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ウルトラマンZ前半評 ~ギャグ漫画・ギャグアニメ的なキャラ立て・会話劇での「お遊び」の中に「タテ糸」を挿入!

『ウルトラマンZ』序盤総括 ~セブンガー大活躍! 「手段」ではなく「目的」としての「特撮」!
『ウルトラマンZ』最終回・後半評 ~ネタキャラが敵味方に多数登場だが熱血活劇! 2020年代のウルトラはかくあるべし!
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 シリーズ最新作『ウルトラマントリガー』(21年)#7に、前作『ウルトラマンZ(ゼット)』(20年)が客演記念! とカコつけて、『ウルトラマンZ』前半評をUP!


ウルトラマンZ』前半評 ~ギャグ漫画・ギャグアニメ的なキャラ立て・会話劇での「お遊び」の中に「タテ糸」を挿入!

(文・久保達也)
(2020年9月下旬脱稿)
(2021年1月中旬改稿)

*ハルキ&ウルトラマンゼット=主人公で「遊ぶ」(笑)


 ウルトラマンゼットに変身する主人公のハルキといえば「オッス!」「チェストぉ~~!」が毎回の定番セリフであるように、一見すると熱血体育会系のキャラのように描かれてはいる。ただ、よく観るとそれは特空機(巨大ロボット)を操縦したりウルトラマンゼットとしての怪獣との戦闘時に顕著(けんちょ)となる姿であり、普段はむしろややポ~ッとした天然ボケが強いキャラとして描かれているのだ。
 地球防衛軍日本支部のロボット部隊・ストレイジのヘビクラ・ショウタ隊長やヨウコ隊員&ユカ隊員、バコさんにクリヤマ長官らとの基地内でのやりとりでは彼らにイジられるのを喜んでいるような表情が見られるが(笑)、そんなキャラ造形はいわゆる体育会系の特徴であるアツ苦しさや強引さが苦手な我々のような人種からしても好感がもてるだろう。


 ゼットも地球に来たばかりとはいえ、敬語とタメ口を混同して話すほどに(笑)地球語、いや日本語があまりにデタラメな歴代ウルトラマンでは通常あり得なかったキャラとして初登場時から描かれてきた。そして歴代ウルトラマンを「師匠」だの「兄さん」だの「先輩」と呼称して上下関係を重んじる姿勢は、ハルキ同様の体育会系の気質を端的に表している。
 そんな似た者同士のハルキとゼットの関係性は、彼らの天然ボケぶりを最大限に活かして毎回描かれているボケとツッコミの掛け合い漫才的なやりとり抜きに語ることはできず、これも『Z』の「お遊び」演出を最大に象徴するものだ。


「ウルトラ緊急事態だ! おまえの身体を借りるぞ!」


 「ウルトラマンZ(ゼット)』(20年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200723/p1)第7話『陛下(へいか)のメダル』では、往年の『ウルトラセブン』(67年)そして『ウルトラマンティガ』(96年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19961201/p1)以降に時折見られるようになったウルトラマンの等身大バトルが描かれた!


 この際、ゼットはハルキに等身大での活動制限を「地球時間で50秒」と語る。


 おもわず笑ってしまうセリフではあるものの、ウルトラマンの地球での巨大戦闘時は制限活動時間が3分間であることからすれば一応の説得力も感じられはするだろう(笑)。
 こうしたSF作品としての疑似(ぎじ)科学性をもまずはコミカルに見せることこそが、つづく一連の描写で面白さとカッコよさを両立させたのではあるまいか?


「ゼットさま、小さくもなれるんですね!」(笑)


 かなり年上の男性が好みでハルキからゼットの年齢を「だいたい5000歳」と聞いて以来、ヨウコは「ゼットさまぁ~~」と序盤からゼットに熱を上げてきた。自身の年齢を「だいたい」などと正確に答えられないアバウトさもまたゼットのキャラを端的に象徴しているが、実際5000年も生きていたらカウントするのも大変だろうと、これも「地球時間で50秒」と同様に一応のリアルさと説得力を感じられるものではある(爆)。
 それよりもただでさえ笑えるハルキとゼットの関係性に「ゼットさまぁ~~!」と時折ヨウコが割りこむことが、その抱腹絶倒演出にさらに拍車をかける効果を上げているのは確かだ。


「お会いできて、光栄です!」


 最敬礼したヨウコのヘルメットが、ゼットの胸にある「Z」字状のカラータイマーを直撃(!)してゼットが苦しんだり(笑)。


 この回を演出した坂本浩一監督ならではだが、ゼットがヨウコをかかえながらのペアダンスバトルを披露し、「ウルトラきつい」となげいてみたり(爆)。


「使い方は、え~と……」
「忘れたんスかっ!?」


 第9話『未確認物質護送指令』で、ウルトラマンコスモスウルトラマンネクサスウルトラマンメビウスのウルトラメダルを入手したにもかかわらず、その使い方はどうだったのかゼットは宙を見上げて考えこみ、そのスキに背後からキングジョーに張り倒される(爆)。
 「力には力で」とゼットは初代ウルトラマンウルトラマンエースウルトラマンタロウのメダルでパワータイプのウルトラマンゼット・ベータスマッシュにチェンジするも、キングジョーにかなわない。


「ダメだ、どうしよう……」
「オレに聞く!?」(大爆)


 地球人・ハルキに相談してしまう情けないウルトラマンゼットは完全に三枚目として描かれていた(笑)。


*ヘビクラ隊長(ジャグラスジャグラー)の描写も「遊び」になっている!


「オレ、隊長だったりするんだよな。似合うだろ」(笑)


 映画『劇場版 ウルトラマンジード つなぐぜ! 願い!!』(18年・松竹・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20180401/p1)ですでに対面していた朝倉リク=ウルトラマンジードに、『Z』第6話『帰ってきた男!』で再会してオドケてみせたように、ヘビクラ隊長の正体は『ウルトラマンオーブ』(16年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20170415/p1)のライバルキャラ・ジャグラスジャグラーだった!
 『ウルトラマン』シリーズにかぎらず、『仮面ライダー』や『スーパー戦隊』シリーズでも、かつてのヒーローを演じた役者が後年のシリーズでまったく別の役を演じるのは昭和のむかしからよくあったことだ。
 これまでのニュージェネレーションウルトラマンシリーズの各作が、基本的には個々に別次元の世界とされてきたこともあり、『オーブ』でジャグラーを演じた青柳尊哉(あおやぎ・たかや)氏が『Z』でヘビクラを演じるのは、当初は『Z』の世界観は『オーブ』とは別次元なのだと明確に印象づけるためのキャスティングだとさえ個人的には思ったほどだった。


 しかし、そのキャスティング自体がミスリード演出であり、実際にはまったく逆でコレはうれしい誤算だったのだが、序盤では基地のモニターでゼットや対怪獣用ロボットの特空機1号・セブンガーの戦況を見守るユカに「ちょっとトイレ」(笑)とヘビクラが席をハズす描写が何度も描かれていたことで、「もしや!?」と期待した向きは相当数にのぼったことだろう。
 そういえば、『Z』第1話『ご唱和(しょうわ)ください、我の名を!』では、冒頭で描かれた古代怪獣ゴメスとの戦闘中にセブンガーの活動の邪魔(笑)をしてしまったハルキをクリヤマ長官が叱責する中、ヘビクラが謝罪をうながすためにハルキの尻をつねる描写があった。
 コレは先述した映画『劇場版ジード』でも、テレビシリーズの『ジード』でウルトラマンゼロが体を借りていたサラリーマン・伊賀栗レイト(いがぐり・れいと)を相手にジャグラーがやらかしたことだった。


 これを踏襲(とうしゅう)したのだとすれば、第1話の時点ですでにヘビクラの正体はほのめかされていたのだ(爆)。


「戦士の戦い方ってぇのを見せてくれよな」


 そう云いつつ、第8話『神秘の力』ではハルキの頬(ほお)にキスをするなど(大爆)、腐女子(ふじょし)大喜び的な描写が多いこともジャグラー人気の秘訣(ひけつ)なのだろう。


 『オーブ』で青柳氏が「子供がトラウマになるような悪役」をめざして演じたものの、結果的には「ネタキャラ」となってしまったジャグラー(笑)を再度引っぱりだしたことこそ、ある意味『Z』最大の「お遊び」であり、若い世代を中心としたライト層――といっても今となっては彼らこそが特撮マニアの中での主流派で、視聴や知識収集の熱心さの度合いでいえば新コア層だともいえる――の誘致にもおおいに貢献したともいえるだろう。


 ちなみに、講談社が2020年7月から月2回刊行し、全40号で円谷プロ作品を紹介する分冊百科マガジン『ウルトラ特撮 PERFECT MOOK(パーフェクト・ムック)』の刊行順は2019年7月18日に刊行されたプレ創刊号(vol.0・ISBN:4065164826)で募集した作品の人気投票を基準としているが、『オーブ』はvol.12(20年12月26日発行・ISBN:406520934X)として刊行、つまり人気投票で第12位だったワケだ。
 このベストテン企画では恒例のことながら、昭和ウルトラの第1期&第2期ウルトラマンシリーズや『ウルトラマンティガ』(96年)に『ウルトラマンメビウス』(06年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070506/p1)、そして『怪奇大作戦』(68年・円谷プロ TBS)などが並ぶ結果となっている。
 しかし、なんと『オーブ』はこれらに次ぐ人気で、ニュージェネシリーズの中ではダントツ首位なのだ!――ちなみに第13位は『ミラーマン』(71年・円谷プロ フジテレビ)、第14位は『ウルトラマンガイア』(98年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19981206/p1)、第15位は『ウルトラマンジード』(17年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20170819/p1)だった――


 この事実からしても、ジャグラーの再登板はきわめて妥当(だとう)な英断だったといえるだろう。なので、『ジード』の伏井出ケイ(ふくいで・けい)=ストルム星人とか『ウルトラマンR/B(ルーブ)』(18年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20180826/p1)の愛染マコト(あいぜん・まこと)=精神寄生体チェレーザなどの「ネタキャラ」悪役たちも、今後の作品でジャグラーのようにシレッと復活させて『Z』と同様の成果をねらうべきかと思えるのだ。


 もっとも、第13話『メダルいただきます!』で、ストレイジの基地に突然現れたコイン怪獣カネゴンをかくまおうとしたハルキと、それに気づいてしまったヘビクラ隊長とで交わされた、


「なんだ、コイツ?」
「バレました?」
「気づくわ!」(爆)


などのやりとりで見せたヘビクラのコミカルな一面は、同じコミカル演技でも、ジャグラーの「ネタキャラ」ぶりとは明確に差別化されていた。
 単にキャラ人気に頼るのではなく、ヘビクラとジャグラーがまったくの別人格であるかに装う、あるいはホントにヘビクラとしての人格も新たに誕生しつつあるジャグラーの、青柳氏による演技や演出もまた見事といえよう。
 第10話でヘビクラがジャグラーであるとも知らずにユカが「解剖したい!」とのたまった際、ヘビクラが飲んでいたお茶をプッ! と吹き出す描写もサイコーだったが(笑)。


 ただ、これまでに述べてきた「お遊び」的な要素も、


・特空機の出撃場面で『帰ってきたウルトラマン』(71年)の防衛組織・MAT(マット)以降の伝統となった「ワンダバ」を連呼する男性コーラスと、『ウルトラセブン』(67年)の防衛組織・ウルトラ警備隊の戦闘機発進時の基地内アナウンス「フォース・ゲート・オープン!(第4隔壁門・開扉!)」が流れたり!
・特空機が単体ではなく、セブンガーとウインダムがコンビで活躍するさまが多く描かれたり!
・ハデな戦闘のみならず、第9話『未確認物質護送指令』ではヘビクラとユカがホンモノのウルトラメダルを輸送するヨウコのオトリ役となり、宇宙ロボット・キングジョーの分離・合体を駆使してこれを奪おうとするバロッサ星人との間で頭脳戦・スパイ戦・追撃戦が演じられたり!
・そのキングジョーの残骸から特空機3号として新生したキングジョーストレイジカスタムが、ロボットモード・セパレートモード・タンクモードの3形態に合体・分離・変型して戦ったり!


 そうした超兵器を有する防衛組織ならではのカッコよさや勇ましさがシリーズ序盤からしっかりと描かれていたからこそ、微笑(ほほえ)ましく思えるギャグ演出となりえていたのであり、そのサジ加減を誤ると印象は一変してしまうのだろう。


 ところで先日、YouTubeで配信された『ウルトラマンマックス』(05年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060503/p1)第31話『燃えつきろ! 地球!!』を、本放送以来15年ぶりに視聴した。内容はほぼ忘れていたのにもかかわらず、防衛組織・DASH(ダッシュ)の隊員たちが挑発星人モエタランガによって往年の野球アニメ『巨人の星』(68~71年)の主人公・星飛雄馬(ほし・ひゅうま)のように目が炎と化して燃える熱血キャラとなって暴走する場面で、リアルタイムでいっしょに観ていた当時5歳の甥(おい)が「なにコレ? アホみたい」(大汗)とアキレていたのを思い出してしまった――『激走戦隊カーレンジャー』(96年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20110521/p1)でも、目に炎がやどるギャグ演出回があったと記憶している(笑)――。


 まぁ、もちろん甥がそうであったというだけであって、その一例をもってして全国の子供たちも同様の反応を示していたのだとはいえないが。改めて当時のネット上の超巨大掲示板2ちゃんねる(現・5ちゃんねる)での反応を調べてみると、のちに『仮面ライダーフォーゼ』(11年)やロボットアニメ『天元突破グレンラガン』(07年)に深夜アニメ『キルラキル』(13年)などのメインライターを務める中島かずきが脚本を手掛けたこのギャグ回は、否定的な感想ももちろんあったのだが概して評価は高かったのだった(笑)。
 この2004~2005年は、それまでの特撮マニア間でのハード&シリアス志向が草の根(主に2ちゃんねる・笑)で急速に相対化が果たされてきて、子供向けのギャグ路線もおおいにOKだろう! むしろシリアス志向こそが今でいう「中二病」に過ぎないだろう! というようになり、特撮マニア間での価値観が大きく地殻変動した時期だった――その数年前である2001年ごろだとまだ、子供間では大ヒットしているのにも関わらず、『百獣戦隊ガオレンジャー』(01年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20011113/p1)の熱血B級ノリが、2ちゃんねるに集う年長マニア間では「リアルではない! 軽躁的である!」として酷評されていた時代であったのだ(汗)――。


 なので、往年の『帰ってきたウルトラマン』第48話である怠け怪獣ヤメタランスが登場する『地球頂きます!』などのギャグ回などもビミョーなところがあるのだが、防衛隊にしろウルトラマンにしろ、フザケすぎても子供たちの憧憬対象にはならなくなってしまう危険性はたしかにあるのだ。


*宇宙海賊バロッサ星人は「宇宙の神秘」とは真逆な「チンピラ宇宙人」として「遊ばれる」!(笑)


 ウサギのような金色の長い耳にまんまるな青い目をした一見可愛らしいデザインに見えた、第10話『宇宙海賊(うちゅうかいぞく)登場!』に登場したバロッサ星人。だが終始、「バロッサ! バロッサ!」とエキセントリックに叫ぶばかりで地球語を話すことができず、人間の頭をつかんで意思を乗っ取ることで会話をするあたり、地球人を「下等生物」と呼んでいたワリには自分がそうではないのか?(笑)


 なにせ、ゼットのタイプチェンジ形態・ガンマフューチャーとの巨大戦では、ロシアの作曲家・ハチャトゥリアンによる有名なバレエ楽曲『剣の舞』に軽快に身を踊らせながら(笑)、背中から次々に剣を引っ張り出して、名作映画『七人の侍』(54年)や『仮面ライダーゼロワン』(19年)終盤(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200921/p1)のように大地に突き刺していく!
 その中には『ウルトラマンレオ』(74年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20090405/p1)が初出で、ニュージェネウルトラマンシリーズでも再登場を繰り返してきたサーベル暴君マグマ星人のマグマサーベル(!)や、暗黒星人ババルウ星人の武器である巨大なトゲ付き鉄球(!)が付いた刺股さすまた)までもが含まれていた!
 たしかにバロッサのどチンピラぶりは、『レオ』初期に登場した通り魔的宇宙人を彷彿とさせる。こいつは「宇宙人」ではなくて「星人」である!(爆)


 ちなみに、ゼット・オリジナルとの等身大戦では全身を透明化するマントを使っていたが、コレは『帰ってきたウルトラマン』第19話『宇宙から来た透明大怪獣』に登場した忍者怪獣サータンの毛でつくったのだとか(笑)。まぁコレらは昭和世代大喜びの「お遊び」ではあるのだけれど、一見お笑い系のバロッサがそんな歴代の強敵を次々倒して武器を奪ってきたとして描くのは、その圧倒的な強さと「海賊」らしさを印象づけるには実に効果的だった。


 しかも、バロッサは断末魔に弟たちが復讐(ふくしゅう)に来ると叫び、「何人でもかかってこい!」とゼットが挑発するや、その弟は「9999人」もいるのだとか(爆)。


 『仮面ライダー』や『スーパー戦隊』ではこんなコミカルな敵が登場するのがすでに当たり前となっているだけに、『ウルトラマン』シリーズでも『ウルトラマンマックス』あたりからはそのようなキャラが登場するのも不思議ではないのだけれど――先の『マックス』第31話『燃えつきろ! 地球!!』などはその典型!――、昭和の第2期ウルトラマンシリーズに大挙登場したチンピラ宇宙人たちが、20世紀の年長マニアたちから糾弾(きゅうだん)された70~90年代を知る身としては、やはり感慨を深くせずにはいられない。


 「9999人」もの弟たちの復讐が今から楽しみだ(大爆)。



 抱腹絶倒だった第10話につづいて、第11話『守るべきもの』、そして第12話『叫ぶ命』はハルキに試練が訪れるかなり重い話だった。それを乗り越えて成長するハルキを描くために、この鬱(うつ)展開は第2クール初頭までひっぱられるようだ――紙幅の都合もあり、これについてはハルキの成長を無事見届けてから語ろうと思う――。


 ただ、第1クールがこれまでに述べてきた「お遊び」演出に満ちあふれた明朗快活な作風であり、特撮場面の方が本編よりも尺数の比率が高いのでは? と思えるほどに見せ場が充実していたことからすれば、それだけが理由で視聴者が『Z』から離れる事態には至らないと思える。ほぼ総集編のコミカルな第13話『メダルいただきます!』――もちろんこのサブタイトルは先の『地球頂きます!』へのオマージュである(笑)――をワンクッションはさんでから第2クールにつなげる、緊張感をほぐす配慮からして象徴的である。


 まぁ、その第13話からして史上最大の「お遊び」があったのだが……


カネゴン「赤いアイツだ!」


 ゼット・ベータスマッシュの姿を見上げたカネゴンはあわてふためく。ネット配信されたことで若い特撮マニア間でも有名になった、全身赤を基調として両目をゴーグル状の部分が覆(おお)うベータスマッシュのデザインは、早朝の子供向けバラエティ『おはよう! こどもショー』(65~79年・日本テレビ)の枠内で放映された『レッドマン』(72年・円谷プロ 日本テレビ)の主人公ヒーロー・レッドマンに酷似していたからだ(笑)。
 『レッドマン』は造成地や採石場レッドマンと怪獣が戦うだけの3分ほどの帯番組として製作されたが、その中でカネゴンは原典『ウルトラQ』(66年)での「善良」なる怪獣役とは異なり「悪役」として登場してしまい(爆)、槍状の武器「レッドアロー!」で串刺しにされてしまったのだった(大汗)。
 レッドマンは2008年ごろからネット配信を観た若い特撮マニア間で「赤い通り魔」(爆)なる新しい異名を頂戴し、2012年に開催された企画展「館長庵野秀明 特撮博物館」での音声ガイドでもそのように言及されてしまったりして、人口に膾炙(かいしゃ)したものなのだ。老若に関わらず相応のマニア諸氏であれば、このセリフにはきっと爆笑したことだろう(笑)。


*『Z』には「タテ糸」もあるが、まずは「お遊び」で魅せている!


「『ウルトラマンオーブ』では遊び回ではなく縦軸回をきちんとやれ、みたいな話になりましたが、そもそもこのシリーズでは縦軸回とか遊び回とかを分けず、「基本的に遊ぼう」と主張しました」

講談社シリーズMOOK『ウルトラ特撮 PERFECT MOOK vol.12 ウルトラマンオーブ』(講談社 2020年12月26日発行) 監督・特技監督 田口清隆「君にも見えるウルトラの証言」)



 『ウルトラマンZ』のみならず『ウルトラマンオーブ』でもメイン監督だった田口清隆(たぐち・きよたか)監督の発言にもあるとおり、『新ウルトラマン列伝』(13~16年)の枠内で放映され、その期間も短かった『ウルトラマンギンガ』(13年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200819/p1)、続編の『ウルトラマンギンガS(エス)』(14年)、そして『ウルトラマンX(エックス)』(15年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200405/p1)とは異なり、やっと一枚看板の作品として放映された『ウルトラマンオーブ』以降のウルトラマンシリーズは、昭和以来の伝統である一話完結形式を継承しつつも、そのタテ糸がしっかりとした連続ドラマ性や、各作で作品世界は異なるとはいえ並行宇宙を越境できる概念の導入で、他のウルトラシリーズともつながっている趣(おもむき)が強かった。


 それらの連続ドラマ性や作品越境性を踏襲したかのように、主人公のウルトラマンタイガがウルトラマンタロウの息子であるとか、タイガの仲間でトライスクワットなるトリオを組んでいるウルトラマンタイタス&ウルトラマンフーマが、それぞれ『ザ☆ウルトラマン』(79年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200508/p1)や『ウルトラマンオーブ』と『ウルトラマンR/B』の主人公ウルトラマンたちと同じ星の出身だとか、敵であるウルトラマントレギアがウルトラマンタロウと古くからの因縁(いんねん)がある関係だとか……
 そうしたキャラたちの出自をめぐるナゾ解きをタテ糸に人物相関図の激変ぶりを描いたならばきっと面白くなったであろう前作『ウルトラマンタイガ』(19年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210606/p1)は、実際にはそんな大河ドラマ的なシリーズ構成よりも各回の単品としての物語を重視したつくりになっていた。
 それも地球での平和な暮らしを望む宇宙人たちがトレギアにそそのかされ、葛藤(かっとう)の末に悪事に走るような陰鬱(いんうつ)で湿っぽい話を連発したためか、ネット上での特撮マニア諸氏の反響を見るかぎりでは、序盤ではたしかに楽しんでいた若年(じゃくねん)層やライト層が次第に離れてしまう残念な結果となっていた。


 最新作『ウルトラマンZ』の作品世界や作劇は『タイガ』とは一転して、先述したような近年のウルトラマンシリーズに顕著な連続ドラマ性や作品越境性を強く感じさせるものだ。しかし……


*師匠・ウルトラマンゼロに「遊ば」れるウルトラマンゼット!(笑)


ウルトラマンゼロ「おまえなんか3分の1人前だ!」(爆)


 第1話『ご唱和(しょうわ)ください、我の名を!』の冒頭でウルトラマンゼロウルトラマンゼットにそう吐き捨てるに至ったほど、先輩ウルトラマンのゼロは新米ウルトラマンのゼットから弟子入りを志願されるもさんざん邪険に扱う(笑)。
 だが、宇宙警備隊の若き隊員たちのためにウルトラマンヒカリが開発した歴代ウルトラマンたちの力を秘めたウルトラメダルと、それをハメて用いるパワー召喚用アイテム・ウルトラゼットライザーを、ウルトラ一族の故郷であるM78星雲・光の国を襲撃した凶暴宇宙鮫(ざめ)ゲネガーグが飲みこんでしまう! ゼットとともに宇宙でゲネガーグを追跡していたゼロは、ゲネガーグが口から吐き出した、初代『ウルトラマン』(66年)に登場した四次元怪獣ブルトン(!)によって異空間に飛ばされ、行方不明となってしまう!


「オレの心配するなんざ、2万年早いぜ!」


 第7話『陛下のメダル』で、『ウルトラマンジード』にも登場したベリアル融合獣である巨大怪獣ペダニウムゼットン、そしてそれが変身したスカルゴモラにゼットとジードが苦戦していたそのとき、「シャイニング・スター・ドライブ!」で時間を逆行させ、ワームホールから脱出できたゼロが颯爽(さっそう)と駆けつける!
――『ウルトラマン列伝』(11~13年)の枠内で放映された短編『ウルトラゼロファイト』第2部『輝きのゼロ』(12年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200314/p1)の終盤で、ウルトラマンベリアルの亡霊に憑依(ひょうい)されて全身が黒い姿のゼロダークネスと化してしまい、自らの手でウルティメイトフォースゼロの仲間であるグレンファイヤー・ミラーナイト・ジャンボット・ジャンナインたちを葬(ほうむ)ってしまったウルトラマンゼロが、彼らを復活させるために使った時間逆行能力の再使用!――


 美しい夕陽を背景にゼット、そして『ジード』ではゼロの後輩ウルトラマンとして描かれたジードとゼロ、3大ウルトラマンの共闘が実にカッコよく描かれることになったのだ!


 ただ、それは決してビジュアル的にカッコいいばかりではない。


「オレの弟子を名乗るなら、根性見せやがれ!」


 あいかわらずのヤンキー口調ではあるものの(笑)、このセリフは第1話では「3分の1人前」などと罵倒(ばとう)していたゼットの「弟子」入りを、ゼロが暗に了承したと解釈できるシャレたものなのだ!


 ゼロ&ジード&ゼットの3大ウルトラマンが第7話のクライマックスで見せた共闘は、ゼロとゼットの関係性の変化を最大限に象徴するからこそ盛り上がったのである。これも近年のウルトラマンシリーズでようやく見られるようになった、バトル場面に仮面キャラクターたちの人間ドラマも挿入する作劇的技巧なのだ!


・『ウルトラマンガイア』(98年)のウルトラマンガイアとウルトラマンアグル
・『ウルトラマンメビウス』(06年)のウルトラマンメビウスウルトラマンヒカリ
・『ウルトラマンギンガS』(14年)のウルトラマンギンガとウルトラマンビクトリー


 「1号ウルトラマン」と「2号ウルトラマン」の関係性の変化を描いたかつてのシリーズのように、ゼロとゼットの関係性の進展を描いた『Z』も、キャラの群像劇を描く「連続ドラマ」としての印象を序盤の時点で強くさせたのだ。


 第1話でゼットに倒されたゲネガーグの体内から各地に散らばってしまい、『Z』の防衛組織・地球防衛軍日本支部がひそかに回収したウルトラメダル。それらをねらう怪獣研究センターの青年カブラギ・シンヤに寄生した本作のレギュラー悪である寄生生物セレブロとの「お宝争奪戦」は、古くは『南総里見八犬伝』や『指輪物語ロード・オブ・ザ・リングス』、戦前でも吉川英治の名作時代小説『鳴門秘帖(なるとひちょう)』にはじまり、TVの時代になってからは『隠密剣士(おんみつけんし)』(62年・宣弘社 TBS)や『仮面の忍者 赤影』(67年・東映 関西テレビ)など、脚本家の故・伊上勝(いがみ・まさる)氏らがテレビ草創期の1950年代後半から1960年代前半の時代には「連続もの」として製作されるのが当然だった、超人ヒーロー時代以前の覆面ヒーローや時代劇ヒーロー作品で得意としてきた手法の継承でもある。


 そのセレブロとは別に、『Z』の世界では先述したウルトラマンジードの実の父親で、この10年ほどの劇場版やテレビシリーズでは常連の敵キャラとなっているウルトラマンベリアルの細胞の因子・デビルスプリンターが次元を超えてさまざまな宇宙に拡散して怪獣を凶暴化させており、ゼロやジードをはじめとするウルトラ一族が集っている宇宙警備隊がそれらを捜索して消去しているとされている。
 このデビルスプリンターはセレブロ=カブラギがそれを利用してウルトラマンベリアルメダル(!)を独力で生成する描写などの伏線として有効に機能するのみならず、作品世界のスケール感を中心となる舞台の地球から宇宙全体へと拡大させている。


*『Z』には「タテ糸」もあるが、まずは「お遊び」で魅せている! その2


 いろいろと挙げてきたが、もちろんこれらの「連続もの」としての要素も、『Z』を面白くさせている要因ではある。


 ゼットが名実ともにゼロの弟子と成りえた第7話のラストで、カブラギが身分証明書を落としたのを発端(ほったん)に、第8話『神秘の力』以降に描かれた、カブラギを不審がる地球防衛軍日本支部のロボット部隊・ストレイジのヘビクラ・ショウタ隊長=ジャグラスジャグラーによるカブラギの正体解明を旨(むね)とするサスペンス展開。そして、カブラギがセレブロとしての本性を表すのみならず、ヘビクラもまたジャグラーにたびたび変身しては繰り出されたウルトラメダル争奪戦は、まさに「連続もの」としての真骨頂と呼ぶべきところだろう。


 たとえば第2話『戦士の心得(こころえ)』に登場した透明怪獣ネロンガの放電ヅノを、第4話『二号ロボ起動計画』でストレイジが地底怪獣テレスドンへの有効な攻撃手段として転用するのは、「連続もの」ならではの面白さである。


 だが『Z』の場合、そういった「連続もの」要素よりも、ストレイジ装備研究開発班に所属する理系女子で怪獣出現や怪奇現象発生に狂喜するオオタ・ユカ隊員がよりにもよって冷蔵庫(笑)でネロンガの放電ヅノを保管したために、主人公ナツカワ・ハルキ隊員が入れていた焼きプリン(笑)がダメになってしまい(爆)、ハルキが落胆する……といった「面白さ」の方を強調して演出している印象が強いのだ。


 先に挙げたインタビューの中で、『ウルトラマンオーブ』ではしっかりとしたタテ糸を据えるという命題を課しながらも、そこに基本的な方針として「遊び」を挿入した田口監督は、『Z』では逆に「遊び」にあふれる演出の方を「主」として、そこに「従」として「タテ糸」を挿入しているといった感がある。


 田口監督が自ら起用したメインライターで『Z』の放映直前に37歳の若さで他界した脚本家の故・吹原幸太(ふきはら・こうた)氏は、学生時代に劇団を旗揚げし、主宰(しゅさい)する劇団の舞台を中心にテレビドラマや映画などの脚本も幅広く手がけていたそうだ。


 特撮評論家の故・竹内博氏が70年代半ばに主宰した特撮同人・怪獣倶楽部(クラブ)をモチーフにした深夜ドラマ『怪獣倶楽部~空想特撮青春記~』(17年・毎日放送http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20170628/p1)も実は氏の脚本作品であり、それ以外にも、


・『動物戦隊ジュウオウジャー&手裏剣(しゅりけん)戦隊ニンニンジャー スーパーライブ』(16年)
・『宇宙戦隊キュウレンジャー 究極の選択! 天秤(てんびん)にかけられた友情!!』(17年)
・『快盗戦隊ルパンレンジャーVS(ブイエス)警察戦隊パトレンジャー 華麗なる新戦士! ルパンエックス・パトレンエックス!!』(18年)
・『騎士竜戦隊リュウソウジャー シアターG(ジー)ロッソに現る!!』(19年)


など、氏は東京ドームのシアターGロッソで開催された近年のスーパー戦隊のアトラクションショーの脚本をも手がけていたのだ。


 ところで田口監督といえば、映画『劇場版ウルトラマンオーブ 絆(きずな)の力、おかりします!』(17年・松竹・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200406/p1)のクライマックスで、怪奇現象追跡サイト・SSP(エスエスピー)のメンバーたちが、


「みんなでウルトラマンを応援しよう!」
「行くよ! せ~~のっ!」


と観客に呼びかける、夏休み恒例のイベント『ウルトラマンフェスティバル』でライブステージの進行役を務めるお姉さんの役目をまんまパクった演出が、個人的には強く印象に残っている。
 学生時代からマニアックな自主映画を大量に製作してきた田口監督はプロの現場に入ってからもなかなかマニアックな感覚から抜け出せなかったそうだが、たまたま観た『ウルトラマンフェスティバル』のステージショーに対する、特撮マニアたちのツボとは異なる子供たちの熱狂ぶりに接したのを契機に、以降は我々のような偏向した特撮マニア向け(笑)ではなくフツーの標準的な子供を強く意識してウルトラマンを演出するようになった旨を同映画のパンフレットで語っていた。なるほど、それは実に正しい選択である。スーパー戦隊のアトラクションショーを多数手がけた実績を持つ吹原氏を田口監督が指名したのは、そんな心の変遷(へんせん)と決して無関係ではあるまい。


 ちなみに吹原氏は、『仮面ライダージオウ』(18年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20191020/p1)のオリジナルビデオ作品で小学館の幼年誌『てれびくん』の愛読者全員サービスDVD『てれびくん超バトルDVD 仮面ライダービビビのビビルゲイツ』(笑・19年)の脚本も担当しており、漫画家の故・水木しげる氏の代表作『ゲゲゲの鬼太郎(きたろう)』に登場する人気キャラ・ビビビのねずみ男とかけあわせたそのタイトルは実に「遊び」心にあふれていた。
 そんな吹原氏の「遊び」の心にシンパシーを感じ、それこそが『Z』、ひいては「新時代」のウルトラマンに最も必要だと田口監督が考えたからか、『Z』は全体的に前作の『タイガ』とはまったく異なる明朗快活な作風となったのだ。


*防衛組織の隊員やカプセル怪獣でも「遊ぶ」!


 先述した『ウルトラマンオーブ』は、毎回の中心となるレギュラーキャラが怪奇現象追跡サイト・SSPに所属する若者たちであり、当初は実作品とは異なり怪獣攻撃専門の防衛組織は完全に出さないとの案もあったそうだ。だが、田口監督がそれはさすがにリアルではなかろうと強硬に反対したことから、折衷(せっちゅう)策としてヒロインである夢野ナオミの叔父(おじ)・渋川一徹(しぶかわ・いってつ)が所属する防衛組織・ビートル隊をセミレギュラー的に出すかたちに落ち着いたそうである。以降は、


・『ウルトラマンジード』では、主人公少年&ヒロインやその仲間と正義の宇宙人組織が協力して悪側と対決、
・『ウルトラマンR/B』では、主人公の青年兄弟と女子高生の妹、アパレルショップを経営する父と行方不明から帰還した母による家族組織(!)が悪と戦い、
・『ウルトラマンタイガ』では、主人公青年と宇宙人男性、終盤ではその正体が宇宙生まれのアンドロイドだと発覚した若い女性らが、元警察組織にいた地球人女性が結成した民間の警備会社に所属して共闘する


といった調子であり、昭和の初代『ウルトラマン』から平成の『ウルトラマンメビウス』に至るまで、主人公が地球の大規模な防衛組織に所属するという『ウルトラマン』シリーズとしては当たり前だったパターンを破る変則的な設定がつづいてきた。これは近年の子供たちの「メカ離れ」により、劇中で防衛組織のカッコいい戦闘機や特殊車両などのメカを大活躍させても、それらを商品化したバンダイ発売の合金玩具が売れなくなった背景事情が大きな要因として考えられる。


 そして、やはり田口監督がメインを務めた『ウルトラマンX』以来、実に5年ぶり(!)に本格的な防衛組織をレギュラーとして復活させるにあたり、スタッフ陣は『ウルトラマンZ』では戦闘機や特殊車両のカッコよさではなく、それ以外の要素で防衛組織が視聴者に魅力的に映るような方策を次々に繰り出している。


 『Z』に登場する地球防衛軍・日本支部のロボット部隊であるストレイジは、


・設定年齢34歳のヘビクラ・ショウタ隊長
・主人公青年でウルトラマンゼットに変身するナツカワ・ハルキ
・作戦班所属パイロットのナカシマ・ヨウコ
・装備研究開発班に所属する科学者のオオタ・ユカ


 以上の男女各2名が主要メンバーとして所属するのみだ。


 だが、整備班リーダーの還暦(かんれき)間近で白髪まじりのイナバ・コジロー=通称・バコさんが率いる整備班の隊員たちがメカの格納庫や作戦現場に多数配置されたり、ロボット部隊の基地とは別に所在する怪獣研究センターの描写や、ストレイジを創設した日本支部長官・クリヤマセミレギュラーで登場するなどにより、予算が少ない中でもその組織のスケールの大きさを醸(かも)し出すことには成功している。
――ちなみに、クリヤマ長官を演じるのは、ちょうど『Z』の放映期間中に動画無料配信サイト・YouTube(ユーチューブ)で配信されていた『仮面ライダーウィザード』(12年)では、主人公側のキャラで骨董(こっとう)品店・面影(おもかげ)堂を経営する「輪島(わじま)のおっちゃん」を演じていた小倉久寛おぐら・ひさひろ)氏だった――



 本部で通信を担当するのが女子隊員の主な任務だった昭和ウルトラとはさすがに時代が違うとはいえ、『Z』での女子隊員の大活躍ぶりには目を見張るものがある。


 曾祖父(そうそふ)の代からつづく軍人一家を出自とするヨウコが、ストレイジに配備される対怪獣用ロボットの


・特空機1号であるセブンガー
・特空機2号であるウィンダム
・特空機3号であるキングジョーストレイジカスタム


などのコクピットに乗りこんで毎回怪獣とカッコよく戦うさまは、昭和ウルトラにたとえれば初代『ウルトラマン』の防衛組織・科学特捜隊のアラシ隊員や『ウルトラセブン』の防衛組織・ウルトラ警備隊のソガ隊員、『ウルトラマンA(エース)』(72年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070429/p1)の防衛組織・TAC(タック)の山中隊員など、「射撃の名手」として設定された隊員たちの役回りを継承しているともいえる。


 まぁ、リアルに考えたら特空機のコクピット内にいるヨウコの戦闘時の掛け声や悲鳴が、エコーのかかった大音量で外部に聞こえたり外部に流したりするハズはないのだけれど(爆)、これは往年のロボットアニメ『マジンガーZ(ゼット)』(72年・東映動画→現・東映アニメーション フジテレビ・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200119/p1)の時代からのお約束でもあるし、ハルキとウルトラマンゼットの関係性のようにヨウコが特空機と「一心同体」と化しているかのような描写によって、そのキャラを立てるための演出でもあるのだろう。


 第6話『帰ってきた男!』では、冒頭からハルキが操縦するセブンガーとヨウコが操縦するウインダムが模擬(もぎ)戦闘を繰りひろげる! 『Z』での特空機の導入は、昭和から平成にかけてはウルトラマンの戦闘場面といえば大抵はクライマックスの1回だけだったウルトラマンシリーズに(除く『レオ』)、ようやく冒頭や中盤でも特撮戦闘場面を描くようになってきた近年の作品群に見られる、子供たちや視聴者へのツカミを増やためのすバトル演出をさらに発展させた手法として高く評価されるべきだろう。


 ただ、そればかりではなく、この回では映画『劇場版 ウルトラマンジード』に登場した白亜のロボット怪獣であるラストジャッジメンター・ギルバリスが再来し、その光線からウインダムがセブンガーをかばって倒れる描写があったのだ。
――なお、この映画にも登場したジャグラー=ヘビクラが「(ギルバリスが)復活したのか!?」とつぶやく描写で、その映画とこの回の双方を演出した坂本浩一監督は、マニアよりも怪獣博士タイプの子供たちの方が気にするだろう、『劇場版ジード』と『Z』第6話に共通項がある登場人物がいることをキチンと念押しさせていた――


 ところで、第10話『宇宙海賊登場!』に登場したチンピラ宇宙人(笑)、もとい海賊宇宙人バロッサ星人のような等身大宇宙人の攻撃からヨウコがハルキをかばうよりも、ギルバリスのような巨大怪獣の攻撃からハルキが操縦するウインダムをかばってヨウコが操縦するセブンガーが盾(たて)となる描写の方が、後輩のハルキに対する先輩のヨウコの想いの描写としては、格段に印象強く残るのではなかろうか? 先にヨウコは特空機と「一心同体」として描写されていると書いたが、それはハルキとの「関係性の変化」を描くための効果的な手段にも成りうるのである。



 さて、ヨウコとは対照的な理系女子(リケジョ)のユカは、初代『ウルトラマン』の科学特捜隊でいうならば各種光線銃や宇宙語の翻訳機、地底戦車に至るまでのメカ開発を担当したイデ隊員や、『ウルトラマンA』のTACで兵器開発専任だった梶(かじ)隊員的なポジションだろう。
 また、同じTACの巨漢でややお人好しの今野(こんの)隊員や、『ウルトラマンタロウ』(73年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20071202/p1)の防衛組織・ZAT(ザット)の常にスットボケた印象で怪獣の捜索中に釣りに興じたこともある北島隊員(笑)らに見られたギャグメーカーとしての役回りも与えられていた。
 ユカはこの双方を兼ね備えていたイデ隊員を彷彿とさせるが、やはりかつては男性隊員の役割だった兵器開発とギャグメーカーを兼任する女性隊員として、そのキャラは立ちまくっている。


 たとえば、第8話で行方不明になったハルキを捜すヨウコが、街中で買い出し帰りのユカに出くわす場面。


「ハルキ見なかった!?」
「そんなことより、コレ見てよ!」


 後輩のハルキを心配するヨウコに対し、ユカは買い出しの途中でひろったハルキがウルトラマンゼットへの変身に使用するアイテム・ウルトラゼットライザーを得意げに示したあげく、それが地球外物質でできているなどと大喜びする(笑)。
 この両極端な対比でキャラを掘り下げる演出は実に見事だったが、仲間の安否(あんぴ)よりも自身の趣味嗜好(しこう)を優先してしまうユカの姿は、ほぼ同じ人種の我々オタクたちからすれば「あるある」(汗)的なリアルすぎる描写であり、苦笑するしかなかったものだ。


 『帰ってきたウルトラマン』の防衛組織・MAT以来の伝統である武道場での稽古(けいこ)場面でヨウコにいとも簡単に組み伏せられるさまにはじまり、買い出し中に超古代怪獣ゴルザ・超古代竜メルバ・宇宙戦闘獣超コッヴが合体した合体怪獣トライキングを見かけて、


「3怪獣合体、超激レア!」


と喜んだり、あげくはこの回の敵役として登場した変身怪人ピット星人の美人姉妹とのバトルもそっちのけで


「お願い、研究させて!」(爆)


と頭を下げてみたりと、この第8話でユカを我々のような人種とほぼ同族として描くことで一気に感情移入を集める演出はあまりに秀逸(しゅういつ)であった(大爆)。


ウルトラマンゼロウルトラマンジード=「師匠」&「先輩」関係でも「遊ぶ」!


 これらの方法論が最大限に活かされたのが、「師匠」のウルトラマンゼロ、そして「先輩」のウルトラマンジードとウルトラマンゼットとの関係性を描いた第6話&第7話だろう。


 『ウルトラマンジード』で「師匠」のゼロと共闘関係にあったジードはゼットにとって


「ウルトラすごい兄弟子でございますよ!」(笑)


であり、ハルキはハルキでジードに変身する朝倉リクのことを


「リクくん先輩」(笑)


と呼ぶのだ。ゼットもハルキもいかにもな表現だが、これではジード=リクのことを尊敬しているのだかコケにしているのだかよくわからない(爆)。
 だが、ジード=リクをゼットやハルキが称したとおりに描くことで、「ウルトラすごい兄弟子」だの「リクくん先輩」などと云ってしまう「面白さ」を「カッコよさ」へと昇華させる作劇的技巧にこそ注目すべきだろう。


「(ウルトラマン)ヒカリがこれをキミにって……」


 第6話&第7話では、『ジード』で元々「星雲荘」なる古アパートでリクと同居していたことから共闘する仲間となったマスコットキャラ・ペガッサ星人ペガも、近年は円谷プロの専属になったのか? と思えるほどの人気若手声優・潘めぐみ(はん・めぐみ)氏が声をアテることで再登場した――まぁ新人とはいえ顔出しの役者さんとは異なり、着ぐるみキャラや声優さんなのでギャラが安いからこそ可能な処置なのだろう(汗)――。
 第6話の回想では、映画『劇場版 ウルトラマンジード』にも登場したジードと因縁が深いロボット怪獣=ギルバリスとの戦闘でリクが変身に使用していたアイテム・ジードライザーが破壊されてしまったことが判明する。ペガはその代わりにとウルトラマンヒカリから託された、ハルキがゼットへの変身に使うゼットライザーを、そしてウルトラマンギンガ・ウルトラマンエックス・ウルトラマンオーブのウルトラメダルをリクに渡すために地球に来訪したのだった――ペガもそんな重要な任務を与えられるほど、ウルトラマンヒカリから信頼を得ているのだと、怪獣博士タイプの子供たちや我々マニア視聴者たちに思わせるのが秀逸!――。



 『Z』のキーアイテム・ウルトラメダルと変身アイテムのゼットライザーは、M78星雲の宇宙科学技術局に所属するウルトラマンヒカリが若き宇宙警備隊員たちのために開発した設定になっている。思えば『ジード』でも、リクがジードへの変身に使用した歴代ウルトラマンの力を秘めたウルトラカプセルは実はヒカリが開発したという設定になっていた。
 要はただの玩具まるだしのオモチャで、昭和ウルトラの世界観とはかなり異なるトンデモな属性をもったアイテムの数々でもあるのだが(笑)、そこに少しでも必然性を与えるためにも、昭和ウルトラ世界のウルトラ一族であるウルトラマンヒカリがつくった超科学アイテムだということにしておけば許せてくるどころか、けっこうな説得力&昭和ウルトラ世界直系の由緒の正しさも醸せてくるのだ!(笑)


 ちなみに、映画『劇場版 ウルトラマンギンガS 決戦! ウルトラ10勇士!!』(15年・松竹・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200404/p1)の続編として製作され、『新ウルトラマン烈伝』の枠内で放映された短編『ウルトラファイトビクトリー』(15年)にもウルトラマンヒカリは登場していた。そして、ここでは宇宙の帝王や悪霊を封印する力を持つ魔笛封印剣(まてきふういんけん)・ナイトティンバーを、『ウルトラマンギンガS』の2号ウルトラマンであるウルトラマンビクトリーに与えていた。
 『ジード』や『Z』もそうだが、この『ファイトビクトリー』にも本来は『ウルトラマンメビウス』の2号ウルトラマンだったヒカリのみが登場して、1号ウルトラマンウルトラマンメビウスは登場していない――YouTubeで配信された短編の最新作『ウルトラギャラクシーファイト 大いなる陰謀(いんぼう)』(20年)ではヒカリとともにメビウスも登場したが――。
 ただ、最新ヒーローをパワーアップさせるには打ってつけの存在として、ヒカリを良い意味での「便利屋」として機能させるに至った『メビウス』での「M78星雲・宇宙科学技術局」所属という設定は、将来的な展望を見据えたすばらしいものだったのだ。……いや、当時は絶対にそこまで考えてはいなかっただろうが(笑)。


 むしろ、しょせんは商品点数を増やすための「2号ウルトラマン」にすぎず、フツーであれば『メビウス』前作の『ウルトラマンマックス』の2号ウルトラマンであるウルトラマンゼノンのようにとっくに埋もれてしまっていたであろうヒカリの存在を、最新ヒーローの変身アイテムや武器の背景=バックボーンとして最大限に活かして、ウルトラシリーズの世界観の再確認にもつなげている、近年のスタッフたちにも敬意を表すべきなのだ。ヒカリが露出をつづけることで、必然的にその出自である2021年で「15周年」を迎える『メビウス』にも世間の関心の目は向けられるのだから。


 第6話のクライマックスではギルバリスに破壊されて大炎上したコンビナートの紅蓮(ぐれん)の炎を背景に、


・ギンガ&エックス&オーブのウルトラメダルとゼットライザーでリクが変身したウルトラマンジードの最新形態・ギャラクシーライジン
ウルトラマンゼットのパワー形態であるベータスマッシュ


 両者が「ウルトラすごい」共闘を繰りひろげた!


 先端がトガった青い目が特徴のジードのマスクをそのままに、濃紺をベースに赤や金が配色されたアーマーを全身に装着したギャラクシーライジングの必殺技は、全身を発光させて巨大な炎を放つ「レッキングフェニックス!」だ!
 そして、ゼットは第5話『ファースト・ジャグリング』で、太古にウルトラマンが冷凍怪獣ペギラを封印したとして語られた槍(やり)状の新武器・ゼットランスアローから炎の力「ゼットランスファイヤー!」を放った!


 コンビナートを手前に勝利のポーズをキメる両雄の背景には炎が上がるさまは、東映製作のメタルヒーロー時空戦士スピルバン』(86年)にはじまるヒーローものお約束の定番演出なのだが、実にカッコいい!



 さて、序盤で語られたように、『Z』の世界では次元を超えてさまざまな宇宙に拡散して怪獣を凶暴化させる元凶・デビルスプリンターなる存在が設定されており、その調査のためにジードはこの世界の地球に飛来するに至ったのだ。そのデビルスプリンターは『ジード』のレギュラー悪のみならず、映画『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE(ザ・ムービー)』(09年・ワーナー・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20101224/p1)から『Z』に至るまで、この十数年もの間にウルトラマン最大の宿敵として描かれつづけてきたウルトラマンベリアルの細胞の因子なのだ!
 このベリアルもまた先述したウルトラマンヒカリと同様に、近年ではすっかり「便利屋さん」と化したかの印象が正直、個人的にもある。ただ、新作がつくられるたびにベリアルを引っぱりだすことで近年の作品に連続性を与えて、しかもそれらを基本的にすべて別次元での出来事として描くことで、むしろ宇宙規模どころか並行宇宙規模での世界観拡大の効果を上げているのは確かだろう。


 ひさびさの地球なのに、いやだからこそなのか、第7話の冒頭でリクがカップラーメンを食いまくる描写はたしかに「リク先輩」ではなく、「リクくん先輩」(笑)と呼びたくなる一見オチャメな演出ではある。
 だが、第6話のラストに回想として挿入された映画『ウルトラ銀河伝説』からのベリアルVSウルトラマンタロウの場面――原典の映像ではベリアルの体皮がハガれ飛ばされていないので、実は改めて撮り直したものだったそうだが――、そして映画『ウルトラマンゼロ THE MOVIE 超決戦! ベリアル銀河帝国』(10年・松竹・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20111204/p1)以来、定番で流れているベリアルのテーマ音楽が象徴するように、この回ではカブラギ=セレブロが高純度のベリアル因子からベリアルメダルを精製し、『ジード』ではベリアル融合獣として登場したスカルゴモラ・サンダーキラー・ペダニウムゼットンの3体に自ら変身してジードとゼットに挑戦するのだ!


「これ以上、ベリアルを……、父さんを……」


 『ジード』最終回(第25話)『GEED(ジード)の証(あかし)』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20180213/p1)でジードの実の父親であるウルトラマンベリアルの満たされない想いに心を寄せ、「もう終わりにしよう」と浄化して葬ったハズのベリアルの細胞がいまだに宇宙に悪影響をおよぼしている……
 『ジード』では戦闘を控えたリクが、「腹が減っては戦(いくさ)はできぬ」とばかりにカップラーメンを食べるコミカルな定番描写があったものだ。だが、今回は父のベリアルがいまだ宇宙の脅威であることに対するリクの焦燥感・切迫感といった、おもわずヤケ喰いせずにはいられなくなるリクの心象風景としても機能しているのだ。


*ヘビクラ隊長(ジャグラスジャグラー)の描写も「遊び」になっている! その2


「正義にめざめたって云ったろ」(←・ウソつけ!(笑))


 そして、映画『劇場版ジード』では、リクをはじめとする正義側のキャラとして登場したジャグラーが、髪型もメイクも服装も異なるもののそのエキセントリックな語り口調はほぼ同じ(爆)なストレイジのヘビクラ隊長の姿でリクとの再会を喜び合う(?)描写は、やはり『ジード』と『Z』世界の間接的な関係性が強調されるばかりではなく、視聴者にジャグラーの行動の真意についてより洞察させる効果も発揮しているのだ。


 第7話のクライマックスバトルではカブラギがベリアルメダルで自らベリアル融合獣に変身! 夕焼けに染まる工場街でジード&ゼットとの大激闘が展開される! 平成以降のウルトラマンのタイプチェンジのように、ベリアル融合獣が


・どくろ怪獣レッドキングと古代怪獣スカルゴモラが合体したスカルゴモラ
・宇宙怪獣エレキングと異次元超人エースキラーが合体したサンダーキラー
・宇宙ロボットキングジョーと宇宙恐竜ゼットンが合体したペダニウムゼットン


へと自在に姿を変える演出がまた、『ジード』にしか登場できない設定の怪獣たちかと思わせておいて、ここで再登場させてくれたことのファンサービスへの喜びとともに、『Z』における3つのメダルの力をウルトラゼットライザーを使用して起動させるという基本設定的にも、あってしかるべき設定的整合性もあるクレバー(利口)な描写だったのだ!


 ところで、『オーブ』から『Z』に至るまで、ジャグラーは宇宙恐竜ゼットンと双頭怪獣パンドンが合体した合体魔王獣ゼッパンドンに何度か変身してきたが、ジャグラーは歴代怪獣をカードで召喚する際、


ゼットンさん」「パンドンさん」


などと、ウルトラシリーズ初期作の人気怪獣は「敬称」(笑)をつけて呼んでいた――一方で、マガオロチなどの近作の怪獣は「呼び捨て」にする差別化された演出も秀逸だった(笑)――。


 これに対して、カブラギはたとえばスカルゴモラに変身する際は


「どくろ怪獣」「古代怪獣」


などと、怪獣を名前ではなくその「別名」で呼んでいるのだ。コレは普段から無表情・無感情なカブラギ=セレブロのキャラをいっそう念押しして、ジャグラーとの対比でキャラの明確な違いを印象づけるには絶妙な演出だ。


*ゼット・ゼロ・ジード、3大ウルトラマン共闘は超カッコいいけど「遊び」要素もある(笑)


 『Z』ではハルキは立方体型の異空間内でゼットに変身するが、この第7話ではそれが宙から舞い降りてくる描写にまず目を惹(ひ)きつけられた!
 つづいて夕陽をはさんで、工場街に並び立つジードとゼットの目とカラータイマーが、夕陽からの木漏れ日に照らされて輝く華(はな)のある演出!
 そして、巨大ロボットアニメもとい巨大変身ヒーローアニメ『SSSS.GRIDMAN(グリッドマン)』(18年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190529/p1)並みにミニチュアセットに多数張られた電線を画面手前にナメながら、工場街を進撃するスカルゴモラをカメラが横移動で追いつづける!
 さらに、ジード&ゼットとスカルゴモラの激突は地上にいる人間の目線から見上げているかのように、画面手前に歩道橋や信号機を配置しながらの超煽(あお)りアングルで周囲360度の全包囲から回転して捉えられる!
 この大激闘を高速道路のガード下から捉えたカットでも、画面手前に歩行者用の信号機が配置されているほどであり、こうした遠近感・臨場感を醸し出す演出こそ、視聴者に「ウルトラすごい!」と実感させるのだ!


 なお、近年のウルトラマンにおけるバトル演出に顕著な「ガード下アングル」は坂本浩一監督とか田口清隆監督らが編み出した新しい手法だと若い特撮マニア諸氏は思っているかもしれないが、2021年に「放映50周年」を迎える『スペクトルマン』(71年・ピープロ フジテレビ)第5話『恐怖の公害人間!!』の中で、新宿駅周辺で巨大化した猿人ラーとスペクトルマンが戦うさまをガード下から捉えたカットがあった(汗)。『スペクトルマン』はかなりの低予算だったらしいが、それが逆にこうした斬新(ざんしん)な演出を生み出す契機となったとも考えられ、「ガード下アングル」も実は意外に歴史が古い特撮演出だったのだ。


 スカルゴモラが吐き出した炎でジードとゼットの背景は一面燃えあがり、ゼットの胸中央に「Z」字型でデザインされたカラータイマーが赤く点滅をはじめる!
 最大に危機感をあおりたてる演出が予兆として、第1話以来、消息不明だったウルトラマンゼロの「助っ人参上!」にカタルシスをもたらすのだ!


 ウルトラ6兄弟の赤いブラザーズマントを彷彿とさせる青いマントをなびかせてゼロが宙から着地するや、映画『ゼロ THE MOVIE』以降は定番の、意外に静かなファンファーレによるイントロから徐々に高揚感を上げていくゼロのテーマ曲が流れだす音楽演出がゼロのカッコよさを最大限に高めていく!


「主役は遅れてくるってヤツですね」
「頼もしくなったじゃねぇか」


 映画『劇場版 ウルトラマンギンガS』以降のテレビシリーズ・劇場版・Web(ウェブ)ドラマなどで、ゼロは後輩が危機に陥ると颯爽(さっそう)と駆けつける頼もしい先輩ウルトラマンとして描かれてきた。
 「主役は遅れてくる」はそんなゼロの登場時に定番セリフとしてもすっかり定着しているが(笑)、ゼロがジードのバトルスタイルの進化を見てもいないのに、自身の定番セリフをイジくるようなツッコミを見せたジードに「頼もしくなった」とその成長を即座に感じ取るこの短いやりとりは、端的に先輩後輩関係を描く演出として高いドラマ性を集約させたものなのだ!


「師匠、オレはオレは!」
「ああ、今から見せてもらう」


 ジードが良き後輩としてゼロに認められたのを見て、ゼロを勝手に師匠としてあがめるゼットが「オレはオレは!」と駄々っ子のようにアピールするさまは、まぁこのテの子供向け番組にこそふさわしい、シリーズ最新の新米ヒーロー定番の実に子供的なメンタル描写で笑ってしまうのだが、それは同時に新人ヒーローとしてはキャラが立っていることも意味する。ジョークを放つほどの余裕を見せたジードとは実に対照的であり、だからこそゼロはゼットに「頼もしくなった」姿を実戦での行動で示せと課したのだ。


「なにコレ! ドキドキの展開!」


 ヨウコが狂喜したのは、単にカッコいいウルトラマンが3人揃い踏みを見せたことに対してだけではないのは、もはや明白だろう。
 『Z』ではウルトラマン同士の会話は一般の地球人には聞こえないことになっており、第3話『生中継! 怪獣輸送大作戦』ではゼットがビルの屋上にいるヨウコに初代ウルトラマンのウルトラメダルを投げてくれるよう、必死にボディランゲージで訴える描写があったほどだ(笑)。だが、それでもヨウコがゼロ・ジード・ゼットたちが会話をしているとおぼしき立ち居振る舞いからその関係性を感じとることができたのだと視聴者が解釈できるほどに、ウルトラマンの「人間ドラマ」を演じるスーツアクターたちの所作が見事だったのだ。


 夕陽を背景に中央の位置に陣取るゼロがマントを投げ捨てる実に「らしい演出」を皮切りに、ゼロはストロングコロナゼロへ、ゼットはベータスマッシュへと、ともに赤を基調とした熱血感にあふれるパワータイプへとチェンジ!
 ベータスマッシュが押さえつけたスカルゴモラに、ゼロが必殺の火炎光線「ガルネイト、バスタ~~ッ!」を浴びせかける!
 そしてゼットはゼットランスアロー、ゼロはウルトラゼロランスと、ともに槍(やり)状の武器を手に攻撃をたたみかける!
 ゼットとゼロの関係性に変化の兆(きざ)しが見えてきた端的な象徴として、これらの華麗な連携攻撃が描かれているのは論を待たないのだ。


「そろそろ行きますか!」
「おまえが仕切んな!」


 夕陽を背景にゼットを3人の中央に陣取らせるゼロ! これぞ「おまえなんか3分の1人前だ!」とゼットをさげすんでいたハズのゼロが、ゼットの成長を認めた瞬間だ!


「レッキングフェニックス!」
「ワイドゼロショット!」
「ゼスティウム光線!」


 最初から最後まで、この回のクライマックスバトルにはウルトラマンの人物相関図・力関係の変遷をも点描されていた! といっても過言ではないだろう。


「いつもメダルの力、使わせていただき、ありがとうございます!」
「ハハハ、気にすんな」


 初代『ウルトラマン』のコミカライズを『週刊少年マガジン』で連載していたことでも縁がある、70年代に小学館週刊少年サンデー』に連載された怪奇漫画の大家・楳図かずお(うめず・かずお)氏原作の大人気ギャグマンガまことちゃん』(76~81・88~89年)の幼稚園児の主人公・まことちゃんのキメポーズである親指・人差し指・薬指の3本だけを立てて「グワシッ!!」と叫んでいたのに酷似したフィンガーサイン(笑)を、ゼロが示すのもすっかりおなじみとなったが、まさにゼロの上機嫌・絶好調ぶりを表するサインが新米ゼットに手向けられた理由は、もはや書くまでもないだろう。


*ティガ・ダイナ・ガイアら平成ウルトラ3部作の力でも「遊んで」しまうゼットさま!(笑)


「今までで一番タイプかも~~~♪」


 これはゼットが師匠のウルトラマンゼロから聞いたことがある、別次元のウルトラマンとしてハルキに語ったウルトラマンティガウルトラマンダイナ・ウルトラマンガイアのウルトラメダルにより、


「変幻自在、神秘の光! ティガ先輩! ダイナ先輩! ガイア先輩!」


とのハルキの叫びでゼットが第4の形態であるウルトラマンゼット・ガンマフューチャーにタイプチェンジした、第8話のクライマックスでヨウコが叫んだものだ。


 ティガ・ダイナ・ガイアのような頭部がエグれたデザインに昭和ウルトラマンでは見られなかった紫や金を配色したスーツ、プロテクター状の胸部と、まさに平成ウルトラマンの特徴を結集させたかのデザインに貫かれたガンマフューチャー。
 彼はティガ・ダイナ・ガイアと因縁(いんねん)が深い5大怪獣が合体したファイブキングに、頭部からガイアの必殺光線「フォトンエッジ!」を放った!


 ウルトラマンシリーズとしては従来ほとんど見られなかった、熱血系のロック仕様の主題歌『ご唱和ください 我の名を!』が流れる中――作詞・作曲・歌唱を担当した遠藤正明氏は子供向け合体ロボットアニメ『勇者王ガオガイガー』(97年・名古屋テレビ サンライズ)の主題歌で注目を集め、『爆竜戦隊アバレンジャー』(03年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20110613/p1)の主題歌は当時の歴代スーパー戦隊シリーズ中で売り上げ首位を記録した!――、魔術師のように指を鳴らす「ガンマ・イリュージョン(幻影)」なる合図により、ガンマフューチャーの周囲にティガ・ダイナ・ガイアの幻影――ほとんど実体(笑)――が現れる!
 『ウルトラマンギンガS』でもウルトラマンギンガの強化形態・ギンガストリウムが昭和のウルトラ6兄弟いずれかの必殺光線を放つ際に、その隣りにそれぞれの昭和ウルトラマンの必殺光線ポーズを取る幻影が出現していたが、ティガ・ダイナ・ガイアはまるで本人たちがそこにいる感じで(笑)ファイブキングに必殺光線をいっせいに発射した!
 さらに、ガンマフューチャーは自身がつくりだした魔法陣(!)で体をミクロ化してファイブキングの体内に瞬間移動した末に、そこから必殺ワザ「ゼスティウム光線!」を放つのだった!



「テイガ・ダイナ・ガイアって20代男子の少年の夢がつまってる!」


 これは第8話がYouTubeで配信された際に寄せられたコメントのひとつだが、『ティガ』も2021年で放映25周年(!)を迎え、当時のメインターゲットの上限はすでに30代に達したことだろう。
 『Z』の後番組として2021年1月から放映が開始された総集編番組『ウルトラマンクロニクルZ ヒーローズオデッセイ』(21年)では、『Z』と『ティガ』を中心に『ウルトラマンダイナ』(97年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19971215/p1)と『ウルトラマンガイア』(98年)の名場面を編集して構成している。
 『Z』と平成ウルトラ3部作を毎回対比して観ることで、傍から見れば大同小異なのは重々承知はしているものの、評論オタクである筆者としてはそのあまりの作風や作劇の違いを実感させられてしまう――個人的には『Z』的な作劇の方が子供番組として、あるいは21世紀以降のオタク向け作品としても正しい作劇だと考えているが――。


 だが、そうは思わない意見も当然あってよいし、反体制・反権力を気取って、それら平成ウルトラ3部作やリアル志向の作品を賞揚する意見を過剰に敵視したり弾圧するような振る舞いをするような幣にも陥ってはならないのだ。
――だいたい歴史的にも左派の独裁政権の方が右派の独裁政権よりもその約10倍もの人数規模で、右派寄り・旧体制寄り・資本主義者寄りだと目した自国民を死刑にしたり強制収容所送りにしてしまうものなので気を付けないとイケナイ。第2次世界大戦での戦死者数よりも戦後の旧共産圏での粛清で死亡した人数の方がはるかに多いのだ(汗)――


「やっぱウルトラマンはあのころの方がはるかに面白かった」
「ニュージェネウルトラマンは役者はイケメンと美女ばかりだが中身は薄っぺらい」


 これは平成ウルトラ3部作が放映されていた90年代後半当時の第1期ウルトラシリーズ至上主義者たちの意見とだいたい同じであるのと同時に、平成ウルトラ3部作が原体験で最近のウルトラシリーズにはノレないリアル志向のキマジメなマニア青年たちが、2010年代以降のウルトラシリーズに感じている感慨でもあるのだろう。


 まぁ、何十年と特撮マニアをやっていると、自身の幼少時にハマったそれぞれの時代のヒーローを「思い出補正」で神格化して、長じてから遭遇した近作のヒーローたちには幼少時のヒーローたちと比較してアレが足りないだのコレが足りないだの、美形役者人気に頼ったミーハー作品に過ぎないだの、『ゴジラ』シリーズでも『ウルトラマン』シリーズでも『仮面ライダー』シリーズでも、あるいは『宇宙戦艦ヤマト』シリーズや『機動戦士ガンダム』シリーズ、欧米でも『スター・ウォーズ』シリーズや『スタートレック』シリーズなどで連綿と見られてきた既視感あふれる光景なのである(汗)。
 筆者も10代のころにはハード&シリアス志向の第1期ウルトラシリーズ至上主義者だったのであり、第2期&第3期ウルトラシリーズを下に見ていたので身に覚えがあるのだ(爆)。


 ただ、テイガ・ダイナ・ガイアのウルトラメダルで誕生したガンマフューチャーが披露した、作品としてはややリアル寄りであった『ティガ』『ダイナ』『ガイア』とは実は完全に相反している――まぁ、のちの『ウルトラマンネクサス』(04年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20041108/p1)や『仮面ライダークウガ』(00年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20001111/p1)などと比べれば、全然フツーのヒーローものだったけど、第1世代特撮オタクたちは「コレぞ待望していたリアル路線だ!」として持ち上げていたのだ――、ほとんどインチキでナンでもアリでもあるティガ・ダイナ・ガイアがゼットと同時に全4体で出現してしまう特殊能力は(笑)、平成ウルトラ3部作の熱心なマニアたちには違和感が残るものかもしれない――今どき、『ウルトラマン』とはかくあるべし! 平成ウルトラ3部作のウルトラマンを引用するのであればなおさらかくあるべし! などと主張している特撮マニアなどはほとんどいないかな?(笑)――。


 しかし、世代人ではない若い特撮マニアや、世代人でもライトな特撮マニア層であれば、ティガ・ダイナ・ガイアを同時に一挙に召喚してしまうようなゼットの万能性は変身ヒーローとしての普遍的なカッコよさとして受け取られたかと思えるのだ。
――逆にむしろ昭和の時代の方が、ヒーローにここまでインチキな分身ワザを披露させて、しかも合成などヌキでカメラを止めている間にカメラアングル内にヒーローに入ってもらう原始的なもろバレのトリック撮影で、80年代の戦隊ヒーローの分身ワザのようなモロに「B級」で安っぽく見えてしまうような映像であったならば、マニアも子供たちも幻滅して反発したかもしれない(笑)――


 とにかく今の時代はデジタル合成で、こういう分身ワザも実に幻想的にカッコよく描くことができるのだ。ゼット・ガンマフューチャーが指を「パチッ!」と鳴らすフィンガーアクションで、テイガ・ダイナ・ガイアの分身像が現れるような華(はな)のあるカッコいいヒーロー演出こそが、小難しいことはともかく社会派テーマ・人間ドラマ的な要素などでもなく、「20代男子の少年の夢」を再来させるものとして、往年の平成ウルトラ3部作世代の大きなお友達にも喜ばれたのではなかろか?


 先述したヨウコの「今までで一番タイプかも~~~♪」は、まさに多くの視聴者の声を代弁したセリフとなり、共感を集めたことだろう(笑)。


*「遊び」=「コミカル演出」や「ギャグ描写」を改めてドー見るか!?


 『ウルトラマン』にかぎらず、『仮面ライダー』や『スーパー戦隊』でも近年ではコミカル演出やもうほとんどギャグになっている奇抜な特撮演出が当然のように行われているが、「子供番組」としてはシリアスな展開とのバランスを取るためとはいえ、それまでのドラマやバトルの流れとは関係なく唐突に描かれるギャグが浮いてしまう例が時折り見受けられる場合もある。『Z』でも本編ドラマ以上に、特撮場面でもコミカル演出が積極的に導入されている感が強い。
 しかし、ストレイジの隊員たちやゼットを中心としたウルトラマンの関係性に高いドラマ性を与えるために、『Z』のコミカル演出はクライマックスバトルを寸断するどころか、むしろ高揚感をもたらす自然な流れとして機能する作劇がなされていると思える。


 往年の『帰ってきたウルトラマン』の防衛組織・MATの隊員たちのようなリアルでナマっぽい人物描写の方が、作品としては優れているという意見にはもちろん同意する。しかし、やはり今の時代に、いやあの70年代初頭当時であっても、あれらはやや重たすぎる描写ではあっただろう。そう考えると、21世紀のウルトラやライダーや戦隊でのにぎやかで戯画化(ぎがか)されたマンガ的な人物描写は、子供向け番組としては、いや今どきの年長マニア向け作品としても決して間違ってはいないとも思うのだ。

2020年9月下旬執筆
2021年1月中旬改稿


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2020年秋分号』(20年9月27日発行)所収『ウルトラマンZ』合評より抜粋)


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ウルトラマンZ』序盤総括 ~セブンガー大活躍! 「手段」ではなく「目的」としての「特撮」!

(文・T.SATO)
(2020年7月20日脱稿)


 今度の新作『ウルトラマン』は、地球人側の怪獣攻撃チームが巨大ロボットを建造して巨大怪獣と戦う! どころか新ウルトラマンとも共闘する! しかも、その巨大ロボットの名前はセブンガー!
 寸胴のドラム缶のようなボディーに華奢な細い手足がついており、その全身が銀色であることで、一応は金属製のロボットであることを主張。
 しかし、小さな頭部の離れた左右にはクルマのフロントライトの中心に小さな黒点を入れたような目玉と取れる部分があって、まぶたが下がった垂れ目のようにも表現されていることで、擬人化されてコミカルで漫画チックな印象も醸してくるキャラクター。


 しかもこのセブンガー。本作『ウルトラマンZ(ゼット)』#1の冒頭から登場してみせる!
 実景のビル街の路地を逃げまどう人々を追撃してくる、コレまたおそらく自然の太陽光の下で別撮りされたかのような古代怪獣ゴメス――ウルトラシリーズの元祖『ウルトラQ』(66年)#1にも登場して、21世紀のウルトラシリーズでも幾度も再登場を果たしてきた栄光の怪獣!――のデジタル合成された巨体がふと大空を見上げるや、その中距離の先の上空には背面に2連装あるジェット推進で立ち姿のまま浮遊・接近してくる巨大ロボット・セブンガーの姿が!


「セブンガー、着陸します。ご注意ください。ご注意ください」


と昭和の終わりからトラック車両が右折や左折やバックをする際に流されるようになった、実に庶民的で脱力的な音声ガイダンス(笑)が流されるものの、着陸の寸前には逆噴射(!)でいったん着地の衝撃を緩和してみせるリアルさ加減も!


 #2でもオープニング主題歌が終わるや早々に登場。怪獣攻撃隊の基地内の工場チックな暗がりの格納庫でそびえ立つ巨大感あふれる勇姿も描かれる!
 その頭部前面を横切るように架された手スリ付きの工事用の簡易橋を搭乗員が駆けていくや、頭部の自動ドアが左右に開扉して、小さく映っている搭乗口の天井カド隅に伸びるライトの点滅がその狭いながらも奥行きある通路も示唆する、カット割りなしでの固定の超ロング(引き)の長回しで見上げた映像も!
 「フォース・ゲート・オープン! フォース・ゲート・オープン!」等々の管制音声が響く中、天井が開扉してジェット推進で白煙を引きながら大空へと発進していくワンダバなシークエンスも描かれる!
 そして、やはり「セブンガー、着陸します。ご注意ください」の音声ガイダンスとともに、初代『ウルトラマン』(66年)#3で初登場して、こちらも21世紀のウルトラシリーズで数回再登場を果たした四足歩行型の怪獣である透明怪獣ネロンガとの初戦を展開!
――戦闘直前だけ、まぶた部分が吊り上がって勇ましい目付きになるけど、戦闘中はまた元の垂れ目に戻ってしまうのは……。許す!(笑)――


 #3でもオープニング主題歌前のアバンタイトルの段階でセブンガーが出撃。伊豆高原ならぬ伊豆原高原(笑)という設定での崖上を見上げたような快晴の屋外でのオープン撮影で、やはり初代『ウルトラマン』出自で雪男をデザインモチーフとしている冷凍怪獣ギガスと文字通りの激突!


 #4では怪獣攻撃隊の2号ロボ・ウインダムが主軸にはなるものの、やはり物語の早々に都心へと出撃! 初代『ウルトラマン』出自でやはり21世紀のウルトラシリーズでは数回再登場した地底怪獣テレスドンとバトルする!


 セブンガー。出まくりの目立ちまくりである。もうここまで優先して描かれれば、もう一方の主役ヒーローですらある。


宇宙人由来の技術も用いて戦った『ウルトラマンメビウス』ならば、巨大ロボ登場の余地もあった!?


 地球人側の怪獣攻撃チームが巨大ロボットを建造して巨大怪獣と戦う……。ついに、ついに、ついに! 我らがウルトラシリーズにもこの日がやってきた!
 しかも、今や特撮マニアの世間さまでも、『ウルトラマン』に登場する怪獣攻撃隊が巨大ロボットが保有することに反発の声すら表立っては上がらない!――もちろん、少数はあるのであろうし、そういった意見も尊重はいたしますけれど――
 コレが20世紀だったら、いや21世紀の最初の10年間こと00年代であっても、きっと猛烈な反発が上がったであろうことを思えば、実に隔世の感ですらある。
 特撮マニア、いやウルトラシリーズファンの全員とはいわずとも大勢が、原点至上・ドグマ的なドクトリンに固執せずに、柔軟にシリーズ各作のマイナーチェンジを楽しむことができるくらいに成熟したということなのであろう。……いや、かつてであれば猛反発したであろう保守的・原理主義的なコア層も中高年化・高齢化して単に枯れてしまって、もうドーでもよくなってしまったのやもしれないけど。
 まさに、映画『平成仮面ライダー20作記念 仮面ライダー平成ジェネレーションズ FOREVER(フォーエバー)』(18年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190128/p1)における名セリフ、「仮面ライダーに原点も頂点もない!」の体現ですらある!――チョット違います(笑)――


 昭和ウルトラ直系の四半世紀ぶりの正統続編として登場した『ウルトラマンメビウス』(06年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070506/p1)に登場した怪獣攻撃隊・クルーGUYS(ガイス)においては、それまでの昭和ウルトラシリーズに登場した宇宙人の円盤の残骸や怪獣の死骸などから採取したオーバーテクノロジーこと総称・メテオール技術なるモノを駆使して戦っていた。
 そして、戦闘機や武器に超常的な飛行能力を与えたり、アリエナイ弾道軌道を描いてみせる銃器なども登場させて、怪獣のデータさえをも基地地下の粒子加速器で生じさせた超エネルギーで物質化・実体化させて地球人側の味方怪獣(!)として使役して、大きなお友達の間でも非常なるコーフンと好評価を博していたモノだ。


 私事で恐縮だけど、そのような状況を目の当たりにして筆者も思った。このような超技術を可能とするSF設定を用意できたならば、昭和ウルトラシリーズに登場してきたロボット怪獣たちの残骸――キングジョー・クレージーゴン・にせウルトラセブン・ビルガモ・ロボネズ・ガメロット・メカギラスなど――のテクノロジーを研究・援用したという設定で、クルーGUYSの戦闘機や武器などのメカ類共通の黄色いカラーリングをした巨大ロボットをクリスマス商戦合わせ(笑)で登場させたとしても、今度こそマニア諸氏もナットクするであろうし子供たちも喜んで玩具も爆売れするのではなかろうかと!?
 ぜひともクルーGUYSの面々にガンジャイアント(私的仮称・汗)に搭乗してもらって、ウルトラマンメビウスとも共闘してくれないものか!? そして、タマには敵怪獣をウルトラマンの力を借りずに独力で倒してくれないものか!?


セブンガーはマイナー怪獣ではない! 中堅メジャーで再登場の待望論まであったのだ!


 本作に再登場を果たした巨大ロボット・セブンガーは、歴代ウルトラシリーズのマニアや現今でも怪獣博士タイプの子供たちであればご存じの通り、往年の『ウルトラマンレオ』(74年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20090405/p1)#34「ウルトラ兄弟永遠の誓い」に登場したロボット怪獣のリメイクキャラクターでもある。
 そう。帰ってきたウルトラマンことウルトラマンジャックが、『レオ』#1での重傷で変身ができなくなったウルトラセブンこと怪獣攻撃隊・MAC(マック)のモロボシダン隊長をアシストするために持参した、ふだんはミクロ化してボール型アイテムに収納されている、M78星雲・ウルトラの星出自のロボット怪獣セブンガーと同名同型の存在でもあるのだ。


 ナゼにウルトラの星のロボット怪獣と同名同型の存在を、いかに昭和ウルトラシリーズとはパラレルワールドの地球が舞台である本作とはいえ、地球人が独自にそっくりの機体を建造せしめたのかって?
 それは商業上、もしくはメタ的な事情に基づいているので、ネタ・知的遊戯としてツッコミをするのならばともかく、ガチでツッコミをするのはヤボである。オリジンとはまったく関連がナイけれども、この世界の地球人たちは独力で偶然にも、昭和のセブンガーと同一のフォルム&ネーミングに行き着いたということでもイイではないか!?
 セブンガーの姿をしているのに、セブンガーというネーミングじゃなかったら多分、マニア諸氏は『ウルトラマンコスモス』(01年)や『ウルトラマンマックス』(05年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060311/p1)に登場した第1期ウルトラシリーズの人気怪獣の再登場ならぬ、似て非なるアナグラムな文字った名称のガラモンならぬガモランなどのアレンジ怪獣たちに感じた、それならばオリジナルの怪獣を再登場させろよ~といった気持ちになったと思うぞォ~。


 セブンガーを使役することになるモロボシダン隊長は、かつての主演作『ウルトラセブン』(67年)でも毎回ではナイけれども、自身ことモロボシダン隊員がセブンに変身できない際の前座バトルにおいて、秘かに携帯している小型カプセルを投擲(とうてき)するや、カプセル怪獣ウインダム・カプセル怪獣ミクラスカプセル怪獣アギラといった3種の味方の巨大怪獣のどれかを出現させ、敵怪獣や敵円盤などと戦わせて、勝ち抜きトーナメント的な特撮怪獣バトルシーンを増量させることで子供たちをワクワクさせてきた。


 そのドラマ的・テーマ的には無意味でも、稚気満々でバトル的・エンタメ的には楽しかった「あの感慨よ、再び!」といった目論見であったのであろう。その数年後に商業ライターともなるオタク第1世代のマニアたちが『レオ』放映時に結成した「怪獣倶楽部」のメンバーたちが製作側に、


「『セブン』に登場したカプセル怪獣のような存在を『レオ』にも出したら面白いのでは?」(大意)


というアイデアを伝えて、円谷プロ熊谷健(くまがい・けん)プロデューサーが採用したのが、このセブンガーであったことは特撮マニア間では有名な話ではある。


 このセブンガー。出自設定的にもウルトラの星の出自という血統書付きの存在ではあるので、昭和の子供たちの間では相応に有名で印象的ではあったし、現今でも怪獣博士タイプの子供たちには同様であろうと思う。
 とはいえ、一部で『レオ』ファン驚喜! や『レオ』ファン必見! などという煽られ方をされてしまうと、イヤイヤイヤイヤ。セブンガー自体は『レオ』という作品を象徴するキャラクターであったり、『レオ』らしさを体現する存在でもないし、作風的には『レオ』中の異物やもしれないので、それは違うだろうとは思う(笑)。
 しかし、70年代末期に本邦初のマニア向けムックが登場して60年代後半の第1期ウルトラシリーズ至上主義が流布される前、第1期ウルトラも第2期ウルトラも区別せずに等しく愛していた時代のウルトラシリーズを満遍なく好んでいた子供たちは、セブンガーを先のウインダム・ミクラス・アギラに準じるオーラを持った存在として捉えていたことはたしかだったのだ。


 それが証拠にはるかなる後年、ウルトラ一族の故郷・ウルトラの星を主戦場のひとつとした映画『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE』(09年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20101224/p1)で、ウインダム・ミクラス・アギラの3体が揃い踏みして敵怪獣たちと戦った際、かつての怪獣博士たちの成れの果てたちが集う特撮評論同人界やらネット上の某巨大掲示板などでは「ここまでやってくれるのならば、ついでにセブンガーもこの場面に加えてほしかった……」という意見がけっこう散見されたものなのだ。エッ、そんな小さな井戸の中、コップの中の世界の話じゃ、特撮マニアの最大公約数の意見たりうる統計的に有意な証明にはならないって? それはそーかもですネ(汗)。
 ただまぁ、『ウルトラ銀河伝説』ブルーレイに収録されたオーディオ・コメンタリーでも、実はスタッフたちはこの場面にかのセブンガーも登場させて3体ならぬ4体勢揃いを実現させるつもりだったことが明かされてはいるのだ! 第1期ウルトラ至上主義者たちが牛耳っていた時代ははるか遠くに過ぎ去ったのである。そして、世代人のマニア上がりが考えることはみんな同じなのである――陳腐凡庸なアリガチ願望だともいえるけど(笑)――。


 そう。セブンガーとは70年代前半の第2期ウルトラ・70年代末期の第3期ウルトラ、あるいはそれ以降の時代でも昭和ウルトラを愛してきた世代であれば、あの『レオ』に登場したから……といった文脈ではなく(爆)、ウルトラ兄弟の設定やウルトラの星の歴史設定に連なるものとしてのウルトラシリーズ全体としての文脈で、興味関心を惹起してきた存在なのでもあったのだ。


 しかしセブンガーは、長年酷評に甘んじてきた第2期ウルトラシリーズの作品に登場したことや、そのデザインや劇中での描かれ方のイマイチさもあって、その評価が左右に分裂・引き裂かれてしまってもいるビミョーな立ち位置の存在でもあった。
 『レオ』放映当時にすでに中高生や20歳前後に達していた第1期ウルトラ至上主義者たちにとっては、セブンガーの登場は小手先のテコ入れにしか見えなかったであろうし、第1期ウルトラシリーズを美術面で支えた成田亨(なりた・とおる)的な、宇宙の神秘や大自然の脅威をシンボライズしたようなハイブロウで芸術的な興趣をたたえたデザインではなく、漫画アニメ的でチープなB級デザインでもあるそれはプチ反発も抱かせて、「ウルトラ」の品位を落とすモノとしても映ったことであっただろう。
 そして、セブンガー自身は瞬間最大風速的にはとても強く描かれることでカタルシスを与えてくれはするのだけれども、ドーしても主役ウルトラマンであるレオを立てるためにギリギリのところで撤退を余儀なくされることで――同作ではたったの1分間だけという時間制限(汗)――、フラストレーション・欲求不満がたまってしまい、そのせっかくの強さ・カッコよさといった印象が相殺されてしまっていたことも事実ではあるのだ。


セブンガーの強さ・カッコよさ・有用感を、前面に押し出した作劇&特撮!


 そして、本作『ウルトラマンZ』におけるセブンガー再登場である。
 もちろん、本作における主役ヒーローもウルトラマンゼットではある。よって、このセブンガーはウルトラマンゼットよりも強くあるワケにはいかない。もしもゼットよりもセブンガーが最初から強いのだとすれば、ウルトラマンゼットは存在自体が無意味・不要になってしまう(笑)。
 つまり、このセブンガーはウルトラマンゼットよりも強くはなれないことが規定の宿命ではあるのだ(汗)。しかし、そこからがスタッフ連の腕の見せどころ・料理の仕方・センスなのである。


 ウルトラマンゼットとセブンガーの関係を、100対ゼロとして描いてしまうのか? かぎりなくフィフティ・フィフティに近いような、60対40なり70対30として描くのか? セブンガーも単なる前座の賑やかしにすぎない存在ではなく、それ単体でも相応に強くて頼れる有用な存在としても描くのか? なのである。
 そこで、『Z』のスタッフたちが採った方策とは!?


 #1冒頭でのセブンガーvs古代怪獣ゴメス戦では、セブンガーはゴメスに単独で勝利する!――実景のビルを粉々に破壊しながらリアルな瓦礫を撒き散らして倒れ込んで、その姿が見えなくなることで、とりあえずのバトルの決着感&勝利感を演出――
 #3冒頭でのセブンガーvs冷凍怪獣ギガス戦でも、セブンガーはギガスに単独で勝利を納めるのだ!――セブンガーのロケットパンチ(!)で押された末に近くの天文台(?)に激突して爆発が起きることで(まぁ、ギガスが爆発したのではなく天文台が爆発したのだろうけど・笑)、やっぱり「爆発」イコール「勝敗の決着」といった記号的な意味も醸すことでの勝利感を演出――


――しかしこのギガス。メインゲストではなく前座だから新造であるワケもなく、よく出来たアトラク用の着ぐるみの流用なのだろうけど、ナゼにこの着ぐるみは映像作品では未使用で今まで埋もれていたのか!? 実にもったいない!――


 たとえその話数におけるメインディッシュのゲスト怪獣相手での単独勝利ではなく、前菜のゲスト怪獣相手での勝利であったとしても、この爽快感・カタルシスは実に捨てがたい!
 そう。たとえ最後の最後にはウルトラマンがすべてをかっさらってしまうから、その過程は単なる紆余曲折の水増しにすぎないし、ドラマ的・テーマ的・戦略・戦術的にも無意味なので、中間道程の描写はなおざりにしてもイイのだ! などということには決してならないのだ。
 その都度の過程・過程でのセブンガーの強さや有用性の強調。足手まといや噛ませ犬や引き立て役や人質要員としての弱さ、つまりはイヤ~ンな感じ(汗)の弱さというようなモノはなるべく回避しているのだ。
 たとえ負けてしまったり、そのあとの戦いをウルトラマンゼットに譲っていたとしても、懸命に戦って大いに善戦もしたのだという好印象を残すように、バトルの殺陣(たて)やパワーバランスを繊細に組み立てた感じで描くのだ!


 もちろん、活動限界がオリジンの1分間ならぬ3分間という時間制限は与えられてはいる。しかして、倒れ伏してしまっても、#2では電解放出弾の援護射撃を放ってウルトラマンゼットに勝機を与えることで、やはり有用感を醸すのだ!
 いかにもな定型的なピンチのBGMが流れ出して「コレから苦境になりますヨ~」というヤボでイヤ~ンな感じの予告が音楽演出されたりはせずに(笑)、終始勇ましくてカッコいいBGMが流されつづけることで、苦戦や敗退してしまった事実までもが中和されるのだ!


セブンガー&ウルトラマンの2大ヒーロー制! セブンガーは噛ませじゃない!


 そして、#1のメインゲストである新造着ぐるみ怪獣、タテ長に扁平なお魚さん的なスタイルが印象に残る凶悪宇宙鮫(ザメ)ゲネガーグが東京都は杉並区ならぬ杉原区(笑)へと襲来! それに対処するのもセブンガーなのだが、遅れて地球に初登場したウルトラマンゼットも到着!
 セブンガーとウルトラマンゼットが両雄相並んで敵怪獣に対峙している勇ましいカットがまた、両者をほぼ対等・拮抗させて描こうとする本作の方向性をも象徴させんとする演出なのであろう。加えて、のっけからセブンガーとゼットは早くも気脈が通じた共闘を開始して、息を合わせて


「せいのぉぉっっっ!」
「チェストォォォーーー!!」


などという、往年の特撮変身ヒーロー『イナズマン』(73年)、もとい剣術・薩摩示現流(さつま・じげんりゅう)の掛け声とともにダブルパンチまでをも放つのだ!(笑)
――背面からの光学推進(?)で滑るように走行する凶悪宇宙鮫に、追いつき先回りし立ちはだかってその走行を止めるだけでなく、ジャンプ・横っ飛びでの頭突き攻撃(笑)にて宇宙鮫を横倒しにするなど、ここでもセブンガーの有用感を醸している!――


 #4ではセブンガーではないけど、怪獣攻撃隊の2号ロボ・ウインダムの充電がついに完了して初出撃! 地底怪獣テレスドンが『ウルトラマンX(エックス)』(15年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200405/p1)登場時にも披露した新ワザ・ゼロワンドライバー! もとい回転ドリル飛行攻撃を見舞って苦戦しているゼットのピンチを、高速水平飛行での体当たり突撃をテレスドンにブチかますことで救ってみせるのだ!
 敵のライバル青年の差しガネで、初代『ウルトラマン』に登場したエリ巻き怪獣ジラースをかたどったメダルの力でパワーアップ、エリ巻き付きと化したエリマキテレスドン(!)がそのエリ巻き全体から放った赤色光線で一時は吹っ飛ばされて機能停止に陥るも不屈の闘志(?)で回復するや、全身のクボみが小ジェット噴射口でもあるという設定で、直立した体勢のままで瞬時にフィルムの逆回転(笑)にて起き上がり、今度はホバークラフト走行(!)で両脚で駆けずにスベるように再度の体当たり攻撃を敢行! エリマキテレスドンのエリ巻きも剥ぎ取ることで弱体化も果たす。
 そして、ついに! ついに! ついに! ウルトラマンゼットの必殺光線とウインダムからのミサイル多数発射の同時攻撃(!)で、メインゲストの敵怪獣さえをも倒してみせるのであった!!



ウルトラマンさえいれば、ZAT(ザット・怪獣攻撃隊)なんて要らないじゃん!」(大意)


 往年の『ウルトラマンタロウ』(73年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20071202/p1)#29「ベムスター復活! タロウ絶体絶命!」で小ナマイキなゲスト少年たちが叫んでいたセリフである。コレは昭和の時代にウルトラシリーズを観ていた小学生たちがクチにしていたセリフをメタ的に反映したものでもあって、オッサンである筆者も『タロウ』本放映当時ではなく70年代末期の第3次怪獣ブームの時代ではあるけど、小学校の同級生たちがこのようなツッコミを散々にクチにしていたことを覚えている――そのような発言をしながらも、彼らは必ずしもウルトラシリーズを卒業するワケではなく、継続して視聴をつづけるのではあったけど(笑)――


 初代『ウルトラマン』終盤の#37「小さな英雄」で本格的に議題にされて以降、最終的にはウルトラマンがその場をかっさらってしまうのであれば、怪獣攻撃隊は不要なのでは? という作品の根本をも脅かしかねない疑問は、ウルトラシリーズにおいては時折は提起されてきた。
 しかして、70年代前半の第2期ウルトラシリーズ擁護派にしてその再評価に微力ながらも邁進してきた筆者としては残念なことでも認めざるをえないのだけど、『帰ってきたウルトラマン』(71年)後半以降は、その怪獣攻撃隊の戦闘機は敵怪獣に撃破されて搭乗員は脱出して機体は墜落することが多くなり、当初はそれはパターン破りのショッキング演出としても機能していたのだけれども、早々に新たなルーティンのパターンと化すことで、第1期ウルトラと比すれば第2期ウルトラの怪獣攻撃隊の戦闘機は弱い! 前座にすぎない! といった印象を醸すようにもなることで、ますますその有用性や魅力を損なうようになっていったのも事実ではあるのだ。


 深く意識して演出していたワケではなかっただろうけど、第1期ウルトラや第3期ウルトラでは、第2期ウルトラと比すれば怪獣攻撃隊の戦闘機は撃墜されることが少ない。あるいは、被弾をしても地面をスベって不時着して大破を免れることで、たとえ勝敗的には負けではあってもその敗北の度合いや弱さの度合いを緩和もできているのだ。90年代以降の平成ウルトラ作品になれば、コレはもうスタッフが意図的に考えた上で戦闘機があからさまに撃墜・墜落してしまうことは避けている。
 まぁ、ホントにホントのリアリズムで考えれば、デリケートさの固まりである戦闘機や航空機はちょっとしたことで飛行が不安定となり墜落して爆発してしまうことの方がリアルではある(笑)。しかし、そこは物語・フィクション作品ではあるので、地球人側の怪獣攻撃隊も相応に強いし頑張っているんだヨ~といったシンボリックな印象を視聴者側にも喚起したいのあれば、戦闘機は安直に墜落しちゃったり爆発してしまってもイケナイのであった。


――むろん、第2期ウルトラシリーズでも、タックV7(ブイセブン)ミサイルで超獣ホタルンガに大ダメージを与えて(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060904/p1)、携帯大型ビーム銃器・シルバーシャークで超獣ファイヤーモンスを(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070129/p1)、宇宙空間で大型戦闘機・タックファルコンから発したレーザーが超獣ガスゲゴンを(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070310/p1)、同じく大型戦闘機・スカイホエールがエネルギーB爆弾で改造ベムスターを、歴代ウルトラマンの力を借りずに倒してみせている。
 第3期ウルトラのTVアニメシリーズ『ザ☆ウルトラマン』(79年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19971117/p1)でも、大型戦闘機・スーパーマッドックが爬虫怪獣ジャニュール三世や敵宇宙人の円盤も撃滅、ウルトラ人が超古代に地球の南極に隠していた巨大戦闘艦ウルトリアはウルトラマンとの同時攻撃で敵怪獣を撃破していた(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20100124/p1)。
 子供心にパターン破りの喜びと怪獣攻撃隊の有用性を感じさせてくれる、そのような回に遭遇したときには実に爽快であったものだ――


 かような歴史的文脈をスタッフたちが明晰明快に意識化・言語化した上で、セブンガーやウインダムをカッコよく描こう! などとなったワケでは毛頭なく、もっとフワッと茫漠とした本能的な直感や好悪の情に突き動かされた結果として、セブンガーが大活躍する作劇に軟着陸しただけではあろうけど……結果、オーライであるのだ(笑)。


 もう今後は毎作毎作、怪獣攻撃隊は巨大ロボを保有してもイイんじゃないのかなぁ? だって、今の子供たちには戦闘機メカが売れてないんでしょ? だったら、玩具感まるだしでも戦隊巨大ロボ的な合体ロボットを出して、少しでも売上高に貢献して、番組の制作費も上げていく……ということでイイんじゃないのかなぁ?


ウルトラマンゼットの変身システム・ヒーロー演出・ギャグ演出!(笑)


 そして、このセブンガーとタッグを組むのがウルトラマンゼットであるけども……。コイツのキャラ付けも「ウルトラ面白い!」(笑)


「ついでにどうやら、ワタシもウルトラ・ヤバいみたい」
「ワタシもおまえの力が、必要なのでゴザイマス」
(……)
「言葉、通じてる?」
「マジ? 参りましたなぁ。地球の言葉はウルトラ難しいゼ」
「ゼロ師匠・セブン師匠・レオ師匠のウルトラメダルだ。スリットにセットしちゃいなさい」
(師匠、いっぱいいるなぁ)
「ウルトラ勘がイイなぁ」
「いいか? ウルトラ気合い入れて行くぞ! ……ご唱和ください! 我の名を!! ウルトラマン・ゼェェェェット!!!」
「あの怪獣から散らばったメダルを回収してくれ。(中略)お頼み申し上げます!」
「オレの言葉遣い、ここまでヘンなトコ、ありません?」


 ……爆笑! 初代『ウルトラマン』#1で、初代ウルトラマンとハヤタ隊員が現世と霊界の狭間にある幽界のような暗い異空間で合体したシーンを映像的にも再現して「神秘性」自体は表現しつつも、それだけに留まらずにウルトラマンゼットの発言の語尾を不統一にしているだけの「芸」なのだけれども、それをクスッと笑えるどころではなく圧倒的・破裂的に笑えるギャグとしてみせる!


 このゼットもまた昭和のウルトラ兄弟たちのように「宇宙警備隊」の隊員だと名乗っている。ということは、M78星雲ウルトラの星の出身ということなのであろうか? その顔面は初代ウルトラマンに近しいのでそうとも解釈できるのだけれども、そのボディーは青と銀と黒が主体に赤がポイントとしてまぶしてあるだけなので、生粋(きっすい)のウルトラの星の出身者ではナイのかもしれない。
 しかし、宇宙警備隊員の1割くらいは生粋のウルトラ一族ではナイという設定が、オッサンである筆者が子供であった70年代末期からでもすでにあったとも記憶しているので、そのワクに該当するのだとも考えれば無問題。いやまぁ正直、筆者個人はそのへんはメタ的・商業的な都合なのだとも割り切れてしまうので(汗)、あまりこだわってはナイのだけれども、こだわる方々のためにはそのような解釈なり公式設定を作った方がイイのだろう(笑)。
 変身後に主人公青年・ハルキが常駐するウルトラマンの体内というのか異空間というのか精神世界・インナースペースの描写が、『ウルトラマンX』の電脳サイバーな異世界のそれとも似ているし、そもゼットのデザインラインや胸中央のカラータイマーもエックスのデザインコンセプトに近しい気がするので、エックスの同族なのかもしれない(笑)。


 そして、今回のウルトラマン作品の玩具展開方式はコレクション性のある「メダル」である。『ウルトラマンオーブ』(16年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20170415/p1)と『ウルトラマンジード』(17年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20180213/p1)では、2種のカードやカプセルにかたどられたふたりの先輩ウルトラマンの力を借りて変身&タイプチェンジをしていたけど、本作では3種のメダルの力を借りて変身&タイプチェンジを遂げている――メダルについては、『仮面ライダーオーズ/000』(10年)や『妖怪ウォッチ!』(14年)が先鞭を付けているけど、5年10年は経ったのだからもうイイでしょ(笑)――。


 ウルトラマンゼロウルトラセブンウルトラマンレオの3大師匠の力を借りて変身すれば、そのバンク映像となる変身巨大化カットにもゼロ・セブン・レオが各々の正しいバンク音声の掛け声「ジュワッ!」「イヤッ!」などが響きつつ、その飛行形態のイメージ映像も流れるなかで、ウルトラマンゼット・アルファエッジが出現!
 「マン兄さん! エース兄さん! タロウ兄さん!」の掛け声で、初代ウルトラマンウルトラマンエースウルトラマンタロウの昭和のウルトラ兄弟の力を借りれば、やはり正しいバンク音声、エースの声を演じた名声優・納谷悟朗(なや・ごろう)の低音ボイスで「トゥワァ~~!」、タロウの声を演じた変身前の中の人である篠田三郎の甲高いお風呂場での反響ボイス(笑)で「ショワァ~~ッ!」などという掛け声とともに3大ウルトラマンの飛行イメージが流れた果てに、全身真っ赤で顔面にも赤いアイマスクをハメたような往年の円谷特撮『レッドマン』(72年)をもドコかで想起させるマッチョな体型のウルトラマンゼット・ベータスマッシュにもクルクルと宙を二転三転しながらタイプチェンジ!
――エッ? 篠田三郎もとい東光太郎(ひがし・こうたろう)と分離したあとのタロウ本来のボイスは声優・石丸博也の声の方が正しいんじゃないのかって? 今の子供たちにも馴染み深いんじゃないのかって? ……そーかもしらんけど、細けぇことは気にするな(笑)――


 直前作『ウルトラマンタイガ』(19年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200108/p1)における変身アイテム兼コレクションアイテムはキーホルダーであり、しかも2010年代の7大先輩ウルトラマンたちから授与された由緒正しいものではあったけど、ナンというか原色での彩色がない金属製のチャラチャラとした一般のキーホルダーといった感じで、よくよく見れば先輩ウルトラマンたちの意匠がかたどられてはいるけれど、見た目一発判然でそれがわかるという感じではなかったあたりが弱点に思えたものだった。しかし、今回のメダルはウルトラ一族の横顔のカラー絵がふつうに印刷されたわかりやすいモノであるあたりも好印象!


 加えて、クドクドしい掛け声(笑)を連発していく変身場面やウルトラマンとの会話時においては、その背景が様式美的な特撮合成シーンとなっているのは、実は空間に生じた白いカーテンの中へと参入した先の異空間の中であったからであり、よって周囲にも正体はバレないし大声で規定の掛け声を叫んでも他人に聞かれない、しかもこの異空間での1分は現実世界での1秒だともゼットに説明させることで、劇中世界でのムリくりを極力、虚構内論理によるSF合理的な説明にて回避することもできている。
 腰のベルトに付けているメダルを収納する大きなホルダーも地球人には見えない物質(笑)なのだとの説明も与える。


 ……正直、枯れてしまったオッサンオタクとしてはそのへんはテキトーに流してしまって、いつものナゼだかご都合主義にも周囲にはヒトがいなかったのでバレていないのだ……といったデタラメなノリでも許すのだけれども。
 でもまぁ、小学校中高学年~中学生くらいのころは、筆者もそのへんの非リアルさが気になって気になって仕方がなくって、このへんの矛盾をまぁまぁ解決している当時は隆盛を極めつつあったリアルロボットアニメの方に感銘を受けて傾倒していったものである。それを思えば、時にはこのような一応のSF合理的な説明を入れることで、幼児とマニアの中間にいる歯抜けになっている小学校中高学年~中学生といった子供番組卒業期の少年たちの卒業を遅延できたり呼び戻すこともできるのであれば、それはメリットの方がデカくなる。なので、筆者のように「そのへんはもうテキトーでもイイよ~」なぞという、あまりにラフにすぎる無責任な発言もまた無視した方がイイのだろう(笑)。
 ……そのような一応のリアル志向が前段・助走台としてありつつも、その先の異世界の中で交わされる肝心要のゼットと主人公青年・ハルキ隊員の会話自体は、愉快なギャグ以外の何物でもナイのだけれども(笑)。「リアル志向」と「ギャグ志向」、二兎を追って二兎を得ているのであった!


 そして、必殺光線発射直前に左右の両腕を大きく振るうや、そこにはゼットの全身よりもややデカい「Z」の文字の光跡が大きくかたどられたり、怪獣を倒して大空に去るときには「Z」字型に飛行して去っていくなど、リアリズム的にはなんの意味もナイけど様式美的には奇をてらったケレン味あふれるカッコよさを主張しているあたりも好印象!


「手段」としての「特撮」ではなく、「目的」としての「特撮」!


 そして、ヘタに人間ドラマがあって、その延長線上に葛藤ドラマのメタファーとしての対決バトルや特撮バトルがあるといった作劇ではなく――そういった作劇が悪いワケでもないけれど――、巨大ロボットや巨大ヒーローや巨大怪獣がまずありき! それらをいかに強くカッコよく魅力的に見せるがために、そこから逆算してシチュエーション・ストーリー・ドラマの方を構築していく作劇となっているあたりがまた、本作『Z』の実にイイところでもあるだろう。
 人間ドラマや社会派テーマやSFを描くための「手段」としての「特撮」ではなく――そーいった作品が存在してもイイのだということは、くれぐれも念のため――、ヒーローや怪獣やスーパーメカやスペクタクルといった異形(いぎょう)の映像がもたらす驚きを感受するための「目的」としての「特撮」!


 #1冒頭での実景のビル街を闊歩するデジタル合成の古代怪獣ゴメスが接近してくるや、人間視点の頭上にゴメスの股下やシッポが通りすぎていき、カメラも当初とは180度真逆の正反対の方向へと向きを変えて、ゴメスが歩き去っていく後ろ姿を追っていくような映像の驚き!
 郊外の道路を走行していく怪獣攻撃隊の専用車両を、ドローン撮影のカメラが上昇しながら追いかけていくや、左ヨコには同じ方向にやや先行して併走していく巨大宇宙鮫怪獣がデジタル合成されている驚き!
 巨大宇宙鮫が跳躍、超低空飛行で突進してウルトラマンゼットを押し出すや、カットを割ったようには見えないのに背後のビルを突き破り、ビルの中の瓦礫が崩れるサマまでカメラは追いかけ、時に無傷のビル内の大きな会議室を超高速でスリ抜けて、カメラの方が先にビルの外に出るや、そこには壁面を突き破ってくるゼットと巨大宇宙鮫の巨体が! それだけでも終わらずに、鼻先にゼットを乗せたまま後方の広大な大空へと高速で飛び去って小さな姿と化していく宇宙鮫&ゼット! といった一連をワンカットだけで魅せてみせる驚き!


 #2でも透明怪獣ネロンガが放った電撃光線を辛うじて避けたウルトラマンゼットが、そのままネロンガに向かって手脚や背筋を水平にピンと伸ばした飛行体勢で超低空飛行を開始し、電撃光線の軌跡の周囲(!)をグルグルと回り込みながら接近しつつ、額から緑色のビームも浴びせて、着地するやヨコから回り込んで馬乗りになって、前方を向いていたネロンガの2本の触覚を後方へとネジ曲げる、コレまたカットを割らない(ように見える)シークエンスの驚き!


 #4ではやはり実景の道路を手前に向かって走行してくる怪獣攻撃隊のクルマの姿を、先行して走行している本編スタッフが撮影しつつも、そのさらに後方には美麗で違和感のないデジタル合成で道路の両脇を破壊しながら追いかけてくる地底怪獣テレスドンを延々と映してみせる迫力あるシーンの驚き!


 極め付けの#5では、有翼の冷凍怪獣ペギラが大空に逃げるや、それを高速で追いかけるゼットにカメラも接写・追走もして実景(?)の雲海の上を飛行! そして、立ち向かってくるように交差してスレ違ったペギラを振り返ってゼットが追いかけ直す! さらなる上空の暗雲の中では豆粒のように小さく描かれた両者がやはり高速飛行かつグルグルと旋回しながら光線合戦も展開! ついには雲ひとつない快晴の超高空へと到達するも、太陽を背にしたさらなる高空のペギラが口から放った冷凍光線の連打がついに直撃! ゼットはキリキリと舞いながらリアルな航空写真のような地表へと落下していくのかと思いきや、地面に激突の寸前に背景がスタジオの特撮セットへと置き換わってズドーーン! ここまでの一連がすべてワンカット――に見える映像――であることへの驚き!


 #4と#5は、人気アニメ「機動警察パトレイバー」の続編こと実写映画『THE NEXT GENERATION -パトレイバー-』シリーズ(14~15年)の田口清隆カントクともども、2010年代のウルトラシリーズにスライド参加してきた辻本貴則カントクが特撮も手掛けているけど、この#5の空中戦特撮は実にスゴい! 辻本カントクってここまで特撮怪獣バトルにこだわっていた御仁だったっけ?(汗)
 正直、田口カントクが手掛けた『ウルトラマンR/B(ルーブ)』(18年)#5(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20180826/p1)における鳥型怪獣グエバッサーvsウルトラマンブルとのワンカットでの大空中戦に着想を得たものではあろうけど、筆者個人はあの回が歴代ウルトラシリーズ最強の空中戦特撮だと私見していたのに、早くもその座が揺らいでしまうような絶品の空中戦特撮を見てしまったような……(笑)。


 このように純脚本面やストーリーテリングのみならず、「ハッ!」とか「オッ!」と思わせる特撮映像の連打や、さりげに微妙に画面に惹きつけられ続けるセンスのあるアングルなどの本編映像、緩急のある演出や、役者陣の熱演などによっても、視聴者は映像作品&物語への興味関心や没入を惹起させられるのだ。そして、ひいてはそれらの総合によって、個別具体の作品に対する面白い・ツマらないといった感慨や、喜怒哀楽などの情動喚起にも帰結していくのだとも思うのだ……。


怪獣攻撃隊のレギュラーたち! 隊長の正体! タテ糸! 先輩ウルトラマン客演へ!


 「手段」ではなく「目的」としての「特撮」なり「映像」にも理があることを主張してみせてきたつもりだ。しかしコレは別に、登場人物たちが「特撮」の見せ場に奉仕するための「従属物」としてのストーリー展開のさらなる「コマ」や「操り人形」としてあればイイのだ、というような極論を主張したいがためではナイ。
 巨大怪獣との一進一退の攻防劇におけるその過程、その際の登場人物たちのリアクションを描くだけでも、充分に登場人物たちの性格や人間性を描くことはできるし、深めることもできるとは思うからだ。


 たとえば、セブンガーを操縦しウルトラマンゼットとも合体を果たした主人公青年・ハルキ隊員は、「押忍!!(オッッスッ!!)」が口グセにもなっている、実に記号的なクセが与えられた、番組公式自体も発表している通りの「体育会系」キャラではある。
 しかし、「オラオラァ」とガニ股で歩いてイキがってワルぶって周囲を威圧しているような、いわゆる「オラオラ」タイプの「体育会系」キャラでは決してない。そのようなイヤ~ンな感じは巧妙に除去された、ストイックなヒーローを描く子供番組にふさわしい安全にスポイル(笑)された爽やかな「体育会系」キャラなのだ。


 セブンガーを操縦するもうひとりの要員は女性隊員・ヨウコである。黒髪をアップのバックにしてオデコも出すことで凜々しさも醸している。戦闘要員に女性を配するあたりが女性の社会進出が進んだ21世紀を象徴している……といった理論武装も可能なのやもしれないけど、イヤイヤイヤイヤ。本邦初の人間搭乗型の巨大ロボットアニメの祖『マジンガーZ』(72年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200119/p1)のむかしからすでにメインヒロインのじゃじゃ馬娘が女性型巨大ロボットに搭乗して戦ってはいた。いや、それはまだ賑やかしの戦闘要員だったのだとの反論の余地はあるけれど、80年代中盤の戦隊ヒロインあたりからは戦闘能力においても男性戦士に遜色がナイかたちで描かれるようにはなっており、それからでもすでに35年が過ぎている。
 むしろ勝ち気でキツい女性、あるいは媚びてないクールな女性といった、それはそれで今となってはテンプレで記号的なキャラ付けには留めずに、むしろ男性の好みは「枯れ専」(爆)といった特殊ミーハーな属性を拡張するかたちで、ウルトラマンゼットにホレるどころかその年齢が5000歳だと知ることで(笑)ますますメロメロになってニヤニヤと溜息ばかりをつく乙女とするあたりで、『Z』という作品自体を明朗なモノとすることにも寄与している。


 科学的分析や兵器開発担当についても、黒髪を降ろした娘々した別の女性隊員・ユカが担当。コレについては『ウルトラマンX』に登場した女性メガネっ娘隊員でも前例はあるものの、今どきの作品であるからクールで理知的というよりややマッドサイエンティスト(笑)なテンション高い快活なキャラに設定することで、やはり土曜朝のファミリー向け番組としての健全な作風にも貢献している。


 メカニック整備班のリーダー役には、特撮マニア的には映画『ゴジラVS(たい)スペースゴジラ』(94年)の主人公だけれども、オッサン世代のジャンルマニアたちからすればTV時代劇『大江戸捜査網』90年版と91年版の主人公や、『暴れん坊将軍』の放映ワクで放映されていた『若大将天下ご免!』(87年)の爽やかな若武者主人公たちでもあって……。ウ~ム、かつての好青年がまだ還暦前なのに髪の毛もウスくて白髪になって随分と老けたなぁ。……でも実にイイ味わいを出しています!


 地球防衛軍クリヤマ長官はメジャーどころの喜劇役者さんを使って小倉久寛おぐら・ひさひろ)。『仮面ライダーウィザード』(12年)のいわゆる後見人ことオヤッサン・ポジションでのレギュラー出演が特撮ファン的には記憶に新しいけど、三枚目的な上司役を好演。


 そして、4年前の『ウルトラマンオーブ』にレギュラー出演してライバル青年・ジャグラスジャグラーを演じていた青柳尊哉(あおやぎ・たかや)が演じる怪獣攻撃隊のヘビクラ隊長!
 ウワァ~、キチンと別人としての隊長役を務めているよぉ。『帰ってきたウルトラマン』#2へのオマージュのごとき、同じく#2における隊長がハルキ隊員に柔道の稽古をつけているときなど、ジャグラーのような演技や演出が散見されるのだけれども、コレは単なるファンサービス・楽屋オチなのであろう……。
 と思っていたら! 徐々に雲行きが怪しくなってきて、ついに#5では早くも人間大サイズのジャグラスジャグラー怪人態へと変身! どころか、ハルキ青年の変身アイテム・ウルトラゼットライザーを一時的に奪って、闇の力でそのコピーまでをも生成!


 ウルトラゼットライザーを使うのはハルキ青年と、後述するウルトラマンジードこと朝倉リクと、#1ラストでナゾのアメーバ状の生命体に身体を乗っ取られてしまって、本作の宿敵になるのであろう怪獣研究所のライバル青年だけじゃなくって、第三勢力的に登場したこのジャグジャグも使っちゃうのかヨ!?(笑)


 ヒーローと同等の様式美的な変身バンク映像にて、『オーブ』TV中盤や続編映画『劇場版ウルトラマンオーブ 絆の力、おかりします!』(17年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200406/p1)でも披露した、


ゼットンさん! パンドンさん! マガオロチ! 闇の力、お借りします!」


との掛け声とともに、宇宙恐竜ゼットン・双頭怪獣パンドン・大魔王獣マガオロチ――『オーブ』の中ボス怪獣――の力を借りた姿、合体魔王獣ゼッパンドンへと3度目の巨大化変身! 冷凍怪獣ペギラを倒した直後のウルトラマンゼットに対戦を挑んでくる!
 ナンと! ペギラとの特撮バトルだけでお腹いっぱい充分に満足して、今日の放映は「もう終わった、メデタシめでたし」感があったというのに、まさかのゼッパンドンvsウルトラマンゼットとの第2ラウンドまでもが描かれるだなんて!


 つまりは、ジャグラスジャグラー当人が怪獣攻撃隊の隊長を務めていたのかヨ!? コ、コレはジャグラーがゼットを鍛えているのであろうか? ジャグジャグがラスボスだといったことはさすがにナイだろうけど、何らかのズル賢い私情・欲望から来る遠大な目論見があるのであろうか?
 単なる各話単位での楽しみを超えて、シリーズにタテ糸をもたらして興味関心を持続させていく要素にも昇華しており、今どきの作品であるのならばやっぱりこーいう展開でなくっちゃ! とも思わせるのだ。


――その伝では、直前作『ウルトラマンタイガ』を全否定はもちろんしないにしても、昭和のウルトラマンタロウの息子にしてタロウの旧友でもある悪のウルトラマントレギアを宿敵に据えた魅力的な設定があったのにも関わらず、そこには踏み込まずに1話完結性を強調していた作劇についてはチョットあんまりにも……――


 そして、#5が終了直後につづけて流される、次回の#6「帰ってきた男!」の予告編!
 本作『Z』放映開始1週間前の総集編番組『ウルトラマンクロニクル ゼロ&ジード』(20年)最終回の『Z』事前特番でも告知はされて知ってはいたけれど……。先輩戦士・ウルトラマンジードこと朝倉リクが助っ人参戦するエピソードが、ジャグラー登場の翌週につづけて配置されるイベント編の連打感! ダメ押しのこの予告編にてまたまた高揚感もいや増すのだ!


 コレだよ、コレ! 映画や短編番組のみならずTV本編でも中盤回においては、先輩ウルトラマン客演編を毎年各作でも実現した方がイイって! 子供たちもマニアたちも喜ぶって!
 昭和の子供たちもウルトラ兄弟客演編に大興奮して、放映翌日や早朝再放送のあとには登校班や教室や休み時間に大盛り上がりの会話を交わし合ったモノだけど……。今の子供たちにもあの興奮を与えてあげるべきなのだ!――まぁ、昭和の客演編は先輩ウルトラマンが負けてしまったりする点では万全ではなく問題もあったのだけれども(汗)――


 その伝で、前作『ウルトラマンタイガ』もシリーズの1/3あたりで、同作の2号ウルトラマンことU40(ユーフォーティ)出自のウルトラマンタイタスの同族の先輩でもあるウルトラマンジョーニアスを、たとえば彼らの宿敵・バデル族の残党怪獣掃討といった名目などにて客演を!
 シリーズ2/3あたりで、3号ウルトラマンことO50(オーフィフティ)出自のウルトラマンフーマの同族の先輩でもあるウルトラマンオーブウルトラマンR/B(ウルトラマンロッソとウルトラマンブル)を、やはり因縁の怪獣つながりなどにて客演させるべきだったんだってば!


――もちろん、そのへんの願望はアトラクショーのスタッフたちが実現させていたことは知っている。でも、ウルトラマンジョーニアスなんて子供たちには馴染みがない存在だから却下ダなんて気の回し過ぎだヨ。オールドヒーローだろうがポッと出の追加ヒーロー・ウルトラマンゼノン(笑)であろうが、幼児から観れば原色でスマートな超人が出現して颯爽と活躍さえしてくれれば、それだけで興奮するのだからサ! ギャラの問題で伊武雅刀(いぶ・まさとう)にジョーニアスの声の再演が頼めなければ、バンク音声での氏による「ショワッッッ!」の掛け声だけでもイイのだし(笑)――


追伸


 #3ラストでは、ウルトラマンゼット・ベータスマッシュが古代怪獣ゴモラを真上に宙高くどころか1キロ以上は高空に放り投げるや、ゼットが右拳を突き出して突進飛行していきコレを爆砕!(笑) この行為に対してマジメな特撮マニア諸氏からは批難の声が寄せられているそうである。
 ウ~ム、たしかにゴモラは侵略怪獣ではなく太古から甦っただけの怪獣にすぎなかったのやもしれないけど、あんまりソコの倫理的な正否をリアルに考えだすとなぁ……。生命に過剰に頓着しない恨みっこナシの古人的な「命のやりとり」ということでイイんじゃないですか?
 せっかく『ウルトラマンメビウス』のメインライター・赤星政尚(あかほし・まさなお)が、同作では「イイもん怪獣」を倒さずに助けてあげるエピソードは禁じ手にして、意図的に勧善懲悪・活劇エンタメに戻そうとしたという趣旨の発言をしていたというのに、そのへんの意図が徹底されていない、もしくは各位に理解がされていなかった模様で、『ウルトラマンX』でも危なっかしかったけど「怪獣との共生」みたいなことを過剰に云い募ると、それを目指した『ウルトラマンコスモス』どころか、ついには敵を倒してメデタシめでたしで落着する娯楽活劇作品全般の完全否定に帰結するしかなくなるゾォ~(汗)。


追伸2


 本作のシリーズ構成(メインライター)に抜擢されたのは吹原幸太氏。なんと本作の放映開始1ヶ月ほど前に30代の若さなのに脳幹出血で急逝されていたそうである。ググってみると中島かずきや古いところだと江連卓(えづれ・たかし)や土筆勉(つくし・つとむ)のように劇団主宰上がりの御仁だそうで、一般のTVドラマどころかシアターGロッソでの近年の「スーパー戦隊」ショーや「仮面ライダー」ショーに深夜ドラマ『怪獣倶楽部~空想特撮青春記~』(17年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20170628/p1)の脚本まで書いていたんですネ。
 多分、完パケの『Z』#1は内々に鑑賞して、2010年代ウルトラの通例から脚本も最終回まですでに完成しているとは思うけど(?)、『Z』があまりにも面白いし、アトラクとはいえ「戦隊」や「ライダー」まで手掛けていたとなると、次代の特撮ジャンルを背負う御仁になっていたやもしれないのに実に惜しい。ご冥福をお祈りいたします。


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2020年夏号』(20年7月23日発行)~『仮面特攻隊2021年号』(21年8月15日発行)所収『ウルトラマンZ』序盤合評5より抜粋)


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バカかっこいい作劇&映像の『ウルトラゼロファイト』!

(文・久保達也)
(2013年4月10日脱稿)


 ウルトラシリーズの最新ヒーロー・ウルトラマンゼロは、2009年度の映画『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE(ザ・ムービー)』(09年・ワーナー・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20101224/p1)で、かのウルトラセブン(67年)の息子にしてウルトラマンレオ(74年)の弟子である存在として、鮮烈なデビューを飾った。


 2010年度には幼児誌のカラーグラビア記事と連動し、年末には映画『ウルトラマンゼロ THE MOVIE 超決戦! ベリアル銀河帝国』(10年・松竹・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20111204/p1)が公開されて、その前日談として映画に先行してビデオ販売作品『ウルトラ銀河伝説外伝 ウルトラマンゼロVSダークロプスゼロ』(10年・バンダイビジュアルhttps://katoku99.hatenablog.com/entry/20200125/p1)の前後編も発売される。


 つづく、2011年度も同様の展開がなされて、公開は年末ならぬ2012年3月にズレこむも、映画『ウルトラマンサーガ』(12年・松竹・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20140113/p1)が公開。やはり現役テレビシリーズがないことによる知名度不足を補って『サーガ』の集客をうながすためか、テレビ東京系で過去のウルトラシリーズのエピソードや総集編を流す週1のテレビシリーズ『ウルトラマン列伝』(11年)の放映も開始。年末には『サーガ』の前日談としての位置付けでビデオ販売作品『ウルトラマンゼロ外伝 キラー ザ ビートスター』(11年・バンダイビジュアル)の前後編も発売されている。


 しかし、思ったような商業的成果が出なかったためか、2012年度は路線を変更した。


 『ウルトラマンゼロVSダークロプスゼロ』も『キラー ザ ビートスター』もわれわれマニアが見ればおおいなる工夫が見られても、あきらかに低予算な作品であることが透けて見えた(笑)――そのこと自体は作品のクオリティとはまた別次元の話である――。


 われらがウルトラマンゼロを主人公とした新作はついにビデオ販売作品や新作映画ではなく、それらよりははるかに桁違いに多くの子供たちの眼にふれるであろう地上波の『ウルトラマン列伝』放映枠の一角を使って、1話3分程度の全8話や全15話といったミニシリーズ『ウルトラゼロファイト』での展開となったのだ!


 この『ウルトラゼロファイト』では、同作のタイトルの元ともなった往年の平日5分枠の帯番組『ウルトラファイト』(70年)を模して、ついに人間の役者の登場は廃され、ヒーローや怪獣・宇宙人たちの着ぐるみだけが登場して、しかも完全新造の着ぐるみはもはや造形されずに既存の着ぐるみだけを流用、ヒーローの方も着ぐるみの色の塗り替えや玩具の型の微改修で安く済ませることができるタイプチェンジによる新キャラクターの登場という方策を採った。


 もちろん、費用がかかるロケには外出せず、背景美術も全編を高精細なCG背景の合成にもせず、旧来からのアナログなセットまるだしの特撮スタジオ撮影も適宜用いることで、いかにも厳しい台所事情も忍ばれてくるのだ……


 そんな逆境下でつくられた2012年度の「ウルトラマンゼロ」の商業展開である短編シリーズ『ウルトラゼロファイト』なのだが、驚くなかれ! ここ数年でも桁違いで最も低予算な作品となったが(汗)、それとはウラハラに実に大胆な特撮映像・超絶アクション演出・痛快娯楽活劇としての作劇センスは秀逸なばかりであり、誤解を恐れずに正直に云えば「ウルトラシリーズ」最高傑作にして次代の典範・スタンダードとなりうる作品が遂にここで誕生したのでは!? と思えるほどの出来なのだ!


 ともに大傑作である『ウルトラマンゼロVSダークロプスゼロ』や『ウルトラマンサーガ』も手掛けたおかひでき監督による、2012年8月から9月にかけて『ウルトラマン列伝』の枠内にて全8回の話数で放映された『ウルトラゼロファイト』第1部『新たなる力』。


 やはり大傑作であった『ウルトラマンメビウス』(06年)第24話『復活のヤプール』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20061112/p1)や『ゼロ THE MOVIE』を手掛けたアベユーイチ監督による、同2012年12月から13年3月にかけて、同枠内にて全15回の話数で放映された『ウルトラゼロファイト』第2部『輝きのゼロ』。


 この2作品に共通する特徴は、1970年代後半~2000年前後に特撮マニアの過半が理想としていた「ハードでシリアスでリアルシミュレーションな作風」が「日本特撮の再興」につながる(笑)という、かつては理想とされてきた方向性とは真逆な、良い意味での半分笑ってしまうような「バカっぽさ」と、しかしてそれでも超絶に「カッコいい」という感覚の同時両立なのだ。この玄妙なセンスを文中でいちいち「バカっぽいけど、カッコいい」「バカっぽいのに、カッコいい」と表現するのは煩雑にすぎるので、今回は便宜的な造語として「バカかっこいい」(笑)なる表現とさせていただき、本作の尽きない魅力についておおいに語らせていただくこととする!


『ウルトラゼロファイト 第1部 新たなる力』(12年)


 『ウルトラゼロファイト』第2部『輝きのゼロ』(12年)第1話も、第1部『新たなる力』の総集編であった。


 映画『ウルトラマンサーガ』でウルトラマンダイナ・ウルトラマンコスモスと共演、彼らと合体してウルトラマンサーガなる超存在にも強化変身したウルトラマンゼロは、彼らと分離したあともダイナとコスモスから「新たなる力」を授かったことを心のうちに感じていた。


 そんなゼロが、『サーガ』にも黒幕として登場してそのラストでは宿敵・宇宙恐竜ハイパーゼットンイマーゴとともに倒された触覚宇宙人バット星人の別個体こと個人名・グラシエが操る怪獣軍団との対決を、映画『ウルトラ銀河伝説』にも登場した宇宙の彼方の怪獣墓場で繰り広げるさまを描くという、まさに『サーガ』のストレートな後日談としてつくられたこと自体が喜ばしいし、この第1部もまた実に「バカかっこいい」魅力にあふれていた。


 怪獣墓場という荒野が舞台だからか、まさに「荒野の用心棒」といわんばかりの、西部劇風のボロボロな布製のマントを身につけたウルトラマンゼロ。これは1970年代に児童誌『コロコロコミック』で連載された、かたおか徹治先生が手掛けた宇宙の星々を舞台にウルトラ一族が活躍する漫画『ウルトラ兄弟物語』(78年)からの引用であろう。


 そこに、宇宙怪獣ベムラー・地底怪獣テレスドン・岩石怪獣サドラ・古代怪獣グドンが出現!


 前2者は初代『ウルトラマン』(66年)出自、後2者は『帰ってきたウルトラマン』(71年)出自の人気怪獣で、近年のウルトラシリーズ作品で再造形されて再登場してきたものの流用だが、いきなり超豪華!!


 ベムラーが口から放った青い火球を左手で受け止めることでゼロの強さを示しつつ、その手でマントを脱ぎ捨てるゼロ! これこそ「バカかっこいい」!(笑)


 基本形態が赤と青のボディーであるウルトラマンゼロだが、ウルトラマンダイナの赤いパワー形態「ストロングタイプ」とウルトラマンコスモスの赤い戦闘形態「コロナモード」の力を引き継いだ、全身が赤いボディーのその名もそのまんまな「ストロングコロナゼロ」にタイプチェンジ!


 グドンに飛び回し蹴(け)り! サドラに飛びひざ蹴り! これだけで爆発四散する怪獣たち! と序盤から圧倒的な強さが描かれる!


 そして、ウルトラマンダイナの青い高速戦闘形態「ミラクルタイプ」とウルトラマンコスモスの青い慈愛の形態「ルナモード」の力を引き継いだ、全身が青いボディーの「ルナミラクルゼロ」にタイプチェンジ!


 頭頂部のふたつのトサカ部分を外して放ったブーメラン武器であるミラクルゼロスラッガーは、投げられるや一旦ふたつが宙で向き合って高速回転するや花びらのように多数に見えてきて、それが錯覚ではなくホントウに多数に分裂したゼロスラッガーとしてベムラーテレスドンの周囲を渦巻くという芸の細かさ!


 赤い「ストロングコロナゼロ」の力強さと、青い「ルナミラクルゼロ」の幻惑的な能力、それぞれの特性の違いが端的に「バカかっこよく」描かれている!


 さらに、どくろ怪獣レッドキング、宇宙大怪獣ベムスター、奇獣ガンQ、フィンディッシュタイプビースト・ガルベロスが一斉に出現!


 怪獣の紹介順でいうと、第1期ウルトラシリーズの初代『ウルトラマン』、第2期シリーズの『帰ってきたウルトラマン』、平成ウルトラ3部作の『ウルトラマンガイア』(98年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/19981206/p1)、21世紀のシリーズである『ウルトラマンネクサス』(04年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20060308/p1)と、怪獣のセレクトも一時の第1期ウルトラ怪獣至上主義ではなく実に公平であり、いずれも強敵で知られた人気怪獣たちの復活である!


 そして、バット星人・グラシエによって「地獄の四獣士(よんじゅうし)」と紹介される!


 って、これまたハイブロウなSF性は皆無でも、幼児はともかく児童であれば理解ができて、かつ喜びそうな、実に暑苦しい少年漫画チックなノリのネーミングであり、実に「バカかっこいい」!


 なんとゼロ、バット星人によって、自身が初登場した映画『ウルトラ銀河伝説』において、師匠(ししょう)のウルトラマンレオから特訓を受けていた際の訓練用拘束アーマーを身につけた「テクターギアゼロ」の姿にされてしまう!


 マニア的に引いて観てしまえば、既存の着ぐるみを次々と流用してタイプチェンジをつづけることで、画面を単調にせず変化を付けるための意図が見て取れる(笑)。しかし、意味もなくその形態が変化したのではなく、ウルトラ一族に倒されてきた怪獣たちの怨霊(おんりょう)が彼に取り憑いて「テクターギア」のかたちを取ったのだ! と科学的・SF的な合理性ではないけれどオカルト的な合理性で、この事象がバット星人によって説明されるあたりはていねいだし、敵の策略のスゴさも感じられる趣向なのでカンゲイである。つまりは、まったくのデタラメではなく一応のリクツや因果関係はあるのだ!


 しかも、それを受けて立ったゼロに「怪獣たちの恨みも、このオレがすべて引き受けてやる!!」と豪語させて、ゼロの見上げた心意気も描くことで彼のキャラを立て、ドラマ的にも盛り上げるあたりは好印象!


 加えて、怪獣軍団の一体・レッドキングまでもがタイプチェンジ! 長くて太っとい腕が特徴であるEX(イーエックス)レッドキングと対決するハメになる!


――ちなみに、EXレッドキングの初出はゲーム版『大怪獣バトル』、テレビシリーズでの初出は『ウルトラギャラクシー 大怪獣バトル NEVER ENDING ODYSSEY(ネバー・エンディング・オデッセイ)』(08年)最終回(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20100331/p1)――


 テクターギアゼロの目線、および怪獣墓場でやはり甦った人間大サイズの可愛い怪獣・友好珍獣ピグモンの目線であおりでとらえることにより、EXレッドキングがそれこそバカみたいに長くて太っとい腕でゼロに殴りかかってくる猛威を絶妙に表現できている!


 EXレッドキングにやられて倒れこんだテクターギアゼロの顔面の上に舞い降りる、今回の黒幕である人間大サイズのバット星人・グラシエの軽薄な丁寧語でしゃべるふるまいやトークで、その愉快犯的なキャラクターも端的に描くことができている。


 バット星人に「目障りです!」と名指しされてEXレッドキングがふりおろす豪腕でつぶされそうになって、高い岸壁の上で思わず身を伏せた人間大サイズのピグモンを画面手前に配置し、それをとっさに背中で防いだ巨大超人・テクターギアゼロの顔面を中央に、その背後にはEXレッドキングをおさめた特撮合成カットも臨場感にあふれていてよい!


 ストロングコロナゼロに戻ったゼロは「ウルトラハリケーーン!!」と叫んで、マニアならばご存じで驚愕と同時に嬉しくもなってしまう、『帰ってきたウルトラマン』(71年)最終回(第51話)『ウルトラ5つの誓い』で帰ってきたウルトラマンことウルトラマンジャックが宇宙恐竜ゼットン二代目に最後に放ったのと同一の技(!)を披露!


 EXレッドキングを豪快に宙へとヒネりを入れて放り投げると、その回転の勢いで軌跡に竜巻まで巻き起こしながらEXレッドキングは上空へと飛んでいく!


 そして、ウルトラマンダイナ・ストロングタイプの必殺技・ガルネイトボンバーを継承した、ストロングコロナゼロの右腕から放つオレンジ色の高熱のエネルギー弾流・ガルネイトバスターで、宙に放り投げられたEXレッドキングにトドメを刺すゼロ!


 その瞬間は地面から見上げた斜めに傾いた構図で、右腕を高々と掲げたゼロと、はるか上空で爆発するEXレッドキングの両者が捉えられることにより、勝利の凱歌(がいか)が絶妙にうたわれる! これまた「バカかっこいい」!



 ラウンド2はガルベロスがつくりだした幻影の偽ストロングコロナゼロ(!)との対決!


 本作で初登場したばかりのストロングコロナゼロが早くも偽者として登場してしまう! よほど製作予算がないのだな(笑)。


 なんと本物の赤と青の基本形態のゼロと偽物の赤いストロングコロナゼロの両者、額をぶつけてガン(眼)を飛ばしあったそばから、両者が額(ひたい)のビームランプから黄緑色のシャープな光線技・エメリウムスラッシュをほぼゼロ距離の至近距離でぶつけ合って、横走りで画面手前に駆けてくる!


 まさにタイマンの張り合い! って、いくらなんでもガラ悪すぎやろ! いや、これこそまさに「バカかっこいい」のだ!



 そして、ラウンド3。敵の戦闘方法を逆手に取り、ベムスターの五角形の腹に突入してガンQの超巨大な単眼から飛び出して、両者を撃滅するルナミラクルゼロの奇抜なバトル描写は、『ウルトラセブン』(67年)第38話『勇気ある戦い』でゼロの父・ウルトラセブンがミクロ化して、防衛組織・ウルトラ警備隊のフルハシ隊員が手にしていた銃に潜入、銃撃とともに巨大化しながらロボット怪獣クレージーゴンに体当たりしたステップショット戦法を彷彿(ほうふつ)とさせる!


 この必殺技はウルトラシリーズのファンの大勢がきっと幼少のころからとても印象深かったであろう特撮シーンなのだが、あの「マジメでシリアスでSFである」「大人の鑑賞にも堪えうる」(笑)と第1期ウルトラ至上主義者たちに長年絶賛されてきた『セブン』の中でさえも、実はこのような稚気満々(ちきまんまん)でアイデアあふれるカッコいい戦闘が描かれていたのだ! やっぱり、ドラマやテーマよりも、こうしたビジュアルや戦闘シーン、ヒーローの強さや超越性に対する驚きこそが、「特撮」ジャンルの最大の魅力なのだ! これこそまさに「バカかっこいい」!


 最終ラウンドは、倒された「地獄の四獣士」こと怪獣たちの赤い人魂を吸収して、巨大化したバット星人とゼロとの決闘!


 バット星人は長剣を用い、ゼロもふたつのゼロスラッガーを合体させて半月刀状にしたゼロツインソードで剣戟(けんげき)バトルを展開する!


 「自分を倒せば怪獣墓場から復活させたピグモンも死ぬぞ!」とバット星人はゼロを脅す!


 動揺したゼロはゼロツインソードをはじき飛ばされる!


 大地に突き刺さったゼロツインソードを画面中央手前に配し、ロングで両者の対峙をとらえる描写が最高!


 最終決戦だからとばかりに、背景が星々の輝く黄緑の明るい宇宙空間であるCG背景から、セットのホリゾントをライトで照らしただけの夕焼け空に染める演出もマルだ!


 「自分の命は惜しくない」という健気な想いを抱いていることをピグモンの表情から悟(さと)って、その心意気に打たれたゼロは、なんと背中合わせでストロングコロナゼロとルナミラクルゼロに分身!


 なんでやねん!? そんな超ご都合主義(笑)により、ストロングコロナゼロの光線がバット星人にトドメを刺し、ルナミラクルゼロのバリアーがピグモンを救う!


 超ご都合ではあるけれど、そんな超能力を発揮するのが一般ドラマのふつうの人間キャラであったら興醒めだが(笑)、神秘の超人ヒーローだからこそ好意的に解釈ができて一応許せてもくるし、むしろ爽快感やヒーローに対するあこがれにも昇華していくのである。つまり「バカかっこいい」からこれでいいのだ!(笑)



ゼロ「第2部、楽しみに待っててくれよな!」


 ゼロ、右手人差し指と中指でVサインすることで「2」を表現し、右腕をグルグル回して視聴者の方を指(さ)す!


 これが象徴するように、『ウルトラゼロファイト 第2部 輝きのゼロ』(12年)もまた、監督はアベユーイチに交代するも、やはり「バカかっこいい」展開&特撮ビジュアルが連発する大傑作だったのだ!


『ウルトラゼロファイト 第2部 輝きのゼロ』(12年)


 バット星人に勝利したウルトラマンゼロが映(うつ)る床面の巨大モニターを踏みつける、悪質宇宙人メフィラス星人・魔導のスライ……、って導入部からしてもう「バカかっこいい」!


 メフィラスを中央に、宇宙人軍団が円陣を組んでいるさまは、映画『ウルトラマンメビウスウルトラ兄弟』(06年・松竹・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20070128/p1)の強豪宇宙人軍団を彷彿とさせる!


 敗北したバット星人について、グローザ星系人・氷結のグロッケンが、


「触覚の役目は果たしたってところだな」


と吐(は)いたセリフも、アレだけの強敵が触覚=先兵にすぎなかった! という、少年漫画にアリガチな既視感バリバリなセリフなのだが(笑)、それでも彼ら新敵たちが、その戦闘シーンを描かずとも先兵をも上回る強敵たちであることを示唆するワクワクさせられる描写なのであり、実にセンスがいい!


 闇の支配者に仕(つか)える、赤い目をした5人の凶悪宇宙人軍団! その名は、


「われら、ダークネスファイブ!!」


って、スーパー戦隊かおまえら!(笑)


 ダークネスファイブが揃い踏みするや、青い稲妻がほと走り、その背後にはビデオ作品『ウルトラマンメビウス外伝 アーマードダークネス』(08年・バンダイビジュアルhttps://katoku99.hatenablog.com/entry/20080914/p1)前後編やテレビシリーズ『ウルトラギャラクシー 大怪獣バトル NEVER ENDING ODISSAY』(08年)終盤(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20100312/p1)に登場した、巨大な暗黒の鎧(よろい)・アーマードダークネスの幻影が浮かびあがり、その周囲が炎に包まれる!


 超「バカかっこいい」!(笑)



 古代遺跡風の建造物が並ぶ惑星ファネゴンに、テレビシシリーズ『ウルトラマンティガ』(96年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/19961201/p1)第26話や映画『大決戦! 超ウルトラ8兄弟』(08年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20101223/p1)に登場した剛力怪獣シルバゴンが出現!


 コイン怪獣カネゴンみたいな提灯(ちょうちん)のように飛び出た目玉にガマ口のような頭部のファネゴン人たちがシルバゴンの手前を逃げまどうが、こうしたかたちで宇宙人の「民間人」が登場するのって、まさに1970~80年代に内山まもる大先生やかたおか徹治先生や居村眞二先生が小学館学年誌や児童誌『コロコロコミック』に幼児誌『てれびくん』などで描いてきた、大宇宙の星々を舞台としたウルトラシリーズのオリジナル漫画作品を彷彿とさせ、実に嬉しいものがある!


 映画『ゼロ THE MOVIE』以降、定番で流れている「ウルトラマンゼロのテーマ」曲とともに、ウルトラマンゼロが登場!


 ウルトラハリケーンでシルバゴンを宙に吹っ飛ばすや、そのシルバゴンの周囲をルナミラクルゼロが高速回転、右手からウルトラマンコスモス・ルナモードの技・フルムーンレクト由来の青い光・フルムーンウェーブを放つことで、その怪獣本来の落ち着いた気持ちを取り戻させて、退治せずに次元の裂け目から元の世界へと戻してあげる優しいゼロ。


 画面左手前にファネゴン人たち、右にゼロ、中央左寄りに裂け目から元の世界へノソノソと帰っていくシルバゴンと、やはり臨場感あふれるカットがよい。


 そこに現れたのはウルトラ兄弟たちの母でもある「ウルトラの母」!


 崖(がけ)の上に立つウルトラの母、なんと後光(ごこう)が輝いている! まさに荘厳(そうごん)な趣(おもむき)が感じられるのだが、これまた「バカかっこいい」!


 ウルトラの母からゼロの仲間たち、ミラーナイト・グレンファイヤー・ジャンボット・ジャンナインらで結成した新宇宙警備隊ことウルティメイトフォースゼロに危機が迫っていると聞かされたゼロは、母とともに「ひみつ基地」マイティベースへと急行する!



 このマイティベース。『ウルトラ銀河伝説』以降に描かれてきた実在感あふれる高精細なCGによる光の国の建造物同様、青緑色のクリスタル状であり、ほとんどM78星雲・ウルトラの星にある宇宙警備隊本部の建造物と同じ形態――単にCGデータをそのまま流用?(笑)――であるのが統一感があってマル。


 ていうか、「ひみつ基地」なるあまりにも懐かしいフレーズをわざわざ、一周まわった子供向けとして、ひらがな混じりのテロップで流すセンスが「バカかっこいい」!(笑)


 マイティベースに着くや、『ウルトラマンA(エース)』(72年)第26話『全滅! ウルトラ5兄弟』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20061030/p1)~第27話『奇跡! ウルトラの父』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20061105/p1)の前後編や映画『大決戦! 超ウルトラ8兄弟』に登場した地獄星人ヒッポリト星人が、その特殊液体でウルトラ兄弟をブロンズ像として固めてしまったように、ゼロはミラーナイトとグレンファイヤーがブロンズ像として固められていることに仰天(ぎょうてん)する!


ゼロ「おまえたち、そのポーズは!?」


 固められたことではなく、固められた瞬間の珍妙なポーズの方が問題なのか!? そんなダブルミーニングで、大きなお友だち向けのギャグとしての意味合いも持ってきて、「笑い」までをも取りに行ってしまうのがまた、ハードでシリアス一辺倒ではあった20世紀の特撮マニア向けではなく、ネジくれたギャグもまた高踏(こうとう)センスとして許容するように進化した(堕落した?)21世紀の今を生きるスレた特撮マニア向けのギャグ演出でもある(笑)。


 しかし、ゼロが首を傾(かし)げたほど、ミラーナイトとグレンファイヤーはどう見ても、踊っている最中にブロンズ像にされたとしか思えないほど、超ヘンなポーズであった(爆)。


 ウルトラの母、『超ウルトラ8兄弟』に登場した方の地獄星人スーパーヒッポリト星人の別個体としての正体を現して固有名詞も名乗るが、


スーパーヒッポリト星人「地獄のジャタール!」


と名乗るカットに入る、画面の周囲から中央に向かう無数の集中線の画面効果は、ほとんど少年マンガのコマ風だ(笑)。これぞまさに「バカかっこいい」!


 ゼロはスーパーヒッポリトに右手をブロンズ化されてしまうが、すかさず硬化した右手でヒッポリト星人を殴りつける!


 「カ~~ン!!」というコント劇みたいな効果音とともに吹っ飛んでいくヒッポリト(笑)。


 『ゼロ THE MOVIE』に流れた名曲「すすめ! ウルトラマンゼロ」のインストとともに、ゼロの大逆襲が始まる。


ゼロ「ブサイクなツラして、ウルトラの母に化けるたぁ許せねぇ!」


って、いくら相手が悪の宇宙人でも、「ブサイクなツラ」は云うたらいかんやろ(笑)。


 ゼロ、ヒッポリトを連発で殴りつづけたまま、マイティベースを高速で飛び出してくるが、


「ア~ラアラアラアラアラアラアラ~ぁ~!!」


と、例によって、1980年代に集英社週刊少年ジャンプ』に連載されていた名作マンガ『北斗の拳』(83年・84年にテレビアニメ化)の主人公・ケンシロウのような、いわゆるカンフー映画の立役者、ブルース・リーにはじまる、いわゆる「怪鳥音」と称される奇声を上げつづけて、拳法的なパンチを連発! やっぱ「バカかっこいい」!(笑)


ゼロ「これで、トドメだ!!」


 殴られた勢いで宙空に浮かんでいた小惑星にメリこんでしまうヒッポリト!!


 ゼロ、その右腕から熱弾・ガルネイトバスターを発してヒッポリトを小惑星ごと炎上させる。ゼロが右腕を振りおろすと同時に爆発!


 しつこいようですが、「バカかっこいい」!(笑)



 つづいて登場したのは、『ウルトラマンタロウ』(73年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20071202/p1)第33話『ウルトラの国 大爆発5秒前!』~第34話『ウルトラ6兄弟最後の日!』前後編や映画『ウルトラマンメビウスウルトラ兄弟』に登場した極悪宇宙人テンペラー星人の同族別個体!


 そして、『ウルトラマンタロウ』第40話『ウルトラ兄弟を超えてゆけ!』や『ウルトラギャラクシー 大怪獣バトル NEVER ENDING ODISSEY』中盤(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20100211/p1)に映画『ウルトラマンサーガ』で惜しくもカットされた部分(後日編注:初出公開版)にも登場していた暴君怪獣タイラント


 「極悪のヴィラニアス」と固有名詞を名乗ったテンペラー星人。そしてタイラント。それぞれが左腕と右腕を高々と掲げてガッチリとクロスさせて「極暴タッグ!」と名乗りをあげる! この瞬間のシーンでも、やはり無数の集中線の画面効果が合成されて、マンガのコマ風(笑)。


ゼロ「ハハハ、ダッセェ~名前つけやがって、笑っちまうぜ!」


 ゼロはバカにしているが、やっぱりこれも「バカかっこいい」!(笑)


 そもそも、『ウルトラマンタロウ』では両者がともにタロウのみならず並みいるウルトラ6兄弟をも窮地に追いやっており、後者に至っては竜巻怪獣シーゴラス・異次元宇宙人イカルス星人・宇宙大怪獣ベムスター・殺し屋超獣バラバ・液汁超獣ハンザギラン・どくろ怪獣レッドキング・大蟹超獣キングクラブの怨念が集合した合体怪獣でもある、通常回よりも格上の宇宙人と怪獣であるテンペラー星人タイラントがタッグを組むこと自体が「バカかっこいい」! いや、「めちゃくちゃカッコいい!」ことではないか!?


 もっとも、今回のテンペラー星人の着ぐるみは『タロウ』版の再現ではなく『メビウスウルトラ兄弟』版の流用による別個体設定だが、「極悪」宇宙人というより「極道」宇宙人(笑)との別名をつけたくなるほど、『メビウスウルトラ兄弟』版のテンペラーはヤクザ系宇宙人としての風格にあふれており、個人的には大のお気に入りなのである。


 ただ、『タロウ』版の、


ウルトラ兄弟!! ……ド~コ~だ~よぉ~~」


のかなりおマヌケなテンペラーを否定しているワケではないので誤解のなきように。あれもまた、「バカかっこいい」のである(笑)。


 いっそのこと、往年の昭和ウルトラ怪獣たちのように、


●『帰ってきたウルトラマン』に登場した用心棒怪獣ブラックキングは「兄」
●初代『ウルトラマン』に登場したどくろ怪獣レッドキング「弟」


●『帰ってきたウルトラマン』に登場した凶暴怪獣アーストロンは「兄」
●同作に登場した爆弾怪獣ゴーストロンは「弟」


●初代『ウルトラマン』に登場した地底怪獣テレスドンは「兄」
●『帰ってきたウルトラマン』に登場した地底怪獣デットンは「弟」


●初代『ウルトラマン』のメフィラス星人は「兄」
●『ウルトラマンタロウ』のメフィラス星人二代目は「弟」


といった、学年誌や子供向け書籍で散々に解説されてきて、当時の子供たちも素朴に喜んで小学校などで吹聴(ふいちょう)してきたウラ設定の数々のように、『ウルトラマンタロウ』のテンペラー星人が「兄」で『メビウス&兄弟』版のテンペラー星人「弟」として、今からでも遅くないので、改めて公式設定にするべきではないか!? と思うのだ(笑)。


――地球怪獣であるレッドキングと宇宙怪獣であるブラックキングがドーして兄弟なんだよ!? と子供のころはともかく、長じてからはツッコミの余地がある設定の数々なのだが、これも80年代あたりから特撮評論同人界隈では、レッドキングの細胞や遺伝子を操作して誕生したのがブラックキングなのだと当時の作り手たちが考えてもいなかったことを、勝手に好意的に優しいウソに優しいウソを重ねつづけて楽しく解釈してきたものである(笑)――


 ゼロが頭頂部のふたつのゼロスラッガーを放つのと同時に、タイラントがその腕の長いムチをゼロに向けて放つ!


 ゼロは右手でムチをはらいのけ、タイラントも右手でひとつのスラッガーをはらいのけ、テンペラーはもうひとつのスラッガーを堅い背中の甲羅でかわす!


 ゼロが両腕をL字型に組んで光線技・ワイドゼロショットを放つや、テンペラーをすかさずかばったタイラントがその腹部のパーツである宇宙大怪獣ベムスターの五角形の腹で光線を吸収!


 ゼロが額のビームランプから放った必殺光線・エメリウムスラッシュが、往年の大ヒットアニメ『宇宙戦艦ヤマト』(74年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20101207/p1)の冥王星での戦闘で有名な敵・ガミラス帝国による可動式鏡面を備えた人工衛星を経由してレーザー攻撃する「反射衛星砲」のように、宙に浮遊するゼロスラッガーに角度を付けて傾かせてその鏡面状の側面に反射させることで、あらぬ方向からテンペラーを急襲!


 テンペラー両手を組んでかわすが、少々ダメージを受ける!


 ゼロ、ふたつのスラッガーを両手でカチンと鳴らしてから、タイラントに飛びかかる!


 この超スピーディなバトルの流れ、「バカ」、いや、「めちゃくちゃカッコいい」!


 テンペラーは両腕を大きく開いてから、それを同時に前方に突き出すという、原典の『タロウ』で初代テンペラー星人ウルトラ兄弟を攻撃した技の再現でもあるおなじみのポーズで「ウルトラ兄弟必殺光線!」を発射!


 タイラントに羽交(はが)い締めにされたことで、まともにこれを食らうゼロ!


 勝利を確信したテンペラーが、同僚だったヒッポリトのことを「あんな奴……」とバカにする発言をしたために、ゼロが「奴は仲間じゃなかったのか!?」と問うや、


テンペラー「笑止、弱い者など仲間とは云わん!」


 この発言がゼロに逆転の機会を与えてしまう。そういう不道徳な発言が最もゼロをキレさせて奮起させるってことが、なんでわかんねえのかなぁ(笑)。


ゼロ「おまえみたいなのが一番ムカつくぜ!!」


 ゼロはタイラントに飛び回し蹴り!


 タイラントの下敷きとなってしまったテンペラー!


 ついさっきまで仲間扱いしていたタイラントを「役立たず」扱いにする!


ゼロ「コロコロ手のひら返す奴が、仲間の価値を語ってんじゃねえ!!」


 こうした「バカかっこいい」バトルの中でも、ちゃんと必要最小限なメッセージが含まれているのである! つまり、道徳的なメッセージを鼻白(はなじろ)んでしまうような説教くさくて退屈なドラマの中で描くのではなく、こうしてさりげなく子供が最も熱中して見ているバトルの中に織り込ませて退屈させずにスンナリと伝えることこそが、子供向けヒーロー番組や娯楽活劇作品一般におけるテーマの伝え方の理想形ではないだろうか!?


 優勢となったゼロ!



 しかし、そこにメフィラス星人・魔導のスライが出現!


 メフィラスの手には人質とされてしまったピグモンの姿が!


 このメフィラスの姿は実は幻影・立体映像であり、ピグモンを助けたければ、メフィラスとピグモンの本体がいる怪獣墓場まで来るように迫られるゼロ!


ゼロ「どいつもこいつもイケすかねえ奴らばかりだぜ!」


 ゼロがテンペラーと決着をつけて怪獣墓場に急行しようとするや、冷気がゼロを襲ってきて右足が凍結してしまう!


 グローザ星系人・氷結のグロッケン、そしてデスレ星雲人・炎上のデスローグが出現!


 両者ともに同族の別個体であるグローザ星系人こと冷凍宇宙人グローザム、デスレ星雲人こと策謀宇宙人デスレムが、『ウルトラマンメビウス』終盤(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20070422/p1)で3万年前に昭和ウルトラマンたちの故郷「光の国」が怪獣軍団に侵略された伝説の戦い「ウルトラ大戦争」のころから暗黒宇宙大皇帝エンペラ星人に仕えていた暗黒四天王の一員として登場していたが(要は着ぐるみの使い回し・笑)、今回は別個体であることからそのキャラクターは完全に変わっている。


 『メビウス』ではクールな印象だった冷凍宇宙人は今回は完全にただのチンピラ型(笑)。一方、ヤクザ系だった策謀宇宙人は今回はナゼか寡黙(かもく)である。今回の強豪宇宙人軍団のキャラシフトを考えてみれば、メフィラスは相変わらずの紳士型、テンペラーはヤクザ系、バット星人が愉快犯、スーパーヒッポリトがおマヌケ役(笑)と見事なまでの差別化がなされており、それらの幹部級宇宙人とキャラがかぶらないようにと、グロッケンをどチンピラ、デスローグを無口な奴として、設定が変更されたのは大正解だったと思うのだ!


 テンペラー・タイラント・グロッケン・デスローグは、ゼロを取り囲み、一斉にゼロを袋叩きにする!


 しかし、右足が凍っているにもかかわらず、そいつら相手にいつもと変わらぬ豪快なアクションを展開するゼロ! もう驚くばかりの「バカかっこよさ」である!(笑)


 だが、一斉光線を浴びてしまい、さすがのゼロも大ピンチに!



 そこに駆けつけたのは、


グレンファイヤー「じゃじゃ~~ん!」


って、自分で登場ブリッジを叫ぶなっちゅーの!(笑)


 高い崖の上に揃い踏みしているグレンファイヤー・ミラーナイト・ジャンボット・ジャンナイン!


 こちらもまた、ダークネスファイブ同様、スーパー戦隊風の名乗りをあげるのだ!


 これこそまさに、最大限に「バカかっこいい」のである!


 ここですかさず流れるのが「ウルトラマンゼロのテーマ」曲! やはりこの名曲は「ウルティメイトフォースゼロのテーマ」として使用される方が、いっそう高揚(こうよう)感が増すのである!


 グレンファイヤーたちが一言ずつゼロに語りかけるが、各キャラが語り掛ける際に各々(おのおの)が画面の中央に来るように、その都度カメラを超高速で歯切れよく横移動させていく演出もカッコいい!


ゼロ「上等だぜ、おまえら!」


 「上等」って、ピンチを救いに来てもらって云うセリフか!?(笑) しかし、鼻をすするような仕草をして、少し感涙しているのかもしれないという芝居を、過剰にシミたったれた域には達しない範疇でカラッとスーツアクターは見せている!


 宇宙人軍団とタイラントを彼らにまかせて、ピグモンを救うために怪獣墓場へと急行するゼロ!


●グレンファイヤーVS氷結のグロッケン!
●ミラーナイトVS炎上のデスローグ!
●ジャン兄弟VS極暴タッグ!


 彼らのバトルと怪獣墓場へと高速飛行するゼロを正面からとらえたカットを交互に交錯させる演出が実にいい!


 父であるセブンと同じ飛行音で、ゼロが怪獣墓場へと急行する!



 怪獣墓場にたどり着いたゼロは、メフィラスを前に、


「てめえ、覚悟はできてんだろうなぁ!」


って、いつもと比べて妙にドスのきいた声、しかもメフィラスを指さした右手をクルッと裏返して「コッチへ来やがれ!」という仕草をしながらこのセリフを吐くものだから、マジでコワいぞコレ! いや、実に「バカかっこいい」!


 だが、メフィラスも余裕の表情であり、


「卑怯(ひきょう)もラッキョウもありませんよ」(爆)


って、初代メフィラスの紳士型を継承していたハズなのに、『タロウ』に登場した方のメフィラス星人二代目の迷セリフだ!


 かつては中二病的なハードでシリアス志向な第1期ウルトラ至上主義者たちに「ウルトラシリーズの堕落と変節の象徴!」「宇宙の神秘・未知の脅威といったSF性ではなく、単なる宇宙人のチンピラ化の象徴だ!」と散々に酷評されてきたこのセリフが一周まわって許せてしまって、マニアのツボを突いてプッと吹かせてしまうギャグとしての意味合いで流通してしまうとは!? 特撮マニアの価値観も二転三転して成熟していくものなのですねぇ(笑)。


 しかも、メフィラスが名乗りをあげる際、一瞬だけ初代のメフィラスの声を演じた大ベテラン声優・加藤精三(かとう・せいぞう)の声にエコーを付けた「フゥゥンッッッッ!!」なる唸るような掛け声が効果音的に入る演出がまたたまらん!


 本作『ウルトラゼロファイト』が放映されている『ウルトラマン列伝』は基本的にはテレビ放映のみで映像ソフト化はされないので、JASRACジャスラック日本音楽著作権協会)などへの支払は発生しない。しかし、過去のウルトラシリーズの歴代宇宙人の紹介などでは、宇宙人がしゃべるセリフはカットしても、その高笑いや叫びや唸り声だけは「効果音」のような扱いとして使用していることがある。けれど、今回の新作『ウルトラゼロファイト』は映像ソフト化が前提のハズだ。ならば、この「フゥゥンッッッッ!!」なる加藤精三による掛け声を「効果音」のように使用してしまってもよいのであろうか?(汗)


 実はこの「フゥゥンッッッッ!!」なるメフィラスの加藤精三の掛け声は、1970年頃に朝日ソノラマから発売されたいくつかのウルトラ関連書籍に添付されていたソノシート(廉価アナログ・レコード)に収録されていた音声ドラマ『ウルトラセブン対宇宙怪獣連合軍』においても、分身宇宙人ガッツ星人の声(笑)として使用されていたものなのである。これは当時飽きずに繰り返して聴いたものであった。
 だから、この掛け声は当時から「効果音」扱いとして録音されたものなのかもしれない! と云いたいところだが、1960~70年代に声優の音声を「セリフ」と「効果音」に分けて契約するような商習慣があったとはとても思えない――そもそも契約書があったかすら怪しい(笑)――。


 昭和ウルトラシリーズが1980年代後半~90年代にかけてLD(レーザー・ディスク)化された折りには、セリフ抜きのSE(サウンド・エフェクト)テープのみを収録した音声チャンネルがあったものだ。初代『ウルトラマン』のLDをお持ちの方々は、このメフィラスの掛け声がセリフのテープ側の音声であったかSEテープ側の音声であったか教えていただけないだろうか?


 よって、意味のある言葉である「セリフ」とは異なる「掛け声」だから、勝手に「効果音」として扱っているようでもあり、かぎりなくグレーな気配もするけれど、もちろん個人的には大カンゲイなので、皆さんも関係各位に通報するなどのよけいなことをするのはやめましょうネ――映像ソフト化された際に、加藤精三の掛け声が消されていたらイヤでしょう(笑)――


 しかし、今回の『ウルトラゼロファイト』第2部は、まさに『ウルトラセブン対宇宙怪獣連合軍』ならぬ『ウルティメイトフォースゼロ対凶悪宇宙人連合軍』なんだよなぁ! 四十数年を経(へ)て、あのころの夢がテレビ画面で実現するとは!(感涙)


 なお、今回のメフィラスは、初代『ウルトラマン』や『ウルトラマンメビウス』や『ウルトラギャラクシー大怪獣バトルNEO』で歴代メフィラスのそれぞれ別固体の声を演じつづけてきた加藤精三ではなく別人が演じている。けれども、同時期の携帯電話・auのCMでは、往年の大人気野球アニメ『巨人の星』(68~71年・東京ムービー→現トムスエンタテインメント よみうりテレビ)の主人公・星飛雄馬(ほし・ひゅうま)の父・星一徹(ほし・いってつ)の声を元気に演じていたりする。やはり、超低予算作品ゆえに、おカネのかかる大ベテラン声優は使えなかったといったところか?(爆)


 第1部でガルベロスがつくりだした幻影の偽ストロングコロナゼロと対決したゼロがそうだったように、グレンファイヤーと氷結のグロッケンもまた、頭をぶつけ合ってタイマンを張り合う! 完全にヤンキーとチンピラのケンカである(笑)。


 一方、ミラーナイトを画面手前に配し、彼の背後に左手から炎の球を放とうとしている炎上のデスローグ。炎の球が放たれるやミラーナイトが即座に振り返って十文字型の光の刃(やいば)を放つシルバークロスを発射して、炎の球はあえなく四散!


 この一連の戦闘を斜め上方から見下ろして1カットで納める映像美もさることながら、ミラーナイトの機敏さと強さを同時に表現ができており、最高にカッコいい!


 そして、赤バックで描かれるジャン兄弟VS極暴タッグの空中戦!


 ジャンボット、額から光線「ビームエメラルド!」を発射!


 つづいて背部から放った多数の「ジャンミサイル!」を、テンペラーは電磁ムチで次々に叩(たた)きおとす!


 ジャンナインはタイラントめがけて、胸部に6カ所ある発光部から「ジャンフラッシャー!」、右腕の2連装の砲口から「ジャンキャノン!」、腰部が展開して「ジャンバスター!」と次々に光線兵器を繰り出す!


 ジャンボットとジャンナインはジャン兄弟の力を合わせて「ダブルジャンナックル!!」なるダブルロケットパンチを発射!


 武器や技の名前をいちいち口に出して叫ぶあたりもさりながら、70年代に大隆盛を誇った合体ロボットアニメで育ったわれわれオッサン世代にはたまらない趣向でもある。


ゼロ「オレたちはウルティメイトフォースゼロ! 宇宙のワルは全部ブッ倒す!!」


 もう、全部が最高に「バカかっこいい」!(笑)


 ルナミラクルゼロはミラクルゼロスラッガーを、手首のウルトラゼロブレスレットを変形させた槍(やり)・ウルトラゼロランスを振るうことで操って、高速で上空へと離脱していくメフィラスを多数のゼロスラッガーが取り囲む!


 そして、ゼロランスを手にしたゼロがメフィラスに突撃することで、あわやピグモンを見捨てたか!? と思いきや、爆炎が晴れるとウルトラゼロブレスレットの原典であるウルトラマンジャックのウルトラブレスレットが変形した巨大な盾(たて)・ウルトラディフェンダーと同様に、遠隔操作で飛ばしたウルトラゼロディフェンダーピグモンを守っていた!


 ゼロの上半身と小高い岩盤の上のピグモンを、視線を同じ高さに合わせて見せているカットが秀逸(しゅういつ)である!



 だが、青い稲妻が光り、雷鳴が轟(とどろ)く中、そそり立った高い絶壁の頂上に、メフィラスが云うところの「あのお方」が遂に降臨する!


メフィラス「控えよ! 暗黒大皇帝・カイザーダークネス陛下(へいか)の御前(ごぜん)である!」


って、名作長寿時代劇『水戸黄門(みと・こうもん)』(69~11年・東映 TBS)における、天下の副将軍・水戸黄門の左右に控える「助さん」と「格さん」のセリフかい!(笑)


 カイザーダークネスの鎧(よろい)の頭部が稲妻の直撃ではじけて落下!


 なんと、自身でそれを踏みつぶすカイザーダークネス!


 そして、鎧をかぶっていた「あのお方」が、地獄の声を響かせる!


ウルトラマンベリアル「久しぶりだな、会いたかったぜ、ゼロ!」


 ベリアル、左手の鋭くとがった爪で右の頬をなでるや、そこに短く流れるのは『ゼロ THE MOVIE』で多用されたおどろおどろしくて重厚(じゅうこう)な「ベリアルのテーマ」曲! やっぱ、超「バカかっこいい」!



「つづく」!


 各話のラストで画面を覆い尽くすほどに馬鹿デカい筆書体で「つづく」のテロップが入るが、いまどき「つづく」はないよな。ふつうはやっぱオシャレに「to be continued」のハズだよな。なのに、あえてオシャレに行かずに野趣(やしゅ)あふれる方向を取るあたりのセンスも含めて、『ウルトラゼロファイト』はやはり「バカかっこいい」のである!


 この「つづく」のやたら乱雑な書体を見て、筆者は往年のテレビアニメ『男一匹ガキ大将』(69年・日本テレビ動画 日本テレビ)――ちなみに日本テレビ動画は現在では封印されてしまった『ドラえもん』(73年版)の製作会社でもある――を思い出してしまった。もっとも、この作品ではあんなに馬鹿デカい字で「つづく」とは表記されていなかったのだが(笑)。


 この『男一匹ガキ大将』は、もともと本宮ひろ志(もとみや・ひろし)によって、集英社週刊少年ジャンプ』に、創刊当初の1968年から1973年の当時としては異例の5年間もの長期に渡って連載された大人気漫画を原作としている。主人公のガキ大将・戸川万吉(とがわ・まんきち)がケンカを通して次々に子分を増やしていき、日本中の番長を従える総番にまで登りつめ、しまいには日本自体を動かすほどの存在となる(笑)。なにせ連載終了間際の73年秋に起きた第1次石油ショックの際には、全国の不良たちを率いて、中東まで原油の買いつけに行ったくらいなのである(爆)。これぞまさに、元祖「バカかっこいい」なのである!


 思えば、『ゼロVSダークロプスゼロ』とか『ゼロ THE MOVIE』も、こういうノリに近い気がする。後者と同じく今回の『ウルトラゼロファイト』第2部もアベユーイチが監督しているのだが、ひょっとして氏は「ウルトラ」で『男一匹ガキ大将』をやろうとしているのか!?


 たしかにピグモンやファネゴン人などの民間人や日常生活を守るための戦いも描かれてはいる。だが、今回のウルティメイトフォースゼロVS宇宙人軍団の戦いは、正義や平和を守るための戦いというよりは、まさに「光の国高校VSダークネス学園の抗争」というノリである。ベリアルなんか完全に番長じゃん!


 「そんなものは断じてウルトラではない!」、「ウルトラは少年漫画などではなく、巨大怪獣ものなのだ! SF作品なのだ!」とお怒りの御仁(ごじん)もきっといらっしゃることであろう。ひと昔前、「ブサイクだけどかわいい」を略した「ブサかわいい」――ピグモンなんかはまさにその部類である――という造語が流行したものであった。今回筆者が多用した「バカかっこいい」は、「バカすぎるけどカッコいい」を要約したものである。バカも度をすぎるとカッコよく見えることもあるのである(笑)。


 筆者個人は世代的にもそんなにくわしくはないのだが、そもそも1980年代以降、児童たちの人気の中心となった一連の『少年ジャンプ』の漫画こそ、往年の学園がリングに変わったり核戦争後の地球に変わったりファンタジックな異世界に変わったり、番長が宇宙人のズッコケ超人になったり神秘の鎧をまとったり北斗神拳やカメハメ波の使い手になったりして表層的な意匠こそ変わったものの、荒唐無稽な秘術や体技を尽くした「戦い」を見世物にするバトル漫画の伝統こそが、この「バカかっこいい」に該当するものではなかったか?
 そして、冷静に振り返ると、どうしようもないほどのバカバカしいバトルばかりが描かれてはいたのだが(笑)、その中には少年の読者たちに向けて、今後の人生の中で大事にしてほしい友情や道徳の大切さなどがさりげなくメッセージとして伝えられていたのではなかったか? 普段があまりにもバカで通されていたからこそ、それらの道徳めいたものがたまに描写されるとよけいに宝石のように輝いて見えたのではなかったか?


 「ウルトラ」の商品的価値がすっかり凋落(ちょうらく)してしまった今、たしかに遅きに失した感は否(いな)めない。だが、その「バカかっこいい」を創刊以来40数年継続させている『少年ジャンプ』に掲載された漫画群が息長く連載されていたり、連載が終了して10数年を経てもいまだに根強い人気を保って続編がつくられたり、再映像化までされている昨今を考えれば、やはりそうしたノリは決して一時的な流行であったのではなく、ヘタをするとSFや怪獣もの以上に、少年たちに受ける普遍的で王道的なものでもあったのだと思う。


 そして、それに近しい作風を持った『ウルトラゼロファイト』を、「ウルトラ」の将来的な展望・可能性・マーケティング性から考えてみても、おおいに支持をしたいと思うのだ。


 テーマやドラマを語るのではなくセリフ漫才を軽妙に演じる声優たちと、それを指先などのコミカルな仕草(しぐさ)と全身を使ったボディランゲージで表現しつつ、豪快な肉体アクションをも披露するスーツアクターたちとの素敵なコラボレーションにより、見事なまでに生命が宿(やど)ったヒーローと悪党キャラクターたちが繰り広げる「夢と冒険の世界」が、華麗なまでの映像表現で描かれる。


 特殊技術な「特殊映像」と特殊技術な「特技アクション」、やはり「特撮」ジャンルの最大の魅力とは、そのような奇抜なもの・珍奇なものを観てみたい! というところにこそあると考えるのである。


 もっとも、たった数分の枠での週1の放映では、世間での認知度もなかなかあがるものではなく、「平成仮面ライダー」と「スーパー戦隊」の牙城(がじょう)を崩せるものとはなりえないであろう。マジでもったいない!


 ちょうど半分の8回目を終えたところで、ウルトラマンゼロの宿敵・ウルトラマンベリアルが登場! さらに怒濤(どとう)の展開となるのだが、執筆の時間的都合と掲載のキャパの問題もあり、今回はここまでとさせて頂きたい。


 そんなワケで、「つづく」!(笑)。

2013.4.10.


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2013年春号』(13年4月14日発行)~『仮面特攻隊2014年号』(13年12月30日発行)所収『ウルトラゼロファイト』合評2より抜粋)


『ウルトラゼロファイト パーフェクトコレクション』

(文・久保達也)
(2013年6月21日脱稿)


 2013年6月21日(金)にバンダイビジュアルから発売されたDVD『ウルトラゼロファイト パーフェクトコレクション』についてレポートさせていただく。


 『ウルトラマン列伝』(11~13年)の枠で放映された、『ウルトラゼロファイト』(12年)第1部『新たなる力』(監督・おかひでき)全8話、および第2部『輝きのゼロ』(監督・アベユーイチ)全15話を完全収録。さらに、放映分の全23話を両監督の監修によって再構成・一本化した64分の『W(ダブル)ディレクターズ・エディション』、その音声特典として両監督によるオーディオコメンタリーも収録されている。


 このオーディオコメンタリーで語られる裏話がかなり楽しめる内容であり、これは意外なもうけものであった。第1部の第1話でウルトラマンゼロが身につけていた、西部劇風のマントは、実はグレンファイヤーからもらったものであるという設定だとか。そのマントを第2部に登場するファネゴン人にまんま流用しているだとか。


 第2部でゼロの危機にウルティメイトフォースゼロが駆けつけた際、グレンファイヤーが、


「じゃじゃ~~ん!」


と叫ぶのは、声を演じる関智一(せき・ともかず)の完全なアドリブだったとか(笑)。


 また、アフレコではウルティメイトフォースゼロを演じる声優たちが全員揃うことがほとんどなく、第2部の最終回の収録は皆が単独で行い、しかもアドリブが続出したらしい。それであの「セリフ漫才」が完成してしまうのだから、彼らの力量には驚くばかりである!


 さて、肝心の『Wディレクターズ・エディション』であるが、当然ながら放映分の各冒頭にあった『ウルトラゼロファイト』のタイトルロゴと、例の「つづく」はカットされている。


 冒頭には新規のタイトルバックが配されているが、まさに『ウルトラゼロファイト』の元祖である平日夕方の帯番組『ウルトラファイト』(70年)の炎を背景に黒字のタイトルが浮かび上がるオープニングを模したものである。ただし、その書体は「つづく」同様に筆文字のようでもあり、しかも縦書きになっている(笑)。


 あと、第1部の総集編となっていた第2部の第1回も、当然ながら流用映像の部分はまるごとカットされており、第1部と第2部のインターミッションとして、宇宙空間を描写した映像に差し替えられている。


 実は放映分との違いはそれくらいのものであり、『Wディレクターズ・エディション』といいつつ、単につなげたのみという印象が強い。強いて云うなら、放映分の各ラストでブリッジ的に使用されていた短い音楽が、つなぎをよくするためにカット、あるいは別の音楽に差し替えられている程度のものである。本編未使用カットなどがあるんじゃないかと期待していただけに、その面では少々期待はずれではあった。


 むしろ、オーディオコメンタリーや解説書で語られていた、第1部の当初構想されていた結末の方にこそ、驚くべきものがあった。それは、友好珍獣ピグモンが死ぬという展開であった!


 オリジナルビデオ作品『ウルトラ銀河伝説外伝 ウルトラマンゼロVSダークロプスゼロ』(10年・バンダイビジュアル)や、映画『ウルトラマンサーガ』(12年・松竹)などの、おかひでき監督作品で画コンテを担当してきた監督の友人である漫画家・松原朋広(まつばら・ともひろ)による『ウルトラゼロファイト』第1部の当初の画コンテでは、ピグモンが光に包まれて消滅し、空に立ちのぼる光の中を、風船が舞い上がっていくイメージが描かれていたのである!
 だが、メイン視聴者の子供たちへの配慮を大きな理由として「なんとかピグモンを救えないか」とクランクイン前日に急遽(きゅうきょ)完成作品のようなラストに変更になったそうである。


 ゼロがストロングコロナゼロとルナミラクルゼロに分身するのも、ピグモンを生存させるための苦肉の策として編み出されたものであり、むしろこれは「禁じ手」とさえ考えられていたらしい。しかしながら、ピグモンの生存がなかったら、第2部『輝きのゼロ』でゼロが大逆転する展開はありえなかったわけであり、それを考えればこの改変は大正解であったと思えるのだ!
 ただ、当初は触覚宇宙人バット星人・グラシエは「地獄の四獣士」の魂を吸収したあと、それらの4大怪獣たちの特殊能力を披露しながらゼロと戦うことになっていたそうであり、これはやはりそのまま残してほしかったようには思う。


 実は『Wディレクターズ・エディション』のラストには、ホンの短いカットではあるのだが、重要な場面が追加されている。ネタバレで申し訳ないのだが、局所的な「時間逆行」によるウルトラマンベリアルの肉体含めての復活と同様に、地獄星人ヒッポリト星人・地獄のジャタールも、ちゃんと生きかえってました! 明らかに放映分と異なる部分って、これくらいである。


 それこそ個人的にはこちらの方がよほど「禁じ手」かと思える、第2部後半戦のクライマックスで描かれた「時間逆行」も――世代人のジャンルファン的には往年の映画『スーパーマン』第1作(78年・日本公開79年)ラストで採用された大ネタという印象が実に強いが――、アベ監督的には今回のベリアルやダークネスファイブはピグモンを人質にしたくらいであり、実際には何も悪事を働いていなかったために、素直に倒すことができなかったのだそうで……


 そして、やはり「学園バトル漫画」みたいにつくろうという意図はあったようだ。最終回でひみつ基地・マイティベースへと徒歩で帰る際のウルティメイトフォースゼロのメンバーたちの会話は、男子校の通学路における部活帰りの生徒たちのイメージだとか(笑)。


 まぁ、せっかくそこまでしてウルトラマンベリアルやダークネスファイブにトドメを刺さずに、敗退のみで生かしてあげたのだから、今度こそ彼らに徹底的に悪事を働かせて、


ゼロ「オレたちはウルティメイトフォースゼロ! 宇宙のワルは全部ブッ倒す!」


をやる計画がきっとあるのだろう!?


 映画『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE(ザ・ムービー)』(09年・ワーナー)でのデビュー以来、映画・オリジナルビデオ作品・ライブステージ・短編『ウルトラゼロファイト』など、いささかイレギュラーなかたちでの活躍を強(し)いられてきたウルトラマンゼロ。しかしながら、それらはすべて世界観が統一され、前作とのつながりもある一連のシリーズ物語として続編が製作されつづけてきたのであった。せっかく紡(つむ)いできたこの連続ドラマを、子供たちやマニアたちの興味関心を持続させるためにも断じて「リセット」してはならないと考えるものである。


『ウルトラゼロファイト』と次作『ウルトラマンギンガ』の関係はドーなる!?


 2013年7月10日は、1966年7月10日に初代『ウルトラマン』(66年)第1話の日曜夜7時の放映を翌週に控えて、同枠で放映された宣伝番組『ウルトラマン前夜祭 ウルトラマン誕生』が放送されたことから、近年では同日は「ウルトラマンの日」とされている――なお、同日にはバンダイビジュアルから初代『ウルトラマン』のブルーレイBOX第1巻(ASIN:B00BLWNH38)も発売される――。


 そんなめでたい日に、同年7月から『新ウルトラマン列伝』(13年)と改題された枠でスタートする新番組『ウルトラマンギンガ』(13年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200819/p1)は、どうやら「ウルトラマンゼロ」が登場してきた作品群とは世界観を共有する設定とはなっていないようである。


 しかしながら、『ギンガ』は2013年の夏休みと年末の時期に集中して、1話30分の作品が全9話で放映されるスケジュールであるとのこと。であるならば、その空白期間にぜひとも『ウルトラゼロファイト』第3部を放映し、ウルトラマンゼロを主人公にしてこれまで描かれてきた世界観を継承しつつ、『ギンガ』とも接点を持たせた物語を描くべきではなかろうか!?


 『新ウルトラマン列伝』の主題歌は、これまでゼロの声を務めてきた宮野真守(みやの・まもる)と、THE ALFEE(ジ・アルフィー)の高見沢俊彦(たかみざわ・としひこ)とのコラボレーションによるものになるらしい。
――NHK-FMで毎週水曜23時に放送されている『THE ALFEE 終わらない夢』において、高見沢は自身がウルトラファンであることを何度も公言している。そればかりかメンバーの坂崎幸之助(さかざき・こうのすけ)は、まだALFEEが結成される前に高見沢がピグモンのコスプレ姿で六本木の街を歩く姿を目撃したと暴露(ばくろ)している・爆――


 そうなると、まだウルトラマンゼロにも活躍の余地は残されているのかとも思える。もし『ウルトラゼロファイト』が第2部で最後だったとしても、それこそ東映が近年展開している新旧「スーパー戦隊」共演映画、新旧「平成ライダー」競演映画や、昭和から平成までのライダー&戦隊が全員集合したオールスター映画のように、たとえ世界観が異なろうとも『ウルトラマンギンガVSウルトラマンゼロ』のようなゴージャス感があり両方のファンもゲットできるような競演映画などをつくるべきではなかろうか?


 最新ウルトラマンであるギンガと直前作ウルトラマンであるゼロを共演させ、『ギンガ』の続編であり『ウルトラゼロファイト』の続編でもあるかのようなストーリーにしたり、あるいは『ウルトラゼロファイト』の続編自体にギンガもゲスト出演させたり、『ギンガ』の方にもゼロをゲスト出演させるくらいの、幼稚園児はともかく小学生レベルであれば理解ができるような、そして年長マニアも喜ぶような、両者の世界観を越境して共演を可能とする知的なSF舞台設定の仕掛けも助走台として用意しつつ、結局は問答無用な大バトルへとなだれこむ(笑)ようなリンクをつくっておかねば、今後もウルトラの商品的価値の凋落(ちょうらく)は避けられないようにも危惧してしまうのだが。

2013.6.21.


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2013年初夏号』(13年6月23日発行)~『仮面特攻隊2014年号』(13年12月30日発行)所収『ウルトラゼロファイト パーフェクトコレクション』評より抜粋)


『ウルトラゼロファイト』第2部・全15話、怒濤の完結!

(文・T.SATO)


 『ウルトラゼロファイト』第2部の前半戦は大いに盛り上がる!


 往年の『ウルトラマンタロウ』(73年)中盤でその存在が語られて、『ウルトラマンメビウス』(06年)終盤(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20070505/p1)では映像での初登場も果たし、3万年前に昭和ウルトラマンたちの故郷であるM78星雲「光の国」を怪獣軍団を率いて襲ったこともある暗黒宇宙大皇帝エンペラ星人。
 そのエンペラ星人がその身にまとう予定であったと後付けで設定された暗黒の鎧(よろい)、アーマードダークネスがビデオ販売作品『ウルトラマンメビウス外伝 アーマードダークネス』や『ウルトラギャラクシー 大怪獣バトル NEVER ENDING ODYSSEY』(共に08年)につづいて、本作中盤では再三の登場を果たす!


 しかも、今回その暗黒の鎧をまとったのは、映画『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE』(09年)や『ウルトラマンゼロ THE MOVIE 超決戦!ベリアル銀河帝国』(10年)にも連続登場して、遂に肉体を失い霊体のみの存在となっていた悪の黒いウルトラマンこと因縁のウルトラマンベリアルであった!
 さらに、ベリアルはゼロに憑依(ひょうい)することで、その強靱な肉体を乗っ取り、黒い体色と化したゼロダークネスへと変身して暴虐を働くも、最後はベリアルが闖入しているゼロの精神世界の中に出現した金ピカの最強形態・シャイニングウルトラマンゼロによって撃退される!


 本作の後半戦ももちろん大いに盛り上がりはするのだけれども、チョットだけビミョーな感じもある。いや、決して悪くはないし、拙(つたな)い出来でもないし、むしろ演出技巧的にも映像的にも優れてはいるのだけれども。


 各話3分の尺の中で、次々と事件が起きて、畳みかけるようにテンポよく、衝撃! 衝撃! また衝撃!


 優勢! 劣勢! 逆転! 反撃! また劣勢! といった怒濤の展開を魅せてきた本作の前半戦。


 しかし、ドコかシットリとしたエモーション(情緒)にも訴えて、緩急を付けようとしたようにも見える後半戦の演出は、フツーのヒーローもの作品であれば並み以上のハイテンションではあるハズなのだけど、シーソーバトルの連発がつづく前半戦があまりにも「神展開(かみ・てんかい)」だったモノだっただけに、ホンのもうチョッピリだけワリを喰ってしまったようにも思うのだ。


 追いつめられて絶対絶命になった末の、ほとんどご都合主義(笑)の「奇跡の大逆転」! という展開は、このテの娯楽活劇作品の常套なのであり、一時的にでも苦戦・苦悶・閉塞したからこそ、対比として開放・カタルシス(爽快感)も際立ってくるのだから、そこにケチをつける気は毛頭ナイ――終始、優勢のままで勝ち抜いちゃったりしたら、そりゃあイジメだよ(汗)――


 だから、未見の方々にはネタバレになるけれど、あまりにあんまりなほとんど禁じ手であるハズの、物理法則を破っての「時間を逆行」! 渦中のキャラクターたちの精神・記憶はそのままに、もろもろの物理的・肉体的なことどもだけを時間逆行で元に戻して復活させる……、どころかそんなことは無かったことにしてしまう!(笑) という大ネタも、個人的には許容範囲だし、イイ意味で半分笑いながらもカッコえええーーー! と感嘆しつつ観ていることができた。


 ……とはいえ、小学生ならばともかく幼児にはよくわからないであろうネタだけど、要は初代『ウルトラマン』(66年)最終回「さらばウルトラマン」のように、宇宙恐竜ゼットンにやられて一度死んじゃったけど、ウルトラ兄弟の長男・ゾフィー兄さんによって初代ウルトラマンがまた生き返ったのだ! という大スジがわかりさえすればストーリーの理解に支障は生じないので問題はナイのである……。


 しかし、これにつづく、戦闘シーンがなくて最終バトル後の長めなエピローグが描かれる、延長拡大版の最終回はドーなのであろうか?(笑)


 我らが正義のヒーロー・ウルトラマンゼロが率いるヒーロー集団・ウルティメイトフォースゼロこと、復活したミラーナイト・グレンファイヤー・ジャンボット・ジャンナイン、そしてウルトラマンゼロの5大戦士!


 そして、悪のウルトラマンことウルトラマンベリアル率いるダークネスファイブこと、メフィラス星人・魔導のスライ、ヒッポリト星人・地獄のジャタール、テンペラー星人・極悪のヴィラニアス、デスレ星雲人・炎上のデスローグ、グローザ星系人・氷結のグロッケン!


 最終回では、この善悪2大陣営の強者たちのガチンコ集団戦に流れこんで、それまでの鬱憤を晴らすかのように、正義のヒーロー集団が勝って勝って勝ちまくる! そして、ウルティメイトフォースゼロが大勝利!! めでたし、めでたし……の絵になるのが、最終回としてはアリガチ凡庸でも正しかったのではあるまいか? 多分、幼児であっても、そーいう展開になるだろうと踏むだろうし(笑)、またそーいった展開を心から望んでいたとも思うのだ。


 平成ライダー第1弾の『仮面ライダークウガ』(00年)最終回(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20001111/p1)や、合体ロボットアニメ『勇者指令ダグオン』(96年)最終回などでも、その前話までに最終バトルは終わってしまって、ヒーローも合体ロボットも戦闘も描かれない最終回というのは、すでに長いジャンルの歴史の中では前例はあるのだけれども、年長マニアたちの評判はともかく幼児たちの評判もよかったという話は寡聞にして知らないので(汗)。


 むろん、個人的にはウルティメイトフォースゼロのメンツの仮面劇によるユカイでおバカな漫才会話も大スキなので、あの漫才会話だけで終わっていく長尺のシットリとした最終回もキライではないのだけれども。ただ、自分の好みをカッコにくくって棚上げして冷静になって振り返ってみれば、「戦闘シーンが観たくて観たくて堪らない子供たちにとってはドーであったのであろうか?」ということに思いが至ってしまうのだ。


 時間を巻き戻したのも、『ウルトラゼロファイト』第2部の前半戦までの時点であろうから(?)、その日の範囲内か、せいぜい2日くらい前までにさかのぼっただけじゃあナイのかとも思うけど。



 にしちゃあ、もっとはるか前の2年3ヶ月前に封切された映画『ゼロ THE MOVIE』ラストで死んでしまって怨霊になっていた悪のウルトラマン・ベリアルさまが、時間逆行のせいで肉体も含めて完全復活したことになっている!! って時間軸的にオカシくないか!?


――ネタとしてツッコミしているだけであって、マジなツッコミではないので念のため。まぁ、好意的に解釈するならば、時間逆行にもムラやバラつきがあって、ゼロと近接戦闘していたベリアルさまだけは局所的に最も古い時点に時間逆行してしまったがために肉体を含めて復活ができたのだ、というような好意的なSF考証ができなくもナイのだけれども――


 ベリアル陛下に至っては2年3ヶ月(笑)もさかのぼってしまったくらいなのだから、近過去の『ウルトラゼロファイト』第2部・前半戦の時点で死亡したダークネスファイブのおひとり、ヒッポリト星人・地獄のジャタールさんは、その復活が描かれなかったけれども、彼も当然復活してるんだよネ? 次回作ではシレッと再登場だよネ? てか、復活してくれ!


 もしもそーであるならば、そもそも本作ではダークネスファイブはひとりも死ななかったことになる!? 『ウルトラゼロファイト』第3部があるのならば、彼らとのリベンジ戦をやることがミエミエじゃん!?――いやまぁ、大カンゲイなんですけれどもネ――


次作『ウルトラマンギンガ』にも『大怪獣バトル』や『ウルトラゼロファイト』的なテイストを導入してほしい!


 しかし今年2013年は、この4月にシルエットが雑誌媒体にて解禁されて、2009年デビューのウルトラマンゼロ以来、4年ぶりの新ウルトラマンとして高校生が変身するという(!)“ウルトラマンギンガ”が円谷プロ50周年記念の4月12日(金)にそのお姿を初お披露目した――往年のウルトラマンエース(72年)の頭部に似ているようにも思えるデザイン!?――。


 となると、『ウルトラゼロファイト』の行く末と『ウルトラマンギンガ』との兼ね合いはドーなってしまうのであろうか!? まさか今日日(きょうび)、ウルトラマンゼロの去就がなしくずし的に雲散霧消して、その決着が描かれないなどという無慈悲な扱いになることもナイとは思いたいけれども(汗)。


 マスコミに発表された情報だと、7月以降のリニューアル『新ウルトラマン列伝』週1放映ワク内にて、30分ワクをまるまる使って7~8月と年末に30分ワク6話+5話の全11話という変則的な構成で放映。9月と来春3月に映画版をさらに2本も制作するという。ま、現状の『ウルトラ』の商業的規模・年間売上高で、週1放映・30分ワクの完全新作を半年・1年ゲットできるとも、ゆめ思ってはいなかったけれどもネ。


 もちろん、結果的に面白ければナンでもオッケーだし、前例のない実験的なこともドンドンやればイイとは思う。



 けれども、個人的には、


●昭和ウルトラ直系の未来世界でありながらも、「ギャラクシーインパクト」なる宇宙規模での時空異変をウラ設定に、平成ウルトラ怪獣も登場できる世界が舞台で、遠宇宙の未知の惑星を舞台にロケなしのスタジオ撮影、比較的に低予算での製作も可能にした『ウルトラギャラクシー 大怪獣バトル』(07年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20080427/p1)シリーズの路線


●同じく先輩ヒーローが大ピンチのときには駆けつけるであろうという、潜在的にはオールスターものになりうる可能性を感じさせつつ、しかして人間キャスト不要の着ぐるみ仮面コント劇(笑)で、宇宙を舞台に少年マンガ的なバトル&冒険を、映画や外伝ビデオや短編作品で斬新に展開してみせた『ウルトラマンゼロ』シリーズの路線


 これらの作品群は予算面・玩具展開面・映像面・アクション演出面・作劇面でも大いに可能性と鉱脈があったと考える者なので、この偉大なる2大路線とは世界観や連続ストーリー的な接点がなさそうに見える『ウルトラマンギンガ』には少々不安が募るのだ。


 映画『ウルトラマンメビウスウルトラ兄弟』(06年)、映画『大決戦! 超ウルトラ8兄弟』(08年)、映画『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE』(09年)の中ヒット要因のひとつは、やはりそれらの作品がヒーロー大集合モノであり、作品に華(はな)があったがゆえだろう。対するに、OBヒーローの顔見せは冒頭と巻末にあったものの、基本は単独ヒーローものとして作られた『ウルトラマンゼロ THE MOVIE ベリアル銀河帝国』(10年)は興行的には大苦戦を強いられた。


 『ゼロ THE MOVIE』自体はクオリティが非常に高い傑作であったと筆者は信じる者だけど、その苦戦の原因のひとつは、やはりオールドヒーローたちの頭数や活躍のボリューム不足、ひいては華の欠如にも一因はあったと思うのだ。もちろん、ミラーナイトやグレンファイヤーにジャンボットらはとてもよいキャラなのだけど、ご存じキャラではなく実質、初登場の新キャラクターではあったので、彼ら新キャラクターのオリジナルであるミラーマン(71年)やファイヤーマン(73年)などが血族のチョイ役としてでも出演してくれないことには、幅広い客層や特撮マニアのロートル層への客引きには弱かったのかもしれない――新作TVシリーズが放映されていなかったという理由はもちろん大前提。でもそれは『超8兄弟』(08年)~『ウルトラマンサーガ』(12年)まで同じ条件下での上映ではあったので――。


 東映の『スーパー戦隊VS(バーサス)』映画シリーズにたとえて云うならば、映画『ウルトラ銀河伝説』(09年)の内実は実質的には『大怪獣バトルVSウルトラマンメビウス』であった。つまり、当時の幼児に最もなじみが深いその時代の最新作『大怪獣バトル』(07年)と準新作『ウルトラマンメビウス』(06年)の2大コラボ作であったワケなのだ。そしてその終盤に、次代の新ヒーロー・ウルトラマンゼロが幼児たちへの宣伝がてらの初お披露目を果たしてバトンタッチをしたワケなのである。


 その伝で行くならば、次の映画『ゼロ THE MOVIE』(10年)はそのものズバリ、『ウルトラマンゼロVS大怪獣バトル』として製作した方が、『大怪獣バトル』になじみがあった子供たちにも接点を持たせられるし、その点でももう少し客引きができたようにも思うのだ。


 ゼロと合体した人間の青年・ラン役の小柳友(こやなぎ・ゆう)もイイ役者さんだとは思うけど、事務所の方針かウルトラ関係のイベントには全然登場せず、『大怪獣バトル』シリーズの主人公・レイ青年の方が毎年毎年、年末年始は休みなく出ずっぱりで東京ドームシティ・プリズムホールでイベント「お正月だよ!ウルトラマン 全員集合!!」などにも出演してくれていたことを思うと、彼にもビデオ作品『ゼロ外伝 キラー ザ ビートスター』までではなく、まだまだ後続作品群にも再登場させて、その功労に報いてあげてほしかったし、ショービジネス的にも相乗効果は高かったハズだとも思うので。


 それこそ、レイ青年がウルトラマンゼロと一時的に合体してもよかったとすら思うのだ!


 『ゼロ THE MOVIE』のラン青年、『サーガ』のタイガ青年、あるいは舞台版『ウルトラマンプレミア2011』のモロボシ・シン青年――その東京公演ではゼロの声をアテていた声優・宮野真守(みやの・まもる)本人が生身で演じた!――につづいて、レイ青年が4人目のゼロと合体した人間となれば、ウルトラシリーズの正史にもハッキリと記録が残ることになる!
 ドラマ的にも共に同じく悪魔のレイブラッド星人の遺伝子&闘争本能を受け継いで、ウルトラマンベリアルと鏡像関係にあるともいえるレイ青年にこそウルトラマンゼロと合体してもらって、ゼロ以上に強いかもしれないベリアルとの強い因縁や接点を持たせることができたかもしれないのだし!


 その観点から行くと、最近の映画『特命戦隊ゴーバスターズVS(たい)海賊戦隊ゴーカイジャー THE MOVIE』(13年)はエラいと思う。例年だと圧倒的な強さを見せつけこそすれ、脚本執筆&撮影の時期的にも設定がまだ固まっていないからかホンのチョットだけしか顔見せゲスト出演をしない来年度の新スーパー戦隊が、『ゴーバスターズ』の商業的苦戦を受けてか今回は新スーパー戦隊『獣電戦隊キョウリュウジャー』(13年)のバトルを延々と数分かけてジックリと描写しているあたりで、アレは東映さんのそーいう用意周到な熟慮に基づいた幼児たちへの少しでもの導き、マーケティング戦略なのだとも思うけど(笑)。


 東映が新旧ヒーロー2大競演モノどころか、オールスター大集合映画を連発している昨今、番宣写真で主人公の高校生が胸ポケットにウルトラマンタロウのソフビ人形を忍ばせているとはいえ、ウルトラマンギンガを基本的には単独ヒーローものとして放とうとしているあたりに、個人的には危うさを感じなくもない。やはり、新ウルトラマンことギンガは、ウルティメイトフォースゼロの新たなるメンバーだ! みたいな前作との連続性なり接点はあった方がイイとも思うのだ。つまりは明確にバトンタッチの描写はあった方がイイ。


 海の向こうのアメコミヒーロー映画だって、ややマイナーなヒーローたちが集合する映画『アベンジャーズ』(12年)なる作品を製作している。そのうちのひとりでもある『アイアンマン3』(13年)は『アベンジャーズ』の戦いから1年後が舞台であるともいう。さらには再来年には『アベンジャーズ2』(15年)の公開も決定しているほどだ――後日付記:のちに正式タイトルが『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』に決定――。
 世界観を共有はするも主役を張る主人公は別であるという作品はメリケンの地でもやっていて、単独作品としても楽しめつつ、シリーズ作品としてもマニア的気質のある人間の関心を長期に渡ってゲットして、かつ関連グッズの売上でイタイケな消費者を搾取(さくしゅ・笑)、もとい楽しませてもいるのが現状なのである。


 いや、日本でも江戸時代の歌舞伎のむかしから、「忠臣蔵四十七士」のひとりひとりにスポットを当てたり、そのうちのひとりは「四谷怪談」の幽霊・お岩さんの情夫であったという、「世界観」を共有しつつも主人公は別である! という路線がすでにあったではないか!? それと同じことなのである(……あまりイイ例えではなかったナ・汗)。


 制作予算の問題からか、ギャラを安く抑えられる子役同然の高校生キャスト、おカネのかかる防衛隊の基地セットや制服のオミットなども、ひとつのテとしてはよくわかる。よくわかりはするのだけど、子供たちがもっとも見たいであろう熱血バトル面でのパワーダウンについては危惧をするところである――実は少年であろうがオトナであろうが女性ファンであろうが、言語化・意識化していないだけで、タテマエでは良心的なドラマやテーマを! と叫んでいたとはしても、ホントはこーいうカッコいい戦闘シーンをイの一番に観たかったり、イザ観てみればそーいうシーンに最も興奮しているのだとも思うのだけれどもネ――。


 とはいえ、まだ始まってもいない番組に、先入観やある種の価値観のモノサシを当てハメすぎるものよくはないよネ。とも思いつつ、今どきの飽きっぽいガキんちょどもをタイクツさせないように、従来の『ウルトラマン』らしさに過剰に捉われることなく、よくできたハートウォームな少年青春ドラマ路線に過剰にシフトしたりすることもなく、Aパートから等身大サイズのウルトラマンに変身して敵の戦闘員(仮)と街中や校舎ウラでバトルするようなノリでキビキビ、サクサクと各話を展開させてほしくもあるのだけど(笑)。


 エッ、『仮面ライダーディケイド』(09年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20090308/p1)や『海賊戦隊ゴーカイジャー』(11年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20111107/p1)パターンで、カードやレンジャーキーならぬソフビ人形の新旧ヒーロー&怪獣を、現実世界で実体化させるらしいんだって!?


 コレは古典的な特撮マニアが激怒しそうな設定だけれども、個人的には怪獣ソフビ人形それ自体にSF・魔法的な意味を持たせながら劇中に登場させて重要アイテムとしても扱うことで、子供たちに直接訴求して関連玩具の売上も増大させようとする手法は、たとえ三番煎じではあっても期待はできる。もちろん、この『ウルトラマンギンガ』についても、項を改めて追々語っていく所存である。


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2013年春号』(13年4月14日発行)~『仮面特攻隊2014年号』(13年12月30日発行)所収『ウルトラゼロファイト』合評1より抜粋)


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『ウルトラ銀河伝説外伝 ウルトラマンゼロVSダークロプスゼロ』 ~映画の前菜ビデオ作品なのに大傑作が爆誕

(文・久保達也)

『ウルトラ銀河伝説外伝 ウルトラマンゼロVSダークロプスゼロ STAGEⅠ 衝突する宇宙』

(2010年12月10日脱稿)


 2010年11月26日にバンダイビジュアルからリリースされたのが、昨2009年末の同時期のオリジナルビデオ作品『ウルトラマンメビウス外伝 ゴーストリバース』前後編同様、年末公開の映画の前日談と設定されたオリジナルビデオ作品にして前後編の前編である『ウルトラ銀河伝説外伝 ウルトラマンゼロVSダークロプスゼロ STAGEⅠ(ステージ・ワン) 衝突する宇宙』である。


低予算の飾り付けも少ない特撮セットでも、照明・アクション・股下から覗く矢島アングルで魅せる!


 野外でのオープン撮影による紫色に染まる日没直後の夕闇の下、惑星チェイニーの突き出た岩場の頂で右膝(ひざ)を立てて(!)腰かけて、ひとりたたずむわれらがウルトラマンゼロ! こんなお行儀(ぎょうぎ)が悪いポーズが似合うウルトラマンは彼しかいない(笑)。


ゼロ「来たか……」


 カットが切り替わるや、背景美術をオールCGに刷新した直前作の映画『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE』(09年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20101224/p1)とは異なり、旧来のスタジオスタジオ撮影での特撮シーンに戻っているけど、そこに現れるのは逆光で両目とカラータイマーを発光させたシルエットで演出された4人のウルトラマンたち、ゾフィー初代ウルトラマンウルトラマンジャック帰ってきたウルトラマン)・ウルトラマンエース
 往年の名作刑事ドラマ『Gメン’75』(75~82年・東映 TBS)のオープニング映像のごとく、横一列で静かにゼロに向かって行進してくる。


 なんとカメラに背を向けたゼロの股下・両脚の間から、奥にウルトラ兄弟を小さく配した演出!
 これは70年代前半の『ウルトラマンタロウ』(73年)終盤と『ウルトラマンレオ』(74年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20090405/p1)でも特撮監督を担当した東映系の特撮研究所矢島信男(やじま・のぶお)が、東映特撮『ジャイアントロボ』(67年)以来、円谷特撮『ミラーマン』(71年)や『ジャンボーグA(エース)』(73年)に先の『タロウ』や『レオ』でもよく用いてきた撮影手法であり、狭いセットで飾りの少ない低予算の特撮美術でも画面に深い奥行きと遠近感、手前の被写体にも巨大感が生み出せるショットへのオマージュでもあるのだろう。


ゼロ「今夜こそ、ケリをつけるぜっ!」


 ゼロの父であるウルトラセブン巨大化時のポーズを踏襲して、下に向けて交差させた両腕を上方に向けて力こぶをつくるように両肘(ひじ)は曲げるかたちで左右に開くや、人間大のサイズに縮んでエネルギーを節約していたらしいゼロは足下の岩場を砕(くだ)き散らしつつ巨大化!
 ゼロの師匠であるウルトラマンレオのごとく、右腕を真横水平に伸ばしたタメのあと、右手をこぶしに握って後ろに引いて右腰につけ、左手をパッと開いた左腕をサッと前に突き出すファイティングポーズをとるウルトラマンゼロ


近年はウルトラ兄弟の掛け声が正しい!(むかしはイイ加減だったその理由の諸相・笑)


 その瞬間、上空を超高速で通過する青い光と赤い光!
 番外シリーズではあってもウルトラシリーズに入れたいテレビ特撮シリーズ『ウルトラギャラクシー 大怪獣バトル』(07年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20080427/p1)や続編『ウルトラギャラクシー 大怪獣バトル NEVER ENDING ODISSEY(ネバー・エンディング・オデッセイ)』(08年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20091230/p1)の主役チームを務めて、そのまた続編でもある映画『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説』にも主人公格として登場したスペースミッションのエキスパート集団・ZAP SPACY(ザップ・スペーシー)の宇宙輸送船・スペースペンドラゴンとウルトラセブンがなぜか追撃戦を繰り広げていた!


 セブンに変身するモロボシ・ダン隊員を演じた森次晃嗣(もりつぐ・こうじ)の声をエコー加工してつくったオリジナルのセブンの掛け声はもちろんのこと、両腕をL字に組んで発する光線技・ワイドショットや頭頂部の突起を外して放つ宇宙ブーメラン・アイスラッガー、飛行音などの効果音も、当然すべて本物のバンク音声を使用!


 幼児のころであれば、われわれもかの『ウルトラファイト』(70年)でウルトラセブン初代ウルトラマンの掛け声や必殺光線の音声が間違ってアテられていても気にはしなかったものだ。
 しかし、小学校中高学年にもなれば『ウルトラマンA(エース)』(72年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20070430/p1)再放送のウルトラ5兄弟勢揃い(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20061030/p1)でセブンの掛け声が初代マンのそれだったり、ゾフィーや初代マンの掛け声がエースの声だったり、『ウルトラマンタロウ』(73年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20071202/p1)再放送のウルトラ6兄弟勢揃いでウルトラ5兄弟が大空へと帰還する際の掛け声が全員、変身前の篠田三郎の声をエコー加工したタロウの掛け声だったりするのに気付くと、ウルトラ兄弟たちの夢の共演に胸を高らせているのは間違いないにしても、心の片隅では「掛け声が違う」と小さな不満を抱いたものである。
 前者は当時の音響スタッフにそこまでのこだわりがなかったから。後者は『A』までの音響を担当した東宝効果集団が『タロウ』で東京映画映像部に変更になったためでマンやセブンの掛け声の音源を持っていなかったからだと今となってはわかるのだが(笑)。


 そのへんの不満を抱いていたマニア上がりの連中が長じて、円谷プロのアクションチーム・キャスタッフに集ってライブ興行を公演するようになった1990年代からは、少なくとも各種ヒーローショーではウルトラ兄弟の掛け声や歴代怪獣の鳴き声はTV原典の正しい音声が使われるようになって久しい。
 長らく無視されてきた昭和のウルトラ兄弟が四半世紀ぶりにテレビ本編でも復活を果たしたその一挿話を映画で描いた『ウルトラマンメビウスウルトラ兄弟』(06年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20070128/p1)では、ゾフィー・初代マン・ジャックといった初代マン系の掛け声を発するウルトラマンたちと、森次晃嗣の声をエコー加工したウルトラセブンの掛け声や歴代怪獣の鳴き声などは、さすがにオリジナル音源ではないだろうが(?)、テレビ本編のSE(サウンド・エフェクト)テープからダビングして整音したとおぼしき音声が使われるようになる――それもまた、本来の版権は東宝効果集団にありそうなのでグレーには思えるけど(笑)――。
 しかし、大ベテラン声優・納谷悟朗(なや・ごろう)の掛け声をエコー加工してつくったエースの掛け声だけは権利・契約関係が厳密になった昨今、自粛したのか初代マン系の声しか使用されなかったものだが、これもテレビシリーズ『ウルトラマンメビウス』(06年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20070506/p1)終盤の第44話『エースの願い』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20070408/p1)でウルトラマンエースが客演した際には、キチンと納谷悟朗が所属する芸能事務所と無期限使用許諾の契約を円谷プロ側のプロデューサーが苦労を惜しまずに締結し直したのであろう。それまではアトラクショーのみで使用されていたエースの正しい掛け声が、映像本編でも晴れて使用されるようになったのだ。


バック転! 空中一回転! かつては否定された擬人化アクションの再肯定とその今昔!


 アイスラッガーに撃墜されるペンドラゴン!


 マンガ・アニメ的な光の流線をバックに、ジャックが左手首のウルトラブレスレットを外して変形させた槍(やり)・ウルトラランスの柄(つか)が青白く妖(あや)しく光り、ゼロに向かって投げつける!
 続けて横一列に並んでいるウルトラ兄弟たちが、エースは長大な光の刃・バーチカルギロチン、ゾフィーはM87光線、初代マンは八つ裂き光輪をゼロに繰り出す!


 それらの一斉攻撃を連続バック転でかわしていくウルトラマンゼロ
 その足許はホントウは「ナゾの広場」なのであろうけど(笑)、その背景や前景にはミニチュアの岩山をCG合成して、それをバック転で逃げる先とは逆方向に超高速で移動させてスピード感も倍増させていくさまは、まさに1970年代前半の第2期ウルトラシリーズで、同時期の仮面ライダーの軽快なアクションの全能感・万能感に魅了されていた子供たちにソッポを向かれまいと発達させてきた、そして当時の子供たちも実は「カッコいい!」と大興奮して憧れた、ウルトラマンたちがトランポリンジャンプして空中一回転や側転バック転を繰り広げるようになったアクション演出のバージョンアップと呼ぶにふさわしい!
 たとえば、『ウルトラマンA』第1話『輝け! ウルトラ五兄弟』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20060514/p1)でミサイル超獣ベロクロンが連続で放つ白い光の輪をエースが側転を連続してかわしたりだとか、『ウルトラマンタロウ』でタロウが空中でスピンを連続したあとにスワローキックを放つとか!


 70年代前半には中高生の年齢に達しており70年代後半には成人年齢に達していた、60年代後半に放映された第1期ウルトラシリーズの至上主義者でもある1955~60年頃生まれの怪獣マニア第1世代たちが70年代末期の本邦初のマニア向けムックなどで、これらのアクションを宇宙人ヒーローの擬人化であり神秘性や巨大感・重厚感を損なうものとして批判をはじめる。
 すると、幼少期には第2期ウルトラのアクション演出も無心に楽しんでいたハズのマニア連中の過半もその言説のウケウリをはじめる(汗)。そして、90年代後半の平成ウルトラ3部作の始祖『ウルトラマンティガ』(96年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/19961201/p1)の序盤を除いて側転やバック転はなくなり、『ウルトラマンダイナ』(97年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/19971201/p1)に至っては変身直後にオープン撮影の大空をバックに空転してから降下して登場するバンクフィルムまでもが廃される。


 それは果たして人型巨大ヒーローの特撮演出・アクション演出として、唯一絶対の正しい方法論であったのであろうか? 時に巨大ヒーローも軽快にスピーディーに動いても、それがカッコよければサマになるのではなかろうか? そのような疑問や不満も個人的には長年抱いてきたのだが、時代はすでに一周まわったようだ。
 90年代であれば旧態依然な特撮マニアの過半がケチを付けたような軽快なバック転アクションを披露しても、筆者の観測範囲ではそれにケチをつけるような野暮天(やぼてん)は見ないどころか、歓迎されているようですらある!


偽ウルトラ5兄弟を、かつて偽ウルトラセブンを製造したサロメ星人製とする諸々の合理性!


 そこに爆煙を引きながら高速で墜落するスペースペンドラゴン! ペンドラゴンを撃墜し終えたウルトラセブンが上空からゼロにキックを見舞う!
 ゼロは両腕をクロスさせて辛くもこれに堪えるが、セブンはキック後の反動を活かして空中バック転しながら4兄弟の中心に着地するや、振り向いて腕組みをして不敵にゼロをにらみつける!


 画面奥に遂に勢揃いしたウルトラ5兄弟に向かって突進していくウルトラマンゼロ
 このシーンもホントウは手狭なのだろう特撮セットをゴマカすためか、奥にいる5兄弟に向かって手前から走っていくゼロと並行して、すぐ左に長い岩壁のセットを対比として配置して遠近感を強調している!


 読者諸兄もすでにマスコミ媒体などで事前にご承知の通り、今回のウルトラ5兄弟は宇宙人の科学力の粋(すい)を集めて製造された、ウルトラ5兄弟に酷似したロボット超人である偽ウルトラ5兄弟なのだ。
 そして、それを造りだしたのは、なんと『ウルトラセブン』第46話『ダン対セブンの決闘』でロボット超人・ニセウルトラセブンを地球侵略の先兵として送り出した、侵略星人サロメ星人の同族なのである! ただ単にポッと出のヒーローの偽物を出すのではなく、どうせなら過去に同様の手口を繰り出した侵略宇宙人に再登場を願うことで、設定的な同一性や必然性をも担保する、年長マニアや怪獣博士の気がある現今の一部の子供たちにも実にうれしい趣向なのだ。


 往年のニセウルトラセブンは腹部や両腕・両足の関節部に小さなまるい銀色のプロテクターがいくつかあることで、機械製の巨大ロボットであることを表現していたが、このデザイン意匠が今回のニセウルトラ5兄弟たちにもそのまま受け継がれている!
 まぁ今回の作品も見るからに低予算なので、それを逆手にとって、新キャラの着ぐるみ新造と比すれば格段に安く済むウルトラ5兄弟のスーツの流用&プチ飾り付けや、並行宇宙のZAPのメンバーも1人2役で登場させて、画面をにぎやかなものに錯覚させることで、それなりのゴージャス感を漂わせることには成功している。


 このあまりに豪華な導入部に続いてタイトルロゴ『ウルトラ銀河伝説外伝 ウルトラマンゼロVSダークロプスゼロ』が入る。銀字を赤と青の輪郭が覆う「ウルトラマンゼロ」、オレンジ(赤銅色?)の字体を黒の輪郭で覆う「ダークロプスゼロ」と、両雄のボディカラーをさりげに取り入れたタイトルデザインがなんともセンスがいい!


「別の宇宙」が舞台の映画『ウルトラマンゼロ』の前哨戦たるべく、「並行宇宙」との狭間にある「次元の裂け目」が舞台!


 今回は『ウルトラギャラクシー 大怪獣バトル』シリーズや映画『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE』でおなじみZAPの宇宙基地が「宇宙のひずみ」からの救難信号を受け、緊急の医療品を輸送中だったスペースペンドラゴンがその任務を内蔵の小型宇宙艇・ドラゴンスピーダーに任せて――こうしておけば女副長のハルナや怪獣博士のオキを出さずに済む。予算が少ないから出演させられなかったのだろう(涙)――、船長のヒュウガと怪獣使いの主人公青年・レイが救難に向かうや「宇宙のひずみ」にひき寄せられ、並行宇宙同士の狭間にある救難信号の発信源・惑星チェイニーにたどり着く。
――余談となるけど、「ZAPの宇宙基地」から連想される怪獣攻撃隊の宇宙基地や宇宙ステーションは、第2期ウルトラシリーズを愛する者としてはその弱点を指摘してしまうことにもなるので残念だが、第2期ウルトラや当時のTBSの児童向け実写ドラマ一般を担当してSF性よりドロくさい人間ドラマ性や社会派テーマ性を脚本陣に要請していたTBS側の名プロデューサー・橋本洋二が円谷プロに「要らないからやめましょう」と主張していたものでもある(爆)。怪獣攻撃隊が国際規模の組織だったり宇宙基地を持っていたりといった明朗なSFスケール感については、第2期ウルトラは第1期ウルトラに劣っていたことは認めざるをえないだろう――


 そこで大破したもう1機のペンドラゴンや、なぜかそこに倒れていたもうひとりのZAPのクマノ隊員に遭遇。
 そしてまた、頭に包帯を巻いて無精ヒゲも伸ばしていることで遭難してから日数も経っていることを示すもうひとりのヒュウガ船長から、惑星チェイニーはサロメ星人の実験のためにどの次元・並行宇宙にも属さない次元の狭間の孤立した惑星となり、そこではその次元に本来属していない異物が侵入したとしても、いずれは消え去る運命にあることを知らされる。
 クマノの受け売りだそうだが、もうひとりのヒュウガ船長は、同じ宇宙・同じ地球・同じ人間が並行して無数に存在するという「多次元宇宙」の話を語る……


 こう書くと「別次元」「パラレル・ワールド」の話であり、なんか小難しいSFチックなノリなのであるが、本編・特撮とともにサクサク進む演出力のために、全編画面にひき寄せられて目が離せないのだ!


 宇宙のひずみにひき寄せられ、起動が停止してしまったペンドラゴンの船内の描写で、静かに時を刻むデジタル時計の赤い液晶表示をアップにし、4時13分50秒で停止するやそれを画面下半分に映して、上半分でヒュウガとレイを演技させる演出なんかは時間経過と計器異常と時空異常を同時に示しており、なにげに凝(こ)っている。


 そして、惑星チェイニーでの本編場面では、従来の『大怪獣バトル』全2シリーズでは予算の関係で終始、都内のスタジオ――第1期は今は亡き東宝ビルト、第2期は日活撮影所――での撮影だったのだが、今回はぜいたく(?)にも遠方へのロケを敢行(かんこう)!
 大破したペンドラゴンから立ち昇る白い煙の空気感なんかは、やはりロケ撮影ならではのものである!――ロケ場面の短い尺を見るに多分1日で撮りきったとは思われるけど(笑)――


 さらに、ヒュウガ船長やレイ青年の目に飛びこんでくる、ウルトラランスに突き刺されて倒れたゾフィーと横たわるウルトラマンジャックという、あまりに衝撃的な場面!
 もちろんこれは冒頭のウルトラマンゼロと戦ったニセゾフィーとニセウルトラマンジャックの末路だ。ゾフィーとジャックは初代マンとまったく同じ顔なので、勝ち抜きトーナメント形式で残った敵キャラの絵的な違いを付けるための敗者のセレクトでもあっただろう。


 そして、ゼロとニセウルトラ5兄弟の戦いを語るもうひとりのヒュウガ船長の回想場面で、ウルトラマンゼロにキックをかますニセウルトラマンエースが静止画になり、いきなりニセエースの半身に内部メカの図解構造イラストが合成される!
 往年の『怪獣図解入門』(小学館・72年・ISBN:4092203349)をはじめとする怪獣図鑑学年誌の記事で、怪獣の内部図解やそれに添えられた虚実ごちゃ混ぜのコメント――「バルタン星人の目は1万メートル先の米粒が見える」とか、「ゴモラの腕力は(プロレスラー・故)ジャイアント馬場のチョップの20万倍の威力がある」(笑)などの疑似科学性――に夢中になった世代としては、こういうものこそ児童の知的好奇心を喚起して、より『ウルトラマン』シリーズに執着させる普遍性のある方法論でもあるのだから、どんどん本編でもやるべきなのだと思いを新たにするのであった……


第2戦! 『大怪獣バトル』の古代怪獣ゴモラvs新キャラ・ロボット怪獣メカゴモラの戦いが勃発!


 そして、ロケ撮影のヒュウガとレイの背後にそびえる実景の高い岩壁に着弾するリアルなCGのミサイルランチャー! なおも襲いくるミサイルの群れ!
 ミサイル側の視点(!)で俯瞰(ふかん=高所から見下ろすこと)してレイ青年を描写するや、レイは怪獣召喚アイテム・バトルナイザーを高く掲げる!


レイ「ゴモラ~~~っ!!」


 ミサイルランチャーをその巨体の背中で盾(たて)として防いで咆哮(ほうこう)をあげて登場する、レイの最大最強のパートナー・古代怪獣ゴモラ
 『ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE』からスーツが一新されたらしいが、たしかに『大怪獣バトル』登場時よりも精悍(せいかん)な顔つきとなり、体色も赤茶色からこげ茶色となり、一層シブ味を増している!


 その眼前に出現するメカロボット怪獣メカゴモラ
 初登場時に大量のミサイルランチャーが巻き上げた白いスモークによって、最初はその姿を見えにくくしている演出も心憎いが、正体を現したあとに身体の各部をアップで見せて、回転する左手、右肘に鋭く生(は)えた金属のトゲ、左胸の紫色の発光部などを順に映しだす!
 同様の特撮演出は『恐竜戦隊ジュウレンジャー』(92年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20120220/p1)中盤で6番目の追加戦士・ドラゴンレンジャーが駆る怪獣型着ぐるみメカ・ドラゴンシーサーが港湾に初出現した回でもやっていて、われわれ年長マニアが観れば、両方ともに明らかに怪獣映画『ゴジラ対メカゴジラ』(74年・東宝)において、夜のコンビナートで水爆大怪獣ゴジラの前に初めてその正体を現した際のロボット怪獣メカゴジラの特撮シーンに対するオマージュであるともわかるのだが、そうだとわかってもカッコよくてシビれるのである。


 バンダイから発売中のメカゴモラのソフビ人形では、その眼は白目に黒い目玉と生物的に表現されているのだが――ちなみに、1978年に玩具会社・ポピー(バンダイの子会社で83年に本社に吸収合併)から発売されていた「キングザウルス」シリーズのメカゴジラのソフビも映像とは異なり生物的な眼であった――、今回の作品では、メカゴモラの眼は青白く発光し、左胸の心臓(?)にあたる部分は紫色に発光。まさにメカロボット怪獣としての風格を漂わせている!


 メカゴモラ、大量のミサイルランチャーをゴモラに浴びせかける!
 たまらず大地に倒れるゴモラの手前に、避難するレイとヒュウガを合成しているのが、なんともたまらん臨場感あふれる演出!
 ゴモラ、武器である長い尾でメカゴモラに攻撃を加えるや、メカゴモラの全身に紫色のスパークが走り、鼻先のツノを紫色に光らせてゴモラに突撃!
 さらに、左胸の発光部からも紫色の光線を発射!


 導入部でゼロとニセウルトラ兄弟が戦った惑星チェイニーの夕空も紫色に染まっていたが、こういう色彩設計にワンポイント的な接点を持たせるのも上手い!
 ゴモラ、遂に鼻先のツノから必殺技・超振動波を放つが、メカゴモラにはそれすらも通用しない!


 それをスクリーンで見てほくそ笑むサロメ星人の女性科学者ヘロディア
 『セブン』第46話のサロメ星人は着ぐるみではなく役者が素顔で演じるヒューマノイドで超能力を発揮することもなく、個人的には子供のころから昭和ウルトラ登場宇宙人の中でも最もつまらない奴らだと思っていた(汗)。
 今回のヘロディア嬢はスカイブルーのボディコンワンピース姿に白ブーツで美脚をのぞかせている上、筆者も愛するアイドルグループ・Perfume(パヒューム)の樫野有香(かしの・ゆか 愛称・かしゆか)クリソツのルックスで――前髪をきっちりと揃えた黒髪のストレートヘアで、ステージで常にミニスカートを着用しているのも共通!(笑)――、


「終わりにしてあげる」


なんて、悪女演技ではあっても役者さんの見た目や人となりから悪女にはなりきれない甘ったるい口調で云うもんだから、ゴモラでなくてもクラクラ~とくる。


 演じる宮下ともみは『ウルトラマンネクサス』(04年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20060308/p1)後半に登場したメモリーポリス――怪獣(スペースビースト)や怪事件を目撃した人々の記憶を消去する組織――の純朴そうな黒スーツ姿の少女・野々宮瑞生(ののみや・みずお)役や、深夜特撮『ウルトラセブンX(エックス)』(07年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20080413/p1)、『仮面ライダーキバ』(08年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20090215/p1)などにも出演していたが、実にわれわれ弱者男子なオタク男子どもが好みそうなルックスだ(爆)。


 また、今回のサロメ星人の衣装は男性ふたりの助手も含め、『セブン』第46話同様に金色のボタンに金色の鎖(くさり)のアクセサリーが付いている。メカゴモラの武器・ナックルチェーンも、鎖につながれた両手が両腕から飛び出して、敵を大地にたたきつけたり、宙にブン投げるものだったりするので、かなりの「鎖フェチ」なのだろう。サロメ星人は相当の「サド」なのである(笑)。


 冗談はともかく、メカゴモラの両手がグルグルと回転し、ナックルチェーンがゴモラの両腕をつかみあげる!
 倒れたままで途中に転がる岩石をカチ割りながら、猛スピードで大地にひきずられ、宙に放り投げられるゴモラ
 メカゴモラの、顔の両脇の兜(かぶと)状のツノにある紫色の縞(しま)模様が両端から中央に向かって順に点灯するや、鼻先のツノから紫色の光線を発射!――この演出はマジでカッコいい!―― ゴモラ絶体絶命!!


第3戦! 劣勢となったゴモラウルトラマンゼロが助っ人参戦! 三つ巴の戦いに!


 そのとき、空に星がまたたき、メカゴモラを俯瞰して空中から高速で何者かが迫る!
 われらのウルトラマンゼロだ! ウルトラマンレオのレオキックのように右足を赤く発光させ、猛烈な勢いでメカゴモラにウルトラゼロキックをかます
 倒れたメカゴモラをカメラ手前に、その向こうに背中を向けて着地したゼロ、さらにその奥には倒れているゴモラを配置するという、三段構えの奥行きと遠近感あふれる特撮演出がまた素晴らしい!


 ゼロの横顔をアップでとらえ、


「おまえの相手は……」


 背中を向けたまま立ち上がり、振り向きざまに、


「このオレだ!」


 と、自分を右手の親指で示すゼロ(笑)。


 この性格&キャラクター性を前面に押し出したキザったらしさこそ、まさに平成ライダーを彷彿とさせる!
 第1期ウルトラ至上主義者たちが賞揚してきた「人智を超越した神秘の宇宙人」像とはたしかに真逆だし、そういった神秘のヒーロー像を否定するものでもないのだが、今どきの作品としてはゼロのような人間味を誇張したボディー・ゼスチュアを主体としたヒーロー像の方がツカミが強くて、子供や女性層にもキャッチーなのではなかろうか!?


 そうかと思えばロケ撮影のヒュウガとレイの奥にそびえる実景の山の上の大空に、戦闘中の巨大なゼロとメカゴモラの上半身を合成するなんていう、2010年現在、ファミリー劇場で放映中の『ウルトラマン80(エイティ)』(80年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/19971121/p1)でよく見られた懐かしい手法が使われていたりする。


 ゼロ、メカゴモラに右足で回し蹴りをくらわし、パンチの連続!
 そのあまりの猛威に、メカゴモラの全身に火花とスパークが走る!
 メカゴモラ、重量感あふれる巨体でゼロを押しまくる!
 この場面では低いカメラ位置で両者の足元をとらえ、メカゴモラの馬鹿力にズルズルと押されていくゼロが最大限に表現され、一段と迫力を増している!


 メカゴモラ、右手からゼロに発砲!
 辛くもかわしたゼロは、遂に猛烈なチョップ――右腕の周囲が光る!――でメカゴモラの左ヅノを叩き折った!
 ゼロ、頭部一対のゼロスラッガーを宙に静止させるや、それに回し蹴りをくらわして加速させるウルトラキック戦法をメカゴモラに浴びせかける!――ウルトラマン史上最大のお行儀が悪い技(笑)――
 両腕から発射されたメカゴモラの必殺武器・ナックルチェーンは両断、遂に破壊された!


第4戦! メカゴモラの劣勢にテクターギアブラックが助勢する四つ巴のシーソーバトル!


 メカゴモラのピンチに、ヘロディアは開発中だったナゾのアーマーを身につけた黒い巨人・テクターギアブラックを出撃させる!
 これは本作の前日談映画『ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE』に登場した、ウルトラマンゼロが肉体鍛錬のために顔面や手足・身体に装着させられていた大リーグボール養成ギブス(笑)ことテクターギアを黒くペイントし直しただけのキャラクターなのだが、東映の『宇宙刑事』シリーズ(82~84年)を代表とするメタルヒーロー的なマスクやプロテクターのデザインは、「男の子」心を熱くさせるものがある!


 おなじみの左腕を真横水平に伸ばし、こぶしに握った右手を右腕ごと引いて右腰に当てたタメのあと――たとえ無意味で非合理でもヒーローたちのこういう様式美的なワンクッションのアクションやもったいぶったタメがカッコよさを醸(かも)すのだ!――、両腕をL字に組んで光線技・ワイドゼロショットを放とうとするや、異様な殺気を感じるゼロ!


ゼロ「なんだ、おまえは!?」


 映画『ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE』で、自身がK76星でウルトラマンレオとアストラ兄弟の過酷な特訓を受けていた際に身につけていたテクターギアそっくりだが、色違いの黒いアーマーを身につけた黒い戦士が、音もなく秘かにゼロの真上の上空まで接近して仁王立ちとなり、ゼロをにらみつけていたのだ!


ゼロ「テクターギアだと? フン、力をセーブしても、オレに勝てるってわけか!?」


 ゼロの全身を煽り(あおり)でとらえた――下から見上げた「ローアングル」のこと――上空に浮かぶテクターギアブラック。カットが切り替わって、その敵キャラよりも上空からテクターギアブラックとその下の大地にたたずむゼロをワンショットに納めて映し出す、これまた立体的な画面構成がまたまた素晴らしい!
 こういう高低差を前面に押し出した俯瞰や煽りの特撮ショットは、大空の背景セットであるホリゾントの高さや天井が低い特撮スタジオでは再現不可能な映像だったが、グリーンバックで画質の劣化なしに色調や被写体の大小やその位置を微調整できるデジタル合成の進歩はすさまじい! その技術の進歩の上で、劇的でカッコいいアングルに挑戦してみせる本作監督のビジュアルセンスも実にイイ!


第5戦! ゼロvsテクターギアブラック! 惑星を数周するガチンコ・タイマン2万年(笑)バトル!


 テクターギアブラックの目線で下方に見下ろされたゼロが、小生意気にも右腕を上方に突き出し、人差指と中指を突き立てた「2」を形づくって叫ぶ!


「2万年早いぜ!!」


 今回一番の名セリフ!(笑)


 この「2万年」はもちろん初代『ウルトラマン』最終回で明かされて、往年の学年誌や子供向け豆百科の類いで連綿と流布されてきた、特撮マニアであれば大勢が知っている初代ウルトラマンは年齢が実は「2万歳」という設定に由来するセリフである。
 「カッコよさ」と同時に「お笑い」要素もブレンドしたダブル・ミーニングなところが、まさにイマ風のセンスの高踏(こうとう)演出でもある!
 われわれ地球人の2万年とウルトラ一族の2万年がともに共通で「2本指」で示せるとは、地球人とウルトラマンの時間感覚は同じなのか? などとツッコミするのは正当ではあるけど野暮である(笑)。この作品は本格ハードSFではなく、あくまでも子供向け・大衆向けのユルい娯楽活劇にして寓話なのである。


 ゼロ、ジャンプして後ろに宙返りし、そのまま逆立ちの状態で宙に浮かんで、レオとの特訓で編み出したウルトラゼロキックを両足交互に打ち出し、テクターギアブラックもこれに両足キックの連打で応戦するが、次第に惑星チェイニーの上空から宇宙空間へと押し出されていく!
 激突する両者の両足の間からイナズマ状のスパークが走り、宇宙空間で両者は赤熱! 赤い光点となって巨大な惑星チェイニーの周囲を超高速で互いに逆走しながら、何度も正面衝突でぶつかり合うサマが、戦闘のスケール感や両者の強者感をアップさせていく! 正直、マンガやアニメでは既視感のある映像だが、特撮では本邦初の映像ではなかろうか!?


ウルトラマンゼロのイケメン不良ボイス! 擬人化された超人の演技をめぐる今昔と現代的アドバンテージ!


 テクターギアブラックに後ろからはがいじめにされて苦しむゼロ! そのまま両者地上へと大気圏突入で燃えながら落下!
 テクターギアブラック、ゼロを岩山におさえつけ、右手と左手の交互でゼロの顔を連続で殴りつける!
 ゼロ、テクターギアブラックのこぶしを右手で受けとめ、なんと左手で鼻をこする!(笑)


ゼロ「ヘヘッ、結構やるじゃねぇか」


 アレだけ押されて苦戦したゼロだが、まだ余裕があるところを見せることで、逆説的にゼロの強さをも描写する! 娯楽活劇全般でよく見るコテコテの手法ではあるのだが、飽きずに多用されるということは、普遍・王道の作劇だということだ!


 そして、不良チックで不敵なセリフを吐くゼロの声がまた、ドスが効いてシワがれた悪党声でも、卑屈な下っ端のチンピラ声でもない。声自体はイケメンのハンサムな透き通った声なので下品さがなく、性根からのワルではない根は善人そうな「育ちのいい不良」(笑)といった、実に女性陣が好みそうなキャラクラーなのだ。
 そういや『ウルトラ銀河伝説』を劇場で鑑賞した際、女子高生の4人組がいたものだ。そのときは単なる女性オタクの一団くらいにしか思わなかったのだが、あれは宮野の声を目当てで観に来ていたのかもと今になっては思えてならない。そうだとするなら、これとて新しいファン層の開拓であるに違いないのだ。


 敵であるテクターギアブラックの健闘を称(たた)えて、ガキ大将のごとく人差し指で鼻をこするようなゼロの仕草。
 擬人化された宇宙人ヒーローのフザけた芝居は、特に第2期ウルトラシリーズでこのような擬人化演出を見つけると第1期ウルトラ至上主義者のマニアたちから徹底的に批判されたものだが、『ウルトラマン』第11話『宇宙から来た暴れん坊』で初代ウルトラマンが脳波怪獣ギャンゴの腹をくすぐったりギャンゴを飛び箱にしてしまったリ、『ウルトラセブン』第41話『水中からの挑戦』ではカッパ怪獣テペトが両手を合わせてウルトラセブンに謝ったりなど、実は第1期ウルトラシリーズでも時折行われていたものなのである。
 ゼロにはもっと調子に乗ってもらいたいし(笑)、そんな演出をされても違和感をおぼえないようなキャラクター設定にもなっている!


 だが、ここで描かれているのは、あくまでも真剣勝負なのだ! ロケ撮影のヒュウガの目前に、真横からカメラ手前に高速でスライディングして岩場に激突して止まった、テクターギアブラックの右手につかまれたゼロの頭部が合成されたり、ゼロに投げられてもテクターギアブラックが華麗に宙を回転して着地するとか、ウルトラゼロキックとテクターギアブラックの交錯キックやエルボ肘打ちに膝キックが宙で激突する瞬間で静止画面になる! といった打撃の瞬間の痛みを強調するような特撮バトル演出が、まさにそれを実証している!
――もちろん静止画面になるのは、第1期ウルトラシリーズで異端の映像派監督・実相寺昭雄が担当した回の特撮演出へのオマージュでもあるのだろう――


テクターギア→ウルトラマンゼロを踏襲! テクターギアブラック→偽ゼロことダークロプスゼロが登場!


 激闘は果てしなく続き、遂にテクターギアブラックは右腕を高く掲げ、赤熱した両腕をクロスさせるや、全身に赤いスパークが走り、アーマーのテクターギアがヒビ割れ砕けてその正体が明らかとなる!


 その姿に唖然(あぜん)となるゼロを、画面に背を向けてその姿をもったいぶって視聴者にはまだ見せないナゾの戦士の股下・両脚の間から奥に配置した、これまた特撮マニア的には通称「矢島(信男)アングル」なる特撮演出がなんとも心憎い!


「俺の名は……」


 ゼロとは左右逆に、左腕を真横水平に伸ばして、右手をこぶしに握って引いて右腰に付けたタメのあと、


「ダークロプス ゼロ!!」


 サッと右腕をやや肘を曲げて右手を大きく開いて指に力を込めて前方に掲げ、左手をこぶしに握って左腕を引いて腰に付けるという、ワイルドなゼロをさらにワイルドにしたような、いかにもワルといった感のあるファイティングポーズがあまりに素敵である!
 ゼロのやんちゃ声と明確に演じわけた、宮野の冷徹な低い声がまたいい!


ゼロ「ダークロプス……ゼロだと!」


 その正体はウルトラマンゼロの色違いであり、両眼だけはつながって単眼になっている。もうそれだけでゼロは完全にブチギレ状態。
――ちなみにダークロプスの名前は、古代ギリシャ神話に登場する一つ目の巨人・サイクロプスから採られたものだろう――。


 並行宇宙のZAPクルー・ニセウルトラ5兄弟・メカゴモラ・テクターギアブラック、そしてダークロプスゼロと、今回は低予算を逆手に取った既存の着ぐるみのプチ改造やリペイントで済むニセモノのオンパレードで、加えてそれらは幼児誌でのカラーグラビア企画ありきで、そのキャラクターを流用しているようだが――メカゴモラのみ新造――、それらを漏らさずすべて活かして、低予算でも作品やストーリーにゴージャス感を出せるのであれば大歓迎である!


 両者の光線技・ワイドゼロショットが宙で激突! ゼロの白い光線に対し、ダークロプスゼロは紫と、ここでも悪役キャラ側の色彩設計に共通点を持たせている!
 両者が放ったスラッガーが宙で激突、火花が散る!


 ゼロ、2本のゼロスラッガーを半月刀状に合体させて巨大化させたゼロツインソードを両手に構え、宙に浮かぶダークロプスゼロに向かって突撃!
 対するダークロプスゼロはスラッガーを持った両手を前方に突き出し、全身をコマのように高速キリモミ回転させてゼロに突撃!
 高速飛行で相手に突進しあう両者を交互に映しだす演出が、なんともたまらん臨場感である!
 大激突のあと、ゼロツインソードのみが上空に弾き飛ばされ惑星を飛び出し、高速で回転しながら宇宙の彼方に消え去っていくことで、ダークロプスゼロの圧倒的な強さも示している……
 いちいち戦闘描写や衝撃描写が、質量や運動エネルギー量の物理法則を無視して(笑)、宇宙規模でオオゲサに描かれることで、真の意味でリアルかはともかく迫力は増している。インチキでも迫力があってカッコよければ、ヒーローものはそれでイイのだ!


 地上に落下するゼロを手前に、余裕で宙に浮かぶダークロプスゼロを奥に配した画面構成も、ダークロプスゼロの優位・圧倒的な強さが如実に示されている!


第6戦! 偽ウルトラ3兄弟も襲来! ゼロvs偽ウルトラ3兄弟!


 ここでサロメ星人ヘロディア嬢の男性助手が基地内で両手を宙にかざすや、その間に小さなスクリーンが現れるなんて芸コマな描写があるが、それにより残存していたニセウルトラ兄弟の初代マン・セブン・エースが再度来襲することが判明!
 煽りでとらえた絶壁をバックにしたロケ撮影のヒュウガ船長の真上を、ニセ初代マン・ニセセブン・ニセエースが超高速低空飛行でビュンビュンと次々横切っていくのも素敵すぎる!
 宙で不敵に腕組みをしてゼロににらみをきかせるダークロプスゼロの下で、ゼロとニセウルトラ3兄弟との決戦の火ぶたが切られる!


 しかし、初代マンやセブンは当然としても、ニセエースでありながらベテラン声優・納谷悟朗の声をエコー加工したエースの掛け声をちゃんと使用しているのは改めてうれしくなる!
――70年代は音源の著作権意識がラフだったので、『A』と同じく東宝効果集団が音響効果を担当した『A』の翌年のテレビ特撮『流星人間ゾーン』(73年・東宝 日本テレビ)でも、巨大変身ヒーロー・ゾーンファイターの声の一部にエースでおなじみの「テェ~~~ィっ!」などの掛け声が流用されている。当時のことだから納谷悟朗の事務所には無断での流用だったのだろう(笑)――


 また、ニセウルトラ兄弟といえど、本来ならリーダーはウルトラ兄弟の長男・ゾフィーのはずなのだが、今回リーダーを務めるのはセブンなのである。
 もちろんオリジナルのサロメ星人が建造したのがニセセブンだったからということもあるのだろうが、なんといってもセブンはゼロの実の父親であるのだ。これはゼロにとっては攻撃しにくかろう。
 『ウルトラマンレオ』第38話『決闘! レオ兄弟対ウルトラ兄弟』&第39話『レオ兄弟ウルトラ兄弟勝利の時』の前後編で、暗黒星人ババルウ星人がレオの実の弟・アストラに化けたのと同様、力づくばかりではない心理戦の様相をも呈しているのである。


 またもや右手で鼻をこすり(笑)、右手を前に突き出し、左手をこぶしに握って左腕を引いたレオのようなファイティングポーズを、ニセウルトラ3兄弟に向けて構えるゼロ! まさに『決闘! レオ兄弟対ウルトラ兄弟』の再現である!
 ゼロが振り返って宙を見上げるや、相変わらず不敵に腕組みをし、ゼロににらみをきかせるダークロプスゼロ! と同時にニセウルトラ3兄弟との戦いの最中にはゼロには手を出さないという意思表示でもある。


 ゼロを包囲したニセウルトラ3兄弟は、ヘロディア嬢がなんとも可愛い笑顔で右手を上げる合図でゼロに一斉攻撃! ニセエースを「邪魔だ!」とばかりに叩きつけたニセ初代マンを回し蹴りで大地に沈めたゼロは、ニセセブンと両手をガッチリ組み合う!
 その様子を煽りでとらえ、その上空でダークロプスゼロを宙に浮かべたカットのカッコよさなどは、もうたまらない!


次元破壊砲! 『A』の異次元空間描写を踏襲して空が割れる! ~後編予告にウルトラマンレオ登場!


 なかなか決着がつかないことに業(ごう)を煮やしたか、上空のダークロプスゼロは胸のプロテクターを開扉させ、胸の中央のカラータイマーにあたる部分を大砲のようにせり出して――この宇宙戦艦ヤマトが艦首から発射する波動砲発射準備のようなヒイてジラして盛り上げるタメのある段取りプロセスがイイのだ!――、脅威の次元破壊光線・ディメンジョンコアを放ち、ニセウルトラ3兄弟もろともにゼロを抹殺しようとする!


 「それっ!」とばかりにフィンガーアクションを繰り出すヘロディアがまたいい! その白い手袋といい、おまえは『スペクトルマン』(71年・ピープロ フジテレビ)のレギュラー悪・宇宙猿人ゴリの知り合いか!?(笑)


 ゼロとニセウルトラ3兄弟を猛烈な青黒い嵐の渦が襲い、遂に青い空がガラスのように砕けて、その次元の裂け目にゼロは吸いこまれてしまう!
 空が割れる! 『A』第3話『燃えろ! 超獣地獄』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20060521/p1)に登場した一角超獣バキシムをはじめ、『A』初期の超獣は青い空を割って出現するというビジュアルインパクトがなんとも素敵だったが、これは異次元人ヤプールが異次元空間から3次元世界に送りこむ生物兵器・超獣を送り込むという設定から映像化されたものだった。
 「多次元宇宙」も「次元の裂け目」も、要はわれわれの住む世界とは異なる「異次元」のことであり、これを描写するのに『A』を踏襲して「空が割れる」特撮を再現するのも実によくわかっている!


 地上に開いた月面クレーターのようなリアルで精密なCGによる大穴を、ロケ撮影のヒュウガ船長を手前に見下ろしたアングルで合成し、さらにその上でダークロプスゼロを宙に浮かせるという3重の合成カットのカッコよさも、もう云うことなし!


 いや、感心している場合ではない! ゼロは宇宙のひずみに落ちていくは、原始怪鳥リトラの背に乗りサロメ星人の基地を攻撃に向かったレイもまた、メカゴモラの鼻先からの光線を浴び、リトラやバトルナイザーとともに消滅してしまった! いったいこれからどうすればいいのだ!?


レオ「最後まであきらめるな! 行け! ゼロ!!」


 おおっ、その声の主はウルトラマンレオ=おおとりゲンを演じた真夏竜!(感涙)
 『STAGEⅡ(ステージ・ツー) ゼロの決死圏』の予告編では、なんとウルトラマンレオがマントをなびかせて登場!――これまた感涙!――
 このマントは『レオ』第26話『ウルトラマンキング対魔法使い』においてウルトラマンキングから授かって、金色のブレスレットに変形させて左上腕にはめていたウルトラマントであり、よく見るとマントの襟首はキングの胸と肩をおおう燻し金のプロテクターの模様を模している!


ゼロ「オレのビッグバンは、もう止められないぜ!!」


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2011年号』(10年12月30日発行)所収『ウルトラマンゼロVSダークロプスゼロ STAGEⅠ』評・前半より抜粋)


『ウルトラ銀河伝説外伝 ウルトラマンゼロVSダークロプスゼロ STAGEⅡ ゼロの決死圏』

(2011年7月20日脱稿)


 映画『ウルトラマンゼロ THE MOVIE 超決戦! ベリアル銀河帝国』(10年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20111204/p1)に続く新作『ウルトラマン』映画へのつなぎや宣伝・露出も兼ねてか、2011年7月6日、地上波での『ウルトラマン』関連の新番組がスタートした。毎週水曜夕方18時よりテレビ東京系で放送が開始された『ウルトラマン列伝』である。


ウルトラマンシリーズ45周年特別記念番組登場! その名は『ウルトラマン列伝』!!
 ウルトラマンシリーズ45年間の歴史の中から、名作・傑作・人気怪獣登場エピソードをスーパーセレクション放送!
 そして、歴代ウルトラマンや人気怪獣の名シーンを結集させた「スペシャル総集編」も特別編成!
 世代を超えて楽しめる、ウルトラ特撮エンターテインメント番組、『ウルトラマン列伝』、ご期待下さい!!」


 番組公式ホームページでの煽り文句である。
 第1話として放送されたのは『大集合! これがウルトラヒーローだ!!』であり、初代ウルトラマンからウルトラマンゼロに至るウルトラヒーローの活躍場面を一挙大公開した。構成・演出は1990年前後から各種の編集ビデオやCSファミリー劇場『ウルトラ情報局』(02~11年)を担当してきた秋廣泰生(あきひろ・やすお)氏。
 宣伝コピーでいうところの「スペシャル総集編」の方であり、内容的にはバンダイビジュアルから各種発売されている総集編ビデオ『ウルトラキッズDVD』シリーズ(09年~・ASIN:B003U3VXCS)のような印象を受ける――実はこのシリーズは2011年度はいまだにただの1枚もリリースされていない(後日編註:2010年末で打ち止めされた模様)――


 ただ、『ウルトラマンメビウス』(06年)に関してはいまだに製作したTBS系列の中部日本放送に放映権があることから、この番組の中ではたとえ一部の場面だけでも使用不可のため――加工前の映像素材は使用されているようだが――、残念ながらメビウスは一切登場していない。


 だがその一方で、ウルトラマンレオの活躍場面は『ウルトラマンレオ』(74年)本編からではなく、オリジナルビデオ作品『ウルトラ銀河伝説外伝 ウルトラマンゼロVSダークロプスゼロ STAGEⅡ ゼロの決死圏』(バンダイビジュアル・10年12月22日発売)における、侵略星人サロメ星人に操られるロボット超人であるニセ初代ウルトラマン&ニセウルトラセブンウルトラマンゼロとともに倒す場面が使われた!


 今回はこのあまりにカッコいいレオ&ゼロの師弟コンビの活躍シーンのみをピックアップし、その低予算(汗)でも革命的な映像とアクション演出、スーツアクターたちの熱演を中心に語ってみよう!


ウルトラマンレオウルトラマンゼロvs偽ウルトラマン&偽ウルトラセブン


 偽ウルトラマンゼロことダークロプスゼロが放った次元破壊光線・ディメンジョンコアの攻撃で空間が裂けてできた次元トンネル内の異空間で、ロボット超人であるニセウルトラマンエースを大激闘・大苦戦の末にかろうじて倒したウルトラマンゼロ


 だが、その行く手には、右側面だけをカメラに見せて腕組して片足で立ち、右膝を曲げて右足裏を後ろの岩壁につけて待ち構えている不敵なニセウルトラセブン
 そして、反対方向の岩陰から静かに現れるのをロング――引きの映像。アップ映像の反対のこと――でとらえたあと、うつむき気味であった顔がキッと正面を向くような演技がアップで捉えられて、ギロッとゼロににらみをきかせるニセ初代ウルトラマンの姿が!
 態度の悪い不遜なポーズをバッチリと決めてくれるスーツアクターたちの演技が素晴らしい! リアルに考えたら感情のないロボットなのだから、いちいち悪党的な威嚇・恫喝的な仕草などはしないハズなのだが、通俗的な勧善懲悪物語の演技付けとしては、この方がメリハリがついて倒してもいい悪党として感じられるようにもなるのだから、そのツッコミは野暮である(笑)。


 極彩色の明るい白や青のエネルギーの奔流の中に、小惑星クラスの岩塊が無数に浮遊する次元トンネル内を、高速飛行で脱出をはかるゼロ!
 地球上での昼間のように大気・空気で太陽光が乱反射して四方八方から被写体に光が当たるのとは異なり、太陽の直射日光が当たっていない被写体の陰の部分は黒くなる真空の大宇宙を舞台としたビデオ作品『ウルトラマンメビウス外伝 ゴーストリバース』(09年)や映画『ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE』での宇宙空間での戦闘シーンとも異なり、今回の次元トンネル内での特撮映像はあくまでも照明自体は明るい。
 白昼のように全方位からベタッと均等に被写体に光を当てることで、単なる暗いだけの宇宙空間ともまた異なる異空間として映像的差別化もできている。


 流れるような白や青の光の奔流が高速で流れる異空間のCG背景の中を、画面手前に向かって飛行するゼロがとらえられるが、その両サイドを高速周回しつつ追撃するニセ初代ウルトラマンが両腕を十字に組んで放つスペシウム光線、ニセウルトラセブンが両腕をL字に組んで放つワイドショットでゼロを襲撃する!
 ついにニセ初代マンに足蹴(あしげ)にされ、さらにニセセブンに岩壁に押しつけられ、切断武器・アイスラッガーを首につきつけられてしまうゼロ!


ゼロ「どうやらここまでか……」


 そのとき!


レオ「最後まであきらめるな!!」


 その声とともに、本作の前篇『STAGEⅠ 衝突する宇宙』(バンダイビジュアル・10年11月26日発売)で宇宙の彼方に弾き飛ばされたはずのゼロの武器・ゼロツインソードが宙から高速で飛んできて大地に突き刺さる!
 ゼロ・ニセマン・ニセセブンが思わず上空を見上げるや、3人の頭上に煽りでとらえられた、宙に浮かぶウルトラマンレオの勇姿が!
 伝説の超人・ウルトラマンキングから授かったウルトラマントが翻(ひるがえ)り、胸のマーク――レオの名前を意味するウルトラサイン!――があらわになる様子がアップで映しだされる!
 この一連のカット群はそのアングルも含めて猛烈にカッコいい!!


レオ「修行の日々を思い出せ! ゼロ!」
ゼロ「レオ!」


 「修行の日々」とはもちろん直前作『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE』で、かつてセブンに特訓を受けたレオが、今度はセブンの息子・ゼロに特訓を施していた一連のシーンを指している。単なる単独作品としての点描を超えて、長編シリーズとしての係り結びをも意味する描写なのだ。


 主題歌『ウルトラマンレオ』のアレンジBGMのイントロが鳴り響き(感涙!)、やや煽り気味にとらえたバストショットで、レオはウルトラマントを脱ぎ捨てて、それは原典同様にレオの左上腕に金色のアームブレスレットとして装着される! その際にはレオへの変身場面で変身アイテム・レオリングが光る際に使用されていた効果音が鳴るという芸の細かさ!


レオ「エイヤーッ!」


 それまでは実に渋味のあったウルトラマンレオ=おおとりゲンを演じた真夏竜ご本人の声が、この掛け声だけはたぶん録り直しではなくオリジナルの掛け声のバンク音声が使用されているらしいのもうれしい!――『ウルトラマンメビウス』第34話『故郷(ふるさと)のない男』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20061224/p1)で客演した際にはレオの掛け声を真夏竜ご本人がアテ直してくれて、それはそれでうれしかったけれど、やや声が低くてシブくなりすぎていたからネ(汗)――


 ゼロ、右腕を真横水平に伸ばしたタメのあと、右手をこぶしに握って後ろに引いて右腰につけ、左手を開いた左腕をサッと前に突き出すファイティングポーズを繰り出す! その右横に並んだレオもまた、その左右逆パターンで同じポーズをゼロと同時進行で披露する! これはあまりにカッコいい!


 第2主題歌『戦え! ウルトラマンレオ』のアレンジBGMのサビの部分が流れる中――低予算ゆえか本作のBGMはスタジオ録音のナマ楽器ではなく、いかにもパソコンの中だけで作ったような安っぽい響きの電子音楽なのだが、そんな弱点は音盤マニアしか気にしないから(笑)、これまたうれしい趣向なのだ!――、ゼロは体を反転させ、ニセマンの右肩に左足で一撃を加えるというアクロバティックな荒技を披露!
 レオの方はニセセブンを投げ飛ばし、起き上がったニセセブンの胸を両手のチョップで強打、さらに足払いをかける!


 ゼロ、ニセマンにジャンピングキックをかます
 レオ、ニセセブンの腹にパンチをくらわす!
 この一連、ひたすらスーツアクターのスピーディな肉体的アクションのみで演じられており、合成などは一切使用されてはいないのだ!


 ちなみに、これらのバトルが繰り広げられる異空間のCG背景は、白と青の奔流が上から下に流れるような明るい感じで表現されているのだが、スタッフがそこまで意識したかは怪しいけど、コジつけるのであれば「滝」のイメージである。


モロボシ・ダン隊長「その顔はなんだ! その目はなんだ! その涙はなんだ! その涙で奴が倒せるか! この地球が救えるのか!?」


 『レオ』第4話『男と男の誓い』でレオの師匠であるモロボシ・ダン隊長=変身できなくなったウルトラセブンは、奇怪宇宙人ツルク星人を打ち破るため、おおとりゲン=レオに「滝の流れを断ち切る」過酷な特訓を課したのだが、『レオ』初期作品で描かれた特訓の中でも、やはりこれが最も印象に残っている人は多いのではなかろうか?
 この「滝」のイメージも、「自分は第2期ウルトラで育った世代だから、砂にまみれ、汗にまみれたウルトラマン像が印象的」とDVDの映像特典で語っていた、監督のおかひできのこだわりか!?


 レオとゼロ、ともにエネルギーを右足に集中させ、炎のように赤く発光した右足で同時にキックを放つ合体技・レオゼロキックをロボット超人たちに浴びせかける!
 画面手前にキックポーズで迫るレオのアップ、そして同じくゼロのアップ映像をとらえたあと、画面右上から降下してくるレオ、画面左下から上昇してくるゼロが、画面中央のニセマンとニセセブンを猛烈なキックで挟撃する映像的なカッコよさ!


レオ「ゼロ、こいつらにかまっている時間はない! 脱出だ!」
ゼロ「だがどうやって?」
レオ「俺たちのエネルギーを合わせる。ダブルフラッシャーだ。できるな?」
ゼロ「わかった!」


 相変わらず師匠であるはずのレオに対してタメ口をきくゼロ(笑)。
 ダブルフラッシャー! これはもちろんレオとレオの弟・アストラのふたりが両手を合わせて協力して発射する合体必殺光線・ウルトラダブルフラッシャーの名称だ!
 ポッと出の根拠のない新必殺技ではなく、前例もある印象的な過去作における必殺技を引っ張りだしてきてくれることのうれしさ! レオとゼロも協力すればダブルフラッシャーを放てるとするあたり、年長マニアは感涙だろうし、映像では見たことがなくても子供向け豆百科の図版で知識があった怪獣博士気質の子供も大喜びするだろう。もちろん何も知らない幼児でも、合体光線やらダブルライダーキックにはスペシャル感があってワクワクとするものなのだ(笑)。
 こういうふうにシリーズの既存設定を適切な場面でパズルのピースをハメるように活かしてくれることで、イチイチの必殺技にもSF設定や状況設定的な必然性が後付けでも付与されるワケなのだ。おそらくマニア上がりの作り手たちもわれわれと同様に子供のころからそう思っていたであろう想いを、今ここぞとばかりに実現してみせて、視聴者たちの共感も大いに取り付けてみせているのだ!


 レオとゼロ、両腕をクロスさせてから水平にサッと伸ばすや、レオがゼロの上方に移動。かつてレオとアストラ兄弟が放ったウルトラダブルフラッシャー発射時と同一のポーズを取り、レオとゼロの重ね合わせた両手の部分からレオゼロダブルフラッシャーが放たれた!!
 赤と緑といった光線の色彩は異なるも、原典と同様に荒々しいイナズマ状の光線が、スペシウム光線とワイドショットを放つニセマンとニセセブンの光線をお約束で押し問答(笑)したあげくに、次第に押し込んでいって粉砕! その光線の強烈な勢いで遂に次元トンネルの空間にも裂け目の脱出口ができた!


レオ「今だ! 行け! ゼロ!!」


 次元トンネルの脱出に成功するウルトラマンゼロ


 カッコよすぎる!


 このあと、戦いはゼロ&ゴモラvsダークロプスゼロ&メカゴモラの地上でのリベンジ戦に移行して、そちらも絶品なのだが、筆者の方が力尽きたので本編の方を参照されたし(笑)。
 『ウルトラマンゼロVSダークロプスゼロ』前後編は『ウルトラマン列伝』内にて早くも2011年8月に3分割に再編集して放映されるという。


 2011年7月15日に公式サイトも開設されたが、「ウルトラシリーズ45周年記念映画」の概要も遂に明らかになった。そのタイトルもズバリ、『ウルトラマンサーガ』(12年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20140113/p1)である! 『ウルトラマンゼロVSダークロプスゼロ』での実に熱血度が高い演出手腕&特撮ビジュアルセンスが高く評価されたのだろう、おかひでき監督はこの映画の監督にも大抜擢されている。『サーガ』も演出面では大いに期待ができそうだ!


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2012年号』(11年12月29日発行)所収『ウルトラマンゼロVSダークロプスゼロ STAGEⅡ』評より抜粋)


ウルトラマンゼロ THE MOVIE』製作遅延に伴う事前宣伝の圧倒的不足(汗)

(ここから再度、2010年12月10日脱稿分)


 本作の『STAGE Ⅰ』と『STAGE Ⅱ』は『Ⅰ』のエンディング歌曲や次回予告をカットして、2010年11月3日の祝日に東京――厳密には多摩川を挟んで東京に隣接した神奈川県川崎市のJR川崎駅西口と直結している超巨大ショッピングモール・ラフォーレ川崎の巨大中庭――で、その週末には名古屋と大阪でも先行プレミア上映された。
――その前年の同時期の名古屋と大阪では、もう年末公開の映画の試写会が行われていたものだが(汗)――


 リアルでクリスタルなカッコいいCG背景によるウルトラの星で、ウルトラ一族vs悪のウルトラマン・ベリアルとの吊りを多用したアクロバティックでスピーディーな激闘を繰り広げる予告編が、2009年9月中旬にはもう公開されてファンの間で大いに話題を呼んで期待を高めていた前作の映画『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE』(09年)。
 それと比べて、今回の年末映画『ウルトラマンゼロ THE MOVIE 超決戦! ベリアル銀河帝国』(10年)の予告編が2010年11月に入ってもいまだに公開されていなかったこともあってか、その作品クオリティの高さゆえ、その前日談にあたる設定のオリジナルビデオ作品『ウルトラ銀河伝説外伝 ウルトラマンゼロVSダークロプスゼロ』(10年)の方がマニア間で注目を浴びている始末である。
 なおこの『ゼロVSダークロプスゼロ』の冒頭3分、ゼロvsニセウルトラ5兄弟の戦いは、映画『ゼロ THE MOVIE』の映像2分弱と併せて、2010年11月8日(月)より動画投稿配信サイト・ユーチューブやニコニコ動画などで早くもビデオと映画の宣伝を兼ねて公開されている。


 本家『ゼロ THE MOVIE』の長尺の正規の予告編は、11月19日(金)にユーチューブやニコニコ動画などでようやく公開。各劇場で正式に上映されたのが映画公開12月23日(木・祝)まであと1ヶ月を切った11月27日(土)のことであった……
 前作『ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE』を指揮した円谷プロの異端児・岡部副社長が辞職したことでそのCG映像クオリティが一挙にダウンすることが危惧されていたのだが、前作に負けじ劣らずの映像でマニアたちの不安事項は解消しているようだ。12月3日(金)からはネット上でバージョン違いの予告編を3週連続で公開するらしい。


 しかし、制作やホスプロ(ホストプロダクション・後処理。撮影後の映像加工やCG処理)の遅延など諸事情はあったにせよ、こんなチンタラとした調子では「マジで売る気があるのか?」と疑いたくもなってしまう。前売り券だって予告編の映像効果でもっと早く売ることもできたはずだろう。これならば、『ゼロ THE MOVIE』の本編映像の露出にこだわらず、監督は異なっていても前作『ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE』のハイクオリティな映像素材を流用するかたちで『ゼロ THE MOVIE』予告編を早々に露出してみせるような機転を働かせて、思いついたら即座に豆々しく行動に移すようなプロデューサーや宣伝マンはいなかったのであろうか?
――その人格にクセはあっても(笑)、行動力は猛烈にあった岡部副社長の退職は実に痛い。やはりそういうところで最後は決断力や人間力、営業力や交渉力が効いてくるのだ。まぁコミュニケーション弱者なオタクの典型である筆者がそれを云うのもナニだけど(汗)――


特撮マニアのみならず、子供・女性・ファミリー・一般層も上積みしていくためには!?


 小学館『てれびくん』や講談社『テレビマガジン』の宣伝記事などで情報を得られる就学前の幼児やその家族、インターネットの公式ホームページ、ネット上の巨大掲示板2ちゃんねる、各ホビー誌などに、常に積極的にこちらからアンテナを張り巡らしているマニアの大勢は、それでも情報はゲットできるのだろうが、「ウルトラ」の商品的価値が凋落した昨今では、もうそれだけでは充分な集客が見込めないのは明らかなのである。
 かつては「ウルトラ」に夢中になったものの、とうに卒業して現在では全然興味がなかったり、『ウルトラマン80(エイティ)』(80年)と『ウルトラマンティガ』(96年)の空白期間に生まれ育ったためにリアルタイムで「ウルトラ」に接することができずに、興味がないどころか全然「ウルトラ」について知らない世代とか、そういう層をも「おっ!」と思わせるくらいのパブリシティ効果を発揮して、少しでも観客を増員せねばもう限界なのだ。


 昭和のウルトラ兄弟が25年ぶりに復活するから、テレビシリーズ『ウルトラマンメビウス』や映画『ウルトラマンメビウスウルトラ兄弟』(共に06年)で戻ってきて、以降のウルトラシリーズも観続けているという元オタクやオタクの気がある一般人も、現にネット上では散見されるではないか?
 10年弱ぶりにジャニーズ・V6(ブイシックス)の長野博=ダイゴ隊員がウルトラマンティガに変身するから、映画館で『大決戦! 超ウルトラ8兄弟』(08年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20101223/p1)を観てみたという世代人もいるではないか?
 あるいは、『ウルトラマンダイナ』(97年)は観ていなかったけど、今流行りのお笑いユニット・羞恥心(しゅうちしん・笑)のリーダー・つるの剛士(たけし)が出演しているから、『超ウルトラ8兄弟』や『ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE』を、演歌歌手・氷川きよしがチョイ役で特別出演して主題歌も熱唱しているから『ウルトラマンメビウスウルトラ兄弟』を試しに観てみた女性層もたしかに少数だが確実に存在するのだ。


 それが邪道であるという意見もわかるのだが、お金を落としてくれて、それで少しでも円谷プロバンダイ等の各社がうるおって、しかもそのうちの何割かが意外と面白かった、自分にも子供ができたら「ウルトラ」を観せようと思ってくれたら御の字というものだ。


 『ウルトラ銀河伝説』では、ウルトラマンキングの声を演じた元内閣総理大臣小泉純一郎や、ウルトラの母の声を演じた女優・モデルの長谷川理恵が、たとえどれだけその演技が大根だろうが(笑)、そういう世間で名が知られた著名人がゲスト出演するという宣伝が小出しに順次、公開前の半年間にもわたって早くから行われていた。


ウルトラマンゼロウルトラセブンの息子であること
・レイブラッド星人の声をプロレスラー・蝶野正洋が演じること
・今やメジャーになったウルトラマンダイナことつるの剛士や、モーニング娘。辻ちゃんと結婚したウルトラマンコスモスこと杉浦太陽の出演


 各スポーツ新聞や各ワイドショーではその都度、『ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE』がそれなりに大き目に扱われてきた。


 氷川きよし・V6・MISIA(ミーシャ)との主題歌のタイアップなども同じことである。
 それは従来のヒーローソングを下に見て、流行りものやオシャレなものへ屈服する一種の権威主義であるとする見方も半分正しいのだが、これにより各テレビ局での歌番組でウルトラ兄弟が出演しての映画の宣伝が今日では可能となるのも事実なのだ。
 ちなみに、今回の『ゼロ THE MOVIE』ではGIRL NEXT DOOR(ガール・ネクスト・ドア)が主題歌を担当。戦闘シーンにも合いそうなアップテンポな曲調で女性ボーカルもなかなかにカッコいい歌曲に仕上がっているではないか!?


 『ゼロ THE MOVIE』は映画公開時期に合わせて、九州ロケがあったKBC九州朝日放送で12月8日(水)24時15分から長寿ローカル番組『ドォーモ』(89年)枠内で密着特番が放映されたそうだ。監督は自主映画で有名な吉村文庫氏。
 歌番組『MUSIC JAPAN』(07年・NHK)2010年12月12日(日)18時10分放映分では、ウルトラ6兄弟とゼロ、カイザーベリアルがアイドルグループ・AKB48(エーケービー・フォーティーエイト)とじゃんけん宇宙一決戦を繰り広げ、AKBチームが勝っていた(笑)――ただし、ウルトラマンタロウの掛け声が通例の篠田三郎の掛け声をエコー加工したものではなく、近年担当しているベテラン声優・石丸博也の掛け声になっていたが、今後はこれで行くんでしょうかね?(汗)――。
 『題名のない音楽会』(66年・テレビ朝日)でも、『光の国からぼくらの国へ~ウルトラマンがやってきた!』と題して、来年2011年1月9日(日)朝9時放映分にウルトラシリーズ主題歌メドレーをやるそうな――BS朝日で1月15日(土)と16日(日)に再放送――。


 ウルトラの商品的価値が凋落する中で、『ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE』が合格点とはいかないまでも、それらの断続的な宣伝がある程度の集客に貢献したことも否定できない。今回はそういう試みがかなり少ないように見えるのは残念なところだ。
 こうした試みで、どれだけの比率の人間が映画を観に行くといえるのか? 実際のところはそれらを見聞きした人間の数パーセントにすぎないだろう。
 だが、いかにテレビの視聴率の長期低落傾向が叫ばれる昨今でも、テレビの視聴者数は分母が数千万人もいるのだから、100人に1人が足を運ぶだけでも、数万人分は観客動員の上昇に寄与ができると見るべきだろう――数万人×1800円分の上がりが見込めるとなると金額はいくらになるのだ!? バカにできないではないか!? このへんのカネ勘定もなおざりにしてはイケナイのだ(笑)――
 たしかに残りの90何パーセントは『ウルトラマン』映画なんぞは観に行かないのだろうが、それにより赤字になるわけでも何でもないのだから、その打率の非効率を問題視する必要は何もない。


 最悪なのはテレビや映画で『ウルトラマン』という作品が今、放映なり上映されていることさえ世間に知られなくなることなのだ。あるいは、いまだに『ウルトラマン』なんて古クサくてダサいものをやっているの? と「終わコン」扱いをされることなのだ。
 誤解やミーハーや権威主義も含めてそれをも逆用して、「最近の『ウルトラマン』はスゴそうなことをやっているね」「メジャーな有名人を使っているね」と思わせておいた方が、業界内での異業種とのコラボや資金調達などもやりやすくもなるだろう。


 筆者のように映画館で初めて得られる感動を大事にしたいがために、公開までは公式ホームページも2ちゃんねるもホビー誌の記事も一切目にせず、「余計なことを教えてくれるな!」と考えるような、そしてそれでも観に行くようなお客さんもいるのだろうが、やはりそんな奇特な人種は極少というべきであり、この情報過多の時代に今回のようなチンタラしたことをやっていては、致命傷となってしまうことが明白なのである。
 来年2011年は「ウルトラマンシリーズ45周年」であることから、2011年の年末にも新作映画の公開が期待できるであろうが、今のようなやり方では興行的にまた失敗し、それ以降の新作がいよいよ望み薄(うす)となってしまうだろう――後日付記:ここで議題とした2011年にはテレビも映画も新作が遂になく、翌2012年春まで新作映画の公開が持ち越されたのであった(汗)――。


『てれびくん』『テレビマガジン』での『ウルトラマンゼロ』連載グラビアストーリー!


 今回の『ウルトラマンゼロVSダークロプスゼロ』のDVD発売に先立ち、2大幼児誌『てれびくん』と『テレビマガジン』ともに2010年4月号から9月号にかけて、グラビアストーリー『ウルトラマンゼロ』が連載されていた。
 ナゾの敵・テクターギアブラックに対抗するため、ゼロがコンビネーション攻撃のパートナーを捜した末に、父であるセブンとの連携技・コンビネーションゼロを編み出してテクターギアを破壊するや、ダークロプスゼロが正体を現し、ゼロは新しい強化アーマー・ゼロスラッガーギアを装着してこれに挑(いど)む! という物語は両誌ともに同一の展開である――あぁ、このグラビア展開を内山まもる大先生のコミカライズ(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20061028/p1)でも見てみたい!――。
 『てれびくん』では要塞ロボット・ビームミサイルキングが登場、ゼロスラッガーギアは胸の星からエメリウムスタービームを放つスーパーフォームを装着し、『テレビマガジン』では生体破壊メカ・クラッシュナイザーが登場し、ゼロスラッガーギアは両腕に剣と盾を携えたキーパーフォームとなったが、これらのデザインを各誌の子供読者から公募することにより、パブリシティ効果に一役買っているだ。
 もちろんこれらの連載が、本作『ウルトラマンゼロVSダークロプスゼロ』や映画『ウルトラマンゼロ THE MOVIE』のセールスのプロモーションともなっているワケである。


ウルトラマンゼロVSダークロプスゼロ』をもっと多くの人に観てもらうためには!?


 しかし、次から次へと衝撃的な展開でサクサクと進む演出や、映像面でのクオリティの高さからすると、正直『ウルトラマンゼロVSダークロプスゼロ』を幼児やマニアだけに観させておくのはあまりにもったいないと思うのだ。
 90年代半ばから末期にかけて活躍していた特撮ライター・ヤマダマサミや、第1期ウルトラ至上主義者で有名なイラストレーター・開田裕治(かいだ・ゆうじ)画伯の奥様が、1999年5月1日に新宿ロフト・プラスワンで開催したトーク・イベント「朝までウルトラ」で、


ヤマダ「ウルトラを子供からとりあげろ! が合い言葉ですから」
開田夫人「子供にはもったいないよ」


などと発言していたのとはまったく別の真逆の意味合いでではあるのだが。
――少なくとも当時の彼らは、ダイナミックな通俗娯楽活劇としての熱血特撮ヒーローではなく、いわゆる大人の鑑賞にも堪えうるリアルシミュレーションやシャープでクールでSFチックな方向性での特撮ジャンルの復興を唱えていたのだが、そうした70年代後半からはじまるマニアたちの言動・言説にも、幼児とマニアだけが観て小学生は観ていないという90年代以降の「ウルトラ」の惨状、商業的に凋落していったことの原因の一端があったと思うのだ――


 こうしたオリジナルビデオ作品もシネコン全盛の現在、柔軟な上映形式が可能なのだから、同じく低予算の映画『超・仮面ライダー電王 トリロジー(三部作)』(10年・東映https://katoku99.hatenablog.com/entry/20110403/p1)や、もともとVシネマ(ビデオ販売用)作品としてつくられるもハクを付けるために劇場で先行公開された『仮面ライダーTHE FIRST(ザ・ファースト)』(05年・東映https://katoku99.hatenablog.com/entry/20060316/p1)や、オリジナルビデオアニメ『機動戦士ガンダムUCユニコーン)』(10年・松竹・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20160904/p1)の劇場先行公開のように、本作『ウルトラマンゼロVSダークロプスゼロ』も小規模公開でも2週間限定でもいいので劇場で先行公開してみてもよかったのではなかろうか?
 そして、その冒頭なり巻末に予告編もバンバン打って、真打ちの年末公開映画の集客につなげるというかたちの方が、世間やマニア諸氏の注目も集めやすかったと思えるのだが。このままではあまりに魅力的なキャラクターであるウルトラマンゼロも浮かばれないのである……


グリーンバックかスタジオか!? ヒーローには神秘性か人間味か!?


 『ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE』やその前日談であるオリジナルビデオ作品『ウルトラマンメビウス外伝 ゴーストリバース』はセットやロケ撮影を廃して、スーパー戦隊シリーズアメリカ輸出版『パワーレンジャー』(93年~・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20080518/p1)シリーズの坂本浩一監督や横山誠監督を大抜擢して、人間の役者の登場を最低限に留めて仮面劇のアクションに徹し、背景をほぼオールCGにしてグリーンバックの前でワイヤーアクションを展開して撮影する斬新な手法で注目を集めた。
 しかし、往年の「ウルトラ」を見慣れた一部の人々からは違和感があったとする意見もあり、また宇宙空間や怪獣墓場での戦いが延々と続いたことにより、画面が暗くて見えづらかったとか、遠い世界の出来事なので親近感がわかないなどという感想も一部には見受けられたものだ。
 そのような声を反映させたワケでもなく、合成カットにかかる手間や時間や予算の節約の問題の方が大きかったのだろうが(汗)、今回の『ゼロVSダークロプスゼロ』では特撮セットとロケ撮影が復活、地球のように昼間は青空になっている惑星チェイニーが舞台となっている。


 本作の前編ではメカゴモラが大活躍したのだが、やはりメカゴモラのような重量感あふれるキャラクターを描写するにはセット撮影の方がふさわしいように思えるし、ロケ撮影のヒュウガ船長やレイ青年と合成することによってその迫力は一段と増していた。
 「昔ながらの手法でしか醸し出せない良さがある」と監督のおかひできはDVDの映像特典で発言しているが、要はそれぞれのキャラクターに最も見合うかたちであれば、古い手法でも新しい手法でも問題ないということなのだと思う。


 本作の脚本を担当した荒木憲一が「ウルトラマンに神秘性を求めている」のに対し、「自分は第2期で育った世代だから、砂にまみれ、汗にまみれたウルトラマン像が印象的」だとおかひでき監督はDVDの特典映像で語っているが、果たして『ウルトラマンネクサス』(04年)・『ウルトラマンメビウス』(06年)・『ウルトラギャラクシー 大怪獣バトル NEVER ENDING ODYSSEY』(08年)で冴えた映像演出を魅せた気鋭のアベユーイチ監督が手掛けることになった『ゼロ THE MOVIE』に登場するウルトラマンや新ヒーローたちは神秘的なのか、それとも砂にまみれ汗にまみれた人間クサいヒーロー像なのか!?


『ゼロ THE MOVIE』の「別の宇宙」を、『ミラーマン』『ファイヤーマン』『ジャンボーグA』の世界にしてほしかった!


 『ゼロ THE MOVIE』に登場する新キャラクターは、昭和のウルトラマンたちが住む宇宙とは異なる、別次元の宇宙に住む3人の新ヒーロー、ミラーナイト・グレンファイヤー・ジャンボットだという。
 70年代前半の国民的な変身ブームを知る世代人ならば、云わずと知れた円谷プロ製作の『ミラーマン』(71年)・『ファイヤーマン』・『ジャンボーグA(エース)』(共に73年)の特撮巨大ヒーローのリメイクキャラクターたちであるとわかる。
 彼ら70年代前半の円谷特撮巨大ヒーローは、同時期の第2期ウルトラシリーズ東映ヒーロー作品同様、かつては第1世代マニアたちに「粗製濫造」と罵られてきたことを思えば、まさに隔世の感であって、実にうれしい趣向ではある。


 しかし、ここまでやってくれるのであれば、もっとワガママを云いたい(笑)。


・ミラーナイトの出身地である「鏡の星」とは、ミラーマンの故郷「二次元世界」のことであり、ミラーナイトはミラーマンとも同族でズバリその直弟子という設定にしてもよかったのではあるまいか!?
・地球の地底人でもあったファイヤーマンも、その最終回『宇宙に消えたファイヤーマン』で宇宙に消えたということは、実は宇宙の果てで生き延びていたことにしてもイイわけで(笑)、宇宙海賊であるグレンファイヤーもまたファイヤーマンの不肖の息子という設定でも問題なかったのではあるまいか!?
・巨大ロボット・ジャンボットの母星、惑星エスメラルダもふつうにエメラルド星にして、そこに住む人々も往時は地球にジャンボーグAを貸与したエメラルド星人のことであり、ジャンボットはジャンボーグAやジャンボーグ9(ナイン)などとも同型シリーズのジャンボーグ7やジャンボーグ11(笑)にあたる巨大ロボだという設定でもよくなくネ!?


 そのようにハッキリと『ゼロ THE MOVIE』における「別次元の宇宙」とは、『ミラーマン』『ファイヤーマン』『ジャンボーグA』が実在した世界のことであり、彼らリメイクキャラクターたちは、往年のヒーローたちとも因縁・接点がある同族キャラクターでもあったのだ! といったところまで踏み込んでいった方が、もっとマニアの大勢も喜んだのではなかろうか!?


 そう。濃ゆいマニア諸兄であればご承知の通り、『ジャンボーグA』の中盤では怪獣攻撃隊・PAT(パット)の大ピンチに、アフリカ戦線で戦っていた『ミラーマン』の怪獣攻撃隊・SGM(エスジーエム)が巨大戦闘機・ジャンボフェニックスで助っ人参戦して、以降はSGMの村上チーフがPATの隊長となることで、『ミラーマン』と『ジャンボーグA』は放送されたテレビ局を越えて同一世界の作品であることが確定して、当時の子供たちを、そして後年に本作を再視聴して当の描写を再発見した特撮マニアたちを大いに興奮させていたのだ!


 10数年前の『ウルトラマンガイア』(98年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/19981206/p1)でベテラン俳優の平泉成(ひらいずみ・せい)が怪獣攻撃隊・XIG(シグ)の高官・千葉参謀役でレギュラー出演した折りには、往年の『ファイヤーマン』の怪獣攻撃隊・SAF(エスエーエフ)に千葉隊員として出演したときと同じ名字であったことから、彼は千葉隊員の出世した姿なのでは? ならば『ウルトラマンガイア』は『ファイヤーマン』の世界の未来での出来事か? 共に地底で誕生した地球由来の超人だから設定も似ているし、ガイアとファイヤーマンは広い意味では同族か!? などと『ガイア』のメインスタッフからしたら不本意だろうけど(笑)、少なくない特撮マニア間で「そうであったらイイな」という世界観クロスオーバーの妄想を述べあって、マニアの集まりではそのネタで盛り上がることが往時はそれなりにあったものだ。
 特撮マニアや子供たちの大勢がホントウに観たいものとは、ゴジラウルトラマンとのファースト・コンタクトによる一回性の怪獣の「恐怖性」や、超人ヒーローの「神秘性」などではなく、そのような広大な「世界」のヨコ方向での拡がりと長大な「歴史」のタテ方向での拡がりの中で、連綿と繰り広げられる「叙事詩」的な善悪攻防の歴史年表的な「年代記」のようなものではないだろうか?


 1話完結ルーティンのVSOP(ベリー・スペシャル・ワン・パターン)によるストーリーで、マニアや子供たちをも飽きさせて早めに卒業させてしまう陳腐凡庸なものではなく、過剰にマニアックにはならずに子供たちにも理解ができる範疇に留めつつ、しかして適度にはマニアックでもあるような塩加減の、歴代シリーズとも設定面や物語面でのつながりや連続性もあるストーリー。
 そうしなければ、観客に過去のシリーズ作品への興味関心を抱かせずに終わってしまうだろうし、それではいっときだけの消費に終わる一見さんの観客ばかりにもなってしまう。長期にわたっておカネを支払って消費もしてくれるマニアやマニア予備軍ともなる子供たちのゲット。その上での一般層の観客を上積みしていくこと。そのへんを計算して作品を魅力的に構築していくことが非常に重要になってくるとも思うのだ。
――いやまぁ、ただ単にそれはおまえが昭和のウルトラ兄弟の再登場を将来にわたって観続けたいというエゴに過ぎない! とツッコミされたら否定はしないけど(笑)――


 これらは日本であれば、かつての『宇宙戦艦ヤマト』(74年~・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20101207/p1)や『機動戦士ガンダム』(79年~・https://katoku99.hatenablog.com/entry/19990801/p1)のような長命シリーズ。欧米であれば『スター・ウォーズ』(77年~・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200105/p1)や『スタートレック』(66年~)のような長命シリーズなどでも、すでにやってきたことでもある。


「先日談」や「後日談」に「番外編」。「歴史年表」や「並行宇宙」ですべての円谷特撮を連結して売ることで延命せよ!


 そして、われらが「ウルトラマン」シリーズでもすでに1970年代前半には往時の小学館学年誌や子供向け豆百科のウルトラ記事群のように、ウルトラ兄弟のウラ設定やウルトラ一族の誕生に端を発する27万年(!)にもわたる歴史年表がつくられてきた。
 1970年代中後盤には、第2期ウルトラシリーズ最終作『ウルトラマンレオ』終了直後の時代を舞台に大宇宙を股に掛けてウルトラ一族とジャッカル大魔王率いるジャッカル軍団とが大バトルを繰り広げる学年誌『小学三年生』連載マンガ『さよならウルトラ兄弟』(75年)――78年に『ザ・ウルトラマン』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20160914/p1)と改題して児童誌『コロコロコミック』草創期の号で再掲載して大ヒット。テレビアニメシリーズ『ザ☆ウルトラマン』(79年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/19971117/p1)とは別もの――や、児童誌『てれびくん』ではテレビシリーズ本編の各話の隙間を埋める位置付けの昭和ウルトラシリーズ各作のオリジナルエピソードの漫画なども連載されていた。


ウルトラセブンの若き日の母星での戦い
ウルトラマンタロウの母星での若き日々とその成長
ウルトラ兄弟の長男ゾフィーの幼き日々とその成長
ウルトラマンエイティが地球に派遣される直前の前日談
・ウルトラ一族による宇宙警備隊が設立される前の秘史
ウルトラの父が宇宙警備隊の大隊長に推挙された折りの、ウルトラの父の兄による反乱劇


 『コロコロコミック』ではウルトラシリーズの歴史年表の空白を埋めるようにオリジナルのマンガ作品が次々と描かれたり、カラーグラビア巻頭記事ではウラ設定も次々とつくられていったのだが、このような「前日談」や「後日談」や「番外編」で作品世界をふくらませていく手法とも相乗効果で、70年代末期の第3次怪獣ブームはおおいに盛り上がり、当時の子供たちもおおいに興奮していたのであった。
 これは後年の『機動戦士ガンダム』や『スター・ウォーズ』シリーズなどでも行われるようになっていく手法ともまったくの同一のものであるどころか、その先駆けですらあっただろう。


 しかし……。当時のオタク第1世代が特撮ジャンルに市民権を認めさせるにあたって採用した、リアルシミュレーション至上主義・原点回帰至上主義・怪獣恐怖論・ヒーローの神秘性などの要素の積極的な賞揚。ひるがえって云うならば、シリーズ化やファミリー化にオールスター化を全否定していく70年代末期~00年前後の風潮にあっては、先の「先日談」や「後日談」に「番外編」、ウルトラ一族のファミリー化やウルトラマン同士の人間ドラマなどは邪道・愚劣・堕落・劣化と見做されて、今で云う黒歴史(くろ・れきし)となっていったのだ……


 今こそ主張したいのだが、これらの「先日談」や「後日談」に「番外編」のマンガ作品なども、あからさまに矛盾があるものは論外にしても、大きな矛盾がないものであれば、ウルトラ一族27万年、宇宙警備隊が結成されてからでも3万年もの歴史年表に含まれる「正史」に含んで公認すべきではないだろうか? それはその方がスケール感も雄大となりワクワクもするからだ。
 それによって、年々歳々生まれてくる若いマニア諸氏の興味関心も惹起して、それらのマンガ書籍も定期的に再刊できれば、円谷プロにも若干の版権収入は入るし、マンガ家先生たちの老後の特別年金にもなるのである(笑)。


 実はこのような「前日談」や「後日談」に「番外編」のマンガ作品をウルトラシリーズの正史に組み込もうとした御仁もすでにいる。われわれ同様の特撮マニア上がりでプロの脚本家に登り詰めて、『ウルトラマンメビウス』のメインライターも務めた赤星政尚(あかほし・まさなお)だ(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20070506/p1)。


「僕はボガール編のあと、ジャッカル大魔王復活編でメロスも来るよっていうのをやりたかったんですけど、十何話目でウルトラマン3人も出てこなくていいですと云われて(笑)」

(「メイキング・オブ・メビウスワールドPart2」赤星政尚の発言・DVD『ウルトラマンメビウス』Volume10・バンダイビジュアル 07年4月25日発売・ASIN:B000MTF2MU


 氏は『メビウス』第1クール後半~第2クール前半の中核を占めた同作の青い2号ウルトラマンことウルトラマンヒカリhttps://katoku99.hatenablog.com/entry/20060910/p1)に続いて、マンガ『ザ・ウルトラマン』(『さよならウルトラ兄弟』)の宿敵・ジャッカル大魔王が復活して地球に再来襲! それを追って同作におけるオリジナルのウルトラマンにして全身を着脱自在な鎧(よろい!)で包んだ宇宙警備隊アンドロメダ星雲支部隊長・アンドロメロスも地球にやってくる! というジャッカル大魔王復活編を構想していたのだ!
 この提案は無情にも却下されてしまったそうだが――誰や、そんないらんことを云うた奴は!(笑)――、この構想が実現していれば、『ザ・ウルトラマン』はマンガ作品とはいえ『ウルトラマンレオ』の翌年度の西暦1975年に起きた史実として晴れて正史となっていたハズなのである! これは70年代中盤~80年前後に子供時代を送った世代人のほとんどの語られざる総意だったのではあるまいか!?
――ややこしいけど、ここで云うアンドロメロスは1981年から幼児誌『てれびくん』や学年誌でグラビア展開や各作家によるマンガが連載、83年には平日帯番組『アンドロメロス』として実写テレビシリーズ化もされて、映画『ウルトラマン物語(ストーリー)』(84年)や『ウルトラファイトビクトリー』に『ウルトラマンX(エックス)』(共に15年)などにも登場したジュダ・モルド・ギナ・グアらグア軍団と戦ったアンドロ警備隊のアンドロメロス隊長とは名のみ同じの別人のキャラクターです(汗)――


 平成ウルトラ3部作の第1作目『ウルトラマンティガ』(96年)から、いやビデオ販売作品『ウルトラマンG(グレート)』(90年)から『ウルトラマンマックス』(05年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20060311/p1)に至るまでの作品群は、一部の例外を除いて各作がそれぞれに独立した、ウルトラマンや巨大怪獣と初遭遇を果たした地球人類を描く作品として製作されてきた。
 これを一転して、昭和のウルトラシリーズの25年後の正当続編としてつくられたのが『ウルトラマンメビウス』(06年)であった。


 以降はこの路線が継承される。『ウルトラギャラクシー 大怪獣バトル』(07年)シリーズは昭和ウルトラ直系のその未来世界である。
 映画『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE』は、当時の最新で子供たちにも馴染みが深い『大怪獣バトル』と『ウルトラマンメビウス』の2大キャラクターを道案内として、往年の昭和のウルトラファミリー全員が登場し、昭和ウルトラとは並行宇宙の関係にあってその最終回では異次元世界へ旅立ったという設定を活かしてウルトラマンダイナを昭和ウルトラの宇宙へ越境・共演もさせて、最後に新ヒーロー・ウルトラマンゼロをその大活躍でお披露目するというかたちで、見事に数十年にもわたる広い世代のウルトラシリーズファンに訴求していくつくりができていた。


 そして、『ウルトラマンメビウス外伝 ゴーストリバース』は前述の『ウルトラ銀河伝説』の前日談であり、『ゼロVSダークロプスゼロ』もまた『ウルトラ銀河伝説』の後日談にして『ゼロ THE MOVIE』の前日談とすることでヒキをつくっている。
 公開が控えている『ゼロ THE MOVIE』では、ウルトラマンネクサスウルトラマン・ザ・ネクストの最終形態にして本来の姿でもあるウルトラマンノアの石像まで登場。ノアは並行宇宙を越境することが可能で、昭和ウルトラの宇宙と『ネクサス』の宇宙を股にかけた2万年以上にもわたる歴史設定が用意されており、過去の時代を舞台に昭和のウルトラ兄弟とも共闘する幼児誌でのカラーグラビア展開もあったそうなので、ならば「別の宇宙」にノアを崇める石像が残っていても不思議はないことになる!


 このノアのようなかたちで、歴代のウルトラシリーズや往年のウルトラ以外の円谷特撮とも、「クモの巣」や「ハチの巣」や「網の目」のごとく、ひとつの作品から「雪の結晶」のように拡がる無数の接点をつくって、広大な世界観にいざなったり、先輩ヒーローも助っ人参戦できる作品世界を構築して、特撮マニアや子供たちの興味関心を数十年にわたって惹起していくことこそが、ウルトラシリーズを末永く継続させていくにあたって肝要なのではあるまいか?


 今年2010年は『ウルトラマン80』30周年の年でもあった。ウルトラマンエイティこと矢的猛(やまと・たけし)を演じた長谷川初範(はせがわ・はつのり)も、ファミリー劇場での『80』宣伝番組『ウルトラマン80のすべて』やDVD-BOXの特典映像や関連イベントなどに出演してくれた。その延長線で『ゼロ THE MOVIE』スタッフもエイティの声を長谷川本人に担当させたのだろうが、実にうれしいサービスではある。
 しかし、さらなるぜいたくを云わせてもらえば、なぜついでに長谷川を取って付けたようなワンカットだけでもいいので「顔出し」で『ゼロ THE MOVIE』にも出演させて、エイティに変身して参戦させなかったのか? 今どきのグリーンバック撮影ならば強引にどこかのシーンにネジこむことも可能だったのではあるまいか?――もちろん『80』第4クールのユリアン編に登場したウルトラの女戦士・ユリアンこと星涼子を演じた萩原佐代子(はぎわら・さよこ)も同様だ――


 前作『ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE』では、変身こそしなかったものの、ウルトラマンコスモス(01年)こと杉浦太陽(すぎうら・たいよう)がムサシ隊員とは別人の並行宇宙のムサシ隊員役で1シーンだけ登場した。しかもあれは杉浦が円谷プロに直談判して、スタッフ側でも客寄せになると判断して実現したものだという――そして、さっそくスポーツ新聞でも杉浦出演決定が報道されていた(笑)――。
 「ウルトラマン」のような本格文芸映画・芸術映画ならぬ通俗娯楽活劇で、特にドラマ主導ではないオールスターお祭り映画では、イイ意味でそのようにブロック的にパーツを付けたり抜いたりしても成り立つハズのものだ。そして、長谷川が変身してくれることをマスコミに公表すれば、それでスポーツ新聞も宣伝してくれただろうし、朝のワイドショーの新聞ウォッチでも報道してくれるのであれば、どれだけのパブリシティ効果があったことか……


 2010年代のウルトラは、過去の歴代シリーズや傍流特撮ヒーローとのリンク、将来のシリーズへのヒキや新旧ヒーローのバトンタッチといった連続性、そして各種の有名人とのコラボなども含めたパブリシティ面をも考慮したメディアミックス展開の充実をおおいに熱望したいものである。


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2011年号』(10年12月30日発行)所収『ウルトラマンゼロVSダークロプスゼロ STAGEⅠ』評・後半より抜粋)


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ウルトラマンダイナ』(97年)総論 ~ダイナの赤い輝きに(長文)

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ウルトラマン80』(80年)総論 ~あのころ特撮評論は思春期(中二病・笑)だった!(長文)

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19971121/p1

ザ・ウルトラマン』(79年)総論 ~「ザ☆ウルトラマン」の時代(長文)

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19971117/p1

ウルトラマンタイガ最終回「バディ ステディ ゴー」 ~タロウの息子としての物語たりえたか!?

(2021年6月12日(土)UP)
『ウルトラマンタイガ』序盤総括 ~冒頭から2010年代7大ウルトラマンが宇宙バトルする神話的カッコよさ! 各話のドラマは重めだが豪快な特撮演出が一掃!
『ウルトラマンタイガ』中盤評 ~悩めるゲストのみならず、ボイスドラマでの超人たちのドラマこそ本編に導入すべきだ!
『ウルトラマンタイガ』『ウルトラギャラクシーファイト』『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』『仮面ライダー令和』 ~奇しくも「父超え」物語となった各作の成否は!?
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 ウルトラマンシリーズの正統番外編であるネット配信『ウルトラギャラクシーファイト』(19年)の第2弾『ウルトラギャラクシーファイト 大いなる陰謀』(20年)が、2021年5月26日(水)にBD&DVD発売記念! そして、同作にウルトラマンタイガも登場記念! とカコつけて、『ウルトラマンタイガ』最終回合評をUP!


ウルトラマンタイガ』最終回「バディ ステディ ゴー」 ~タロウの息子としての物語たりえたか!?

(文・久保達也)
(2020年1月12日脱稿)

*「最終章」ではなかった『ウルトラマンタイガ』の最終章(汗)


 仮面ライダースーパー戦隊もそうだが、近年のウルトラマンシリーズの「最終章」は、レギュラー悪との最終決戦に的をしぼった連続ものの形式で描かれることが常だったものだ。


・『ウルトラマンオーブ』(16年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20170415/p1)におけるライバル青年ジャグラス・ジャグラー
・『ウルトラマンジード』(17年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20170819/p1)におけるラスボス・ウルトラマンベリアル、そして彼と通じている壮年SF作家・伏井出ケイ(ふくいで・けい)=ストルム星人
・『ウルトラマンR/B(ルーブ)』(18年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20180826/p1)における大企業社長・愛染マコト(あいぜん・まこと)=ウルトラマンオーブダーク=精神寄生体チェレーザに、ナゾの美少女・美剣サキ(みつるぎ・さき)――彼女は厳密には「悪」ではなかったが――


 「昭和」や「平成」中盤までの時代に放映されたウルトラマンシリーズとは異なり、『ウルトラマンギンガ』(13年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200819/p1)以降のいわゆるニュージェネレーションウルトラマンシリーズでは、もはやレギュラーの敵キャラが登場するのが当たりまえとなっている。仮面ライダースーパー戦隊のように正義側のキャラと悪側のキャラの間にある深い因縁で結ばれた人物相関図を描く群像劇のクライマックスとしてもおおいに盛りあがり、視聴者につづきを早く観たくてしかたがないと思わせるこの手法。近年のウルトラマンシリーズがこの手法を採用したこと自体は正解だったと見てよいだろう。


 本作『ウルトラマンタイガ』(19年)でも、レギュラー悪としてナゾの青年・霧崎(きりさき)=ウルトラマントレギアが登場してきた。
 しかもトレギアは、『タイガ』で主役ヒーローとして活躍するウルトラマンであるウルトラマンタイガの父であるウルトラマンタロウのかつての友人として設定されていた。そして、第1話『バディゴー!』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190811/p1)の冒頭で描かれたように12年前に、


ウルトラマンギンガ
ウルトラマンビクトリー
ウルトラマンエックス
ウルトラマンオーブ
ウルトラマンジー
ウルトラマンロッソ
ウルトラマンブル


 といった7大ニュージェネレーションウルトラマンと宇宙空間で一大決戦を展開した!


 トレギアはウルトラ一族の故郷で自身の故郷でもあるM78星雲・光の国を攻撃しようとするも、


ウルトラマンタイガ
ウルトラマンタイタス
ウルトラマンフーマ


 といった、『タイガ』に登場する新米ウルトラマンたちも駆けつけてきてこれを阻止するが、圧倒的な猛威を見せつけるウルトラマントレギアによって3人のウルトラマンは宇宙の藻屑となって消え去ってしまう!
 タイガの父・タロウもまた、自身の全身を炎上させて自爆特攻する捨て身の荒技・ウルトラダイナマイト(!)でトレギアと相打ちになって姿を消してしまう!



 ウルトラマントレギアがこれだけの因縁も深い強敵として描かれた以上は、『タイガ』の終盤でも近年のウルトラマンシリーズの作劇を踏襲してタイガ・タイタス・フーマとトレギアの最終決戦を「最終章」として連続ものの形式で描くのだと、筆者は当然のように思っていたものだ。


 だが、『タイガ』終盤である第21話『地球の友人』~最終回(第25話)『バディ ステディ ゴー』は、そんな「最終章」「最終展開」とは呼びがたい構成となっていた。


 まず、第21話『地球の友人』は第18話『新しき世界のために』の続編的な内容であり、往年のウルトラシリーズでは初代ウルトラマンを倒したこともあるほどの最強怪獣である宇宙恐竜ゼットンの都市破壊で母親が重傷を負ったことで、宇宙人に復讐を果たそうとする青年をゲスト主役としていた。これは『ウルトラマンタロウ』(73年)第5話『親星子星一番星』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20080511/p1)でのタロウと大亀怪獣との戦いで両親を失った少女をゲスト主役にした名作回である第38話『ウルトラのクリスマスツリー』を彷彿とさせる趣向ではあった。


 ただ、そのゲスト青年が霧崎にそそのかされて復讐を果たそうとした相手は、宇宙恐竜ゼットンとは何の関係もないどころか、『ウルトラセブン』(67年)第48話~最終回(第49話)『史上最大の侵略』前後編では全人類を地底ミサイルで滅亡させようとした強敵宇宙人である幽霊怪人ゴース星人であった。
 『タイガ』第10話『夕映(ゆうば)えの戦士』に登場した暗殺宇宙人ナックル星人オデッサや第18話『新しき世界のために』に登場した触覚宇宙人バット星人のように、昭和のウルトラシリーズでは強豪宇宙人であったナックル星人やバット星人が人類に友好的で平和に暮らす宇宙人として、そのキャラを大幅に改変されての登場となっていた。


 いくら『ウルトラセブン』や『帰ってきたウルトラマン』(71年)などの昭和ウルトラシリーズとは別の並行宇宙にある別次元の地球が舞台である『タイガ』で、たしかにその宇宙人種族の全員が悪党ではない可能性もあるとはいえ、このようなエピソードにやや善良で同情の余地もあるゲストに割り振るのであれば、かつてのウルトラシリーズでは問答無用の凶悪宇宙人であったキャラクターを配するのではなく、それこそ先の『タロウ』第38話『ウルトラのクリスマスツリー』に登場した善良な宇宙人であるエフェクト宇宙人ミラクル星人などの方がよかったのではあるまいか?――当時の着ぐるみも現存しており、映画『ウルトラマンギンガ劇場スペシャル ウルトラ怪獣☆ヒーロー大乱戦!』(14年)でも再登場したのだし!――


 これではゴース星人ではなく、その着ぐるみを流用して別キャラクターとして登場した円谷特撮『戦え! マイティジャック』(68年・円谷プロ フジテレビ)第16話『来訪者を守りぬけ!』に登場した友好的な宇宙人・モノロン星人ではないか!?――つーか、それをねらったんだろうが、そんなネタは我々オッサン世代にしか通じないわい!(笑)――
 先に挙げた『セブン』最終回前後編でもウルトラセブンを絶体絶命の危機に追いやったハズの強敵怪獣である双頭怪獣パンドンに至っては、モノロン星人が飼っていた小さな猿が環境の激変で巨大化して大暴れした悲劇の怪獣・パッキーと同等の扱いであった(爆)。


*「王道」回のハズなのに『タイガ』の中では「異色作」!


 まぁ、上記の「変化球」のエピソードは『タイガ』としては「通常回」だったワケだが(苦笑)、つづく第22話『タッコングは謎だ』では、『帰ってきたウルトラマン』第1話『怪獣総進撃』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20230402/p1)~第2話『タッコング大逆襲』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20230409/p1)に登場したオイル怪獣タッコングが、それこそ『セブン』のカプセル怪獣のように「人類の味方」として、タイガとタッグを組んで『帰ってきた』第1話に登場した凶暴怪獣アーストロンの兄怪獣・凶猛怪獣ギーストロンと戦った。


――往年の初代アーストロンの着ぐるみを改造しての登場となった『帰ってきた』第8話『怪獣時限爆弾』の爆弾怪獣ゴーストロンはアーストロンの弟だったとウラ設定されていた。同じく近年のアーストロンの着ぐるみを改造したギーストロンを、筆者も特撮マニア諸氏らの見解と同様、アーストロンの兄だと解釈させてもらおう(笑)――


 『帰ってきた』の劇中音楽を大量に流用したり――しかもクライマックスバトルではかの名BGM『夕陽に立つウルトラマン』が流れた!――、『セブン』第42話『ノンマルトの使者』に登場したゲスト少年・真市(しんいち)みたいに、鼻の左に大きなほくろがあるボーダーシャツを着た少年・シンジ(笑)をゲスト主役にしたりと、かなりマニアックな演出が目立つ回ではあった。
 しかしながら、ギーストロンが両腕にある金色のトゲ状部分から発射した三日月(みかづき)状のカッターをタッコングが高速回転してカワしたり(!)、宙をジャンプしたタッコングがギーストロンにケリを入れたり、夕陽が水平線に沈んでいく海へとタッコングが帰還するラストシーンなどに、東宝の怪獣映画・昭和ゴジラシリーズ(54~74年)の後期作品群や、大映の怪獣映画・昭和ガメラシリーズ(65~80年・大映)のラストシーンなどを彷彿としてしまったのは、決して筆者ばかりではないだろう。


 球形のボディーの股下部分に小顔が突き出ている可愛らしくて親しみやすいデザインである怪獣タッコングは、その憎めないルックス的にも「悪の怪獣」としてよりも「正義の怪獣」としての配役の方が望ましいとしての処置だろう。たしかに『タイガ』としては「異色作」ではあるのだが、ゴジラガメラといった「正義の怪獣」「ヒーロー怪獣」に声援を送った世代としては、タッコングのヒロイックな描写も広い意味での「王道」ではあるのだろうし、本来のターゲットである現代の子供たちにも受け入れられるように思えてならないのだ――ただし、この回ではレギュラー悪のハズである霧崎=トレギアが登場する余地がなくなってしまっていたが(汗)――。


 そして、第23話『激突! ウルトラビッグマッチ』には、第15話『キミの声が聞こえない』に登場した頭脳宇宙人チブル星人マブゼが、凶悪宇宙人サラブ星人・反重力宇宙人ゴドラ星人・高速宇宙人スラン星人とともに再登場。
 第15話では、『ウルトラマンジード』第1話(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20170819/p1)ほかに登場した、同作の宿敵であるSF作家・伏井出ケイが悪のウルトラマンであるベリアルの力と、どくろ怪獣レッドキングと古代怪獣ゴモラの能力を秘めた携帯型の怪獣カプセル2種を起動して変身していた、いわゆる合体怪獣であるベリアル合成獣スカルゴモラの着ぐるみの使い回し(笑)だった培養(ばいよう)合成獣スカルゴモラをつくる際に使用した「ベリアル因子(いんし)」を再利用して、チブル星人がニセウルトラマンベリアル(!)を誕生させる! そして、今は亡き本来のベリアルの長年の宿敵であったウルトラマンゼロ、そしてトレギアを巻きこむかたちで、市街地をリングとしたタイガ&ゼロ VS トレギア&ニセベリアルのタッグマッチが繰りひろげられた!


 ニセベリアルはオリジナルとの差別化として手のツメが黄色く塗装されていたが、これは元祖『仮面ライダー』(71年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20140407/p1)終盤の白眉(はくび)となった第92話~第94話=ニセ仮面ライダー編3部作に登場した、ショッカーライダー1号から6号の手袋とブーツが黄色かったのを意識したものか?(笑)


 ゴドラ星人がベリアルのことを


「あいつは(ウルトラマンジードに負けたハズでは?」


と語るのは、ゴドラ星人(の同族)が『ウルトラマンジード』第16話『世界の終わりがはじまる日』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200523/p1)にも登場していたこともあり、『タイガ』と『ジード』が異なる並行宇宙を舞台としていても、近年のウルトラシリーズに登場する宇宙人たちは拳銃の連射で空間の一部を切り取って別の空間につなげることができたりと、並行宇宙間での越境が技術的にも容易になっているようなので(笑)、広い意味では歴代シリーズがつながった世界であることを表現もできており、「ハードSF」ならぬ「ソフトSF」(笑)としてワクワクさせるには絶大な効果を上げていた。


 その『ジード』ではレギュラーのサブヒーローであったゼロがニセベリアルを指さして、


ジードがせっかく成仏させたっていうのに……」


と語るのもまたしかり。タイガが自身と合体している主人公青年である工藤ヒロユキ(くどう・ひろゆき)に、ベリアルを「光の国の大罪人」としてやや説明的(笑)に紹介するのは、映画『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE(ザ・ムービー)』(09年・ワーナー・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20101224/p1)にて父であるウルトラマンタロウがベリアルと直接対決したことから、タイガにとっても因縁深い敵であることを表現した実に秀逸(しゅういつ)な描写だろう。
 そればかりか、ニセタイガに変身しようとしたザラブ星人をゴドラ星人が「光の国の連中に目をつけられる」(!)と制止する場面は、たとえ「昭和」のウルトラマンの世界とは別次元の並行宇宙ではあったとしても、今や『タイガ』の並行宇宙でも「昭和」の「光の国」出身のウルトラマンたちの存在が宇宙人たちに知られていることが明確にされたことになるのだ!


 また、先の第15話では苦労して誕生させたスカルゴモラをトレギアに瞬殺されたにもかかわらず、そのままチブル星人が退場してしまったことには違和感が残ったが、今回はニセベリアルを「でくのぼう」と称したトレギアに、再登場したチブル星人が「ワタシの芸術を愚弄(ぐろう)するか!?」と怒り心頭となって、配下の宇宙人たちにさらにベリアル因子を注入させた描写は、知能指数5万(笑)で「宇宙最高の頭脳」を自称するほどにプライドが高いチブル星人でも、知識はあっても知性はない(笑)、知識はあっても人格や徳性面では劣ったキャラ(笑)であることを的確に描けていたかと思えるのだ。


 さらに、タイガとニセベリアルが戦う最中にトレギアがビルに腰かけて高見の見物を決めこんだり、乱入したかと思えば「ホラよ」と両腕をうしろに組みながらウルトラマンフーマの足を蹴って転倒させたり、


「こんにちは、みなさん。そして、さようなら……」


と人間大サイズの侵略宇宙人たちが潜伏している部屋を覗(のぞ)きこんで――室内からの主観で窓越しにトレギアの巨大な顔面をとらえたカットが実に効果的だった――、そこに突進してきたニセベリアルをトレギアがかわしたことでそのビルがガラガラと崩れていくや、トレギアが軽やかにスキップして去っていく(笑)といった一連の描写は、トレギアをいわゆる「ネタキャラ」として存分に描きつくした演出となっていた。


 地球でひっそりと暮らしている宇宙人たちの人間態をゲスト主役とした話が「通常回」(汗)であった『タイガ』では、着ぐるみのままの宇宙人キャラを多数登場させてシーソーバトルに徹したこんな「王道」回が「異色作」に見えてしまったが(苦笑)、「子供番組」で「重い話」をひんぱんに描くのなら、視聴者を逃さないためにもこうした回も合間合間に挟むべきではなかったか?


*1話完結形式の弊害。そして「いきなり最終回」!(笑)


 「通常回」である第21話、「異色作」である第22話、「王道回」である第23話と、『タイガ』の終盤は良く云うならばバラエティに富む構成で、悪く云うならば最後の最後まで「昭和」のウルトラマンさながらの「1話完結形式」であり、視聴者の興味を完結まで持続させるにはどうなのか? と思えたものだったが、残るはもう第24話『私はピリカ』~最終回『バディ ステディ ゴー』の前後編だけである。
 かつて宝島社が名作マンガの最終回だけ(!)を集めて発行していたオムニバス本のタイトルではないが、連続ものの様相を呈していた近年のウルトラマンシリーズの終盤とは異なり、『タイガ』はまさに「いきなり最終回」となっていた(笑)。


 それにしても、主人公のヒロユキが所属している民間の警備会社・E.G.I.S.(イージス)でオペレーターを務めていた娘・旭川ピリカ(あさひかわ・ぴりか)までもが、「いきなりアンドロイド」(爆)だったとして語られてしまうとは……


 映画『ゴジラモスラキングギドラ 大怪獣総攻撃』(01年・東宝)の主人公・立花由里(たちばな・ゆり)役や、映画『特捜戦隊デカレンジャー THE MOVIE フルブラスト・アクション』(04年・東映http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20041106/p1)のレスリー星人マリー・ゴールド=デカゴールド役ですでに特撮出演歴のあるグラビアアイドル上がりの女優・新山千春(にいやま・ちはる)が演じたE.G.I.S.の女社長・佐々木カナは第24話で、ピリカの正体が実は7年前にカナが道端でひろったアンドロイドであると、E.G.I.S.の隊員ですでにその正体が地球人ではなく宇宙人として描かれてきた青年・宗谷ホマレ(そうや・ほまれ)とヒロユキに唐突に語ったのだった。
 これは『ウルトラマンA(エース)』(72年)第28話『さようなら夕子よ 月の妹よ』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20061111/p1)で、それまで主人公の北斗星司(ほくと・せいじ)といっしょにウルトラマンエースに合体変身していた南夕子が突然、月星人の正体を明かして退場したのを彷彿とさせたほどの唐突さであった(笑)。


 いや、彼女の正体が実はアンドロイドだったなんて、それまでのシリーズで何の伏線もなかったよね? 『A』の場合は種々の「大人の事情」で夕子を退場させねばならなくなったのだが、そんな「昭和」の時代ならばともかく、今の時代にこんな荒っぽい展開は通常ありえないのではあるまいか?


 これについては、カナ社長とホマレとヒロユキがカップラーメンの銘柄(めいがら)をめぐってジャンケンで争う場面にピリカだけがいなかったなど、ピリカだけが食事をする描写がなかったために、それがアンドロイドとしての「伏線」だったとする意見がネットで見られたものだけど、筆者のみならずほとんど全員の視聴者や特撮マニアたちが気づかないような「伏線」ではそもそも「伏線」としては機能していないし(笑)、いくらなんでもそれはあまりに好意的に解釈しすぎなのではあるまいか?
 たとえばもっとあからさまに、ヒロユキとホマレが人間大サイズの宇宙人たちに囲まれてピンチに陥(おちい)る中に乱入してきたピリカが突然、常人とは思えない怪力を発揮して宇宙人たちを全滅させるさまや、ピリカには子供時代の記憶がなくてそのことを自分でも悩んでいたりするようなさまをベタでもシリーズ中盤で描いたりして、「ピリカの正体とはいったい?……」といった、視聴者の興味関心を持続させる手法くらいは取るべきだったと思えるのだ。


 前作『ウルトラマンR/B』では、主人公兄弟の湊カツミ(みなと・かつみ)=ウルトラマンロッソと湊イサミ=ウルトラマンブルの妹として描かれてきた女子高生・湊アサヒ(最終的にはウルトラウーマングリージョに変身!)が、シリーズ中盤で家族アルバムの写真や思い出の品が何ひとつ存在しないと判明したことで、アサヒの正体をめぐってネット上では特撮マニアたちがさまざまな憶測が飛び交わせる二次的な楽しみ方もできるつくりになっていた。
 これと並行して兄妹(きょうだい)たちの母親である湊ミオ(演じたのは元グラビアアイドルである真鍋かをり!)が行方不明となっていることのナゾ解きなども展開されたことで、アサヒは実はミオが変身した姿ではないのか? といった憶測なども、筆者も含めた当時のマニアたちが下馬評を楽しく展開していたものだ。
 実際にはその予測は見事にハズれてミオとアサヒは別人だったワケだが(笑)、たしかに前作ともネタがカブってしまうとはいえ、そしていくら1話完結形式とはいえ、いや、だからこそ、せめてこうしたナゾ解き展開で視聴者の興味を持続させようとしなかったことは、やはり今どきの21世紀の作品としてはいかがなものだっただろうか?


 第17話『ガーディアンエンジェル』のラストにて霧崎がカナ社長を狙撃したのを皮切りに――ゲスト主役の宇宙人・ミードが身代わりとなってくれることで難を逃れたが――、ホマレとピリカが順に霧崎の襲撃を受けていく…… これらはヒロユキを精神的に動揺させるためにあえて周囲の大切な人物たちをねらったのだと霧崎自身が語ってもおり、霧崎=トレギアが最終回前後編で宇宙から呼び寄せた宇宙爆蝕(ばくしょく)怪獣ウーラーの活動を阻止する重大な使命を実は担(にな)っていたピリカのことが邪魔だからとして襲ったワケではなかったのであった。


 シリーズ途中からでもトレギアがピリカの正体に気づいたりするようなかたちで接点をつくることもなく、むしろトレギアの陰謀阻止とはまったくの無関係なものとしてピリカが抱えていた怪獣ウーラー撃滅の使命が設定されていたために、ピリカ暗殺未遂劇や第24話のピリカの正体明かしがより唐突に感じられてしまうのである……
 強(し)いて云うならば、霧崎がピリカを襲おうとした際に、ウーラーが地球に迫(せま)ってくるビジョンをピリカから感じとった霧崎がほくそ笑(え)んでいる描写があって、ピリカとウーラーにはなんらかの関係があるとは示されてはいたのだが、彼女の正体が宇宙人製造のアンドロイドである伏線としては説明不足にすぎるというものだろう。


*トレギア&ヴィラン・ギルドの動機が「理由なき反抗」でイイのか!?


 最終回前後編ではウルトラマンタイガ・ウルトラマンタイタス・ウルトラマンフーマ VS ウルトラマントレギアの最終決戦よりも、単身でウーラーの阻止に向かったピリカをE.G.I.S.のメンバー、そしてピリカの勇気ある行動に心を動かされたサーベル暴君マグマ星人と宇宙商人マーキンド星人の共同による救出劇に主眼が置かれた印象が強かった。
 一見は感動的な展開に見えるのだが、このようなストーリー展開にする予定があったのであれば、マグマ星人とマーキンド星人を毎回のレギュラーとまではいかなくとも、数話に一度くらいは憎めない宇宙人として登場させることで、彼ら侵略宇宙人たちの地球人に対する心の変遷(へんせん)劇なども描くべきであったと思えてしまい、やはり唐突感は否(いな)めなかったものである。


 彼らはその最後の行動動機を「怪獣兵器を売る商売がしやすかった地球を守るためだ」などと偽悪的にウソぶいて主張していたが(笑)、それまでにもマグマ星人は第1話『バディゴー!』、マーキンド星人も第1話と第2話『トレギア』に登場しただけだったし、そもそもの彼らの「商売」自体がシリーズ全編を通して描かれてもこなかったし、彼らの商売を邪魔したトレギアに対して一泡(ひとあわ)吹かせてやるといった発言すらもがなかったのであった(汗)。
 本作『タイガ』における侵略宇宙人たちの犯罪組織として設定されていた「ヴィラン・ギルド」だが、多種の宇宙人が単発的にしか登場しなかった。最終回で共闘するのであればそこから逆算して、少なくともマグマ星人とマーキンド星人は、たとえば時にはタイガたちと共闘して彼らの商売の邪魔になるトレギアを攻撃したり、その逆にトレギアと同盟してタイガたちを襲ってくるといった、敵が味方に味方が敵にとその立ち位置をシャッフルさせて、タイガ・トレギア・ヴィラン・ギルドの三つ巴(みつどもえ)の戦いを描いていくことを、一方のタテ糸にしておいた方がよかったのではなかろうか?――『ウルトラマンオーブ』に登場した第3勢力であったハズなのに、数名(笑)しか構成員が存在しなかった悪の宇宙人軍団である「惑星侵略連合」も、合計3話分程度しか登場しなかったので(汗)「ヴィラン・ギルド」と同じような作劇上の問題を抱えていた――


 本作『タイガ』のコレクション玩具でもある「怪獣の力を秘めたリングタイプのアクセサリー」をトレギアから奪ってオークションにかけてしまい、怒り狂ったトレギアとヴィラン・ギルドとの壮絶なお宝争奪戦が展開する!――それこそこの作品世界に登場する宇宙人たちには高値で売れるだろう(笑)―― といったような、「悪」同士のコミカルな対立劇などもやるべきではなかったか?
 最終回では「宇宙人(=外国人のメタファー・汗)を地球から追い出せ!」と叫んでいた排外主義的なデモ隊のメンバーを、よりにもよってその宇宙人たちである第18話で古い木造アパートのひとつ屋根の下でバット星人と暮らしていた変身怪人ピット星人がラスボス怪獣ウーラーの攻撃による都市破壊から救う描写があった――ピット星人は第18話に登場した人間態の「やさぐれ女」(笑)と同じく黒の皮ジャンにジーンズを着用することで同一個体であることを表現していた――。
 それ自体はとても良いシーンなのだが、しかし同時に、「ヴィラン・ギルド」の宇宙人の誰かも、ここで助っ人参戦・人助けに登場させてもよかったとも思うのだ。



 そのトレギア=霧崎が、第24話で自身には「何の目的もない……」などとニヒルなことをピリカに語っていたのに至っては、さすがに少々首をヒネらざるを得なかった。そこはベタでも旧友・ウルトラマンタロウに対する妬みや恨みや憎しみでなければ、『タイガ』という作品の基本設定的にもダメだろう!
 おそらく一種の意外性をねらって、タロウとその息子であるタイガへの単なる「憎しみ」ではなく、もっと「虚無的」「ニヒリズム」なところに行動動機を設定しようとしたのだろうが、それが成功していたとはとうてい思えない。
 タロウの古い友人だと設定されても、トレギアがいったいタロウとの間に何があって、なぜに闇堕(やみお)ちしてしまったかについてが結局、最後まで語られなかったこともあってか、これまでタイガやヴィラン・ギルドに対して散々やらかしてきたイヤがらせの類いは、その行動動機を裏づけるものが何もないものに堕(だ)してしまったようにも思えてならない。


 こうなると、『タイガ』はその「シリーズ構成」が最後の最後で破綻(はたん)してしまったというよりかは、「1話完結形式」として個々のドラマ性を重視しすぎたあまりに、シリーズとしての全体的な流れを考えないままで突き進んでしまったために、しかもその最終展開や一応のラスボスとして君臨してきたトレギアのキャラに関しては、その最後があまり盛り上がらないものになってしまったのではなかろうか?
 どんな作品でもスタッフは良かれと想って作品をつくっている以上は失礼な発言になってしまうのだが、『タイガ』がこうなってしまったA級戦犯は、各所でのインタビュー記事などで推測はつく。


 ウルトラシリーズ番外編シリーズである『ウルトラギャラクシー大怪獣バトル』(07年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20080427/p1)~『ウルトラマン列伝』(11年)~『ウルトラマンX(エックス)』(15年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200405/p1)までのメインプロデューサーを務めたのは、『列伝ブログ』なども執筆していたバンダイから出向してきたプロデューサー・岡崎聖(おかざき・ひじり)であって、テレビシリーズにおけるウルトラマンエックスの最終形態のアーマー(ヨロイ)は、アーマーを着用したエックスの着ぐるみをチェックしている際に、それまでに登場してきたあまたの形態のアーマーの各所を合体させた最強アーマーを思いついて急遽それを実現させたという、実にチャイルディッシュな発想に基づいた逸話(いつわ)に象徴されるように、ウルトラマンシリーズを21世紀の子供たちにも合うようなエンタメ性や玩具性を高める方向性での番組づくりを進めてきた御仁であった。
 その次の『ウルトラマンオーブ』(16年)・『ウルトラマンジード』(17年)・『ウルトラマンR/B』(18年)では、『ジード』のメインライターに人気作家の乙一(おついち)を連れてきた製作畑上がりの鶴田幸伸が主導権を握っていたのであろうことが読み取れる。
 しかし、本作『タイガ』では円谷側の筆頭プロデューサーであり、かの実相寺昭雄監督の製作プロダクションである株式会社コダイ出身で、平成ウルトラ3部作ではシャープでクールな本編演出や空中戦特撮を披露してきた北浦嗣巳(きたうら・つぐみ)が主導権を握っていたようであり、氏は「昭和の時代のような1話完結形式のウルトラシリーズに戻したい」という主旨の発言を各所でしてきた御仁でもあったのだ。そんな氏だから、おそらくタイガがタロウの息子であるという設定にも関心はさほどなく、そこの設定を掘り下げてタイガ自身のドラマも構築していくという発想もなかったのだろう(汗)。


 ……ウ~ン。1話完結スタイルのテレビシリーズに、今の時代の子供たちや特撮マニアたちが喰いつくと想っているあたりでそうとうに絶望的に感覚が古いような(汗)。というか、今から40年も前の特撮マニアたちも、特撮雑誌『宇宙船』の創刊号(80年)などで「当時の『宇宙戦艦ヤマト』(74年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20101207/p1)や『機動戦士ガンダム』(79年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19990801/p1)などの人気テレビアニメが続きものとしての連続ストーリー性を獲得して年長視聴者の鑑賞にも堪えうるものをつくっているのと比較して、当時のスーパー戦隊シリーズなどのテレビ特撮の方は1話完結型式の『VSOP(ベリー・スペシャル・ワン・パターン)』になっていて観るに堪えない……(大意)」などといった主旨の批判をしていた時代があったというのに……(汗)


 筆頭プロデューサー側がそういう意識でも、いやだからこそ撮影現場ではそれに抵抗して、むしろ良い意味での「愉快犯」としてトレギア=霧崎を描写・演出していけばよかったのでは? という想いもある。


 『タイガ』放映開始の数ヶ月前に公開された『劇場版ウルトラマンR/B セレクト! 絆のクリスタル』(19年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190407/p1)では、主に主役ではない2号ウルトラマンや悪のウルトラマンを演じてきた名スーツアクター・石川真之介による、他人を小バカにしたようなピエロ的に小気味よく軽やかにしなやかな仕草やアクションをしてみせる演技と、声優・内田雄馬によるイケメン悪役なボイスによって、「悪」ではあっても過剰な重たさはないようなキャラクター造型が、同作で初登場したウルトラマントレギアにはなされていた。
 しかし、『タイガ』では第1話~第2話のパイロット編を担当してメイン監督ともなった市野龍一監督による、トレギアの人間態である霧崎役の役者さんに対するディレクション・演技付けの方向性にはやや問題があったのではなかろうか? その正体であるトレギアとは異なり霧崎は、その出で立ちがモノトーンのピエロ的な扮装でも直立不動のままで静的に佇んでいるだけであり、道化(どうけ)て狂ってもいるような軽妙なお芝居を与えられてはいなかったのだ。そのへんでジャグラー・伏井出ケイ・愛染マコト・美剣サキちゃんといった、若い特撮オタたちいわく「円谷のヤベーやつ」(笑)といった強烈なインパクトが出せなかったのも事実ではなかろうか? まぁ、このへんは役者さんの一存でできるお芝居ではないので、メイン監督がヘタに前作までの差別化としてそのように撮影現場で静的にディレクションしてしまったことにも責任があったのではないのかとも推測するのだ。


 脚本内容が仮にまったくの同一であったとしても、霧崎役の役者さんにジャグラーや愛染マコト社長のようにテンション高くてフザケまくったお芝居をさせてあげていれば、本作『タイガ』の作風はもっと明るく弾(はじ)けて、ひいてはバランスも取れて、対比の妙で「お気の毒なゲスト宇宙人」たちの人間ドラマも際立って、「明るさ」と「暗さ」の行き来でメリハリもついたのではなかろうか?――完成作品としての『タイガ』については、近年のウルトラシリーズとしてはやや「暗さ」の方が勝ってしまった作品に仕上がった……という結論が、衆目の一致するところでもあるだろう――



 それでも『タイガ』で最後まで一貫していたのは、最終回に登場した宇宙の星々を食い尽くすウーラーまでもが、ピリカが語ったように「おなかが空いてるだけ」の「お気の毒な宇宙人」ならぬ「お気の毒な怪獣」として描かれたことだった(笑)。
 先述したジャグラス・ジャグラーや伏井出ケイ、愛染マコトらがたとえ「ネタキャラ」ではあってもその行動には「悪」なりの明確な動機があったのに対して、そういう動機が実は「何もなかった」とされてしまった以上は(汗)、トレギアがもはや憎々しげな倒してしまっても構わない、むしろ倒してしまうことで爽快感も得られる「大悪党」としての精彩を欠いてしまっていただけに、これでは「変身ヒーロー作品」のラストとして本来ならば最大限に描かれてしかるべき「勧善懲悪のカタルシス」が得られるハズもないだろう。


 それにしても、『ウルトラマンギンガ』のラスボスである悪のヒーロー・ダークルギエルから『ウルトラマンR/B』のラスボス怪獣であるルーゴサイトに至るまで、ニュージェネレーションウルトラマンシリーズの最終回に登場した怪獣たちはバンダイのソフビ人形『ウルトラ怪獣シリーズ』ですべて商品化が先行して登場したのにもかかわらず、『タイガ』の最終回に登場したウーラーだけは発売されることがなかった。
 玩具会社・バンダイ側の意向や販売スケジュールが先行して、子供たちに売れそうな怪獣デザインも昭和の時代とは異なり脚本完成以前に決定しているのだろうと思われる近年のウルトラマンシリーズとしては珍しい処置なのだが、そういう意味ではバンダイ側の『タイガ』担当者も悪い意味での右から左へと流していくだけのサラリーマン仕事で、最終回の怪獣のデザインなどにも強く関与してこなかったのだとすれば、この場合はその処置が「凶」と出てしまったのではなかろうか?(汗) 製作現場のトップたちにエンタメ的なセンスがなさそうならば、玩具会社の担当者の方でエンタメ性の増強のためにシャシャリ出てきて、ウチで販売するこのラスボスにふさわしい怪獣を大活躍させるようなストーリーをつくりなさい! なぞと介入をするべきだったのだ!(笑)


*テーマ・ドラマ・人間描写の方が優先か? ウルトラマンたちの描写の方が優先か?


 全世界的に自国第一主義が蔓延し、移民排斥の動きが強まる中で、日本も決して例外ではなく、悪化する一方の日韓関係や中国で新型コロナウィルスが発生した件に便乗した、韓国人や中国人に対するヘイトをはじめとする民族差別が、ネトウヨだけならまだしも出版物や一部のマスコミにまで横行している始末である(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210213/p1)。
 そんな惨状の中で、宇宙人たちがひそかに暮らしている並行宇宙の地球を舞台に、カナ女社長=地球人、ヒロユキ=ウルトラマン、ホマレ=宇宙人、ピリカ=アンドロイドで結成されたE.G.I.S.の活躍を描くことで、人種を超越したさまざまな生命体の共存を訴えていた『タイガ』の志自体は、おおいに評価してもよいだろう。ウーラーを一見、醜悪に見える怪獣としてデザイン・造形して、最後にはウーラーとも共存へと至るのも、そのテーマとも整合するものとして好意的に解釈してもよいかもしれない。


 ただし、『タイガ』よりも2ヶ月遅れで放映が開始されて、AI(エーアイ)=人工知能を備えたヒューマノイド型ロボット=ヒューマギアと人類との共存を訴える『仮面ライダーゼロワン』(19年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200517/p1)と比べると、実は同じような異種族同士の共存テーマをやっているのにもかかわらず、そのテイストはあまりにも異なっている。
 アメリカで同時多発テロが起きた2001年に放映されて、『タイガ』と同様に怪獣と人類との共存を訴えていた『ウルトラマンコスモス』(01年)の商業成績はイマイチに終わったが、テロを口実にイラクを武力攻撃したアメリカが主張した「正義」に異を唱えた東映のプロデューサー・白倉伸一郎が、多くの「正義」をぶつけることで自分とは異なる意見の持ち主をどう対処するのか? を世に問いかけた『仮面ライダー龍騎(りゅうき)』(02年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20021109/p1)は空前の大ヒットを飛ばすことになった。
 地球環境の保護を訴えるために『ウルトラマンガイア』(98年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19981206/p1)では2号ウルトラマン・藤宮博也=ウルトラマンアグルが「地球環境を汚している人類」に対する批判を再三口にしていたが、『炎神(エンジン)戦隊ゴーオンジャー』(08年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20080824/p1)では敵組織の蛮機族(ばんきぞく)・ガイアークが「地球環境を汚している作戦」を深刻にではなくあくまでもコミカルに描きつつ、ゴーオンジャーが動物と乗りものの特性を兼ね備えた異種族でもある機械生命体・炎神たちともカッコよく共闘しているさまが描かれていった。
 同じような環境テーマを描くにせよ、深刻な「人間ドラマ」主導によってテーマを陰気に強調してしまうのか? それともあくまで悪が暴れてそれを倒すヒーローを描くための背景・舞台装置としてとどめるか? 時代は移り変わっても、円谷プロはあいかわらず前者であって、東映は後者であるように思える。


ウルトラマンゼロ客演・先輩ヒーロー客演・追加ヒーロー登場編の突出した再生回数でも明白!


 たとえ「重い話」が多かろうが、3大新ヒーローであるウルトラマンタイガ・ウルトラマンタイタス・ウルトラマンフーマの初登場時のバトル演出のカッコよさや、彼らが交わすコミカルなやりとり、戦闘のプロフェッショナル集団ではない警備会社にすぎないE.G.I.S.が人間大サイズの敵宇宙人たちと頻繁に格闘してみせたりと、『タイガ』は序盤の時点では「社会派テーマ」が明朗な「アクション」といい感じに中和できているとたしかに感じられたものだった。


 だが、中盤を経てもなお「お気の毒な宇宙人」をゲスト主役にした「重い話」ばかりがあまりにもつづいたことに、さすがに飽きてきてしまった視聴者も多かったのではなかろうか?
 本誌に掲載された関東地方での視聴率表を参照すると、最高だったのは第5話『きみの決める未来』と第9話『それぞれの今』が1.1%。最低が第13話『イージス超会議』と第14話『護(まも)る力と闘う力』の0.6%だったが、その差はわずか0.5%(汗)では正直指標としてはほとんど意味をなさない。悪い意味で安定していたと解釈すべきところだろう。関西に至っては最高が0.6%、最低が0.1%であり、こうなるともう最高視聴率と最低視聴率も誤差の範囲内だろう(苦笑)。
 ただ、中部地区では最高が第1話と第2話の1.8%、最低が関西の最高よりも高い(笑)第9話『それぞれの今』と第19話『電撃を跳(は)ね返せ!』の0.7%であり、少なくとも1980年前後のころから関東や関西に比べて変身ヒーロー作品の視聴率が高くなる傾向が強かったことを思えば、いまだに『ウルトラマン』が受け入れられやすい土地柄なのかもしれない。


 旧態依然の集計方法が現在の時代にはそぐわないかと思える視聴率よりも、個人的には動画無料配信サイト・YouTube(ユーチューブ)の再生回数の方が、番組の人気がストレートに表示される指標だと最近では考えている。もちろんメインターゲットの子供たちが占める割合は極少だろうし、リアルタイムでの視聴にこだわったり、しっかりと毎週タイマー録画して、高額の映像ソフトを購入するような熱心なマニアたちの数もそこにはさして含まれていないかとは思える。むしろ週末に早起きして観るのもタイマー録画も面倒だ、映像ソフトなぞは買う気にもならない、でもちょっとは気になる……といったマニアの中での「ライト層」の若い世代こそが、YouTubeで現行番組を視聴する場合が多いのではなかろうか?


 『タイガ』の場合、第1話の再生回数は1週間で100万回を超えていたのだが、その後は右肩下がりをつづけて、中盤以降は30万回を超えるのがやっとという状況がつづいていた――第18話に至っては30万すら下回る29万回だった(汗)――。
 『仮面ライダー電王』(07年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20080217/p1)や『仮面ライダーW(ダブル)』(09年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100809/p1)、『仮面ライダーOOO(オーズ)』(10年)といった10年も前の平成仮面ライダー作品が毎回50万回~60万回だったのだから、現行作品の『タイガ』がそんな旧作の半分程度の再生回数しか稼げなかったあたりで、現在のウルトラマンの人気の低さが如実(にょじつ)に表れているといえるだろう――2019年12月から配信中の『仮面ライダーフォーゼ』(11年)に至っては、毎回「急上昇ランキング」の上位に入るほどの高い人気を誇っている!――。


 だが、2019年でデビュー10周年を飾って、いまだに根強い人気を誇っているウルトラマンゼロと、その宿敵であるウルトラマンベリアルのニセもの=ニセウルトラマンベリアルがゲスト出演した『タイガ』第23話の再生回数は、1週間で通常回の倍以上となる70万回にまで達していたのだ!――そして、その翌週に配信された第24話=「最終回前後編の前編」は1週間で35万回と、またいつもどおりに戻ってしまったのであった――


・高速道路を走っている自動車のミニチュアからの主観(!)で白昼の都会に現れたニセベリアルをとらえて、次の瞬間にニセベリアルが高速道路を破壊したり!
・ニセベリアルが右手のツメから紫色のブーメランを発射して、空中のウルトラマンタイガを撃ち落としたり!
 ウルトラマンタイタスとニセベリアルが拳法アニメ『北斗の拳』(84年・東映動画→現東映アニメーション フジテレビ)のごとく、すばやい高速の動きで両手のこぶしを打ちあったり!
ウルトラマンフーマが放った手裏剣(しゅりけん)を、ニセベリアルが持ちあげたビルでかわしたり!
・宙に浮かぶオーロラのシャワーの中から、ウルトラマンゼロが腕組みして登場したり!
・タイガ&ゼロ、そしてトレギア&ニセベリアルが発射した必殺光線がX(エックス)字状に交錯するさまを、上空から俯瞰(ふかん)してとらえたり!
・ゼロの父であるウルトラセブンウルトラマンジャックにウルトラブレスレットを与えたように、ゼロが「オレの力をこめたブレスレット」をタイガに与えたり!


 現在の若いマニア層も、「変身ヒーロー番組」「特撮番組」に求めているのは、やはりこのようなイベント性豊かな娯楽活劇編ではないのだろうか?


 ちなみに、昭和の時代に高い人気を誇った『仮面ライダーV3(ブイ・スリー)』(73年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20140901/p1)や『仮面ライダーX(エックス)』(74年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20141005/p1)、『仮面ライダーアマゾン』(74年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20141101/p1)などの再生回数は、先述した平成ライダー作品群からゼロを取った5万回前後にとどまっている(汗)。しかし、昭和の4号ライダーことライダーマンが初登場する『V3』第43話『敵か味方か? 謎のライダーマン』は1週間で20万回! 映画『五人ライダー対キングダーク』(74年・東映)と連動してその当時までの昭和ライダーの総集編として製作された『X』第27話『特集 5人ライダー勢ぞろい!!』は11万回! 仮面ライダー2号仮面ライダーV3がゲストで登場した『X』第33話『恐怖! キングダークの復しゅう!!』は9万回に達していたのだ!
 これは昭和の作品群にはあまり興味がないかと思われる若い層ですらもが、新ヒーローの登場や新旧ヒーローの競演・大集合が描かれた回だけはついつい観てしまうという事実を裏づける現象ではあるだろう。


 なので、『タイガ』の最終回におけるトレギアとのラストバトルは、ヒロユキ青年との合体抜きでもその肉体も含めてついに完全復活を果たしたタイガ・タイタス・フーマの3人を第1話の冒頭のように並べて登場させて、3対1のかたちで描くべきだったと思えるのだ。
 主人公のヒロユキが3タイプではなく3人もの別人のウルトラマンに変身できる画期的な設定こそが『タイガ』最大の特徴であり魅力であったように、タイタスは第3話『星の復讐者』、フーマは第4話『群狼(ぐんろう)の挽歌(ばんか)』と、それぞれの初登場回ではバトルスタイルがじっくりと描かれた。だが、それ以降はネット上でも「従来のヒーローたちのタイプチェンジと変わらない」という声が散見されたほどに、ほぼ毎回、ヒロユキはまずタイガに変身して、戦況に応じてタイタスやフーマにチェンジするといった調子であり、タイタスかフーマが劇中一度も登場せずに割を食う回すらあったほどだった。
 2010年代以降のニュージェネレーションウルトラマンが総登場した第1話や、先輩ウルトラマンであるゼロとの競演が描かれた第23話が突出した人気を呼んだことからすれば、もちろん3人のウルトラマンが全合体している状態である強化形態であったウルトラマンタイガ・トライストリウムもいいのだけれど、せめて最終回くらいはタイガ・タイタス・フーマが個別に登場して大活躍して、その共闘を描いたあとにトライストリウムに再合体するかたちにして、3大ウルトラマンの活躍をまんべんなく見せるべきではなかったのか?


*ドラマ性を重視でも、肝心のウルトラマンたちにはドラマ性が希薄


 ただ、これは決して最終回としての絵的なハデさばかりを求めた上での提言ではない。先述したように、『タイガ』はさまざまな生命体の共存をテーマにした作品だった。であるならば、


・M78星雲にある光の国出身であるタイガ
・U40(ユー・フォーティ)出身であるタイタス
・O‐50(オー・フィフティ)出身であるフーマ


 出自が異なる3人のウルトラマンがいかにして過去においてトライスクワッドなるチームを結成するに至ったかについても、劇中でキッチリとしかるべき本編と連動した回想のかたちで描くべきではなかったのか?
 YouTubeで配信されていた『トライスクワッド ボイスドラマ』では、3人のウルトラマンが「しょーもないこと」(笑)でコミカルに争うさまが再三描かれていたが、テレビシリーズ『タイガ』本編ではタイガ・タイタス・フーマの対立はほとんど描かれてはいなかった。やはりその回のゲスト宇宙人や怪獣に対する各自の考え方・思惑(おもわく)の違いで少々争うくらいの不和描写はあってもよかったかと思えるのだ。
 そうした中で各自の成長・関係性の変化・心の変遷が生じたことにより、タイガ・タイタス・フーマが人種の違いを乗り越えた結果として、因縁の敵であったトレギアを共同で倒すに至る群像劇こそが、「共存」をテーマにした『タイガ』のクライマックスとして描くべきではなかったか? 「お気の毒な宇宙人」たちと比べ、タイガ・タイタス・フーマには劇中で描かれたかぎりでは、彼ら自身の「ドラマ性」があまりにも感じられなかったものである。それこそが『タイガ』が中盤以降に失速したり、マニアたちの興味関心を維持できなかった要因ではないかと考える。


 もっとも、変身前の主人公と変身後のヒーローが完全に同一人格である仮面ライダースーパー戦隊に比べると、変身する主人公とヒーローが一心同体ではあるものの、あくまで別個体であることが多かったウルトラマンの場合には、合体している人間とヒーロー双方のドラマを描きこむのはやや難しいところなのかもしれない。しかし、主人公青年・野上良太郎(のがみ・りょうたろう)に人格や個性もある複数のユカイなイマジン怪人たちが交互に合体することでヒーローのタイプチェンジも表現していた『仮面ライダー電王』が大ヒットしたことを想えば、やはりヤリ方次第であるのには違いない。
 たとえばシリーズ中盤から終盤にかけては、タイガ・タイタス・フーマの存在がE.G.I.S.の各隊員たちにも知られて、彼らとも合体して、隊員たちが変身できるようになったりすることで、イベント性を高めることもできたのではなかろうか? 「お気の毒な宇宙人」たちのドラマばかりをやっている場合ではないのである!


 ネット上でも散見された声ではあるが、「タイガがあのタロウの息子である必然性がない」とされてしまったほどに、この魅力的な設定は結局はほとんど活かされることがなかった。
 自身の因縁の敵であるトレギアを息子のタイガが苦労の末にようやく倒したのだから、せめてタロウが「よくやった。さすがわたしの息子だ」などと云って、ウルトラサインでタイガを誉(ほ)め称(たた)える描写くらいは入れるべきではなかったか? 先述した映画『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE』のラストシーンでも、戦闘中に亡くなったと思われたウルトラセブンがゼロの前に現れて、見事にベリアルを倒したゼロを「さすが、オレの子だな」と称えたあげくに抱きしめる場面があったくらいなのだから。
 まぁ、そんな描写は2020年3月6日公開予定の映画『劇場版 ウルトラマンタイガ ニュージェネクライマックス』(20年・松竹・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210704/p1)に期待すべきなのかもしれないが。ちなみに最新の予告編によれば、テレビシリーズの最終回で死んだように見えたトレギアは実はしぶとく生き残っていたことが判明している(笑)。


 いや、それ以上に、『タロウ』最終回(第53話)『さらばタロウよ! ウルトラの母よ!』に登場した宇宙海人バルキー星人を再登場させることで――アトラクショー用の着ぐるみの流用だったのだろうが、『ウルトラマンメビウス』第16話『宇宙の剣豪』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060928/p1)でも同族の別個体が登場、『ウルトラマンギンガ』前半でもまた別の個体がレギュラー悪として登場している――、その因縁の敵を相手に、巨大化しているバルキー星人をタロウの力を捨ててあくまでもひとりのナマ身の人間としての才覚と力だけで倒してみせた(!)『タロウ』主人公こと東光太郎(ひがし・こうたろう)を篠田三郎(しのだ・さぶろう)氏(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20071118/p1)が再度演じて(!)、東光太郎が並行宇宙を越境してきて闇堕ちしたタロウを救うこととなる展開を、望みウスでも個人的にはおおいに期待したいものである(笑)。

2020.1.12.


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2020年冬号』(20年2月9日発行)所収『ウルトラマンタイガ』終盤合評4より抜粋)


ウルトラマンタイガ』最終回間近、迫る地球の危機

(文・中村達彦)
(2019年12月14日脱稿)


 『ウルトラマンタイガ』(2019年)も2019年12月が最終回。その展開は近年の「ウルトラマン」シリーズの中でもややハードだ。

第21話「地球の友人」


 民間警備組織E.G.I.S.(イージス)に入社したい青年・田崎修がやって来る。第18話「新しき世界のために」の宇宙恐竜ゼットン襲撃で、母親を負傷させられた修は、宇宙人に異様な敵意を抱いており、カナ社長は修の態度に危惧しつつ彼を仮採用するのであった。主人公青年・ヒロユキやホマレ隊員は修に研修を行い、それにはE.G.I.S.に支給されたばかりの宇宙人識別装置・CQの使用法も含まれていたが、修はCQを持ち出してしまう。彼の背後には霧崎(悪のウルトラマンことトレギア)がいた。
 霧崎に導かれて修は市民に交じっている幽霊怪人ゴース星人を発見し電磁警棒で痛めつける。ゴース星人は駆け付けたホマレを翻訳機代わりにして、修とのコミュニケーションをとり敵意のないことを示すが、修は聞く耳を持たない。
 一方、霧崎はヒロユキと対峙し、挑発する口調でタイガのことをジグソーパズルになぞらえる。そのうちにゴース星人の飼っている双頭怪獣パンドンが山中から出現する。ヒロユキはタイガに変身して対峙する。火炎を吐き岩石を投げつけて対抗するパンドン


 拘束されたゴース星人はパンドンが暴れている理由は親代わりになっている自分を助けたいからだと言う。その様子に母を案じる自分と重ねて心を動かされた修は、ゴース星人のいましめを解いてタイガへ戦いの中止を訴える。
 しかしトレギアはパンドンを切り裂いて一瞬にして絶命させてしまう。そしてタイガから強化変身したトライストリウムの攻撃をかわしながら自分の真の狙いを明かす。ゴース星人の円盤には地底ミサイルが搭載されており、その地底ミサイルを手に入れるためにゴース星人を引き離す。修は利用されていたのであった。
 トレギアは去る前に地底ミサイルを発射する。ミサイル発射で地底から放出された地球や天体を構成する超物質・エーテルを目当てに、ナゾの存在が地球に接近してくる。
 パンドンの墓を作ってあげたゴース星人に謝罪をする修。それを許す星人。そして修は母の看病のこともあって、E.G.I.S.を退職するのであった。


 『ウルトラセブン』(1967年)第48&第49話(最終回)「史上最大の侵略」前後編に登場したゴース星人とパンドンが登場する。『ウルトラマンタイガ』第18話も関係している。しかし題材から当初想像していたストーリーとは異なっていた。『ウルトラセブン』では侵略者であったゴース星人が、パラレルワールドとはいえ『ウルトラマンタイガ』では善良な宇宙人として描かれた。霧崎からの地底ミサイル使用の依頼も断っている。力づくで地底ミサイルを奪えばよいのに、修を利用しようとするあたりは霧崎らしい。だがこのゴース星人はなぜ地球に来ていたのだろう? そこが語られなかったのは残念である。
(ゴース星人といえば、30年前に『ビッグコミックスピリッツ』に連載された漫画家・澤井健による『表萬家裏萬家(おもてまんけうらまんけ)』(1989)第1巻後半に、「史上最大の侵略」に登場したウルトラセブンそっくりのセブンの上司こと「セブン上司」のパロディと共に登場していた・笑)


 前話である第20話「砂のお城」で登場したCQが配備されており、その回でカナ社長が心配していた事態になってしまった。地球人の友情で物語は締めくくられたのが救いである。しかし第18話のゼットン出現の正確な経緯をホマレやヒロユキは修に説明したのか、それが明かされなかったことは残念である。本話と第18話に似た姉妹編的なエピソードは、『ウルトラマンタロウ』(1973年)の第5話「親星子星一番星」と第38話「ウルトラのクリスマスツリー」が姉妹編になっていた前例もある(ウルトラ兄弟が助命したほどの善良な亀怪獣の美談の裏にも怪獣災害にあった被害者がいたという話)。本話の脚本を執筆したのは、本作第11話「星の魔法が消えた午後」~第12話「それでも宇宙は夢を見る」の前後編も担当していた小林弘利
 そしてトレギアの計画も明かされた。親切そうに修に接していたが、実はそれは地底ミサイルを奪うためであった。地球から放出された超物質・エーテルに導かれて迫るもの、それは第19話でピリカの奥に霧崎が見たものであった……。


第22話「タッコングは謎だ」


 夜、本部でTVの前で語らっていたE.G.I.S.メンバーは、埠頭に怪獣が上陸したと知る。飛び出すヒロユキ。ウルトラマンタイガ・ウルトラマンタイタス・ウルトラマンフーマへと次々変身してそれぞれで対するが、戦意はないものの吸盤や石油で対抗する怪獣に次々に撃退されてしまう。翌日、怪獣は埠頭で眠り続けている。ヒロユキは出会った少年シンジに、そのオイル怪獣タッコングは凶猛怪獣ギーストロンを鎮めるために現われたが、タッコングは老いているとのこと。更にシンジはヒロユキとウルトラマンたちの関係についても知っており助けを求める。
 ヒロユキが事の次第が呑み込めないでいるうちに、地面を貫いてギーストロンも姿を現わした。眠っていたタッコングは目を開け、全身にツノを張り巡らせたギーストロンに立ち向かう。ヒロユキもタイガに、次いでトライストリウムに変身して、タッコングと共同でギーストロンに戦いを挑む。ウルトラマンと怪獣が共に戦う!
 ギーストロンからレーザーを受けるが、タッコングはその巨体をジャンプさせ、続いて口から吐く炎で全身を包んで体当たり攻撃! 同時にトライストリウムも攻撃も浴びせかける。ギーストロンを倒したあと、夕焼けの海へ帰っていくタッコング。その背中にはシンジの姿があった。
 その後、ヒロユキは宇宙から迫る何かを感じていた。


 タイガと『帰ってきたウルトラマン』(1971年)に登場した怪獣タッコングの共闘が描かれた。『ウルトラマンタイガ』の傑作話のひとつに数えられるであろう。『セブン』のペロリンガ星人が登場した第6話や『帰ってきた』のナックル星人が登場した第10話とも比べてしまう。
 怪獣アーストロンに類似したギーストロンの登場や、『帰ってきたウルトラマン』のBGMの使用など、タッコング登場回と同じ演出も見られる。本話は『帰ってきたウルトラマン』第1話へのオマージュが強い話だが、シンジ少年の立ち位置は『ウルトラセブン』第42話「ノンマルトの使者」に登場した真市(しんいち)少年とも重なる。ふたりを対比させると、シンジの方がヒロユキたち地球人に理解を示していて好感が持てるのだが。
 タッコングもギーストロンも地球人の環境破壊に怒りを感じているとシンジを通して語られている。ラスト近くで、ヒロユキも環境問題に前向きである様子にシンジは安心しているが、現在も日本内外で環境破壊が問題になっていることも思い浮かべてしまう。それがスタッフの狙いでもあるのだろう。
 人々が宇宙人のことを、続いて怪獣のことを、各々TV番組での街頭インタビューで否定的に語って、それにヒロユキやホマレが反応を見せるシーンがあるが、我々が日々感じていることと相通じている。


 特撮面では後半の戦いにおけるギーストロンのレーザー照射や、タッコングとトライストリウムが両者ともに全身火炎状態になって突撃するタロウの必殺技・ウルトラダイナマイトを模した攻撃描写に力が入っている。街のミニチュアセットにタコがモチーフの怪獣タッコングが登場しているせいか、たこ焼き屋や公園のタコ型すべり台などタコも強調されている。第20話での「タイ焼きが好きでタコを食べない」描写を念押しするように、ピリカがタコの玩具を見せホマレが嫌がるシーンもあった(笑)。


第23話「激突! ウルトラビッグマッチ!」


 ウルトラマンタイガやウルトラマントレギアのために地球侵略ができない宇宙人たちの前に第15話にも登場したチブル星人が再登場して、ベリアル因子を使って悪のウルトラマンであるベリアルを復活させようと提案する。最強のウルトラマンベリアルを我々宇宙人たちが倒せば、光の国も手が出せないと言う。宇宙人たちはその案に乗る。
 市街に姿を見せるニセウルトラマンベリアル。ヒロユキはE.G.I.S.を脱け出し、タイガに変身してニセベリアルに対抗するが、偽者とはいえ強い戦闘力を持つベリアルはタイガやタイタスをものともしない。霧崎もウルトラマントレギアに変身して戦いに加わり、チブル星人はベリアル因子を注入してニセベリアルを狂暴化させる。激化する戦い。トレギアの策略でニセベリアルは宇宙人たちのいるビルを破壊してしまう。強化形態フォトンアースに変身したタイガも苦戦する。だがベリアルの攻撃からタイガを救ったのは、ベリアル因子を追って現われたウルトラマンゼロであった!
 タイガは強化形態トライストリウムに変身してゼロと共にベリアル・トレギアと戦う。ゼロとトレギア、超高速でパンチを浴びせ合う。互いに光線を撃ち合う4人のウルトラマン。タイガはゼロから与えられたブレスレットであるプラズマゼロレットでタイガダイナマイトシュートを発射する。トレギアに盾にされてニセベリアルは消滅する。ゼロは手の上でヒロユキを介抱し言葉を交わしたあと、別のベリアル因子捜索のために地球を去っていく。
 だが、ゼロの攻撃を逃れたトレギア=霧崎は宇宙へ視線を向けていた。


 本話の見どころは、タイガとゼロの共闘である。昭和のウルトラシリーズを彷彿させるが、当時の多くはただの顔見せに過ぎなかったウルトラ兄弟の客演に比べて、ゼロの活躍が相応に描かれている。
 今年2019年はゼロとベリアルが初登場してからちょうど10年。その再登場は嬉しい。ちなみにゼロはウルトラセブンの息子、タイガはウルトラマンタロウの息子だが、むかしの小学館学年誌などのでの設定によると、ウルトラの母の姉はウルトラセブンの母だから、タイガとゼロは「はとこ」の関係になる。
 宇宙人たちの会話やゼロの発言で、本物のベリアルは既に前々作の最終回でウルトラマンジードに倒されていることにもきちんと触れている。第15話「キミの声が聞こえない」で登場したチブル星人マブゼも再登場。ベリアル因子でベリアル・レッドキングゴモラを融合させたスカルゴモラを作った設定を生かしてニセベリアルを登場させたが、納得できる展開である。
 イベント性の高い熱血の共闘話ながら前半はギャグ話でもあり、初代『ウルトラマン』(1966年)第18話に登場した凶悪宇宙人ザラブ星人、『ウルトラセブン』第4話に登場した反重力宇宙人ゴドラ星人、『ウルトラマンマックス』(2005年)第4話(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060311/p1)に登場した高速宇宙人スラン星人が集まって(皆、人間への変身能力を持った宇宙人だ!)、ウルトラマン対策を話し合うシーンには良い意味で笑ってしまう(深夜の特撮コメディ番組だった『ウルトラゾーン』(2011年)か?)。
 E.G.I.S.も個々の隊員たちの活躍を描きつつ、ランチ選びにも熱心で、続いてTVに映ったベリアルの姿を「カッコ悪い……」と評するなど普段の緊張感がなく、ギャグ的に演出されている(このシーンに登場するインスタントラーメンの商品名は、過去のウルトラシリーズ作品でウルトラマンゼロと合体したことがある人間たちの名前になっている(笑)。ちなみに2012年の映画『ウルトラマンサーガ』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20140113/p1)でゼロに憑依されたのはDAIGO演じるタイガ・ノゾム隊員)。
 宇宙人たちはそれなりに作戦を考えてはいるが、チブル星人の方はベリアルを復活させたのは良いけど、その後どう扱うのかは考えていないようだし、ザラブ星人やゴドラ星人は『タイガ』とは別作品での個体だったが、利用しようとしていたベリアルに瞬時に倒されたことがあるのを忘れていてマヌケとして演出されている(笑)。結局、トレギアの策略により自分たちが生んだベリアルに、彼らが潜伏していたビルに突っ込まれてまとめて落命してしまった。
 その寸前にチブル星人が「チブルの科学は宇宙一(うちゅういち)~~~!!」という大人気漫画『ジョジョの奇妙な冒険』(1986年~)で聞いたような台詞を口にするのには笑ってしまった。


 トレギアは自分のゲームに熱心で、タイガやヒロユキに比べて偽者のベリアルやゼロの方には関心がない。ビルの上に乗っかって戦いを見ているシーンもある。そしてゼロもベリアルを倒したあと、すぐに別の平行宇宙へと去ってしまうが、もう少し滞在していてもよかったのでは? プラズマゼロレットは返却せずにまだタイガが持っているのだろうか? もうすぐこの世界の地球にもトレギアが呼び寄せた大いなる脅威が訪れるのだからこの武装は必要である。ゼロとタイガは10年ぶりの再会だそうだが、光の国のウルトラ一族たちはこの別の平行宇宙にいるタイガの所在がわかっているのだろうか?


 そしてこの次の回では、いよいよトレギアが招いた大いなる脅威がその姿を見せる……。


第24話「私はピリカ」

(以降、2020年2月8日脱稿)


 地球に迫ってきていた大いなる脅威が遂に埠頭近くの海に降りてくる。その衝撃に晒されるE.G.I.S.基地でピリカは失っていた記憶を取り戻した。カナ社長はホマレとヒロユキに7年前に宇宙から飛来したアンドロイドであったピリカとの出会いについて明かす。ピリカの正体についてはショックだが、ヒロユキに憑依している3人のウルトラマンたちもピリカが地球人ではないことに今まで気づかなかったのだろうか?(笑)
 外へ出たピリカだが、地球人としての意識も失ってはいなかった。そして霧崎は『ウルトラマンオーブ』(2016年)や『ウルトラマンジード』(2017年)、そして『劇場版ウルトラマンオーブ 絆の力、おかりしますす!』(2017年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200406/p1)や『劇場版ウルトラマンジード つなくぜ!願い!!』(2018年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20180401/p1)にも登場したロボット怪獣であるシビルジャッジメンター・ギャラクトロンMK2(マークツー)を繰り出してきた。ヒロユキはタイガに変身して戦いを挑み、プラズマゼロレットの力を使って額からウルトラセブンの必殺技エメリウム光線と同様の光線を放つ。


 だが、必殺技が強敵を撃破するより先に、地下から現われた宇宙爆蝕怪獣ウーラーがギャラクトロンを食べてしまう! タイガは強化形態トライストリウムに変身してウーラーにあたるが、長剣トライブレイドやエネルギーすら食べてしまうウーラーになすすべがない。
 ウーラーは宇宙のある文明が宇宙にゴミの廃棄を続けた結果、生まれた疑似生命であり、体内にブラックホール(!)を持つ。更にビルを食べ続けて、このままでは地球という惑星自体が食べられてしまう!
 その頃、ピリカはヴィラン・ギルドのアジトに向かい、地球から逃走しようとする宇宙人たちからコントロール装置を奪って操作する。自分にはウーラーを止めることができるとわかっていたのだ。
 アジトへ駆け付けたカナ社長やホマレ・ヒロユキらの説得を振り切り、自らの身をウーラーに突入させるピリカ。直後に外へと駆け出すヒロユキ。


 第19話や第21話でトレギアが仕組んだ計略は、地球にウーラーを呼び寄せることだったことが明らかになる。ピリカの正体も明かされて話は盛り上がるが、取ってつけた感もある。
 ウルトラシリーズにおけるアンドロイドの存在は、『ウルトラマンマックス』の女性ロボット隊員・エリーや『ウルトラマンギンガS(エス)』(2014年)でレギュラー敵のチブル星人が造ったアンドロイド・ワンゼロなどの前例がある(後者は改心して怪獣攻撃隊の隊員になる)。ピリカも宇宙人に作られたアンドロイドで、7年前にカナ社長に拾われたと明かされるも、それを裏付ける台詞やシーンはこれまでになく(コンピューター操作に優れているくらいか?)、伏線が語られて来なかったのでピンと来ない。
 第13話などでウルトラマンたちはピリカが地球人ではないと気付かなかったのか? 第23話ではたしかにひとり、ランチをめぐるジャンケンに加わっていなかったが遅すぎる。その前から皆と物を食べるシーンはなかったのか?
 今までは記憶を封じられていて、怪獣ウーラーが地球に飛来したから、アンドロイドとしての記憶に目覚めたわけでもなかった。本話で街をさまよっていたピリカは霧崎と出逢い、第19話では一方的に圧倒されていたのと違って、今回のピリカは霧崎に言い返してもおり、彼を苛立たせてもいるが、スカッとさせる半面、唐突すぎる変化でもあるから、キャラクターの不統一を感じてしまう。


 トレギアの策略も今までの陰険さから比べれば、実際にその策略の正体を見せられると内容が小さく感じられてしまう。もっと別にタイガを追い詰める方法があったはずだ。とはいえ霧崎は、先にギャラクトロンを送り込んでタイガと戦わせると見せかけて、実はウーラーに食わせてしまうことが目的で、その威力やそれまでの作品のボスキャラとの違いを視聴者にも見せているが。
 宇宙に棄てられたゴミから生まれた疑似生命・ウーラーの設定は、母星に見捨てられた者の復讐を描いた第3話や環境破壊ネタの第22話も反映しているのだろうか? グロテスクなデザインが効いている。


 悪い宇宙人たちの犯罪集団であるヴィラン・ギルドは、


・『ウルトラマンレオ』(1974年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20090405/p1)や『アンドロメロス』(1983年)に『ウルトラマンメビウス』(2006年)、『ウルトラマンギンガ』(2013年)や『ウルトラマンX(エックス)』(2015年)に本作『タイガ』第1話にも登場してきたサーベル暴君マグマ星人
・『ウルトラセブンX(エックス)』(2007年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20080413/p1)第3話や『ウルトラマンX』第14話にも登場してきた宇宙商人マーキンド星人


 などが登場するが、ピリカやE.G.I.S.の面々に圧倒されており、本来の悪人面を発揮できていない。ギャグ・キャラになっている(しかもそのギャグ・キャラを最終回まで引っ張るとは)。反面、ピリカに思いとどまるように説得するカナ社長・ホマレ・ヒロユキの真情あふれる態度には確かな迫力があった。


第25話「バディ ステディ ゴー」


 タイガは再びウーラーに対するが、光線エネルギーすら食してしまう怪獣ウーラーにまたも敗れ去る。そのヒロユキへと歩み寄る人影。人々はウーラーの出現を地球に居住している宇宙人たちの仕業だと思い込む。一方、E.G.I.S.のカナ社長やホマレに佐倉警部は、ウーラーの体内に入ったピリカからのメッセージをキャッチする。それによると、ウーラーには悪意はなく、ただ怯えているだけだという。そこへヒロユキが戻ってきて、同行したヴィラン・ギルドのマグマ星人やマーキンド星人がピリカの行動に感動して力を貸してくれることを伝える。マグマ星人の円盤に搭載されたマグマウェーブでウーラーを地上に引っ張り出し、タイガの力で宇宙へと放り出す作戦になる。その会話内容から、やはりE.G.I.S.メンバーはヒロユキとウルトラマンタイガの関係にすでに気づいていたことが判明する。
 ホマレとマグマ星人が操縦する円盤から発するマグマウェーブで地表に出てきたウーラー。そこへタイガが飛びかかるが、群衆の慌てる様子を見ていた霧崎もウルトラマントレギアに変身して割って入る。ウーラーを叩きのめすトレギア。その時、崩落してきたガレキから宇宙人排斥デモをしていた地球人を守ってみせる潜伏宇宙人たち。
 その後、トレギアに空へと飛ばされたタイガのブレスレットであるプラズマゼロレットがウーラーを宇宙へ。その時に地球を覆った輝きのあと、トライストリウムとトレギアとが戦う。その戦いの中で遂に「タロウの息子」であることを受け入れたタイガ。最後にタイタスとフーマ、そしてヒロユキの力を合わせた必殺光線・クワトロスクワッドブラスターが放たれて、トレギアは爆発の炎に飲み込まれていく……。
 地球は救われた。戦いのあと、佐倉警部にも認められてE.G.I.S.に入社するマグマ星人とマーキンド星人。続いてウーラーの体内から実は脱出ができていたピリカが姿を見せて物語は終わる。


 敵対していたヴィラン・ギルドのマグマ星人たちとE.G.I.Sの共同作戦、加えてラスボスのような怪獣を倒さずに地球を救ってみせるのは歴代ウルトラシリーズになかった展開でもある。トレギアとの戦いではタイガが「タロウの息子」であると受け入れたことに加えて、タイタスとフーマもそれぞれが初登場した第3話と第4話でトレギアに翻弄されていたのに、今回はトレギアを大いに苦戦させたのには、それぞれの成長を感じさせてくれる。
 そしてトレギア。大空に広がった輝きの美に思わず見とれてしまって、タイガにそのことを突っ込まれてしまう。直後に笑い出してタイガに敵対したが、一瞬改心しかけたのか否かについては、視聴者それぞれの想像と今後のウルトラシリーズでの展開に任せるしかないだろう。トレギアを注意して見てみれば、顔面のあちこちにまだウルトラ一族の名残りを感じさせてくれる。さすがに今までの悪行の数々を考えると仮に改心したとしても簡単には受け入れられない。一方、以前にヒドい目に合わされたのにも関わらずトレギアをも許してみせるような態度のタイガには人格的な器量の成長を感じさせてくるが……。


 前作『ウルトラマンR/B(ルーブ)』(2018年)最終回ラストの主人公兄弟の妹・アサヒ同様、ピリカがなぜ助かったのかが描かれなかったことについては疑問が残る。それと『ウルトラマンX』最終回のように、E.G.I.S.隊員たちとタイガら3大ウルトラマンたちが遂に最後に言葉を交わしあうようなシーンが観たかったのだが。
 マグマ星人たちもE.G.I.S.に入社した。『ウルトラマンタイガ』においては作品テーマ的にも「地球人と宇宙人の共存」を示しているシーンとして許容されるが……。次作では宇宙人たちとの関係描写はどうなるのだろうか? 欲を言えば、製作費(ギャラ)の問題をクリアできるのであれば『ウルトラマンタイガ』にこれまでゲストで出演した宇宙人役の役者さんたちにも最終回で再出演してもらうかたちで、戦いに巻き込まれた地球人を助けるシーンを作ってもらいたかった。


第26話(最終話)「そしてタイガがここにいる」


 最終回だが総集編であり新作ではない。実質的な最終回である前話の時点で来春2020年3月に公開される映画『劇場版ウルトラマンタイガ ニュージェネクライマックス』の予告編が流れて、この劇場版がTV最終回の後日談であり、E.G.I.Sの活躍や真の最終回である前話で死亡フラグが立っていたピリカの姿も確認できてしまっていたが、先にネタ晴らしをしてしまうようで面白さが半減した。予告編は今回の本当の最終話の方で流してほしかった。
 しかし、2013年の『ウルトラマンギンガ』からの歴代主人公たちが勢ぞろいするのにはシビれる。TV最終回で死んだように見えたトレギアがまだ生きていて、この劇場版でも敵役になることは紛れもなくなったが。



 総体的には『ウルトラマンタイガ』は全体としては、前作『ウルトラマンR/B』よりもハードな作品カラーであった。ここ数年のウルトラシリーズは昭和の旧作オマージュや旧作エピソードの変形後日談のような作品も多く、むかしの怪獣や宇宙人に寄り掛かっている感は否めないのだが、同時に現代社会に通じる問題を描いてみせていた。奇しくも本作最終回の直後の2020年1月に亡くなられた脚本家・上原正三のテイストを多く含んでもいる。果たして上原氏は『ウルトラマンタイガ』を観ていたのであろうか? とはいえ、上原テイストとは真逆かもしれない『ウルトラマンタロウ』テイストを含んだエピソードなども観たかったものだが。
 ヴィラン・ギルドの犯罪者宇宙人たちをはじめ、それとは別に地球に移民として住んで生活している宇宙人たちの事情についても、もう少し説明してほしかった。2014年の『ウルトラマンギンガS』以来のウルトラシリーズでは地球人に扮装して生活している宇宙人たちについてもたしかに描いてきており、今回の『ウルトラマンタイガ』ではそれらをより突っ込んで描いた作品であったとも捉えることができるが。地球で暮らす宇宙人たちとの共存は、次作以降のまた異なる平行宇宙が舞台となる『ウルトラマン』シリーズでも認められている設定になるのであろうか?


 ヒロユキはその前向きさと勇敢さは主人公としては申し分がない。しかし、E.G.I.S.の面々や霧崎の方も個性が出ていた。E.G.I.S.も一見は地球人でもその正体は宇宙人にアンドロイドなど、出自の違う者が集まって作られた組織で、予算や装備もなく怪獣と戦わない優しい民間企業の防衛チームとして、霧崎もまた主人公と相対するライバルキャラクターとして最後まで描かれ切っていた。
 ウルトラマンウルトラマンタイガの他にも、ウルトラマンタイタス、ウルトラマンフーマ、そしてタイガ強化形態フォトンアース、タイガ強化形態トライストリウムと5体も登場した。玩具を売る必要もわかるのだが、2クールしかない作品としては数が多すぎないだろうか? タイタスとフーマは、昭和の光の国出身のウルトラマンではない。しかし映像本編ではそのへんの説明があまりなされていない。1話分をまるまる費やしてタイガ・タイタス・フーマの3人の出会いとトライスクワッド結成を見せる番外編的なエピソードなども観てみたかった。


 果たして次作以降の『ウルトラマン』はどういうかたちになっていくのだろうか? その敵役はトレギアなのだろうか? 注視していきたい。


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2020年冬号』(20年2月9日発行)所収『ウルトラマンタイガ』終盤合評2より抜粋)


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ウルトラマンティガ』(96年)最終回 最終章三部作 #50「もっと高く!~Take Me Higher!~」・#51「暗黒の支配者」・#52「輝けるものたちへ」

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19961207/p1

ウルトラマンダイナ』(97年)最終回 最終章三部作 #49「最終章I 新たなる影」・#50「最終章II 太陽系消滅」・#51「最終章III 明日へ…」 ~賛否合評

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19971211/p1

ウルトラマンネオス』(00年)最終回「光の戦士よ永遠に」 ~「種の存続」に殉じることの是非!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20120513/p1

ウルトラマンネクサス』(04年)最終回 ~中後盤評 #37「Final Episode 絆 ―ネクサス―」

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060308/p1

ウルトラマンマックス』(05年)最終回 ~終盤評 #33、34「ようこそ地球へ!」バルタン星人前後編

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060503/p1

ウルトラマンメビウス』(06年)最終回 最終三部作 #48「皇帝の降臨」・#49「絶望の暗雲」・#50「心からの言葉」 ~ありがとう!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070505/p1

ウルトラギャラクシー大怪獣バトルNEO』(08年)最終回 #12「グランデの挑戦」・#13「惑星崩壊」

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100331/p1

ウルトラマンギンガ』(13年)最終回 ~タロウ復活! 津川雅彦もキングに変身すべきだ! ウルトラ怪獣500ソフビを売るためには!?

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200827/p1

ウルトラマンオーブ』(16年)最終回「さすらいの太陽」 ~田口清隆監督の特撮で魅せる最終回・ジャグラス改心の是非・『オーブ』総括!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20170415/p1

ウルトラファイトオーブ』(17年)完結評 ~『オーブ』・『ジード』・昭和・平成の結節点でもある年代記的な物語!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20170603/p1

ウルトラマンジード』(17年)最終回「GEEDの証」 ~クライシスインパクト・幼年期放射・カレラン分子・分解酵素・時空修復方法はこう描けば!?

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20180213/p1

ウルトラマンタイガ』(19年)最終回「バディ ステディ ゴー」 ~『ウルトラギャラクシーファイト』『スカイウォーカーの夜明け』『仮面ライダー令和』 ~奇しくも「父超え」物語となった各作の成否は!?

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200112/p1

ウルトラマンタイガ』(19年)最終回「バディ ステディ ゴー」 ~タロウの息子としての物語たりえたか!?

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210606/p1(当該記事)

『ウルトラギャラクシーファイト ニュージェネレーションヒーローズ』(19年)最終回 ~戦闘連発でも多数キャラの動機・個性・関係性は描破可能! 物語よりも点描に規定される作品の質!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210620/p1

ウルトラマンZ(ゼット)』(20年)最終回「遙かに輝く戦士たち」・後半評 ~ネタキャラが敵味方に多数登場だが熱血活劇! 2020年代のウルトラはかくあるべし!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210905/p1

ウルトラマントリガー』(21年)最終回「笑顔を信じるものたちへ」 ~新世代ウルトラ各作終章の出来も含めて賛否総括! 光と闇を包摂する真理!?

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20220326/p1


ウルトラマンエース』(72年)最終回「明日のエースは君だ!」 ~不評のシリーズ後半も実は含めた集大成!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070429/p1

『ザ☆ウルトラマン』(79年)最終回 #47「ウルトラの星へ!! 第1部 女戦士の情報」

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100328/p1

『ザ☆ウルトラマン』(79年)最終回 #48「ウルトラの星へ!! 第2部 前線基地撃滅」

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100404/p1

『ザ☆ウルトラマン』(79年)最終回 #49「ウルトラの星へ!! 第3部 U(ウルトラ)艦隊大激戦」 ~大幅加筆!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100411/p1

『ザ☆ウルトラマン』(79年)最終回 #50「ウルトラの星へ!! 完結編 平和への勝利」 ~40年目の『ザ☆ウル』総括!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200508/p1

ウルトラマン80(エイティ)』(80年)最終回 #50「あっ! キリンも象も氷になった!!」 ~実は屈指の大名作!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210315/p1


[関連記事] ~2019年度特撮作品評!

仮面ライダーゼロワン』序盤合評 ~AI化でリストラに怯える中年オタらはこう観る!(笑)

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200517/p1

仮面ライダーゼロワン』前半総括 ~シャッフル群像劇の極み! 滅亡迅雷net壊滅、新敵・仮面ライダーサウザー爆誕

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200518/p1

仮面ライダーゼロワン』最終回・総括 ~力作に昇華! ラスボス打倒後もつづく悪意の連鎖、人間とAIの和解の困難も描く!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200921/p1

仮面ライダー 令和 ザ・ファースト・ジェネレーション』『ウルトラマンタイガ』『ウルトラギャラクシーファイト』『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』 ~奇しくも「父超え」物語となった各作の成否は!?

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200112/p1

『騎士竜戦隊リュウソウジャー』序盤合評

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190602/p1

『騎士竜戦隊リュウソウジャーTHE MOVIE タイムスリップ!恐竜パニック!!』 ~因縁&発端の恐竜絶滅寸前の時代に時間跳躍!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190818/p1

『騎士竜戦隊リュウソウジャー』中盤評 ~私的にはスッキリしない理由を腑分けして解析。後半戦に期待!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20191102/p1

『劇場版 騎士竜戦隊リュウソウジャーVSルパンレンジャーVSパトレンジャー』合評 ~水準作だが後見人&巨大戦カットをドー見る!?

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『騎士竜戦隊リュウソウジャー』最終回・総括 ~ラスボス・終盤・作品自体に対して賛否合評!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200323/p1



ウルトラマンタイガ Blu-ray BOX II

タイガも登場する『ウルトラギャラクシーファイト2』がBD・DVD発売記念!
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『タロウ』1話「ウルトラの母は太陽のように」評 ~タロウが全ウルトラヒーロー大投票で9位記念!
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『タイガ』最終回評 ~宗谷ホマレが全ウルトラ怪獣大投票で99位記念!(怪獣ワクなのか?・笑)
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