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ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会(1期) ~チームでなく個人。百合性など先行作との差別化にも成功!

『ラブライブ!』・『Wake Up,Girls!』・『アイドルマスター』 2013~14年3大アイドルアニメ評
『ラブライブ! The School Idol Movie』 ~世紀の傑作!? それとも駄作!?
『ラブライブ!サンシャイン!!』 & 劇場版『Over the Rainbow』 ~沼津活況報告 & 元祖に負けじの良作と私見!
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 『ラブライブ!』シリーズの「第3チーム」ならぬ「第2.5チーム」(汗)であったハズのシリーズ第3弾『ラブライブ! 虹ヶ咲(にじがさき)学園 スクールアイドル同好会』1期(20年)の2022年冬季再放送が終了記念! 同作放映時には、すでにシリーズ第4弾『ラブライブ! スーパースター!!』(21年)1期のTVアニメ化も発表されていたので、噛ませ・つなぎ作品で終わる宿命だったのかと思いきや……。2022年4月からのまさかの『虹ヶ咲』2期が放映開始記念! とカコつけて……。『ラブライブ! 虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』(1期)評をアップ!


ラブライブ! 虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』(1期) ~チームでなく個人。百合性など先行作との差別化にも成功!

(2020年秋・土曜22時30分・TOKYO‐MX他)

ラブライブ! 虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』(1期) ~合評1

(文・T.SATO)
(2021年1月22日脱稿)


 3代目のラブライブ・チームが遂にアニメ化! 4代目チームのアニメ化もすでに決まっているということは、初代・2代目チームとは異なり、2期の放映はなくて1期のみで完結なのであろうか?


 元祖では3~4話に1回、2代目の『ラブライブ! サンシャイン!!』では2話に1回であった、高品質な作画&モーションキャプチャーによるダンス&歌唱による新曲PV披露が、ほぼ全話でひとりひとりをフィーチャーして披露!
 そのPVが映像面でもドラマ面でも心情面でもクライマックスとして機能するように、逆算して各話が構築もされていて、そしてそれはまぁまぁ成功もしている。


 筆者も『ラブライブ!』の作劇を高く評価する者だけど、公式雑誌をチェックするようなマニアでもないので(笑)、予備知識なしで鑑賞した。
 やはり作り手も2代目を構築するのが一番ムズカしくて、受け手も一番キビしく見てしまうものだが、3代目になると比較対象も分散されるので、作り手も受け手もイイ意味で肩の力が抜けるのだろう。
 そーいう意味では初代の神懸かった感じや、2代目の頑張っている感じはナイのだけど、この3代目もコレはコレでまぁイイかという感じで筆者は受容をしている。ウルさ型のラブライバーの意見は知らないけど(笑)。


 本稿を執筆するにあたってググってみると、本作は集団ではなく個人活動をしている面々であるそうナ。


 エッ? そうなの? オープニングやエンディング主題歌では従来のシリーズと同様に、集団でダンスして歌唱しているので、そんな感じがしてこないなぁ。
 エッ? あの黒髪ロリ・ツインテ(ール)の子は実質、アニメオリジナルのキャラなの? 一応主役だったの? そう云えば歌ってなかったネ(笑)。


 ……なぞと書ていくと、自分が意外とヌルい見方をしていることに気付かされたりもして(汗)。


 ジャンルファン的な注目は、女児向けTVアニメ『プリキュア』シリーズや男児向けTV特撮・スーパー戦隊シリーズを執筆してきた田中仁(たなか・じん)の加入である。バンダイ人脈であろうか? まぁ集団チームものという共通点はあるけれど。
 むろん、複数の会社による大予算の合同プロジェクトで、クチを出してくるおエライさんは多かろうし、すでにキャラ設定があるところから始まっているから、あとから来たTV脚本家が自由に裁量できる余地もそんなにナイだろう。


 そして、本作の特徴はエキセントリックな登場人物がいないことだ(笑)。全員がナチュラルなのである。ゆえに序盤は一見では区別がつかないけど、各話ごとに主役編を与えられると即座に盤石化はする。
 作劇面ではほぼ初対面のメンバーによる集合劇としていた従来作とは差別化して、すでに前年まではスクールアイドル部が高校に存在しており、それが一度は不和で解散したものの、実は生徒会長でもある主要メンバーの改心により、かつての部員が集まってくるかたちで、上級生たちとの出逢いのドラマはオミットすることで、過去作とは似通った展開となることも回避ができているあたり、作劇マニアならば要注目である。


 もちろん、この『ラブライブ!』各作はアニメ化の数年前からメディアミックス展開が始まっているのは承知だろうけど、本作でも青田買いだったのか、今が旬の声優・楠木ともり(くすのき・ともり)が一見クールでも実は熱苦しい生徒会長アイドル・優木せつ菜(ゆうき・せつな)嬢を、鬼頭明里(きとう・あかり)がやや眠たそうな母性もあるお姉さんアイドル・近江彼方(このえ・かなた)嬢を演じている。


 従来ならば、集団の中で目立たせるためにか明るく元気で行動力・突破力もあるキャラクターが配されがちなセンター主人公の位置に、正統派ではあってもアクには実に乏しい、プレーンで柔らかい感じの美少女キャラクターである上原歩夢(うえはら・あゆむ)ちゃんが配されている。彼女のビジュアルや涼し気かつ可憐なボイスは実に魅力的なのに、やや目立っていないのはモッタイないとは思うけど、良作には認定したいのだ。



 シリーズ終盤では先行作との差別化か、TVアニメ・オリジナルの黒髪ツインテ少女を主人公として目立たせるためにか、自身の在り方・身の振り方に悩ませた末に、スクールアイドル同好会のメンバー各位のヤル気に感化されたかたちで開眼! 学校での合宿にて日が暮れた音楽室でひとり秘かにピアノで楽曲の練習をしている光景も描かれる。
 その場を偶然に目撃してしまった、今では杓子定規ではなく融通も利かせられるように軟化した生徒会長アイドル嬢とのしばしの心温まる交流……。生徒会長アイドル嬢の方でも黒髪ツインテ少女の言動に励まされ触発されていたことを明かしてみせる。そして、両者のモチベーションは相乗効果で上昇していく。


 そして、彼女たちふたりの会話の果てに、東京ビッグサイト西ホール内部の大吹き抜け、もとい大校舎内の吹き抜けに面した上層階の廊下で、生徒会長アイドル嬢が蹴つまづいて、とっさに振り向いた黒髪ツインテ少女が――自身の方がやや小柄なのに――その胸で受け止めてみせるという!


 加えて、「偶然の目撃描写」を積み重ねるかたちで、その場を吹き抜けの下の暗がりのロビーから目撃してしまった、しかしてふたりにはその存在を気づかれることはなかった、黒髪ツインテ少女の本来の相方ともいえる上原歩夢ちゃん! 観てはイケナかった、両者の女性同士の身体接触(!)をも伴なう百合(ゆり)的な関係性のようなものを観てしまった上原歩夢ちゃんの衝撃!
 ここで初代や2代目の元気でガサツ(爆)な主人公少女であれば、大声で思ったことを即座にクチに出してブシツケな質問までしそうなものを(笑)、やや控えめな歩夢ちゃんは固まってしまうのだ!


 その後は、黒髪ツインテ少女が同好会の活動を通じた交友関係の拡大を再確認的に感謝して、各学校の垣根、アイドルとファンの垣根を越えたかたちでのライブ、ひとつの会場=学校の講堂だけではなく街の全体を巻き込んで、街の各所での多数のスクールアイドルたちのお祭り的なライブを開催するアイデアまでをも披露。それを先行作でのスクールアイドル・バトルロイヤルこと「ラブライブ!」ならぬ、本作のゲーム側での総称の一部である「スクールアイドル・フェスティバル」だと呼称することで、この総称にも一応の後付け(笑)での意味を持たせてみせている。


 ……などというような、黒髪ツインテ少女の成長物語と並行して、そんな姿に元々の相方でもある歩夢ちゃんの誰にも気づかれないけどやや沈痛な面持ち。黒髪ツインテ少女に置いていかれてしまうような気持ち。
 自身と最も親しかったハズである黒髪ツインテ少女の知らなかった側面かもしれない生徒会長アイドル嬢との交流に対しての、実に気立てがよくて性格もよい彼女にも存在していた「プチ独占欲」から来る「プチ嫉妬心」! しかして、それを対外的には発露することなく内に溜めこんでいく姿を、セリフではなく無言の複雑で沈んだ表情演技だけで見せていく!
 弱い女の子の小さな小さなひとりの相方少女だけに対する「独占欲」! あるいは、やや気が弱い少女の「依存心」!


 黒髪ツインテ少女や同好会メンバーたちの高揚・成長物語と並行して、実質的にはセンター少女である歩夢ちゃんの懊悩も描くことで、ダブルミーニングにもしてみせるという、このややイジワルな展開!
 もちろんシニカルに見てしまえば、実に小さな話ではある。実に小さな心情の揺らめきを描いただけの話である。天下国家の大事にはまったくの無関係である小事にすぎない。大のオトコたるもの、このような些事には関わるべきではないのやもしれない(汗)。


 でもまぁ、「文学」(純文学)の類いとは、しょせんはこーいうミクロな心情の揺らぎや、それから醸される情緒を描くようなモノなのかもしれないのだ。そして、それはそれでそーいうモノであってもイイのではなかろうか? そこに「あるある感」を覚えて、そして「人間」と「人間の心情」と「人間の世」の何たるかに抵触することで、我々はそれに妙に感じ入ったりもするワケなのである。


 などと云ったソバからハシゴ外しをしてみせると、「プチ独占欲」から来るささやかな「プチ嫉妬心」に対して、広義での「萌え」感情を惹起されるという心理もまた、それが野郎キャラであれば女々しいとして却下されるであろうし、女性キャラ、もっと云うならば美少女キャラだからこそ許される……。といった、男尊女卑だか女尊男卑だかのジェンダーキャップやルッキズムなどが介在しており、それもまた男女差別である! PC(ポリティカル・コレクトネス)=政治的には正しくない! として糾弾されてしまう日が来てしまうのやもしれないけど、その日が来るまではこのような描写も楽しんでいきたい(笑)。


 溜め込んだ末に、黒髪ツインテ少女の自室で彼女をベット上についつい押し倒してしまって、可憐な声で彼女を独占したい気持ちを言葉でも告白してしまう歩夢ちゃん! しかして、スマホの電話が鳴ることで我に返った彼女は謝罪をして帰宅。翌朝には何事もなかったかのように、いつものいっしょの登校待ちをするものの、黒髪ツインテ少女に寄り添って恋人のように腕を組んできて随行もしていく……。


 コレらの描写を「大勝利!」だと捉える声もあるけれど(笑)、一方ではアンチの批判であろうかネタ的なツッコミであろうか揶揄的にも言及されてはいたのであった……。
 筆者個人もこれらの描写を「良かった」とは思ってはいる。しかし、「大勝利!」だとまで絶叫しているファンの方々にはやや引いてしまうし、その内実をデリケートに腑分けをせずに、何でもかんでも「百合」の一言だけでくくってブヒブヒと萌えブタ化しているような風潮にはややプチ抵抗感・プチ反発もあるけれど(笑)。


 とはいえ、作品自体は「キミとボク」だけしかいないような閉じた「セカイ系」の物語になってしまったワケでもなく、「スクールアイドルフェスティバル」を開催するために協力する学園の生徒たちや、歩夢ちゃんのややダウナーな様子に気付いた同級生たちの応援や彼女のための屋外ステージ作りなども描くことで、ふたりだけの世界には陥(おちい)らずに開かれた関係性をも描いていくかたちで、ドラマ的なクライマックスを作っていたことにも言及しておきたい。
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(了)
(初出・オールジャンル同人誌『SHOUT!』VOL.78(21年2月5日発行))


ラブライブ! 虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』(1期) ~合評2

(文・久保達也)
(20年11月11日脱稿)


 高校内で結成された女性アイドルグループ=スクールアイドルの奮闘と成長を描く『ラブライブ!』(第1期・13年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20160330/p1 第2期・14年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20160401/p1)、そして『ラブライブ! サンシャイン!!』(第1期・16年 第2期・17年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200628/p1)に次ぐ本作は3匹目のどじょうとなる。


 いやそれどころではない。『THE IDOLM@STER(アイドルマスター)』(11年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20150615/p1)を皮切りに、2010年代はまるで雨後のタケノコのように数多くのアイドルアニメが放映されてきた。


 それらにうつつをぬかしてきた筆者は近年では新作の放映がはじまる度に、果たして類似の作品群とどのように差別化ができているのか? この点を常に念頭に置いて、若干(じゃっかん)の冷静な視点で視聴してきた。
 『ラブライブ!』初作のアイドルグループ・μ′s(ミューズ)の一員である赤髪のツンデレ少女・西木野真妃(にしきの・まき)にワーワーキャーキャーと騒いでいだ筆者はもはやここにはいない(爆)。


 もちろん、主人公がたまたま見かけたスクールアイドルのライブに感激して同じ道を志(こころざ)す動機とか、主要キャラが校内や街角で歌いだすや突然花ビラや紙吹雪が舞って同級生や通行人がバックダンサーと化すようなミュージカル的な演出は本作でも踏襲(とうしゅう)されている。たとえば、


・準主人公で茶髪ショートボブの左側を花型のヘアピンでお団子にまとめた美少女・上原歩夢(うえはら・あゆむ)が学生寮の入口の階段で歌い出すや、メルヘンチックな背景である非現実的なPV(プロモーションビデオ)風のダンス&歌によるライブのパート映像となる
・そして現実世界に戻ったのに、ライブパートで花ビラのように舞っていた多数のピンクのハートが、本作ではアイドル活動はしない主人公(!)でもあるやや小柄で細身な黒髪ツインテールの高咲侑(たかさき・ゆう)の足下に舞い散る
・黒髪ロングヘアの優木せつ菜(ゆうき・せつな)のライブの熱(あつ)さを強調するために、ステージが燃えたぎるマグマと化して周囲に炎が吹き出す


 だが、こういった心象風景などをシンボリック化した非現実的でミュージカル映画的な描写があってこその『ラブライブ!』だろう。もはや『ラブライブ!』ならではの様式美としての伝統と成りえているのだ。


 要はその「様式美」をしっかりと継承したうえで『ラブライブ! 虹ヶ咲学園』としての「独自性」をどう打ち出すのか? ということになる。そして、序盤の時点でそれはハッキリと見えるかたちで描かれていた。


 ひとつは初作の「国立音ノ木坂学院」や『サンシャイン!!』の「浦の星女学院」とは異なり、本作の舞台となる東京都江東区の「虹ヶ咲学園」――その校舎は誰がどう見ても同人誌即売会コミックマーケットなども開催されている、お台場にある東京国際展示場だ(爆)――は廃校の危機に直面してはいない。


 まぁ、さすがに3作連続でこのネタは使えないだろうが(笑)、先述したμ′sや『サンシャイン!!』のアイドルグループ・Aqours(アクア)が学園の廃校阻止を動機にアイドル活動をはじめ、スクールアイドルの全国大会「ラブライブ!」での優勝をめざしていたのと比べて、本作のスクールアイドル同好会はそこまで重い背景や動機を背負ってはいないのだ。


 そして、もうひとつは虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会のメンバーは基本的にはソロ活動が中心であり、グループとしての名称すらない(!)ことだ。


 学園の廃校危機といった外的要因ではなく、虹ヶ咲学園に最近まで存在したスクールアイドル同好会は、お披露目(ひろめ)発表会の目標を決めたころからメンバー間に不和が生じた内的要因で廃部となったことが元メンバーのベージュショートヘアで低身長娘の中須かすみ(なかす・かすみ)から語られて、先述した侑と歩夢を含む3人を中心に代わりの同好会を新たに立ち上げることとなる。


 「ラブライブ!」出場を目指していたリーダーのせつ菜が、


「そんなパフォーマンスではファンに“大好き”な気持ちは届かない!」


などとメンバーに厳しいレッスンを課したことに、「熱いとかじゃなくて、かわいい感じでやりたい!」とかすみが反発する回想が何度か挿入(そうにゅう)されて、侑と歩夢に同好会の廃部を告げた生徒会長でメガネをかけた三つ編みの中川菜々(なかがわ・なな)こそが廃部に至らせたせつ菜自身だったと明かされるのだ。


「わたしの“大好き”はファンどころかメンバーにさえ届いていなかった」


 自分の“大好き”を優先するあまりに、ほかのメンバーの“大好き”を否定して傷つけた自責の念から同好会を廃部にしたと打ち明けた菜々に、侑はスクールアイドル同好会に入部するように強く説得し、侑はせつ菜の歌が再び聴けるなら「ラブライブ!」なんか出なくてもいい! とまで云い放つ!


侑「自分なりの一番をそれぞれかなえるやりかた」
かすみ「いろんな『かわいい』も『カッコいい』もいっしょにいられる。そんな場所が本当につくれるなら」


 こんな活動方針から本作におけるスクールアイドル同好会は「ソロ活動」を中心としていることが正当化されのだ。


 つまり、「廃校阻止」とか「『ラブライブ!(大会)』優勝」といった「組織」としての明確な目標は本作では設定されない。「個人」としてのそれぞれの「かわいい」や「カッコいい」が追及されるのだ。


 そしてさらに、せつ菜の屋上ライブに感激して新たに加入した金髪ポニーテールの高身長娘でスポーツ万能な美少女・宮下愛(みやした・あい)の主張にメンバーたちが共感したことで、「楽しいをわかちあえるスクールアイドル」も新たに方針として加わった。


 μ′sが「アイドル研究部」、Aqoursが「スクールアイドル部」に所属する「部活」だったのに対し、本作はあくまで「同好会」とされているのはまさに象徴的だ。


 まぁ、初作の第1期終盤では、主人公美少女・高坂穂乃果(こうさか・ほのか)の急病でμ′sが「ラブライブ!」出場を断念するに至ってしまい、責任を感じた穂乃果が「スクールアイドルをやめる!」などと口にするに至った展開に対しては、インターネット上でのファンの反応は「『ラブライブ!』に「鬱(うつ)展開」はいらん!」などという声がけっこう上がったものだ――ノイジーマイノリティーの声に過ぎなくて、ファンの中でもサイレントマジョリティーの声ではなかったかもしれないが――。


 アイドルアニメ好きのオタクたちは筆者と同様に「組織」には懐疑(かいぎ)的で、コミュ力弱者でもあり団体行動が苦手な者も多いだろうから(笑)、本作『虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』のようなソロ活動重視でのユルい連帯路線という方向性は、我々にとってもけっこう共感ができるものに成りえているのかもしれない。
TVアニメ『ラブライブ! 虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』オープニング主題歌

(了)
(初出・オールジャンル同人誌『DEATH-VOLT』VOL.86(20年12月27日発行))


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 「週刊少年マガジン」連載に人気ラブコメ漫画の深夜アニメ化『五等分の花嫁』の第2期『五等分の花嫁∬』――「∬」は数学の「二重積分記号」で「インテグラル」と読む記号だそうだけど、あえて読ませない趣向だそうだ(汗)――が2022年冬季の再放送が終了記念! そして、2022年5月の劇場公開・完結編『映画 五等分の花嫁』が公開間近記念! とカコつけて……。深夜アニメ『五等分の花嫁』1期(19年)&2期(21年)評をアップ!


『五等分の花嫁』(1期&2期) ~ベタでも高みに到達。告白された男子側でなく女子側の恋情で胸キュンさせる

(文・T.SATO)

『五等分の花嫁』(1期)

(2019年4月27日脱稿)


 野郎高校生ひとりに美少女が5人のハーレム・ラブコメアニメ。美少女の方を五つ子とすることで既存の類似のハーレム・ラブコメ作品とは一応の差別化。
 ただし六つ子を描いた往年の『おそ松くん』(62年)のように見た目での区別が付かないということはなく(笑)、『おそ松さん』(15年)のように(?)髪型・髪色・眉毛のかたち・瞳の目力の強弱・口調などで性格の描き分けはバッチリできている。


・中堅声優である花澤香菜が演じる長女は、余裕のあるお姉さんといった感じだけど汚部屋に住む(汗)。
竹達彩奈が演じる次女は、強気だけど華はあるアイドルといった風情。
・失礼ながら存じ上げていなかった伊藤美来が演じる三女は、クールで奥手なヘッドフォン少女。
佐倉綾音が演じる四女は、ウサギの耳型の巨大リボンで女子力も高そうな元気女子。
・そして、オープニングテロップはテキトーに流し観しただけだったので、なんとはなしに本編では三女を演じているのかと思った水瀬いのりが、多分メインヒロインであろうサバサバした五女であることに気付いてビックリ。こんな声も出せるとは……。


 てなワケで、五つ子には新人ではなく、全員がほぼ主役級の人気声優を配している。


 やはり今どきの週刊少年マンガ誌連載作品の深夜アニメ化は――本作の原作は「週刊少年マガジン」連載作品(17年)――、円盤が売れなくても書籍が売れるための宣伝になればと大手出版社がおカネも出してくれることで、通常の深夜アニメよりも予算が潤沢、声優陣・作画&背景もゴージャスにできるということか?
 ふだんはイマイチな作画作品を繰り出す新進のアニメ製作会社ライデンフィルムが、同じく講談社の青年マンガ誌・月刊「good! アフタヌーン」連載で昨2018年夏に放映された高校女子スポ根バドミントンアニメ『はねバド!』のときだけは高作画作品であったことも思い出す。


 対するに、主人公である野郎高校生クンは週刊少年マンガ誌にアリがちなチョイ悪でブッキラ棒な少年クンではない――のちに明かされる彼の過去はともかく――。狭いアパートに住まう苦労人の貧乏優等生であり、高級マンションの上層階に住まう五つ子には家庭教師として接している。


 優等生! 家庭教師!
 弱者男子たるオタク向け漫画ではなく、普通の元気で健全で野蛮(汗)な多数派が愛好する少年マンガでは、優等生や家庭教師は自分たちの自由――その実態は身勝手・放縦でしかない(汗)――を抑圧・制限してくる体制側の唾棄すべき存在であり、革命が起きたら真っ先にギロチン首にすべきヘイト(憎悪)の対象であろうに……
――実態は真逆であり、教室内の元気なヤツこそがプチ権力者であり、優等生はスクールカースト低位なのだけど(汗)――。


 SNSでの身内馴れ合いコミュニケーションやらスマホゲームの隆盛で読者が激減している週刊少年マンガ誌は、それでも残った読者にオタク男子の比率が相対的に高まったことで、こーいうストイックな人物でも主役になりうるようになったといったところか?


 30年弱前(汗)の時点でもう、別冊宝島『ザ・中学教師』シリーズで、本来は学級委員になるようなタイプのコが


「今ではそれだと生徒間で『カッコ悪い』扱いされてしまうので、『チョイ悪』に走ってそれを演じる新傾向がある」


とされていた記憶があるけど、この主人公クンがそんな大勢に流される虚栄心野郎ではなく、周囲はどうあれ我が道というかヒトとして正しい道を行く「禁欲」を重んじるタイプでホントによかった(笑)。


 とはいえ、美少女側のキャラデザは、クラスではカースト上位に君臨してオタを見下す健康優良なギャルや元気女子への反発か、オトナしげな貧乳志向となった昨今のオタ向けラブコメとは異なり、珍しく5人全員が恵体(めぐたい)な巨乳キャラであり、筆者は大好物なのだけど(爆)、現今のオタの嗜好的にはいかがか?


 勉強はできる主人公少年と、勉強ができない五つ子女子。および、勉強したくないけど少年の妹ちゃんの健気さにヒロインが同情することで、両者は家庭教師&生徒という関係性を継続。同一空間で同席することにも必然性が生じて、ラブコメとしての物語的土台も整備される。


 てなワケで、美少女五つ子たちが共同で住まう高級マンションの広大なお部屋に主人公少年クンは公然と闖入。
 一緒に料理・食事をしたり、姉妹のどちらの料理がウマいかの意地の張り合いに付き合わされたり、お風呂上がりに遭遇、近眼女子なので少年と知らずに後ろからバスタオル越しに巨乳を押し付けられるラッキースケベを体験したり、夏祭りをシャッフル1対1のデート形式にて散策。打ち上げ花火を鑑賞する際のドギマギなやりとりなども展開。


 そのような展開もまたベタそのものなのだけど、決して段取りチックではなく、土台の盤石さか語り口のセンスか、まぁまぁ真に迫って胸キュンさせてくれたりするあたり、傑作だとは豪語しないけど佳作だとは私見する。
五等分の花嫁 ラバーマット 長辺約60cm×短辺約35cm 厚さ2mm

五等分の花嫁 第1巻 [Blu-ray]
(了)
(初出・オールジャンル同人誌『SHOUT!』VOL.74(19年5月4日発行))


『五等分の花嫁∬』(2期)

(2021年4月27日脱稿)


 「週刊少年マガジン」連載のラブコメ漫画の深夜アニメ化の第2期。オタ向け漫画やラノベのハーレム・ラブコメの文法を、ラブコメ漫画の本来の始祖である少年漫画誌の方にマーケティング的に逆輸入したパターンが2010年代には散見されるようになったけど、本作もまた企画的にはそんな一本なのだろう。


 お金持ちでも勉強はできない同じ高校の五つ子美少女宅に、諸事情で家庭教師として通うことになった学年成績トップではあるも貧困家庭で育った男子高校生の主人公クン。そんな彼には健気な妹もいたりして、キャラシフト的にはコテコテのハーレムラブコメではある。
 ただし、純オタ向け媒体ではなく一般青少年向け媒体での連載漫画であることからか、主人公クンはそこまで繊細ナイーブではなくやや覇気もあってブッキラボウであるところで、オタ層にも一般青少年層にも目配せした基本設定は絶妙。筆者は本作が大傑作だとは思わないけど、コテコテでも観られる作品には仕上がっていたとは私見する。


 そんな作品だったけど、原作マンガが完結していることからか、この第2期では早くも物語の風呂敷を畳んでいくようなストーリーが延々と描かれてもいく。
 第1期では彼の家庭教師ぶりに反発するも、個々人とは各イベントごとに親密さが増して、徐々に内心では彼に好意を募らせていく五つ子たち……といった微笑ましい展開ではあった。


 しかし、一夫多妻制でもなければリアルに考えれば、五つ子の誰かと主人公男子クンは結ばれるオチが、1期の#1冒頭から示唆されてはきたのだ。


・女王さまタイプの強気な次女は積極的に打って出る
歴女(れきじょ・歴史好き女子)でもある弱気な三女は懊悩する
・しかし、次女との角逐の末に三女も打って出る
・四女とも悶着がある
・妹たちの恋を応援するつもりでいた長女だが、やはり次女との角逐の末に内心の想いは捨てがたく、妹たちに変装して主人公クンとの束の間の逢瀬を楽しむネジクレた奇行を開始する


 それらは作劇的にはもちろん失恋フラグではある。しかし、同時に変化球のソレでもあるのだ。


 そう。告白されて主人公男子クンの胸がキュンとなる感情ではなく、五つ子たちの切ない胸キュン感情の方にスポットが当てられて、そこに視聴者も感情移入をさせられるようなドラマが展開されていくのである。


 まぁそのことが特別にスゴい! 優れている! 本作の独自性だ! などとガナる気もないのだけれども。


 しかし、ベタベタなハーレムラブコメの革袋からスタートしつつも、その範疇では美少女キャラたちの複雑デリケートな心情を、ラブコメだから決して過剰なドロドロの域には達しないけど、ある種の高みに達したかたちで描けたようには思えたのであった……。
ヴァイスシュヴァルツ ブースターパック 五等分の花嫁∬ BOX

(了)
(初出・オールジャンル同人誌『SHOUT!』VOL.79(22年5月30日発行))


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 『ウルトラマントリガー』(21年)最終章の総集編が、再編集・総集編番組『ウルトラマン クロニクルD』(22年)にて放映記念! とカコつけて……。『ウルトラマントリガー』最終章評をアップ!


ウルトラマントリガー』最終回「笑顔を信じるものたちへ」 ~新世代ウルトラ各作終章の出来も含めて賛否総括! 光と闇を包摂する真理!?

(文・T.SATO)
(2022年2月19日脱稿)


 2013年度から始まったニュージェネレーション・ウルトラマンシリーズ第9作こと『ウルトラマントリガー NEW GENERATION TIGA(ニュー・ジェネレーション・ティガ)』(21年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20211021/p1)。通例では7月に始まってクリスマス商戦の年末12月に完結するニュージェネ・シリーズだったのだが、同作はイレギュラーな番外の総集編を3本挟んで、歳を越えた翌年1月下旬に完結した。


 各話のゲスト怪獣よりも強い敵幹部級の存在として、シリーズを通じて登場してきた、悪のウルトラマン3人衆こと「闇の3巨人」。彼らはシリーズ終盤ではひとりまたひとりと敗退していき、悪の3人衆の筆頭である女ウルトラマンことカルミラは、闇の力を借りて超巨大怪獣と化す! その名も邪神メガロゾーア! ……というようなストーリー展開になるだろうことは、子供たちはともかく我々大きなお友だちにはミエミエであっただろう。


 ただし、ミエミエだから悪いということでもない。原典の女ウルトラマンことカミーラ同様、カルミラが3000万年越しでティガもといトリガーを妄執込みで愛していたと描かれてきた以上は、彼女とのドラマ的・バトル的な決着が本作のラストに配置されていなければ、それはそれで腰の座りの悪いオカシな作品となったことであろう。


原典『ティガ』最終回&後日談映画のシャッフル作劇!


 ところで、この邪神メガロゾーアとは、本作の原典でも『ウルトラマンティガ』(96年)最終章3部作(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19961207/p1)に登場したラスボス超巨大怪獣こと邪神ガタノゾーアや、『ティガ』の後日談映画『ウルトラマンティガ THE FINAL ODYSSEY』(00年・ttp://d.hatena.ne.jp/katoku99/19961209/p1)に登場した悪の女ウルトラマンことカミーラがラストで変身した超巨大怪獣こと邪神デモンゾーアのリメイクでもある。
 本作『トリガー』最終回は、一応の『ティガ』の次世代作品を謳(うた)っているので、この『ティガ』最終章3部作と『FINAL ODYSSEY』をシャッフルした作りともなっていた。もちろん、この2作品のいずれかそのまんまの内容では、子供たちはともかく大きなお友だちからはブーイングが飛ぶだろう。その逆に、あまりにも別モノであっても、それでは『ティガ』の次世代作品を謳っている意味がないとイチャモンを付けられることだろう。


 メインターゲットは今現在の子供たちである以上は、大きなお友だちの反応なぞは無視してもイイだろう。しかし、それもまた現実的には、そして人間の人情としても困難なことではある。


 そこで本作『トリガー』では、原典とは異なりラスボス怪獣はまずは新宿都心に出現させたものの、原典とも同様に最終的には海上で決戦させることになる。
 原典ではシリーズ後半の1エピソードにのみ登場した悪のウルトラマンティガことイーヴィルティガの変身前の「中の人」である青年科学者が、変身能力を失って改心したことで最終章3部作では再登場して、その人間としての頭脳だけを活かして活躍するかたちを採っていた。


 本作『トリガー』では、その立ち位置はカナリ異なるモノのお宝ハンター宇宙人・イグニス青年が「闇の残留エネルギー」をゲットして、ウルトラマントリガーの3000万年前の姿であった闇の巨人・トリガーダークへと変身! 敵対関係から和解に転じて、トリガー&トリガーダークの2大ヒーローが共闘して邪神メガロゾーアに立ち向かって、一度はコレを撃破してみせることで原典との差別化を果たしている。


『ティガ』最終回&後日談映画とも異なる新機軸部分!


 しかし、クトゥルフ神話の怪物『這いよれ! ニャル子さん』(09年。12年に深夜アニメ化・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20150601/p1)ことニャルラトホテップ、もとい細身の邪神・メガロゾーアは異形で幅広で「名状しがたい」((C)クトゥルフ神話・笑)醜悪な第2形態へと変化! トリガー&トリガーダークを打ちのめす!


 一度は撤退するトリガーたち。だが、トリガーことケンゴ隊員や怪獣攻撃隊の隊員たちの発案で、「光」単体の力だけでは「闇」に対して拮抗する程度に過ぎなくても、「光」&「闇」のダブルパワーであれば「闇」をも陵駕することが可能なのだ! という、ある意味では計量的・合理的な、別の意味では言葉のお遊び・頓知的な発想の作戦を発案!――「擬似SF性」というヤツです(笑)――
 イグニス青年がトリガーダークの「闇のエネルギー」をケンゴ隊員ことトリガーへと返すことで、「光」と「闇」の両方の力を併せ持たもったトリガー最強形態・トリガートゥルースも誕生する!


 そして、しばし優勢に活躍するも、それでも敗北(汗)して海底へと沈んでいく……。
 といったところで、原典『ティガ』の最終回とも同様に、コレら一連のTV中継を観ていた各地の子供たちが声援を送る! すると、トリガートゥルースもその光のエネルギーで充填!
 さらに、怪獣攻撃隊の空中母艦・ナースデッセイ号を中継器として、本作のキーとしても描かれてきた「エタニティ・コア」なる超エネルギーの力もチャージすることで大逆転! といったところで、いったんのオチとなっている……。


 邪神ガタノゾーアやデモンゾーアもどきの出現! TV中継を通じた子供たちの応援によるウルトラマンの復活&大逆転劇! といったところで『ティガ』らしさを醸し出しつつも、「光」のエネルギーの強大化だけで邪神を打倒できていたティガとは異なり、「光」と「闇」の両方の力と「エタニティ・コア」の力を秘めている最強形態と化すことで、『トリガー』最終回は原典『ティガ』最終回との差別化を果たすこともできていた……といった交通整理はできるだろう。


伝説化された原典『ティガ』最終回も当時は賛否両論!


 とは云うものの、もう四半世紀が経ったので往時の議論百出が均(なら)されてしまって、「総合的・最大公約数的には『ティガ』最終回は傑作だった」という見解に平均化・一般化がなされることで神格視されてはいるけれども、ココの扱いが実はムズカしい。


 往時にもうすでに大きなお友だちであった特撮マニア諸氏は覚えていることだろう。この『ティガ』最終回についても、当時は賛否両論であったことに。そして、そのようであった最終回を踏襲してしまうことに、否定とは行かなくても少々複雑な感慨を覚えるロートルな諸氏も一定数はいることだろう。


 具体的に著名人で云えば、オタク第1世代の怪獣絵師こと開田裕治(かいだ・ゆうじ)画伯などは、当時の月刊アニメ雑誌ニュータイプ』のモノクロ情報ページの最下段を数ページにわたって占拠していた、オタク業界人多数による各人の数行程度の近況報告の中で、「『ティガ』も最終回は子供がたくさん出てきて、あんなんだったしなぁ(大意)」といった主旨の否定的なコメントを残していたのだ(汗)。
 この意見が大変不愉快であったらしい、『ティガ』最終回を執筆した脚本家・小中千昭(こなか・ちあき)などは、出典の書籍は失念してしまったものの、開田との対談でノッケからソレに対する先制パンチ(反論・当てこすり)をカマしていたものである。



 当時の特撮雑誌の読者投稿や特撮評論同人界でのマニア論客たちによる賛否の論陣は整理してみせれば、以下の通りであった。


●いわく、人間の知恵&科学を用いた現実的&物理的な努力で、邪神に敗北して石化したティガを復活させてみせてこそ、非民主的で選民思想的にもなりかねない「光」なぞではなく、非力な凡人ではあっても努力を実らせることができる「人」としての民主的&自力的な解決法を賞揚できるのだ。大人たちの努力が水疱に帰したところで子供たちがオカルト・精神主義的に奇跡を起こすのであれば、それは「人」としての努力の賞揚にはならないし、旧態依然の他力&神頼みのそれに過ぎないのだ。


●いわく、「大人の観賞にも堪えうる」というような旧態依然のテーゼで、メインターゲットである子供たちをないがしろにしてはイケナイ。大人たちでも達成できなかったティガ復活が、子供たちの純真な想い&合体でこそ達成ができたのであれば、それもまた子供たちにとっては痛快でもあっただろう。


 ちなみに、筆者個人は双方の意見いずれにも組してはいない。双方の意見それぞれに一定の理はあるとも思うが、ドチラかが圧倒的に正しくて、片方が圧倒的に間違っているとは思われない。
 もちろん、不肖の筆者も作品批評の最終審判者などにはなりようがない。しかし、子供たちの想いが金色のエネルギー奔流と化して、それらが結集してティガとも合体! ティガのインナースペースの中で大勢の子供たちが同時に一斉にパンチを繰り出したり、所定のポーズを取って必殺光線を放つ姿に対して、個人的には好意的であり微笑ましく捉えてもいたのだ。


原典『ティガ』最終回における子役大挙登場が議論の的!


 けれど、同時にこうも思ってはいた。コレらの描写は幼児~小学校低学年であれば抵抗はないであろう。
 しかし、小学校中学年~中学生の時分に視聴すれば、自身よりも年下の子供たちがややタドタドしい演技でパンチを放ったり所定ポーズを取っている姿に、やはりしょせんは子役たちによる絵空事の演技に過ぎないと看て取って、気恥ずかしさ&少々の幻滅を覚えてしまったのではなかろうかと。
 されど、さらに長じて高校生以上にもなってくれば、今度は子役たちの未熟な演技も割り切って観られて、その下手ウマさもまた微笑ましくて健気なモノにも思えてきて許せてくるのではなかろうかと(笑)。


 子供にかぎらず人々や庶民の祈りが「光」のエネルギーとなってヒーローが大逆転! といった作劇は、往年の合体ロボットアニメ『六神合体ゴッドマーズ』(81年)最終回や合体ロボットアニメ『元気爆発ガンバルガー』(92年)最終回の1話前などでも先行例はあった。広義では「光」のエネルギーではなくても戦いを見守っている人々の「声援」がそれに当たるものではあった。
 よって、『ティガ』最終回は画期的なのだ! なぞという意見には少々抵抗を覚えてはいた。むろん、主人公以外の人々の尽力や祈りも決してムダではなかったという「テーマ」を体現してみせる作劇意図の具現化としての映像表現としては有効なものであったとは思うし、『ティガ』以降のジャンル作品でもこのテの作劇は一般化もしていく……。


 しかし、げに作品批評とはムズカしい。一律に子供といっても、子供たちの成長段階に応じて、その受け取るであろう感慨には相応の違いが生じてしまうモノなのだ。
 そして、筆者個人も小学校中学年~中学生の年齢の時分に『ティガ』最終回に接したならば、子供たちの光がティガに結集していくあたりはともかく、そのあとにおける子役たちがパンチやキックやポーズをタドタドしく取っている姿で興醒めしてしまったのではなかろうかとも思うのだ(汗)。
――コレが逆にTVアニメ作品で全編が最初から作画&プロ声優で統一表現されていれば、子役と大人の役者さんとの演技の技量差・リアリティーラインの相違なども発生することはないので、そこで幻滅することなどもなくスンナリと受け容れることができていたかもしれない可能性なども含めて想起する――


 てなワケで、子供の味方をしてみせたつもりであっても、それは3~4歳児だけの味方に過ぎなくて、小学3~4年生にとっての味方ではなく敵になってしまっている可能性があるのだ(爆)。安倍ちゃんやトランプのせいにもできない、自らも免れえない人間一般が持っている「原罪性」(汗)。子供番組のレビューというモノも実にムズカしい。コレは永遠のアポリア(難問)でもあり、最終アンサーにはついに至ることもないのだろう。


 『ティガ』のリメイクにして続編という命題に沿いつつも、『ティガ』とは異なる差別化された新作でもあらねばならない……。個人的にはその命題に本作『トリガー』は一応は応えてみせていたとは思うのだ。


『トリガー』最終回に弱点アリとすればソレは何なのか!?


 しかし、そのことともまったく無関係に、「大きな危機に見舞われるも、最後には大逆転で観客にカタルシスを与えること」が主目的でもある「勧善懲悪エンタメ活劇」として、『トリガー』最終章が『ティガ』最終章と比して劣って見えてしまう箇所は、まずはその前段たる「クライシス描写のスケール感の小ささ」であろう。
 まがりなりにも世界規模・地球規模での危機が起きている! といった描写を入れることで、通常回とはケタ違いの危機を描いていた『ティガ』と比すれば、『トリガー』は日本の一部で局所的な危機が発生していた……といった程度の描写に収まってしまっている。


 世界各都市での戦闘特撮をたとえ点描でも挿入するのにも工数や予算もかかるのはわかる。しかし、本作の怪獣攻撃隊・GUTS-SELECT(ガッツ・セレクト)には海外支部の存在は描かれなかったものの、その上位組織はTPUこと地球平和同盟なのだから、昭和ウルトラシリーズ以来の伝統で世界各地に支部は存在するのだろう(笑)。であれば、


●『劇場版ウルトラマンX(エックス) きたぞ!われらのウルトラマン』(16年)終盤のように、あるいは『ウルトラマンZ(ゼット)』(20年)最終章(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210905/p1)ではセリフや静止画写真のみだったものの(笑)、世界各地で同時に昭和や平成期の怪獣たちが出現しているのだとか


●邪神メガロゾーアの周辺だけしか「闇」には包まれてはいなかったようにも見えるので(汗)、『ティガ』最終章や『ウルトラマンタロウ』ムルロア前後編に『ウルトラマンジード』の最強形態登場編のように、邪神が全身から噴き出した「暗雲」で日本のみならず世界・地球の全体が「闇」に覆われてしまった……


などといった、眼で見てもスケールが大きい危機が到来しているのだと子供でもわからせる点描、ワンカットの特撮映像――加えて、闇夜の世界各都市でも各支部の戦闘機・GUTSファルコンが「闇怪獣(やみ・かいじゅう)」とも交戦中など!――も描いてほしかったモノなのだ。


 逆に云うならば、筆者がイマ半だと思ったのはその点だけだったともいえるのだ。


 そーいう意味では、『ティガ』最終章に似ているのか否や? 子供の声援をドー見るのか? 子供の「光」と「スマイル」が同質か否かなぞは二次的なことである。そこが『トリガー』という「勧善懲悪エンタメ活劇」の成否に直結していたとも思われない――そもそも「光」も「スマイル」も「ポジティブ属性」であって「正義」という言葉の云い換えにすぎない――。


 もちろん、『ティガ』肯定派&否定派である年長マニア双方がソコを気にしてしまうのは心情的にはまぁわかる。
 しかし、それら「勧善懲悪エンタメ活劇」としての本質・成否・巧拙とは無関係でしかない些事がごときに、作品や事物の本質・構造・真善美などを虚心坦懐に究明・接近していくためのロジック(ロゴス)ではなく、枝葉末節についての言葉遊び・イチャモン的な珍妙なロジック(屁理屈)を、物事を改善したいという想いよりも論敵をツブしたいといった劣情の方が勝った礼節を欠いた物言いで延々と紡いでみせている行為などは、中世キリスト教的な神学論争・空理空論にしか見えないのだ(笑)。


 仮に『トリガー』最終章に問題点があったとしても、その根本原因は些末なディテールなどにはないだろう。


「巨悪が攻めてきた!」→「巨悪に立ち向かう孤高のヒロイズム!」→「押されている!」→「反撃!」→「勝利!」


といった一連である「エンタメ活劇」の普遍の大構造に即していて、各パーツがピタッとハマったかたちでウマく描けていたのか?
 「強敵感」や「絶望感」に、そこから来る「対比」「落差」の効果としての「逆転の快感」などを十全に描けていたのか?


 それらの成否についてをこそ、「作劇術」や「批評」はキモにすべきなのであって、その他についての議論なぞは事物の本質とは無関係な些末なことだとしか思えない。


 『トリガー』最終章の弱点とは、一にも二にも「通常回」とは異なるモノとしての「最終章」にふさわしいスケール感の少々の欠如。あるいは、ラスボス怪獣がもたらす被害の小ささだろう。
 スケールも大きい巨悪や絶望感あふれる危機の「絵図」を描いてこそ、そことの対比・落差の大きさから出る「逆転劇」の壮快さ、ラスボス怪獣をも上回るヒーローの強さ、もしくはサポーターとの共闘がもたらした勝利から来るカタルシスも強くなるからだ。
 そして、それこそが「勧善懲悪エンタメ活劇」の普遍的な骨格なのである――こう書くと、実に陳腐・凡庸なジャンルなのだけど(汗)――。


 子供たちの応援だの光&闇だのスマイルだのといった議論なぞは無意味だとまでは云わないものの、「テーマ」モドキを感じさせるための意匠・トッピング・スパイスに過ぎないのであって、「エンタメ活劇」の成否の理由を論じるにあたっては枝葉にすぎないのだ。


――しかし斯界(しかい)を見るに、作品の欠点を指摘するのにあたって、壮快な「勧善懲悪エンタメ活劇」を構築するための作劇術の巧拙や活劇としての深層構造などには眼を向けずに、擬似テーマ主義的に表層的な上っ面の劇中要素をダシに道徳的に論難して、作品論をただの通俗道徳論へと堕さしめてしまうような「重力の井戸」は、やはり今でもあまりにも強いことは痛感してしまう――


近作ウルトラシリーズにもあった最終章における弱点!


 ただまぁ、最終回にふさわしい大バトル&大逆転劇の巧拙における問題点は近作にも共通することであって、実は本作『トリガー』だけにかぎった話ではなかったのであった。


 個人的にはニュージェネ・ウルトラシリーズ各作の「最終回」は、『ウルトラマンギンガ』(13年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200819/p1)~『ウルトラマンオーブ』(16年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20170415/p1)や『ウルトラマンR/B(ルーブ)』(18年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20180826/p1)については、各作ごとの「通常編」よりもスケールアップされた大バトル劇で申し分がなかった。しかし、


●『ウルトラマンジード』(17年)最終章(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20180213/p1)では、ジードvsジードの父でもある黒くて悪いウルトラマンことウルトラマンベリアルと、ヒロインである刀剣女子vsベリアルと通じていたダンディーなSF作家先生との戦いが分離気味であり、後者がバトルよりも人間ドラマ寄りになることで活劇度がウスれてしまっている


●『ウルトラマンタイガ』(19年)については、作品自体にタテ糸や宿敵キャラである青黒色の悪いウルトラマンことウルトラマントレギアとの因縁要素がウスかったために、その最終章(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200112/p1)も取って付けたような少々の異物感がある


●『ウルトラマンZ』(20年)最終回(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210905/p1)なども、主人公青年&ヒロイン隊員の恋情確認の絶叫ドラマがキモなのであって、バトルとの一体化は辛うじて保たれてはいたモノの、純然たる攻守逆転劇にはなっていない。加えて、ベリアルの残骸細胞であったデビルスプリンターが意味を持ってこなかったり、宿敵たる寄生生命体・セレブロが倒すべき巨悪へと昇格していかなかったあたりにも不満


 ……などなど、各作自体の致命的な欠陥だとは云わないまでも、それぞれの作品に小さな不満を感じてはいたのだ。そして先にもふれた通りで、本作『トリガー』の最終展開や同作シリーズ後半にも上記の作品群に対するソレと同じ程度のレベルで、個人的にはいくつか小さな不満はあったということだ。


 よって、やはり1年間・全50話も放映されるTVシリーズとは異なり半年・全25話しかないTVシリーズなのだから、少々残念でも1話完結の単発ゲスト回などは極力排して、もっとメインストリームや基本設定それ自体にガッツリとカラんだエピソードだけを配置していくべきではなかっただろうか?――そのかぎりで単発話やゲスト話がほとんどなくって、基本設定や主要登場人物の人間関係を煮詰めることだけでストーリーを進行させていく近年の「仮面ライダー」シリーズはエラいと思うのだ――


ウルトラマンジード』シリーズ後半~最終章の弱点!


 『ウルトラマンジード』のシリーズ終盤回である、往年の『ウルトラセブン』(67年)#26に登場した巨大怪獣ことギエロン星獣が登場する#20「午前10時の怪鳥」なども、単発話としてはまぁ面白くはあったのだ。同作の実質のシリーズ構成を務めていた女性脚本家・三浦有為子が第1期ウルトラシリーズ的な乾いたSF的不条理感をも再現したかったのであろう気持ちはよくわかるし、それも成功していたとも思うのだ。
 しかし、そんなエピソードなぞよりも(汗)、『ジード』という作品においては、全宇宙に偏在している「幼年期放射」なる微弱電波とは何ぞや!?――その正体は宇宙サイズかつ宇宙の幼年期にまで拡散・稀釈化して、大宇宙自体を修復中であるウルトラマンキング!―― 「カレラン分子」とは何ぞや!?――それは生物の体内で幼年期放射を結晶化させて、リトルスターやウルトラカプセルとしての実体化を促進!―― 「分解酵素」とは何ぞや?――そのカレラン分子を無効にする物質!――
 一度は宇宙全体を破壊した「クライシス・インパクト」は6年前の出来事だったというのに、爆心地付近の病院で誕生した19才のヒロインの生誕にキングが干渉していたのはナゼなのか!?――光よりも速い速度で宇宙全体に拡大したことで、超光速タキオン粒子の原理でキングの身体は時間も逆行して、宇宙の幼年期の太古の時代にまで偏在していた!――
 ……といったところを、要人警護やアイテム争奪戦にカラめて、劇中設定も小ムズカしくないかたちの「絵」として説明すべきであっただろう。


ウルトラマンタイガ』シリーズ後半~最終章の弱点!


 『ウルトラマンタイガ』なども同様であった。外国人移民や難民問題を地球人の姿に変身しているゲスト宇宙人たちに仮託して描く方針を、子供向けヒーロー番組でやることを手放しで絶賛する気にはなれないモノの、その志の高さは認めよう。
 しかし、各話のドラマ性&テーマ性は高くはなってもやや陰気な作風になりがちであった以上は、主人公青年に憑依(ひょうい)していてコップのフチ(笑)などで余人には見えない小人姿でコミカルな挙動を見せていたユカイな新人ウルトラマン3人に、ゲストキャラの境遇に対する同情や論評などを加えさせるかたちでカラませて、作風を明るくしてバランスも取るべきではなかったか? 3人ウルトラマン各々の過去とゲストキャラとの境遇をオーバーラップさせるかたちで、彼らの肉付けももっと増量できたであろうし、子供たちにとってもその方がドラマ&テーマも伝わりやすかったことだろう。
 レギュラーかと思えばほとんど出なかった人間サイズの悪い着ぐるみ宇宙人集団・ヴィランギルドも、シリーズ途中で第3勢力からラスボス・トレギアの軍門に降るなどして目先の変化、敵のスケール感&攻防劇をも強調しておけば、かえって「移民・難民」問題もその説教臭がウスれてビビッドにイヤミなくそのテーマ性が浮かび上がってきたようにも思うのだ。


 タイガを昭和のウルトラマンタロウの息子だと設定、同作のラスボスであるウルトラマントレギアもタロウの旧友だとしたからには、タロウとトレギアが決別した理由を徐々に小出しに明かしていくようなタテ糸もあってしかるべきであった。
 トレギアも当初はタイガをヒヨっ子扱いにして愉快犯的に弄(もてあそ)んで、自身と戦うに足る強さを兼ね備えるまで余興的に待ったところで鼻っ柱を叩き折ることで嗜虐心を満たそうとはしたものの、予想を超えて強くなったことで焦ってホンキでツブしにかかってくる。終盤ではタロウが復活参戦するも苦戦。成長したタイガが最終的にトレギアを打倒してみせることで「父超えの物語」ともする。
 などといった、アリガチで常套的で先行きの予想が付いたとしても(笑)、カタルシスはあるビルドゥングスロマン(成長物語)としての構築をナゼに怠ってしまうのか? それらの要素が入っても、現今の「ライダー」「戦隊」と比すれば、まだまだ劇中要素は決して多くはないだろうに。


 関係各位の証言を読むに、かの実相寺昭雄(じっそうじ・あきお)カントクの会社・コダイ上がりの監督で、現在では円谷プロ側の雇われチーフ・プロデューサーを務めている北浦嗣巳(きたうら・つぐみ)の意向で、『タイガ』では昭和ウルトラシリーズ的な1話完結性を重視してしまったことのコレは弊害でもあっただろう。
 ここで玩具会社・バンダイなり円谷プロの若手スタッフの心ある誰かがダメ出しをして「オレがやる!」と手を挙げて主導権を握るべきでもあったのだ。最後は個別具体の特定個人の人格力・交渉力・声の大きさ、権力や権利の善用なのである。正しき者こそ強くあれ!


――『ウルトラギャラクシー大怪獣バトル』(07年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20080427/p1)~『ウルトラマンX』(15年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200405/p1)はバンダイから出向の岡崎聖・制作統括。『ウルトラマンオーブ』(16年)~『ウルトラマンR/B』(18年)は現場上がりの鶴田幸伸プロデューサーが主導していたことは各位の証言で明らかだ――


ウルトラマンZ』シリーズ後半~最終章の弱点!


 『ウルトラマンZ』においてもシリーズ中盤以降は、罪のないイイもん怪獣を倒してしまった主人公青年が悩みつづけたり、怪獣攻撃隊の巨大ロボット4号が異形のラスボス合体怪獣へと変化することで、行き過ぎた武力行使や科学に軍事力への警鐘ともしていた。テーマ的には一応は誠実だともいえるし、若手役者さんにとっても演技の振り幅を体験するという意味では有意義なことだったとは思うのだ――個人的には問題視すべきなのは「用途」なのであって、「技術」や巨大ロボットそれ自体が悪だとも見えかねない描写にはやや不満もあるのだが――。


 しかし、シリーズ前半同様にもっとおバカな熱血路線で、地球外生物セレブロに寄生されている怪獣攻撃隊の研究所に所属するカブラギ青年なども、若いオタク連中いわく近作の「円谷のヤベェ奴ら」同様に、キモいけど半分は笑ってしまう演技による「ネタキャラ」的な宿敵として(笑)、彼との攻防劇を主眼に描くべきではなかったか?
 『ウルトラマンX』のシリーズ後半ではダークサンダーエナジーにてゲスト怪獣が凶暴化するパターンが採用されていたが、『Z』後半でもカブラギ青年がデビルスプリンターを使ってゲスト怪獣を凶暴化させるべきではなかったか? 少なくともラスボス怪獣の組成にはデビルスプリンターをカラめるべきではなかったか?


 そうすれば最終回では、ベリアルの息子でシリーズ前半では客演も果たしたウルトラマンジードが! 怪獣攻撃隊のヘビクラ隊長とも因縁があるのでウルトラマンオーブが! ウルトラマンゼットの両脇を固めて、変身シーンのためだけに(笑)、1シーンのみ「中の人」も登場・変身して参戦させることでイベント性をさらに高めることも可能になったハズである!?――もちろん、ラスボス怪獣に対するトドメはゼットが刺すにしてもだ!――


 ……我ながら延々と「ボクの考えた最強の○○」といった類いを披瀝しており、お恥ずかしいかぎりではある(汗)。要は自分が好む作品については採点が甘くなるのは良くも悪くも人間の常だとしても、本作『トリガー』のみならず近作に対しても甘い採点に開き直ってしまったり、欠点や弱点は無視して一言も言及しなかったり、そも気付きもしない! などといった「お友だち内閣」的な言動ではアンフェアなのである。


ウルトラマントリガー』シリーズ後半~最終章の弱点!


 ここまで記してきた通り、『トリガー』も近作と同様の問題点を抱えているのだ。シリーズ前半には登場していたデビルスプリンターならぬ「闇怪獣」といったカテゴリーの怪獣たちが、シリーズ後半には登場しないのはいかがなモノか? それこそ後半では闇の3巨人がその闇の力で、着ぐるみは既成の怪獣の流用でも別名だけは「闇怪獣」(笑)へと凶暴化させて繰り出すべきではなかったか!?


 超古代文明の実態や滅亡の要因が判然とはしなかったことも、原典『ティガ』とも共通する欠点であった――『ティガ』も放映前のマニア誌などでは「超古代文明は怪獣や宇宙人の襲撃に遭っていた」という基本設定の紹介はあったのだが、映像本編ではそのようには言及されなかったのだ(汗)――。
 『ティガ』や『トリガー』とは世界観を異にする初代『ウルトラマン』(66年)に登場した、原典に準じて3億5千万年ならぬ3億5千年(笑)のむかしから復活した超古代怪獣アバラ&バニラスを登場させたこと自体はイイ。
 しかし、トリガーや闇の3巨人とも同じ3000万年前が出自だったとマイナーチェンジし、彼らこそが『トリガー』世界の超古代文明を滅亡させた元凶だったとして、そこで超古代文明の実態も明かしていった方がよかったのではあるまいか!?――むろん、3000万年前&3億余年前の文明双方を滅ぼしていたことにしてもイイ!――
 『ティガ』の代表的な悪役でもある人間型の悪の超人・キリエル人(びと)を『トリガー』にも登場させたこともよかったのだが、原典ではキリエル人も3000万年前の超古代文明よりも古い出自であったハズで、彼らにも往時の超古代文明の実態を語らせるべきではなかったか!?


 そこまでやってくれれば、「『トリガー』は『ティガ』をも余裕で超えることができていた!」と個人的には手放しで認定したくなったのに……。
――主人公青年が育てていた、ツボミのままのお花の名前は「ルルイエ」なので(クトゥルフ神話における超古代遺跡の名前で、転じて『ティガ』後日談映画での舞台とされた)、これを悪ではなく善の存在だとして終わらせてしまったあたりもイマ半だけど、まぁ許そう(笑)――


 なお、本作『トリガー』には前作のヒーロー・ウルトラマンゼット、ネット配信作品『ウルトラギャラクシーファイト』シリーズ(19年~・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200110/p1)で主役級で活躍しているウルトラマンリブット、本作の原典であるウルトラマンティガがゲスト出演するイベント編を3編も用意した。
 その試み自体はそれ以前のシリーズとは世界観を完全に刷新していた原典『ティガ』とも異なる手法なのだけど、筆者個人はヒーロー共演や異なる世界観の連結といった要素に、物語一般の無限の豊饒性や高揚感があると見ている者なので肯定的に捉えてはいる。


――その伝で、ウルトラシリーズ50周年記念作であった『ウルトラマンオーブ』なども、『オーブ』の前作『ウルトラマンX』における21世紀以降の先輩ウルトラマンたちが数話に一度はゲスト出演するというイベント要素を継承して、昭和や平成の先輩ウルトラマンたちが数話に一度はゲスト出演するような、アニバーサーリーにふさわしい作品を見せてほしかった。しかし、各種の人気投票企画でもご承知の通り、『オーブ』は先輩ウルトラマン登場がなくても若い特撮オタク間では高い人気を保っていることも認める――


1話完結を連続形式に変える者としてのライバルキャラ!


ウルトラマンゼロウルトラマンジードに対するウルトラマンベリアル
ウルトラマンオーブに対するジャグラスジャグラー
●古いところでは、キカイダーに対するハカイダー
ライオン丸に対するタイガージョー
●近年(?)では、ゴッドガンダムに対するデビルガンダム(笑)


 世界征服などという「大義」ではなくって、実はツンデレ――ツンツンと反発しているようでもデレデレと甘えた態度も取ること――な「恋情」や「私怨」が行動原理でもあることが恒例でもあるダークヒーローやライバルヒーローたちとも同様で、前々作『ウルトラマンタイガ』におけるウルトラマントレギアなどとは異なり、本作『トリガー』における悪のウルトラマンたちである闇の3巨人も「恋情」だったり第3勢力キャラ・イグニス青年とも「因縁」を持たせたり、今時の作品の通例でシリーズ途中ではお笑い担当として「ネタキャラ」化もしつつ、本作の背骨・一本線には成りえてはいたことで、作品を空中分解の危機からは救っていた。


 その意味では、往時の特撮マニア間では3度目・4度目の再登場や最終章ではラスボスとしての決戦も待望されていたのに、原典『ティガ』には実質2回しか登場しなかったキリエル人の扱いからは進歩して、同時期の90年代中盤の東映メタルヒーローで、


●主役ブルービートに対する宿敵ブラックビートが登場した『重甲ビーファイター』(95年)
●次世代ビーファイター3人に対して悪のビークラッシャー4鎧将(しがいしょう)が登場した『ビーファイターカブト』(96年)


 あるいは、マグマ星人がレギュラー敵として登場していた内山まもる先生による学年誌連載『ウルトラマンレオ』コミカライズ(74年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20061028/p1)の域に、2010年代以降のウルトラシリーズもようやくに到達したのだ! その伝で『トリガー』にかぎらず、ニュージェネ・ウルトラシリーズの方が平成ウルトラ3部作なぞよりも上回っているのだ! なぞというマッピング・見取り図で捉えている御仁は全然いないようだけど(笑)、ロートルな筆者はそのように『トリガー』も含めたここ10年ほどのウルトラシリーズを上位の作品としては捉えているのだ。


悪の女超人カルミラに見る、ジャンル近作での悪の救済!


 たとえば「大坂の陣」における淀殿(よどどの。幼名・茶々)は、2時間尺の映画やTV時代劇であれば単なる悪女にした方がブレずにキャラも立つ。しかし、1年間・全50話の大河ドラマであれば単なる悪女キャラだけでも飽きてくるので、愚かしくても豊臣家&息子・秀頼を守るために尽くした健気さも徐々に小出しにしていった方が、逆にキャラも立ってくるというモノなのだ。


 そのような尺数にも影響される作劇理論で(笑)、ティガとダイゴ隊員は別人であるハズなのに恋慕していた原典におけるカミーラの取って付けたような改心的な最期(さいご)よりも、トリガーダークに芽生えた良心の輪廻転生がケンゴ隊員であったとした本作における、トリガーの腕の中に抱かれての少々の「救い」もあるカルミラの最期の方がスムーズで、ナットクもできるものではあった。
 活劇的にはともかくドラマ面では妥当なあるべき決着なのだし、人間はその最期に看取ってくれる知己さえいれば、それだけで救われるモノでもあるのだろう……。
――個人的には昭和の芸人たちや名俳優・藤田まことなどの発言のように、飲んだくれてドブ川に落ちて最期は誰をも恨まず自らの滑稽さを笑いながら、明るくひとりで死んでいくダンディズムのカッコよさを世間はもっと賞揚してくれよ! なぞと思っていたりもするけれど(笑)――


 あくまでも「エンタメ活劇」としての成否をこのテの変身ヒーロー作品の批評では論じるべきだとは思うのだ。しかし、それを原理主義の域で捉える必要はないだろう。
 「悪」にはなりきれなかったジャグラスジャグラー同様に、悪の女ウルトラマンことカルミラに対しても、女児向けアニメ『美少女戦士セーラームーン』シリーズ(92年~・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20041105/p1)や『プリキュア』シリーズ(04年~・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20201227/p1)に、かの庵野秀明カントクの映画『キューティーハニー』実写版(04年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20041103/p1)やアメコミ洋画の最新作『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』(21年・日本公開22年)などとも同じく、チンピラ三下(さんした)はともかく幹部級の悪党には彼らのやむをえなかった事情なども描いて「心理的救済」や「成仏」をも与えてみせるといった作劇。
 「エンタメ活劇」だとはいっても、そーいった作劇も二次的には許容されてしかるべきではあろうし、盲目的で独善的ではあっても「恋情」を彼女の行動原理としてきた以上はこのように落とすべきでもあっただろう。
――たとえば良くも悪くも『ウルトラマンジード』の最終回などもこのパターンであって、本作『トリガー』最終回の作劇にも通じており、「闇」をも包摂するほどの器量の大きさを持った人格への成長・大慈悲の境地がテーマ的な着地点でもあったのだ――


活劇としてはともかく、あえて光と闇のテーマ性を解題!


 「光」と「闇」の力を併せ持ったという意味を持たせるために、そのデザインのカラーリングの一部に黒を加えただけのトリガートゥルースも、おそらくは円谷側での文芸設定的な意向などではないのだろう。往年の『ティガ』後日談映画などもそうだったのだろうが、バンダイ側が玩具の金型はそのままもしくは微改修で色彩だけを変えた商品点数を増やしたいというゴリ押しで、往年の「ティガダーク」ほかや近年の「黒い仮面ライダービルド」に「白骨の仮面ライダーセイバー」などとも同様に「販促ノルマ」として押しつけられたモノでもあったことは想像にかたくない(笑)。しかし、それすらも文芸的に劇中内にて必然性があるモノだとして昇華してみせるのが、作家たるべき者の務めなのである。


 本作では「闇」を拒絶して「光」だけを賞揚するといった展開は採らなかった。たしかに「正論」「理屈」だけでもヒトは救われないところがある。「人」個々人の内にもまたまぎれもなく怒りや恨みといった「闇」の劣情なども常に湧いてきてしまうモノでもある以上は、劣情にも寄り添って「共感」を示してこそ、当人も認められたと感じて癒やされたりして、そこを経過してこそはじめて改心できるのだという心理的カニズムもあるだろう。
――ただまぁ、筆者個人について自分語りをさせてもらえば、この生きにくい世の中を「理屈」で解釈して、手のひらの上に「縮図」として載せて、「価値判断」としては肯定はしなくても「事実認定」としてはナットクをすることで、擬似的に状況よりも上位に立って安心・救いを得ようとするタイプなので、他人なぞに寄り添ってもらって支えてもらいたいとは思わないけれど(笑)――


 「光」と「闇」の力を併せ持った最強形態・トリガートゥルース。そこにも文芸的な必然性を与えようとするならば、それはもうカルミラの「闇」をも包摂してみせる所業にしかなかったことであろう。ムリやりにテーマ面・文芸面を賞揚的に抽出してみせれば、そのあたりが一応の新機軸たりえていたとはいえるだろう。


――とはいえ、先ほどの発言とは矛盾するけど、「善」と「悪」とは対等な実在であるのか? 「善」(光)だけが真の実在で、「悪」(闇)とは実在ではなく善(光)の欠乏状態にすぎないと見るのか? 「光(源)」と「陽」(=光が当たっている側の物体の表面)と「陰」(=光が当たっていない側の物体の表面=SHADE)や「影」(=地面に映ったSHADOW)に「闇」といった5階層など、神学論争的には千年一日の議論ではあったりするという意味では決して新しくはなく、古来からの普遍的な問題設定なのかもしれないが――


『トリガー』における怪獣攻撃隊の面子をドー見るか!?


 加えて本作最終回では、怪獣攻撃隊の隊員たちが最終決戦にて単なるヒーローvsラスボスとの戦いの傍観者、バトルとドラマの分離も避けるべく、邪神の力の余波で生前の意識はナシで復活した闇の2巨人も怪獣攻撃隊の空中母艦内に人間サイズで出現して白兵戦! といったかたちで、隊員たちにも活躍の見せ場を与えていた。


 なお、ググってみると、彼ら隊員たちに漫画アニメ的・記号的なキャラ付けしかなされていないことには不満の声も上がっていたようだ。……そ、そーかなぁ。往年の『帰ってきたウルトラマン』(71年)や『ウルトラマンティガ』(96年)における怪獣攻撃隊のレギュラー隊員たちのようにリアルというよりナチュラルな人間描写もイイとは思うけど、子供向け番組一般の登場人物の造形法としては適度にマンガ的に誇張・極端化もされている方に筆者個人は軍配を上げるけれどもなぁ――100かゼロかという話ではなく、両方ともにあってイイという話ですヨ――。


 過去話やゲストキャラとのカラみなどでムリに肉付けなどしなくても、単体でキャラを立てることができていたという意味では、空中母艦・ナースデッセイ号を操艦する体育会系・テッシン隊員も、無人戦闘機を遠隔操縦するややエキセントリックな女性隊員・ヒマリも個人的にはスキだし評価もしている。


『トリガー』最終回における自己犠牲テーマもドー見る!?


 本作最終回では最終決戦後にもうひとつのクライマックスが設けられている。超エネルギーであるエタニティ・コアの暴走を鎮(しず)めるために、主人公青年がウルトラシリーズではともかく昭和の特撮やアニメではよくあった自己犠牲的な行為に及ぶのだ――このあたりは偶然なのだが、同時期に放映されていた『仮面ライダーセイバー』(21年)の最終回(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20220116/p1)とも通じるものがあった――。
 ただし、それを旧日本軍的な特攻だという批判を浴びせないようにするためにか(笑)、別れの悲壮感などは極力排されてはおり、むろん特攻死などにもなっていない。


 『セイバー』とは異なりエンディング主題歌が流れ終わったあとにも彼は生還しないで終わるのだけど(爆)、映像面ではエタニティ・コアの中で眠りながらも生存はしていることが明示されて明朗なエンドとなっている……。


――むろん、最終回の数話前から本作の中CMなどでも流されてきた最終回後の後日談映画『ウルトラマントリガー エピソードZ(ゼット)』(22年)の予告編映像にて彼は元気に活躍もしているので、近い未来に無事に生還することは確定済!(笑) 作品外での情報も駆使して、過剰に湿っぽい雰囲気を与えてしまう危険の回避もできていた――


総括:『トリガー』人気の高低を何でドー測定すべきか!?


 いろいろと書いてきたが、マニア間では大人気作となった直前作『ウルトラマンZ』と往年の人気作『ウルトラマンティガ』との板挟み、双方の批判の論拠は真逆で異なるものの、そこは自覚・整理されずにフワッとした野合となることで、『トリガー』はマニア間ではカナリな矢面に立つ作品となってしまったことは事実である――『ティガ』を未見の特撮マニアの方が今となっては多数派なのだが、むろん仮に実は少数派による批判であったのだとしても、それに対しても一定の尊重はされるべきではある――。


 ただし、それら自体がまた、あくまでも大きなお友だち・年長マニア間での評価にすぎない。子供間での人気の測り方もまた実にムズカしいものではあるけれど、玩具の売上高が一応の参考にはなるのだろう。
 今年2022年には判明する2021年度のウルトラシリーズの玩具売上高の発表を待って改めての参考ともしたい。筆者個人の作品評価と玩具売上(子供人気)が相反するものであった場合でも、それはそれで虚心坦懐に受け容れて、本作に対する見解も釈明・修正していきたいとは思うのだ。
――「謝ったら負け病」の人間なぞではないので(笑)。もちろん、作品は不人気でも玩具単独の魅力だけで売上高が上がるといったこともゼロではないのだろうけど、そのようなこともまた滅多にはないであろう――


追伸


 本作『トリガー』の次作は、『ウルトラマンティガ』の次作である『ウルトラマンダイナ』(97年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19971215/p1)がフィーチャーされることがすでに明かされている。『ティガ』主演のジャニーズ・長野博とは異なり、変身前の「中の人」であるつるの剛士(つるの・たけし)のギャラは相対的には安いであろうし、客寄せパンダ的にも喜んで大いに協力してくれそうではある。
 この流れで前作『ウルトラマンZ』までの作品が次々と順番に毎年リブートされるなどというようなことはないだろう。しかし、同じく「平成ウルトラ3部作」である『ティガ』と『ダイナ』はリブートされたのに、残りの『ウルトラマンガイア』(98年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19981206/p1)だけがリブートされないとなると、それはそれでかわいそうな気がしてくる。よって、『ガイア』まではリブートしてあげてもイイのでは?(笑)


追伸2


 「鵜の目 鷹の目(うのめ・たかのめ)」で作品の細部をチェックしていて、個人個人の見識としてはともかく、結果的に集合知といったモノが浮かび上がってくる巨大掲示板まとめサイトなどでの本編画像検証によれば、ウルトラマントリガーが第4形態・グリッタートリガーエタニティに強化変身した2021年10月9日(土)に放映された#12「三千万年の奇跡」の撮影日が、ヒロイン・ユナ隊員のデジタル腕時計の拡大映像(笑)にて判明している。少なくとも同話は2021年5月22日(土)に撮影されていたというのだ。
 よって、放映の約5ヶ月前には撮影がなされていたことになる。それにも関わらず、本作では3本の総集編が入った末に通常は年内で終わる放映が翌年1月に3話分もハミ出していた。


 昭和~90年代後半の平成ウルトラ3部作までの放映日ギリギリ納品の時代とは異なり、その反省に立って『ウルトラマンコスモス』(01年)以降は放映から半年ほどは先行して撮影を済ませていることは、往時からのマニア向け書籍などでのスタッフの証言でも明かされている。2010年代以降のニュージェネ・ウルトラシリーズも同様であるから、つまり『トリガー』も撮影自体は特に遅延していたとは云えないことになる。
 ニュージェネ以降は製作費を削減する大前提もあって、「本編」と「特撮」の2班体制はなくなりスタッフは「本編」「特撮」の兼任ともなっている――スタッフ・インタビューによると、コレによってやむをえずカナリの早撮りとなっているようだ――。よって、「本編」は撮影が順調ではあったものの「特撮」だけが遅延していたとも考えにくい。


 ということは、物理的な実体がある在り物・現物――役者・風景・ヒーロー・怪獣着ぐるみなど――の撮影さえできれば2話1組にて2週間ほどで撮了となるのであろう「撮影現場」側の都合ではなく、「ポスプロ」(ポスト・プロダクション=後処理=CGや合成)チーム側での不都合・遅延などがあったのであろうか?――CGや合成も予算はともかく一定以上のクオリティーを確保するためには日数を要するのだ(汗)――


 しかし、ご存じの通り『トリガー』においては、全話に登場するゲスト怪獣をすべてソフビ人形化するというバンダイ側の目論見もあった。そう考えると、多種にわたるソフビ人形の中国での製造や輸入に国内玩具店への配備などの問題で、ゲスト怪獣が登場する放映日に合わせたかたちで発売することが困難であったために総集編が3本も挿入されて、その分が翌年放映分に繰り越しになったといったことなのであろうか?――放映に連動したタイミングで都度都度に新発売にしていった方が、やはり売上もイイそうなので(笑)――


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2022年2月号』(22年2月20日発行)~『仮面特攻隊2022年号』(22年8月13日発行)所収『ウルトラマントリガー』最終回合評2より抜粋)


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  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20120513/p1

ウルトラマンネクサス』(04年)最終回 ~中後盤評 #37「Final Episode 絆 ―ネクサス―」

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060308/p1

ウルトラマンマックス』(05年)終盤・最終回・『マックス』総括! #33~34「ようこそ! 地球へ」バルタン星人前後編

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060503/p1

ウルトラマンメビウス』(06年)最終回 最終三部作 #48「皇帝の降臨」・#49「絶望の暗雲」・#50「心からの言葉」 ~ありがとう!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070505/p1

ウルトラギャラクシー大怪獣バトルNEO』(08年)最終回 #12「グランデの挑戦」・#13「惑星崩壊」

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100331/p1

ウルトラマンギンガ』(13年)最終回 ~タロウ復活! 津川雅彦もキングに変身すべきだ! ウルトラ怪獣500ソフビを売るためには!?

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200827/p1

ウルトラマンオーブ』(16年)最終回「さすらいの太陽」 ~田口清隆監督の特撮で魅せる最終回・ジャグラス改心の是非・『オーブ』総括!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20170415/p1

ウルトラファイトオーブ』(17年)完結評 ~『オーブ』・『ジード』・昭和・平成の結節点でもある年代記的な物語!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20170603/p1

ウルトラマンジード』(17年)最終回「GEED(ジード)の証」 ~クライシスインパクト・幼年期放射・カレラン分子・分解酵素・時空修復方法はこう描けば!?

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20180213/p1

ウルトラマンタイガ』(19年)最終回「バディ ステディ ゴー」 ~『ウルトラギャラクシーファイト』『スカイウォーカーの夜明け』『仮面ライダー令和』 ~奇しくも「父超え」物語となった各作の成否は!?

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200112/p1

ウルトラマンタイガ』(19年)最終回「バディ ステディ ゴー」 ~タロウの息子としての物語たりえたか!?

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210606/p1

『ウルトラギャラクシーファイト ニュージェネレーションヒーローズ』(19年)最終回 ~戦闘連発でも多数キャラの動機・個性・関係性は描破可能! 物語よりも点描に規定される作品の質!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210620/p1

ウルトラマンZ(ゼット)』(20年)最終回「遙かに輝く戦士たち」・後半評 ~ネタキャラが敵味方に多数登場だが熱血活劇! 2020年代のウルトラはかくあるべし!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210905/p1

ウルトラマントリガー』(21年)最終回「笑顔を信じるものたちへ」 ~新世代ウルトラ各作終章の出来も含めて賛否総括! 光と闇を包摂する真理!?

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20220326/p1(当該記事)


ウルトラマンエース』(72年)最終回「明日のエースは君だ!」 ~不評のシリーズ後半も実は含めた集大成!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070429/p1

『ザ☆ウルトラマン』(79年)最終回 #47「ウルトラの星へ!! 第1部 女戦士の情報」

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100328/p1

『ザ☆ウルトラマン』(79年)最終回 #48「ウルトラの星へ!! 第2部 前線基地撃滅」

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100404/p1

『ザ☆ウルトラマン』(79年)最終回 #49「ウルトラの星へ!! 第3部 U(ウルトラ)艦隊大激戦」 ~大幅加筆!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100411/p1

『ザ☆ウルトラマン』(79年)最終回 #50「ウルトラの星へ!! 完結編 平和への勝利」 ~40年目の『ザ☆ウル』総括!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200508/p1

ウルトラマン80(エイティ)』(80年)最終回 #50「あっ! キリンも象も氷になった!!」 ~実は屈指の大名作!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210315/p1



ウルトラマントリガー&全ウルトラヒーロー ひみつ大図鑑 (講談社 Mook(テレビマガジン))

『トリガー』終章! 新世代ウルトラ各作も含めて総括!
#ウルトラマントリガー #ウルトラマントリガー最終回 #ウルクロD #ウルトラマンクロニクルD
『トリガー』最終回総括! 『デッカー』にトリガー客演記念!
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『トリガー』最終回総括 ~カルミラが全ウルトラ怪獣大投票で46位記念!
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『トリガー』最終回総括! 『デッカー』総集編で「トリガー」最終回紹介記念!
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ウルトラマントリガー中盤各話評 ~Z・リブット・ティガ客演! 『ティガ』とは似て非なる並行世界を舞台とした後日談と判明!

(2022年3月27日(日)UP)
『ウルトラマントリガー』前半総括 ~『ティガ』らしさは看板だけ!? 後日談かつリメイク! 昭和・Z・ギャラファイともリンク!
『ウルトラマントリガー』最終回 ~新世代ウルトラ各作終章の出来も含めて賛否総括! 光と闇を包摂する真理!?
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 映画『ウルトラマントリガー エピソードZ』(22年)が公開記念! とカコつけて……。『ウルトラマントリガー』中盤各話評をアップ!


ウルトラマントリガー』中盤各話評 ~Z・リブット・ティガ客演! 『ティガ』とは似て非なる並行世界を舞台とした変型後日談!

(文・中村達彦)
(2021年12月27日脱稿)

#8~13 ウルトラマンZとの共闘、続いて息つがせぬ急展開


第8話「繁殖する侵略」


 前話(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20211021/p1)に続いて防衛チーム・GUTS-SELECT(ガッツ・セレクト)の空飛ぶ母艦・ナースデッセイ号に、平行世界から来たウルトラマンZことハルキ青年が滞在していて、トリガーことケンゴ隊員はアキト隊員の横で事情を聞いていた。その頃、地上では人々が謎のハッキングに襲われていた。スマホや車が次々に異常を来たす。被害は広がりナースデッセイにも及ぶ。ケンゴやアキト、ハルキや宇宙のお宝ハンター・イグニスも加わり、GUTS-SELECT一丸となって対処する。
 犯人は三面怪人ダダで、ナースデッセイを乗っ取り、ナースキャノンを発射する。更に自らの姿を見せて隊員たちを翻弄する。GUTS-SELECT隊員たちはハッキングに立ち向かう。更にダダは地上に倒れたままになっている、前作『ウルトラマンZ』(2020年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200723/p1)の防衛チームの巨大ロボット・キングジョーストレイジカスタムを乗っ取り暴れさせる。ハルキはZに、ケンゴはトリガーに変身する。アキト隊員がZの変身アイテムを研究して作ったハイパーキーにより、Zはアルファエッジ・ベータスマッシュ・ガンマフューチャー・デルタライズクローにタイプチェンジして戦う。
 ダダの操るキングジョーストレイジカスタムはZやトリガーを苦しめるが、ハッキングを排したナースデッセイの援護も加わり、Zのゼスティウム光線とトリガーのゼベリオン光線で撃破される。
 戦いのあと、ZとハルキはZの喋る武器・べリアロクの力で元の世界へ帰ることに。アキトとケンゴに見送られ、キングジョーストレイジカスタムの残骸と共に帰るZ。しかしダダとの戦いで超古代の巫女ユザレの姿を見たことで、ユナ隊員は自らの秘密に混乱するのであった。


 前回同様、脚本は小柳啓伍、監督は田口清隆。ダダは初代『ウルトラマン』(1966年)以来ウルトラシリーズに何度も登場しているが、本作に登場したダダは、昭和ウルトラシリーズとは世界観を別にした『ウルトラマンパワード』(1993年)版ダダである。パワードに登場したダダはオリジナルとは異なりコンピューター生命体の設定で、独自の生態を持つ。初代『ウルトラマン』のリメイクである『ウルトラマンパワード』でコンピューター生命体で登場したダダはオリジナルとは別の不気味さがあり、『ウルトラマンパワード』は『ウルトラマン』と比べていろいろと失敗しているが、ダダ編については成功していたと思う。『ウルトラマンパワード』ダダ編ラストでもダダは生きていることを匂わせていたが、本話に繋がっているのだろうか?
 ナースデッセイにハッキングするのを、GUTS-SELECTの隊員たちが総出で阻止しようとするが、部外者であるハルキやイグニスも加わり、力を合わせるのは第6話を思い起こさせる。それぞれに頑張るテッシン隊員やタツミ隊長、メトロン星人マルゥル隊員やアキトやユナ。いつもボソッと突っ込み役をするヒマリ隊員がアクションゲームのノリで中枢ハッキングを阻止する。コンピューターへの侵入シーンでは往年の円谷プロ製作で電脳空間で戦う特撮ヒーロー『電光超人グリッドマン』(1993年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20181125/p1)がコンピューターワールドへ突入する際と同じような映像を再現。
 ダダがキングジョーストレイジカスタムにハッキングし、トリガーやZの強敵となる。その強さは半端ない。『ウルトラマンZ』の時より強いような。更にダダはハッキングを重ねて、停車している車が宙を乱舞してウルトラマンを襲う。それはハッキングではなく超能力っていうんじゃあ(笑)。
 Zもハイパーキーの力で次々にタイプチェンジしていくが、アキト隊員はよくZのタイプチェンジの能力までキーにデザインできたなぁ。Zは元の世界へ帰れなくて今後はトリガーとしばらく共闘するのかと思ったら、べリアロクの力で戻れることが判明。なあんだ。あっさりしている。アキトとケンゴに頭を下げて帰っていくのは『Z』最終回(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210905/p1)を連想させる。最初から最後までアキトは嫌な顔をしているが、実際はそれほどケンゴのことを嫌っておらず、ハルキにも良い相棒だと見透かされている。前年度の『ウルトラマンZ』ではウルトラマンゼロウルトラマンジード・ウルトラマンエースの後輩だった半人前のZとハルキが、1年を経て今回は先輩に。実に感慨深い。


第9話「あの日の翼」


 久しぶりにナースデッセイを訪れた、シズマ財団や地球平和同盟・TPUを設立したシズマ会長。娘のユナ隊員の18歳の誕生日が目前に迫っていたが、シズマは今までの調査で解かったことを隊員たちに知らせる。そしてユナを伴って山中へ。山中の格納庫に整備されていたのは『ウルトラマンティガ』(1996年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19961201/p1)に登場した戦闘機・ガッツウイング。その機体を前に打ち明ける。自分は別の世界から来た人間で、元の世界にもティガというウルトラマンがいたことを。シズマの告白はケンゴらGUTS-SELECT面々も知ることに。そしてこの世界で出会ったユナの母親は、太古にいた巫女ユザレの末裔であるとも語られ、シズマは彼女の遺した指輪をユナに渡すのであった。
 そこへ太古にユザレが石化させて長い眠りについていた石化闇魔獣ガーゴルゴンが目覚めて襲いかかってくる。ケンゴやアキトが駆けつけシズマやユナを守り、ナースデッセイからファルコンが発進する。ガーゴルゴンにファルコンは撃ち落されるが地上に墜落寸前、トリガーに助けられる。シズマもガッツウイングを遠隔操作で操りガーゴルゴンを攻撃する。ユナは自らに呼びかけ、ユザレの力を目覚めさせ、ガーゴルゴンの攻撃を跳ね返す。トリガーはガッツウイングと力を合わせ、専用武器サークルアームズによるゼペリオンソードフィニッシュでガーゴルゴンを撃破する。戦いのあと、ナースデッセイ内の指令室でユナの誕生パーティーが行われた。


 脚本は林壮太郎、監督は辻本貴則。同時期にNHKで放映された特撮ヒーロー『超速パラヒーロー ガンディーン』(2021年)から続いての参加。ガーゴルゴンは『ウルトラマンX』(2015年)7話(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200405/p1)が初登場だが、辻本氏は同話も手がけており、ガーゴルゴンの着ぐるみは5年以上も使い倒されて、今回の話で再登場した時はボロボロだったとか。
 久しぶりに出演のシズマ役・宅麻伸(たくま・しん)。ユナに自分の出自を明かす姿や自らガッツウイングを操縦してガーゴルゴンを迎撃する姿はシブい。前年度の『ウルトラマンZ』では初老のメカ整備員・パコさんを演じた橋爪淳(はしづめ・じゅん)が印象的であったが、同じように年輪を重ねた宅麻の重厚な演技も印象的。宅間自身も特撮作品ではかつて『ゴジラ』(1984年)と『ゴジラ×メカゴジラ』(2002年)に出演している。
 シズマが自らの正体を告白し、『ウルトラマンティガ』との関わりも平行世界の関係だったことが明かされた。元の世界でTPC局員だったというが、『ティガ』の防衛チーム・GUTSのイルマ隊長の腹心の部下でティガに変身するダイゴ隊員のことも知っていたとかだったら面白い。『ウルトラマンティガ』の一応の続編だと納得させられた。ガッツウイングで単身この世界へ来てからは、シズマ財団や地球平和同盟・TPUを築くには並々ならぬ努力が必要だったはずだ。彼を支えたユナの母・ユリカを演じる逢沢りなは、『炎神(エンジン)戦隊ゴーオンジャー』(2008年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20080824/p1)でゴーオンイエロー・楼山早輝(ろうやま・さき)を演じていた(彼女の口癖も「スマイル、スマイル」だった・笑)。彼女は少ししか登場しなかったが、また出てほしい。
 ガッツウイング、山中からの発進シーンやガーゴルゴンへの攻撃シーン、怪獣の攻撃で機体が火を噴くも飛行しながら湖の水で消火して、ガーゴルゴンの眼を潰し、最後にトリガーと並んで飛行するなど、カッコいいカットが複数撮られている。ファルコンはいかにもCGぽいが、ガッツウイングは同じ無人機ながら、地上で遠隔操作する宅麻の演技も加わって、CGを感じさせない実在的な質感がある。
 『ティガ』絡みのシーンには『ウルトラマンティガ』のBGMが使われているし、シズマの回想ではティガの雄姿が登場し、かつて『ティガ』にハマったファンを感激させる回でもある。
 ラスト、ユナの誕生祝いにアキトがプレゼントしたものはスタンガン! ヒマリじゃなくともそのセンスのなさは笑ってしまう。


第10話「揺れるココロ」


 第5話でユナに頬を引っぱたかれた闇の巨人ダーゴンはユナのことが気がかりになる。そして根城の深海から人間サイズにミクロ化して地上へ。高校に通う彼女のあとをつけるが、ダーゴンのユナへの気持ちをイグニスは「恋」だと指摘して入れ知恵をする。一方、ナースデッセイ内に収蔵してある太古の石画の一部が剥がれ落ちて新たな絵が現われた。加えて地底に怪獣の気配が。その解析でエタニティコアなる超エネルギーの存在を知る。
 アキトに入った屋外のユナからのTV電話、その背後にはダーゴンの姿が。急ぎユナの許へ駆けつけるケンゴとアキト。ダーゴンはユナに壁ドン・ハグ・ナデナデと続け(笑)、自分の恋する気持ちを確かめようとする。嫌がって強気で対するユナは前話でアキトからプレゼントされたスタンガンで対する。到着した2人。ケンゴはダーゴンと戦い、ダーゴンは超古代にトリガーと共に活動していたことを語る。
 悩むダーゴンの地団駄から、変身怪獣ザラガスが出現して暴れ出す。ファルコンが攻撃、ケンゴもトリガーに変身するが、ザラガスは攻撃を受ければその分強くなり、甲羅を外し、全身に生えた突起から光線を放つ!
 ユナを守ってダーゴンに対するアキト。だが戦いの最中、ザラガスの下敷きになりそうになったアキトとユナをダーゴンが助けて、そのことから交流が生まれる。ファルコンから液体窒素を撃ち込まれたザラガスへ、赤いパワータイプに変身したトリガーの必殺技デラシウム光流が発射される。
 戦いが終わり、ダーゴンは人間が侮(あなど)れない相手であること、ユナにアキトが恋していることを解するも、そのまま去っていく。その頃、石板の壁画には3巨人と共にウルトラマンの姿も現れる……。


 脚本は林壮太郎、監督は辻本貴則。共に前話と同じで、両者は2010年代以降のウルトラシリーズを支え続けてきた。初代『ウルトラマン』第36話に初登場のザラガスも登場する。
 ユナに引っぱたかれたダーゴンが思い悩み、遂にストーカーと化して尾行する「まさか?」の話。第5話を受けたものだが、こういう展開になろうとは。ウルトラシリーズ初のエピソードだ。イグニスは「この世の生きとし生ける者は恋を重ねて強くなる」と言い、真面目に受け止めるダーゴン。発端はイグニスだが、騒動の途中で「知らねえっと」と逃げ出している(笑)。ダーゴンは真剣だったのだが……。
 その間、2人とも他の人に見られていないのか、イグナスとダーゴンは友好的に話しているが、別種族同士である2人は本当は何語で会話しているのだろうか? その超能力で互いに日本語で会話できているのだろうか? ダーゴンはユナに接触して壁ドン・ハグ・ナデナデを行うが行動は空回りして、視聴者が指をさして笑ってしまうツッコミどころが幾つも。前話の誕生パーティーでアキトからプレゼントされたスタンガンをユナが使い、ちょうど到着したケンゴが突っ込んでいる。
 だがギャグ回と見せておいて、後半では真面目な話になっていく。「誰かを守りたいという気持ちが私たちを動かす」と答えるユナ。そして闇の巨人ダーゴンも「生きとし生けるものは恋を重ねて強くなる。その強さとはすなわち、誰かを守りたいという強い思い。弱い人間を侮るべきではない」と教訓的なことを悟って、彼の光落ちの可能性も示唆する。人間との間にコミュニケーションが形成されたのだ。反面、ダーゴンはアキトもユナのことが好きなことを指摘し、すぐ横で聞いていたユナが嬉しそうにしている。
 ユナは高校へ通いながらGUTS-SELECTの隊員をしていると判明。二足の草鞋だが両立できるのか? 高校に怪獣が出てくる話も観てみたい気も。
 その頭上でのトリガーとザラガスのバトルもよい。地上の人工物を珍しそうにいじったり、『ウルトラマンギンガ』(2013年)出演回(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200825/p1)で初披露した第3形態から『シン・ゴジラ』(2016年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20160824/p1)のように全身から生えたトゲで放電攻撃するなど、ザラガスは実に怪獣らしい挙動をしている。そして町のセットも細部まで作りこまれていた。戦いで破壊されるマンションの室内ミニチュアも、ついさっきまで人がいたような生活感がある。


第11話「光と闇の邂逅」


 冒頭から突如始まった闇の女巨人・カルミラとトリガーの戦い。カルミラは昔トリガーと親しかったと告げながら、彼女専用武器の鞭をふるったあと、呪術で拘束。ケンゴは抵抗するが、超古代の時代へ跳ばされてしまう。アキトやユナはダーゴンに、ファルコンはヒュドラムに阻まれて見守るしかない。3000万年前の過去に飛ばされたケンゴの前に、超古代文明を破壊している闇の3巨人ともう1人の闇黒勇士・トリガーダークの姿、彼らに抗する地球星警護団の生き残りである超古代の巫女・ユザレの姿もあった。
 ケンゴはユザレと共に逃げ、巨人たちが宇宙誕生のビッグバンを起こせるほどの超エネルギー・エタニティコアを狙っていることを知る。次第にケンゴの明るさに打ち解けるユザレ。そこへ追ってきたトリガーダークがユザレをさらっていく。
 その頃、ケンゴがいなくなった現在の世界では、アキトが途方に暮れていた。ケンゴが落とした変身アイテム・GUTSスパークレンスを拾うが、直後にトリガーがいた場所にエネルギー反応が。
 超古代の世界では、さらわれたユザレが闇の3巨人のところへ。遺跡の中にあったゲートを開いて中へと入る巨人たち。エタニティコアを手に入れることで、闇の一族だけの宇宙を作ることを目論んでいたのだ。駆けつけたケンゴに変身アイテム・スパークレンスを渡すユザレ。ユザレはケンゴをルルイエ(希望)と呼ぶ。ケンゴは先にエタニティコアへ触れようとするトリガーダークへ呼びかけながら、スパークレンスをかざす。トリガーダークのインナースペース(精神世界)の中で向かい合うケンゴと人間サイズのトリガーダーク。ケンゴの説得に耳を貸さず殴りつけてくるトリガーダーク。一方、現在の世界でもゲンゴが分離してしまったトリガーの身体が元のトリガーダークに変化して出現した。その姿にアキトはユナのいる前でケンゴの名を叫ぶ。


 脚本は本作メインライターのハヤシナオキ、監督は武居正能。ハヤシは初のウルトラシリーズ参加である。唐突に序盤から3巨人とトリガーの戦いが始まり、超古代の世界へ飛ばされるケンゴ、トリガーダークの出現と急展開だ。
 過去のウルトラシリーズでも、主人公が試練を与えられ、それを克服した時、ウルトラマンは新たな力を得てパワーアップするというイベントエピソードは、ウルトラマンに限らず古今東西のヒーローもののお決まりのパターン。今回と次回の話はそれなのだが、そのストーリーはマンネリ・ワンパターンだと思わせず、いつも引き込まれる。ラストは決まっているが見逃せないのだ。
 前回はギャグ色が強いエピソードだったが、今回はそれを感じさせない。序盤から前振りもギャグもなく、リアルにカルミラとの戦いから始まる。トリガーが元・闇の3巨人の仲間である悪のウルトラマンであったことは、原典のウルトラマンティガもTV放映後に公開された後日談の映画『ウルトラマンティガ THE FINAL ODYSSEY』(2000年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19961209/p1)では同様の設定とされていたし、本作でもすでに示唆されていたことだ。今回もカルミラとは親しい男女間の機微も含んだ関係にあったと具体的に描かれている(カルミラは愛しいトリガーダークに最初にエタニティコアの力に触れさせようと譲っている)。トリガーが改心し、人間の味方になるというストーリー展開は容易に想像できるが、それは次話のレビューにて。
 「ルルイエ」は20世紀初頭の小説家・ラヴクラフトが考案して引用も自由としたクトゥルフ神話に登場する、太平洋にある海没都市の名。『ウルトラマンティガ THE FINAL ODYSSEY』の舞台となった海底遺跡の名前にも引用されているが、本作では「希望」という意味の言葉で、ケンゴが育てている花の名前にもなっている。ということは、ただの花ではなく希望の存在でもなく、危険な存在である可能性もあるのだろうか?
 今までの話数では比較的大人しくしていたカルミラが、本話では序盤からトリガーを圧倒したが、そのための伏線や準備を進めている場面をそれまでの話数にも入れてほしかった。ユザレ役はその子孫であるユナ役の豊田ルナによる一人二役なのだが、ユザレの白い髪はかつらであると一目瞭然。このユナもケンゴの正体がトリガーだと知ってしまった。他の3巨人とはデザインラインがかなり異なるトリガーダーク。鎧をまとったような姿は強そうで頑丈そうな悪のウルトラマンであることを強調しているが、3巨人と一緒にいるのはなにか不自然。一言も喋らないのも不自然だが、声優などに喋らせてしまうとケンゴの前世ではなく独立した別人格に見えてしまうことを避けるための便宜的な作劇なのだろう。


第12話「三千万年の奇跡」


 現代の世界で、ケンゴの正体がトリガーであることをユナに打ち明けるアキト。一方、ケンゴが分離したトリガーの身体が変化した現代のトリガーダークも暴れ出す。ファルコンやナースデッセイが向かうが、太刀打ちできない。
 超古代の世界では、ケンゴとトリガーダークはしばらく殴り合うが、涙ながらのケンゴの呼びかけにトリガーダークは応えて手を差し出した。そして2人は一体化、ウルトラマントリガーのマルチタイプ・スカイタイプ・パワータイプの3体に分離して3巨人と戦う。苦戦するも、ユザレからエタニティコアを受け取って、そのエネルギーで3巨人を石化して封印する。力を使い果たして消滅するユザレ。そのままトリガーは火星へ。ケンゴも時空を飛び越え、現代の世界へ戻る。
 ケンゴの姿に戻ったあと、アキトとユナに声をかけ、トリガーに再変身。元は現代のトリガーの抜け殻であるトリガーダークや3巨人と乱戦になる。トリガーダークに圧倒されるトリガー、そこへユザレからエタニティコアを受け取ったユナが、それをトリガーへ。「宇宙を照らす超古代の光!」の掛け声とともにケンゴは新たなトリガーの姿・グリッタートリガーエタニティに。そのパワーに退却する3巨人。トリガーダークとグリッタートリガーエタニティの一騎打ちになる。ケンゴは新たな力をうまく制御できないが、新たな剣型の武器・グリッターブレイドから放つ必殺光線・エタニティゼラデスでトリガーダークを撃破する!
 戦いが終わり、よろめきながら仲間の元へ戻るケンゴ。受け入れるアキトとユナ。だが空中に漂うトリガーダークの残留エネルギーをその戦いを目撃していたイグニスは体内に吸収していた……。


 前話に続いて脚本はハヤシナオキ、監督は武居正能。トリガーが人間の味方になった超古代での経緯と、次いで新たな力を手にする物語が明かされた。超古代の世界でケンゴがトリガーダークと殴り合い、やがて2人は理解し合い2人は1人のトリガーになる。いささか解かりにくいが、おそらく悪の所業を繰り返すトリガーダークの心のどこかで「これでいいのか?」と疑問が起こり、エアニティコアが存在する深淵に来た時には、その疑念も大きくなっていたのだろう。ケンゴは超古代のトリガーダークの心に芽生えた「良心」の部分だけが遥か未来に輪廻転生した存在だったのだ。しかし、向かい合う超古代のトリガーダークもいつしか3000万年未来のケンゴの姿に。2人は同一存在だということを象徴させるための映像演出だろうが、超古代の石板にも変身アイテムを掲げる青年の姿が描かれているので、超古代にトリガーダークが人間に逆変身した姿自体がケンゴと同じ姿だったということか?
 ケンゴを見守ってきたアキトが、暴れているトリガーダークを見上げながらケンゴへの本心を語るが、彼が口では「ウザい」と言っていても、ケンゴの「みんなの笑顔を守りたい」と言う姿に共感し、いつしか彼のバディ(相棒)となっていた。シリーズ後半もその人間関係が続くのだろう。ユナも本話でケンゴの正体がトリガーだと知ったことで各話の話運びも少々変わってくるだろう。そしてイグニスはトリガーダークの力に取り込まれた。今まで一応味方でギャグキャラであったが、これから違うポジションになるのであろうか?
 超古代の世界のトリガーダークと現代に現われたトリガーダークは、それぞれ異なるといってよいのか、それとも同一人物といってよいのか? いろいろ「?」があって深読みしがいがあるが、怪獣博士タイプの子供やマニア達の議論百出なども狙ったものだろう。
 強化形態のグリッタートリガーエタニティはトリガーともデザインは異なり、これまでのウルトラマン新バージョンのパターンとは違う。体色もオレンジ色のカラー部分が多く、3つのカラータイマーで胸部が構成されているがデザインはシンプルで、強化形態に付きものの強そうに見せる突起物などはなく、カラーリングもそれほど派手ではないデザインになっており、これはこれで親しめる。


第13話「狙われた隊長 ~マルゥル探偵の事件簿~」


 タツミ隊長が行方不明に、メトロン星人マルゥル隊員は調査を開始。テッシン隊員が怪しいとニラむが、実はタツミは会議で外に行っていたのであった。脚本は2010年代のニュージェネレーションウルトラマンシリーズの総集編を手がけてきた足木淳一郎、監督は内田直之。総集編+ギャグ回。
 大人気漫画『名探偵コナン』(1994年~)や『金田一少年の事件簿』(1992年~)、大人気TVドラマ『古畑任三郎(ふるはた・にんざぶろう)』(1994年)や『トリック』(2000年)、映画『男はつらいよ』(1969~95年)、古典『少年探偵団』(1936年)などのパロディが多数入っているが、高齢マニア向けのギャグにとどまらず、元ネタがわからなくても子供でも楽しめる賑やかなギャグに仕上がっている。メトロン星人繋がりで『ウルトラマンマックス』(2005年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060318/p1)や『ウルトラギャラクシー大怪獣バトル NEVER ENDING ODYSSEY』(2008年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100128/p1)にも出てきた缶飲料の眼兎龍茶(メトロン茶)やちゃぶ台も登場し、メトロンが初登場した『ウルトラセブン』(1967年)8話の舞台となった北川町という単語も出て来る。マルゥルの声を演じるM・A・Oが歌う挿入歌「メトロン・サンセット」も流れている。
 反面、まだケンゴがグリッタートリガーエタニティを使いこなせないことを明かしたり、イグニスがアキトの研究室から変身アイテム・GUTSスパークレンスの試作品を盗み出すなど、今後のシリーズ後半戦の伏線も入れてある。


#14~15 急展開続く息つがせぬストーリー


第14話「黄金の脅威」


 ケンゴは光の化身として戦うことを強く決意する。一方、深海でカルミラたち闇の3巨人は、トリガーを裏切らせたケンゴに怒りをぶつけるが、そこへ金色の超人アブソリュートディアボロとアブソリュート・タルタロスが出現。自分たちがトリガーからエタニティコアを手に入れることを黙認してほしいと言う。一巡して認めるカルミラ。ナースデッセイでは、アキトはナースデッセイ強化が必要だが膨大なエネルギーがいると言う。そこへ町にディアボロが送り込んだ機械怪獣ディアボリックが出現する。地上で戦うアキトとユナ。ケンゴもトリガーに変身する。
 猛攻、ディアボリックの火力にトリガーは苦戦するが、グリッタートリガーエタニティになり撃破する。だが未だにケンゴは新しい力をコントロールできていなかった。心配するユナ。イグニスはアキトに接触、ディアボリックを差し向けたアブソリューティアンについての情報を、失敬したスパークレンスの見返りに提供するのであった。
 ナースデッセイ内でディアボリックとの戦いで負った傷の手当てをするケンゴ。今度はディアボロが町に出現。すぐさまケンゴはユナの制止を振り切って変身。トリガーは赤色のパワータイプで立ち向かうが、圧倒的なディアボロのパワーに負け、エタニティのパワーを吸い取られるばかり。
 そこへ頭上からディアボロ目掛けて攻撃が。別の宇宙から来たウルトラマンリブットであった! クリスタルの盾と光の槍でディアボロを翻弄し退却させる。助けられたケンゴとユナの前にリブットの人間体の青年が現われた。同じ頃、アキトはタツミ隊長にナースデッセイの真の力について提案していた。


 脚本はシリーズ構成を務める足木淳一郎、監督は本作メイン監督の坂本浩一。坂本監督は第1~第3話も監督を務め、ここ10年ほど仮面ライダースーパー戦隊シリーズも手がけており、アクション演出に秀でており、ヒーロー共闘ではそれを意識したうまいカットを撮る。『ウルトラギャラクシーファイト』シリーズ(2019年~・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200110/p1)の監督でもある。足木も『ウルトラギャラクシーファイト』シリーズの脚本を手がけている。
 本話からシリーズ後半に突入。例年通り、OPとEDは歌詞や映像が変更。EDはケンゴ・アキト・ユナが歌っているが、そのメロディーはうら悲しい。これからの展開を反映させているのか? ケンゴがトリガーを裏切らせたと怒るカルミラ。だが、いつケンゴのフルネームを知ったのであろうか?(笑)
 訪れるアブソリュートディアボロとアブソリュート・タルタロス。後者は『ウルトラギャラクシーファイト 大いなる陰謀』(2020年)からの客演で、エタニティコアを手に入れるため、3巨人に自分たちの行動を黙認するように言うが、礼儀正しいと言うか、共闘ものの悪の組織同士のツボを衝いていると言うか。だが最初にディアボリックが町を襲った時、ディアボロも一緒に来てトリガーを倒してしまえば良かったのに……などと言ってはいけない。この手の作品のお約束である。ディアボリックは『劇場版ウルトラマンオーブ 絆の力、おかりします!』(2017年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200406/p1)や『ウルトラマンタイガ』(2019年)第4話(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190811/p1)にも登場した。
 ケンゴが帰還した時、トリガー同様に肩をケガしていると気が付くタツミ隊長だが、これが今後の伏線になるのかどうか。ケンゴが新しい力を使いこなせないことに焦り悩む姿がそこかしこで描かれている。
 今回は2度、ウルトラマンのバトルが撮られ、力の入った特撮カットが幾つも取られている。そのうち、ディアボリック襲来で本編撮影の地上からアキトとユナが攻撃し、その攻撃先が上方の実景・特撮合成カットのディアボリックに転じていくとか、ディアボリックが落としたビルが2人に落下する直前、頭上に特撮合成のトリガーが出現してビルを叩き落とすのが印象深い。


第15話「オペレーションドラゴン」


 アキトはイグニスからの情報でアブソリューティアンの情報を得た。彼らが持つ超エネルギーによってGUTS-SELECT空中母艦・ナースデッセイ号のパワーアップができるのだ。ナースデッセイ号がバトルモードに変形するには膨大なエネルギーを必要とするが、宇宙線研究所にアブソリューティアン・ディアボロを誘い出してそのエネルギーを吸取するというもの。タツミ隊長は提案に乗る。
 宇宙線研究所の屋上では、作戦準備が進められる。トリガーのエネルギーダミーを作り、騙されたディアボロからエネルギーを吸収するというものだ。作戦名はオペレーションドラゴン。準備を見守る謎の女性。アキトとマルゥルはナースデッセイを建造した話を思い出す。
 ケンゴとユナはタツミ隊長に連絡を入れて合流できないと告げ、青年リブットの特訓を受けることに。リブットによる体育館での特訓・武術・ダンスがケンゴとユナに課せられる。リブットいわく「1つのことに捕らわれるな」。いつしかイグニスもその訓練を見ている。
 オペレーションドラゴンの準備が終わった。謎の女性はカルミラであった。トリガーのダミーエネルギーに騙されたディアボロが出現したので、アキト・タツミ・テッシン・ヒマリ・マルゥルが配置につき、作戦は開始された。
 特訓の最後に一時的に青年リブットに昏睡状態にされていたケンゴをユナが起こす。「光であり、人である」。夢の中でのユナとの会話を通して、光の化身ではあるが、同時に自分はあくまでも人間だと自覚したケンゴ。
 ディアボロはエネルギー搾取を払いのけようとするが、ダーゴンやヒュドラムが羽交い絞めに。闇の巨人たちはオペレーションドラゴンを察し、一時的に人間に味方したのだ。
 ナースデッセイはディアボロのエネルギーでバトルモードへ、駆けつけたトリガー、ユナのハイパーキー、貸与されたスパークレンスで変身したリブットも戦いに加わり、それぞれの必殺技が炸裂、ディアボロを撃破する。トリガーの成長を見届けて元の世界へ帰っていくリブット。グリッタートリガーの力を制御できるようになったケンゴに迷いはなかった。だが撃破したディアボロは復活してM78星雲・光の国のウルトラ一族との戦いへ。ラストではイグニスも変身アイテムを使ってついにトリガーダークへ変身した!


 前話同様、脚本は足木淳一郎、監督は坂本浩一。第7話~8話に続くウルトラマン共闘に、ナースデッセイ号のパワーアップ、複数のイベントが同時進行で進むが、それぞれじっくり描かれていく。
 「光であり、人である」は『ティガ』第1話(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19961201/p1)ほかで巫女ユザレが主人公ダイゴ隊員に述べた言葉である。当初は深い作劇的意味はなく、主人公がウルトラマンに選ばれた理由の伝奇ファンタジー的な意味しかなかったと思うが、「光」になれることの選民思想的な危険性を脱臭するためか、シリーズ後半では変身前の「人」であることや「人」として出来ることを重視させる方向性でドラマを作っていった。『トリガー』のケンゴも現世ではたしかに人間の未熟な若者でしかないので、卑小な自分に気づいてまずは地道にやれることをやるしかないと決意させる作劇も妥当なものだろう。
 作戦を見守るカルミラが化けた人間の女性はカルミラの声を当てている上坂すみれ本人。人気アイドル声優である彼女がこういう形で出演するのは予想していたが。でもダーゴンやヒュドラムはそのまま等身大サイズで活動しているが、彼らも人間の姿に化けられないのか? ディアボロの声は小川輝晃(おがわ・てるあき)。『忍者戦隊カクレンジャー』(1994年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20120109/p1)のニンジャレッド、『星獣戦隊ギンガマン』(1998年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19981229/p1)の6人目の戦隊戦士・黒騎士ヒュウガ役でレギュラー出演した方で、現在は声優として活動中。リブット人間体の青年も本業は声優の土屋神葉(つちや・しんば)で、人気若手女優・土屋太鳳(つちや・たお)の弟。ダンスをするシーンは姉が主演したTVドラマ『チア☆ダン』(2018年)を連想させる。目の辺りが姉弟で似ているような。ダンスの時に流れた土屋神葉が歌う挿入歌は軽快で、今回はエンディング主題歌でもダンスをする姿ともども流されている。
 リブットはケンゴを鍛えるが、ウルトラセブンウルトラマンゼロらの昭和的な厳しい特訓とは違う。リブットも『ウルトラギャラクシーファイト 大いなる陰謀』でウルトラマングレートウルトラマンパワードに特訓を受けていたが、その際のグレートとパワードの台詞を踏襲して指導しており、新たな力を付け加えるのではなく最初から内に備わっていた能力を解放するための特訓だとしたあたりが、現代的だし東洋的だともいえる。
 アキトとマルゥルの回想から、かつて『ウルトラセブン』で円盤メカ竜である宇宙竜ナースを操ったワイルド星人と裏取り引きをして、このナースを手に入れたことが語られている。(今だとワイルドはスギちゃんのギャグ、ナースは看護婦をつい連想してしまう。そういえば『ティガ』放映当時も、防衛チーム・GUTS(ガッツ)のネーミングにあの有名宇宙人のことを反射的に連想してしまったものだが、『トリガー』の世界にもガッツ星人はいるのだろうか?・笑)
 ナースデッセイのバトルモードは、鳴き声はナースと同じでカラーリングは鼠色に。動きはCGでオリジナルより見劣りすると思うが、口からマキシマナースキャノン、全身からレーザーを発射するレーザーレインなどパワーアップ。トリガーやリブットと共同でディアボロを攻撃する姿は実に迫力がある決まった構図だ。
 『トリガー』が活躍している平行宇宙の地球からリブットは去っていき、タルタロスやディアボロもリブットが去った先である昭和ウルトラ世界のM78星雲・光の国のウルトラ一族との戦いへ。この続きは翌2022年配信予定だと告知されて、先のディアボロも新キャラクターとして登場する『ウルトラギャラクシーファイト』第3弾『ウルトラギャラクシーファイト 運命の衝突』(2022年)で描かれることになるが、同作にはウルトラファミリーがついに総出演するようだ。
 ちなみに、本話の翌月11月にはNHKで50周年の『仮面ライダー』を特集した『全仮面ライダー大投票』などの長時間特番や関連番組が放映されていたが、5年前の2016年にも50周年で『ウルトラマン』が同様の人気投票形式番組『祝ウルトラマン50 乱入LIVE! 怪獣大感謝祭』などの長時間番組やベスト10エピソードなどが放映されていた。


#16~19 語られる新たなウルトラマンストーリー


第16話「嗤(わら)う滅亡」


 前話のラストで宇宙のお宝ハンター・イグニスが変身したトリガーダークは、夜間の街でトリガーと戦う。怪獣キーで『ウルトラマンR/B(ルーブ)』(2018年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20181104/p1)などに登場してきた四つ足怪獣ホロボロスの力も発揮するダークトリガー。決着は付かなかった。町に新たな山が盛り上がる。
 翌日、ナースデッセイ号はこの山の調査に。アキト・ユナ・ケンゴ隊員たちが向かうが、そこへイグニスと闇の巨人ヒュドラムも。ヒュドラムはかつてイグニスの母星を滅ぼしていたことが明かされる。ヒュドラムはイグニスの仇であり、挑発されたこともあって再びトリガーダークに変身して戦いを挑む。そこへ山から怪獣が出現。ヒュドラムが持ち込んだ宇宙伝説魔獣メツオーガが戦いの影響で目覚めたのだ。急ぎトリガーに変身するケンゴ。ゼベリオン光線やビルさえ食するメツオーガ。
 ヒュドラムは退散し、トリガー・トリガーダーク・メツオーガの3つ巴の戦いに。メツオーガとは地割れから地底に落ちて戦うが、地上へ飛び出たトリガーはグリッタートリガーエタニティに強化変身。これに竜型になったナースデッセイ・バトルモードも加勢し、それぞれの必殺技がメツオーガへ突き刺さった。だが爆散するかと思ったメツオーガは、新たな姿の怪獣メツオロチへ進化するのであった。


 脚本は植竹須美男、深夜アニメや小説を中心に活動してきた方。監督は越知靖、前年度の『ウルトラマンZ』(2020年)も監督している。ウルトラマンやナースデッセイがパワーアップする前後編が続いたが、息もつかせず再び前後編のエピソードが続く。
 もうひとりのトリガーであるトリガーダークもイグニスが変身するかたちで再登場。加えて久しぶりに一応のオリジナル怪獣が登場。メツオーガは『ウルトラマンタイガ』(2019年)最終回(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200112/p1)に出てきた怪獣ウーラーにデザインや何でも食べる設定も似ていてその着ぐるみの改造だが、『ウルトラマンオーブ』(2016年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20170415/p1)中盤に登場した中ボス怪獣・マガオロチの着ぐるみの改造であるメツオロチに進化して新たに立ちはだかった。突起物が増えて立ち上がった姿が何か『ゴジラVSスペースゴジラ』(1994年)に登場したスペースゴジラに似ているような……。怪獣が新たな体に変身するのは『帰ってきたウルトラマン』(1971年)32話に登場したキングマイマイとも重なる。同話の脚本を手がけたのは千束北男こと今年2021年に亡くなった飯島敏宏。
 トリガーもナースデッセイも強くなったが、すぐに敵の怪獣も強くなって立ち塞がってきた。新たな力を手にしてトリガーを苦戦させるトリガーダークも、前話ラストにイグニスが「未来を染める漆黒の闇!」と前口上を述べてカッコよく変身した。イグニスはケンゴの正体がトリガーだとわかっているはずだが……。トリガーダークの残留思念がイグニスを取り込んだのだろうか? イグニスの意思の方がトリガーダークを取り込んだのだろうか? イグニスはトリガーダークの力を制御できないのか苦しんでいる。本話ではヒュドラムに殺されてしまった母星の仲間たちのことが忘れられず、いつものイグニスの飄々とした軽い感じはない。
 前話でゲスト出演したウルトラマンリブットはイグニスとも言葉を交わし、リブットの人間体の青年がユナ隊員から借り受けたスパークレンスでリブットに変身できたのを目撃して、イグニスも闇の超人トリガーダークに変身するヒントを得た。リブットもどこまでイグニスについて知っていたのだろうか?
 怪獣メツオーガはヒュドラムが持ち込んだものだが、怪獣メツオロチに進化したら、どういうふうに処理するつもりだったのだろう? いつもの通りに慇懃無礼な彼だが、実は素の姿通りの愉快犯で、何も考えていなかったりして。
 バトルモードのナースデッセイは飛び道具ばかりだが、『ウルトラセブン』に登場した原典の宇宙竜ナースのように敵に巻き付いたり、体を丸めて円盤に変形したりしないのは残念(鳴き声はオリジナルと同じなのだが)。バトルモードに変型すると、ナースデッセイ号の内部の居住区域はメチャクチャになってしまうのは、リアルに考えると問題アリなのだがフィクションにおけるギャグの場面としては成立している。
 2021年末現在、世界中で半導体が不足し、年末の電子機器商戦も苦戦すると言われているが、ナースデッセイやスパークレンスなどの『トリガー』の玩具供給も大丈夫だろうか?


第17話「怒る響宴」


 怪獣メツオロチにトリガーもトリガーダークも敗退。ナースデッセイ号は怪獣ガーゴルゴンの能力を保持したキーを用いた石化光線を発射してメツオロチを一時的に動けなくするが、その機体も動けなくなり緊急着陸する。メツオロチが行動を再開するのは20時間後。GUTS-SELECTはガーゴルゴンキーの影響でエネルギー兵器が使えず、旧式の武器を集めて戦う準備を進める。タツミ隊長以下、戦う姿勢を失わない隊員たち。
 やがて目覚めたメツオロチに地上から攻撃開始。上空からは無人戦闘機・GUTSファルコンの攻撃が。分析したアキトからツノが弱点との連絡が。逃げ惑う人々に自分の母星が襲われていた過去を重ねたイグニスは、トリガーダークに変身して参戦。ケンゴはメツオロチの反撃で、墜落したファルコンに乗って攻撃、ツノを破壊する。ファルコンが撃墜されたあと、続いてトリガーに変身する。
 そこへ闇の巨人カルミラが乱入、トリガーに襲いかかり、次いでダークトリガーと戦う。トリガーはグリッターに強化変身。サークルアームズとグリッターブレードを用いてメツオロチを倒す。次にカルミラは相撃ちながらトリガーダークを倒して手傷を負い、なおも既にエネルギーを消耗しているトリガーに迫るも、GUTS-SELECT隊員たちがトリガーを守って最強怪獣ゼットンのハイパーキーを装填した銃を構える姿に、ダーゴンの助言もあって撤退する。
 変身が解けたイグニスはトリガーダークであることを見抜かれて、GUTS-SELECTに拘束される。


 脚本は植竹須美男。監督は越知靖。前話と同じだ。トリガーもナースデッセイも敗れるも、あきらめないGUTS-SELECT。今回のその姿は、ウルトラ警備隊やMAT(マット)といった過去のウルトラシリーズに出てきた防衛チームと重なるものがある。通常はナースデッセイで指揮をとるタツミ隊長も地上で戦い、一般隊員も武器を持って戦いに加わり、いつもと違った戦いのカラーを感じる。
 加えて前半、大敵を前に不安そうなユナに「大丈夫」だとケンゴやアキト、タツミやテッシン、ヒマリやマルゥルがそれぞれ応じ、後半には消耗したトリガーの前に隊員たちが彼を守ろうと立ちはだかり、防衛チームの強い絆を感じさせるシーンが複数あって、感動してしまう。
 特撮では、夕陽の向こうに見えるメツオロチとか、ファルコンから脱したケンゴがトリガーに変身するが横滑りに現われるという、平成ガメラシリーズでも観たようなカッコよいカットが。トリガーがサークルアームズとグリッターブレードの二刀流((C)大谷翔平・笑)を使うシーンもカッコよい(『ウルトラマンZ』のゼットランスアローに比べると、サークルアームズはよく使っているなぁ)。CGも、隊員たちが視線のすぐ上にある怪獣メツオロチを攻撃したり、ファルコンがビルの間をぬって飛行したり、ビルを破壊しながらケンゴのそばに不時着するシーンで活用され、リアルなシーンに仕上がっている。序盤に怪獣を石化するが砲塔も石化してしまったナースデッセイがテッシンの操縦で地面に着陸するシーンもなかなか。
 メツオロチとの決戦。だがイグニスが変身したダークトリガーが戦いに加わり、トリガー・メツオロチ・カルミラとも戦って、本来あるべきストーリーを変質させてしまったように思う。幾つもおかしいところがあり、本話のレベルを低下させているのは残念だ。
 戦いで逃げる群衆をイグニスが観て、過去の母星の惨状と重ねるのはよい。しかしメツオロチが石化してから20時間以上が経過してから戦いが起こっているのだから、避難命令が出ていないのはおかしい。逃げる群衆の横には高架を走行中の電車の姿も(リアリズムではなく高架と電車の精巧なミニチュア特撮の方を見せたかったのは分かるが・笑)。ちょっとした異変でも電車は運転見合わせになるものなのに、怪獣が進軍中でも新幹線が走行していた1984年版『ゴジラ』のようだ。
 ケンゴはファルコンを操縦しているが今回が操縦するシーンは初めて。
いつ覚えたのだ? そもそもファルコンって遠隔操縦なのでは? ツノを破壊されたとはいえ、グリッタートリガーにあっさりやられすぎのメツオロチ。カルミラがトリガーではなくケンゴの名を呼びながら現われたが、GUTS-SELECTメンバーにも聞こえているのだろうか? ダーゴンは「人間を甘く見るな!」とカルミラを撤退させる。これは10話での彼の人間に対する心変わりを受けた描写でドラマチックではある。ここにダーゴンと共にヒュドラムが現われていたらマズかったかもしれないが(汗)。ラスト、変身アイテムを取り上げられて拘束されるイグニスだが、地上の施設でなくナースデッセイ内の一室に幽閉でいいのか?


第18話「スマイル作戦第一号」


 ケンゴはトリガーがカルミラと親しそうにする夢を観る。その後、タツミ隊長が新設されたTPUアジア司令官に昇進するとの報が。ケンゴは皆でお祝いをしようと提案し、容れられる。それは「スマイル作戦第一号」と名付けられる。隊員それぞれ役割を決めて、ケンゴはユナと地上へ降り買い物を。その頃、闇の巨人たちにも変化が。カルミラはトリガーが闇の陣営に戻ってくると言い出して嬉しそうだし、ヒュドラムもダーゴンから頼りにされる。そのダーゴンは地上へ降りてユナを尾行していたが、逆にユナから花束をもらってしまう(笑)。GUTS-SELECTでは、ヒマリが宝くじに当選、テッシンがモデルに、マルゥルは自分が住めるアパートが見つかったと嬉しいことが相次ぎ、拘束中のイグニスにも極上お宝の地図が。
 パーティーの準備がタツミ隊長にバレた直後、超古代闇怪獣ゴルバーが出現して暴れ出す。ケンゴはトリガーに変身して立ち向かう。トリガーとゴルバーの戦い、援護するファルコン。だがこのゴルバーはカルミラたちも差し向けた覚えがない。更にアキトも「僕もトリガーになれる」とスパークレンスを掲げる。戦いは広がっていき、ヒマリ・テッシン・マルゥルらが喜んでいた諸々にも被害が出て慌て始める一同。やがてユナの指摘で、タツミの司令官就任やイグニスのお宝の地図もまがいものだとわかる。皆、偽物であったのだ。ナースデッセイ援護下、グリッタートリガーにゴルバーは撃破されるが、ナースデッセイを見上げる人影がいた。


 脚本は根元歳三。監督は田口清隆。『トリガー』前半も手がけていたお二方。タツミ隊長の異動、お祝いをしようとすると、隊員たちにも闇の巨人たちにも異変が次々に。ギャグ話なのだが、何者かの遠隔操作でもあった実はホラー懸かった話。その犯人は次回で明らかになるが……。
 アジア司令官就任に喜ぶタツミ隊長、その辞令が偽物と知った時とギャップが大きい(実は健康診断の結果だった・笑)。普段は冷静にふるまっている皮肉屋のヒマリが宝くじ(それも偽物)を換金している銀行が破壊されて慌てるシーン、実は自分もトリガーになりたくてスパークレンスでカッコよく変身シーンを見せたいアキトの願望(タツミ隊長へのプレゼントとして新たな怪獣キーを考えるなど、ユナへの誕生プレゼントがスタンガンだったことと同様、一般人の感覚とはかなりズレている・笑)など、次々に隊員たちの秘め事が晒される。
 更に闇の巨人たちも、トリガーが超古代の時代のように彼らの許に戻ってくると浮かれているカルミラ、その姿に「あれはもうダメかもしれませんね」などと述べてダーゴンからも自分が頼りにされることで得意そうなヒュドラム、そしてダーゴンも10話のようにユナをストーキングしていたら彼女から花をプレゼントされる。
 何かがおかしい微妙にいつもと違うことが続いて、怪獣との対決終盤で皆が精神操作されていたことがわかる。ケンゴも昔カルミラと親しそうにしていた夢を見る。カルミラも嬉しそうにしていたが、あれも遠隔操作だったのか? 隊員のみならずトリガーも、闇の巨人やイグニスまでも惑わされてしまっていた。前話に続いて収監されているが、イグニスは意外に元気そうだ。マルゥルは木造二階建てのアパートに住めると喜んだが、これは『ウルトラセブン』第8話のメトロン星人へのオマージュ。
 本話の放送前は、転任するのは本当だが、タツミ隊長は最後に栄転を蹴って、ナースデッセイへ戻ってくる。そんな勇ましい筋の話を予想していた。実際には『ウルトラマンティガ』第45話(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19961206/p1)で超古代植物ギジェラの吐き出す花粉によって正気を失ったGUTS隊員たちのような話だった。
 唯ひとりユナは異変に見舞われなかったが、彼女は精神攻撃されなかったのか? それとも攻撃を受けたが、超古代の巫女ユザレの血筋の力で知らず知らずハネ返していたのか? 次回に明かされる理由によれば、彼女には現世利益的な俗っぽい欲望がそもそも少なかったせいのようだ。第1話で現われた怪獣ゴルバーとの再戦。ウルトラマンと怪獣の特撮班のバトル演出以外に、本編班側でケンゴが地上で走りながらトリガーに変身して、光に包まれて現われるグリッタートリガーなどカッコよいカットがある。あと、前話で砲塔が石化したナースデッセイはもう直ったのだろうか?


第19話「救世主の資格」


 前回の事件を話し合う隊員たち。そこへシズマ財団のシズマ会長が訪れ、モルフェウスRという宇宙線が原因だったと告げる。調査で空中母艦・ナースデッセイ号から地上に降りるケンゴとユナ。そこでユナは自分を見つめる男に気がつきあとを追うが、宇宙線による精神への影響のせいで仲たがいした闇の巨人たちが争いながら地上へと出現。ケンゴは巻き込まれつつもトリガーに変身して戦うことに。
 ユナは謎の男と対し、彼がモルフェウスRを発して「欲望や願望を持たない人間」を捜していたと知る。男はモルフェウスRの影響を受けなかったユナには「救世主」の資格があると言う。トリガーはグリッターに変身。ケンゴはカルミラが昔トリガーに好意を持っていたことも知っていた。指摘されて怒るカルミラ。そこへ駆けつけるシズマ会長。
 トリガーはナースデッセイ、ファルコンや巫女ユザレの援護で巨人たちを撃退するが、入れ替わるように男はユナにも資格がなかったと言うと、炎魔戦士キリエロイドに変身巨大化して、夜のビル街で戦いを挑む。闇の巨人たちとの戦いに続いての激闘、苦戦するトリガーを助けようとするユナ。
 そこでシズマの身体の中にあった光が。気付いたユナの力で光はウルトラマンティガへと変化。トリガーを助けてキリエロイドと戦う。空へ逃げるキリエロイド、共に紫色のスカイタイプにタイプチェンジして追う2大ウルトラマン。空中戦、再び地上へ。ティガ・トリガー2人のゼベリオン光線が突き刺さってキリエロイドは倒された。戦い終わって夜空の途中で光となって消えるティガ。


 前話同様、脚本は根元歳三。監督は田口清隆。キリエロイドの出現、夜街のバトル、ウルトラマンティガとの共闘と『ウルトラマンティガ』のカラーが強く、往年のウルトラマンエースが客演して大活躍した前年度の『ウルトラマンZ』第19話「最後の勇者」などのイベント編にも相通じている。『ウルトラマントリガー』ではウルトラマンゼットやウルトラマンリブットなど他のウルトラマンとの共闘が二度も描かれ今回は三度目だが、それまでの共闘とはやや違う。
 ティガの敵役であり、『ティガ』第3話によれば3000万年前の超古代文明よりも古い時代から地球にいたらしいキリエル人(びと)が暗躍する。前話の精神攻撃によるギャグ話もその仕業であったとされた。闇の巨人たちも翻弄し、彼らが争いを始めるので、後半の新たなレギュラー敵かとも思ってしまう。ユナの心も誘惑するが、その様子は『ティガ』でのキリエル人と重なる。かつてキリエル人を演じたのは有名子役上がりの高野浩幸。高野は『ウルトラマンタイガ』6話「円盤が来ない」でもゲスト主役を務めたばかり。今回は調整がつかなかったのか、本話のキリエル人を演じたのは違う俳優・高橋麻琴だったが、高野同様に良い演技をしていた。
 ティガとの共闘。その鍵はかつて『ウルトラマンティガ』の舞台となった平行世界から来たシズマだ。キリエロイドを見て、かつての自分の世界にもいたと言う。続いて自分の身体に沸いた輝き。そこからその輝きの光の球体がティガへ。『ウルトラマンティガ』最終回(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19961207/p1)や映画『ウルトラマンティガウルトラマンダイナ 光の星の戦士たち』(1998年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19971206/p1)ラストとも重なるシーンである。もっともシズマの持っていた光がなぜこれまでも目覚めなかったか? これからはもう再び目覚めないのか? など眉唾な描写でもあるが、ティガとトリガーの共闘は嬉しい。シズマが『ティガ』最終回でティガ復活に関わった子供の1人であったと独白するシーンがあれば盛り上がったのだが、ティガを目撃したり助けられたのは大人になってGUTSに所属してからだし、『ティガ』世界の後任・ウルトラマンダイナのことは知らないようなので、それはないか? 『ティガ』でキリエロイド編やその再登場編と最終回3部作の脚本を執筆した小中千昭は本話をどう思ったのであろうか?
 撮影は、キリエル人とユナが会話するカットはその背後が中庭吹き抜けの古いビル内で、第1期ウルトラシリーズの異色作を担当した実相寺昭雄監督のタッチを感じさせるアングルになっている。あと後半、空へ飛んで逃げるキリエロイドと追うトリガーとティガ、高速で飛行しているため空を飛んでいる姿が見えず、雲を引く航跡ばかりが激突するアニメ的な演出になっているが迫力はある。トリガーとティガがダブルゼベリオン光線を発射するシーンもなかなかだ。
 しかしシズマが突然ユナの前に現われ、彼女を戦いに巻き込んだことを詫びるのは唐突で、何を今更と感じる。あと前話のキリエル人の精神攻撃により争い始めて、取っ組み合ったままでコマのように回転しながら巨大化して、なだめようとするダーゴンの言うことも聞かなかったカルミラ。争ったままで退場していったが、これから彼女もギャグキャラ化するのだろうか? 悪女声で叫ぶカルミラの声は上坂すみれの声優歴からすれば意外な当たり役になると思う。もっともカルミラは太古にトリガーを好いており、実は今も……ということはケンゴにも見抜かれており、それも最終回までの物語の鍵となるのだろう。
 なお、人間の精神(脳?)に影響を与える宇宙から飛来する放射線モルフェウスRは、原典『ウルトラマンティガ』40話「夢」に登場した人間の脳波に影響して巨大怪獣も実体化させた宇宙線モルフェウスDへのオマージュであり、これと同種の宇宙線だということもネーミングで意味させているのだろう。



 次回は3回目の特別総集編「咲き乱れる悪の華」。前回の総集編同様、小怪獣デバンにこれまでのストーリーを語ってもらうかたちだが、敵役を中心にしている。



 『ウルトラマントリガー』は近年のウルトラシリーズの年末までの放送とは違い、年を越して1月22日までの放送となったが、眼が離せない。


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2022年1月号』(22年1月16日発行)所収『ウルトラマントリガー』中盤合評2より抜粋)


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シン・エヴァンゲリオン劇場版 ~コミュ力弱者の対人恐怖を作品図式に反映させ、福音も与えんとした26年間を総括!

『宇宙戦艦ヤマト2205 新たなる旅立ち 前章 -TAKE OFF-』 ~敵国認定され戦争となる危険がある人道支援はドーすればイイ!?
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 巨大ロボットアニメ映画『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』が2021年3月8日(月)の公開から1周年記念! とカコつけて……。『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』(21年)評をアップ!


『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』 ~コミュ力弱者の対人恐怖を作品図式に反映させ、福音も与えんとした26年間を総括!

(文・T.SATO)
(2021年12月10日脱稿)


 TVアニメ『宇宙戦艦ヤマト』(74年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20101207/p1)や『機動戦士ガンダム』(79年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19990801/p1)につづく、日本アニメにおける第3のエポックメイキング作品たりえた巨大ロボットアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』(95年)。そのリメイクである『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』(07年)から始まった4部作がその最終作にてついに完結。
 同作を手掛けてきた庵野秀明(あんの・ひであき)カントクのことだから、てっきりキレイに完結できずにタイトルを『シン・エヴァンゲリオン』に改めた新シリーズにつづいてしまう可能性もあると見た御仁も多かっただろうが(?)、ナンとキレイに過不足なく完結していた。


 とはいえ、トータルではまぁまぁの良作だったとは私見するけど、観客の心を純粋に打つ大傑作に仕上がったかについては疑問である。個人的には前作こと『~新劇場版:Q』(12年)ラストでの世界規模での大災害発生の責任を引き継ぐかたちで、主人公少年・碇シンジ(いかり・しんじ)くんの傷心した姿を描いていく本作『シン・エヴァ』前半における第3新東京市ならぬ第3村での件りなどはややカッタルくもあった(汗)――もちろん彼の復活を描くには、アレくらいの尺数を描いていかないと説得力が出てこないのもわかるけど――。


 つまり、今回の「完結編」は単独作品としてのパワーではなく、四半世紀もの観客側での歴史や人生や思い入れ、TVアニメ最終回や旧劇場版における歯切れの悪いラストに対する「愛憎」も込みでの「終了確認」をしたいという想いが一点。そこに加えて「思い出補正」で作品自体の存在や評価がカサ上げされていった面もあったのではなかろうか?
 そーいう意味では、人生の幾分かを『エヴァ』と過ごしてきたロートルオタクたちとは異なり、21世紀の思春期の少年少女や若年オタクたちの心を打つ作品にはイマイチなっていないようには思うのだ。


エヴァ』らしさ!? 「使徒(他人)による周縁から中心(自己)への接近」と「接近過多での自他融解による大破局」!


 とはいえ、本作で完結させるのだとはいえ、そのドラマ的・テーマ的な結末だけを延々と見せるだけでは、一応の正義の巨大ロボット兵器が活躍するエンタメ活劇にはならないので『エヴァ』っぽさも醸せない。『エヴァ』という作品の意匠は、世界規模での大破局後の終末世界に残存した第3新東京市にナゼか周辺から迫ってくる「使徒」という名の無機物チックな巨大怪獣の襲撃に対して、巨大ロボ・エヴァンゲリオン複数機が立ち向かうといったモノである。
 そして、「使徒」の目的は迎撃要塞基地でもある第3新東京市の地下奥深くに眠るナニかであり、使徒がそこまで達して接触してしまうと、世界の破滅級の大爆発が起きてしまうというモノだ。
 TV版『エヴァ』ではさらにここに、境界を越境して襲来してくる「使徒」=「ヒト」=「他人」、「第3新東京市」=「エヴァ」=「シンジ」=「自己」などといったメタファー構図もカブせている。


 そして、人間一般あるいは特に我々オタクのようなコミュ力弱者である内向的な性格類型には特に強い、気心の知れない他人が苦手または怖いといった心情を、加えて適度な距離感で他人と交流することの大切さ、しかして他人と接近しすぎても人間関係が破綻して自己の輪郭も保てなくなって自我が崩壊・融解してしまう危険性を、つまりは自他が共生しつつも適度な線引き・細胞膜・皮膚・自室・家屋・国境などといったATフィールド・境界線もまた万能ではなくともアイデンティティーを保持するためには必要ではあることを、各自が溶けて均質化してしまったグローバリズムではなく各自が個別性を保ったままで交流していくインターナショナリズムを、そうだとはハッキリ明言はせずに遠回しで煙に巻くかたちで作劇していくことがミソの作品でもあったのだ。


 よって、コレらの要素をイコールではなくても踏襲していかないと『エヴァ』っぽさも醸せない。
 そこで本作では、主人公たちが搭乗する空飛ぶ戦艦は地球の最下部だともいえる南極の地へ、さらにはそこから実数/虚数、現実/概念、この世/あの世などの関係で云えば後者に相当する、数学論理的には存在可能に思える「マイナス宇宙」という深部へと降っていくというかたちを採っており、そこにハイブロウな映像洪水による背景美術や戦闘シーンも挿入することで、先の第3村に登場した美少女キャラ・綾波レイのクローンともども、一応の『エヴァ』っぽさも出せている。


主敵は自分たちの上位組織! 主役メカの量産型! ラスボスは主役メカのマイナーチェンジであるあたりは王道!


 まぁ、シニカルに物語を因数分解していけば、敵は使徒ではなく正義の味方と同種でもある量産型エヴァンゲリオン、ラスボスたるエヴァ13号機も主人公少年が搭乗するエヴァ初号機とデザイン&色彩もほぼ同じ。つまりは、かつて自身たちも所属していた秘密組織や主人公少年の父親との戦いともなっていく……といったあたりで、実は少年漫画や変身ヒーローものの最終決戦におけるテンプレ要素にも満ちている。


――すでに特撮オタク諸氏も指摘している通り、「ゴルゴダ・プロジェクト」「マイナス宇宙」「裏宇宙」は、この宇宙のウラ側にあって光の速さを超えないと突入できないマイナス宇宙に存在する、ウルトラ兄弟が十字架に磔にされてしまったゴルゴダ星(『ウルトラマンエース』(72年)#13(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060803/p1)~#14(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060805/p1))、味方のエヴァ8号機が敵の9~12号機の4体と強制合身してパワーアップしたのを「オーバーラッピング」や「フォー・イン・ワン」と称していたのも、ウルトラ6兄弟が6重合体した際の掛け声に由来する(『ウルトラマンタロウ』(73年)#25)。
 オタク第1世代は彼らが中高生の年齢であった70年代前半に放映された第2期ウルトラシリーズを酷評してきたが、その世代であるにも関わらず庵野カントクは各所で第2期ウルトラの美点にも言及してきた。第2期ウルトラ擁護派でもある筆者としてはうれしいかぎりだ(笑)――


20世紀の『エヴァ』ファンと21世紀の『エヴァ』ファンの相違! 劇中の衒学的なナゾ解きにはもう無関心!?


 ただし、「ゴルゴダ・プロジェクト」や「マイナス宇宙」などのガジェット(小道具)や用語については、ナゾめかせることでファンの深読みや探求欲を喚起していた20世紀のTVアニメ版とは異なり、カナリ説明的なセリフでその何たるかをクドクドと早口かつ冗舌に説明されていくので、意味不明といった感じにはならない。
 かつての『エヴァ』には思わせぶりで難解かつ宗教的・衒学的(げんがくてき。学を見せびらかす)なナゾ要素も多数散りばめられており、20世紀の『エヴァ』ファンはソコをも深読みせんと盛大に喰らい付いていったモノだったのだが、21世紀以降の新たな『エヴァ』ファンはオタクのいわゆる「動物化」ゆえにかそこには無関心ではある。同じ『エヴァ』でも受容のされ方が変わってしまっている。コレらはそのあたりへの庵野カントクなりの対応といったところもあるのだろう。


 作品単体ではなく作品の外での諸氏による解題で理解されてきたという側面も大きいけど、使徒を迎撃する秘密組織の厳めしくて寡黙な長でもある主人公少年の父・碇ゲンドウの最終目的「人類補完計画」とは、死者をも含む全人類を自他融解した集合生命にしてしまうことで、寂しさや他人に対する恐怖や不信からの解放を、そして何よりもコミュ力弱者である自身を受け容れてくれた、唯一の心許せる存在でもあった早世した妻を復活させて再会しようとすることであった。
 本映画ではTV・旧劇場版なども史実であって、「エンドレス・エイト」((C)『涼宮ハルヒの憂鬱』)ならぬ「歴史ループ」でのやり直しをしてまで、この計画を完遂しようとしていたことが明かされている。


 虚構(イマジナリー)が現実と同等に存在できるマイナス宇宙内というエクスキューズを付けることで、セル画ライクなモーションキャプチャーの3D-CGアニメによる文字通りの背景ホリゾントもまる出しな特撮ミニチュアビル街セットなどでのエヴァ初号機vs13号機による親子喧嘩が描かれた果てに、物語は主人公少年ではなく父個人の独白や自己省察へと入っていく。


ラスボスだった父親との対決! 主人公少年のみならず父もまた、我々コミュ力弱者たるオタクの写し鏡!


・親戚付き合いや元気で衝動的な同世代の子供たちの輪の中に割って入って、自分を出したり他人に働きかけて彼らを動かすような行動が、子供のころから苦手だったり怖かったこと
・その反動として、外界からの不意の介入などは発生しない自分個人だけで確実にコントロールができる箱庭・盆栽的な美とでもいうべき、読書や知識欲や音楽には傾注してきたこと
・話し掛けられることでもアタフタとしてしまう自身の弱さを隠すために、イヤホンを付けることで暗に他人を拒絶してきたこと……


 判っちゃいたけど、ゲンドウもまさに我々コミュ力弱者たる筆者もといオタの写し絵でもあり、息子のシンジ少年とも同類項でもあったのだ(爆)。


 とはいえ、ヒトそれぞれではあろうけど、コレらの描写は作劇的には正しくて妥当だとすら思うけど、個人的にはあまり心は打たれない。
 それは作品の方の罪ではなく、観ているコチラがすでに枯れたオッサンになっており、そんなことは作品や他人に指摘されるまでもなく判っていますヨ、今さらですヨといった気持ちがあるからでもある(汗)――もちろん、だとしても押さえておくべき描写ではあったけど――。


エヴァ』のねらい!? 庵野監督が発行した同人誌『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア 友の会』(93年)での発言に求める!


 庵野カントクはもう30年近くも前である1993年末の冬コミで、アニメ業界人多数のインタビューや寄稿をまとめた『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア 友の会』なる同人誌を発行しており、「完結編」合わせで放映されたNHK『プロフェッショナルの流儀』における寡黙で細かな指示を出さずにスタッフ自身に呻吟させるかたちで仕事をさせていた姿とは真逆な、実に冗舌・多弁な評論オタクとしての姿も見せている。
 「初見ではツマラなかったものの、同作を再見したらば富野カントクの裸踊りかつアニメ業界のメタファーでもあって面白かった(大意)」という感慨から作られた、その前書きでは作家・三島由紀夫https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200809/p1)のアイロニカルな箴言(しんげん=教訓的な格言)多数を衒学的に太字で引用しまくってもいるこの1冊。
――同作を評価していない筆者はこの同人誌の内容には必ずしも賛同する者ではないのだが、シャアとその愛人ナナイの同席シーンには、初作の総集編映画の完結編『機動戦士ガンダムⅢ めぐりあい宇宙(そら)編』(82年)におけるシャアとララァの同席シーンのようなイロ気がないという庵野の指摘には同意する――


 そこで、自分たちオタク第1世代には語るべき体験・オリジナル・ホンモノがない。せいぜいが疑似体験に過ぎない往年のTV作品やその寄せ集めを活かすかたちでしか作品を作れない。しかし、それを自覚して相補的に作ると虚数の2乗が実数になるように、理論上はホンモノになれる新作を準備中である旨の発言をしている。今思えばそれが『エヴァ』であったのだ。


ガンダム』のアムロ→『セーラームーン』の水野亜美→『エヴァンゲリオン』のシンジ ~コミュ力弱者キャラの系譜!


 同書では庵野同様に「自身にはオリジナルがない」という問題意識を抱えていることで意気投合したという、女児向けアニメ映画『劇場版 美少女戦士セーラームーンR』(93年12月公開)を製作中であった幾原邦彦カントクについての言及もあるのだが、まさにこの90年代前半には『セーラームーン』で小さな地殻変動も起きていた。
 メタファー演出の勃興に加えて、当時の男性オタク間ではセーラーマーキュリー水野亜美が大人気となったことである。
 80年代のオタク間においては快活な美少女やビキニアーマーの戦闘美少女が人気を博していた。しかし、現実世界の一部の女子中高生たちがおしとやかであることをやめて欲望・ホンネを解放してギャル化してみせれば、彼女らは弱者男子に対して遠慮のない露骨な蔑みの目線&言動を向けるようにもなったのだ。慈悲深い快活女子が弱者男子をも包摂してくれるのだという幻想の崩壊! この地殻変動にはそんな理由もあっただろう。


 そして、亜美ちゃんの今で云うコミュ力弱者・控えめな性格ゆえの集団不適応から来る孤独描写。ソコにも当時のオタクたちは飛びついて自己憐憫的な共感も示して(笑)、そのような二次創作も隆盛を極めていく。
 ……自身のコミュ力弱者ぶりを仮託も含めてカミングアウトしてもイイ! それは『ガンダム』初作の少年主人公・アムロに肩入れした往時のオタクたちにもあったものである。しかし、82年秋から大流行した「ネクラ」という用語、83年には早くも人気漫画のTVアニメ化である『ストップ!! ひばりくん!』内でも『ガンダム』のことをアムロを演じた声優・古谷徹自身によって「フツーの少年」ではなく「ネクラな主人公」などとパロディーだとはいえ負のモノとして言及されてしまったことにも象徴される、軽佻浮薄な方向への急速なる時代の空気の変化ゆえに、オタク間でもこの話題はタブーとなっていった。


 しかし今、再びコミュ力弱者問題にスポットが当たりつつある。ソレならば主人公たちシンジや綾波レイにこの問題を投影することで「彼らはオレだ!」といった感情移入も惹起することができるのではなかろうか!? そして、できれば彼らにその苦しみを解消できるような方策たりうる「福音(ふくいん)」までをも与えたい! そんな大望も交えて『エヴァ』が誕生したのだとも思うのだ。
 もちろん一介の作品ごときにコミュ力弱者の問題を一挙に解消して救いを与えるようなことができようハズもない。TVアニメ版は最終回では作品としては空中分解して、むしろファンの怨嗟を買ってしまい、庵野自身もファンに対しての不信感を高めていくことにもなるのだけど(爆)。


――ちなみに、『セーラームーン』に大いにハマっていたとおぼしき庵野は、シリーズ第3作『美少女戦士セーラームーンS(スーパー)』(94年)では、新登場した天王星の戦士・セーラーウラヌス海王星の戦士・セーラーネプチューンの変身シーンや必殺技シーンの各話で流用されつづけるバンク映像を、当時に所属していたアニメ製作会社ガイナックスで引き受けて、その演出も担当していることが、当時のアニメ雑誌などでも言及されている――


 なお、このブーム当時のオタク少年たちも、中学校までは『エヴァ』の話ができたのに、高校に上がると「『エヴァ』? 何それ喰えるの?」的なアンタッチャブルな劣位趣味への扱いへと変わってしまう挫折を味わっていたようである(笑)。


庵野監督の強み!? 見上げるようなオブジェで巨大感も豊かに、緊迫感あふれるカッコいい戦闘シーンを魅せること!


 とはいえ『エヴァ』の魅力の一方は、巨大ロボ&戦闘アクションでもある。
 ビル街や山あいから見上げたカッコいいアングルで捉えられた巨大ロボや使徒。それらが重厚に、あるいはスピーディーに動くことへの映像的な快感。壮快に活躍してピンチには陥ってしまうもののナンとか一発逆転して勝利に持ち込んでみせる、身体的な快楽・愉悦(ゆえつ)をもたらす戦闘シーンのカタルシス


 この「ナイーブかつメンタルな要素に対する共感」と「巨大オブジェ&戦闘アクションといったフィジカルな要素に対する快感」が渾然一体となった点が、『エヴァ』に人々を引き寄せた正体でもあっただろう。
 庵野が2016年に発表した実写怪獣映画『シン・ゴジラ』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20160824/p1)なども結局は後者の巨大オブジェ&戦闘アクションがキモ・中核なのである。逆に云ってしまうと、『シンゴジ』は特撮アクション部分はともかく本編ドラマ部分には映像的密度感がやや欠如気味ではあったようにも思うけど。
――同作には右派的にも左派的にも解読可能な社会派的な要素も込められてはいたが、20世紀に『エヴァ』を製作していた時代とは異なり、庵野が自作を自身の意図とは異なる読み方をされても構わない、むしろそれを誘発してみせようと達観したゆえの境地からの作劇でもあっただろう――


 今後に控えている巨大ヒーロー映画『シン・ウルトラマン』はともかく、人間サイズのヒーロー映画『シン・仮面ライダー』などは下から見上げた巨大物体が動いているという迫力映像の力で間を持たせることで、画面(作品)への求心力・集中力も高めていくようなことはできにくい素材ではある。素朴な原典の再現などではなく、人間サイズの超人によるジャンプ力やパンチ力の増大といった身体拡張的な全能感・万能感を映像でも表現できれば勝算が出てくるだろうとは思うけど、果たして庵野は自身の強み・得意を自覚しているのや否や……。


『シン・エヴァ』でも救われなかったコミュ力弱者はいかに生くべきか!? 2010年前後に勃興した(ひとり)ボッチ作品に答えを求めたい…


 この「完結編」のラストは数学論理的に使徒エヴァが存在しない世界を選択して現実化させたのであろう世界で、記号的なアニメキャラの度合いが強くて、そも主人公少年に好意を持つように人造デザイン(爆)されていたことが明かされた美少女たち綾波レイやアスカではなく、前々作『~新劇場版:破』(09年)から登場したやや肉体的な厚みも感じられる第3の美少女キャラ・マリと付き合っている青年の年齢に達した主人公の姿が描かれてエンドになる。
 「現実に帰れ」「自他・思想・性格類型の相違もある猥雑な世界で殺し合いや断交ではなく、粘り強く折衝や妥協もしつつ他人と生きていけ」という意味ではTV版や旧劇場版ともテーマ的には同じなのだが、上から目線ではないマイルドな描写ゆえに前記2作とは違って反発を抱かれることはないだろう。


 しかし『エヴァ』という作品のオチとして、観客の最大公約数にとってもこの処方箋が正解ではあっても、個人的にはプチ反発も感じてしまう。それはやはり現実社会ではドーしてもウマく生きてはいけない、一般ピープルとは気が合わない筆者もといオタにとっての万能な処方箋たりえたとは思えないからである。
 むろん、虚構の世界に閉じこもればイイとは思わない。しかし、そこは押したり引いたり心を開いたり、時にATフィールドで心を閉ざして輪郭を保ったり、そして気を強く持ってパワハラモラハラ同僚とも戦ったり、その逆に彼らと距離を置いてみせることの永遠の繰り返し。ソレこそが使える処方箋ではなかろうか? そして、現実世界で疲弊したメンタルを文化もといオタク趣味によって癒やすことも必要なのではなかろうか?
 そのあたりについては、2010年代以降に勃興した(ひとり)ボッチアニメ(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20150403/p1)が到達した境地の方が、よほど実地に使えるモノのようにも思えるのだ。


 ともあれ、作品自体の質とは別にリメイクやシリーズ化がしにくい『エヴァ』は急速に終ワコン化していくやもしれない。「おまじない」の意味合いとしても「さようなら、エヴァンゲリオン」。


(了)
(初出・オールジャンル同人誌『DEATH-VOLT』VOL.88(22年1月16日発行))


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  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19990901/p1


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私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!』 ~連載8年目にして人気再燃の理由を探る!

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青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない』 ~ぼっちラブコメだけど、テレ隠しに乾いたSFテイストをブレンド! 2018年秋アニメ評!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20190706/p1

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三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実』 ~右vs左ではない!? 一度断念した上での「理想」や「公共」へと至る経路の違い!

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宇宙戦艦ヤマト2205 新たなる旅立ち 前章 -TAKE OFF-』(21年) ~敵国認定され戦争となる危険がある人道支援はドーすればイイ!?

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『劇場短編マクロスF~時の迷宮~』『劇場版マクロスΔ 絶対LIVE!!!!!!』(21年) ~元祖アイドルアニメの後日談・長命SFシリーズとしては通過点!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20220417/p1

『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』(21年) ~コミュ力弱者の対人恐怖を作品図式に反映させ、福音も与えんとした26年間を総括!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20220306/p1(当該記事)

『映画 プリキュアラクルリープ みんなとの不思議な1日』(20年) ~テーマ&風刺ではなく、戦闘&お話の組立て方に注目せよ!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20201227/p1

『劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン』(20年) ~大傑作なのだが、「泣かせのテクニック」も解剖してみたい!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20211108/p1

『劇場版SHIROBAKO』(20年) ~TV版の反復で「らしさ」を出しつつ、あがきつづける群像劇!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200412/p1

『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』(19年) ~意外に豊かでモダンな戦前!? 終戦の日の慟哭・太極旗・反戦映画ではない説をドー見る!?

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200308/p1

冴えない彼女の育てかた Fine(フィーネ)』(19年) ~「弱者男子にとっての都合がいい2次元の少女」から「メンドくさい3次元の少女」へ!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20191122/p1

『映画 スター☆トゥインクルプリキュア 星のうたに想いをこめて』(19年) ~言葉が通じない相手との相互理解・華麗なバトル・歌と音楽とダンスの感動の一編!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20191108/p1

『天気の子』『薄暮』『青春ブタ野郎はゆめみる少女の夢を見ない』(19年) ~「天気の子」は凡作なのでは!? 2019年初夏アニメ映画評!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210104/p1

宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち 第七章「新星編」』(19年) ~不評の同作完結編を絶賛擁護する!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210613/p1

『劇場版 幼女戦記』『映画 この素晴らしい世界に祝福を!-紅伝説-』『Re:ゼロから始める異世界生活 氷結の絆』 ~2019年3大異世界アニメ映画評!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210912/p1

ラブライブ!サンシャイン!!』 & 後日談劇場版『ラブライブ!サンシャイン!! Over the Rainbow』(19年) ~沼津活況報告 & 元祖に負けじの良作と私見

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200628/p1

機動戦士ガンダムNT(ナラティブ)』(18年) ~時が見え、死者と交流、隕石落下を防ぎ、保守的家族像を賞揚の果てに消失したニュータイプ論を改めて辻褄合わせ!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20181209/p1

怪獣娘(黒)(かいじゅうガールズ・ブラック)~ウルトラ怪獣擬人化計画~』(18年) ~5分アニメ1期&2期含めて良作! 『ウルトラマンレオ』のブラック指令&円盤生物が大逆襲!?

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210919/p1

『ANEMONE(アネモネ)/交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション』(18年)・『コードギアス 復活のルルーシュ』(19年) ~00年代中葉の人気ロボアニメのリメイク&続編勃興の機運!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20211031/p1

GODZILLAゴジラ) 星を喰う者』(18年) ~「終焉の必然」と「生への執着」を高次元を媒介に是々非々で天秤にかける!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20181123/p1

さよならの朝に約束の花をかざろう』(18年) ~名脚本家・岡田麿里が監督を務めるも、技巧的物語主体ではなく日常芝居主体の演出アニメであった!

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『劇場版マクロスΔ(デルタ) 激情のワルキューレ』(18年) ~昨今のアイドルアニメを真正面から内破すべきだった!?

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190504/p1

『劇場版マジンガーZ/INFINITY』『劇場版Infini-T Force/ガッチャマン さらば友よ』(18年) ~2大古典の復活に見る、活劇の快楽を成立させる基盤とは何ぞや!?

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200119/p1

『映画 中二病でも恋がしたい! -Take On Me-』(18年) ~眼帯少女も高1なら可愛いけど高3だとヤバいかも…に迫る逸品

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190904/p1

夜は短し歩けよ乙女』『夜明け告げるルーのうた』(共に17年) ~鬼才・湯浅政明カントクのイマ半と大傑作!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190621/p1

宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち 第一章~第三章』(17年・TVアニメ先行上映) ~戦争モノの本質とは!? 愛をも相対視する40年後のリメイク!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20181208/p1

『劇場版 ソードアート・オンライン -オーディナル・スケール-』(17年) ~大人気の本作にノレない私的理由を記しつつ大ヒットのワケを分析!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190922/p1

『映画 聲の形(こえのかたち)』(16年) ~希死念慮・感動ポルノ・レイプファンタジー寸前!? 大意欲作だが不満もあり

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190901/p1

ガールズ&パンツァー 劇場版』(15年) ~爽快活劇の続編映画に相応しい物量戦&よそ行き映画の違和感回避策とは!?

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190623/p1

心が叫びたがってるんだ。』(15年) ~発話・発声恐怖症のボッチ少女のリハビリ・青春群像・家族劇の良作!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20191104/p1

攻殻機動隊 新劇場版』(15年)・『ゴースト・イン・ザ・シェル(実写映画版)』(17年) ~義体のサポート期間終了問題で新自由主義も批判!?

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20211128/p1

ラブライブ! The School Idol Movie』(15年) ~世紀の傑作!? それとも駄作!?

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這いよれ!ニャル子さんF(ファイナルカウントダウン)』(15年・OVA先行公開)

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『天才バカヴォン ~蘇るフランダースの犬~』(15年)

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機動戦士ガンダム THE ORIGIN(ジ・オリジン)』(15年・OVA先行公開) ~ニュータイプレビル将軍も相対化! 安彦良和の枯淡の境地!

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機動戦士ガンダムUCユニコーン) episode7 虹の彼方に』(14年・OVA先行公開)

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たまこラブストーリー』(14年) ~親密な商店街にオタの居場所はあるか!?

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『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ[新編]叛逆の物語』(13年) ~『せいぜいがんばれ! 魔法少女くるみ』『魔法少女 俺』『魔法少女特殊戦あすか』『魔法少女サイト』『まちカドまぞく』 爛熟・多様化・変化球、看板だけ「魔法少女」でも良作の数々!

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宇宙戦艦ヤマト 復活篇』(09年) ~肯定評!

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サマーウォーズ』(09年) ~話題作だがイマイチでは?

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ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』(09年) ~世評はともかく個人的にはイマイチに思える弁(汗)

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鉄人28号 白昼の残月』『河童のクゥと夏休み』『ミヨリの森』 ~2007年アニメ映画評

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『劇場版 機動戦士Z(ゼータ)ガンダム -星を継ぐ者-』(05年) ~映画『Z』賛美・TV『Z』批判!

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『劇場版ターンエーガンダムⅠ地球光/Ⅱ月光蝶』(02年)

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劇場版『エスカフローネ』(00年) ~いまさら「まったり」生きられない君へ……

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マクロスプラス MOVIE EDITION』(95年) ~歌の暗黒面&洗脳性! 夢破れた表現者の業を三角関係を通じて描いた逸品!

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超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか』(84年) ~シリーズ概観&アニメ趣味が急速にダサいとされる80年代中盤の端境期

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