假面特攻隊の一寸先は闇!読みにくいブログ(笑)

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薔薇王の葬列・純潔のマリア・アルテ・平家物語・アンゴルモア 元寇合戦記・戦国BASARA ~薔薇戦争・百年戦争・ルネサンスなど、人間集団・戦争・宗教・芸術・栄枯盛衰・戦いでの潮目の変化(引き際)!

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[アニメ] ~全記事見出し一覧


 11年前の2012年に「薔薇戦争」の悪役であった英国王・リチャード3世の遺骨が発見された逸話を描いた映画『ロスト・キング 500年越しの運命』(22年)が2023年9月22日(金)から公開記念! とカコつけて……。このリチャード3世を美少年の主人公として描いた深夜アニメ『薔薇王の葬列』(22年)・『純潔のマリア』(15年)・『アルテ』(20年)・『平家物語』(22年)・『戦国BASARA(バサラ)』(09・10・14・18年)といった歴史に材を取ったアニメ評をアップ!


『薔薇王の葬列』『純潔のマリア』『アルテ』『平家物語』『アンゴルモア 元寇合戦記』『戦国BASARA』 ~薔薇戦争百年戦争ルネサンスなど、人間集団・戦争・宗教・芸術・栄枯盛衰・戦いでの潮目の変化(引き際)!

(文・T.SATO)

『薔薇王の葬列』

(2022年冬~春アニメ)
(2022年4月30日脱稿)


 英国における「薔薇戦争」を描いた作品である――日本における南北朝時代のようなモノだと思ってください(汗)――。時期的にはマンガ原作の深夜アニメ『純潔のマリア』(15年)が舞台としていた中世の英仏「百年戦争終結の直後。といっても、アルプス以南ではもうルネサンス期になっているけど。


 筆者個人の評価はシリーズ序盤はビミョー。シリーズ中盤以降はまぁまぁ面白いといったモノ。まず何よりも序盤がわかりにくい。


 いやもちろん、白薔薇ヨーク家vs赤薔薇ランカスター家といった大構造は説明されているのでわかる。しかし、それがねらいなのだとしても、あまりにポエミーで少女マンガ的な心象映像ばかりである。


 遠景からのお城なり、原野を乗馬で移動するなり、ドーバー海峡を渡ってフランスへ行く……といった移動ショットでも入れてくれればイイものを、そのへんがモノの見事にオミットされているのだ。それによって、地理的な位置関係がわかりにくいし、腰の据わりも実に悪くなっている。


 「内政」なり「財政」なりが議題にもならないあたりでは、世間的には安直展開だと思われがちな「西欧中世風・異世界ファンタジー」モノにも、今では負けているやもしれない(汗)。


 とはいえ、下々のブ男や庶民がいっさい登場せずに、美形の王侯貴族だけが登場して「好いた、ホレた」といった耽美的な世界をつづっていくのは、少女マンガが原作でもあった本作においては「この作品ではそうなっているのだ!」といった風に割り切れなくもない(?)。その範疇にて突き詰めていって、突き抜けてもくれれば、特化したモノでも相応に面白い作品に仕上がることもあるだろう。


 本作では、 世間一般的には醜い狡猾な「せむし男」であったハズだが、痩身色白かつ美少女のような小柄な美少年として造形された主人公・リチャードが、父・ヨーク公のことを助けられる強い騎士になりたいと願いつつも、身体は非力な女性であったりもする――両性具有であるのだ――。


 彼が森の中で出逢った温厚な羊飼いのイケメン長身青年の正体も、一般的には精神障害であったといわれていた敵のランカスター王ことヘンリー6世で(!)、敵陣営の首魁ではあったものの立場上の神輿(みこし)でしかなく、俗事をキラっている彼とは互いに素性を知らぬままで交流も深めていく……。


 青年にしか見えないヘンリー6世にはすでに青年になっている息子がいて(爆)、そんな息子の方もリチャードの正体が女性だと勘違いをしてホレ始めてしまう。


 そんなリチャード自身は父親・ヨーク公には可愛がられたものの、母親は父の手前ではイイ顔をしつつも、父の姿が見えなくなるやリチャードの両性具有を忌み嫌って「悪魔だ!」と罵り出すという悪辣なイジワルさ!


 このあたりもツマラなくはない。しかし、実に狭苦しい人間関係を描いているだけだともいえる。史劇としてもあまりにスケールが小さくて、個人的にもさほどに……といった感もあったのだ。



 面白くなってきたと思えたのは、父・ヨーク公の死後に王位を継承することになった利発な長兄エドワードに対して、「領地を返して」と妖艶な未亡人貴族が接近してくる件りである。


 逢瀬を重ねて結婚にまでコギつけるも、彼女の心は死した元夫にあって、その真意は復讐でもあるという(爆)。そして、それは先王以来のキレ者である腹心・忠臣の離反をも生んでいく……。といったあたりで俄然面白くなってきて、筆者の評価も急上昇!


 まぁ、主人公が両性具有で悩んでいるといったあたりだけで――メンタルは男ではあったものの――、トータルでの「物語としての巧拙」はさておき、一部からは「性的多様性」を描いたといった文脈「だけ」で高い評価を与えられてしまう昨今の風潮――いわゆる「クィア文学」賞揚――にはプチ反発もいだくのだ。


 そして、原作ありきのアニメだとはいえ、シリーズ序盤をもう少しだけ見晴らしのよい感じで構築ができなかったことについても惜しまれるのだ。
TVアニメ『薔薇王の葬列』オリジナルサウンドトラック

薔薇王の葬列
(了)
(初出・オールジャンル同人誌『SHOUT!』VOL.82(22年5月8日発行))


純潔のマリア

(2015年冬アニメ評)
(2015年4月27日脱稿)


 純潔(じゅんけつ=処女)であり、聖母マリアと同じ名前であるのに、その正体は魔女! といった、その「存在」自体が不謹慎(?)な少女が主人公でもある作品。


 戦争のことが大キライな彼女が、中世末期の英仏百年戦争のフランスを舞台に――アルプスより南ではもうルネサンスの時代だけど(汗)――各地の戦場で異教(=キリスト教以外の宗教のこと)の巨大怪物たちをその魔法にて召喚! その都度、英仏両軍を驚愕させて退かせていた。


 まずは胸の谷間・両肩・背中のハダを露出させた現代風の黒革ボンテージを身にまとったSMの女王さまみたいな魔女像が西欧中世にあったのかヨ!? と一応はツッコミを入れてみる(笑)。だが、そこはあくまでも虚構作品。マンガ的な「絵」から入る「キャラ立て」であって、問題ナシだと私見したい。


 問題ナシではあるけれど(?)、ボリュームのある金髪ショートの主役魔女の少女は、お眼めがデカくても若干吊り目でややクセのあるキャラクターデザインではある。
 本作はオタク系というよりかはマニア系だともいえる月刊「アフタヌーン」誌の連載マンガが原作であった。それゆえに、当世風の「萌え媚び絵柄」の文脈を考慮していないのかもしれない。けれど、それはマーケティングやライト層の客引き的には吉と出るのか? 凶と出るのか?


 しかし、領主さまの伝令を務めている青少年クンに対しては、ちょっとテレたりしてみせるような性格的な「弱さ」や「ハニカミ」もこの魔女少女にはある。よって、我々のような弱いオタク男子にとってはそこが少々の取っつきやすさの救いにもなるのだけれども(笑)。


 その逆に、


●主人公少女の「使い魔」の分際であるのに、ナゼか彼女よりも年上で(笑)、主人公が処女であることをからかってもくる、極小の包帯水着(?)をまとった露出度大のナイスバディーで銀髪ロングの「淫魔」であるお姉ちゃん
●金髪巻き巻きドリルツインテールの「イギリス魔女」の美女
●そして、「フランス魔女組合」(笑)の年若い魔女たち数名……


 彼女らについては、キャラデザ的にもアクやクセは少なくて、吊り目でもなく端正ではあった。よって、我々萌えオタ的にも抵抗感はナイですよね?(笑)――結果的に、彼女らの中に混ざっていると、クセのある絵面の主役魔女少女がビジュアル的にも立ってくるのだ!?――


 以上は、いわゆるマンガ・アニメ的な虚構パートでのキャラデザ面でのお話である。



 だが、それ以外は、本格歴史モノの大作映画もかくや! といわんばかりの緻密な絵作りともなっている!


●貧しいけど慎(つつ)ましい、中世農民の衣服・住居・農耕・村落
●馬上のヨロイ騎士に率いられて、ヤリとタテを持った徴発歩兵と傭兵たちの行進


●従軍神父さんによる開戦直前のお説教や祈祷(きとう)
●弓矢の雨アラレ!
●刀剣での歩兵同士の乱戦!


●西欧中世社会の「典型」を象徴もしている、魔女マリアとは私的に関わってもいる貧しく慎ましい農家の家族たち
●善人ではあるものの、その時代相応の身分意識はあって、領地安堵のためには卑屈さや狡猾さといった政治的なふるまいもせざるをえない領主と、前述したその伝令をもっぱらとしている家臣の青少年クン
●傭兵たちと行動をともに随行していく、職業としての娼婦たち(汗)
●町の金髪青年である修道院長さまと少年修道士



 このテの作品の常としては、「よくお勉強しましたネ」的な内容で、「物語」としてはウマく昇華ができてはいない作品程度にとどまっているのに、扱っている「題材」や「ディテール面での歴史的な正確さ」だけで、作品のことをベタボメしてしまったり、『まおゆう魔王勇者』(13年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200126/p1)や『狼と香辛料』(08年)などもそうだったけど、「エラいヒトの学説を当てハメま評!」(笑)といった、「作劇面での巧拙」を論じずに「作品外での歴史蘊蓄(うんちく)」トークを得意げに披瀝するだけの本末転倒なプチインテリオタクが跋扈(ばっこ)しそうでもある(イヤミ・汗)。


 だが本作は、設定倒れや役割人物像だけの作品にも陥(おちい)ってはいない。主要人物各々の人生を紡ぎつつも、それぞれが対角線の関係でも複雑に交わっており、因縁&人間ドラマを織り成してもいく。


 そして、あまたの「反戦平和」のお気楽な作品群とも異なっているのだ。


 たとえ魔女マリアの善意からの行動ではあっても、「知恵のない直情的な戦争仲裁」によって、稼ぎにありつけなくなった傭兵たちは村々の略奪を開始する!


 フランスの勝利で海の彼方へと放逐(ほうちく)できたかもしれなかったのに、ヘンに情をかけたばかりにイギリス兵が復活してきて、彼らの反撃を招くことにもなってしまう!


 実は彼女の行為こそが戦争を長引かせている側面もあって、領主による庶民たちへの新たな徴兵まで発生してしまうといった逆説・皮肉までをも描いていくといった八方ふさがり……。



 そんなマリアの行為を、それぞれ異なる理由で見咎めてもくる、「地の教会」――地上・現世でのキリスト教会!――と「天の教会」――天上世界にいる大天使ミカエルに、天の父ことユダヤキリスト教的な一応の唯一絶対神かキリストか!?――。


 あげくの果てに、今や落ちぶれて森の奥へと逼塞(ひっそく)している、キリスト教普及以前の時代からあるゲルマン民族や先住ケルト民族の土着の神々までもが登場してくる!


 それら太古の神々もまた、マリアと抗争や禅問答を繰り広げて、


●「魔女マリアの行為の是非」
●「『秩序』と『自由』という、実は相矛盾している2大原理の相克」
●「全知全能かつ天地創造の唯一絶対神がいるのならば、不幸はナゼにあるのか?」


といった議題までもが輻輳(ふくそう)されていく。



 最終的には、魔女マリアは大天使ミカエルとも対決!!


 あぁ、「天」や「神」を「国家権力悪」に見立てて、「反体制」や「反権力」でありさえずれば、その内実の正否は何も問われずに即「正義」扱いだとされてしまって、「オレ、カッケェェェーー!」みたいな、それはそれで今ではあまりに陳腐凡庸どころか、害毒すらあるであろう善悪逆転観のオチなのかよ……と思いきや。


 「天」や「神」を「汚れキャラ」にするのでもなく、魔女マリアこそが道徳的な最終勝利者でもナイ、第三のオチがそこには待っていた!


 それまでの本作に登場してきた大人数キャラクターの「証人喚問」(!)の末に、彼女を――キリスト教新約聖書のイエスの発言的な意味での――「善き隣人」だと認めつつ、互いに妥協させる「大岡裁き」は、狡猾な大天使ミカエルの条件闘争での作戦勝ちだったとも見えなくはない。


 「戦争廃絶」を目指してきた彼女が、大空を超高速で雄飛して武具をも飛ばしてみせる「魔法」という戦略的機動力を失って、好いた男と結ばれて、身の丈のできる範囲で今後は理想を目指していくといったオチも、それまでのストーリー展開や彼女の言動とはやや不整合があるようにも思えて、多少腑に落ちないところもあった。


 しかし、ミクロでのアット・ホームな幸福もドコかで求めていた彼女が、ココで報われたようでもあって感涙してしまう……。



 エッ、魔女マリアと農民少女を除いて、神父さま・傭兵・娼婦・領主さま他ほとんどのキャラクターは、原作マンガには存在しない、深夜アニメ版のオリジナルキャラクターだったの!? ナ、ナンだってェェェーー!


 魔女マリアの純潔(=処女=魔力)を、傭兵にけしかけて奪おうとまでしてしまう青年修道院長クン!(爆) そんな彼もまた彼女への異端審問における


「何もしない神ならば、存在しないのと同じだ!!」


という魔女マリアの見事な反駁(はんばく)に啓発されて、


●「神の存在証明」を唱えた神学者トーマス・アキナス
●「理性による神の存在証明の不可能性」を唱えたオッカム
●「実在論」――「普遍」それ自体が天上世界だかに実体的なモノとしても実在するという説――と、「唯名論」――「普遍」とは名指しのための単なる名称・概念・言葉にすぎないという説――


といった、西欧中世の神学論争も経由して、


●「『普遍』よりも『認識』こそが、存在・実在・本体であるのだ」
●「事実などない。あるのは解釈だけだ」


といった、もっと後世の哲学者・デカルトニーチェのような「神の否定」の一歩手前にまで至ってしまう。


 しかし即座に、「神を否定しない範疇での『自由意志』」を肯定していた古代末期の異端教父・ペラギウスに先祖帰りをしてみせる! ……といった自問自答を、高速早口の60秒間でまくしたてて(笑)、エビ反りして知的恍惚に浸ってしまった青年修道院長クン!



 最終回では、そんな主人公魔女の反駁の影響によって(汗)、「天は地上に不干渉!」といった自説・理論体系を固めていったその青年修道院長クンの眼前に、大天使ミカエルがいきなりに別用(爆)にて降臨してくる!


 自説とは大いに矛盾してしまった超常現象に遭遇して、ミカエルによる魔女マリアについての質問についてもアタマに入らず、「アリエない!」と狂乱させてしまうイジワルな作劇もまたサイコー!(笑)



「より長大で歴史的な時間尺度の中では、大天使ミカエルもまた、いずれは消滅はせずとも『過去の遺物』と化して連鎖していくだけなのだ……」


といった趣旨のことを、欧州先住のゲルマン神話ケルト神話の神々であろう存在をして語らしめて、神々や宗教の存在を相対化しつつも完全否定ではなく条件付きでは肯定もしてみせているようでもある、作り手の思想的な達観もダテではない。


 2015年冬季のベストアニメだったと私見するけれども……。残念、円盤売上は爆死なのであった(汗)。
純潔のマリア

(了)
(初出・オールジャンル同人誌『SHOUT!』VOL.64(15年5月2日発行))


『アルテ』

(2020年春アニメ)
(2020年8月11日脱稿)


 16世紀初頭のイタリア都市・フィレンツェが舞台。つまりはルネサンス期である。一般的には「古代」以来の自由が復活した時代とされているが、本作ではそこを転倒。女性にとってはまだまだ不自由な時代であったとも描くのだ。


 絵を描くことが大好きな、戦前戦中の広島県のすず様(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200308/p1)、もとい中堅貴族の金髪ロングの令嬢・アルテ。


 父はその絵を描く姿を喜んでいたけど、母はしかるべき男性と結婚するふつうの人生を望んでおり、彼女の趣味には理解を示さない。


 ある日、母親は彼女が描きためてきた絵画の数々を庭で燃やしてしまった! 絶望と悲嘆にくれる彼女。


 時は「絵画」と「彫刻」が隆盛を極めた時代。怒りを覚えた彼女は一念発起! 自宅を出奔して、都市各所にある絵画の工房を廻って自身を弟子に取ってくれと頼み込む。


 いかに開明的に思えるルネサンス期でも、女性など工房にはいない時代。はるか後年の300年近くあとのフランス革命でも「人民」の概念の中に「女性」は入っておらず、欧米でも女性に「参政権」が与えられたのは20世紀の前中盤のことなのだから仕方がナイのだ(笑)。


 女性であることが理由で画家になれないのならば……と長髪を切り落とし、ついには乳房まで切り落とそうとしたところで(汗)、救いの手が差し伸べられる。
 ひとり工房のダンディな親方・レオだ。彼は彼女を屋上のボロ家に住まわせて、弟子となるための試練を課す。


 ……といったところで、冒頭から実に面白くて惹きこまれる。まぁ、もっと引いた視点でシニカル(冷笑的)に見てしまえば、


●朝から晩まで「農作業」をしなければ喰えない庶民と比すれば、お絵描きなどの「趣味」に耽溺できるだなんて、やはりノンキなブルジョワだろ!?
●主人公に金髪美女を配するあたりもルッキズムだ。しっかりとしたリアルな時代考証のようでも主人公少女の服装の胸だけは微妙に強調されているからウソだろ!?


 ……といったツッコミも論理的には可能なのだ。しかし、そのへんを云い出したならば、たいていの物語・映像作品は成り立たない(笑)。筆者もアタマの片隅にはそれがありつつも、それをもってして作品を全否定しようとは思わない。


 作品は彼女が持ち前の不撓不屈さで「画家」として技量をミガいて頭角を現していくサマを、親方・レオが元は物乞い出身であったことや、工房のお得意さんでもある花魁(おいらん)もとい高級娼婦も登場させて、日本の花魁とも同様に話題を広くするためにも膨大な蔵書を保有しており、博識でもある彼女から刺激を受けていくサマなどとも並行して描いていく……。
 そして、彼女はヴェネツィアの貴族に気に入られて、画家ならぬ家庭教師としても彼の地へと旅立っていく。


 ……などと芸もなくアラスジを列挙する(汗)。美麗で精彩なフィレンツェの町並み。各所の工房の職人が動員されての「教会背景美術」の作成風景。しかして、丁稚奉公モノの王道といったストーリー展開。実に面白いのだ。


 本作の主演は、『モーレツ宇宙海賊(パイレーツ)』(12年)主演や、『Re:CREATORS(レクリエイターズ)』(17年)でも戦闘美少女系のメインヒロインなどを演じてきた小松未可子で、涼しげでも凜としたボイスが逆境に負けずに明るく立ち向かう姿にも合っている。


 原作はややマニアックな青年マンガ誌『月刊コミックゼノン』の連載マンガ。こんなマンガもあったとは……。感服なのである。
アルテ

アルテ VOL.1 [Blu-ray]
(了)
(初出・オールジャンル同人誌『SHOUT!』VOL.77(20年8月15日発行))


平家物語

(2022年冬アニメ)
(2022年4月30日脱稿)


 武士の時代が到来する直前に栄華を極めたものの、没落していった武家である平家一族を、まるびて線も少ないシンプルな描線で描いた深夜アニメである。


 本来は日本の歴史における在り方的にも、国民的な叙事詩であったハズである『平家物語』。しかし今では、信長・秀吉・家康の戦国時代と幕末~維新の時代しか、一般ピープルには馴染みがないであろう。


 あるいは往時の人々も、琵琶法師や庶民による弾き語りなどを何度も聴かせられているうちに、悲劇的な各自の末路を熟知してしまったことで、何十回目かでの再聴では彼らの前半生の部分の拝聴においても、自然とその彼らの悲壮な末路を重ねてしまって、ますます「無常感」も強調されてきた……といったこともあったのだろうと思われる。


 その伝の応用であるか、本作では未来予知も可能であるオリジナルの少女キャラも登場して、平家一族とも同居する!


 彼女が答案用紙の答合わせ的に、平家一族個々人の未来や末期(まつご)を時に垣間見てしまうかたちも採ることによって、


●今では元気なこの少年が……
天皇に嫁ぐも、今でも不遇なこの少女が……
●ようやくに生まれた幼帝もまた、最後には壇ノ浦に没して……


といった未来が点描されることによって、歴史に疎(うと)い人間たちにも間口を拡げて、なおかつ興味を持たせることもできている。


 もちろん、すでにご存じの歴史マニアな御仁たちにとっても、「復習」かつ「無常感」をさらに強調するシーンとしても仕上がっているのだ。


 本作においては、平清盛(たいらのきよもり)の子供や孫たちも別に悪人ではない。むしろ、清盛とも異なる常識人であったり、傑物の父の不始末に奔走していたりもする(汗)。


 NHK大河ドラマ義経』(05年)では、幼き日の源義経(みなもとのよしつね)が清盛宅に身を寄せて平家の子供たちとも兄弟同様に育っていったといったオリジナルな描写が付与されていた。
――義経と弁慶が出逢った五条大橋は実は当時はまだ存在していなかったし(笑)、弁慶に至ってはその実在自体が疑わしいのだから(爆)、どうせフィクションなのだし適度なウソもOKだとは私見!――


 しかし、同作でののちの源平合戦では、その意味でドラマチックな「義兄弟対決」にもできて「宿命の対決」としても盛り上げることができたハズなのに! そういった過去のことは想起もされず、清盛の息子の兄弟たちもお団子状態でキャラクターの描き分けもできていなかっただけに、その15年越しでの筆者の溜飲も下がったのであった――ウソです。大河ドラマ平清盛』(12年)ですでにとっくに溜飲は下がっていました(笑)――。


 しかし、時代の総体としては「平家独裁」の時代ではあり、「禿児(かぶろ)」こと黒髪オカッパで赤服の少年密偵(私兵)たちによる横暴なども漏れなく描いていくことで、逆に庶民たちの禿児や平家への反発や恨みも描いて、のちに来たる彼らの没落の予兆ともしている。つまり、「信じれば夢は叶う」「不可能を可能にする」といった少年マンガ的な世界観ではさらさらないのだ(笑)。


 学術的には正しくても、教科書的な干からびた「人名や事象の羅列」であっては、よほどの歴史オタクの気がある子供でもなければ記憶に定着などしない。そういった意味でも、子供向けの『平家物語』や『忠臣蔵』や『太平記』(=鎌倉幕府滅亡~室町幕府成立を描いた軍記)などの簡略物語を、歴史の授業といわず義務教育である小中学校の国語の授業などでも1回くらいは教えた方がイイと個人的には考えてもいる。


 しかしおそらく、そーなると「日本スゴい!」の右傾化だ! なぞという反対運動が起きそうではある(笑)。いや、『平家物語』や『忠臣蔵』などは負けて滅びていく物語なのだから「日本スゴい!」とは真逆であろう。


 そうなると、「あー云えばこー云う」で、今度は「滅びの美学が危険だ」なぞと云われそうでもある。しかし、「ドーして独裁化して、ドコが反発されて、ドコで反逆の流れが起きて、ドコで没落していったのか?」などといった「旧・日本軍」や「戦前の日本」的な「失敗の本質」の研究といった冷徹な意味でも、『平家物語』などはもう少し一般化されてもイイ。


 時には「平家」主体で、時には「源氏」主体で――後者は源義経を主役として描いた『義経記(ぎけいき)』など――、対立する2大陣営を善悪二元論ではなく、それぞれの主観的な視点や立場から描いた文化多元主義は、実は日本の中世においてもすでに両立が達成されており……(掲載媒体の制限字数の都合で、以下略・笑)。
平家物語 アニメーションガイド

CONTINUE Vol.76
わたしたちが描いたアニメーション「平家物語」
(了)
(初出・オールジャンル同人誌『SHOUT!』VOL.82(22年5月8日発行))


『アンゴルモア 元寇合戦記』

(2018年夏アニメ)
(2018年8月2日脱稿)


 鎌倉幕府御家人(ごけにん)崩れの不穏で不敵な主人公武士が、罪人たちとともに流刑(るけい)にあった先。そこは蒙古(もうこ=モンゴル)襲来目前で、前哨戦の地ともなった対馬(つしま)であった!


 かの地への海路、荒波に揉まれて泣き言を吐いた流人(るにん=流刑に処せられた罪人)の言を聞いて、それに情をかけて縄をほどいてやった甘っちょろいお役人さまの図にて本作は開幕する。


 情けはヒトのためならず! 隙を突いてそのお役人さまを殺害してしまう悪辣な罪人たち!!
 しかし、トーナメント演出! その罪人らよりもはるかに上回る高い戦闘力の持ち主だとして主人公を描いてみせた序盤で、彼のキャラを立ててみせているあたりで、導入部からしてカッコいいのだ!!


 しかも、その彼の流派とは「義経流(ぎけいりゅう)」。そんな流派が実在していたかは怪しいけど、読んで字のごとく、かの鎌倉幕府初代将軍・源頼朝(みなもとのよりとも)の弟にして夭折(ようせつ)の天才武将・義経(よしつね)の武術・兵法といったイミなので、何やら強そうではないか!?(笑)


 世はお公家さん主導の「国司・郡司の律令体制」から、鎌倉武士主導の「守護・地頭体制」へと移行して100年弱。対馬の老地頭やその郎党らは「やぁやぁ、我こそは!」を地で行く源平合戦のむかしのような老害ともなっており、軍議でも元寇襲来のウワサをナメてかかって、むかしの武勇談に花を咲かせている。


 対するに、本作のメインヒロインたる、老地頭の娘でもあり麗(うるわ)しくても気高そうなお嬢さまは、#1では老父とは真逆で、大軍の蒙古が高麗(こうらい=朝鮮)を出港したという情報に対して、内心では「過剰評価」でも「過小評価」でもない「正当評価」としての意味合いで正しく警戒もしている。


 そして、この対馬を守るために、外ヅラとしては実に高飛車・横柄(おうへい)にもふるまって、流人どもに対しても「座して死を待つのか!? 戦さで手柄を立てるのか!?」と迫って、戦さに備えてその陣に加えんとする!


 この気高きお嬢さまキャラについては、今は昔の『新機動戦記ガンダムW(ウイング)』(95年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19990805/p1)や『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』(15年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20191105/p1)などに登場した、天性の物怖じしない気高き王女さまキャラたちのことを、筆者のようなキモオタなどはつい想起もしてしまう(笑)。


 しかし本作のそれは、実は「演技」であって内心ではブルっている……としても描くのだ! #2においては、主人公を対馬や自身につなぎとめんと背伸びをして色仕掛けまでしてくるも、それが一枚上手(うわて)の相手(主人公武者)に対しては見透かされてしまって空転している描写などで「ギャップ萌え」をも喚起している(笑)。


 対馬での出来事とはまた別に、当時の一応の政治・軍事の中心でもある本家の鎌倉方も決して無策ではない。すでにかの地に物見(ものみ=スパイ)なども入っている。流人といえども主人公の剛毅(ごうき)さ&統帥(とうすい)の才を見込んで、「7日、持たせろ……」などと増援を約して、海の彼方の本土へと去っていく侍なども登場させることで、舞台背景も狭くはないのだ。


 そして、はじまる蒙古との戦い。


 スポーツや交渉事などとも同様に、物理的な戦力の優劣こそが勝敗の基本ではある。しかし、細部や局面においてはたしかに個人や現場のリーダーの才覚・覇気・勢い、人格力・カリスマ性、たとえ論理的には同じことを演説して鼓舞したのだとしても、声の大きさ・野太さ・スルドさ・頼もしさ、弁舌の勢いや抑揚! といったものでも、人々の動き方の勢いといったものは変わってくるものなのだ。
 それによって、相手を気圧(けお)することができて敵の怯(ひる)みをも生んで、局地戦での勝利や、戦場での潮目の変化をもたらすことにもなっていく。
 しかして、戦場の中を推し進みすぎてしまってもイケナイのだ。戦場での縦深があまりに行き過ぎて戦線が伸びきってしまうと補給・援軍・密度には乏しくなってしまう。かえって、位置的にも敵兵にも囲まれてしまう情勢となってしまうことで、相対的にも不利になる新たな潮目の変化も訪れてしまうのだ。


 そういったことを「空気」や「ハダ感覚」という名の「高速論理演算」にて瞬時に察知して、小さな勝利を勝ち取ったところでの成功体験にとどめて、適度なところで撤退してみせることで、そこまでの戦いを一応の「勝ち」として、次の戦闘に備えて鋭気を養っておくこともまた肝要なのであった。


――云うは易(やす)く、行なうは難(かた)し。切れ味のよい活舌・弁舌や、危機に際してパニくらないで物事を決断してみせる胆力に、勇猛果敢なファイティング・スピリッツとは最も縁遠い、筆者のような弱者男子であるオタクが「どのクチで云うのか?」といった話でもあるけれど(笑)――



 鎌倉中期の若き8代執権・北条時宗(ほうじょう・ときむね)or日蓮聖人を材とした歴代の作品群では、物語のヤマ場としても描かれる2度の蒙古襲来。


 その緒戦(しょせん)として、対馬壱岐(いき)といった島嶼(とうしょ)にも、蒙古軍&朝鮮・韓国のご先祖さまである高麗の軍が襲来しており、島民はほぼ皆殺しという大虐殺が繰り広げられていたことは、歴オタ(歴史オタク)の皆さまであればご存じのとおりなのだ。そんな逸話を知る身からすれば、7日後の増援でもますます無理ゲー(ム)で、先行きには絶望感しかないのだけど(汗)。



 映像表現面では「デジタル様さま」で終始、和紙のムラのようなモノやその紋様などもごくウスく画面にオーバーラップさせつづけることで、ある種の風情も醸せてはいる。しかし、その和紙の文様はカメラのヨコ移動などには追随していかないあたりで、少々の違和感もある(笑)。


 現代に至るまでも


「ムクリ(蒙古)、コクリ(高句麗)、鬼が来る」


といった、子供をたしなめる際の慣用句が一部の地方では残っているほどの、対馬におけるジェノサイド(大虐殺)。生き残った女たちは手のひらに穴を穿(うが)たれ、そこに通した縄にて数珠(ずじゅ)つなぎにされて、船の側面に吊され「人間の盾(たて)」とされることとなった。生き残った子供たちは奴隷として蒙古こと元朝に上納もされていた――日蓮聖人は古代の百済(くだら)の時代の故事の前例から、これらの残虐行為自体は高麗軍の方の仕業だったと断定していた(汗)――。


 ググってネタバレしない程度に、本作についてのWikipediaを斜め読みしてみた。すると、教科書にも出てくる、鎌倉時代の直前の平安時代における「刀伊の入寇(といのにゅうこう)」ネタまであった!


――平安時代の当時も、新羅(しらぎ)・高麗・女真(のちの金や清帝国)の海賊が日本に襲来していたのだ。日本も後年の倭寇などで決して無罪ではないのだが、そういうこともあったのだ(汗)。さらに古い時代の史料にあたってみると、どうも弥生時代のむかしから(!)モラルには欠けていたようである善良なる日韓の庶民たちは(笑)、不作や飢饉などになると中央政府の指示などはナシで、タフで逞しいことに座して死を待たずに互いに泥棒・略奪・殺戮し合ってきたようである(爆)。……エッ? 日韓にかぎらない!? 世界中のドコでも隣国や隣村との歴史や関係性なんてそんなモノだって!?――


 こういったあたりも、本作ではドコまで映像化ができるのか?


 筆者も好事家かつ人間が下世話にできている。よって、近隣諸国ではイザ知らず、日本の子供向けの教科書には残虐すぎるゆえに掲載はしにくい、あるいは敗戦国特有の周辺諸国への過剰な忖度(笑)もあってか言説化・映像化がしづらい、こーいう二重にネジくれたかたちで半ばタブー視されてきた歴史秘話については、不謹慎にも怖いモノ・残酷なモノ見たさもあって心惹かれてしまうのであった。


 そして、たとえそれ自体が歴史の大局においては些事ではあったとしても、二重三重にモツれた糸玉やゴルディアスの結び目をシンボウ強く解きほぐしていき、もろもろの「結ばれ方」を理解・ナットクしてみたくなってしまうのだ。


 元寇が襲来した対馬における、夜の山陰に隠れるも赤ん坊の泣き声で村人ごと発見されて全員が殺戮! 赤ん坊まで股裂きにされたなどの故事も描かれるのであろうか?(汗)


 別に旧・日本軍だけに特有ではなくって(?)、古今東西の戦時ではなくても、平時でも常に一定数(相当数?)は存在してしまう、軍事作戦の域を超えたかたちにて残虐行為に走れてしまうような、人格が品性下劣で他人に対する共感性にも乏しくて粗暴にできている一部の輩の存在(汗)。


 あるいは、泣き声で敵兵に見つけられないように泣く泣く赤ん坊の首を絞めたり、口をふさいで窒息死させてしまった母親の話など……。


 良し悪しや割り切ることができるのか!? といった話もまた別として、対馬にかぎらず先の大戦での沖縄での集団自決だけにはとどまらない、サンデル教授の「白熱教室」における、ひとりの命を救うのか!? 多数の命を救うために少数には犠牲になってもらうのか!?
 いわゆる「(暴走)トロッコ問題」と呼ばれる議論ばりに、瞬時に直観的に村人(多数)と赤ん坊(少数)の命を天秤にかけた末での母親の究極の苦渋の選択に対して――たとえそれが殺人であったとしても!――、後世の価値観における安全圏からの「後出しジャンケン」での全否定などは筆者はしたくない――もちろん、全肯定などもしないけど(汗)――。



 同様に、それが現代日本における民族差別・在日差別を誘発し、日本の排他的ナショナリズムに加担する一面があるからといって、750年もむかしの史実に対してさえも、微塵たりとも言及することすら許さない、あるいは「自粛」や「忖度」(笑)を強要しかねない良識派人権派・リベラルな向きに対しても、疑問を禁じえない。


 もちろん、彼らの「忖度」行為にも一理程度はあるのだ。しかし、物事を要素要素に微分化・細分化して、


●Aという要素は是
●Bという要素は非
●Cという要素には一長一短・善悪両面
●Dという要素は評者個人に知識・素養といった判断材料がないので、判断もできない


なぞとパターン分けして選り分けて考えることができずに、「赤勝て白勝て、巨人か阪神か」レベルの全肯定か全否定、「右」か「左」かのレッテル貼りだけをする輩は、失礼ながら筆者には、近代的・合理的な思考ができない未開の土人や原始人だとしか思えない(汗)。


 不倫やガールズバー通いをしていたことが発覚しても(笑)、敵対陣営の政治家に対してとは異なりダブルスタンダードでコレを擁護して恬として恥じない輩も同様なのである。もちろん、不倫やガールズバー通いなどは殺人強盗ほどの罪ではないので、むろん肯定はできないものの全否定などはしなくてもイイ。


 しかし、「不倫や援交まがいのことは肯定できないものの、彼女や彼の政治的スタンスにはまぁ同意なので、勘案の末に苦渋を飲んで、そこには反対するし肯定はしないけど、その政治主張の部分についてだけは賛同・応援していきたい!」、「これは特定の国家や民族といった生まれつきの属性それ自体への差別を正当化するものではさらさらない! しかし、ことこの局面における事象については批判されるべきである!」などといったように、瞬時にデリケートに腑分け・分解して物事を語ってくれれはイイのである。


 けれど、そこを未分化なままでモヤモヤとさせて忖度して一応は隠しきれたつもりになって語るから、日本人は総体としては愚劣なバカになってしまって、より高い次の精神的・思想的なステージ・境地へと昇っていかれないのだ! ……エッ? 欧米でも同様になっているって?(笑)


 そして、かえって彼らの複雑系での是々非々ではない、善悪二元論的でムリやりな擁護の態度に、矛盾・党派性・ダブルスタンダードを感じてしまって、不信・反発をいだかれることで、皮肉にもいわゆる「右傾化」なるモノもますます拍車がかかっていく。要はザル頭のいわゆる左派の側にも問題点&原因があったのだ(爆)。


 おそらく、そんな外野からの下馬評や議論とも無縁ではいられないであろう(?)本作ではある。しかし、もちろんそんなところは無視してもイイ。基本的には、アクション・サバイバル・ショッキング・オトコ気を見せることが主眼の良質なエンタメ作品として仕上がっていることは強調しておきたい。


 そのテーマ的なスパイスについては、浅くてウス味では面白くもないし、ヤリ過ぎで踏み越えてしまっても、ともに弛緩(しかん)してしまってダメなのである。


 寸止めのところでの臨界点、つまりはクレーターの狭いフチの上に爪先立ちで緊張感を持って屹立してみせる。
 そして、そこから内外を広く遠く見渡してみせるような、極限状況下での人間の愚かさ・おぞましさ・残酷さと同時に際立ってもくる、そんな中でも悪事や暴力にも染まらずに、しかして過度に気張らずに正しく気高くあらんとする姿!


 しかして、小さな悪事や殺傷行為は必要悪として犯してしまったとしても、苦渋・罪悪感・鎮魂の痛みとともにサバイブしてみせることのビター(苦味)さ! といったものまで同時に描くこともできれば、作品としての勝算も出てくるとは思うのだ。
【Amazon.co.jp限定】アンゴルモア元寇合戦記 DVD BOX 上巻(早期予約特典:スペシャル座談会CD(出演:小野友樹(朽井迅三郎 役)他予定)付)&(全巻購入特典:アニメ描き下ろしイラスト使用BOX in BOX引換シリアルコード付)

(了)
(初出・オールジャンル同人誌『SHOUT!』VOL.72(18年8月11日発行))


戦国BASARA(バサラ)』~『学園BASARA』

(2009年春・2010年夏・2014年夏・2018年秋アニメ)
(2018年12月13日脱稿)


●バイクのマフラー(!)が側面に付いた愛馬に乗りながら「Are you ready?(アー・ユー・レディ?)」と英語まじりのセリフをホザきつつ、五指に3本、両手に6本もの日本刀(笑)を振るってみせる、青いヨロイのキザなイケメン青年の独眼竜・伊達政宗(だて・まさむね)!


●史実を無視してこの独眼竜のライバルとして設定された、赤いヨロイでヤリをふるうイケメン青年の真田幸村(さなだ・ゆきむら)!


●幸村の親方さまについては、父・真田昌幸(さなだ・まさゆき)のことをスッ飛ばして、コレはさすがにイケメンではなく恰幅のイイ父性キャラとして描かれてもいる武田信玄(たけだ・しんげん)!


 この幸村&信玄は臣下の関係であったというのに、互いにホンネの意見をブツけあえる親愛の情の表現として終始、少年マンガのように拳骨で殴り合った果てに豪快に笑いあう!(笑)



●信玄の永遠のライバル・上杉謙信(うえすぎ・けんしん)は、もちろん俗説に則(のっと)って低音ハスキーボイスな僧形の男装美女!


●もともと史実ではない「真田十勇士」からも、猿飛佐助(さるとび・さすけ)がクールな長身イケメンに改変されて登場!


徳川家康配下で、近年の大河ドラマでも藤岡弘高嶋政宏が演じていた、戦国最強とも称される武将・本多忠勝(ほんだ・ただかつ)は、カタパルトから発進して空を飛ぶ巨大ロボット(笑)で回転ドリル型のヤリが武器!


●ほとんど赤道直下の南国として描写された薩摩で、戦国時代ならぬ神話の時代のクマソタケルがごとき薩摩隼人(さつま・はやと)な南蛮の蛮族としても描かれる、九州を制覇した島津義弘(しまづ・よしひろ)!


●隻眼(せきがん=片目)の海賊にしか見えない、南国の土佐からはじまり四国を制覇したイケメン若造武将・長曾我部元親(ちょうそかべ・もとちか)!


●ソーラーシステム(笑)で戦場を焼き払って、山陽山陰を制したコレまたクールなイケメン・毛利元就(もうり・もとなり)!



 アニメ第1作(09年)での主敵は、次第に第六天魔王織田信長(おだ・のぶなが)へと収束して、戦国武将が共闘してコレに立ち向かう!


 第2作(10年)での主敵は、史実ではおサルさんに似ていても明るくおしゃべりな小男であった豊臣秀吉(とよとみ・ひでよし)が、『北斗の拳』の宿敵・ラオウのような寡黙な巨漢で、もはや本作における主要な武器であった「刀剣」ですらなく「拳骨」が武器(笑)。


 第3作(14年)でのラスボスは、秀吉亡きあとの配下のイケメン青年・石田三成(いしだ・みつなり)!



 史実どころか、活躍年代さえ数十年程度を無視して(笑)、同時代に共演できるハズもなかった戦国オールスターたちが大集合! 『寛永御前試合』で『アベンジャーズ』で『ジャスティス・リーグ』で『ウルトラ銀河伝説』で『スーパーヒーロー大戦』で『プリキュア オールスターズ』な強者集結のカタルシスをもたらしてくれたのが、本作『学園BASARA(バサラ)』(18年)の原典でもある『戦国BASARA』であったのだけど……。


 リアルでの「関ヶ原の戦い」ももちろん日本の各地域を制覇した戦国大名オールスターの大結集の頂上決戦ではあったものの、それらを材にしたフィクションにも顔を出してくる「歴史修正主義」の台頭を憂うのだ!?(笑)



 ……冗談はともかく、


●十字軍やトルコ帝国台頭の歴史的な評価が、キリスト教圏とイスラム教圏とで一致するワケもない。
モンゴル帝国の評価が、モンゴルと侵略された中露欧とで合致するワケもない。
古代ギリシャペルシャ戦争の評価が、西欧とイランで一致するワケもないのだ。


 そうである以上は、EUや日中韓などもムリに域内の歴史観を統一などさせずに、互いに異なったままで、どの歴史観も正しくてかつ同時に間違ってもおり、よって併存させる! といった方策が一番クレバーなのではなかろうか!?



 そもそも、ドコの国家や民間団体であろうとも国定教科書的な「歴史観」などを定めるべきではない!――韓国は昨年2017年から国定教科書になってしまったが、大丈夫なのであろうか?(汗)――
 「歴史観」なぞは、お国なりドコぞの民間の団体や在野であろうが学者などにキメてもらうようなものではない。個々人の読書体験から来る美学・哲学などでもあって、各個人ごとに構築して持てばイイものなのである。そして、あまたの異説も「言論の自由」や「試行錯誤の許容」として愚劣なモノも含めて流通させるべきであろう。


 「言説発表の禁止」や「言論媒体の廃刊」などはもっての他である。たとえ不毛であっても、あくまでも言論での応酬にとどめて、互いに支持者を募り合って、そして少数派になった方に対しても退場や首チョンパ切腹に社会的な抹殺などのトドメを刺してみせる必要などもナイのだ。


 ……といった態度を採ってみせるのが、真の意味での字義どおりの「リベラル」であって、


「私はあなたの意見には反対だ。だが、あなたがそれを主張する権利は命をかけて守る」


と云ったフランス革命前夜の啓蒙主義の時代に活躍したフランスの作家・ヴォルテールの発言はドコへやら!? 近年ではナゼだかまったく忘れ去られてしまっている――実際には当人の発言ではなく、20世紀に入ってからの伝記が初出の発言であったそうだけど(笑)――


 「敵対言説」や「歴史観」をたとえタテマエではあっても最低限の尊重すらせずに、いきなりハナから言論封殺したがる昨今の日本や世界の風潮は実に嘆かわしい! 哲学者のニーチェ風に云うと、仮に「事実」はひとつであってそれを正確に認定ができたとしても、それに対する「解釈」は多様なのだ! いかに珍妙で愚劣な意見に思えたとしても、広義ではなく狭義での明らかな殺人教唆や暴力教唆でもなければ自由であるべきだし、あとはせいぜいが支持者の多寡を競い合うだけでイイのだ!


 ……といった議論は、おバカな本作にはなじまないのであった(笑)。



 CG技術の進歩で、数千数万の歩兵を見事に映像化! 「一騎当千」かつ「切った、張った」が「文学的表現」なぞではなく文字通りに映像化されて、太刀(たち)の一振りで数十・数百人もが突風に巻かれたように吹っ飛んでいく!(笑)


 このインチキ・アクションの爽快さのみならず、半分笑っちゃうけど半分はカッコいい、各自がその戦う動機をワザワザ口に出して暑苦しく絶叫しながら刀剣を交えて、しかしてその勝敗は「時の運」でもある「恨みっこナシ」! そして、巨悪に対しては遠回しでのツンデレな友情込みにて共闘してみせるといった群像劇!!


 同じくゲーム原作の深夜アニメ『艦隊これくしょん -艦これ-』(15年)・『刀剣乱舞』(16年)・『千銃士』(18年)だのは、敵味方のメリハリ、最後には爽快感をもたらすための「娯楽活劇」としての本作の作劇術を見習ってほしいものである――各キャラクターが戦っていることの動機付けの部分と、物理法則を無視したアクション演出の部分などで――。



 よって、本作の原典でもあるTVアニメ版『戦国BASARA』については私的には高く評価しているのだ。


 しかし……。21世紀の野郎オタにとっては、イケメンの男性キャラばかりの本作はハナから対象外であって、女性オタクだけが騒いでいたのであったとサ(笑)。



 そんな傑作シリーズの新作が、装いを新たに現代を舞台とした「学園パロディ」に姿を変えて登場した! と思いきや……。制作会社や製作委員会の延命や息継ぎのためとおぼしき、単なる安っぽいグダグダな低作画作品に成り果ててしまうとは……。


 コレはコレで、もう少しだけ予算&手間をかけていれば、B級なりに観られる作品にはなったとも思うのだけど。
戦国BASARA

戦国BASARA弐
戦国BASARA Judge End
学園BASARA
(了)
(初出・オールジャンル同人誌『SHOUT!』VOL.73(18年12月29日発行))


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うる星やつら・つぐもも・小林さんちのメイドラゴン・よふかしのうた ~異界から来た美少女キャラとの同居ラブコメにも今昔!(非日常・異能よりも日常性が強調・好まれる傾向)

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 リメイク深夜アニメ『うる星(せい)やつら』が来冬からのシリーズ後半2期(24年)の放映を控えて、1期(22年)の傑作選が放映記念! とカコつけて……。陸海空から異界・異能の美少女キャラがやってきて同居生活をはじめる、深夜アニメ『うる星やつら』1期(22年)・『つぐもも』1期(17年)・『小林さんちのメイドラゴン』1期(17年)・『よふかしのうた』(22年)評をアップ!


うる星やつら』1期・『つぐもも』1期・『小林さんちのメイドラゴン』1期・『よふかしのうた』 ~異界から来た美少女キャラとの同居ラブコメにも今昔!(非日常・異能よりも日常性が強調・好まれる傾向)

(文・T.SATO)

『うる星(せい)やつら』

(2022年秋~2023年冬アニメ)
(2022年12月25日脱稿)


 空から人外の美少女キャラが降ってきて、冴えない男子高校生と同居することになる、今日的な美少女アニメ・ハーレムアニメ・ラブコメの原点といった大人気マンガにして高視聴率の大人気アニメでもあった作品が、35年の歳月を経て再アニメ化された作品。


 ロートルな筆者なぞも小学生時分に同作の原作マンガ連載開始には遭遇しており、当時は原オタクではなくとも同世代の皆が本作には革命的な衝撃を受けてハマっていたものだ。
 云ってみれば、1955~1960年前後生まれのアニメ・怪獣特撮・マンガで育ったライトSF的な感性を持ったオタク第1世代が初めて作り手側に回って放ってみせた、我々とも近しい空気・文化を享受してきた世代による、我々の世代向けの作品がついにココにて誕生したのだ! といった感慨を子供心にも受けたのであった――オタクという語句はまだ存在しなかった時代だけど――。


 リメイクにあたっては、時代設定を現代に置き換えてもイイはずである。なのだけど、本作ではあえて原作マンガが連載開始された1978年をモデルとしたのだろう。風景や家屋や高校生たちの制服や私服などは、筆者のようなロートルにとっては見覚えがある、いかにも70年代末期的なモノともなっている。


――子供部屋や居間の押入れや出入り口などがドアではなくフスマ! 家具が少ない! 主人公男子高校生の自室の壁には観光地のお土産のむかしの定番であった細長い二等辺三角形のかたちをした三角旗が貼ってある! 女子の体操着がブルマ! 制服スカートもヒザ下まであって丈が長い! ……授業参観に母親たちが和装で参加しているあたりは、石森章太郎原作の東映特撮『好き!すき!! 魔女先生』(71年)などの70年代初頭であればともかく、70年代末期にはもうなかった事例だとは思うけど、それもまた懐古趣味的な確信犯なのであろう(笑)――


 今のユニクロにつながる中国での縫製による安価で多彩な若者向けの服飾の元祖や、男性でも美容院に行くようになったのは80年代中盤以降のことである。なので、この70年代末期の若者たちは皆が似たようなシャツとGパンを着用していることで、ルックス面でも性格類型が過度に可視化、カーストも拡大化されることがなかった古き良き時代の空気を懐かしくも思い出す(笑)。


 それはさておき、「あなたにオススメです」的に上がってくるオタク向けニュースもまた、サイレントマジョリティーならぬノイジーマイノリティーの意見であるやもしれない。よって、オタク全体におけるその意見比率については軽々には判断ができない。つまり、そのままで受け取るべきではない。
 しかし、本リメイク放映開始当初には、「本作の主人公男子高校生・諸星あたるに対して、若いオタクたちから非難囂々の嵐!」といった記事をよく見掛けたものだ。


 そう、たしかに本作は美少女ハーレムアニメの元祖ではある。しかし、35~45年という歳月の隔たりは実に大きい。後年のオタク向け美少女アニメの主人公少年はメインターゲットに合わせて、もっと受動的で内向的で繊細ナイーブであったり、自分で告白する胆力はないし、そういった積極的な行動にはリアリティーや身近さを感じられないので、女子の方から告白されたがっていたり、そのことで胸キュン感情を惹起されたかったり、対外的にはともかくアタマの中では言葉が渦巻いているモノローグ少年であったりもする。
 つまり、アクティブでケーハクで浮気性でナンパもやすやすとコナしている諸星あたるとは真逆の性格なのでもあった(笑)。


 この作品はそーいったモノなのだと割り切って楽しむことも可能だとは思うものの、そこがネックにはなってしまうのやもしれない。とはいえ、だからといって諸星あたるの性格設定を変えてしまっては、もう『うる星(せい)やつら』ではなくなってしまうので、それもムリだけど(笑)。


 筆者個人は我々のような高齢世代のオタに一定数は存在しているようなガチの『うる星』マニアなどではない。原作マンガや往時のTVアニメを幾度も繰り返して再鑑賞したような熱心な研究家タイプの『うる星』オタでもない。
 よって、マンガにはないアニメオリジナルの展開や点描をキラっていたタイプでもない。押井守カントクが増幅していた同級生キャラ・メガネやオリジナル編は評価もしている。押井守は後年の作品群よりもTVの『うる星』時代が頂点であったと思っているくらいだ(笑)。


 コレは今のような審美眼はなかった中高生時代の感慨に基づいた思い出補正であり、いま観返してみれば現在進行形での生命力は往時のTVアニメ版にもナイのやもしれない。しかし、破裂的でハチャメチャな勢いといったものにはやはり欠如しているとは感じてしまう。


 客観的に見れば、特に拙(つたな)いところもなく、同季の深夜アニメの中では充分に水準以上の作品だとは思うのものの。
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(了)
(初出・オールジャンル同人誌『SHOUT!』VOL.84(22年12月30日発行))


つぐもも』1期

(2017年春アニメ)
(2017年4月27日脱稿)


 今では40年もの伝統がある、空から異界の美少女が降ってきて平凡な少年と同居するパターンのバリエーション作品でもある。


――このジャンルのことを端的にネタ的にも指し示すものとして「落ちもの」といったジャンル名(笑)まで21世紀には出現。それを受けてのメタ的なタイトルの美少女キャラ作品としては、角川書店系のマンガ作品『そらのおとしもの』(07年。09・10年に深夜アニメ化)といった作品も登場している。ただまぁ、筆者個人は前掲の作品については評価してはいませんけど(汗)――


 本作においては、少年の亡き母の着物のオビが、歳月を経て魂を生じていわゆるアニミズム的な付喪神(つくもがみ)となって、それがヒト型の水色髪で白和装姿の美少女ヒロインに昇華しているといった設定である――耳のかたちはなぜかトガったエルフ(妖精)耳だけど(笑)――。彼女はいわゆる「戦闘美少女」でもあり、この少年を守らんがために妖怪と戦うのであった!


 #1は非常に見やすくて基本設定もわかりやすい。ジャンル作品のお約束で「質量保存の法則」を無視して超長大に伸びていくオビを武器として無数に繰り出して、主人公少年を守るために「黒髪のカツラ」(笑)の妖怪と戦ってみせる、迫力ある超高速バトルもイイ感じではあった。起承転結・勧善懲悪のメリハリも強くてプレーンな作りだとも思うのだ。


 しかし、この作品の罪ではナイのだけど、各話単位の脚本&演出にも拙さはナイのだけれども、個別単独の作品としてのクオリティとはまた別に、ひょっとしてひょっとすると、ドコとなく少しだけそのプレーンさが今となっては少々古クサいかもしれない?(汗)


 古クサいと思ってしまうことの原因はナニなのであろうか? この付喪神ヒロインの造形が今となってはやや単調で、いわゆる「戦闘美少女」属性の方に寄り気味だからであろうか?
 今どきの美少女アニメにおける、異能的な非日常要素などはなくても、ただの「人間」としてのヒロインとのやりとり・交際・会話などに伴なう繊細デリケートな表情・仕草・言動などをフェティッシュに追いかけて、「萌え」的に執着してみせるような、それだけでも「間」が持ってしまうような作劇的な「視線」や「演出」が欠如気味だからであろうか?


 常々オタク系や萌え系のいわゆる「落ちもの」美少女ジャンルは年々歳々クセが強くなっていっており、それが「進歩」であるのか間口の狭い「袋小路化」であるのかがビミョーだとは思ってきたものだ。
 しかし、いざ本作のようにプレーン(平明)でオーソドックスで先祖返りしたかのような作品が登場してしまうと、フツーに楽しめつつも少々物足りなくも感じてしまうとは……。我ながら身勝手ではあるし、筆者もそーとーにこのテのジャンルの長年にわたる変化に染まって、そこを基準に考えてしまうように毒されていたようでもある(笑)。


 主演の男子中学生役はテロップを見ると三瓶由布子(さんぺい・ゆうこ)。近年だと児童向けTVアニメ『団地ともお』(13年)の1970~80年代っぽい少年主人公や、少女マンガ原作の(ひとり)ボッチ深夜アニメ『君に届け』(09年・11年)のレギュラーキャラであり沢城みゆき(さわしろ・みゆき)嬢とのギャルコンビが個人的には印象に残っている。両役ともに本作の主人公少年とも同様に、低音ハスキーな感じではあった。
 もう10年も前の女児向けアニメ『Yes! プリキュア5(ファイブ)』(07年)主演にて披露していた、元気だけれども甘~い高音の美少女声が個人的にはスキだっただけに残念なのだけど(笑)。地声に近いのは本作のような少年声の方だったようで、あのプリキュアはけっこう作っていた声であったようだ……。
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(了)
(初出・オールジャンル同人誌『SHOUT!』VOL.69(17年5月4日発行))


小林さんちのメイドラゴン』1期

(2017年冬アニメ)
(2017年2月21日脱稿)


 「メイド」+「ドラゴン」。西洋ファンタジー風ドラゴンがふだんは金髪ツインテールのかわいい美少女メイドに変身しているから「メイドラゴン」というタイトルである(笑)。ダジャレの出オチ的な発想から構築されたとおぼしき作品だ。


 弱者男子にとっての都合のイイ、アリがちな弱者女子・天真爛漫ハクチ女子モノなのであろうと思いきや……。


 我々キオオタにとっては縁遠い、メンドくさい出会いやら声掛けナンパやら、論理的・実務的ではない戯(たわむ)れの言葉遊び的な無内容な会話(汗)で女性を楽しませつつ、そういったことの積み重ねでの交流・交情の深まりといった進展の描写を省いてくれて(笑)、そもそもの最初からすでに出会ってもいる「妹」や「幼馴染」であったり、職業的にも無条件で尽くしてもくれる「メイド」モノといったジャンルの一環作品なのであろうネ? あ~、ハイハイ。そのテは見切ったヨ! と思いきや……。


 ナンと! そもそもの居候先が10代の男子高校生のお部屋などではなかった!


 居候先のご主人さまはメガネをかけており、化粧っ気もなくって(多分)、「媚びへつらい」や「愛想笑い」などとは無縁な不愛想な表情で、「スカート」ではなく「グレーのスーツズボン」をはいている、明らかに女子力には欠けていそうな(汗)、スレンダーな冷めた20代の女子である!


 いわゆる暗黙裡に「女子力」や「コミュ力」を要求されそうな営業職とか総合職とかではない、職業はIT屋さんであるらしき一人暮らしのOL・小林さん(笑)なる社会人女性なのだ。


 その彼女宅に「ドラゴンの恩返し」(笑)とばかりに美少女メイドが転がり込んできて、同居生活を開始するという作品なのであった。


 ……って、誰得(だれ・とく)の設定ですか!?


 たしかに、趣味活動に傾注したい女オタクたちも、自分に尽くしてくれて炊事・家事・洗濯までしてくれるパートナーを欲(ほっ)しているという話は聞くけれど(汗)――女子向けアニメ『少年メイド』(16年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20160502/p1)など!――。


 とはいえ、小林さんは明らかに「オンナを捨てている」といったタイプでもない。よって、


●往年の綾波レイ(あやなみ・れい)(『新世紀エヴァンゲリオン』(95年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20110827/p1))
長門有希(ながと・ゆき)(『涼宮ハルヒの憂鬱(すずみや・はるひのゆううつ)』(06年))
●最近の尾頭ヒロミ(びとう・ひろみ)(『シン・ゴジラ』(16年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20160824/p1))


 彼女らのような、控えめな「理系女(リケジョ)」タイプのそこはかとない抑えたイロ気というのか、「オバサン」や「媚び媚び系」には行かないけど、年齢が長じても完全消滅はしていかないウブで善良な「少女性」の残存! といった文脈で捉えることも……できるのかもしれない!?


 ……我ながら心にもないことを自動的に書いておりますけど(汗)。「尾頭ヒロミ萌え~」的な文脈で、小林さんを享受しているオタクはそうそういないと思われますし、筆者もそんな目線で彼女を見てはいません(笑)。


 ググってみると、本作のマンガ原作者センセイは、髪の毛を脱色してヤサグレ一歩手前にも見えるサバサバとした女性主人公による、メガネの駄目ンズなオタク男子との新婚生活を私小説風に描いていた5分アニメ『旦那が何を言っているかわからない件』(14年)と同じヒトでもあった。
 なるほど、初々しさはないけど性悪でもない、瞳も小さくて三白眼女子のイロ気や魅力といったものは、両作ともに共通して存在しているかも……ですかネ。まぁ、平均的なオタク男子たちが好みそうな女子像にはまったく見えないけれども(汗)。


 この小林女史のことはともかくとしても、絵柄的には女オタクにも目配せしている作品だともとうてい思えず(そうでもない? 今ではOK?)、野郎オタク向けのベタで安っすい美少女アニメにしか見えない。なのに制作スタジオは、近年はそのブランド力を活かして本格文芸志向に傾きつつあるようにも見える、天下のアニメ製作会社京都アニメーション


 いや、この作品自体に罪はナイのだけれども、天下の「京アニ」がこんな作品をアニメ化するだなんて……。
 ムリやりにムダに言葉遊び的に深読みする評論オタの一部には、本作にも「京アニ」らしさを見出すムキもいるのやもしれない――ご苦労さまです――。
 しかし、筆者はこの作品にいわゆる「京アニ」らしさは感じない。「京アニ」特有のリアルな背景美術や実写のアート邦画的な間・テンポ・カメラアングルなどの冴えやヒネリなどもなくって、ごくごくフツーのオタク向けテンプレ(ート=型にハマった)アニメにすぎないとも思うのだ。


 しかし、それが悪いというワケではない。こーいった空から美少女が降ってきて同居もしてくれるような、思春期・青年期の妄想を体現してくれるような作品こそが、我々のような中高年オタ向けではなく、本来の少年少女向け、もしくはオタク少年向けのアニメ・マンガの王道設定作品でもあるのだ……といったことも間違いではないからだ――まぁ、本作の場合は、そうとうにヒネりは入っているので、王道とは云いがたい作品ではあったものの――。


 けれども、序盤だけを観たかぎりでは、そのお約束・テンプレの範疇での、ベタなりの王道の力強さ・密度感・冴え・キレといったものは、少なくとも筆者個人には感じられず、ワリとルーティンで脱力したテンプレの段取り展開でしかなかったといった印象でもある。


 「京アニ」も企業ですから、会社を安定的に操業させていくためには、いつも常にホンキの作品ばかりを作らずに、作画カロリーも低そうで描線もシンプルな本作のようなイロモノ作品を挟むことにしたのであろうか!? ……なぞとゲスな勘繰りも入れつつ、それはそれでオトナとしての正しいビジネスの態度だナ、とも思うのだ。


 そう考えてみると、『甘城(あまぎ)ブリリアントパーク』(14年)や『無彩限(むさいげん)のファントム・ワールド』(16年)なども、作画カロリーはともかく内容的にはさして深みがあるものではなかったので――異論は受け付けます(汗)――、そーいうコトであったのかと独りごちる。「人はパンのみにて生きるにあらず」の逆なのであった(笑)。


 そんなワケで、ダメダメだということでは決してナイ。気楽に見られる水準作だろうとは思うのだ。しかし、毎季のことではあるけれど、あまたの深夜アニメをすべて観ることなどできようハズもナイのであって、あくまでもイス取りゲームで自身の好みに合ったその季の上位5~6作品だけを鑑賞している都合上、「ゴメンなさい」と多少のやましさを感じつつ、HDD(ハード・ディスク)レコーダーの予約リスト上から本作はご退場を願うのでありました(……本作をスキな方々にはゴメンなさい・汗)。
青空のラプソディ 【アニメ盤】

小林さんちのメイドラゴン 1 [Blu-ray]
(了)
(初出・オールジャンル同人誌『DEATH-VOLT』VOL.77(17年2月26日発行))


『よふかしのうた』

(2022年夏アニメ)
(2022年12月25日脱稿)


 眠れなくなってしまった14才の少年が深夜に団地から外出。郊外の住宅地や公園をさまよう。そこでやや年上で八重歯に不敵な笑みを浮かべた吸血鬼美少女に出会って……。


 中学・高校と進学するにつれて睡眠時間も減って、仕事もしていない学生のモラトリアム(猶予期間)で、夜間に自分の自由にできる時間もできるものだ。活動範囲も広がって、夜間にコンビニへ立ち読みや買いものへ行っても許される。


 あるいは、オモテの学校や家庭ではウマく生きられない人種のうちでも、行動的な陽キャであれば、夜の都心のストリートへと繰り出して出逢い・会話・遊びを楽しむ。
 我々のような陰キャであれば、人通りも少ない郊外の街灯に照らされた闇夜の世界にこそ、級友やご近所などによる値踏みもしてくる他人の目が少なくて蔑視の目線もないゆえに、劣等感をヒリヒリと抱かなくても済む「自由」(解放感)を感じていたりもする(笑)。


 むろん、それが真の意味での「自由」であるのかは怪しい。昼間との落差で「自由」であると相対的に感じているだけだったりもするものなので(汗)。


 本作の場合は、主人公少年は名作アニメ『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』(11年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20191103/p1)同様に引きこもり少年であったりする。
 そうなると、主人公の性格造形的にも一般の少年マンガ媒体ではなくオタ向け媒体出自なのかと思いきや……。「週刊少年サンデー」出自! 時代は変わったものである(汗)。


 といっても、イジメを受けたワケではない。女子からの告白を受けたのに、それがピンと来なくて断ったことで、女子連中からハブにされたことが原因なのであった(怖!)。


 アニメ化に際しての処置なのだろうが、郊外の闇夜の描写による異化作用がすばらしい。星空は黒でなく青くて星の数も多く、都心なのに天の川が緑色に輝いている。街灯で照らされた地面は黄色く染まっている。夜の湿気も感じられるような空気感も含めて、没入させてくれるのだ。


 もちろん、このテの作品はヒロインの魅惑的で個性的なルックスでも吸引力の大小は変わってくる。人物造形の作り込みまでウマくいけば、もうそれだけでどんな会話を仕掛けてきてどんなリアクションを返すのか? といったところまで規定されて、何気ない雑談の会話をいつまでも継続ができて、間を持たせることもできるのだ。


 本作の場合、アニメ化に際して七色の声を持つも彼女が演じているとはわかる中堅アイドル声優雨宮天(あまみや・そら)による、ダミ声も入ったベラんめぇ口調で少年のオボコさを試しつつカラかってもくるセリフ回しもそれらを増幅! この銀髪吸血鬼少女と少年のグダグダ素っ頓狂な会話と夜の雰囲気描写だけでも、序盤の2話が保ってしまっているのだ。


 吸血行為や吸血鬼美少女による少年の自室への勧誘、マッサージや添い寝業も営んでいる彼女主導による若い男女の接触描写は、思春期の少年少女にドギマギさせるためのツカミでもある――むろん、性行為には及ばないけど(笑)――。


 しかし、メインヒロインの吸血鬼美少女に弱点がなくてもツマらないからだろうが、余裕をカマして下ネタを連発しているワリには、実は恋バナ(恋話)には弱いのだと設定(笑)、時にテレたり赤面させることで「萌え度」も上げているのだ。


 2話のラストでは、サブヒロインも登場。髪の毛にクシを入れていない! といった風情でも、素の顔面偏差値は平均以上なのだろうとは思わせる、アンニュイ・気怠るげでローテンションではあっても、性格は良さげな制服女子中学生の地味女子も登場。
 やはり七色の声を持っているものの彼女が演じていたとはいつもわからない花守ゆみり(はなもり・ゆみり)が、引きこもりや(ひとり)ボッチになるほどではないけれども、クラスの中ではいかにも傍流そうな女子であり、かつ、学生時分から地味な主人公少年のことを少々心安くて好ましくも思っていたのだろうナといった風情を、やや低音のボイスで好演している。
 吸血鬼のメインヒロインとは対照的に、早起きして夜明け前には登校している(!)といった設定での接点を作って、作品世界の広がりも感じさせつつ、対比もウマくできている。


 この3人の関係性だけでもストーリーの継続が可能だよナ……と思いきや。若いオタクが2010年代の平成『仮面ライダー』作品を評していわく、各話ゲストの「お悩み相談室」パターンで、出版社に勤めている社会人2年目の黒髪メガネ女子が吸血少女宅に訪れてマッサージを受けながら、夢と現実の落差に疲弊して涙する6話の滋味!


 7話からは中堅アイドル声優戸松遥(とまつ・はるか)が演じる、高飛車な声もピッタリで援助交際なども平気でしていそうなギャル高生を筆頭に、


●黒スーツ姿の年増の赤髪姉御
●黒髪ロングの落ち着いたお姉さま
●黒髪ショートの上目使いで媚びてくる女子高生
●黒髪ロングの自称「ボク」女子


なども一挙にグループとして登場!(全員が吸血鬼・笑)


 美少女アニメ的なハーレム文法も導入されている。


 しかし、彼女らの主人公少年への迫り方はアザトさを前面に出している。しかも、その計算・打算・競争を彼女ら自身の内心の声で説明したり評し合ったりするあたりで、作者もなかなかの人物眼であり、女性の心理も見抜いている……と思ってググってみたら。


 エッ、あのおバカなギャグ作品にして駄菓子を素材に延々と珍妙な駄弁りをつづっていく、深夜アニメ化もされたヒット作『だがしかし』(14年。16・18年に深夜アニメ化)と同じマンガ家さんの作品だったの!? 引き出しの広さには恐れ入るのであった。
TV アニメ『よふかしのうた』オリジナル ・ サウンドトラック

(了)
(初出・オールジャンル同人誌『SHOUT!』VOL.84(22年12月30日発行))


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 2023年の夏季には特撮変身ヒーロー作品(における悪の組織)のパロディアニメ『怪人開発部の黒井津さん』(22年)が再放送中記念! とカコつけて……。『厨病激発(ちゅうぼう・けきはつ)ボーイ』(19年)・『ド級編隊エグゼロス』(20年)・『アクションヒロイン チアフルーツ』(17年)・『恋は世界征服のあとで』(22年)評をアップ!


『厨病激発ボーイ』・『ド級編隊エグゼロス』・『アクションヒロイン チアフルーツ』・『恋は世界征服のあとで』 ~スーパー戦隊&特撮ヒーロー・パロディの爛熟!



『厨病激発(ちゅうぼう・けきはつ)ボーイ』

(2019年秋アニメ)
(文・T.SATO)
(2019年12月15日脱稿)


 「厨病(ちゅうびょう)」の「厨」とは、「中二病」の「罵倒」的な意味での云い換えのネットスラング(俗語)で、ネット上の超巨大掲示板2ちゃんねるの草創期に誕生した用語だったと思う。次第に「罵倒」の意味ではなく明るい「自虐」や「自嘲」や「謙遜」の意味での使用がメジャーとなって、そのニュアンスも変えていった。この云い換えの歴史も20年近いものとなるのだ。



 男女共学高校の「ヒーロー部」(笑)の残念なイケメン男子たちの珍妙な活動に翻弄されて、勝手に「スーパー戦隊」のピンク扱いにされることになった、サメてはいてもフェミニンでゆるふわな茶髪で小柄な少女が主人公を務めている逆ハーレムアニメでもあった。


 といっても、イケメン男子たちはスカした男子クンたちではなく、特撮ヒーローものが大好きらしい精神年齢が幼稚園児な少年ばかりが登場している。なので、野郎が観てもイヤ~ンな感じはしないと思う。


 また、本作のような作品がスキな女子たちも、きっと思春期のモテ/非モテカーストの前では勝ち目がナイことを直感的に悟ったり、3次元世界でのちょいワル男子が怖くて甘ったるい男子の方がスキなので、虚構世界で擬似的恋愛の代償行為を得ようとするオボコい女子たちなのだろうとも憶測するのだ――バカにしているワケではないですよ――。


 筆者が散見してきた範疇でも、こーいう女子向け逆ハーレム作品の視点人物である少女主人公といったものは、女子向けの男性アイドル歌手アニメ『うたの☆プリンスさまっ♪』(11・13・15・16年)をはじめとして、不自然なまでに無色・無個性・フラット・無主張・プレーンな傾向があった。しかしそれゆえに、女性オタクが鑑賞するにあたって、主人公少女の存在が媚びた感じでハナにつく……といったあたりを脱臭することができている。
 主人公の存在が彼女ら女性視聴者にとっては邪魔にならずに、適度な塩梅での自分個人を投影させたかたちでの感情移入をさせるといったあたりが、劇中世界へのあくまでも媒介役としてはウマく機能させることができている……といったところなのだろう。


 しかし、そーいった確信犯的な作劇的意図(?)とは別に、こーいう地味子ちゃんな主人公もけっこう魅惑的である。我々のような野郎オタクたちがナゼにこういった番組にイナゴのように群がってきて毒牙にかけないのかが不思議なくらいだ(笑)。


 同列には論じられないけど、


●直前の夏季の深夜アニメ『荒ぶる季節の乙女どもよ。』(19年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210411/p1)に登場した、小説家志望の低血圧なボソボソと低音でしゃべる黒髪の地味子ちゃん
●戦車アニメ『ガールズ&パンツァー』(12年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190622/p1)の冷泉マコ(れいぜい・まこ)
●同季の秋アニメ『星合の空(ほしあいのそら)』(19年)の地味子ちゃん


 女性としての性的な魅力には欠けるやもしれない。しかし、低身長の黒髪もっさりヘアで、異性に媚びてはいなくて、声も可愛く作っていなくて、ローテンションかつ少々ブッキラボウには見えても、やっぱり弱そうで誠実そうな娘たちの系譜といったものは、ベストではなくてもベターとしてはイイとも思うのだけれどもなぁ(笑)。


 もちろん、そんなキャラへのフェティッシュな想いだけでも視聴継続を決意する決定打にはならない。よって、悪印象はないけれども、オサラバしてしまうのであった(汗)。


 ググってみると、本作はヒットした「ボーカロイド楽曲」――人工の声による楽曲ソフトを使ったアマチュア楽曲――が原作(14年)なのだそうで、それを基に小説化やマンガ化(共に16年)が進行していった企画だそうである。げに昨今のオタクジャンルの状況や出自は多様なのであった。
厨病激発ボーイ (りぼんマスコットコミックス)

(了)
(初出・オールジャンル同人誌『SHOUT!』VOL.76(19年12月28日発行))


『厨病激発ボーイ』

(金曜 22時30分 TOKYO-MX他)
(文・久保達也)
(2019年10月20日脱稿)


 第1話は転校してきた女子高生が「ヒーロー部」に所属する「中二病」の男子たちの奇行に振り回される内容である。今後、面白くなっていくのかどうかは現時点ではなんともビミョ~な印象である。その中二病男子たちの生態描写におもわず注目したから、かろうじて観つづけることができたといったところだ。


 黒板の前で自己紹介する茶髪ショートボブにヘアバンドをした転校生少女に対して、やたらと騒々しくて落ち着きのない主人公男子は「おまえはピンクだ!」と叫ぶ。当然ながら、転校生のみならずクラスの大半がその意味を理解できずにポカ~ンとしてしまう(笑)。


 フィクション作品のお約束で(笑)、例によって隣の席となった転校生の少女に、主人公男子が「オレはレッドだ!」と自己紹介したことで、視聴者は先述した「おまえはピンクだ!」の意味をやっと理解することになる。


 つまり、このレッドは「スーパー戦隊」をはじめとする特撮変身ヒーローが大好きな少年であり、すでに「ヒーロー部」にはイエロー・ブラック・パープルまでそろっていたことから、彼は転校生少女をピンクとしてスカウトしたのだ(笑)。


 ちなみに、レッドは小学生が体育の時間に頭に着用する、紅白がウラ表リバーシブル仕様の帽子のツバを頭頂部に立ててかぶっている。これは昭和の時代に小学生だった男子ならば特撮変身巨大ヒーロー・ウルトラマンたちやウルトラセブンなどのマネとして同じかぶり方をしたことがあった者は圧倒的な大多数だろう。


 ウルトラセブンの必殺技・アイスラッガーをマネして、その帽子を飛ばしていたヤツも定番であった。ウルトラマンはロクに観てはいなくても、いまどきの小学生でもそういったマネは定番であるとも聞く。


 そして、そんな描写こそが、レッド少年が重度のヒーロー好きであるどころか、いかにイタいヤツであるかを一目瞭然としてくれる小道具ともなるのだ。


 そして、転校生少女は右目に眼帯をしている。古くはSF巨大ロボットアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』(95年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20220306/p1)のヒロイン・綾波レイ(あやなみ・れい)の傷ついた姿、京都アニメ製作の大ヒットラブコメ中二病でも恋がしたい!』(12年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190904/p1)のヒロイン・小鳥遊六花(たかなし・りっか)などで、後者のような演技やポーズやセルフプロデュース、どころか本人の思い込みでその眼帯で自身の超能力が発露することを抑え込んでいる! といった展開になるのかと思いきや……


 レッド少年の方が、彼女の眼帯にはその右目に秘められた特殊能力が覚醒するまで、これを防御している機能があるのだと思いこむ!(笑)


 しかし…… 実は「ものもらい」を隠しているだけであった(爆)。



 ちなみに、レッドが使っている筆箱には、ボタンを押すと鉛筆やペンなどの収納部分が上部にせり上がってくる機能があった。


 これはオジサンである筆者が小学生だった1970年代後半に突如として登場して大ヒットした、可変部分も付いて遊べる玩具性(後年でいうプレイ・バリュー)も濃厚にあった筆箱商品でもあるのだ。
 上部にせり上がるどころか、筆箱の裏面にもフタがついていて、そちらにも鉛筆などが収納可能な二面筆箱。側面自体にもフタが付いている三面筆箱。上部側面にもフタが付いている四面筆箱。消しゴム収納部分も開閉フタがついている五面筆箱・六面筆箱などなど、ドンドンとエスカレートしていったものだ。


 しかし、子供は実に移り気。小学校中学年以上の児童間でもこういった変型筆箱は急に幼稚だとされる風潮がはじまって、シンプルな布製かつチャックの筆箱や金属製のカンペン筆箱の方がオシャレだとされるようにもなっていく(爆)。


 そんなロートル世代から見ると、このような筆箱が現在でもいまだに存在していたことにも驚いた!(笑) しかし、彼のような少年がこういう筆箱を好みそうだという意味では、彼のさらなる念押しのキャラ付けとしても、この小道具でさらに増強させてもいるのだ。



 そんなカラ騒ぎぶりでクラスでは浮いた印象のレッド少年とは異なり、金髪イケメンのイエロー相当の男子クンには男子の友人も大勢いるリア充であった――リアル=3次元世界で充実している人間のこと……って説明不要ですよネ――。


 しかし、彼もマトモな少年ではなかった。アイドルアニメ『ラブライブ!』(13年~・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20160709/p1)をおもいっきりモチーフにした『アイライブ』(笑)なるスマホゲームに登場する特定の女子キャラに夢中になっているオタク男子なのだ(爆)。「リアル女子には興味ない」とまで公言! 転校生女子には「残念なイケメン」と云われてしまうのであった(笑)。



 第1話の後半では、教室の窓からサッカーボールが飛びこんできたり、運動場でバスケットボールのゴールが倒れてくる! 転校生少女がさまざまな危険な目に遭(あ)うミステリー的な展開となっていくのだ。


 レッド少年は主人公少女の右目の特殊能力が覚醒する前に、彼女を始末しようとしてくる「悪の組織」の仕業(しわざ)だと推理する!(笑)
 しかし、銀ブチ眼鏡の秀才タイプのブラック相当の少年クンが「犯人はおまえだ!」と指さしたのは…… なんと同じ「ヒーロー部」に所属するパープル相当の少年クンであった!


 かなりヤンキーっぽい雰囲気で、レッドやイエローの日頃の振る舞いを「バカバカしい」と軽蔑(けいべつ)しているパープルであった。そんな彼が自身の性向とは真逆ともいえる「ヒーロー部」になぜ所属しているのか? なぜ転校生女子を狙うのか? 第1話を観るかぎりではイマイチその立ち位置が不明である。


 しかしまぁ、「平成仮面ライダー」作品のようにナゾ解きをタテ軸にして展開する、本格的な群像劇ドラマとなっていくようにはとうてい思えない(笑)。あくまでもギャグでコミカルに押し通していくノリが容易に想定されてくるのだ。


 本作のコミカライズ(16年)が集英社の少女漫画雑誌『りぼんスペシャル』に連載されていたことから推測するに――2019年10月に完結したばかりだ――、イケメン王子さまたちのカラ騒ぎを描いた路線のなかでの変化球的な作品でもあるのだろう。


 だから、特撮オタクの女子がその趣味の是非や意義、社会の中で正体を隠すことや仲間を探すことの葛藤を描いたような、小学館ビッグコミックスピリッツ』連載の人気漫画『トクサツガガガ』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190530/p1)のような深みと滋味もあるような内容を期待しても、たぶんムダであろう(笑)。
厨病激発ボーイ

(了)
(初出・オールジャンル同人誌『DEATH-VOLT』VOL.83(19年11月3日発行))


ド級編隊エグゼロス』

(2020年夏アニメ)
(文・T.SATO)
(2020年8月7日脱稿)


 ご町内の平和を守るために、主人公の男子高校生が戦隊ヒーロー・エグゼレッドに変身! 「キセイ蟲(ちゅう)」なる昆虫型怪人と戦う!


 といっただけの内容に思えたが、やわらか可憐なボイスの加隈亜衣(かくま・あい)ちゃんが演じる金髪ショートでクラスでも快活なメインヒロインも魅惑的に描かれている。


 彼女は「性」には潔癖で忌避(きひ)さえしている。しかし、幼少時の回想シーンでは幼児時代の主人公クンに公園の遊具の中の密閉空間で積極的に迫っていた。


 そう、幼少期などは「性」的なものに関心はあっても、その後は罪悪感とともに性欲を抑制してきた娘なのだ。


 そして、劇中では「Hエネルギー」(笑)が常人の数十倍だったので、劇中内ヒーローたる資格があったとされるのだ!――ナンでやねん! 性欲が資格かい!?――


 それによって、ナシ崩し的に地球防衛隊・サイタマ支部の宿舎――それも木造の宿舎(笑)――に応召されて、エグゼイエローとして任命されるのだ!


 その他にも、エグゼピンク・エグゼホワイト・エグゼブルーに変身する女子中高生たちが登場している――女子ばかりといったあたりで、幼い男児たちが視聴すれば忌避してしまうだろうけど、その逆に思春期以降の少年クン向けとはなることで、いわゆるハーレムものの文法にも合致する作品であったこともこれで明々白々となるのだ(笑)――。


 そして、極め付け。『ド級編隊』の「編隊」とは、「戦隊」と「変態」を掛けている語句であることが判明していく。要はダジャレとしてのメインタイトルなのだ(汗)。


 一般の少年マンガ雑誌で連載されている作品とは異なり、純オタク向けの媒体が出自である作品の場合には、主人公少年クンは能動的ではなく、受動的で繊細ナイーブで内向的かつ巻き込まれ型が多いものだ。


 しかし、本作の主人公クンはやや能動的である。性欲・煩悩も全開である(笑)。原作は月刊「ジャンプスクエア」の連載マンガであり、「週刊少年ジャンプ」と比すればややマニアックな媒体ではあるものの、角川書店一迅社などの媒体に比べればそこまでオタッキーな媒体ではないのだ。両極の中間のやや一般層寄りに位置する媒体といったところだろう。それらの媒体の客層の性格類型の違いによっても、主人公少年の性格設定にも相違が出てしまうのだ……といったところだろう。


 特撮ヒーローをパロった深夜のヒロインアニメ『俺、ツインテールになります!』(14年)や『アクションヒロイン チアフルーツ』(17年)なども同様だったけど、最初から「B級路線」をねらった「イロモノ作品」に対して、「もう少しだけ叙述の仕方を工夫すれば、たとえイロモノ・B級作品ではあっても、もうちょっとドラマ的な密度感も出せるんじゃネ?」なぞといったツッコミはヤボなのだろうナ、やっぱり。


 個人的には本作の鑑賞を継続していくのがキッツい作りではある――本作をスキな方々にはゴメンなさい――。


 でもまぁ、メインヒロインはルックス・作画・ボイス・性格ともに魅力的に描かれている。それだけです。……それだけしかないともいう(笑)。
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(了)
(初出・オールジャンル同人誌『SHOUT!』VOL.77(20年8月13日発行))


ド級編隊エグゼロス』

(土曜24時 TOKYO-MX他 放映終了)
(文・久保達也)
(2020年11月11日脱稿)


 「誰かが云った。『HERO(ヒーロー)』は『H(エッチ)』と『ERO(エロ)』でできていると……」


 人類から「Hエネルギー」を吸い取って、その活力を奪うことで地球侵略をたくらむ「キセイ蟲(ちゅう)」と戦う高校生男女で結成された、地球防衛隊・サイタマ支部・HERO課に所属する「エグゼロス」が本作の主人公チームとなる戦士集団だ。


 きただりょうま氏の原作は集英社ジャンプスクエア』に連載中である。こう書くと一応、ヒーローもののかたちを借りただけの「ドタバタHコメディ」だと思われるかもしれない。


 実際、全編に渡ってエロ描写はかなり多い。たとえばエグゼロスのメンバーは文字盤に大きく「H」(笑)と書かれた腕時計型のアイテムである「XERO(ゼロ)ギア」でその肉体を強化する。しかし、スーパー戦隊ヒーローもどきの戦闘用の「XEROスーツ」が開発されるまでは、増幅されたエネルギーに耐えられずに衣服がビリビリに裂けてしまうことから、「キセイ蟲」とは全裸で戦っていたほどだ(笑)。


 それでも、本作にはさほどのエロさは感じられない。「淫靡」ではなく、視聴者を笑わせようとする「さわやかエロ」である。それどころか、きわめてまじめなヒーローものとの印象も強い。これは主人公像によるところが大きいのだろう。


 先述したような設定や世界観ならば、本来なら主人公は「H」&「エロ」全開で、いかにも「少年ジャンプ」系の「オレさまが世界でいちばん強い!」的なオラオラキャラになるところだ。


 だが、本作の赤っぽい茶髪ギザギザヘアの高校生主人公・炎城烈人(えんじょう・れっと)=エグゼレッドは、その髪型から連想されるイメージに反して、教室での同級生たちのエロ話に加わることもできない。
 小学校からの幼なじみで黄色ショートヘアにアホ毛がそびえる美少女高校生・星乃雲母(ほしの・きらら)にひそかに想いを寄せつづける奥手な少年である。エロさのかけらもないのだ。


 そして、烈人がエグゼロスに入隊した動機がマジメで彼の人間性を色濃く象徴している。キセイ蟲は5年前から地球で暗躍していた。しかし当時、小学校高学年だった烈人と雲母が公園でふたりでいたところを、蚊型のキセイ蟲怪人が襲ってきて、雲母の「Hエネルギー」を吸い取ろうとした。けれど、


「これだけエネルギーを吸い取っても平然としてるなんて、なんてどエロい人間なんだ!!」


とキセイ蟲怪人はなげいた末に、「Hエネルギー」を吸いきれずに爆死してしまったのだった(大笑)。


 このキセイ蟲怪人の発言に大きなショックを受けてしまった雲母(笑)。彼女は以来、「アイアン・メイデン=鋼鉄の処女」と呼ばれるほどに男子をキラって、男子がさわったものには手をふれられないほどの潔癖性(けっぺきしょう)となってしまった。幼なじみの烈人とも疎遠(そえん)となってしまったほどだ。


「誰かが云った。『スキ』の対義語は『キライ』ではなく、無関心だと……」――そのとおり!(汗)――


 雲母=初恋の相手をそこまで変えてしまったキセイ蟲に対して、当時はいっしょにいながら何も反撃できなかった烈人は、贖罪の念とともに復讐も果たすため……といった、相応に理はあるものの、いわば「私(わたくし)」としての動機でエグゼロスに入隊したのだった。


 だが、あれから5年を経てキセイ蟲の本格的な侵略がはじまった! 人々から次々と「Hエネルギー」が奪われていく光景を見るなかで、「もう誰にもこんな想いはさせない!」と、その戦いは「個人の復讐」から「市民を守る」ために「公(おおやけ)」の動機へと昇華をとげていたのだ!


――いや、吸収しきれないほどの「Hエネルギーを持っていて、そのことを敵の怪人に指摘されて傷つくような一般人もいなさそうだけど(笑)――



 烈人の声を演じる松岡禎丞(まつおか・よしつぐ)氏は、


●『冴(さ)えない彼女(ヒロイン)の育て方』(第1期・15年 第2期・17年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190901/p1)では、オタク高校生ながら名前をもじって「倫理くん」と呼ばれたほどに曲がったことがキライな安芸倫也(あき・ともや)


●『エロマンガ先生』(17年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20221211/p1)でも高校生主人公で、ライトノベル作家でもあり(爆)、義理の妹でイラストレーターの和泉紗霧(いずみ・さぎり)に恋愛感情を抱く和泉正宗(いずみ・まさむね)


なども演じている。しかし、烈人のキャラは云ってしまえば、その性格や精神性はオタクな倫也と正宗とも同じ系列ではなかろうか? 彼らふたりはオタク系ラブコメ主人公としてはやや能動的だったかもしれないが、「ジャンプ」などのオラオラ系ほどでは決してない。


 もちろん、松岡氏の演技によるところも大きいが、倫也や正宗を彷彿(ほうふつ)とさせる烈人の好感度の高さもまた、その作風からエロい印象をウスめて、勧善懲悪ヒーロー性を高めるための効果を存分に発揮しているかと思われるのだ。


 第1話の前半で、烈人をはじめとする同級生男子にさんざんに悪態をついた雲母は、夕焼けに染まる帰り道で5年ぶりにふたたびキセイ蟲に襲われたことで、烈人はとっさに雲母の手を握って駆けだしていく!


 導入部では5年前の小学生時代の回想として語られたが、その手の握り方は当時はおマセさんであった雲母が「オトナの恋人同士の手の握り方」の練習として烈人に示したものであった。これを契機に5年前から止まっていた雲母の時間がふたたび動きだすかのような展開は実にドラマチックなのだ!



 回想の冒頭シーンにあった、公園内にふたりのランドセルが仲良く並んで置かれている描写は、5年前の烈人と雲母の関係性を端的に象徴したものでもあった。


 そして、


「この日、オレは生まれて初めてヒーローになりたいと思った……」


という烈人の語りも、雲母が5年前にキセイ蟲に襲われる直前のものであった――遊具にキセイ蟲の黒い影が迫る暗示的な演出も実に効果を発揮している!――。烈人にとっては、雲母が小学生当時からしてすでに「守りたい存在」と化していたことの証(あかし)なのだ。


「今だけ許してあげるから、もうちょっと握ってて……」


 終始、烈人に対して拒絶気味の態度であった雲母が「オトナの恋人同士の手の握り方」を覚えていた烈人を5年ぶりに「れっくん」と呼ぶほどに心を開くさまもまた劇的なのだ。


 そのためか、烈人の「XEROギア」にある「H」の文字が回転してまばゆい光を放った!!


 そして、全身がオーラに包まれたふたりの前に、大量の「Hエネルギー」で巨大化したカマキリ型のキセイ蟲が現れた!


「いっしょにおもいっきりブチかますぞ!!」


 協力してキセイ蟲を撃破した烈人と雲母!


 しかし、ふたりは公園で全裸姿で取り残されることとなってしまった(笑)。やはりオチはギャグとして落としているのだが、その関係性の変化の末に変身ヒーロー&ヒロイン誕生へと至る過程は実にドラマ性が高かった。そして、青春学園群像劇としても、出色の出来かと思えたほどだ。


 原作漫画家は本当はまじめなヒーロー&恋愛を描きたいのに、編集部の意向でエロ強調路線にされてしまったのでは? そんな気もしてくるほどだ。
ド級編隊エグゼロス 1(完全生産限定版) [Blu-ray]

(了)
(初出・オールジャンル同人誌『DEATH-VOLT』VOL.86(2020年12月20日発行)所収)


『アクションヒロイン チアフルーツ

(2017年夏アニメ)
(文・T.SATO)
(2017年12月13日脱稿)


 「ローカルご当地アイドル」が地方で町興し(まちおこし)する深夜アニメというと、『サクラクエスト』(17年)や『普通の女子高生が【ろこどる】やってみた。』(14年)の2作を想起する。


 しかし、本作の「ローカルアイドル」は、いわゆる「ご当地ヒーロー」ならぬ「ご当地ヒロイン」! 全国各地で「ローカルヒロイン」が隆盛を極めているというウソっぱちの世界観で、地方の女子高生がオリジナルの「スーパー戦隊」――むろん顔出し(笑)――を結成して、悪の怪人と戦うのではなく、ヒーローショーを披露するといった内容であった(笑)。


 ホンモノの「スーパー戦隊」出身であり、『海賊戦隊ゴーカイジャー』(11年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20111107/p1)のゴーカイイエローをナマ身で演じてきたM・A・O(まお)ちゃんが、またまたあまたの2017年の深夜アニメ(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190924/p1)とも同様に主演声優を務めている!


 しかし、主人公なのにクールな性格の女子役なので、筆者には「赤」「青」「黄」などの色を苗字に持った、劇中では第1話よりも以前からヒーローショーのステージに立っていたというキャラたちの方が、アイドル性や華(はな)があって印象に残ってしまう。


 この「スーパー戦隊」でもある女のコたちの集団のなかには、「特オタ(特撮オタク)」も「鉄オタ(鉄道オタク)」も同時に並存している天文学的な確率(笑)については、そこは漫画アニメなのだからツッコミを入れるのはヤボであろう。とにかく、この作品世界においてはそうなっているということでイイのだ。


 本作の脚本は特撮・アニメ作品も幅広く手掛けている荒川稔久(あらかわ・なるひさ)。なので、特撮パロディも満載だ。同じく荒川が手掛けた特撮パロが満載のヒロイン戦隊ものラノベ原作の深夜アニメ『俺、ツインテールになります!』(14年)同様に、90歳を超えた大御所・渡辺宙明(わたなべ・ちゅうめい)センセイが別のチームの先輩「ご当地ヒロイン」のために楽曲を提供しており、そこにワザワザ1980年代風の特撮変身ヒーローもののオープニングを再現したイメージ映像などもカブせている――字幕テロップも21世紀の今日における微量にオシャレでセンスもある小さな書体とは異なり、当時の小さなTV画面ではともかく今見るとヤボなほどに巨大な書体が再現されてもいるのだ!――。


 とはいえ、そういった描写があるからといって、特オタである筆者も本作を認める! なぞといった気にはならない(笑)。


 さまざまな性格の女子高生たちが仲間を集めて、自分の得意分野でヒーローショーの興行に協力し、困難を乗り越えて勝利をつかんでいく……といった展開であったあたりで、全国各地でスクールアイドルが勃興中! という、やはりウソっぱちな世界観でも、実に楽しい物語を紡いで内容的にも人気面でも大成功していたアイドルアニメ『ラブライブ!』(13年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20150615/p1)なども想起させてはくる。
 しかし、あちらが「バカ設定」であるにもかからず「ガチ熱血」「ガチギャグ」「ガチ萌え」で取り組んでいたのに比すると、ユル~く流して作っている印象なのである。


 それ自体がまた「ねらい」なのだろうけど、個人的にはそこが物足りないのだ。


 では、ドーすればイイのだろうか?


 「日常場面」では女のコたちの「萌え」を前面に押し出す。しかし、劇中劇でもある「ヒーローアトラクショー」における「正義の戦隊ヒロインズvs悪の軍団」の方では、シナリオなりアクション演出の温度を、本編とは多少遊離してでも高めてみせたり、さらにはテーマもどきの道徳説教(笑)などを絶叫させれてみれば、もっとメリハリが付いたのではなかろうか!? などとも愚考をしてしまうのだ。


 とはいえ、「作画」も「動き」も一級レベルではない並みの予算のアニメなので、そういった増強や演出もまた高望みであったり、「付け焼き刃」で「焼け石に水」といったオチになってしまったかもしれないけど(笑)。
アクションヒロイン チアフルーツ Vol.4【Blu-ray】

(了)
(初出・オールジャンル同人誌『SHOUT!』VOL.70(17年12月30日発行))


『恋は世界征服のあとで』

(2022年春アニメ)
(文・T.SATO)
(2022年8月7日脱稿)


●5色の戦士である「スーパー戦隊」のリーダーでもあるレッド
●悪の軍団の女幹部


 この両者の許されざる恋の物語を描いた作品である! ……といってもギャグ作品ではある。


 プライベートでも逢瀬を重ねて、時に戦闘中でも仲間がいない場所では安息の会話を交わして、そこに敵味方が乱入してくるや否や、即座に組み合って戦闘しているフリをする。時にフリではあるけどガチで打撃し合っていたりするので、フリである意味がないのだけど(笑)。


 広義では特撮変身ヒーローもののパロディー作品である。今年2022年冬季にも、悪の軍団側にスポットを当てて、憎めない存在どころかホワイト企業(笑)として描いてみせていた『怪人開発部の黒井津さん』や短編アニメ『お昼のショッカーさん』などが放映されている。


 もう40年も前の1982年に製作された自主映画の金字塔『愛国戦隊大日本』などにおける、特撮変身ヒーロージャンルの「型」をナゾって笑いに変えるパターンではない。悪の軍団の内情だったり、敵味方間での男女の密通だったりなど、同じパロでもそこは隔世の感があるのだ。


 筋トレ(筋肉トレーニング)が趣味である禁欲的なレッド。戦場ではSMの女王さまのような悪の女幹部。


 ストーリーが進むにつれて判明していく。この両者は高校生だったのだ(爆)。20代の適度に枯れて達観した男女にもまだ残っていたウブな交流にも見えていたのにィ(汗)。


 まぁ、そこは絵柄的にもリアリズムが優先されていないマンガなのでご愛嬌である。


 この悪の幹部でもある女子高生は肉体的には頑強。しかし、素はかわいいモノが大好きな乙女であった。ギャップ萌えをねらってきている。加えて、なぜか自身の女子力には劣等感があるあたりもまたポイントを上げている(笑)。


 ただ、シリーズの序盤は破裂的に面白かったものの、何らかの工夫やセンスが足りないのか、シリーズ後半では徐々にテンションは低落していくようにも思うのだ。


 序盤はイマイチだナと私見したものの、徐々に面白くなっていく『怪人開発部の黒井津さん』とは、その一点では真逆であった――単なる筆者の個人的な主観であれば、ゴメンなさい――。



 エッ? 本作も「マガジン」系マンガが原作? なんと角川書店一迅社などのオタク向け媒体ではなく、「月刊少年マガジン」連載作品なのであった。いったい2010年代以降の「マガジン」は同季に何作品がアニメ化されているのやら(汗)。


 ちなみに、本作の悪の軍団は首領(声・杉田智和)以外は女幹部ばかりである。花澤香菜金元寿子佐倉綾音沢城みゆきで中堅どころが勢揃い!


 そして、本家『魔進戦隊キラメイジャー』(20年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20220503/p1)で女幹部・ヨドンナを演じたコスプレイヤー上がりの桃月なしこも女幹部役で声の出演! 終盤の究極怪人の声も、「永遠の17歳」の第2号(笑)こと田村ゆかりであった。


 ムダに豪華でギャラは大変そうだが、新人声優には醸すことができない幹部級としての貫禄が、これによって出せていることも事実なのだ(笑)。
恋は世界征服のあとで Blu-ray BOX 上巻

恋は世界征服のあとで Blu-ray BOX 下巻
(了)
(初出・オールジャンル同人誌『SHOUT!』VOL.83(22年8月13日発行))


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 2023年の夏にはラブコメ深夜アニメ『彼女、お借りします』の3期(23年)が放映中記念! 『カノジョも彼女』も2023年10月から2期放映記念! 『トニカクカワイイ』(20年)も2期(23年)が2023年春に放映終了記念! とカコつけて……。『彼女、お借りします』1期(20年)・『彼女、お借りします』2期(22年)・『カッコウの許嫁』(22年)・『可愛いだけじゃない式守さん』(22年)・『カノジョも彼女』1期(21年)・『トニカクカワイイ』1期(20年)評をアップ!


『彼女、お借りします』1期・『彼女、お借りします』2期・『カッコウの許嫁』・『可愛いだけじゃない式守さん』・『カノジョも彼女』・『トニカクカワイイ』 ~純オタ向け媒体ならぬ少年マンガ誌出自のラブコメ! 同工異曲のようでも成否の差!

(文・T.SATO)

『彼女、お借りします』1期

(2020年夏アニメ)
(2020年8月7日脱稿)


 大学1年生の冴えない青年クンが彼女にフラれた落胆から、試しに「レンタル彼女」(恋人代行業)に頼ったところから始まる騒動を描くラブコメ


 黒髪ロング女子でもピンクのブラウスに白いスカートなので、重たいオンナ臭はまったくせず(笑)、清楚かつ如才ない感じのメインヒロインがまずは魅力的だ。


 それをまた涼しげかつ可憐さもある声優・雨宮天(あまみや・そら)ちゃんが声をアテることで増幅!――特撮マニア的には『仮面ライダービルド』(17年)のメインヒロインに憑依した超古代火星文明人のお姫様の声だが、2010年代後半以降のあまたのアニメで途切れなくメインヒロイン級で大活躍している御仁でもある――


 もちろん、劇中でも「レンタル彼女」としての「お仕事」だから「演技」として可愛らしく恋人を演じているだけなのだけど、そうだとわかっていてもイチャイチャしてくる彼女の態度には、吸い込まれてしまうような魅力があるのだ(笑)。


 この娘にハマった主人公青年クンは2度目のレンタルを敢行する。そして、しばらくデートをするうちに彼女に八つ当たりや説教を始めてしまうのだ――ウワァ~。良く云えば潔癖、悪く云えば最低のオトコだ(汗)――。


 さらには、入院中の祖母にも自分の彼女だと紹介してしまう! その病院には奇しくも彼女の祖母も入院しており、両家の公認にまでなってしまう!(爆)


 ココまで作り込めれば、あとは「状況に応じたリアクション」と「正体を隠すための言動」だけでも、無限にお話を引き延ばせそうではあるけれど……。


 ナンと! 主人公青年クンは大学のキャンパスでこの彼女と偶然にも再会。大学ではメガネに三つ編みのモッサリした地味子ちゃんであった! というあたりで、ギャップ萌えも追加する(笑)。


 他の「レンタル彼女」たちも登場し、冒頭で主人公を振った元カノまでもが再登場を果たして、両家の家族も巻き込んだラブコメ群像劇となっていくようだ。



 原作は「週刊少年マガジン」連載マンガ。近年の大出版社のマンガ作品同様に、原作マンガの売上が上がればアニメの製作出費なども微々たるものであるのか(?)、アニメ製作会社側でも円盤売上に頼らずとも出版社からの製作資金投入だけでも高い収益を得られるのか、美麗な作画&背景美術も達成できており、序盤を観るかぎりでは実意面白い!――今後の展開に対する責任は取れないものの(笑)――
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(了)
(初出・オールジャンル同人誌『SHOUT!』VOL.77(20年8月13日発行))


『彼女、お借りします』2期

(2022年夏アニメ)
(2022年8月7日脱稿)


 失恋のショックで、実在の業種「レンタル彼女」を利用した冴えない大学生男子クン。容姿端麗の清楚でさわやかな彼女は、実は同じ大学に通っている地味子ちゃんでもあり、しかもアパートの隣の住人でもあった!


 発端こそ現代的な職業を材としているけど、「ザ・ラブコメ!」といった、2年前の2020年夏にも1期が放映された深夜アニメの2期が登場。本作もまた「週刊少年マガジン」連載マンガが原作であった。


 1期も面白かったけど、2期も安定したクオリティーを達成している。


 やや些事ではあるけど、個人的に評価したいのは2期の#1の導入部だ。TVやアニメだけがお友だちの方々は気にしないのやもしれない(汗)。いや、むしろ前話や前期のアラスジは不要だ! くらいの声が、もう20年も前の『機動戦士ガンダムSEED(シード)』(02年)の時代から聞こえてもいた。


 しかし、一見(いちげん)さんや途中参加組をゲットできるように、作品を「開かれた作り」にしておくためにも、前話のアラスジで作品世界や主要人物のキャラシフトをも感じさせて、作品を未見のお客さんにも敷居を下げることで参入障壁を下げておくことは、非常に重要なことだとも思うゾ~。


 1期の#1であれば、たしかに主人公なりメインヒロインのみを描くことだけで問題はないし、それが正解ですらあるだろう。しかし、この2期の#1冒頭では、増えてしまったサブヒロイン・サードヒロイン・フォースヒロインたちをごていねいにもくわしく紹介してみせる!


●一度は振ってみせたクセに独占欲かチョッカイを出してくる悪女的な元カノ(声・悠木碧
●メインヒロインにガチで執着している主人公クンに心動かされて、自分もそうされたいとの想いから主人公クンに執着していく同じくレンタル彼女の純朴女子(声・東山奈央
●極度の人見知りのコミュ力弱者で、そんな自分を変えたくてレンタル彼女の仕事に挑戦中の弱者女子(声・高橋李依
●そして、先のメインヒロイン(声・雨宮天


 2022年夏季には5年や9年も前の人気アニメの2期も登場していた。その前季にはごていねいにも1期の再放送もなされてはいた。とはいえ、やはり1期の最終回の最終シーンの直後のように、何の説明もなく2期の#1がスタートしてしまうような作り方はチョットなぁ。


 もちろん、そのことを致命的な弱点だとはしないけど、やはり前期のアラスジなり基本設定の説明的な描写がたとえ数分でもあれば、腰の据わりがよくなってスンナリと没入できるとも思えるので……。
彼女、お借りします GAMERS Only Original Character Song Extra

(了)
(初出・オールジャンル同人誌『SHOUT!』VOL.83(22年8月13日発行))


カッコウの許嫁(いいなずけ)』

(2022年春アニメ)
(2022年8月7日脱稿)


 三角・四角・五角関係のライトなラブコメ作品。なおかつ、主人公男子高校生クンと快活ヒロイン女子高生は出生時の「取り違え子」であったことが本作の独自性。


 しかし、そこはイイ意味でのマンガだけど、脳天気にもドーせならば両者を結婚させて共通の子息にしてしまおう! という両家の思惑(おもわく)が一致する(笑)。もちろん、主人公男子クンと快活ヒロインは「冗談ではない!」と思いつつも、両者&両家の奇妙でコミカルな交流が始まってしまう……といったストーリーである。


●血がつながらないので、婚姻可能性もある関係になってしまった妹
●主人公男子クンがもともと好いていた学園トップの成績でもある天然ドジっ娘ヒロイン


 噛ませ(?)でも、実に魅惑的なセカンドやサードのヒロインたちも配置している。


●男子高校生クン側はビンボーでも明るいヤンキー家族なのに、家族には馴染みつつも男子クンだけ成績優秀
●ヒロイン側はブルジョワ家庭で、彼女もやはり家族に溶け込みつつも、SNS上に自撮り写真をアップして注目を集める人気者


 互いに気質的にも一族の異端であることを発端にして、人間関係ドラマを構築する方法論もあっただろうけど、本作はあくまでもリアル志向ではなくコメディ作品となっており、両家は実に家族円満なものとして描かれている――もちろん、「取り違え子」問題を真剣に扱いたければ、また別のしかるべき社会派ジャンルの作品で作ればイイのだ――。


 本作も「週刊少年マガジン」連載のラブコメ漫画の深夜アニメ化作品。ここ5年ほどコンスタントに「マガジン」連載のラブコメ漫画が深夜アニメ化されている。


 ググってみると、今や「マガジン」連載の半分がラブコメ漫画であるそうだ(爆)。筆者のようなロートルには同誌はヤンキー・DQNマンガの巣窟といった印象がある(笑)。
 今はむかしの70年代末期の同誌での大ヒット作『翔んだカップル』などを除けば、同誌でのオタッキー美少女アニメ的かつラブコメ&ハーレムもののテイストをまとった作品の初出なり初の大ヒット作は、今年2022年夏の選挙で参院議員になった赤松健(あかまつ・けん)による四半世紀近くも前の『ラブひな』(98年。00年に深夜アニメ化)なのだろう――筆者個人は同作のことを評価はしてはいないけど(汗)――。


 00年代前半の同誌では、角川書店的なオタ向け・美少女アニメ美少女ゲーム的な作品が散見されるようになる。しかし、まだ週刊少年マンガ誌を購読する習慣が残っていた会社の同僚たちなどは、「マガジン」の中でも同じく赤松健の『魔法先生ネギま!』(03年。05・06年に深夜アニメ化)などは飛ばして読んでないと公言していたことなども思い出す(爆)――同作は意匠はハーレムものでも、少年バトル漫画の文法で実に面白く、個人的にも評価しているけど(笑)――。


 それからでも20年弱。オタク漫画の文法がウスめられて一般層にも普及していることを思えば、今の「マガジン」読者がオタク風味のラブコメ漫画を忌避することもなくなって久しいのだろう。


 そーいうワケで、本作の主人公男子クンには「不良性感度」などはない。どころか、同誌の人気ラブコメ漫画『五等分の花嫁』(17年。19年に深夜アニメ化)の主人公男子クンや、他誌「ヤングジャンプ」連載だけど『かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~』(15年。19・20・22年に深夜アニメ化)の主人公男子クンなどとも同様に成績優秀だったりもする。


 とはいえ、純粋オタ向けマンガやラノベに登場するような繊細ナイーブなオボコさや(ひとり)ボッチ性はなくて、最低限の覇気や男気(おとこぎ)があるあたりで、オタ向け作品と完全混交してしまったワケでもない。


 メインヒロインがクールな黒髪ロングではなく、サブヒロインもツンデレな金髪ツインテではなく、オタにはやや苦手やもしれない多少の気の強さもある快活女子! といったあたりで、やはり純粋オタ向け作品とは異なっているのだ――優劣の話ではないのでくれぐれも念のため――。


 そして、個々の作品の市場規模としては、オタ向けマンガよりも大きいであろうことを思えば、ニッチ(隙間)から生まれながらも本家よりも巨大なジャンルとなっており、逆にオタ層にもウケがよかったりもする。


 ググってみると、本作の原作者は女性! 2010年にTVドラマ化された『ヤンキー君とメガネちゃん』(06年)、同じくドラマ化(13年)やアニメ化(15年)もされた『山田くんと7人の魔女』(12年)なども手掛けている。後者の深夜アニメ版も傑作とはいわず佳作ではあったことを思い出すのだ――両作ともに、ラブコメでも主人公はヤンキー高校生だったけど(笑)――。
カッコウの許嫁

(初出・オールジャンル同人誌『SHOUT!』VOL.83(22年8月13日発行))


『可愛いだけじゃない式守(しきもり)さん』

(2022年春アニメ)
(2022年8月7日脱稿)


 いかにも性格良さげで常にニコニコとしたお坊ちゃまお坊ちゃました男子高校生クンが主人公。彼は道を歩いているだけで危険物に遭遇し、トラックにハネられそうになったりする不運の星の下に生まれついている(笑)。


 そんな彼のことを身を挺してバツグンの身体能力で守ってくれる、可愛いカッコいいヒロインが、主人公男子クンの恋人でもある式守(しきもり)さんである。


 ウ~ム。深夜アニメ化されるくらいだし、ググってみると「年間重版1位」だの、「書店員が選んだおすすめコミック」上位だのにランクインしているので、相応に人気があることはわかる。しかし、ドーなのであろうか?


 まず、主人公男子クンが偶然とはいえない頻度で尋常ではない突発的な危険に見舞われる理由がわからない。アソコまでの頻度だと、劇中内での説明――超自然的な霊的・呪詛的なモノ――がないと、物語作品としては不自然にも思えてくる。


 そして、ヒロインがなぜ主人公男子クンにホレていて、そこまでして守っているのかがわからない。もちろんクドクドと説明しなくてもイイけれど、最低限の動機の説明なり点描なりがやはりない。「式守(しきもり)」の名が「式神(しきがみ)」を操る陰陽師なども連想させるので、最初は職業都合から始まって次第に情が移ってホレてしまうストーリーの方がイイんじゃね? ……なぞと思ってしまうのは、的ハズレのナイものねだりで、「ぼくのかんがえたさいきょうの『可愛いだけじゃない式守さん』」の類いなのであろう(笑)。


 あるいは、今は滅亡寸前の存在となってしまった颯爽とした「戦闘美少女」属性だけではなく、同じく「強キャラ」の女性に守ってもらえる男子高校生クンを描いていた、同じ講談社でも「マガジン」ならぬ「モーニング」連載のマンガ原作の深夜アニメ『ウィッチクラフトワークス』(14年)のように、ヒロインが貞淑そうでも高身長の巨乳でグラマーなキャラデザであれば、「母性」も醸されてきて説明ヌキでも男子クンを構ってくれることに説得力が出てきそうには思うのだ――「母性」が少なめの快活女子であれば、軟弱男子を好んだり守ったりするとはとても思えないものなので(笑)――。


 といって、『ウィッチクラフトワークス』もヒロインは個人的には魅力的でも、作品としての評価はしてはいないけど(汗)。


 まぁ、マンガ画媒体では違和感がなかった表現でも、手元に置いた雑誌・単行本・スマホ画面に近づいてやや主観的で能動的な読み方での半ば強制的な疑似体験に近くなるマンガ媒体よりも、TVモニターなどを通じてやや距離を置いて受動的で覗き見のように視聴するアニメ媒体だと、劇中事象が客観化されて見えてくることで、多少ムリのある設定については違和感がやや強くなってきてしまう場合もある。あるいは、アニメに落とし込む際に何らかの不備があった可能性も考えられる。


 しかしだからといって、カネをかけて原作マンガを購入してまで比較研究する気はないので、好事家の研究を待ちたい!?(笑)


 一応、本作も広義での「週刊少年マガジン」系出自なのだが、もともとはツイッター漫画であった作品を青田買いして、WEB漫画媒体「マガジンポケット」にて配信されていた作品なのだそうだ。


 たしかに「少年マガジン」系というよりかはオタク向けラブコメ作品のテイスト寄りではあった。
可愛いだけじゃない式守さん

(了)
(初出・オールジャンル同人誌『SHOUT!』VOL.83(22年8月13日発行))


『カノジョも彼女』1期

(2021年夏アニメ)
(2021年8月9日脱稿)


 いかにもアニメ・ラノベ的な絵柄の美少女が登場して、我々オタク的にはなじみやすい深夜の美少女アニメである。


 しかし、キャラデザが「赤髪ロング」であることに象徴されるように――適度な「気の強さ」や「派手さ!――、アバズレ女ではないけどやや女王さま系で、メインヒロインに「癒やし」や「従順属性」が感じられないあたりは珍しい……。


 と思ったら、純オタ向け媒体ではなく「週刊少年マガジン」で、90年代末期あたりから勃興して定着しているオタにも目配せしたラブコメ路線作品出自だということでナットクするのであった。


 とはいえ、この作品はそこがキモではない。


 #1冒頭で「最近、彼女ができた」という高校生主人公クンのモノローグとともに、スットコドッコイな赤髪ロングヒロインとのサッパリしたイチャイチャが描かれた直後に、校舎の屋上にて健気そうな青髪少女が主人公少年に好意を告白!


 そこまではイイとして、交際OKとは云わずとも相手のことを「可愛い」と云ったら、青髪少女も「このために筋トレとジョギングとヨガは毎日4時間」うんぬん、バックにそのイメージ映像も浮かぶ中で滔々(とうとう)と語りだしたことでこの作品はギャグだとわかり、コミカルBGMも流れる中で素っ頓狂な会話をして「二股してイイか、いっしょに彼女(赤髪ロング)に聞きに行かないか!?」と少年が熱弁しだしたところでトドメを刺される(笑)。


 そして、主人公少年が青髪少女を紹介するも、赤髪ロングが青髪少女を可愛いと大興奮! いっしょにカラオケに行って歌いだすので議論が始まらない(爆)。


 ようやく本題となることで、赤髪ロングは怒って主人公少年を顔パンチ!(笑) しかし、止めに入った青髪少女の理由も振るっている。二股でもイイと熱弁するのだ。


 その後もボタンをひとつずつ掛け違えたような明後日な会話が続いた果てに、この3人の同居生活が決定する!(ナンでやねん) 単なるナンセンス漫画じゃねーか!?


 そして始まる陽性のドロドロ会話劇。そう、陽性だからラブコメではあるのだ(笑)。オタ向けラブコメのキャラと図式をさらにウラ返したギャグ作品。超面白いです。
カノジョも彼女

(了)
初出・オールジャンル同人誌『SHOUT!』VOL.80(21年8月15日発行))


トニカクカワイイ』1期

(2020年秋アニメ)
(2021年1月21日脱稿)


 マジメな中学生男子クンが大雪の日に見かけた赤髪の美少女に一目惚れ。彼女に近づこうとしたら交通事故!


 彼女は中学生男子クンを助けて去るが、重傷なのに中学生クンは彼女を追いかけて告白。彼女も彼女で「結婚するなら付き合う」という(爆)。


 3年後に婚姻可能年齢になった少年クンの許に、会えなかった彼女がやってくる。そして、ふたりは婚姻届を提出して同居生活に!



 ウ~ム。ドーなのだろうか? 適度に劇的な設定を入れること自体には賛成。大雪の日はクリスマスにしろ忠臣蔵の討ち入りにしろホーリー(聖)な感じがしてくるので、その舞台立てにも賛成だ。


 しかして、一目惚れだとか交通事故で重傷とか3年の空白の果てに結婚して同居とか、そこをマンガ的に楽しめずに「いくら何でも……」と思ってしまうのは、筆者が加齢で男性ホルモンが減少したからだろうか? 空から落ちてきた美少女と同居したいと思いがちな若者には、二の次・三の次の事項となるから許容範囲なのだろうか?


 「週刊少年サンデー」連載でアニメ化されるくらいの人気はあるのだから多分、許容範囲なのだろう。本作をスキな方々にはゴメンなさい。黙して語らず(笑)。
トニカクカワイイ/TONIKAWA:OVER THE MOON FOR YOU

(了)
(初出・オールジャンル同人誌『SHOUT!』VOL.78(21年2月5日発行))


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ウルトラマンブレーザー序盤合評 ~鑑賞前と1話の圧倒的映像&話題性! その後はオーソドックスに過ぎてやや地味か?

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ウルトラマンブレーザー』序盤合評 ~鑑賞前と1話の圧倒的映像&話題性! その後はオーソドックスに過ぎてやや地味か?

ウルトラマンブレーザー』プレミア発表会

(文・ビオラン亭ガメラ


 『ウルトラマンブレーザー』プレミア発表会(2023年6月12日)を観ました。


 防衛隊が前線で活躍する映画『シン・ウルトラマン』(22年)みたいで楽しみです。デジタル着ぐるみでもないし(笑)。田口監督作品はミリタリー色、出るよね~。自主製作短編特撮シリーズ『UNFIX(アンフィックス)』(19年)とか。ホント、好きねぇ~ なんか映像も今までと違う感じで、カメラが違うんですかね?


 ウルトラマンブレーザーが大胆なデザイン。モノクロ? 赤と青が静脈、動脈で人間を表してる? とか思いました。昔のウルトラマンって「人間(のような種族)が人工太陽プラズマスパークで進化した」という設定の現代版みたい?


 主演は『仮面ライダードライブ』(14年)の悪側のボスの人ですか。頼れる大人感、イイね。長官役の加藤雅也は悪役なのかなぁ……宇宙人乗っ取られ型かもしんないけど。それもよくあるパティーンで、21世紀のウルトラシリーズでも幾つかあったけど。


 変身アイテムはオモチャまるだしだけど、なんかデカくてこちらもなかなかカッコいいけど高額…… ブレスにハメる「石」を集めてらんねーわ(笑)。「石」のデザインも『機界戦隊ゼンカイジャー』(21年)の「戦隊メダル」(劇中での名は戦隊ギア)みたいで良いね!


 しかし、最近はLED玩具ばっか。昭和のライダーベルトなんかもLED仕様で復刻したら化けるかも? 発表会恒例の「みんなで変身コーナー」。これって売上に貢献してるの?(笑) いつも皆さん楽しそうで良いですね!


 防衛隊の怪獣型巨大ロボット・アースガロン。防衛隊の怪獣型メカは『ウルトラマンZ(ゼット)』(20年)のセブンガー以降の定番化。いい傾向です。しかし、あんまり元ネタの怪獣アーストロンに似てないよなぁ…… ツノ一本にしろや! 別にアーストロンを意識したデザインではなくて、名前は後付なのかもね? 今回は二人で操縦ってのもリアル。スーパーロボット感がなくてグッド!


 そして新怪獣! 昨今の状況を鑑みると怪獣の新造は相当厳しいんだろうなと。まぁ、過去には「よりによって、このマイナー怪獣をなんで新造したんだよ!」って思うことも多々ありましたが(苦笑)。今回、少しは予算おりたのか?


 今年のスーパー戦隊が「LEDウォール」(背景は巨大な高精細LEDモニターに映したものをそのまま撮影。今ではNHK大河ドラマなどでも多用)なんてのやってますけど、あれだって要するにロケ代浮かすためであって、令和の今、特撮ものなんてコスパ最悪のTVドラマなんですよね…… 正直、毎週ミニチュア特撮やってるなんてのは狂気の沙汰なんでしょうなぁ。今は知らんけど、昔のウルトラなんて、いつも億単位の赤字だったって聞いてるし…… そんな中でよくやってるよ! 偉いよ!


 「長年やってきて、やって良いこと、悪いことが分かってきた」、「基本、明るく楽しいウルトラマン」との田口監督の発言が……(涙)。『ウルトラマンオーブ』(16年)の絶対に実現できそうもない前日談や後日談を描く全「エピソード10」構想とかな!(笑)


 今からワクテカが止まりません。放映が楽しみです~ あと、またどっかでビックカメラ京王調布店、出してあげて~(笑)


(了)
(初出・特撮同人誌『『仮面特攻隊2023年号』(23年8月12日発行)所収『ウルトラマンブレーザー』序盤合評1より抜粋)


ウルトラマンブレーザー』序盤合評1 ~『ブレーザー』序盤評

(文・T.SATO)


 今度の新作ウルトラマンは、頭部の突起が左右非対称!


 こういったデザイン上での斬新かつ変化球の試みも、7年ぶりに再開されたTVシリーズが、もう10年以上の長きにわたって放映されているゆえだろう。マニアや子供たちにとっても、シリーズが浅い段階での冒険であればともかく、10年もの作品群の重みで、少々の冒険をした程度では、「ウルトラマン一般」という「キャラクター」や「ブランド」それ自体の「揺らぎ」は相対的にも減って感じられてくるものなのだ。


 とはいえ、映画『ウルトラマンサーガ』(12年)において、ウルトラマンゼロウルトラマンダイナ・ウルトラマンコスモスが合体して誕生した強化形態・ウルトラマンサーガが、全身にウロコが生えて紫色のクスんだ色調だったのに比すれば、いかに動脈や静脈を思わせる文様があろうとも、基調はキラびやかなシルバーの体色である以上は、ヒーロー性を棄損させてはいないし、子供ウケも外してはいないデザインなのである。


 その意味では、先入観なしに見れば、悪の黒いウルトラマンことウルトラマンベリアルに似ていて、彼の実子でもあった『ウルトラマンジード』(17年)の方が、幼児には少々怖かったろうとも思うのだ(笑)。


 さらに加えて、比較対象を広げれば、平成ライダーシリーズ第3弾の段階ですでに仮面ライダーのデザインを逸脱していた『仮面ライダー龍騎』(02年)や、デザイン的にはライダーですらなく同様に頭部が左右非対称でもあった『仮面ライダーエグゼイド』(16年)などと比すれば、大した冒険ではないともいえる。あくまで、ウルトラの中では異色に見えたというだけだ。


 一見はディテールアップをほどこされてリアルに見えても、あるワク内においてだけそう感じる……といった心理ゆえだろう。とはいえ、そこも狙って新鮮さを出し、子供やマニアの耳目も集めて話題を作ることも意識はしていたろう。感情的な好悪での脊髄反射ではなく、一歩引いたり無限背進をしてみせて、他社のヒーローシリーズとも比較をすることで、見えてくる多角的な光景を指摘することこそ「批評性」であるのだ。



 #1においては、全編を夜景のビル街を舞台に、巨大怪獣に対してカラフルではなく地味な色彩の軍服を着用した特殊部隊が迎撃したり、その怪獣とウルトラマンとの戦闘だけに特化していた。いわゆる「リアル&ハード路線」の作品世界&特撮映像の実現だ。人間ドラマはほぼない。
 まぁ、ひとつの到達点ではあり、ある意味では怪獣映画『シン・ゴジラ』(16年)や映画『シン・ウルトラマン』(22年)すら超えている。しかし、スレた特撮マニアとしては、子供向けヒーローものは、適度にB級かつ明るくヌルいノリで、とはいえマイルドでもなく、巨悪に立ち向かうヒロイズムの高揚や、勧善懲悪のカタルシスもほしいので、そのかぎりではやや殺伐にすぎる感はある。しかし、そこは百も承知の確信犯での#1だろう。


 『ウルトラマンX』(15年)や『ウルトラマンオーブ』(16年)、何より『ウルトラマンZ』(20年)といった、明るくにぎやかかつヒロイックでもあった作品群のメイン監督を務めた田口清隆メイン監督が、往年の『ウルトラマンネクサス』や映画『ULTRAMAN』(共に04年)のような、リアルどころか鬱展開も入ったゆえに、子供ウケ的には失敗した作品を、今さら中二病的にガチで作るとはとうてい思えない(笑)。


 実際にも、#2ではピーカン晴天の屋外にミニチュアを持ち出しての怪獣vsウルトラマン戦を見せるどころか、ウルトラマンの必殺ワザとなる「光のヤリ」を早くも釣り竿のように用いて怪獣一本吊りをしている! #3では発熱怪獣の体表にさわって「熱っち! アッチい!」とウルトラマンが叫んでみせている! ……ごくごく個人的には「そんなこったろうと思ったゼ」(笑)。とはいえ、これは批判ではない。ホメているのだ。


 #1については「映像的にはやろうと思えば、ここまでできますよ!」といった業界やマニアに向けてのアピールや、SNS上での反響作りといった面もあっただろう。だから、#1に大コーフンしたマニア連中をさぞや失望・悲憤慷慨させているのかと思いきや……。
 筆者が観測した範疇ではそうでもなかった。好意的に受容されていますネ。今では受け手の「ライト(?)層」のマニアの方がよほどスレていた(笑)。ある意味、素朴なリアル&ハード志向が主流派であった昭和や平成も遠くなりにけり……。



(後日加筆)


 今さらですけど、同作は変身後のウルトラマンの内宇宙での顔出し主人公のセリフや表情演技がないですネ~。


 そういや、タイプチェンジもないですねェ。手持ちの武器も今のところは出てこないですネ~。


●スフィア
●悪の3超人
セレブロ
ウルトラマントレギア
●愛染社長
●SF作家先生
●ジャグラズジャグラー
●ダークサンダーエナジー
ウルトラマンビクトリー
●友也青年
●闇のエージェント……


 といったシリーズを通じたライバルや悪役もいませんねェ~(まぁ今後、登場するのかもしれませんけど)。


 ……それがイイ! と思っている方々もいらっしゃるとは思いますので、それはそれで尊重はいたします。


 しかし個人的には、そのあたりがドーなのかなぁ? ……と思っておりまして(笑)。


 1話完結の予定調和のルーティン展開だと、子供たちでも飽きてくるとも思われるし、『快傑ライオン丸』や『人造人間キカイダー』(共に72年)のむかしから第3勢力キャラを出して、(小学生レベルでの意味なのだけど)ストーリーを適度に錯綜させてパターン破りを入れてみせたり、無人格な怪獣だけではなく人格悪なども登場させて、善悪ヒロイズムな抑揚も入れておいた方が、勧善懲悪エンタメ的な高揚としてはイイとも思うけれどもなぁ。


 変身ブレスレットにハメるメダルも種類が多数あると思うのですけど、今年はそういう描写もないですねぇ。



 ハードだ! ではなく、オーソドックスに過ぎる! といった作風で、玩具の売上面でも不安だなぁ。


 でもまぁ、昨2022年度の『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』が、ヒロイズム皆無(?)の脱力系人間ドラマが中心で、個人的には同人原稿としてそう書くかはともかく、子供向けヒーロー番組としてコレはダメダメだろ!(笑) と思っていたのに比べれば、『ブレーザー』はフツーに過ぎるヒーローものなのですけれども、『ドンブラ』は『ゼンカイ』よりも売上がよかったそうなので、自分の審美眼に自信がなくなってきた(汗)。


(了)
(初出・特撮同人誌『『仮面特攻隊2023年号』(23年8月12日発行)所収『ウルトラマンブレーザー』序盤合評2より抜粋)


ウルトラマンブレーザー』序盤合評2 ~『ブレーザー』序盤評

(文・久保達也)

*「10年」もつづいた「ウルトラマン」シリーズ!


 『ウルトラマンギンガ』(13年)のスタート以来、放映が継続してきたいわゆるニュージェネレーションウルトラマンシリーズが、2023年7月8日に放映を開始した『ウルトラマンブレーザー』(23年)で早いもので「10周年」を迎えた。


 現在よりも「ウルトラマン」の人気がはるかに高かった時代に放映された、


●『ウルトラQ(キュー)』(66年)『ウルトラマン』(66年)『ウルトラセブン』(67年)の「昭和」第1期ウルトラマンシリーズの放映期間が2年8ヶ月間
●『帰ってきたウルトラマン』(71年)・『ウルトラマンA(エース)』(72年)・『ウルトラマンタロウ』(73年)・『ウルトラマンレオ』(74年)の「昭和」第2期ウルトラマンシリーズの放映期間が4年間
●『ウルトラマンティガ』(96年)・『ウルトラマンダイナ』(97年)・『ウルトラマンガイア』(98年)の「平成」ウルトラマンシリーズ三部作の放映期間が3年間


だったことを思えば、「ニュージェネレーションウルトラマン」が「平成」から「新時代」――2019年5月1日から使用されている元号は個人的に容認していない(笑)――をまたいで「10年間」も放映を継続できているのは、少なくとも営業戦略上は一応の成功をおさめてきたのだと解釈すべきところだろう。


 もっとも、「10年間」とはいっても、実際には新作のテレビシリーズの放映期間は例年7月から12月――『ウルトラマントリガー』(21年)と『ウルトラマンデッカー』(22年)は何度も総集編をはさむかたちで翌年1月まで放映が継続した――の半年間である。
 毎年1月から6月の半年間は過去作品の名場面集や再放送などで構成された『ウルトラマン列伝』(11~13年)を踏襲(とうしゅう)した番組枠でつないでいるため、実質的には新作の放映期間は通算「5年間」ということになる(汗)。


 だが、それでも先述した昭和の第1期や第2期、平成ウルトラ三部作など、「新時代」になってもいまだに根強い人気を誇っている作品群よりも放映継続期間は長いのだ。


 「ウルトラマン」は今となっては「仮面ライダー」や「スーパー戦隊」に人気面でも営業面でも圧倒的な差をつけられている印象がたしかに強い。


 それでも動画無料配信サイト・YouTube(ユーチューブ)の「ウルトラマン公式チャンネル」で配信された『ウルトラマンブレーザー』第1話『ファースト・ウェイブ』の再生回数は、2週間で724万回(!)を稼いでいるのだ。


 その注目度の高さからすれば、やはりウルトラマンは現在でも相応の人気があるのだろう。


ウルトラマンブレーザーの見た目は、たしかにカッコいい!


 さて、今回の主役となるウルトラマンブレーザーは設定では地球から遠く離れた星・M421からやってきた光の巨人とされている(劇中では今のところいっさい語られていない設定だが)。


 『ウルトラマンティガ』の世界観に似せていた『ウルトラマントリガー』や、『トリガー』の続編で同様に『ティガ』の続編『ウルトラマンダイナ』をモチーフとした『ウルトラマンデッカー』の主役ウルトラマンたちは、筆者のような中年オヤジの世代からすればトリガーはティガと、デッカーはダイナと正直見分けがつかない(汗)と思えるようなデザインだった。


 だが、ブレーザーは両目の上から頭部にかけて青い結晶体が造形され、しかも左側の結晶体はギザ上に大きく突起しており、左耳の上から左頬(ほお)にかけても同様の青い結晶体が見られる。


 胸のカラータイマーは近年のウルトラマンが凝(こ)った形状が多かったのに対して、従来の円形だがやや大きく、それを周囲から包みこむかたちでデザインされた赤と青のラインが両肩と左腕・左足に延びており、ボディ中央から右半身にかけては黒いラインが描かれている。


 ブレーザーの左右非対称のデザインは、筆者の世代的には故・石ノ森章太郎(いしのもり・しょうたろう)先生原作の特撮ヒーロー作品『人造人間キカイダー』(72年・東映 NET→現・テレビ朝日)の主役ヒーロー・キカイダーを彷彿(ほうふつ)としたほどにインパクトが絶大であり、きわめて斬新(ざんしん)で超絶にカッコいいと感じられるほどだ。


 右手から発した青い光を巨大な槍(やり)に変化させて敵に投げつける必殺技もまた然(しか)りである。やはりこれも、世代的には『帰ってきたウルトラマン』の主役ウルトラマンウルトラマンジャックがウルトラブレスレットを変形させて放つ槍状の武器・ウルトラランスやウルトラクロスを連想せざるを得ないところだ。


 だから、放映前の事前情報の時点では、個人的には『ブレーザー』に好印象をもったものだ。


ウルトラマンブレーザーの見た目はハデなのに、作風は意外に地味……


 ここで序盤の作品をごく簡単に振り返る。


●第1話『ファースト・ウェイブ』では、主人公で特殊部隊の隊長であるヒルマ・ゲントが、その他大勢の隊員たちとともに夜の大都会で巨大怪獣と交戦するさまがひたすら描かれた末にウルトラマンに変身して怪獣と戦い、勝利する。
●第2話『SKaRDを作った男』では、部隊の参謀長から怪獣対応の新設部隊・SKaRD(スカード)の隊長に任命されたゲントが面会に向かうかたちで新入隊員たちが紹介される。
●第3話『その名はアースガロン』では、世界各地で新エネルギー源の貯蔵タンクをカラにし、ついに日本に上陸してきた怪獣に対し、SKaRDが二足歩行型怪獣兵器・アースガロンを出撃させる。


 これは『トリガー』や『デッカー』でも感じたことだが、近年の「ニュージェネレーションウルトラマン」の序盤は従来の「ニュージェネレーションウルトラマン」の序盤と比較してややツカミや華(はな)に欠け、インパクトが薄いとの印象が強い。


 先述した『ブレーザー』の第1話は本編・特撮ともに全編がナイトシーン一色(!)である。その画面の暗さには『シルバー仮面』(71年・宣弘社 TBS)の故・実相寺昭雄(じっそうじ・あきお)監督が演出した第1話を彷彿としたほどだった(笑)。


 また、主人公のゲント以外にメインキャラがいっさい登場せず、あとはその他大勢の特殊部隊の隊員たちと避難民のエキストラだけなのもきわめて異例だ。
 まるで往年のゴジラ映画をはじめとする東宝特撮怪獣映画とか、あるいは映画『シン・ウルトラマン』(22年・東宝)を強く意識したかと思えるような、隊員間の職務上の事務的なやりとりばかりが繰り返される演出は、開幕としてはきわめて地味に思えてならなかった。


 さらに、ゲントのウルトラマンブレーザーへの変身は彼が「力がほしい」と思った際に、ゲントの左腕にブレーザーのデザインと同じ意匠(いしょう)の青い結晶体に包まれた変身アイテムが浮かびあがる描写だ。


 ゲントがなぜウルトラマンとして選ばれたのかを示すための、従来は定番として描かれてきたゲントとブレーザーの出会いの場面すらも、第1話では割愛(かつあい)されていた。


 そして、トリガーやデッカーと同様にブレーザーも「しゃべらないウルトラマン」だ。『トリガー』や『デッカー』では描かれていた、変身中の主人公男性がウルトラマンの体内イメージ空間で感情を発露する描写すらもない。『ギンガ』ではじめて導入されて以来、視聴者の感情移入を誘うには最適な演出として「ニュージェネウルトラマン」では常に描かれてきたにもかかわらず……



 第3話で初登場したアースガロンにしろ、映画『ゴジラ対メカゴジラ』(74年・東宝)以来、往年のゴジラ映画で再登場を繰り返したほどの大人気だったロボット怪獣メカゴジラの複製の域を出ないデザインと造形である。ブレーザーのデザインが斬新なだけにややインパクト不足だ。


 おまけに、初登場にしてはロクに活躍もしなかった。せめて前座として登場した怪獣などを倒すくらいの活躍は見せるべきだったろう。


 つづく第4話『エミ、かく戦えり』に至っては、『ウルトラマンネクサス』(04年)に毎回登場した生理的に嫌悪感が強いデザイン・造形だったスペースビーストのような怪獣に、アースガロンはその弱点の物質を投げつけるだけのために登場した。


 そういえば、先述のミレニアムゴジラシリーズに登場したメカゴジラたちは光線を発射するばかりで全然格闘しない、などと批判されたものだが、第4話のアースガロンはまさにそれだろう。
 いったいなんのために怪獣型の二足歩行スタイルの兵器にしているのか? 毎回、両腕を使っておおいに格闘すべきだろう。弱点の物質をミサイルにつめて戦闘機かバズーカで撃ちこめば済む程度の役割なら、アースガロンでなくてもよいだろう(笑)。


 そもそも本来ならアースガロンは、『ウルトラマンZ(ゼット)』(20年)に登場した防衛隊の巨大ロボット・セブンガーのように、第1話から登場させて目立たせた方がよいような、ヒーロー性もあるキャラクターではなかったか!?


*「玩具の販促番組」としては弱点だらけ?


 もちろん、アースガロンが第3話で初登場となったのは玩具販促上の都合もあるだろう。


 バンダイが最もメインの商品とするブレーザーの変身アイテムは第1話が放映された2023年7月8日(土)の発売である。アースガロンのデラックス玩具の発売をこれとダブらせるのはたしかにウマいとはいえない。


 1話のなかに多数の新キャラクターや新武装を登場させても、個々の印象が薄まってしまう。よって、話数を分けて小出しに登場させていく方が、それぞれの玩具向けキャラクターや武器などが魅力的に描けることは必然なのだから、そうであって然るべきだろう。


 加えて、第3話が放映された同年7月22日(土)は、子供たちが夏休みに突入したのと同じタイミングでもある。変身アイテムとアースガロンの発売をズラしたのは営業戦略からすれば当然のことなのだ。



 ただ、それはそれとして、玩具の販売タイミングとはズレても、たとえば第1話で怪獣に苦戦するゲントたちの眼前に、特殊部隊の誰ひとりとして知らない謎の怪獣兵器・アースガロンが突然現れ、ゲントたちの危機を救って去っていく…… あるいは、往年のスーパー戦隊『バトルフィーバーJ(ジェイ)』(79年)の序盤4話分のように建造中のアースガロンのワンカットなどを見せる…… といった描写がホンの少しでもあったなら、視聴者に次回以降への興味を持続させる絶大な効果を発揮し、玩具販促上も有利に働いたのではあるまいか?



 そもそも、そうしたナゾ解き要素以前に、


●『ウルトラマンギンガ』の闇の巨人・ダークルギエル
●『ウルトラマントリガー』の三馬鹿大将(笑)
●『ウルトラマンデッカー』の地球人に恨みをもつ未来から来訪した異星人


 「ニュージェネレーションウルトラマン」で常に描かれてきたレギュラー悪の存在が、第3話までの時点では示唆(しさ)されておらず、登場した怪獣同士の関連性なども特に描かれてはいない。


 そして、第1話で主人公、第2話でサブキャラたち、第3話でメカ兵器が小出しにされてきた序盤の展開の中では、それらのキャラクター間の因縁(いんねん)ドラマが描かれることもなく、『ブレーザー』には「タテ軸」はあるのか? とさえ思えてしまうほどだ。


 オタク第1世代の特撮マニア層の間でいまだに根強く聞かれる「ウルトラマンは1話完結形式のアンソロジーこそが魅力」などという声に今さらに応えているのだろうか?


 それに加えて、ブレーザーが怪獣を倒す必殺技が第1話から3週連続で、先述した巨大な「光の槍」のみというのは…… 他の必殺技も見せて、ヒーローの万能性を感じさせるべきなのでは? 初代ウルトラマンがほぼ毎週スペシウム光線で怪獣を倒していた半世紀以上前や、スーパー戦隊の巨大ロボットが毎週同じ必殺剣で敵を倒していた80年代とは時代が違うのだぞ。


 ちなみに、ブレーザーはタイプチェンジもしないという話だ。しかし、それではブレーザーのソフトビニール人形にはデザイン的なバリエーションがまったくなく、放映期間の半年でただ1種類の人形しか発売されないということなのだろうか? この少子化の時代に、ひとりの子供に人形1体だけを購入してもらう方法では、よけいなお世話でも売上高的には不安である。


 そのようなワケで、「本編」にしろ「特撮」にしろ画面が変化に乏(とぼ)しい上に、全体的に演出が淡々としているために、観ていてあまり熱くならない、燃えてこないクールな印象が強いのだ。


*「ウルトラマン」は「玩具の販促番組」である!


 ところで、『ウルトラマンタイガ』は実はシリーズ後半のみではなく、わりと初期編のころから陰鬱(いんうつ)で湿っぽい話が続出していた。そして、シリーズ後半ではYouTubeの公式チャンネルでの1週間の再生回数が毎回30万回程度にしか達していなかった。


 『トリガー』や『デッカー』もシリーズ後半では失速していた。しかし、それでも最低50万回程度は稼いでいた。


 よって、『タイガ』が当初は喜んでいたマニア層の多くを失望させたことは厳然たる事実だろう。だが、『タイガ』にはもうひとつの意外な事実がある。


 バンダイナムコホールディングスの決算資料で示された、2019年度の「ウルトラマン」のトイホビー売上高の実績は43億円だったのだ。


 これは『タイガ』が放映されてた2019年7月から12月の半年間を含む数字である。しかし、いまだに根強い人気を誇る『ウルトラマンオーブ』(16年)が放映された2016年度の売上高は31億円に過ぎなかった。玩具の売り上げ面では、人気だった『オーブ』をかなり上回る実績をあげていたのだ。


 やはり、相応に人気があった『ウルトラマンジード』(17年)が大きく貢献したためか、『ジード』が放映された2017年度はこれが43億円にまで上昇している。『ウルトラマンR/B(ルーブ)』(18年)が放映された2018年度は44億円となっていた。


 しかし、『タイガ』の人気自体はシリーズ後半では低迷しても、玩具の売り上げでは『ジード』『R/B』から大きく下降することもなく、ほぼ同じ水準を保っていたのだ。


 ちなみに、放映当時にマニアたちから絶大な支持を集め、個人的にも大好きだった『快盗(かいとう)戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー』(18年)の実績を示す、2018年度の「スーパー戦隊」のトイホビー売上高は60億円だった。
 しかし、この数字は前作『宇宙戦隊キュウレンジャー』(17年)の実績が該当する2017年度の91億円を30億円以上も下回る数字であった。『獣電戦隊キョウリュウジャー』(13年)の実績である2013年度の144億円に比べれば、その半分以下にまで落ちこんでしまうという、実に惨憺(さんたん)たる結果だったのだ。


 そして、『タイガ』と同じ年度に放映され、ある意味では『タイガ』以上に陰鬱な作風(爆)だったとも個人的には目している『騎士竜戦隊リュウソウジャー』(19年)の実績を示す、2019年度の「スーパー戦隊」の売上高は、『ルパパト』と同じ60億円であった。『タイガ』と同様に前作から大きく数字を落とすことはなかったのだ。


 これらの事実は、YouTubeの再生回数に現れる、おそらく小学校高学年のマニア予備軍や中高生や社会人年齢以上の特撮マニア間での人気や作品評価と、作風が暗かろうとも、そういったことに対する審美眼すらまだなくて、単純にヒーローのデザインやアクションに玩具のギミック的な魅力しか見てはいないのだろう幼児層とでは、その評価や喜ぶツボも実は異なっているために(笑)、マニア人気や再生回数が単純に玩具の売り上げ低迷には直結するとは限らないことを示している。



 逆もまた真なりなのだ。たとえ円谷プロ側のチーフプロデューサーが本当にやりたかったことが陰鬱で湿っぽい人間ドラマではあっても(爆)、作品はひとりだけがつくっていくものではないし、各種インタビューなどでは最初から上の方ですでにそういう方針が決まっていたという趣旨のことを遠まわしにボヤきつつも、『タイガ』の序盤では現場の脚本家・監督・特撮監督のやりたいことや、あるいは玩具会社側のオーダー(注文)なども入ってくるので、そういった過度な人間ドラマ志向も巧妙に回避されて、画面的なにぎやかさやコミカルさでも視聴者をつなぎとめようとする絶妙な工夫が多々見られたものだった。


 『タイガ』第1話『バディゴー!』の冒頭では、ウルトラマンギンガからウルトラマンロッソ&ブルの兄弟に至るまでのニュージェネレーションウルトラマンが勢ぞろいし、レギュラー悪のウルトラマントレギアとの一大決戦が宇宙空間を舞台に描かれていた。
 さらに同話は、サーベル暴君マグマ星人・宇宙怪人セミ人間・若親怪獣ヤングマザーザンドリアス(笑)をはじめとする、筆者の世代には印象深い人気怪獣や宇宙人も多数登場した豪華な一編でもあった。


 先述したように、『ギンガ』からはじまったニュージェネレーションウルトラマンが『ブレーザー』に至るまでに「10年」も継続できた理由は、映画『ウルトラマンゼロ THE MOVIE(ザ・ムービー) 超決戦! ベリアル銀河帝国』(10年・松竹)で生み出された「多元宇宙=マルチバース」の設定も大きいだろう。
 たとえそれぞれの作品が別次元・別世界ではあっても、「ウルトラマン」作品の世界はそのすべてがゆるくつながっているとして描いてきたことで、マニアや子供たちにもその作品世界の背後にあるスケール感を実に大きく感じさせて、ワクワクさせてきたことにもあっただろう。


 『タイガ』では、あのウルトラマンタロウの息子として設定されたウルトラマンタイガをはじめ、『ザ★ウルトラマン』(79年)の主人公ウルトラマンであるウルトラマンジョーニアスと同じU40(ユーフォーティ)出身のウルトラマンタイタスに、ウルトラマンオーブやロッソ&ブルが光の戦士となる力を得た惑星・O‐50(オーフィフティ)出身のウルトラマンフーマ、都合3人ものウルトラマンが登場していた。
 主人公青年の工藤ヒロユキはこれら3人のウルトラマンへの変身が可能であった。そして、タイガ・タイタス・フーマがふだんはヒロユキにしか見えない手のひらサイズの存在として描かれて、彼らの間で繰り出された掛け合い漫才的な愉快なやりとりが、当初は若い特撮マニアの間でも大好評となっていたものだった。


 こういった要素自体は、子供や幼児層にも魅惑的で楽しい趣向であったハズだ。だからマニア層から見て、『タイガ』はシリーズ後半では番組自体が迷走しようが失速しようが、子供間での玩具の売り上げでは前作・前々作から大きく低迷することもなく、同水準をキープできていたのだろう。



 マニア層から見れば作風はやや暗くても、往年の『シルバー仮面』や『ミラーマン』(共に71年)ほどではないのだし、陰鬱な夜間撮影が多用されていたワケでもない以上は(笑)、子供や幼児はそのへんの作風やドラマ面でのことなどわかっていないものなので、「恐竜」と「騎士」のモチーフはカッコよかった『騎士竜戦隊リュウソウジャー』も、同様の理由で売り上げを確保できたといった分析もできるだろう。


 もっとも、実はこの2019年度に、ゲーム・イベント、海外展開なども含めたグループ全体売上高では、「スーパー戦隊」は「ウルトラマン」に逆転されていた! その後も低迷をつづけているために、それはそれで「スーパー戦隊」の行く末の方も心配である。
 作品それ自体の罪ではなく、時代の空気や風潮とも連動して、時代ごとに子供や幼児が好むものやあこがれるものは変わっていく。00年代のむかしであれば、10(テン)キー付きの携帯電話型の変身アイテムだったりしたが、もちろんガラケーが絶滅した今ではもうそんなことはないのだ。
 電子家電や電子パネルやスマホなどが普及しきってしまった2020年代の現代では、そういったものにも未来・非日常性・憧憬といった特別な高みなどを感じることはなくなっており、当たり前の日常になってしまった。


 そういった時代だと、メカやその延長線上にある巨大ロボットに対するあこがれなどは、ゼロにはならなかったにしても非常に目減りしてしまっていることだろう。それでは、2020年代の子供たちがワクワクするようなアイテムやモチーフとは何なのか? それについては別の機会に譲ることとしたい。


 本作のメイン監督で1980年生まれの田口清隆(たぐち・きよたか)監督が、小学生当時に観たことがあったであろう、リアルロボットアニメ『機動警察パトレイバー』(89年・東北新社 日本テレビ)に対するオマージュを本当はやりたかったという見立てもある――ネットではそれを指摘する声が多数だが、まだ小学校低学年だった氏は同時期には『ビックリマン』(87~89年)の天聖界と天魔界の数億年にわたる抗争を描いていたビックリマンシールにハマっていたそうなので、実際のところはどうなのだろうか?――。


 しかし、玩具販促のためにも、子供たちを、ひいては今時の年長マニア層を喜ばせるためにも(笑)、『ウルトラマンZ』の防衛隊の巨大ロボット・セブンガーや『ウルトラマンデッカー』の防衛隊の巨大ロボット・テラフェイザーのように、もっとアースガロンを爽快でヒロイックに大活躍させて、単独でも敵の巨大怪獣を必殺技で撃破してしまうくらいのことをすべきではなかろうか!?

2023.7.29.


追記


 『ウルトラマンブレーザー』第7話『虹が出た 前編』のYouTubeでの公式配信の再生回数が、配信開始の2023年8月26日(土)から1週間を経た同年9月2日(土)朝9時の時点で46万回にしか達していない。


 先述したように、『ウルトラマントリガー』や『ウルトラマンデッカー』も放映を重ねるごとに再生回数は減少していた。しかし、それでも少なくとも50万回には達していたし、それもあくまでシリーズ後半になってからのことだ。


 それと比較すれば、早くも序盤の時点で1週間の再生回数が50万回を下回っている『ブレーザー』は、かなり危機的な状況にあると解釈せざるを得ない。


 あえて第7話の詳細には触れないが、公式配信に寄せられたコメントで、最も「いいね!」を稼いでいたのは、以下のようなものだった。



「すごい、人間パートが分厚(ぶあつ)く丁寧(ていねい)に作ってあるから、ウルトラマンパートが終盤にたった2分しかないのに満足感がすごい」



 なにか古き良き20世紀の特撮マニアのような懐かしい意見である。筆者も含む70~80年代の特撮マニアたちはほとんどがそのような意見を語っていたものだが(笑)。


 しかし、人間ドラマを見たいのであれば、一般層向けのテレビドラマや映画を観た方がよい。いっそ、名作文学なども読んだ方がよい。社会問題を論じたいのであれば、論壇誌などにも目配せした方がよい。筆者もそうしている。


 その逆に、「ウルトラマン」作品にはドラマ性などいっさい不要だ! などと極論を云いたいのでもない。その意味では筆者も、『ブレーザー』の第1話は乾いた攻防バトルに徹しすぎていて、意図的とはいえウェットな人間ドラマが皆無であったあたりで、うるおいがなさすぎてバランス自体は悪かったと思っているくらいなのだ。だから、特撮変身ヒーローものには人間ドラマはいっさい不要だ! などといった極論も採らない。


 とはいえ、変身ヒーローや巨大怪獣やスーパーメカや特撮シーンといった非日常的な存在を目玉にしている作品では、まずはそれらを魅惑的にカッコよく魅せるべきだろう。ドラマやテーマもあってよい。しかし云ってしまえば、ドラマやテーマも、変身ヒーローや巨大怪獣やスーパーメカや特撮シーンがカッコよく見えることに奉仕すべき存在なのだ!


 そういったことを明確に言語化・意識化できているかはともかく、21世紀以降の特撮マニアの大勢はもうそのように思っていることだろう。


 だから、先に引用したコメントのように、「ウルトラマンパートが終盤にたった2分しかないのに満足感がすごい」といった基準で、「子供番組」を評価する者は現在では圧倒的な少数派であることは、『ブレーザー』の第1話が2週間で724万回もの再生回数を誇っていたにもかかわらず、第6話『侵略のオーロラ』が2週間で62万回にしか達しないほどに大激減してしまった事実からも明確であるだろう。



 ちなみに、『ブレーザー』同様に6月下旬~7月頭のスタートで、第6~7話あたりではやはり同様に前後編を放映していた近作『ウルトラマンZ』・『ウルトラマントリガー』・『ウルトラマンデッカー』では、もっと徹底した華やかな先輩ヒーロー客演編だったのだ!


●『ウルトラマンZ』第6話『帰ってきた男!』には、『ウルトラマンジード』の主人公ヒーロー・ウルトラマンジード、その後編である第7話『陛下(へいか)のメダル』にはウルトラマンジードに加えて、主人公ヒーロー・ウルトラマンゼットが勝手に「師匠」と仰(あお)いだニュージェネウルトラマンの兄貴的存在・ウルトラマンゼロが登場!
●『ウルトラマントリガー』第7話『インター・ユニバース』~第8話『繁殖する侵略』の前後編には、前作の主人公ヒーロー・ウルトラマンゼットが登場!
●『ウルトラマンデッカー』第7話『希望の光、赤き星より』~第8話『光と闇、ふたたび』には、前作の主人公ヒーロー・ウルトラマントリガーが登場!


 いずれも変身前の青年を演じた役者はもちろんのこと、それぞれの因縁の敵までもが総登場した実に豪華な前後編であった。YouTubeでの再生回数も1週間で数百万回にまで達していたのだ。


 それを思えば、「ウルトラマンパートが終盤にたった2分しかない」ドラマ主導の回などは、少なくとも序盤でやるべきではないだろう。



 また、第6話に登場した『ウルトラセブン』(67年)が初出であるオーロラ怪人カナン星人以外は、『ブレーザー』には今のところ過去のウルトラシリーズに登場した怪獣・宇宙人の再登場がない。新規にデザイン・造形された怪獣ばかりが登場している。


 もちろんこれは、近年のウルトラ作品の売り上げ好調で、予算的にも余裕が出てきたことが大きいのだろう。


 近年のウルトラ作品では、第1クール中盤に早くも先輩ウルトラマンを客演させていた手法を断ち切ったことからしても、『ブレーザー』を独立した世界として仕立てるために、あえて過去作品の先輩ヒーローや怪獣を出さないのでは? と勘(かん)ぐっている方々も多いだろう。


 しかし、第1話であれば、そういった手法は新鮮に映ったとしても、20世紀の本邦初のマニア向けムックの影響で先輩ヒーロー共演自体が悪とされたむかしであればともかく、今のマニア層にも「ウルトラ」であれ「ライダー」であれ「戦隊」であれ「プリキュア」であれ「アメコミヒーロー」であれ、先輩ヒーロー共演のイベント性それ自体が恒常化しており、そしてそれが日本だけでなく世界中でも望まれているのだ。



 既成のウルトラシリーズとは世界観を刷新させて独立した作品として行くのか? もちろん、それでも面白い作品を構築できたのであればケチをつける気はない。しかし、今のところは1話完結形式の旧態依然としたルーティンな展開がつづいており、作品にもそこまでのパワーがないようにも見える。


 それであれば、このオーソドックスな展開自体もまたフェイク・ミスリードであって、シリーズ後半では怒涛の連続ストーリーや、他の先輩ウルトラヒーローとの客演編などで驚かせたり、興奮させてほしいものなのだが……

2023.9.2.


(了)
(初出・特撮同人誌『『仮面特攻隊2023年9月号』(23年9月3日発行)所収『ウルトラマンブレーザー』序盤合評1より抜粋)


ウルトラマンブレーザー』序盤合評3 ~『ブレーザー』はツマらない!?

(文・ビオラン亭ガメラ


 原稿というほどでもない雑談ですが(汗。ぶっちゃけ、『ウルトラマンブレーザー』はツマんないですわ!


 子供にはウケてるのかなあ?


 放映されたばかりの7~8話の前後編にしてもベタもいいとこ……


 いや、ベタが悪いんじゃないんですよ。


 各地で異変 → 恩師に話聞きに行く → 人間の傲慢さを謳われ対立(このへん、耳タコでうぜー) → 怪獣呼んでたの恩師でした…… って、話が平坦すぎやしませんか?


 もうちょい伏線というか、起伏がないと今どきダメだろ?って思います。ちょっとのことでいいんで。例えば、


 恩師に話を聞きに行く → あーせいこーせいアドバイスもらう → さらに状況悪くなる → 実はアドバイスは怪獣ニジカガチを蘇らせるためのものでした! 私ひとりでは復活は困難だったので、君たちを利用させてもらったよ! ……とかさ。


 前作『ウルトラマンデッカー』(22年)でも、ゲストの女博士が怪獣をコントロールしてた! みたいな話あったけど、色々とストーリーや複雑で一理も二理もある行動動機を仕込んであって、ペンダントがどうとかなどもあったりして、話も面白かったし細部の密度もプリプリしてたよ?

 隊長が「人間だって、地球の一部だ!」と即答したのは良かったけどね。あそこで90年代~00年代あたりのの特撮変身ヒーローものの主人公は悪い意味で悩み過ぎで、その展開や悩み方自体がもうテンプレ・陳腐化していたから。


 後編では防衛隊の巨大ロボット怪獣・アースガロンが、パワーアップで両肩にバズーカ砲が付く! ということで、またもリアル寄りに過ぎる描写。地味なんですよ! パッと見では、大した火力でもなさそうでしょ?w


 もっとさ、電鋸(電動ノコギリ)とか、メーサー砲(光線砲)とかさ、ゴテゴテした装備をつけろよ! って思うんですよ。防衛隊の戦闘機なり無人飛行メカが分離して、アースガロン手持ちの剣と盾になる! とかで良いんですよ。


 本作の方向性だから仕方ないのかもしれませんが、正直ツマんねーと思います……。始まる前は楽しみだったんですが、フタ開けてがっかり。良い部分もあるけど、それ以上にツマらん要素が多すぎ。着ぐるみ有りの『シン・ウルトラマン』くらいで良かったのに……。子供向けの現行作が『シンウル』より地味でどうする!?


 ハードってわけでもなく、オーソドックスが過ぎる。


 変身アイテム・ブレーザーブレスって、LEDがめっちゃ綺麗な発色で良いおもちゃなんですよ。なんで変身にしか使わないのかなーと思いますわ。もう「他トラマン」召喚でもいいから使いまくればいいのに。
 ドラマが良ければおもちゃも売れる? 売れる売れないどうでもいいわ。良いおもちゃが大活躍する番組が観たいんだよ!(笑)


 ヲタ、もしくは一般大人ウケ狙いなんすかねぇ? 今年の『王様戦隊キングオージャー』(23年)の「もっふん」とか、東映作品ならまだしも、そこを狙わないのが「ウルトラマン」の良さのひとつだったんですがねぇ。そこの牌(パイ)ってそんなデカくないしさw


 かと思えば、前回の第6話のカナン星人なんて「機械はすべて人間に不満の感情を持っている!」なんて言い出すし。ええー!? リアル路線違うの? 『ブレーザー』の世界では機械にもアニミズム的な魂や精神が宿ってるの!? 急に80~90年代の東映不思議コメディシリーズみたいなこと言いだしたから「?」ってなりましたわ。


 いや、メカニック担当の隊員中心で、防衛隊の巨大ロボット怪獣アースガロンが活躍する回こそ、ファンタジー回にしたらあかんのでは?w こういうアニミズムでファンタジーな要素があってもいいけど、もっとボカして匂わすくらいにしときゃ許されただろうに……


 コインランドリーの乾燥機を「クルル」と名付けてるヤスノブ隊員はキモイなあ(笑) → カナン星人、全ての機械を操って地球征服する → 手を尽くすがどうにもできない → 最後は機械にも心は伝わるはず! クルルやめてくれ! → 一瞬だけ止まる → それきっかけで逆転 → クルルにも感情があったんだ! → そんなわけ……あるかも?


 くらいのニュアンスにとどめた方がしっくり来ると思うけどなあ。作風含めて。


 ギャグシーンもなんつーかサラリーマン親父ギャグ(?)っていうか。ボールペンサインのギャグとかさー。あれが各キャラクターを表現してるとか言うんだろうけどさー。メインターゲットの子供たちにはもっとベタなのが良いんじゃないですかね? 昼飯をすごい大喰らいするとかさ。
 2話でエミが喫茶店でなんかおしゃれ注文してたけど、そういうこだわりとかいらんのよ。


 防衛隊の「スカード体操」とかいった子供向け企画にも苦笑。もっと簡単な体操にすりゃいいのに(笑)。


 スカードよりウルトラマンブレーザーのが気になるんで、そっちを描いて欲しいですわ。少々乱暴な雄叫びと戦い方が仮面ライダーアマゾン(74年)ぽくてオモロいのに、今んとこはただの戦闘要員でしかないし。巨大な光のヤリを投げる必殺技はいいけど、ビームがないとやっぱ地味いわ。


 今までで合格点あげられるのは、エミ回くらいだなあ。アクションもあったし。


 アンケートでもあれば思いっきり書いてやろうかとも思うんですが(笑)、イマツブ(円谷イマジネーション)では1話しかアンケートしてないよね?


 5話と6話の間の恒例「特別総集編」は見逃してしまいました。アマプラ(アマゾンプライム)で観るか……と思いきや。総集編は配信されないんかい!?


(了)
(初出・特撮同人誌『『仮面特攻隊2023年9月号』(23年9月3日発行)所収『ウルトラマンブレーザー』序盤合評2より抜粋)


ウルトラマンブレーザー』序盤合評4 ~新たなる光の巨人の物語が始まる

(文・中村達彦)

第1話「ファースト・ウェイブ」


 宇宙甲殻怪獣バザンガが夜の池袋に出現。地球防衛隊GGFの迎撃、第1特殊機動団の隊長ヒルマゲントは、部下を率いて降下地上に降り立つ。
 バザンガ進路上に自隊を2つに分けて展開する。司令部からの作戦変更というアクシデントが起きた。部下からも大きな信頼を得ているゲントは巧みに航空部隊の掩護を得るが、部下たちが負傷する。


 ゲントは身動きができない部下たちへ駆けつけ、続いて携行した火器でバザンガを攻撃するが効き目がない。空からの攻撃も弾き返し、両腕から発射する光弾も含め圧倒的なバザンガ。動けない隊員たちが危機に。
 だが突如、ゲントの両手に輝くメダルとブレスが顕現。、両手がスパークしながら合わさった瞬間、光る巨人が出現した。


 巨人は倒れるビルを支えたあと、バザンガと戦う。威圧するように歓声を上げ、ビルへよじ登って飛びかかるなど。その姿にGGFの幹部たちは、昔から宇宙飛行士たちの間で囁かれた未確認大型宇宙人のコードネームウルトラマンを思い浮かべる。
 一進一退。バザンガの尻尾を使った猛攻に苦戦する。胸のランプが紅に目まぐるしく点滅するが、私服の女性が放ったグスタフの一弾がバザンガをひるませ、そこで逆襲、両腕を引きちぎる。
 続いて、光の槍を発生させ、投げつける! 直撃爆散するバランガ。戦い終わり、夜の空飛び立っていく巨人。直後、気を失っていたゲントは目を覚ます。部下は全員無事で、彼の手にはメダルがあった。



 脚本は小柳啓伍。『ウルトラマンZ』(2020年)の軍事考証。監督は田口清隆。『ウルトラマンギンガS』(2014年)以来、ウルトラシリーズに参加、仮面ライダーシリーズやゴジラシリーズにも関わる。樋口真嗣の後継者というべき。


 ストーリーはバザンガ出現後、駆除に向かう第1特殊機動団の様子から始まる。緊張感高まるBGMが流れる中で、隊員の会話が進む。頭に指をあてているゲント、立ち上がり率先して向かう。車の中かと思ったら航空機の中の高い空で、兵士たちの様子からゲントが高い信頼を置かれていることがわかる。そのリアルな空気感で最初から掴まれてしまった。


 舞台となるのは、豊島区の池袋で、東池袋のサンシャインビルのあちこちが撮影で使われ、訪ねたことがある方々であれば「オッ!」と思うだろう(「ウルトラマンフェスティバル」や同人誌即売会「サンシャインクリエーション」でおなじみの場所。だからサンシャインビル自体は破壊されなかったのか?・笑)。


 部下全員の生還を口にし、突然の作戦変更にも冷静に対処。上空航空部隊の援護を要請する様子。動けなくなった別隊の救助にひとり率先して向かっていくゲントの勇姿で、彼が主人公だとすぐにわかる作品構成になっている。ゲントは今回よりも前から変身能力を持っていようだ?


 怪獣バザンガは甲殻類と爬虫類の混ざり合った姿。地球防衛隊の攻撃にもダメージを受けない強靭さ、腕から発射する光弾や突きや尻尾の攻撃での戦いなど、#1に登場する怪獣として申し分ない。


 ウルトラマンブレーザーも、これまでのウルトラマンとは違うデザインと演出を見せてくれた。発光する頭部の右の部分(『仮面ライダーエグゼイド』や『華衛士F8ABA6ジサリス(センティカ・エフハチエービーエーロク・ジサリス)』に似ている)、全身は赤・銀・黒・青の複数のカラー螺旋で構成されている。
 怪獣バザンガに威嚇するように咆哮し、バザンガの攻撃にビルに駆け上ってから飛びかかって逆襲するなど、野生児のような戦いで、発生した光を槍にしてぶつける必殺技スパイラルバレードもスペシウム光線二番せんじと感じさせない。


 これまでとは違ったウルトラシリーズの幕開け。星雲賞を受賞した『シン・ウルトラマン』(2022)を意識する箇所も幾つかある。田口監督が師である樋口監督を意識して、「私だったらこうしましたが」と撮ったようにも見える。


第2話「SKaRDを作った男」


 バザンガ戦のあと、ケントはGGF日本支部司令部参謀長・ハルノレツから新たに創設されたSKaRD(スカード。特殊怪獣対応分遣隊)指揮を命じられる。光の巨人をウルトラマンブレーザーと呼ぶゲント。すでに隊員人選も進んでおり、


●バザンガとの戦いでグスタフを撃った女性・アオベエミ
●航空支援などでサポートしたナグラテルアキ
●格闘に長けたミナミアンリ


 以上の3名が加わった。最初は貧弱だった基地・車輛・火器もあっという間に揃えられていく。


 同じ頃、近海では船舶が怪獣によって沈没。出撃した潜水艦も沈められてしまった。陸地に迫って来る怪獣。エミが情報収集で先行、SKaRDは初出動準備を。江戸時代にも出現記録はある深海怪獣ゲードスは漁港・先美港に上陸する。陸からの迎撃もものともしない。


 SkaRDはテルアキが留守番を、ゲントとアンリが現地へ赴く。エミとも合流する。


 ゲードスが背中から熱を放出していることに気が付き、先行するゲント。自分の船を守ろうとするも気絶した老船長を気遣ったゲント。その時、両腕にブレーザーブレスとブレーザーストーンが発生、導かれてウルトラマンブレーザーへと変身した!


 高圧水流や触角に苦戦するが、エミとアンリの援護射撃に助けられる。不利を悟った怪獣ゲードスは海へ逃げ込む。
 しかし、ブレーザーが発生させた光のヤリ・スパイラルバレードが釣り竿になって海中深くへ。ゲードスを空高く釣り上げて。次いでスパイラルバレードが貫通する。


 帰還したゲントたちは、地下で5人目の隊員バンドウヤスノブと23式特殊戦術機甲獣アースガロンに対面する。



 前話同様、脚本は小柳啓伍。監督は田口清隆。SKaRDが創設されて、その隊員が紹介されていく話と、ゲードスが襲来する話が同時に進む。これまでウルトラシリーズはほとんど#1から防衛チームは完成して隊員メンバーが揃っていた状態であった。だが今回は、基地も隊員も1から始めなければいけない。


 ゲントにSKaRD隊長を命じたハルノ参謀長。演じるは加藤雅也。『超速パラヒーローガンディーン』(2021)ラストにも謎の男役で出演していたが(続編やらないのか?)、何かいわくがありそうで。


 時間の都合でカットしたのかもしれないが、ゲントが元いた第1特殊機動団を離れるとき、別れを惜しむ部下たちとのシーンが欲しかった。そして新しい部下たちとの出会い。エミと喫茶店で会話したり、テルアキやアンリが書類にサインなど、その他の絡みも、ぎこちなくあちこちにギャグが散りばめられていて笑ってしまう。ゲント自身にも隊長の威厳がない。


 最初にゲントと接触したエミ。バザンガへの攻撃は鼻孔に撃ち込むには、ゲントには装甲の隙間と間違って伝わったそうだが、それは意図的なものか? そもそも鼻孔が弱点と何故知っているんだ? 今後の伏線か? エミは私服姿で笑っている姿が可愛い。毎回違ったコスプレを披露するそうで。
 関西弁を喋りさりげなく車両のメンテナンスや銃のマニュアルをやってくれたヤスノブが最後に登場。同時に防衛隊の巨大怪獣型ロボット・アースガロンも登場する。その整備をする人たちもおり、5人と思ったSKaRDは大組織であった。しかし、その活躍は次回以降で。


 怪獣ゲードスの頭部は提灯アンコウ状の触覚で、深海魚の特徴をつかんだ身体と深海怪獣らしいデザインだ。海で暴れ出し、老船長が接触したことでその恐ろしさを語り、それから脅威が広がっていき、時速80ノットで先美港に上陸して蒲鉾(カマボコ)工場を襲う。怪獣出現襲来のパターンの要点を相応に抑えてドラマは動く。
 ゲードスに絞ってのドラマも観たかった。田口清隆がシナリオを手がけている連載マンガ『神蛇』(2023)を連想する。
 ブレーザーとゲードスの戦いは、エミとアンリの援護もあって勝つ。逃走したゲードスへ投げたスパイラルバレードが釣り竿になって釣り上げる『ウルトラマンタロウ』(1973)的な展開。まさに「ヘンテコリンな魚を釣ったぞ!」だ。そのオチのつけ方は好き嫌いの評価が分かれるだろう。


第3話「その名はアースガロン」


 巨大ロボット・アースガロンも加わり、SKaRDの装備は整いつつあった。その頃、ヨーロッパや北米ではプラント(工場)から液化ティーテリウムが抜かれる事件が続発していた。ゲントは新たな怪獣の脅威を予想し、出撃に備えて訓練に勤しむ。彼はかつて勤務中にウルトラマンブレーザー接触を受けた過去があった。
 怪獣がつくば市の研究施設を狙っていると予想したゲントは、アンリに戦いを想定させるが、直後に甲虫怪獣タガヌラーが沓波市に出現。防衛隊の総攻撃でタガヌラーが抜食していたティーテリウムが誘爆することを恐れ、先にあたることに。
 ゲントとアンリの搭乗したアースガロンが空へ出撃する。体内温度が上がっていくタガヌラー。ゲントは航空部隊の攻撃を中止させ、アースガロンを地上に降ろした。


 タガヌラーとアースガロンの戦い。口の荷電粒子砲がタガヌラーの右腕を切断する! 続いての肉弾戦で周囲に起こった爆発! アースガロンは機能を停止して倒れてしまう。ゲントは再起動させようと外へ出るが、ブレーザーブレスとブレーザーストーンが出現、変身する。


 タガヌラーと戦うブレーザーだが、吸食したティーテリウムで体内温度は1万度に達しており、高温に苦しむ。そのとき、ヤスノブの指示でアンリは緊急装置で尻尾のテイルVLSミサイルを発射! タガヌラーをひるませた。その後、タガヌラーは溜まったティーテリウムエネルギーを頭部のツノから放出。100万度の高エネルギーはブレーザーの制御により上空へと垂直に飛んでいく。続いてスパイラルバレードでタガヌラーは撃破された。



 本話も、脚本は小柳啓伍。監督は田口清隆。戦術機甲獣アースガロンの初陣で、『ウルトラマンブレーザー』の世界観とストーリーの基本を見せてくれた。アースガロンは、『ウルトラマンZ』(2020)の特空機、『ウルトラマンデッカー』(2022)のテラフェイザーに次ぐ、防衛チームの二足歩行のゴジラ型ロボット怪獣だ。カッコいいシーンをあちこち見せてくれた。玩具が欲しくなるアースガロン。
 起動して飛び立つ発進シークエンスは、英語のアナウンスが響き、あちこちで作業にあたる整備員の姿や動かされるアースガロンの細部が描かれ、往年の『ウルトラセブン』(1967)のウルトラホーク1号の発進シーンやその細部のカッコよさとも重なる(しかしアースガロンの重量は2万5千トン。それが最大マッハ4で飛行するのはやり過ぎのような……)。


 つくば市に到着してから、噴き出した白霧をバックに咆哮して、それを正面からアップで映ると、往年の東宝川北紘一特撮監督のような逆光。カットにはあちこち鉄の塊の力強さが出ている。武器を発射するその姿と活躍は、令和のメカゴジラといっても申し分ない。ワンダバのBGMも流れて盛り上がる。


 アースガロンを動かすSKaRD隊員たち。前半に厚いマニュアル片手にコクピットで操作の指導を受けたり、紙で作られた街で、操縦したときの模擬戦をシミュレートし、中盤以降のタガヌラーとの戦いは、隊員それぞれの活躍が描かれている。戦い終了後、テルアキが言った「良いチームにしていきましょう」は決まっている。


 隊員それぞれに屈託ない笑顔で接し、タガヌラー出現時には液化ティーテリウム管理の大川に情報収集で接し(この大川役は声優でもあり特撮作品にも多く声をあてている関智一!)、大声の全力で対しているエミと、真面目ながら小声で虫嫌いをひとり言のように言ってのける(笑)操縦担当のアンリは対照的だ。


 そしてゲント。それぞれの部下の長所を見てとり、アースガロンの到着時に、航空部隊を堂々と退かせる様子も渋い。そして、彼がウルトラマンブレーザーと出会ったのは、#1より前のことだったと回想で明かされた。


 今回戦ったタガヌラー。虫型怪獣の特徴を掴んでいる。ティーテリウムで体内温度は1万度に達し、ブレーザーも「アチチッ」と叫んでいる(笑)。でも世界各地のティーテリウムを吸い、溜まったエネルギーを最後に放出するだけで、今一つ説明不足だ。この怪獣は何がしたかったんだろう? アースガロンの引き立て役になった感がある。


第4話「エミ、かく戦えり」


 軟体怪獣レヴィ―ラが出現するが、コンテナに搭載されていた新型殺菌剤・FK1に触れて退散する。その後もレヴィーラは出現。FK1による撃退が続くが、その使用量が増えていく。FK1を作った大手化学企業ノヴァイオが怪しいと潜入調査をすることになる。
 ノヴァイオ社長・曽根崎の秘書としてエミが潜り込み、曽根崎の信頼を得る。ノヴァイオ孫会社の海生生物クリオネを改良した「人工クリオネ」がレヴィーラに似ていることや、曽根崎が元GGF科学者だったことが判明する。


 怪獣レヴィ―ラに対してアースガロンも出撃して、FK1を使って攻撃する。しかし、レヴィ―ラFK1耐久性は強くなるばかり。エミと水族館で接触していたゲントは、深まっていく疑惑から、一度調査を中止するように言うが、エミは激してしまう。


 夜間、社長室を調べ、GGFの資料を持ち出していた証拠を見つけるが、曽根崎らに見つかってしまう。レヴィ―ラは隕石に付着していた生物から作り上げ、意図的に出現させていた。FK1を使用させることだけでなく、自分に注目させ英雄視させることを狙っていた。得意げに語る曽根崎。
 だが全てが、水族館でエミが激したときから、曽根崎を引っ張り出すための芝居であった。駆けつけたゲントとエミは曽根崎らを一網打尽にする。


 乱戦の中でレヴィーラは目覚める。ゲントもブレーザーに変身! 苦戦するが、アースガロンも到着! エミのアドバイスで、液体窒素が投げられ、凍り付いたところをスパイラルバレードが突き刺さる。


 事件解決後、エミからゲントへ感謝の花束が贈られた。



 脚本は継田淳。『ウルトラマンZ』(2020)や『ウルトラマントリガー NEW GENERATION TIGA』(2021)も手がけた。監督は辻本貴則。『ウルトラマンX』(2015)から長くウルトラシリーズに関わり、セットやアクションで力の入ったカットが特徴。
 本話では、レヴィーラの怪獣アクションとエミのスパイアクションが両立して描かれていた。


 これまでのウルトラシリーズでも、初代『ウルトラマン』(1966)第10話のジラース、『帰ってきたウルトラマン』(1971)第34話のレオゴン、『ウルトラマンデッカー』(2022)第10話のネオメガスなど、人間に生み出された怪獣は存在してきた。
 しかし、レヴィーラは己を英雄視させる私欲で生み出されたことや、クリオネが元でこれまでの恐竜型怪獣とハ大きく異なった姿からか、異色の話となっている。
 くすんだ白色のカラーリングに、醜くゆがんだ女性の顔を思わせる容貌、自分を液化させ姿を消したり、即座に再生したりと異形の存在だ(#3のアンリが言ったごとく「気持ち悪い」)。


 自分を陶酔し賛美する歌まで作って自身向けに流している曽根崎。歴代ウルトラシリーズに登場してきた、自分に酔っている宇宙人キャラにも相通じている(笑)。


 ノヴァイオ社に潜入したエミの活動がメイン。社長秘書としての眼鏡のスーツ姿と、本話ラストの繁華街のギャルの姿は、口調も含めて同一人物には見えない。
 各話で違ったファッションをしていることについては、90年代に特撮ヒロインをイラストで連載解説して『空想流行通信』(97年)の著作を持っていた香坂真帆さんにどこかで取り上げてもらいたい(笑)。
 エミが夜間の社長室を捜索する姿や、その後に曽根崎の部下たち相手に凛として見せるアクションも決まっている。レヴィーラへ液体窒素をぶつける機転も利いている。


 ラスト、ゲントにピンクのガーベラの花束を渡す。ゲントの奥さんへと言っているが、本当はゲントへ。ガーベラの花言葉は「感謝」。自分を信頼して任せて、いざというときに守ってくれた上官への感謝なのだ。


 ゲントは、テルアキのハルノ参謀長への「報告しましょう」の発言に対してイヤな顔をする。苦手のようだ。交代でアースガロンを操縦し、前半ではテルアキとヤスノブ、後半ではテルアキとアンリが。両手の武装105ミリ機関榴弾砲・アースガンも披露した。


 曽根崎の撃った銃撃で配電盤が壊れ、レヴィーラが目覚めるが、御都合主義だろう。他にも複数のレヴィーラが眠ったままで、ブレーザーとの戦いのときもそのままだったが、その後、GGFに処分されたのだろうか?


第5話「山が吠える」


 GGFが開発を進めていたレールガン(=超電磁砲。すでに現実世界でも実現している科学兵器)であるメガショットの試験で、秋田県の市之字村にある訓練場へ飛んだアースガロンとSKaRD面々。


 市之字村はアンリが幼い時過ごした場所であった。メガショット設置反対を訴える女性・ミズホが、山神さまドルゴが目覚めると立ちはだかる。彼女はアンリの幼なじみでもあった。古い巻物を見せてドルゴの存在を訴えるが、確証がつかめず、メガショットとアースガロン模擬戦は実施される。


 その最中に、長い眠りについていた山怪獣ドルゴが、メガショットを背中に乗せて目覚めた。「山」そのものがドルゴだったのだ。光線をアースガロンに放ち麻痺させるも、水を飲んで二度寝に入る。しかし、1時間ほどで目覚めることが判明する。メガショットを背負ったまま暴れ出したら……。


 一同は討伐を考えるが、ミズホは撤去された祠(ほこら)にあった御神体を持っており、祠の穴に差し込めばドルゴは長い眠りにつくと訴える。東京で留守番をしていたエミの助言も後押しする。その意見を容れて、眠るドルゴの山へ登るゲントとアンリ。テルアキとヤスノブは整備員とアースガロン修理にあたる。


 ゲントたちが祠跡に着いたとき、ドルゴは目覚めて立ち上がった。地鳴りとともにバランスを失い空中へ落下するゲントは変身した。修理が成ったアースガロンが援護。ブレーザーはスパイラルバレードを折って投げつけ、メガショットを2つとも切断する。


 アンリが「眠ってけれー!」と御神体を祠の穴に差し込むと、ドルゴは眠りについた。ブレーザーに押し戻されて山に戻っていく。ミズホとアンリは笑い合い。SKaRDは帰途についた。



 前話同様、脚本は継田淳で、監督は辻本貴則。今回はアンリを中心に、舞台は東北の山村だ。クライマックスは日中で、#4とは対照的なエピソードとなった。しかし、どちらも怪獣主体である。もちろん、そこに人間が絡んでいくことで、怪獣と人間ドラマが両立して描かれていた。


 倒さずに済んだドルゴ。長い眠りで「山」と一体化したそのデザインは昭和の第1期ウルトラシリーズの怪獣デザインを手掛けた成田亨(なりた・とおる)ぽい。エピソードの方も、『ウルトラQ』(1966)と『ウルトラマン』(1966)のごとく牧歌的だ。


 「山」そのものが怪獣で、植林された草木もそっくり体毛や口ひげとなっており、角ばった四足歩行の姿に、超兵器の砲身・メガショットが載った姿は、『ウルトラセブン』(1967)第28話の恐竜戦車を彷彿とさせる。土着信仰で長く神さまと崇められていた怪獣というのは『ウルトラマンタロウ』(1973)に出てくる怪獣のようだ。


 メガショットを秋田の山村実験場で配置するのは、近年の秋田でのイージスアショア設置とも重なる。狙ったのだろう。毎時マッハ5の砲弾を毎分30発発射! 自動追尾装置も付いた優れものだ。ドルゴの背中にくっついており、ブレーザーを苦戦させた。だが実質的には固定砲台なので、どこに現われるかわからず高速で移動する怪獣に有効なのだろうか?


 前半の模擬戦では、アースガロンとメガショット、正面から手加減なく撃ち合っている。後半のドルゴとの戦いでは、空中で回転するシーンを見せ、その前にはアースガロンの首部で整備員が修理を行っているカットがあった。昭和には撮れなかっただろう。
 メガショット責任者はゲントたちに友好的で、反対しているミズホにも敵意を見せていない。メガショット設置に関してチェックしたと言い、事件後、色々な課題が見え頑張っていくと述べていた。この類の話に出てくる人は、頑迷で事態を悪化させていくのが多い。今後もメガショット開発が続けられていくが、アースガロンの武器になったりして……。


 ドルゴを記録した巻物は、科学博物館にも関連資料があるとされる。『ウルトラマンX』(2015)はじめ、作品世界観をまたいで近年の諸作に登場してきた古文書「太平風土記(たいへい・ふどき)」を連想する。


 アンリは小声でぼそぼそとした話し方で(快活なエミと対照的)、田舎にも良い感情を持っておらず、テルアキの田舎の自慢話も遮っているが、ミズホとの再会や事件の経緯から、ラストでは打ち解けていた。


 ゲントとアンリは移動指揮車両・MOPで、テルアキとヤスノブはアースガロンで帰ったが、整備員たちはどうしたのだろう?


特別総集編「巨大生物の正体を追え」


 怪獣出現を振り返り、新しい報道番組企画に取り組むTV局スタッフ。バザンガ以来の襲来する怪獣たち。その映像を観るテラシマヅサブロウタとニホンマツタクマ、バザンガ来襲でリポーターを務めたキヨシマダイラレイコ。
 この3人が怪獣や戦ってくれるウルトラマンブレーザーについて語り合う。レイコはティーテリウムを扱った大川にもタガヌラー来襲について取材し、ノヴァイオ社が生み出した怪獣や地方での怪獣騒動についても話が及ぶ。防衛隊への取材をしようと考えるが、ガードが固くて困難だったそうだ。
 サブロウタは真実を伝えるのが、俺の仕事だろうと意気込むが、報道番組はスポンサーの意向でアニメに変更になったとの連絡が入り(笑)、意気消沈する。



 脚本は足木淳一郎。2012年から『ウルトラマン列伝』(2011)以来、ウルトラシリーズには10年以上関わってきた。プロデューサーでもある。監督は「演出」名義で村上裕介。総集編であるが、本編には登場しないTV局のスタッフから、物語を別の視点から再び語らせるという描き方をしている。『ウルトラマンガイア』(1999)でもTV局の取材クルーがイレギュラー的に登場していた前例はあったが。


 映像を観ながらそれぞれが突っ込んでいる。しかし、我々が作品を観ながら思っていることとほぼ一致している。ただし、入手した映像や知っている情報も、曽根崎がレヴィーラを生んだ目的を知らないなど限られており、それらしく仕上がっている。


 今後の話数で彼らも登場するのか? SKaRDが今回のサブロウタらに取材される話はあるのだろうか? 『ウルトラマンX』(2015)第16話のごとく。


第6話「侵略のオーロラ」


 急に自動車や飛行機がコントロールできなくなる事件が相次ぐ。ヤスノブは器用で仕事熱心だが、皆の雑務を引き受けすぎてオーバーワークになる。さらにアパート近くのコインランドリーの乾燥機に「クルル」と名付け、愚痴を聞いてもらっている姿を、ゲントに見られてしまう。
 落ち込むヤスノブ。ゲントと入れ替わるようにコインランドリーに来たのは、オーロラ怪人カナン星人のハービーであった。機械を負の感情で操るオーロラ光線を乾燥機やヤスノブに浴びせる。頻発している事件もカナン星人の仕業で、レヴィーラの事件でアースガロンを知ったハービーは、ドルゴの事件でもオーロラ光線を撃ち込んでいた。アースガロンも操られて出撃してしまう。ハービーはヤスノブにも協力を呼びかける。


 拒否したヤスノブは、意思を持ったクルルが指し示した異空間を通ってハービーを追跡。ゲントもクルルからヤスノブの行き先を知らされ、テルアキ・エミ・アンリと指揮車両・MOPでカナン星人アジトに向かうが、暴走したアースガロンの攻撃を受ける。
 アジトへ突入したヤスノブはハービーに捕えられる。アースガロンはMOPを地面に放り投げ、外へ出たゲントは変身する。


 ウルトラマンブレーザーVSアースガロン。戦いの中、機械には心があると、ハービーの拘束から脱してきたヤスノブがアースガロンに呼びかける。流れ弾がアジトを直撃して、ヤスノブは吹っ飛ばされる! ブレーザーが救おうとしたが、先にアースガロンの手が伸びていた!


 スパイラルバレードが逃走する星人のアジトである宇宙船を両断する。その後、クルルを掃除するゲントとヤスノブがあった。



 三度、脚本は継田淳で、監督は辻本貴則。今回はヤスノブがメインで、ユーモアを含んだ異色のエピソード。


 『ウルトラマンブレーザー』も#6まで来た。最近のウルトラシリーズでの新たなパターンと化しつつあった、設定やストーリー、イベント編がほとんどなく、登場する怪獣も本作オリジナルが続いてきた。ややオーソドックスに過ぎる感じもあるが、怪獣に重点を置いた話が続いている。


 カナン星人は『ウルトラセブン』(1967)第24話以来の登場。むかしのアジトは灯台だったが、本作では海の近くに建つ風力発電所となっていた。メカを狂わせるオーロラ光線や、セブンが使役するカプセル怪獣ウインダムのように、コントロールされてブレーザーと戦ってしまうアースガロンなど、あちこちに原典へのオマージュを感じさせる。


 印象的なのはハービー。堂々とコインランドリーへやってきて、ヤスノブ相手に熱弁を振るう。カナン星人の衣装を示し「僕と一緒に来なよ(着なよ)!」と駄洒落を言う。考えてみれば、ヤスノブを誘わなければ、計画はうまく行っていた。アジトでは捕らえたヤスノブに、戦いに夢中になっている間に逃げられている。策士策に溺れる。だが、侵略者とはいえ、『ウルトラマントリガー』に防衛隊の一員として登場していたメトロン星人マルゥルにも被さって何か憎めない。


 ギャグ回かと思ったら、機械と人間とのドラマもあった。乾燥機を人間の友達のように話しかけている。どこかの芸人で似たような話を聞いたことがあったが(笑)。ヤスノブはクルルやアースガロンを対等な友人として接している。


 ヤスノブは暴走したアースガロンへ呼びかけ、それに応えてアースガロンも落下するヤスノブを救い、その前のMOPをつかんでいるときも、荷電粒子砲やアースガンを使ってはいない。ロボットにも心が芽生えた。
 これまでも多くのアニメ・特撮作品で、無機物の人型ロボットに心が芽生えたり、主人公とロボットとの友情ドラマが描かれてきた。『ジャイアントロボ』(1967)最終回や『ターミネーター2』(1991)のラストなど。


 他にも、ゲントが実に低姿勢でクルルにヤスノブの行き先を尋ねたり、最後まで彼と分かり合おうと努めたり、エミやアンリ同様に部下から見た理想の上司だ。そのヤスノブはオーロラ光線を浴びせられて服を脱いで半裸になったら、童顔に反してムキムキだったり、ヤスノブは勤務外では自宅アパート近くに行くのにも銃を持参していたり、ハービーの駄洒落に「おもんな(面白くない)」と返し、コインランドリーを出てカナン星人バービーを追いかけようと上半身裸のままで鉢合わせしてしまった男を演じたのは本話の担当ではないが田口清隆監督だったり、あちこちのシーンで小ネタの注目ポイントがあった。


(了)
(初出・特撮同人誌『『仮面特攻隊2023年9月号』(23年9月3日発行)所収『ウルトラマンブレーザー』序盤合評3より抜粋)


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ウルトラマンマックス』(05年)#1「ウルトラマンマックス誕生!」 ~序盤評・原点回帰は起死回生となったか!?

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ウルトラマンネクサス』(04年)#1「Episode.01夜襲 -ナイトレイド-」 ~ハイソな作りだが、幼児にはドーなのか!?

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ウルトラマンネオス』(00年)#1「ネオス誕生」

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20120226/p2

ウルトラマンダイナ』(97年)#1「新たなる光(前編)」~#11「幻の遊星」

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19971201/p1

ウルトラマンティガ』(96年)#1「光を継ぐもの」~#15「幻の疾走」

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ウルトラマン80(エイティ)』(80年)#1「ウルトラマン先生」 ~矢的猛先生!

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『ザ☆ウルトラマン』(79年)#1「新しいヒーローの誕生!!」 ~今観ると傑作の1話だ!? 人物・設定紹介・怪獣バトルも絶妙!

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ウルトラマンタロウ』(73年)#1「ウルトラの母は太陽のように」 ~人物像・超獣より強い大怪獣・母・入隊・ヒロイン・5兄弟の正統タロウ誕生を漏れなく描いた第1話!

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ウルトラマンエース』(72年)#1「輝け! ウルトラ五兄弟」 ~超獣・破壊・防衛組織結成・先輩&新ヒーロー登場を豪華に描く!

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