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劇場版ウルトラマンタイガ ニュージェネクライマックス ~ヒーロー大集合映画だが、『タイガ』最終回でもあった!

『ウルトラマンタイガ』序盤総括 ~冒頭から2010年代7大ウルトラマンが宇宙バトルする神話的カッコよさ! 各話のドラマは重めだが豪快な特撮演出が一掃!
『ウルトラマンタイガ』中盤評 ~悩めるゲストのみならず、ボイスドラマでの超人たちのドラマも本編に導入すべきだ!
『ウルトラマンタイガ』最終回「バディ ステディ ゴー」 ~タロウの息子としての物語たりえたか!?
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 ウルトラマンシリーズの正統番外編であるネット配信『ウルトラギャラクシーファイト』(19年)の第2弾『ウルトラギャラクシーファイト 大いなる陰謀』(20年)が、2021年5月26日(水)にBD&DVD発売記念! そして、同作にウルトラマンタイガも登場記念! とカコつけて、『劇場版ウルトラマンタイガ』評をUP!


『劇場版ウルトラマンタイガ ニュージェネクライマックス』 ~ヒーロー大集合映画だが、『タイガ』最終回でもあった!

(松竹系・2020年8月7日(金)公開)
(文・久保達也)
(2020年8月31日脱稿)

*超豪華! 12人ものウルトラマンが大集結!!


 『ウルトラマンタイガ』(19年)の後日談の『劇場版』として本来2020年3月6日(金)に公開されるハズだった映画『劇場版 ウルトラマンタイガ ニュージェネクライマックス』(20年・松竹)が、後述する事情で公開延期の憂(う)き目に遭(あ)い、2020年8月7日(金)にようやく公開された。


 近年のウルトラマンシリーズの『劇場版』は、直前作のウルトラマンのみがメインゲストであり、新旧2大ヒーロー共演ものではあっても先輩ヒーロー大集合! といった感じの特大イベント性が高い『劇場版』ではなかった。
 現役ヒーローの大ピンチに、ヒーローの変身前の役者さんも大挙登場して、彼らの変身ポーズや変身シーンも見せてくれるような、コアな特撮マニアのみならずライト層や一般大衆も観たいであろうヒーロー大集合映画の実現については、2010年代以降の東映製作の特撮変身ヒーロー大集合映画に一歩も二歩も円谷プロ製作のウルトラマン映画では出遅れていた。ウルトラシリーズのマニア諸氏も「東映に比べて円谷は……」との忸怩(じくじ)たる想いとともに、大勢がもうそろそろ巨悪に対して2010年代以降のウルトラマンたちが結集して立ち向かう! といった「ヒーロー大集合映画」の登場を、内心では待望していたところでもあっただろう。


 しかし本作では、『ウルトラマンメビウス』(06年)以来、長らく途絶えていたテレビ放映のウルトラシリーズを、ひさしぶりに毎年放映可能な製作体制で樹立した『ウルトラマンギンガ』(13年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200819/p1)以降、直前作『ウルトラマンR/B(ルーブ)』(18年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20180826/p1)、そして本作『ウルトラマンタイガ』までのウルトラシリーズ7作品に登場した主役格のニュージェネレーションウルトラマンが全員登場してようやく勢ぞろいしたのだ!!


ウルトラマンギンガ
ウルトラマンビクトリー
ウルトラマンエックス
ウルトラマンオーブ
ウルトラマンジー
ウルトラマンロッソ
ウルトラマンブル
●ウルトラウーマングリージョ
ウルトラマンタイガ
ウルトラマンタイタス
ウルトラマンフーマ


 そして、タイガの父で昭和の時代のウルトラマンであるウルトラマンタロウも含めて、合計12人ものウルトラマンが登場するのだ!


 しかも、本作では「声の出演」のみでなく、ウルトラマンギンガに変身する礼堂ヒカル(らいどう・ひかる)からウルトラマンタイガに変身する工藤ヒロユキ(くどう・ひろゆき)に至るまで、変身前の主人公を演じた役者さんが全員出演する快挙も成し遂げた!――ただし、湊アサヒ(みなと・あさひ)=ウルトラウーマングリージョを演じた其原有紗(そはら・ありさ)は登場せず、グリージョの声のみを担当されている――


 もちろん本作の企画は、平成仮面ライダーシリーズの年末年始の新旧2大ヒーロー競演映画が興行的にも長期低落傾向にあった中で、直前作の仮面ライダーのみでなく、過去数作品の仮面ライダー複数名を変身前の役者さんも含めて客演させる方向性に舵を切って、華やかさやイベント性や物語やバトルのスケールも拡大させて、そのタイトルも『仮面ライダー×仮面ライダー』シリーズではなく、『仮面ライダー平成ジェネレーションズ』シリーズに改めたことで、興行収入も右肩上がりに急増していった先行の成功例にならっての企画であったことは、まずは間違いないだろう――加えて、製作会社・円谷プロ側の主導ではなく、玩具会社・バンダイ側からの売り上げ増が見込める商品点数を増やせるゆえの要望だったためかもしれない!?(笑)――


 そういう意味では後追いのモノマネ。二番煎じの企画ですらある。しかし、アメコミ(アメリカンコミック)ヒーローが大集合する映画『アベンジャーズ』(12年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190617/p1)シリーズや映画『ジャスティス・リーグ』(17年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20171125/p1)に、女児向けアニメ『プリキュア』シリーズの歴代プリキュアが大挙登場する映画『プリキュア オールスターズDX(デラックス)』(09年)シリーズ(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20201227/p1)など、世界でも日本でも「ヒーロー大集合映画」の企画がここ10年ほどは途切れることなく今でも続いているではないか!?


 70年代~00年代初頭の日本の特撮評論では、シリーズ化やそれに伴うヒーロー共演自体が、ヒーローの神秘性・唯一絶対性を損なう「悪」とされていた時代があった(汗)。今さらではあるのだが、その論法は間違いですらあり、むしろ世界でも日本でも、そして昭和の時代でも、子供たちだけでなく人々は、時に巨悪に対しては作品を越境してヒーローたちが一致団結して立ち向かう! といった作品に興奮を覚えてきたのだ。


 つまりそれは、ウルトラマングルーブに変身する際の掛け声である


「まとうは真(まこと)! 普遍の真理!!」


もとい(笑)、「普遍の心理」「普遍の真理」ですらあり「普遍の方法論」でもあったのだ!


*『タイガ』の「多文化・共生テーマ」を象徴するマグマ星人の大活躍!


 さて、テレビシリーズの『ウルトラマンタイガ』では地球人・宇宙人・アンドロイド・ウルトラマンなどさまざまな生命体の共存がテーマとして描かれていた。それはそれでその志(こころざし)は高かったのかもしれない。


 しかし、映画『劇場版 ウルトラマンR/B セレクト! 絆(きずな)のクリスタル』(19年・松竹・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190407/p1)でデビューを飾り、Web(ウェブ)ドラマ『ウルトラギャラクシーファイト ニュージェネレーションヒーローズ』(19年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200110/p1)でも継続して悪役として登場したレギュラー悪・ウルトラマントレギアにそそのかされ、地球での平和な暮らしを望んでいたゲスト宇宙人が悪へと落ちる話があまりに多かったために、個人的には正直今ひとつの印象を感じていたものだ。


――暗殺宇宙人ナックル星人・触覚宇宙人バット星人・幽霊怪人ゴース星人など、昭和のウルトラシリーズでは凶悪だった宇宙人が、そんな善人の役回りを与えられていたあたりも、その宇宙人種族の全員が悪人ではない! あるいは、その並行宇宙では種族まるごと侵略宇宙人には進化しなかった! といった、まさに多様性の体現といったねらいがあったのかもしれないが、個人的には彼らには常に悪党であってほしかった(笑)――


 ただし、最終回(第25話)『バディ ステディ ゴー』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210606/p1)ではそのテーマの結晶として、悪の宇宙人の犯罪組織=ヴィラン・ギルドに所属していたサーベル暴君マグマ星人と宇宙商人(あきんど・笑)マーキンド星人が、地球に迫りつつあった危機を前にそれまで敵対していた民間警備組織・E.G.I.S.(イージス)とも協力・共闘して、そのまま就職するに至っている。



 つまり、今回の『劇場版』では、導入部でマグマ星人とマーキンド星人がE.G.I.S.の一員として描かれることで、テレビシリーズの続編であることが存分に示されてはいるのだ――実際の製作過程においては、『劇場版』の脚本が先行しており、最終回でのそれらの描写は『劇場版』でのそれを逆に取り入れた可能性も高いけど(笑)――。


 特にマグマ星人は、E.G.I.S.の実働部隊としてヒロユキや正体は宇宙人である宗谷ホマレ(そうや・ほまれ)隊員とともに、「バラージの青い石」を博物館から強奪(ごうだつ)した三面怪人ダダが率(ひき)いる一団と対戦し、ホマレをダダの攻撃からかばって負傷するさまが描かれて、しかもホマレがマグマ星人を見舞いに行こうと主張する描写まであり(!)、そのキャラの立ち位置が完全に逆転していた。


――「バラージの青い石」はもちろん、初代『ウルトラマン』(66年)第7話『バラージの青い石』で砂漠の街・バラージを長年に渡って磁力怪獣アントラーから守ってきたアイテムが元ネタである――


 トレギアにそそのかされて悪へと転じたゲスト宇宙人たちよりも、もともとは「悪」だったキャラクターが「正義」側へと転じたマグマ星人のシチュエーションの方が、はるかに感情移入できるよなと実感したほどに(笑)、この場面は映画のツカミとしてもテレビの『タイガ』の続編としても有効に機能しているのだ。


 三面怪人ダダも、同族の別個体が『ウルトラマンジード』(17年)第18話『夢を継ぐ者』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200523/p1)で搭乗していた、全身にダダと同じく黒白のシマ模様で塗装されたロボット怪獣レギオノイド・ダダカスタマイズ(の同型機という設定である同じ着ぐるみの流用・笑)で夜の市街地を破壊しまくってくれたのも、実にうれしいサプライズだった。
――もちろんこのレギオノイド自体も、元々は映画『ウルトラマンゼロ THE MOVIE(ザ・ムービー) 超決戦! ベリアル銀河帝国』(10年・松竹・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20111204/p1)に登場した悪のウルトラマンことウルトラマンベリアルが建国したベリアル銀河帝国の量産型ロボット兵器だ!――


 そして、このダダカズタマイズとの、ウルトラマンタイガ → ウルトラマンタイタス → ウルトラマンフーマ と3段変身をとげていくヒロユキとの戦いが描かれたことにより、その後の展開に期待をふくらませずにはいられなかったものだ。


 いやホントにこのダダカスタマイズ。劇場限定ソフビなどで出してほしかったものだけど、今はこういうキャラの商品化はお金持ちのマニアを対象にしたプレミアムバンダイくらいにしか期待できないのか?(苦笑)


*ピンチの度に次々と集結してくる先輩ヒーロー!


ヴィラン・ギルドのアジトに単身潜入したE.G.I.S.の女社長・佐々木カナの危機には、クレナイ・ガイ=ウルトラマンオーブが!
●テレビシリーズ終盤で正体がアンドロイドと判明したオペレーターの少女・旭川ピリカ(あさひかわ・ぴりか)が機能が狂って踊りつづけるや、大空大地=ウルトラマンエックスが!
●湊カツミ(みなと・かつみ)=ウルトラマンロッソからの警護の依頼を受けたヒロユキが屋外のマーケットに出向けば、そこに出店(笑)していた湊イサミ=ウルトラマンブルと朝倉リク=ウルトラマンジードが!
●本作のメイン怪獣である邪神魔獣グリムドに敗れたヒロユキが宙から転落するや、彼をガッシリと受けとめるショウ=ウルトラマンビクトリーと礼堂ヒカル=ウルトラマンギンガが!


 メインキャラの周囲に次々と「強者」が集結していくさまは、本作と同じく近年の仮面ライダー役者を揃えることでおおいに盛り上がり、興行的にも大成功した映画『仮面ライダー平成ジェネレーションズFINAL(ファイナル) ビルド&エグゼイド with(ウィズ)レジェンドライダー』(17年・東映http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20171229/p1)のそれには及んでいないという点では、もっと大きなピンチに際しての助っ人参戦であった方がより盛り上がったであったろうに! といった想いは残るものの(汗)、それらの「ヒーロー大集合映画」と同趣向の作劇ではあったのだ。


 しかし、ガイがカナ社長をお姫さまダッコ(笑)してカナの足を利用して宇宙人を蹴散らすさまは、『ウルトラマンオーブ』(16年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20170415/p1)でもヒロインの夢野ナオミを同様のシチュエーションで救っていた描写が何度か見られたものではあったし、坂本浩一監督回のアクション演出ではよく見られる男女のペアダンス(爆)によるギャグ的なアクションの応用のようでもあり、ガイのワイルドな風来坊らしさも巧(たく)みに見せつけた演出だったといえるだろう。


 アンドロイドであるピリカの不調を、『ウルトラマンX(エックス)』(15年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200405/p1)では防衛組織・Xio(ジオ)の研究開発セクション・ラボチームに所属していた理系男子の主人公・大地が修理するのもまたしかりである。ピリカがラストシーンでもタイガに「大地さんによろしく」と語っていたほどにテレビシリーズでは見せることのなかった恋愛感情が初めて描かれたのも、『タイガ』のヒロインであるピリカを立てつつ、そのお相手が理系男子だというあたりで、それらしくて妥当だろう。


 ちなみに、『X』のXioには健啖(けんたん)宇宙人ファントン星人のグルマン博士が所属していたが、本作ではピリカとホマレがヴィラン・ギルドの情報を得ようとして訪問した先はグルマン博士とは別個体であり(着ぐるみ自体はもちろん同一・笑)、『タイガ』第4話『群狼(ぐんろう)の挽歌(ばんか)』にゲスト出演した方のファントン星人であり、彼を見て一瞬戸惑うもグルマン博士とは別人だと即座に無言で判断する、大地の表情演技が描かれていたのもまたよかった。


 さらに、本作のメインゲスト怪獣である魔獣グリムドに苦戦するウルトラマンタイガ・ウルトラマンロッソ・ウルトラマンブルを助けるために、颯爽(さっそう)と並行宇宙まで超えてM78星雲・光の国から駆けつけたものの、逆にグリムドの魔力によって「闇堕(やみお)ち」してしまったウルトラマンタロウと敵対することとなって悩むウルトラマンタイガ=ヒロユキ! 彼を励ますことができる役回りは、これはもうタイガと同様に実の父であるウルトラマンベリアルと戦わざるを得なかったウルトラマンジード=リクが一番適切なのである! それぞれのキャラ設定を適格に活かすことで観客を感激させる作劇が存分に発揮されていたといえよう。


 一方、『ウルトラマンギンガ』当時はまだ高校生であり、ファンの方々には申し訳ないが個人的には常にニヤけたチャラ男(汗)という印象が強かったヒカルは、まぁ演じる根岸拓哉(ねぎし・たくや)自身が年齢を重ねたことが大きいのだろうが、本作ではニュージェネレーションウルトラマンのリーダーとしての風格を感じさせる精悍(せいかん)な表情も見せていてカッコよかった。
 1970年代の小学館学年誌などの毎号のウルトラシリーズ特集記事の成績記事(笑)などでは、当時の最新現役や直近のヒーローが高く採点されて、原点の初代ウルトラマンの成績が相対的に悪かったり、映像本編にてウルトラ兄弟が全員集合した際にも真っ先にヤラれてしまったりして、一番の先輩格であるハズなのだから相応に強いハズだろうと思うのに、そうは描かれてはこなかったことで子供心にもガッカリしたものだ。おそらく、そういった子供たちこそ感じてしまうような欠点を先回りして、2010年代最初のウルトラマンであるギンガこそ一番頼もしく描いてみせていたのだろう! これも正解である!


 そのヒカルによる


「行こうぜ~~!」


を掛け声を合図に、変身前のニュージェネヒーローが横並びでいっせいに同時変身をとげて、変身バンクが連続して炸裂する描写こそ、子供たちも観客も最も観たかった場面だろう! ヒーロー名を叫ぶだけなど、ワリとシンプルな変身方法のヒカル・ショウ・大地・ガイに対して、


リク「ジ~ッとしてても、どうにもならねぇ!!」
カツミ&イサミ「オレ色に染めあげろ! ルーブ!!」


などと変身時に長々とした前口上(まえこうじょう)まで口にするのも、マニア的には2010年代のウルトラシリーズも長期にわたったことによる変身演出の変遷、そしてそれらの優劣ではなく全肯定をここに感じてしまうのだ!


 変身を果たしたニュージェネウルトラマンたちが、斜め前方向から撮った映像でご都合主義にも律儀に様式美的に順番に(笑)、ズシーーン!! とひとりひとりが着地していくさまが重厚感を強調したスローモーション映像で描かれる演出もまた、ウルトラマンたちを有象無象のその他大勢ではなく個々人としても、その巨大超人としての存在感を高めさせている。


*待ってました! 再生怪獣軍団!!


 そして、本作で特筆すべきは、ウルトラマントレギアや魔獣グリムドのみならず、


●最凶獣ヘルベロス
●毒炎怪獣セグメゲル
●悪夢魔獣ナイトファング
●惑星守護神ギガデロス
●雷撃獣神ゴロサンダー


で構成された再生怪獣軍団が登場したことだろう!


 近年のウルトラマン映画では等身大サイズの宇宙人軍団を登場させることで、レギュラーの登場人物たちを人間ドラマのみならずアクション面でも活躍させる、東映の等身大の特撮変身ヒーローにも通じる演出がなされている。
 自身の幼少時を振り返ってみても、30分枠の前半ことAパートでも敵怪人との前哨戦を繰り広げる東映特撮変身ヒーローものを、それらのシーンになるとワクワクとして観ていたものだ。本編の人間ドラマ部分になると退屈してしまうであろう幼児たちの心をゲットするためにも、毎回といわず時折りの各話でこの手法を「ウルトラ」にも導入してみせたことは正解だったと思うのだ!


 本作でもヴィラン・ギルドの構成員として、先述したダダ以外にも、


●策略宇宙人ペダン星人
宇宙帝王バド星人
●暗黒星人シャプレー星人
●宇宙怪人ゼラン星人


といった、筆者のようなロートルには子供のころから馴染み深い昭和のウルトラ宇宙人たちのほかに、ウルトラシリーズのマニア、かつての怪獣博士少年としてはあるまじきことだけど(汗)、平成や21世紀以降の登場した一見では名前も出自となる作品もわからないようなウルトラ宇宙人たちが多数登場している。


 だが、本作のような大所帯の再生怪獣軍団となると、たとえば、


ウルトラマンゼロの相手として、悪の黒いウルトラマンことウルトラマンベリアル
ウルトラマンメビウスには、暗黒宇宙大皇帝エンペラ星人!
ウルトラマンティガウルトラマンダイナとウルトラマンガイアには、彼らが過去に対戦した強敵怪獣5体が合体した超合体怪獣ファイブキング!


といった因縁の相手をぶつけていた、映画『劇場版 ウルトラマンギンガS(エス) 決戦! ウルトラ10勇士!!』(15年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200404/p1)以来のこととなるのだ。


 『ギンガ』ではじまった2010年代のテレビシリーズの当初は、新規造形の怪獣の登場は第1話や最終回が中心で、円谷プロの倉庫に眠っている過去怪獣の着ぐるみの再利用が中心だった(汗)。しかし、次第に売上が増えることで予算も増やすことができるようになっていき、作品を重ねるごとに新規にデザイン・造形される怪獣が増えていった。『タイガ』に至っては、それら新怪獣だけでも立派に再生怪獣軍団を構成できる数に至ったこと自体が実に喜ばしい!


 ただし、怪獣の数のことばかりではない。


●『タイガ』第1話に登場したヘルベロスと、ニュージェネ最初のウルトラマンであるギンガとビクトリーが対戦!
●コミカルなゴロサンダーとは、やはりコミカルなロッソ&ブルの兄弟(笑)が戦うようなマッチメイク!
●当初は優勢だったニュージェネウルトラマンたちだったが、魔獣グリムドの超能力によって強化された怪獣軍団によって劣勢となるようなシーソーバトル!


 これらによって怪獣軍団が決してにぎやかしなだけ、ましてや昭和の時代にあった「再生怪獣は弱い」といった常識(爆)をくつがえすだけの確固とした存在感が示されていたこともやはりうれしいのだ!


 再生怪獣軍団に取り囲まれたニュージェネウルトラマンたちが一斉攻撃を受けて炎に包まれるさまが、上空から市街地を俯瞰(ふかん)して描かれる!


 しかし、その炎の中から、


●ギンガとビクトリーが合体したウルトラマンギンガビクトリー!
ウルトラマンエクシードエックス ベータスパークアーマー!
ウルトラマンオーブ オーブトリニティ!
ウルトラマンジード ウルティメイトファイナル!
ウルトラマングルーブ!


といった、かつてそれぞれの『劇場版』で披露された各ヒーローの最終&最強フォームが登場する!!


 並みクラスの怪獣相手にではなく、それらを超越した強敵の猛攻による大ピンチに際しては、最強形態に変身してみせることも合理的で必然性も生じてきて、とてもうれしいのだ!


 それとは逆に、今度はニュージェネウルトラマンの最強形態に取り囲まれた再生怪獣軍団が、ウルトラマンたちの必殺光線の一斉発射で燃えあがるさまを俯瞰して描いた特撮演出もまた、実に係り結び的に対比が効いていた!
 弱い怪獣たちを倒しても大きなカタルシスはあまり生じてこない。強い怪獣を倒してみせるからこそ、それを上回るヒーローの強さも感じられてカタルシス・爽快感も倍増するのだ! ニュージェネウルトラマンのカッコよさを最大限に盛り上げる役目を、本作の再生怪獣軍団たちは立派に果たしたのだった!


*トライスクワッド、そして3大ウルトラマン合体の感動が再び!


 さらに、本作ではウルトラマンタイガ・ウルトラマンタイタス・ウルトラマンフーマの3人が、主人公・ヒロユキの体を長らく借りている間に、ヒロユキの力なしでもそれぞれが単独で実体化できるようになるまでに回復したとした!――このへんは伏線なしだったのでご都合主義だし(笑)、テレビシリーズの終盤でこそ実現してほしかったネタでもあるけど(汗)――


「われら、トライスクワッド!」


 テレビシリーズではついに描かれなかったタイガ・タイタス・フーマのそろいぶみ・共闘が、クライマックスバトルで実現したのも感動的だった。


 72分という短い尺で多数のキャラを登場させているワリには、本作では先述した導入部のバトルをはじめ、半透明で人間大サイズやミクロ化した姿となっている、テレビシリーズ序盤でもおなじみだったタイガ・タイタス・フーマのコミカルなやりとりも、意外に多く点描(てんびょう)されている。


 テレビシリーズ序盤では、これらの3人のコミカルな描写こそが若い特撮オタクたちを『タイガ』に注目させて、作品カラーも明朗にさせたのにもかかわらず、シリーズ中盤以降ではこれらの点描が前面には出てこなかったことも、『タイガ』の人気・勢いが失速した一因だっただろう。そのことを思えば、やはり子供向けかつ、現代的な大衆向け娯楽活劇作品、そして特撮変身ヒーロー番組としても、タイガ・タイタス・フーマのコミカルなやりとりこそ、もっと前面に押し出すべき要素だったのではなかろうか!?


 テレビシリーズの中盤では、タイガ・タイタス・フーマのみならず地球人のヒロユキの合計4人が合体したという設定で、彼らの最強形態であるウルトラマンタイガ・トライストリウムが登場していた。


 本作のクライマックスでは、そのトライストリウムに全ニュージェネウルトラマンが力を結集して、合計11人のウルトラマンが合体したことで、新ヒーロー・ウルトラマンレイガが誕生する! タイガのやや横長の黄色い目・頭部・目の周囲のヘコみ部分を継承して、両耳のツノは廃したデザインだ!


 ニュージェネウルトラマンたちがトライストリウムのツノにその力を結集させる場面は、ゾフィー初代ウルトラマンウルトラセブンウルトラマンジャックウルトラマンエースのウルトラ5兄弟が、ウルトラマンタロウの両耳にあるウルトラの父ゆずりのツノ・ウルトラホーンに力を結集させつつ合体したことで、タロウがスーパーウルトラマンと化した映画『ウルトラマン物語(ストーリー)』(84年・松竹)の再現だ! とネット上では狂喜する声も多い。


 それはたしかにそうだし、個人的にも感動させてもらった。しかし、それ以前に『ウルトラマンタロウ』第25話『燃えろ! ウルトラ6兄弟』でも、宇宙大怪獣ムルロアが吐いた黒煙に包まれた地球を救うために、タロウがウルトラ5兄弟とウルトラ6重合体(!)で身体密度を上げて、ウルトラタワーに安置されたウルトラベルを取り出す場面があったことを、細かいところにこだわるマニアの皆さんのことだから決して忘れているワケではないのだろうし、後続世代の皆さまにとっては『ウルトラマン物語』でのウルトラ6重合体の方が印象深いのだろうけど、ホントウの原点である『タロウ』第25話についてもちょっとだけでもふれてあげてください(笑)。


 しかし、2000年代初頭くらいまでは主流を占めていた、守旧的な特撮マニア間ではしきりに云われていた「ヒーローはひとりで戦うべきだ!」などといった主張に至っては、まったく見られなくなっている! ヒーロー競演を大喜びする声であふれている今日は、昭和のウルトラ兄弟の設定さえ全否定をするマニアが多かった時代と比すれば、個人的には天国である!


 『タイガ』の世界の地球から去っていくために、空に飛び上がったニュージェネウルトラマンたちが旋回して、地上に近づいてきてカメラ目線(笑)で観客にあいさつする、ウルトラマンの「神秘性」よりも「親しみやすさ」を強調した描写などは、まさに今の時代のヒーローにはとてもふさわしい演出だろう。


*最後まで語られることがなかった、トレギアとタロウの因縁についてはいかがなものか!?(汗)


 さて、ここまで百花繚乱(ひゃっか・りょうらん)で実に見せ場にあふれている本作だが、個人的には先述した映画『劇場版 ウルトラマンギンガS』や、映画『劇場版 ウルトラマンX きたぞ! われらのウルトラマン』(16年・松竹)、映画『劇場版 ウルトラマンオーブ 絆の力、おかりします!』(17・松竹・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200406/p1)などに比べて、その完成度は今一歩という感がある。その原因はいったい何なのか? 順に考察してみたい。


 まず、ウルトラマンタロウのかつての親友で、青いウルトラマンことウルトラマンヒカリらと同じく光の国の科学者だったが、闇堕ちするに至ったウルトラマントレギアとその旧友・ウルトラマンタロウとの因縁に関してである。本作は『タイガ』の「完結編」であるのにもかかわらず、今回もトレギアがナゼにそこまでタロウへの復讐に執着するのかが、いっさい明かされることはなかったのであった。


 導入部とタイトルにつづいて、かつて魔獣グリムドが封印されていた宇宙遺跡ボルヘスの墓場にタロウが現れ、トレギアが


「かつてはこんな場所をよく探検したな」


などとタロウに語りかける描写があった。両者の関係性が示されるのはホントにそれだけ(汗)。


 いったいトレギアとタロウの間に過去に何があったのか? タロウの何がそんなに気に入らないのか?


 もちろん、タロウへの嫉妬や対抗意識だとはだいたい想像はつく(笑)。しかし、それをお約束でも具体的なセリフとしてトレギアにしゃべらせなければ、ドラマ的にも盛り上がらないではないか!?


 ここで比較例として挙げられるのが、やはり悪のウルトラマンであったウルトラマンベリアルである。彼はかつてはウルトラの父の戦友であり、3万年前のウルトラ大戦争ウルトラの父とともに大活躍した功績もあった。しかし、宇宙警備隊の初代隊長にウルトラの父が任命されたことでプライドが傷つけられる。
 さらなる強大な力を求めて、光の国の人工太陽・プラズマスパークのコアを奪おうとして光の国を追放されてしまった。あげくの果てに、復讐しようと怪獣軍団を率いて光の国を襲撃しようとするも、ウルトラマンキングによって宇宙牢獄に投獄されてしまう!
 そういった経緯が、初登場作品の映画『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE』(09年・ワーナー・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20101224/p1)ではしっかりと語られていたのだ。


 『ウルトラマンオーブ』のレギュラー悪であり、『ウルトラマンZ(ゼット)』(20年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200723/p1)では「正義にめざめた」――ウソつけ!(爆)――として、地球防衛軍日本支部のロボット部隊・ストレイジのヘビクラ・ショウタ隊長として活躍することで、その人気が再燃中のジャグラス・ジャグラーも比較対象としてふさわしい。
 彼はかつてはガイと同様に光の勢力に身を置いて、ガイとは良きライバルの関係にあった。しかし、その力自体はガイよりも上であったのにもかかわらず、ガイがウルトラマンとして選ばれたことを恨んで闇の力に魅せられるようになった発端(ほったん)の物語が、『オーブ』放映終了直後に配信されたWeb(ウェブ)ドラマ『ウルトラマンオーブ THE ORIGIN SAGA(ジ・オリジン・サーガ)』(16年)などで後付けでも描かれていた。
 むろん、無料で観られるネット配信ドラマなので、その作品を大勢が観ていたワケではなかったが、そのことがネット情報やネット世論などでも喧伝されてきたし、もっと云えば『オーブ』本編を観ていても、ガイとは旧知の関係でそのような過去を遠回しに匂わせてもいたから、幼児はともかくふつうのリテラシー(読解能力)があれば、小学生でもそのへんのジャグラーの行動動機は腑に置いてきたことだろう(笑)。


 本作と同時期に放映中である『魔進(マシン)戦隊キラメイジャー』(20年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200712/p1)のレギュラー敵幹部・ガルザも比較対象にできる。魔進戦隊のパワーの源泉でもある宝石の国・クリスタリアの王でもあった兄のオラディンよりもその能力は優れていたにもかかわらず、次男であったために兄のオラディンの格下となることに反発して、彼は敵組織・ヨドンヘイムの将軍となったことが、感情移入を惹起するかたちで描かれてもいたのだ。


 ウルトラマンベリアルもジャグラス・ジャグラーもガルザも、そうした因縁がていねいに描かれることでキャラクターとしての厚みが増し、敵役ながらもその動機におもわず同情の余地を感じてしまうほどに、観客や視聴者の感情移入を誘っていたのだ。


 だが、トレギアは最後の最後まで、ついにそれが描かれずに終わってしまっていた。いや、厳密にはテレビシリーズ最終展開では、そのようなある意味では通俗的な「私怨」ではなく、もっと大きな「虚無」そのものを行動動機として描くことで、スタッフは意外性をねらっていたのかもしれない。しかし、それは成功していたであろうか? 筆者には成功していたとは思えない。意外性をねらって失敗するよりも、ある意味ではアリがちでも王道ではある、個人の普遍的な「私怨」感情にしておいた方が、トレギアの行動動機にも一本のスジを通せて、しかも視聴者もナットクできたのではなかろうか?


 つまり、トレギアは『タイガ』の序盤で登場した際の「ナゾめいたキャラクター」という初期の「ほのめかし設定」のままであり、悪役なりの人物像をじょじょに小出しで描くことで深めるようなこともできていなかったのだ(汗)。


 トレギアといえば、人間態の青年・霧崎(きりさき)を演じた七瀬公(ななせ・こう)に対する、やや「静的な演技演出」にも問題はあったと思うのだ。『オーブ』のジャグラス・ジャグラー、『ジード』のSF作家・伏井出ケイ(ふくいで・けい)、『R/B』の愛染マコト(あいぜん・まこと)社長などは、若いマニアいわく「円谷のヤベー奴ら」(笑)とネタにされるほどの人気を獲得できていた。この時流に乗るのであれば、彼にももっと半分は笑ってしまうようなハッチャけたオーバーアクションの悪役演出も必要だったのではなかろうか!?


 そこまでいかなくても、タロウやその息子のタイガに対する恨みや韜晦(とうかい)を繰り広げるようになった経緯が、テレビシリーズ本編でも小出しに具体的に描かれていったならば、トレギアに対する印象も全然違ったかと思えるのだ。タロウやタイガへの私怨を前面に出さずに、ただ出てきて各話のゲストを翻弄(ほんろう)しながら戦うだけの、きわめてドラマ性が希薄なキャラとしてトレギアを終わらせてしまったのは、やはりあまりにもったいなかったのではあるまいか?


 ちなみに、『ウルトラマンタイガ超全集』(小学館・20年3月25日発売・ISBN:4091051677)には『タイガ』のシリーズ構成を務めた中野貴雄(なかの・たかお)によるトレギアの過去を描いた書き下ろし小説が掲載されているそうだ。プロデューサーやスポンサーもいる以上は、メインライターの一存だけでもテレビシリーズを思い通りにはシリーズ構成はできないのだろうが(汗)、本来のターゲットである子供たちがそんな高価な書籍を手にできるハズもないし、そもそも文章のページの記事などは読まないだろう(笑)。筆者もせめてそこだけ立ち読みしようとしたのだが、近年では「ウルトラ」にかぎらず『超全集』シリーズ自体が、近所の書店では全然売っていない。ウ~ム(汗)。


*悪側に「円谷のヤベー奴ら」(笑)も登場してほしかった!


●『劇場版 ウルトラマンギンガS』では、敵の新キャラとして『ウルトラギャラクシーファイト』にも再登場した超時空魔神エタルガーと、エタルガーによって故郷の星をウルトラマンに滅ぼされたというニセの記憶を植えつけられたアレーナ姫が登場
●『劇場版 ウルトラマンX』では、新怪獣として閻魔(えんま)獣ザイゴーグが、それを封印から解いてしまう張本人としてWeb-TV(ウェブ・テレビ)番組のネタのために世界を探検する男・カルロス黒崎や、ウルトラマンティガに変身をとげるに至る少年・玉城ユウト(たまき・ゆうと)らが登場
●『劇場版 ウルトラマンオーブ』では、かつてオーブとの戦いに敗れて、体の半分を機械化して復活した奇機械宇宙人ガピヤ星人サデスや、美しいものを宝石にして奪う宇宙魔女賊(まじょぞく)ムルナウがメインの悪役として登場


 そうした『劇場版』限定のゲストキャラが、本作では怪獣グリムド以外に、本編にも特撮にもいっさい登場しなかった。そのグリムドすらもトレギアと合体しても、その姿は変えずに超巨大化するのみであって、もっとそれらしい強化&最終形態に姿を変えないあたりは、画面に変化が足りなくてイマイチかもしれない。


 本作の場合、ニュージェネレーションウルトラマンの変身前の役者を総出演させるために、短い尺の中でこれ以上のキャラを増やすのはたしかに限界だったかと思える。ギャラに使える予算の方だってもう限界に近かっただろう(汗)。また本作のような「お祭り映画」において、ゲストキャラ側の本編ドラマを主軸に描くことは避けて正解だったかとは思える。


 ただ、人格のある憎々しげな悪役として登場するのが、いつものトレギア=霧崎のみだったという構図自体もいかがなものなのか? やはり、7大先輩ウルトラマンが変身前の役者さんも含めて勢ぞろいした本作としては、「悪」側にも「善」側と拮抗するだけのボリュームが必要だったのではなかろうか!?


 マニア諸氏のほとんど全員が思っていたことではあろうが(笑)、やはりここは、近作の悪役を務めた役者さんたちにも功労賞として、「円谷のヤベー奴ら」(笑)こと、


●ジャグラスジャグラー
●SF作家の伏井出ケイ
●愛染マコト社長
永遠の17歳(笑)であるらしい美少女・ツルちゃん


 彼ら四天王が、その一部は死者をもよみがえらせることができる亡霊魔導士レイバトスの呪術などによって復活! 彼らに往時のままの「強烈な演技」(笑)をふたたび披露してもらえれば、「客寄せ」面でも「善悪のメリハリ」面でも効果絶大だったのではなかろうか!?


 個人的には、『タイガ』のセミレギュラーとして登場していた、カナ社長がかつて所属していた宇宙人がらみの事件を扱う警察組織・外事X(がいじエックス)課の警部・佐倉が不在であったのも、やや不満だったりはした。佐倉を演じた風見しんごは、映画『ウルトラQ(キュー) ザ・ムービー 星の伝説』(90年・松竹)の戸川一平役を皮切りに、『ウルトラマンコスモス』(01年)の『劇場版』や、映画『ウルトラマンメビウスウルトラ兄弟』(06年・松竹・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070128/p1)、映画『大決戦! 超ウルトラ8兄弟』(08年・松竹・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20101223/p1)などのウルトラマン映画に多数出演してきただけに、出演交渉は容易に思えたのだが、やはり製作予算やギャラがネックになったのだろうか?(汗)


*地球の危機なのだから、市民のエキストラも必要!


 さて、不在といえば地球最大の危機がおとずれて、これまでに何度も地球の危機を救ってきたニュージェネレーションウルトラマンが全員集合しているのにもかかわらず、その場に一般市民の姿が皆無であり、何のリアクションも描かれなかったことも正直残念であった。


 仮面ライダークウガから仮面ライダージオウに至る20作品の「平成仮面ライダー」が大集結した映画『仮面ライダー平成ジェネレーションズ FOREVER(フォーエヴァー)』(18年・東映https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190128/p1)のクライマックスにおいては、メタフィクション的な作品世界ゆえに市民が仮面ライダーたちの存在を知っていた(笑)。彼らのバトルを見守る観衆たちがそれぞれの世代にとっての最も印象深い仮面ライダーに声援を送っていた描写もあった。これによって、観客の代弁者としても劇中内の観衆が盛り上がることで、疑似的な一体感をより強く得られる演出としてもおおいに機能していたのだ!


 ウルトラマンジードが実の父であるウルトラマンベリアルの強化形態・ウルトラマンベリアルキメラベロスと決闘を演じた『ジード』第17話『キングの奇跡! 変えるぜ! 運命!!』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200523/p1)においても、市民がジードに声援を送る描写もクライマックスを盛り上げていた。タイガが実の父・タロウと対戦する本作においても、予算面での都合があったのだろうが、そういった描写はほしかったものだ!


 『ウルトラマンメビウス』(06年)第1話『運命の出逢い』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060625/p1)のウルトラマンメビウス初登場の場面で、


息子「あっ、ママがむかし見たって云ってた……」
父親「あぁ、ウルトラマンだ!」


などといったやりとりがあったことを記憶されている方々もおられるだろう。本作のような「お祭り映画」こそ、大集結したウルトラマンたちを感慨深く見つめる代弁者としての市民の描写はあった方がよかったと思えるのだ。


 近年のテレビシリーズでは都市破壊場面でエキストラが大量に動員されているだけに、この処置は意外だった。とはいえ、平成ウルトラ3部作の時代の『劇場版』でも、実はテレビシリーズよりも映画の方が予算は少ないというスタッフからの声はあったが、そういうことなのだろうか? たとえ1人1日1万円の金額でも「チリも積もれば……」でギャラが問題だったのならば、それこそ「円谷プロファンクラブのみなさま」に声をかければ、ノーギャラで大画面映画にふさわしい大動員が可能だったようには思うのだけど(汗)。


 個人的には、各ニュージェネウルトラマンたちが住む並行宇宙を渡り歩いてきたウルトラマンゼロを本作でも登場させてほしかった。ゼロは『タイガ』テレビ本編でも第23話『激突! ウルトラビッグマッチ!』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210606/p1)に登場したことで、『タイガ』世界の市民たちにも認知されているし、


「こいつらみんな、こことは違う地球の平和を守りつづけてきたスゲぇヤツらなんだぜ!」


などという調子で、右ヒジから先をグルグル廻して指差しながら(笑)、ゼロがニュージェネの面々を市民に紹介することでウルトラマンたちが大喝采を浴びる! などといった描写をぜひ観たかったものである。


 しかし、ゼロが登場してしまうと、場面のすべてをかっさらってしまって、メインゲストであるハズのニュージェネウルトラマンたちも霞んでしまい、本作でのニュージェネ先輩ウルトラマンたちを立ててみせる! といった目的がボヤけてしまった可能性を考えると、スタッフもバカではないのだから(失礼)、本作ではそこまで考えた上で作劇バランス的にも除外してみせたと見るのが妥当だろう。



 けれど、エキストラの大量動員が不可能であったのならば、『劇場版 ウルトラマンオーブ』のクライマックスバトルをネットで中継していたレギュラーキャラである怪奇現象追跡サイト・SSP(エスエスピー)の夢野ナオミ・早見ジェッタ・松戸シンが、


「みんなでウルトラマンを応援しよう!!」
「せ~~~のっっっ!!!」


などと観客である子供たちに呼びかける描写で、毎年夏の恒例催事『ウルトラマンフェスティバル』、いや20世紀のむかしからアトラクショーでは付きものだった、子供たちが「がんばれ~~~!!!」と返してみせることで、観客にも映像との一体感をより喚起してみせる演出などもアリだったかもしれない。しかしまぁご承知のとおりで、全世界がコロナウィルスの脅威に包まれているご時世では、基本的には経口感染(けいこう・かんせん)であるので、飛沫による感染防止のためにも、劇場でウルトラマンに声援を上げるなんぞは百害あって一利なしですな(汗)。


 ちなみに、このコロナ禍で2020年夏の『ウルトラマンフェスティバル』も中止となり、その代わりとしてYouTube円谷プロ公式チャンネル・ULTRAMAN OFFICIAL(ウルトラマン・オフィシャル)では過去のライブステージの傑作選が配信されていた。それらを鑑賞していると、コレはやはりナマで観るにかぎると実感してしまう。



 クライマックスバトルに向かうヒロユキを、


「待ってるから……」


などと見送ったE.G.I.S.の面々の描写は実によかった。しかし、それからラストまで彼らがずっと不在となってしまうことも、過剰に気になったワケではないがやや違和感が残った。所詮(しょせん)は警備会社で超兵器を持っていないのだから「共闘せよ!」とまではいわないが、せめてヒロユキらニュージェネウルトラマンの決戦を見守って、声援をひんぱんに送っているような描写は入れてほしかったようにも思うのだ――尺の都合で撮影したけどカットされたのであればゴメンなさい(汗)――。


*「タイガを守るため」という「私」ではなく、「悪と戦い宇宙を救うため」という「公」のためにこそ集結すべきだった!


 先輩ニュージェネのヒカル・ショウ・大地・ガイ・リク、そしてカツミ&イサミ兄弟が、皆一様に「ヒロユキが宇宙人たちにねらわれていることを知って地球に駆けつけた」と語っていることも少々違和感があった。あの『タイガ』第1話の冒頭での7大ウルトラマンVSトレギアの宇宙空間での大決戦を思えば、行動動機のスケールがかなり小さくはないだろうか?(笑)


 封印を解かれた魔獣グリムドが地球に向かったから! 復活したトレギアが再度何かをたくらんでいるから! といった理由ではなく、タイガと合体しているとはいえ、「ヒロユキ個人がねらわれているから」だという理由では、「公」よりも「私」としての動機で動いているようにも見えてしまうのだ。


 ガイやリクであれはそんな「私情」でも似合っているのだが、他のメンツは「宇宙の危機」を動機としていたり、彼ら7人の先輩たちの中にもあるちょっとした「微差」なども描くことで、そのキャラをもう少しだけ描き分けてもよかったのではあるまいか!?


 ついでにここに記すけど、ホントウの想いを云ってしまえば、


ジャグラー襲撃に対してはガイが!
●伏井出ケイの襲撃に対してはリクが!
●愛染社長の襲撃に対しては湊兄弟が!


 といったシチュエーションでの彼らの助っ人であれば、本作はもっと盛り上がったことであろう(笑)。


 『タイガ』の最終回でタイガがトレギアを倒したことで、実はトレギアの体内に封印されていたグリムドが抜け出しており、ふたたびそのグリムドを宇宙で封印したニュージェネウルトラマンたちが、その代償として変身能力を失ったとする後日談が映像で描かれたこと自体はよかった。


 しかし、その変身前の姿である人間たちが変身能力を取り戻すために、第1話の冒頭でタイガ・タイタス・フーマに授けた自分たちの力を「返してくれ」とヒロユキに頼みこむ描写も、やや「ウン?」と思えるものがあったのだ。
 『タイガ』第1話の冒頭では、ニュージェネウルトラマンが自分たちのエネルギーをアクセサリー状にしてタイガ・タイタス・フーマに授ける描写があった。だが、それはあくまでも各ウルトラマンの片手間程度のエネルギーにすぎなかったようにも見えたのだ。それが証拠にエネルギーを渡したからといって、彼らは特に弱体化している様相も見せてはいなかった。そんな片手間なエネルギーを返してもらっただけで、グリムド封印で喪失してしまっただろう全身全霊の変身エネルギーまでもが全復活をとげるというのは、その吊り合いが取れていないような気がする(笑)。


 タイガによってグリムドの魔力から解放されて以降のタロウにも、見せ場らしい見せ場はほとんどなかった。せっかくウルトラ兄弟が登場してもロクに活躍もせずに危機に陥(おちい)ってばかりだった昭和の第2期ウルトラマンシリーズをここでは悪い意味で継承してしまっているのだ(汗)。


 『タイガ』の「完結編」としては、本作はタイガの「父超え」も意識されていたことと思う。それならば父であるタロウの「善」に目覚めてからのカッコよい反撃も相応に描いてこそ、それが助走台となって、そんなタロウをも超えることができた最後の最終最強形態のタイガことウルトラマンレイガのスゴさをドラマ的にも示すことが可能になったのではなかろうか!?


 映画『劇場版 ウルトラマンR/B』における同作の主人公の高校時代の同級生を怪獣化してしまったトレギアとの因縁対決を継承して、「トレギアは自分が倒す!」と主張するカツミとヒロユキが対立して、イサミが「まぁまぁ」などとなだめる描写が数回あった。しかし、テレビシリーズの『R/B』では弟のイサミの方がゲストキャラと対立することが多く、兄のカツミが抑(おさ)え役として描かれていた印象が個人的にはあったので、いかに兄のカツミの方がトレギアとの因縁が深いとはいえ、コレも少々引っかかった(笑)。


 ヴィラン・ギルドの宇宙人たちに勝利したリクも、幼少時にあこがれていた劇中内での特撮変身ヒーロー番組『爆裂戦記ドンシャイン』のキメポーズを「ドン・シャイン!」と披露していた。彼は特撮オタクだからいつまで経(た)っても卒業できないのはリアルな描写なのかもしれないが、あれから数年は経ったハズなのでややイタい気もした。それもまた「ねらい」だったのだろうが(笑)。


 余談になるが、本作のパンフレットは小学館『てれびくん』編集部による編集ではなかった。従来のパンフレットは映画に散りばめられた小ネタに関する詳細な解説が楽しめた。しかし、このパンフレットにはそういった記述がほとんどない。やはりマニア上がりのこだわり編集者が担当しないと、てきめんに誌面のクオリティーが下がってしまうということか!?(汗)


*「別離」も描いて『タイガ』真の最終回としても成立!


 そんなワケで本作は良作なのだが、『仮面ライダー平成ジェネレーションズ』シリーズなどのヒーロー大集合映画の大傑作などと比較してしまうと、勝っていたとは云いがたい。


 しかし、意表外にも、それまでの2010年代のウルトラシリーズの『劇場版』とは異なり、『タイガ』の真の「最終回」としては成立していたのだ! そして、ヒロユキをはじめとするE.G.I.S.の面々とタイガ・タイタス・フーマとの別れを描いた感動的なラストは、失礼ながら『タイガ』という作品にさほど夢中になっていたワケではなかった筆者ですらも感慨深くさせてくれた。


 ショウ=ビクトリー、ガイ=オーブ、リク=ジード、カツミ=ロッソ、イサミ=ブルは変身前の青年主人公と変身後のウルトラマンが完全な同一人格や同一人物であって、視聴者の目線からすればその方が感情移入はしやすいという利点はあるだろう。
 ただ、未来の世界からやってきたというウルトラマンことギンガと一体化して、『ギンガ』の最終回で一度は分離したものの、次作『ギンガS』第1話ではふたたびギンガと一体化することとなったヒカル。データ生命体と化した電脳世界のウルトラマンことエックスとユナイト(一体化)した大地。ウルトラマンと人間とが別人格であった彼らの物語の最後で描かれたウルトラマンとの切ない別れも、個人的には捨てがたい。


 『X』完結編の『劇場版 ウルトラマンX』ラストでは、エックスと大地をはじめとするXioのメンバーとの涙ながらの別れが描かれていた。そして、エックスが「地球に再び危機がおとずれるとき、私はふたたびやってくる!」と約束していた。云ったそばから、その地球の危機がすぐに来たことで別離は反故(ほご)にされて、アッという間に帰還してくるオチではあったのだが(笑)。


 ちなみに、ネット上での本作の感想を読むと、エックスの声を声優の中村悠一(なかむら・ゆういち)ではなく、大地役の高橋健介だけで演じていたことに不満の声が多数あった(笑)。それを云い出してしまうと、昭和ウルトラでも初代ウルトラマンウルトラマンジャックウルトラマンエースウルトラマンジョーニアス、平成ウルトラでもウルトラマンコスモスなども、宇宙人と地球人が合体した二重人格の存在なので、リアルに考えればウルトラマンひとりに対してふたりの人格でしゃべる方が正しい!
 しかし、それではストーリー展開が煩雑になってしまうし、『X』を未見の観客は混乱してしまったことだろう。声優のギャラの少しでもの節約なども理由だったのだろう。けれど、たしかにエックスと大地のコミカルなやりとりは『ウルトラマンZ』でのウルトラマンゼットと主人公のナツカワ・ハルキの元祖のようなノリだっただけに、久々にそれを見たかったという意見もわかるのだ。


 なお、ウルトラマンエックスの声を演じた中村は、先述した『魔進戦隊キラメイジャー』では敵幹部・ガルザの声を熱演している。そういえば、兄のオラディン王の声を演じる杉田智和(すぎた・ともかず)は、『ギンガ』でウルトラマンギンガの声を演じていた(笑)。


 2020年3月上旬に新型コロナウィルス感染拡大防止のために政府から出された自粛要請によって、本作は3月上旬の公開予定が5ヶ月も延期されて、『タイガ』の後番組『ウルトラマンZ』の放映開始後に公開されてしまったことで、あまりにも面白い『Z』と比較するとやや見劣りするといった意見もネット上では散見された(汗)。


 しかし、そんなおもわぬ不幸に見舞われることとなってしまった本作だが、ニュージェネレーションウルトラマンの華麗なる大競演を期待する向きには万全とはいわないまでも、その期待を裏切る出来でもなかった良作だったとは思うのだ。

2020.8.31.


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2020年秋分号』(20年9月27日発行)~『仮面特攻隊2021年号』(21年8月15日発行)所収『劇場版ウルトラマンタイガ』合評2より抜粋)


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 2020年6月26日(土)午後に『世にも奇妙な物語'20 秋の特別編』が再放送! 同日夜には新作『世にも奇妙な物語'21 夏の特別編』が放映記念! とカコつけて、『世にも奇妙な物語'19 雨の特別編』評をUP!


世にも奇妙な物語´19 雨の特別編』 ~30年目の『世にも奇妙な物語』回顧・特撮ヒーローネタも登場!

(2019年6月8日(土)放映)
(文・田中雪麻呂)
(2019年10月24日脱稿)


 嫌な世の中です。個人的には現行のTVドラマがつまらなくて仕様がありません。


 こういう同人誌にものを書いておりますと、連続ドラマでしたらそういうものを8話なら8話分観なければいけませんで、大変にホネが折れるものでございます。ネットという奴が発達しているものですから、ちょいちょいと飛ばし見もできません。
 いや、ビデオに録り忘れちゃったんだよね、と言い訳してはみるものの、じゃあペイチャンネルで見なさい、どこで見なさいと矢の催促。


 仕方なくAmazonでDVDを買ったりしまして、こちらも気が弱いですから。また最近の作品はDVDが中途半端に求めやすいんです。話数が少ないので。


 昔は良かったなぁ。面白いドラマばっかりだったもの、などと昔日を美化して夢想しております。そんな時間があれば1行でも書きゃいいんですが、そもそもドラマの説明や解説自体が野暮天(やぼてん)のすることでありまして。額に汗する日々でございます。


世にも奇妙な物語』30年ひと昔


 『世にも奇妙な物語』には説明は要らないでしょう。フジテレビのTVドラマといえばこれでございます。何でも番組開始は´90の春だそうでして平成2年、ざっと30年前でございますな。
 毎回異なる3話のオムニバスドラマ。ストーリーテラータモリさん。ドラマの異世界に誘(いざな)う橋渡し、語り部(べ)でございます。


 そうそう、オムニバスドラマとかストーリーテラーというマニア間だけで流通していた用語が、一般層にも普及したのは、この番組の影響が大きかったように思います。


 現在は好好爺(こうこうや)で国民的な人気者のタモリさんですが、30年も前は常識を嗤(わら)い文化人でも平気でコキ下ろす、エッジの効いた怪人物でした。
 タモリさんのストーリーテラーは、特別な扮装をするわけではない、場所を選ぶでもない、神出鬼没でございます。裏を返せば、タモリさんがいるところならばどこでも「奇妙な空間」となりうるわけでして、これはキャラクター的にとても強い。


 ご当人のタモリさんも、バラエティーで興が乗ると「奇妙な世界の入り口には……」と、ストーリーテラーの雰囲気でセルフパロディをやってくれたりと視聴者にサービス。この衒(てら)いのなさが番組の長続きのひとつの力なのかもしれませんですね。


「サングラスをかけていて、あれだけ売れた芸能人はタモリだけだ」。


 テレビウォッチャーで名を馳せた、故・ナンシー関(せき)さんの言葉でございます。



 『世にも~』のテーマ曲は、厳(おごそ)かな讃美歌のような、どこか不安を煽る旋律のような、蓜島邦明(はいしま・くにあき)さん作曲の名曲「ガラモン・ソング」でございます。わたくし、放送開始当時にお小遣いを貯めて、この番組のサントラCDを買いました。


 タモリさんが画面に出てくる際に決まって流れる、「♪タッタンタカタン」という軽快な曲の名前は、ズバリ「ストーリーテラー」。
 他に初期の名作のサブタイトルに因(ちな)んだ「猿の手様(てさま)」や「悪魔のゲームソフト」といったBGM。
 「噂のマキオ」や「楊貴妃(ようきひ)の双六(すごろく)」などの佳作の劇中音源の聞きどころを繋いだ、ラジオドラマのようなトラックもあり、それを聴くことは当時の番組ファンの至福のひとときでございました。



 初期の初期から、番組の構成はかっちりしたものでして、まずはアバンタイトル


 これは数秒のシュールな寸劇でございます。


「(テレビの)画面に指を着けて下さい」


とアナウンスがあり、着けるとそこから血が滴(したた)り落ちたり。


 ドールハウスで遊ぶ子供たちを、突然巨大な子供たちが覗き込み、自分たちが人形だったことに気づくとか。


 レストランでトイレを無理に借りた客が、そのまま便器に流されてしまうとか、不条理劇が展開いたします。



 次にタイトル。


 ストーリーテラーの前口上(まえこうじょう)を経(へ)て、1話目のストーリーが始まるという体裁(ていさい)でございます。こういうおシャレで知的なイメージの連続ドラマは、わたくしは初めてでございました。
 オムニバスドラマのスタイルを生かして、ドラマの撮影所(下請けの製作会社)も毎回代わり、物語の内容もホラーあり、コミカルなものあり、感動作品ありと変化に富んでおります。
 コミカルに見せて怪奇譚だったり、コワいお話かなと思ったらグダグダだったり。まあグダグダは神代(かみよ)の昔の日本神話(笑)からの付きものでございますが……。



 シリーズの作品で思い出されるのは、少々ドラマとしては作りが荒いものの、メッセージ性が強いものでございます。


 弱者と思われていた者が実は黒幕だったという「息づまる食卓」や「悪魔のゲームソフト」。


 今様(いまよう)の説話のようなクラシカルな「猿の手様」や「海亀のスープ」や「着せ替え人形」。


 中でも「着せ替え~」は、主演の笑福亭鶴瓶師匠が当時のトーク番組でこのドラマの裏話を披露され、それに続けて、


「俺はね、こういうドラマに出といて何ですけど、奇妙な世界といっても、何でも受け入れるのは何や違うと思う。たとえば鏡の中に入っていくとかね」


と持論を展開していて、強く記憶に残っております。



 コントと人間ドラマの融合のような愉(たの)しげな作品も多かったです。


 苦労惨憺(くろうさんたん)で東京近郊にマイホームを手にした男(柄本明)が、その場所を見つけられずに、同じ境遇の迷い人(きたろう)と遭遇する「我が家はどこだ」。


 ツキ過ぎている主人公(山下真司)のもとに、悪運の申し子のような男(斎藤晴彦)が部下で赴任して来たことから起こる悲喜劇の「ラッキー小泉」。


 博識で時代の先端を行っていると自負している業界マン(草刈正雄)が、全く知らない新語に慌てふためく、あの名作の「ズンドコベロンチョ」。



 挑戦的な作品も多かったと思います。


 仲谷昇さんと佐野史郎(さの・しろう)さんの会話劇で魅せる「超・能・力!」。


 自分の不手際を隠蔽するために、いもしない犯人をでっち上げた警察官(片岡鶴太郎)ですが、それが突如実体化して逃走を始める「追いかけた男」。


 町の薬剤師(小堺一機(こざかい・かずき))が、住民に怪しげな薬を処方して獣性化を企(くわだ)てる「モルモット」。


 極悪非道な病院の院長(佐野史郎)に命を奪われてきた多くの患者がゾンビ化して大挙して押し寄せ、院長を八つ裂きにする「地獄のタクシー」と凄まじいものでございます。



 また、トラウマになる程、怖いお話があることでも知られたシリーズでございます。


 織田裕二さんが物入れのロッカーに入ったまま出られなくなり、それごと廃棄処分される「ロッカー」。手違いで棺桶に入ってしまい、生きたまま火葬される「死ぬほど好き」は、わたくしが閉所恐怖症なのでトラウマでございます。



 怖がらせることに工夫を凝らした作品もあります。


 座敷童(ざしきわらし)風の小児の幽霊が、いつも画面のどこかで見切れている「見たら最期(さいご)」。


 岸田今日子さんが演者で語り部となり、闇の精霊の圧倒的な暴力を、三人組の愚連隊(そのひとりはレースクイーン上がりのバラエティ系人気タレントだった岡本夏生(おかもと・なつき)サン!)に切々(せつせつ)と訴える「闇の精霊たち」。
 この作品ではサブリミナルの手法で、禍々(まがまが)しい精霊たちの姿がイラストで、岸田の像に何秒かに一度の割で掛かり、恐怖を煽るという斬新さでございます。ラストを迎えて初めて総毛立つ筋運びは、いかにも『世にも~』らしい作風でもございます。


 いかりや長介さん出演の「穴」は、底の知れない穴に産業廃棄物を長年捨て続けていると、ある日、空の狭間からそれらが降り注いでくる……という恐怖でございます(SF作家・星新一(ほし・しんいち)の有名な名作古典SF短編『おーい でてこーい』(´58)が原作)。


 「おばあちゃん」は草村礼子さんが出演されました。山奥の病院で瀕死のお婆さんが、小学生の孫の女児に一日だけ自由な時間が欲しいと懇願し、渋る孫と魂を入れ替えます。お婆さんの肉体に入った孫の魂は、途端に筆舌に尽くしがたい苦痛と絶望感に苛(さいな)まれます。
 一方、孫の身体を得たお婆さんは、現世で暇乞(いとまご)いを済ませるも、敢えて魂の再交換はせず、孫をお婆さんの肉体と共に見殺しにいたします。
 更に怖いのは、長じて年頃の娘(演じるのは片平なぎささん!)となった、孫の肉体を持つお婆さんは、自分を粗略に扱った自分の嫁(孫にとっては母親)を山奥の病院に移し、敢えて無理な延命治療を施します。自分がかつてそうされたように、なるべく苦しめて殺すためなのです。


 「サブリミナル」は、為政者がこれ以上の人口増加を食い止めるべく、蠱惑(こわく)的なサンバ・ガールズの愉しげなお菓子のCMを繰り返して流します。実は「65才以上は自殺しろ!」というメッセージをフィルムの何コマかに一回挿入していたというオチです。「パラダイス、ガム!」という劇中のコマソンが怖かったなぁ。


世にも奇妙な物語´19 雨の特別編』


 さて、そのような大変な歴史のあるシリーズの、令和初のスペシャルドラマ『世にも奇妙な物語´19 雨の特別編』でございます。


 ストーリーテラータモリさんですが、最近ではキャラクター自体が人間離れをしてきておりまして。いきおい別の俳優さんと絡ませて怪人振りを際立たせることにスタッフも腐心されてんじゃないでしょうかね。


 今回のパートナーは佐藤二朗さん。人を殺して逃げてきて、タモリさんと雨の山小屋に閉じ込められるという筋立てでございます。


 ラスト、犯罪をタモリさんに看破され、口封じに刃物を突き立てます。
 するってえと、タモリさんの姿は瞬時に佐藤さんに変わり、刺したハズの佐藤さんの実体が消滅し、刺された佐藤さんの骸(むくろ)だけが残ります。
 オチとしては前出の「追いかけた男」のパターンではあるんですが、佐藤さんに変貌を遂げるタモリさんの画像処理の技術が見事の一言でございます。
 まあ、何てんですかね。モーフィングを更にデジタル化したような凄まじいものでして。兎に角(とにかく)サングラスをかけたままのタモリさんが、無理なくあの佐藤さんの小さい目になるんですから。



 ドラマ本編は、「さかさま少女のためのピアノソナタ」・「しらず森」・「人間の種」・「大根侍」・「永遠のヒーロー」の5本立てでございます。  


「さかさま少女のためのピアノソナタ


 「さかさま~」は、曰(いわ)くありげなドイツの古い楽譜の曲を弾くと、その演奏時間だけ「時」を止められるというキテレツな物語でございます。
 時間を止める、もしくは演奏者の半径何メートルだけの時間が流れる、という設定なのでございましょうか。


 玉森裕太さんの主人公がビルの窓外を落ちゆくヒロインの黒島結菜(くろしま・ゆいな)さんを何とか救おうと尽力いたします。しかし彼は楽器を演奏し続けなくてはなりません。
 曲を演奏し終われば時間が流れだしてヒロインは落下、曲を間違えれば楽譜の呪いで玉森さんが重症を負う、という新手のカットバック!


 かたや室内で楽器を演奏し、もう一方は窓外で虚空にさかさまで受け答えをしております。ヒトの命がかかっているのに何やら呑気(のんき)で楽しげで、この状況は大変に落語的でございます。玉森さんの編み出した起死回生の窮余の一策もシャレていて秀逸でした。


しらす森」


 「しらず森」は、吉田羊(よしだ・よう)さんが母親役で主演です。


 同窓会で息子と帰郷したヒロインは、30年前に小学校で埋めた自分のタイムカプセルを受け取ります。その後、実家の近くの森に息子と入った折、突如子供が神隠しに遭い、悲嘆に暮れます。
 このご時世、心配でございますよね。子供への事件がニュースで流れたり、「不審者に注意!」という張り紙もカットインされ、緊張を煽りに煽ります。


 30年前に彼女が埋めたタイムカプセルの中に入っていたものが息子とその一家を救う、という粗筋でございます。いかにも『世にも奇妙な物語』なシノプシスでございます。
 お話自体は王道なんですが、捜索するヒロインたち、さ迷う息子と双方のドラマをきちんと描いておられて見応えがありました。


 森の神社の神主役で、㈱アンカット所属の個性派俳優・春木生(はるき・せい)さんが出ておりまして、これが怖い怖い! まだ40才くらいかと思いますが、カラコンと白髪のメイクで不気味な怪老人となって画面に不穏な空気をもたらします。
 彼が若くて優しい神主だった時に小学生時代のヒロインに伝えた言葉がキーワードとなりハッピーエンドとなりますが、この神主の存在自体が時を重ねる負の面を象徴していて、爽快感だけではない、視聴後には鉛を飲みこんだような感慨もあり、物語を深めております。


 ひとつ難を言わせて頂ければ、ヒロインのタイムカプセルが手で簡単に開閉可能なタイプだったことが惜しいなあと。アレが缶切りで開けるタイプの缶詰めだったら、更に開封へと至るまでの「一場面」が増えることで、より盛り上げることができたでしょうし、外からの介入が全くなかったことが断定できて神秘性ももっと高まったハズですが。


「人間の種(タネ)」


 「人間の種」は人間讃歌の物語です。母親を自分の過(あやま)ちで死なせてしまったと、自責の念を持ち続けているヒロインがいまして、これが女優・木村文乃(きむら・ふみの)さん。


 ある日、庭の花壇から子供の手首が生えている。慌てて掘り出すと、それは女児。
 女児は「あなたのお母さんよ」と名乗り、ヒロインを甲斐甲斐しく世話をしようといたします。最初は懐疑的だったヒロインも、母と名乗るそれの心根(こころね)の優しさを知り、家族のようなものが始まります。


 ところが、それは水を与え過ぎると、早く終焉を迎えてしまう生き物で……というのが粗筋でございます。


 木村さんが母親と称する存在に振り回されるコメディエンヌぶりが冴えております。母親も6才の女児から15才の少女、31才のオトナの女性へと変貌を遂げていきますが、それぞれを子役・粟野咲莉(あわの・さり)ちゃん、山田杏奈(やまだ・あんな)さん、岡本玲(おかもと・れい)さんが演じておられます。
 自身とは対等ではありえない幼女から対等である成人女性へと次第に変身していく順序を踏むことで、ヒロインは無理なく対象(母親)に歩み寄れ、最終的には自らの心の澱(おり)まで吐露することに至ります。その頃には一介の視聴者であるわたくしなぞも、そして劇中ヒロインも、その母親の人間性に惹かれております。


 いい作品ですね。危うく泣きそうになっちゃいましたよ。


「大根侍(だいこん・さむらい)」


 「大根侍」は、何か云うだけ野暮(やぼ)。まぁ、創り手とキャストがこれで良いんならそいで結構! というお話で。


 ただ、侍の得物(えもの)の大根を女子高生が齧(かじ)って撃破するというくだりは、クスッと笑いました。


 タモリさんが昔やっていた密室芸に「将棋寿司(しょうぎ・ずし)」てえのがありまして。将棋の要領で棋盤(きばん)に寿司(すし)を並べ、斜めに置いたり重ねてみたり、時には駒(こま)である寿司を食べたりなぞする、まあ高等遊民のお遊びですな。それを連想いたしました。現代ならば「食べ物を粗末に扱うな!」とネットで炎上する奴でございます。


 わたくし思いますに、この作品もそうなんですが、最近の『世にも奇妙な物語』は、パロディ喜劇のような軽い題材のものを番組の中で分散して何回かに分けて放送、それもオーラス(オールラスト・一番最後)に後編を持ってくるきらいがございます。


 番組当初は、ストーリーテラータモリさんが「振り」も「回し」も「オチ」も担当していました。番組と視聴者を繋ぐフィルター役だったからです。劇中でカラダを張ってのオチもこれまた多い。開腹手術をされたままで放置されたり、宇宙空間に放り出されたり、侍に首をはねられたりと、死ぬような(?)目に遭っております。


 しかし、タモリさんは何のご功績かは存じませんが、国民的な存在となられ、今や完全なる番組の象徴となりつつあるんじゃないかとあたしは睨んでます。まぁあたしなんかが睨みましても、街の信号が早く変わるわけじゃなし、赤いポストが青くもなりはしないのでありますが。


「永遠のヒーロー」


 そして殿(しんがり)は、郷ひろみさんが初めてヒーロー役に挑戦した「永遠のヒーロー」! もう期待値が嫌が応でも跳ね上がります。


 それで、脚本担当が…… エッ! ブラジリィー・アン・山田さんですか……。……もう嫌な予感しかいたしません。テンションだだ下がりてございます。


 時代は近未来。人間に超人的なパワーを与える「改造人間手術」が一般化いたしまして、それによって犯罪も激増。そこで日本の政府は「怪人対策室」を設営、こちらにも改造手術を受けたチームを作って対抗しようという趣向でございます。


 郷ひろみさんの演じるのは怪人検挙率ナンバーワンの隊員でして、コードネームは「レッドライガー」。来年定年退職で、病身ながらも可愛らしい一人娘とのんびり暮らすのが今の生きる張りでございます。


 冒頭に市民を脅かす、往年の特撮変身ヒーロー『超人バロム・1(ワン)』(´72)のドルゲ魔人(怪人)ならぬ「ゲルゲルゲ」なる悪い怪人の声を、ベテラン人気声優の山寺宏一(やまでら・こういち)サンが演っております。


 これがもういけません。「七色の声でアニメファンを幻惑する、現代の中村メイコ」として声優界に君臨している御仁でございます。
 ああ、これはきっと全ての敵役(かたきやく)の声をアテるのかな? という胸騒ぎ。そしてそれらを聞き逃すまいと耳をそばだてるわたくしがおります。結果、敵のラスボスから中ボス、全ての戦闘員、ナレーションに至るまで計10名を巧演! やっぱり上手いなぁ。


 郷ひろみさんの同僚の改造人間たちの名前もふるっております。


・桜井五郎(演、神尾佑)――戦隊シリーズ第2作『ジャッカー電撃隊』(´77)のレッドことスペードエースの変身前の名前
・山本大介(演、森田甘路)――『仮面ライダーアマゾン』(´74・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20141101/p1)の変身前である山本大介からの引用
小牧りさ(演、木本夕貴)――『秘密戦隊ゴレンジャー』(´75)でモモレンジャーことペギー葉山を演じた女優さんのご尊名


 往年の特撮ヒーローの登場人物名で統一するのかと思えば、女優名まで役名になってたりと、訳が分かりませんが。


 ちなみに、桜井五郎には「さすが、エース!」の台詞(セリフ)があります(笑)。


 山本大介は何故かポッチャリ体型で、いつも口を動かしております……。しかも、アマゾンこと山本大介がはじめて覚えた日本語である


「バ、バカヤロウ! バカヤロウ!」


という台詞までもが……。こういう悪ふざけはよろしくございません。すっかり気持ちがそれに行ってしまいまして、筋立てを見失うこと夥(おびただ)しい。


 ヒーローを描く作品でございますので、沢山のヒーロースーツ・着ぐるみが出て参ります。やけに出来の良い仕上がりだなぁと思っておりましたら、これは既成の作品、それも茨城県では大人気のローカルヒーローでございます。その名も『時空戦士イバライガーR』!
 「永遠のヒーロー」に出てくるヒーロースーツも悪側の着ぐるみも全て、『~イバライガーR』からの言わば「客演」でございます。


 興味が湧いたのでネットで調べてみましたら、これが大変なものでして、何と20体もの着ぐるみの多さ! ´07夏からの立ち上げ、2年後にはTBSテレビに密着取材され、現在までステージショー・撮影会・サイン会・イベント出演は数えきれず、商品化やコラボ企画も引きも切らないという歴史のある大ヒット作品でございます。


 また、このヒーローの作品世界観が入り組んでいる、入り組んでいる。主役級のイバライガーは複数存在いたしまして、未来の人類が現代の我々のために送り込んだヒューマノイド(人造人間)が「初代イバライガー」。初代の代替品だったのが奇跡的に起動したのが「イバライガーR」。Rが時空の狭間で別のスタイルを持った「イバライガーブラック」。イバライガーの試作機の一体がサポートロイドとなった「イバガール」、Rより更に未来から来たのが「ハイパーイバライガー」と一個師団もかくや(笑)。


 「ジャーク」なる敵の組織も充実しております。悪のエネルギー生命体で、負の感情を媒介として人間に寄生いたします。
 「首領」「四天王」「怪人」「戦闘員」と大まかな階層もございます。首領と四天王の一部はまだ謎の存在。四天王のひとりは、戦闘員の「片腕」に寄生。全貌は明かしておりません。
 怪人には兄弟の者もおり、見た目は生き写しでございます。戦闘員には黒・赤・緑の種類がありまして、黒は怪人クラスの能力、赤はそれに準じ、緑はジャークに寄生された初期段階の人間、という色分けでございます。緑色の戦闘員はまだジャーク化が進んでおりませんので人間に戻れる可能性があり、赤にはそれが殆(ほとん)どないという設定。


 もうお分かりになりましたか? そうです、ごっこ遊びの要素。着ぐるみの流用・改造多用は、『ウルトラQ』(´66)⇒初代『ウルトラマン』(´66)や、『人造人間キカイダー』(´72)⇒『キカイダー01(ゼロワン)』(´73)の世界でございます。シリーズの世界観が入り組み、キャラクター設定が煩雑なのは、それだけショーの場数(ばかず)が多く、製作者の愛情が深いのでございましょう。


「♪タッタンタカタン、タカタンカタン」。


 わたくしめの原稿にもそろそろエピローグが近づいて参りました。


 「永遠のヒーロー」のラス前、郷ひろみさんの主人公は、自分や怪人対策室の仲間が、実際にはスマートフォンのゲームの中だけのバーチャルな存在だということを知らされます。


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2020年号』(19年12月28日発行)所収『世にも奇妙な物語'19雨の特別編』評より抜粋)


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『ウルトラギャラクシーファイト』総括・合評1 ~尺は短いがウルトラヒーロー共闘でまとめられたストーリー

(文・中村達彦)
(2020年2月8日脱稿)


 2019年3月公開の『劇場版ウルトラマンR/B(ルーブ) セレクト!絆のクリスタル』と2019年7月放映開始の『ウルトラマンタイガ』第1話を結ぶ作品。『ウルトラマンギンガ』(2013年)から『ウルトラマンR/B』(2018年)までのウルトラマンロッソとウルトラマンブルの兄弟、更にウルトラマンタロウをはじめウルトラ6兄弟やウルトラマンゼロウルトラマン妹のグリージョや外国で製作されたウルトラマンリブットも登場している。アクションを重視したストーリーだ。俳優は登場せず、着ぐるみスーツで占められている。
 監督は坂本浩一。海外の『パワーレンジャー』シリーズ(1993年~・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20080518/p1)をはじめ、日本ではウルトラシリーズ以外にも東映特撮などを手がけている。東映でもヒーロー大集合映画を手掛けており、それぞれの見せ場を見事に作っているので、担当監督としては申し分ないだろう。


 ストーリーは各惑星でウルトラマンが襲われる事件が続発し、ウルトラマンロッソとウルトラマンブルが去ってしまった地球でも、ウルトラウーマングリージョと彼女を助けに来たゼロがウルトラダークキラーに襲われ捕まってしまう。ロッソとブル兄弟は強制的に召喚されて、昭和ウルトラ一族の故郷である光の国でウルトラマンタロウからその異変を聞かされて、彼らの妹であるグリージョの捜索に向かうが、岩の惑星ペノルで『劇場版ウルトラマンギンガS(エス) 決戦!ウルトラ10勇士!!』(2015年)に登場した超時空魔神エタルガーの攻撃を受けてしまう。同じ頃、ウルトラマンオーブウルトラマンX(エックス)とウルトラマンジードに極似したふたりの黒い戦士の攻撃を受けていた。
 ロッソとブルを救ったのはタロウの依頼を受けたウルトラマンリブットで、他の惑星にいたウルトラマンX・ジード・オーブも駆け付けてきたウルトラマンギンガ・ウルトラマンビクトリーに助けられる。


 改めて光の国に集まるウルトラマンたちへウルトラダークキラーからのメッセージが。囚われのグリージョとゼロは惑星テンネブリスにいるという。2人を助けるため、飛び立つ7人のウルトラマン
 ウルトラダークキラーは、かつてウルトラマンたちを苦しめた強敵エタルガーやダークルギエル、ウルトラマンXやウルトラマンオーブウルトラマンジードのエネルギーを吸収して作った3体の悪のウルトラマンXやウルトラマンオーブウルトラマンジードとともにダークネスなる軍団を構成している。それらを見守る謎の影。


 テンネブリスに到着したウルトラマンたちを迎え撃つダークネス軍団。次々に敵を引き受けていくが、残ったロッソとブルはウルトラダークキラーの攻撃を受ける。だがグリージョを助けるため、エネルギーを与え続けていたゼロの姿にウルトラマンたちは奮起。各々はゼロの力を由来とする姿にタイプチェンジして、ダークネス軍団を撃破する。
 残ったダークキラーはなおも暗黒エネルギーで巨大化、ウルトラマンゼロダークネスを生み出すなど抵抗するが、ウルトラマンタロウの援護、ジードの力を借りて強化形態に変身したゼロビヨンドと、ロッソ・ブル・グリージョが合体したウルトラマングループが登場。ウルトラマンたちの一丸となっての一大攻撃で倒される。


 新鋭ウルトラマンリブットにその存在を暴かれて、ラストにウルトラマンたちの前に姿を表す、事件の黒幕である悪のウルトラマンでもあるウルトラマントレギア。トレギアを追って飛び立っていくウルトラマンたちと、ゼロとともに故郷の綾香市へと戻っていくグリージョの姿で終幕となる。



 2010年代に登場した新世代ウルトラマンたちの共闘を描いて、『ウルトラマンタイガ』の物語の直前に起きていた戦い。トレギアが黒幕であったことは周知のことであろう。歌唱グループ・ボイジャーなどが奏でる各『ウルトラマン』の主題歌BGMが劇中に流れて、否応なく盛り上げてもいる。またウルトラファンをニヤリとさせる単語があちこちにありそれらも嬉しい。海外製作のウルトラマンリブットも顔見せ程度に終わっておらず、その強さを見せている。
 他にもウルトラ5兄弟とウルトラ6重合体したウルトラマンタロウがその全身を炎上させて自爆特攻するウルトラダイナマイトでダークキラーを倒した過去の戦いが、セリフのみならずきちんと映像で描かれたり、ゼロやグリージョにも見せ場が用意されているあたりもよい。もっとも最新作『ウルトラマンタイガ』の3大新ウルトラマンであるウルトラマンタイガ・ウルトラマンタイタス・ウルトラマンフーマが最後までチラリとも現われなかったのは残念だし、ウルトラマンオーブの好敵手・ジャグラスジャグラー登場が外されたのも残念だったが……。


 しかし、近年では作品ごとに異なっているはずのパラレルワールドで、その越境は容易ではないとされていたはずなのに、特に説明もなく越境ができていたり、昭和ウルトラの世界である光の国に、他の並行宇宙の世界にいるウルトラマンたちが簡単に集合してしまえるのは少し安易な気がする。何らかの説明なり秘密の次元越境が可能な人工ルートができたなどのウラ設定を作った方がよいのでは?


 ウルトラマンの敵は回りまわってウルトラマンというのがここ10年のパターンだが、同様に強敵に苦戦する中でウルトラマン同士の絆からスーパーパワーが発揮されて、超ウルトラマンが登場し、戦いに勝つパターンも目に付く。その流れは、今度の映画『劇場版ウルトラマンタイガ ニュージェネクライマックス』でも継承されているようで……。


 飛び立った7人のウルトラマンは、変身前の俳優ごと今度の映画に登場するが、『タイガ』第1話の冒頭と『タイガ』本編の間でも時間は12年くらいが経過しているはずなので、変身前の地球人たちは12年分の歳を取っていないと矛盾が発生してしまう(笑)。次の『ウルトラマン』ではこのへんにも矛盾が発生しないように、あるいはSF的な言い訳をつけることで実は矛盾はないとするような工夫をして、そういった要素でも子供やマニアたちを疑似SF的な知的遊戯で楽しませてほしい。


(了)


『ウルトラギャラクシーファイト』総括・合評2

(文・久保達也)
(2020年1月25日脱稿)

*『ウルトラマンR/B』と『ウルトラマンタイガ』の間に起きた史実!


 2019年9月29日(日)から無料動画配信サイト・YouTube(ユーチューブ)の円谷プロ公式チャンネル・ULTRAMAN OFFICIAL(ウルトラマン・オフィシャル)にて毎週日曜朝に週1回で配信されてきた各回約5分の短編シリーズ『ウルトラギャラクシーファイト ニュージェネレーションヒーローズ』(19年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200110/p1)が、同年12月21日(日)に全13話で完結した。


 本作『ウルトラギャラクシーファイト』では、映画『劇場版 ウルトラマンR/B(ルーブ) セレクト! 絆(きずな)のクリスタル』(19年・松竹・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190407/p1)でデビューを飾った敵キャラ・ウルトラマントレギアが一応のウラのラスボスキャラである。
 しかし実質的には、パチンコメーカー・京楽(きょうらく)が2012年にリリースした『CRぱちんこウルトラマンタロウ 戦え!! ウルトラ6兄弟』以降、同社のウルトラマンを題材にしたパチンコにラスボスとして登場してきたウルトラダークキラーが本作のラスボスキャラを務めている。


 そして、トレギアとダークキラーが手を結んでつくりだした偽ウルトラマンこと黒いウルトラマンであるウルトラマンエックスダークスネス・ウルトラマンジードダークネス・ウルトラマンオーブダークネス・ウルトラマンゼロダークネスに、歴代シリーズのラスボス級キャラである暗黒の魔神ダークルギエルや超時空魔神エタルガーたちと、『ウルトラマンギンガ』(13年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200819/p1)から『ウルトラマンR/B(ルーブ)』(18年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20180826/p1)に登場してきた、いわゆるニュージェネレーションウルトラマンたちが宇宙を狭(せま)しと激闘を繰りひろげてきた。


 最終回となったEpisode(エピソード)13のラストにて、唯一(ゆいいつ)生き残ったトレギアを追って、ダークキラーの本拠地・惑星テンネブリスを飛びだしていく7人のニュージェネレーションウルトラマンたちに、トレギアが高笑いするイメージ映像をかぶせて幕となる……
 本作は昨2018年度の直前作『ウルトラマンR/B』の後日談である『劇場版 ウルトラマンR/B』後のエピソードであり、そしてこの『劇場版R/B』で初登場したトレギアがレギュラー悪として登場した最新作『ウルトラマンタイガ』(19年)第1話『バディゴー!』冒頭(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190811/p1)のウルトラマントレギア VS 7大ニュージェネレーションウルトラマンとの宇宙空間での大決戦の間に起きた史実として、両者をつなぐ役割をも担(にな)っていたのだ。


 だが、決してそればかりではない。映画『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE(ザ・ムービー)』(09年・ワーナー・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20101224/p1)でデビューを飾って、2010年代のウルトラシリーズではニュージェネレーションウルトラマンたちを常に支える頼もしい先輩としても描かれてきたウルトラマンゼロを起点とした、後輩ウルトラマンたちの「人物相関図」が点描されることで、本作は『ギンガ』以降のニュージェネレーションウルトラマンの総決算ともなりえていたのである。


*登場キャラ全員をカッコよく描いてみせる、感覚的なようで実は技巧的な作劇&演出!


 映画『劇場版R/B』で女子高生・湊アサヒ(みなと・あさひ)が初変身したウルトラウーマングリージョを、Episode1では『R/B』の舞台となっていた並行宇宙の地球である日本の綾香市(あやかし)で、ウルトラダークキラーからその身を呈してかばって以降、本作でのゼロはEpisode10に至るまで、ダークキラーがつくりだした無限の闇・ダークキラーゾーンの中でグリージョとともに囚(とら)われの身となってしまっている。


 これはたとえば、


●『ウルトラマンA(エース)』(72年)第13話『死刑! ウルトラ5兄弟』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060803/p1)に、ゲストとして登場したウルトラ4兄弟=ゾフィー初代ウルトラマンウルトラセブンウルトラマンジャックのように、せっかくマイナス宇宙にあるゴルゴダ星に全員が集結したのも束の間(つかのま)、ロクな活躍も見せないうちに異次元人ヤプールによって十字架に磔(はりつけ)のままになってしまったり
●同作の第26話『全滅! ウルトラ5兄弟』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20061030/p1)では、地獄宇宙人ヒッポリト星人にブロンズ(青銅)像として固められてしまったウルトラマンエースを助けに来たのに、自分たちもほとんど一矢(いっし)も報いずにすぐにブロンズ像に固められてしまったり
●『ウルトラマンタロウ』(73年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20071202/p1)第18話『ゾフィが死んだ! タロウも死んだ!』で、ウルトラ兄弟の長男・ゾフィーが火山怪鳥バードンに火だるまにされたあげくにやられっぱなしだったり
●同作の第40話『ウルトラ兄弟を超えてゆけ!』で、ウルトラ5兄弟が暴君怪獣タイラントに次々とあっけなくやられていったり


 同時期の70年代前半の昭和の仮面ライダーシリーズに客演した先輩仮面ライダーたちと比べると、「兄さん」なのに「弱い」「情けない」といった印象がつきまとっていたのと同様だ! といった批判も論理的にはありえるのかもしれない。


 しかし本作のゼロは、70年代前半の第2期ウルトラシリーズに客演した先輩ウルトラ兄弟たちのようには必ずしも弱くて噛ませ犬のようには見えてはいないだろう。それは単身で一方的にヤラれているような負け方では決してなく、あくまでもウルトラウーマングリージョを守るための重荷を背負ったハンディキャップ・マッチになっているというエクスキューズがある作劇、そしてそれらを的確に体現してみせているアクション演出があったからだ。
 つまり反実仮想で暗黙裡に、グリージョがこの場にいなければウルトラマンゼロは勝てないまでもウルトラダークキラーにここまで一方的にはヤラれることはなかったハズなのだ! 敵わずとも拮抗はできたかもしれない! そのように視聴者の心の片隅に思わせるような作劇&演出ができていたからでもあったのだ。



 平成仮面ライダーシリーズのヒロインたちは決して守られるだけの存在ではなく、中には仮面ライダーに変身までするほどに活躍を見せるコもいるのとは異なり、昭和の仮面ライダーシリーズにレギュラーで登場してきた「ライダーガールズ」たちは単なる「人質要員」としての印象が強かった。グリージョも一見するとその「ライダーガールズ」のような扱いかと思われそうではある。


 だが、そのグリージョもEpisode10では、


「私だって、ウルトラマンです!」


と叫んで、全身から強い閃光を放ってウルトラダークキラーとウルトラマンゼロダークネスといった2体の強敵を勢いよく吹っ飛ばしてみせる点描を入れてみせている。敵に一矢を報いてみせることで、ゼロの足を引っぱっているだけといった、ややもすれば昭和の先輩ウルトラ兄弟やライダーガールズたちのように視聴者に少々の不快感をも与えかねない印象をも回避(かいひ)することに成功しているのだ。


 これらは脚本の足木淳一郎氏や坂本浩一監督が、先述した『A』や『タロウ』のウルトラ兄弟客演編などで、当時や後年の子供たちや特撮マニアたちも感じていただろう不満や鬱憤を、ここぞとばかりに数十年後のリベンジ(笑)として解消しようとした作劇&演出でもあっただろう。


 先輩ウルトラ兄弟たちがワリを喰ってしまうことで往時の子供たちをガッカリさせてしまっていた作劇とは異なり、『ウルトラギャラクシーファイト』においては先輩ウルトラ戦士やライダーガールズ(笑)にも大活躍の場面を、あるいは結局は敵に押されて負けてしまうような場面であったとしても、敵に対して一矢は報いていたり、別のキャラクターを助けたり守ったりするためのハンディキャップがあったからだ! とするようなディテール描写を随所に挟んでいっているのだ。


 「最初は負けても、最後には勝つ!」といった作劇が「勧善懲悪・娯楽活劇」の普遍ではあり、ひいては昭和のウルトラ兄弟客演編や本作『ウルトラギャラクシーファイト』でも、「アラスジ」のレベルではそこに還元されてしまう同類項のものではある。しかし、そのような「エクスキューズ作劇」や一矢は報いてみせたという「反撃アクション演出」の有無などで、作品の印象やクオリティーといったものは天と地ほどにも異なって感じられてきてしまうものなのだ。
 そういう意味では、「ストーリー」「アラスジ」なぞは作品の「本質」などではまるでなく、苦戦や敗北した際の「エクスキューズ作劇」や「反撃アクション演出」の有無なども作品のキモなのであって、作品の「本質」ですらあるのかもしれないくらいなのだ!



●映画『劇場版 ウルトラマンギンガS(エス) 決戦! ウルトラ10勇士!!』(15年・松竹・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200404/p1)が初出で本作でも復活した超時空魔神エタルガーを倒すために、「地獄の特訓」(笑)をウルトラマンギンガ&ウルトラマンビクトリーに課したウルトラマンゼロ
●映画『劇場版 ウルトラマンX(エックス) きたぞ! われらのウルトラマン』(16年・松竹)では、ウルトラマンエックス・初代ウルトラマンウルトラマンティガが東京で戦っている間に、世界各地の主要都市に現れた溶鉄怪獣ツルギデマーガを倒すために歴代ウルトラマンたちとともに駆けつけたウルトラマンゼロ
●映画『劇場版 ウルトラマンオーブ 絆の力、おかりします!』(17年・松竹・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200406/p1)でも、ウルトラマンオーブとともに奇機械改竜ギャラクトロンと戦ったウルトラマンゼロ
●テレビシリーズ『ウルトラマンジード』(17年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20170819/p1)では、レギュラーキャラとなってウルトラマンジードと共闘したウルトラマンゼロ


 ニュージェネレーションウルトラマンたちの頼もしい先輩として大活躍をさせてきたウルトラマンゼロを本作ではあえて囚われの身として描いたのは、もちろんそろそろ従来作との差別化として、年輪を重ねてきたニュージェネレーションウルトラマンたちの方を逆にゼロよりも大活躍させることで、彼らニュージェネもまた強く成長したのだということを描いて、視聴者にゼロの大活躍とはまた別種のカタルシスも与えよう! といったところが、本作最大の目的でありコンセプトでもあったためだろう。


 恩人でもあり師匠でもあるゼロを救出するために、若き7大ウルトラマンが邁進(まいしん)する姿がひたすらカッコよく描かれる。そして、彼らにはゼロに助けられてきた「恩義」を感じているといった「行動動機」をそのセリフでも語らせてみせている。
 そして、これらのセリフによっても、歴代ウルトラシリーズを長年にわたって鑑賞してきた特撮マニアたちや、後追いでも歴代シリーズを鑑賞してきた特撮ファンや子供たちが、それらの作品に対する「記憶」までをも勝手にダブらせてしまうことまで計算したことで、単なるアクション連発だけの作品にも堕(だ)さずに、クドクドとした説明ヌキでの端的な「点描」だけでも「ドラマ性」をしっかりと宿らせることができているのだ。
 教科書的な意味での狭義のドラマツルギーとしては反則ワザでも(笑)、このような「点描」もまた広義の意味では「作劇的な技巧」そのものだ! といってもよいのではなかろうか!?


*「ドラマ性」を高めるためのものとしての「ヒーローの最強形態」!


 本作の終盤で、そのニュージェネレーションウルトラマンたちによるゼロへの「恩返し」の最大の象徴として描かれているのが、Episode11のクライマックスである。
 その直前回であるEpisode10で、ニュージェネウルトラマンたちの大活躍によって倒されたハズのウルトラダークキラーが、トレギアの力によりジャンル作品の毎度のお約束によって「質量保存の法則」を無視してデタラメにデカい姿となって復活する!――科学的・ハードSF的にはオカシいけど、ヒーロー活劇・ライトSF的には正しい作劇だと思うので、もちろん大カンゲイだ(笑)――


 ここでジードが、


「今度はボクたちがゼロを助ける番だ!」


と、テレビシリーズ『ジード』ではウルトラマンギンガ・ウルトラマンビクトリー・ウルトラマンエックス・ウルトラマンオーブの超パワーを模したエネルギーが小型カプセルから放射されて強化変身できる能力であったハズのものが、その場にいるウルトラマンギンガ・ウルトラマンビクトリー・ウルトラマンエックス・ウルトラマンオーブご当人たちのエネルギーを直々に浴びせることで、ウルトラマンゼロをその強化形態・ウルトラマンゼロビヨンドへと強化変身させるのだ!


 このゼロビヨンドは、実は『ジード』の中盤(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200523/p1)ではギンガ・ビクトリー・エックス・オーブの超パワーを再現するニュージェネレーションカプセルの力だけではなく、ゼロが地球で合体している妻子持ちのさえないサラリーマン・伊賀栗レイト(いがぐり・れいと)が「オレに限界はねぇ!」という掛け声とともに強化変身させるに至った形態であったハズだった。
 4人の新世代ウルトラマンの超パワーの結晶として、本作でもこのニュージェネレーションカプセルでの変身のバンク映像をキッチリと再現するのみならず、地球でのゼロとレイトとの間に生まれた絆をヌキにしてもゼロがビヨンドに変身できてしまった設定矛盾については、ジードはゼロに対して「レイトさんにはナイショで……」と頼みこんでいた(笑)。


 もちろん「アラスジ」レべルで云えば、ニュージェネウルトラマンたちがウルトラマンゼロに「恩返し」をするのならば、ぶっちゃけ単にウルトラダークゾーンからゼロを救出してみせる! というノルマさえ達成できれば、それだけで済むのである。


 Episode9のラストにおいては、ウルトラマンギンガ・ウルトラマンビクトリー・ウルトラマンエックス・ウルトラマンオーブウルトラマンジードに、それぞれウルトラマンゼロに対する「恩義」を端的に象徴するセリフを激アツに叫ばせながらウルトラマンゼロの力に由来するそれぞれの強化形態にタイプチェンジしていった。その描写を反転させるかたちで、今度は逆に後輩ウルトラマンたちの方からその力でウルトラマンゼロを強化形態に変化させるような描写を挿入しているのだ。これはもちろん、各ウルトラマンたちのタイプチェンジ形態をたくさん出すことで、画面をにぎやかにしたり変化をつけて視聴者を少しでも飽きさせないようにしようという意味もあっただろうが、それだけでもないだろう。
 ニュージェネウルトラマンたちがウルトラマンゼロを単に物理的・形式的に救出ができた! ということのみならず、各々の想いが込められたウルトラマンたちの光線エネルギーが注入されていくことで、ニュージェネたちの「恩返し」を具体的・即物的かつ「ドラマチック」な「ビジュアル」としても「象徴」させることができている「映像演出」にも昇華しているのだ!


 本作でのゼロビヨンドは、その姿への変身からEpisode12における、ゼロ自身のネガ像でもあリ短編シリーズ『ウルトラゼロファイト』第2部『輝きのゼロ』(12年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200314/p1)が初出でもある、悪の黒いウルトラマンでもあったベリアルの怨霊に憑依されたウルトラマンゼロがその全身の体色を黒色に染めた姿でもあったウルトラマンゼロダークネスの単独出現版とのガチンコバトルに至るまで、その全身が金色に光り輝いたままとなっていた。
 そして、キックの残像までもが星のようにキラキラと金色に輝くほどの演出がなされることで、テレビシリーズでは白銀主体の体色であったゼロビヨンドよりもパワーアップしていて、その全身が金色と銀色にキラキラと輝いていたゼロの真の最強形態・シャイニングウルトラマンゼロにも近いような、シャイニングとビヨンドとの中間形態なのだろうことも含意させているのだ!――後日付記:後付けのようだけど(?)、この形態にはウルトラマンゼロビヨンド・ギャラクシーグリッターという正式名称が付与されていた――


 もちろんフィクション・つくりものの物語であるからには、最後の最後に正義の味方であるウルトラマンたちが勝利することは、たとえ幼児であっても直観的にはわかっていることだろう(笑)。しかし、先述したように本作ではニュージェネウルトラマンたちのキャラを立てるためにもウルトラマンゼロが相対的にはワリを喰わされてきた。けれど、それだけでは視聴者のフラストレーション・欲求不満も少々たまってしまうだろう。よって、クライマックスではゼロにも相応のバトルを演じてもらうことが必要なのだ! そして、そのためにもこの終盤でのゼロのパワーアップしてからの反撃描写は有効に機能しているのだ。


 ゼロの父であるウルトラセブンのトサカ部分が外れてブーメラン武器となるアイスラッガーを継承する、ウルトラマンゼロの姿では2つ、ゼロの力を借りたウルトラマンオーブのタイプチェンジであるウルトラマンオーブエメリウムスラッガーでは3つあったトサカを、4つもそびえさせてそこから放ったクワトロスラッガーをゼロダークネスに向けて飛ばしたゼロビヨンド!


 しかし、ゼロダークネスにハネかえされてしまった金色に輝くスラッガーを、今度はその両腕の中で2体ずつで合体させて巨大な三日月状の刀2振りと化さしめた!


 ゼロビヨンドがその二刀流「ツインギガブレイク!」でゼロダークネスをスレちがいざまにブッた斬る!!


 これらのさまはまさに時代劇や劇画調の演出となっている! 斬られたゼロダークネスが燃え上がっている炎を背後に、二刀流をかまえたゼロビヨンドをアオリで捉えたカッコいいカットもまた、実は東映メタルヒーロー時空戦士スピルバン』(86年)や1年飛んで『仮面ライダーBLACK RX』(88年)の必殺ワザが決まった直後の各話の様式美的なシーンを発端に、それが日本特撮先般や合体ロボットアニメにまで波及して定着したものでもあった。
 しかし、マネであろうが良いものは良いのだし飽きも来ないのだ! ともかく最高にカタルシスが得られるシーンとなっていた!


*「アクション演出」で「ドラマ性」を高めることでもできる! 昭和ウルトラの先輩客演編を反面教師として!


 先述した往年の『A』や『タロウ』のウルトラ兄弟客演編では、兄さんたちがカッコいいところをほとんど見せずに終わってしまっていた。加えて、ウルトラ5兄弟を一度は全滅させたほどのヒッポリト星人が相手であるのに、通常回で多用するいつものウルトラマンエースの必殺ワザ・メタリウム光線一発で倒してしまっていたのだ。


 しかし、それではヒッポリト星人は通常回に登場する並みの怪獣と同じ強さしかなかったことになってしまうのだ。そのへんが子供心にも辻褄が合わないように感じられて腑に落ちなかったところでもある。


 だからそこは、助っ人に飛来したウルトラの父がエネルギーをチャージ(充電)して復活したウルトラ5兄弟が、ここぞとばかりに必殺光線を一斉照射!
 もしくは、超強敵・異次元超人エースキラーを倒した際のように、エースの頭頂部にウルトラ4兄弟のエネルギーを照射してからエースが放つ合体光球・スペースQをここぞとばかりに再披露をすべきであっただろう!


 「敵に一矢を報いる」アクション演出を敵キャラ側にも援用してみせれば、合体光線やスペースQを浴びてしまったヒッポリト星人にも、即座に爆発四散はさせずにしばらくは堪え忍んでみせているさまを、ヒイてジラして描いてみせる「タメ」の演出を挿入する!
 そのことで、最後には敵キャラが爆発四散して滅びるのは確定路線なのだとしても(笑)、それによってヒッポリト星人がますます強く見えてくるし、そんな強敵をも撃破してみせるヒーロー側の強さも際立つことで、最後の勝利のカタルシスをも倍増させることができたハズなのだ!


 歴史的な大傑作ではあるものの、一度にウルトラ一族100万人を敗退させたほどのジャカル大魔王を相手にして、最後にはウルトラ一族の長老・ウルトラマンキングの神秘の力によって復活したウルトラ6兄弟の合体光線で決着がついてしまった漫画『ザ・ウルトラマン』(75年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210110/p1)のラストバトルも、実にアッサリとしてしまっている。


 しかし、ジャッカル大魔王が復活を果たした(厳密にはジャッカル四天王のひとりが進化した)、先の『ザ・ウルトラマン』の実質的な続編でもあった漫画『ウルトラマンメビウス外伝 アーマードダークネス ジャッカル軍団大逆襲!!』(08年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210117/p1)のラストバトルは実にスゴい!


●今は亡き暗黒宇宙大皇帝エンペラ星人のヨロイ・アーマードダークネスの一部をやむをえずに着用して、ジャッカル破壊光線を阻止せんとするウルトラマンメビウス
●けれども、ヨロイの「闇の意思」に飲まれそうになってしまうメビウス
●それに対抗するために、ウルトラ6兄弟がメビウスとウルトラ7重合体を果たした最強形態・ウルトラマンメビウスインフィニティーが出現!
●されど、宇宙の各所からアーマードダークネスの残りの全パーツが飛来してきてメビウスインフィニティーの全身を覆(おお)ってしまうという再度の大ピンチが到来!
●そこに駆け付けたウルトラ一族の長老・ウルトラマンキングが、ヨロイの呪いを弱めるためにウルトラの国の秘宝・ウルトラベルの鐘の音(かねのね)を響かせる!


 ……といった攻守逆転のツルベ打ちといった感もある、粘りに粘ってみせる「アクション演出」の一連によって、ラストバトルもおおいに盛り上げてみせていたのだ!


 ハッキリ云って、「ストーリー」や「アラスジ」なぞではなくって、この手の勧善懲悪エンタメ活劇の成否のキモとは、このような


●「シーソー的な秘術の尽くし合い」の「パワー合戦の連発」
●たとえ敗退してしまうにしても、一矢は報いてみせたという「反撃アクション演出」の有無
●一時的にでも耐え忍んでみせるような「タメ演出」


といったディテール描写の有無によって「傑作か否か」や「名勝負か否か」といった品格が決まってしまうものなのだ。むしろソコしかないともいえるだろう。


 そして、「作品批評」もまたソコを析出して語っていくことこそが、作品の「本質」にも接近していくことができるショートカット・近道ですらあるのだともいえるだろう!――加えて、ついでに云わせてもらえば、「読ませる文章」一般の極意といったものも、この「シーソー感覚」や「タメ演出」といったものであって、「エンタメ活劇の作劇」や「アクション演出」の巧拙のテクニックにも通じているものがあるようにも思えるのだ(汗)――


●変身怪人アンチラ星人が化けていた偽・郷秀樹の前にホンモノの郷秀樹が再登場して、帰ってきたウルトラマンことウルトラマンジャックに再変身してウルトラマンエースとも共闘! アンチラ星人&サイゴン VS エース&ジャックの大激闘を描く!
●火山怪鳥バードンに一度は殺害されたゾフィー兄さんも最後にはウルトラの母の力で復活を果たして、タロウと共闘して地球最強の怪獣であるバードンをやっつける!
●暴君怪獣タイラントに太陽系の各惑星でひとりずつ対戦して敗退していったウルトラ5兄弟たちだったが、最後には死力を振り絞ってリベンジのために地球に飛来してきて、タロウを含むウルトラ6兄弟が組んずほぐれつの果てに合体怪獣タイラントを打ち負かす!
●重苦しい特訓ドラマや所帯じみた学園ドラマの中でも、月に1回くらいは助っ人参戦してくれるウルトラ兄弟とも共闘を果たして、ウルトラマンレオウルトラマンエイティが強敵怪獣を実に爽快にやっつける!
円谷プロ創立10周年記念作である怪獣映画『ダイゴロウ対ゴリアス』(72年)などもマイルドな良作だったとは思うけど、『東映まんがまつり』の枠内で上映された仮面ライダーシリーズの映画『五人ライダー対キングダーク』(74年)などのように、『ウルトラ5兄弟VS超獣軍団』(!)のようなひたすらに戦闘シーンが連発しているだけの新作映画をあの時代においても製作してみせる!(笑)


 往年の昭和の第2期~第3期ウルトラシリーズにおけるウルトラ兄弟客演編でもこのようなストーリーの作品が存在していれば、往時の子供たちに失望感や欲求不満を与えることもなく、最後には気持ちのいいカタルシスだけが残ったハズであったのだ! ひいては、それによって第2次怪獣ブームどころか特撮変身ブーム自体も失速せずに、かえって子供間での特撮ヒーロー作品の人気も沸騰して、変身ブーム自体ももっと延命させることができたのではなかろうか!?


――その伝では、そのへんの子供たちの喜ぶ機微をわかっていて、客演編では先輩ライダーたちをほとんどピンチに陥(おちい)らせることなく大活躍をさせてきた昭和のライダーシリーズを担当してきた東映の故・平山亨(ひらやま・とおる)プロデューサーは実に偉大であったのだ……(氏の感覚自体が非常に子供っぽかったともいえるけど・笑)――。


*各ヒーローの関係性&立ち位置を最大限に活かす「点描」とは!?


 もちろん、バトル演出だけではない。


 ニュージェネの中では最も後輩である『R/B』の主人公ウルトラ兄弟の兄であるウルトラマンロッソが、妹のグリージョをずっと守ってくれたウルトラマンゼロに対して深々と頭を下げている演技。


 先輩たちを「(初代)ウルトラマンさん! (ウルトラマン)ティガさん!」などと敬称をつけて呼んでみたり「お疲れさまです!」などと丁寧語や敬語で労をねぎらっていたオーブが(笑)、それらをきちんと踏襲(とうしゅう)して「ゼロさん、大丈夫ですか?」などと語りかける描写。


 鼻につく域には達してはいなかったものの、やや不遜な言動だったギンガ――というかギンガと合体している地球人青年・礼堂ヒカル(らいどう・ひかる)の言動――は、やはり先輩のゼロに対してもタメ口であったりする(笑)。


 基本的には腰が低くて常識人キャラであるジードも、その看板番組でずっと共演してきたゼロに対してだけは「先輩」というよりかは、いつもの「友だち」感覚(笑)で接しているのだ。


 これらの点描は、それぞれのキャラクターたちの個性やゼロとの関係性のちょっとした相違を端的に示してもみせている名描写ともなりえている。


 そのゼロが右手を後頭部に当てながら頭を左右にコキコキと動かす「あ~、疲れた」とでも云いたげな、妙にオッサンくさい仕草(爆)を見せる演出・演技も実によい(笑)。


 すでにデビューから10年が経過して、ニュージェネウルトラマンたちからすれば、ゼロが立派な大先輩=レジェンドウルトラマンと化していることを最大限に象徴する秀逸(しゅういつ)な描写にもなりえているのだ。


――『ウルトラゼロファイト』第2部ラストから、『ウルトラマンギンガ』第1話冒頭で描かれたウルトラ一族全員がソフビ人形化させられてしまった大戦争「ダークスパークウォーズ」までの間にも相応の歳月が過ぎていたであろう。さらに、それから1000年後の時代が『ギンガ』本編における並行宇宙の地球の世界でもあったので、作品世界の中でもゼロのデビューからは実はもうすでに数千年~数万年が経っているのかもしれない(笑)――


 そして本作では、ニュージェネウルトラマンたちの中では最も先輩であるウルトラマンギンガにリーダー感を与えて、先輩格キャラとして立てることにも成功していた。


 加えて、ゼロダークネスをゼロ本人にまかせて、ニュージェネウルトラマンたちが本作のラスボスであるウルトラダークキラーと決着をつけようとしたそのとき、先述した『CRぱちんこウルトラマンタロウ 戦え!! ウルトラ6兄弟』などのパチンコでの展開までをも本作は前史・史実として肯定(こうてい)したことで、そのウルトラマンタロウがダークキラーの因縁の相手としても必然性をもって現れることとなったのだ!


 ウルトラマンオーブウルトラマンジード・ウルトラマンロッソにその弟のウルトラマンブルに至るまで、近年のウルトラマンは歴代レジェンドウルトラマンのパワーを使って変身したりパワーアップするのが当たり前となった。その中でも昭和のウルトラマンの中では両耳から巨大なツノを生やしている強烈なルックスもあってか、キャラクターとしては根強い人気を誇(ほこ)っているウルトラマンタロウは、各ウルトラマンのタイプチェンジの一形態の元パワーのひとつとして扱われることが多かった――ロートルな筆者などよりもさらにはるかに年上である、初代『ウルトラマン』や『ウルトラセブン』などの第1期ウルトラシリーズだけを神格視してきた、今や還暦戦後の第1世代の特撮マニアにとっての『タロウ』とは、いまだに否定されるべき作品なのだとしてもだ!――。


 だが、今回もウルトラマンギンガの因縁の宿敵として再登場した悪の人型巨人・ダークルギエルが、かつてM78星雲・光の国で勃発(ぼっぱつ)したウルトラマンVS怪獣軍団との全面戦争「ダークスパークウォーズ」の最中(さなか)に、ウルトラマンたちや怪獣たちをもすべてを手のひらサイズのソフトビニール人形と化してしまったために、『ギンガ』本編ではタロウも人形のかたちとはいえレギュラー出演することとなっていた――そして『ギンガ』終盤では、その巨人としての本来の姿を復活させていた!――。
 つまり、タロウと「相棒」として直(じか)に常に接してきたのは、ニュージェネウルトラマンたちの中では『ギンガ』の男子高校生主人公・礼堂ヒカル=ウルトラマンギンガだけだったのだ。ギンガのみがレジェンドウルトラマンであるタロウと旧知どころか実に親しい仲であった史実を踏まえた描写がここで正しくなされているのだ。


 Episode12のクライマックスでは、さらにそのギンガのリーダーとしてのキャラを立てるための作劇&演出がなされていた。


 その前段ではタロウの力を借りることで、テレビシリーズ『ギンガ』の続編『ウルトラマンギンガS(エス)』(14年)におけるタロウのデザイン意匠(いしょう)をまとった強化形態・ウルトラマンギンガストリウムへと久々に変身する!


 そして、ウルトラマンビクトリー・ウルトラマンエックス・ウルトラマンオーブウルトラマンジードもこれに合わせてそれぞれの最強形態に、ウルトラマンロッソ・ウルトラマンブル・ウルトラウーマングリージョの3兄妹はオーロラのシャワーが降り注ぐ中で手をつないで、映画『劇場版R/B』で初披露となった最強形態・ウルトラマングルーブへと合体変身をとげてみせた!


 タロウの力を得たギンガがタロウの必殺光線でもある「ストリウム光線」を放ったのを皮切りに、ウルトラダークキラーが紫色の細いストレート状の光線を何重にも発射する中で、ウルトラマンビクトリー・ウルトラマンエックス・ウルトラマンオーブウルトラマンジード・ウルトラマングルーブが、レーザーブレード・電撃スパーク・七色の光輪など見た目も含めて実にあざやかにダークキラーに猛反撃を繰り出していく!
 オーブに至ってはエックスの攻撃に隙(すき)を見せたダークキラーに、「よそ見するな!」と云いながら空から急襲してキックをかますのがちょっとヒドかったりするけれど(笑)。


 もともと無敵の強さを誇っていた悪の巨人であるダークキラーをワザワザ「超巨大化」させる手法は、アタマの硬い旧型オタクたちには「近年の特撮作品によくあるマンネリの超巨大化ラストバトルだ!」などと批判をするのだろう。しかし、多数のヒーローの大活躍を気兼ねなく気持ち良く描写するためには、ラスボスがウルトラマンたちと同じサイズであると「集団イジメ」に見えてしまいかねないのだ(笑)。そういった印象を回避するためには、ラスボスには超巨大化してもらった方がよい。そうであれば、心置きなくフルボッコにできるのだ(笑)。そういう意味では絶対的に必要な演出でもあったのだ! ウルトラシリーズにかぎらず、あまたのヒーロー大集合作品のラストバトルが超巨大化ネタに収斂(しゅうれん)していくのは必然だとさえいえるのであった(笑)。


 ヒーローよりも巨大なサイズのラスボスと戦うヒーロー集団! といったシチュエーションの原点は、『仮面ライダーX(エックス)』(74年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20141005/p1)の劇場版で昭和の5人ライダーと戦ったラスボス・キングダークや、『仮面ライダーストロンガー』(75年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20201231/p1)の最終回で7人ライダーと戦った岩石大首領に、『(新)仮面ライダー(通称・スカイライダー)』(79年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210102/p1)最終回で8人ライダーと戦ったドラゴン型の巨大怪獣がその正体であったネオショッカー大首領などであろう。
 やはり平山亨プロデューサー作品であり、当時のことだから明確に意識して作劇したものであったかは怪しいものの、スタッフが無意識に集団イジメに見えることを回避するために採った処置でもあったのだろう。……いや、この手のラスボスの巨大化は、往年の名作特撮時代劇映画『妖怪大戦争』(68年)が元祖であったか?(笑)


 2019年11月28日に惜しくも亡くなられた特撮研究所矢島信男特撮監督が、『ジャイアントロボ』(67年)にはじまる東映特撮を発端(ほったん)として、外様(とざま)として招聘(しょうへい)された円谷プロ製作の『ミラーマン』(71年)や『ウルトラマンタロウ』(73年)に『ウルトラマンレオ』(74年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20090405/p1)などでもそのような特撮演出をしていたように、ダークキラーの背面を画面手前に配して、股下(またした)と両脚の間から(!)その奥にいるビクトリーをとらえたカメラアングルで巨大感&遠近感を両立させていた手法もここでは採られている。


 画面の左の隅に超巨人と化したダークキラー、右の隅には通常サイズの巨人であるウルトラマングルーブを配して、『タイガ』を除けばまだ最新のヒーローでもあるウルトラマングルーブの強大なるパワーがもたらす高速突撃攻撃をもってすれば、超巨大なダークキラーでさえもが超高速で押し出されて後方へと吹っ飛ばされていくダイナミックなアクション特撮などは、ダークキラーとウルトラマンのどちらかが強弱のバランスにおいてワリを喰ってしまうものではなく、双方の強さが同時に両立して描けてもいるカタルシスあふれるアクション演出たりえてもいるのだ!


 深読みをさせてもらえば、ダークキラーを攻撃する直前のグルーブの腕の構え方にやや女性的な柔らかい仕草が感じられるのも、グルーブにウルトラウーマングリージョも合体していることを、そして同時にグルーブの最強形態としての強者の余裕をも含意させようとしたスーツアクターの演技、もしくはアクション監督によるディレクションでもあるのだろう。



ウルトラマンタロウ「みんなのエネルギーを、(ギンガの)ストリウムブレスに集めるのだ!」


 ウルトラダークキラーの本来の因縁相手は昭和のウルトラマンタロウであった。最後のバトルの見せ場はニュージェネウルトラマンたちに譲るにしても、ここでウルトラマンタロウを参上させて、ダークキラーと最後の会話をさせるのもドラマ的には辻褄が合っている。


 タロウの指示で、『ウルトラマンギンガS』第1話でタロウがギンガの左手首に授与したブレスレットであったストリウムブレスに、ニュージェネウルトラマンたちの光のエネルギーを結集させることで、ギンガが強化変身をとげたウルトラマンギンガストリウムは、単身で全身を赤く炎上させてダークキラーへと超高速飛行で突撃を敢行する!


「これがオレたち! ニュージェネレーションの力だ!!」


 そう叫んでいる声はギンガのみならずグリージョも含めたニュージェネ勢全員の声である! これによってギンガ個人の突撃ワザでありながらニュージェネウルトラマン全員の想いやエネルギーが込められていることを、ベタでも映像的にも象徴させることができているのだ!――こういったていねいかつ親切なフォローの描写が存在しないと、ギンガ以外のニュージェネウルトラマンたちがいかにも補助的な役回り・傍観者へと堕してしまって、ワリを喰って見えてしまうワケだから、これもまた絶対的に必要なフォロー描写なのだ!(笑)――


 燃えさかる炎を背景に超高速突撃していくギンガの顔面のアップカットの周囲に、全ニュージェネウルトラマンの顔面をイメージ的に合成して繰り出された最強の必殺ワザは、タロウがその全身を炎上させて体当たりする自爆特攻ワザ「ウルトラダイナマイト」を継承した「ニュージェネレーションダイナマイト」だ!


 『ウルトラマンタロウ』の映像本編では一度しか披露されなかった、その全身を光学合成で赤く半透明で炎上させて敵に突撃して自爆する特攻ワザである「ウルトラマンダイナマイト」!――もちろん、その直後にウルトラマンのご都合主義的な万能の超能力でバラバラになった身体は復活するのだが(笑)―― それは当時の学年誌のグラビア記事やウルトラシリーズのオリジナル漫画での披露、70年代の子供向け豆百科などの書籍で連綿とその設定が語られてきたこともあってか、実に印象深いタロウの必殺ワザでもある。


 『ウルトラマンメビウス』(06年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070506/p1)でタロウが助っ人参戦した際(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20061203/p1)にも、強敵ロボット怪獣を相手に30数年ぶりに「ウルトラダイナマイト」を披露したことで、長年のウルトラシリーズマニアたちは狂喜乱舞! 本稿執筆時点での最新作である『ウルトラマンタイガ』(19年)第1話冒頭でも、タロウが「ウルトラダイナマイト」を披露していたことも記憶に新しい。
 ゼロの弟子にしてタロウの弟子でもあるギンガが、ここでウルトラ一族の中でも別格の必殺ワザといった印象もある「ウルトラダイナマイト」の系譜を継承する新必殺ワザを披露することは、映像的にも設定的にも実に盛り上がるものがあるのだ!


 『ウルトラマンメビウス』以来、地上波での放映に長らくブランクが空いたこともあってか玩具の売上高も半減しており、製作資金の調達には苦労したと思われる『ギンガ』。国内特撮のミニチュアを一手に製造・保有もしているマーブリング・ファインアーツ社――東宝東映・円谷作品を股にかけて活躍した特撮美術監督である故・大澤哲三などもここの所属であった――から、都市街を組めるような大量のミニチュアセットをレンタルしてくる予算を確保できなかったためであろうが(汗)、同作では山間部の小さな村落にある夏休み中という設定である高校の校舎を舞台にしたほどに、低予算作品ゆえの小さな世界観や若い役者陣によるお芝居を中心としていた作風については評価が分かれるところだろう。
 だが、この『ギンガ』を皮切りとして毎年、ウルトラマンシリーズが製作できるようになったのであり、その間に玩具展開的にも特撮技術的にも一定の進歩をとげていくこととなったことも、一方では見逃せにできない事実なのだ。



 そして、このギンガをニュージェネウルトラマンたちのリーダー的な存在として本作『ウルトラギャラクシーファイト』では描いてきたことも、昭和の第2期ウルトラシリーズではウルトラ兄弟の長男であるゾフィー兄さんや次男であった初代ウルトラマンが真っ先に噛ませ犬(汗)にされてしまった、当時の子供たちも残念に思っていたその処置を反面教師にした処置でもあっただろう。
 つまり、ウルトラヒーロー多数が登場する作品でヒーローたちの多少の強弱の濃淡をつけるのであれば、2010年代のニュージェネウルトラマンのトップバッターであったギンガこそを最も頼もしい存在として描いて、そのキャラを立ててみせる方法論がベストでもあったからだ――その逆に近作のニュージェネウルトラマンたちはお約束でもまだまだ未熟さが残るキャラクターとして描かれており、そういった差別化によってもまた彼らのキャラが際立っても来るのだ――。


 2010年代のニュージェネレーションウルトラマンが続々と生まれる好況を生み出す発端となった『ギンガ』に対するリスペクトが感じられるところはとにかく望ましいところだ。もちろん、このギンガやゼロのみを特別扱いとして、その他のウルトラマンたちをスタッフのたかが個人の好悪ごときで噛ませ犬にしてしまうような不公平さなども一切感じさせずに、全ウルトラマンたちをひとりのムダもなく個性豊かに活躍させつつ、最後の最後に勝利のカタルシスもきちんと到来することになる、微に入り細をうがった至れり尽くせりの作劇で、このクライマックスは最高に高揚感があふれるものともなっていた!


*本作の「仮面劇」&「作劇」をテレビシリーズでも実現させよ!


 本作の最終回であるEpisode13にて、本作の真の黒幕であるウルトラマントレギアがグリージョを真っ先に囚われの身とした理由は、先の『劇場版R/B』にてトレギアが一敗地まみれてしまった、ロッソ・ブル・グリージョの合体形態であるウルトラマングルーブの登場を阻止するためであったことが、ゼロの口から語られる。


 そう、ここでもトレギアは以前にグルーブに負けている史実をキチンと押さえており、そしてグルーブもまた「強者」としての存在であることをきちんと描いて、グリージョもまた単なる「人質キャラ」ではなく「重要なカギとなるキャラクター」であったことの説明も三重にできているのだ。そして、こういった念押しの描写やセリフがまた、マニア心や怪獣博士タイプの子供心をそそるものでもあったのだ。


 そして、その場に姿を見せたトレギアのことを、『劇場版R/B』でも共演したウルトラマンジードとウルトラマンロッソが敵対したこともある「既知」の存在だとして先輩たちに語ってみせている。ここでもまた、本作がジード・ロッソ・ブル・グリージョの4大ウルトラマンが共闘してトレギアに立ち向かった『劇場版R/B』のそのすぐあとの続編でもあることが改めて示されているのだ。


 トレギアとタロウがすれ違って、互いに振り向きもせずに立ち止まる、ホンの一瞬のバストアップの回想カットにつづいて、


「やはり、消すしかないな。タロウを、光の国を……」


とつぶやかせることで、今後のウルトラシリーズの展開に対する伏線フラグも立てて、トレギアはその場を去っていく……


「これはオレたちだけの問題じゃない!」


とエックスが語ったのを皮切りに、ニュージェネウルトラマンたちが同じウルトラマンとして、彼ら自身の故郷ではないもののM78星雲のウルトラ一族の故郷・光の国を守る決意を固めるさまを象徴的、というかそのまんま即物的(笑)に描くために、円陣を組んでコブシを合わせる7人の姿が真下から捉えられ――もちろん『仮面ライダーストロンガー』最終回における、円陣を組んだ7人ライダーを真下から見上げたシーンへのオマージュだ(笑)――、ウルトラマンたちはトレギアを追うためにゼロとグリージョに別れを告げる。


 『R/B』の舞台でもあった並行宇宙の地球の平和を兄であるロッソとブルに託されたグリージョは、当初は兄たちのことを心配するものの、「仲間を信じるのもウルトラマンの大事な資質だ……」などとEpisode2でゼロにかけられた言葉を絶妙な係り結びで口にしてみせることで、『R/B』の続編として、そしてグリージョのさらなる精神的な成長までもが描かれているのがまた秀逸である。


 眼下の地球を見下ろしながら宇宙空間で浮遊しているグリージョがゼロと会話を交わしている場面では、その背景映像として地球がかなりの大きさで描かれているのも、まずは「絵」になるからであろうが(笑)、二次的には地球防衛の使命・責任の重さを映像演出面でも象徴する効果を高めていた。



 時系列的には『ウルトラマンタイガ』直前の物語でもある本作『ウルトラギャラクシーファイト』の方が、製作時期的には同時期にテレビで放映された『ウルトラマンタイガ』よりもおそらくあとに企画も製作もスタートしていたのだろうが(?)、この『ウルトラギャラクシーファイト』最終回の直後が『ウルトラマンタイガ』第1話冒頭における光の国があるウルトラの星を眼前に控えた大宇宙空間でのトレギア VS 7大ニュージェネウルトラマン&タロウ・タイガ・タイタス・フーマの激闘シーンに直結していくこととなる……
 そのことは事前に製作側でも喧伝されてきたし、大方の特撮マニア諸氏であれば想定もできていたことでもあり、だからこそ「そこにつながってくれなければウソ!」ではある描写ではあったのだ。その意味でも『ウルトラギャラクシーファイト』最終回のラストは特撮マニア諸氏の望みも叶えてくれていた。


 そして、できれば『ウルトラギャラクシーファイト』直後の物語でもあった『ウルトラマンタイガ』の最終展開は、『タイガ』の物語の一応の終結点であるのと同時に、『ウルトラギャラクシーファイト』でのストーリー展開もすべてとはいわずとも一部は引き受けている壮大なる展開であってほしかったのだ。


 しかし……


 『ウルトラマンタイガ』は第1話冒頭でこそトレギア VS ウルトラ戦士団との激闘が描かれて、子供たちやマニア諸氏をおおいに狂喜させることとなったのにもかかわらず、その後の『タイガ』は本作『ウルトラギャラクシーファイト』での出来事などは想起すらされずに、どころか大宇宙スケールでのウルトラ一族の因縁錯綜劇とは接点すら持たない、作風的にも『ウルトラギャラクシーファイト』とは完全にかけ離れた作品になっていく……(汗)



 2020年3月6日(金)公開予定(執筆時点)の『タイガ』後日談である映画『劇場版 ウルトラマンタイガ ニュージェネクライマックス』(20年・松竹・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210704/p1)では、ニュージェネレーションウルトラマンたちが『ウルトラギャラクシーファイト』や『タイガ』第1話冒頭につづいて再び集結するのみならず、その最新の予告編では新ヒーロー・ウルトラマンレイガの誕生も告知されている。


 もちろん、テレビとは異なる映画ならではの豪華な雰囲気を醸(かも)し出す意味でも先輩ヒーロー大集合という企画自体は戦略として大正解だとは思える。しかし、あの第1話があったのであれば、『タイガ』はシリーズ中盤なり終盤などではニュージェネウルトラマン全員とはいわずとも数名程度は客演するエピソードも配置しておくことが、基本設定的にも適切であったであろうに……と思えてならないものがあるのだ。


 いや、『タイガ』にかぎった話ではなく、テレビのウルトラシリーズでも年に一度だけの劇場版のみではなく、いっそのことテレビシリーズ中盤などでも地球をメインの舞台とすることからはいったん離れて、宇宙空間や地球以外のどこかの惑星を舞台として、ニュージェネウルトラマンたちが変身前の役者陣の確保ができないのであれば声の出演だけの仮面劇になってもよいので、前後編で大活躍をさせるようなエピソードを毎年つくるべきではなかっただろうか?
 『ウルトラマンX』(15年)のシリーズ中盤では3部作で、前作のヒーローであるウルトラマンギンガ&ウルトラマンビクトリーが助っ人参戦するエピソードが用意されて、先輩ウルトラ戦士の共演編としては全ウルトラシリーズの中でもダントツの最高傑作が誕生したか!? と思えるほどの名編が製作されたが、本稿執筆の2020年1月現在ではこの試みが同作だけにとどまっており、後続のニュージェネウルトラシリーズには継承されていないことが実に残念ではある。
 今やオッサンである第2期ウルトラ世代がそのリアルタイムで、あるいはその下の世代でも20世紀のむかしには途切れなく放送されていた再放送などで鑑賞したその日や翌日には、全国の小学校で子供たちが大興奮して話題に挙げたり、ごっこ遊びで再現していた各作のシリーズ中盤でのウルトラ兄弟助っ人参戦編やウルトラ兄弟勢ぞろい編! この手法は現代の子供たちにもいまだに有効であるだろうと信じて疑わないのだ!


 たとえ「バトル中心」のストーリーではあっても、そのちょっとした作劇的な技巧によって、やや頭デッカチなテーマ主導の作品となってしまった『タイガ』などよりもはるかに地に足が着いている確かなドラマ性が感じられた『ウルトラギャラクシーファイト』を鑑賞していると、改めて手前ミソでもその持説を強く主張をしてみせる必要性を感じてしまう。


 地上波でのテレビ放映がある作品とネット配信のみの作品という相違はあるので単純比較はできないものの、実際にYouTubeでの再生回数も『ウルトラギャラクシーファイト』の方が『タイガ』の中盤以降のエピソードの倍くらいの数字をほぼ毎回稼いでいた(汗)。


 しかし、その当の『タイガ』も第1話の冒頭部のニュージェネレーションウルトラマンが勢揃いしての大バトル! については、歳若い特撮マニアたちこそ大歓迎して壮大ににぎわっていたのだ。
 それらのことを思えば、1970年代の学年誌や児童漫画誌コロコロコミック』などにおける内山まもる先生をはじめとする、大宇宙を舞台にウルトラ兄弟たちが大活躍するウルトラ漫画群(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210124/p1)のその数十年後の実写映像化作品としての側面もあったといえる『ウルトラギャラクシーファイト』などの「多数の先輩ヒーローが登場する連続ストーリー活劇」の方法論の方こそを、むしろ今後のウルトラシリーズの展開の「主軸」「中核」に据えていき、子供たちやマニアたちの興味関心を惹起・継続していくくらいでないと、もうこれ以上のウルトラシリーズ浮揚の勝算はないのではなかろうか!?


――その逆に、昭和の1話完結形式に戻って、「外国人」差別を「宇宙人」差別に代入していたような『ウルトラマンタイガ』の方法論は、その志(こころざし)の高さ自体は壮とすべしではあっても、子供向けあるいは大衆向けエンタメとしてはやや問題があったのではなかろうか?(汗)――


追伸


 『ギャラクシーファイト』のEpisode11から12にかけて、ウルトラマンゼロやニュージェネウルトラマンたちのラストバトルと並行して描かれた、M78星雲のウルトラ兄弟たちが所属する「宇宙警備隊」とはまた別の組織であるらしい「ギャラクシーレスキューフォース」の一員であるウルトラマンリブットの戦いでは、どくろ怪獣レッドキングの初代と二代目がコンビで登場するという、それこそ年季の入った特撮マニアたちのお遊びや二次創作的な妄想にすぎなかったものがホントに映像化されてしまっていた。
 しかも二代目の方は、初代『ウルトラマン』(66年)に登場した原典が水爆を飲みこんでいた設定を忠実に再現するかたちで、ワザワザ首を太くして初代とは正しいかたちで差別化されていたのだ!(笑) この二代目は基本的にはやはり低予算作品で流用キャラクターや色を黒く塗り替えただけの偽ウルトラマンたちの登場で済まされてきた本作『ウルトラギャラクシーファイト』の中では珍しく、実はわざわざ新造された着ぐるみであったそうだ。


 ……おカネの使い方を誤っているような気がしないでもないのだが、ロートル・マニア的にはついつい歓迎してしまう(爆)。


――後日付記:このレッドキング初代と二代目は、『ウルトラマンZ(ゼット)』(20年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200723/p1)第11話『守るべきもの』に、早くも初代は「レッドキングA」(オス)、二代目は「レッドキングB」(メス)という、それぞれ原典や『ウルトラギャラクシーファイト』に登場した個体とは別個体として、同時に再出演を果たしていた(笑)――

2020.1.25.


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2020年冬号』(20年2月9日発行)所収『ウルトラギャラクシーファイト ニュージェネレーションヒーローズ』総括合評1~2より抜粋)


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ウルトラギャラクシーファイト
ウルトラギャラクシーファイト2

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宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち 第七章「新星編」 ~不評の同作完結編を絶賛擁護する!

『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち 第一章~第三章』(17年・TVアニメ先行上映) ~戦争モノの本質とは!? 愛をも相対視する40年後のリメイク!
『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち 第一章「嚆矢篇」』 ~キナ臭い主張を期待したい(爆)
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 総集編アニメ映画『「宇宙戦艦ヤマト」という時代 西暦2202年の選択』(21年)が、コロナ禍で2020年下半期公開予定が2021年1月15日(金)に延期の果てに、ついに2021年6月11日(金)から公開中記念! とカコつけて……。毀誉褒貶がうずまいている、いや不評の声の方が多かったらしい(汗)、『宇宙戦艦ヤマト2202(ニーニーゼロニー) 愛の戦士たち 第七章 新星編』(19年・TVアニメ版#23~26(最終回))の肯定評(爆)をアップ!


宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち 第七章「新星編」』 ~不評の同作完結編を絶賛擁護する!

(文・T.SATO)
(2019年4月27日脱稿)


 『ヤマト2202』は『第一章』~『第三章』が神懸かっており、『第四章』・『第五章』で下がって『第六章』で盛り返し、最後の『第七章』でやや下がる……というのが私的印象だけど、それでも最後の『第七章』の健闘を称えたい。本作に口角アワを飛ばしているのはアラフィフ以上のオタだけで、若いオタがドン引きしている姿が眼に浮かぶけど(汗)。


 本作の原典である1978年夏のアニメ映画『さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20101207/p1)はラストで「自爆特攻」というかたちで幕を閉じて、往時の少年少女たちの感涙を振り絞った――当時もう20歳前後のオタク第1世代の中でもスレていた庵野秀明竹熊健太郎はコレを冷ややかに観たそうで、その見解もアリなのだけど、ソレらはあくまでも極少数派の感慨にすぎない――。


 この原典を早々にTVアニメでリメイクした同年秋に放映が開始された『宇宙戦艦ヤマト2』(78年)では、主要スタッフである漫画家・松本零士(まつもと・れいじ)の反対で、右翼的とも目される「特攻」エンドは回避がなされて、「反物質」組成の身体を持っている異星の美少女・テレサの単身特攻で幕を閉じていた。


 しかし、ポリティカル・コレクトネス(政治的に正しい)が作品のクオリティー&高揚に連動するワケでもない。正直、TV版『2』のラストが映画版『さらば』のラストに勝っていたとは云いかねる。


 その後に、『機動戦士ガンダム』(79年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19990801/p1)に代表される、『ヤマト』と比すればやや乾いていたリアルロボットアニメの勃興で、やや浪花節の『ヤマト』や『銀河鉄道999(スリーナイン)』(78年)に『宇宙海賊キャプテンハーロック』(77年)などの当時は革命的であった松本アニメは急速に古びて見えてきて、公開当時は左派系のオトナだけが批判をしていた「特攻」描写も、リアルロボットアニメ至上主義者と化したアニメファンたちがその数年前のオトナたちの口マネ(汗)をして「特攻」描写を批判するようにもなっていく――当時はローティーンであった筆者などもその典型の俗物のひとり(爆)であったので、後悔しております――。



 そして、40年後の『さらば』&『2』のリメイクたる本作『2202』ラストが新たに出した回答とは!?


 「特攻」を肯定もしていないが全否定もしていない! 少年マンガや女児向けアニメ的な「奇跡」で無事に生還ができたでもナイ! かといって、『さらば』&『2』とはまるで別モノだとのそしりを受けるものでもナイ! ソレは「特攻」&「生還」の両立でもあり、その過程をSF&テーマ的にディテールUPすることでもあったのだ!


 すなわち、ヤミクモな単艦「特攻」色を緩和するために、旧敵にして今や地球と同盟関係にあるガミラス帝国の「次元潜航艇」や、新敵である白色彗星帝国・ガトランティス帝国側の巫女などの助勢も得ることで、精神主義でもなく知恵と作戦でも戦っていく!
 ヤマト乗員たちがムダに無意味に好戦的であるのではなく、激戦の渦中でも老獪でシニカルな白色彗星帝国に対しては何度も講和を申し入れて、「そんな愛や平和主義の主張なぞは地球人が初ではナイ」と鼻で嗤(わら)われる!
 クローン技術で子孫の代を重ねていくのでDNAが完全に同一であるハズなのに、それでも各個人・各個体ごとには個性の違いが、ひょっとすると脳内電気信号だけには還元できないのやもしれない「実存」(人間性)といったモノや、物理的な存在証明のしようがない「魂」といったモノに、白色彗星帝国のズォーダー大帝やその次代の大帝候補らをして想いを馳せさせる!


 ここに、「利己主義」&「自己犠牲」の双方がともに常に抱えてもいる一長一短・是々非々・表裏一体といったモノを、激戦中でも自問自答をしてみせるヤマトクルー&旧敵ガミラスの武官などの姿を通じて、たとえ人間や大宇宙の最期(さいご)といったモノは究極的には「虚無」やエントロピー的な「熱的死」であることを重々承知しつつも、人間といったモノは「生きる意味」・「死ぬ意味」・「戦う意味」といったモノを求めて、そしてそれをついつい考えてもしまう過剰な「知性」を獲得してしまった「業深き生物」であることをカブらせてもいく。


 さらには、テレサいわく「人間は単なる物理的な星の輝きにも意味や道義性を与えてしまう」という発言で、物理学の一部では大マジメに云われている――筆者個人としてはマユツバに思える――「人間・知的生命体がこの大宇宙を認識・観測ができるようになるために、この大宇宙自体も誕生したのだ」という、実に倒立・逆立ちもしている科学的な学説でもある「人間原理」とも通底させていく。


 ここで、アメコミ洋画『アントマン』(15年)&その続編『アントマン&ワスプ』(18年)でも描かれていた、超ミクロの量子レベルでは「空間」に折り畳まれているようにも解釈ができる「余剰次元」(=高次元&時間)を、ヤマトの次元波動エンジンの臨界暴走が、本作では高次元存在に設定が改変されていたテレサ降臨をも招来して、高次元世界(天上世界)からの戦死者の再臨や、ヤマトの質量&エネルギーでは見合わない超巨大敵艦の撃破といった行為をSF物理的にも正当化をしてみせる。


 でも、それだけならば、やはりまだ「特攻」にすぎないので(笑)、直前作『宇宙戦艦ヤマト2199』(12年)のラストで善意の種族が住まっている惑星イスカンダルから持ち帰っていた、量子レベルでは空間に永遠に刻まれているとされる記憶(=波動)の力で、大海原もが蒸発して放射能汚染で赤茶けた荒涼の惑星と化してしまっていた地球それ自体を元の青い惑星へと復活させたオーバーテクノロジー、「コスモクリーナー」ならぬ「コスモリバースシステム」の副産物として生じた地下空洞――地表よりも時間が10倍早く流れるので「波動砲艦隊」急造ドックとして使用されていた「時間断層」――の海面に、大宇宙空間での「特攻」のその半年後にヤマトが突如として浮上してきて1名の生存を確認!
 超常的な存在である「時間断層」の空洞深奥が「高次元世界」にも通じており(さもありなん!)、その「時間断層」を周囲から爆縮した超エネルギーであれば、空洞経由で帰還してきたヤマトを再度、高次元世界へと飛ばすことも可能であって、文字通りの生死の狭間の高次元世界で懊悩している主人公男女の救出も可能なのだと目される!



 軍事的アドバンテージでもある「波動砲艦隊・急造ドック」と「男女2名の命」、いずれを採るのか? この軽々には決められない重大事は国民投票にかけられる……。


 今となっては心がウス汚れてしまった筆者なぞは文句ナシに前者を採るけども(汗)、往時の原典の作り手たちの年齢も超えてヤマト艦長たちの齢に近くなってしまった作り手&受け手たち(爆)の想いをも代弁するかのように、ヤマト乗員にして技術長かつ副長(副艦長)でもある真田(さなだ)さんが主人公男女ふたりの救出を求めての大演説も一席ぶつ!


 この一連の流れには賛否もあろうけど、個人的にはこの演説が大いに泣かせてくれもするのだ! 「英雄」よりも「小市民」がうんぬんといったあたりだけは、現代では逆説的に「小市民」こそが疑義を許さぬ神聖不可侵化された現代の「天皇」である! と考えている筆者なぞはソコだけは共感しないけど(爆)。


 「講和」を求めつつも、それがダメならば「奴隷」「敗北主義的」な「絶対平和」ではなく、延命のためには何度でも引き金を引いてきて、最後にはその身を「爆弾」として「特攻」してしまった「矛盾」までをも指摘しつつ、せめて不可避ならば「戦争」にも「節度」や「ルール」や「抑制」といったモノを、その象徴としての「主人公男女ふたりの救出」を主張してみせる!
――ひいては我々マニア・オタクたちも、カッコいい「宇宙戦艦」や迫力あふれる「戦闘シーン」といったモノを、ドー言い繕ろおうとも愛(め)でてきたことは否めないので、原理主義的な意味での無抵抗・非暴力の絶対平和主義者ではアリエない!――


 ……ココまでの手数を踏まなければ、主人公男女ふたりの「生還」でさえ描けなくなっているとは、ひいては右派的な軍国主義作品としての批判を恐れなくてはイケナイとなると、作り手たちも実に大変な時代になってしまったモノだとも同情する(汗)。


 「永遠の闘争」&「各自が不確かなモノでも何らかの『意味』や生きる『意味』などを求めて彷徨するのが、『過去の人類』たちとも変わらない『人類の未来』の姿でもあるのだ!」と膨大な数の並行宇宙や分岐宇宙の視覚化で示唆してみせるのも、やや理に勝ちすぎた描写だとは思いつつも満腔から同意したい。


(了)
(初出・オールジャンル同人誌『SHOUT!』VOL.74(19年5月4日発行))


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『ANEMONE(アネモネ)/交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション』(18年)・『コードギアス 復活のルルーシュ』(19年) ~00年代中葉の人気ロボアニメのリメイク&続編勃興の機運!

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さよならの朝に約束の花をかざろう』(18年) ~名脚本家・岡田麿里が監督を務めるも、技巧的物語主体ではなく日常芝居主体の演出アニメであった!

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夜は短し歩けよ乙女』『夜明け告げるルーのうた』(共に17年) ~鬼才・湯浅政明カントクのイマ半と大傑作!

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『劇場版 ソードアート・オンライン -オーディナル・スケール-』(17年) ~大人気の本作にノレない私的理由を記しつつ大ヒットのワケを分析!

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『映画 聲(こえ)の形』(16年) ~希死念慮・感動ポルノ・レイプファンタジー寸前!? 大意欲作だが不満もあり

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ガールズ&パンツァー 劇場版』(15年) ~爽快活劇の続編映画に相応しい物量戦&よそ行き映画の違和感回避策とは!?

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心が叫びたがってるんだ。』(15年) ~発話・発声恐怖症のボッチ少女のリハビリ・青春群像・家族劇の良作!

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攻殻機動隊 新劇場版』(15年)・『ゴースト・イン・ザ・シェル(実写映画版)』(17年) ~義体のサポート期間終了問題で新自由主義も批判!?

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ラブライブ! The School Idol Movie』(15年) ~世紀の傑作!? それとも駄作!?

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這いよれ!ニャル子さんF(ファイナルカウントダウン)』(15年・OVA先行公開)

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『天才バカヴォン ~蘇るフランダースの犬~』(15年)

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機動戦士ガンダム THE ORIGIN(ジ・オリジン)』(15年・OVA先行公開) ~ニュータイプレビル将軍も相対化! 安彦良和の枯淡の境地!

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機動戦士ガンダムUCユニコーン) episode7 虹の彼方に』(14年・OVA先行公開)

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たまこラブストーリー』(14年) ~親密な商店街にオタの居場所はあるか!?

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『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ[新編]叛逆の物語』(13年) ~『せいぜいがんばれ! 魔法少女くるみ』『魔法少女 俺』『魔法少女特殊戦あすか』『魔法少女サイト』『まちカドまぞく』 爛熟・多様化・変化球、看板だけ「魔法少女」でも良作の数々!

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宇宙戦艦ヤマト 復活篇』(09年) ~肯定評!

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サマーウォーズ』(09年) ~話題作だがイマイチでは?

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ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』(09年) ~世評はともかく個人的にはイマイチに思える弁(汗)

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鉄人28号 白昼の残月』『河童のクゥと夏休み』『ミヨリの森』 ~2007年アニメ映画評

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『劇場版 機動戦士Z(ゼータ)ガンダム -星を継ぐ者-』(05年) ~映画『Z』賛美・TV『Z』批判!

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『劇場版ターンエーガンダムⅠ地球光/Ⅱ月光蝶』(02年)

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劇場版『エスカフローネ』(00年) ~いまさら「まったり」生きられない君へ……

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マクロスプラス MOVIE EDITION』(95年) ~歌の暗黒面&洗脳性! 夢破れた表現者の業を三角関係を通じて描いた逸品!

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超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか』(84年) ~シリーズ概観&アニメ趣味が急速にダサいとされる80年代中盤の端境期

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【映画パンフレット】宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち 第七章「新星篇」

『「宇宙戦艦ヤマト」という時代 西暦2202年の選択』が公開記念! とカコつけて
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『「宇宙戦艦ヤマト」という時代 西暦2202年の選択』がBS12にて放映記念! とカコつけて
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『「宇宙戦艦ヤマト」という時代 西暦2202年の選択』が放映記念! とカコつけて
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ウルトラマンタイガ最終回「バディ ステディ ゴー」 ~タロウの息子としての物語たりえたか!?

『ウルトラマンタイガ』序盤総括 ~冒頭から2010年代7大ウルトラマンが宇宙バトルする神話的カッコよさ! 各話のドラマは重めだが豪快な特撮演出が一掃!
『ウルトラマンタイガ』中盤評 ~悩めるゲストのみならず、ボイスドラマでの超人たちのドラマこそ本編に導入すべきだ!
『ウルトラマンタイガ』『ウルトラギャラクシーファイト』『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』『仮面ライダー令和』 ~奇しくも「父超え」物語となった各作の成否は!?
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 ウルトラマンシリーズの正統番外編であるネット配信『ウルトラギャラクシーファイト』(19年)の第2弾『ウルトラギャラクシーファイト 大いなる陰謀』(20年)が、2021年5月26日(水)にBD&DVD発売記念! そして、同作にウルトラマンタイガも登場記念! とカコつけて、『ウルトラマンタイガ』最終回合評をUP!


ウルトラマンタイガ』最終回「バディ ステディ ゴー」 ~タロウの息子としての物語たりえたか!?

(文・久保達也)
(2020年1月12日脱稿)

*「最終章」ではなかった『ウルトラマンタイガ』の最終章(汗)


 仮面ライダースーパー戦隊もそうだが、近年のウルトラマンシリーズの「最終章」は、レギュラー悪との最終決戦に的をしぼった連続ものの形式で描かれることが常だったものだ。


・『ウルトラマンオーブ』(16年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20170415/p1)におけるライバル青年ジャグラス・ジャグラー
・『ウルトラマンジード』(17年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20170819/p1)におけるラスボス・ウルトラマンベリアル、そして彼と通じている壮年SF作家・伏井出ケイ(ふくいで・けい)=ストルム星人
・『ウルトラマンR/B(ルーブ)』(18年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20180826/p1)における大企業社長・愛染マコト(あいぜん・まこと)=ウルトラマンオーブダーク=精神寄生体チェレーザに、ナゾの美少女・美剣サキ(みつるぎ・さき)――彼女は厳密には「悪」ではなかったが――


 「昭和」や「平成」中盤までの時代に放映されたウルトラマンシリーズとは異なり、『ウルトラマンギンガ』(13年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200819/p1)以降のいわゆるニュージェネレーションウルトラマンシリーズでは、もはやレギュラーの敵キャラが登場するのが当たりまえとなっている。仮面ライダースーパー戦隊のように正義側のキャラと悪側のキャラの間にある深い因縁で結ばれた人物相関図を描く群像劇のクライマックスとしてもおおいに盛りあがり、視聴者につづきを早く観たくてしかたがないと思わせるこの手法。近年のウルトラマンシリーズがこの手法を採用したこと自体は正解だったと見てよいだろう。


 本作『ウルトラマンタイガ』(19年)でも、レギュラー悪としてナゾの青年・霧崎(きりさき)=ウルトラマントレギアが登場してきた。
 しかもトレギアは、『タイガ』で主役ヒーローとして活躍するウルトラマンであるウルトラマンタイガの父であるウルトラマンタロウのかつての友人として設定されていた。そして、第1話『バディゴー!』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190811/p1)の冒頭で描かれたように12年前に、


ウルトラマンギンガ
ウルトラマンビクトリー
ウルトラマンエックス
ウルトラマンオーブ
ウルトラマンジー
ウルトラマンロッソ
ウルトラマンブル


 といった7大ニュージェネレーションウルトラマンと宇宙空間で一大決戦を展開した!


 トレギアはウルトラ一族の故郷で自身の故郷でもあるM78星雲・光の国を攻撃しようとするも、


ウルトラマンタイガ
ウルトラマンタイタス
ウルトラマンフーマ


 といった、『タイガ』に登場する新米ウルトラマンたちも駆けつけてきてこれを阻止するが、圧倒的な猛威を見せつけるウルトラマントレギアによって3人のウルトラマンは宇宙の藻屑となって消え去ってしまう!
 タイガの父・タロウもまた、自身の全身を炎上させて自爆特攻する捨て身の荒技・ウルトラダイナマイト(!)でトレギアと相打ちになって姿を消してしまう!



 ウルトラマントレギアがこれだけの因縁も深い強敵として描かれた以上は、『タイガ』の終盤でも近年のウルトラマンシリーズの作劇を踏襲してタイガ・タイタス・フーマとトレギアの最終決戦を「最終章」として連続ものの形式で描くのだと、筆者は当然のように思っていたものだ。


 だが、『タイガ』終盤である第21話『地球の友人』~最終回(第25話)『バディ ステディ ゴー』は、そんな「最終章」「最終展開」とは呼びがたい構成となっていた。


 まず、第21話『地球の友人』は第18話『新しき世界のために』の続編的な内容であり、往年のウルトラシリーズでは初代ウルトラマンを倒したこともあるほどの最強怪獣である宇宙恐竜ゼットンの都市破壊で母親が重傷を負ったことで、宇宙人に復讐を果たそうとする青年をゲスト主役としていた。これは『ウルトラマンタロウ』(73年)第5話『親星子星一番星』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20080511/p1)でのタロウと大亀怪獣との戦いで両親を失った少女をゲスト主役にした名作回である第38話『ウルトラのクリスマスツリー』を彷彿とさせる趣向ではあった。


 ただ、そのゲスト青年が霧崎にそそのかされて復讐を果たそうとした相手は、宇宙恐竜ゼットンとは何の関係もないどころか、『ウルトラセブン』(67年)第48話~最終回(第49話)『史上最大の侵略』前後編では全人類を地底ミサイルで滅亡させようとした強敵宇宙人である幽霊怪人ゴース星人であった。
 『タイガ』第10話『夕映(ゆうば)えの戦士』に登場した暗殺宇宙人ナックル星人オデッサや第18話『新しき世界のために』に登場した触覚宇宙人バット星人のように、昭和のウルトラシリーズでは強豪宇宙人であったナックル星人やバット星人が人類に友好的で平和に暮らす宇宙人として、そのキャラを大幅に改変されての登場となっていた。


 いくら『ウルトラセブン』や『帰ってきたウルトラマン』(71年)などの昭和ウルトラシリーズとは別の並行宇宙にある別次元の地球が舞台である『タイガ』で、たしかにその宇宙人種族の全員が悪党ではない可能性もあるとはいえ、このようなエピソードにやや善良で同情の余地もあるゲストに割り振るのであれば、かつてのウルトラシリーズでは問答無用の凶悪宇宙人であったキャラクターを配するのではなく、それこそ先の『タロウ』第38話『ウルトラのクリスマスツリー』に登場した善良な宇宙人であるエフェクト宇宙人ミラクル星人などの方がよかったのではあるまいか?――当時の着ぐるみも現存しており、映画『ウルトラマンギンガ劇場スペシャル ウルトラ怪獣☆ヒーロー大乱戦!』(14年)でも再登場したのだし!――


 これではゴース星人ではなく、その着ぐるみを流用して別キャラクターとして登場した円谷特撮『戦え! マイティジャック』(68年・円谷プロ フジテレビ)第16話『来訪者を守りぬけ!』に登場した友好的な宇宙人・モノロン星人ではないか!?――つーか、それをねらったんだろうが、そんなネタは我々オッサン世代にしか通じないわい!(笑)――
 先に挙げた『セブン』最終回前後編でもウルトラセブンを絶体絶命の危機に追いやったハズの強敵怪獣である双頭怪獣パンドンに至っては、モノロン星人が飼っていた小さな猿が環境の激変で巨大化して大暴れした悲劇の怪獣・パッキーと同等の扱いであった(爆)。


*「王道」回のハズなのに『タイガ』の中では「異色作」!


 まぁ、上記の「変化球」のエピソードは『タイガ』としては「通常回」だったワケだが(苦笑)、つづく第22話『タッコングは謎だ』では、『帰ってきたウルトラマン』第1話『怪獣総進撃』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20230402/p1)~第2話『タッコング大逆襲』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20230409/p1)に登場したオイル怪獣タッコングが、それこそ『セブン』のカプセル怪獣のように「人類の味方」として、タイガとタッグを組んで『帰ってきた』第1話に登場した凶暴怪獣アーストロンの兄怪獣・凶猛怪獣ギーストロンと戦った。


――往年の初代アーストロンの着ぐるみを改造しての登場となった『帰ってきた』第8話『怪獣時限爆弾』の爆弾怪獣ゴーストロンはアーストロンの弟だったとウラ設定されていた。同じく近年のアーストロンの着ぐるみを改造したギーストロンを、筆者も特撮マニア諸氏らの見解と同様、アーストロンの兄だと解釈させてもらおう(笑)――


 『帰ってきた』の劇中音楽を大量に流用したり――しかもクライマックスバトルではかの名BGM『夕陽に立つウルトラマン』が流れた!――、『セブン』第42話『ノンマルトの使者』に登場したゲスト少年・真市(しんいち)みたいに、鼻の左に大きなほくろがあるボーダーシャツを着た少年・シンジ(笑)をゲスト主役にしたりと、かなりマニアックな演出が目立つ回ではあった。
 しかしながら、ギーストロンが両腕にある金色のトゲ状部分から発射した三日月(みかづき)状のカッターをタッコングが高速回転してカワしたり(!)、宙をジャンプしたタッコングがギーストロンにケリを入れたり、夕陽が水平線に沈んでいく海へとタッコングが帰還するラストシーンなどに、東宝の怪獣映画・昭和ゴジラシリーズ(54~74年)の後期作品群や、大映の怪獣映画・昭和ガメラシリーズ(65~80年・大映)のラストシーンなどを彷彿としてしまったのは、決して筆者ばかりではないだろう。


 球形のボディーの股下部分に小顔が突き出ている可愛らしくて親しみやすいデザインである怪獣タッコングは、その憎めないルックス的にも「悪の怪獣」としてよりも「正義の怪獣」としての配役の方が望ましいとしての処置だろう。たしかに『タイガ』としては「異色作」ではあるのだが、ゴジラガメラといった「正義の怪獣」「ヒーロー怪獣」に声援を送った世代としては、タッコングのヒロイックな描写も広い意味での「王道」ではあるのだろうし、本来のターゲットである現代の子供たちにも受け入れられるように思えてならないのだ――ただし、この回ではレギュラー悪のハズである霧崎=トレギアが登場する余地がなくなってしまっていたが(汗)――。


 そして、第23話『激突! ウルトラビッグマッチ』には、第15話『キミの声が聞こえない』に登場した頭脳宇宙人チブル星人マブゼが、凶悪宇宙人サラブ星人・反重力宇宙人ゴドラ星人・高速宇宙人スラン星人とともに再登場。
 第15話では、『ウルトラマンジード』第1話(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20170819/p1)ほかに登場した、同作の宿敵であるSF作家・伏井出ケイが悪のウルトラマンであるベリアルの力と、どくろ怪獣レッドキングと古代怪獣ゴモラの能力を秘めた携帯型の怪獣カプセル2種を起動して変身していた、いわゆる合体怪獣であるベリアル合成獣スカルゴモラの着ぐるみの使い回し(笑)だった培養(ばいよう)合成獣スカルゴモラをつくる際に使用した「ベリアル因子(いんし)」を再利用して、チブル星人がニセウルトラマンベリアル(!)を誕生させる! そして、今は亡き本来のベリアルの長年の宿敵であったウルトラマンゼロ、そしてトレギアを巻きこむかたちで、市街地をリングとしたタイガ&ゼロ VS トレギア&ニセベリアルのタッグマッチが繰りひろげられた!


 ニセベリアルはオリジナルとの差別化として手のツメが黄色く塗装されていたが、これは元祖『仮面ライダー』(71年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20140407/p1)終盤の白眉(はくび)となった第92話~第94話=ニセ仮面ライダー編3部作に登場した、ショッカーライダー1号から6号の手袋とブーツが黄色かったのを意識したものか?(笑)


 ゴドラ星人がベリアルのことを


「あいつは(ウルトラマンジードに負けたハズでは?」


と語るのは、ゴドラ星人(の同族)が『ウルトラマンジード』第16話『世界の終わりがはじまる日』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200523/p1)にも登場していたこともあり、『タイガ』と『ジード』が異なる並行宇宙を舞台としていても、近年のウルトラシリーズに登場する宇宙人たちは拳銃の連射で空間の一部を切り取って別の空間につなげることができたりと、並行宇宙間での越境が技術的にも容易になっているようなので(笑)、広い意味では歴代シリーズがつながった世界であることを表現もできており、「ハードSF」ならぬ「ソフトSF」(笑)としてワクワクさせるには絶大な効果を上げていた。


 その『ジード』ではレギュラーのサブヒーローであったゼロがニセベリアルを指さして、


ジードがせっかく成仏させたっていうのに……」


と語るのもまたしかり。タイガが自身と合体している主人公青年である工藤ヒロユキ(くどう・ひろゆき)に、ベリアルを「光の国の大罪人」としてやや説明的(笑)に紹介するのは、映画『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE(ザ・ムービー)』(09年・ワーナー・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20101224/p1)にて父であるウルトラマンタロウがベリアルと直接対決したことから、タイガにとっても因縁深い敵であることを表現した実に秀逸(しゅういつ)な描写だろう。
 そればかりか、ニセタイガに変身しようとしたザラブ星人をゴドラ星人が「光の国の連中に目をつけられる」(!)と制止する場面は、たとえ「昭和」のウルトラマンの世界とは別次元の並行宇宙ではあったとしても、今や『タイガ』の並行宇宙でも「昭和」の「光の国」出身のウルトラマンたちの存在が宇宙人たちに知られていることが明確にされたことになるのだ!


 また、先の第15話では苦労して誕生させたスカルゴモラをトレギアに瞬殺されたにもかかわらず、そのままチブル星人が退場してしまったことには違和感が残ったが、今回はニセベリアルを「でくのぼう」と称したトレギアに、再登場したチブル星人が「ワタシの芸術を愚弄(ぐろう)するか!?」と怒り心頭となって、配下の宇宙人たちにさらにベリアル因子を注入させた描写は、知能指数5万(笑)で「宇宙最高の頭脳」を自称するほどにプライドが高いチブル星人でも、知識はあっても知性はない(笑)、知識はあっても人格や徳性面では劣ったキャラ(笑)であることを的確に描けていたかと思えるのだ。


 さらに、タイガとニセベリアルが戦う最中にトレギアがビルに腰かけて高見の見物を決めこんだり、乱入したかと思えば「ホラよ」と両腕をうしろに組みながらウルトラマンフーマの足を蹴って転倒させたり、


「こんにちは、みなさん。そして、さようなら……」


と人間大サイズの侵略宇宙人たちが潜伏している部屋を覗(のぞ)きこんで――室内からの主観で窓越しにトレギアの巨大な顔面をとらえたカットが実に効果的だった――、そこに突進してきたニセベリアルをトレギアがかわしたことでそのビルがガラガラと崩れていくや、トレギアが軽やかにスキップして去っていく(笑)といった一連の描写は、トレギアをいわゆる「ネタキャラ」として存分に描きつくした演出となっていた。


 地球でひっそりと暮らしている宇宙人たちの人間態をゲスト主役とした話が「通常回」(汗)であった『タイガ』では、着ぐるみのままの宇宙人キャラを多数登場させてシーソーバトルに徹したこんな「王道」回が「異色作」に見えてしまったが(苦笑)、「子供番組」で「重い話」をひんぱんに描くのなら、視聴者を逃さないためにもこうした回も合間合間に挟むべきではなかったか?


*1話完結形式の弊害。そして「いきなり最終回」!(笑)


 「通常回」である第21話、「異色作」である第22話、「王道回」である第23話と、『タイガ』の終盤は良く云うならばバラエティに富む構成で、悪く云うならば最後の最後まで「昭和」のウルトラマンさながらの「1話完結形式」であり、視聴者の興味を完結まで持続させるにはどうなのか? と思えたものだったが、残るはもう第24話『私はピリカ』~最終回『バディ ステディ ゴー』の前後編だけである。
 かつて宝島社が名作マンガの最終回だけ(!)を集めて発行していたオムニバス本のタイトルではないが、連続ものの様相を呈していた近年のウルトラマンシリーズの終盤とは異なり、『タイガ』はまさに「いきなり最終回」となっていた(笑)。


 それにしても、主人公のヒロユキが所属している民間の警備会社・E.G.I.S.(イージス)でオペレーターを務めていた娘・旭川ピリカ(あさひかわ・ぴりか)までもが、「いきなりアンドロイド」(爆)だったとして語られてしまうとは……


 映画『ゴジラモスラキングギドラ 大怪獣総攻撃』(01年・東宝)の主人公・立花由里(たちばな・ゆり)役や、映画『特捜戦隊デカレンジャー THE MOVIE フルブラスト・アクション』(04年・東映http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20041106/p1)のレスリー星人マリー・ゴールド=デカゴールド役ですでに特撮出演歴のあるグラビアアイドル上がりの女優・新山千春(にいやま・ちはる)が演じたE.G.I.S.の女社長・佐々木カナは第24話で、ピリカの正体が実は7年前にカナが道端でひろったアンドロイドであると、E.G.I.S.の隊員ですでにその正体が地球人ではなく宇宙人として描かれてきた青年・宗谷ホマレ(そうや・ほまれ)とヒロユキに唐突に語ったのだった。
 これは『ウルトラマンA(エース)』(72年)第28話『さようなら夕子よ 月の妹よ』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20061111/p1)で、それまで主人公の北斗星司(ほくと・せいじ)といっしょにウルトラマンエースに合体変身していた南夕子が突然、月星人の正体を明かして退場したのを彷彿とさせたほどの唐突さであった(笑)。


 いや、彼女の正体が実はアンドロイドだったなんて、それまでのシリーズで何の伏線もなかったよね? 『A』の場合は種々の「大人の事情」で夕子を退場させねばならなくなったのだが、そんな「昭和」の時代ならばともかく、今の時代にこんな荒っぽい展開は通常ありえないのではあるまいか?


 これについては、カナ社長とホマレとヒロユキがカップラーメンの銘柄(めいがら)をめぐってジャンケンで争う場面にピリカだけがいなかったなど、ピリカだけが食事をする描写がなかったために、それがアンドロイドとしての「伏線」だったとする意見がネットで見られたものだけど、筆者のみならずほとんど全員の視聴者や特撮マニアたちが気づかないような「伏線」ではそもそも「伏線」としては機能していないし(笑)、いくらなんでもそれはあまりに好意的に解釈しすぎなのではあるまいか?
 たとえばもっとあからさまに、ヒロユキとホマレが人間大サイズの宇宙人たちに囲まれてピンチに陥(おちい)る中に乱入してきたピリカが突然、常人とは思えない怪力を発揮して宇宙人たちを全滅させるさまや、ピリカには子供時代の記憶がなくてそのことを自分でも悩んでいたりするようなさまをベタでもシリーズ中盤で描いたりして、「ピリカの正体とはいったい?……」といった、視聴者の興味関心を持続させる手法くらいは取るべきだったと思えるのだ。


 前作『ウルトラマンR/B』では、主人公兄弟の湊カツミ(みなと・かつみ)=ウルトラマンロッソと湊イサミ=ウルトラマンブルの妹として描かれてきた女子高生・湊アサヒ(最終的にはウルトラウーマングリージョに変身!)が、シリーズ中盤で家族アルバムの写真や思い出の品が何ひとつ存在しないと判明したことで、アサヒの正体をめぐってネット上では特撮マニアたちがさまざまな憶測が飛び交わせる二次的な楽しみ方もできるつくりになっていた。
 これと並行して兄妹(きょうだい)たちの母親である湊ミオ(演じたのは元グラビアアイドルである真鍋かをり!)が行方不明となっていることのナゾ解きなども展開されたことで、アサヒは実はミオが変身した姿ではないのか? といった憶測なども、筆者も含めた当時のマニアたちが下馬評を楽しく展開していたものだ。
 実際にはその予測は見事にハズれてミオとアサヒは別人だったワケだが(笑)、たしかに前作ともネタがカブってしまうとはいえ、そしていくら1話完結形式とはいえ、いや、だからこそ、せめてこうしたナゾ解き展開で視聴者の興味を持続させようとしなかったことは、やはり今どきの21世紀の作品としてはいかがなものだっただろうか?


 第17話『ガーディアンエンジェル』のラストにて霧崎がカナ社長を狙撃したのを皮切りに――ゲスト主役の宇宙人・ミードが身代わりとなってくれることで難を逃れたが――、ホマレとピリカが順に霧崎の襲撃を受けていく…… これらはヒロユキを精神的に動揺させるためにあえて周囲の大切な人物たちをねらったのだと霧崎自身が語ってもおり、霧崎=トレギアが最終回前後編で宇宙から呼び寄せた宇宙爆蝕(ばくしょく)怪獣ウーラーの活動を阻止する重大な使命を実は担(にな)っていたピリカのことが邪魔だからとして襲ったワケではなかったのであった。


 シリーズ途中からでもトレギアがピリカの正体に気づいたりするようなかたちで接点をつくることもなく、むしろトレギアの陰謀阻止とはまったくの無関係なものとしてピリカが抱えていた怪獣ウーラー撃滅の使命が設定されていたために、ピリカ暗殺未遂劇や第24話のピリカの正体明かしがより唐突に感じられてしまうのである……
 強(し)いて云うならば、霧崎がピリカを襲おうとした際に、ウーラーが地球に迫(せま)ってくるビジョンをピリカから感じとった霧崎がほくそ笑(え)んでいる描写があって、ピリカとウーラーにはなんらかの関係があるとは示されてはいたのだが、彼女の正体が宇宙人製造のアンドロイドである伏線としては説明不足にすぎるというものだろう。


*トレギア&ヴィラン・ギルドの動機が「理由なき反抗」でイイのか!?


 最終回前後編ではウルトラマンタイガ・ウルトラマンタイタス・ウルトラマンフーマ VS ウルトラマントレギアの最終決戦よりも、単身でウーラーの阻止に向かったピリカをE.G.I.S.のメンバー、そしてピリカの勇気ある行動に心を動かされたサーベル暴君マグマ星人と宇宙商人マーキンド星人の共同による救出劇に主眼が置かれた印象が強かった。
 一見は感動的な展開に見えるのだが、このようなストーリー展開にする予定があったのであれば、マグマ星人とマーキンド星人を毎回のレギュラーとまではいかなくとも、数話に一度くらいは憎めない宇宙人として登場させることで、彼ら侵略宇宙人たちの地球人に対する心の変遷(へんせん)劇なども描くべきであったと思えてしまい、やはり唐突感は否(いな)めなかったものである。


 彼らはその最後の行動動機を「怪獣兵器を売る商売がしやすかった地球を守るためだ」などと偽悪的にウソぶいて主張していたが(笑)、それまでにもマグマ星人は第1話『バディゴー!』、マーキンド星人も第1話と第2話『トレギア』に登場しただけだったし、そもそもの彼らの「商売」自体がシリーズ全編を通して描かれてもこなかったし、彼らの商売を邪魔したトレギアに対して一泡(ひとあわ)吹かせてやるといった発言すらもがなかったのであった(汗)。
 本作『タイガ』における侵略宇宙人たちの犯罪組織として設定されていた「ヴィラン・ギルド」だが、多種の宇宙人が単発的にしか登場しなかった。最終回で共闘するのであればそこから逆算して、少なくともマグマ星人とマーキンド星人は、たとえば時にはタイガたちと共闘して彼らの商売の邪魔になるトレギアを攻撃したり、その逆にトレギアと同盟してタイガたちを襲ってくるといった、敵が味方に味方が敵にとその立ち位置をシャッフルさせて、タイガ・トレギア・ヴィラン・ギルドの三つ巴(みつどもえ)の戦いを描いていくことを、一方のタテ糸にしておいた方がよかったのではなかろうか?――『ウルトラマンオーブ』に登場した第3勢力であったハズなのに、数名(笑)しか構成員が存在しなかった悪の宇宙人軍団である「惑星侵略連合」も、合計3話分程度しか登場しなかったので(汗)「ヴィラン・ギルド」と同じような作劇上の問題を抱えていた――


 本作『タイガ』のコレクション玩具でもある「怪獣の力を秘めたリングタイプのアクセサリー」をトレギアから奪ってオークションにかけてしまい、怒り狂ったトレギアとヴィラン・ギルドとの壮絶なお宝争奪戦が展開する!――それこそこの作品世界に登場する宇宙人たちには高値で売れるだろう(笑)―― といったような、「悪」同士のコミカルな対立劇などもやるべきではなかったか?
 最終回では「宇宙人(=外国人のメタファー・汗)を地球から追い出せ!」と叫んでいた排外主義的なデモ隊のメンバーを、よりにもよってその宇宙人たちである第18話で古い木造アパートのひとつ屋根の下でバット星人と暮らしていた変身怪人ピット星人がラスボス怪獣ウーラーの攻撃による都市破壊から救う描写があった――ピット星人は第18話に登場した人間態の「やさぐれ女」(笑)と同じく黒の皮ジャンにジーンズを着用することで同一個体であることを表現していた――。
 それ自体はとても良いシーンなのだが、しかし同時に、「ヴィラン・ギルド」の宇宙人の誰かも、ここで助っ人参戦・人助けに登場させてもよかったとも思うのだ。



 そのトレギア=霧崎が、第24話で自身には「何の目的もない……」などとニヒルなことをピリカに語っていたのに至っては、さすがに少々首をヒネらざるを得なかった。そこはベタでも旧友・ウルトラマンタロウに対する妬みや恨みや憎しみでなければ、『タイガ』という作品の基本設定的にもダメだろう!
 おそらく一種の意外性をねらって、タロウとその息子であるタイガへの単なる「憎しみ」ではなく、もっと「虚無的」「ニヒリズム」なところに行動動機を設定しようとしたのだろうが、それが成功していたとはとうてい思えない。
 タロウの古い友人だと設定されても、トレギアがいったいタロウとの間に何があって、なぜに闇堕(やみお)ちしてしまったかについてが結局、最後まで語られなかったこともあってか、これまでタイガやヴィラン・ギルドに対して散々やらかしてきたイヤがらせの類いは、その行動動機を裏づけるものが何もないものに堕(だ)してしまったようにも思えてならない。


 こうなると、『タイガ』はその「シリーズ構成」が最後の最後で破綻(はたん)してしまったというよりかは、「1話完結形式」として個々のドラマ性を重視しすぎたあまりに、シリーズとしての全体的な流れを考えないままで突き進んでしまったために、しかもその最終展開や一応のラスボスとして君臨してきたトレギアのキャラに関しては、その最後があまり盛り上がらないものになってしまったのではなかろうか?
 どんな作品でもスタッフは良かれと想って作品をつくっている以上は失礼な発言になってしまうのだが、『タイガ』がこうなってしまったA級戦犯は、各所でのインタビュー記事などで推測はつく。


 ウルトラシリーズ番外編シリーズである『ウルトラギャラクシー大怪獣バトル』(07年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20080427/p1)~『ウルトラマン列伝』(11年)~『ウルトラマンX(エックス)』(15年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200405/p1)までのメインプロデューサーを務めたのは、『列伝ブログ』なども執筆していたバンダイから出向してきたプロデューサー・岡崎聖(おかざき・ひじり)であって、テレビシリーズにおけるウルトラマンエックスの最終形態のアーマー(ヨロイ)は、アーマーを着用したエックスの着ぐるみをチェックしている際に、それまでに登場してきたあまたの形態のアーマーの各所を合体させた最強アーマーを思いついて急遽それを実現させたという、実にチャイルディッシュな発想に基づいた逸話(いつわ)に象徴されるように、ウルトラマンシリーズを21世紀の子供たちにも合うようなエンタメ性や玩具性を高める方向性での番組づくりを進めてきた御仁であった。
 その次の『ウルトラマンオーブ』(16年)・『ウルトラマンジード』(17年)・『ウルトラマンR/B』(18年)では、『ジード』のメインライターに人気作家の乙一(おついち)を連れてきた製作畑上がりの鶴田幸伸が主導権を握っていたのであろうことが読み取れる。
 しかし、本作『タイガ』では円谷側の筆頭プロデューサーであり、かの実相寺昭雄監督の製作プロダクションである株式会社コダイ出身で、平成ウルトラ3部作ではシャープでクールな本編演出や空中戦特撮を披露してきた北浦嗣巳(きたうら・つぐみ)が主導権を握っていたようであり、氏は「昭和の時代のような1話完結形式のウルトラシリーズに戻したい」という主旨の発言を各所でしてきた御仁でもあったのだ。そんな氏だから、おそらくタイガがタロウの息子であるという設定にも関心はさほどなく、そこの設定を掘り下げてタイガ自身のドラマも構築していくという発想もなかったのだろう(汗)。


 ……ウ~ン。1話完結スタイルのテレビシリーズに、今の時代の子供たちや特撮マニアたちが喰いつくと想っているあたりでそうとうに絶望的に感覚が古いような(汗)。というか、今から40年も前の特撮マニアたちも、特撮雑誌『宇宙船』の創刊号(80年)などで「当時の『宇宙戦艦ヤマト』(74年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20101207/p1)や『機動戦士ガンダム』(79年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19990801/p1)などの人気テレビアニメが続きものとしての連続ストーリー性を獲得して年長視聴者の鑑賞にも堪えうるものをつくっているのと比較して、当時のスーパー戦隊シリーズなどのテレビ特撮の方は1話完結型式の『VSOP(ベリー・スペシャル・ワン・パターン)』になっていて観るに堪えない……(大意)」などといった主旨の批判をしていた時代があったというのに……(汗)


 筆頭プロデューサー側がそういう意識でも、いやだからこそ撮影現場ではそれに抵抗して、むしろ良い意味での「愉快犯」としてトレギア=霧崎を描写・演出していけばよかったのでは? という想いもある。


 『タイガ』放映開始の数ヶ月前に公開された『劇場版ウルトラマンR/B セレクト! 絆のクリスタル』(19年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190407/p1)では、主に主役ではない2号ウルトラマンや悪のウルトラマンを演じてきた名スーツアクター・石川真之介による、他人を小バカにしたようなピエロ的に小気味よく軽やかにしなやかな仕草やアクションをしてみせる演技と、声優・内田雄馬によるイケメン悪役なボイスによって、「悪」ではあっても過剰な重たさはないようなキャラクター造型が、同作で初登場したウルトラマントレギアにはなされていた。
 しかし、『タイガ』では第1話~第2話のパイロット編を担当してメイン監督ともなった市野龍一監督による、トレギアの人間態である霧崎役の役者さんに対するディレクション・演技付けの方向性にはやや問題があったのではなかろうか? その正体であるトレギアとは異なり霧崎は、その出で立ちがモノトーンのピエロ的な扮装でも直立不動のままで静的に佇んでいるだけであり、道化(どうけ)て狂ってもいるような軽妙なお芝居を与えられてはいなかったのだ。そのへんでジャグラー・伏井出ケイ・愛染マコト・美剣サキちゃんといった、若い特撮オタたちいわく「円谷のヤベーやつ」(笑)といった強烈なインパクトが出せなかったのも事実ではなかろうか? まぁ、このへんは役者さんの一存でできるお芝居ではないので、メイン監督がヘタに前作までの差別化としてそのように撮影現場で静的にディレクションしてしまったことにも責任があったのではないのかとも推測するのだ。


 脚本内容が仮にまったくの同一であったとしても、霧崎役の役者さんにジャグラーや愛染マコト社長のようにテンション高くてフザケまくったお芝居をさせてあげていれば、本作『タイガ』の作風はもっと明るく弾(はじ)けて、ひいてはバランスも取れて、対比の妙で「お気の毒なゲスト宇宙人」たちの人間ドラマも際立って、「明るさ」と「暗さ」の行き来でメリハリもついたのではなかろうか?――完成作品としての『タイガ』については、近年のウルトラシリーズとしてはやや「暗さ」の方が勝ってしまった作品に仕上がった……という結論が、衆目の一致するところでもあるだろう――



 それでも『タイガ』で最後まで一貫していたのは、最終回に登場した宇宙の星々を食い尽くすウーラーまでもが、ピリカが語ったように「おなかが空いてるだけ」の「お気の毒な宇宙人」ならぬ「お気の毒な怪獣」として描かれたことだった(笑)。
 先述したジャグラス・ジャグラーや伏井出ケイ、愛染マコトらがたとえ「ネタキャラ」ではあってもその行動には「悪」なりの明確な動機があったのに対して、そういう動機が実は「何もなかった」とされてしまった以上は(汗)、トレギアがもはや憎々しげな倒してしまっても構わない、むしろ倒してしまうことで爽快感も得られる「大悪党」としての精彩を欠いてしまっていただけに、これでは「変身ヒーロー作品」のラストとして本来ならば最大限に描かれてしかるべき「勧善懲悪のカタルシス」が得られるハズもないだろう。


 それにしても、『ウルトラマンギンガ』のラスボスである悪のヒーロー・ダークルギエルから『ウルトラマンR/B』のラスボス怪獣であるルーゴサイトに至るまで、ニュージェネレーションウルトラマンシリーズの最終回に登場した怪獣たちはバンダイのソフビ人形『ウルトラ怪獣シリーズ』ですべて商品化が先行して登場したのにもかかわらず、『タイガ』の最終回に登場したウーラーだけは発売されることがなかった。
 玩具会社・バンダイ側の意向や販売スケジュールが先行して、子供たちに売れそうな怪獣デザインも昭和の時代とは異なり脚本完成以前に決定しているのだろうと思われる近年のウルトラマンシリーズとしては珍しい処置なのだが、そういう意味ではバンダイ側の『タイガ』担当者も悪い意味での右から左へと流していくだけのサラリーマン仕事で、最終回の怪獣のデザインなどにも強く関与してこなかったのだとすれば、この場合はその処置が「凶」と出てしまったのではなかろうか?(汗) 製作現場のトップたちにエンタメ的なセンスがなさそうならば、玩具会社の担当者の方でエンタメ性の増強のためにシャシャリ出てきて、ウチで販売するこのラスボスにふさわしい怪獣を大活躍させるようなストーリーをつくりなさい! なぞと介入をするべきだったのだ!(笑)


*テーマ・ドラマ・人間描写の方が優先か? ウルトラマンたちの描写の方が優先か?


 全世界的に自国第一主義が蔓延し、移民排斥の動きが強まる中で、日本も決して例外ではなく、悪化する一方の日韓関係や中国で新型コロナウィルスが発生した件に便乗した、韓国人や中国人に対するヘイトをはじめとする民族差別が、ネトウヨだけならまだしも出版物や一部のマスコミにまで横行している始末である(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210213/p1)。
 そんな惨状の中で、宇宙人たちがひそかに暮らしている並行宇宙の地球を舞台に、カナ女社長=地球人、ヒロユキ=ウルトラマン、ホマレ=宇宙人、ピリカ=アンドロイドで結成されたE.G.I.S.の活躍を描くことで、人種を超越したさまざまな生命体の共存を訴えていた『タイガ』の志自体は、おおいに評価してもよいだろう。ウーラーを一見、醜悪に見える怪獣としてデザイン・造形して、最後にはウーラーとも共存へと至るのも、そのテーマとも整合するものとして好意的に解釈してもよいかもしれない。


 ただし、『タイガ』よりも2ヶ月遅れで放映が開始されて、AI(エーアイ)=人工知能を備えたヒューマノイド型ロボット=ヒューマギアと人類との共存を訴える『仮面ライダーゼロワン』(19年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200517/p1)と比べると、実は同じような異種族同士の共存テーマをやっているのにもかかわらず、そのテイストはあまりにも異なっている。
 アメリカで同時多発テロが起きた2001年に放映されて、『タイガ』と同様に怪獣と人類との共存を訴えていた『ウルトラマンコスモス』(01年)の商業成績はイマイチに終わったが、テロを口実にイラクを武力攻撃したアメリカが主張した「正義」に異を唱えた東映のプロデューサー・白倉伸一郎が、多くの「正義」をぶつけることで自分とは異なる意見の持ち主をどう対処するのか? を世に問いかけた『仮面ライダー龍騎(りゅうき)』(02年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20021109/p1)は空前の大ヒットを飛ばすことになった。
 地球環境の保護を訴えるために『ウルトラマンガイア』(98年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19981206/p1)では2号ウルトラマン・藤宮博也=ウルトラマンアグルが「地球環境を汚している人類」に対する批判を再三口にしていたが、『炎神(エンジン)戦隊ゴーオンジャー』(08年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20080824/p1)では敵組織の蛮機族(ばんきぞく)・ガイアークが「地球環境を汚している作戦」を深刻にではなくあくまでもコミカルに描きつつ、ゴーオンジャーが動物と乗りものの特性を兼ね備えた異種族でもある機械生命体・炎神たちともカッコよく共闘しているさまが描かれていった。
 同じような環境テーマを描くにせよ、深刻な「人間ドラマ」主導によってテーマを陰気に強調してしまうのか? それともあくまで悪が暴れてそれを倒すヒーローを描くための背景・舞台装置としてとどめるか? 時代は移り変わっても、円谷プロはあいかわらず前者であって、東映は後者であるように思える。


ウルトラマンゼロ客演・先輩ヒーロー客演・追加ヒーロー登場編の突出した再生回数でも明白!


 たとえ「重い話」が多かろうが、3大新ヒーローであるウルトラマンタイガ・ウルトラマンタイタス・ウルトラマンフーマの初登場時のバトル演出のカッコよさや、彼らが交わすコミカルなやりとり、戦闘のプロフェッショナル集団ではない警備会社にすぎないE.G.I.S.が人間大サイズの敵宇宙人たちと頻繁に格闘してみせたりと、『タイガ』は序盤の時点では「社会派テーマ」が明朗な「アクション」といい感じに中和できているとたしかに感じられたものだった。


 だが、中盤を経てもなお「お気の毒な宇宙人」をゲスト主役にした「重い話」ばかりがあまりにもつづいたことに、さすがに飽きてきてしまった視聴者も多かったのではなかろうか?
 本誌に掲載された関東地方での視聴率表を参照すると、最高だったのは第5話『きみの決める未来』と第9話『それぞれの今』が1.1%。最低が第13話『イージス超会議』と第14話『護(まも)る力と闘う力』の0.6%だったが、その差はわずか0.5%(汗)では正直指標としてはほとんど意味をなさない。悪い意味で安定していたと解釈すべきところだろう。関西に至っては最高が0.6%、最低が0.1%であり、こうなるともう最高視聴率と最低視聴率も誤差の範囲内だろう(苦笑)。
 ただ、中部地区では最高が第1話と第2話の1.8%、最低が関西の最高よりも高い(笑)第9話『それぞれの今』と第19話『電撃を跳(は)ね返せ!』の0.7%であり、少なくとも1980年前後のころから関東や関西に比べて変身ヒーロー作品の視聴率が高くなる傾向が強かったことを思えば、いまだに『ウルトラマン』が受け入れられやすい土地柄なのかもしれない。


 旧態依然の集計方法が現在の時代にはそぐわないかと思える視聴率よりも、個人的には動画無料配信サイト・YouTube(ユーチューブ)の再生回数の方が、番組の人気がストレートに表示される指標だと最近では考えている。もちろんメインターゲットの子供たちが占める割合は極少だろうし、リアルタイムでの視聴にこだわったり、しっかりと毎週タイマー録画して、高額の映像ソフトを購入するような熱心なマニアたちの数もそこにはさして含まれていないかとは思える。むしろ週末に早起きして観るのもタイマー録画も面倒だ、映像ソフトなぞは買う気にもならない、でもちょっとは気になる……といったマニアの中での「ライト層」の若い世代こそが、YouTubeで現行番組を視聴する場合が多いのではなかろうか?


 『タイガ』の場合、第1話の再生回数は1週間で100万回を超えていたのだが、その後は右肩下がりをつづけて、中盤以降は30万回を超えるのがやっとという状況がつづいていた――第18話に至っては30万すら下回る29万回だった(汗)――。
 『仮面ライダー電王』(07年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20080217/p1)や『仮面ライダーW(ダブル)』(09年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100809/p1)、『仮面ライダーOOO(オーズ)』(10年)といった10年も前の平成仮面ライダー作品が毎回50万回~60万回だったのだから、現行作品の『タイガ』がそんな旧作の半分程度の再生回数しか稼げなかったあたりで、現在のウルトラマンの人気の低さが如実(にょじつ)に表れているといえるだろう――2019年12月から配信中の『仮面ライダーフォーゼ』(11年)に至っては、毎回「急上昇ランキング」の上位に入るほどの高い人気を誇っている!――。


 だが、2019年でデビュー10周年を飾って、いまだに根強い人気を誇っているウルトラマンゼロと、その宿敵であるウルトラマンベリアルのニセもの=ニセウルトラマンベリアルがゲスト出演した『タイガ』第23話の再生回数は、1週間で通常回の倍以上となる70万回にまで達していたのだ!――そして、その翌週に配信された第24話=「最終回前後編の前編」は1週間で35万回と、またいつもどおりに戻ってしまったのであった――


・高速道路を走っている自動車のミニチュアからの主観(!)で白昼の都会に現れたニセベリアルをとらえて、次の瞬間にニセベリアルが高速道路を破壊したり!
・ニセベリアルが右手のツメから紫色のブーメランを発射して、空中のウルトラマンタイガを撃ち落としたり!
 ウルトラマンタイタスとニセベリアルが拳法アニメ『北斗の拳』(84年・東映動画→現東映アニメーション フジテレビ)のごとく、すばやい高速の動きで両手のこぶしを打ちあったり!
ウルトラマンフーマが放った手裏剣(しゅりけん)を、ニセベリアルが持ちあげたビルでかわしたり!
・宙に浮かぶオーロラのシャワーの中から、ウルトラマンゼロが腕組みして登場したり!
・タイガ&ゼロ、そしてトレギア&ニセベリアルが発射した必殺光線がX(エックス)字状に交錯するさまを、上空から俯瞰(ふかん)してとらえたり!
・ゼロの父であるウルトラセブンウルトラマンジャックにウルトラブレスレットを与えたように、ゼロが「オレの力をこめたブレスレット」をタイガに与えたり!


 現在の若いマニア層も、「変身ヒーロー番組」「特撮番組」に求めているのは、やはりこのようなイベント性豊かな娯楽活劇編ではないのだろうか?


 ちなみに、昭和の時代に高い人気を誇った『仮面ライダーV3(ブイ・スリー)』(73年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20140901/p1)や『仮面ライダーX(エックス)』(74年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20141005/p1)、『仮面ライダーアマゾン』(74年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20141101/p1)などの再生回数は、先述した平成ライダー作品群からゼロを取った5万回前後にとどまっている(汗)。しかし、昭和の4号ライダーことライダーマンが初登場する『V3』第43話『敵か味方か? 謎のライダーマン』は1週間で20万回! 映画『五人ライダー対キングダーク』(74年・東映)と連動してその当時までの昭和ライダーの総集編として製作された『X』第27話『特集 5人ライダー勢ぞろい!!』は11万回! 仮面ライダー2号仮面ライダーV3がゲストで登場した『X』第33話『恐怖! キングダークの復しゅう!!』は9万回に達していたのだ!
 これは昭和の作品群にはあまり興味がないかと思われる若い層ですらもが、新ヒーローの登場や新旧ヒーローの競演・大集合が描かれた回だけはついつい観てしまうという事実を裏づける現象ではあるだろう。


 なので、『タイガ』の最終回におけるトレギアとのラストバトルは、ヒロユキ青年との合体抜きでもその肉体も含めてついに完全復活を果たしたタイガ・タイタス・フーマの3人を第1話の冒頭のように並べて登場させて、3対1のかたちで描くべきだったと思えるのだ。
 主人公のヒロユキが3タイプではなく3人もの別人のウルトラマンに変身できる画期的な設定こそが『タイガ』最大の特徴であり魅力であったように、タイタスは第3話『星の復讐者』、フーマは第4話『群狼(ぐんろう)の挽歌(ばんか)』と、それぞれの初登場回ではバトルスタイルがじっくりと描かれた。だが、それ以降はネット上でも「従来のヒーローたちのタイプチェンジと変わらない」という声が散見されたほどに、ほぼ毎回、ヒロユキはまずタイガに変身して、戦況に応じてタイタスやフーマにチェンジするといった調子であり、タイタスかフーマが劇中一度も登場せずに割を食う回すらあったほどだった。
 2010年代以降のニュージェネレーションウルトラマンが総登場した第1話や、先輩ウルトラマンであるゼロとの競演が描かれた第23話が突出した人気を呼んだことからすれば、もちろん3人のウルトラマンが全合体している状態である強化形態であったウルトラマンタイガ・トライストリウムもいいのだけれど、せめて最終回くらいはタイガ・タイタス・フーマが個別に登場して大活躍して、その共闘を描いたあとにトライストリウムに再合体するかたちにして、3大ウルトラマンの活躍をまんべんなく見せるべきではなかったのか?


*ドラマ性を重視でも、肝心のウルトラマンたちにはドラマ性が希薄


 ただ、これは決して最終回としての絵的なハデさばかりを求めた上での提言ではない。先述したように、『タイガ』はさまざまな生命体の共存をテーマにした作品だった。であるならば、


・M78星雲にある光の国出身であるタイガ
・U40(ユー・フォーティ)出身であるタイタス
・O‐50(オー・フィフティ)出身であるフーマ


 出自が異なる3人のウルトラマンがいかにして過去においてトライスクワッドなるチームを結成するに至ったかについても、劇中でキッチリとしかるべき本編と連動した回想のかたちで描くべきではなかったのか?
 YouTubeで配信されていた『トライスクワッド ボイスドラマ』では、3人のウルトラマンが「しょーもないこと」(笑)でコミカルに争うさまが再三描かれていたが、テレビシリーズ『タイガ』本編ではタイガ・タイタス・フーマの対立はほとんど描かれてはいなかった。やはりその回のゲスト宇宙人や怪獣に対する各自の考え方・思惑(おもわく)の違いで少々争うくらいの不和描写はあってもよかったかと思えるのだ。
 そうした中で各自の成長・関係性の変化・心の変遷が生じたことにより、タイガ・タイタス・フーマが人種の違いを乗り越えた結果として、因縁の敵であったトレギアを共同で倒すに至る群像劇こそが、「共存」をテーマにした『タイガ』のクライマックスとして描くべきではなかったか? 「お気の毒な宇宙人」たちと比べ、タイガ・タイタス・フーマには劇中で描かれたかぎりでは、彼ら自身の「ドラマ性」があまりにも感じられなかったものである。それこそが『タイガ』が中盤以降に失速したり、マニアたちの興味関心を維持できなかった要因ではないかと考える。


 もっとも、変身前の主人公と変身後のヒーローが完全に同一人格である仮面ライダースーパー戦隊に比べると、変身する主人公とヒーローが一心同体ではあるものの、あくまで別個体であることが多かったウルトラマンの場合には、合体している人間とヒーロー双方のドラマを描きこむのはやや難しいところなのかもしれない。しかし、主人公青年・野上良太郎(のがみ・りょうたろう)に人格や個性もある複数のユカイなイマジン怪人たちが交互に合体することでヒーローのタイプチェンジも表現していた『仮面ライダー電王』が大ヒットしたことを想えば、やはりヤリ方次第であるのには違いない。
 たとえばシリーズ中盤から終盤にかけては、タイガ・タイタス・フーマの存在がE.G.I.S.の各隊員たちにも知られて、彼らとも合体して、隊員たちが変身できるようになったりすることで、イベント性を高めることもできたのではなかろうか? 「お気の毒な宇宙人」たちのドラマばかりをやっている場合ではないのである!


 ネット上でも散見された声ではあるが、「タイガがあのタロウの息子である必然性がない」とされてしまったほどに、この魅力的な設定は結局はほとんど活かされることがなかった。
 自身の因縁の敵であるトレギアを息子のタイガが苦労の末にようやく倒したのだから、せめてタロウが「よくやった。さすがわたしの息子だ」などと云って、ウルトラサインでタイガを誉(ほ)め称(たた)える描写くらいは入れるべきではなかったか? 先述した映画『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE』のラストシーンでも、戦闘中に亡くなったと思われたウルトラセブンがゼロの前に現れて、見事にベリアルを倒したゼロを「さすが、オレの子だな」と称えたあげくに抱きしめる場面があったくらいなのだから。
 まぁ、そんな描写は2020年3月6日公開予定の映画『劇場版 ウルトラマンタイガ ニュージェネクライマックス』(20年・松竹・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210704/p1)に期待すべきなのかもしれないが。ちなみに最新の予告編によれば、テレビシリーズの最終回で死んだように見えたトレギアは実はしぶとく生き残っていたことが判明している(笑)。


 いや、それ以上に、『タロウ』最終回(第53話)『さらばタロウよ! ウルトラの母よ!』に登場した宇宙海人バルキー星人を再登場させることで――アトラクショー用の着ぐるみの流用だったのだろうが、『ウルトラマンメビウス』第16話『宇宙の剣豪』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060928/p1)でも同族の別個体が登場、『ウルトラマンギンガ』前半でもまた別の個体がレギュラー悪として登場している――、その因縁の敵を相手に、巨大化しているバルキー星人をタロウの力を捨ててあくまでもひとりのナマ身の人間としての才覚と力だけで倒してみせた(!)『タロウ』主人公こと東光太郎(ひがし・こうたろう)を篠田三郎(しのだ・さぶろう)氏(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20071118/p1)が再度演じて(!)、東光太郎が並行宇宙を越境してきて闇堕ちしたタロウを救うこととなる展開を、望みウスでも個人的にはおおいに期待したいものである(笑)。

2020.1.12.


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2020年冬号』(20年2月9日発行)所収『ウルトラマンタイガ』終盤合評4より抜粋)


ウルトラマンタイガ』最終回間近、迫る地球の危機

(文・中村達彦)
(2019年12月14日脱稿)


 『ウルトラマンタイガ』(2019年)も2019年12月が最終回。その展開は近年の「ウルトラマン」シリーズの中でもややハードだ。

第21話「地球の友人」


 民間警備組織E.G.I.S.(イージス)に入社したい青年・田崎修がやって来る。第18話「新しき世界のために」の宇宙恐竜ゼットン襲撃で、母親を負傷させられた修は、宇宙人に異様な敵意を抱いており、カナ社長は修の態度に危惧しつつ彼を仮採用するのであった。主人公青年・ヒロユキやホマレ隊員は修に研修を行い、それにはE.G.I.S.に支給されたばかりの宇宙人識別装置・CQの使用法も含まれていたが、修はCQを持ち出してしまう。彼の背後には霧崎(悪のウルトラマンことトレギア)がいた。
 霧崎に導かれて修は市民に交じっている幽霊怪人ゴース星人を発見し電磁警棒で痛めつける。ゴース星人は駆け付けたホマレを翻訳機代わりにして、修とのコミュニケーションをとり敵意のないことを示すが、修は聞く耳を持たない。
 一方、霧崎はヒロユキと対峙し、挑発する口調でタイガのことをジグソーパズルになぞらえる。そのうちにゴース星人の飼っている双頭怪獣パンドンが山中から出現する。ヒロユキはタイガに変身して対峙する。火炎を吐き岩石を投げつけて対抗するパンドン


 拘束されたゴース星人はパンドンが暴れている理由は親代わりになっている自分を助けたいからだと言う。その様子に母を案じる自分と重ねて心を動かされた修は、ゴース星人のいましめを解いてタイガへ戦いの中止を訴える。
 しかしトレギアはパンドンを切り裂いて一瞬にして絶命させてしまう。そしてタイガから強化変身したトライストリウムの攻撃をかわしながら自分の真の狙いを明かす。ゴース星人の円盤には地底ミサイルが搭載されており、その地底ミサイルを手に入れるためにゴース星人を引き離す。修は利用されていたのであった。
 トレギアは去る前に地底ミサイルを発射する。ミサイル発射で地底から放出された地球や天体を構成する超物質・エーテルを目当てに、ナゾの存在が地球に接近してくる。
 パンドンの墓を作ってあげたゴース星人に謝罪をする修。それを許す星人。そして修は母の看病のこともあって、E.G.I.S.を退職するのであった。


 『ウルトラセブン』(1967年)第48&第49話(最終回)「史上最大の侵略」前後編に登場したゴース星人とパンドンが登場する。『ウルトラマンタイガ』第18話も関係している。しかし題材から当初想像していたストーリーとは異なっていた。『ウルトラセブン』では侵略者であったゴース星人が、パラレルワールドとはいえ『ウルトラマンタイガ』では善良な宇宙人として描かれた。霧崎からの地底ミサイル使用の依頼も断っている。力づくで地底ミサイルを奪えばよいのに、修を利用しようとするあたりは霧崎らしい。だがこのゴース星人はなぜ地球に来ていたのだろう? そこが語られなかったのは残念である。
(ゴース星人といえば、30年前に『ビッグコミックスピリッツ』に連載された漫画家・澤井健による『表萬家裏萬家(おもてまんけうらまんけ)』(1989)第1巻後半に、「史上最大の侵略」に登場したウルトラセブンそっくりのセブンの上司こと「セブン上司」のパロディと共に登場していた・笑)


 前話である第20話「砂のお城」で登場したCQが配備されており、その回でカナ社長が心配していた事態になってしまった。地球人の友情で物語は締めくくられたのが救いである。しかし第18話のゼットン出現の正確な経緯をホマレやヒロユキは修に説明したのか、それが明かされなかったことは残念である。本話と第18話に似た姉妹編的なエピソードは、『ウルトラマンタロウ』(1973年)の第5話「親星子星一番星」と第38話「ウルトラのクリスマスツリー」が姉妹編になっていた前例もある(ウルトラ兄弟が助命したほどの善良な亀怪獣の美談の裏にも怪獣災害にあった被害者がいたという話)。本話の脚本を執筆したのは、本作第11話「星の魔法が消えた午後」~第12話「それでも宇宙は夢を見る」の前後編も担当していた小林弘利
 そしてトレギアの計画も明かされた。親切そうに修に接していたが、実はそれは地底ミサイルを奪うためであった。地球から放出された超物質・エーテルに導かれて迫るもの、それは第19話でピリカの奥に霧崎が見たものであった……。


第22話「タッコングは謎だ」


 夜、本部でTVの前で語らっていたE.G.I.S.メンバーは、埠頭に怪獣が上陸したと知る。飛び出すヒロユキ。ウルトラマンタイガ・ウルトラマンタイタス・ウルトラマンフーマへと次々変身してそれぞれで対するが、戦意はないものの吸盤や石油で対抗する怪獣に次々に撃退されてしまう。翌日、怪獣は埠頭で眠り続けている。ヒロユキは出会った少年シンジに、そのオイル怪獣タッコングは凶猛怪獣ギーストロンを鎮めるために現われたが、タッコングは老いているとのこと。更にシンジはヒロユキとウルトラマンたちの関係についても知っており助けを求める。
 ヒロユキが事の次第が呑み込めないでいるうちに、地面を貫いてギーストロンも姿を現わした。眠っていたタッコングは目を開け、全身にツノを張り巡らせたギーストロンに立ち向かう。ヒロユキもタイガに、次いでトライストリウムに変身して、タッコングと共同でギーストロンに戦いを挑む。ウルトラマンと怪獣が共に戦う!
 ギーストロンからレーザーを受けるが、タッコングはその巨体をジャンプさせ、続いて口から吐く炎で全身を包んで体当たり攻撃! 同時にトライストリウムも攻撃も浴びせかける。ギーストロンを倒したあと、夕焼けの海へ帰っていくタッコング。その背中にはシンジの姿があった。
 その後、ヒロユキは宇宙から迫る何かを感じていた。


 タイガと『帰ってきたウルトラマン』(1971年)に登場した怪獣タッコングの共闘が描かれた。『ウルトラマンタイガ』の傑作話のひとつに数えられるであろう。『セブン』のペロリンガ星人が登場した第6話や『帰ってきた』のナックル星人が登場した第10話とも比べてしまう。
 怪獣アーストロンに類似したギーストロンの登場や、『帰ってきたウルトラマン』のBGMの使用など、タッコング登場回と同じ演出も見られる。本話は『帰ってきたウルトラマン』第1話へのオマージュが強い話だが、シンジ少年の立ち位置は『ウルトラセブン』第42話「ノンマルトの使者」に登場した真市(しんいち)少年とも重なる。ふたりを対比させると、シンジの方がヒロユキたち地球人に理解を示していて好感が持てるのだが。
 タッコングもギーストロンも地球人の環境破壊に怒りを感じているとシンジを通して語られている。ラスト近くで、ヒロユキも環境問題に前向きである様子にシンジは安心しているが、現在も日本内外で環境破壊が問題になっていることも思い浮かべてしまう。それがスタッフの狙いでもあるのだろう。
 人々が宇宙人のことを、続いて怪獣のことを、各々TV番組での街頭インタビューで否定的に語って、それにヒロユキやホマレが反応を見せるシーンがあるが、我々が日々感じていることと相通じている。


 特撮面では後半の戦いにおけるギーストロンのレーザー照射や、タッコングとトライストリウムが両者ともに全身火炎状態になって突撃するタロウの必殺技・ウルトラダイナマイトを模した攻撃描写に力が入っている。街のミニチュアセットにタコがモチーフの怪獣タッコングが登場しているせいか、たこ焼き屋や公園のタコ型すべり台などタコも強調されている。第20話での「タイ焼きが好きでタコを食べない」描写を念押しするように、ピリカがタコの玩具を見せホマレが嫌がるシーンもあった(笑)。


第23話「激突! ウルトラビッグマッチ!」


 ウルトラマンタイガやウルトラマントレギアのために地球侵略ができない宇宙人たちの前に第15話にも登場したチブル星人が再登場して、ベリアル因子を使って悪のウルトラマンであるベリアルを復活させようと提案する。最強のウルトラマンベリアルを我々宇宙人たちが倒せば、光の国も手が出せないと言う。宇宙人たちはその案に乗る。
 市街に姿を見せるニセウルトラマンベリアル。ヒロユキはE.G.I.S.を脱け出し、タイガに変身してニセベリアルに対抗するが、偽者とはいえ強い戦闘力を持つベリアルはタイガやタイタスをものともしない。霧崎もウルトラマントレギアに変身して戦いに加わり、チブル星人はベリアル因子を注入してニセベリアルを狂暴化させる。激化する戦い。トレギアの策略でニセベリアルは宇宙人たちのいるビルを破壊してしまう。強化形態フォトンアースに変身したタイガも苦戦する。だがベリアルの攻撃からタイガを救ったのは、ベリアル因子を追って現われたウルトラマンゼロであった!
 タイガは強化形態トライストリウムに変身してゼロと共にベリアル・トレギアと戦う。ゼロとトレギア、超高速でパンチを浴びせ合う。互いに光線を撃ち合う4人のウルトラマン。タイガはゼロから与えられたブレスレットであるプラズマゼロレットでタイガダイナマイトシュートを発射する。トレギアに盾にされてニセベリアルは消滅する。ゼロは手の上でヒロユキを介抱し言葉を交わしたあと、別のベリアル因子捜索のために地球を去っていく。
 だが、ゼロの攻撃を逃れたトレギア=霧崎は宇宙へ視線を向けていた。


 本話の見どころは、タイガとゼロの共闘である。昭和のウルトラシリーズを彷彿させるが、当時の多くはただの顔見せに過ぎなかったウルトラ兄弟の客演に比べて、ゼロの活躍が相応に描かれている。
 今年2019年はゼロとベリアルが初登場してからちょうど10年。その再登場は嬉しい。ちなみにゼロはウルトラセブンの息子、タイガはウルトラマンタロウの息子だが、むかしの小学館学年誌などのでの設定によると、ウルトラの母の姉はウルトラセブンの母だから、タイガとゼロは「はとこ」の関係になる。
 宇宙人たちの会話やゼロの発言で、本物のベリアルは既に前々作の最終回でウルトラマンジードに倒されていることにもきちんと触れている。第15話「キミの声が聞こえない」で登場したチブル星人マブゼも再登場。ベリアル因子でベリアル・レッドキングゴモラを融合させたスカルゴモラを作った設定を生かしてニセベリアルを登場させたが、納得できる展開である。
 イベント性の高い熱血の共闘話ながら前半はギャグ話でもあり、初代『ウルトラマン』(1966年)第18話に登場した凶悪宇宙人ザラブ星人、『ウルトラセブン』第4話に登場した反重力宇宙人ゴドラ星人、『ウルトラマンマックス』(2005年)第4話(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060311/p1)に登場した高速宇宙人スラン星人が集まって(皆、人間への変身能力を持った宇宙人だ!)、ウルトラマン対策を話し合うシーンには良い意味で笑ってしまう(深夜の特撮コメディ番組だった『ウルトラゾーン』(2011年)か?)。
 E.G.I.S.も個々の隊員たちの活躍を描きつつ、ランチ選びにも熱心で、続いてTVに映ったベリアルの姿を「カッコ悪い……」と評するなど普段の緊張感がなく、ギャグ的に演出されている(このシーンに登場するインスタントラーメンの商品名は、過去のウルトラシリーズ作品でウルトラマンゼロと合体したことがある人間たちの名前になっている(笑)。ちなみに2012年の映画『ウルトラマンサーガ』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20140113/p1)でゼロに憑依されたのはDAIGO演じるタイガ・ノゾム隊員)。
 宇宙人たちはそれなりに作戦を考えてはいるが、チブル星人の方はベリアルを復活させたのは良いけど、その後どう扱うのかは考えていないようだし、ザラブ星人やゴドラ星人は『タイガ』とは別作品での個体だったが、利用しようとしていたベリアルに瞬時に倒されたことがあるのを忘れていてマヌケとして演出されている(笑)。結局、トレギアの策略により自分たちが生んだベリアルに、彼らが潜伏していたビルに突っ込まれてまとめて落命してしまった。
 その寸前にチブル星人が「チブルの科学は宇宙一(うちゅういち)~~~!!」という大人気漫画『ジョジョの奇妙な冒険』(1986年~)で聞いたような台詞を口にするのには笑ってしまった。


 トレギアは自分のゲームに熱心で、タイガやヒロユキに比べて偽者のベリアルやゼロの方には関心がない。ビルの上に乗っかって戦いを見ているシーンもある。そしてゼロもベリアルを倒したあと、すぐに別の平行宇宙へと去ってしまうが、もう少し滞在していてもよかったのでは? プラズマゼロレットは返却せずにまだタイガが持っているのだろうか? もうすぐこの世界の地球にもトレギアが呼び寄せた大いなる脅威が訪れるのだからこの武装は必要である。ゼロとタイガは10年ぶりの再会だそうだが、光の国のウルトラ一族たちはこの別の平行宇宙にいるタイガの所在がわかっているのだろうか?


 そしてこの次の回では、いよいよトレギアが招いた大いなる脅威がその姿を見せる……。


第24話「私はピリカ」

(以降、2020年2月8日脱稿)


 地球に迫ってきていた大いなる脅威が遂に埠頭近くの海に降りてくる。その衝撃に晒されるE.G.I.S.基地でピリカは失っていた記憶を取り戻した。カナ社長はホマレとヒロユキに7年前に宇宙から飛来したアンドロイドであったピリカとの出会いについて明かす。ピリカの正体についてはショックだが、ヒロユキに憑依している3人のウルトラマンたちもピリカが地球人ではないことに今まで気づかなかったのだろうか?(笑)
 外へ出たピリカだが、地球人としての意識も失ってはいなかった。そして霧崎は『ウルトラマンオーブ』(2016年)や『ウルトラマンジード』(2017年)、そして『劇場版ウルトラマンオーブ 絆の力、おかりしますす!』(2017年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200406/p1)や『劇場版ウルトラマンジード つなくぜ!願い!!』(2018年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20180401/p1)にも登場したロボット怪獣であるシビルジャッジメンター・ギャラクトロンMK2(マークツー)を繰り出してきた。ヒロユキはタイガに変身して戦いを挑み、プラズマゼロレットの力を使って額からウルトラセブンの必殺技エメリウム光線と同様の光線を放つ。


 だが、必殺技が強敵を撃破するより先に、地下から現われた宇宙爆蝕怪獣ウーラーがギャラクトロンを食べてしまう! タイガは強化形態トライストリウムに変身してウーラーにあたるが、長剣トライブレイドやエネルギーすら食べてしまうウーラーになすすべがない。
 ウーラーは宇宙のある文明が宇宙にゴミの廃棄を続けた結果、生まれた疑似生命であり、体内にブラックホール(!)を持つ。更にビルを食べ続けて、このままでは地球という惑星自体が食べられてしまう!
 その頃、ピリカはヴィラン・ギルドのアジトに向かい、地球から逃走しようとする宇宙人たちからコントロール装置を奪って操作する。自分にはウーラーを止めることができるとわかっていたのだ。
 アジトへ駆け付けたカナ社長やホマレ・ヒロユキらの説得を振り切り、自らの身をウーラーに突入させるピリカ。直後に外へと駆け出すヒロユキ。


 第19話や第21話でトレギアが仕組んだ計略は、地球にウーラーを呼び寄せることだったことが明らかになる。ピリカの正体も明かされて話は盛り上がるが、取ってつけた感もある。
 ウルトラシリーズにおけるアンドロイドの存在は、『ウルトラマンマックス』の女性ロボット隊員・エリーや『ウルトラマンギンガS(エス)』(2014年)でレギュラー敵のチブル星人が造ったアンドロイド・ワンゼロなどの前例がある(後者は改心して怪獣攻撃隊の隊員になる)。ピリカも宇宙人に作られたアンドロイドで、7年前にカナ社長に拾われたと明かされるも、それを裏付ける台詞やシーンはこれまでになく(コンピューター操作に優れているくらいか?)、伏線が語られて来なかったのでピンと来ない。
 第13話などでウルトラマンたちはピリカが地球人ではないと気付かなかったのか? 第23話ではたしかにひとり、ランチをめぐるジャンケンに加わっていなかったが遅すぎる。その前から皆と物を食べるシーンはなかったのか?
 今までは記憶を封じられていて、怪獣ウーラーが地球に飛来したから、アンドロイドとしての記憶に目覚めたわけでもなかった。本話で街をさまよっていたピリカは霧崎と出逢い、第19話では一方的に圧倒されていたのと違って、今回のピリカは霧崎に言い返してもおり、彼を苛立たせてもいるが、スカッとさせる半面、唐突すぎる変化でもあるから、キャラクターの不統一を感じてしまう。


 トレギアの策略も今までの陰険さから比べれば、実際にその策略の正体を見せられると内容が小さく感じられてしまう。もっと別にタイガを追い詰める方法があったはずだ。とはいえ霧崎は、先にギャラクトロンを送り込んでタイガと戦わせると見せかけて、実はウーラーに食わせてしまうことが目的で、その威力やそれまでの作品のボスキャラとの違いを視聴者にも見せているが。
 宇宙に棄てられたゴミから生まれた疑似生命・ウーラーの設定は、母星に見捨てられた者の復讐を描いた第3話や環境破壊ネタの第22話も反映しているのだろうか? グロテスクなデザインが効いている。


 悪い宇宙人たちの犯罪集団であるヴィラン・ギルドは、


・『ウルトラマンレオ』(1974年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20090405/p1)や『アンドロメロス』(1983年)に『ウルトラマンメビウス』(2006年)、『ウルトラマンギンガ』(2013年)や『ウルトラマンX(エックス)』(2015年)に本作『タイガ』第1話にも登場してきたサーベル暴君マグマ星人
・『ウルトラセブンX(エックス)』(2007年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20080413/p1)第3話や『ウルトラマンX』第14話にも登場してきた宇宙商人マーキンド星人


 などが登場するが、ピリカやE.G.I.S.の面々に圧倒されており、本来の悪人面を発揮できていない。ギャグ・キャラになっている(しかもそのギャグ・キャラを最終回まで引っ張るとは)。反面、ピリカに思いとどまるように説得するカナ社長・ホマレ・ヒロユキの真情あふれる態度には確かな迫力があった。


第25話「バディ ステディ ゴー」


 タイガは再びウーラーに対するが、光線エネルギーすら食してしまう怪獣ウーラーにまたも敗れ去る。そのヒロユキへと歩み寄る人影。人々はウーラーの出現を地球に居住している宇宙人たちの仕業だと思い込む。一方、E.G.I.S.のカナ社長やホマレに佐倉警部は、ウーラーの体内に入ったピリカからのメッセージをキャッチする。それによると、ウーラーには悪意はなく、ただ怯えているだけだという。そこへヒロユキが戻ってきて、同行したヴィラン・ギルドのマグマ星人やマーキンド星人がピリカの行動に感動して力を貸してくれることを伝える。マグマ星人の円盤に搭載されたマグマウェーブでウーラーを地上に引っ張り出し、タイガの力で宇宙へと放り出す作戦になる。その会話内容から、やはりE.G.I.S.メンバーはヒロユキとウルトラマンタイガの関係にすでに気づいていたことが判明する。
 ホマレとマグマ星人が操縦する円盤から発するマグマウェーブで地表に出てきたウーラー。そこへタイガが飛びかかるが、群衆の慌てる様子を見ていた霧崎もウルトラマントレギアに変身して割って入る。ウーラーを叩きのめすトレギア。その時、崩落してきたガレキから宇宙人排斥デモをしていた地球人を守ってみせる潜伏宇宙人たち。
 その後、トレギアに空へと飛ばされたタイガのブレスレットであるプラズマゼロレットがウーラーを宇宙へ。その時に地球を覆った輝きのあと、トライストリウムとトレギアとが戦う。その戦いの中で遂に「タロウの息子」であることを受け入れたタイガ。最後にタイタスとフーマ、そしてヒロユキの力を合わせた必殺光線・クワトロスクワッドブラスターが放たれて、トレギアは爆発の炎に飲み込まれていく……。
 地球は救われた。戦いのあと、佐倉警部にも認められてE.G.I.S.に入社するマグマ星人とマーキンド星人。続いてウーラーの体内から実は脱出ができていたピリカが姿を見せて物語は終わる。


 敵対していたヴィラン・ギルドのマグマ星人たちとE.G.I.Sの共同作戦、加えてラスボスのような怪獣を倒さずに地球を救ってみせるのは歴代ウルトラシリーズになかった展開でもある。トレギアとの戦いではタイガが「タロウの息子」であると受け入れたことに加えて、タイタスとフーマもそれぞれが初登場した第3話と第4話でトレギアに翻弄されていたのに、今回はトレギアを大いに苦戦させたのには、それぞれの成長を感じさせてくれる。
 そしてトレギア。大空に広がった輝きの美に思わず見とれてしまって、タイガにそのことを突っ込まれてしまう。直後に笑い出してタイガに敵対したが、一瞬改心しかけたのか否かについては、視聴者それぞれの想像と今後のウルトラシリーズでの展開に任せるしかないだろう。トレギアを注意して見てみれば、顔面のあちこちにまだウルトラ一族の名残りを感じさせてくれる。さすがに今までの悪行の数々を考えると仮に改心したとしても簡単には受け入れられない。一方、以前にヒドい目に合わされたのにも関わらずトレギアをも許してみせるような態度のタイガには人格的な器量の成長を感じさせてくるが……。


 前作『ウルトラマンR/B(ルーブ)』(2018年)最終回ラストの主人公兄弟の妹・アサヒ同様、ピリカがなぜ助かったのかが描かれなかったことについては疑問が残る。それと『ウルトラマンX』最終回のように、E.G.I.S.隊員たちとタイガら3大ウルトラマンたちが遂に最後に言葉を交わしあうようなシーンが観たかったのだが。
 マグマ星人たちもE.G.I.S.に入社した。『ウルトラマンタイガ』においては作品テーマ的にも「地球人と宇宙人の共存」を示しているシーンとして許容されるが……。次作では宇宙人たちとの関係描写はどうなるのだろうか? 欲を言えば、製作費(ギャラ)の問題をクリアできるのであれば『ウルトラマンタイガ』にこれまでゲストで出演した宇宙人役の役者さんたちにも最終回で再出演してもらうかたちで、戦いに巻き込まれた地球人を助けるシーンを作ってもらいたかった。


第26話(最終話)「そしてタイガがここにいる」


 最終回だが総集編であり新作ではない。実質的な最終回である前話の時点で来春2020年3月に公開される映画『劇場版ウルトラマンタイガ ニュージェネクライマックス』の予告編が流れて、この劇場版がTV最終回の後日談であり、E.G.I.Sの活躍や真の最終回である前話で死亡フラグが立っていたピリカの姿も確認できてしまっていたが、先にネタ晴らしをしてしまうようで面白さが半減した。予告編は今回の本当の最終話の方で流してほしかった。
 しかし、2013年の『ウルトラマンギンガ』からの歴代主人公たちが勢ぞろいするのにはシビれる。TV最終回で死んだように見えたトレギアがまだ生きていて、この劇場版でも敵役になることは紛れもなくなったが。



 総体的には『ウルトラマンタイガ』は全体としては、前作『ウルトラマンR/B』よりもハードな作品カラーであった。ここ数年のウルトラシリーズは昭和の旧作オマージュや旧作エピソードの変形後日談のような作品も多く、むかしの怪獣や宇宙人に寄り掛かっている感は否めないのだが、同時に現代社会に通じる問題を描いてみせていた。奇しくも本作最終回の直後の2020年1月に亡くなられた脚本家・上原正三のテイストを多く含んでもいる。果たして上原氏は『ウルトラマンタイガ』を観ていたのであろうか? とはいえ、上原テイストとは真逆かもしれない『ウルトラマンタロウ』テイストを含んだエピソードなども観たかったものだが。
 ヴィラン・ギルドの犯罪者宇宙人たちをはじめ、それとは別に地球に移民として住んで生活している宇宙人たちの事情についても、もう少し説明してほしかった。2014年の『ウルトラマンギンガS』以来のウルトラシリーズでは地球人に扮装して生活している宇宙人たちについてもたしかに描いてきており、今回の『ウルトラマンタイガ』ではそれらをより突っ込んで描いた作品であったとも捉えることができるが。地球で暮らす宇宙人たちとの共存は、次作以降のまた異なる平行宇宙が舞台となる『ウルトラマン』シリーズでも認められている設定になるのであろうか?


 ヒロユキはその前向きさと勇敢さは主人公としては申し分がない。しかし、E.G.I.S.の面々や霧崎の方も個性が出ていた。E.G.I.S.も一見は地球人でもその正体は宇宙人にアンドロイドなど、出自の違う者が集まって作られた組織で、予算や装備もなく怪獣と戦わない優しい民間企業の防衛チームとして、霧崎もまた主人公と相対するライバルキャラクターとして最後まで描かれ切っていた。
 ウルトラマンウルトラマンタイガの他にも、ウルトラマンタイタス、ウルトラマンフーマ、そしてタイガ強化形態フォトンアース、タイガ強化形態トライストリウムと5体も登場した。玩具を売る必要もわかるのだが、2クールしかない作品としては数が多すぎないだろうか? タイタスとフーマは、昭和の光の国出身のウルトラマンではない。しかし映像本編ではそのへんの説明があまりなされていない。1話分をまるまる費やしてタイガ・タイタス・フーマの3人の出会いとトライスクワッド結成を見せる番外編的なエピソードなども観てみたかった。


 果たして次作以降の『ウルトラマン』はどういうかたちになっていくのだろうか? その敵役はトレギアなのだろうか? 注視していきたい。


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2020年冬号』(20年2月9日発行)所収『ウルトラマンタイガ』終盤合評2より抜粋)


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