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『小林さんちのメイドラゴン』『政宗くんのリベンジ』『アイドル事変』『セイレン』『スクールガールストライカー』『けものフレンズ』 ~2017年冬アニメ評!
『まおゆう魔王勇者』『AMNESIA』『ささみさん@がんばらない』 ~異世界を近代化する爆乳魔王に、近代自体も相対化してほしい(笑) ~2013年冬アニメ評!
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[アニメ] ~全記事見出し一覧
2020年1月17日(金)からアニメ映画『劇場版メイドインアビス 深き魂の黎明』が公開記念! とカコつけて…… その前日談たる深夜アニメ『メイドインアビス』(17年)評ほか、同季2017年夏アニメ全10本のレビューをアップ!
(文・T.SATO)
(2017年12月13日脱稿)
「アビス」というから「深海」かと思いきや「地底」。
高度な文明が崩壊してから数百~数千年後っぽい、西欧中世都市みたいな世界観。直径1キロ・深さ20キロの巨大タテ穴のフチに人々は住まい、タテ穴から古代のロスト・テクノロジーの遺物を発掘することで栄えている。
だが、重力異常か呪いなのか、タテ穴の深層に潜りすぎると身体に不調が生じ、人外の存在に変化する可能性もあるという。
昨今流行りのナンちゃってロー・ファンタジーではなく、本格ハイ・ファンタジーといった印象だが、キャラデザはデッサン骨格シッカリ系ではなく、5頭身かつ顔面もヨコにまるく広がり、お目々の位置も真ん中よりやや下、両眼も左右に離れており、華奢な胴体に末端肥大な手足が付いた、シンプルで幼児的な可愛らしいもの。
おそらく万人ウケはするのだろうけど、個人的にはこーいうあまりに端正かつ「キレイ可愛い」でデオドラント(無菌)なキャラデザは、世の中の汚いモノや不条理を過剰に忌避(きひ)して見ないフリ、なかったことにするような気配を感じて、プチ抵抗を覚えないでもナイのだが――まぁ作品自体の罪ではナイです――。
眼鏡の金髪ツインテで学者タイプの女のコ主人公と、見た目はヒトでも記憶喪失のロボット少年くんを主軸に、彼らの周囲の人々の群像劇と、アビスの何層もの階層を降って探検を繰り広げていく姿を描いていくけれど……。
オタキング・岡田斗司夫が本作をホメているのをドコかで読んだが、基本設定はともかく、先の筆者個人のバイアス(偏見)も影響してか、設定確認の段取りチックなストーリー展開に思えて、本作をスキな方々には申し訳ないけど、個人的には心を打たれないなぁ(汗)。
メイドインアビス Blu-ray BOX 上巻
オタの天敵である女子高生巨乳ギャルがヒロインである深夜アニメが登場。ヤンキー色漂う少年マンガ誌出自かと思いきや、オタ向けマンガ誌『少年エース』が出自だと!?
とはいえ、彼女はルーズソックスを履いている……。今時そんな女子高生はいねーヨ!(笑) というワケで、リアルなギャルではなくマンガ的記号としてのギャルだともわかる。
しかも#2以降、実は彼女は内心はウブだと明かされる。……コ、コレはギャップ萌え!(爆) まぁ公共心皆無の自己中(心)・私的快楽至上主義者の真性ギャルだと、視聴者も感情移入ができないからネ。順当なマンガ的アレンジではあるだろう。
気弱だけど人並みにスケベな男子高校生主人公クンが、同級のムサい眼鏡・デブ・金髪の下層カースト仲間にそそのかされて、付き合えばヤラせてくれるかも……とのナンちゃって下心で告白したらOKで、付き合い始めたことから始まる珍騒動。
ラブコメのお約束のご都合主義で、この冴えない男子クンに実は気があった、下級生の妹系チビロリ爆乳&ツンツンした黒髪ロング学級委員のふたりがモーションをかけてくる歌舞伎的様式美まで設けてある。
ただし変化球も投げており、主人公男子クンにではなく、メインヒロインのギャル子ちゃんに懸想している別のギャル子ちゃんもひとり設定することで、同期夏季アニメの『恋と嘘』同様に「同性愛」も入れている。
ロリ声の小倉唯演じるチビ爆乳は途中で染めて黒髪からピンク髪となり――今日びの高校生はブラック校則どころか、校則なんて守ってないってことだネ!(笑)――、少年に上目遣いでアピールしてくる。正直ちょっとドギマギ。
自宅ではギャル風カツラ&トークでナマ配信するユーチューバーでもある黒髪ロングの学級委員は、大ヒット深夜アニメ『けいおん!』(09年)の追加メンバー「あずにゃんペロペロ」から幾星霜の竹達彩奈(たけだつ・あやな)嬢が好演。
序盤のツカミはよかったと思う。傑作だ! なぞと主張する気もないけど、一応は観られる作品に仕上がっているとも思う――ヒト様に薦める気もないけれど(汗)――。
しかし、我々オタを露骨に蔑(さげす)むギャル連中は、オタ向け作品では脇役か悪役かそもそも教室にはいないことになっていて(爆)、ギャルではなく巨乳キャラですらもがサブキャラ止まりのお色気要員でメインヒロインには昇格しなくなって久しい現在、本作が覇権を取ることなどアリエナイだろうけど、アニメ化される程度にはニッチなニーズもあるようで、日本のオタの未来も安心だ。
いやまぁ女性の側でリードしてほしい、筆下ろししてほしいという願望の発露と取れば、日本のオタの未来がやはり不安だけど(笑)。
女子高生が一律にミニスカ&ルーズソックスと化したのは今は昔の1993年。その10年後の2003年でも両者は健在だったのだが、00年代の終わりまでに「ミニスカは死なず、ただルーズソックスは消え去るのみ」で消滅し、ルーズソックス・ファンの筆者は残念で仕方がナイ(オイ)。
『とある魔術の禁書目録(インデックス)』(08年)シリーズの制服女子高生ヒロイン・御坂美琴(みさか・みこと)ちゃんにだけは、コレからも末永くルーズソックスを履き続けてほしいものである(笑)。
はじめてのギャル Blu-ray限定版 第1巻
学園一の金髪お嬢さま系ヒロインが実は重度のゲーマーで、ゲーム同好会を舞台に、クラスの隅っこで(ひとり)ボッチしているオボコいおチビ系のゲーマー少年を好きになってくれる! というラノベ原作の深夜アニメ。
……のハズなのだが、メインヒロインよりもサブヒロイン&サードヒロインの方が目立っている。オカシいぞ、この作品は(笑)。
髪型&私服に無頓着で、シャイさを隠すバリアとするためかボサボサの黒髪ロングで目許を隠し、休み時間は自席で孤独にゲームに興じるサブヒロインのオタ系(ひとり)ボッチ少女。
話しかけられると赤面・緊張しながら、
「あのあの」「ですです」「そのその」「えとえと」
と片言を反復してテンパっている姿が、筆者もとい弱者男子には、
「異性にテレてしまう自分と同じだ!」「こんなボクでも値踏みして見下してこない!」
と実に強烈な共感&安心感を与えてくれる……(オイ)。
サードヒロインであるピンク髪のチビ少女も単なる賑やかしかと思いきや、中学時代は黒髪の地味子ちゃんで、意中のガリ勉くんが高校デビューしたのに合わせて、自分もイメチェンしたのだと途中で明かされる。
け、健気な。ドーでもイイ記号的なキャラだなぁと思っていた筆者のお株も急上昇!(笑)
その元ガリ勉くんで高校デビューの長身イケメン君も、ドーせ俺のルックスに惹かれたミーハーだろと内心サメてたものが、この事実を知って改めてチビ少女にドギマギ。
……アレ? 主人公を中心としたハーレムものじゃなかったの? と訝しみつつ……。
まぁ野郎の高校デビューも、上背・顔面偏差値・内心のキョドりを隠せるボイスなどが揃わないと困難だけど、内向的なオタの気持ちをむかしの自分だと理解して、主人公らの恋模様を応援する長身イケメン君も実にイイ奴だ。
もちろんラブコメである以上は、即座に彼らが結ばれるワケがない。彼らの異性への不慣れから来る誤解&不器用から、長身イケメン君がオタ系ボッチ少女の恋を応援する姿に、チビ少女は彼氏の浮気だと誤解する。
主人公とチビ少女は意外と気が合い仲良くするけど、その姿に長身イケメン君は動揺する。
主人公とボッチ少女は、ゲームの話題では肝胆(かんたん)相照(あいて)らす仲で、ゲームに「萌え」が必要か否かでは反目するも(笑)、そんな光景にすらお嬢さまヒロインは内心嫉妬する。
かくて、三角関係どころか四角・五角関係に。
なのだけど、原作ラノベの挿絵と比して単純化された絵柄が効を奏したか、イイ意味でリアリティの階梯も下がって、浮気(? ~恋人以外の異性との会話・笑)を目撃するや、キャラの色が線画を残して白くなり、砂と化して崩れ落ち、その上をお相手が踏んで歩くようなバカ演出が施されるので、あくまでも楽しいコメディ。
自作ゲームの数々をネット上でハンドルネームで長年応援してくれた御仁の正体が主人公少年であることをボッチ少女だけが知って、今までと同様の平静な会話ができなくなる、シリーズ後半の彼女の言動にも萌え。
終盤では、ファミレスでオナ中(同じ中学)のギャルと再会したチビ少女も、地味子の過去をチャラ男どもにバラされたあげくに、イケてないゲーム同好会所属もバカにされて、「オタサー(クル)の姫として舞い上がり、キモオタ部員どものオナペットにされてるハズ」だと罵倒されてしまう!
けれども、そんな礼節・公共心皆無で人間に上下を露骨に付けて悦に入りチョイ悪・不良性感度を気取っている、全人類の7~8割の正体はたしかにコレだろうと個人的には思える(笑)品性下劣な輩に、彼女が屈せず同好会仲間を友に選ぶと啖呵を切るのもポイント高し。
まぁ3次元でそこまでヤルと学校や会社で浮くし、協調性ナシだとマイナス人事評価される理不尽な倒錯がまかり通るのも現実社会の厳然たる事実なので、内心ではともかく対外的にはネコをカブってヤリ過ごす方をウス汚れた筆者個人は勧めるけど、フィクションとしてはたしかに胸がすく描写ではある。
ガチさを求めるゲーム部には入部せず、ユルく楽しむゲーム同好会を設立するあたりも、オタの生き方のモデルのひとつとして、自戒・反省も込めるけど実に示唆的でもある。
いかにも頼りない主人公少年は、特撮オタク的には『手裏剣戦隊ニンニンジャー』(15年)のハスキーな美少年ボイスの着ぐるみレギュラー敵幹部・九衛門や、同季に放映が開始された『ウルトラマンジード』(17年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20180213/p1)の同じく着ぐるみレギュラーの正義側キャラクター、ペガッサ星人幼年体・ペガ君も演じている潘めぐみ嬢が好演。
よって、神(かみ)傑作にもなりうる作品のハズなのに、作者・スタッフ・視聴者の誰もが感じていることであろうし、劇中でもメタ的にセルフツッコミ・自己言及もされるけど、作劇上の配分ミスなのか、正体はポンコツの愛すべきお嬢さまヒロインの物語的比重がとても低い。そのために作品の重心が定まらず、非常に散漫な印象を与えているとも思う。
それでもメインヒロインである金髪お嬢さま美少女のビジュアル&金元寿子(かねもと・ひさこ)嬢が演じる性格良さげ・シッカリ者っぽいハキハキボイスは華があり、登場するだけで求心力があって、かろうじて作品を空中分解から救っていると私見。
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ゲーマーズ!第1巻〈初回限定版〉 [Blu-ray]
毎週土曜日にだけさまざまな異世界に接続されるという、日本の某・商店街の雑居ビルの地下1階にある洋食屋さん。そこに集ってくるいろいろな種族の異世界人たちにも、ダンディーなボイスの諏訪部順一が演じているコックのソリッドなヒゲ面の親父さんは分け隔てなくビーフシチューやメンチカツにエビフライなどの庶民的な定番ランチをふるまって、異世界人たちも舌鼓を打っている……といった深夜アニメである。
異世界人とのコミュニケーションには、設定では魔族でも見た目は金髪ミニツインテールでメイド服姿の人間にしか見えない美少女キャラ・アレッタ嬢が、空腹の果ての無銭飲食の果てに雇われて給仕として働きだすというエピソードを序盤に配することで、作品に女っ気と華(はな)をも与えている。アレッタ嬢を演じるのはアイドル声優・上坂すみれ(うえさか・すみれ)。
そして、30分尺に前半Aパートと後半Bパートで2話を放映するというスタイル。
私事で恐縮だが、職場の同僚の雑談などに耳をそばだてていると、ネット配信の深夜ドラマ『孤独のグルメ』(12年)や『深夜食堂』(09年)や『ワカコ酒』(15年。5分アニメ版より実写版の方が面白いと私見)にハマっているという声が聞こえてくることがある。
筆者もザッピング視聴をしていて、それらの作品に遭遇すると、明らかに低予算でゲストの数も少なく、ロケにもほとんど外出しないのに、それでも「食」や「客」の人生に焦点を当てていって味わい深く仕上げた作風に、ついつい見入ってしまったりすることがある。
本作も原作者のアイデアか編集者の要望かは知らねども、それらのオタク向け異世界ファンタジー版といったところだ。くれぐれも云っておくけど、先行作のマネだと罵倒したいのではナイ。先行作から着想を得たミックス・アレンジであろうとも、面白ければそれでイイし、ツマラなければそれまでのことである。
とはいえ、悪くはないけど、本作とよく似通っている『深夜食堂』あたりに本作が圧倒的に勝っているかというと……(以下略)。
一応、異世界を舞台にした巨大ロボットアニメ。
前世では冴えない眼鏡のプログラマーだったオタク青年が、事故で死亡して異世界に転生するや、ショタ受けしそうな銀髪セミロングでハスキーボイスの美少女っぽいローティーンの半ズボン美少年として成長し、そのオタクスキルで巨大ロボ乗りとして頭角を現していく。
その設定だけを見れば、17年冬アニメの『幼女戦記』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190304/p1)と似ているともいえなくもない。
しかし本作のファンの方々には申し訳ないけど、あちらが「判ってますよ、オタにとって都合のイイ世界ですよ、傍から見ればイタイですよ、ナンちゃって」感のある「高2病」的なモノだとしたら、こちらは「現実から逃避して別世界へ行きたい! 美少年に生まれ変わって自己愛を満たし、周囲からもチヤホヤされたい!」という願望に、自己懐疑もなく浸っている「真性中2病」作品といった印象だ。
とはいえ、コレはスレたオッサンの斜(はす)に構えた印象で、本来のアニメの標的年齢層(ローティーン!? だったハズ・笑)を考えれば、コレでイイのだろう。
「ローカルご当地アイドル」が地方で町興し(まちおこし)する深夜アニメというと、『サクラクエスト』(17年)や『普通の女子高生が【ろこどる】やってみた。』(14年)の2作を想起する。
しかし、本作の「ローカルアイドル」は、いわゆる「ご当地ヒーロー」ならぬ「ご当地ヒロイン」! 全国各地で「ローカルヒロイン」が隆盛を極めているというウソっぱちの世界観で、地方の女子高生がオリジナルの「スーパー戦隊」――むろん顔出し(笑)――を結成して、悪の怪人と戦うのではなく、ヒーローショーを披露するといった内容であった(笑)。
ホンモノの「スーパー戦隊」出身であり、『海賊戦隊ゴーカイジャー』(11年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20111107/p1)のゴーカイイエローをナマ身で演じてきたM・A・O(まお)ちゃんが、またまたあまたの2017年の深夜アニメ(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190924/p1)とも同様に主演声優を務めている!
しかし、主人公なのにクールな性格の女子役なので、筆者には「赤」「青」「黄」などの色を苗字に持った、劇中では第1話よりも以前からヒーローショーのステージに立っていたというキャラたちの方が、アイドル性や華(はな)があって印象に残ってしまう。
この「スーパー戦隊」でもある女のコたちの集団のなかには、「特オタ(特撮オタク)」も「鉄オタ(鉄道オタク)」も同時に並存している天文学的な確率については、そこは漫画アニメなのだからツッコミを入れるのはヤボであろう。とにかく、この作品世界においてはそうなっているということでイイのだ。
本作の脚本は特撮・アニメ作品も幅広く手掛けている荒川稔久(あらかわ・なるひさ)。なので、特撮パロディも満載だ。同じく荒川が手掛けた特撮パロが満載のヒロイン戦隊もののラノベ原作の深夜アニメ『俺、ツインテールになります!』(14年)同様に、90歳を超えた大御所・渡辺宙明(わたなべ・ちゅうめい)センセイが別のチームの先輩「ご当地ヒロイン」のために楽曲を提供しており、そこにワザワザ1980年代風の特撮変身ヒーローもののオープニングを再現したイメージ映像などもカブせている――字幕テロップも21世紀の今日における微量にオシャレでセンスもある小さな書体とは異なり、当時の小さなTV画面ではともかく今見るとヤボなほどに巨大な書体が再現されてもいるのだ!――。
とはいえ、そういった描写があるからといって、特オタである筆者も本作を認める! なぞといった気にはならない(笑)。
さまざまな性格の女子高生たちが仲間を集めて、自分の得意分野でヒーローショーの興行に協力し、困難を乗り越えて勝利をつかんでいく……といった展開であったあたりで、全国各地でスクールアイドルが勃興中! という、やはりウソっぱちな世界観でも、実に楽しい物語を紡いで内容的にも人気面でも大成功していたアイドルアニメ『ラブライブ!』(13年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20150615/p1)なども想起させてはくる。
しかし、あちらが「バカ設定」であるにもかからず「ガチ熱血」「ガチギャグ」「ガチ萌え」で取り組んでいたのに比すると、ユル~く流して作っている印象なのである。
それ自体がまた「ねらい」なのだろうけど、個人的にはそこが物足りないのだ。
では、ドーすればイイのだろうか?
「日常場面」では女のコたちの「萌え」を前面に押し出す。しかし、劇中劇でもある「ヒーローアトラクショー」における「正義の戦隊ヒロインズvs悪の軍団」の方では、シナリオなりアクション演出の温度を、本編とは多少遊離してでも高めてみせたり、さらにはテーマもどきの道徳説教(笑)などを絶叫させれてみれば、もっとメリハリが付いたのではなかろうか!? などとも愚考をしてしまうのだ。
とはいえ、「作画」も「動き」も一級レベルではない並みの予算のアニメなので、そういった増強や演出もまた高望みであったり、「付け焼き刃」で「焼け石に水」といったオチになってしまったかもしれないけど(笑)。
『天使の3P!(スリーピース)』
サラサラ薄茶ヘアの繊細そうな不登校の男子高校生クンが、動画配信サイトにUPしていた自作ギター楽曲への反応をキッカケに、オフでヒト様に会ってみたら、それは児童養護施設に住まう儚(はかな)げな美少女小学生3人によるロックバンドであった! というお話。
なのだけど、そーいったお話自体は言い訳で、批判ではなく云うけれど、肉体性も感じられるナマっぽい表情豊かで気まぐれな女のコを描こうというのではさらさらなく、アンニュイ・気怠げで覇気や刺激臭は巧妙に除去した、垂れ目の無気力・脱力・従順系で、アニメ記号的なキャラ付けの「わにゃ」とか「はむ」とかを口癖とする、ロリロリしたお嘆美系5頭身美少女キャラたちをフェティッシュに愛でるアニメ作品だ。
こーいうのは専門・適任の方に語っていただくのがベストで、門外漢が出しゃばるべきではナイのは重々承知している。
しかし、本作を愛する方々には非常に申し訳ないけれども、同じ原作者が手掛けたラノベ原作の深夜アニメ、「小学生は最高だぜ!」(笑)をキャッチコピーに美少女小学生たちのバスケットボール部を描いた『ロウきゅーぶ!』(11年)同様、この儚げロリに特化した絵柄自体に罪はナイのだが、この絵柄にフェティッシュな視線をそそぎ、「可愛いものが判ってしまう」我々オタが、ハァハァしている特殊性癖が背後に透けて見えてしまうのか(汗)、世間一般がそれを直感的にキモく思うのも、ある程度までは仕方がナイことではあるだろう。
いやいや、ロリじゃない、フェティッシュだけじゃない、ドラマやテーマもある! と主張する御仁もいようけど、もっとスナオになろうよ。そこにフェティッシュな感情が微塵たりともナイとは云わせない。もちろん小声で好意を表明すればイイのであって、大声で絶叫してカミングアウトすべきだとも云わないけれども(笑)。
オール・オア・ナッシングで踏み絵を迫っているワケではなく、天下の公道でヒケらかして大手を振って歩けというのでもない、ある種の最先端(?)でありつつも、少々背徳感もあるウラ通りの日陰に繁茂する隠花植物のポジションで本作をマッピングしてみせればイイのだろう。
教室で(ひとり)ボッチの意志薄弱そうな女のコ。案の定、心ないクラスメートの男女どもからイジメの標的とされて、残酷な言葉を投げかけられている。
その光景に心を痛めながらも、腕力・胆力・人格力がナイために、教室内では彼女を助けることができない、クラスメートの心ある男のコひとり&女のコひとり。
そんな彼らが取った行動は、クラスメートたちに見られないように、バレないように、自身たちもイジメられっ子の仲間と見なされてターゲットにされないように(汗)、校外や校舎の屋上や下駄箱のウラで彼女と付き合い、昼食や行動を共にすることであった……。
という非常に地味な題材の1クールの10分アニメ。
本稿執筆のためにググってみたら、10年以上前の2004年にネット上で発表、注目も集めて舞台化もされ、2010年代に至って商業書籍化もされた小説が原作なのだそうだ。筆者はその存在を全然知らなんだけど。
明らかに低予算で、それを逆手に取ったかキャラデザも作画崩壊が目立たないようにか描線もシンプルで、女のコのキャラでもカールして何本も突き出たマツ毛表現などはなく、太めのヨコ棒一線での表現だったりもする。
イジメ自体は解決せず、難病ものにスリ替わることで悲劇として決着するあたりはドーかとは思うものの、まぁフィクションに実効性があるイジメの解決法を期待するのもナイものねだりなのだし、万全の解決ではなくマイナス100をマイナス50にするだけでも救いはあると見るならば、コレはコレでイジメに対する現実的な処方箋という気もしてくる。
下手ウマな味わいがある作品だが、ヒト様には勧めにくい(汗)。
ライトノベル原作の深夜アニメで、昨今流行りのスクールカーストものである。あまたの深夜アニメの主題歌も熱唱するZAQ(ザック)が作詞・作曲した主題歌のタイトルも、そのものズバリ「カースト・ルーム」だ。
●クラスの中心人物にはなれなさそうであるカッタるげな主人公の高校生男子クン
●黒髪ロングの他人とは交わらないクールな女子高生メインヒロイン
●愛想がよくて愛くるしい女子高生サブヒロイン
鉄板(てっぱん)のアリガチなキャラクターシフトではある。
#1冒頭では、入学式直後の教室にてクラスの中心人物になりそうな男女たちが主導して自己紹介がはじまる。
対外的にも恥ずかしくはないモテ趣味や得意スポーツを披歴して如才なくアピールできる者たちに、主人公男子が引け目を感じたり居心地の悪さを感じるサマは、筆者も幼少時~今に至るまで何度も経験してきた心のキズである(笑)。
同様のスクールカーストを描いていた(ひとり)ボッチもの深夜アニメの大傑作『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』(13年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20150403/p1)の序盤、クラスでカースト上位層の横暴に制止の声を上げたいけど上げられない主人公男子のシーンのことを連想した諸兄も多いだろう。
『やはり俺の~』はそんな酷薄なカースト社会で、一応の公平や正義を求めて主人公男子クンが知恵を絞ってウラ側からカラめ手で戦っていくサマと、三角関係のラブコメ風味を味あわせてくれる作品だったので、本作もその亜流なのであろうかと思いきや……。
近未来的なハイテク学園都市を舞台に、まずは愛くるしいサブヒロインは#3で激しい本性(?)を人気のない場所で垣間見せる。
その姿を目撃してしまった主人公男子クンを口止めするために、自身の巨乳に制服の上から手を触らせ指紋を付けることで、キツい目付きで「バラしたらレイプされたと騒ぐ」と脅すのだ!
物語も舞台となる学年最下位の1年D組を超えて、A~C組の面子も交えた学園バトルロイヤルの様相を呈していく。
主軸のD組についても、メインの3人の男女キャラだけではなく、ヤンキーDQN(ドキュン)生徒の成績不良やケンカ騒動、ガチンコ対面のコミュニケーションは苦手だけどネット上では大胆にふるまえるコスプレ少女の挿話などをシリーズ前半に配置する。シリーズ後半では夏休みの臨海学校クルーズや、学級委員クン・チャラ男・ギャル子らの生態や彼らの意外な一面なども、無人島でのクラス対抗サバイバルにおける権謀術数合戦と並行して描いていく。
スクールカースト・バトルロイヤルもの全般に云えることだけど、偽悪的にそれらを肯定して、作品自体が現代の多様な価値観の象徴だとも作り手は往々にしてウソぶいている。しかし、実際にはバトルロイヤルにエゴイスティックにガンガンと参戦する陣営には主人公を配してはいない。たいていはバトルロイヤルをなんとか止めようとする、せめてブレーキはかけようとしている良心的な連中が主人公側の陣営として設定されるのだ(笑)。
つまり、云われているほどアナーキー(無秩序)でも斬新でもなかったりするのだけど(批判ではなく)、基本的には本作もまたそのクチではあった。
そして、バトルロイヤルにブレーキをかけるためにも、逆説的に実力・権謀術数が必要となってしまうというジレンマを描いたあたりは、本作の独自性・アドバンテージではあるのだろう。個人的には2017年夏アニメのナンバー1である。
(了)
(初出・オールジャンル同人誌『SHOUT!』VOL.70(17年12月30日発行))
(2017年12月26日脱稿)
昨今流行りのスマホ漫画原作の深夜アニメ。
冴えないオトナしげな人畜無害でヒトの良さそうな男子高校生クン。いかにも性格良さげでシットリとしつつも、適度に元気はあって華もある黒髪ショートの美少女女子高生。ちょっと張り詰めた感じでヒトを拒絶するバリアを張っている風だけど、芯は弱そうな感じのピンク髪のツインテールの美少女女子高生。主人公少年クンがこのふたりの美少女女子高生のうちのドチラを選ぶべきかで揺れるラブコメ。
コレだけならアリガチなキャラクターシフトなのだけど、本作の秀逸なところは、今をさかのぼること40年以上も前の1975(昭和50)年に16歳以上の男女に対して、統一教会教祖の霊感・直感ではなく(笑)、科学的・遺伝情報的・人間心理(相性)的に、政府(厚生労働省)が結婚相手を決定し、しかもそれがけっこうウマくいっていて、各自が幸福な家庭生活を営めてもおり、少子化対策にも成功したオルタナティブな現代日本! という舞台設定であることだ――1975年時点ではDNA審査はまだムリだったハズだけど、それはさて置こう――。
この大設定に伴ない、計算や打算ヌキでの主人公少年クンの小学校時代からの5年越しの初恋・片思いのお相手については、黒髪ショートのコに設定。政府が強制的に決めた結婚相手については、ピンクのツインテ嬢に割り振りする。
ここで、自由恋愛・相思相愛こそが絶対正義で、親なり政府が決めたお見合いや結婚は当人同士の自主性を無視して強制された前近代的な問答無用の巨悪である! その象徴として、ピンクのツインテ嬢には悪役もしくは損な役回りに割り振る! というような安直な善悪二元論の作品であったならば、筆者個人は本作を陳腐でステロタイプな凡作であると認定したであろう。しかし、このピンクのツインテ嬢もまた実に魅力的でイイ娘に描かれているのである。
成績はイイけれども、幼少時から病欠がちゆえ、クラスでも(ひとり)ボッチで頑なな感じ。威圧感などカケラもないヤサ男の主人公の男子高校生クンに対してさえ、異性が苦手で結婚や恋愛などまだ考えたくもないオボコい感じのピンクのツインテ嬢はツンツンとしており、異性と同席していると会話や場を保たせられないテレ隠しゆえに彼のことを邪険にするけど、その姿はちっとも怖くない(笑)。
もちろんドラマチックな基本設定・舞台設定だけでも即座に傑作が仕上がるワケではない。
#1は主人公男子クンと黒髪メインヒロインとの関係描写だけに焦点をあてている。先の作品世界の政府主導の結婚政策の説明はアバンタイトルで手短に済ませて、高校でのクラスの休み時間に、
「16歳になったので、もうすぐ政府通知が来るぞ!」
という期待と不安に胸を膨らます友人男子たちと軽口を叩きつつも気もそぞろで、自席に着席しつつもチラチラと黒髪メインヒロインの立ち居ふるまいをヨコ眼で追ってしまう主人公少年クンの姿が序盤で描かれる。
この一連のシークエンスが非常にウマい! 高校生たちの結婚に対する期待&不安と、好ましい異性に対しては本能的に万人に起こりうる「あるある感」満載の主人公の挙動描写の並立に、まずはグッと感情移入をさせられる。
その彼の視野に写る、友人の女子生徒たちと談笑し、笑うときには口に手をやり、時に髪をカキ上げて耳を出し、その仕草にもまたワザとらしさが感じられず、いかにも性格良さげで、こぼれ落ちんばかりの輝く笑顔を見せつける天使のような黒髪メインヒロイン!
絵柄としては、淡泊なサッパリ風味で今風の少女マンガ的な文脈でありつつも、女子好みの痩身キャラではなく、もちろんおデブさんではないけれども、それなりの巨乳であるキャラクターデザインでもあることから、その「少女性」に微量に「母性的」な優しさ&包容力をも宿らせることができている。
彼女にかぎらず本作のヒロインたちの大きなお目めも含めたキャラデザには、吸い込まれそうな可愛さ&抑えたイロケがあり(しかしエロではない)、とても魅力的に仕上がっているとは思うけど……。ガチなオタ向け作品における美少女キャラの萌え媚び描写とはやや文脈が異なるようには思うので、そっちの方面ではウケませんかネ?(汗)
「結婚はオトコの墓場だ! オレたちは政府通知を無視して一生、未婚でいよう!」(大意)
と男子数人が円陣を組んで、その中心に伸ばした片腕を交差させて、
「オーーッ!!!」
と勝ちどきをあげるや、作者はそこに黒髪ヒロインもナチュラルに混入させており、彼女もいっしょに、
「オーーッ!!」
と叫ばせる。
エエ~~~ッ!? とばかりに驚愕している非モテ男子どもの反応をヨソに、余裕と可憐さを同時に兼ね備えた声質の花澤香菜(はなざわ・かな)嬢のボイスで、
「アレ、女子は混ざっちゃイケなかった?(……テヘッ)」
と笑顔でウソぶく黒髪メインヒロイン。
劇中男子ども・視聴者・筆者も含めてみんなが悶絶!(爆) ……もちろん今後の展開へのテーマ的伏線も兼ねたキャラ付け・キャラ性表出描写でもあるけれど。
#1のBパート~ラストでは、主人公少年がついに今世でのお別れとばかりに、夜の公園に黒髪メインヒロインを呼び出してみせる。
待てども来ない。もう来ないのかと思いきや、黒髪メインヒロインがついにお出まし! そこで自分の長年の好意を告白する主人公少年クンに対して、黒髪メインヒロインも涙を流して「実は自分もそーだった」……とのたまう。
ナンというオタク男子・弱者男子にとっての都合がいいファンタジー! こんな頼りなくて弱いオスに、引く手あまたで選びたい放題の優位なメスがホレるかよ!? アリエナイよ! リアルに考えたら「キモッ! ストーカー!!」と罵られて終わりだよ! ……と理性ではケナしつつも、感情面では釣られて落涙している全オレがいる(笑)。
そのとき、主人公少年クンのスマホに彼の結婚相手が通知されてくる。そのお相手は当の黒髪メインヒロイン!
喜びに打ち震える主人公少年クンだが、しばらくすると、その画像が崩れだし別人の名前がそこに浮かびあがる。眼の錯覚であったのかハッキングにあったのかは判然としない……。
先に主体である主人公少年クンが、客体であるWヒロインのドチラを選ぶかで悩むかのようにも書いたけど、この作品はWヒロイン側にも主体性をカナリ持たせていて、友人となったヒロイン同士が彼への好意とはウラハラに互いに譲り合い、そのことでプチ幸福を味わうも同時に傷付いていく逆説なサマも描いていく。
そこに主人公少年クンと終始つるんでいる美少年生徒クンも、実は主人公少年クンに対して純愛感情を抱いていたことが視聴者にだけは明かされて(同性愛!)、女性視聴者のBL(ボーイズ・ラブ)感情も満たしていく……。
さらには万人に愛される明るい黒髪メインヒロインのことを実は過去には苦手に思っていたり、彼女の言動を媚び媚びとした演技やポーズなのでは? と疑っていたことがあったものの、彼女がガチであることを知って改心して黒髪メインヒロインの熱烈隠れ信者と化したアンニュイな銀髪ロング娘も登場させることで、百合方面の需要も喚起!?
ゲストや第三者を介さずとも、彼ら彼女らの多角形や対角線の間の引力や斥力を描くだけで、物語も駆動されていくし、ワイドショー的な色恋への視聴者側のヤジ馬関心も惹起されていく。
しかし、原作未完作品にアリガチな、あやふやなTVアニメ版の最終回の出来はともかく、そのラストで主人公少年クンにモノローグで結婚強制社会を「この狂った社会」と云わせたことだけは、個人的にはやや安っぽく思える。
歴史的にも世界史的にも自由恋愛ではなく、国家といわず地域や旅商人やお節介婆ァなどが媒介して男女を結婚させていた形態の方が主流なのは学問的にも自明なのだから、全肯定はしないまでも本作の世界観を「狂った社会」と全否定的に形容するのは底が浅く思えるのだ。
100か0かではなく、トータルでは自由恋愛や主人公少年&黒髪メインヒロインの相思相愛の方に分を認めるにしても、科学的な合理性をも兼ね備えて最大多数の最大幸福も実現してみせた結婚強制社会にも相応の理を主人公少年クン自身も認めた上での懊悩・逡巡……といった心理描写にしておかないと、せっかくの深みや多面性もウスれてしまうようには思うので。
……モテる男女は何度離婚しようが何度でも結婚ができ、非モテ男女は一生恋人すら作れない、この新自由主義的な社会の方が……(ルサンチマンが続くので、以下略・笑)。
(了)
(初出・オールジャンル同人誌『DEATH-VOLT』VOL.80(17年12月30日発行))
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