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パリピ孔明・ダンスダンスダンスール ~純オタ向けとは異なるナマっぽい人物描写!(優劣ではなく) 青年マンガ誌連載の傑作&良作!

『波よ聞いてくれ』『イエスタデイをうたって』『ハコヅメ~交番女子の逆襲~』『ぐらんぶる』『この音とまれ!』『殺し愛』『グレイプニル』 ~純オタ向けとは異なる、漫画原作アニメの良作の数々!
『うる星やつら』『つぐもも』『小林さんちのメイドラゴン』『よふかしのうた』 ~異界から来た美少女キャラとの同居ラブコメにも今昔!(非日常・異能よりも日常性が強調・好まれる傾向)
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[アニメ] ~全記事見出し一覧


 実写TVドラマ版『パリピ孔明』(23年)が放映中記念! とカコつけて……。週刊青年マンガ誌連載マンガが原作である、2022年春アニメの深夜アニメ版『パリピ孔明』・『ダンス・ダンス・ダンスール』(共に22年)評をアップ!


パリピ孔明』『ダンス・ダンス・ダンスール』 ~純オタ向けとは異なるナマっぽい人物描写!(優劣ではなく) 青年マンガ誌連載の傑作&良作!

(文・T.SATO)

パリピ孔明

(2022年春アニメ)
(2022年8月7日脱稿)


 「パリピ」とはパーリー・ピーポー。パーテイー・ピープルの訛(なま)りの略で、パーティーを好む軽薄な人々。


 「孔明」とは古代中国にて魏・呉・蜀の3国が三つ巴の戦いを繰り広げた時代の『三国志』に登場する、実在の天才軍師・諸葛孔明(しょかつ・こうめい)のこと――魏の歴史書魏志 倭人伝」の時代なので、卑弥呼の時代の人物ですネ――。


 死後に現代日本の渋谷に転生(転移?)した、往時の服装に羽毛扇を持ったままの孔明


 彼が現代日本社会や若者文化を、偶然に知り合った若きシンガーソングライターの少女からの教授や彼女のスマホWikipedia(笑)などで徐々に事情を理解し、軍師もといマネージャーとして彼女をスターダムに上げようと知略をめぐらしていく……といった実にマンガ的な楽しさに満ちあふれた作品である。


 現代日本に転生した孔明という一点や、死亡時の年齢よりも若返った身だとはいえ現代日本の若者音楽をノイズと感じずに大感銘を受けるあたりは、非リアルなマンガそのものである――そもそも日本語を解しており、ソコにセルフ・ツッコミも入ってはいる(笑)――。
 しかし、そこのSF合理的な理由・説明などでモタついてしまっては、孔明と少女やその周辺人物たちとの人間ドラマ・物語がサクサクと行かなくなるのでご愛嬌であろう。


 対するに、本格的な歌手をめざしている先の少女による、酔い潰れた孔明を招き入れた彼女の下宿のたたずまいや、孔明が転生者だとは信じない、そもそも孔明とは誰なのか?(笑) といった彼女の住まいの室内やリアクションの方で、虚構作品なりのある種のリアリティや地に足が着いた生活感の担保も作っている。


 アーパーなようでも高校の修学旅行で自身の家庭環境や孤独さに苛まれて、渋谷駅で衝動的に電車に飛び込もうとしたところを、今の彼女が歌っているクラブのオーナーに救われたとすることで、少女とオーナーの人物像も確立、視聴者の感情移入も喚起する。


 強面のダンディーなオーナーは、実は重度の『三国志』マニアだともすることで、孔明とも意気投合して、眼前の事象にも通じるモノがあるあまたの「史実」を語り出すギャグ要素も大量に投入(笑)。


 これらが確立できれば、敵対勢力や味方として立ち現れてくる、


●胃弱な小柄のラッパー少年
●強面の大柄ラッパー青年
●すでに知名度を持った人気女性歌手
●実は喉が弱いボーカルのインディーズバンド


 彼らとのやりとりでも、少女や孔明と相手方のキャラも引き立ってくるのだ。


 最後に立ちはだかるのは、少女とも意気投合していた路上ライブをしていた女性。その女性の正体は仮面舞踏会のアイマスクをした人気ガールズバンドのボーカル!


 彼女らには巧妙なマーケティング戦略を駆使する敏腕プロデューサーがいて、女性はその方針に反発して放浪、路上ライブをしていたというのだ。


 そして、夏の大型野外ライブの出場権を賭けて、渋谷の交差点でのゲリラライブを舞台に歌唱対決のクライマックスを作っていく!


 といったところで、ムチャクチャに面白い。


 もちろん、孔明が随所にカラんでこなければ、この作品は看板倒れになってしまう。そこで、孔明は『三国志』オタクはご存じ、劇画『子連れ狼』などでもおなじみの「石兵八陣」(八門遁甲の陣)を用いてライブ会場での人流の導線を誘導したり、奇策を弄したり、二手三手先を見据えた手を打っていく――むろん、先に敵が小細工を弄していることから来る「反撃」の位置付けとなっているので不快感はない――。


 とはいえ、ゲームチェンジャーとしての役回りだけではなく「人間通」でもあるので、当世の若者たちの懊悩や自己実現にも思いを馳せて気持ちも寄せている。
 死出に戦のない世への転生を願っていたように、彼が生きた時代と比すれば実に平和な時代への感謝の気持ちも持っており、作品世界を俯瞰した存在へと高めることで、登場の必然性も確保ができているのだ。
TVアニメ「パリピ孔明」EDテーマ「気分上々↑↑」

(了)
(初出・オールジャンル同人誌『SHOUT!』VOL.83(22年8月13日発行))


ダンス・ダンス・ダンスール』

(2022年春アニメ)
(2022年8月7日脱稿)


 男子バレエが題材の作品。といっても、バレーボールではなく、踊りの方の男子バレエに興じている中学生男子クンを描いた作品である。


 まぁまぁ面白い。ややマイナーなジャンルやスポーツでも、現実世界に存在する事象にスポットを当てることで、スポ根(スポーツ根性)的でもリアルな肌ざわりも併せ持った作品にもなっている。


 マイナーだからとマーケティング的にも黙殺するのが正しいワケでもない。「商品」や「物語」は時に新奇な目新しさも必要だ。埋もれた潜在ニーズを具現化、ニッチ(隙間)なところを拡幅してタネを植えて稔らせる。


 大学生男子がチアダンス活動する小説原作の深夜アニメ『チア男子!!』(16年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190603/p1。19年に実写映画化)などもまぁまぁ面白かったけど、やはり現実ヘイト(現実的な日常がキライ・笑)な一般的なオタにはウケないのであろう。しかし、個人の好みは棚上げしてマンガ・アニメジャンルの大局を見据えたかったり、物語の「作劇術」の何たるかをドコかで究めたいような方々には、観て損はないとも思われる作品なのだ。


 やはり本作も題材以前に、視聴者を感情移入させるに足る「導入部」や、たとえ偏見だとしても誰もが自然と想起してしまう「女子がするバレエを男子がするだなんて……」といった疑問を前面化するかたちでフック(引っかかり)も作っている。


 すなわち、世間一般での風潮を知らない幼児のころには偏見なくバレエにあこがれて練習にも励んでいたのに、同級生男子たちから「ヘンだ!」と蔑まれてしまったことで主人公少年は一度はバレエをやめており、「男らしくあらん!」と東洋武術に鞍替えしていたとするのだ。


 たしかに微塵たりとも男子バレエに習熟することを疑わずに一直線であることは潔(いさぎよ)いやもしれない。しかし、一般ピープルの感覚とは遠すぎる。男子バレエが恥ずかしくなって一度は離れてしまったような御仁の方が、筆者も含めた世間一般・大多数の視聴者には感情移入もしやすいことだろう。


 こーいう「助走台」こそが重要で、ソコさえウマく行けば、あとのストーリーにも感情移入して乗っていける。逆に云うならば、ソコに瑕疵(かし=欠点)があると乗っていけないものなのだ。


 むろん一般的な物語としては、まったくのド素人が苦労を重ねて強くなり、巨大な宿敵を打ち倒していく方が面白い。しかし、変身ヒーローものならばともかく、現実的には素人が巨敵を倒すことなどは困難だ。


 なので、本作の主人公男子クンも一見は素人。偶然の流れで転校生のヒロイン女子に誘われて彼女の母親が経営するバレエ教室を見学したところで、むかし取った杵柄(きねづか)が騒ぎ出して見事なバレエを披露する!


 しかして、ヒロインの母親は冷徹だ。彼を挑発することで、もっと彼の才能を引き出そうとするのであった。


 といったところで、自発性なのか? 人の手のヒラの上なのか? この両者もまた厳密に選り分けることができるのか!? といった根源的な難題までをも感じさせている。


 それと同時に、ライバルとなる混血バレエ少年やまた別のバレエ少女との出逢いも重ねさせて触発させていく。


 けれど、学校では思春期のモテ/非モテ的なカッコよさ基準の酷薄なスクールカーストもあるので、バレエを習いだしたことを隠していたりもする。


 しかし、ライバル少年がイジメられたことで、男気を出して助け船を出したところで、その加害者少年こそ自身が幼少期にイジメていた当の相手でもあった事実にも直面させられたりもする! といったあたりでも、実に滋味あるドラマを構築できているのだ。


 アイススケートやスケボー(スケートボード)を扱った近年のこのテの作品同様に、バレエのシーンこそが肝なので、そのあたりは実にリアルでスタイリッシュな映像を表現もできていた。

(了)
(初出・オールジャンル同人誌『SHOUT!』VOL.83(22年8月13日発行))


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パリピ孔明』『ダンス・ダンス・ダンスール』 ~純オタ向けとは異なるナマっぽい描写! 青年マンガ誌連載の傑作&良作!
#孔明 #パリピ孔明 #ダンスダンスダンスール #ダンス・ダンス・ダンスール #アニメ感想 #アニメ批評



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 11年前の2012年に「薔薇戦争」の悪役であった英国王・リチャード3世の遺骨が発見された逸話を描いた映画『ロスト・キング 500年越しの運命』(22年)が2023年9月22日(金)から公開記念! とカコつけて……。このリチャード3世を美少年の主人公として描いた深夜アニメ『薔薇王の葬列』(22年)・『純潔のマリア』(15年)・『アルテ』(20年)・『平家物語』(22年)・『戦国BASARA(バサラ)』(09・10・14・18年)といった歴史に材を取ったアニメ評をアップ!


『薔薇王の葬列』『純潔のマリア』『アルテ』『平家物語』『アンゴルモア 元寇合戦記』『戦国BASARA』 ~薔薇戦争百年戦争ルネサンスなど、人間集団・戦争・宗教・芸術・栄枯盛衰・戦いでの潮目の変化(引き際)!

(文・T.SATO)

『薔薇王の葬列』

(2022年冬~春アニメ)
(2022年4月30日脱稿)


 英国における「薔薇戦争」を描いた作品である――日本における南北朝時代のようなモノだと思ってください(汗)――。時期的にはマンガ原作の深夜アニメ『純潔のマリア』(15年)が舞台としていた中世の英仏「百年戦争終結の直後。といっても、アルプス以南ではもうルネサンス期になっているけど。


 筆者個人の評価はシリーズ序盤はビミョー。シリーズ中盤以降はまぁまぁ面白いといったモノ。まず何よりも序盤がわかりにくい。


 いやもちろん、白薔薇ヨーク家vs赤薔薇ランカスター家といった大構造は説明されているのでわかる。しかし、それがねらいなのだとしても、あまりにポエミーで少女マンガ的な心象映像ばかりである。


 遠景からのお城なり、原野を乗馬で移動するなり、ドーバー海峡を渡ってフランスへ行く……といった移動ショットでも入れてくれればイイものを、そのへんがモノの見事にオミットされているのだ。それによって、地理的な位置関係がわかりにくいし、腰の据わりも実に悪くなっている。


 「内政」なり「財政」なりが議題にもならないあたりでは、世間的には安直展開だと思われがちな「西欧中世風・異世界ファンタジー」モノにも、今では負けているやもしれない(汗)。


 とはいえ、下々のブ男や庶民がいっさい登場せずに、美形の王侯貴族だけが登場して「好いた、ホレた」といった耽美的な世界をつづっていくのは、少女マンガが原作でもあった本作においては「この作品ではそうなっているのだ!」といった風に割り切れなくもない(?)。その範疇にて突き詰めていって、突き抜けてもくれれば、特化したモノでも相応に面白い作品に仕上がることもあるだろう。


 本作では、 世間一般的には醜い狡猾な「せむし男」であったハズだが、痩身色白かつ美少女のような小柄な美少年として造形された主人公・リチャードが、父・ヨーク公のことを助けられる強い騎士になりたいと願いつつも、身体は非力な女性であったりもする――両性具有であるのだ――。


 彼が森の中で出逢った温厚な羊飼いのイケメン長身青年の正体も、一般的には精神障害であったといわれていた敵のランカスター王ことヘンリー6世で(!)、敵陣営の首魁ではあったものの立場上の神輿(みこし)でしかなく、俗事をキラっている彼とは互いに素性を知らぬままで交流も深めていく……。


 青年にしか見えないヘンリー6世にはすでに青年になっている息子がいて(爆)、そんな息子の方もリチャードの正体が女性だと勘違いをしてホレ始めてしまう。


 そんなリチャード自身は父親・ヨーク公には可愛がられたものの、母親は父の手前ではイイ顔をしつつも、父の姿が見えなくなるやリチャードの両性具有を忌み嫌って「悪魔だ!」と罵り出すという悪辣なイジワルさ!


 このあたりもツマラなくはない。しかし、実に狭苦しい人間関係を描いているだけだともいえる。史劇としてもあまりにスケールが小さくて、個人的にもさほどに……といった感もあったのだ。



 面白くなってきたと思えたのは、父・ヨーク公の死後に王位を継承することになった利発な長兄エドワードに対して、「領地を返して」と妖艶な未亡人貴族が接近してくる件りである。


 逢瀬を重ねて結婚にまでコギつけるも、彼女の心は死した元夫にあって、その真意は復讐でもあるという(爆)。そして、それは先王以来のキレ者である腹心・忠臣の離反をも生んでいく……。といったあたりで俄然面白くなってきて、筆者の評価も急上昇!


 まぁ、主人公が両性具有で悩んでいるといったあたりだけで――メンタルは男ではあったものの――、トータルでの「物語としての巧拙」はさておき、一部からは「性的多様性」を描いたといった文脈「だけ」で高い評価を与えられてしまう昨今の風潮――いわゆる「クィア文学」賞揚――にはプチ反発もいだくのだ。


 そして、原作ありきのアニメだとはいえ、シリーズ序盤をもう少しだけ見晴らしのよい感じで構築ができなかったことについても惜しまれるのだ。
TVアニメ『薔薇王の葬列』オリジナルサウンドトラック

薔薇王の葬列
(了)
(初出・オールジャンル同人誌『SHOUT!』VOL.82(22年5月8日発行))


純潔のマリア

(2015年冬アニメ評)
(2015年4月27日脱稿)


 純潔(じゅんけつ=処女)であり、聖母マリアと同じ名前であるのに、その正体は魔女! といった、その「存在」自体が不謹慎(?)な少女が主人公でもある作品。


 戦争のことが大キライな彼女が、中世末期の英仏百年戦争のフランスを舞台に――アルプスより南ではもうルネサンスの時代だけど(汗)――各地の戦場で異教(=キリスト教以外の宗教のこと)の巨大怪物たちをその魔法にて召喚! その都度、英仏両軍を驚愕させて退かせていた。


 まずは胸の谷間・両肩・背中のハダを露出させた現代風の黒革ボンテージを身にまとったSMの女王さまみたいな魔女像が西欧中世にあったのかヨ!? と一応はツッコミを入れてみる(笑)。だが、そこはあくまでも虚構作品。マンガ的な「絵」から入る「キャラ立て」であって、問題ナシだと私見したい。


 問題ナシではあるけれど(?)、ボリュームのある金髪ショートの主役魔女の少女は、お眼めがデカくても若干吊り目でややクセのあるキャラクターデザインではある。
 本作はオタク系というよりかはマニア系だともいえる月刊「アフタヌーン」誌の連載マンガが原作であった。それゆえに、当世風の「萌え媚び絵柄」の文脈を考慮していないのかもしれない。けれど、それはマーケティングやライト層の客引き的には吉と出るのか? 凶と出るのか?


 しかし、領主さまの伝令を務めている青少年クンに対しては、ちょっとテレたりしてみせるような性格的な「弱さ」や「ハニカミ」もこの魔女少女にはある。よって、我々のような弱いオタク男子にとってはそこが少々の取っつきやすさの救いにもなるのだけれども(笑)。


 その逆に、


●主人公少女の「使い魔」の分際であるのに、ナゼか彼女よりも年上で(笑)、主人公が処女であることをからかってもくる、極小の包帯水着(?)をまとった露出度大のナイスバディーで銀髪ロングの「淫魔」であるお姉ちゃん
●金髪巻き巻きドリルツインテールの「イギリス魔女」の美女
●そして、「フランス魔女組合」(笑)の年若い魔女たち数名……


 彼女らについては、キャラデザ的にもアクやクセは少なくて、吊り目でもなく端正ではあった。よって、我々萌えオタ的にも抵抗感はナイですよね?(笑)――結果的に、彼女らの中に混ざっていると、クセのある絵面の主役魔女少女がビジュアル的にも立ってくるのだ!?――


 以上は、いわゆるマンガ・アニメ的な虚構パートでのキャラデザ面でのお話である。



 だが、それ以外は、本格歴史モノの大作映画もかくや! といわんばかりの緻密な絵作りともなっている!


●貧しいけど慎(つつ)ましい、中世農民の衣服・住居・農耕・村落
●馬上のヨロイ騎士に率いられて、ヤリとタテを持った徴発歩兵と傭兵たちの行進


●従軍神父さんによる開戦直前のお説教や祈祷(きとう)
●弓矢の雨アラレ!
●刀剣での歩兵同士の乱戦!


●西欧中世社会の「典型」を象徴もしている、魔女マリアとは私的に関わってもいる貧しく慎ましい農家の家族たち
●善人ではあるものの、その時代相応の身分意識はあって、領地安堵のためには卑屈さや狡猾さといった政治的なふるまいもせざるをえない領主と、前述したその伝令をもっぱらとしている家臣の青少年クン
●傭兵たちと行動をともに随行していく、職業としての娼婦たち(汗)
●町の金髪青年である修道院長さまと少年修道士



 このテの作品の常としては、「よくお勉強しましたネ」的な内容で、「物語」としてはウマく昇華ができてはいない作品程度にとどまっているのに、扱っている「題材」や「ディテール面での歴史的な正確さ」だけで、作品のことをベタボメしてしまったり、『まおゆう魔王勇者』(13年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200126/p1)や『狼と香辛料』(08年)などもそうだったけど、「エラいヒトの学説を当てハメま評!」(笑)といった、「作劇面での巧拙」を論じずに「作品外での歴史蘊蓄(うんちく)」トークを得意げに披瀝するだけの本末転倒なプチインテリオタクが跋扈(ばっこ)しそうでもある(イヤミ・汗)。


 だが本作は、設定倒れや役割人物像だけの作品にも陥(おちい)ってはいない。主要人物各々の人生を紡ぎつつも、それぞれが対角線の関係でも複雑に交わっており、因縁&人間ドラマを織り成してもいく。


 そして、あまたの「反戦平和」のお気楽な作品群とも異なっているのだ。


 たとえ魔女マリアの善意からの行動ではあっても、「知恵のない直情的な戦争仲裁」によって、稼ぎにありつけなくなった傭兵たちは村々の略奪を開始する!


 フランスの勝利で海の彼方へと放逐(ほうちく)できたかもしれなかったのに、ヘンに情をかけたばかりにイギリス兵が復活してきて、彼らの反撃を招くことにもなってしまう!


 実は彼女の行為こそが戦争を長引かせている側面もあって、領主による庶民たちへの新たな徴兵まで発生してしまうといった逆説・皮肉までをも描いていくといった八方ふさがり……。



 そんなマリアの行為を、それぞれ異なる理由で見咎めてもくる、「地の教会」――地上・現世でのキリスト教会!――と「天の教会」――天上世界にいる大天使ミカエルに、天の父ことユダヤキリスト教的な一応の唯一絶対神かキリストか!?――。


 あげくの果てに、今や落ちぶれて森の奥へと逼塞(ひっそく)している、キリスト教普及以前の時代からあるゲルマン民族や先住ケルト民族の土着の神々までもが登場してくる!


 それら太古の神々もまた、マリアと抗争や禅問答を繰り広げて、


●「魔女マリアの行為の是非」
●「『秩序』と『自由』という、実は相矛盾している2大原理の相克」
●「全知全能かつ天地創造の唯一絶対神がいるのならば、不幸はナゼにあるのか?」


といった議題までもが輻輳(ふくそう)されていく。



 最終的には、魔女マリアは大天使ミカエルとも対決!!


 あぁ、「天」や「神」を「国家権力悪」に見立てて、「反体制」や「反権力」でありさえずれば、その内実の正否は何も問われずに即「正義」扱いだとされてしまって、「オレ、カッケェェェーー!」みたいな、それはそれで今ではあまりに陳腐凡庸どころか、害毒すらあるであろう善悪逆転観のオチなのかよ……と思いきや。


 「天」や「神」を「汚れキャラ」にするのでもなく、魔女マリアこそが道徳的な最終勝利者でもナイ、第三のオチがそこには待っていた!


 それまでの本作に登場してきた大人数キャラクターの「証人喚問」(!)の末に、彼女を――キリスト教新約聖書のイエスの発言的な意味での――「善き隣人」だと認めつつ、互いに妥協させる「大岡裁き」は、狡猾な大天使ミカエルの条件闘争での作戦勝ちだったとも見えなくはない。


 「戦争廃絶」を目指してきた彼女が、大空を超高速で雄飛して武具をも飛ばしてみせる「魔法」という戦略的機動力を失って、好いた男と結ばれて、身の丈のできる範囲で今後は理想を目指していくといったオチも、それまでのストーリー展開や彼女の言動とはやや不整合があるようにも思えて、多少腑に落ちないところもあった。


 しかし、ミクロでのアット・ホームな幸福もドコかで求めていた彼女が、ココで報われたようでもあって感涙してしまう……。



 エッ、魔女マリアと農民少女を除いて、神父さま・傭兵・娼婦・領主さま他ほとんどのキャラクターは、原作マンガには存在しない、深夜アニメ版のオリジナルキャラクターだったの!? ナ、ナンだってェェェーー!


 魔女マリアの純潔(=処女=魔力)を、傭兵にけしかけて奪おうとまでしてしまう青年修道院長クン!(爆) そんな彼もまた彼女への異端審問における


「何もしない神ならば、存在しないのと同じだ!!」


という魔女マリアの見事な反駁(はんばく)に啓発されて、


●「神の存在証明」を唱えた神学者トーマス・アキナス
●「理性による神の存在証明の不可能性」を唱えたオッカム
●「実在論」――「普遍」それ自体が天上世界だかに実体的なモノとしても実在するという説――と、「唯名論」――「普遍」とは名指しのための単なる名称・概念・言葉にすぎないという説――


といった、西欧中世の神学論争も経由して、


●「『普遍』よりも『認識』こそが、存在・実在・本体であるのだ」
●「事実などない。あるのは解釈だけだ」


といった、もっと後世の哲学者・デカルトニーチェのような「神の否定」の一歩手前にまで至ってしまう。


 しかし即座に、「神を否定しない範疇での『自由意志』」を肯定していた古代末期の異端教父・ペラギウスに先祖帰りをしてみせる! ……といった自問自答を、高速早口の60秒間でまくしたてて(笑)、エビ反りして知的恍惚に浸ってしまった青年修道院長クン!



 最終回では、そんな主人公魔女の反駁の影響によって(汗)、「天は地上に不干渉!」といった自説・理論体系を固めていったその青年修道院長クンの眼前に、大天使ミカエルがいきなりに別用(爆)にて降臨してくる!


 自説とは大いに矛盾してしまった超常現象に遭遇して、ミカエルによる魔女マリアについての質問についてもアタマに入らず、「アリエない!」と狂乱させてしまうイジワルな作劇もまたサイコー!(笑)



「より長大で歴史的な時間尺度の中では、大天使ミカエルもまた、いずれは消滅はせずとも『過去の遺物』と化して連鎖していくだけなのだ……」


といった趣旨のことを、欧州先住のゲルマン神話ケルト神話の神々であろう存在をして語らしめて、神々や宗教の存在を相対化しつつも完全否定ではなく条件付きでは肯定もしてみせているようでもある、作り手の思想的な達観もダテではない。


 2015年冬季のベストアニメだったと私見するけれども……。残念、円盤売上は爆死なのであった(汗)。
純潔のマリア

(了)
(初出・オールジャンル同人誌『SHOUT!』VOL.64(15年5月2日発行))


『アルテ』

(2020年春アニメ)
(2020年8月11日脱稿)


 16世紀初頭のイタリア都市・フィレンツェが舞台。つまりはルネサンス期である。一般的には「古代」以来の自由が復活した時代とされているが、本作ではそこを転倒。女性にとってはまだまだ不自由な時代であったとも描くのだ。


 絵を描くことが大好きな、戦前戦中の広島県のすず様(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200308/p1)、もとい中堅貴族の金髪ロングの令嬢・アルテ。


 父はその絵を描く姿を喜んでいたけど、母はしかるべき男性と結婚するふつうの人生を望んでおり、彼女の趣味には理解を示さない。


 ある日、母親は彼女が描きためてきた絵画の数々を庭で燃やしてしまった! 絶望と悲嘆にくれる彼女。


 時は「絵画」と「彫刻」が隆盛を極めた時代。怒りを覚えた彼女は一念発起! 自宅を出奔して、都市各所にある絵画の工房を廻って自身を弟子に取ってくれと頼み込む。


 いかに開明的に思えるルネサンス期でも、女性など工房にはいない時代。はるか後年の300年近くあとのフランス革命でも「人民」の概念の中に「女性」は入っておらず、欧米でも女性に「参政権」が与えられたのは20世紀の前中盤のことなのだから仕方がナイのだ(笑)。


 女性であることが理由で画家になれないのならば……と長髪を切り落とし、ついには乳房まで切り落とそうとしたところで(汗)、救いの手が差し伸べられる。
 ひとり工房のダンディな親方・レオだ。彼は彼女を屋上のボロ家に住まわせて、弟子となるための試練を課す。


 ……といったところで、冒頭から実に面白くて惹きこまれる。まぁ、もっと引いた視点でシニカル(冷笑的)に見てしまえば、


●朝から晩まで「農作業」をしなければ喰えない庶民と比すれば、お絵描きなどの「趣味」に耽溺できるだなんて、やはりノンキなブルジョワだろ!?
●主人公に金髪美女を配するあたりもルッキズムだ。しっかりとしたリアルな時代考証のようでも主人公少女の服装の胸だけは微妙に強調されているからウソだろ!?


 ……といったツッコミも論理的には可能なのだ。しかし、そのへんを云い出したならば、たいていの物語・映像作品は成り立たない(笑)。筆者もアタマの片隅にはそれがありつつも、それをもってして作品を全否定しようとは思わない。


 作品は彼女が持ち前の不撓不屈さで「画家」として技量をミガいて頭角を現していくサマを、親方・レオが元は物乞い出身であったことや、工房のお得意さんでもある花魁(おいらん)もとい高級娼婦も登場させて、日本の花魁とも同様に話題を広くするためにも膨大な蔵書を保有しており、博識でもある彼女から刺激を受けていくサマなどとも並行して描いていく……。
 そして、彼女はヴェネツィアの貴族に気に入られて、画家ならぬ家庭教師としても彼の地へと旅立っていく。


 ……などと芸もなくアラスジを列挙する(汗)。美麗で精彩なフィレンツェの町並み。各所の工房の職人が動員されての「教会背景美術」の作成風景。しかして、丁稚奉公モノの王道といったストーリー展開。実に面白いのだ。


 本作の主演は、『モーレツ宇宙海賊(パイレーツ)』(12年)主演や、『Re:CREATORS(レクリエイターズ)』(17年)でも戦闘美少女系のメインヒロインなどを演じてきた小松未可子で、涼しげでも凜としたボイスが逆境に負けずに明るく立ち向かう姿にも合っている。


 原作はややマニアックな青年マンガ誌『月刊コミックゼノン』の連載マンガ。こんなマンガもあったとは……。感服なのである。
アルテ

アルテ VOL.1 [Blu-ray]
(了)
(初出・オールジャンル同人誌『SHOUT!』VOL.77(20年8月15日発行))


平家物語

(2022年冬アニメ)
(2022年4月30日脱稿)


 武士の時代が到来する直前に栄華を極めたものの、没落していった武家である平家一族を、まるびて線も少ないシンプルな描線で描いた深夜アニメである。


 本来は日本の歴史における在り方的にも、国民的な叙事詩であったハズである『平家物語』。しかし今では、信長・秀吉・家康の戦国時代と幕末~維新の時代しか、一般ピープルには馴染みがないであろう。


 あるいは往時の人々も、琵琶法師や庶民による弾き語りなどを何度も聴かせられているうちに、悲劇的な各自の末路を熟知してしまったことで、何十回目かでの再聴では彼らの前半生の部分の拝聴においても、自然とその彼らの悲壮な末路を重ねてしまって、ますます「無常感」も強調されてきた……といったこともあったのだろうと思われる。


 その伝の応用であるか、本作では未来予知も可能であるオリジナルの少女キャラも登場して、平家一族とも同居する!


 彼女が答案用紙の答合わせ的に、平家一族個々人の未来や末期(まつご)を時に垣間見てしまうかたちも採ることによって、


●今では元気なこの少年が……
天皇に嫁ぐも、今でも不遇なこの少女が……
●ようやくに生まれた幼帝もまた、最後には壇ノ浦に没して……


といった未来が点描されることによって、歴史に疎(うと)い人間たちにも間口を拡げて、なおかつ興味を持たせることもできている。


 もちろん、すでにご存じの歴史マニアな御仁たちにとっても、「復習」かつ「無常感」をさらに強調するシーンとしても仕上がっているのだ。


 本作においては、平清盛(たいらのきよもり)の子供や孫たちも別に悪人ではない。むしろ、清盛とも異なる常識人であったり、傑物の父の不始末に奔走していたりもする(汗)。


 NHK大河ドラマ義経』(05年)では、幼き日の源義経(みなもとのよしつね)が清盛宅に身を寄せて平家の子供たちとも兄弟同様に育っていったといったオリジナルな描写が付与されていた。
――義経と弁慶が出逢った五条大橋は実は当時はまだ存在していなかったし(笑)、弁慶に至ってはその実在自体が疑わしいのだから(爆)、どうせフィクションなのだし適度なウソもOKだとは私見!――


 しかし、同作でののちの源平合戦では、その意味でドラマチックな「義兄弟対決」にもできて「宿命の対決」としても盛り上げることができたハズなのに! そういった過去のことは想起もされず、清盛の息子の兄弟たちもお団子状態でキャラクターの描き分けもできていなかっただけに、その15年越しでの筆者の溜飲も下がったのであった――ウソです。大河ドラマ平清盛』(12年)ですでにとっくに溜飲は下がっていました(笑)――。


 しかし、時代の総体としては「平家独裁」の時代ではあり、「禿児(かぶろ)」こと黒髪オカッパで赤服の少年密偵(私兵)たちによる横暴なども漏れなく描いていくことで、逆に庶民たちの禿児や平家への反発や恨みも描いて、のちに来たる彼らの没落の予兆ともしている。つまり、「信じれば夢は叶う」「不可能を可能にする」といった少年マンガ的な世界観ではさらさらないのだ(笑)。


 学術的には正しくても、教科書的な干からびた「人名や事象の羅列」であっては、よほどの歴史オタクの気がある子供でもなければ記憶に定着などしない。そういった意味でも、子供向けの『平家物語』や『忠臣蔵』や『太平記』(=鎌倉幕府滅亡~室町幕府成立を描いた軍記)などの簡略物語を、歴史の授業といわず義務教育である小中学校の国語の授業などでも1回くらいは教えた方がイイと個人的には考えてもいる。


 しかしおそらく、そーなると「日本スゴい!」の右傾化だ! なぞという反対運動が起きそうではある(笑)。いや、『平家物語』や『忠臣蔵』などは負けて滅びていく物語なのだから「日本スゴい!」とは真逆であろう。


 そうなると、「あー云えばこー云う」で、今度は「滅びの美学が危険だ」なぞと云われそうでもある。しかし、「ドーして独裁化して、ドコが反発されて、ドコで反逆の流れが起きて、ドコで没落していったのか?」などといった「旧・日本軍」や「戦前の日本」的な「失敗の本質」の研究といった冷徹な意味でも、『平家物語』などはもう少し一般化されてもイイ。


 時には「平家」主体で、時には「源氏」主体で――後者は源義経を主役として描いた『義経記(ぎけいき)』など――、対立する2大陣営を善悪二元論ではなく、それぞれの主観的な視点や立場から描いた文化多元主義は、実は日本の中世においてもすでに両立が達成されており……(掲載媒体の制限字数の都合で、以下略・笑)。
平家物語 アニメーションガイド

CONTINUE Vol.76
わたしたちが描いたアニメーション「平家物語」
(了)
(初出・オールジャンル同人誌『SHOUT!』VOL.82(22年5月8日発行))


『アンゴルモア 元寇合戦記』

(2018年夏アニメ)
(2018年8月2日脱稿)


 鎌倉幕府御家人(ごけにん)崩れの不穏で不敵な主人公武士が、罪人たちとともに流刑(るけい)にあった先。そこは蒙古(もうこ=モンゴル)襲来目前で、前哨戦の地ともなった対馬(つしま)であった!


 かの地への海路、荒波に揉まれて泣き言を吐いた流人(るにん=流刑に処せられた罪人)の言を聞いて、それに情をかけて縄をほどいてやった甘っちょろいお役人さまの図にて本作は開幕する。


 情けはヒトのためならず! 隙を突いてそのお役人さまを殺害してしまう悪辣な罪人たち!!
 しかし、トーナメント演出! その罪人らよりもはるかに上回る高い戦闘力の持ち主だとして主人公を描いてみせた序盤で、彼のキャラを立ててみせているあたりで、導入部からしてカッコいいのだ!!


 しかも、その彼の流派とは「義経流(ぎけいりゅう)」。そんな流派が実在していたかは怪しいけど、読んで字のごとく、かの鎌倉幕府初代将軍・源頼朝(みなもとのよりとも)の弟にして夭折(ようせつ)の天才武将・義経(よしつね)の武術・兵法といったイミなので、何やら強そうではないか!?(笑)


 世はお公家さん主導の「国司・郡司の律令体制」から、鎌倉武士主導の「守護・地頭体制」へと移行して100年弱。対馬の老地頭やその郎党らは「やぁやぁ、我こそは!」を地で行く源平合戦のむかしのような老害ともなっており、軍議でも元寇襲来のウワサをナメてかかって、むかしの武勇談に花を咲かせている。


 対するに、本作のメインヒロインたる、老地頭の娘でもあり麗(うるわ)しくても気高そうなお嬢さまは、#1では老父とは真逆で、大軍の蒙古が高麗(こうらい=朝鮮)を出港したという情報に対して、内心では「過剰評価」でも「過小評価」でもない「正当評価」としての意味合いで正しく警戒もしている。


 そして、この対馬を守るために、外ヅラとしては実に高飛車・横柄(おうへい)にもふるまって、流人どもに対しても「座して死を待つのか!? 戦さで手柄を立てるのか!?」と迫って、戦さに備えてその陣に加えんとする!


 この気高きお嬢さまキャラについては、今は昔の『新機動戦記ガンダムW(ウイング)』(95年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19990805/p1)や『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』(15年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20191105/p1)などに登場した、天性の物怖じしない気高き王女さまキャラたちのことを、筆者のようなキモオタなどはつい想起もしてしまう(笑)。


 しかし本作のそれは、実は「演技」であって内心ではブルっている……としても描くのだ! #2においては、主人公を対馬や自身につなぎとめんと背伸びをして色仕掛けまでしてくるも、それが一枚上手(うわて)の相手(主人公武者)に対しては見透かされてしまって空転している描写などで「ギャップ萌え」をも喚起している(笑)。


 対馬での出来事とはまた別に、当時の一応の政治・軍事の中心でもある本家の鎌倉方も決して無策ではない。すでにかの地に物見(ものみ=スパイ)なども入っている。流人といえども主人公の剛毅(ごうき)さ&統帥(とうすい)の才を見込んで、「7日、持たせろ……」などと増援を約して、海の彼方の本土へと去っていく侍なども登場させることで、舞台背景も狭くはないのだ。


 そして、はじまる蒙古との戦い。


 スポーツや交渉事などとも同様に、物理的な戦力の優劣こそが勝敗の基本ではある。しかし、細部や局面においてはたしかに個人や現場のリーダーの才覚・覇気・勢い、人格力・カリスマ性、たとえ論理的には同じことを演説して鼓舞したのだとしても、声の大きさ・野太さ・スルドさ・頼もしさ、弁舌の勢いや抑揚! といったものでも、人々の動き方の勢いといったものは変わってくるものなのだ。
 それによって、相手を気圧(けお)することができて敵の怯(ひる)みをも生んで、局地戦での勝利や、戦場での潮目の変化をもたらすことにもなっていく。
 しかして、戦場の中を推し進みすぎてしまってもイケナイのだ。戦場での縦深があまりに行き過ぎて戦線が伸びきってしまうと補給・援軍・密度には乏しくなってしまう。かえって、位置的にも敵兵にも囲まれてしまう情勢となってしまうことで、相対的にも不利になる新たな潮目の変化も訪れてしまうのだ。


 そういったことを「空気」や「ハダ感覚」という名の「高速論理演算」にて瞬時に察知して、小さな勝利を勝ち取ったところでの成功体験にとどめて、適度なところで撤退してみせることで、そこまでの戦いを一応の「勝ち」として、次の戦闘に備えて鋭気を養っておくこともまた肝要なのであった。


――云うは易(やす)く、行なうは難(かた)し。切れ味のよい活舌・弁舌や、危機に際してパニくらないで物事を決断してみせる胆力に、勇猛果敢なファイティング・スピリッツとは最も縁遠い、筆者のような弱者男子であるオタクが「どのクチで云うのか?」といった話でもあるけれど(笑)――



 鎌倉中期の若き8代執権・北条時宗(ほうじょう・ときむね)or日蓮聖人を材とした歴代の作品群では、物語のヤマ場としても描かれる2度の蒙古襲来。


 その緒戦(しょせん)として、対馬壱岐(いき)といった島嶼(とうしょ)にも、蒙古軍&朝鮮・韓国のご先祖さまである高麗の軍が襲来しており、島民はほぼ皆殺しという大虐殺が繰り広げられていたことは、歴オタ(歴史オタク)の皆さまであればご存じのとおりなのだ。そんな逸話を知る身からすれば、7日後の増援でもますます無理ゲー(ム)で、先行きには絶望感しかないのだけど(汗)。



 映像表現面では「デジタル様さま」で終始、和紙のムラのようなモノやその紋様などもごくウスく画面にオーバーラップさせつづけることで、ある種の風情も醸せてはいる。しかし、その和紙の文様はカメラのヨコ移動などには追随していかないあたりで、少々の違和感もある(笑)。


 現代に至るまでも


「ムクリ(蒙古)、コクリ(高句麗)、鬼が来る」


といった、子供をたしなめる際の慣用句が一部の地方では残っているほどの、対馬におけるジェノサイド(大虐殺)。生き残った女たちは手のひらに穴を穿(うが)たれ、そこに通した縄にて数珠(ずじゅ)つなぎにされて、船の側面に吊され「人間の盾(たて)」とされることとなった。生き残った子供たちは奴隷として蒙古こと元朝に上納もされていた――日蓮聖人は古代の百済(くだら)の時代の故事の前例から、これらの残虐行為自体は高麗軍の方の仕業だったと断定していた(汗)――。


 ググってネタバレしない程度に、本作についてのWikipediaを斜め読みしてみた。すると、教科書にも出てくる、鎌倉時代の直前の平安時代における「刀伊の入寇(といのにゅうこう)」ネタまであった!


――平安時代の当時も、新羅(しらぎ)・高麗・女真(のちの金や清帝国)の海賊が日本に襲来していたのだ。日本も後年の倭寇などで決して無罪ではないのだが、そういうこともあったのだ(汗)。さらに古い時代の史料にあたってみると、どうも弥生時代のむかしから(!)モラルには欠けていたようである善良なる日韓の庶民たちは(笑)、不作や飢饉などになると中央政府の指示などはナシで、タフで逞しいことに座して死を待たずに互いに泥棒・略奪・殺戮し合ってきたようである(爆)。……エッ? 日韓にかぎらない!? 世界中のドコでも隣国や隣村との歴史や関係性なんてそんなモノだって!?――


 こういったあたりも、本作ではドコまで映像化ができるのか?


 筆者も好事家かつ人間が下世話にできている。よって、近隣諸国ではイザ知らず、日本の子供向けの教科書には残虐すぎるゆえに掲載はしにくい、あるいは敗戦国特有の周辺諸国への過剰な忖度(笑)もあってか言説化・映像化がしづらい、こーいう二重にネジくれたかたちで半ばタブー視されてきた歴史秘話については、不謹慎にも怖いモノ・残酷なモノ見たさもあって心惹かれてしまうのであった。


 そして、たとえそれ自体が歴史の大局においては些事ではあったとしても、二重三重にモツれた糸玉やゴルディアスの結び目をシンボウ強く解きほぐしていき、もろもろの「結ばれ方」を理解・ナットクしてみたくなってしまうのだ。


 元寇が襲来した対馬における、夜の山陰に隠れるも赤ん坊の泣き声で村人ごと発見されて全員が殺戮! 赤ん坊まで股裂きにされたなどの故事も描かれるのであろうか?(汗)


 別に旧・日本軍だけに特有ではなくって(?)、古今東西の戦時ではなくても、平時でも常に一定数(相当数?)は存在してしまう、軍事作戦の域を超えたかたちにて残虐行為に走れてしまうような、人格が品性下劣で他人に対する共感性にも乏しくて粗暴にできている一部の輩の存在(汗)。


 あるいは、泣き声で敵兵に見つけられないように泣く泣く赤ん坊の首を絞めたり、口をふさいで窒息死させてしまった母親の話など……。


 良し悪しや割り切ることができるのか!? といった話もまた別として、対馬にかぎらず先の大戦での沖縄での集団自決だけにはとどまらない、サンデル教授の「白熱教室」における、ひとりの命を救うのか!? 多数の命を救うために少数には犠牲になってもらうのか!?
 いわゆる「(暴走)トロッコ問題」と呼ばれる議論ばりに、瞬時に直観的に村人(多数)と赤ん坊(少数)の命を天秤にかけた末での母親の究極の苦渋の選択に対して――たとえそれが殺人であったとしても!――、後世の価値観における安全圏からの「後出しジャンケン」での全否定などは筆者はしたくない――もちろん、全肯定などもしないけど(汗)――。



 同様に、それが現代日本における民族差別・在日差別を誘発し、日本の排他的ナショナリズムに加担する一面があるからといって、750年もむかしの史実に対してさえも、微塵たりとも言及することすら許さない、あるいは「自粛」や「忖度」(笑)を強要しかねない良識派人権派・リベラルな向きに対しても、疑問を禁じえない。


 もちろん、彼らの「忖度」行為にも一理程度はあるのだ。しかし、物事を要素要素に微分化・細分化して、


●Aという要素は是
●Bという要素は非
●Cという要素には一長一短・善悪両面
●Dという要素は評者個人に知識・素養といった判断材料がないので、判断もできない


なぞとパターン分けして選り分けて考えることができずに、「赤勝て白勝て、巨人か阪神か」レベルの全肯定か全否定、「右」か「左」かのレッテル貼りだけをする輩は、失礼ながら筆者には、近代的・合理的な思考ができない未開の土人や原始人だとしか思えない(汗)。


 不倫やガールズバー通いをしていたことが発覚しても(笑)、敵対陣営の政治家に対してとは異なりダブルスタンダードでコレを擁護して恬として恥じない輩も同様なのである。もちろん、不倫やガールズバー通いなどは殺人強盗ほどの罪ではないので、むろん肯定はできないものの全否定などはしなくてもイイ。


 しかし、「不倫や援交まがいのことは肯定できないものの、彼女や彼の政治的スタンスにはまぁ同意なので、勘案の末に苦渋を飲んで、そこには反対するし肯定はしないけど、その政治主張の部分についてだけは賛同・応援していきたい!」、「これは特定の国家や民族といった生まれつきの属性それ自体への差別を正当化するものではさらさらない! しかし、ことこの局面における事象については批判されるべきである!」などといったように、瞬時にデリケートに腑分け・分解して物事を語ってくれれはイイのである。


 けれど、そこを未分化なままでモヤモヤとさせて忖度して一応は隠しきれたつもりになって語るから、日本人は総体としては愚劣なバカになってしまって、より高い次の精神的・思想的なステージ・境地へと昇っていかれないのだ! ……エッ? 欧米でも同様になっているって?(笑)


 そして、かえって彼らの複雑系での是々非々ではない、善悪二元論的でムリやりな擁護の態度に、矛盾・党派性・ダブルスタンダードを感じてしまって、不信・反発をいだかれることで、皮肉にもいわゆる「右傾化」なるモノもますます拍車がかかっていく。要はザル頭のいわゆる左派の側にも問題点&原因があったのだ(爆)。


 おそらく、そんな外野からの下馬評や議論とも無縁ではいられないであろう(?)本作ではある。しかし、もちろんそんなところは無視してもイイ。基本的には、アクション・サバイバル・ショッキング・オトコ気を見せることが主眼の良質なエンタメ作品として仕上がっていることは強調しておきたい。


 そのテーマ的なスパイスについては、浅くてウス味では面白くもないし、ヤリ過ぎで踏み越えてしまっても、ともに弛緩(しかん)してしまってダメなのである。


 寸止めのところでの臨界点、つまりはクレーターの狭いフチの上に爪先立ちで緊張感を持って屹立してみせる。
 そして、そこから内外を広く遠く見渡してみせるような、極限状況下での人間の愚かさ・おぞましさ・残酷さと同時に際立ってもくる、そんな中でも悪事や暴力にも染まらずに、しかして過度に気張らずに正しく気高くあらんとする姿!


 しかして、小さな悪事や殺傷行為は必要悪として犯してしまったとしても、苦渋・罪悪感・鎮魂の痛みとともにサバイブしてみせることのビター(苦味)さ! といったものまで同時に描くこともできれば、作品としての勝算も出てくるとは思うのだ。
【Amazon.co.jp限定】アンゴルモア元寇合戦記 DVD BOX 上巻(早期予約特典:スペシャル座談会CD(出演:小野友樹(朽井迅三郎 役)他予定)付)&(全巻購入特典:アニメ描き下ろしイラスト使用BOX in BOX引換シリアルコード付)

(了)
(初出・オールジャンル同人誌『SHOUT!』VOL.72(18年8月11日発行))


戦国BASARA(バサラ)』~『学園BASARA』

(2009年春・2010年夏・2014年夏・2018年秋アニメ)
(2018年12月13日脱稿)


●バイクのマフラー(!)が側面に付いた愛馬に乗りながら「Are you ready?(アー・ユー・レディ?)」と英語まじりのセリフをホザきつつ、五指に3本、両手に6本もの日本刀(笑)を振るってみせる、青いヨロイのキザなイケメン青年の独眼竜・伊達政宗(だて・まさむね)!


●史実を無視してこの独眼竜のライバルとして設定された、赤いヨロイでヤリをふるうイケメン青年の真田幸村(さなだ・ゆきむら)!


●幸村の親方さまについては、父・真田昌幸(さなだ・まさゆき)のことをスッ飛ばして、コレはさすがにイケメンではなく恰幅のイイ父性キャラとして描かれてもいる武田信玄(たけだ・しんげん)!


 この幸村&信玄は臣下の関係であったというのに、互いにホンネの意見をブツけあえる親愛の情の表現として終始、少年マンガのように拳骨で殴り合った果てに豪快に笑いあう!(笑)



●信玄の永遠のライバル・上杉謙信(うえすぎ・けんしん)は、もちろん俗説に則(のっと)って低音ハスキーボイスな僧形の男装美女!


●もともと史実ではない「真田十勇士」からも、猿飛佐助(さるとび・さすけ)がクールな長身イケメンに改変されて登場!


徳川家康配下で、近年の大河ドラマでも藤岡弘高嶋政宏が演じていた、戦国最強とも称される武将・本多忠勝(ほんだ・ただかつ)は、カタパルトから発進して空を飛ぶ巨大ロボット(笑)で回転ドリル型のヤリが武器!


●ほとんど赤道直下の南国として描写された薩摩で、戦国時代ならぬ神話の時代のクマソタケルがごとき薩摩隼人(さつま・はやと)な南蛮の蛮族としても描かれる、九州を制覇した島津義弘(しまづ・よしひろ)!


●隻眼(せきがん=片目)の海賊にしか見えない、南国の土佐からはじまり四国を制覇したイケメン若造武将・長曾我部元親(ちょうそかべ・もとちか)!


●ソーラーシステム(笑)で戦場を焼き払って、山陽山陰を制したコレまたクールなイケメン・毛利元就(もうり・もとなり)!



 アニメ第1作(09年)での主敵は、次第に第六天魔王織田信長(おだ・のぶなが)へと収束して、戦国武将が共闘してコレに立ち向かう!


 第2作(10年)での主敵は、史実ではおサルさんに似ていても明るくおしゃべりな小男であった豊臣秀吉(とよとみ・ひでよし)が、『北斗の拳』の宿敵・ラオウのような寡黙な巨漢で、もはや本作における主要な武器であった「刀剣」ですらなく「拳骨」が武器(笑)。


 第3作(14年)でのラスボスは、秀吉亡きあとの配下のイケメン青年・石田三成(いしだ・みつなり)!



 史実どころか、活躍年代さえ数十年程度を無視して(笑)、同時代に共演できるハズもなかった戦国オールスターたちが大集合! 『寛永御前試合』で『アベンジャーズ』で『ジャスティス・リーグ』で『ウルトラ銀河伝説』で『スーパーヒーロー大戦』で『プリキュア オールスターズ』な強者集結のカタルシスをもたらしてくれたのが、本作『学園BASARA(バサラ)』(18年)の原典でもある『戦国BASARA』であったのだけど……。


 リアルでの「関ヶ原の戦い」ももちろん日本の各地域を制覇した戦国大名オールスターの大結集の頂上決戦ではあったものの、それらを材にしたフィクションにも顔を出してくる「歴史修正主義」の台頭を憂うのだ!?(笑)



 ……冗談はともかく、


●十字軍やトルコ帝国台頭の歴史的な評価が、キリスト教圏とイスラム教圏とで一致するワケもない。
モンゴル帝国の評価が、モンゴルと侵略された中露欧とで合致するワケもない。
古代ギリシャペルシャ戦争の評価が、西欧とイランで一致するワケもないのだ。


 そうである以上は、EUや日中韓などもムリに域内の歴史観を統一などさせずに、互いに異なったままで、どの歴史観も正しくてかつ同時に間違ってもおり、よって併存させる! といった方策が一番クレバーなのではなかろうか!?



 そもそも、ドコの国家や民間団体であろうとも国定教科書的な「歴史観」などを定めるべきではない!――韓国は昨年2017年から国定教科書になってしまったが、大丈夫なのであろうか?(汗)――
 「歴史観」なぞは、お国なりドコぞの民間の団体や在野であろうが学者などにキメてもらうようなものではない。個々人の読書体験から来る美学・哲学などでもあって、各個人ごとに構築して持てばイイものなのである。そして、あまたの異説も「言論の自由」や「試行錯誤の許容」として愚劣なモノも含めて流通させるべきであろう。


 「言説発表の禁止」や「言論媒体の廃刊」などはもっての他である。たとえ不毛であっても、あくまでも言論での応酬にとどめて、互いに支持者を募り合って、そして少数派になった方に対しても退場や首チョンパ切腹に社会的な抹殺などのトドメを刺してみせる必要などもナイのだ。


 ……といった態度を採ってみせるのが、真の意味での字義どおりの「リベラル」であって、


「私はあなたの意見には反対だ。だが、あなたがそれを主張する権利は命をかけて守る」


と云ったフランス革命前夜の啓蒙主義の時代に活躍したフランスの作家・ヴォルテールの発言はドコへやら!? 近年ではナゼだかまったく忘れ去られてしまっている――実際には当人の発言ではなく、20世紀に入ってからの伝記が初出の発言であったそうだけど(笑)――


 「敵対言説」や「歴史観」をたとえタテマエではあっても最低限の尊重すらせずに、いきなりハナから言論封殺したがる昨今の日本や世界の風潮は実に嘆かわしい! 哲学者のニーチェ風に云うと、仮に「事実」はひとつであってそれを正確に認定ができたとしても、それに対する「解釈」は多様なのだ! いかに珍妙で愚劣な意見に思えたとしても、広義ではなく狭義での明らかな殺人教唆や暴力教唆でもなければ自由であるべきだし、あとはせいぜいが支持者の多寡を競い合うだけでイイのだ!


 ……といった議論は、おバカな本作にはなじまないのであった(笑)。



 CG技術の進歩で、数千数万の歩兵を見事に映像化! 「一騎当千」かつ「切った、張った」が「文学的表現」なぞではなく文字通りに映像化されて、太刀(たち)の一振りで数十・数百人もが突風に巻かれたように吹っ飛んでいく!(笑)


 このインチキ・アクションの爽快さのみならず、半分笑っちゃうけど半分はカッコいい、各自がその戦う動機をワザワザ口に出して暑苦しく絶叫しながら刀剣を交えて、しかしてその勝敗は「時の運」でもある「恨みっこナシ」! そして、巨悪に対しては遠回しでのツンデレな友情込みにて共闘してみせるといった群像劇!!


 同じくゲーム原作の深夜アニメ『艦隊これくしょん -艦これ-』(15年)・『刀剣乱舞』(16年)・『千銃士』(18年)だのは、敵味方のメリハリ、最後には爽快感をもたらすための「娯楽活劇」としての本作の作劇術を見習ってほしいものである――各キャラクターが戦っていることの動機付けの部分と、物理法則を無視したアクション演出の部分などで――。



 よって、本作の原典でもあるTVアニメ版『戦国BASARA』については私的には高く評価しているのだ。


 しかし……。21世紀の野郎オタにとっては、イケメンの男性キャラばかりの本作はハナから対象外であって、女性オタクだけが騒いでいたのであったとサ(笑)。



 そんな傑作シリーズの新作が、装いを新たに現代を舞台とした「学園パロディ」に姿を変えて登場した! と思いきや……。制作会社や製作委員会の延命や息継ぎのためとおぼしき、単なる安っぽいグダグダな低作画作品に成り果ててしまうとは……。


 コレはコレで、もう少しだけ予算&手間をかけていれば、B級なりに観られる作品にはなったとも思うのだけど。
戦国BASARA

戦国BASARA弐
戦国BASARA Judge End
学園BASARA
(了)
(初出・オールジャンル同人誌『SHOUT!』VOL.73(18年12月29日発行))


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うる星やつら・つぐもも・小林さんちのメイドラゴン・よふかしのうた ~異界から来た美少女キャラとの同居ラブコメにも今昔!(非日常・異能よりも日常性が強調・好まれる傾向)

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 リメイク深夜アニメ『うる星(せい)やつら』が来冬からのシリーズ後半2期(24年)の放映を控えて、1期(22年)の傑作選が放映記念! とカコつけて……。陸海空から異界・異能の美少女キャラがやってきて同居生活をはじめる、深夜アニメ『うる星やつら』1期(22年)・『つぐもも』1期(17年)・『小林さんちのメイドラゴン』1期(17年)・『よふかしのうた』(22年)評をアップ!


うる星やつら』1期・『つぐもも』1期・『小林さんちのメイドラゴン』1期・『よふかしのうた』 ~異界から来た美少女キャラとの同居ラブコメにも今昔!(非日常・異能よりも日常性が強調・好まれる傾向)

(文・T.SATO)

『うる星(せい)やつら』

(2022年秋~2023年冬アニメ)
(2022年12月25日脱稿)


 空から人外の美少女キャラが降ってきて、冴えない男子高校生と同居することになる、今日的な美少女アニメ・ハーレムアニメ・ラブコメの原点といった大人気マンガにして高視聴率の大人気アニメでもあった作品が、35年の歳月を経て再アニメ化された作品。


 ロートルな筆者なぞも小学生時分に同作の原作マンガ連載開始には遭遇しており、当時は原オタクではなくとも同世代の皆が本作には革命的な衝撃を受けてハマっていたものだ。
 云ってみれば、1955~1960年前後生まれのアニメ・怪獣特撮・マンガで育ったライトSF的な感性を持ったオタク第1世代が初めて作り手側に回って放ってみせた、我々とも近しい空気・文化を享受してきた世代による、我々の世代向けの作品がついにココにて誕生したのだ! といった感慨を子供心にも受けたのであった――オタクという語句はまだ存在しなかった時代だけど――。


 リメイクにあたっては、時代設定を現代に置き換えてもイイはずである。なのだけど、本作ではあえて原作マンガが連載開始された1978年をモデルとしたのだろう。風景や家屋や高校生たちの制服や私服などは、筆者のようなロートルにとっては見覚えがある、いかにも70年代末期的なモノともなっている。


――子供部屋や居間の押入れや出入り口などがドアではなくフスマ! 家具が少ない! 主人公男子高校生の自室の壁には観光地のお土産のむかしの定番であった細長い二等辺三角形のかたちをした三角旗が貼ってある! 女子の体操着がブルマ! 制服スカートもヒザ下まであって丈が長い! ……授業参観に母親たちが和装で参加しているあたりは、石森章太郎原作の東映特撮『好き!すき!! 魔女先生』(71年)などの70年代初頭であればともかく、70年代末期にはもうなかった事例だとは思うけど、それもまた懐古趣味的な確信犯なのであろう(笑)――


 今のユニクロにつながる中国での縫製による安価で多彩な若者向けの服飾の元祖や、男性でも美容院に行くようになったのは80年代中盤以降のことである。なので、この70年代末期の若者たちは皆が似たようなシャツとGパンを着用していることで、ルックス面でも性格類型が過度に可視化、カーストも拡大化されることがなかった古き良き時代の空気を懐かしくも思い出す(笑)。


 それはさておき、「あなたにオススメです」的に上がってくるオタク向けニュースもまた、サイレントマジョリティーならぬノイジーマイノリティーの意見であるやもしれない。よって、オタク全体におけるその意見比率については軽々には判断ができない。つまり、そのままで受け取るべきではない。
 しかし、本リメイク放映開始当初には、「本作の主人公男子高校生・諸星あたるに対して、若いオタクたちから非難囂々の嵐!」といった記事をよく見掛けたものだ。


 そう、たしかに本作は美少女ハーレムアニメの元祖ではある。しかし、35~45年という歳月の隔たりは実に大きい。後年のオタク向け美少女アニメの主人公少年はメインターゲットに合わせて、もっと受動的で内向的で繊細ナイーブであったり、自分で告白する胆力はないし、そういった積極的な行動にはリアリティーや身近さを感じられないので、女子の方から告白されたがっていたり、そのことで胸キュン感情を惹起されたかったり、対外的にはともかくアタマの中では言葉が渦巻いているモノローグ少年であったりもする。
 つまり、アクティブでケーハクで浮気性でナンパもやすやすとコナしている諸星あたるとは真逆の性格なのでもあった(笑)。


 この作品はそーいったモノなのだと割り切って楽しむことも可能だとは思うものの、そこがネックにはなってしまうのやもしれない。とはいえ、だからといって諸星あたるの性格設定を変えてしまっては、もう『うる星(せい)やつら』ではなくなってしまうので、それもムリだけど(笑)。


 筆者個人は我々のような高齢世代のオタに一定数は存在しているようなガチの『うる星』マニアなどではない。原作マンガや往時のTVアニメを幾度も繰り返して再鑑賞したような熱心な研究家タイプの『うる星』オタでもない。
 よって、マンガにはないアニメオリジナルの展開や点描をキラっていたタイプでもない。押井守カントクが増幅していた同級生キャラ・メガネやオリジナル編は評価もしている。押井守は後年の作品群よりもTVの『うる星』時代が頂点であったと思っているくらいだ(笑)。


 コレは今のような審美眼はなかった中高生時代の感慨に基づいた思い出補正であり、いま観返してみれば現在進行形での生命力は往時のTVアニメ版にもナイのやもしれない。しかし、破裂的でハチャメチャな勢いといったものにはやはり欠如しているとは感じてしまう。


 客観的に見れば、特に拙(つたな)いところもなく、同季の深夜アニメの中では充分に水準以上の作品だとは思うのものの。
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(了)
(初出・オールジャンル同人誌『SHOUT!』VOL.84(22年12月30日発行))


つぐもも』1期

(2017年春アニメ)
(2017年4月27日脱稿)


 今では40年もの伝統がある、空から異界の美少女が降ってきて平凡な少年と同居するパターンのバリエーション作品でもある。


――このジャンルのことを端的にネタ的にも指し示すものとして「落ちもの」といったジャンル名(笑)まで21世紀には出現。それを受けてのメタ的なタイトルの美少女キャラ作品としては、角川書店系のマンガ作品『そらのおとしもの』(07年。09・10年に深夜アニメ化)といった作品も登場している。ただまぁ、筆者個人は前掲の作品については評価してはいませんけど(汗)――


 本作においては、少年の亡き母の着物のオビが、歳月を経て魂を生じていわゆるアニミズム的な付喪神(つくもがみ)となって、それがヒト型の水色髪で白和装姿の美少女ヒロインに昇華しているといった設定である――耳のかたちはなぜかトガったエルフ(妖精)耳だけど(笑)――。彼女はいわゆる「戦闘美少女」でもあり、この少年を守らんがために妖怪と戦うのであった!


 #1は非常に見やすくて基本設定もわかりやすい。ジャンル作品のお約束で「質量保存の法則」を無視して超長大に伸びていくオビを武器として無数に繰り出して、主人公少年を守るために「黒髪のカツラ」(笑)の妖怪と戦ってみせる、迫力ある超高速バトルもイイ感じではあった。起承転結・勧善懲悪のメリハリも強くてプレーンな作りだとも思うのだ。


 しかし、この作品の罪ではナイのだけど、各話単位の脚本&演出にも拙さはナイのだけれども、個別単独の作品としてのクオリティとはまた別に、ひょっとしてひょっとすると、ドコとなく少しだけそのプレーンさが今となっては少々古クサいかもしれない?(汗)


 古クサいと思ってしまうことの原因はナニなのであろうか? この付喪神ヒロインの造形が今となってはやや単調で、いわゆる「戦闘美少女」属性の方に寄り気味だからであろうか?
 今どきの美少女アニメにおける、異能的な非日常要素などはなくても、ただの「人間」としてのヒロインとのやりとり・交際・会話などに伴なう繊細デリケートな表情・仕草・言動などをフェティッシュに追いかけて、「萌え」的に執着してみせるような、それだけでも「間」が持ってしまうような作劇的な「視線」や「演出」が欠如気味だからであろうか?


 常々オタク系や萌え系のいわゆる「落ちもの」美少女ジャンルは年々歳々クセが強くなっていっており、それが「進歩」であるのか間口の狭い「袋小路化」であるのかがビミョーだとは思ってきたものだ。
 しかし、いざ本作のようにプレーン(平明)でオーソドックスで先祖返りしたかのような作品が登場してしまうと、フツーに楽しめつつも少々物足りなくも感じてしまうとは……。我ながら身勝手ではあるし、筆者もそーとーにこのテのジャンルの長年にわたる変化に染まって、そこを基準に考えてしまうように毒されていたようでもある(笑)。


 主演の男子中学生役はテロップを見ると三瓶由布子(さんぺい・ゆうこ)。近年だと児童向けTVアニメ『団地ともお』(13年)の1970~80年代っぽい少年主人公や、少女マンガ原作の(ひとり)ボッチ深夜アニメ『君に届け』(09年・11年)のレギュラーキャラであり沢城みゆき(さわしろ・みゆき)嬢とのギャルコンビが個人的には印象に残っている。両役ともに本作の主人公少年とも同様に、低音ハスキーな感じではあった。
 もう10年も前の女児向けアニメ『Yes! プリキュア5(ファイブ)』(07年)主演にて披露していた、元気だけれども甘~い高音の美少女声が個人的にはスキだっただけに残念なのだけど(笑)。地声に近いのは本作のような少年声の方だったようで、あのプリキュアはけっこう作っていた声であったようだ……。
つぐもも コンプリート シリーズ Blu-ray 4枚組 ボックス セット(並行輸入品)

(了)
(初出・オールジャンル同人誌『SHOUT!』VOL.69(17年5月4日発行))


小林さんちのメイドラゴン』1期

(2017年冬アニメ)
(2017年2月21日脱稿)


 「メイド」+「ドラゴン」。西洋ファンタジー風ドラゴンがふだんは金髪ツインテールのかわいい美少女メイドに変身しているから「メイドラゴン」というタイトルである(笑)。ダジャレの出オチ的な発想から構築されたとおぼしき作品だ。


 弱者男子にとっての都合のイイ、アリがちな弱者女子・天真爛漫ハクチ女子モノなのであろうと思いきや……。


 我々キオオタにとっては縁遠い、メンドくさい出会いやら声掛けナンパやら、論理的・実務的ではない戯(たわむ)れの言葉遊び的な無内容な会話(汗)で女性を楽しませつつ、そういったことの積み重ねでの交流・交情の深まりといった進展の描写を省いてくれて(笑)、そもそもの最初からすでに出会ってもいる「妹」や「幼馴染」であったり、職業的にも無条件で尽くしてもくれる「メイド」モノといったジャンルの一環作品なのであろうネ? あ~、ハイハイ。そのテは見切ったヨ! と思いきや……。


 ナンと! そもそもの居候先が10代の男子高校生のお部屋などではなかった!


 居候先のご主人さまはメガネをかけており、化粧っ気もなくって(多分)、「媚びへつらい」や「愛想笑い」などとは無縁な不愛想な表情で、「スカート」ではなく「グレーのスーツズボン」をはいている、明らかに女子力には欠けていそうな(汗)、スレンダーな冷めた20代の女子である!


 いわゆる暗黙裡に「女子力」や「コミュ力」を要求されそうな営業職とか総合職とかではない、職業はIT屋さんであるらしき一人暮らしのOL・小林さん(笑)なる社会人女性なのだ。


 その彼女宅に「ドラゴンの恩返し」(笑)とばかりに美少女メイドが転がり込んできて、同居生活を開始するという作品なのであった。


 ……って、誰得(だれ・とく)の設定ですか!?


 たしかに、趣味活動に傾注したい女オタクたちも、自分に尽くしてくれて炊事・家事・洗濯までしてくれるパートナーを欲(ほっ)しているという話は聞くけれど(汗)――女子向けアニメ『少年メイド』(16年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20160502/p1)など!――。


 とはいえ、小林さんは明らかに「オンナを捨てている」といったタイプでもない。よって、


●往年の綾波レイ(あやなみ・れい)(『新世紀エヴァンゲリオン』(95年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20110827/p1))
長門有希(ながと・ゆき)(『涼宮ハルヒの憂鬱(すずみや・はるひのゆううつ)』(06年))
●最近の尾頭ヒロミ(びとう・ひろみ)(『シン・ゴジラ』(16年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20160824/p1))


 彼女らのような、控えめな「理系女(リケジョ)」タイプのそこはかとない抑えたイロ気というのか、「オバサン」や「媚び媚び系」には行かないけど、年齢が長じても完全消滅はしていかないウブで善良な「少女性」の残存! といった文脈で捉えることも……できるのかもしれない!?


 ……我ながら心にもないことを自動的に書いておりますけど(汗)。「尾頭ヒロミ萌え~」的な文脈で、小林さんを享受しているオタクはそうそういないと思われますし、筆者もそんな目線で彼女を見てはいません(笑)。


 ググってみると、本作のマンガ原作者センセイは、髪の毛を脱色してヤサグレ一歩手前にも見えるサバサバとした女性主人公による、メガネの駄目ンズなオタク男子との新婚生活を私小説風に描いていた5分アニメ『旦那が何を言っているかわからない件』(14年)と同じヒトでもあった。
 なるほど、初々しさはないけど性悪でもない、瞳も小さくて三白眼女子のイロ気や魅力といったものは、両作ともに共通して存在しているかも……ですかネ。まぁ、平均的なオタク男子たちが好みそうな女子像にはまったく見えないけれども(汗)。


 この小林女史のことはともかくとしても、絵柄的には女オタクにも目配せしている作品だともとうてい思えず(そうでもない? 今ではOK?)、野郎オタク向けのベタで安っすい美少女アニメにしか見えない。なのに制作スタジオは、近年はそのブランド力を活かして本格文芸志向に傾きつつあるようにも見える、天下のアニメ製作会社京都アニメーション


 いや、この作品自体に罪はナイのだけれども、天下の「京アニ」がこんな作品をアニメ化するだなんて……。
 ムリやりにムダに言葉遊び的に深読みする評論オタの一部には、本作にも「京アニ」らしさを見出すムキもいるのやもしれない――ご苦労さまです――。
 しかし、筆者はこの作品にいわゆる「京アニ」らしさは感じない。「京アニ」特有のリアルな背景美術や実写のアート邦画的な間・テンポ・カメラアングルなどの冴えやヒネリなどもなくって、ごくごくフツーのオタク向けテンプレ(ート=型にハマった)アニメにすぎないとも思うのだ。


 しかし、それが悪いというワケではない。こーいった空から美少女が降ってきて同居もしてくれるような、思春期・青年期の妄想を体現してくれるような作品こそが、我々のような中高年オタ向けではなく、本来の少年少女向け、もしくはオタク少年向けのアニメ・マンガの王道設定作品でもあるのだ……といったことも間違いではないからだ――まぁ、本作の場合は、そうとうにヒネりは入っているので、王道とは云いがたい作品ではあったものの――。


 けれども、序盤だけを観たかぎりでは、そのお約束・テンプレの範疇での、ベタなりの王道の力強さ・密度感・冴え・キレといったものは、少なくとも筆者個人には感じられず、ワリとルーティンで脱力したテンプレの段取り展開でしかなかったといった印象でもある。


 「京アニ」も企業ですから、会社を安定的に操業させていくためには、いつも常にホンキの作品ばかりを作らずに、作画カロリーも低そうで描線もシンプルな本作のようなイロモノ作品を挟むことにしたのであろうか!? ……なぞとゲスな勘繰りも入れつつ、それはそれでオトナとしての正しいビジネスの態度だナ、とも思うのだ。


 そう考えてみると、『甘城(あまぎ)ブリリアントパーク』(14年)や『無彩限(むさいげん)のファントム・ワールド』(16年)なども、作画カロリーはともかく内容的にはさして深みがあるものではなかったので――異論は受け付けます(汗)――、そーいうコトであったのかと独りごちる。「人はパンのみにて生きるにあらず」の逆なのであった(笑)。


 そんなワケで、ダメダメだということでは決してナイ。気楽に見られる水準作だろうとは思うのだ。しかし、毎季のことではあるけれど、あまたの深夜アニメをすべて観ることなどできようハズもナイのであって、あくまでもイス取りゲームで自身の好みに合ったその季の上位5~6作品だけを鑑賞している都合上、「ゴメンなさい」と多少のやましさを感じつつ、HDD(ハード・ディスク)レコーダーの予約リスト上から本作はご退場を願うのでありました(……本作をスキな方々にはゴメンなさい・汗)。
青空のラプソディ 【アニメ盤】

小林さんちのメイドラゴン 1 [Blu-ray]
(了)
(初出・オールジャンル同人誌『DEATH-VOLT』VOL.77(17年2月26日発行))


『よふかしのうた』

(2022年夏アニメ)
(2022年12月25日脱稿)


 眠れなくなってしまった14才の少年が深夜に団地から外出。郊外の住宅地や公園をさまよう。そこでやや年上で八重歯に不敵な笑みを浮かべた吸血鬼美少女に出会って……。


 中学・高校と進学するにつれて睡眠時間も減って、仕事もしていない学生のモラトリアム(猶予期間)で、夜間に自分の自由にできる時間もできるものだ。活動範囲も広がって、夜間にコンビニへ立ち読みや買いものへ行っても許される。


 あるいは、オモテの学校や家庭ではウマく生きられない人種のうちでも、行動的な陽キャであれば、夜の都心のストリートへと繰り出して出逢い・会話・遊びを楽しむ。
 我々のような陰キャであれば、人通りも少ない郊外の街灯に照らされた闇夜の世界にこそ、級友やご近所などによる値踏みもしてくる他人の目が少なくて蔑視の目線もないゆえに、劣等感をヒリヒリと抱かなくても済む「自由」(解放感)を感じていたりもする(笑)。


 むろん、それが真の意味での「自由」であるのかは怪しい。昼間との落差で「自由」であると相対的に感じているだけだったりもするものなので(汗)。


 本作の場合は、主人公少年は名作アニメ『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』(11年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20191103/p1)同様に引きこもり少年であったりする。
 そうなると、主人公の性格造形的にも一般の少年マンガ媒体ではなくオタ向け媒体出自なのかと思いきや……。「週刊少年サンデー」出自! 時代は変わったものである(汗)。


 といっても、イジメを受けたワケではない。女子からの告白を受けたのに、それがピンと来なくて断ったことで、女子連中からハブにされたことが原因なのであった(怖!)。


 アニメ化に際しての処置なのだろうが、郊外の闇夜の描写による異化作用がすばらしい。星空は黒でなく青くて星の数も多く、都心なのに天の川が緑色に輝いている。街灯で照らされた地面は黄色く染まっている。夜の湿気も感じられるような空気感も含めて、没入させてくれるのだ。


 もちろん、このテの作品はヒロインの魅惑的で個性的なルックスでも吸引力の大小は変わってくる。人物造形の作り込みまでウマくいけば、もうそれだけでどんな会話を仕掛けてきてどんなリアクションを返すのか? といったところまで規定されて、何気ない雑談の会話をいつまでも継続ができて、間を持たせることもできるのだ。


 本作の場合、アニメ化に際して七色の声を持つも彼女が演じているとはわかる中堅アイドル声優雨宮天(あまみや・そら)による、ダミ声も入ったベラんめぇ口調で少年のオボコさを試しつつカラかってもくるセリフ回しもそれらを増幅! この銀髪吸血鬼少女と少年のグダグダ素っ頓狂な会話と夜の雰囲気描写だけでも、序盤の2話が保ってしまっているのだ。


 吸血行為や吸血鬼美少女による少年の自室への勧誘、マッサージや添い寝業も営んでいる彼女主導による若い男女の接触描写は、思春期の少年少女にドギマギさせるためのツカミでもある――むろん、性行為には及ばないけど(笑)――。


 しかし、メインヒロインの吸血鬼美少女に弱点がなくてもツマらないからだろうが、余裕をカマして下ネタを連発しているワリには、実は恋バナ(恋話)には弱いのだと設定(笑)、時にテレたり赤面させることで「萌え度」も上げているのだ。


 2話のラストでは、サブヒロインも登場。髪の毛にクシを入れていない! といった風情でも、素の顔面偏差値は平均以上なのだろうとは思わせる、アンニュイ・気怠るげでローテンションではあっても、性格は良さげな制服女子中学生の地味女子も登場。
 やはり七色の声を持っているものの彼女が演じていたとはいつもわからない花守ゆみり(はなもり・ゆみり)が、引きこもりや(ひとり)ボッチになるほどではないけれども、クラスの中ではいかにも傍流そうな女子であり、かつ、学生時分から地味な主人公少年のことを少々心安くて好ましくも思っていたのだろうナといった風情を、やや低音のボイスで好演している。
 吸血鬼のメインヒロインとは対照的に、早起きして夜明け前には登校している(!)といった設定での接点を作って、作品世界の広がりも感じさせつつ、対比もウマくできている。


 この3人の関係性だけでもストーリーの継続が可能だよナ……と思いきや。若いオタクが2010年代の平成『仮面ライダー』作品を評していわく、各話ゲストの「お悩み相談室」パターンで、出版社に勤めている社会人2年目の黒髪メガネ女子が吸血少女宅に訪れてマッサージを受けながら、夢と現実の落差に疲弊して涙する6話の滋味!


 7話からは中堅アイドル声優戸松遥(とまつ・はるか)が演じる、高飛車な声もピッタリで援助交際なども平気でしていそうなギャル高生を筆頭に、


●黒スーツ姿の年増の赤髪姉御
●黒髪ロングの落ち着いたお姉さま
●黒髪ショートの上目使いで媚びてくる女子高生
●黒髪ロングの自称「ボク」女子


なども一挙にグループとして登場!(全員が吸血鬼・笑)


 美少女アニメ的なハーレム文法も導入されている。


 しかし、彼女らの主人公少年への迫り方はアザトさを前面に出している。しかも、その計算・打算・競争を彼女ら自身の内心の声で説明したり評し合ったりするあたりで、作者もなかなかの人物眼であり、女性の心理も見抜いている……と思ってググってみたら。


 エッ、あのおバカなギャグ作品にして駄菓子を素材に延々と珍妙な駄弁りをつづっていく、深夜アニメ化もされたヒット作『だがしかし』(14年。16・18年に深夜アニメ化)と同じマンガ家さんの作品だったの!? 引き出しの広さには恐れ入るのであった。
TV アニメ『よふかしのうた』オリジナル ・ サウンドトラック

(了)
(初出・オールジャンル同人誌『SHOUT!』VOL.84(22年12月30日発行))


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厨病激発ボーイ・ド級編隊エグゼロス・アクションヒロインチアフルーツ・恋は世界征服のあとで ~スーパー戦隊&特撮ヒーロー・パロディの爛熟!

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 2023年の夏季には特撮変身ヒーロー作品(における悪の組織)のパロディアニメ『怪人開発部の黒井津さん』(22年)が再放送中記念! とカコつけて……。『厨病激発(ちゅうぼう・けきはつ)ボーイ』(19年)・『ド級編隊エグゼロス』(20年)・『アクションヒロイン チアフルーツ』(17年)・『恋は世界征服のあとで』(22年)評をアップ!


『厨病激発ボーイ』・『ド級編隊エグゼロス』・『アクションヒロイン チアフルーツ』・『恋は世界征服のあとで』 ~スーパー戦隊&特撮ヒーロー・パロディの爛熟!



『厨病激発(ちゅうぼう・けきはつ)ボーイ』

(2019年秋アニメ)
(文・T.SATO)
(2019年12月15日脱稿)


 「厨病(ちゅうびょう)」の「厨」とは、「中二病」の「罵倒」的な意味での云い換えのネットスラング(俗語)で、ネット上の超巨大掲示板2ちゃんねるの草創期に誕生した用語だったと思う。次第に「罵倒」の意味ではなく明るい「自虐」や「自嘲」や「謙遜」の意味での使用がメジャーとなって、そのニュアンスも変えていった。この云い換えの歴史も20年近いものとなるのだ。



 男女共学高校の「ヒーロー部」(笑)の残念なイケメン男子たちの珍妙な活動に翻弄されて、勝手に「スーパー戦隊」のピンク扱いにされることになった、サメてはいてもフェミニンでゆるふわな茶髪で小柄な少女が主人公を務めている逆ハーレムアニメでもあった。


 といっても、イケメン男子たちはスカした男子クンたちではなく、特撮ヒーローものが大好きらしい精神年齢が幼稚園児な少年ばかりが登場している。なので、野郎が観てもイヤ~ンな感じはしないと思う。


 また、本作のような作品がスキな女子たちも、きっと思春期のモテ/非モテカーストの前では勝ち目がナイことを直感的に悟ったり、3次元世界でのちょいワル男子が怖くて甘ったるい男子の方がスキなので、虚構世界で擬似的恋愛の代償行為を得ようとするオボコい女子たちなのだろうとも憶測するのだ――バカにしているワケではないですよ――。


 筆者が散見してきた範疇でも、こーいう女子向け逆ハーレム作品の視点人物である少女主人公といったものは、女子向けの男性アイドル歌手アニメ『うたの☆プリンスさまっ♪』(11・13・15・16年)をはじめとして、不自然なまでに無色・無個性・フラット・無主張・プレーンな傾向があった。しかしそれゆえに、女性オタクが鑑賞するにあたって、主人公少女の存在が媚びた感じでハナにつく……といったあたりを脱臭することができている。
 主人公の存在が彼女ら女性視聴者にとっては邪魔にならずに、適度な塩梅での自分個人を投影させたかたちでの感情移入をさせるといったあたりが、劇中世界へのあくまでも媒介役としてはウマく機能させることができている……といったところなのだろう。


 しかし、そーいった確信犯的な作劇的意図(?)とは別に、こーいう地味子ちゃんな主人公もけっこう魅惑的である。我々のような野郎オタクたちがナゼにこういった番組にイナゴのように群がってきて毒牙にかけないのかが不思議なくらいだ(笑)。


 同列には論じられないけど、


●直前の夏季の深夜アニメ『荒ぶる季節の乙女どもよ。』(19年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210411/p1)に登場した、小説家志望の低血圧なボソボソと低音でしゃべる黒髪の地味子ちゃん
●戦車アニメ『ガールズ&パンツァー』(12年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190622/p1)の冷泉マコ(れいぜい・まこ)
●同季の秋アニメ『星合の空(ほしあいのそら)』(19年)の地味子ちゃん


 女性としての性的な魅力には欠けるやもしれない。しかし、低身長の黒髪もっさりヘアで、異性に媚びてはいなくて、声も可愛く作っていなくて、ローテンションかつ少々ブッキラボウには見えても、やっぱり弱そうで誠実そうな娘たちの系譜といったものは、ベストではなくてもベターとしてはイイとも思うのだけれどもなぁ(笑)。


 もちろん、そんなキャラへのフェティッシュな想いだけでも視聴継続を決意する決定打にはならない。よって、悪印象はないけれども、オサラバしてしまうのであった(汗)。


 ググってみると、本作はヒットした「ボーカロイド楽曲」――人工の声による楽曲ソフトを使ったアマチュア楽曲――が原作(14年)なのだそうで、それを基に小説化やマンガ化(共に16年)が進行していった企画だそうである。げに昨今のオタクジャンルの状況や出自は多様なのであった。
厨病激発ボーイ (りぼんマスコットコミックス)

(了)
(初出・オールジャンル同人誌『SHOUT!』VOL.76(19年12月28日発行))


『厨病激発ボーイ』

(金曜 22時30分 TOKYO-MX他)
(文・久保達也)
(2019年10月20日脱稿)


 第1話は転校してきた女子高生が「ヒーロー部」に所属する「中二病」の男子たちの奇行に振り回される内容である。今後、面白くなっていくのかどうかは現時点ではなんともビミョ~な印象である。その中二病男子たちの生態描写におもわず注目したから、かろうじて観つづけることができたといったところだ。


 黒板の前で自己紹介する茶髪ショートボブにヘアバンドをした転校生少女に対して、やたらと騒々しくて落ち着きのない主人公男子は「おまえはピンクだ!」と叫ぶ。当然ながら、転校生のみならずクラスの大半がその意味を理解できずにポカ~ンとしてしまう(笑)。


 フィクション作品のお約束で(笑)、例によって隣の席となった転校生の少女に、主人公男子が「オレはレッドだ!」と自己紹介したことで、視聴者は先述した「おまえはピンクだ!」の意味をやっと理解することになる。


 つまり、このレッドは「スーパー戦隊」をはじめとする特撮変身ヒーローが大好きな少年であり、すでに「ヒーロー部」にはイエロー・ブラック・パープルまでそろっていたことから、彼は転校生少女をピンクとしてスカウトしたのだ(笑)。


 ちなみに、レッドは小学生が体育の時間に頭に着用する、紅白がウラ表リバーシブル仕様の帽子のツバを頭頂部に立ててかぶっている。これは昭和の時代に小学生だった男子ならば特撮変身巨大ヒーロー・ウルトラマンたちやウルトラセブンなどのマネとして同じかぶり方をしたことがあった者は圧倒的な大多数だろう。


 ウルトラセブンの必殺技・アイスラッガーをマネして、その帽子を飛ばしていたヤツも定番であった。ウルトラマンはロクに観てはいなくても、いまどきの小学生でもそういったマネは定番であるとも聞く。


 そして、そんな描写こそが、レッド少年が重度のヒーロー好きであるどころか、いかにイタいヤツであるかを一目瞭然としてくれる小道具ともなるのだ。


 そして、転校生少女は右目に眼帯をしている。古くはSF巨大ロボットアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』(95年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20220306/p1)のヒロイン・綾波レイ(あやなみ・れい)の傷ついた姿、京都アニメ製作の大ヒットラブコメ中二病でも恋がしたい!』(12年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190904/p1)のヒロイン・小鳥遊六花(たかなし・りっか)などで、後者のような演技やポーズやセルフプロデュース、どころか本人の思い込みでその眼帯で自身の超能力が発露することを抑え込んでいる! といった展開になるのかと思いきや……


 レッド少年の方が、彼女の眼帯にはその右目に秘められた特殊能力が覚醒するまで、これを防御している機能があるのだと思いこむ!(笑)


 しかし…… 実は「ものもらい」を隠しているだけであった(爆)。



 ちなみに、レッドが使っている筆箱には、ボタンを押すと鉛筆やペンなどの収納部分が上部にせり上がってくる機能があった。


 これはオジサンである筆者が小学生だった1970年代後半に突如として登場して大ヒットした、可変部分も付いて遊べる玩具性(後年でいうプレイ・バリュー)も濃厚にあった筆箱商品でもあるのだ。
 上部にせり上がるどころか、筆箱の裏面にもフタがついていて、そちらにも鉛筆などが収納可能な二面筆箱。側面自体にもフタが付いている三面筆箱。上部側面にもフタが付いている四面筆箱。消しゴム収納部分も開閉フタがついている五面筆箱・六面筆箱などなど、ドンドンとエスカレートしていったものだ。


 しかし、子供は実に移り気。小学校中学年以上の児童間でもこういった変型筆箱は急に幼稚だとされる風潮がはじまって、シンプルな布製かつチャックの筆箱や金属製のカンペン筆箱の方がオシャレだとされるようにもなっていく(爆)。


 そんなロートル世代から見ると、このような筆箱が現在でもいまだに存在していたことにも驚いた!(笑) しかし、彼のような少年がこういう筆箱を好みそうだという意味では、彼のさらなる念押しのキャラ付けとしても、この小道具でさらに増強させてもいるのだ。



 そんなカラ騒ぎぶりでクラスでは浮いた印象のレッド少年とは異なり、金髪イケメンのイエロー相当の男子クンには男子の友人も大勢いるリア充であった――リアル=3次元世界で充実している人間のこと……って説明不要ですよネ――。


 しかし、彼もマトモな少年ではなかった。アイドルアニメ『ラブライブ!』(13年~・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20160709/p1)をおもいっきりモチーフにした『アイライブ』(笑)なるスマホゲームに登場する特定の女子キャラに夢中になっているオタク男子なのだ(爆)。「リアル女子には興味ない」とまで公言! 転校生女子には「残念なイケメン」と云われてしまうのであった(笑)。



 第1話の後半では、教室の窓からサッカーボールが飛びこんできたり、運動場でバスケットボールのゴールが倒れてくる! 転校生少女がさまざまな危険な目に遭(あ)うミステリー的な展開となっていくのだ。


 レッド少年は主人公少女の右目の特殊能力が覚醒する前に、彼女を始末しようとしてくる「悪の組織」の仕業(しわざ)だと推理する!(笑)
 しかし、銀ブチ眼鏡の秀才タイプのブラック相当の少年クンが「犯人はおまえだ!」と指さしたのは…… なんと同じ「ヒーロー部」に所属するパープル相当の少年クンであった!


 かなりヤンキーっぽい雰囲気で、レッドやイエローの日頃の振る舞いを「バカバカしい」と軽蔑(けいべつ)しているパープルであった。そんな彼が自身の性向とは真逆ともいえる「ヒーロー部」になぜ所属しているのか? なぜ転校生女子を狙うのか? 第1話を観るかぎりではイマイチその立ち位置が不明である。


 しかしまぁ、「平成仮面ライダー」作品のようにナゾ解きをタテ軸にして展開する、本格的な群像劇ドラマとなっていくようにはとうてい思えない(笑)。あくまでもギャグでコミカルに押し通していくノリが容易に想定されてくるのだ。


 本作のコミカライズ(16年)が集英社の少女漫画雑誌『りぼんスペシャル』に連載されていたことから推測するに――2019年10月に完結したばかりだ――、イケメン王子さまたちのカラ騒ぎを描いた路線のなかでの変化球的な作品でもあるのだろう。


 だから、特撮オタクの女子がその趣味の是非や意義、社会の中で正体を隠すことや仲間を探すことの葛藤を描いたような、小学館ビッグコミックスピリッツ』連載の人気漫画『トクサツガガガ』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190530/p1)のような深みと滋味もあるような内容を期待しても、たぶんムダであろう(笑)。
厨病激発ボーイ

(了)
(初出・オールジャンル同人誌『DEATH-VOLT』VOL.83(19年11月3日発行))


ド級編隊エグゼロス』

(2020年夏アニメ)
(文・T.SATO)
(2020年8月7日脱稿)


 ご町内の平和を守るために、主人公の男子高校生が戦隊ヒーロー・エグゼレッドに変身! 「キセイ蟲(ちゅう)」なる昆虫型怪人と戦う!


 といっただけの内容に思えたが、やわらか可憐なボイスの加隈亜衣(かくま・あい)ちゃんが演じる金髪ショートでクラスでも快活なメインヒロインも魅惑的に描かれている。


 彼女は「性」には潔癖で忌避(きひ)さえしている。しかし、幼少時の回想シーンでは幼児時代の主人公クンに公園の遊具の中の密閉空間で積極的に迫っていた。


 そう、幼少期などは「性」的なものに関心はあっても、その後は罪悪感とともに性欲を抑制してきた娘なのだ。


 そして、劇中では「Hエネルギー」(笑)が常人の数十倍だったので、劇中内ヒーローたる資格があったとされるのだ!――ナンでやねん! 性欲が資格かい!?――


 それによって、ナシ崩し的に地球防衛隊・サイタマ支部の宿舎――それも木造の宿舎(笑)――に応召されて、エグゼイエローとして任命されるのだ!


 その他にも、エグゼピンク・エグゼホワイト・エグゼブルーに変身する女子中高生たちが登場している――女子ばかりといったあたりで、幼い男児たちが視聴すれば忌避してしまうだろうけど、その逆に思春期以降の少年クン向けとはなることで、いわゆるハーレムものの文法にも合致する作品であったこともこれで明々白々となるのだ(笑)――。


 そして、極め付け。『ド級編隊』の「編隊」とは、「戦隊」と「変態」を掛けている語句であることが判明していく。要はダジャレとしてのメインタイトルなのだ(汗)。


 一般の少年マンガ雑誌で連載されている作品とは異なり、純オタク向けの媒体が出自である作品の場合には、主人公少年クンは能動的ではなく、受動的で繊細ナイーブで内向的かつ巻き込まれ型が多いものだ。


 しかし、本作の主人公クンはやや能動的である。性欲・煩悩も全開である(笑)。原作は月刊「ジャンプスクエア」の連載マンガであり、「週刊少年ジャンプ」と比すればややマニアックな媒体ではあるものの、角川書店一迅社などの媒体に比べればそこまでオタッキーな媒体ではないのだ。両極の中間のやや一般層寄りに位置する媒体といったところだろう。それらの媒体の客層の性格類型の違いによっても、主人公少年の性格設定にも相違が出てしまうのだ……といったところだろう。


 特撮ヒーローをパロった深夜のヒロインアニメ『俺、ツインテールになります!』(14年)や『アクションヒロイン チアフルーツ』(17年)なども同様だったけど、最初から「B級路線」をねらった「イロモノ作品」に対して、「もう少しだけ叙述の仕方を工夫すれば、たとえイロモノ・B級作品ではあっても、もうちょっとドラマ的な密度感も出せるんじゃネ?」なぞといったツッコミはヤボなのだろうナ、やっぱり。


 個人的には本作の鑑賞を継続していくのがキッツい作りではある――本作をスキな方々にはゴメンなさい――。


 でもまぁ、メインヒロインはルックス・作画・ボイス・性格ともに魅力的に描かれている。それだけです。……それだけしかないともいう(笑)。
【Amazon.co.jp限定】ド級編隊エグゼロス 全巻購入セット(1巻メーカー特典:「オリジナルステッカー」、全巻購入特典:「きただりょうま描き下ろし全巻収納BOX」「描き下ろしB2布ポスター(百花)」付)(完全生産限定版) [Blu-ray]

(了)
(初出・オールジャンル同人誌『SHOUT!』VOL.77(20年8月13日発行))


ド級編隊エグゼロス』

(土曜24時 TOKYO-MX他 放映終了)
(文・久保達也)
(2020年11月11日脱稿)


 「誰かが云った。『HERO(ヒーロー)』は『H(エッチ)』と『ERO(エロ)』でできていると……」


 人類から「Hエネルギー」を吸い取って、その活力を奪うことで地球侵略をたくらむ「キセイ蟲(ちゅう)」と戦う高校生男女で結成された、地球防衛隊・サイタマ支部・HERO課に所属する「エグゼロス」が本作の主人公チームとなる戦士集団だ。


 きただりょうま氏の原作は集英社ジャンプスクエア』に連載中である。こう書くと一応、ヒーローもののかたちを借りただけの「ドタバタHコメディ」だと思われるかもしれない。


 実際、全編に渡ってエロ描写はかなり多い。たとえばエグゼロスのメンバーは文字盤に大きく「H」(笑)と書かれた腕時計型のアイテムである「XERO(ゼロ)ギア」でその肉体を強化する。しかし、スーパー戦隊ヒーローもどきの戦闘用の「XEROスーツ」が開発されるまでは、増幅されたエネルギーに耐えられずに衣服がビリビリに裂けてしまうことから、「キセイ蟲」とは全裸で戦っていたほどだ(笑)。


 それでも、本作にはさほどのエロさは感じられない。「淫靡」ではなく、視聴者を笑わせようとする「さわやかエロ」である。それどころか、きわめてまじめなヒーローものとの印象も強い。これは主人公像によるところが大きいのだろう。


 先述したような設定や世界観ならば、本来なら主人公は「H」&「エロ」全開で、いかにも「少年ジャンプ」系の「オレさまが世界でいちばん強い!」的なオラオラキャラになるところだ。


 だが、本作の赤っぽい茶髪ギザギザヘアの高校生主人公・炎城烈人(えんじょう・れっと)=エグゼレッドは、その髪型から連想されるイメージに反して、教室での同級生たちのエロ話に加わることもできない。
 小学校からの幼なじみで黄色ショートヘアにアホ毛がそびえる美少女高校生・星乃雲母(ほしの・きらら)にひそかに想いを寄せつづける奥手な少年である。エロさのかけらもないのだ。


 そして、烈人がエグゼロスに入隊した動機がマジメで彼の人間性を色濃く象徴している。キセイ蟲は5年前から地球で暗躍していた。しかし当時、小学校高学年だった烈人と雲母が公園でふたりでいたところを、蚊型のキセイ蟲怪人が襲ってきて、雲母の「Hエネルギー」を吸い取ろうとした。けれど、


「これだけエネルギーを吸い取っても平然としてるなんて、なんてどエロい人間なんだ!!」


とキセイ蟲怪人はなげいた末に、「Hエネルギー」を吸いきれずに爆死してしまったのだった(大笑)。


 このキセイ蟲怪人の発言に大きなショックを受けてしまった雲母(笑)。彼女は以来、「アイアン・メイデン=鋼鉄の処女」と呼ばれるほどに男子をキラって、男子がさわったものには手をふれられないほどの潔癖性(けっぺきしょう)となってしまった。幼なじみの烈人とも疎遠(そえん)となってしまったほどだ。


「誰かが云った。『スキ』の対義語は『キライ』ではなく、無関心だと……」――そのとおり!(汗)――


 雲母=初恋の相手をそこまで変えてしまったキセイ蟲に対して、当時はいっしょにいながら何も反撃できなかった烈人は、贖罪の念とともに復讐も果たすため……といった、相応に理はあるものの、いわば「私(わたくし)」としての動機でエグゼロスに入隊したのだった。


 だが、あれから5年を経てキセイ蟲の本格的な侵略がはじまった! 人々から次々と「Hエネルギー」が奪われていく光景を見るなかで、「もう誰にもこんな想いはさせない!」と、その戦いは「個人の復讐」から「市民を守る」ために「公(おおやけ)」の動機へと昇華をとげていたのだ!


――いや、吸収しきれないほどの「Hエネルギーを持っていて、そのことを敵の怪人に指摘されて傷つくような一般人もいなさそうだけど(笑)――



 烈人の声を演じる松岡禎丞(まつおか・よしつぐ)氏は、


●『冴(さ)えない彼女(ヒロイン)の育て方』(第1期・15年 第2期・17年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190901/p1)では、オタク高校生ながら名前をもじって「倫理くん」と呼ばれたほどに曲がったことがキライな安芸倫也(あき・ともや)


●『エロマンガ先生』(17年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20221211/p1)でも高校生主人公で、ライトノベル作家でもあり(爆)、義理の妹でイラストレーターの和泉紗霧(いずみ・さぎり)に恋愛感情を抱く和泉正宗(いずみ・まさむね)


なども演じている。しかし、烈人のキャラは云ってしまえば、その性格や精神性はオタクな倫也と正宗とも同じ系列ではなかろうか? 彼らふたりはオタク系ラブコメ主人公としてはやや能動的だったかもしれないが、「ジャンプ」などのオラオラ系ほどでは決してない。


 もちろん、松岡氏の演技によるところも大きいが、倫也や正宗を彷彿(ほうふつ)とさせる烈人の好感度の高さもまた、その作風からエロい印象をウスめて、勧善懲悪ヒーロー性を高めるための効果を存分に発揮しているかと思われるのだ。


 第1話の前半で、烈人をはじめとする同級生男子にさんざんに悪態をついた雲母は、夕焼けに染まる帰り道で5年ぶりにふたたびキセイ蟲に襲われたことで、烈人はとっさに雲母の手を握って駆けだしていく!


 導入部では5年前の小学生時代の回想として語られたが、その手の握り方は当時はおマセさんであった雲母が「オトナの恋人同士の手の握り方」の練習として烈人に示したものであった。これを契機に5年前から止まっていた雲母の時間がふたたび動きだすかのような展開は実にドラマチックなのだ!



 回想の冒頭シーンにあった、公園内にふたりのランドセルが仲良く並んで置かれている描写は、5年前の烈人と雲母の関係性を端的に象徴したものでもあった。


 そして、


「この日、オレは生まれて初めてヒーローになりたいと思った……」


という烈人の語りも、雲母が5年前にキセイ蟲に襲われる直前のものであった――遊具にキセイ蟲の黒い影が迫る暗示的な演出も実に効果を発揮している!――。烈人にとっては、雲母が小学生当時からしてすでに「守りたい存在」と化していたことの証(あかし)なのだ。


「今だけ許してあげるから、もうちょっと握ってて……」


 終始、烈人に対して拒絶気味の態度であった雲母が「オトナの恋人同士の手の握り方」を覚えていた烈人を5年ぶりに「れっくん」と呼ぶほどに心を開くさまもまた劇的なのだ。


 そのためか、烈人の「XEROギア」にある「H」の文字が回転してまばゆい光を放った!!


 そして、全身がオーラに包まれたふたりの前に、大量の「Hエネルギー」で巨大化したカマキリ型のキセイ蟲が現れた!


「いっしょにおもいっきりブチかますぞ!!」


 協力してキセイ蟲を撃破した烈人と雲母!


 しかし、ふたりは公園で全裸姿で取り残されることとなってしまった(笑)。やはりオチはギャグとして落としているのだが、その関係性の変化の末に変身ヒーロー&ヒロイン誕生へと至る過程は実にドラマ性が高かった。そして、青春学園群像劇としても、出色の出来かと思えたほどだ。


 原作漫画家は本当はまじめなヒーロー&恋愛を描きたいのに、編集部の意向でエロ強調路線にされてしまったのでは? そんな気もしてくるほどだ。
ド級編隊エグゼロス 1(完全生産限定版) [Blu-ray]

(了)
(初出・オールジャンル同人誌『DEATH-VOLT』VOL.86(2020年12月20日発行)所収)


『アクションヒロイン チアフルーツ

(2017年夏アニメ)
(文・T.SATO)
(2017年12月13日脱稿)


 「ローカルご当地アイドル」が地方で町興し(まちおこし)する深夜アニメというと、『サクラクエスト』(17年)や『普通の女子高生が【ろこどる】やってみた。』(14年)の2作を想起する。


 しかし、本作の「ローカルアイドル」は、いわゆる「ご当地ヒーロー」ならぬ「ご当地ヒロイン」! 全国各地で「ローカルヒロイン」が隆盛を極めているというウソっぱちの世界観で、地方の女子高生がオリジナルの「スーパー戦隊」――むろん顔出し(笑)――を結成して、悪の怪人と戦うのではなく、ヒーローショーを披露するといった内容であった(笑)。


 ホンモノの「スーパー戦隊」出身であり、『海賊戦隊ゴーカイジャー』(11年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20111107/p1)のゴーカイイエローをナマ身で演じてきたM・A・O(まお)ちゃんが、またまたあまたの2017年の深夜アニメ(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190924/p1)とも同様に主演声優を務めている!


 しかし、主人公なのにクールな性格の女子役なので、筆者には「赤」「青」「黄」などの色を苗字に持った、劇中では第1話よりも以前からヒーローショーのステージに立っていたというキャラたちの方が、アイドル性や華(はな)があって印象に残ってしまう。


 この「スーパー戦隊」でもある女のコたちの集団のなかには、「特オタ(特撮オタク)」も「鉄オタ(鉄道オタク)」も同時に並存している天文学的な確率(笑)については、そこは漫画アニメなのだからツッコミを入れるのはヤボであろう。とにかく、この作品世界においてはそうなっているということでイイのだ。


 本作の脚本は特撮・アニメ作品も幅広く手掛けている荒川稔久(あらかわ・なるひさ)。なので、特撮パロディも満載だ。同じく荒川が手掛けた特撮パロが満載のヒロイン戦隊ものラノベ原作の深夜アニメ『俺、ツインテールになります!』(14年)同様に、90歳を超えた大御所・渡辺宙明(わたなべ・ちゅうめい)センセイが別のチームの先輩「ご当地ヒロイン」のために楽曲を提供しており、そこにワザワザ1980年代風の特撮変身ヒーローもののオープニングを再現したイメージ映像などもカブせている――字幕テロップも21世紀の今日における微量にオシャレでセンスもある小さな書体とは異なり、当時の小さなTV画面ではともかく今見るとヤボなほどに巨大な書体が再現されてもいるのだ!――。


 とはいえ、そういった描写があるからといって、特オタである筆者も本作を認める! なぞといった気にはならない(笑)。


 さまざまな性格の女子高生たちが仲間を集めて、自分の得意分野でヒーローショーの興行に協力し、困難を乗り越えて勝利をつかんでいく……といった展開であったあたりで、全国各地でスクールアイドルが勃興中! という、やはりウソっぱちな世界観でも、実に楽しい物語を紡いで内容的にも人気面でも大成功していたアイドルアニメ『ラブライブ!』(13年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20150615/p1)なども想起させてはくる。
 しかし、あちらが「バカ設定」であるにもかからず「ガチ熱血」「ガチギャグ」「ガチ萌え」で取り組んでいたのに比すると、ユル~く流して作っている印象なのである。


 それ自体がまた「ねらい」なのだろうけど、個人的にはそこが物足りないのだ。


 では、ドーすればイイのだろうか?


 「日常場面」では女のコたちの「萌え」を前面に押し出す。しかし、劇中劇でもある「ヒーローアトラクショー」における「正義の戦隊ヒロインズvs悪の軍団」の方では、シナリオなりアクション演出の温度を、本編とは多少遊離してでも高めてみせたり、さらにはテーマもどきの道徳説教(笑)などを絶叫させれてみれば、もっとメリハリが付いたのではなかろうか!? などとも愚考をしてしまうのだ。


 とはいえ、「作画」も「動き」も一級レベルではない並みの予算のアニメなので、そういった増強や演出もまた高望みであったり、「付け焼き刃」で「焼け石に水」といったオチになってしまったかもしれないけど(笑)。
アクションヒロイン チアフルーツ Vol.4【Blu-ray】

(了)
(初出・オールジャンル同人誌『SHOUT!』VOL.70(17年12月30日発行))


『恋は世界征服のあとで』

(2022年春アニメ)
(文・T.SATO)
(2022年8月7日脱稿)


●5色の戦士である「スーパー戦隊」のリーダーでもあるレッド
●悪の軍団の女幹部


 この両者の許されざる恋の物語を描いた作品である! ……といってもギャグ作品ではある。


 プライベートでも逢瀬を重ねて、時に戦闘中でも仲間がいない場所では安息の会話を交わして、そこに敵味方が乱入してくるや否や、即座に組み合って戦闘しているフリをする。時にフリではあるけどガチで打撃し合っていたりするので、フリである意味がないのだけど(笑)。


 広義では特撮変身ヒーローもののパロディー作品である。今年2022年冬季にも、悪の軍団側にスポットを当てて、憎めない存在どころかホワイト企業(笑)として描いてみせていた『怪人開発部の黒井津さん』や短編アニメ『お昼のショッカーさん』などが放映されている。


 もう40年も前の1982年に製作された自主映画の金字塔『愛国戦隊大日本』などにおける、特撮変身ヒーロージャンルの「型」をナゾって笑いに変えるパターンではない。悪の軍団の内情だったり、敵味方間での男女の密通だったりなど、同じパロでもそこは隔世の感があるのだ。


 筋トレ(筋肉トレーニング)が趣味である禁欲的なレッド。戦場ではSMの女王さまのような悪の女幹部。


 ストーリーが進むにつれて判明していく。この両者は高校生だったのだ(爆)。20代の適度に枯れて達観した男女にもまだ残っていたウブな交流にも見えていたのにィ(汗)。


 まぁ、そこは絵柄的にもリアリズムが優先されていないマンガなのでご愛嬌である。


 この悪の幹部でもある女子高生は肉体的には頑強。しかし、素はかわいいモノが大好きな乙女であった。ギャップ萌えをねらってきている。加えて、なぜか自身の女子力には劣等感があるあたりもまたポイントを上げている(笑)。


 ただ、シリーズの序盤は破裂的に面白かったものの、何らかの工夫やセンスが足りないのか、シリーズ後半では徐々にテンションは低落していくようにも思うのだ。


 序盤はイマイチだナと私見したものの、徐々に面白くなっていく『怪人開発部の黒井津さん』とは、その一点では真逆であった――単なる筆者の個人的な主観であれば、ゴメンなさい――。



 エッ? 本作も「マガジン」系マンガが原作? なんと角川書店一迅社などのオタク向け媒体ではなく、「月刊少年マガジン」連載作品なのであった。いったい2010年代以降の「マガジン」は同季に何作品がアニメ化されているのやら(汗)。


 ちなみに、本作の悪の軍団は首領(声・杉田智和)以外は女幹部ばかりである。花澤香菜金元寿子佐倉綾音沢城みゆきで中堅どころが勢揃い!


 そして、本家『魔進戦隊キラメイジャー』(20年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20220503/p1)で女幹部・ヨドンナを演じたコスプレイヤー上がりの桃月なしこも女幹部役で声の出演! 終盤の究極怪人の声も、「永遠の17歳」の第2号(笑)こと田村ゆかりであった。


 ムダに豪華でギャラは大変そうだが、新人声優には醸すことができない幹部級としての貫禄が、これによって出せていることも事実なのだ(笑)。
恋は世界征服のあとで Blu-ray BOX 上巻

恋は世界征服のあとで Blu-ray BOX 下巻
(了)
(初出・オールジャンル同人誌『SHOUT!』VOL.83(22年8月13日発行))


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 2023年の夏にはラブコメ深夜アニメ『彼女、お借りします』の3期(23年)が放映中記念! 『カノジョも彼女』も2023年10月から2期放映記念! 『トニカクカワイイ』(20年)も2期(23年)が2023年春に放映終了記念! とカコつけて……。『彼女、お借りします』1期(20年)・『彼女、お借りします』2期(22年)・『カッコウの許嫁』(22年)・『可愛いだけじゃない式守さん』(22年)・『カノジョも彼女』1期(21年)・『トニカクカワイイ』1期(20年)評をアップ!


『彼女、お借りします』1期・『彼女、お借りします』2期・『カッコウの許嫁』・『可愛いだけじゃない式守さん』・『カノジョも彼女』・『トニカクカワイイ』 ~純オタ向け媒体ならぬ少年マンガ誌出自のラブコメ! 同工異曲のようでも成否の差!

(文・T.SATO)

『彼女、お借りします』1期

(2020年夏アニメ)
(2020年8月7日脱稿)


 大学1年生の冴えない青年クンが彼女にフラれた落胆から、試しに「レンタル彼女」(恋人代行業)に頼ったところから始まる騒動を描くラブコメ


 黒髪ロング女子でもピンクのブラウスに白いスカートなので、重たいオンナ臭はまったくせず(笑)、清楚かつ如才ない感じのメインヒロインがまずは魅力的だ。


 それをまた涼しげかつ可憐さもある声優・雨宮天(あまみや・そら)ちゃんが声をアテることで増幅!――特撮マニア的には『仮面ライダービルド』(17年)のメインヒロインに憑依した超古代火星文明人のお姫様の声だが、2010年代後半以降のあまたのアニメで途切れなくメインヒロイン級で大活躍している御仁でもある――


 もちろん、劇中でも「レンタル彼女」としての「お仕事」だから「演技」として可愛らしく恋人を演じているだけなのだけど、そうだとわかっていてもイチャイチャしてくる彼女の態度には、吸い込まれてしまうような魅力があるのだ(笑)。


 この娘にハマった主人公青年クンは2度目のレンタルを敢行する。そして、しばらくデートをするうちに彼女に八つ当たりや説教を始めてしまうのだ――ウワァ~。良く云えば潔癖、悪く云えば最低のオトコだ(汗)――。


 さらには、入院中の祖母にも自分の彼女だと紹介してしまう! その病院には奇しくも彼女の祖母も入院しており、両家の公認にまでなってしまう!(爆)


 ココまで作り込めれば、あとは「状況に応じたリアクション」と「正体を隠すための言動」だけでも、無限にお話を引き延ばせそうではあるけれど……。


 ナンと! 主人公青年クンは大学のキャンパスでこの彼女と偶然にも再会。大学ではメガネに三つ編みのモッサリした地味子ちゃんであった! というあたりで、ギャップ萌えも追加する(笑)。


 他の「レンタル彼女」たちも登場し、冒頭で主人公を振った元カノまでもが再登場を果たして、両家の家族も巻き込んだラブコメ群像劇となっていくようだ。



 原作は「週刊少年マガジン」連載マンガ。近年の大出版社のマンガ作品同様に、原作マンガの売上が上がればアニメの製作出費なども微々たるものであるのか(?)、アニメ製作会社側でも円盤売上に頼らずとも出版社からの製作資金投入だけでも高い収益を得られるのか、美麗な作画&背景美術も達成できており、序盤を観るかぎりでは実意面白い!――今後の展開に対する責任は取れないものの(笑)――
Rent-A-Girlfriend Blu-ray

(了)
(初出・オールジャンル同人誌『SHOUT!』VOL.77(20年8月13日発行))


『彼女、お借りします』2期

(2022年夏アニメ)
(2022年8月7日脱稿)


 失恋のショックで、実在の業種「レンタル彼女」を利用した冴えない大学生男子クン。容姿端麗の清楚でさわやかな彼女は、実は同じ大学に通っている地味子ちゃんでもあり、しかもアパートの隣の住人でもあった!


 発端こそ現代的な職業を材としているけど、「ザ・ラブコメ!」といった、2年前の2020年夏にも1期が放映された深夜アニメの2期が登場。本作もまた「週刊少年マガジン」連載マンガが原作であった。


 1期も面白かったけど、2期も安定したクオリティーを達成している。


 やや些事ではあるけど、個人的に評価したいのは2期の#1の導入部だ。TVやアニメだけがお友だちの方々は気にしないのやもしれない(汗)。いや、むしろ前話や前期のアラスジは不要だ! くらいの声が、もう20年も前の『機動戦士ガンダムSEED(シード)』(02年)の時代から聞こえてもいた。


 しかし、一見(いちげん)さんや途中参加組をゲットできるように、作品を「開かれた作り」にしておくためにも、前話のアラスジで作品世界や主要人物のキャラシフトをも感じさせて、作品を未見のお客さんにも敷居を下げることで参入障壁を下げておくことは、非常に重要なことだとも思うゾ~。


 1期の#1であれば、たしかに主人公なりメインヒロインのみを描くことだけで問題はないし、それが正解ですらあるだろう。しかし、この2期の#1冒頭では、増えてしまったサブヒロイン・サードヒロイン・フォースヒロインたちをごていねいにもくわしく紹介してみせる!


●一度は振ってみせたクセに独占欲かチョッカイを出してくる悪女的な元カノ(声・悠木碧
●メインヒロインにガチで執着している主人公クンに心動かされて、自分もそうされたいとの想いから主人公クンに執着していく同じくレンタル彼女の純朴女子(声・東山奈央
●極度の人見知りのコミュ力弱者で、そんな自分を変えたくてレンタル彼女の仕事に挑戦中の弱者女子(声・高橋李依
●そして、先のメインヒロイン(声・雨宮天


 2022年夏季には5年や9年も前の人気アニメの2期も登場していた。その前季にはごていねいにも1期の再放送もなされてはいた。とはいえ、やはり1期の最終回の最終シーンの直後のように、何の説明もなく2期の#1がスタートしてしまうような作り方はチョットなぁ。


 もちろん、そのことを致命的な弱点だとはしないけど、やはり前期のアラスジなり基本設定の説明的な描写がたとえ数分でもあれば、腰の据わりがよくなってスンナリと没入できるとも思えるので……。
彼女、お借りします GAMERS Only Original Character Song Extra

(了)
(初出・オールジャンル同人誌『SHOUT!』VOL.83(22年8月13日発行))


カッコウの許嫁(いいなずけ)』

(2022年春アニメ)
(2022年8月7日脱稿)


 三角・四角・五角関係のライトなラブコメ作品。なおかつ、主人公男子高校生クンと快活ヒロイン女子高生は出生時の「取り違え子」であったことが本作の独自性。


 しかし、そこはイイ意味でのマンガだけど、脳天気にもドーせならば両者を結婚させて共通の子息にしてしまおう! という両家の思惑(おもわく)が一致する(笑)。もちろん、主人公男子クンと快活ヒロインは「冗談ではない!」と思いつつも、両者&両家の奇妙でコミカルな交流が始まってしまう……といったストーリーである。


●血がつながらないので、婚姻可能性もある関係になってしまった妹
●主人公男子クンがもともと好いていた学園トップの成績でもある天然ドジっ娘ヒロイン


 噛ませ(?)でも、実に魅惑的なセカンドやサードのヒロインたちも配置している。


●男子高校生クン側はビンボーでも明るいヤンキー家族なのに、家族には馴染みつつも男子クンだけ成績優秀
●ヒロイン側はブルジョワ家庭で、彼女もやはり家族に溶け込みつつも、SNS上に自撮り写真をアップして注目を集める人気者


 互いに気質的にも一族の異端であることを発端にして、人間関係ドラマを構築する方法論もあっただろうけど、本作はあくまでもリアル志向ではなくコメディ作品となっており、両家は実に家族円満なものとして描かれている――もちろん、「取り違え子」問題を真剣に扱いたければ、また別のしかるべき社会派ジャンルの作品で作ればイイのだ――。


 本作も「週刊少年マガジン」連載のラブコメ漫画の深夜アニメ化作品。ここ5年ほどコンスタントに「マガジン」連載のラブコメ漫画が深夜アニメ化されている。


 ググってみると、今や「マガジン」連載の半分がラブコメ漫画であるそうだ(爆)。筆者のようなロートルには同誌はヤンキー・DQNマンガの巣窟といった印象がある(笑)。
 今はむかしの70年代末期の同誌での大ヒット作『翔んだカップル』などを除けば、同誌でのオタッキー美少女アニメ的かつラブコメ&ハーレムもののテイストをまとった作品の初出なり初の大ヒット作は、今年2022年夏の選挙で参院議員になった赤松健(あかまつ・けん)による四半世紀近くも前の『ラブひな』(98年。00年に深夜アニメ化)なのだろう――筆者個人は同作のことを評価はしてはいないけど(汗)――。


 00年代前半の同誌では、角川書店的なオタ向け・美少女アニメ美少女ゲーム的な作品が散見されるようになる。しかし、まだ週刊少年マンガ誌を購読する習慣が残っていた会社の同僚たちなどは、「マガジン」の中でも同じく赤松健の『魔法先生ネギま!』(03年。05・06年に深夜アニメ化)などは飛ばして読んでないと公言していたことなども思い出す(爆)――同作は意匠はハーレムものでも、少年バトル漫画の文法で実に面白く、個人的にも評価しているけど(笑)――。


 それからでも20年弱。オタク漫画の文法がウスめられて一般層にも普及していることを思えば、今の「マガジン」読者がオタク風味のラブコメ漫画を忌避することもなくなって久しいのだろう。


 そーいうワケで、本作の主人公男子クンには「不良性感度」などはない。どころか、同誌の人気ラブコメ漫画『五等分の花嫁』(17年。19年に深夜アニメ化)の主人公男子クンや、他誌「ヤングジャンプ」連載だけど『かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~』(15年。19・20・22年に深夜アニメ化)の主人公男子クンなどとも同様に成績優秀だったりもする。


 とはいえ、純粋オタ向けマンガやラノベに登場するような繊細ナイーブなオボコさや(ひとり)ボッチ性はなくて、最低限の覇気や男気(おとこぎ)があるあたりで、オタ向け作品と完全混交してしまったワケでもない。


 メインヒロインがクールな黒髪ロングではなく、サブヒロインもツンデレな金髪ツインテではなく、オタにはやや苦手やもしれない多少の気の強さもある快活女子! といったあたりで、やはり純粋オタ向け作品とは異なっているのだ――優劣の話ではないのでくれぐれも念のため――。


 そして、個々の作品の市場規模としては、オタ向けマンガよりも大きいであろうことを思えば、ニッチ(隙間)から生まれながらも本家よりも巨大なジャンルとなっており、逆にオタ層にもウケがよかったりもする。


 ググってみると、本作の原作者は女性! 2010年にTVドラマ化された『ヤンキー君とメガネちゃん』(06年)、同じくドラマ化(13年)やアニメ化(15年)もされた『山田くんと7人の魔女』(12年)なども手掛けている。後者の深夜アニメ版も傑作とはいわず佳作ではあったことを思い出すのだ――両作ともに、ラブコメでも主人公はヤンキー高校生だったけど(笑)――。
カッコウの許嫁

(初出・オールジャンル同人誌『SHOUT!』VOL.83(22年8月13日発行))


『可愛いだけじゃない式守(しきもり)さん』

(2022年春アニメ)
(2022年8月7日脱稿)


 いかにも性格良さげで常にニコニコとしたお坊ちゃまお坊ちゃました男子高校生クンが主人公。彼は道を歩いているだけで危険物に遭遇し、トラックにハネられそうになったりする不運の星の下に生まれついている(笑)。


 そんな彼のことを身を挺してバツグンの身体能力で守ってくれる、可愛いカッコいいヒロインが、主人公男子クンの恋人でもある式守(しきもり)さんである。


 ウ~ム。深夜アニメ化されるくらいだし、ググってみると「年間重版1位」だの、「書店員が選んだおすすめコミック」上位だのにランクインしているので、相応に人気があることはわかる。しかし、ドーなのであろうか?


 まず、主人公男子クンが偶然とはいえない頻度で尋常ではない突発的な危険に見舞われる理由がわからない。アソコまでの頻度だと、劇中内での説明――超自然的な霊的・呪詛的なモノ――がないと、物語作品としては不自然にも思えてくる。


 そして、ヒロインがなぜ主人公男子クンにホレていて、そこまでして守っているのかがわからない。もちろんクドクドと説明しなくてもイイけれど、最低限の動機の説明なり点描なりがやはりない。「式守(しきもり)」の名が「式神(しきがみ)」を操る陰陽師なども連想させるので、最初は職業都合から始まって次第に情が移ってホレてしまうストーリーの方がイイんじゃね? ……なぞと思ってしまうのは、的ハズレのナイものねだりで、「ぼくのかんがえたさいきょうの『可愛いだけじゃない式守さん』」の類いなのであろう(笑)。


 あるいは、今は滅亡寸前の存在となってしまった颯爽とした「戦闘美少女」属性だけではなく、同じく「強キャラ」の女性に守ってもらえる男子高校生クンを描いていた、同じ講談社でも「マガジン」ならぬ「モーニング」連載のマンガ原作の深夜アニメ『ウィッチクラフトワークス』(14年)のように、ヒロインが貞淑そうでも高身長の巨乳でグラマーなキャラデザであれば、「母性」も醸されてきて説明ヌキでも男子クンを構ってくれることに説得力が出てきそうには思うのだ――「母性」が少なめの快活女子であれば、軟弱男子を好んだり守ったりするとはとても思えないものなので(笑)――。


 といって、『ウィッチクラフトワークス』もヒロインは個人的には魅力的でも、作品としての評価はしてはいないけど(汗)。


 まぁ、マンガ画媒体では違和感がなかった表現でも、手元に置いた雑誌・単行本・スマホ画面に近づいてやや主観的で能動的な読み方での半ば強制的な疑似体験に近くなるマンガ媒体よりも、TVモニターなどを通じてやや距離を置いて受動的で覗き見のように視聴するアニメ媒体だと、劇中事象が客観化されて見えてくることで、多少ムリのある設定については違和感がやや強くなってきてしまう場合もある。あるいは、アニメに落とし込む際に何らかの不備があった可能性も考えられる。


 しかしだからといって、カネをかけて原作マンガを購入してまで比較研究する気はないので、好事家の研究を待ちたい!?(笑)


 一応、本作も広義での「週刊少年マガジン」系出自なのだが、もともとはツイッター漫画であった作品を青田買いして、WEB漫画媒体「マガジンポケット」にて配信されていた作品なのだそうだ。


 たしかに「少年マガジン」系というよりかはオタク向けラブコメ作品のテイスト寄りではあった。
可愛いだけじゃない式守さん

(了)
(初出・オールジャンル同人誌『SHOUT!』VOL.83(22年8月13日発行))


『カノジョも彼女』1期

(2021年夏アニメ)
(2021年8月9日脱稿)


 いかにもアニメ・ラノベ的な絵柄の美少女が登場して、我々オタク的にはなじみやすい深夜の美少女アニメである。


 しかし、キャラデザが「赤髪ロング」であることに象徴されるように――適度な「気の強さ」や「派手さ!――、アバズレ女ではないけどやや女王さま系で、メインヒロインに「癒やし」や「従順属性」が感じられないあたりは珍しい……。


 と思ったら、純オタ向け媒体ではなく「週刊少年マガジン」で、90年代末期あたりから勃興して定着しているオタにも目配せしたラブコメ路線作品出自だということでナットクするのであった。


 とはいえ、この作品はそこがキモではない。


 #1冒頭で「最近、彼女ができた」という高校生主人公クンのモノローグとともに、スットコドッコイな赤髪ロングヒロインとのサッパリしたイチャイチャが描かれた直後に、校舎の屋上にて健気そうな青髪少女が主人公少年に好意を告白!


 そこまではイイとして、交際OKとは云わずとも相手のことを「可愛い」と云ったら、青髪少女も「このために筋トレとジョギングとヨガは毎日4時間」うんぬん、バックにそのイメージ映像も浮かぶ中で滔々(とうとう)と語りだしたことでこの作品はギャグだとわかり、コミカルBGMも流れる中で素っ頓狂な会話をして「二股してイイか、いっしょに彼女(赤髪ロング)に聞きに行かないか!?」と少年が熱弁しだしたところでトドメを刺される(笑)。


 そして、主人公少年が青髪少女を紹介するも、赤髪ロングが青髪少女を可愛いと大興奮! いっしょにカラオケに行って歌いだすので議論が始まらない(爆)。


 ようやく本題となることで、赤髪ロングは怒って主人公少年を顔パンチ!(笑) しかし、止めに入った青髪少女の理由も振るっている。二股でもイイと熱弁するのだ。


 その後もボタンをひとつずつ掛け違えたような明後日な会話が続いた果てに、この3人の同居生活が決定する!(ナンでやねん) 単なるナンセンス漫画じゃねーか!?


 そして始まる陽性のドロドロ会話劇。そう、陽性だからラブコメではあるのだ(笑)。オタ向けラブコメのキャラと図式をさらにウラ返したギャグ作品。超面白いです。
カノジョも彼女

(了)
初出・オールジャンル同人誌『SHOUT!』VOL.80(21年8月15日発行))


トニカクカワイイ』1期

(2020年秋アニメ)
(2021年1月21日脱稿)


 マジメな中学生男子クンが大雪の日に見かけた赤髪の美少女に一目惚れ。彼女に近づこうとしたら交通事故!


 彼女は中学生男子クンを助けて去るが、重傷なのに中学生クンは彼女を追いかけて告白。彼女も彼女で「結婚するなら付き合う」という(爆)。


 3年後に婚姻可能年齢になった少年クンの許に、会えなかった彼女がやってくる。そして、ふたりは婚姻届を提出して同居生活に!



 ウ~ム。ドーなのだろうか? 適度に劇的な設定を入れること自体には賛成。大雪の日はクリスマスにしろ忠臣蔵の討ち入りにしろホーリー(聖)な感じがしてくるので、その舞台立てにも賛成だ。


 しかして、一目惚れだとか交通事故で重傷とか3年の空白の果てに結婚して同居とか、そこをマンガ的に楽しめずに「いくら何でも……」と思ってしまうのは、筆者が加齢で男性ホルモンが減少したからだろうか? 空から落ちてきた美少女と同居したいと思いがちな若者には、二の次・三の次の事項となるから許容範囲なのだろうか?


 「週刊少年サンデー」連載でアニメ化されるくらいの人気はあるのだから多分、許容範囲なのだろう。本作をスキな方々にはゴメンなさい。黙して語らず(笑)。
トニカクカワイイ/TONIKAWA:OVER THE MOON FOR YOU

(了)
(初出・オールジャンル同人誌『SHOUT!』VOL.78(21年2月5日発行))


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うる星やつら』『つぐもも』『小林さんちのメイドラゴン』『よふかしのうた』 ~異界から来た美少女キャラとの同居ラブコメにも今昔!(非日常・異能よりも日常性が強調・好まれる傾向)

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『五等分の花嫁』(1&2期) ~ベタでも高みに到達。告白された男子側でなく女子側の恋情で胸キュンさせる

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『五等分の花嫁』『ドメスティックな彼女』 ~陰陽対極の恋愛劇! 少年マガジン連載漫画の同季アニメ化!

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かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~』 ~往時は人間味に欠ける脇役だった学級委員や優等生キャラの地位向上!?

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クズの本懐』『継母の連れ子が元カノだった』 ~愛情ヌキの代償行為としての男女関係と、一度は破綻した同士の男女関係を描いた2作評!

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2022年冬アニメ評! 『明日(あけび)ちゃんのセーラー服』『その着せ替え人形(ビスク・ドール)は恋をする』 ~2022年2大・女子高生衣服系(?)アニメの清楚快活女子・ギャル少女の差異!

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2021~18年アニメ評! 『からかい上手の高木さん』『上野さんは不器用』『宇崎ちゃんは遊びたい!』『イジらないで、長瀞さん』 ~女子の方からカマってくれる、高木さん系アニメ4本評!

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2020年夏アニメ評! 『宇崎ちゃんは遊びたい!』 ~オタクvsフェミニズム論争史を炎上作品のアニメ化から俯瞰する!?

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200802/p1

2019年夏アニメ評! 『Dr.STONE』『手品先輩』『彼方のアストラ』『かつて神だった獣たちへ』『炎炎ノ消防隊』『荒ぶる季節の乙女どもよ。』 ~2019年夏の漫画原作アニメ6本から世相を透かし見る!

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2022~18年アニメ評! 『ヤマノススメ Next Summit』『ゆるキャン△』『Do It Yourself!!』『スーパーカブ』 ~オタには縁遠いハズのアウトドアやDIYを扱った美少女アニメのあれこれ!

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2021~19年アニメ評! 『古見さんは、コミュ症です。』『川柳少女』『ひとりぼっちの○○生活』 ~コミュ力弱者の女子を描いた3作の成否(笑)を問い詰める!

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2021~05年アニメ評! 『吸血鬼すぐ死ぬ』『月とライカと吸血姫』『となりの吸血鬼さん』『デビルズライン』『BLOOD+』 ~吸血鬼が題材でも人種・スリル・色気・暴力・ギャグ・月面着陸まで、多様な5作から見えるモノ!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20230312/p1

2020年冬アニメ評! 『映像研には手を出すな!』 ~イマイチ! 生産型オタサークルを描くも不発に思える私的理由

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200325/p1

2020~19年アニメ評! 『ダンベル何キロ持てる?』『推しが武道館いってくれたら死ぬ』 ~ファイルーズあい主演のアニメ2本評!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210418/p1

2020~19年アニメ評! 『私に天使が舞い降りた!』『うちのメイドがウザすぎる!』『となりの吸血鬼さん』 ~幼女萌えを百合だと云い募って偽装(笑)する3大美少女アニメ評!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20220710/p1

2019年春夏アニメ評! 『ノブナガ先生の幼な妻』『胡蝶綺 ~若き信長~』『織田シナモン信長』 ~信長の正妻・濃姫が登場するアニメ2本他! 『超可動ガール1/6』『女子かう生』

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210404/p1

2018~19年アニメ評! 『女子高生の無駄づかい』『ちおちゃんの通学路』 ~カースト「中の下」の非・美少女が主役となれる時代!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200301/p1

2018年3大百合アニメ評! 『あさがおと加瀬さん。』『やがて君になる』『citrus(シトラス)』 ~細分化する百合とは何ぞや!?

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20191208/p1

2018年春アニメ評! 『ヲタクに恋は難しい』 ~こんなのオタじゃない!? リア充オタの出現。オタの変質と解体(笑)

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200216/p1

2017年夏秋アニメ評! 『はじめてのギャル』『僕の彼女がマジメ過ぎるしょびっちな件』 ~オタの敵・ギャルやビッチのオタ向け作品での料理方法!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20201220/p1

2017年冬アニメ評! 『幼女戦記』 ~異世界近代での旧独vs連合国! 新自由主義者魔法少女vs信仰を強制する造物主!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190304/p1

2015年秋アニメ評! 『ワンパンマン』 ~ヒーロー大集合世界における最強ヒーローの倦怠・無欲・メタ正義・人格力!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20190303/p1

2013年夏アニメ評! 『げんしけん二代目』 ~非モテの虚構への耽溺! 非コミュのオタはいかに生くべきか!?

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20160623/p1

2013年春アニメ評! 『惡の華』前日談「惡の蕾」ドラマCD ~深夜アニメ版の声優が演じるも、原作者が手掛けた前日談の逸品!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20191006/p1

2008年秋アニメ評! 『鉄(くろがね)のラインバレル』 ~正義が大好きキャラ総登場ロボアニメ・最終回!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20090322/p1

2008年冬アニメ評! 『墓場鬼太郎

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20080615/p1

2007年秋アニメ評! 『GR ジャイアントロボ』 ~現代風リメイク深夜アニメだが、オタク第1世代の東映特撮版への郷愁も喚起!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20080323/p1

2007年春アニメ評! 『ゲゲゲの鬼太郎』2007年版

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070715/p1

2005年春アニメ評! 『英国戀(こい)物語エマ』

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20051022/p1

2004年春アニメ評! 『鉄人28号』『花右京メイド隊』『美鳥の日々(みどりのひび)』『恋風(こいかぜ)』『天上天下

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20040407/p1



かのかり・カッコウ・カノかの・式守さん・トニカワ ~同工異曲のようでも成否の差!
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