假面特攻隊の一寸先は闇!読みにくいブログ(笑)

★★★特撮・アニメ・時代劇・サブカル思想をフォロー!(予定・汗)★★★ ~身辺雑記・小ネタ・ニュース速報の類いはありません

後宮の烏・虫かぶり姫・くまクマ熊ベアー ~ドンパチのない上品な女子向け異世界ファンタジーアニメの良作! それらにハマる女子のメンタルや性格類型とは!?

『乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…』『悪役令嬢なのでラスボスを飼ってみました』『彼女が公爵邸に行った理由』『乙女ゲー世界はモブに厳しい世界です』 ~悪役令嬢なのに三枚目の善人! そこに女子オタが親近感!? 勃興とともに早くも変化球が隆盛!
『聖女の魔力は万能です』・『異世界薬局』・『新米錬金術師の店舗経営』 ~医療や店舗経営まで題材としてしまう、爛熟の異世界ファンタジーアニメ3本評!
拙ブログ・トップページ(最新10記事)
拙ブログ・全記事見出し一覧


[アニメ] ~全記事見出し一覧


 後宮(こうきゅう=ハーレム)で夜伽(よとぎ=性的奉仕)ではなく下女として下働きする、異性には媚びていないローテンションな少女が主人公である中華ファンタジーの深夜アニメ『薬屋のひとりごと』(23年)が放映中記念! とカコつけて……。同様に、媚びてないローテンションの少女が主人公である深夜アニメ『後宮の烏(こうきゅうのからす)』・『虫かぶり姫』(共に22年)・『くまクマ熊ベアー』(1期)評をアップ!


後宮の烏』・『虫かぶり姫』・『くまクマ熊ベアー』(1期) ~ドンパチのない上品な女子向け異世界ファンタジーアニメの良作! それらにハマる女子のメンタルや性格類型とは!?

(文・T.SATO)

後宮の烏(こうきゅうのからす)』

(2022年秋アニメ)
(2022年12月25日脱稿)


 女性オタク向けの中華ファンタジー。といっても、「異能バトル」が主体の作品ではない。宮廷内で生じる超常現象に「推理モノ」的な手法で迫って、最後にはオカルト的な手法で解決(成仏)していくといった作品である。


 主人公は後宮(こうきゅう)、つまりハーレムの離れに住まっているクールな小柄少女。しかも、一応は皇帝の妃(きさき)でありながらも、夜伽(よとぎ=性的奉仕)をする必要がない、特殊な身分であるとされている。


 お相手となるのは、若きイケメンのクールな青年皇帝。皇族間での陰謀によって一度は廃嫡(はいちゃく)され、母親も殺されてしまったようだが、紆余曲折の末に元凶であった人物を拘束して、皇帝へと就任した人物でもある。


 妃の身分が与えられるも、夜伽をする必要がない、おそらくは異能の力を持った女性に対する「名誉称号」として高位の身分=「妃」の身分を与えられた彼女には、皇帝でもむやみに手が出せない。
 そして、物事の理非もわきまえて、相手や女性の立場や心理にも斟酌(しんしゃく)してみせることができる上品な青年皇帝もまた、無理強いをすることもなく彼女を尊重してみせる……。


 といったところで、各話のストーリーは「ナゾ解き」が主体ではある。しかし、レギュラーキャラクターたちのドラマとしては、この両者間での媚び媚びとはしていない、男女間での節度もある抑えたほのかな描写がまたキモ(肝)ともなっている。


 これがまた、脇目も気にしないどころか周囲に見せつけるかのように男に思いっきりに甘えたり媚びたりしてみせれば、世の控えめな女性たちは内心では不快感や憎悪を募らせて、自分とはタイプが異なる女性像だと敵性生物認定(笑)をすることであろう。


 しかし、そういった男女接近は寸止めにとどめて、鼻にはつかない塩梅ともすることで、そういった色恋とは縁遠いのであろう、女性オタク層を適度な塩加減で刺激もするのではなかろうか!?


――いやもちろん、我々男性オタクが愛好してする美少女アニメとも、メタレベルでは性別が反転しているだけなのであって、同等な受容のされ方なのである(汗)――


 このあたりは、本作にとっての、あるいはメインターゲットのある種の性格類型の女子たちにとっての魅力的な性格の登場人物を造形するための「肉付け」やマーケティング的な次元でのディテール分析ではある。


 各話のメインのストーリー自体は、オカルトや霊能力(霊視)も交えての広義での「推理モノ」といった作劇となっている。


 そして、その両者双方がまた実によくできてもいるし、「雰囲気」演出も絶妙なのである。


 シリーズ前半では1話完結的な良質の単発エピソードが配置されている。シリーズ後半では、この王朝よりも以前の滅ぼされた先代王朝。どころか、この中華風の異世界の発端や連綿とした歴史に、複雑な因縁などもカラんできて、舞台のスケールも拡大されていく……。そして明かされる巨大な真相! 良作である。
ASIN:B0BGYDW4B4:image:large
asin:B0BGYDW4B4:detail
my blue (期間生産限定盤)

(了)
(初出・オールジャンル同人誌『SHOUT!』VOL.84(22年12月30日発行))


『虫かぶり姫』

(2022年秋アニメ)
(2022年12月25日脱稿)


 メインタイトルとはウラハラに、美麗な作画による西欧中世風の異世界を舞台とした、少女やある種の性格類型の女性向けの知的で上品なロマンス作品といったところだ。


 本を読むことが大スキなおっとりとした金髪の小柄な令嬢。ダサいとか容姿には劣っているということは、女子向けの物語的な主人公補正でそれは絶対にナイにせよ、世の一般的な女性とは異なり、内面の充実や平穏といったモノには関心があっても、「服飾」や「宝石」などといった浮わついた外飾・虚飾といったモノには関心はウスいようでもあり、「私が! 私が!」と他人や世間へとアピールすることもないようで、そもそも見た目やトロトロとした話し方からして、そういった行為がいかにも苦手そうな御仁が主人公。


 そんな彼女でも、あるいは本作の原作者センセイや、本作のような作品を好んで読んでしまうような女性読者たちにとっては、異性に媚び媚びとした同性はキライであったり、快活な元気女子には苦手意識を持っているものであろう。
 しかし、だとしても、そんな彼女たちでも「魅惑的な男性にはやはり云い寄られてみたい……」といった秘めたる願望は、本能的にも持っているモノではあるのだろう。


 そんな願望を当て込んでか、本作では「弱者男子にとっての性的ファンタジー」ともいえる「美少女アニメ」の「逆パターン」で、控えめで受動的な主人公令嬢なので自らでアプローチを掛けることは決してなかったのに、異性(男性)たちの方から逆にモーションを掛けてきてくれる作品なのではあった(笑)。


 といっても、安直なストーリー展開といった感じにはなっていない。実に謙虚であり人格的にも温厚で知識にも優れていて、それがまた時折りに「問題解決」や「他人とのちょっとしたウィット(機知)にあふれる会話のネタ」などにもつながっていくので、そういった積み重ねがあれが、彼女が実はモテていたとしても不思議ではない! といった感じの描写として昇華もできているのだ。


 どころか、ある意味ではトロくて善良に過ぎるので(汗)、気が強くて独占欲も強そうな女子や令嬢たちには嗜虐心をそそられて、しかも男性の注目も自然に浴びているので嫉妬心をいだかれてしまって、おとしいれられそうになっているあたりがまた、逆に「さもありなん」的にリアルであったりもする(爆)。


 とはいえ、そこは女子にとってのファンタジー。そういった窮地でこそ、好ましい異性からの救いの手が差し伸べられて悪役令嬢は退けられることで、単なる「カタルシス」(爽快感)が発生するだけではなく、それを異性との「ロマンス」とともに発生させてもいるのだ。


 コレまた傑作の誕生である。


 『虫かぶり姫』などというタイトルだけを見ると、なにかイロもの作品的ではある。大むかしに高校の古典で習った平安時代末期の『堤中納言物語(つつみちゅうなごん・ものがたり)』の一編「虫めづる姫君」のような、貴族の良家の娘なのに昆虫が大スキな変人姫君のような少女が主人公といった作品を想像してしまう。しかし、中世風の身分制社会が舞台といった点を除けば、まるで共通点はない。


 どころか、こんな控えな女子が主人公である作品が21世紀にもあったのか!? ある意味では、良くも悪くも古典的な作りでもあって、70年代的なイケてない控えめな少女像を主人公とした少女マンガを、そうだとはツッコミされにくいようにクレバーに再構築したような作品だといった整理もできるだろう。


 作者の意図はさておき。そもそも、70年代少女マンガ自体を世代的にも読んではいないだろうとは思うものの……(笑)。


 ググってみると、本作も小説投稿サイト出自の作品であった。
【Amazon.co.jp限定】虫かぶり姫 Blu-ray全巻購入セット(早期予約特典:アニメ描き下ろしB5エンベロープケース)(全巻購入特典:アニメ描き下ろしイラスト使用キャンバスアート付き)

(了)
(初出・オールジャンル同人誌『SHOUT!』VOL.84(22年12月30日発行))


『くまクマ熊ベアー』(1期)

(2020年秋アニメ)
(2021年1月21日脱稿)


 西欧中世ファンタジー風の異世界の片田舎が魔物に蹂躙されている。そこを辛うじて逃れてきた年端もいかない少年クンが冒険者ギルドに助けを求めてくる。しかし強敵相手に立ち向かえる冒険者は出払っており、その域に達していない冒険者たちは済まなさそうな顔をするしかない。そこに「ワタシが行こうか?」と声をかけてきたのは、顔出しでもフード付きでムクムクとした黒いクマの着ぐるみを着ている、やや低音ボイスの女の子!


 超安直なタイトル。それゆえにインパクトはある(笑)。内容はオボコい女子オタ向け「俺TUEEE(ツエーー)系」作品と要約できるけど、バカにしているワケではない。その範疇で気持ちよくはできている。
 別のモノサシで測れば、股旅・ロードムービーもので、旅先で困っている庶民をクマ女子がその超チート能力を善用して助けたり、悪人を懲らしめるといったもの。タドタドしい展開はなくフツーに楽しめる。


 往年のオタク論『趣都の誕生―萌える趣都アキハバラ』(森川嘉一郎幻冬舎・03年2月1日発行・ISBN:4344002873。08年12月1日に増補版が幻冬舎文庫化・ISBN:434441232X)的に観ちゃうと、自身のボディーラインを見て見て的なギャルとは対極的な、自身の体形を隠したい系、モフモフとしたクマ的な可愛いものが好きだけど、ベタベタと愛想よく異性に媚びるのには抵抗があるオタ少女にとっての、感情移入しやすい女子主人公&居心地のよい世界観の結晶といったイジワルな分析もしたくなる。


――それが悪いワケでもない。むしろマーケティング的には盲点だった新たな鉱脈の発見やも?――


 オタク評論家・大塚英志の弟子筋だった女子オタによる往年の著作『少女民俗学パート2 クマの時代』(荷宮和子大塚英志・光文社(カッパ・サイエンス新書)・93年9月1日発行・ISBN:4334060773)との通底なども想起する。


 ただし、本作の異世界は当今流行りのゲームの中だったハズが、そのへんはあやふやとなり、むしろ引きこもりぎみで居場所がなかった彼女が、オボコい庶民少女との出逢いを契機に異世界に守るものや居場所を見つけたようにもなる展開は……。引いて考えるとオカシい。けど、絵柄的にも頭身が低くてファンシーでリアリティーの喫水線が下がった世界なので、筆者個人はあまり気にならない(笑)。
くまクマ熊ベアー 7 (PASH!文庫 Mく 1-7)

(了)
(初出・オールジャンル同人誌『SHOUT!』VOL.78(21年2月5日発行))


[関連記事] ~(ほぼほぼ)女子が主役の西欧中世風異世界ファンタジーアニメ評!

乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…』『悪役令嬢なのでラスボスを飼ってみました』『彼女が公爵邸に行った理由』『乙女ゲー世界はモブに厳しい世界です』 ~悪役令嬢なのに三枚目の善人! そこに女子オタが親近感!? 勃興とともに早くも変化球が隆盛!

katoku99.hatenablog.com

聖女の魔力は万能です』・『異世界薬局』・『新米錬金術師の店舗経営』 ~医療や店舗経営まで題材としてしまう、爛熟の異世界ファンタジーアニメ3本評!

katoku99.hatenablog.com


[関連記事] ~西欧中世風異世界転移・転生ファンタジーアニメ評!

無職転生 ~異世界行ったら本気だす~』『異世界おじさん』『異世界美少女 受肉おじさんと』『デスマーチからはじまる異世界狂想曲』『神達に拾われた男』『転生したらスライムだった件』 ~無職・引きこもり・ニート社畜・性倒錯なオタの鬱屈・実存にも迫った異世界転生アニメ6作!

katoku99.hatenablog.com

『現実主義勇者の王国再建記』『八男って、それはないでしょう!』『天才王子の赤字国家再生術』『王様ランキング』 ~封建制の範疇での王さま・王子さま・貴族による、理想の統治や国家・地方運営を描いたアニメ評!

katoku99.hatenablog.com

『超人高校生たちは異世界でも余裕で生き抜くようです!』『本好きの下剋上 司書になるためには手段を選んでいられません』『私、能力は平均値でって言ったよね!』『旗揚!けものみち』『慎重勇者~この勇者が俺TUEEEくせに慎重すぎる~』 ~2019秋アニメ・異世界転移モノの奇抜作が大漁!

katoku99.hatenablog.com

『くまクマ熊ベアー』『スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました』『メルヘン・メドヘン』『金装のヴェルメイユ~崖っぷち魔術師は最強の厄災と魔法世界を突き進む~』『賢者の孫』『たとえばラストダンジョン前の村の少年が序盤の街で暮らすような物語』 ~オボコいライト・コミカル・マイルドな異世界ファンタジーにも相応の良さはある!?

katoku99.hatenablog.com

幼女戦記』 ~異世界近代での旧独vs連合国! 新自由主義者魔法少女vs信仰を強制する造物主! 2017年冬アニメ評!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190304/p1

異世界かるてっと』 ~原典『幼女戦記』・『映画 この素晴らしい世界に祝福を!-紅伝説-』・『Re:ゼロから始める異世界生活 氷結の絆』・『盾の勇者の成り上がり』・『劇場版 幼女戦記』評  ~グローバリズムよりもインターナショナリズムであるべきだ!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210912/p1


[関連記事] ~西欧中世風異世界ファンタジーアニメ評!

まおゆう魔王勇者』 ~異世界を近代化する爆乳魔王に、近代自体も相対化してほしい(笑) 『AMNESIA(アムネシア)』『ささみさん@がんばらない』 ~2013年冬アニメ評!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200123/p1

はたらく魔王さま!』『魔王学院の不適合者~史上最強の魔王の始祖、転生して子孫たちの学校へ通う~』『まおゆう魔王勇者』『異世界魔王と召喚少女の奴隷魔術』『百錬の覇王と聖約の戦乙女(ヴァルキュリア)』 ~変化球の「魔王」が主役の作品群まで定着&多様化!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20201206/p1

魔法使いの嫁』・『色づく世界の明日から』 ~魔法使い少女にコミュ力弱者のボッチ風味を加味した良作!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20201129/p1

『異種族レビュアーズ』 ~異世界性風俗を描いたアニメで、性風俗の是非を考える!?

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200327/p1

ゴブリンスレイヤー』 ~レイプに売春まで!? 周縁のまつろわぬ民は常に憐れで正義なのか!?

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200209/p1

『GATE 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり』1期&2期  ~ネトウヨ作品か!? 左右双方に喧嘩か!? 異世界・異文化との外交・民政!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20211010/p1



聖女の魔力は万能です異世界薬局・新米錬金術師の店舗経営! ~医療・店舗経営まで題材としてしまう、爛熟の異世界ファンタジーアニメ評!
#聖女の魔力は万能です #異世界薬局 #新米錬金術師の店舗経営



[アニメ] ~全記事見出し一覧
拙ブログ・トップページ(最新10記事)
拙ブログ・全記事見出し一覧

キミと僕の最後の戦場、あるいは世界が始まる聖戦・86-エイティシックス-・ニルアドミラリの天秤・天狼 Sirius the Jaeger ~異世界でも中世ではなく、近代や昭和初年代が舞台の深夜アニメ評!

『超人高校生たちは異世界でも余裕で生き抜くようです!』『本好きの下剋上 司書になるためには手段を選んでいられません』『私、能力は平均値でって言ったよね!』『旗揚!けものみち』『慎重勇者~この勇者が俺TUEEEくせに慎重すぎる~』 ~西欧中世風異世界を近代化せんとするアニメ評!
『現実主義勇者の王国再建記』『八男って、それはないでしょう!』『天才王子の赤字国家再生術』『王様ランキング』 ~封建制の範疇での王さま・王子さま・貴族による、理想の統治や国家・地方運営を描いたアニメ評!
拙ブログ・トップページ(最新5記事)
拙ブログ・全記事見出し一覧


[アニメ] ~全記事見出し一覧


 深夜アニメ『キミと僕の最後の戦場、あるいは世界が始まる聖戦』1期が再放送中記念! 2期が来年2024年に放映記念! とカコつけて……。異世界でも中世ではなく近代を舞台とした深夜アニメ『キミと僕の最後の戦場、あるいは世界が始まる聖戦』1期(20年)・『86-エイティシックス-』1期(21年)・『ニル・アドミラリの天秤』(18年)・『天狼(シリウス) Sirius the Jaeger(シリウス・ザ・イェーガー)』(18年)評をアップ!


『キミと僕の最後の戦場、あるいは世界が始まる聖戦』1期・『86-エイティシックス-』1期・『ニル・アドミラリの天秤』・『天狼 Sirius the Jaeger』 ~異世界でも中世ではなく、近代や昭和初年代が舞台の深夜アニメ評!

(文・T.SATO)

『キミと僕の最後の戦場、あるいは世界が始まる聖戦』1期

(2020年秋アニメ)
(2021年1月21日脱稿)


 「帝国」と「皇庁(おうちょう)」――後者は字義的に苦しい造語で、実態は「王朝」――の2大国が対立している「西欧近代」風の異世界が舞台である。


 帝国最強なれども謙虚でクセのない美少年剣士クンと、皇庁最強の戦士に見える金髪ロングの第2王女さま。


 戦場でホコを交えるかたちで出逢ったふたり。しかし、互いに休暇時に平穏な中立都市で偶然にも再会したことで、道ならぬ恋とはいかずとも、互いに相手が鬼畜米英ではなく人格も良識もあるヒトであり、立場上はマズいと自覚しつつも偶然の再会を重ねることで、燃え上がることもないけど節度あるかたちでお互いに惹かれていく。


 ムチャクチャ面白い! 要は『ロミオとジュリエット』や昼メロや韓流ドラマのオタク版なのだ。しかし、それもミガきあげれば既視感はあっても血肉が宿るものなのだ。


 まぁ、洋画であれば互いにモーション・誘惑をかけるのであろう。しかし、オズオズと控えめで好意を表明できずにツンデレで終わるあたりは日本人的、あるいは対人関係にナイーブなオタ的描写だとも区分けはできるかも……。


 とはいえ、絵柄が繊細淡泊ゆえに、長身なキャラデザでも適度にイイ意味でリアリティーの階梯(かいてい)は下がっている。


 なので、「偶然の再会」が連発されても、それは「ご都合主義」臭にはならずに「ギャグ」としての側面が強調される効果をいや増していく。公園・レストラン・劇場……。何回、再会したのだ?(笑)


 舞台背景は深刻であるのに、少年剣士クンの女上官の方は頼りなくてオドオドとしたミーハーなチビ女子だったりして、そのへんはいかにもマンガ・アニメ的なキャラ造形なので、古いタイプのオタだとそこでヒキそうではある。よく訓練されてしまった筆者なぞは大丈夫なのだけど(爆)。


 第2王女というからには性格や立場も異なる第3王女や第1王女や女王さま、諜報機関やスパイまでシリーズ後半においては登場。人間関係やストーリー展開も錯綜させつつ、スケールも拡大! 個人的には傑作だと思う。
Our Last Crusade Or The Rise Of A New World: The Complete Season [Blu-ray]

(了)
(初出・オールジャンル同人誌『SHOUT!』VOL.78(21年2月5日発行))


『86-エイティシックス-』

(2021年春アニメ)
(2021年8月9日脱稿)


 異世界近代のミリタリックな量産型ロボットが多数登場するアニメ。しかし、それも表層的な意匠に過ぎなくて、ドラマ&テーマ的には「人種差別」がメインだったという恐るべき作品であった。


 この作品もナンちゃって感は皆無のマジメなノリである。しかし、主要人物は10代中後盤なのにもう女少佐だったり隊長だったりして、そこはお約束のウソではある――もちろん、思春期の淡い恋情や、軍事的な失敗もまぁまだ10代の少女だからと劇中内でも劇中外でも無意識に許容されて、加えて想定メインターゲット層の年齢に主要キャラの年齢を近くするための処置でもある。よって、それがダメだとは思わない――。


 キマジメそうな銀髪ロングの軍服士官少女がさっそうと軍施設の洋館内を歩いていく。しかし、そこには酒瓶を抱えてクダをまいている兵士たちもいることで軍規の緩みも描写している。 
 そして、そんな彼女がどんな軍務に着くのかと思いきや……。個室の管制室で多数のモニターを通じて、戦場の隊員たちにテキパキと指示を降していくのだ。


 「戦死者はゼロ名」とされているので、多足歩行の無人のAIロボット兵器が相手なのかと思いきや……。戦闘中の戦場にはたしかに兵士たちがいる!


 こういった「違和感」自体もヒキ(引き)にしているワケである。そして、話数が進むにつれて小出しに真相も明かされていく。


 彼女が住まうこの国では、特定民族――実質、有色人種!(汗)――を人間としてはカウントしていないから、「戦死者がゼロ名なのである」と……(爆)。


 生来から聡明かつ博愛的なのであろう。彼女はそんな現状に義憤を抱いてもおり、時に学校の授業でもその旨を公言している!――結果・戦果も出している貴族の令嬢なので、周囲は「一理はあっても、こまったもんだ」といった顔をするだけなのだけど――


 しかして、戦闘休止中に自身の麾下(きか)にある部隊の隊員たちとも、上下の別なく親しくしようとしても、彼ら部下の隊員たちの反応はドコか冷たい。


 人種平等を唱えた彼女も、学校の生徒たちに


「では、自身は彼らとともに戦場で戦ったのか?」


と問われれば沈黙するしかないのだ。といったあたりで、バトル・戦闘シーンで盛り上げてはいても、そこがドラマ的なクライマックス・山場ではない作品であることもわかる。



 いや、キワドい作品ではある。人種差別テーマを描いたことそれ自体ではない。人種差別テーマを掲げたことだけで自足してしまうことや、説明不足なだけで内実のないハードぶりっ子ストーリーに堕(だ)してしまいがちな題材である作品でもあるからだ。


 しかし、そこは作り手たちの「テクニック」や「センス」なのだろう。そこをギリギリで回避して、一見では本作の世界観の全貌はわからなくても「演出」の力だけで観ていられる。そして、小出しでこの作品の「世界情勢」や「人種差別」についてもわかってくるという作りにはなっているのだ。


 設定フェチ&軍事フェチさも濃厚ではある。しかし、そこは雰囲気だけに留めて、まずは「物語」「映画」たらんとする作りがこの作品の良さだとも私見する。


 本作は小説投稿サイト上がりが多数を占めるご時世に、ラノベライトノベル)賞に応募して「大賞」を獲得したデビュー作が、シリーズ化されて高い読者投票人気も獲得。数年を経た末に深夜アニメ化された作品であるそうだ。


 00年代中盤~10年代前半のラノベ原作アニメは、マンガ的「ナンちゃって感」や「ハーレム・ラブコメ要素」がマーケティング的にも必須に思えたものだ。
 それだけに、2010年代中盤以降はそういった作品は鳴りを潜めており、実に隔世の感もある。「ナンちゃって感」や「ハーレム・ラブコメ要素」を十全には備えていないのに、それでも小説投稿サイト出自のヒット作がワンサカと登場して、そのアニメ化版がヒットを飛ばしたことで、オタク向けジャンル作品の題材や人間描写もかえって多彩になったと私見するのだ。
86-エイティシックス ジグソーパズル500ピースジグソーパズルクリスマス誕生日プレゼント家の装飾

(了)
(初出・オールジャンル同人誌『SHOUT!』VOL.80(21年8月15日発行))


ニル・アドミラリの天秤

(2018年春アニメ)
(2018年4月27日脱稿)


 戦前戦中における陸軍中野学校出自のイケメンスパイたちが大活躍する傑作深夜アニメ『ジョーカー・ゲーム』(16年)のごとく――このハイブロウな良作をイケメン男性キャラ目当ての女性オタしか観ていないのが、当今オタ事情のいびつなところ(笑)――、大通りには大正モダンな建築物が立ち並ぶ。


 しかし、まだまだ低層建築ばかりで、木造の電柱・電線越しに見えている青空もだだっ広くて見晴らしもよい。大通りであっても、まだアスファルトで舗装はされていなかったりもする、実にレトロモダンな昭和初年代の風景を再現!


 ググってみると、本作の舞台は大正25年であった!(=昭和11年・笑)


 手に取った者に対して精神干渉して「自殺行動」を起こさせる、書き手の感情・情念がこもった書籍を追いかけて回収していく、「帝国図書情報資産管理局」のメンバーが活躍するというのが、本作の基本設定である。


 #1では主人公でもある洋館に住まう没落華族の令嬢少女――愛想もイイお姉さんタイプ――が「家」のためを思って良家へ嫁ぐことを決意する。しかし、声変わり前の澄んだボイスで、大いに取り乱した半ズボンの美少年の弟がカラんできて猛反対をされたことで――もうこの姉コンプレックスな弟の存在からして隠微(笑)――思わず、


「キライ!」


と叫んで突き飛ばしたことで、この弟が大きなショックを受けてしまったサマが描かれる。


 このことを気にした彼女も街に出て菓子などを購入し、帰宅して弟をお茶に誘おうと扉を開けるや……暗がりの自室で油をまいた弟がマッチに火をつけており……(ヒエ~~!!)。


 そこに「帝国図書情報資産管理局」のイケメン男子ふたりが駆けつけてきて、事件は一応解決される。


 その過程で主人公少女には、情念がこもっている「書籍」のオーラ(!)が「炎」のごとく見えることが判明! そのことで、晴れて彼女も同「管理局」メンバーの一員となったサマも描かれて、#1は幕となっている――先の良家との「婚約」については、破棄したとの説明が一言だけで済まされている(笑)――。


 そのスカウトの際に、イケメン局員が放った一言は……。


「オマエがほしい!」


 ……キャ~~~!!


――黄色い声。劇中内で、こういう奇声・嬌声が上がったワケではなく、筆者が勝手に女性視聴者の内心の声を代弁しております(笑)――


 まぁ「メタ」に「メタ」を重ねる「止揚」「アウフヘーベン」な世の中ですから、メインターゲットのオタク女子たちも悶絶しつつも半分笑いながら観ていることでしょう!?


――ちなみに、「アウフヘーベン」(正・反・合の「合」)の出典は、東京都知事小池百合子ではなく、19世紀のドイツの大哲学者・ヘーゲルですので、念のため(笑)――


 オタク女子向け作品も、「もうゲームなどで知ってるよネ?」的に人物紹介をすっ飛ばしてイケメン男子たちが大騒ぎをはじめて、#1からして誰が誰だか区別が付かない作品も多い。
 しかし、イケメン新撰組に女子ひとりがまぎれこむ『薄桜鬼(はくおうき)』(10年)や『AMNESIA(アムネシア)』(13年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200126/p1)等々、視聴者と劇中事物との仲介としてクセのないプレーンな女性主人公が存在しているゲーム会社・オトメイト原作の深夜アニメ群は、野郎オタでもワリあいと観やすい作品が多いとも私見する――こういった仲介役が存在していない、イケメン男子だらけの女子向け作品などもけっこう多いので(笑)――。


 まぁ、メインターゲットの女子オタたちからすれば、


「頼むから! キモいから! アタシたちのテリトリーにキモオタ男子は入ってこないで!」


と全力で拒否られてしまうだろうけれども――どうもスミマセン(汗)――。


 本作の主演声優は、『SHIROBAKO』(14年)主演や『12歳。~ちっちゃなムネのトキメキ~』(16年)副主演の木村珠莉(きむら・じゅり)。それを知ってしまうと、木村が猫をカブって演じているようにも見えてしまって……(笑)。
ニル・アドミラリの天秤 Blu-ray 肆巻 [Blu-ray]

(了)
(初出・オールジャンル同人誌『SHOUT!』VOL.71(18年5月4日発行))


『天狼(シリウス) Sirius the Jaeger(シリウス・ザ・イェーガー)』

(2018年夏アニメ)
(2018年8月2日脱稿)


 『ジョーカー・ゲーム』(16年)や『ニル・アドミラリの天秤』(18年)のように、昭和初年代の帝都・東京を舞台として、海外から来訪してきた特殊機関のイケメンやダンディーおじさんにクール美女からなるプロフェッショナル・チームが、暗躍する吸血鬼たちと人知れず暗闘する作品である。それでもって、そのプロチームの一員たる若造主人公は、『仮面ライダーキバ』(08年)の敵怪人種族・ファンガイアもとい吸血鬼に滅ぼされた人狼(じんろう=狼男)の生き残りという設定だ。


 今となっては、エキゾチック(異国情緒)でレトロモダンな風情も漂わせてくる昭和初年の「背景美術」「服飾」「小道具」。それによって、独特の抑えた空気感も醸している。そんな中で、時には事件の捜索、時に怪しげな吸血事件、時に壮絶なアクションを繰り広げている。


 けれども、今では倒錯したことに、こーいう8頭身の男性キャラたちがシックな映像世界でアクションしている作品は、女オタしか観ないとも思われて……(爆)。


 本作はP.A.WORKS製作で、同社で岡田麿里(おかだ・まり)脚本のガンアクションもの『CANAAN(カナン)』(09年)や、旅館で働く少女を描いた『花咲くいろは』(11年)などの良作を手掛けてきた安藤真裕(あんどう・まさひろ)が監督を務めている。


 ググってみると、アニメオリジナル作品であるようだ。実に良作なのだけど、野郎オタに受けそうな話題作にはなりそうにないから、オタ友との共通ネタにはならなさそうでもある(汗)。こういったアニメは、たしかに往々にしてフインキだけの演出アニメになりそうな題材ではあるのだ。


 しかし、テキトーなところで早々に視聴を打ち切ろうとは思ったものの、意外と(?)佳作続きなので、今のところは切らずに様子見である。
天狼 Sirius the Jaeger

(了)
(初出・オールジャンル同人誌『SHOUT!』VOL.72(18年8月11日発行))


[関連記事] ~西欧中世風異世界ファンタジーアニメ評!

『超人高校生たちは異世界でも余裕で生き抜くようです!』『本好きの下剋上 司書になるためには手段を選んでいられません』『私、能力は平均値でって言ったよね!』『旗揚!けものみち』『慎重勇者~この勇者が俺TUEEEくせに慎重すぎる~』 ~西欧中世風異世界を近代化せんとするアニメ評!

katoku99.hatenablog.com

まおゆう魔王勇者』 ~異世界を近代化する爆乳魔王に、近代自体も相対化してほしい(笑) 『AMNESIA(アムネシア)』『ささみさん@がんばらない』 ~2013年冬アニメ評!

katoku99.hatenablog.com

幼女戦記』 ~異世界近代での旧独vs連合国! 新自由主義者魔法少女vs信仰を強制する造物主! 2017年冬アニメ評!

katoku99.hatenablog.com

『現実主義勇者の王国再建記』『八男って、それはないでしょう!』『天才王子の赤字国家再生術』『王様ランキング』 ~封建制の範疇での王さま・王子さま・貴族による、理想の統治や国家・地方運営を描いたアニメ評!

katoku99.hatenablog.com

文豪ストレイドッグス』『文豪とアルケミスト ~審判ノ歯車~』『啄木鳥探偵處』 ~文豪イケメン化作品でも侮れない3大文豪アニメ評!

katoku99.hatenablog.com

異世界かるてっと』 ~原典『幼女戦記』・『映画 この素晴らしい世界に祝福を!-紅伝説-』・『Re:ゼロから始める異世界生活 氷結の絆』・『盾の勇者の成り上がり』・『劇場版 幼女戦記』評  ~グローバリズムよりもインターナショナリズムであるべきだ!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210912/p1

『異種族レビュアーズ』 ~異世界性風俗を描いたアニメで、性風俗の是非を考える!?

katoku99.hatenablog.com

ゴブリンスレイヤー』 ~レイプに売春まで!? 周縁のまつろわぬ民は常に憐れで正義なのか!?

katoku99.hatenablog.com

『GATE 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり』1期&2期  ~ネトウヨ作品か!? 左右双方に喧嘩か!? 異世界・異文化との外交・民政!

katoku99.hatenablog.com


聖女の魔力は万能です』『異世界薬局』『新米錬金術師の店舗経営』 ~医療や店舗経営まで題材としてしまう、爛熟の異世界ファンタジーアニメ3本評!

katoku99.hatenablog.com

乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…』『悪役令嬢なのでラスボスを飼ってみました』『彼女が公爵邸に行った理由』『乙女ゲー世界はモブに厳しい世界です』 ~悪役令嬢なのに三枚目の善人! そこに女子オタが親近感!? 勃興とともに早くも変化球が隆盛!

katoku99.hatenablog.com

無職転生 ~異世界行ったら本気だす~』『異世界おじさん』『異世界美少女 受肉おじさんと』『デスマーチからはじまる異世界狂想曲』『神達に拾われた男』『転生したらスライムだった件』 ~無職・引きこもり・ニート社畜・性倒錯なオタの鬱屈・実存にも迫った異世界転生アニメ6作!

katoku99.hatenablog.com

『くまクマ熊ベアー』『スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました』『メルヘン・メドヘン』『金装のヴェルメイユ~崖っぷち魔術師は最強の厄災と魔法世界を突き進む~』『賢者の孫』『たとえばラストダンジョン前の村の少年が序盤の街で暮らすような物語』 ~オボコいライト・コミカル・マイルドな異世界ファンタジーにも相応の良さはある!?

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20230430/p1

はたらく魔王さま!』『魔王学院の不適合者~史上最強の魔王の始祖、転生して子孫たちの学校へ通う~』『まおゆう魔王勇者』『異世界魔王と召喚少女の奴隷魔術』『百錬の覇王と聖約の戦乙女(ヴァルキュリア)』 ~変化球の「魔王」が主役の作品群まで定着&多様化!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20201206/p1



薔薇王・純潔のマリア・アルテ・平家物語 ~人間・戦争・宗教・芸術・運気の潮目に思いを馳せる!
#薔薇王の葬列 #純潔のマリア #アルテ #平家物語 #戦国BASARA #学園BASARA



[アニメ] ~全記事見出し一覧
拙ブログ・トップページ(最新10記事)
拙ブログ・全記事見出し一覧

パリピ孔明・ダンスダンスダンスール ~純オタ向けとは異なるナマっぽい人物描写!(優劣ではなく) 青年マンガ誌連載の傑作&良作!

『波よ聞いてくれ』『イエスタデイをうたって』『ハコヅメ~交番女子の逆襲~』『ぐらんぶる』『この音とまれ!』『殺し愛』『グレイプニル』 ~純オタ向けとは異なる、漫画原作アニメの良作の数々!
『うる星やつら』『つぐもも』『小林さんちのメイドラゴン』『よふかしのうた』 ~異界から来た美少女キャラとの同居ラブコメにも今昔!(非日常・異能よりも日常性が強調・好まれる傾向)
拙ブログ・トップページ(最新5記事)
拙ブログ・全記事見出し一覧


[アニメ] ~全記事見出し一覧


 実写TVドラマ版『パリピ孔明』(23年)が放映中記念! とカコつけて……。週刊青年マンガ誌連載マンガが原作である、2022年春アニメの深夜アニメ版『パリピ孔明』・『ダンス・ダンス・ダンスール』(共に22年)評をアップ!


パリピ孔明』『ダンス・ダンス・ダンスール』 ~純オタ向けとは異なるナマっぽい人物描写!(優劣ではなく) 青年マンガ誌連載の傑作&良作!

(文・T.SATO)

パリピ孔明

(2022年春アニメ)
(2022年8月7日脱稿)


 「パリピ」とはパーリー・ピーポー。パーテイー・ピープルの訛(なま)りの略で、パーティーを好む軽薄な人々。


 「孔明」とは古代中国にて魏・呉・蜀の3国が三つ巴の戦いを繰り広げた時代の『三国志』に登場する、実在の天才軍師・諸葛孔明(しょかつ・こうめい)のこと――魏の歴史書魏志 倭人伝」の時代なので、卑弥呼の時代の人物ですネ――。


 死後に現代日本の渋谷に転生(転移?)した、往時の服装に羽毛扇を持ったままの孔明


 彼が現代日本社会や若者文化を、偶然に知り合った若きシンガーソングライターの少女からの教授や彼女のスマホWikipedia(笑)などで徐々に事情を理解し、軍師もといマネージャーとして彼女をスターダムに上げようと知略をめぐらしていく……といった実にマンガ的な楽しさに満ちあふれた作品である。


 現代日本に転生した孔明という一点や、死亡時の年齢よりも若返った身だとはいえ現代日本の若者音楽をノイズと感じずに大感銘を受けるあたりは、非リアルなマンガそのものである――そもそも日本語を解しており、ソコにセルフ・ツッコミも入ってはいる(笑)――。
 しかし、そこのSF合理的な理由・説明などでモタついてしまっては、孔明と少女やその周辺人物たちとの人間ドラマ・物語がサクサクと行かなくなるのでご愛嬌であろう。


 対するに、本格的な歌手をめざしている先の少女による、酔い潰れた孔明を招き入れた彼女の下宿のたたずまいや、孔明が転生者だとは信じない、そもそも孔明とは誰なのか?(笑) といった彼女の住まいの室内やリアクションの方で、虚構作品なりのある種のリアリティや地に足が着いた生活感の担保も作っている。


 アーパーなようでも高校の修学旅行で自身の家庭環境や孤独さに苛まれて、渋谷駅で衝動的に電車に飛び込もうとしたところを、今の彼女が歌っているクラブのオーナーに救われたとすることで、少女とオーナーの人物像も確立、視聴者の感情移入も喚起する。


 強面のダンディーなオーナーは、実は重度の『三国志』マニアだともすることで、孔明とも意気投合して、眼前の事象にも通じるモノがあるあまたの「史実」を語り出すギャグ要素も大量に投入(笑)。


 これらが確立できれば、敵対勢力や味方として立ち現れてくる、


●胃弱な小柄のラッパー少年
●強面の大柄ラッパー青年
●すでに知名度を持った人気女性歌手
●実は喉が弱いボーカルのインディーズバンド


 彼らとのやりとりでも、少女や孔明と相手方のキャラも引き立ってくるのだ。


 最後に立ちはだかるのは、少女とも意気投合していた路上ライブをしていた女性。その女性の正体は仮面舞踏会のアイマスクをした人気ガールズバンドのボーカル!


 彼女らには巧妙なマーケティング戦略を駆使する敏腕プロデューサーがいて、女性はその方針に反発して放浪、路上ライブをしていたというのだ。


 そして、夏の大型野外ライブの出場権を賭けて、渋谷の交差点でのゲリラライブを舞台に歌唱対決のクライマックスを作っていく!


 といったところで、ムチャクチャに面白い。


 もちろん、孔明が随所にカラんでこなければ、この作品は看板倒れになってしまう。そこで、孔明は『三国志』オタクはご存じ、劇画『子連れ狼』などでもおなじみの「石兵八陣」(八門遁甲の陣)を用いてライブ会場での人流の導線を誘導したり、奇策を弄したり、二手三手先を見据えた手を打っていく――むろん、先に敵が小細工を弄していることから来る「反撃」の位置付けとなっているので不快感はない――。


 とはいえ、ゲームチェンジャーとしての役回りだけではなく「人間通」でもあるので、当世の若者たちの懊悩や自己実現にも思いを馳せて気持ちも寄せている。
 死出に戦のない世への転生を願っていたように、彼が生きた時代と比すれば実に平和な時代への感謝の気持ちも持っており、作品世界を俯瞰した存在へと高めることで、登場の必然性も確保ができているのだ。
TVアニメ「パリピ孔明」EDテーマ「気分上々↑↑」

(了)
(初出・オールジャンル同人誌『SHOUT!』VOL.83(22年8月13日発行))


ダンス・ダンス・ダンスール』

(2022年春アニメ)
(2022年8月7日脱稿)


 男子バレエが題材の作品。といっても、バレーボールではなく、踊りの方の男子バレエに興じている中学生男子クンを描いた作品である。


 まぁまぁ面白い。ややマイナーなジャンルやスポーツでも、現実世界に存在する事象にスポットを当てることで、スポ根(スポーツ根性)的でもリアルな肌ざわりも併せ持った作品にもなっている。


 マイナーだからとマーケティング的にも黙殺するのが正しいワケでもない。「商品」や「物語」は時に新奇な目新しさも必要だ。埋もれた潜在ニーズを具現化、ニッチ(隙間)なところを拡幅してタネを植えて稔らせる。


 大学生男子がチアダンス活動する小説原作の深夜アニメ『チア男子!!』(16年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190603/p1。19年に実写映画化)などもまぁまぁ面白かったけど、やはり現実ヘイト(現実的な日常がキライ・笑)な一般的なオタにはウケないのであろう。しかし、個人の好みは棚上げしてマンガ・アニメジャンルの大局を見据えたかったり、物語の「作劇術」の何たるかをドコかで究めたいような方々には、観て損はないとも思われる作品なのだ。


 やはり本作も題材以前に、視聴者を感情移入させるに足る「導入部」や、たとえ偏見だとしても誰もが自然と想起してしまう「女子がするバレエを男子がするだなんて……」といった疑問を前面化するかたちでフック(引っかかり)も作っている。


 すなわち、世間一般での風潮を知らない幼児のころには偏見なくバレエにあこがれて練習にも励んでいたのに、同級生男子たちから「ヘンだ!」と蔑まれてしまったことで主人公少年は一度はバレエをやめており、「男らしくあらん!」と東洋武術に鞍替えしていたとするのだ。


 たしかに微塵たりとも男子バレエに習熟することを疑わずに一直線であることは潔(いさぎよ)いやもしれない。しかし、一般ピープルの感覚とは遠すぎる。男子バレエが恥ずかしくなって一度は離れてしまったような御仁の方が、筆者も含めた世間一般・大多数の視聴者には感情移入もしやすいことだろう。


 こーいう「助走台」こそが重要で、ソコさえウマく行けば、あとのストーリーにも感情移入して乗っていける。逆に云うならば、ソコに瑕疵(かし=欠点)があると乗っていけないものなのだ。


 むろん一般的な物語としては、まったくのド素人が苦労を重ねて強くなり、巨大な宿敵を打ち倒していく方が面白い。しかし、変身ヒーローものならばともかく、現実的には素人が巨敵を倒すことなどは困難だ。


 なので、本作の主人公男子クンも一見は素人。偶然の流れで転校生のヒロイン女子に誘われて彼女の母親が経営するバレエ教室を見学したところで、むかし取った杵柄(きねづか)が騒ぎ出して見事なバレエを披露する!


 しかして、ヒロインの母親は冷徹だ。彼を挑発することで、もっと彼の才能を引き出そうとするのであった。


 といったところで、自発性なのか? 人の手のヒラの上なのか? この両者もまた厳密に選り分けることができるのか!? といった根源的な難題までをも感じさせている。


 それと同時に、ライバルとなる混血バレエ少年やまた別のバレエ少女との出逢いも重ねさせて触発させていく。


 けれど、学校では思春期のモテ/非モテ的なカッコよさ基準の酷薄なスクールカーストもあるので、バレエを習いだしたことを隠していたりもする。


 しかし、ライバル少年がイジメられたことで、男気を出して助け船を出したところで、その加害者少年こそ自身が幼少期にイジメていた当の相手でもあった事実にも直面させられたりもする! といったあたりでも、実に滋味あるドラマを構築できているのだ。


 アイススケートやスケボー(スケートボード)を扱った近年のこのテの作品同様に、バレエのシーンこそが肝なので、そのあたりは実にリアルでスタイリッシュな映像を表現もできていた。

(了)
(初出・オールジャンル同人誌『SHOUT!』VOL.83(22年8月13日発行))


[関連記事] ~マンガ原作・作品評!(一部は除く・汗)

波よ聞いてくれ』『イエスタデイをうたって』『ハコヅメ~交番女子の逆襲~』『ぐらんぶる』『この音とまれ!』『殺し愛』『グレイプニル』 ~純オタ向けとは異なる、漫画原作アニメの良作の数々!

katoku99.hatenablog.com

『薔薇王の葬列』『純潔のマリア』『アルテ』『平家物語』『アンゴルモア 元寇合戦記』『戦国BASARA』 ~薔薇戦争百年戦争ルネサンスなど、人間集団・戦争・宗教・芸術・栄枯盛衰・戦いでの潮目の変化(引き際)!

katoku99.hatenablog.com

うる星やつら』『つぐもも』『小林さんちのメイドラゴン』『よふかしのうた』 ~異界から来た美少女キャラとの同居ラブコメにも今昔!(非日常・異能よりも日常性が強調・好まれる傾向)

katoku99.hatenablog.com

『彼女、お借りします』『カッコウの許嫁』『可愛いだけじゃない式守さん』『カノジョも彼女』『トニカクカワイイ』 ~純オタ向け媒体ならぬ少年マンガ誌出自のラブコメ! 同工異曲のようでも成否の差!

katoku99.hatenablog.com

『五等分の花嫁』『ドメスティックな彼女』 ~陰陽対極の恋愛劇! 少年マガジン連載漫画の同季アニメ化!

katoku99.hatenablog.com

『五等分の花嫁』(1&2期) ~ベタでも高みに到達。告白された男子側でなく女子側の恋情で胸キュンさせる

katoku99.hatenablog.com

かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~』 ~往時は人間味に欠ける脇役だった学級委員や優等生キャラの地位向上!?

katoku99.hatenablog.com

『その着せ替え人形(ビスク・ドール)は恋をする』『明日(あけび)ちゃんのセーラー服』 ~2022年2大・女子高生衣服系(?)アニメの清楚快活女子・ギャル少女の差異!

katoku99.hatenablog.com


からかい上手の高木さん』『上野さんは不器用』『宇崎ちゃんは遊びたい!』『イジらないで、長瀞さん』 ~女子の方からカマってくれる、高木さん系アニメ4本評!

katoku99.hatenablog.com

『宇崎ちゃんは遊びたい!』 ~オタクvsフェミニズム論争史を炎上作品のアニメ化から俯瞰する!?

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200802/p1

『僕の心のヤバイやつ』『久保さんは僕を許さない』『それでも歩は寄せてくる』『阿波連さんははかれない』 ~ぼっちアニメのようで、女子の方からカマってくれる高木さん系でもあったアニメ4本評!

katoku99.hatenablog.com


やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。続』『ようこそ実力至上主義の教室へ』『青春ブタ野郎はゆめみる少女の夢を見ない』『月がきれい』『俺を好きなのはお前だけかよ』『弱キャラ友崎くん』 ~コミュ力弱者の男子を禁欲・老獪なヒーローとして美化した6作!

katoku99.hatenablog.com

はじめてのギャル』『僕の彼女がマジメ過ぎるしょびっちな件』 ~オタの敵・ギャルやビッチのオタ向け作品での料理方法!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20201220/p1

クズの本懐』『継母の連れ子が元カノだった』 ~愛情ヌキの代償行為としての男女関係と、一度は破綻した同士の男女関係を描いた2作評!

katoku99.hatenablog.com


2019年夏アニメ評! 『Dr.STONE』『手品先輩』『彼方のアストラ』『かつて神だった獣たちへ』『炎炎ノ消防隊』『荒ぶる季節の乙女どもよ。』 ~2019年夏の漫画原作アニメ6本から世相を透かし見る!

katoku99.hatenablog.com

2022~18年アニメ評! 『ヤマノススメ Next Summit』『ゆるキャン△』『Do It Yourself!!』『スーパーカブ』 ~オタには縁遠いハズのアウトドアやDIYを扱った美少女アニメのあれこれ!

katoku99.hatenablog.com

2021~19年アニメ評! 『古見さんは、コミュ症です。』『川柳少女』『ひとりぼっちの○○生活』 ~コミュ力弱者の女子を描いた3作の成否(笑)を問い詰める!

katoku99.hatenablog.com

2021~05年アニメ評! 『吸血鬼すぐ死ぬ』『月とライカと吸血姫』『となりの吸血鬼さん』『デビルズライン』『BLOOD+』 ~吸血鬼が題材でも人種・スリル・色気・暴力・ギャグ・月面着陸まで、多様な5作から見えるモノ!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20230312/p1

2020年冬アニメ評! 『映像研には手を出すな!』 ~イマイチ! 生産型オタサークルを描くも不発に思える私的理由

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200325/p1

2020~19年アニメ評! 『ダンベル何キロ持てる?』『推しが武道館いってくれたら死ぬ』 ~ファイルーズあい主演のアニメ2本評!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210418/p1

2020~19年アニメ評! 『私に天使が舞い降りた!』『うちのメイドがウザすぎる!』『となりの吸血鬼さん』 ~幼女萌えを百合だと云い募って偽装(笑)する3大美少女アニメ評!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20220710/p1

2019年春夏アニメ評! 『ノブナガ先生の幼な妻』『胡蝶綺 ~若き信長~』『織田シナモン信長』 ~信長の正妻・濃姫が登場するアニメ2本他! 『超可動ガール1/6』『女子かう生』

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210404/p1

2018~19年アニメ評! 『女子高生の無駄づかい』『ちおちゃんの通学路』 ~カースト「中の下」の非・美少女が主役となれる時代!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200301/p1

2018年3大百合アニメ評! 『あさがおと加瀬さん。』『やがて君になる』『citrus(シトラス)』 ~細分化する百合とは何ぞや!?

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20191208/p1

2018年春アニメ評! 『ヲタクに恋は難しい』 ~こんなのオタじゃない!? リア充オタの出現。オタの変質と解体(笑)

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200216/p1

2017年冬アニメ評! 『幼女戦記』 ~異世界近代での旧独vs連合国! 新自由主義者魔法少女vs信仰を強制する造物主!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190304/p1

2015年秋アニメ評! 『ワンパンマン』 ~ヒーロー大集合世界における最強ヒーローの倦怠・無欲・メタ正義・人格力!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20190303/p1

2013年夏アニメ評! 『げんしけん二代目』 ~非モテの虚構への耽溺! 非コミュのオタはいかに生くべきか!?

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20160623/p1

2013年春アニメ評! 『惡の華』前日談「惡の蕾」ドラマCD ~深夜アニメ版の声優が演じるも、原作者が手掛けた前日談の逸品!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20191006/p1

2008年秋アニメ評! 『鉄(くろがね)のラインバレル』 ~正義が大好きキャラ総登場ロボアニメ・最終回!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20090322/p1

2008年冬アニメ評! 『墓場鬼太郎

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20080615/p1

2005年春アニメ評! 『英国戀(こい)物語エマ』

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20051022/p1

2004年春アニメ評! 『鉄人28号』『花右京メイド隊』『美鳥の日々(みどりのひび)』『恋風(こいかぜ)』『天上天下

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20040407/p1



パリピ孔明』『ダンス・ダンス・ダンスール』 ~純オタ向けとは異なるナマっぽい描写! 青年マンガ誌連載の傑作&良作!
#孔明 #パリピ孔明 #ダンスダンスダンスール #ダンス・ダンス・ダンスール #アニメ感想 #アニメ批評



[アニメ] ~全記事見出し一覧
拙ブログ・トップページ(最新5記事)
拙ブログ・全記事見出し一覧

獣電戦隊キョウリュウジャー中盤~後半評 ~8・9・10人目の戦士! イベント編の質の高さ! 熱血活劇度も上昇! ついに10人戦隊が実現!

『獣電戦隊キョウリュウジャー』序盤~前半合評 ~三条陸×坂本浩一コンビだが、イイ意味でドラマ性が低い、明朗な狂躁作品!(笑)
『機界戦隊ゼンカイジャー』論 ~『ゼンカイジャー』を通じて「スーパー戦隊」45年史の変転も透かし見る!
拙ブログ・トップページ(最新10記事)
拙ブログ・全記事見出し一覧


スーパー戦隊シリーズ評 ~全記事見出し一覧
スーパー戦隊シリーズ映画評 ~全記事見出し一覧


 放映中のスーパー戦隊シリーズ最新作『王様戦隊キングオージャー』(23年)に、2週にわたって『獣電戦隊キョウリュウジャー』(13年)がゲスト出演記念! とカコつけて……。『獣電戦隊キョウリュウジャー』(13年)中後盤評をアップ!


『獣電戦隊キョウリュウジャー』中盤~後半評 ~8・9・10人目の戦士! イベント編の質の高さ! 熱血活劇度も上昇! ついに10人戦隊が実現!

(文・久保達也)
(2013年7月24日・脱稿)

はやいぜ! キョウリュウジャー8にんめと9にんめのとうじょう!



ブレイブ17「ガチだぜ! キョウリュウグレー」 ~8人目の戦士・キョウリュウグレー登場!


 開幕早々の「10大獣電竜」というキーワードにより、本作では「10人戦隊」を実現するつもりなのか!? と、戦隊マニアたちからも予想する下馬評が出ていた『獣電戦隊キョウリュウジャー』(13年)。


 しかしながら、シリーズ後半であればともかく、全話1年間の放映がまだ半分も行っていない第2クール中盤の時点で、8番目&9番目の戦士までもが登場! さすがにここまで早いとは誰も思わなかったのでは!?


 第17話『ガチだぜ! キョウリュウグレー』では、8人目の戦士・キョウリュウグレーが登場!


 文字とおりに頭頂部が石頭状(頭蓋骨が露出!)の二足歩行型の恐竜・パキケファロサウルスがモチーフである獣電竜・ブンパッキーもまた「頭が硬(かた)い」という設定だ。
 ブンパッキーを操るキョウリュウグレーもまた、キョウリュウレッドのパンチを喰らっても全然平気なほどに頭が硬いと設定されている(笑)。


 その設定から逆算して、人間体の名前が鉄砕(てっさい・笑)! 頭髪もすべて剃っている!(爆)――特殊メイクなのだそうだが、そうだとはわからないリアルさだ!――


 そのスキンヘッドからして見るからに石頭っぽいが、それどころか、そのメンタルまでもが「頭が硬い」ならぬ「頭が固(かた)い」と設定されていた(笑)。


 そして、既存のキョウリュウジャー6人たちの前哨戦(ぜんしょうせん)を見て、


「100年、戦っても(敵に)勝てない!」


と酷評するのだ!


 ある意味では、完全無敵のヒーロー・完全無欠のリーダーとして、得体の知れない自信満々さで描かれて、そしてこれまでそれでも結果も出せてきたキョウリュウレッドことダイゴのことを、


「弱さがないから、それ以上強くなれない!」


などと論評して相対化をしてみせるのだ!! それに加えて、ダイゴをキョウリュウジャーから追放までしてしまうのだ!(汗)


 それはたしかに「最強」の存在であれば、それ以上に強くなったり、人格的にも肉体的にも成長することは論理的にもないだろう……


 そういう意味では、ダイゴというキャラクターと、『キョウリュウジャー』という作品自体に、「アンチテーゼ」をぶつけて揺さぶりをかけて、「テーマ的な深み」も出してみせるとすれば、それは「弱さがないから、それ以上強くなれない!」などという「禅」における「公案」=「禅問答」のような人物批評にまで持っていってしまうのは、実は『キョウリュウジャー』には似つかわしくない高等すぎる作劇だったかもしれない(笑)。


 静止したある「特定の時点」でだけ観れば、「弱さ」と「強さ」は矛盾している真逆のものですらある。しかし、「長い目」で観ての「時間的な変化」までをも考慮に入れれば、「善悪があざなえる縄のごとし」である!
 「弱い」からこそ、それを自覚して努力を重ねて、もろもろの「弱さ」の原因を愚直にひとつずつつぶしていったり、「欠点」は治せなくても自覚して常に注意できるように成長を重ねていければ、いずれは総合力としては「強者」よりも強くなれる可能性はあるのだ!――もちろん、常に絶対に強くなれるワケではないにしてもだ――。


 その意味では「弱さがないから、それ以上強くなれない!」という発言もあながち間違いではないのだ。間違いではないのだが、ダイゴをキョウリュウジャーから追放するというのは、現実的には現代社会ではスパルタに過ぎてムチャクチャではある。しかし、この手の子供向けエンタメとしては、そういうドラマチックな展開であった方が面白いのだ!(笑)


ブレイブ18「つかんだッ! カンフーひっさつけん」 ~キョウリュウグレー登場編の後編!


 第18話『つかんだッ! カンフーひっさつけん』で、鉄砕が出現させた「逢魔(おうま)の森」なる異世界で、ダイゴ自身がつかんだ自分の「弱さ」とは、


「仲間を失うことが怖(こわ)い」


ということだった!


 なるほど! 彼の「弱点」とは、自分個人のことや自分個人の肉体的・精神的な「弱さ」のことではなかった!


 おそらく、彼は自分ひとりでも生きていけて、戦って、人生でも勝っていける。それもエゴイズムやミーイズムの亡者ではなく、他人の心がわからない下劣な人間としての「勝者」や「強者」でもない。


 彼は一見は高飛車なようでも、仲間や他人にも気配りや配慮ができて、彼らの心理や心痛をも慮(おもんばか)ることもできる「人格者」であった。それはそれまでのストーリー展開でも、作劇上の「主人公補正」ではあったのだろうが(笑)、序盤からすでにいくつも描かれてきたところだ。


 しかしそれゆえに、なんでもできてしまう彼は、他人を信じて任せることができない。先回りしてなんでもやってしまうのだ。
 それは深堀りして云ってしまえば、実力もある仲間たちを信じて背中を任せるのではなく、彼らのことを完全には信じきっていない! 対等な個人としては観ていない! といった微量に失礼なことにもなってしまうのだ。


 そして、それはトータルとしては、「戦隊」としての「総合力」や「最大パワー」の発揮を阻害してしまった可能性もある態度であるのだ。


 とはいえ、それは仲間を見下しきっているゆえの俗物的な言動ではない。我々のような凡人とは異なる、一段階は上の次元にある地点における「弱点」なのだ!


 彼の善良さややさしさ、意外にそのメンタルの根っこは「常識人」でもあったということが、ここでは「仲間を失うことが怖い」と思ってしまうという心理につながっているのだ。


 それは「悪」ではないだろう。しかし、「戦隊」としては万全な「正義」でもない。「最善」ではなく「次善」としての「良さ」いったところなのだ。彼の場合は、この「次善」としての「良さ」が、高い基準のモノサシで測ってしまえば「弱点」でもあったということになるのだ!


 ウ~ム。これはもう我々のような凡俗にとっての世間一般的な「弱点」のことではないよなぁ(汗)。高いポジションや責任のある立場にいる人間に求められる、実に高度な水準の要求だよなぁ(笑)。


 そして、キョウリュウグレー=鉄砕は、そういったことを意識化・言語化しろ! そして、それを活かして、新たな仲間との付き合い方・振る舞い方・共闘の仕方を学べば、もっともっと強くなれる! といったことを、示唆して善導しようとしていたのだ!


 先にグレーがレッドを評して語った「怖いもの知らず」といった人物批評が、この答え合わせとも「対(つい)」になっている。


 リアルに考えれば、「怖いもの知らず」もまた、自分に対する自信・自負の現われではある。しかし、「1対1」の個人戦ではなく「1対多」や「多対多」の戦いである以上は、仮に個人としては強くても多勢に無勢で、たしかに場合によっては戦場において危機に陥(おちい)てしまう可能性も高いワケだ。これは我々の「人生」や「仕事」においても云える普遍的なことだ。


――しかし、幼児たちにはこのような高度な「機微」は理解できないものだろう(笑)。ヘタにこの手のことを懇々と教えこんでしまうと、ムダにコミュ力が高くて要領と調子のいいガキどもは、「仲間」や「友達」の数の多さを誇って調子に乗りそうでもある。その逆に、依存心が強いような気弱な子は自己保身で強い者や多数派になびいてしまいそうだ。
 そして、そのどちらにもなれない可愛げのないオタク・タイプの子供たちは、たとえ正論でも「そんなことはできない」「そもそも仲間や友達がいない(汗)」とばかりに劣等感と絶望感を抱かされてしまいそうでもある――



 「怖いものがなければダメなのか?」と問うてくるダイゴに対して、


「そりゃあそうだよ。山の怖さを知らない登山家なんかいないだろ?」


との切り返しもウマいのだ! たしかに云われてみればそのとおりなのだ。過度な用心深さ、石橋を叩いても渡らないような「怖がり」ばかりでも、人間はチャレンジ精神や進歩がなくなってしまうものだ。しかし、人知や個人の才覚・裁量を超えた警戒すべき「怖さ」があるものを的確に知っておき、それを前もって避けてみせたり、避けられないまでも備えておいて心の準備もしておいて、そのショックを最小限にとどめておくようにすることもまた大切なことなのだ!


 キョウリュウレッドことダイゴと『キョウリュウジャー』という作品自体を一度は相対化してみせる! そのうえで新キャラ・キョウリュグレー=鉄砕のキャラも立ててみせる! そして、この両者を拮抗させて、ダイゴの別の側面をも引き出して、新たな一面を肉付けして「成長」をも描くという、一石二鳥の作劇! これはバカっぽくて軽みも決して忘れてはいないものの(笑)、相応に考え抜かれた作劇でもあっただろう!


 ウ~ム。往年の『百獣戦隊ガオレンジャー』(01年)並みに、良い意味での狂騒的・狂躁的なだけのバカ番組(笑)にも思えていた『キョウリュウジャー』だったが、それだけで終わらずに、なにげに深いところを突いてきた!


 ……しかし、これは小学校高学年以上の子供や年長の特撮マニア向けの一応の高度な描写であって、メインターゲットの幼児や小学校低学年には理解ができない描写だとも思うけど(笑)。


 だから、子供番組としてはダメな描写なのだというワケではない。そういう描写やドラマも幼児がタイクツしない範疇で織り込まれている分には問題ないのではなかろうか!?
 よって、年長マニア向けのハード&シリアス志向を相対化したいばかりに、その「逆張り」だけで幼児性&コミカル性だけをプッシュするようなマニア評論であってもダメなのだ。


 そういった箴言(しんげん)めいたところが幼児層にはたとえ理解ができなかったとしても(笑)、ストーリーのアウトラインだけしか理解ができていなくても、「スーパー戦隊」シリーズ史上初(?)であろう「リーダー追放」ネタは、子供でも盛り上がること必至だろう!


 ここまでの『キョウリュウジャー』は登場した7人の戦士たちは、人格が善良で温厚でもあり仲もとても良かった。「戦隊」内でのこれといった不和もなかった。


 だから、これまでのメンバーとの「差別化」の意味でも、鉄砕のような「憎まれ言」を云ってみせるような「憎まれ役」がそろそろ登場するのもアリだろう!


 とはいえ、やはり破天荒で漫画的な作風の中においての「憎まれ役」に過ぎない。


 たとえば、筆者が愛して再評価運動にも邁進してきた、70年代前半の第2期ウルトラマンシリーズに登場するレギュラーの怪獣退治の防衛組織のメンバーなどでは、


●『帰ってきたウルトラマン』(71年)に登場するMAT(マット)の岸田文夫(きしだ・ふみお)隊員
●『ウルトラマンA(エース)』(72年)に登場するTAC(タック)の山中一郎(やまなか・いちろう)隊員
●『ウルトラマンレオ』(74年)に登場したMAC(マック)の初期の隊員たち!


 そういった、シビアで重たくて苦味もあって、人間ドラマとしてはある意味では高度なのだが、時に子供番組としては重たすぎるイヤ~ンな感じがしてしまう域には全然至っていないのだ。


 もちろん、あの域に達していなくて、むしろ子供番組としては正解なのだしOKなのだけど。そういったものとは「線引き」された範疇での、良い意味でマイルドで寸止めにとどめた「憎まれ役」なのだ(笑)。


 とにかく、主人公の「強化」、ひいては「成長」物語を描こうとしたら、やはりこうした「試練」を与えてみせる状況設定は必要不可欠であるワケだ。


 主人公が最初からほぼ完全無欠のスーパーヒーローであった初代『ウルトラマン』(66年)や『ウルトラセブン』(67年)、あるいは同時代やそれ以前の時代の古典的な仮面・覆面ヒーローたちと、スポ根(スポーツ根性)ブームを経た1970年前後以降からの発展途上の青年の悩みや成長も描いたヒーローたちとで、おおいに異なっている点がこの部分にあるワケだ。


 主人公の「成長」物語という教養小説ビルドゥングスロマン的なテーマをウキボリにするために、「第2期ウルトラ」にかぎらず「青春ドラマ」や「丁稚奉公もの」の要素を持ったドラマ――子供向けであれば、往年の大人気テレビアニメ『アルプスの少女ハイジ』(74年)や女児向け大人気テレビアニメ『キャンディ♡キャンディ』(76年)、20世紀のむかしの80年代あたりまでのNHKの朝ドラやTBSの今は亡き昼ドラ枠のような女の半生記モノなど――では、世の理不尽や不毛な対立も含んだかたちで、「憎まれ役」との葛藤劇が描かれてきた。


 もちろん、そんな教訓じみみた「テーマ」などは、新戦士の登場を視聴者に印象づけるための口実・手段にすぎず、目的ではなかったともいえる。ここは素直にキョウリュウグレーとブンパッキーの新登場、そして、それらによるキョウリュウジャーのさらなるパワーアップ劇を素直に喜ぶべきだろう!(笑)


 近年の作品に限定して例えれば、『仮面ライダーフォーゼ』(11年)に登場した2号ライダー・仮面ライダーメテオを彷彿(ほうふつ)とさせる、グレーが「鉄砕拳」なる中国拳法を繰り出す際のポージングに、「伝説の格闘家」=故ブルース・リーが格闘する際のような通称「怪鳥音」なる


「ワチャぁぁ!!」


なる叫び声! 腐れ「戦隊」オタクであれば、『超力戦隊オーレンジャー』(95年)のオーレッドこと星野吾郎隊長や、同作における6億年前の超古代からよみがえった6番目の少年戦士・キングレンジャーことリキの掛け声をも思い出すことだろう。当時の特撮雑誌『宇宙船』誌でのインタビューだったかによれば、リキ役の子役はオーレッドの掛け声を参考にしていたそうだが(笑)。


 そして、その硬い頭が分離して、シッポの先からそれを鉄球のようにチェーンでブン回して、巨大化した敵の戦闘員キャラ・ゾーリ魔を攻撃する獣電竜・ブンパッキー!


 まるで、近所の公園にて早朝に体操代わりに中国ヨガをやっている集団のように描かれる(笑)、左腕を獣電竜・ブンパッキーに換装した戦隊巨大ロボ・キョウリュウジンカンフーの合体完了シーン!


 そのコクピット内にて、回し蹴りを繰り出しながら、示し合わせたワケでもないのに、この手の作品の常套(じょうとう)で、


「ワチャぁぁ!!」


と声をそろえて、様式美として全員で本能的に叫んでいるかのようなキョウリュウジャー


 リクツではなく「この手のジャンルはそういうものだ」的な様式美! もうすべてがひたすら、バカかっこいい!(笑)。



 このキョウリュウグレーもまた、デタラメな日本語を話す500年前の西欧中世に生きてきた白人の太ったオジサンである水色の戦士・キョウリュウシアン同様に、もうすでに死んでいて「魂」だけで存在している「スピリットレンジャー」なる設定であった。


 この鉄砕も1500年前の中国の「五胡十六国(ごこ・じゅうろくこく)時代」に生きていたそうだ。


 ちなみに「五胡十六国時代」とは、『三国志』のあとから「隋」による天下統一までの400年間の小国が乱立した動乱期のことを「南北朝時代」というが、この「南北朝時代」の中期のことを限定して指す用語でもある。
 南方に追いやられた漢民族に対して、「五胡」の「胡」とは漢民族ではなく匈奴(きょうど)やトルコ系やチベット系などの北方の5種類の異民族(騎馬民族)のことである。調味料の「胡椒(こしょう)」「胡麻(ごま)」「胡瓜(きゅうり)」「胡坐(あぐら)」などもここから来ているのだ。


 ちなみに、この時代の南朝側の地に、南天竺(みなみ・てんじく=インド南部)の小国の第3王子で――ペルシャ人(イラン人)だったとの伝承もあるが――、出家して僧となった達磨大師(だるま・たいし)が布教のためにやってきて、仏教の一派である「禅宗」の開祖となって、「拳法」でも有名な少林寺を建立(こんりゅう)したという。
 達磨大使は「面壁九年(めんぺき・くねん)」の瞑想修行で、手足が腐ってしまったという伝説でも有名で、日本の「ダルマさん」人形の基となった人物でもある(笑)。


 鉄砕の「弱さがないから、それ以上強くなれない!」といった「禅」における師匠による弟子への「公案」じみた問答テストや、「拳法」ネタはここからの着想なのだろう。



 低予算番組の宿命として予想していたスレた特撮マニアも多かったことだろう。往年の東映メタルヒーロービーファイターカブト』(96年)のシリーズ後半同様に、途中追加戦士たちがレギュラーではなく、セミレギュラーとしてたまにしか登場していない。
 鉄砕もまた実に魅力的なキャラなので、個人的にはそのことが非常に残念なのだが、「ない袖はふれない」ので致し方(いたしかた)ない処置だろう。予算の範囲・身の丈(みのたけ)の範囲で知恵をしぼって最善を尽くすしかないのだ(笑)。



 ところで、彼の「鉄砕拳」を身につけたダイゴが喰らわした拳により、キョウリュウグレーの頭に入ってしまったヒビ割れ――作画合成だが――は、マジで大丈夫だったのだろうか?(笑) あの程度ではすぐに回復してしまうようなものなのだろうか?


 あと鉄砕が、もうひとつの姿として、今どきいるワケがないような、1970年前後の欧米や日本の若者間で流行していたファッションであるラフな服装の「ヒッピー」の姿に変装していたのはナゼ?(笑)


 鉄砕を演じる出合正幸(であい・まさゆき)氏は、『轟轟(ごうごう)戦隊ボウケンジャー』(06年)のシリーズ途中参加の6番目の戦士・ボウケンシルバーこと長髪金髪メッシュのイケメン・高丘映士(たかおか・えいじ)も演じていたことで、特撮マニア間では既知の存在である。しかしスキンヘッドになっていたし、筆者は今では事前情報を追いかけるタイプではないので、全然わからなかったゾ!



「どんな人間にも、光(=『強さ』)と陰(=『弱さ』)がある。オレはその象徴の戦士、白と黒の混ざった色、それが灰色、グレーだ!」


 ここでいう「陰」とは、「闇」や「悪」といった積極的な実体ではなく、光が当たっていないウラ側の部分の「陰」や、地面に写った「影」に象徴されるような、消極的な「弱さ」のようなものだろう。「悪」は否定されるべきだが、「弱さ」であれば、個性や性格であって、それはなかなかに矯正・消去しがたいものでもある。消去ができないのであれば、開き直るという意味ではなく、せめて自覚しておくことで失敗を防ごう! といった意味合いなのだろう。


 もちろん、玩具会社・バンダイ側でのデザインやカラーリングの決定ありきでのキャラクターだとは思うものの(笑)、後付けでも「グレー」のカラーリングであることにテーマ的な意味合いを付与してみせるドラマづくり! これまた、なかなかに良いではないか!?


ブレイブ21「ズオーン! かえってきたプレズオン」 ~9人目の戦士・キョウリュウバイオレット登場!


 さて、第21話『ズオーン! かえってきたプレズオン』では、9番目の戦士・紫色のキョウリュウバイオレットが初登場!


 宇宙探検から「母なる地球」に、海棲(かいせい)の首長竜・プレシオサウルスをモチーフとした、白色主体で細部に紫色が配された獣電竜・プレズオンが変形した、スペースシャトルをメカニカルに角(かく)ばらせたような飛行機型の宇宙船を操縦して帰還してくるという、実にカッコいい姿が導入部で描かれている!


 いわゆる『キョウリュウジャー』的な原始時代のイメージビジュアルではなく、なぜに未来的なスペースシャトル型の宇宙船!? といったところでコンセプト的な不整合はある。


 しかし、「時計」モチーフの『未来戦隊タイムレンジャー』(00年)のシリーズ中盤にて、「忍者」モチーフの巨大ロボ・タイムシャドウや「恐竜」モチーフの巨大ロボ・ブイレックスが登場したのを皮切りに、その作品のメインモチーフとはまったく無関係なモチーフをブッこんでくる(笑)、21世紀以降の「スーパー戦隊」ではよくある確信犯での「B級」っぽさである。
 むしろ逆に、幼児層はそういう不整合はさほどに気にしないだろうから、こういう「目先の変化」こそを喜んだり、目が引かれていたりもしていそうだ(笑)。だから、マーケティング的な勝算もあってのものなのだろう!?


 そして、このプレズオンに搭乗していたキョウリュウバイオレットの正体とは!?


 まぁ、たとえどれだけシブい声で装(よそお)っていようが、このキョウリュウバイオレットの声を演じているのが、本作でナレーションとキョウリュウジャーメカの音声ガイダンスを担当している千葉繁(ちば・しげる)であることはマニアにはバレバレである!


 メインターゲットの子供たちやそのパパやママ層はともかく、マニアであれば100人が100人、あの特徴的な声ですぐにわかったことだろう。いや、一部の子供たちやパパにママもすぐに気づいたかもしれないが(笑)。


 しかも、その変身前の人間態も、一応は声優であられる千葉繁ご本人が「顔出し」で演じておられる!!


 そして、ノッさん=キョウリュウブルーのつまらないオヤジギャグにすら、


「ダ~~~、ハッハッハッ!!!」


と大声で大口を開けてバカ笑いしたあげく、ベタで古典的なギャグではあるものの、アゴがハズれてしまうような「ファンキーおやじ」である、天才科学者ドクター・ウルシェードなる人物として登場を果たしたのだ! 役名も「うるさい!」「うるせえぞ!」の語句を転訛(てんか)させたものだろう(笑)。


 しかし千葉繁は、声から受けるイメージそのまんまの見た目をしたオジサンだよなぁ。


 とはいえ、主人公がイケメンの青年ではなく、スキンヘッドであったりオジサンであったりすれば、メインターゲットの子供たちも引いてしまったことだろう。しかし、7番目や8番目や9番目の戦士であれば、むしろ子供たちにも「変化球」として個性的で魅惑的に映って、執着すらされるのではなかろうか!?


 自身の子供時代を振り返ってみても、東映の7人戦隊ものであったヒーロー特撮『忍者キャプター』(76年)で、東映特撮の名バイプレーヤー(脇役)であり、『仮面ライダー』(71年)の敵幹部・地獄大使役で有名な潮建志(うしお・けんじ)が演じたキャプター1(ワン)に変身するユカイなオジサン・袋三郎兵衛(ふくろ・さぶろうべえ)などが、意外と子供間で人気があったことも思い出すのだ――もちろん、潮建志が主人公だったら、この番組はカッコよいヒーロー性を伴なった、子供たちがあこがれるようなヒーローものとしては成立しなかったことは云うまでもないのだが!――。


 そんなオジサンであるウルシェードが、ジャンル作品のお約束で高い建物の上に出現! 変身ポーズを延々と取りつつ、1分くらいかけて長口上(ながこうじょう)を述べながら、キョウリュウバイオレットに変身する、フザケていてもカッコいいシーンは、戦隊マニアならずとも子供たちやパパ層・ママ層などにも大ウケしたことだろう!


 キョウリュウブルーことノッさんが30代だという設定で、スーパー戦隊ヒーロー史上、最高齢だ! などと放映当初は話題になったものだが、もはやそれどころの騒ぎではない!


 千葉氏は『ゴジラ』第1作目が公開された1954年(昭和29年)生まれだそうで、還暦(かんれき=60歳)間近の59歳なのである!


 往年の特撮巨大ヒーロー『ミラーマン』(71年・円谷プロ フジテレビ)には、何回か敵の戦闘員である「インベーダー」役のひとりとして「千葉繁」なる人物がクレジットされている。
 CS放送・ファミリー劇場では、昭和ウルトラシリーズの週1の再放送と連動して『ウルトラ情報局』(02~11年)なる番組が放映されていた。氏は声優として『ザ★ウルトラマン』(79年)にも小猿のモンキやエキストラ全般の役でレギュラー出演を果たしていた関係で、『ザ★ウルトラマン』が放映されていた2009年分の「8月号」にもゲストとして出演している。


 ここで氏は『ミラーマン』のインベーダー役として出演していたことを明言したことで、この千葉繁は氏であったことが確定したのだ! そして、同作での釣り橋の上でのバック転(!)の映像も流されていた。
 しかし当時、まだ17歳! 氏は集団就職にて中卒で上京したあと、早々に退職して舞台の世界・剣友会・スタントマンの世界などを転々としていたそうだ。氏は中学時代は体操部の部長出身だったそうだ。しかし、『ミラーマン』での氏は、インベーダーは全員が黒背広姿で黒いサングラスをかけている設定だったとはいえ、17歳には見えない。当時からフケていた(爆)。


 なお、東映ビデオから2013年10月にDVD化予定で、『キョウリュウジャー』の中CMでも宣伝されている『恐竜戦隊コセイドン』(78年・円谷プロ 東京12チャンネル→現テレビ東京)の時空管理局研究員や、『仮面ライダーBLACK RX(ブラック・アールエックス)』(88年)第23話『ブタになったRX』(爆)のゲスト・太陽学習塾の先生役など、過去にも特撮作品に顔出し出演の例があった!


 『五星戦隊ダイレンジャー』(93年)第13話『カッカブキ小僧』~第14話『イヨッ結婚ぢゃ』の前後編に登場したゲスト怪人・歌舞伎小僧(かぶき・こぞう)、『忍者戦隊カクレンジャー』(94年)第41話『かくれゴースト』に登場した妖怪・チョウチンコゾウ――どちらも「小僧」だ!(笑)――のほか、近年では『海賊戦隊ゴーカイジャー』(11年)に登場したスニークブラザースの兄・エルダーなどのスーパー戦隊シリーズ
 『重甲ビーファイター』(95年)に登場した敵組織であるジャマールの幹部・シュヴァルツや、『ビーロボ カブタック』(97年)に登場したビーロボ9号機であったサメ型のコミカルなロボット・シャークラーなどのメタルヒーローシリーズ。
 これらの作品でも「声の出演」を果たしている。そのようなワケで、実は「仮面ライダー」「スーパー戦隊」「メタルヒーロー」をすでに千葉氏は完全制覇していたのだ!


 ……それにしても、キョウリュウジャーの変身シーンの定番である、サンバのリズムに乗った変身シーンでの氏の踊りはデタラメすぎである。氏は運動神経はよいのだから、これもまたギャグとしての演出意図なのだろうけど(笑)。


 なお、もちろん後付けだが、キョウリュウジャーに変身するためのアイテムであり銃型の武器でもあるガブリボルバーはドクター・ウルシェードが開発したものであり、その音声ガイダンスもウルシェード自身の声であったとされた! 虚構作品なりの合理性も与えられており、こういった言い訳・リクツ付けは怪獣博士タイプの子供たちや年長マニアたちも喜ぶような趣向であって大賛成なのだ!


 しかし、魂だけの存在としてのスピリットレンジャーこと水色のキョウリュウシアンやキョウリュウグレーはガブリボルバーなしに、おそらく恐竜時代から存在していた「獣電池」単独でも変身できており、その際にも千葉繁の声で音声ガイダンスは流れている(爆)。


 この矛盾については、獣電池にやどっていたキョウリュウスピリットの声とドクター・ウルシェード自身の声が偶然にそっくりだったことにしている。そして、キョウリュウジャーの後見人である賢神(けんじん)トリンに


「(ウルシェードの)声を聞いて、運命を感じた……」


などと云わせることで(笑)、半ばギャグとしての言い訳もつけているのだ! 苦しいけど、ここに対して何も言い訳をつけないと、怪獣博士タイプの子供たちこそ気になって気になって幻滅して卒業してしまう危険性もあるので(笑)、なにも言及しないよりかは、多少はムリがあってもこうしたウンチクや言い訳をつけておくこともまた肝要なのである。



キョウリュウバイオレット「地球の海はオレの海! 宇宙の海もオレの海! ……海の勇者! キョウリュウバイオレット!!」


 世代人であればわかるだろうが、この名乗りは往年の東映動画製作の名作テレビアニメ『宇宙海賊キャプテンハーロック』(78年)主題歌の歌詞の冒頭「♪ 宇宙の海は~ オ~レ~の海~~』をパロった、年長オタク向けのギャグでもあるのだ!


 そして、カッコよく名乗ったのはよいものの、ベタにも腰から「グキッ!」というニブい音がしてしまい、ぎっくり腰となって動けなくなってしまう。そして、敵味方の一同がズッコケる(笑)。


 これはこれでアリなのだが、ぎっくり腰は次回以降にまわして、初登場回ではさっそうと大活躍して、その強さを見せてほしかったものだ。そこは少々残念ではある。


 しかし、彼は歴史上の人物で肉体がないスピリットレンジャーではなく、現代人の戦士であるという。


 レッドはぎっくり腰で固まってしまったバイオレットをかかえてグルグル回して、その脚を敵にぶつけることで、敵怪人にキック!(笑)


 ドクター・ウルシェードの娘として、弥生ウルシェード(やよい・うるしぇーど)なる娘も登場している。彼女は前作『特命戦隊ゴーバスターズ』(12年)に登場したオペレーター女性のような、これはこれで野郎オタク受けがしそうな、可愛いメガネっ子キャラとしてのルックスとなっている(笑)。


 その弥生のオペレートにより、「秘密基地」からスペースシャトル型の獣電竜プレズオンが発進! ドッグへの注水完了から発進へと至るその特撮シーンは、東宝特撮映画『海底軍艦』(63年・東宝)に登場した主役メカ・轟天号(ごうてんごう)や、『マイティジャック』(68年・円谷プロ フジテレビ)に登場する空飛ぶ主役メカ・万能戦艦マイティ号の発進シーンへのオマージュを捧げたのだろうカッコよさだ!


 そのプレズオンが宇宙空間にまで飛んで、獣電巨人プレズオーなる巨大ロボに変形して大活躍!! プレズオンのメカ特撮も絶品であった!



 本話では、「隕石」「ウイルス」「氷河期」と、80年代以降は証拠が見つかったことで「隕石」説で確定しているのだが、筆者が子供であった70年代には恐竜絶滅の理由として考えられてきた、今では廃れた3つの原因(笑)をモチーフとした超強敵怪人3体である、


●デーボ・ヒョーガッキー
●デーボ・ウイルスン
●デーボ・ナガレボーシ――流れ星と帽子を掛けており、テンガロンハットをかぶっている(笑)――


が恐竜絶滅の時代から現代に復活! この強大にすぎる新ロボが大活躍してみせても、パワーバランス的に卑怯には見えなくするための必然性(笑)を構築している。


 しかし、「恐竜を絶滅させた仲良し3人組」(笑)とも名乗っていることで、こんな強力怪人であるのに「スーパー戦隊」定番のギャグ怪人であることも忘れ去られてはいないのだ。


 彼らはスーパー戦隊のように、各怪人が単独でカッコいい名乗りを上げていく! そして、背景のキレイな青空になぜかメタ的に「スーパー戦隊」各作のメインタイトルのような極太ロゴで、悪の「スーパー戦隊」名である


「ゼツメイツ」


なる語句まで浮かぶのだ!――「絶滅」と「メイツ(仲間)」の掛け言葉!(笑)――


 このあたりは年長マニア向けのギャグだとの批判も可能だろう。しかし、識字ができるようになった幼児であれば、喜べるようなギャグだとも思える。よって、やや楽屋オチ的ではあるのだが、個人的にはギリギリで問題なしだと思うのだ……



 さらにダメ押し! キョウリュウジャーが「聞いて驚け!!」と名乗ろうとしたら、


「聞かない!!」


と云って(笑)、攻撃を始めてくるのだ!


 『キョウリュウジャー』ではすでに第11話や第12話(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20231010/p1)で、本作のサンバのリズムに乗っての踊りながらの長すぎる変身シーン(笑)の途中で、敵が攻撃を仕掛けてくるパターンをやっている。


 しかしここでは、おそらく『爆竜戦隊アバレンジャー』)03年)第20話(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20110613/p1)が初出だとも思われる、ヒーローの名乗りの途中での敵からの攻撃もコミカルに実現して、「パターン破りの驚き」と「バトル色の強調」とともに「笑い」をも体現してみせているのだ! まさに一石三鳥の作劇だ!


 そして、初期スーパー戦隊のようなサッカーボールを蹴っていく「デーボス・メツボール!」なる、「絶滅」ならぬ「滅亡」と「ボール」を掛けた名称である必殺技も披露!


 動きにくそうな重厚な着ぐるみで、怪人同士でボールをパスしながら、ダッシュを繰り出すスーツアクター諸氏には特撮マニア的には敬意を表してしまうが、そういったウラ方での苦労話的な美談で作品を持ち上げるクサい論法ではなく、それよりもまずはギャグとしてスナオに笑えてしまうことを指摘しておきたいし、その方がスタッフたちとっても最大のホメ言葉となるだろう(笑)。


 しかし、キョウリュウジャーはそれまでにも数回ほど披露されてきた、キョウリュウブルーをボール化(!)した「ノッさんボール」(笑)でこれに対抗!


 クライマックスでは、逆にメツボールを喰らってしまった隕石怪人が爆発した炎の中に「滅」という文字が……(笑) 自分たちの方が滅びてしまったというギャグであった。


 「滅」という漢字は小学校低学年ではまだ読めないとも思うので、完全に年長マニア向けのギャグになってしまう。しかし一瞬のシーンゆえに、子供たちが疎外感を感じる暇(いとも)もないだろうから、無問題なのだ!?(笑)


 新戦士登場&強敵怪人軍団登場編! のイベント編であったハズなのに、その内容はほとんど本家・東映が製作した「スーパー戦隊」のパロディー作品であった深夜特撮『非公認戦隊アキバレンジャー』(12年)のノリであった(爆)。


 「公認」や「非公認」といった「違い」はあいまいとなったようでも、今でも厳然として存在はするだろう。やはり、「マニア向けギャグ」と「子供向けギャグ」とは重複しているところもあるのだが、異なっているところもあるからだ。しかし、その境い目は時代とともにズレて変わってきているし、たしかにあいまいでもある。
 だから、作品全体のバランスを崩さない「点描」程度であれば、子供にはわからないギャグでも、固いことは云わずに挿入してもよいだろう!(笑)


 「ギャグ」や「パロディー」を投入したからといって、熱苦しい「ヒロイズム」や「娯楽活劇性」までもが必ずしも失われてしまうワケでもないことは、まさにこの「スーパー戦隊シリーズ」においては1990年前後の作品あたりから証明してきた。


 本話は9番目の戦士・キョウリュウバイオレットの初登場編であるのみならず、そうした「ギャグ」と「熱血バトル」との両立の好例ともなっていたのだ!


 本作のシリーズ序盤は、作風がややユルくてマイルドで、「熱血温度」や「武闘派度」が少々足りないと思ったものだったが、ここに来てそれも解消されている!



 2013年8月3日(土)から公開される恒例の「平成仮面ライダー」作品との同時上映映画『劇場版 獣電戦隊キョウリュウジャー ガブリンチョ OF(オブ) ミュージック』(13年・東映)――もちろん、サブタイトルは名作ミュージカル洋画『サウンド・オブ・ミュージック』(65年)からの引用だろう!――。


 同作には「デスリュウジャー」なる悪のキョウリュウジャーが出演することが発表されている。このキャラクターこそが正義に寝返って10番目の戦士となるのだろうか? それとも太古に存在した番外のゼロ番目の戦士なのだろうか? 単なる悪の戦士でキョウリュウジャーとは無関係の存在なのだろうか?


 この調子で、秋前には10番目の戦隊ヒーローが登場してしまうと、クリスマス商戦よりもずいぶんと前に「10大獣電竜」が全員集合してしまって、クリスマス商戦で売るべき玩具に新作玩具がなくなってしまう!


 ということは、10番目の戦隊ヒーローや「10大獣電竜」以外にも、11番目の戦隊ヒーローや獣電竜がいた! ということで、シレッとさらなる新キャラや新ロボが登場したりして……(笑)


2013.7.24.


(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2014年準備号』(22年8月13日発行)~『仮面特攻隊2014年号』(13年12月30日発行)所収『獣電戦隊キョウリュウジャー』中盤評より抜粋)


ついに! キョウリュウジャーの10にんめもとうじょう!!

(2013年12月10日・脱稿)


 「前回は大変なことが起こりんちょ!」との冒頭ナレーションが毎回毎回披露されてきた『キョウリュウジャー』。前回どころか、毎回毎回大変なことが起こりんちょ!(汗) 例によって、追加戦隊ヒーローが登場する「イベント編」のエピソードにだけ限定して語ろう!


ブレイブ34「ふっかつ! ブラギガスしゅつげん」 ~10体目の獣電竜・ブラギガス登場!


 首長竜ブラキオサウルスがモチーフである10体目の獣電竜・ブラギガスが遂に復活! そして「超カミツキ変形!」により、巨大ロボ・ギガントブラギオーが誕生する!


 筆者のようなオジサン特撮マニアたちには、


●大人気・刑事ドラマ『太陽にほえろ!』(72~86年・国際放映 東宝 日本テレビ)のスニーカー刑事編(79~81年)のスニーカー刑事こと五代潤(ごだい・じゅん)役
●学園ドラマ『スクール☆ウォーズ』(85年・大映テレビ TBS)の主人公である熱血教師・滝沢賢治(たきざわ・けんじ)役


 以上の2役が実に印象深いだろう山下真司(やました・しんじ)が、ダイゴの父・桐生ダンテツ(きりゅう・だんてつ)役で、第18話・第20話・第28話につづいて、ついに本格的に出演!


 ちなみに、深夜ドラマ『ケータイ刑事 銭形舞(ぜにがた・まい))』シリーズ(02~07年・BS-i。現BS-TBS)にも、氏は五代という名字の刑事役でレギュラー出演している。そのことで、彼はスニーカー刑事とも同一人物であり、『太陽』と『銭形』は同一世界での出来事かもしれない!? とマニアたちには思わせる趣向となっていた(笑)。


 千葉繁も59歳だったが、氏はすでに還暦(かんれき=60歳)を超えている! よって、若いころのようなアクションはさすがに披露してくれないと思っていた。
 しかし今回、わずかではあるものの、レッドとともに、敵幹部である怒りの戦騎・ドゴルドを吹っ飛ばしてみせている! これは年長マニアも子供たちにもうれしい趣向だろう!


 やはり年長キャラは、単なるやられキャラや噛ませ犬や人質要員では悲しいのだ。そのへんが筆者ら年長オタクたちが視聴してきた70年代ヒーロー特撮全般の弱点でもあって、イヤ~ンな想いや釈然としない不全感を子供心に抱いてきたものなのだ。


 そのへんに不満を抱いてきた世代がスタッフになったからだろう。ダンテツは単独でも素手でも相応に強い! として描いてみせることで、カタルシスも倍増させているのだ!


ブレイブ35「チョーすげえッ! ギガントキョウリュウジン」 ~10体目の獣電竜・ブラギガスとも合体して最強ロボが完成!


 今回からキョウリュウジャーのひみつきち・スピリットベースが、10体目の獣電竜・ブラギガスの体内に移転する! といっても、予算の都合もあるだろうから、セットのデザインなどは変わっていないが(笑)。


 前話でブラギガスが眠っている湖から釣り怪人・タイリョーン(大漁ーン・笑)が、釣り上げた小さな人形が、通常のゲスト怪人よりも強い「大地の魔神・ガドマ」なる強力怪人と化して暴れ回る! こういったノリもまた小さな「連続性」なのだ。


 新メカ・新ロボ登場編なので、巨大ロボ戦も東映側の本編班ではなく特撮研究所が担当しているのだろう。精密な都市のミニチュアセットが用意され、ギガントブラギオーやギガントキョウリュウジンとの大決戦が、巨大感を絶妙に表現するオープンセットにおけるアオリ撮影も駆使(くし)することで、存分に描かれている!
 CG全盛の昨今において、昔ながらのミニチュア特撮の伝統もひたすら守り抜いてくれて、しかもそのクオリティーが昔よりもはるかに高いことには敬服せずにはいられない!


 ブラギガスが地底から出現するさまをアオリで捉えたり、ビルの壁面の鏡面ガラスにその勇姿を映し出す特撮演出もカッコいい!


 ガドマに呪いをかけられたために本来の力を出せず、倒されてしまったキョウリュウジャーたち! 窮地の彼らをノッさん(キョウリュウブルー)の妹・優子(ゆうこ)にその娘の理香(りか)や、アミィ(キョウリュウピンク)の執事・ジェントルが救出する!


 そればかりではない! かつて、ソウジ(キョウリュウグリーン)やウッチーこと空蝉丸(うつせみまる=キョウリュウゴールド)の主役回で、ゲスト主役だった少年たちを再登場させているのが目を引くのだ!


 この手のヒーロー特撮に「連続ドラマ性」を導入することなどマニアックに過ぎる! という批判をぶつけてくるようなストロングスタイルの信奉者もごく少数ながら存在するかもしれない。
 しかし、「連続ドラマ」的な要素がまったくない、70年代後半~80年代初頭の時期の東映ヒーロー特撮のような極度にルーティン化されてしまった作品になってしまっても、幼児はともかく児童たちには万全な魅力を持った作品だとは映らないものだろう。


 事実、70年代後半には『宇宙戦艦ヤマト』(74年)の再放送を、80年代前半には『機動戦士ガンダム』(7年)の再放送を、年長マニアのみならず幼児はともかく小学校も中学年以上ともなれば夢中で鑑賞しており、前者では100円プラモデルが、後者でも300円プラモデルが大ヒットしていたからだ! そして同時に、極度にルーティン化されている東映特撮も鑑賞しつつも、心許ない、子供っぽい、やや程度が低くて幼稚だといった印象で受け止めていたこともあったからだ。


 とはいえ、だからといって、東映ヒーロー特撮を『ヤマト』や『ガンダム』のようにしろ! などとは思わない(笑)。要はブレンドや塩加減なのである。
 子供たちでも過去のエピソードに登場したゲストキャラのことくらいは覚えている。そうした慣れ親しんだキャラが再登場して、あらためてその関係性を深めてくれたり、恩返しをしてくれるようなエピソードなどは理解ができるものだろうし、潜在ニーズとしてもそれは確実に存在しているとは思うのだ。
 なぜならば、往年の不良・番長漫画や熱血バトル漫画などでは、70年代のむかしから、かつての敵やライバルが新たな敵と戦っている主人公たちの助っ人として参戦することがすでに定番であって、それがウケてもきたからだ(笑)。


 やはり、子供時代や少年・青年期にそのようなストーリー展開を妄想していた世代が、脚本家や監督やプロデューサーとなったことは大きいだろう。
 本作『キョウリュウジャー』にかぎった話ではない。すでに90年代後半以降の日本特撮では、過去のゲストキャラが再登場を果たすような熱いネタが散見されるようにはなってきている。本話のこのようなストーリー展開もそうした一環でもあったのだ!


――なお、小姑的な細かいことも云わせてもらうと、ゲストキャラが再登場を果たすような展開は、初代『ウルトラマン』におけるイレギュラーのイワモト博士などはともかく、古いところでは『ウルトラセブン』(67年)の宇宙ステーション・V3(ブイスリー)のクラタ隊長、『帰ってきたウルトラマン』(71年)の伊吹隊長の小学生の娘・美奈子、『ウルトラマンタロウ』の南原隊員の母・おたか、あまたの70年代の巨大ロボットアニメなど多数の作品がすでに達成してきたことでもあるのだ。しかし、70年代後半~80年代中盤の日本特撮では、このあたりが極度に悪い意味でルーティン化されて融通が利かなくなってしまっていたのだ――



 そして、再登場した彼らや市民たちがヒーローを応援してみせることによって、大ピンチだったハズのキョウリュウジャーが形勢逆転!


 応援されただけで逆転ができるものかよ!? といったツッコミは正当ではある。しかし、ヒーロー特撮は良くも悪くもリアリズムが優先される世界観ではない。悪く云えば、最後には神風が吹いて(汗)、正しき者が勝ってくれるという精神主義的な世界観なのである。
 現実はそうではないことを考えると、おもいっきりのご都合主義なのだが、そういったことは現実の生活や、もっと年長者向けやマニア向けの作品や社会派のオトナ向け一般ドラマなどで、放っておいても勝手に学んでいくようなことなのだから、ヒーロー特撮や子供向け漫画ではそれでもよいのではなかろうか!?


 そういったカッコ付きでの一応の「王道」なのである。しかし、これもヒーロー特撮に限定してみせれば、実はむかしは「王道」ではなかったのだ。70~80年代の等身大サイズの特撮ヒーローものでは、人知れず戦って見返りなども求めないストイック(禁欲的)な孤高のヒーローたちであったのだ。衆人環視のもとで応援も込みで戦うことなどはほとんどなかったものなのだ。


 しかし、70年前後のスポ根(スポーツ根性)漫画やスポ根ドラマの影響なのだろう。観客が主人公を応援する作劇パターンがだんだんと普及してくる。おそらく70~80年代の「週刊少年ジャンプ」などの大人気格闘漫画などにまずは導入されて、それが21世紀に入ってヒーロー特撮の方にも本格的に導入されることになっていったのだ!――これはヒーロー特撮を腐しているのではない。良いものはパクリでも採用すべきなのだ!――


 『百獣戦隊ガオレンジャー』(01年)のサブライターとしても大活躍していた赤星政尚(あかほし・まさなお)が、初のメインライターを務めた『ウルトラマンメビウス』(06年)の第1話や最終3部作、本作『キョウリュウジャー』の三条陸坂本浩一監督コンビが手掛けた映画『仮面ライダーW(ダブル) FOREVER AtoZ/運命のガイアメモリ』(10年)などでは、ヒーローと敵とが衆人環視のもとで戦い、人々が驚嘆したり落胆したり応援したりする姿を描くことで、戦いのシーンをより盛り上げてみせていた!


 ある意味では「王道」なのだが、ヒーロー特撮にとっては歴史の浅い「王道」なのであり、ワリと新しく付け加わって今や新たな「古典」(笑)となりつつある手法なのだ。



 大地の魔神・ガドマに苦戦する戦隊巨大ロボ・キョウリュウジン&プテライデンオーを画面の奥に、キョウリュウジャーたちを見守る市民たちを手前に配した合成カット!


 さらに、3体の獣電竜が合体して誕生した人型巨大ロボ・キョウリュウジンに、ブラギガスも含めた3体が合体することで誕生する、ギガントキョウリュウジンの「超カミツキ合体!」の場面で、市民たちが


「ギガント! ギガント!!」


とコールすることによって、臨場感と一体感がわきあがる演出は実に心地よかった!


ブレイブ36「ギガガブリンチョ! きせきのシルバー」 ~10人目の戦士・キョウリュウシルバー登場!


 キョウリュウジャーの司令官でもある着ぐるみキャラ・賢神(けんじん)トリンは、もともとの出自が敵のデーボス軍の一員であり、筆頭敵幹部・神官カオスの弟でもあったというドラマチックな設定がすでに判明していた。


 本話では前話で大地の魔神・ガドマが断末魔に、「大地の闇」――いわゆる死後の世界の「地獄」のことだろう!――と「この世」に通路を開けてしまっていた!


 この通路を拡張するために、デーボス軍は黒いトリンことマッドトリンを差し向けてくる!


 いわゆるクローンの人造トリンなのだが、こちらもトリンと二役で、中堅イケメン声優・森川智之(もりかわ・ともゆき)が器用に声を演じ分けているのがお見事だ!


 ちなみに、往年の『ウルトラマンパワード』(93年)でも、アクション俳優ケイン・コスギが演じた主人公ケンイチ・カイ隊員の声を森川は吹き替えている――後日付記:『ウルトラギャラクシーファイト 大いなる陰謀』(19年)では、森川はウルトラマンパワードの声も担当!――。


 あの動きにくそうな造形の着ぐるみで、両者が剣術合戦を披露するのはスゴい!


 そして、なんと本話の見せ場! 出自的にも「強さ」が自身と拮抗する強敵に対して、それを上回ってみせる必要性を作劇的に構築して、トリンが10番目の戦士・キョウリュウシルバーへと変身することになるのだ!!


 トリンはその変身過程で、律儀(りちぎ)にも例のサンバのダンスまでをも繰り出す! 戦闘よりもダンスの方が動きはギコちなかった。あの着ぐるみだと、逆にダンスをする方がムズカしかったか?(笑)


 本話でブルーが披露する「ノブハル3倍返し!」は、やはり2013年度の流行語大賞にも選ばれた、大人気テレビドラマ『半沢直樹(はんざわ・なおき)』(13年・TBS)の決めゼリフ「倍返しだ!」からだろう。
 このへんはいかにも良い意味で「B級」で、「ギャグ」や「パロディー」も許容される「スーパー戦隊」らしさだ! 幼児向けではなく、我々年長マニアやパパ・ママ層向けの「言葉遊び的なギャグ」なのだが(笑)。



 そして本話は「再生怪人軍団編」でもあった!


 70年代前半までの東映特撮には、クール(3ヵ月)の変わり目になると「再生怪人軍団編」が配されて、スペシャル感を出してきた。しかし、70年代後半~80年代にかけてはナゼかほぼ消滅してしまっていた。
 けれど、90年代中盤の我らが「スーパー戦隊シリーズ」である『忍者戦隊カクレンジャー』や『超力戦隊オーレンジャー』や、同時期に開始された新旧2大戦隊が共闘する「スーパー戦隊VSシリーズ」において、本格的な復活を遂げたのだ!
 これも70年代の東映特撮を観て育った世代が、プロデューサー・脚本・監督・アクション監督にまわったゆえの復活だったと見るのだ!


 しかし70年代の「再生怪人軍団編」は、脚本だけの問題ではなく、尺の都合での撮影現場でのアクション演出にも問題があったのだろう。そのスペシャル感はともかくとしても、実際の映像では再生怪人が弱く見えてしまっていたのだ(汗)。いつもの必殺技ではなく、ただのパンチやチョップや背負い投げだけで爆発四散してしまったりもするのだ(笑)。
 筆者も幼児ながらに、少々の疑問や設定的な不整合を直感して少々残念に思ったものだった――それで、ヒーロー番組から卒業してしまうほどの幻滅ではなかったにしても(笑)――。


 そう感じていた子供たちはほぼ全員だったのだろう(爆)。長じてからは、この「再生怪人軍団は弱い!」というネタが、世代人の特撮マニア間での「お笑いの定番ネタ」ともなってきたほどだ。


 しかし、「再生」がなった「再生怪人軍団編」(笑)は、単なる「再生」でもなかった。70年代の「再生怪人軍団」とは異なり、そこまで弱い感じでは描かれてはないのだ! 本話もまた弱い再生怪人をやっつけた! といった感じではなく、ふつうの強さの再生怪人たちをやっつけた! といった感じで演出されることで、ショボい感じはしてこない。よって、「通常編」よりもスケールが大きいバトルになっている! といったワクワク感も増しているのだ!


 ところで、本話の次々回であるブレイブ38『らぶタッチ! うつくしすぎるゾーリま』では、「ビューティフルゾリー魔ー」(ビューティフルドリーマー・笑)なるゲスト怪人が登場している。
 そして、設定的にも戦闘員・ゾーリ魔の着ぐるみスーツの微改造で済まされている。これも一種の再生怪人なのである。これはこれで、劇中でも敵基地の機能低下で敵怪人がつくれなくなったためだとの言い訳がなされていた。そうやって「B級」であることを徹底して突き抜けてくれると、安っぽくて貧相なゲスト怪人でも許せてきてナットクができてしまうのだ(笑)。


 つまり、「B級作品」でもそのことに対する一応の「整合性」やメタ的なものも含めての「エクスキューズ(言い訳・笑)」さえあれば、視聴者や子供たちもナットクできたり半笑いしながら楽しめるのであった。まさに、そういった意味でも「スーパー戦隊」は、リアル志向的な意味とは真逆の意味で、子供も大人も楽しめる「完成形」の域にまですでに達しているのかもしれないのだ!?


ブレイブ37「リベンジ! ゆうれいデーボスぐん」 ~別の怪人のメンツでまたまた再生怪人軍団編!


キョウリュウレッド「牙の勇者! キョウリュウピンク! ……に見えるけど、キョウリュウレッド!」(爆)


 「スーパー戦隊」最大の「様式美」であるハズの「名乗り」を崩してしまうことは今となっては珍しくもないのだが、本話でもそういったネタにチャレンジしている(笑)。


 本話も再生怪人軍団編である。第14話に登場した黒板怪人キビシーデスと、第32話に登場したスポ根怪人スポコーン(笑)が復活して、厳しい教育とシゴきを受けた悪夢怪人アックムーン(=悪夢ーン(笑)。第25話に登場した怪人の再生)。しかも、「大地の闇」=「地獄」から這い出てきたとの設定があるので一応、ご都合主義ではないのだし(笑)、本作のメインストリームとの接点も持たせることができているのだ!


 アックムーンは秘密兵器・お先マックラー(枕=まくら・笑)で、キョウリュウジャーたちの肉体&精神を入れ替えて、各自の能力を存分に発揮できなくする作戦に出てきたのだ!


 しかも、前話でカッコよく登場したばかりのキョウリュウシルバーまでもが、こともあろうにあのキビシーデスと精神が入れ替わってしまった!(笑)


 近年の「平成仮面ライダー」作品にしてもそうだが、スーツアクターも華麗なアクションをカッコよくキメるだけではなく、ボケた演技まで披露しなければならない機会が増えている。
 しかし、こういった役どころこそスーツアクターは遊べるものだろう。その後の「演技の引き出し」も広がるだろうから、ヤリがいもあるだろうし、なによりも演じていて楽しいのではなかろうか? マニア的には撮影現場でのスタッフたちの笑顔や談笑光景まで目に浮かんでくるほどだ。
 ふだんの戦隊ヒーロー&ヒロインとは異なるポーズや殺陣(たて)を習得しなければならなかったために、その部分では大変だっただろうが。


キビシーデス「このバカちんが!!」


 キビシーデス・スポコーン・アックムーンは、今回の再登場においてもそのキャラが立ちまくりである!(笑) こうしたギャグ系怪人こそ、「スーパー戦隊」のサブではなくまさにメインストリームそのものなのだと、あらためて実感させられるものがあった。


 初登場のブレイブ14『あぶなァーい! スピリットベース』では巨大化する機会がなかったキビシーデスは、


「かなわなかった、あこがれの巨大化!」(笑)


などとメタ的な発言をして、喜んだのも束(つか)の間、ギガントキョウリュウジンの必殺光線「オールギガントエクスプロージョン!」を浴びたあと、スポコーンとアックムーンともども、黒板怪人・スポ根怪人は礼儀にウルさく、アックムーンも彼らのスパルタ教育のたまものなのだろう。


「一同、礼!!」


と律儀にお辞儀をしてから絶命(笑)。20世紀のむかしであれば、リアル志向がまだ強かった特撮マニア諸氏のクレームが殺到しただろうが、そんな批判はもう表立っては聞こえてこない。「スーパー戦隊シリーズ」こそが特撮マニアの価値観をも変革してしまったのかもしれないのだ!? マニアの皆さんもテレビの前で爆笑して、こういった作劇や演出を愛(め)でていることだろう(笑)。


ブレイブ39「せいぞろい! 10だいキョウリュウパワー」 ~「5人そろって、ゴレンジャー!」ならぬ「10人そろって、キョウリュウジャー!」


 なんと! 夏休み映画『劇場版 獣電戦隊キョウリュウジャー ガブリンチョ OF(オブ) ミュージック』(13年・東映)の続編としても描かれていた!


 『劇場版』に登場した悪のキョウリュウジャーこと、デーボス軍の幹部でもある「獰猛(どうもう)の戦騎・D(ディー)」! そして、ダイゴの「友だち」でゲストヒロインでもあった実力歌唱派アイドル歌手といった設定だった天野美琴(あまの・みこと)が再登場するのだ!


 本話でも、「D」は実力派イケメン人気声優・宮野真守(みやの・まもる)が声を演じている。氏の演技もさることながら、デーボス軍から奪った怪人巨大化用の「復元水」をボトルでチビチビとあおっているさまが、さらにガラの悪さを強調した演出となっている。


 「D」もまた、再生怪人たちが甦(よみがえ)ってきた「大地の闇」なる死後の世界の地獄から復活してきた設定であることで、その復活にも単なるご都合主義ではない、SF的あるいは伝奇的な整合性を持たせている。このあたり、幼児はともかく児童やマニアたちであれば、作品世界への子供レベルでの知的関心・知的好奇心(笑)を喚起して没入させてもくれる嬉しい趣向なのだし、こういった要素もまた広義での「連続性」といったものなのだ!
 高度な「人間ドラマ」や「社会派ドラマ」ではなく、こういった「世界観設定」にまつわる博物学的な小ネタで子供やマニアたちの興味関心を惹起(じゃっき)していくことにも、日本特撮が延命していくための未来があるだろう!


 もちろん、数十万円はかかるだろう、敵のゲスト怪人の着ぐるみを新造しなくても済むというメリットもあるのだろう。


 しかし、視聴率が1パーセントでも100万人に相当するとされるテレビを観ている視聴者の数と、『劇場版』を鑑賞している数十万人程度の観客数では、まさにその規模は桁違いである。視聴者のうちの10人中に1人くらいしか『劇場版』を観ていなかったことだろう(汗)。


 けれど、大方の幼児でもオープニング主題歌の映像にカブせていた宣伝などで、『劇場版』が公開されていたことは理解しているだろうし、その回想シーンさえ流しておけば、幼児でも理解ができる程度のことではある。疎外感などはいだかないであろう。
 むしろ、発表媒体が異なる「飛び地」のかたちであっても、こういった「連続性」こそが子供たちの興味関心をも喚起するのではなかろうか!?


 この美琴は「D」に操られて黒いドレス姿に変身して、『劇場版』でも披露していた「祈り歌」のダークアレンジを魔笛(まてき)で奏(かな)でて、キョウリュウジャーを苦しめる!


 そればかりか、キョウリュウレッドを相手に生身で剣術のアクションまでをも披露する! もちろん、アクション監督出身で、『劇場版』も担当した本作『キョウリュウジャー』のメイン監督でもある坂本浩一が本話も担当しているからだ!


 本話でも、変身後ではなく変身前の役者たちが大量の敵を相手にアクションを披露する場面が存分に描かれている!


 キョウリュウグレー=鉄砕(てっさい)のカンフーアクション! 飛び回し蹴り! そして、「ワチャァ!!」(笑)なる怪鳥音の叫びも相変わらず快調だ!


 前話である第38話では、鉄砕の子孫が登場! 敵幹部・ラッキューロも夢中になっている劇中内での少女漫画誌『少女こずみっく』に連載中の『らぶタッチ(らぶ be ぼーる タッチダウン!)』の原作漫画家であることが判明して、鉄砕を演じる出合正幸一人二役で怪演していた。それも実に面白かったのだが――ややマニア向けの面白さなのかもしれないが(汗)――、やっぱり鉄砕はこうでなくっちゃ!


 本話では、ヒロインたちも大活躍を見せている! ダイゴと美琴の関係を知らない2代目キョウリュウバイオレット=弥生(やよい)は、おもわず美琴に嫉妬(しっと)してしまう。そして、帰国した美琴をなんと弥生が空港で狙撃するのだ!


 もちろん、美琴が「D」に操られていることを見破ったからであり、定番のショッキング演出ではある。だが、その直前のキョウリュウピンク=アミィとのシーンで、


弥生「ミーコ(美琴)は、私たちの敵ってことですよね?」(笑)


などと発言させていたことで、このフェイク演出にも説得力を持たせていたのだ。ここの点描に対して「世界の平和よりも私情で動いているやんけ!」というツッコミも正論ではある。しかし、そういった「小さな愚かさ」(笑)であれば、人間全般の古今東西「あるある」で普遍的な心情でもある。その程度であれば、やさしく「ギャグ」としても許容・包摂してあげる、ユルくて寛容な作風の世界観が「スーパー戦隊」ではすでに達成されているのだ! けれど……


獰猛の戦騎・D「最終楽章・デーボスフィニッシュ!」


 『劇場版』では「魔楽章・デーボスフィニッシュ!」なる名称だったが、「最終楽章」にパワーアップをとげて、魔笛でもある剣を振り下ろして放った必殺エネルギー光弾から、アミィはダイゴをかばって重傷を負ってしまう!


 ブレイブ22『ま・さ・か! デーボスふっかつ』で、弥生がダイゴに夢中であることを知ったのを機に、自分のダイゴに対する想いがどういったものであったのか、問い直すこととなったアミィ。これこそがその「伏線」の解答でもあったのだ!


弥生「アミィさん、あたしもミーコさんの力を信じます!」


 ダイゴの美琴に対する恋情とは異なる真摯(しんし)な想いを、弥生がようやく理解したそのとき、ふたりのメロディが共鳴する!


 これがまた、本話のクライマックスバトルの「伏線」と成り得ているのである!


 そして当然ながら、本話もアクション編・イベント編でもあるので、『劇場版』並みに派手にブチあがるガソリンのナパーム火炎爆発を背景に、ダイゴもゾーリ魔もキョウリュウシルバーも「D」も吹っ飛びまくる!(笑)


 襲いかかるゾーリ魔の大軍団に苦戦しながらも、美琴を闇の世界から取り戻そうとするキョウリュウジャーたち!


獰猛の戦騎・D「バァカが! そんな『奇跡』みたいなことができると、なぜ信じきっているんだ、貴様ら!」
ダイゴ「地獄で忘れちまったみたいだから、もう一度教えてやるよ。それはなぁ、オレたちが『戦隊』だからだ!!」


 合理的な理由・説明にはなっていない(笑)。しかし、このひとことだけでおもわず納得させてしまうだけの、ダイゴを演じる竜星涼(りゅうせい・りょう)の安定した演技は絶品である! 従来のシリーズ以上に絶叫セリフが多いハズなのに、「絶叫調」の気張った演技にはならない、余裕しゃくしゃく感があるのだ!


 そしてヒーローたちのピンチに、アミィ&弥生のダブル・ヒロインが華麗に助っ人(すけっと)参戦!


弥生「10人のキョウリュウジャーが結集し、全員のメロディーをつなげれば、強力な音階になります。その共鳴なら『D』の闇を粉砕できるハズです!」
獰猛の戦騎・D「残念だったな! すでに1000人の大軍を送って、トリンたち3人は抹殺してある! 10人揃いなど、かなわぬ夢だ! アッハハハハ……」


トリン「ハハハハハ。私たち相手に1000人では、いささか少なかったのではないかな?」


 そこに颯爽(さっそう)と姿を見せる、トリン・ラミレス・鉄砕!


 しかし、いくら雑魚(ザコ)の戦闘員相手だとはいえ、1000人ものゾーリ魔の大群を、たった3人で片づけてしまうとは! あまりにデタラメがすぎるが(爆)、同時にやはりカッコいいのだ!



 10人ものキョウリュウジャーが横一列に並び、手をつなぐことで強力な音階が発生! ここですかさず本作の「主題歌」が流れるのもまた、少なくとも音楽演出に関しては先祖返りで王道志向の坂本監督作品ならではの定番である!


 「D」は勢いよく吹っ飛ばされる! そして、黒いドレス姿から元の姿へと戻った美琴!


獰猛の戦騎・D「許さぁ~~ん!」


 このセリフとともに、崖の上にゾーリ魔の大軍団が勢ぞろいするさまを、アオリで捉えたカットが圧巻!


ダイゴ「だろうな。こっちもだ! 行くぜ、みんな!」


「ブレイブ・イン!」
ガブリンチョ! ガブティラ」
「パラサガン」「ステゴッチ」
「ザクトル」「ドリケラ」(多すぎるので、以下略・笑)


「キョウリュウ・チェンジ!!」
「スピリットレンジャー!!」
「ファイヤー!!!」


 総勢10人ものサンバのダンスが華々しく繰り出され、画面を10分割にして、全員の変身バンク映像が同時に流される!


獰猛の戦騎・D「なんだと!」


レッド「聞いて驚け!!」


「牙の勇者! キョウリュウレッド!」
「弾丸の勇者! キョウリュウブラック!」
「鎧(よろい)の勇者! キョウリュウブルー!」
「斬撃(ざんげき)の勇者! キョウリュウグリーン!」
「角(つの)の勇者! キョウリュウピンク!」
「雷鳴の勇者! キョウリュウゴールド!」
「鋼(はがね)の勇者! キョウリュウシアン!」
「激突の勇者! キョウリュウグレー!」
「海の勇者! キョウリュウバイオレット!」
「閃光の勇者! キョウリュウシルバー!」


 10人ものキョウリュウジャーが次々に名乗りを上げていく! このとき、この瞬間の映像を視聴者の全員も待ち望んでいたことだろう! お約束でもスペシャル感があって実にカッコいいのだ!


10人のキョウリュウジャー「史上最強のブレイブ(勇気・勇者)!! 10人そろって!! 獣電戦隊キョウリュウジャー!!!」


 「5人そろって! ゴレンジャー!!」は元祖『秘密戦隊ゴレンジャー』の名乗りだったが、そこへのメタ的なオマージュも兼ねて「10人そろって!」なる語句までも!


 背景に派手にブチあがる様式美的な火炎大爆発!!


 今さらだが、リアルに考えるとこの背後の火炎大爆発も不自然だとはいえるのだ(笑)。しかし、様式美なのである。ちなみに、名乗り直後の火炎大爆発自体は、初期スーパー戦隊にはまだなかったものだ。スーパー戦隊シリーズ第6作『大戦隊ゴーグルファイブ』(82年)のシリーズ後半で導入されて、『科学戦隊ダイナマン』(83年)から定番化したものなのだ。


 そして、さすがに「空気」(=文脈)を読んで、本話に関してはこの10人名乗りの最中に敵が攻撃を仕掛けてくることはご都合主義にもなかったのであった(笑)。なにがなんでも常にいかなるときでも「パターン破り」で「様式美」を壊せば良いというものではない。時と場合によりけりだ。そこは作劇的にも取捨選択ができているのだ。



レッド「ウオ~~~ッ!! 荒れるぜ~~~ッ!!!」
10人のキョウリュウジャー「とめてみな!!!」


 なんと全員で定番の右手を前に突き出してみせる「とめてみな!」のポーズをそろえる! これを合図に、決戦の火蓋(ひぶた)が切って落とされた!


●レッドのガブティラキック!
●ブラックの獣電ブレイブフィニッシュ!
●ブルーのジャンピング体当たり!
●グリーンの斬撃無双剣(ざんげき・むそうけん)!
●ピンクのジャンピングキック!
●ゴールドの長剣・ザンダーサンダー!
●シアンがその怪力で大地をたたきつけるや、爆発が巻き起こってゾーリ魔が吹っ飛ぶ!
●グレーは宙を舞って、ゾーリ魔に頭突きを喰らわす!
●バイオレットはゾーリ魔にまたがり、回転して周囲のゾーリ魔を銃撃する!
●シルバーは剣術で、ゾーリ魔をバッサバッサと斬り捨てる!


獰猛の戦騎・D「美琴、もう一度オレの手に!」



 美琴に迫ってくるDを追い払ったレッドは、『劇場版』のラストで「お守り」として手渡していた獣電竜0号・トバスピノの「獣電池」を、美琴から託(たく)された!



 ブルーから投げ渡された番号「1番」ならぬ「1+(プラス)」の番号が付いた「カーニバル獣電池」を合わせることで、レッドは胸や肩にアーマーを付けて、サンバを踊るブラジルのお祭り・カーニバルでのコスプレのように、実に派手になった強化形態「キョウリュウレッド・カーニバル」(笑)へとタイプチェンジ!


 「D」が剣から繰り出したデーボスフィニッシュを、レッドはトバスピノのブーメランでハネ返す!


レッド「ビクトリー獣電池!」
ゴールド「マキシマム獣電池!」


 獣電竜ガブティラが人間の手乗りサイズと縮小化したミニティラが、口部を銃口に見立てた拳銃形態へと変型している! そこに「数字」ではなく「アルファベット」の「V」と「X」が付与されたビクトリーとマキシマムの獣電池を直列させてセット!


 そして、10人のキョウリュウジャーから放たれた「ビクトリーマキシマムフィニッシュ!」で、大爆発をとげる「D」!! 10人のキョウリュウジャーの背景に、派手に打ち上げられる炎!!



 2013年度に出版された書籍の中でも、特撮マニアの注目を多少は集めた講談社現代新書ウルトラマンが泣いている~円谷プロの失敗~』(13年6月20日発行)において、著者の円谷英明(つぶらや・ひであき)氏は、ウルトラマンの派生キャラをむやみに増やしたことが、「最大の失敗」であったように語っている。


 つまり、ウルトラ兄弟やウルトラファミリーといったキャラクターを増やして擬人化していったことが「失敗」だったのだ! という、70年代末期~90年代にかけて特撮マニア間で隆盛を極めていた1970年代の昭和の第2期ウルトラシリーズ批判の論法の流用がここで語られていたのだ。


 もちろん、その世界観において初登場を果たした単独の孤高のヒーロー作品にも良さはあるだろう。


 しかし、スーパー戦隊のような集団ヒーローや、シリーズ途中で主役級の新ヒーローが追加されていくような作品、各作品で看板を張った主役級のヒーローが共闘を果たすようなお祭り作品にも良さはあるハズなのだ! いやむしろ、そちらの方向性にこそエンタメ活劇として、そして「日本特撮」の可能性や鉱脈もあるのではなかろうか!?


獰猛の戦騎・D「こうなったら、この世界もろとも吹っ飛んでやる!」


 頭から巨大化用の「復元水」を浴びて巨大化したものの、なぜかモガき苦しみだした「D」!


 そこに流れてきたのは、『劇場版』で世界を救うこととなった美琴の「祈り歌」であった! この歌が「D」の弱点なのだ!


 その歌をバックに、宙を回転して獣電竜トバスピノが登場した!


 このCGで描かれたトバスピノが、「D」に対して華麗にキックをかます描写がお見事!


レッド「この獣電池、一度使ったのに、なくならないぞ」
シルバー「おそらく、美琴のダイゴへの深い想いがこめられているからだ」
バイオレット「なんかソコ、すごく引っかりますけど……」


 この際のバイオレットのスネたようなスーツアクターの演技がまた絶妙で、思わず笑えてしまうのだ!(笑)


ピンク「その件はあとで! キング(=ダイゴ=レッド)、スピノダイオーよ!」


 獣電竜トバスピノ・アンキドン・ブンパッキーが3体合体することで、『劇場版』限定であったハズの戦隊巨大ロボ・スピノダイオーも再登場した!!


 右手のアンキドンハンマーで砕かれた大地が砂塵(さじん)となって「D」を襲ったり、スピノブーメランが宙を回転して「D」に命中するさまが、実にカッコいい!


 しかも、この一連の描写が、美琴の「祈り歌」をバックにして描かれるのだ!


獰猛の戦騎・D「最後の最後まで、この歌に苦しめられるとは!」


 スピノダイオーは全身をコマのように高速回転させて、右腕のアンキドンハンマーと左腕のブンパッキーボールを敵にぶち当てつづける「スピノダイオー・ブレイブフィニッシュ!」を放った! 「D」も遂に滅び去る!!


 本話もまたきちんと『劇場版』を踏襲しており、「祈りの歌」の援護もあって世界を救えたのだとしたことで、テーマ的な整合性も持たせているのだ。


 「ミュージカル」をコンセプトにした『劇場版』。そのエッセンスを凝縮した「続編」でもあった本話。しかし、『劇場版』を未見の視聴者には理解ができないような閉じた作劇にもなっていない。少々の恋情も交えた王道の一大イベント編として描かれている。


 しかし、恋情だけでも女々しくて、男児にとっては気恥ずかしくなってしまうものだろうから、


弥生「美琴さんの戦力分析もできて、ダイゴさんとのデートも防げる。完璧です!」
ソウジ「策士(さくし)だよね」(笑)


などといったオチで、明るいラブコメ(ラブ・コメディー)として気持ちよく落とした第39話は、まさに第3クールを締めくくるにふさわしい娯楽巨編であった!


けつろん! スーパーせんたい、にほんトクサツはかくあるべきだ!


 来年2014年1月18日(土)に公開される映画『獣電戦隊キョウリュウジャーVS(たい)特命戦隊ゴーバスターズ 恐竜大決戦! ~さらば永遠の友よ~』(14年・東映)には、なんと前作『特命戦隊ゴーバスターズ』のみならず、往年の『恐竜戦隊ジュウレンジャー』(92年)と『爆竜戦隊アバレンジャー』(03年)の戦隊ヒーロー&ヒロイン、つまり歴代3大恐竜戦隊も大集結するとのことだそうだ!


 おそらく、『キョウリュウジャー』に続く来年度の新スーパー戦隊の顔見せもあるだろうから、もう10人どころの騒ぎではない! 約5人×5戦隊で、合計25人くらい登場するのだろう!(笑)


 やはり、メインのヒーローが3~5人もいて、そしてむやみに途中参加のヒーローも増やして、それらを共演させたり、時に新旧ヒーローも共演させてきたからこそ、「スーパー戦隊」の人気が持続しているのだとも思えるのだ!

2013.12.10.


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2014年号』(13年12月30日発行)所収『獣電戦隊キョウリュウジャー』後半評より抜粋)


[関連記事]

『獣電戦隊キョウリュウジャー』序盤~前半合評 ~三条陸×坂本浩一コンビだが、イイ意味でドラマ性が低い、明朗な狂躁作品!(笑)

katoku99.hatenablog.com


『機界戦隊ゼンカイジャー』論 ~『ゼンカイジャー』を通じて「スーパー戦隊」45年史の変転も透かし見る!

katoku99.hatenablog.com

『機界戦隊ゼンカイジャーTHE MOVIE 赤い戦い!オール戦隊大集会!!』 ~来たるTV新番組への誘導もバッチリなシリーズ45作記念の快作映画!

katoku99.hatenablog.com

『スーパー戦闘 純烈ジャー』 ~「ユルさ」&「王道」の接合にこそ、戦隊・日本特撮・娯楽活劇の存続がある!?

katoku99.hatenablog.com

非公認戦隊アキバレンジャー』『女子ーズ』『乾杯戦士アフターV(ファイブ)』『GAINAX Presents エアーズロック(感覚戦士ゴカンファイブ)』 ~戦隊パロディでも公私葛藤描写が光る!

katoku99.hatenablog.com

ゴーカイジャー ゴセイジャー スーパー戦隊199ヒーロー大決戦』賛否合評 ~傑作だけど細部に不満はあり!

katoku99.hatenablog.com

仮面ライダー×スーパー戦隊 スーパーヒーロー大戦』 ~快作!? 怪作!? 圧倒的物量作品を賛否合評!

katoku99.hatenablog.com

トクサツガガガ』(TVドラマ版)総括 ~隠れ特オタ女子の生態! 40年後の「怪獣倶楽部~空想特撮青春記~」か!?

  katoku99.hatenablog.com

『企画展 スーパー戦隊レジェンドヒストリー ~ゴレンジャーからリュウソウジャー、そして未来へ~』 ~神秘・恐怖から親近感・コミカルへ。日本特撮の画期にして文化・歴史となった「戦隊」!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200320/p1


[関連記事]

『魔進戦隊キラメイジャー』最終回・総括・後半評 ~「仲間」を賞揚しつつも「孤高」「変わらないこと」をも肯定!

katoku99.hatenablog.com

『魔進戦隊キラメイジャー』中盤総括 ~キラメイシルバー&ヨドンナ登場、オラディン王復活! 安定のクオリティー

katoku99.hatenablog.com

『魔進戦隊キラメイジャー』序盤総括 ~王道戦隊のようでも異端の文化系レッドが敵幹部とも因縁!

katoku99.hatenablog.com

『魔進戦隊キラメイジャー エピソードZERO』 ~劇場先行お披露目で戦隊の起死回生は成功するのか!?

katoku99.hatenablog.com

『魔進戦隊キラメイジャーVSリュウソウジャー』 ~2大戦隊共闘を劇的に盛り上げるための助走台ドラマとは!?

katoku99.hatenablog.com


[関連記事] ~2013年度TV特撮評

ウルトラマンギンガ』(13年)序盤評 ~低予算を逆手に取る良質ジュブナイルだが、それゆえの危惧もアリ!?

katoku99.hatenablog.com

仮面ライダー鎧武(ガイム)』(13年)前半総括 ~上級敵怪人は古典SFな高次存在オーバーロード!? 公私の優劣も是々非々で再検討!

katoku99.hatenablog.com


[関連記事]

バトルフィーバーJ』(79年)合評 ~自然な渋さ&軽妙さの両立!

d.hatena.ne.jp

電子戦隊デンジマン』(80年)合評 ~美vs醜・敵組織内紛劇・俳優&演出の魅力!

d.hatena.ne.jp

太陽戦隊サンバルカン』(81年)賛否合評 ~初期戦隊・最高傑作か!?

d.hatena.ne.jp

超獣戦隊ライブマン』(88年)総論 ~テーマ志向の傑作戦隊!

d.hatena.ne.jp

鳥人戦隊ジェットマン』(91年)総論 ~井上敏樹・初メイン脚本 ブラックコンドル結城凱!

d.hatena.ne.jp

恐竜戦隊ジュウレンジャー』(92年)総論 ~子供番組への回帰

d.hatena.ne.jp

五星戦隊ダイレンジャー』(93年) ~竹田道弘アクション監督・最高傑作!

d.hatena.ne.jp

忍者戦隊カクレンジャー』(94年)賛否合評 ~竹田道弘アクション監督・連投!

d.hatena.ne.jp

超力戦隊オーレンジャー』(95年) ~山岡淳二アクション監督・再登板!

d.hatena.ne.jp

激走戦隊カーレンジャー』(96年) ~戦隊コミカル革命の成否は!?

d.hatena.ne.jp

電磁戦隊メガレンジャー』(97年)賛否合評 ~正義感より好奇心の作劇的利点!

d.hatena.ne.jp

星獣戦隊ギンガマン』(98年)賛否合評 ~小林靖子・初メイン脚本!

d.hatena.ne.jp

救急戦隊ゴーゴーファイブ』(99年)前半賛否合評2 ~ゴーゴーV前半総括!

d.hatena.ne.jp

未来戦隊タイムレンジャー』(00年)賛否合評 ~小林靖子メイン脚本! 時間SF成功作!

d.hatena.ne.jp

百獣戦隊ガオレンジャー』(01年) ~後半合評・6人目ガオシルバー!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20011113/p1

忍風戦隊ハリケンジャー』(02年) ~前半賛否合評1・ゴウライジャー!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20021110/p1

特捜戦隊デカレンジャー』(04年)#37「ハードボイルド・ライセンス」

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20041112/p1

轟轟戦隊ボウケンジャー』(06年) ~後半合評・6人目ボウケンシルバー&大剣人ズバーン!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070108/p1

獣拳戦隊ゲキレンジャー』(07年)最終回 ~後半肯定評

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20080817/p1

炎神戦隊ゴーオンジャー』(08年) ~序盤&前半評

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20080824/p1

侍戦隊シンケンジャー』(09年) ~序盤賛否合評

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20090712/p1

海賊戦隊ゴーカイジャー』(11年)1話「宇宙海賊現る」

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20111107/p1

宇宙戦隊キュウレンジャー』(17年) ~総括・最後は全宇宙の不運な人々の盾になると誓ってみせた幸運戦隊!

d.hatena.ne.jp

『快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー』(18年)前半合評 ~パトレン1号・圭一郎ブレイク!

katoku99.hatenablog.com

『4週連続スペシャル スーパー戦隊最強バトル!!』(19年)評 ~『恐竜戦隊ジュウレンジャー』後日談を観たくなったけど、コレでイイのだろう!?

katoku99.hatenablog.com

『騎士竜戦隊リュウソウジャー』(19年)中盤評 ~私的にはスッキリしない理由を腑分けして解析。後半戦に期待!

katoku99.hatenablog.com

『魔進戦隊キラメイジャー』(20年)最終回・総括・後半評 ~「仲間」を賞揚しつつも「孤高」「変わらないこと」をも肯定!

katoku99.hatenablog.com

『機界戦隊ゼンカイジャー』論 ~『ゼンカイジャー』を通じて「スーパー戦隊」45年史の変転も透かし見る!

katoku99.hatenablog.com


[関連記事] ~スーパー戦隊シリーズ劇場版!

忍風戦隊ハリケンジャー シュシュッとTHE MOVIE』 ~快作!絶賛合評!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20021112/p1

『劇場版 爆竜戦隊アバレンジャーDELUXE アバレサマーはキンキン中!』 ~賛否合評

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20031112/p1

特捜戦隊デカレンジャーTHE MOVIE フルブラスト・アクション』 ~賛否合評

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20041106/p1

轟轟戦隊ボウケンジャーTHE MOVIE 最強のプレシャス』 ~賛否合評

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060814/p1

『電影版 獣拳戦隊ゲキレンジャー ネイネイ!ホウホウ!香港大決戦』

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20080803/p1

侍戦隊シンケンジャー銀幕版 天下分け目の戦』 ~初3D賛否合評 20分の尺でドラマは可能か?

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100810/p1

ゴーカイジャー ゴセイジャー スーパー戦隊199ヒーロー大決戦』賛否合評 ~傑作だけど細部に不満はあり!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20201108/p1

仮面ライダー×スーパー戦隊 スーパーヒーロー大戦』 ~快作!? 怪作!? 圧倒的物量作品を賛否合評!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20201115/p1

『騎士竜戦隊リュウソウジャーTHE MOVIE タイムスリップ!恐竜パニック!!』 ~因縁&発端の恐竜絶滅寸前の時代に時間跳躍!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190818/p1

『劇場版 騎士竜戦隊リュウソウジャーVSルパンレンジャーVSパトレンジャー』合評 ~水準作だが後見人&巨大戦カットをドー見る!?

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200321/p1

『魔進戦隊キラメイジャー エピソードZERO』 ~劇場先行お披露目で戦隊の起死回生は成功するのか!?

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200322/p1

『魔進戦隊キラメイジャーVSリュウソウジャー』 ~2大戦隊共闘を劇的に盛り上げるための助走台ドラマとは!?

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20220507/p1

『魔進戦隊キラメイジャーTHE MOVIE ビー・バップ・ドリーム』&『騎士竜戦隊リュウソウジャー特別編 メモリー・オブ・ソウルメイツ』 ~TV本編ともリンクさせた劇場版の作り方とは!?

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20220516/p1

『機界戦隊ゼンカイジャーTHE MOVIE 赤い戦い!オール戦隊大集会!!』 ~来たるTV新番組への誘導もバッチリなシリーズ45作記念の快作映画!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20220522/p1


洋画『パワーレンジャー』(17年) ~戦隊5人に「スクールカースト」を色濃く反映! 「自閉症スペクトラム」青年も戦隊メンバー!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20170715/p1

パワーレンジャーFOREVER RED』(02年) ~坂本浩一監督作品・戦隊を逆照射!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20080518/p1

獣電戦隊キョウリュウジャー序盤~前半合評 ~三条陸×坂本浩一コンビだが、イイ意味でドラマ性が低い、明朗な狂躁作品!(笑)

『獣電戦隊キョウリュウジャー』中盤~後半評 ~8・9・10人目の戦士! イベント編の質の高さ! 熱血活劇度も上昇! ついに10人戦隊が実現!
『機界戦隊ゼンカイジャー』論 ~『ゼンカイジャー』を通じて「スーパー戦隊」45年史の変転も透かし見る!
拙ブログ・トップページ(最新10記事)
拙ブログ・全記事見出し一覧


スーパー戦隊シリーズ評 ~全記事見出し一覧


 放映中のスーパー戦隊シリーズ最新作『王様戦隊キングオージャー』(23年)に、2週にわたって『獣電戦隊キョウリュウジャー』(13年)がゲスト出演記念! とカコつけて……。『獣電戦隊キョウリュウジャー』(13年)序盤合評をアップ!


『獣電戦隊キョウリュウジャー』序盤~前半合評 ~三条陸×坂本浩一コンビだが、イイ意味でドラマ性が低い、明朗な狂躁作品!(笑)



『獣電戦隊キョウリュウジャー』プレミア発表会&プレミアロケ遭遇!

(文・犬塚哲也)


 2013年1月27日(日)、今年も東京ドームシティ・プリズムホールで、新戦隊の「プレミア発表会」が行われた。


 『爆竜戦隊アバレンジャー』(2003)で始まった「プレミア発表会」も今回、『獣電戦隊キョウリュウジャー』で10回目。筆者は10年連続で新戦隊のキャストを生で見る機会に立ち会うことができた。


――東京ドームシティ横の「後楽園ゆうえんち」でのジェットコースターの事故で、発表会が中止になった『海賊戦隊ゴーカイジャー』お披露目の2011年は、中止になる直前の回のチケットを買っていたという偶然が、この結果を生んでいる(汗)――



 発表会はいつも通りの展開。


 司会のお姉さんの挨拶中に敵が乱入。


 そこへ「待て!」と『獣電戦隊キョウリュウジャー』(2013)主演の5人が現れて敵の戦闘員を蹴散らし、変身ポーズ! 今年はなぜかサンバのリズム(笑)に乗って変身する5人に会場が沸いた。


 変身した5人が怪人を倒すと、再び元の姿へと戻って、ひとりずつ自己紹介。


 先輩戦隊の『特命戦隊ゴーバスターズ』(2012)のキャストも加わると、キョウリュウレッドこと桐生ダイゴからレッドバスターこと桜田ヒロムへ花束が渡され、ゴーバスターズは退場。


 代わって、主題歌を唄うボーカリストが登場。サビの部分の振り付けを何回か会場の子供たちと練習して主題歌の披露――といっても、2日目の最後の回は8割方が大きなお友達なのだが(笑)――。


 このイベントのために編集された1・2話の映像も映し出される。


 主題歌の披露が終わると、最後に5人のキャストが意気込みを語って終了となる。



 流れとしてはこんなところで特別、変わったところはなかった。しかし、近年の「ウルトラマン」や「仮面ライダー」でも辣腕をふるった「戦隊」の海外翻案版『パワーレンジャー』出身(1993〜)のあの坂本浩一監督が、ついに初めて第1話を撮る日本の「戦隊」ということもあってか、個人的には例年以上に楽しめた発表会だった。


 あとは2013年2月17日(日)朝の放送開始を待つのみだ。


 しかし、筆者はさらなる行動を起こすべく計画を立てていた。「聖地巡礼」と呼ばれるロケ地巡りをして、『獣電戦隊キョウリュウジャー』の撮影現場に遭遇してしまおうという計画だ!


 膨大な数のロケ地から選び出した候補の中には、茨城県や栃木県などの遠方ロケ地もあった。しかし、当日になって気分が変わって、自宅から自転車で行けるロケ地へ変更(笑)。


 埼玉県の荒川沿いにある「秋ヶ瀬公園」へ行くことにした。自宅から小一時間ほどで到着するも人影はなく、『星獣戦隊ギンガマン』(1998)の撮影を見て以来、何度来てもハズレっぱなしのこの公園で、またしても徒労に終わる結果となってしまった。


 と、いつもならこれで帰ってしまうところだ。しかし、珍しく温かい日だったことが筆者を近隣のロケ地へと足を向けさせることになる。


 そこは『ゴーバスターズ』第25話「アバターの謎を追え!」のラスト――ヒロムたちが夕陽の中、花火に興じるシーン――でも使われた「人工の湖」。せっかくだからここにも立ち寄って行くかと、湖の畔(ほとり)を自転車で走っているとなにやら大勢の人が……。


 その先にいるのは、キョウリュウジャーのリーダー・キョウリュウレッドではないか!?


 天にも昇る気持ちを抑え、オタクではなくたまたま居合わせた一般市民を装いながら(笑)、撮影現場を見学することにした。


●変身後のキョウリュウジャー5人!(スーツアクター押川善文・竹内康博・高田将司・浅井宏輔・野川瑞穂)
●着ぐるみキャラの賢神(けんじん)トリン!(スーツアクター:岡元次郎)
●そして、ゲストだろうか、古代ローマ兵士のような格好をした外国人顔の俳優が撮影していた。


――後日付記:6人目の水色の戦士・キョウリュウシアン=ラミレスの役者さんであった!――


 撮影が進むにつれ、この日はキョウリュウピンクとゲストが絡むカットが多いことに気付く。ピンクをセンターに置いて5人が揃うシーンもあったことから、この回の主人公はアミィ結月(あみぃ・ゆうづき)だと見て間違いないだろう。


 監督は竹本昇(たけもと・のぼる)。今年2013年は、1話から4話までを坂本浩一監督が撮っているとの情報があるので、時期的に5・6話あたりだろうか?――後日付記:まさにその5~6話であった――



 それにしてもなんたる幸運! 「プレミア発表会」で俳優5人を見て、その2日後にホンモノの変身後を拝めるとは!――発表会に登場する変身後のヒーローを演じているのはTVのスーツアクターではないらしいので――


 さながら、『獣電戦隊キョウリュウジャー』「プレミア発表会」IN埼玉である。


 放送開始まであと1週間、キョウリュウジャーの誕生が待ち遠しい。


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2013年冬号』(13年2月11日発行)~『仮面特攻隊2014年号』(13年12月30日発行)所収『獣電戦隊キョウリュウジャー』「プレミア発表会」評より抜粋)


『獣電戦隊キョウリュウジャー』序盤評

(文・T.SATO)
(2013年4月14日・脱稿))


「聞いて、驚け~~!!」


「じ~かい(次回)! ほくとのけん(北斗の拳)、2(ツ~~~)!!」(往年の大人気TVアニメ『北斗の拳2』(87年)各話ラストの次回予告編)……みたいな。って、若い読者の皆さまが生まれる前のネタでして、老害まるだしのネタですネ(汗)



 エッ!? ベテラン声優・千葉繁御大(ちば・しげる。おんたい)がナレーションを務めていたのかよ!!


 まぁ、15年ちょっと前の東映メタルヒーロー重甲ビーファイター』(95年)においても、氏は悪の組織のレギュラー幹部の声でレギュラー出演してはいた。よって、東映ヒーロー作品に縁がなかったワケでもナイのだけど。


 もちろん、さすがにご年齢のせいか、絶頂期と比すれば声がカスれて枯れているようにも思う。しかし、それは比較論であって、一般的にはこれでもまだオーバーヒートなハイテンション! まったくの無問題であって、ご登板には感謝してもしきれない(笑)。


 「スーパー戦隊」シリーズとしてはやや「リアル」で「シリアス」志向であった直前作『特命戦隊ゴーバスターズ』(12年)。同作が商業的には苦戦したからだろうか、それとも、仮に苦戦はしなかったとしても、そういった作品の次作については、なによりも「差別化」として、「王道」に復古した「明るく」「武闘派」的な「スーパー戦隊」作品が配されるであろうことは、スレた特撮マニア諸兄であれば、過去の前例からも目に見えていたことだろう。


●『鳥人戦隊ジェットマン』(91年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20110905/p1)のあとの『恐竜戦隊ジュウレンジャー』(92年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20120220/p1
●『未来戦隊タイムレンジャー』(00年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20001102/p1)のあとの『百獣戦隊ガオレンジャー』(01年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20011113/p1


 いずれも、前者のややリアル系で緻密な作りの「戦隊」作品は、当時の年長マニア諸氏からは実に人気を獲得していた。しかし、後者の非リアル系でラフな作りの「戦隊」は当時の年長マニアからは盛大なる酷評をこうむってきたのだ(汗)。


 けれど、強調しておくべきことは、いずれも後者の「戦隊」の方が子供人気は実に高くて、玩具の売上も非常に高かったことなのだ!


 しかし、作り手たちはそういった「中二病」的なマニア人種とは異なる方々だろう。もちろん、今ではマニア上がりが大勢を占めているのだとしても(笑)、そういった「中二病」的な心性は「いつか来た道」だとしても、とっくに通り過ぎている海千山千(うみせん・やません)の方々なのである。


 よって、本作『キョウリュウジャー』のような「勢い押し」の作品が登場してくることは既定路線だったともいえるかもしれない。その意味でも大カンゲイであるのだ。


 しかし……。実際に放映された本作は、純然たる「王道」とも云いがたかった(笑)。どころか、70年代の元祖「スーパー戦隊」の域ではないにしても、80~90年代あたりの「スーパー戦隊」に「先祖返り」しているような印象もある。


 「勢い」があるようでも「武闘派」といった感じでもない。「熱血」味もたしかにあるのだけど、そこまで暑苦しくはなくて、「マイルド」さの方が勝ってはいる。つまり、やや「ヌルめ」といった印象が個人的にはあるのだ。


 まぁ、「先祖返り」の「例」として、仮に挙げてみせた80年代の「スーパー戦隊」でも、


●80年代初頭における、「古き良き牧歌的」で「ほぼ1話完結ルーティン」な時代の「スーパー戦隊」こと、『電子戦隊デンジマン』(80年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20120205/p1)~『科学戦隊ダイナマン』(83年)の4作品
●80年代中盤における、「シリアスドラマ」かつ「大河ドラマ性」を導入した、『超電子バイオマン』(84年)~『超獣戦隊ライブマン』(88年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20110919/p1)の5作品
●80年代末期からの、そもそもの「5原色のヒーロー!」といった、「ポップでライトでコミカルなイイ意味での幼児性」を「再発見」して、それらを自覚的・再帰的に再構築して、再評価的にギャグ怪人も復権させた『高速戦隊ターボレンジャー』(89年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20191014/p1)~『地球戦隊ファイブマン』(90年)


 それぞれでまったくの別モノだとはいえるのだ。便宜的に漠然と「先祖帰り」と評したけど、正確に云えば本作『キョウリュウジャー』もまた、80~90年代の「スーパー戦隊」どころか00年代の「スーパー戦隊」のどれかに似ているといった感じでもない。


 しかしとにかく、ポップではある。それでいて、武闘派・ストロング・ガチンコ路線! といった感じでもない。


 本作『キョウリュウジャー』では、『仮面ライダーW(ダブル)』(09年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100809/p1)&『仮面ライダーフォーゼ』(11年)でも大活躍した脚本家・三条陸(さんじょう・りく)センセイ&坂本浩一カントクがメインスタッフを務めることになっている。
 しかし、だからといって、『仮面ライダーW』や『仮面ライダーフォーゼ』に似ているワケでもない。この2作品のように、「暑苦しいバトル性」と「暑苦しくても緻密な連続ドラマ性」を両立した作風になっていたワケでも(今のところは)ないのだ。


 そもそも、キョウリュウブラックとキョウリュウグリーンの兄ちゃんのふたりからして、クール&カッコいい系であって熱血系ではない(笑)。


 野生の「動物」や「恐竜」モチーフを活かした「キバ」や「ツメ」や素手での「接近戦」での戦いでもない。本作の玩具的な目玉となった「エネループ乾電池」こと「充電式乾電池」をモチーフとしたアイテムを、変身アイテムも兼ねている拳銃型アイテムの弾倉に装填しての、敵との「距離」も少々置いてみせた「ガン・アクション」が主体となっているのだ。


 よって、野性的なケダモノ・アクションではないことで、アクション面でもそんなに血液温度が高い印象ではなかったのであった。


 メインキャラクターのキョウリュウレッドの青年クンは、一応の熱血バカ寄りではある。けれど、自分のことでせいいっぱいでアップアップで空回りしているような未熟な発展途上の青年キャラといった風でもない。
 すでに人格的には若者の彼なりにほとんど完成されている! 周囲からも「キング」(=王さま)などと呼ばれているオレさまキャラである(笑)。


 熱くてバカで陽気な男であることは間違いがない。しかし、ムダに熱いワケでもカラ元気なワケでもない。見た目は若造だけれど成熟はしている。危機に際してパニくらずに(パニックにならずに)「器の大きい」「包容力もある」、まさに「大物」のオトコといった印象なのだ。


 30年前の80年代初頭までの戦隊レッドは、すでに老成(笑)している、落ち着いたシブい若者としての頼りがいもある「隊長」としてのレッドであった。


 しかし、本作のキョウリュウレッドはその域にまではさすがに達してはいない。「老成」と「未熟」との中間に位置しているといった印象なのだ。このあたりのサジ加減でのレッドは、今までの「スーパー戦隊」にはいそうでいなかったパターンではなかろうか? どころか、80年代中盤以降の歴代戦隊レッドと比しても、非常に珍しいタイプなのだ。


 キョウリュウレッド役の役者さんの男のコは……。エッ? 今年20歳!? それであの得体の知れない、根拠も定かではない自信&大物感!? 「演技」であるのか? 「地(じ)」であるのか? キャスティング的にはピッタリではある!(笑)


――まぁ、平成仮面ライダーまで比較例に挙げてしまえば、『仮面ライダーカブト』(06年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070211/p1)・『仮面ライダーディケイド』(09年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20090308/p1)・『仮面ライダーウィザード』(12年)も、下品にならない範疇での品もあるオレさま主人公ではあったので(笑)、それらの応用といった意図もあったのかもしれない。もちろん、結果的にキョウリュウレッドの青年クンは、平成ライダーたちともまったく別モノのキャラクターにはなっているけど――


 エッ? キョウリュウブルーの変身前の方は30歳超えの設定なの!? 6人目以上の追加戦隊ヒーローや番外追加ヒーローであればともかく、メインの5人の中に入っているレギュラーの戦隊ヒーローなのに、30歳オーバーがアリ!?


 ……などと云いつつ、30歳の主人公であった『仮面ライダー響鬼(ヒビキ)』(05年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070106/p1)などの前例もすでにあったので、このジャンルを観続けている腐れオタク的にはこのあたりはもうバリエーションの範疇としてアリそうではあったので、そんなに驚いてはいませんけど、ライト層的にはコチラも驚きではなかろうか?


 エッ? 女子大生のキョウリュウピンク役のコの実年齢が、まだ高校1年の15歳!? コッチの方が、作品の外側の情報だけども驚いた!(笑)
 彼女は長身なので、女子大生の役柄では違和感はない。快活そうでもユルくて幼い感じもあるので、このテの明朗さをねらうべき子供向けヒーロー番組としてもピッタリのキャスティングに思う。



 そんなワケで、個人的には悪い意味ではなく「ユル~い」「突出した印象もない」というのが、本作の初期編での印象であったのだけど。



 「イベント編」には見えない一応の「通常編」(?)であったのに、そしてまだ第6話でしかないというのに、6人目の戦士ことキョウリュウシアンがシレッとさほどに盛り上がりもなく登場!!(笑)


――「シアン」ってムズカしい色の名前は、この体色の「空色」のことを指す言葉であったのか~。ってソコではなく(汗)――


 明らかに6人目の戦士としての強烈プッシュではないけれども、ナンとビックリ! 既存のキョウリュウジャー5人のうちの誰かのスーツの色替え改造などではなく、デザインも異なるキチンとした高額の新造スーツであるようだ!
 これってドーいうこと!? 序盤から登場しているということは、キョウリュウジャーの5人とほぼ同時期にいっしょにデザイン・造形もされたのだろうけど……。


 しかも、キョウリュウブルーの30歳オーバーどころか、40歳~50歳の真正のオジサン! 加えて、変身前だと腹が出ている太ったヒゲ面のオジサン外国人!――もちろん、カッコいい戦隊ヒーローに変身するとお腹はヘコみます(笑)――
 インチキ英語(笑)もしゃべっている! そして、500年も前の先代キョウリュウジャーだったともいうのだ!



 さらには、雑誌解禁されてネット上にも違法アップロードされている(汗)、児童誌だか玩具業界向けペーパーだかの写メ(写真メール)によるネタバレ画像情報などによると、黄金色の7人目の戦士・キョウリュウゴールドも近々に登場する模様だ!


 その正体は400年も前の日本人のサムライ! 情報によると語尾は「~でござる」としゃべるようだ。これもまたマンガ・アニメ的で記号的でベタベタな設定(笑)。『忍者ハットリくん』(64年)かよ!? 今どきの子供向け番組としては、この方がイイと思うし、適正な進化形態だとも思うので、ホメてます!


――本邦のややリアル志向寄りとしてのスタートであった「日本特撮」では、こういった漫画チックな人物描写は70~80年代までは実はなかったパターンであった。漫画チックな描写は、実は90年代以降の「スーパー戦隊」、遅れて00年代後半以降の「ウルトラマン」や「仮面ライダー」からであったのだ――



 本作の劇中においては、「10大獣電竜」といったメカ恐竜がキーワードとなっている。そして、メインの5人のキョウリュウジャーに加えて、6人目のキョウリュウシアンが登場して、早々に7人目のキョウリュウゴールドまで登場することが確定してしまった。


 まだ、1年間のシリーズの四半分の一に過ぎない第1クールであるのに、すでに7人!


 ということは、このしつこく強調されている「10大獣電竜」に対応して、ついに今年はキョウリュウジャーが全員がそろうと「10人の戦隊ヒーロー」が登場する作品になってしまうのであろうか!? そのあたりにも、単純に「イベント性」といった次元でワクワクとさせられてしまうのだ。


 ……「スーパー戦隊」の元祖『秘密戦隊ゴレンジャー』(75年)の世代人であれば覚えているだろう。特に特撮マニアではなかったとしても、『恐竜戦隊ジュウレンジャー』(92年)というメインタイトルを新聞のTV欄でたまたま目撃してしまうと、「今年は戦隊ヒーローが『5人』ではなく『10人』も登場する作品なのであろうか!?」などと誤解して、一部の一般ピープルも「言の葉」に乗せていたものであったことを! それがついに現実となる日が来たのか!?


 もちろん、それが仮に実現したとしても、低予算番組ゆえにギャラの問題もあるだろう(汗)。だから、追加戦士はレギュラーではなくイレギュラーとして時折りに参戦するパターンになる可能性も高いけど(笑)。


 というワケで、「武闘派」ではなく「ややヌルめ」といった印象ではある。しかし、にぎやかで「イベント編」連発のシリーズにはなりそうで、楽しみになってきた。


(了)


VAMOLA(ヴァモラ)! 獣電戦隊!!

(文・J.SATAKE)


「恐竜、プラス人間。億千年の時を越え、
 地球を守るために今、
 最強のブレイブチームが誕生した!


 聞いて驚け!!
 獣電戦隊 キョウリュウジャー!!」

(オープニング・ナレーションより)


 放送が開始されたスーパー戦隊シリーズ第37弾『獣電戦隊キョウリュウジャー』(13)。


 30分ドラマでも1時間ドラマでもテレビドラマはむかしから通常、2話分を1班体制でまとめて撮影するものだ。特撮変身ヒーローものも例外ではない。
 しかし本作では、第1話~2話ではなく、第1~4話までを、メインライター・三条陸(さんじょう りく)氏、メイン監督・坂本浩一氏が担当している。


 メンバー5人が「戦隊」としてまとまるまでの序盤を、メイン脚本&メイン監督が一括して担当することで、撮影現場での監督&役者さんの意志疎通も深くなる。そのことで、完成フィルム上でもキャラクターがより活きてくることだろう――もちろん、撮影にフィルムは用いていないが(笑)――。


 『仮面ライダーフォーゼ』(11)の主人公・如月弦太郎(きさらぎ げんたろう)と仲間になっていく、高校の「仮面ライダー部」(笑)の面々のキャラを際立たせるためにも大変に有効であった、1~4話をメイン監督が担当する方法を、本作でも展開してくれているのだ。


 戦士として「どのように闘いに向き合うか?」といったことを、宇宙人の「ウルトラマン」や巻き込まれ型の「仮面ライダー」などよりもハッキリと描いていく、職業軍人的な色彩もある「スーパー戦隊」作品における主要登場人物たちは、伝統的にバトルの中でこそ彼らの個性とドラマを発露させやすいようだ。


 本作ではそういったことがマッチして、坂本氏お得意のスピーディなアクション&ドラマ演出にはグイグイと引き込まれる!


獣電戦隊キョウリュウジャーの5人!


「アダ名はキングだ。遠慮しないで呼んでくれ!」


 「牙(きば)の勇者・キョウリュウレッド」=桐生ダイゴ(きりゅう だいご)。


 今も冒険を続けている父・ダンテツ――演じるはベテラン俳優・山下真司(やました しんじ)氏!――を追って、世界を巡ってきた男だ。


 その大きな器量から戦隊メンバーに「キング」と呼ばれ、獣電戦隊のリーダーとなる。全員に目を配りフォローしたり、良いところは素直に評価してくれる。
 単なる優等生タイプではない、かといってウラ表もない言動だが、演じる役者さんの小顔で子供っぽい童顔のせいか爽やか! 彼の経験から裏打ちされた行動だと思わせてくれるのでイヤミがないのだ。



「お金のトラブル、おっかねえ~~」(笑)


 「鎧(よろい)の勇者・キョウリュウブルー」=有働ノブハル(うどう のぶはる)。


 オヤジギャグ・ダジャレ好きで、職業は何でも屋。その職業も、夫に先立たれた妹・優子と姪・理香ちゃんのために、引き受けた仕事なのだ。
――妹・優子を演ずるのは『特捜戦隊デカレンジャー』(04・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20041112/p1)デカイエロー役で美人・可愛い系の木下あゆ美嬢! 坂本監督のお好みですネ――


 彼はひとりでの闘いで理香ちゃんを傷つけてしまい、戦士として自信を持てずにいた。しかし、キングに「家族こそが闘う力の源」だと気付かされる。


 オヤジギャグ=オッサン=のぶはるオジサン=「ノッさん」と転訛したアダ名がついて、それがドンドンみんなに浸透していき、気安くアダ名を呼ばれていることに落ち込む、威厳のない善人のオトナとしての姿も微笑ましい。しかし、作劇的にはこれも年長の彼が戦隊メンバーたちに対等な存在として愛されている証拠としての描写なのだ。



「SEE YOU!」


 「角(つの)の勇者・キョウリュウピンク」=アミィ結月(あみぃ ゆうづき)。


 表面は海外の両親と離れて暮らす、最初は一見おしとやかに見えていた長身のお嬢さま。だが、本当は体を鍛えてファミレスのバイトもがんばる行動派の女性! 長い脚を活かした足技が得意。リアクションでは英語がポンポンと飛び出てくる!


 それぞれの理由から変身前の正体を明かさない4人のメンバーたちの前で、高らかに自己紹介するキングの姿に触発される彼女。自分の気持ちを素直に表すことが今必要だと悟るのだった。



「強いヤツが望みか…… だったら、オレの剣を喰らえ!」


 「斬撃(ざんげき)の勇者・キョウリュウグリーン」=立風館ソウジ(りっぷうかん そうじ)。


 彼は「剣の道」を進む高校生だ。父・源流(げんりゅう)に「獣のような太刀(たち)だ」と指摘されて心乱される彼。


――この源流を演ずるのは、『大戦隊ゴーグルファイブ』(82)のゴーグルブラックや『科学戦隊ダイナマン』(83)のダイナブラック役・春田純一氏! 変身後のスーツアクターもこなした氏が、今回は剣技で往年と変わらぬキレのあるアクションを見せてくれていた!――


 あまりの求道心(ぐどうしん)に、別離した妻と息子にも恨まれて当然だと悔恨している源流に対して、ソウジもこの同じ「道」を極めたいはずだと返してみせるキング!


 ソウジは「戦隊」のためでなく、ただ「力」がほしくて勇者となったことを恥じて、使命を果たそうと剣を振るいだす!



「オレの恋の弾丸は、百発百中だ……」


 「弾丸(だんがん)の勇者・キョウリュウブラック」=イアン・ヨークランド。プレイボーイ(ナンパ師)を気取り、軽口でオドケている男。


 トレジャー(お宝)ハンターの親友・御船士郎(みふね しろう)と組んで遺物研究をしていたが、黒マントの怪人に襲われた士郎を、自慢の射撃の腕で救うことができなかったトラウマ・後悔を抱えていた。


 「仲間などいらない。復讐のために力を得た」と言うイアンに対して、キングが核心を突いてみせる!


「……仲間を失うのが怖いんだな。でも、その一発を当てるまで、後悔は消えないぜ!」


 その気持ちに応えるには……、捕らわれたキングを救命するために、銃型アイテム・ガブリボルバーの一発を決めてみせるイアン!



 メンバーを信じて、大胆に行動するリーダー・ダイゴ。それに呼応するように力を発揮していくノッさん・アミィ・ソウジ・イアン。
 「理想的なチームとはかくあるべし!」といった三条氏流の「戦隊イメージ」が強く感じられる活劇ドラマの流れが見ていて心地よい。


 ちなみに、キョウリュウジャーの司令官である着ぐるみキャラ・賢神(けんじん)トリンは、やはり恐竜時代に生息していた「始祖鳥」がデザイン・モチーフか? 敵の筆頭・神官カオスとも深い因縁があることを示唆して、彼についてもドラマ性を感じさせている――


キョウリュウジャーの敵! デーボス軍の幹部たち!


 「命あるものは根絶やしにする」。人間の感情である「喜」「怒」「哀」を集めて、身体を抱えるようなシルエットをしている妖しい大樹である「デーボス」を復活させることが、百面神官カオスが束ねる本作の敵組織であるデーボス軍の目的だ。


 この神官カオスがまた、「喜」「怒」「哀」3種のデスマスクが顔に据えられた不気味な出で立ち!


 ヨーロッパ・北極圏・日本・アメリカ・南海の孤島。世界中をデーボス軍の雑兵(戦闘員)・ゾーリ魔が蹂躙して行く!――もちろん、国内ロケと合成のたまものなのだが、こういった地球規模でのスケールを感じさせる「特撮合成カット」が重要なのだ!――



「腹立たしいこと、この上ない!」


 「怒りの戦騎・ドゴルド」。「獅子」と「雷神」をモチーフにし、常に怒りを吐き出している幹部だ。



「クゥ~、シミるなァ~~」


 「哀しみの戦騎・アイガロン」。「涙」をデザインした鎧(よろい)が目印だ。声の担当はベテラン・水島裕(みずしま ゆう)氏! 



「キープ・スマイリングよ!」


 「喜びの戦騎・キャンデリラ」。ハートマーク型の装飾で、悪の幹部とは思えないピンク・イエローの配色がまさに「異色」だ(笑)。



「最後のひと働き、してきな~~」


 「楽しみの密偵ラッキューロ」。前述したキャンデリラの配下で、怪人・デーボモンスターを巨大化させる力を持っている。



 作風や狙いが異なるので単純比較はできないものの、前作『特命戦隊ゴーバスターズ』(12)の敵幹部が顔出しの若手役者さんによるエンターとエスケイプのふたりだけだったことと比べて、この豪華さは何?!


 もちろん予算は全く同じではないだろうし、使い方の違いはあるのだろうが……。このくらいの敵幹部の頭数がいないと、子供番組的な「悪の軍団」としてのスケール感は保てないよな、と改めて感じた次第だ。


キョウリュウジャーのアクション! 巨大メカ!


「荒~れ~る~ぜぇ~~! とめてみな!!」


 キングことキョウリュウレッドによる、この定番の決め台詞でバトルはスタート!


 「スーパー戦隊」ならではのド派手なアクションシーンは本作でも健在だ!


 戦闘員のゾーリ魔たちがウネウネと組み合わさり、巨大なエイリアンとなって街を襲う!


 キョウリュウジャーを導く賢神トリンにまで「極めてブレイブだ!」と言わしめたキングについては「この闘いには巻き込みたくはないのだ」と1体だけで立ち向かってみせるティラノサウルス型の赤いメカ獣こと獣電竜・ガブティラ!


 そのスタイル自体は往年の『恐竜戦隊ジュウレンジャー』(92)に登場した戦隊レッドが搭乗したメカ獣であった、直立二足歩行型の守護獣ティラノサウルスに近い。
 しかし、オープンセットの自然光を浴びて、最新の恐竜研究の成果に基づき「前傾姿勢」で爆走する姿は、『未来戦隊タイムレンジャー』(00)で同作でのもうひとりの戦隊レッドであった追加戦士・タイムファイヤーが搭乗していた恐竜型生体メカ・ブイレックスを彷彿させるワイルドさだ!


 アバンタイトルのように「恐竜」と「人間」の力がひとつになることで敵を打ち破る! 両者の結びつきの強さをこの「ガブティラ」と「キング」が端的に見せつけたのが、第1話のアクションの見どころだ!


 巨大ゾーリ魔に喰らい付き、グリングリン! と回転しジャンプするガブティラ!


 その背中を走り抜けて、大ジャンプ! 短剣・ガブリカリバーで巨大ゾーリ魔を叩き斬るキョウリュウレッド!


キョウリュウジャーの変身の是非! 変身アイテム兼・武器! 巨大ロボのバリエーション!


「ブレイブ・イン!(獣電池を銃型変身アイテムに装填)」
「(銃型アイテムの音声ガイダンス) ガブリンチョ! ガブティラ!!」
「キョウリュウチェンジ! ファイヤー!!」


 放送前から注目されていた、サンバのリズムが流れてきての踊りながらのフザケた変身シーン!


 だが、独特のサンバホイッスルの音色と、軽快なステップを踏むキングのアクションがカッコよく決まっている。20世紀のむかしの特撮マニアであれば「リアルじゃない!」「子供向けだ!」などと批判が殺到したことだろう。しかし、「スーパー戦隊」シリーズとは子供番組なのである(笑)。幼児の目を引き付けて、彼らの全員といわず大勢もマネをしたくなるであろう、「変身」の新しい道を開くことができていると思える。


 加えて、「ウルトラマン」や「仮面ライダー」とは異なり集団ヒーローものでもあったせいか、「スーパー戦隊」では「変身アイテム」が相対的にはあまり際立ってはこないものだ。等身大怪人への必殺技用のバズーカ砲型の玩具などはともかく、剣や銃といった武器なども、子供たちにはさほどに魅力的ではなかったことだろう。


 しかし、本作では、


ガブリンチョ!!」


と「獣電池」なる各種のイラストが描かれた単3電池型アイテムをセットできるのでプレイバリューも高い。しかも「変身道具」でもあるのだ。
 もちろん、それは設定でしかない。玩具だけで実際に変身ができるワケではないことは、子供でも百も承知だろう。しかし、それでもこのアイテムは「変身」機能も有している! といった付加価値・万能感・オーラを、子供たちにも感じさせていることだろう。これは大きい!


 『仮面ライダー555(ファイズ)』(03年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20031108/p1)の3号ライダー・仮面ライダーデルタの変身アイテム、『仮面ライダーカブト』(06年)の仮面ライダードレイクの変身アイテム、『仮面ライダーディケイド』(09年)の2号ライダー・仮面ライダーディエンドの変身アイテムの売上が好調だったゆえの、スーパー戦隊への応用であることはわかる。しかし、それでもよいではないか!?


 拳銃・ガブリボルバーと短剣・ガブリカリバー。この2つが合体してのマシンガン・ショットガンモードなどのバリエーションも展開する。


 シリンダー部分をこすって右腕に個人武装を出現させる


「アームド・オン!」


 さらに、それらの個人武装を合体させて誕生する巨大な槍・ケントロスパイカー


 キョウリュジャーが搭乗するバイクは、双子の獣電竜・ディノスチェイスがカミツキ合体して誕生するディノチェイサー!


 様々な能力を持った「11」から「23」番の獣電竜は、ガーディアンズと呼ばれて、キョウリュウジャーをサポートする!


「おならがプウ~~と、オビラップー」


のように、真面目なだけでなくオチャラケた音声ガイダンスもあって、近年の「戦隊」らしい自由な発想も楽しい。


 各話のエンディング映像では、その回に活躍した獣電竜メインの映像も流してくれるので、そういった絵的な変化とまだ見ぬ彼らの力を想像させてもくれる。


 人型の巨大合体ロボット・キョウリュウジンの活躍にも注目! それぞれシッポに武器を備えている恐竜型メカの獣電竜。それらが人型キョウリュウジンの両腕のパーツに換装されてパワーアップしていくシステムなのだ。


 そのネーミングも稚気満々(ちきまんまん)なユーモアたっぷり!


 キョウリュウグリーンの獣電竜・ザクトルと、キョウリュウブラックの獣電竜・パラサガンとのカミツキ合体(実態は換装)で誕生する、「キョウリュウジン・ウエスタン! イーハー!!」


 キョウリュウブルーの獣電竜・ステゴッチに代わり、トンカチを備えた獣電竜・アンキドンとのカミツキ合体(換装)で、「キョウリュウジン・マッチョ! ムッキムキ!!」



 各「獣電池」を獣電竜・ガブティラの口に1度セットし、合体させると、それぞれのテーマが流れて名乗りを上げる!


 本作の音声ガイダンスは、ベテラン声優・千葉繁氏が担当!


 往年の大人気TVアニメ『うる星(せい)やつら』(81・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20230924/p1)のレギュラー高校生・メガネ役での狂気あふれる暴走演技、『北斗の拳』(84)次回予告ナレーションでのハイテンションぶりで伝説を創った氏が、今回も遊び心満載の声で叫んでいる! どうせやるなら、これくらい! という思い切りの良さが非常によい!


新戦士・キョウリュウシアン登場! 悪の獣電竜・プテラゴードン出現!


 「10大獣電竜」と呼ばれる特別な存在も、後見人のトリンから早々に明かされた――シルエットのみの獣電竜たちが期待を盛り上げる!――。これからもドラマと密接に連動させていくようだ。


 「10大獣電竜」の中の1体・アンキドンには、500年前にともに闘った仲間がいた。それが水色の戦士・キョウリュウシアン=ラミレス!


 肉体はすでに滅びても魂として残っており、闇に縛られたアンキドンを救うためにキングたちに協力を仰ぐ。


 このラミレスに同情したアミィの行動力が危機を突破し、完全復活をとげるキョウリュウシアンとアンキドン!


 そして、キョウリュウシアンは世界中に散らばる獣電竜を探すために旅立つ。



 一方、神官カオスは封印されていた獣電竜・プテラゴードンを奪い去って悪用を開始する!


――プテラゴードンはその名のとおりで、『恐竜戦隊ジュウレンジャー』と『爆竜戦隊アバレンジャー』(03)といった恐竜モチーフの「スーパー戦隊」でも採用された、世間的にも人気が高い「翼竜プテラノドン」がモチーフ!――


 そして、敵幹部・ドゴルドの雷の力を獣電池に込めて、我らが戦隊巨大ロボ・キョウリュウジンと対決!


 果たしてキングたちはプテラゴードンを取り戻せるのか?…… そして、プテラゴードンの相棒である新キョウリュウジャーは現れるのか?!



 明るい雰囲気でアクション&ドラマを見せつつ、ノッさんやソウジの家族ネタではホロリとさせる。もちろん、それだけでもクラくなってしまうので、オヤジギャグで明るく落としてみせている。キングの「ペンダント」とイアンの「秘石」の秘密も気にかかる……。


 スカッと楽しませつつ、細部では興味を引かせるウマい展開だと思う。このままさらに勢いをつけて、明るく楽しく物語をつむいでいってほしい!


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2013年春号』(13年4月14日発行)~『仮面特攻隊2014年号』(13年12月30日発行)所収『獣電戦隊キョウリュウジャー』序盤合評1~2より抜粋)


雷鳴の勇者! キョウリュウゴールド見参!

(文・久保達也)
(2013年6月吉日・脱稿)


 『仮面ライダーW(ダブル)』(09年)や『仮面ライダーフォーゼ』(11年)でタッグを組んだ、メインライターを三条陸(さんじょう・りく)とメイン監督を坂本浩一(さかもと・こういち)が担当している。


 そのワリにはイマイチ熱血度が低いなぁ、意外にホノボノとしたノリだよなぁ、それでも陰気なシリアス路線よりはマシではある程度かなぁ……と思っていた『獣電戦隊キョウリュウジャー』。


 だが、第10話こと「ブレイブ10」にて早くも6番目、もとい、7番目の新戦士・キョウリュウゴールドが新たに見参した!


――まるで1960年代の日本のドラマや映画に出てくる外人のような、デタラメな日本語(爆)をしゃべる太ったオッサン=キョウリュウシアンが、6番目の新戦士としてすでに登場済みなので、公式にはともかく登場順では7人目なのだ!――


 それまでのホンワカ・ユルユルとしたムードに喝(かつ)を入れて(?)、キョウリュウゴールドの初登場作品である前後編については、それまでの話数とは明らかに雰囲気が異なる、人間ドラマ主導ではなく戦闘的な攻防バトルストーリーとなっていた!


 そもそも、主要キャラクターが初登場するエピソードは、本来ならばメイン監督の坂本監督が撮るべきで、ベテランとはいえ渡辺勝也(わたなべ・かつや)監督が撮っていることについては長年の戦隊マニアとしてはどうよ? と思ったりもしている。しかし、やはり「時代劇」チックな演出ならば、氏に勝る監督はいないという采配かもしれない!?


 そのようなワケで、キョウリュウゴールドが初見参! した熱いブレイブ9~10。そして、前記の作風とは対極に位置するようなコミカルなノリとなったブレイブ11を振り返ってみよう。


ブレイブ9(前編)「メチャつよ! プテライデンオー」


 サブタイトルに「漢字」が使用されていないことが、完全に「幼児向け」であると割り切って製作されていることの象徴でもある。


 20世紀のむかしの特撮マニアは、世間からの蔑視に対抗してジャンル作品を「大人の鑑賞にも耐えうるものにしたい!」といった気張りや、上限が20~30代と若かったこともあってか、こういったノリやサブタイトルがおおいに忌避されたものだった。


 しかし、00年代中盤あたりからは、そういったリアクションは「中二病」的だとバカにする流儀の方が強くなっていく。よって、今ではこうした稚気満々(ちきまんまん)なサブタイトルの方がウケたりもするのだ。
 少なくとも、この「ひらがな」だけのサブタイトルにケチを付けている特撮マニアを今では観たことがない。ヘタにケチなど付けたら、かえって逆にネット上でリンチにあいそうだ(爆)


 ところで、年長マニアが勃興しだした70年代末期~90年代前半においては、第1期ウルトラシリーズのような短くて端的なサブタイトルこそが正義で、第2期ウルトラシリーズや80年代の「宇宙刑事」シリーズのような長ったらしいサブタイトルは幼稚で悪だとして劣位に置かれていた(笑)。


 しかし、今ではそのようなことを得意げに指摘するヤツこそが「中二病」である! エピソード個々の作劇術には言及できていない二流三流のマニアである! などと白眼視をされてしまう(笑)。サブタイトルの評価のされ方の変遷ひとつを取っても、特撮ジャンルにも歴史があるのだ。実に隔世の感がある。



 ブレイブ9では、冒頭でキョウリュウジャーの司令官でもある「鳥」を模した着ぐるみキャラ・賢神(けんじん)トリン(笑)の白いタテガミが、邪悪の波動を感じて大きく揺れることで、来たるべき大事件の予兆としている。


 太古の時代に「10大獣電竜の切りこみ隊長」(笑)だったという、恐竜時代の翼竜プテラノドンがモチーフである獣電竜・プテラゴードンが襲来! 空を舞って都市を破壊しだしたのだ!


 デーボス軍の戦闘員・ゾーリ魔も襲来して、街中で銃を乱射!


 その中で超・怒りまくっている、敵幹部「怒りの戦騎・ドゴルド」!


 本作の敵組織・デーボス軍の首領である百面神官カオスには、かろうじて悪のボスとしての威厳(いげん)や重厚(じゅうこう)さが感じられる。


 しかし、彼に仕(つか)えている幹部である


●哀しみの戦騎・アイガロン
●喜びの戦騎・キャンデリラ
●楽しみの密偵ラッキューロ


 誰が見ても100人が100人そう思うだろうが、彼らは「悪の幹部」というよりかは「ユルキャラ(ゆるいキャラクター)」にしか見えなかったりもする(笑)。意図的にもそのようにデザイン・造形されて、作風も幼児向け、いや今の物分かりがよい年長マニア向けとしても、コミカルに設定していることは重々承知している。


 しかし、「怒りの戦騎・ドゴルド」のような戦場に出張ってきてバトルも繰り広げるような武闘派幹部が、本作にはあとひとりくらいいてもよかったのではなかろうか?


 しかしながら、人間の感情である「喜」「怒」「哀」「楽」を見事なまでにモチーフにした敵幹部たちが毎回繰り広げている、まさにその人間の「喜」「怒」「哀」を集めるための作戦!――ちなみに、「楽」については集めていないようだ(笑)――


 「人間の絶望」が「ファントム」なる敵の怪人種族を生み出しているという設定であった『仮面ライダーウィザード』(12年)も同様だったが、視聴者の「情」の方に訴える、やや「間接」的な「悪」の描き方こそが、今の時代を考えれば「殺人」や「破壊」といった「直接」的な描写よりも、いっそう強烈に響くものがあるようにも個人的には思える。


 しかし、それもまた、やはり筆者が年長のマニアであるゆえの穿(うが)った考え方かもしれない。人生経験には乏しい幼児にはそのへんのメンタルなことがわかるとはとても思えない(笑)。よって、その意味で子供向けヒーロー番組としては、目で見て即座にわかる「物理的な破壊活動」を描いた方が親切である可能性も高い。


 つまり、そんな回りクドい「精神攻撃」のようなやり方をキラって、ひたすら粗暴に暴れたくて堪らない! という幹部怪人である怒りの戦騎・ドゴルドは、番組の活劇度を上げているのだ――『仮面ライダーウィザード』では、幹部怪人フェニックスがこれに相当していた――。


 彼のような、いかにもな憎々し気で「ワル」ものらしいキャラクターを、本話のような「イベント編」では派手に大暴れさせて物理的な破壊活動をさせることもまた、やはり「勧善懲悪」の「娯楽活劇」を描くのであれば、必要不可欠な要素だろう。



 同様に、都市を破壊して暴れ回っている獣電竜・プテラゴードンに対して、キョウリュウブルーがステゴザウルス・モチーフの獣電竜ステゴッチを、キョウリュウブラックも頭部のトサカが後頭部に管状に伸びている姿が印象的なパラサウロロフス・モチーフの獣電竜バラサガンを呼び寄せた! 高品質なCGで大迫力をもって描かれる「恐竜大戦争」!



 キョリュウピンクとキョウリュウグリーンは、キョウリュウジャー共通の能力である武装を腕に出現させる「アームド・オン!」で右腕に出現させたシールド(盾)で、ビルの壁を破壊! 中に閉じこめられていた人々を助け出す!
 そう。常人離れした腕力で壁を破壊し、人々を救ってみせる姿こそが、超人ヒーローの基本でもあるのだ!


 そして重要決戦では、定番のロケ地である倉庫内(笑)における、キョウリュウレッド&トリン VS ドゴルドのバトルが描かれる!


 なんと! ベテランスーツアクター・岡元次郎(おかもと・じろう)が演じている、しかし格闘戦には不向きに見えていた着ぐるみのトリンが剣術でドゴルドを圧倒する! 単なる後見人にも見えていたトリンもまた弱くはなく「強い!」として描くのだ!


 そして、レッドのシールドによるパンチのスサまじい威力で、倉庫の外まで吹っ飛ばされていくドゴルド


 やっぱり「特撮変身ヒーロー作品」の最大の魅力とは、こうした「万能感」を味あわせてくれる、常人を超越した「力の行使」なのだ!(笑)――もちろん、それは悪事ではなく、弱者を助けて悪人を倒すという正義のために用いられてこその爽快感ではあるけれど――



 しかし、この手の作品は一進一退のバトルこそが肝(きも)なのだ! ドゴルドがヤラれっぱなしでもツマラないのだ! 窮地に立たされたドゴルドも反撃に出た!


「カミナリ変形!」


ドゴルドが叫ぶや、獣電竜・プテラゴードンがプテライデンオーなる人型巨大ロボットに変形する!!


 プテライデンオーは高層ビルの上に飛び降りる! 巨大ロボットのクセして黒マントもひるがえしている!!


 そして、ビル街に落雷攻撃を加えるさまは、悪のヒーロー然として実にカッコいいのだ!!


――このビルはプテライデンオーの体重で崩れないのかなぁ? いや、きっと半ば浮遊しており全体重はかけてはいないのだ!?(笑)――


 対するキョウリュウレッド・ブラック・ブルーも、獣電竜たちを「カミツキ(噛みつき)合体」させる! 「キョリュウジン・バラサガン・ステゴッチ」なる、キョウリュウジンの新形態が登場!


 しかし、「キョウリュウジン・バラサガン・ステゴッチ!」と登場名乗りを叫ぶ際に、レッド・ブラック・ブルーの3人がコクピットで右に体を傾けて、右足立ちでポーズを揃える珍妙なさまは、まるで演芸番組で漫才師がコンビ名を名乗る際のポーズのようだ。
 これもまたシリアスなバトルストーリーの中でも、少々おフザケを入れてみせようという演出意図なのではなかろうか?(笑)


 オープンセットにおけるアオリ撮影で描かれる、キョウリュウジン・バラサガンステゴッチ VS プテライデンオー!


 その足元には街灯・信号機・自転車に至るまで、実に細かな造形物がビッシリと配置されているミニチュアワークもスゴい!


 もちろん、新ロボ登場回であるので、本編班の担当ではなく特撮研究所が撮影した映像であることは明白だ。今や「ミニチュア巨大特撮」の伝統を守り抜いているのは、休止中の東宝特撮映画でも同じく休止中のウルトラマンシリーズの円谷プロでもない。東映が世界にも展開している「スーパー戦隊シリーズ」なのである!


 そして、往年の巨大ロボット特撮『ジャンボーグA(エース)』(73年・円谷プロ 毎日放送)にはじまって、巨大ロボットアニメ『闘将ダイモス』(78年・東映 テレビ朝日)・『機動武闘伝Gガンダム』(95年・サンライズ テレビ朝日)・『獣拳戦隊ゲキレンジャー』(07年・東映 テレビ朝日http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20080817/p1)に登場した戦隊巨大ロボット・ゲキトージャたちのように、善悪ともに操縦者の両腕の動きにシンクロして、巨大ロボが攻撃を繰り出すさまが実にカッコいい!
 こういったボディートレースでモーションキャプチャーな操縦方法は、筆者のような70年代の子供たちだけでなく、今の子供たちでも喜ぶものだろう! むしろ、現代的かつ今でも古びずに近未来的ですらあるだろう! だからこその普遍的な描写でもあるのだ!


 ブレイブ9は、30分ワク前半のいわゆるAパートをほぼ特撮バトルの見せ場の連続だけで畳み掛けて盛り上げている! その代わりに、変則的に30分ワク後半のBパートが人間ドラマ主導にするのかと思いきや…… 驚くべきことにまったくそうはならなかった!


 敵首領の神官カオス直属で、戦闘員・ゾーリ魔の100倍強いという上級戦闘員怪人でもある神官カオス直属の守護騎士・カンブリ魔が、アミィとソウジを人質にして降伏を迫ってくる!


 しかし、キョウリュウレッドことキングもとい桐生ダイゴは降伏してしまうのだ!


 ……と見せかけて(笑)、拳銃・ガブリボルダーをクルクルと回してカンブリ魔を狙撃する!


 オオッ、これは昭和の『仮面ライダー』のメインライターとしても有名な脚本家・伊上勝(いがみ・まさる)が「イベント編」などで披露していた、正々堂々とした戦い方ではなく(笑)、善悪ともにダマし合い・智謀・策謀・スパイ合戦も交えての戦いの再現ではないか!?
 こういったフェイントも交えた戦い方は、子供たちへの教育上はよろしくない! といった意見もわかるのだが、時に必要悪として緊急事態にはこういうことが必要なこともあるのだ!(汗)



「オレたちは戦隊だ!! 5人そろえば無敵だが、ひとりずつだって、チョ~(超)強いんだ!」


 スーパー戦隊の元祖『秘密戦隊ゴレンジャー』(75年)において、第2クールから登場した最初の幹部怪人であった日輪仮面(にちりん・かめん)が、たぶん第20話『真っ赤な死闘! 日輪仮面対アカレンジャー』だったと思うが、


「5人そろわなければ、なにもできない弱虫ゴレンジャーめ!」(笑)


などとゴレンジャーのことをあざ笑っていたものだ。


 たしかに「スーパー戦隊」なのにひとりだけでも敵怪人を常に必ず絶対に倒せてしまえるのであれば、「戦隊」を組んでいる必然性もなくなる。
 しかし、5人がそろわないと敵を倒せないことが宿命であれば、戦隊メンバー1人だけだと弱く感じられてしまうことも確かなのだ。ここが東映戦隊にかぎらず「戦隊もの」「集団ヒーローもの」の宿痾(しゅくあ=宿命的な弱点)なのだ。


 それに対する解決策はなにがあろうか? もちろん、完全な解答などはない。しかし、「暫定解」であれば存在する!


 それは、本話のように、「戦隊」は「ひとりでも強い!」。しかし、全員がそろうと「もっと強い!」 このように描いてみせることが、たしかに最適解なのだ!



 加えて、ほぼ毎回のようにダイゴは、


「オレたちは『戦隊』だ!!」


などと叫んでいる。これはどう解釈するべきだろうか? ふつうに考えれば、ここでいう「戦隊」とは自分たち『獣電戦隊キョウリュウジャー』自身のことだろう。


 しかし、視聴者や子供たちは同時にこうも考えてしまうものだろう。新旧戦隊が共闘する「スーパー戦隊VSシリーズ」や歴代スーパー戦隊が登場した『海賊戦隊ゴーカイジャー』(11年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20111107/p1)よろしく、これまでの「スーパー戦隊」の存在が本作においても既知なのであって、ダイゴもまた先輩スーパー戦隊の存在を前提として「オレたち『も』戦隊だ!」……などと叫んでいるのかもしれないと!(笑)


――でもまぁ、このへんを強調しすぎてしまうと、それではナゼに大ピンチの際に、先輩スーパー戦隊が助けに来ないのか!? といった想いが強くなってしまう。よって、そこについては世界観をユルくしてボカして触れずにおくのが粋(いき)というものだけど――


 アームド・オンしたキョウリュウレッド・ブラック・グリーン VS ゾーリ魔の大群の大乱戦が、荒野で繰り広げられる!


 そして、レッドVS敵幹部ドゴルドのガチンコ対決! ドゴルドに吹っ飛ばされてしまったレッドが、ワイヤー吊りで宙を反転してから体勢を立て直して着地するという絶妙なアクション演出も実にカッコいい!


 だが、ドゴルドの面が割れてしまった! しかも、ドゴルドには実体・中身がなかった! その身をおおっている鎧(よろい)そのものが実体だったのだ!


 そして、その鎧を装着していたのは、400年前の戦国時代の日本を襲ったデーボス軍を相手にして、賢神トリンとともに戦っていた当時の剣豪・空蝉丸(うつせみまる)であったという、衝撃の事実が発覚する!!


 ド~なる~~!? キョウリュウジャ~~!!


――名声優・千葉繁(ちば・しげる)による、あまりにハイテンションなナレーション!(笑)――


 特撮オタクの皆さまであれば、これはウルトラシリーズに登場した暗黒宇宙大皇帝・エンペラ星人が着用するハズだった漆黒の鎧(しっこくのよろい)・アーマードダークネスを、ウルトラマンメビウスウルトラセブンウルトラマンベリアルなどが身にまとってしまったことの引用であるとしか思えないだろう(笑)。


 90年代には児童誌『コミックボンボン』での長期連載漫画『ウルトラマン超闘士激伝』(93~97年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210131/p1)の原作もペンネームで担当していたマニア上がりの三条陸氏のことだから、ついつい引用してしまっても不思議ではないだろうし、そこにケチを付ける気は毛頭ない。
 海外ファンタジー作品や世界の神話などでは、「生きている鎧」といったネタは定番であるようだし。


ブレイブ10(後編)「サンダーッ! ゴールドふっかつ」


 人質となっていたキョウリュウグリーン=ソウジとキョウリュウピンク=アミィ。


 しかし、アミィが


「ソウジくん、絶対黙っててほしいことがあるの。恥ずかしいから誰にも云わないで。実はアタシ、足で録画予約ができるの……」


と唐突に告白をはじめた(笑)。そして、足の指を器用に使って(!)、ソウジを縛っていた縄をほどいてみせた! そして、見事に脱出に成功する!


 なんというご都合主義! だが、本作は最初からリアリティーの基準線が低く作られている、「スーパー戦隊」作品の中でも特にヌルくてユルめの作品なのである(笑)。だから、こんなご都合展開でも幻滅させられることもなく笑って流せるのだ。
 意外とリアルでシビアだった初期「スーパー戦隊」では、ヒロインを三枚目として、かつギャグとしても描くような、こんなご都合手法はさすがに使えないだろう(笑)。


 キョウリュウピンクも出自的にはお嬢さまだが、その性格に品(ひん)はあるものの、お上品とも言いがたかった(笑)。今までも邪気はないけどヤンチャで元気な娘として描かれてきたことで、ここでの唐突さも緩和されているのだ!


 どうやって脱出した!? といぶかるカンブリ魔に対して


ソウジ「それは…… 秘密だ!!」(笑)
アミィ「……よろしい」(笑)


などと返してみせるふたり。これから倒してしまうであろうゲスト敵怪人に対してすら、アミィの秘密を律儀に守ってみせるソウジの度が過ぎた誠実さ!(笑)
 それをさも当然のように受け止めているあたりは、やはり気位(きぐらい)の高いお嬢さまであるアミィ!(爆)


 両者の性格設定もあらためて強調しながらのギャグにもなっているのだ!


 筆者のようなロートル世代は、この両者の関係に『ゴレンジャー』で、


ミドレンジャー=明日香健二(あすか・けんじ)が最年少の17歳!
●紅一点のモモレンジャー=ペギー松山(ぺぎー・まつやま)18歳!


 つまり、ミドレンジャーの方が年下であったことも、咄嗟に連想してしまったものだけど。しかし、当時の作品としては充分にオドケていたものの、『ゴレンジャー』は『キョウリュウジャー』ほど崩れてはいなかった(笑)。


 キョウリュウジャーとしての活動時にも、ソウジは高校の制服を着用している。これも日本全体がまだビンボーで服飾面には金銭を割けなかった1960年代までならばともかく、リアルに考えれば今どきなさそうな描写ではある。
 しかし、常に学生服を着ていることこそが、まさにキョウリュウジャー最年少の戦士であることを、ビジュアル面でも強調しているのだ!


 そして、ソウジの父にして剣術道場の指南でもある立風館源流(りっぷうかん・げんりゅう)の自宅になぜだかご都合主義にも存在していた空蝉丸の剣法の「秘伝書」!
 これを参考にした源流オヤジの剣術から、ダイゴはドゴルド=空蝉丸に対抗する秘訣(ひけつ)をも見極めた!


 なぜに「戦隊」メンバー宅にそんな「秘伝書」があったのか!? しかし、こういったご都合主義がなければ、痛快なる「大逆転劇」は最低限の「説得力」を持って成立させることはできないのだ。
 こういったご都合主義や、なんとか勝利に持っていけた! という一応の合理的な理由が描かれなければ、「逆転劇」に説得力や爽快感は出てこないものなのだ。まさに最後の「勝利」自体が、悪い意味でご都合主義臭もプンプンになってしまうのだ。


 そして剣豪・空蝉丸は、ソウジも剣術の使い手であったことから、そもそもこのふたりの属性はカブっているという問題点もあった。


 この問題点を解決するにはどうすればよいのか!? そこで、その父・源流もまた代々の剣術の家系の者だったとすることで、その歴史を戦国時代にまでさかのぼらせてしまうのだ! そして、そこで空蝉丸の剣法の「秘伝書」とも縁があった! あっとしても不思議はなかった! として接点を持たせているのだ!


――ちなみに源流を演じたは、『科学戦隊ダイナマン』(83年)のダイナブラック=星川竜(ほしかわ・りゅう)などを演じ、JAC(ジャパン・アクション・クラブ)の名スーツアクターとしても幅広く活躍してきた春田純一(はるた・じゅんいち)氏だ!――



 無事に脱出できたアミィとソウジ! しかし、その眼前にデーボス軍の幹部たちが勢ぞろいして立ちふさがった!
 まだ1クールの中盤なのに、早くもシリーズ終盤のような総力戦になっているあたりも嬉しいし、盛り上がってもいる!


 そして、ドゴルドもまた獣電竜・プテラゴードンを呼び寄せた!!


 そこに、往年のテレビ特撮『怪獣王子』(67年・ピープロ フジテレビ)の野生児主人公・タケルと怪獣ネッシーのように(笑)、獣電竜ガブティラの頭上に乗って、キョウリュウレッドが登場する!


 「首長竜」の獣電池をセットされたガブティラは、


「ビロ~~~~~ン」


というコント劇に流れるようなコミカルな効果音とともに、CG表現で首を長く伸ばした! 「首長竜」の電池にはそんなフザケた超能力があったのだ!(笑) 「お笑い」以外に何の役に立つのか? と思いきや…… 空飛ぶプテラゴードンをその首で大地に叩き落とした!


 そして、キョリュウジャーVSデーボス軍の決戦の火蓋(ひぶた)が切って落とされた!!


 キョウリュウブラックが崖にジャンプ! 反転して飛び降りて、敵幹部・アイガロンを急襲するアクションが目を見張る!


 キョウリュウグリーンの剣技「斬撃無双剣!」がゲスト怪人・カンブリ魔を葬り去る!


 賢神トリンがドゴルドを羽交い締めにし、レッドにトリンの精神を獣電池に込めてドゴルドを撃つように迫った!


 トドメは刺されなかったものの、ドゴルドプテライデンオーに乗りこむ!



 しかし、そのときドゴルドの全身の鎧が砕け散った!!


 連られて、悪の巨大ロボット・プテライデンオーも黒いマントを脱ぎ捨てる!


 キョウリュウジャーの前についにその真の姿を見せた空蝉丸!!


 もちろん、敵を手をこまねているワケではない! そこに戦闘員・ゾーリ魔の大群が迫って来た! キョウリュウジャーたちが彼を守ろうとして、これを遮ろうとする!


 だが、


空蝉丸「手出し無用!!」


と、キョウリュウジャーの加勢を断る空蝉丸!


空蝉丸「いざ、尋常(じんじょう)に…… キョウリュウチェンジ!!」


 プテラゴードンの口から変身アイテムが吐き出された! そして、空蝉丸の左腕にピッタリと装着されるさまが、まさに正義の超人ヒーローやロボットたちの非常に高い身体能力や正確無比なテクノロジーの象徴! といった感じで、ベタでも頼もしくてカッコいい!


 完全に「時代劇」調のBGMとともに、空蝉丸がキョウリュウゴールドへと変身!!


「雷鳴の勇者! キョウリュウゴールド見参!!」


 キョウリュウゴールドは空の黒雲からカミナリを呼び寄せ、必殺剣・ザンダーサンダーも招来!


 そのザンダーサンダーから発するカミナリ攻撃で次々に破れていくデーボス軍!


 キョウリュウゴールドはベルトから「獣電池」を取り出しては次々にザンダーサンダーに装填してパワーを高めて、ついにゲスト怪人・カンブリ魔を撃破した!!


 まさに追加ヒーローの初登場にふさわしく、もう彼さえいればキョウリュウジャーの5人も要らないんじゃね? といった、デタラメなまでにキョウリュウゴールドの圧倒的な強さが描かれている。しかし、そういう描写こそがこの手の作品では実に爽快なのである! 5人の引き立て役や噛ませ犬や前座キャラではツマラないのだ!(笑)



 だが、戦闘系ではない敵幹部・ラッキューロの「スクスクジョーロ」(笑)で「復元水」を浴びたカンブリ魔2体は復活して巨大化した!!


 カミナリ変形したプテライデンオー VS ダブル・カンブリ魔!


 まさに「二刀流」であるかのごとく、プテライデンオーの両腕から鋭く生えた「黄金の刀」状の装備がカッコいい!


 そして、これまた搭乗したキョウリュウゴールドの動きに連動して、身軽なジャンプやキックで、ついに巨大カンブリ魔をも葬り去るプテライデンオー!! 強い! カッコいい!


 スーツアクターといえば、どうしても戦隊ヒーローにばかり目を向けがちだが、巨大メカの演技者は近年、『海賊戦隊ゴーカイジャー』(11年)の豪快かつコミカルな6番目の戦士・ゴーカイシルバーを演じた佐藤太輔(さとう・だいすけ)であるそうだ。



 戦いが終わって、空蝉丸はキョウリュウレッド=ダイゴがかつての主君とチョビひげ&オールバックにした総髪を除けばそっくりであったことでおもわず、


「お館(やかた)さま……」


とつぶやく。「お館さま」とは「館」に住んでいる武士の領主や君主の意味である。むかしは本名で呼ぶことは恐れ多いと「別名」や「役職名」などで呼ぶことが一般的だった。このあたりは時代劇としても正しいのだ!(笑)
 この「お館さま」はもちろんダイゴのご先祖さまなのだろう。頭頂部を剃る前の総髪時代の織田信長にも似ているが、大名の域に達した主君であったのかは不明だ。


 しかし、その血統を継いでいる子孫だとしても、当たり前だが、その「人格」や「器量の大小」は別である。


「我が主君にふさわしいか、それを見極めるまで手は握れん」


と安易な和解や馴れ合いは避けようとしてだろう。ダイゴの握手を拒否して、夕日に向かって去っていく。



 チョ~(超)カッコいい!!


 まさに追加戦士の登場編としては出色の出来である。



 余談だが、君主やその家系への一途な忠誠心が求められるようになるのは、ほぼ天下統一が済んで社会の安定が求められるようになった戦国時代の末期~江戸時代のことである。
 戦国時代の初期~中期の乱世の出世競争の時代においては、「武士たる者。七度、主君を変えねば武士とはいえぬ」と云われていたほどで、ビジネス・契約としての忠誠は誓うものの永続的な忠誠ではなく、その都度キャリア・アップを求めていくものだったのだ。


 空蝉丸による主君の子孫に対する不忠な言動も、こういった史実からの引用だろう。つまり、ここはデタラメではないのだ。
 空蝉丸は戦国時代の初期~中期の人物だとの推測ができる。しかし、400年前だともう江戸時代に入っているので、そこはおかしいのだけど。四捨五入で440年くらい前だと解釈しておこう(笑)。



 だが、ここまでのテンションのエピソードを今後も各話で維持するのはさすがにキツいだろう。そして、筆者も含む視聴者側でも、ゼイタクなことにハイテンションなエピソードが連続してしまうと、感覚が麻痺して有難みもウスれてしまうものだ。
 それに、「通常編」が比較的ユルユルの作風であるからこそ、こうした「イベント編」が相対的に目立って際立つことも事実なのだ。


*ブレイブ11「ウッチー! クールでござる」


 さて、ブレイブ11は坂本浩一監督が担当だが、とにかく氏の演出作品では女性キャラの活躍がめざましい。


 女敵幹部・キャンデリラの声を演じるアイドル声優・戸松遙(とまつ・はるか)が、キャンデリラが変身したアイドル歌手役で顔出し出演!


 キャンデリラの声優がこんなに可愛い、しかもアイドルっぽい娘だとは思わなかった(汗)。東宝の新人発掘オーディション「東宝シンデレラ」の最終選考に残ったという実績もあるほどで、近年の声優がアイドル扱いされているのもおもわず納得してしまう。
 しかも、歌唱だけでなく演技もできるワケだから、そこらのルックスだけのアイドルよりも、アイドル声優の方がよほど上だということにもなってしまう!? つまり、芸は身を助くで、そのへんのアイドル歌手やグラビアアイドルよりも、よほど芸能界で長生きできるのではなかろうか?


 そういえば、同じく敵幹部である哀しみの戦騎・アイガロンの声を演じる水島裕(みずしま・ゆう)もまた、30数年前の80年代前半には女性アニメファンからアイドル声優扱いされていたことを、そしてリアルロボットアニメ至上主義のマニアたちがそういうミーハーな風潮を毛嫌いしていたことを年長マニアたちは覚えていることだろう(笑)。
 水島裕もここまで見事に生き残っているワケで、往時の筆者の見識を恥じ入るばかりである(汗)。



「部下(=キョウリュウジャーの4人・笑)の質が低い……」


 キョウリュウレッドことダイゴに対して、そんな失礼なことを告げて、「戦隊」に加わる気はない! としてみせた、実にシビアな空蝉丸!


 そんな彼を追跡してみようと、バイクに乗りこむキョウリュウピンク=アミィ。その際に、そんな彼女をパンチラアングルで捉える坂本監督。しかし一見、見ミニスカに見えた今回のアミィの衣装は、よく見ると、残念ながら短パンであった(笑)。


 けれど、空蝉丸はクールでニヒルな性格の人間なのかと思いきや…… 決して武骨な戦国武者らしくはなかった! 実は善人そのもの! 愛想もよい「いい人」そのものだったのだ!


 そのことがバレてしまっては、今後がヤリにくい、お株が下がる、沽券に関わる、ナメられてしまう、とばかりに、キョウリュジャーにはないしょにしてくれ! と土下座(笑)までして頼みこむ卑屈な空蝉丸(爆)。


 こういった、一見はシリアスに見えるヒーローでも漫画アニメ的にコミカルにすぐに崩してしまうあたりは、筆者のような年長マニアが子供や中高生であった70~80年代の日本特撮にはなかった流儀であり、90年代以降の「スーパー戦隊」発祥のノリである。


 もちろん、こういった描写にも賛否両論があって当たり前だ。しかし、筆者個人は戦国時代の日本人武士なのに、とてもそうだとは思えないデタラメな性格設定になっているあたりは(笑)、いかにも今風の「スーパー戦隊」らしい明朗なノリなのでスキである。


 それはさておき、アミィの美脚からの主観で土下座する空蝉丸を捉えたり、坂本演出回の特色である「さわやかエッチ」描写が今回も炸裂!


 続くブレイブ12『ブットバッソ! せっしゃとキングどの』においても、空蝉丸を生徒にしてアミィに女教師のコスプレをさせ、タイトスカートから伸びる太モモをフェチアングルで捉えている。


 いずれの日にか「これらもセクハラだ!」として問題になるまでは、こういった寸止めの「さわやかエッチ」描写は、もちろんあくまでも子供番組の範疇でだが、続けてほしいものである(笑)。


 80年代~90年代のスーパー戦隊シリーズにおいては、夏期放映分でヒロインが水着姿を披露するのが恒例であった。しかし、00年代以降、こうした描写はすっかり陰をひそめてしまっている。
 これはたいした必然性もなしに女性キャラが水着姿になるという描写が、ともすれば「セクハラ」であるなどと取られかねなくなった、という理由もあっての「自粛」だろう。


 ただ、テレビ番組や子供番組の「エロ」や「暴力」描写に対する規制が、日本に比べてはるかに厳しくなっている80年代後半以降のアメリカで、『パワーレンジャー』シリーズ(93年~・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20080518/p1)を長年撮っていた坂本監督からすれば、日本の「スーパー戦隊」はまだまだ自由な場なのだろう(笑)。


 しかし、


「角の勇者、キョウリュウピンク!」


と名乗りを上げて、ドカーン! と派手に爆発の炎があがるのを背景にキョウリュウピンクは常に


「ウフッ♡」


とほほえむんでいる。個人的にはOKなのだが、こういった男性に媚びたような女性描写に対しても、フェミニズム団体からクレームが来る日が、将来には来るのかもしれない(汗)。


 もっとも、あまりにお色気過剰であるのも、そもそも「子供番組」であることを考慮すればよろしくないのだが…… あくまでも、こういった特撮変身ヒーロー番組の本義とは、ヒーローと敵怪人のド突き合いをカッコよく描くことなのだ!(笑)



 本話のゲスト怪人デーボ・ホネヌッキー(骨抜き・笑)は、筆者のようなアイドルオタクたち(爆)の体から「骨」(!)を抜いてしまう! そして、その「骨」を「骨壺(こつつぼ・笑)」の中に入れる特殊能力を持っているのだ! このデタラメな設定がまたサイコウである!


 「骨抜き」ってそういう意味じゃないだろう! メンタルな意味だろう! といったことは百も承知での、確信犯でのメンタルならぬフィジカル(肉体)な読み替え! 座布団3枚!(笑)


 その際に挿入されるのがレントゲン映像! これは往年の大人気テレビ時代劇である初期『必殺』シリーズ(72~09年・松竹 朝日放送)における、シリーズ第2作『必殺仕置人』(73年)やシリーズ第10作『新・必殺仕置人』(77年)の「念仏の鉄」の「背骨外し」や、シリーズ第4作『暗闇仕留人(くらやみ・しとめにん)』(74年)の「石屋の大吉」の「心臓つぶし」の際に挿入されるバンクフィルムによるレントゲン映像へのオマージュだろう(笑)。


 こういったナンセンスさは、元祖『秘密戦隊ゴレンジャー』の放映2年目に登場した敵怪人たちが元祖であった。以降の「スーパー戦隊シリーズ」にも散発的に登場しつづけてきた。そして、再評価として積極的に「ギャグ怪人の良さ」を前面に押し出して、そのカラーリングも褐色ではなく明彩色となってポップになっていくのは、『高速戦隊ターボレンジャー』(89年)あたりからだ。以降はギャグ描写やギャグ作戦としてもドンドンと突き抜けていくようになっていく。


 ただし、小学校中学年であった筆者は、まだ時代の風潮もマジメだったせいもあったのだろう、この『ゴレンジャー』の2年目に登場した怪人たちである「野球仮面」や「牛靴仮面」の存在をバカバカしく思って、「もう、『ゴレンジャー』を観るのはやめよう」と一度は卒業したのであった……(爆)



 それはさておき、そのデーボ・ホネヌッキーの左肩に、キョウリュウゴールドがハイキックをカマすアクションがカッコよかった!


 そして、坂本監督回である本話では、やはりアミィ=ピンクが大活躍!


 ゾーリ魔の大群を相手に、アミィは通りすがりの少年から借りた一輪車(笑)を華麗に駆使して攻撃を加えるのだ!


 といっても、別にパンチやキックを繰り出すわけでもなく、どう見てもアミィはゾーリ魔の大群のあいだを単に一輪車でくぐり抜けているだけであり、手刀を浴びせたようにも見えないのに、その周囲でゾーリ魔たちが勝手に倒れていくのだ!(笑)
 別撮りでのアミィの手刀がゾーリ魔に当たった瞬間のアップのインサート映像などはほしかったのだが、戦隊ヒロインの活躍としてはまぁまぁ華(はな)が感じられてよい!



 逆襲とばかりにゾーリ魔の総攻撃によって、派手にブチあがる爆発の炎を背景に吹っ飛ばされるアミィ!


 近年の戦隊ヒロインはアクションが満足にできなくてもなれるだとか、ルックスを重視しすぎだなどと一部では批判もある。それにも一理があって頷けもする。


 しかし、『キョウリュウジャー』においては、アクションもできるアミィを演じる今野鮎莉(こんの・あゆり)の快活さとしなやかなさな身体に、坂本監督回がコラボすれば、アクション場面も吹き替え多用ではなく、本人が動員されてフェティッシュな被写体ともなるのだ!(笑)


 アミィはキョウリュウピンクに変身! 本話では、


「キョウリュウチェンジ! ファイヤー!!」


の「チェンジ!」と「ファイヤー!!」の叫びのあいだの、サンバのリズムに乗ってのブレイクダンスの部分までもが、ゾーリ魔とのバトルを描くことにも使われているのだ!


「変身途中・名乗り中・巨大ロボットへの合体途中に、なんで悪の組織は攻撃せえへんのや~!」などと、我々年配オタクたちも1980年代においてはすでにネタにしていた。そして、自分たちでする分にはそこに愛情もあった。


 しかし、即座に劣化したかたちで軽佻浮薄な80年代の若手放送作家たちにも流通! 変身ヒーロー作品がバラエティー番組などでは、当時の「お笑い」の主流である温かい愛情もある「笑い」ではなく軽蔑・蔑視・嘲笑の意味での「笑い」の対象としても扱われてしまったものだ(汗)。


 こういったジャンル作品のお約束に、はじめてセルフ・ツッコミを入れて、ドラマやアクションのちょっとした見せ場にしてみせたのは、リアルロボットアニメの第1号『機動戦士ガンダム』(79年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19990801/p1)の第23話で、空中で合体途中のガンダムに敵のロボットが攻撃を仕掛けてきたシーンである。
 つづけて、カッコよく変身ポーズを決めたり、悠長に名乗りを上げているように見えるが、実はそれは1ミリ秒での出来事だから、敵の攻撃を仕掛けてくる隙すらないのだ! としてみせたのは、東映の特撮変身ヒーロー「宇宙刑事」シリーズ(82~84年度)であった。


 『仮面ライダーBLACK RX』(88年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20001016/p1)になると、大地や空中での変身途中に敵が攻撃を仕掛けてきて大爆発! 爆炎を晴れるや、すでに変身が完了していることでヒーロー性を高めるアクション演出が幾度か導入されている。
――これについては、脚本に描かれていたものではなく、現場判断で監督や今やJACの社長であるアクション監督・金田治がアドリブで挿入していたシーンであった可能性も高いが――


 しかし当たり前だが、いずれもギャグとしての描写ではなかった。半ばはギャグだが、半ばは衝撃をもって迎えられたパターン破りは、やはり我らが「スーパー戦隊シリーズ」なのだ!


 『爆竜戦隊アバレンジャー』(03年)第20話(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20110613/p1)において、アバレッドが名乗りを上げている最中に、白い体色である悪の戦隊ヒーロー・アバレキラーが攻撃を加えてみせる!
 そして、「そういうのがダサいっつってんだよ……」とクールに云わしめて(笑)、レッドを倒してしまったことがあったのだ!!


 かつてこういったことに子供心にも疑問を持ったことがある世代がスタッフとなったことで、こういったセルフ・ツッコミ的な、しかも嘲笑ではなく愛情もある描写が挿入されていくようになったのだ。以降、こういったパターン破りが時折りにジャンル作品には見られるようにもなっていく。


 キョウリュウピンクの変身途中に敵の戦闘員が攻撃を仕掛けてきて、これに反撃しながら変身を完了させる! といった、子供たちでも……いや、子供たちこそマニア以上に実は喜びそうなシチュエーションもまた、こういったことの一環なのだろう。これもまた撮影現場での坂本監督によるアドリブ演出だったのだろうと思うのだが、本話でもそういったことを実現してみせているのだ!


――続くブレイブ12のAパートに至っては、アミィのみならずキョウリュウジャーの変身前の全員(!)が変身途中のブレイクダンスの部分で、戦闘員とのバトルを披露している!――



 だが、デーボ・ホネヌッキーに「骨抜き」にされ、キャンデリラのファンと化したアイドルオタクたち!――皆がお揃いのピンクの法被姿(はっぴ・すがた)……って、今どきのアイドルオタではなく、80年代のアイドルの親衛隊ではないか!(笑)――


 ダイゴ・ノブハル・ソウジ・イアンたちとて例外ではなくピンクの法被姿となっている(笑)。彼らが変身してのガブリボルバーの攻撃により、またまた派手な爆発の炎を背景に吹っ飛ばされるキョウリュウピンク!


 ここで、ピンクの危機に駆けつけてくる空蝉丸!


 空蝉丸ことキョウリュウゴールドが登場間もない時期なので、既存のキョウリュウジャーにワリを喰ってもらって、その代わりに新戦士のキョウリュウゴールドの頼もしさを印象付けよう! といった作劇意図だろう。


 デーボ・ホネヌッキーが空蝉丸を「骨抜き」にしようとする! 先ほどは戦国時代の武士にはとても見えない心優しいモダンな常識人だったのに、ここでは少々の矛盾が発生!(笑)


 ここだけはリアル志向と化して、そもそも現代のアイドル文化や女性による「(可愛い子)ブリッ子」的な萌え媚び姿態の流儀・文脈を知らない戦国時代出身の彼には、キャンデリラの現代的で「萌え(もえ)」的な態度はまるで通じていないものとして描くのだ!


――とはいえ、言葉は「萌え」でも、女性が男性にシナをつくったり、媚びたり、シナだれたり、コケティッシュ……といった行為は、そういった言葉が古今東西あるとおりで、別に現代にかぎったものではないだろう。古代や原始時代からあっただろう行為だとも思うので、この展開にはやや異論がなくもない。しかし、この手の作品にそういうツッコミを入れるのはヤボだろう(汗)――


 デーボ・ホネヌッキー云わく、空蝉丸のような「骨太なヤツはダメ」だったそうだ。しかし、彼の本性はそんなに骨太ではないだろう。ホネヌッキーはやや誤解していると思うぞ~(笑)。


 ホネヌッキーの「骨壺」を割ったことで、抜かれていた「骨」が毎度のご都合主義で、空を飛んで各人に戻っていって、正気に返ったダイゴたち。


 「よかった!」と空蝉丸が笑顔を見せる!


 しかし、「正体(本性)を隠しておきたいのであれば、ここではまだ笑顔は殺して『クール』に決めておけ!」とばかりに、ピンクがフィンガーアクションで合図を送っている!


 このシーンだけは、子供向け番組にはあるまじき、意外と高度で複雑な人間描写・心理描写だったかもしれない(笑)。



空蝉丸「おなごひとりを危機にさらすとは、不甲斐ない……」


 いかにも急いで取って付けたようにキョウリュウジャー4人を「不甲斐ない」と論評してから(笑)、あらためて変身!


 そして、「スーパー戦隊」おなじみの様式美的な名乗りを上げているキョウリュウゴールドの背景映像! それはCGで描かれた屏風絵(びょうぶえ)である! これがまたバカかっこいい!(笑)


 ゴールドは白い羽根が背中に生えて、宙を舞っての攻撃を披露する! しかし、翼竜プテラノドンのような鳥の羽根ではなく昆虫の羽根であった! 不整合だともいえるし、あまり意味がないともいえるのだが、やはり空蝉丸の名前の「蝉」から来ていることは明白だろう(笑)。


 ピンクもまた、バイクをジャンプさせながらゾーリ魔に跳び蹴りを喰らわす!


 そして、ピンクのバイクがゾーリ魔の大群の頭上をジャンプするさまを真横から捉えて、背景に爆発の炎をブチ上げさせる!


 これまた、実にカッコいい映像だ!!


 ついにデーボ・ホネヌッキーを打ち破って、ド派手に爆発してブチあがる炎を背景に、カッコこよくポーズを決めてみせるキョウリュウゴールド&キョウリュウピンク!!



 今になって始まったことでは決してないのだが、80年代中盤あたりから戦隊ヒロインはけっこうな大活躍をしてきた。
 これも女性を一応は尊重してみせたものだったが、単にスタッフが女性キャラや変身ヒロインの大活躍を見てみたい! そこにフェティッシュなものを感じたい! といったスケベな気持ちも微量に入り混じったウラの理由が大きかったとも思うのだ(笑)。


 しかしながら、年々ますます深刻化していく先進各国における少子化問題まで考慮に入れれば、女児層をも視聴者に取り込まなければ、特撮変身ヒーロー作品の商業的な先細りも必至なのだ。


 そんなことはスタッフも玩具会社も百も承知だろう。しかし、そういった意味でも今後とも戦隊ヒロインには活躍してほしいものである。


 もちろん、ヒロインも単なる賑やかしキャラではない。ふだんは気が強そうなアミィが、空蝉丸の身の上話には涙していたりする。空蝉丸とキング(=ダイゴ)たちとの仲を取り持とうとしている。空蝉丸に「ウッチー」のアダ名を付けてあげている(笑)。


 往年の俳優クリント・イーストウッド高倉健三船敏郎といった、あるいは日本特撮でも80年代初頭までは存在したような孤高でいぶし銀なシブいヒーローがまったく微塵たりとも存在できなくなってしまった! といった状況については、それはそれで極端な事態だとは思う。
 そこにも「マジメなヤツはツマラない!」「シリアスはダメで、楽しくなければテレビじゃない!」といった軽佻浮薄さばかりを称揚してしまう、新たな別の問題点もあるとは思うのだが、それはまた別途、考えることにしよう。


 それはともかく、本作のエンディング歌曲の映像では、出演者たちとともにダンスを披露する視聴者からの募集ビデオでは、明らかに女児の姿が目立っている!


 彼女たちも成長すれば、「スーパー戦隊なんてオタクくさくてダサ~い! 自分たちの子供には絶対に見せない!」と変節してしまうのかもしれない(笑)。
 あるいは、我々オタクたちとは違って、元気で快活で体育会系のタイプは、自身の幼少時のことをまったく記憶していないタイプも多い。そもそも記憶のはじまりが小学校3~4年生だという連中までいる(汗)。そういう娘たちは長じてしまえば、自分が『キョウリュウジャー』を鑑賞していたことすらまったく忘れ去ってしまっていそうだ(爆)。


 しかしそれでも、幼少期に観てさえいれば、自身が母親になっても子供たちに「スーパー戦隊」を観せることを許容する確率が少しは高まることは確実だろう! それによって、また新たな視聴者層や次代のマニア予備軍も開拓されるのだ!
――「ウルトラマン」や「仮面ライダー」とは異なり(汗)、「スーパー戦隊シリーズ」については数十年後も延命していそうなのだし!――


 もちろん、現役の幼児たちの母親層たちは、彼女らの幼少期である80年代に放映されていた「日本特撮」を観ていたとはかぎらない。自分に男児ができて、子供が観たがったから、逆に生まれて初めて「日本特撮」を観たような一人っ子上がりの母親層もきっと多いことだろう。


 その意味では、親が「日本特撮」を観ていたから、子供も「日本特撮」を鑑賞しているのだとはいえない! そんなことを云い出してしまえば、我々年長オタクの親たちは、「日本特撮」を観て育った世代ではない。そもそも「日本特撮」どころかテレビすら存在しなかった時代の世代なのだ(笑)。


 しかし、我々は親の目をかいくぐってでも、観たくて観たくて堪らないから! といった子供時代の「日本特撮」体験を引きずって、ここまで観続けてきたワケなのだ。


 その意味では、たとえ親が「日本特撮」を観ていなかったとしても、それでも子供たちが是が非でも観たくなるような「日本特撮」を、今のスタッフたちもつくっていかなくてはイケナイのだ!



 続くブレイブ12で、空蝉丸はあっけなくダイゴ=キングと和解し、キョウリュウジャーの一員に加わることになる。


 ……あまりに早すぎるだろ! とマニアの誰もが思っていることだろう。


 『爆竜戦隊アバレンジャー』のアバレキラーのようにシリーズ終盤でやっと仲間になる展開まではさすがに望まない。しかし、『忍風(にんぷう)戦隊ハリケンジャー』(02年)に登場した第2戦隊・ゴウライジャー(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20021110/p1)のように、もう少しだけ引きずってほしかった。


 しかし、6番目の追加戦隊ヒーローが早々に登場して、ワリと早々に仲間になるというシリーズ構成は、近年の「スーパー戦隊」の定番になっている。よって、ここまで早かったかはともかく、キョウリュウゴールド=空蝉丸がキョウリュウジャーたちと早々に和解するノリについては、今時のスレている特撮マニアの大勢も想像がついていたことだろう(笑)。


 ヘンな外人、もとい、キョウリュウシアンが語っていたように、早くも8番目の戦士(!)が見つかったとかで、本作では「10大獣電竜」という劇中キーワードが象徴しているように、マジで「10人戦隊」を実現しそうな気配がある!
 とっととストーリーを進めて、空蝉丸とは和解を済ませておくスタッフ側の「都合」があるに違いない!(笑)


 しかし、8番目の戦士がキョウリュウグレー! 「グレー」(灰色)って、狙った確信犯であることは間違いないにしても、「スーパー戦隊」史上で最大に地味な色がセレクト! しかし、それはそれで追加戦士としてはインパクトは大だろう!


 今後、さらに追加の戦隊ヒーローが登場するだろう。ミーハー的には、いや女児層をゲットするという高邁なる目的のためにも(笑)、変身ヒロインがキョウリュウピンクひとりしかいないので、もうひとりくらいはヒロインを加えるべきだろう。



 時間と紙幅の都合で、さすがにすべての詳細は語れないが、キョウリュウゴールドが加入して以降の各話について、特に印象に残った点を挙げていく。


*ブレイブ12「ブットバッソ! せっしゃとキングどの」


 第12話『ブットバッソ(ぶっ飛ばっそ)! せっしゃ(拙者)とキングどの(殿)』は5月5日(日)の「子供の日」に放映されるので、ゲスト怪人のデーボ・タンゴセック(端午の節句・笑)が「鯉(コイ)のぼり」をモチーフにデザインされているあたりが、デザイン面でもユカイな大傑作!
 それにもかかわらず、ギャグ怪人の扱いではない。空蝉丸との因縁(いんねん)も深いという強敵怪人として描かれていたあたりの意外性もお見事だ!


 とはいえ、シリアスだけでなく「飛んで火にいる夏の虫」ならぬ、


「飛んで火に入る空の蝉!」


なるセリフを吐かせることで、ギャグ演出も忘れられていなかったあたりもポイントが高い!(笑) 巨大化するや、鯉のようなシッポが生えるという変化も絶品であった。


 もちろん、空蝉丸がまだ初登場から間もないので、彼のキャラを肉付けするために、「時代劇」調の「隠れ里」を舞台にしてバトルも描かれていた。そして、ゾーリ魔たちが戦国時代調の鎧を装着していたのも風情&特別感があってよかった!


 東映特撮変身ヒーローものの80年代からのお約束で、舞台が「隠れ里」からいつもの「採石場」には戻る(笑)。このエピソードも坂本監督が担当しているだけに、キョウリュウジャーの名乗りの場面はアオリで捉えられ、彼らの周囲の風景もカメラを360度回転させて見せる! という映像的にも飽きさせない変化のある演出!


 キョウリュウブラックがクレーンから飛び降りる! キョウリュウピンクも逆立ち状態でゾーリ魔たちに回転蹴りを喰らわす!


 アームド・オンでのシールド(盾)もバリヤーに使用! さらに、シールドを投げて攻撃に用いる!


 いつもながらの派手なブチ上げで火炎などを織り混ぜながら、スピーディに描かれるクライマックスバトルが絶品!



 そして、初の「雷電(らいでん)カミツキ合体」で誕生するライデンキョウリュウジン!


 操縦席のキョウリュウジャーたちが剣を振り下ろすアクションに連動して、全身が金色に輝いて剣を繰り出すさまも最高!


*ブレイブ13「ジャキリーン! ハートをまもりぬけ」


 『ウルトラセブン』(67年)第8話『狙われた街』で描かれて以降、物理的な破壊や侵略ではなく、人間の信頼関係を断ち切ることで地球征服を遂げようとする悪の定番ネタではある。


 ただ今回は同時に、ソウジに片想いするかわいい女子高生をゲストに描かれる恋愛騒動を主軸に据えている。それによって、明るいコメディ作品としても完成しているのが見事である。


 ゲスト怪人デーボ・ジャキリーンは「関係断(かんけい・だ)ちバサミ」(笑)が武器だ!


 ブルーとの関係を切られたことで、放心状態から絶叫し、ブルーにすがり寄るレッドの怪演がなんとも云えないというか、お見事というべきか(笑)。


 あと、女子高生の恋愛を成就(じょうじゅ)させるためとはいえ、イアンはともかく空蝉丸までもがいきなり不良学生のコスプレ!


 ソウジに彼女を助けさせるために、女子高生を脅すせっかくのお芝居も、マジに受け取ってハイキックと回し蹴りで乱入してきたアミィによってブチ壊されるというオチも実に笑える。


 そして、怪人をおびきだすために、ダイゴまでもがセーラー服姿の女子高生になる!


 ノッさん(=キョウリュウブルー)も「今どきこんな学生いねえよ」的な、冴えない田舎者のような高校生姿のコスプレ姿を披露!


 なんと、ふたりはそのコスプレのままで、キョウリュウチェンジ! ほかの4人に比べて浮きまくり(爆)。


 こういうコスプレ仮想ネタは、むかしから女性の特撮ファンが特に大喜びするものだが、もちろん我々野郎の特撮マニアも「笑い」に寛容な人種のあいだでは好評なのである。
 しかし、「笑い」に寛容ではないクセに、戦隊ヒロイン七変化ネタだけには喰いつく御仁には…… 言行不一致だとしか思えない(笑)。



 そして、本話は甘~い恋の成就では終わらない。ラストで、ソウジがゲストヒロイン以外の女子高生にも同じプレゼントを渡してしまったのだ!


 乙女心に対するアリエないほどのギャグ漫画のキャラクター的な鈍感ぶり。そこまでの鈍感などアリエない! しかしだからこそ、これは良い意味での漫画でありギャグとして受け止められるのだ(笑)。


 バカにして! とばかりに怒りまくったゲストヒロインの女子高生に対して空蝉丸が、


「殿中(でんちゅう)、いや、校内でござる!」


と制止している(笑)。このあたりも、実は幼児向けのギャグではないかもしれない。しかし、コミカルな言動でコント的に騒いでさえいれば、子供たちでも連られて楽しめるものだろう。
 もちろん、年長オタク的には『忠臣蔵』での若殿・浅野内匠頭(あさの・たくみのかみ)が江戸城内で刃傷沙汰におよんだ際に、周囲が叫んだ「殿中でござる!」を「校内」に云い換えたギャグは楽しいし、ひたすらに笑えるのだ。


*ブレイブ14「あぶなァーい! スピリットベース」


 本話では、アミィがゲスト怪人に誘拐されて、さらには敵にキョウリュウジャーの秘密基地・スピリットベースに潜入されてしまい、爆弾まで仕掛けられてしまうという、まさに「最大の危機」が描かれている「ハズ」の作品である。


 しかしながら、


●執事(しつじ)であるジェントルおじさんから、淑女(しゅくじょ)としての厳しい教育を受けているアミィ
●筆頭の敵幹部カオスに教育係として任命された、本来は部下である黒板怪人デーボ・キビシーデス(笑)から、逆にシツケられてしまう幹部怪人ラッキューロ


 両者の「教育」(笑)を絶妙に対比させることにより、その「最大の危機」までもがコミカルに描かれてしまうあたりが、『キョウリュウジャー』の、そして90年代以降の「スーパー戦隊」の良いところなのである!


 アミィが誘拐された理由は、アミィがジェントルの厳しい教育で疲れて、正座から足を崩して茶菓子を口に放り投げていたからだ(笑)。そして、そんなダラシない姿を見た黒板怪人が、アミィを自身の手で「教育してやる!」と怒りまくったからである(笑)。


 しかも、長時間の正座に足がシビれて転倒したために(笑)、変身アイテム・ガブリボルバーを取られてしまったから、やすやすと誘拐されてしまったのだ!


 こんなアミィであれば、黒板怪人もさぞかし「教育」のしがいがあったことだろう(笑)。


 アミィから奪ったガブリボルバーで敵幹部・ラッキューロが秘密基地・スピリットベースに潜入する! そして、超時空爆弾(ネーミングが大袈裟!・笑)を仕掛ける!


 しかし、そこにあった月刊漫画誌『少女こずみっく』最新号が気になってしまう。脱出も忘れて、読みふけってしまうラッキューロ。それでこそ、今どきの「スーパー戦隊」作品なのだ!(笑)



 キョウリュウジャーとの基地内での密室バトルも展開される! しかし、基地の中だから壊されてはかなわない! とばかりに、キョウリュウジャーの司令官でもある賢神トリンが、


「ブレイブもほどほどに……」


と制止しているあたりがまた、トリンも意外とセコくて現金・現実的で笑えるのだ。



 本話はライデンキョリュウジンが宇宙で爆弾を処理することがクライマックスとなっている。


 そこでの危機感を高める物語配分のために、パターン破りとして黒板怪人が巨大化しない! それはそれでよいのだが、パターン破りの意外性! といった域にまでは達しておらず、巨大化した黒板怪人との一騎打ちがなかったことは少々残念にはなっている。黒板怪人のユカイなトークやコミカルな戦い方を観てみたかったのにィ(笑)。


 しかしながら、その代わりに中盤において早くも戦闘員のゾーリ魔2体(!)が巨大化! 獣電竜たちとの巨大バトルが用意されているあたりで配慮はあるのだ!
 巨大戦こそ観たいような幼児層にも、ここでのバトルがあるからそんなに不満はないだろう。「バランス取り」&「パターン破り」の絶妙な両立なのだ!



 ちなみに、この秘密基地の中へは、各所にあるキョウリュウジャーのマークをした「レリーフ」に変身アイテム・ガブリボルバーをかざすと入ることができる。
 しかし、ガブリボルバーを奪われて敵の潜入を許してしまった事件を受けて、トリンはをこの「レリーフ」自体をガブリボルバーをかざすまでは見えないかたちにするのだった。……最初からそうすべきやろ!(笑)


 そもそも明らかに東京都のマークが付いたマンホールならばともかく、あんなに目立つ奇抜なマークのマンホールのどこが「秘密」の入り口だったのか!? 公然の「秘密」ってヤツか!?(爆)



 ラストは、座椅子にダラシなく足を投げ出して、『少女こずみっく』を読み始めるアミィ。それを見ていられない! とばかりに天を仰いで、


「“戦隊力”に対して“女子力”が低すぎる!」


とトリンが嘆いて、やはり明るくコミカルなオチとして、良質な子供向け作品としての「スーパー戦隊」らしさも全開となってクロージングとなるのだ(笑)。


 「女子力」という言葉が近年では流行している。筆者個人はこの言葉に目くじらを立てる気は毛頭ないのだが、フェミニズム(女権拡張)団体から「男女差別だ!」「男女の役割分担や性格類型を性別で固定化する悪しきものだ!」とのクレームが付きそうで不安ではある。だからといって、先回りして自粛してしまうことも違う気はする。しかし、やや「危ない橋」を渡っている気はするのだ(汗)。


*ブレイブ15「はらだたしいぜッ! ドゴルドのやぼう」

*ブレイブ16「モグモグーン! おれのたからもの」


 ひさびさに「ちょっと重たい人間ドラマやってみました~」という趣(おもむき)のこの2本。1クールに1本くらいならば、こうしたノリもいいでしょう(笑)。



 しかし、いくらメインライターとはいえ、三条氏がここまでひとりだけで全話を執筆している!
 『百獣戦隊ガオレンジャー』(01年)でも、メインライター・武上純希(たけがみ・じゅんき)氏が序盤の18話分をひとりだけで担当した前例もあった。そこに匹敵しつつあるのだが、恐るべき筆力である!


 本作は序盤はやや「ヌルめ」であるところがちょっとだけ物足りない気もした。しかし、キョウリュウシアンやキョウリュウゴールド登場の「イベント編」から「活劇性」もアップ! その後の「通常編」もコミカル主体かつ戦闘的でもあって、硬軟をバランスよく配置した、実にバラエティに富んだ構成になっていると思う。


 ますます面白くなりそうな『キョウリュウジャー』。今後の動向から目を離さずにはいられない!


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2014年準備号』(22年8月13日発行)~『仮面特攻隊2014年号』(13年12月30日発行)所収『獣電戦隊キョウリュウジャー』前半評より抜粋)


[関連記事]

『獣電戦隊キョウリュウジャー』中盤~後半評 ~8・9・10人目の戦士! イベント編の質の高さ! 熱血活劇度も上昇! ついに10人戦隊が実現!

katoku99.hatenablog.com


『機界戦隊ゼンカイジャー』論 ~『ゼンカイジャー』を通じて「スーパー戦隊」45年史の変転も透かし見る!

katoku99.hatenablog.com

『機界戦隊ゼンカイジャーTHE MOVIE 赤い戦い!オール戦隊大集会!!』 ~来たるTV新番組への誘導もバッチリなシリーズ45作記念の快作映画!

katoku99.hatenablog.com

『スーパー戦闘 純烈ジャー』 ~「ユルさ」&「王道」の接合にこそ、戦隊・日本特撮・娯楽活劇の存続がある!?

katoku99.hatenablog.com

非公認戦隊アキバレンジャー』『女子ーズ』『乾杯戦士アフターV(ファイブ)』『GAINAX Presents エアーズロック(感覚戦士ゴカンファイブ)』 ~戦隊パロディでも公私葛藤描写が光る!

katoku99.hatenablog.com

ゴーカイジャー ゴセイジャー スーパー戦隊199ヒーロー大決戦』賛否合評 ~傑作だけど細部に不満はあり!

katoku99.hatenablog.com

仮面ライダー×スーパー戦隊 スーパーヒーロー大戦』 ~快作!? 怪作!? 圧倒的物量作品を賛否合評!

katoku99.hatenablog.com

トクサツガガガ』(TVドラマ版)総括 ~隠れ特オタ女子の生態! 40年後の「怪獣倶楽部~空想特撮青春記~」か!?

  katoku99.hatenablog.com

『企画展 スーパー戦隊レジェンドヒストリー ~ゴレンジャーからリュウソウジャー、そして未来へ~』 ~神秘・恐怖から親近感・コミカルへ。日本特撮の画期にして文化・歴史となった「戦隊」!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200320/p1


[関連記事]

『魔進戦隊キラメイジャー』最終回・総括・後半評 ~「仲間」を賞揚しつつも「孤高」「変わらないこと」をも肯定!

katoku99.hatenablog.com

『魔進戦隊キラメイジャー』中盤総括 ~キラメイシルバー&ヨドンナ登場、オラディン王復活! 安定のクオリティー

katoku99.hatenablog.com

『魔進戦隊キラメイジャー』序盤総括 ~王道戦隊のようでも異端の文化系レッドが敵幹部とも因縁!

katoku99.hatenablog.com

『魔進戦隊キラメイジャー エピソードZERO』 ~劇場先行お披露目で戦隊の起死回生は成功するのか!?

katoku99.hatenablog.com

『魔進戦隊キラメイジャーVSリュウソウジャー』 ~2大戦隊共闘を劇的に盛り上げるための助走台ドラマとは!?

katoku99.hatenablog.com


[関連記事] ~2013年度TV特撮評

ウルトラマンギンガ』(13年)序盤評 ~低予算を逆手に取る良質ジュブナイルだが、それゆえの危惧もアリ!?

katoku99.hatenablog.com

仮面ライダー鎧武(ガイム)』(13年)前半総括 ~上級敵怪人は古典SFな高次存在オーバーロード!? 公私の優劣も是々非々で再検討!

katoku99.hatenablog.com


[関連記事]

バトルフィーバーJ』(79年)合評 ~自然な渋さ&軽妙さの両立!

d.hatena.ne.jp

電子戦隊デンジマン』(80年)合評 ~美vs醜・敵組織内紛劇・俳優&演出の魅力!

d.hatena.ne.jp

太陽戦隊サンバルカン』(81年)賛否合評 ~初期戦隊・最高傑作か!?

d.hatena.ne.jp

超獣戦隊ライブマン』(88年)総論 ~テーマ志向の傑作戦隊!

d.hatena.ne.jp

鳥人戦隊ジェットマン』(91年)総論 ~井上敏樹・初メイン脚本 ブラックコンドル結城凱!

d.hatena.ne.jp

恐竜戦隊ジュウレンジャー』(92年)総論 ~子供番組への回帰

d.hatena.ne.jp

五星戦隊ダイレンジャー』(93年) ~竹田道弘アクション監督・最高傑作!

d.hatena.ne.jp

忍者戦隊カクレンジャー』(94年)賛否合評 ~竹田道弘アクション監督・連投!

d.hatena.ne.jp

超力戦隊オーレンジャー』(95年) ~山岡淳二アクション監督・再登板!

d.hatena.ne.jp

激走戦隊カーレンジャー』(96年) ~戦隊コミカル革命の成否は!?

d.hatena.ne.jp

電磁戦隊メガレンジャー』(97年)賛否合評 ~正義感より好奇心の作劇的利点!

d.hatena.ne.jp

星獣戦隊ギンガマン』(98年)賛否合評 ~小林靖子・初メイン脚本!

d.hatena.ne.jp

救急戦隊ゴーゴーファイブ』(99年)前半賛否合評2 ~ゴーゴーV前半総括!

d.hatena.ne.jp

未来戦隊タイムレンジャー』(00年)賛否合評 ~小林靖子メイン脚本! 時間SF成功作!

d.hatena.ne.jp

百獣戦隊ガオレンジャー』(01年) ~後半合評・6人目ガオシルバー!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20011113/p1

忍風戦隊ハリケンジャー』(02年) ~前半賛否合評1・ゴウライジャー!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20021110/p1

特捜戦隊デカレンジャー』(04年)#37「ハードボイルド・ライセンス」

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20041112/p1

轟轟戦隊ボウケンジャー』(06年) ~後半合評・6人目ボウケンシルバー&大剣人ズバーン!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070108/p1

獣拳戦隊ゲキレンジャー』(07年)最終回 ~後半肯定評

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20080817/p1

炎神戦隊ゴーオンジャー』(08年) ~序盤&前半評

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20080824/p1

侍戦隊シンケンジャー』(09年) ~序盤賛否合評

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20090712/p1

海賊戦隊ゴーカイジャー』(11年)1話「宇宙海賊現る」

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20111107/p1

宇宙戦隊キュウレンジャー』(17年) ~総括・最後は全宇宙の不運な人々の盾になると誓ってみせた幸運戦隊!

d.hatena.ne.jp

『快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー』(18年)前半合評 ~パトレン1号・圭一郎ブレイク!

katoku99.hatenablog.com

『4週連続スペシャル スーパー戦隊最強バトル!!』(19年)評 ~『恐竜戦隊ジュウレンジャー』後日談を観たくなったけど、コレでイイのだろう!?

katoku99.hatenablog.com

『騎士竜戦隊リュウソウジャー』(19年)中盤評 ~私的にはスッキリしない理由を腑分けして解析。後半戦に期待!

katoku99.hatenablog.com

『魔進戦隊キラメイジャー』(20年)最終回・総括・後半評 ~「仲間」を賞揚しつつも「孤高」「変わらないこと」をも肯定!

katoku99.hatenablog.com

『機界戦隊ゼンカイジャー』論 ~『ゼンカイジャー』を通じて「スーパー戦隊」45年史の変転も透かし見る!

katoku99.hatenablog.com


[関連記事] ~スーパー戦隊シリーズ劇場版!

忍風戦隊ハリケンジャー シュシュッとTHE MOVIE』 ~快作!絶賛合評!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20021112/p1

『劇場版 爆竜戦隊アバレンジャーDELUXE アバレサマーはキンキン中!』 ~賛否合評

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20031112/p1

特捜戦隊デカレンジャーTHE MOVIE フルブラスト・アクション』 ~賛否合評

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20041106/p1

轟轟戦隊ボウケンジャーTHE MOVIE 最強のプレシャス』 ~賛否合評

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060814/p1

『電影版 獣拳戦隊ゲキレンジャー ネイネイ!ホウホウ!香港大決戦』

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20080803/p1

侍戦隊シンケンジャー銀幕版 天下分け目の戦』 ~初3D賛否合評 20分の尺でドラマは可能か?

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100810/p1

ゴーカイジャー ゴセイジャー スーパー戦隊199ヒーロー大決戦』賛否合評 ~傑作だけど細部に不満はあり!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20201108/p1

仮面ライダー×スーパー戦隊 スーパーヒーロー大戦』 ~快作!? 怪作!? 圧倒的物量作品を賛否合評!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20201115/p1

『騎士竜戦隊リュウソウジャーTHE MOVIE タイムスリップ!恐竜パニック!!』 ~因縁&発端の恐竜絶滅寸前の時代に時間跳躍!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190818/p1

『劇場版 騎士竜戦隊リュウソウジャーVSルパンレンジャーVSパトレンジャー』合評 ~水準作だが後見人&巨大戦カットをドー見る!?

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200321/p1

『魔進戦隊キラメイジャー エピソードZERO』 ~劇場先行お披露目で戦隊の起死回生は成功するのか!?

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200322/p1

『魔進戦隊キラメイジャーVSリュウソウジャー』 ~2大戦隊共闘を劇的に盛り上げるための助走台ドラマとは!?

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20220507/p1

『魔進戦隊キラメイジャーTHE MOVIE ビー・バップ・ドリーム』&『騎士竜戦隊リュウソウジャー特別編 メモリー・オブ・ソウルメイツ』 ~TV本編ともリンクさせた劇場版の作り方とは!?

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20220516/p1

『機界戦隊ゼンカイジャーTHE MOVIE 赤い戦い!オール戦隊大集会!!』 ~来たるTV新番組への誘導もバッチリなシリーズ45作記念の快作映画!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20220522/p1


洋画『パワーレンジャー』(17年) ~戦隊5人に「スクールカースト」を色濃く反映! 「自閉症スペクトラム」青年も戦隊メンバー!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20170715/p1

パワーレンジャーFOREVER RED』(02年) ~坂本浩一監督作品・戦隊を逆照射!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20080518/p1