19990906/p1)。
・ヒト型の知性を持たない昆虫型巨大生物群を相手にする『マクロスF(フロンティア)』(08年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20091122/p1)。


 もちろんアンチテーゼを徹底させたらバッドエンドにするしかないので、展開的には精神的な頑張りが通じたようにされるけど、マッドな科学者が開発した――今で云うネタアニメ的な――「歌エネルギー」増幅装置(笑)や、昆虫さん由来の宇宙細菌に感染した者ゆえの生体超時空波などの一応の物理的・SF的な小道具によって、宇宙の悪魔・プロトデビルン(笑)や宇宙昆虫さんに歌のパワーを届かせて、後続作は戦争を終結させてきた。


 筆者のようなイジワルなマニアは、それもまたやっぱり純粋な歌の力じゃなくって、特定の相手にだけ通じる特殊な対処法をココで用いたから、戦闘に勝利したり戦争を終結できたのであって、戦う相手が違っていたら、つまりは『7』のメンツが『F』の敵を、『F』のメンツが『7』の敵を相手にしてたら、敵わずに全滅してたんじゃネ? なぞと思っていたりもする。
 前作の敵役が世界征服に利用した悪の技術が次代のインフラになってたりするのも見ると、往時の悪役の蛮行に感謝すべきじゃネ? なぞとも思ったり――現実世界の技術革新もそんなモノかもしれないが(汗)――。


 本作中盤ではそんなシリーズ全体にも言及して、「歌」そのモノが人類の祖先種の超古代の星間文明人・プロトカルチャー族の「兵器」だった可能性にも言及……するのだが、ストーリーに密接に絡んでメインテーマへと昇華することはなかった(笑)。
 まぁ元・歌手だったオールドミスの挫折や都会人としての孤独なども描くのならシニカルなテーマも似合うけど、アイドル&スター性だけを体現する若年ヒロインには不釣り合いな題材ではある。だから、「歌」が「兵器」であるハズがない! と特に根拠もなく善なるものとして肯定されて進む展開は、浅くはあるけどウェルメイドに落とすならコレしかないよネ。しかし、「兵器」であるかもしれない可能性への、今一歩の懊悩と曲折があった上でのこの選択であってほしかったようには思うのだ。


 なーんて。そんなテーマ主導で『マクロス』を語るのも間違ってるよネ? 結局、我々キモオタは、女性声優たちの可愛らしい声によるキャッキャウフフや、女性アイドルのポワポワした甘ったるい歌声を見聞きすることで、ニヤついて脳内をお花畑にトロけさせ神経を麻痺させて、束の間の癒しや喜びを得ている面も否めない。
 その伝で、前作『F』のW歌姫から本作では5人メンバーのアイドルユニットに増員したのは良でも、カリスマ歌姫と新人歌姫以外はバックダンサー扱いで、さしてそのキャラや内面も描かれないのはいかがか?


 ムダに奇形的に進化したアニメ界の主流と距離を置くのではなく、真っ正面から挑んで内破する形で、ハーレムラブコメや百合や女同士の三角関係の新境地も描くことを目指すくらいでもよかったのでは?


 河森カントク&岡田麿里脚本で、関係各位をダマせたか予算潤沢だった怪作アニメ『AKB0048(エーケービー・ゼロゼロフォーティエイト)』(12年)では、芸能弾圧下の未来で空飛ぶサーフボードに乗ってゲリラライブを敢行するアイドルを美麗なCGで描いたが、なぜかその技術は本作では使われず(汗)。
 高品質が求められ、男向け・女向けアイドルアニメが割拠する10年代で覇者になるには、本編・メカ戦・歌唱ライブシーンの3班体制、3話に1回は新曲PV(プロモーション・ビデオ)が必要だろうが、昨今の河森作品の売上低調を見れば、残念ながらそこまでの予算確保はできなかったようだ。正直、絵面的にも前作『F』に勝っていたとはいえない。


 シリーズ一オボコい少年主人公や少女ヒロインなど素材としてはキライでない。しかし、ソツはないけど意外性と練られた抑揚のある物語といった感じでもない。円盤の売上的には本作は16年春の覇権アニメではある。けれど、河森作品はマジメな作風なのにメタと楽屋オチが突然混じって笑かせる、元祖ネタアニメ臭が魅力だと思ってきた筆者には、その方面のセンスも欠如気味な本作については少々残念ではある。


(了)
(初出・オールジャンル同人誌『SHOUT!』VOL.68(16年12月30日発行))


『劇場版マクロスΔ(デルタ) 激情のワルキューレ

(2018年2月9日公開)
(文・T.SATO)
(2018年4月27日脱稿)


 ロボットアニメ『マクロスΔ(デルタ)』(16年)の劇場版。『マクロスΔ』は一昨年春季の第1巻の円盤売上が1位。通巻でも『Re:ゼロからはじめる異世界生活』に僅差で2位という程度にはヒットした作品だが、早くも10年前になる『マクロスF(フロンティア)』(08年)の大ヒットと比すれば寂しい感じではある。


 SF的エネルギー磁場で機体の強度を高めた戦闘機が人型に変形、ついには劇中キャラによるBGMならぬリアル歌唱(笑)の力で(後続シリーズだとコレに作品ごとにSF物理的な言い訳も付与)、局地的な戦局の左右どころではなく果ては戦争すら終結させる、イイ意味でインチキも大概にしろと云いたくなるマクロスシリーズ。
 歌姫も単独歌手からダブル歌姫、本作ではアイドルユニット5人に増員。戦闘機には乗らないが、魔法少女風に変身(笑)するや各種バーチャル衣装をまとって空を飛んで歌唱して、空間に自身らの歌唱映像も巨大投影して、奇病を発症して錯乱した軍人や民間人を正気に戻していく。


 正直、もう戦闘機は要らなくネ? とも思ったが、それとバランスを取るためか、ドラマの方は小生意気な小柄の美少年パイロットとその姉さんタイプの先輩パイロット、アイドルユニットの小柄新人歌姫との三角関係に焦点が行き、残りの歌姫たちはバックダンサーのような扱いで、そのキャラやドラマはさして描かれず……。
 ちーがーうーだーろー!(笑) 今の時代に若年オタたちが観たいのは、野郎のいない(少ない)世界で女のコたちがキャッキャウフフする、BL(ボーイズ・ラブ)の反転としてのソフト百合みたいな世界だろ。


 本作ではそんなツッコミに対する返歌か、男女の三角関係ではなくアイドルユニットたちに焦点を当てており――まぁ彼女たちの歌を3次元でも売るために、全編をPV風にするという都合もあったのだろうが――、彼女たちの友情・紐帯・回想での過去の苦労・個性・可愛らしさを主体に見せていく。先の三角関係もゼロにはしないけど、アイドルらの周辺にあった人間模様としての点描に留めることでむしろ鼻につかずに、甘え下手でクールな姉御パイロットの淡い悲恋としてイヤミなく浮かび上がったようにも思うのだ。
 シリーズ初作では敵であった異星人種族のマクロス艦長が直々にシカメっ面でオーディション(笑)した軍隊所属の戦略的アイドル集団の日々の歌唱やダンス特訓。先代脱落メンバー、のちに加入してきた新メンバーたちの当時の想い、既存メンツの新人に対する往時の所感。他メンバーとは交わらず超然とした印象でも、実は原初の星間文明人・プロトカルチャー出自のクローンゆえ、家族や幼少時の記憶もないためにアイデンティティ・クライシスに陥っていた圧倒的歌唱力の紫髪ロングの長身歌姫。
 筆者が現今の美少女アニメに毒されているのやもしれないけど(汗)、正直なところTV本編よりも今回の『劇場版』の方が面白かった。なぜにTVもベタでもこう作らなかったのかが惜しまれる。


 作品としてはTV全2クールの1クール終盤&2クール終盤の2つのヤマ場をブレンドして1本の作品として再構築。よって、美少年パイロットの先輩である笑顔を見せない無口な青年パイロットも終盤まで生存。彼とアイドルのひとりとの禁欲的な悲恋も一方のタテ糸までは行かずとも、後出しジャンケン再構築の利点で、彼が旧部隊所属時には見せていた笑顔の写真を効果的に配することで、彼の人となり&落差を浮上させつつ、アイドルアニメ『ラブライブ! サンシャイン!!』(16年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200628/p1)でも観たような(笑)TV1クール終盤での海浜の鎮魂の「精霊流し」の祭りでキレイにオチとしていた。
 メインヒロインの故郷でもあり、冷涼として冠雪した高山のイメージでまとめられた敵母星の美形青年パイロットや熟年パイロットたちも登場するが、物語の遠景の人物に留める代わりに大胆に整理して役回りも変えてしまうことで、出番は少なくとも存在感は発揮させている。


 本作も『宇宙戦艦ヤマト2199』『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』(15年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190707/p1)同様、敵国が相対的には悪でも、自陣営も相当に後ろ暗いと描いているのだが、コレも今時の作品ならばデフォルト的な構図だろう。
 河森正治カントクが岡田麿里と組んだ『AKB0048』(12年)では多用されていたモーションキャプチャーによるCG歌唱ライブは、予算の都合かTV版『マクロスΔ』では使用されなかったが、本映画では『アイドルマスター』『ラブライブ』『Wake Up,Girls! 新章』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20150615/p1)の後塵を拝したけど、美麗なそれを魅せてくれる。
 メカ戦も『マクロスゼロ』(02年)以来のCG描写でそこにも見劣りするようなものはナイ――と同時にもう驚きもナイけれど――。作画&美術の質は並レベルだったTV本編とも同等で(爆)、意図的だろうが陰影のメリハリも少なく、作画マニア目線で見れば動画枚数も少なくて、TV同様にカクカクしているのが見て取れるあたりで、ゴージャスさには欠ける感が惜しいけど。


(了)
(初出・オールジャンル同人誌『SHOUT!』VOL.71(18年5月4日発行))


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『劇場版ウルトラマンR/B セレクト!絆のクリスタル』 ~小粒良品で好きだが、新世代ウルトラマン総登場映画も観たい!

(文・T.SATO)
(2019年3月31日脱稿)


 個人的には、若いマニア連中いわく「円谷の(クレイジーサイコパスの)ヤベーやつ」(笑)らが並行宇宙を超えて結集して悪事を企み、それに対抗するために我らが2010年代の通称ニュージェネレーション・ウルトラマンたちも大集合を果たす、正義の軍団vs悪の軍団のガチンコバトル映画が観たかったのだけど……。


●『ウルトラマンR/B(ルーブ)』(18年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20180826/p1)シリーズ前半の宿敵こと白スーツ姿の愛染マコト社長が、テンション高く「ハイ! ハイ! 愛と正義の伝道師・愛染マコトでございます!!」と叫びながら、ウルトラマンオーブダーク・ノワールブラックシュバルツ(笑)に再変身!
●前作『ウルトラマンジード』(17年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20180213/p1)の宿敵のクールなSF作家センセイこと黒スーツ姿の伏井出ケイもナゼか復活して、ティーカップと杖を持ちながら「人との出逢いは、宇宙が司る壮大な計画の一部ですから……」なぞとキザにホザいて、ウルトラマンベリアルを再召喚して合体!
●前々作『ウルトラマンオーブ』(16年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20170415/p1)のイカれたライバル青年ことジャグラス・ジャグラーもまた悪に寝返って(爆)、ニヤニヤしながら「オレと夜明けのコーヒーを飲もう」と女性をナンパしつつ、漆黒の暗黒巨人へと変身!


 それよりも前のウルトラ作品だと、人間体のある悪役ヒーローが存在しないので、本編人間ドラマ部分にはカラませられないけど、ラストの特撮バトルにだけ取って付けたように(笑)、『ウルトラマンX(エックス)』(15年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200405/p1)のラスボスであるヒト型虚空怪獣グリーザや、同じくエックスや『ウルトラマンギンガS(エス)』(14年)のウルトラマンビクトリーとも戦ったウルトラ一族の歴戦の宿敵・帝王ジュダ、『ウルトラマンギンガ』(13年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200827/p1)のラスボス暗黒超人・ダークルギエルなども登場させて、総力戦を展開してほしかったよ~~!!


 ……などと、ココのところ毎年毎年、春のウルトラマン映画を鑑賞する前にはそんな不満をたくましくしているのだが、実際に出来上がった映画作品を観てみると、先輩ヒーロー共演にさほどに頼らなくても、明らかに低予算で尺も短いのに、ヘンにキバってムダに高尚なドラマやテーマ志向には走らずに、小粒良品の見やすくて退屈させない作品に仕上がっているので、自説の補強には使えなくって困ってしまう(笑)。
 異論もあろうけど、2013年の『ウルトラマンギンガ』からはじまる、いわゆるニュージェネレーション・ウルトラシリーズの映画版の中では、一番ドラマ性が高く感じられて、なおかつドラマ部分がモタつくという感じでもなく、その上でまとまりもよくって作品の背骨もシッカリしているので、個人的には『ギンガ』以降のウルトラ映画の中では一番クオリティも高くて面白かったような……(爆~どうぞ、罵倒してください)。


3大新ウルトラマン登場! ウルトラマン or 人間、究極の二択!


 今回の映画版でも恒例で、前年末に最終回を迎えたTVのウルトラシリーズ終盤に登場する最強形態の主人公ウルトラマンが、最強のさらに上を行く(笑)形態にパワーアップするというかたちにして、ウルトラマンや敵怪獣の商品ラインナップ数を増やしている。


 TV正編では、湊(ミナト)カツミ&イサミ兄弟が変身していた2本ヅノの赤い超人「ウルトラマンロッソ」と1本ヅノの青い超人「ウルトラマンブル」が、シリーズ中盤では合体して3本ヅノの最強形態「ウルトラマンルーブ」が誕生していた。


 今回の映画版では、TVシリーズ後半での宿敵でもあった1300歳以上の女子高生(爆)ツルちゃんの魂も出現。その遺志を継いで、『R/B』#1から登場していた怪獣「グルジオボーン」シリーズの最強形態にしてツルちゃん自ら変身したこともある怪獣「グルジオレギーナ」へと、ミナト兄弟の妹でもあるニコニコ笑顔が印象的な女子高生アサヒちゃんが変身を果たしてバトルに参戦!
 アサヒはさらに、TV最終回での臨終時に明かしたツルちゃんの真名(まな)である「グリージョ」を襲名(しゅうめい)して「ウルトラウーマングリージョ」にも2段変身! 兄貴たちが変身したウルトラマンを助ける大活躍を果たして、実に可愛らしい仕草でバトルも展開してみせる。


 加えて本作では、悪いウルトラマンことウルトラマントレギアも登場! その顔面はウルトラマンのマスクに仮面舞踏会のアイマスク状の眼鏡を着眼したようなスタイルで不気味さも漂わせている。
 まぁ、いわゆる信仰や信念や神さまを試したり惑わしたりする悪魔・メフィストフェレスのパターンで、本映画の前半では赤いウルトラマン・ロッソこと湊カツミに、並行宇宙の善良なる小怪獣・ピグモン族たちが住まう惑星が怪獣メカゴモラに襲撃されている光景を見せつけて、


「地球人の小市民としての生を送るのか?」
「地球人としての生を終えて、別の並行宇宙でウルトラマンとして永遠に正義のために雄飛すべきなのか?」


といいった、昭和のウルトラシリーズの歴代の最終回がハラんでいたような究極の二択をも迫ってくるのだ!


 もちろん、単純にシロクロが付けられる問題ではなく、ドチラの人生にも「理」はあって、あるいは身近な助け・介助が必要な家族や友人でもいれば、大義を選ばずに小市民として生きる人生も決して間違ってはいないとは思うのだ。


 しかし、身近に親しい友や家族などがおらず、(ひとり)ボッチで寂しくて歯応えや充実感もナイ、索漠とした砂を噛むような味気のない人生を送っているような筆者(爆)、もとい我々のような人種などは、単なる「現実逃避」をアメコミ洋画的に


「大いなる力には大いなる責任が伴なうのだ!」


などと自己正当化して、「私事」や「雑事」はゼロにして「公」だけに尽くせる人生を送れるような、ココではないドコかへと旅立って、冴えない人生を一発逆転してみたい! 喜んで善意の宇宙人と合体したりショッカーに改造されてみたい! と妄想してみたことが、人生の途上で微塵たりともなかったとは云わせない(笑)――まぁ、我々凡人オタクには「大いなる力」なぞはそもそも備わってはいないけど――。


 ドコか遠くへ行きたい我々のような現実逃避的なオタとは異なり、家族や周囲とも仲良くやっているのにも関わらず、湊カツミ兄貴は異次元のピグモンが住む星へと助けに行ってしまう!


 はてさて、彼は人間としての生を捨て、かつての郷秀樹(『帰ってきたウルトラマン』(71年))や北斗星司(『ウルトラマンエース』(72年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20070429/p1))にセリザワ前隊長(『ウルトラマンメビウス』(06年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20070505/p1)に登場したウルトラマンヒカリ)のように、ウルトラマンとしての人生を送るというのか!? ……といったテーマにもカスっていくのだけれども……。


 そこは深堀りされずにイイ意味でハグらかされて、ワリとさっさと地球へと帰還ができてしまう(笑)。まぁ、このテーマをガチでやると、子供向けファミリー映画としては作品が深刻になりすぎてしまうので、コレでイイのだろう。


――ちなみに本映画のラストでは、湊カツミ兄貴は子供時代からの夢である「野球」ではなく、将来の約束が不確実な「デザイナー」への海外修行の道を選択してみせる。「好きなことは趣味に留めて職業にはしない!」といった感じだが、そんな新たな「夢」も実現しそうにはない若者の試行錯誤の彷徨! といった気配もしてきて、良くも悪くもリアルなのかも?(爆) 映画『大決戦! 超ウルトラ8兄弟』(08年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20101223/p1)ラストでの、ご都合主義にも30代での一念発起でプロ野球選手になれてしまったウルトラマンダイナこと並行宇宙のアスカ・シン中年の描写とはエラい違いだ(笑)――


夢破れて引きこもって荒んでいるゲスト青年! 『SSSS.GRIDMAN』との共時性


 その代わりに、本映画の中盤以降は、メフィラス星人もとい悪のウルトラマンことトレギアの魔の手が、湊カツミの高校時代の級友であり今回のメインゲストでもある青年に迫ってくる!


 今の時代のオタクで内向的な青年に多いであろう、「自分は営業職などは務まらないであろうから、ゲーム会社にでも就職して地味なプログラミング作業をシコシコとやっていきたい!」などと思っていたような青年が、そんな慎ましい夢にも破れてしまって、会社を辞めて自宅に引きこもってゲーム三昧の荒れた生活をする姿……。なかなかに現代的ではあり、筆者も自身の周辺や親戚などにこのような人間を幾人かは知っている(汗)。
 劇中では当人の自我・自意識がお約束で肥大しており、「能力があるハズの自分にはふさわしくない雑事の仕事を任せられたから辞めてやったのだ!」といった描写にもなっていた。


 しかし、好意的に深読みしてあげれば、それはイキがったり強がったりしてみせた「言い訳」に過ぎなくて、ホントウは自身に能力や才能がイマイチ欠けていたから挫折したのであろうとか、その逆に生まれつきテストステロン(男性ホルモン)過剰で嗜虐的な性格類型の人間がたまたま上司や同僚にいて、コレだけ騒がれているのに絶えることがないパワハラに遭ってしまったのではなかろうか? などの解釈もしてみたいところだ(汗)。


 TV正編でも描かれていた湊カツミ兄貴も「実は家庭の事情で野球をアキラめていた」という設定がココに生きてきて、彼はゲスト青年の自宅に通いつづけて説得を試みる。しかし! 紆余曲折の末にゲスト青年は湊カツミの正体をウルトラマンだと知ってしまう! そして、すでに圧倒的な力を持てる者・恵まれたる者だとして、嫉妬&怒りに狂うあたりもまたリアルなのだった!


 このへんはヘタにスローモーに演出されるとカッタルくなってしまうところでもあるけれど、本映画ではサクサクと流していき、合間合間に湊ファミリーのコミカル漫才も挟んでいくので、70年代前半の第2期ウルトラシリーズにおけるいくつかのエピソードのような「重たすぎてイヤ~ンな感じになる」手前での寸止めはできているとも私見する――いやまぁ、スレたマニアになってくると、あの第2期ウルトラのニガいヤリ過ぎのドラマに「重たいカタルシス」の滋味を感じたりもして、筆者も大スキなんですけれどもネ(笑)――。


 で、この青年の自室の液晶モニターだか、液晶モニターを駆逐する勢いの有機ELディスプレイの画面の中から、悪のウルトラマンことトレギアの禍々(まがまが)しい右腕が伸びてきて指で手招きながら、彼を悪の道へと誘惑してくる!
 このあたりがまた、映画の神さまのイタズラか、昨秋の円谷特撮ヒーロー原作の深夜アニメ『SSSS.GRIDMAN』(18年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20181125/p1)を想起せずにはいられない! カーン・デジファーならぬアレクシス・ケリヴがウルトラマントレギアで、新「円谷のヤベーやつ」こと銀髪ショートの美少女・新条アカネちゃんが本映画のゲスト青年である立ち位置だ。
 むろん、本映画の撮影が例年通り、TVシリーズ終盤の撮影と並行する8~9月であったとして、脚本はそれ以前に書かれていることを考えれば、10月スタートの『SSSS.GRIDMAN』をパクったり影響をウケたワケがないけれども、ほとんどオカルトでもあったユング心理学的に云うならば「シンクロニシティ」=共時性というヤツでもあった。


――コレを拡張して製作時期や脚本執筆時期から考えるに、TVシリーズ『ウルトラマンR/B』に登場した悪のウルトラマンことウルトラマンオーブダーク=愛染マコト社長(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20181104/p1)は、企画当初は噛ませ犬・通過地点的な中ボスキャラに過ぎなくて、最終回後の映画での再登場を待望されるまでにそのキャラが膨らんでしまう! とはスタッフ諸氏も思ってはいなくて、演じる役者さんご本人の演技の力でその存在がラスボス級にまで肥大化したのではなかろうか!?(笑)――



 そんな荒れすさんた、もう青年の年齢である息子さんを心配する、おそらくはシングルマザーの母親の想いもタテ糸とすることで、ドラマ的にも1本スジを通してみせている。


 ゲスト青年も最終的には女児向けアニメの『美少女戦士セーラームーン』(92年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20041105/p1)や『プリキュア』(04年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20040406/p1)シリーズにおいてその回のゲストキャラが敵怪人化するパターンで、ボクらの新条アカネちゃん同様に自身でデザインしたボリューミーな本映画オリジナルのゲスト怪獣・スネークダークネスへと変身!


 しかし、人間としての意識は残っていることで――ロートルオタクとしては『ウルトラマン80(エイティ)』(80年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/19971121/p1)第17話『魔の怪獣島へ飛べ!(前編)』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100822/p1)と同じく第18『魔の怪獣島へ飛べ!(後編)』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100829/p1)に登場した人間怪獣ラブラスなども想起する――、ラストでのウルトラマンvs巨大怪獣のバトルにおいても人間ドラマが途切れてしまう感はナイ!


スーツアクター×モーションキャプチャー ⇒ 新次元のビル街飛行特撮!


 ラストバトルは長尺たっぷりの大バトル。湊3兄妹が変身したウルトラマンロッソ・ウルトラマンブル・ウルトラウーマングリージョの3大ウルトラマンが、漢字の「真」が刻印されたメダルを使って合体して、5本ヅノのウルトラマングルーブが登場!――「グルーブ」って「ウネりのあるような高揚感」を意味する音楽用語からの転用か?―― 個人的には変身時に唱える、「まとうは『真(まこと)』! 不滅の真理!!」なる掛け声も実にカッコいい!(幼児がカッコいいと思えるかは別として(笑) 「真」だから「不滅」であり「真理」でもあり、そーいう「抽象的」「絶対的」な属性をまとうのだもという!


 このウルトラマングルーブがまた、CGはCGでも従来の単なる電子データとは一線を画した、『快盗戦隊ルパンレンジャーVS(ブイエス)警察戦隊パトレンジャー』(18年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190402/p1)の全合体ロボ・グットクルカイザーVSX(ブイエスエックス)や、『プリキュア』シリーズのエンディングの歌曲映像に、この2019年4月から配信されるCGアニメ作品『ULTRAMAN』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190528/p1)も手掛ける荒牧伸志がカントクを務めたCGアニメ映画『アップルシード』(04年)のごとく、スーツアクターの体型や動作をモーションキャプチャーで取り込んで映像データ化した、実にリアルで中のヒト(?)の息遣いまでもが感じられそうな小芝居に満ち満ちた3次元CG映像なのである! 個人的にはモーション・キャプチャーを従来のCGキャラクターとも同一のカテゴリーではくくってほしくない。


 高空で華麗でスピーディーな空中戦をするのみならず、ビル街の谷間や交差点をスリ抜けるように超高速で飛行して曲折したりしながら繰り広げられる戦闘シーン! そして、実景のビルの外壁ではなく、ミニチュアのビルの外壁映像の方をスキャンしたとおぼしきCGのビル群が瓦解や爆発飛散していく映像の数々!


 特撮カントクは90年代の平成ゴジラ平成ガメラシリーズなどの特撮助監督を務めてきた神谷誠。00年代前半のミレニアムゴジラシリーズ終焉(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20060304/p1)による怪獣映画の激減で氏はワリを喰った感があったけど、本作では初期東宝特撮・初期円谷特撮の宗教的信奉者が名乗りたがる「特技監督」名義ではなく「VFX監督」を名乗ることで、氏が新次元の特撮ヒーローバトルを開拓せんとしている決意のほどが見て取れる!?


 前作ヒーロー・ウルトラマンジードこと朝倉リク少年は、本映画の冒頭から早くも登場していてサッサと変身もする。ナゼにこの並行世界の地球に到着できたのかについてはあとから語られた。


 なるほど、尺が短い映画でそのへんの出会いまでをも描くと煩雑になるので、コレはコレでイイのかもしれない(笑)。ペガッサ星人ペガ少年とともに、湊家に招かれてスキ焼きを囲んで仲良くなるシーンもヒューマンで心が温まる。『ウルトラマンジード』TV本編の映像もふんだんに回想シーンとして用いることで、親子関係や家族には恵まれなかったリク少年ことジードのキャラも浮き彫りにしつつ、彼もまた湊家やゲスト青年と交わることで、家族の何たるかを学習もしていくのだ。


 ジードの特撮巨大バトルも、あまたのタイプチェンジや強化形態に順次再変身を遂げていくことで、すべての形態を見せていき、ラストバトルでは昨年春の映画『劇場版ウルトラマンジード つなくぜ!願い!!』(18年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20180401/p1)で披露した究極形態、ウルトラマンジード・ウルティメイトファイナルの姿も再披露してくれるあたりで、うれしくもなってしまう!



 てなワケで、筆者の本映画に対する作品的な評価は、『ウルトラマンギンガ』以降のウルトラ映画の中では一番に高い。個人的な好悪で云うのならば、大スキでもある。


 しかし……。個人的な作品評価は高くても、客寄せパンダ的な観点で云うのならば、最後に取って付けたように伏線もなしで再生怪獣軍団を出現させて(笑)、それに対するに並行宇宙を越境できるヨロイ・ウルティメイトイージスをまとったウルトラマンゼロ率いるウルトラマンギンガ・ウルトラマンビクトリー・ウルトラマンオーブ、同じく模造イージスをまとったウルトラマンエックスが参戦してくれてもよかったんじゃないのかなぁ。


 『ウルトラマンX』TVシリーズ中盤においても、ギンガ・ビクトリーと共闘する前・中・後編の3部作の大傑作があったけど、TV本編の方でも昭和の第2期ウルトラシリーズ時代のように中盤あたりで毎年、先輩ウルトラ戦士たちと競演するイベント前後編を設けて、子供たちやマニアを興奮のルツボに落とすべきではあるだろう!(笑)


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2019年春号』(19年3月31日発行)所収『劇場版ウルトラマンR/B』合評7より抜粋)


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『劇場版ウルトラマンR/B セレクト!絆のクリスタル』 ~小粒良品で好きだが、新世代ウルトラマン総登場映画も観たい!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190407/p1(当該記事)

ウルトラマンタイガ』(19年)序盤総括 ~冒頭から2010年代7大ウルトラマンが宇宙バトルする神話的カッコよさ! 各話のドラマは重めだが豪快な特撮演出が一掃!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190811/p1

『ウルトラギャラクシーファイト』(19年) ~パチンコ展開まで前史として肯定! 昭和~2010年代のウルトラマンたちを無数の設定因縁劇でつなぐ活劇佳品!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200110/p1

ウルトラマンタイガ』『ウルトラギャラクシーファイト』『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』『仮面ライダー令和』 ~奇しくも「父超え」物語となった各作の成否は!?

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200112/p1


[関連記事]

『怪獣倶楽部~空想特撮青春記~』(17年)に想う オタク第1世代よりも下の世代のオタはいかに生くべきか!?

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20170628/p1

ザ・ウルトラマン ジャッカル対ウルトラマン』(15年) ~日本アニメ(ーター)見本市出展作品!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20160914/p1

『ULTRAMAN』(19年) ~等身大マン・セブン・エース型強化服vs等身大宇宙人! 高技術3D-CGに溺れない良質作劇! 歴代作品へのオマージュ満載!!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190528/p1


[関連記事] ~ウルトラシリーズ劇場版

ウルトラマンUSA』(89年) ~日米合作80年代アニメ!

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ウルトラマンティガウルトラマンダイナ 光の星の戦士たち』(98年) ~合評

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19971206/p1

ウルトラマンティガウルトラマンダイナ&ウルトラマンガイア 超時空の大決戦』(99年) ~合評

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19981206/p1

ウルトラマンティガ THE FINAL ODYSSEY(ファイナル・オデッセイ)』(00年) ~賛否合評・万人が超人たりうる一般性を宿命性の物語に回帰させた是非!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19961209/p1

『劇場版 新世紀ウルトラマン伝説』(02年) ~今こそ昭和のウルトラ兄弟が復活するべきだ!

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ウルトラマンメビウスウルトラ兄弟2』 ~東光太郎! 幻の流産企画!

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『大決戦! 超ウルトラ8兄弟』(08年) ~ティガあっての新作だ!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20101223/p1

『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE』(09年) ~岡部副社長電撃辞任賛否!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20101224/p1

ウルトラマンゼロ THE MOVIE 超決戦!ベリアル銀河帝国』(10年) ~大傑作!(なのに不入りで暗澹たる想い・汗)

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20111204/p1

ウルトラマンサーガ』(12年) ~DAIGO・つるの剛士杉浦太陽AKB48・昭和OB投入の是非!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20140113/p1

ウルトラマンギンガ 劇場スペシャル』(13年) ~ジュブナイルじゃない!? アイテム争奪コント劇! 「見せ場」重視!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200820/p1

『劇場版ウルトラマンギンガS 決戦!ウルトラ10勇士!!』(15年) ~第2期ウルトラの「特訓」「ドラマ性」「ヒーロー共演」「連続性」も再考せよ!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200404/p1

『劇場版ウルトラマンオーブ 絆の力、おかりします!』(17年) ~イイ意味でのバカ映画の域に達した快作!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200406/p1

『劇場版ウルトラマンジード つなくぜ!願い!!』(18年) ~新アイテムと新怪獣にも過去作との因縁付与で説得力!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20180401/p1

『劇場版ウルトラマンR/B セレクト!絆のクリスタル』(19年) ~小粒良品で好きだが、新世代ウルトラマン総登場映画も観たい!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190407/p1(当該記事)

『劇場版ウルトラマンタイガ ニュージェネクライマックス』(20年) ~ヒーロー大集合映画だが、『タイガ』最終回でもあった!

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『シン・ウルトラマン』(22年)徹底解析 ~賛否渦巻くワケも解題。映像・アクション・ミスリードな原点回帰・高次元・ゾーフィ・政治劇・構造主義・フェミ!

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