假面特攻隊の一寸先は闇!読みにくいブログ(笑)

★★★特撮・アニメ・時代劇・サブカル思想をフォロー!(予定・汗)★★★ ~身辺雑記・小ネタ・ニュース速報の類いはありません

あさがおと加瀬さん。・やがて君になる・citrus ~2018年3大百合アニメ評・細分化する百合とは何ぞや!?

『BanG Dream!(バンドリ!)』 ~「こんなのロックじゃない!」から30数年。和製「可愛いロック」の勝利!(笑)
『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』 ~声優がミュージカルも熱演するけど傑作か!? 賛否合評!
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 2019年11月22日(金)から百合(ゆり)アニメのOVA『フラグタイム』が劇場先行公開記念! とカコつけて……。『フラグタイム』のスタッフが先に手懸けた劇場先行公開の百合OVA『あさがおと加瀬(かせ)さん。』(18年)。加えて、2018年に放映された百合アニメ『やがて君になる』と『citrusシトラス)』評をアップ!


あさがおと加瀬さん。』『やがて君になる』『citrus』 ~2018年3大百合アニメ評・細分化する百合とは何ぞや!?

(文・T.SATO)

あさがおと加瀬さん。

(2018年8月1日脱稿)


 2018年6月9日(土)先行公開の百合OVA。


 ハスキーな低音ボイスの黒髪ショートで長身スレンダーな陸上女子のハツラツとした加瀬さん。
 校庭の中庭で大きな麦ワラ帽子をかぶって花壇をいじっている金髪ショートでチビチビの全身オトメで女のコといった感じの山田さん。
 対極的ともいえるふたりの女子高生の百合関係を延々と描いていく作品である。


 37年前の「アニメ新世紀宣言」(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19990801/p1)が夢見たアニメの未来は、人類の革新! 種としての進化! 無限チカラに試される人類の行く末! みたいな、ドコに出しても恥ずかしくない(?)マクロな議題に挑戦するハズのものだったと思う(笑)。
 それが今や、こんなにも小市民的でミクロな懊悩にすぎる、観てるとヨソさまに後ろ指を指されそうな「百合(ゆり)」だの「BL(ボーイズ・ラブ)」だのに拘泥するだなんて、初志を忘れた堕落の極みだ! 北朝鮮やシリア問題の方を気にしろよ!(ウソです)


 いやまぁ「百合」だの「BL」だのは、個人の隠れた読書体験で終わるモノだったハズで、シネコン内でも一番小さなハコとはいえ、同好の士といっしょに「百合」アニメなんぞを観るような日が来ようとは……。


 一昨年2016年は女性オタ向けのアンニュイな「BL」を題材にした『同級生』というアニメ映画も公開されてたほどで――いやまぁお耽美な世界を観に来た女性ばかりの観客の中に、ルックス的にも醜い筆者みたいな男性キモオタが視界に入ったら、さぞや気分を害するだろうと思って、鑑賞は自粛しましたが(笑)――。


 とはいえ「百合」も細分化。


 深夜アニメ『響け! ユーフォニアム』(15年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20160504/p1)の脇役たちを主役に据えた番外編映画『リズと青い鳥』(18年)は、絵的にも劇中人物のメンタル的にも「真性女子」であって、控えめな女のコの快活な女のコに対する恋情や依存心も混じったかのような片思いの秘めたる百合感情。
 対するに本作は、絵的には野郎向けの美少女アニメの文法寄りで、陸上女子のオトメ女子に対する恋情は、「野郎」の女子に対する恋情や欲情のオルタナ(代替物)だとも云えなくもない。


 陸上女子がオトメ女子のお部屋に招かれて、オトメ女子のいない間にベッドに潜って匂いをかいだり、成り行き&偶然でついつい陸上女子がオトメ女子を押し倒すような格好にもなってしまい……(黄色い声!)。


 筆者にも羞恥心があるので、スクリーンを見つめながら終始ニヤニヤしてました……、みたいな感想を述べることは、「べ、別にアンタのことなんて○○じゃないんだからネ!」ばりに性格的にもムリなので(笑)、ハスに構えさせてもらおう。


 やっぱ、「百合」だろうが「BL」だろうが、美男美女じゃなきゃ相思相愛は成立しないよネ!(爆)


 なので、彼ら彼女らがルックスには恵まれていなかったならば、はたして両者間に相思相愛の「百合」「BL」関係は成立したのであろうか? とついつ勘ぐってもしまうのだ。


 それに「百合」「BL」とはいっても、既存の男女関係や男尊女卑とも無関係ではなく、やはりその中でも擬似的男役・擬似的女役がいるじゃん。快活で颯爽としていて能動的なのが前者で、総受け的なのが後者であって……。
 「可憐で守ってあげたいと思う情動」&「颯爽として頼もしいと思う情動」の非対称な組合せにこそセクシュアリティーが宿るなら……。


 陸上女子を演じるのは「あやねる」こと佐倉綾音。筆者にとっては人気美少女アニメご注文はうさぎですか?』(14年)の主人公ではなく、『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。続』(15年)のアザト可愛いサードヒロイン「いろはす」こと一色いろは
 ロボットアニメ『アクエリオンロゴス』(15年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20151006/p1)での銀髪ショートのメインヒロイン役で、低音ハスキーかつ絶叫も通るボイスも聞き知ってはいたけれど、宝塚の男役をイイ意味で頼りなくて情けなくもしたようなボイスを見事披露!――いや、地声に近いのか?(汗)――
あさがおと加瀬さん。

「あさがおと加瀬さん。」Blu-ray Flower Edition(初回限定生産)
(了)
(初出・オールジャンル同人誌『SHOUT!』VOL.72(18年8月11日発行))


やがて君になる

(2018年12月26日脱稿)


 一見は妹系である女子はピンク髪のショートヘアの女子高生で新入生。
 一見はお姉さん系である黒髪ロング女子も女子高生だけど2年生。
 このふたりの百合関係を描くマンガ原作アニメである。


 百合の概念もインフレしすぎで輪郭がボヤけすぎだろ!? と常々思っているけれども、コレは真性の百合でありかつ、ふたりの関係性さえ良ければ他はドーなっても構わない、世界が滅びようとも構わない、この世の醜いモノは眼に入れたくない……といった、排他的で公共心のプチ欠如や度量の狭さがドコかで匂っているかのような凡百の百合作品とは異なり、そこまでには行かないであろう節度や常識や抑制があって、なおかつヒネりもある作品になっている。


 トンネルを抜けると……ならぬ、校舎のウラの樹林を歩いて抜けていった先には、古びたオシャレな木造棟があり、そこはハイソな面子が集う生徒会の根城であって……。といったワンクッションを置くことで、日常・俗事から少し離れた少々セイントな感じを醸す舞台を構築することにも成功している。
 なぞと書いていくと、ロートル的には往年の名作百合アニメ『マリア様がみてる』(03年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20040406/p1)における生徒会棟との類似も想起するけれど。


 妹系女子はフィクションでは恋愛物語にトキメく感性もあるのに、3次元では異性やその告白にトキメいたことがナイことにプチ苦悩する少女。
 今では中堅の声優・寿美菜子(ことぶき・みなこ)が颯爽としたお姉さんボイスで演じる姉系黒髪ロング女子が、男子生徒に告白されるも丁重に断っている姿を偶然見かけてしまった妹系女子は、生徒会活動を手伝うようになるうちに、少々親しくなった黒髪ロング女子に先の悩みを打ち明ける。


 そうしたら、黒髪ロング女子が頬を紅潮させ瞳をキラキラと潤ませて、


「自分もそうだ。(だから)アナタのことが好きになりそうだ」


と接近してくるのだ!


 似た者同士、いや通じるモノがある者同士、同じ悩みがある同士で、シニカルに見れば心理学的には「共依存」だともいえる百合関係のはじまりか!? と思いきや……。


 ひとりでドキドキと盛り上がって妹系女子に無防備にも隙を見せまくっているのは、普段は完璧超人かつ人間的にも余裕があるように見えて、小首を傾げてプチ・コケティッシュに試してくるような黒髪ロング女子ひとりだけなのだ!
 反対に妹系女子は姉系女子のそんな姿に、たった今しがた「彼女がトキメいたこと」で彼岸へと去っていき、「自分とは異なる存在」になったと感じて瞬時に冷めていき、しかもそんな冷めていく妹系女子のメンタルに姉系女子が気付いていないディスコミュニケーションを描いていくイジワルさ!


 さらに、妹系女子と姉系女子が密かにイチャイチャしているところを目撃してしまった、生徒会を手伝う美少女みたいな中性的な小柄の新入生美少年クンも、妹系女子に「このことを口外しない」と応じつつも、「自身も実は姉ふたりと妹に囲まれて育ったせいで、女性に警戒されないせいか女生徒たちにも常に囲まれていて、異性に対してトキメキを抱かない」のだと独白する。
 しかして彼が妹系女子とまったくな同じワケがなく、似て同なるところと似て非なるところも同時に描いていく。


 さらにそこに、生徒会長に当選した姉系女子の女房役を任じてきた、声優・茅野愛衣(かやの・あい)演じる明るい茶髪の副会長キャラが、姉系女子&妹系女子の急接近に気付いてプチ嫉妬もして、妹系女子に牽制をかけてくる!
 そんな彼女は中学生時代の同性愛体験で失恋してしまった経験があり、姉系女子を助けているようでも彼女に実は依存しているようなプチ病んでいる描写で深みも出していく。


 茶髪女副会長 → 姉系黒髪ロング女子 → 妹系ピンク髪女子 の一方通行な片思い!


 通常、実写作品とは異なり、漫画やアニメは「キャラデザ」や「髪の毛の色」自体がイコール「性格」も表わす記号的なモノだけど――それが悪いというのではなく――、ここでは見た目は甘ったるそうに見える妹系女子が内面においてはシニカルで、見た目はクールな姉系女子にチョロい一面も持たせることで、単なる記号キャラには陥らないナマっぽい多面性も出せている。
――もちろん多面性があるから即優れているワケではない。カルト人気を放つ新房昭之が総監督を務めた昨2017夏のアニメ映画『打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?』などは、清楚さの記号である黒髪ロングのメインヒロインにコケティッシュなキャラ性も付与して、その一点では多面的な描写に成功しているけど、作品全体としては優れていないと私見――。


 予算も潤沢なのであろう。作画や背景美術も美麗であり、それが本作にリリカルさ(抒情性)も生んでいる。


 他方でコレは異性にお相手として見てもらえる人種の特権であって、誰にも依存せずに孤独に堪えるダンディズムみたいな作品も出てきてくれよ! みたいな相反する気持ちがヘソ曲がりな筆者にはあるけれど、それはそれとして一時的には耽美の世界に神経の一部を麻痺させて酔うのも悪くはないと思う。

やがて君になる (1) [ イベントチケット優先販売申込券 ] [Blu-ray]
(了)
(初出・オールジャンル同人誌『SHOUT!』VOL.73(18年12月29日発行))


『citrus(シトラス)』

(2018年4月27日脱稿)


 たいていの美少女アニメでは悪者として登場するか存在しないことにされている(笑)金茶髪なギャル娘と、学園の御曹司でもある黒髪ロングの清楚な生徒会長。この水と油のようなふたりの女子高生の百合関係を描く作品である。


 弱者男子にとっての都合がイイ、可愛さや健気さに特化した性格や、頭身も低くて描線も少なく丸っこい記号的な萌えキャラではなく、デッサン骨格しっかり系の繊細ナイーブな描線による8頭身で、ナマっぽい複雑な内面や人格も感じさせる造形のキャラデザにもなっている。
――アニメでも実写でも、物語である以上は、すべての人物には記号的な簡素化・性格の単純化が施されてるというツッコミはさて置き、ココでは程度問題として捉えてください――


 近年の単なる女性同士の友情すら「百合」と呼称してしまう風潮には個人的には疑問をいだく。それらが百合なら、ありとあらゆる美少女アニメはすべて百合だろう。百合ってゆーのは、マンガ原作の深夜アニメ『青い花』(09年)みたいなガチで嘆美で繊細でデリケートで、時には女性同士の性愛も伴なう作品のことを云うのであって(以下略)。


 そこの『桜Trick』(14年)! すぐにキスするな! そこまでに至る押したり引いたり、付かず離れずな中間過程や揺れる心情を経ないと、キスの場面が盛り上がらん!(笑)
 3期も作られた美少女アニメゆるゆり』(11年)に至っては、どのへんが百合なのかが筆者にはサッパリわからない……。エッ、「ユルい百合」を省略したメインタイトルで全力でエクスキューズしている作品に、そのツッコミはナンセンス? コリャまた失礼いたしました。
 まぁ確信犯的に範囲をズラしたり拡張したり、聞くところによると今では「百合」と呼称した方が売れるから(笑)という商業的理由から来る「総称」にツッコミを入れるのもヤボですナ(汗)。


 一応ギャル娘が主役だけど、そこは野郎向けの商品としてもよくできていて、彼女は真性ギャルではない。いやファッション&スイーツな輩ではあるし、ファミレスでは妄想彼氏とのHをギャル友たちにミエっ張りにも罪悪感なくスラスラと自慢するけど、少女漫画『オオカミ少女と黒王子』(11年・14年に深夜アニメ化)冒頭の主人公女子高生の同じミエっぱりとも同様、その実態は非常にウブだともゆーあたりで、我々非モテのオタク男子もホッとする。


 ここで「ウブなギャル」という語句に、昨2017年夏の深夜アニメ『はじめてのギャル』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20201220/p1)を連想した御仁は間違っている!
 いや、正しいのかもしれないが(汗)、繊細な描線の本作と豪胆な描線の『はじギャル』を同一視するのは、本作に対する冒涜である(爆)。本作でギャル娘を演じる竹達彩奈(たけたつ・あやな)嬢は、『はじギャル』では清楚な黒髪ロングなのに自室ではギャル姿の隠れユーチューバーであったが(笑)。


 で、気合いを入れて化粧をして制服も適度に着崩して、転入先の高校に乗り込んだギャル娘は、校門の前で黒髪生徒会長に拒絶され……。
 トコロがドッコイ、この堅物そうな黒髪生徒会長が校舎ウラで若手男性教師とキスをしているのを目撃したことから(!)、ギャル娘は黒髪生徒会長をその件で脅そうとするも、逆にその唇を奪われて……。


 果てはギャル娘の奔放な母の再婚により、その黒髪生徒会長と義理の姉妹として同居することになり! ……といった往年の少女漫画『イタズラなKiss』(90年・96年にTVドラマ・08年に深夜アニメ化)パターンにもなったりして、なかなかといわずともまぁまぁの序盤ではある。
 しかし、その後の展開は、キョーレツなヒキなり背徳感(汗)には少々欠ける淡泊なモノにも個人的には思えて……。


 とはいえ、アイドル声優竹達彩奈の少々小生意気でも放埒(ほうらつ)の域には行かずに節度も感じられるボイス演技は、本作のギャル娘役にはピッタリには思う。「あずにゃんペロペロ」の『けいおん!』(09年)からでもまる10年。この業界では中堅の域に達したにも関わらず、18年冬季は本作の他に『ラーメン大好き小泉さん』『だがしかし2』と3作ものメインヒロインをゲット!
 昨2017年の缶コーヒー・ダイドーブレンドCMではヒーロー課で黒い強化スーツをまとって顔出し出演を果たし――今やってるCMでは同じくアイドル声優内田真礼(うちだ・まあや)に交代だけど――、今年2018年の『快盗戦隊ルパンレンジャーVS(ブイエス)警察戦隊パトレンジャー』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190526/p1)の女敵幹部役の妖艶な声も見事だし、まだまだ延命できそうだ。

citrus 1 [Blu-ray]
(了)
(初出・オールジャンル同人誌『SHOUT!』VOL.71(18年5月4日発行))


[関連記事]

ラブライブ! 虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』(1期) ~チームでなく個人。百合性など先行作との差別化にも成功!

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2013年冬アニメ評! 『ラブライブ!』(第1期)

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2012年秋アニメ評! 『ガールズ&パンツァー』 ~爽快活劇に至るためのお膳立てとしての設定&ドラマとは!?

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2011年冬アニメ評! 『魔法少女まどか☆マギカ』最終回「わたしの、最高の友達」 ~&2011年冬季アニメ『IS』『フリージング』『放浪息子』『フラクタル

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2004年冬アニメ評! 『超変身コス∞プレイヤー』『ヒットをねらえ!』『LOVE♡LOVE?』『バーンアップ・スクランブル』『みさきクロニクル ~ダイバージェンス・イヴ~』『光と水のダフネ』『MEZZO~メゾ~』『マリア様がみてる』『ふたりはプリキュア

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2003年春アニメ評! 『妄想科学シリーズ ワンダバスタイル』『成恵(なるえ)の世界』『宇宙のステルヴィア

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地獄少女 宵伽 ~SNSイジメの#1から、イジメ問題の理知的解決策を参照する

『ゼロから始める魔法の書』 ~ロリ娘・白虎獣人・黒幕悪役が、人間×魔女×獣人の三つ巴の異世界抗争を高踏禅問答で解決する傑作!
『幼女戦記』 ~異世界近代での旧独vs連合国! 新自由主義者の魔法少女vs信仰を強制する造物主!
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 2019年11月15日(金)から実写映画版『地獄少女』が公開記念! とカコつけて……。
 深夜アニメ『地獄少女』(05年)の最新第4シリーズ、『地獄少女 宵伽(よいのとぎ)』(17年)評をアップ!


地獄少女 宵伽』 ~SNSイジメの#1から、イジメ問題の理知的解決策を参照する


(文・T.SATO)
(2017年12月13日脱稿)


 古めかしいセーラー服や和服に身をつつんだ儚げな黒髪オカッパ美少女とその仲間のオジサン・オバサンたちが、許せぬ悪を文字通り死後の世界の地獄に突き落とす『地獄少女』(05年)が、パチンコマネーか第4期として新作&過去作の傑作選(汗)で中途半端に復活。


 往年のTV時代劇『必殺』シリーズ(https://katoku99.hatenablog.com/entry/19960321/p1)まるパクりの、照明で陰影を濃くした顔UPのモノクロ画像&浮世絵調の地獄絵図のオープニング映像やナレーションは好評のようだが、『必殺』シリーズマニアでもあったオッサンオタの筆者としては、ココまで忠実に再現されると逆に気恥ずかしくなる(私見です・汗)。
 まぁそれはスレたマニアの主観にすぎないけど、筆者の本シリーズに対する評価は「悪くはナイけど絶賛するほどでもナイ」というもの――後期『必殺』シリーズと比すればはるかに面白いけれども(爆)――。


 #1の題材はSNSイジメ。
 ウワァ~。地元や会社とは隔絶した趣味的共同体ではなく、学級の延長としての電脳空間では、腕力や声のデカさやルックスにファッションや他人に対してキツく出れる嗜虐的な人間が優位、気弱で控えめで反論や反撃できない人間が劣位のままで持ち越され、それらが言語化・可視化・アーカイブ化されてブースト・増幅もされていく世界でもあるから、腕力も胆力もなく常にクラスの隅っこでショボ~ンとしていて


「あんな奴いたっけ?」


と後ろ指をさされて、地縁・血縁・学校・会社に帰属意識が持てずに落下した先がコミケだった筆者としては(爆)、自分が今の時代の中高生だったら、今回のゲスト女子高生みたくさらにコジらせて、あるいは最初から学級のSNS共同体になぞ所属しないよナと暗澹たる気持ちになる。


 イジメ問題にはイジメっ子側のケアも必要との意見には一理あるけど、尾木ママはじめイジメっ子と化した原因を社会や親からの虐待・愛情不足に求める意見には笑止千万。
 犬猫を飼っていてもつくづく思うが、後天的な環境や親の教育によらず、人間も個体ごとに先天的な気質・体質・品性の相違がある。他人に対して優しく共感的な子もいれば、加虐的で共感性に乏しく、長じて部下や生徒を大声で罵倒して悦に入ると容易に推測できる子もいる。
 ヒーローショーのジャンケン大会でも平気で後出しジャンケンで勝ち進み、そのことに痛痒も感じていない様子のガキも散見する。


 この現実の上に立つべきで、根源の蛇口を締めることも肝要だけど、釈尊の毒矢の例え同様、毒矢がどこから飛来して誰が射て何の毒が塗ってあったかを議論している間に被害者やイジメられっ子が死んでしまっては元も子もなく、まずは応急処置・緊急避難も必要だ。


 であれば、イジメっ子とイジメられっ子に握手させ仲直りさせる両成敗の偽善ではなく、加害者を退学・転校・隔離して被害者を救うことこそフェアであり、その隠喩としてイジメっ子にこの世からご退去願うオチと見た(ウソです・汗)。


(了)
(初出・オールジャンル同人誌『SHOUT!』VOL.70(17年12月30日発行))



 ……とコジつけて、手前ミソで恐縮ですけど、10数年前に「はてなブックマーク」を付けた「イジメ」問題の理知的解決策の数々に再リンク!


[関連記事] ~イジメ問題!

はてな見せブックマーク ~オタク・イジメ・非モテ中心

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20070125/p1

拙ブログ「katoku99のブックマーク」

(10年以上前の2007年ごろにイジメ問題を中心に「ブクマ」しようとしたものの、継続できなかったモノなのですけど、おかげさまで今でも「『ブクマ』自体への『ブクマ』」や「はてなスター」が付き続けているようです・汗)

  https://b.hatena.ne.jp/katoku99/?mode=detail


拙ブログ「katoku99のブックマーク」の「イジメ」関連ブクマを、以下にピックアップ!

1.「いじめ問題」を解決させたければ、学校の「調整能力」と生徒の「自治能力」を評価に組み込むしかない。 - 想像力はベッドルームと路上から

  https://inumash.hatenadiary.org/entry/20061030/p1
 (イジメ自殺ブクマ1。悪者視されがちな教師・学校の評価制度。コレはそれを逆転。イジメが発覚した時点で評価が下がる現行尺度を廃し、イジメを発見&解決したことに評点を与えよと説く! システム改善による善導!)


2.いじめる側のメリットが大きくコストが少ない限り、いじめ発生は不可避だろう - シロクマの屑籠

  https://p-shirokuma.hatenadiary.com/entry/20061113/p1
 (イジメ自殺ブクマ2。議論の前段として、子供たちの集団生活での適応・ポジショニング、特にイジメる側のメリットを分析し、対するデメリットを増すことでイジメを減少しようという、これまた理知的な理論の提案!!)


3.喪男道 優秀なイジメ考察

  http://shrak.blog17.fc2.com/blog-entry-331.html
 (イジメ自殺ブクマ3。文末尾に注目。アメリカでは70年代に学級崩壊に直面。90年代以降、ゼロトレランス(不寛容方式)が導入され、加害者側を厳罰、あるいは隔離し、学校秩序回復に一定の効果があった旨が語られる!)


4.原宿新聞 - 原宿エリアの最新ニュース - 「いじめ学」内藤朝雄氏に聞く、問題の深層と対策(1)

  http://www.harajukushinbun.jp/headline/406/index.html
 (イジメ自殺ブクマ4。現実政治に対する発言には「?」だが、イジメ問題では学会で斯界最高の分析力を有すると尊敬する内藤朝雄助教授。イジメを2種に分類し、各々に解決策を提示。メジャーな場で活躍してほしい方!!)


5.マル激トーク・オン・ディマンド いじめを無くすためにまず私たちがすべきこと 内藤朝雄氏(社会学者・明治大学助教授) - Munchener Brucke

  https://kechack.hatenadiary.org/entry/20061119/p1
 (イジメ自殺ブクマ5。イジメ問題では学会で斯界最高の分析力を有す内藤朝雄と、90年代に援交・ブルセラを分析する学者として名を売った社会学者・宮台真司のネット配信番組での縦横無尽、多角的な対談の要約! 注目!)


6.内藤朝雄 on 「いじめ」 - Living, Loving, Thinking, Again

  https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20061128/1164677475
 (イジメ自殺ブクマ6。ブクマ4でもふれた、イジメ問題では学会で良質な論考を行う内藤朝雄インタビューを紹介。大枠で賛同しつつも細部で異論やそれに対するクレバーな代案や補論を提示。論考を深めたい方にお勧め!)


7.いじめに関する議論 - 我が九条

  https://wallerstein.hatenadiary.org/entry/20061213/1165998133
 (イジメ自殺ブクマ7。ブクマ4でふれたイジメ問題では学会で良質な論考を行う内藤朝雄の言説を引きつつ、学校解体に現実性がない今、学校がすべき、それが不可なら被害者の法的対抗、学校からの離脱を段階的に提示!!)


8.いじめ論 I~II - ラブラブドキュンパックリコ

  https://web.archive.org/web/20070118092251/http://d.hatena.ne.jp/Maybe-na/searchdiary?word=%2a%5b%a4%a4%a4%b8%a4%e1%5d
  https://web.archive.org/web/20070220152500/http://d.hatena.ne.jp/Maybe-na/archive?word=%2a%5b%a4%a4%a4%b8%a4%e1%5d
 (イジメ自殺ブクマ8。1~8まで素人の義憤の感情論ではなく道徳論でもなく理性的な処方箋を挙げたが、こちらもここ20年のイジメ論の変遷と進歩をイジメ論書籍・記事・事例を多数ひきつつ多角的に展開! 全6章お勧め!)
 (先の往時の有名サイト自体は2007年に閉鎖。2006/11/4と11/19の記事に該当しますが残念、11/4の「いじめ論 I」の方は、かのインターネット・アーカイブ上にも保管ができていなかった模様で・汗)



地獄少女 宵伽 上・下【レンタル落ち】全2巻セット

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#アニメ感想 #地獄少女 #宵伽 #地獄少女宵伽



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ゼロから始める魔法の書 ~ロリ娘・白虎獣人・黒幕悪役が、人間×魔女×獣人の三つ巴の異世界抗争を高踏禅問答で解決する傑作!

『異世界かるてっと』 ~原典『幼女戦記』『映画 この素晴らしい世界に祝福を!-紅伝説-』『Re:ゼロから始める異世界生活 氷結の絆』『盾の勇者の成り上がり』『劇場版 幼女戦記』評  ~グローバリズムよりもインターナショナリズムであるべきだ!
『慎重勇者~この勇者が俺TUEEEくせに慎重すぎる~』『超人高校生たちは異世界でも余裕で生き抜くようです!』『本好きの下剋上 司書になるためには手段を選んでいられません』『私、能力は平均値でって言ったよね!』『旗揚!けものみち』 ~2019秋アニメ・異世界転移モノの奇抜作が大漁!
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 2019年11月8日(金)から小説投稿サイト出自の深夜アニメ『Re:ゼロから始める異世界生活』(16年)の銀髪ロングのメインヒロイン・エミリア嬢を主役に据えた前日談OVA『Re:ゼロから始める異世界生活 氷結の絆』が劇場先行公開記念! とカコつけて……。
 まったくの別作品だけれども、作品名が似ている異世界ファンタジーで、アニメ製作会社も同じだから……とコジつけて(く、苦しい・汗)、ライトノベル原作の深夜アニメ『ゼロから始める魔法の書』(17年)評をアップ!


ゼロから始める魔法の書』 ~ロリ娘・白虎獣人・黒幕悪役が、人間×魔女×獣人の三つ巴の異世界抗争を高踏禅問答で解決する傑作!

(文・T.SATO)
(2017年12月13日脱稿)


 美女と野獣ならぬ、ロリ娘と白虎獣人を看板に据えた、ラノベ原作の西洋中世ファンタジー風アニメ。


 少女と獣人などの変則的な組合せを見ると、筆者のようなネジくれた人間は、野郎キャラを人間ではなく触手を生やしたメカや異形(いぎょう)の生物に代替して女性を凌辱していた80年代オタクたちの発明(汗)を連想してしまい、本作に対しても女性に対して醜く発情した自身の似姿を見たくない、良く云えば繊細で悪く云えば欺瞞的な心性をウラ読みしてしまう。


 絵柄も5頭身でシンプルな描線かつデフォルメされたものであること、ヒロインがロリロリした見た目なことから、往年のラノベ原作アニメ『ゼロの使い魔』(06年)のごとくナンちゃって感の漂うロー・ファンタジーや、同じくラノベ原作の『灼眼のシャナ』(05年)のように10代の少女なのに幼稚園児のメンタルしか持たないヒロイン(笑)が活躍する、オボコい感じの作品を事前にイメージしたのだが……。


 あにはからんや内容はガチのハイ・ファンタジー。どころか社会派でリアル・ポリティクスな物語でもあった!


 劇中世界の「獣人」が「人間」とは別種族の存在ではなく、「人間」の夫妻から突如生まれる「突然変異」だとの世界観説明を手早く済ませて、西洋中世風な石造りの街を舞台に、その顔面をフードで深く隠すもその正体が「獣人」だと知れるや、差別されたり一宿一飯を確保するのにも苦労する、野太い声のマッチョで傭兵稼業な白虎獣人くんのサマが描かれる。


 社会に紛れ込んでいるフツーの人間とは異なる宇宙人・改造人間・超能力者などの異端の存在だと聞くと、古いオタとしてはそこにオタの弱者・少数派としての自己憐憫(笑)の投影と、実社会においては無用である自身の才能・技量・能力を秘かに自負・誇っていたりもする、ウラ返しの大衆侮蔑な優越感を連想してしまって、斜め上からチャカしたくなって手ぐすね引いて待ってしまうけど、本作は安直な「俺TUEEE(強エーー)系」作品にも陥(おちい)らないので隙がない(汗)。


 あげくの果てに夜道では、「魔女」が強くなるには「獣人」の首チョンパが必要だとの設定で、アフリカの黒人社会に色濃く残るアルビノ――肌の色が白い突然変異の黒人――を拉致して食する悪習同様に(汗)、白虎獣人クンの寝首を掻(か)こうと、のちにレギュラーキャラとなる金髪少年魔女(語義矛盾・汗)クンが襲ってくる!
 逃亡の果てに崖から転落した先で、ゼロと名乗っている銀髪ロングのロリ娘の手鍋の夕食を台無しにしてしまう出会いのシーンや、空腹のロリ娘を見捨てられずにムダ話をした果てに彼女と契約を結んでみせる導入部は、世界観&キャラを「説明」ではなく自然な「叙述」として仕上げてもおり惹き込まれてしまう。


 ロリ娘は世間知らずという点では幼稚園児並みだけど、新進の花守ゆみり嬢がボソボソ声で「我が輩」を自称し、終始ロジカルにしゃべる学究魔女なるも、白虎獣人くんを余裕を持ってカラカって、時にデレてもみせる多面性も好感が持てるところだ。


 道中で立ち寄った関所付きの村落を牧歌的な「理想郷」とは描かずに、拾った指輪だけで盗人・魔女扱いしてくる八つ墓村のような因習的な「ムラ世間」としても描いており、「人間×魔女」「人間×獣人」「獣人×魔女」の三つ巴の抗争図式も提示する。


 ミクロな出来事から始まって、ロリ娘ことゼロ嬢自身も知らなかった、その当の彼女を勝手に旗印に掲げている「ゼロの魔術師団」(笑)なる魔女連合が、人間の「王国」に戦争を挑まんとしているマクロな状況も徐々に浮上してくる。
 かといって、反体制・反権力・革命サイコー! みたいな旧態左翼的な二元論にも陥らず、魔女は人間の村を襲撃して人間も魔女狩りを行なっているドッチもドッチで、ロリ娘&白虎獣人が両者いずれにも加担せずに第3の立場に立つ作劇は実にクレバー(利口)である。


 さらには、「王国」に協力して魔女狩りにも加担している黒幕の魔術師が、魔女連合の「ゼロの魔術師団」のトップと同一人物でもあるマッチポンプと、彼がかつてはロリ娘の同僚でもあったことまで判明して、コイツが諸悪の根源なのか!? と思いきや、アタマが良すぎる彼の人間の業までをも見通している世界認識と、そのアクロバティックな処方箋によって一部の真の悪だけを打倒して、この世界に平和を招来せんとしていた目論みについても明かされていく。
 最後はロリ娘と黒幕の魔術師との高踏すぎる禅問答の積み重ねの果てに、この黒幕魔術師も打倒されずに、高度な妥協点を見出して戦いが回避される妙味から来る深い感慨。


 スゴいものを観たゾと思って、円盤売上をググってみると300枚の大爆死(汗)。
 ある作品の「売上が好調だ」という話をすると「それは作品の質とは別の話だ」というご批判をいただいて、まさにその通りだとも思うのだけど、ならば「駄作であることを人気のなさが証明している」といった陳腐(ちんぷ)な論法も返す刀でやめてほしいものである(笑)。


(了)
(初出・オールジャンル同人誌『SHOUT!』VOL.70(17年12月30日発行))


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冴えない彼女の育てかた Fine ~「弱者男子にとっての都合がいい2次元の少女」から「メンドくさい3次元の少女」へ!

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『冴えない彼女(ヒロイン)の育てかた Fine(フィーネ)』合評 ~「弱者男子にとっての都合がいい2次元の少女」から「メンドくさい3次元の少女」へ!

(2019年10月26日(土)公開 配給・アニプレックス

冴えない彼女の育てかた Fine』合評1

(文・T.SATO)
(2019年12月15日脱稿。2022年1月2日に当該ブログ記事に合評1として追加)


 黒髪ロングと金髪ツインテの美少女に、果ては幼なじみの従姉妹や妹系などの美少女にも囲まれて、童貞男子クンがドキドキとして鼻の穴も膨らませる、ラノベ原作の大人気深夜アニメの続編にして完結編。


 個人的にはTVアニメ1期はグダグダな駄目アニメといった印象で、同じく原作者が脚本も務めた美少女ゲームのTVアニメ版『ホワイトアルバム2』(13年)の神傑作ぶりと比すれば、粗雑に過ぎる作りでナメすぎだろうとも思った。
 しかし、原作者自身のゲーム会社経営や創作欲求者(劇作家や絵描き)の業を、高校のゲームサークル主宰の黒縁メガネのテンション高いオタク男子高校生に対してではなく(爆)、黒髪ロング女子の現役大人気ラノベ作家や、金髪ツインテの大人気18禁同人作家に濃厚なまでに詰め込んで、主人公少年もさておいて、このふたりの反発しつつも互いの才能を認めあってもいるかのような、広い意味での百合的関係を背骨に据えたTVアニメ2期は打って変わって神傑作だったと私見


 大人気作品の常で、いたいけな消費者をまだまだ搾取するための連載延長の苦肉の策で(笑)、黒髪ロングと金髪ツインテは主人公少年が設立した高校のゲーム創作サークルを進級とともに退部(!)。後継メンバーは前年度に黒髪ロングや金髪ツインテとともに作った伝奇ゲームでメインヒロインのモデルともなった、ゆるふわな美少女部員だけど存在感はナイ加藤さん(笑)を中心に、幼なじみ系や新入生の妹系が脇を固めて、前作とも遜色がないゲームを作ろうと結束を固める姿も描いていく。
 超人気ビッグタイトルの長寿商業ゲームの筆頭スタッフに抜擢された同人上がりの天才肌かつ政治的センスもある眼鏡の大人気女性マンガ家の挑発・嘲弄の末のスカウトで、サークルへの義理立てや主人公少年とのイチャコラに未練はあるものの、自尊心を傷つけられた苦渋の涙の末に男よりも自身の技量向上を選んで奮起する黒髪ロングと金髪ツインテの姿は正直、ラブコメの歌舞伎的様式美を逸脱しているけど、小市民的な幸福より茨の道でも芸事を極めたいオタの業が仮託されたことで、彼女らはラブコメ的メインヒロインの座からは脱落!(汗)


 そんな第2期につづく本作では、さらなるテーマに挑戦。特に芸も欲もなく成り行きでサークル活動に巻き込まれるも、地道に実務や人間関係の調整もこなして、次第に脚本や演出にもクチを出すようになっていった、ステルス性能が高くて存在するけど存在しないような(笑)、腰のないハンナリとしたややスローモーで甘い口調でしゃべる加藤さんをフィーチャーする。


 それはまた、筆者やネット上の美少女ゲーム論壇などが長年自嘲的に論じてきた「2次元少女は弱者男子にとっての都合がイイ弱者女子。女性尊重のようでもその実、男性優位は温存されるヘタレマッチョ。草食男子ではなく弱めの肉食恐竜。権威主義的傾向とも無縁ではない単なる「親父の二軍」。その中で何らかの右派でなければ左派・趣味的カーストを作って上昇しようとして悦に入る我々もまた俗物であり、それを自覚してもなお女性にハァハァすることからは逃れられない(笑)」とする指摘に、一応のアンサーを提示するモノでもあったのだ!
 あからさまな男尊女卑は論外だ。しかし、近代的な自立した個人による完全対等・同質の冷徹な男女間に恋情は生じうるのか? その逆に生まれや育ちや価値観があまりに隔絶した男女間にも相思相愛は成立しうるのか? それら両者の狭間で女性優位や同性愛も含めて、ふたりの間が釣り合いつつも微差もあって、いわゆる攻め&受け、相手のことを頼もしく思ったり可愛く思ったりもするようなフェティッシュな要素がなければ、良くも悪くも非合理な恋情などは発生しないのではなかろうか?


 加藤さんは金髪ツインテが退部決意を明かしてくれなかったことにスネて彼女を無視することで抗議の意を示し、横暴な天才女性マンガ家が脳溢血で倒れたことで黒髪ロング&金髪ツインテを助けるために自サークルを一時放置して敵に塩を送った行為を自身に相談してくれなかった主人公少年に対して、不機嫌で不穏で実にメンドくさい態度を取りつづけて、時に爆発もする!
 そして、純粋ではない打算と妥協が交じった恋情を少年は自覚し吐露もする。高嶺の花ではない自分でも何とか攻略ができそうな加藤さんだからスキになったのやもしれないと(加藤さんも共依存・共犯的にそれを自覚)。


 フェミニズムの良質な一派は弱者男性にも配慮をするが、強い女が独身であることを「弱い女を選ぶ強い男のせい」にはせずに「弱い男のせい」にして、自身がマッチョな強い男がスキだと実質、公言しているに等しい自堕落な別派もまた根強い。異性や同性に理性ではなくフェティシズムも込みでホレてしまうという、人間の動物的な本能という事実に対しても本作は示唆的。


 最後は恋愛成就と失恋の並立で泣かせるも、ドタバタ喜劇として幸福に閉幕もした。今年2019年の最高のアニメ映画だと私見


(了)
(初出・オールジャンル同人誌『SHOUT!』VOL.76(19年12月28日発行))


冴えない彼女の育てかた Fine』合評2

(文・久保達也)
(2019年11月21日脱稿)


 2012年から2017年までKADOKAWAの富士見ファンタジア文庫から全13巻&短編集4巻のライトノベルとして刊行され、同社の『月刊ドラゴンエイジ』をはじめとする複数のコミカライズ展開、そしてフジテレビ木曜深夜のアニメ枠『ノイタミナ』で2015年冬期に第1期、2017年春期に第2期のテレビシリーズのアニメが放映された『冴(さ)えない彼女(ヒロイン)の育てかた』の完結編が劇場用アニメとして公開された。


 テレビシリーズの第1期は原作の第1巻から第4巻、第2期は第5巻から第7巻までを描いており、今回の劇場版は第8巻からラストの第13巻までを一気に描いている。
 なので、かなりはしょられた部分もあるのだろうが、テレビシリーズも今回の劇場版も脚本は原作者のゲームシナリオライターライトノベル作家丸戸史明(まると・ふみあき)が務めており、第1期&第2期のテレビシリーズを手がけた亀井幹太(かめい・かんた)監督が劇場版の総監督であることからしてシリーズ構成的には問題なかったであろう。


 この物語の発端(ほったん)は、筋金入りのオタク男子高校生主人公・安芸倫也(あき・ともや)が春休みに新聞配達のアルバイト中、桜が舞う坂道で帽子を拾ってあげた少女=加藤恵に運命を感じ、恵をモデルにしたヒロインが主人公のゲームをつくろうと考えたことだ。
 だが、シナリオもイラストも全然ダメな倫也は、まだ高校生で美術部所属なのに18禁同人誌(笑)で大活躍していた金髪ツインテールのハーフ娘=澤村(さわむら)・スペンサー・英梨々(えりり)をイラストレーターに、学年トップの優等生ながらデビュー作のライトノベルが50万部のベストセラーとなった黒髪ロングのモデル体型な超人気ラノベ作家=霞ヶ丘詩羽(かすみがおか・うたは)を脚本家に起用し、ゲーム開発のためにサークルを立ちあげる。


 以後倫也・恵・英梨々・詩羽の四角関係が描かれていく。しかし、本作の特異な点は原作では中盤、テレビシリーズでは第2期の終盤に至るまで、「メインヒロイン」が恵ではなく、英梨々と詩羽の「ダブルヒロイン」制であり、それどころかのちに倫也がゲームの音楽を依頼する紫色ショートヘアで高身長のバンド娘・氷堂美智留(ひょうどう・みちる)や、倫也の後輩で英梨々の後釜(あとがま)として原画担当となる茶髪三つ編みの波島出海(はしま・いづみ)らの方が目立つほどに、恵がひたすら「地味」な存在として描かれたことだ――実は同級生だったのに倫也は恵の名前すらも知らなかった(笑)――。


 英梨々と詩羽の天才的な才能は倫也にあこがれと恋心を抱かせることとなるが、その英梨々と詩羽が「恵をモデルにしたヒロイン」を育てあげたことで、元となった恵もいつしか「冴えない彼女」から成長を遂げ、倫也にとっての「メインヒロイン」へと立ち位置が逆転するのだ――その象徴としてテレビシリーズ第2期の最終回ラストでは、恵は倫也と出会った桜が舞う坂道で、それまでの茶髪ポニーテールから帽子がよく似合うショートボブヘアへと華麗な変身を遂げる――。


 また倫也はどうしようもないオタでエロではあるが、詩羽から「倫理くん」と呼ばれるほどに曲がったことが大嫌いな誠実なキャラとして描かれており――もちろん名前の「倫也」をもじったものでもある――、英梨々と詩羽は激しく争うほどに倫也に恋焦(こいこ)がれてもいる。
 その関係性がドタバタラブコメディとして描かれた末に、英梨々と詩羽は突如として無頼な人気女性漫画家の紅坂朱音(こうさか・あかね)にその才能を引き抜かれ、大作商業ゲーム開発のために倫也のサークルを離れていく。


 ここまでがテレビシリーズの展開であり、今回の劇場版はその続編として描かれた。



 美智留の新曲ライブが描かれる本映画の冒頭では、美智留たちのバンド演奏を舞台の袖(そで)から見守る倫也と恵の反対側に、久々に詩羽と英梨々が現れ、倫也に向かって手を振るが、仲むつまじい倫也と恵の様子に詩羽が物憂(ものう)げな表情を浮かべることで、今でも詩羽が倫也に未練タラタラなのがしっかりと表現されている。


 打ち上げが行われた焼き肉店にて、倫也や恵、美智留のバンド仲間たちから離れた席で、詩羽と英梨々が


「テレビシリーズでは最も目立っていた私たちがナゼ映画ではモブ的扱い?」


だとメタ台詞(セリフ)でグチる(笑)のも、恵にメインヒロインの座を奪われた=倫也を奪われたことをあきらめられないからだ。


 だから、ふたりはいまだに倫也をめぐって罵(ののしり)あいながら、焼き肉店の囲炉裏(いろり)の下でたがいの足をおもいっきり蹴(け)りつづける(笑)。そこで詩羽と英梨々の表情がいっさい映らないのは、とても見せられないほどに恐ろしい形相(ぎょうそう)をしているからにほかならない(爆)。


 倫也と恵が交際を始めようが、メインキャラの四角関係がテレビシリーズからいまだに継続していることが、この映画の導入部に長い時間をかけて丁寧(ていねい)に描かれているのは、その人物相関図を一見(いちげん)の観客に理解してもらうには実に配慮が行き届いているといえるだろう。


 恵に勝ち誇りたいからか(笑)、詩羽がかつて倫也とディープキスを演じたことをここで持ちだすのもまた然(しか)りなのだが、そのことに恵が言葉では平静を装って笑顔を見せながらも顔面蒼白になっている(爆)描写は、倫也への想いの強さを端的に示した名演出かと思えるほどだ。


 倫也の自宅を訪れる前に、手鏡を取り出して前髪を整えたり、「シナリオづくりで徹夜したから食欲がない」と倫也が食べ残した恵手製のサンドウィッチをつまんでみたり、倫也とともに徹夜してスカイプ=インターネット電話の画面で倫也を見守ってみたり……といった描写で恵の想いの強さがたたみかけられることで、それまで倫也を「安芸くん」と呼んでいた恵が、うっかり「倫也くん」と呼んでしまうに至るのも説得力にあふれている。


 翌日から倫也を「安芸くん」ではなく、「倫也くん」と呼ぶようになった恵が、あいかわらず恵を「加藤」と呼ぶ倫也に「加藤はやめて」と告げたり、都電のホームでともにシナリオを構想するふたりがいわゆる「恋人つなぎ」をする場面で、「表情」を映さずに「しっかりと握りあうたがいの手」のみを描写する演出は、絵的には静かながらも倫也と恵の関係性の劇的な進展が絶妙に演出されていたといえるだろう。


 だが、英梨々と詩羽のゲームづくりをコーディネイトしていた朱音が脳溢血で倒れ、倫也は恵との誕生日デートをすっぽかして(!)見舞いに行くばかりか、そのゲームを成功させるために、サークルの副部長に昇格した恵と開発中だったゲームづくりを中断してまで、大阪へと向かってしまうのだ!


 今は恵が「メインヒロイン」でも、倫也には英梨々と詩羽があこがれの存在であることに変わりはなかったのだが、先述してきたように燃えあがり深まる一方であった「倫也と恵の関係性」の描写は、倫也による苦渋の決断が恵にとっては重大な「恋の裏切り行為」として映ってしまう絶大な効果をあげている。


 「ふたりでつくっていたゲームよりも、英梨々と詩羽先輩のゲームづくりを優先させるような倫也のメインヒロインにはなれないよ」


と、都電のホームで悲嘆にくれる恵の場面では、「ひざがガクガクと震える描写」が中心で、その「表情」はほぼ映されず、都電に乗りこむ寸前に倫也を振り返ってはじめて恵が「涙」を見せるのは、彼女の無念さを観客により印象づける秀逸(しゅういつ)な演出となっていた。


 これ以降、それまで何を問われても


「いいんじゃないかな」


などとひたすら低血圧ボイスで自己主張に乏(とぼ)しかった恵が、口調は丁寧(ていねい)であいかわらずの低血圧ボイスながらも、美智留と出海に「リーダーのクセにサークルに迷惑をかけるような倫也」を


「どうでもいい人」


だと罵倒(ばとう)したり、倫也がLINE(ライン)で何度も謝罪しても返事もせずに


「うるさいなぁ」(!)


とつぶやくまでに至るのだ。


 「サークル云々(うんぬん)ではなく、恵は倫也が英梨々と詩羽に走ったことに対して怒っているようにしか見えない」と美智留に完全に看破された(笑)のを必死で否定したり、美智留と出海が談笑している間に、ひざをかかえて横を向いているようなスネた恵がまたカワイイ。


 恵が「主人公にとって都合の良いばかりの2次元の女性」から、「ひたすらめんどくさいだけの3次元の女性」へと成長したことが、これらの描写で端的に示されてもいるのだ。最後に倫也を恵に告白させるために、これは必然的に導きだされた過程でもあるだろう。


 やっと帰ってきた倫也を前にしても、恵は悪態をついて倫也から離れようとする。しかし、それでも恵が「安芸くん」ではなく「倫也くん」と呼ぶことを指摘した倫也に、


「こんなに怒っているのに、いまさら他人行儀にはなれないよ」


と、恵にとってすでに倫也が「どうでもいい人」ではなくなっている事実を端的に示した感情吐露(かんじょうとろ)は、実にリアルに描かれていた。


 そんなにもめんどくさい「3次元の女」になってしまった恵を、倫也は


「2次元のキャラよりも好きだ」


とついに告白する!


 しかも倫也はその理由を、


「高嶺(たかね)の花でしかない英梨々と詩羽に比べ、恵は自分でもなんとか手が届きそうなほどに敷居が低いからだ」


と語るのだ……


 この倫也の感情は、我々のような種族には充分に理解可能であるだろう(汗)。


 だが劇中でも恵につっこまれているように、通常ならこんなことを云われて、ましてやただでさえ関係が悪化している状況で喜ぶ女子がいるハズがない。


 それでも恵は倫也に


「合格だよ」


と返すのだ!


 この場面の中で、先述した美智留と出海との会話のつづきが回想で挿入(そうにゅう)される。


 これまでのゲームづくりで、倫也が自分たちの才能を最大限にひきだしてくれたと想う英梨々や詩羽。倫也と同じ日に同じ病院で生まれた美智留たちにとっては、倫也は「特別な存在」だが、恵にとっては倫也は「特別な存在」ではなかった。


 だからこそ恵は倫也を好きになってしまい、


「ほかの人には絶対に渡さない!」


と、これまでの低血圧ボイスを一変させて激アツに叫ぶのである!


 倫也と恵のゲームづくりを手伝いに来た英梨々が恵と入浴する場面で、


「英梨々や詩羽に手が届かない者同士だから、自分と倫也はお似合い」


だのと語る恵に、英梨々が


「何よそれ」


とムクれる描写があるが、一般人には複雑怪奇に見えて理解不能であろう倫也と恵の感情も、我々にはここで先に恵が語った言葉によって、ふたりが結ばれるのは必然だとあらためて共感できたのではなかろうか?
 オタク少年である倫也の恵に対する想いほどではないにせよ、万事に対して出しゃばることの少ないソフトな性格の恵もまた、どんな男にでも合わせて染まりそうではあるけれど(笑)、性格的にはガツガツした体育会系肉食男子とはそんなに合わないだろうし、倫也のことを良い意味で自分にとっての敷居が低い男の子だと打算的にも感じていて、緩やかな共犯意識も込みでの恋情を抱くようになっていたのだ。


 それにしても、夕焼け空の下で倫也と恵が「恋人つなぎ」をしながら、不器用なディープキスをかわすクライマックスに前後して、自身もまだ倫也に未練があるにもかかわらず、ゲームを手伝ってくれたお礼に、ふたりで倫也の恋を応援しようと英梨々に語る詩羽の無念。


 幼なじみの英梨々に


「10年前に私のことを好きだった?」


と問われ、


「知るか!」


を繰り返して泣き叫ぶ倫也の罪悪感。


「倫也はこれからもあこがれの私たちに変わらずについてくるから、私たちは走りながら待ちましょう」


と英梨々に、そして自身にも云い聞かせる詩羽と、再び泣きだした英梨々が、坂の上に昇る朝日に向かって歩を進めるラストカットに至るまで、泣き演出が連続して炸裂(さくれつ)したのには、さすがに筆者も涙をこらえることができなかった。


 同じ丸戸氏が脚本を手がけた、主人公少年と少女2名によるバンド仲間の良好な関係が最後に崩壊してしまい、とてもではないが“仲間”としての関係が保てるハズのないアンハッピーエンドとなってしまった深夜アニメ『WHITE ALBUM 2(ホワイト・アルバム・ツー)』(13年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20191115/p1)とは正反対に、詩羽が英梨々に「私たちはこれからも“仲間”でいられる」と語ったように、社会人になっても彼らが“仲間”のままであることがエンドタイトルのあとに示される。あくまでドタバタラブコメディとして幕を降ろしたことには、胸が救われる想いがしたものだ。



 最後になるが、筆者は個人的にあまりに萌え度の強いキャラは苦手であり、かといってリアル系のキャラもつまらないと思っている。その意味では、本作で深崎暮人(みさき・くれひと)が手がけたキャラクターデザインはそのあたりのサジ加減が実に絶妙であり、筆者にとっては登場する女性キャラが全員かわいく見える希有(けう)な作品でもあった。


(了)
(初出・当該ブログ記事~オールジャンル同人誌『DEATH-VOLT』VOL.84(20年3月8日発行予定→4月5日発行))


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サマーウォーズ』(09年) ~話題作だがイマイチでは?

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マクロスプラス MOVIE EDITION』(95年)

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 2019年10月26日(土)から深夜アニメ『冴えない彼女(ヒロイン)の育てかた』(15年)とその続編『冴えない彼女の育てかた♭(フラット)』(17年)の完結編映画『冴えない彼女の育てかた Fine(フィーネ)』が公開記念! とカコつけて……。『冴えカノ』原作者の丸戸史明(まると・ふみあき)が自ら全話の脚本を手懸けた『冴えない彼女の育てかた♭』評をアップ!


冴えない彼女の育てかた♭』 ~低劣な萌えアニメに見えて、オタの創作欲求の業を美少女たちに代入した生産型オタサークルを描く大傑作!

(文・T.SATO)
(2017年7月29日脱稿)


「学園一の美少女がラノベを読むなんて!」


と金髪ツインテール娘が、夕陽が差す人気のない放課後の階段で、恋敵の黒髪ロング娘をさげすむ!


 ……そうか。やはりライトノベルを読むのはカッコ悪いことで、バレたらスクールカースト最下層に落ちるから、こんな脅迫が成立するんだネ!(爆)


 後日、


「オタク差別は根が深いのよ!」
「(小学生の時)毎日毎日はやし立てられて、先生だって判ってくれなくて……」


と自身もオタのクセに、男性向け18禁同人誌の大人気作家の正体を隠していた金髪ツインテは、校舎の屋上で黒髪ロングにそのことで迫られて取り乱す!


 ……そうそう、30年前のMクン事件直後の大弾圧の時代と比すれば、オタも随分と市民権を得たけれど、差別がなくなった! イケてる系とイケてない系が等価になった! なんて極論はウソだよネ!


 同時に、黒髪ロングは金髪ツインテ


「アナタはヒトを楽しませるために絵を描いてるんじゃない。いわば復讐みたいなもの!」


と評す。金髪ツインテも売り言葉に買い言葉で、黒髪ロングを


「あなたが書く大ヒットラノベはヒトの感情をテクニックで操る単なる計算。復讐みたいなモチベーションすらない!」


と切り返す!



 池袋の複合映画館シネマサンシャインで――後日付記:2019年夏に閉館して近隣で再オープン!――、『あの花』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20191103/p1)ならぬ『あの雪』(笑)を鑑賞した黒髪ロングは、


「脚本は陳腐もいいトコ。絵・音楽・声優の演技で『何だかわからないけどスゴい』と押し切られてるだけ」


と語る。


「それは演出が良かったと評すべき」


と反駁する黒ブチ眼鏡の主人公で消費ブタなオタク高校生男子に、黒髪ロングは


「妄信的な信者こそが制作者を堕落させる」


と手厳しい。


 黒髪ロングと主人公男子のデート(?)をストーカー(汗)していた金髪ツインテは、対照的に『あの雪』鑑賞後に滂沱の涙を流している。


 あまつさえ、自身の境遇と重ねてか「幼馴染エンド」の素晴らしさを、鑑賞後の喫茶店で鼻息荒く語り出して(笑)、本作メインヒロイン(?)のユルふわでサバサバ、刺激と腰がない柔らか~い声質&スローモーな語り口調が特徴で、非オタの黒髪セミロングの加藤さんが「フ~~ン」と受け止めてあげている(受け流している?・笑)姿も描くことで、ヒロイン3人の対比の妙まで描き出す。


 絶妙なまでの魅力的な美少女キャラの描き分け&ギャグ描写の両立を通じて抽出される、オタを取り巻く状況論・オタが創作に走る動機論・同じオタでも個々人の感動のツボの違い。それらをメタ的に言及してみせる数々の展開が、「あるある」的に刺さる刺さる(笑)。


 コレらは大昔なら、文芸小説の肉筆回覧同人誌であったモノが、美術部や漫研サブカル評論のサークルや文化系部活に取って代わり、さらに現在ではパソコンゲームを作る高校生サークルの面子に変化したモノだともいえるだろう。
 しかも、ゲームだから、脚本・(止め)絵・プログラム・監督などの複数名での役割分担。
 しかし、表層の意匠は違えど、創作の苦楽、才能の限界やスランプにその突破などは、我々のような人種なら、それらに共感・憧憬するトコロが大だろう。


 まぁそれらのスキルは、プロで大成功したならともかく実社会で通用するものではなかったり、世間一般での成長・人格鍛錬・コミュ力向上とは真逆で、鍛えれば鍛えるほど現実不適応になっていく半面もあるけれど(汗)。


 とはいえ、安直なオタ賛美、オタク・イズ・ビューティフル、オタク・エリート説にも陥らず、オタクサークル漫画『げんしけん』(02年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20071021/p1)における春日部さんや、深夜特撮『非公認戦隊アキバレンジャー』(12年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200223/p1)におけるアキバブルーみたく、外部や他者である非オタのヒロイン・加藤さんのサメた視線を配することで、オタの言動の奇矯さや滑稽さ、その善悪両面をビビッドに多角的にウキボリにするあたりも、非常にフェアだと思う。


 もちろんオタのサークルに非オタが紛れ込んで、その本心や知見を開陳し合うことなどまずはナイ。学園№1&№2の美少女の正体が業の深いオタで、ゲーム制作を手伝ってくれてオタク少年にデレたり誘惑したりプチ嫉妬して、フェチ的なアングルや描線の数々とも相俟って胸キュンさせてくれることなど現実にはアリエない。
 しかし、フィクションは事実よりも真実。現実世界では非リアルな出来事でも、物語世界では人間のリアルを突いてくることはありうる!


 終盤、次は伝奇ファンタジーではなく、日常での女の子のナマっぽい可愛さを描くゲームを作ろうとオタク少年は決意する。コレなぞも宇宙SFやファンタジー、果ては宇宙人・未来人・超能力者が学園に存在しなくても、女の子とのやりとりだけで間が持たせられるように進歩したジャンルへの自己言及ですらある。
――他方で35年前の「アニメ新世紀宣言」(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19990801/p1)で言明されたアニメの未来は、こんな小市民的な作品の隆盛ではなかったとも思うけど(笑)――


 一昨年2015年冬アニメの売上的覇者だった本作第1期は、個人的にはヒドい安っぽい作りで、同じ原作者が本作同様に脚本も手懸けた『ホワイトアルバム2』(13年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20191115/p1)の足元にも及ばない出来だと感じたけど、原作ラノベ番外編『冴えない彼女の育てかた ガールズ・サイド』全2巻分を背骨に据えた第2期たる本作は、打って変わって大傑作。第1期は観ない方がイイ、第2期の方から観てください! という傑作に仕上がったと思う(私見です・汗)。


(了)
(初出・オールジャンル同人誌『DEATH-VOLT』VOL.79(17年8月12日発行))


[関連記事] ~オタクサークル&オタク集団・作品評!

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